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特許異議申立

2025-700403

ビールテイスト飲料

審判番号
2025-700403
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-534395
登録番号
7566157
請求日
2025年04月10日
審決日
2026年03月06日
公報発行日
2026年06月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】小林 浩
  • 【権利者代理人】古橋 伸茂
  • 【権利者代理人】石原 俊秀
  • 【権利者代理人】末広 尚也
  • 【異議申立人】水野 圭助
審判長/審判官
  • 審判長 天野 宏樹
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 壷内 信吾
分類
P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C) / P1651.537-YAA(C12C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第4号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7566157号発明「ビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7566157号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5及び6について訂正することを認める。 特許第7566157号の請求項1~4、7~12に係る特許を維持する。 特許第7566157号の請求項5及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7566157号(以下「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)3月28日(優先権主張 令和4年3月31日)を国際出願日とする出願であって、令和6年10月3日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年同月11日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年4月10日に特許異議申立人 水野 圭助(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年5月23日に特許異議申立書に対する手続補正書(方式)が提出され、同年6月13日に特許異議申立書に対する手続補正書が提出され、同年7月23日付けで取消理由が通知され、同年9月12日に特許権者 サントリーホールディングス株式会社から訂正請求がされるとともに意見書が提出されたものである。 なお、当審から特許申立人に対して、訂正請求について特許法第120条の5第5項の規定に基づき相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人からは応答がなかった。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和7年9月12日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。 ●訂正事項1 特許請求の範囲の請求項5及び6を削除する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1による請求項5及び6についての訂正は、請求項5及び6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項5及び6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 独立特許要件について 本件においては、訂正前の全ての請求項1~12に対して特許異議の申立てがされているので、上記訂正事項に係る訂正については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 本件訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5及び6について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項5及び6について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などといい、総称して「本件特許発明」という。)は、令和7年9月12日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 アルコール度数が1.0(v/v)%以上3.8(v/v)%以下であり、 ピログルタミン酸の含有量が60mg/L以上であり、 イソアミルアルコールの含有量が40mg/L以上190mg/L以下であり、 外観発酵度が100%未満であり、 クエン酸の含有量が120mg/L以上であり、 乳酸の含有量が140mg/L以上である、ビールテイスト飲料。 【請求項2】 麦芽比率が50質量%以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。 【請求項3】 イソアミルアルコールの含有量が50mg/L以上190mg/L以下である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。 【請求項4】 さらに、リン酸を含有する、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。 【請求項5】(削除) 【請求項6】(削除) 【請求項7】 リン酸の含有量が、300~1,200mg/Lである、請求項4に記載のビールテイスト飲料。 【請求項8】 アルコール度数が1.5(v/v)%以上3.3(v/v)%以下である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。 【請求項9】 糖質含有量が1.0g/100mL以上である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。 【請求項10】 糖質含有量が2.0g/100mL以上である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。 【請求項11】 アルコール度数が1.0(v/v)%以上3.8(v/v)%以下であり、 ピログルタミン酸の含有量が60mg/L以上、 イソアミルアルコールの含有量が40mg/L以上190mg/L以下、 外観発酵度が100%未満、 クエン酸の含有量が120mg/L以上、 乳酸の含有量が140mg/L以上、 となるように調整することを含む、ビールテイスト飲料の製造方法。 【請求項12】 アルコール度数が1.0(v/v)%以上3.8(v/v)%以下であり、 ピログルタミン酸の含有量が60mg/L以上、 イソアミルアルコールの含有量が40mg/L以上190mg/L以下、 外観発酵度が100%未満、 クエン酸の含有量が120mg/L以上、 乳酸の含有量が140mg/L以上、 となるように調整することを含む、ビールテイスト飲料の香味改善方法。」 第4 特許異議申立理由の要旨及び証拠方法 令和7年4月10日に特許異議申立人が提出し、同年5月23日及び6月13日に提出した手続補正書により補正された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の要旨及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1~12は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいてその優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第19号証に基づく進歩性) 本件特許発明1~12は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第19号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(甲第20号証に基づく進歩性) 本件特許発明1~12は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第20号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1~12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明は、クエン酸の含有量の下限値のみを120mg/Lに規定し、上限値は規定していない。このことは、クエン酸の含有量が際限なく増大した場合でも本件特許発明の効果が達成されることを意味している。 ここで、特定の酸味料を所定量含有する具体例が記載された表6を参照して、実施例39と実施例44とを成分について対比すると、クエン酸含有量のみ400mg/Lから650mg/Lへ増大している一方で、他の成分量は共通している。両者を総合評価について対比すると、実施例39は総合評価がAであるのに対し、実施例44はBに悪化している。 この実験結果は、クエン酸含有量が増大しすぎると発明の効果が減少することを示している。また、Bという評価点は、本件特許発明の構成を充足しない表10の具体例と同等であり、本件特許発明の効果が達成されていないことを意味している。してみれば、表6の記載は、クエン酸含有量が増大しすぎると発明の効果が達成されなくなることを示している。 かかる本件明細書の記載から、特許請求の範囲にわたって発明の課題が解決されることを理解することはできず、本件特許発明は、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えているので、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていないものである。 5 申立理由5(サポート要件) 本件特許の請求項1~12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明は、乳酸の下限値のみを140mg/Lに規定し、上限値は規定していない。前記と同様に表6を参照して、実施例37と実施例42と実施例47とを成分について対比すると、乳酸含有量のみ359mg/L、550mg/L及び920mg/Lへ順次増大している一方で、他の成分量は共通している。両者を総合評価について対比すると、実施例37は総合評価がBであり、実施例42はAに向上し、実施例47はBに悪化している。 この実験結果は、乳酸含有量が増大しすぎると発明の効果が達成されなくなることを示している。また、乳酸含有量は、359mg/Lにおいて発明の効果が達成されておらず、ここから下限値である140mg/Lまでの含有量において、発明の効果が達成されないことを示している。 かかる本件明細書の記載から、特許請求の範囲にわたって発明の課題が解決されることを理解することはできず、本件特許発明は、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えているので、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていないものである。 6 申立理由6(明確性要件) 本件特許の請求項5及び6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件請求項5及び6には「前記酸味料」と記載されている。一方、請求項5及び6が引用する請求項1又は2に、文言「酸味料」が記載されていない。従って、ここでいう酸味料の意味が特定されておらず、不明確な記載になっている。 7 特許異議申立人の提出した証拠方法 甲第1号証:Chunfeng Liu et al.、”Influencing factors of hydrogen bonding intensity in beer”、Journal of Food Science and Technology、November 2014、51(11)、p.2964-2976及び抄訳 甲第1-2号証:Association of Food Scientists & Technologists(India)の発行雑誌紹介Webのスクリーンショット 甲第2号証:Y. H. Hui et al.、”FOOD BIOCHEMISTRY AND FOOD PROCESSING”、Blackwell Publishing、2006、p.670-672及び抄訳 甲第3号証:尾関正彦、「麦汁中の糖組成、及び醸造工程中の有機酸量変化とビール品質との関連」、日本醗酵工学会大会講演要旨集、平成3年度、1991年10月、第26頁 甲第4号証:特開2021-97630号公報 甲第5号証:上田隆蔵ら、「ビール中の有機酸に関する研究(第1報)」、醗酵工学雑誌、1963年、Vol. 41、No. 1、第10-14頁 甲第6号証:Joon-Kwan Moon et al.、”Development and Application of HPLC/Post-Column Method for Analysis of Low Molecular Weight Organic Acids in Beers、Wines and Fruit Juices”、Scholarly Journal of Food and Nutrition、Volume 1-Issue 4、p.121-126(2018)及び抄訳 甲第6-2号証:Lupine Publishersの甲6記載Web頁のスクリーンショット 甲第7号証:N. Coote et al.、”THE CONTENT OF SOME ORGANIC ACIDS IN BEER AND OTHER FERMENTED MEDIA”、J. Inst. Brew.、1974、Vol 80、No 5、p.474-483及び抄訳 甲第7-2号証:Chartered Institute of Brewers and Distillersの発行雑誌紹介Web頁のスクリーンショット 甲第8号証:特開2020-195318号公報 甲第9号証:意見書、異議2020-700742号、令和3年1月18日提出 甲第10号証:特開2011-135833号公報 甲第11号証:特開2015-226490号公報 甲第12号証:吉田重厚、「醸造成分 第1章 ビールの一般成分」、日本醸造協会雑誌、1976年第71巻第7号、第505-510頁 甲第13号証:Victor R. Preedy、”Beer in Health and Disease Prevention”、Academic Press、2009年、p.299-307 甲第14号証:上申書、特願2023-534395、令和6年4月19日提出 甲第15号証:特開2021-3128号公報 甲第16号証:特開2013-255504号公報 甲第17号証:手続補正書、特願2023-534395、令和5年9月12日提出 甲第18号証:拒絶査定、特願2023-534395、令和5年11月7日起案 甲第19号証:野白喜久雄ら編「醸造の辞典」、初版第1刷、株式会社朝倉書店、1988年、第260-261頁 甲第20号証:特開2015-133924号公報 甲第21号証:特開2018-11587号公報 なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。 第5 取消理由の要旨 請求項5及び6に係る特許に対して、当審が令和7年7月23日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 ●取消理由(明確性要件) 本件特許の請求項5及び6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。なお、該取消理由は申立理由6と同旨である。 本件特許発明5及び6には「前記酸味料」と記載されている。一方、請求項5及び6が引用する請求項1又は2に、文言「酸味料」が記載されていない。したがって、ここでいう酸味料の意味が特定されておらず、不明確な記載になっている。 第6 取消理由についての当審の判断 上記第3のとおり、本件訂正により、訂正前の請求項5及び6は削除され、取消理由はその対象がなくなった。 第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は次のとおりである。 ・申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性) ・申立理由2(甲19に基づく進歩性) ・申立理由3(甲20に基づく進歩性) ・申立理由4(サポート要件) ・申立理由5(サポート要件) なお、申立理由1~5のうちの請求項5及び6に対する理由は本件訂正によりその対象がなくなった。 以下、残りの理由について、順に検討する。 1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1は、「ビール中の水素結合強度に影響する要因」というタイトルの論文であり、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲1は外国語の文献であるが、本文は甲1の抄訳として提出された訳文のみ摘記する。表中の囲みは特許異議申立人が追記した参照箇所を示す。「・・・」は省略を示す。 ・「要約 水素結合はビール中の多くの成分によって形成されやすい。異なる種類のフレーバー物質は、ビール中の濃度が異なるため、ケミカルシフトに影響を与える可能性がある。本研究では、4種類のアルコール、2種類のエステル、6種類のイオン、9種類の酸、7種類のポリフェノール、2種類の重量 (OG及びRG)を含むいくつかの主要因子が決定された。これらは、相関分析、主成分分析、重回帰分析を使用して、瓶詰ラガービールにおける水素結合強度と風味成分との関係を研究するために使用することができる。」(第2964頁 、本文左欄) ・「略語 ・・・ IA イソアミルアルコール OG 原麦汁エキス AD アルコール度数 RG 真性エキス ・・・ MA リンゴ酸 LA 乳酸 SA コハク酸 AA 酢酸 ・・・ CA クエン酸」(第2964頁本文右欄下から第15行~第2965頁左欄第15行) ・「材料及び方法 試料 本研究で使用した35種類の瓶詰めラガービール試料は中国市場で購入したもので、異なる中国のビール会社によって製造されたものである (表1)。」(第2966頁左欄第1~5行) ・「表1 35種類のビール試料の特徴 番号 原材料 種類 ・・・ 6 水、大麦麦芽、ホップ、酵母 生ビール ・・・」(第2966頁Table 1) ・「 [図:0001436176000001.jpg] 」 ・「表2 ビール試料のアルコール、エステル、無機イオン、有機酸、フェノール化合物の含有量(mg/1)、およびアルコール度数、真性エキス、原麦汁エキス」(第2968頁第1行) ・「 [図:0001436176000002.jpg] 」 ・「アルコール度数(AD)-ビールの体積に対するアルコールの体積の百分率としての溶液のアルコール含有量測定値、真性エキス(RG)-アルコールと二酸化炭素を除いたビールの実際のエキス(溶解固形分)、原麦汁エキス(OG)-ビールのアルコール含有量及び真性エキスから計算される麦汁の比重、酢酸エチル(EA)、シュウ酸(OA)、酒石酸(TA)、ピルビン酸(PA)、リンゴ酸(MA)、ケトグルタル酸(KA)、乳酸(LA)、酢酸(AA)、クエン酸(CA)、コハク酸(SA)、没食子酸(GA)、バニリン酸(VA)、クマリン酸(P-CA)、フェルラ酸(FA)、化学シフト(CS) 度プラート(°P)-1プラートは、ビール100gあたり1gの糖に相当する。全てのデータは3つの並行値の平均である。 結果は平均値±標準偏差で示した。」(第2970頁下から第6~末行) イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特に試料番号6のビールに関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「アルコール度数3.85±1.92体積%、イソアミルアルコール61.99±2.12mg/l、クエン酸145.65±2.43mg/l、乳酸150.56±3.71mg/lを含む生ビール。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「イソアミルアルコール61.99±2.12mg/l」、「クエン酸145.65±2.43mg/l」、「乳酸150.56±3.71mg/lを含む」は、それぞれ本件特許発明1における「イソアミルアルコールの含有量が40mg/L以上190mg/L以下であり、」、「クエン酸の含有量が120mg/L以上であり、」、「乳酸の含有量が140mg/L以上である」に相当する。 甲1発明における「生ビール」は本件特許発明1における「ビールテイスト飲料」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「イソアミルアルコールの含有量が40mg/L以上190mg/L以下であり、 クエン酸の含有量が120mg/L以上であり、 乳酸の含有量が140mg/L以上である、ビールテイスト飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-1> 本件特許発明1においては「アルコール度数が1.0(v/v)%以上3.8(v/v)%以下であり、」と特定されているのに対し、甲1発明においては「アルコール度数3.85±1.92体積%」である点。 <相違点1-2> 本件特許発明1においては「ピログルタミン酸の含有量が60mg/L以上であり、」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点1-3> 本件特許発明1においては「外観発酵度が100%未満であり、」と特定されているのに対し、甲1発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点1-1について検討する。 甲1には、「アルコール度数3.85±1.92体積%」であることが記載されているが、「アルコール度数が1.0(v/v)%以上3.8(v/v)%以下」であることについては記載されていない。 また、甲1には、甲1発明における「アルコール度数3.85±1.92体積%」を「3.8(v/v)%以下」に変更する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1の奏する「良好な飲みごたえを有する、低アルコールのビールテイスト飲料」を提供する(本件特許の発明の詳細な説明の【0004】~【0006】)という効果は、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、この点に関して、特許異議申立書においておおむね次のとおり主張する。 「i)構成A 甲1、試料6のビールは、アルコール度数が3.85±1.92体積%である(第2968頁表2)。平均値からの偏差を考慮すると前記アルコール度数は3.8(v/v)%以下であることをも意味している。 そうすると、前記ビールは構成Aを充足する。」(特許異議申立書第19及び20頁) そこで、該主張について検討する。 甲1において、「アルコール度数が3.85±1.92体積%」の「±1.92」というのは、甲1発明の生ビールのアルコール度数が3.85-1.92体積%~3.85+1.92体積%、すなわち、1.93体積%~5.77体積%の範囲である確率が高いことを意味するにすぎず、必ずしも3.8(v/v)%以下であることを意味するものではない。よって、相違点1-1は実質的な相違点である。しかも、上記したとおり、甲1及び他の証拠の記載を参照しても甲1発明におけるアルコール度数を「3.8(v/v)%以下」に変更する動機付けもない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用することはできない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2~4、7~10について 本件特許発明2~4、7~10はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明11、12について 本件特許発明11、12においても上記相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する事項を含むことから、それらについての判断は上記(2)及び(3)と同様である。 したがって、本件特許発明11、12は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許発明1~4、7~12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。したがって、本件特許の請求項1~4、7~12の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(甲19に基づく進歩性)について (1)甲19に記載された事項等 ア 甲19に記載された事項 甲19は、「醸造の事典」というタイトルの文献であり、おおむね次の事項が記載されている。 ・「 [図:0001436176000003.jpg] 」(第261頁) イ 甲19に記載された発明 甲19に記載された事項を、特に日本のライトビールに関して整理すると、甲19には次の発明(以下、「甲19発明」という。)が記載されていると認める。 <甲19発明> 「真性発酵度59.7(wt%)、アルコール3.0(vol%)であるライトビール。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲19発明とを対比する。 甲19発明における「アルコール3.0(vol%)」は本件特許発明1における「アルコール度数が1.0(v/v)%以上3.8(v/v)%以下であり、」に相当する。 甲19発明における「ライトビール」は本件特許発明1における「ビールテイスト飲料」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「アルコール度数が1.0(v/v)%以上3.8(v/v)%以下である、ビールテイスト飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点19-1> 本件特許発明1においては「ピログルタミン酸の含有量が60mg/L以上であり、」と特定されているのに対し、甲19発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点19-2> 本件特許発明1においては「イソアミルアルコールの含有量が40mg/L以上190mg/L以下であり、」と特定されているのに対し、甲19発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点19-3> 本件特許発明1においては「外観発酵度が100%未満であり、」と特定されているのに対し、甲19発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点19-4> 本件特許発明1においては「クエン酸の含有量が120mg/L以上であり、」と特定されているのに対し、甲19発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点19-5> 本件特許発明1においては「乳酸の含有量が140mg/L以上である」と特定されているのに対し、甲19発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点19-2について検討する。 甲19には、甲19発明において「イソアミルアルコールの含有量が40mg/L以上190mg/L以下」となるようにイソアミルアルコールを含有させ、かつ、イソアミルアルコールの含有量を調整する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲19発明において、相違点19-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1の奏する「良好な飲みごたえを有する、低アルコールのビールテイスト飲料」を提供するという効果は、本件特許発明19の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、この点に関して、特許異議申立書において次のとおり主張する。 「本願発明において特定されるイソアミルアルコールの含有量によりもたらされる相違点については、甲21の [0018]に示される、ビールテイスト飲料の味わい向上などのためにイソアミルアルコールの濃度を調整する周知及び公知の技術を採用することで、当業者が容易に想到したものである。」(令和7年6月13日に提出された特許異議申立書に対する手続補正書第3頁) そこで、該主張について検討する。 甲21は、キレが良好なビール様発泡飲料を提供することを課題とし、「オクタン酸及びデカン酸の濃度の合計が2.5ppm以下であり、β-ミルセンの濃度が4.5ppb以下であり、かつイソアミルアルコールの濃度が55~100ppm」とすることによってビール様発泡性飲料のキレを改善できることを見出したものである(請求項1、【0006】、【0007】等参照)。また、甲21には、イソアミルアルコールはキレと正の相関があること、及びエステル様の香気成分があり、爽快感が増大し、キレが向上することが記載されている(【0007】、【0018】参照)。 他方、甲19発明は含有成分の分析値が示された市販のライトビールであり、甲19には該ビールがキレの不足、エステル様香気の不足、爽快感の不足という課題を有することは記載されていない。 そうすると、甲19発明において、甲21の記載に基づいてイソアミルアルコールの濃度を調整する動機付けはないというべきである。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用することはできない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲19発明並びに甲19及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2~4、7~10について 本件特許発明2~4、7~10はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲19発明並びに甲19及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明11、12について 本件特許発明11、12においても上記相違点19-2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する事項を含むことから、それらについての判断は上記(2)及び(3)のとおりである。 したがって、甲19に記載された発明並びに甲19及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由2(甲19に基づく進歩性)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許発明1~4、7~12は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。したがって、本件特許の請求項1~4、7~12の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由2によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(甲20に基づく進歩性)について (1)甲20に記載された事項等 ア 甲20に記載された事項 甲20には、「低アルコールビールテイスト飲料」について、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0007】 本発明は、充分なコク味を有しつつ、優れた香味を有し、かつドリンカビリティが高められた低アルコールビールテイスト飲料を製造する方法を提供することを目的とする。」 ・「【実施例】 【0044】 次に実施例及び参考例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等に限定されるものではない。 【実施例1】 【0045】 まず、大麦、大麦麦芽に50℃の湯を加え、混合液を得た。得られた混合液に、α-グルコシダーゼ(「アマノ」天野エンザイム社製)を、発行前液全量の0.1w/v%添加し、65℃で維持することにより、糖化を行った。糖化後の混合液から大麦麦芽の殻皮を除去し、ホップを添加し、煮沸を行った。煮沸終了後、濾過を行い、発酵前液を得た。 次に、得られた発酵前液に、酵母として下面ビール酵母を添加して、アルコール発酵を行った。アルコール発酵後、さらに貯酒、濾過を行うことにより、低アルコールビールテイスト飲料を得た。 得られた低アルコールビールテイスト飲料に、ホップエキスを所定の苦味価になるように添加した後、缶に充填し、「1-1」~「1-4」の各サンプルを調製した。各サンプルについて、熟練したパネラー6名により、官能検査を行った。官能検査は、下記評価基準に則って、1~5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。図1に、サンプルの成分組成と、官能検査の結果を示す。なお、官能検査の結果については、平均値が2以下のものを「×」、3のものを「○」、4以上のものを「◎」で表現した。そして、ドリンカビリティ、総合評価の評価がともに「○」以上のものを発明の効果を奏するものと判断した。」 ・「【実施例2】 【0049】 実施例1と同様にして、「2-1」~「2-3」の各サンプルを調製した。 各サンプルについて、実施例1と同様に官能検査を実施した。図2に、サンプルの成分組成と、官能検査の結果を示す。」 ・「【実施例3】 【0051】 実施例1と同様にして、「3-1」~「3-3」の各サンプルを調製した。 各サンプルについて、実施例1と同様に官能検査を実施した。図3に、サンプルの成分組成と、官能検査の結果を示す。」 ・「 [図:0001436176000004.jpg] 」 ・「 [図:0001436176000005.jpg] 」 ・「 [図:0001436176000006.jpg] 」 イ 甲20に記載された発明 甲20に記載された事項を、特に実施例1のサンプルNo.「1-1」の低アルコールビールテイスト飲料に関して整理すると、甲20には次の発明(以下、「甲20発明」という。)が記載されていると認める。 <甲20発明> 「真性発酵度56.2(%)、アルコール濃度3.1(V/V%)である低アルコールビールテイスト飲料。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲20発明とを対比する。 甲20発明における「アルコール濃度3.1(V/V%)」は本件特許発明1における「アルコール度数が1.0(v/v)%以上3.8(v/v)%以下であり、」に相当する。 甲20発明における「低アルコールビールテイスト飲料」は本件特許発明1における「ビールテイスト飲料」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「アルコール度数が1.0(v/v)%以上3.8(v/v)%以下である、ビールテイスト飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点20-1> 本件特許発明1においては「ピログルタミン酸の含有量が60mg/L以上であり、」と特定されているのに対し、甲20発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点20-2> 本件特許発明1においては「イソアミルアルコールの含有量が40mg/L以上190mg/L以下であり、」と特定されているのに対し、甲20発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点20-3> 本件特許発明1においては「外観発酵度が100%未満であり、」と特定されているのに対し、甲20発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点20-4> 本件特許発明1においては「クエン酸の含有量が120mg/L以上であり、」と特定されているのに対し、甲20発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点20-5> 本件特許発明1においては「乳酸の含有量が140mg/L以上である」と特定されているのに対し、甲20発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点20-2について検討する。 甲20には、甲20発明において「イソアミルアルコールの含有量が40mg/L以上190mg/L以下」となるようにイソアミルアルコールを含有させ、かつ、イソアミルアルコールの含有量を調整する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲20発明において、相違点20-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1の奏する「良好な飲みごたえを有する、低アルコールのビールテイスト飲料」を提供するという効果は、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、この点に関して、特許異議申立書において次のとおり主張する。 「本願発明において特定されるイソアミルアルコールの含有量によりもたらされる相違点については、甲21の [0018]に示される、ビールテイスト飲料の味わい向上などのためにイソアミルアルコールの濃度を調整する周知及び公知の技術を採用することで、当業者が容易に想到したものである。」(令和7年6月13日に提出された特許異議申立書に対する手続補正書第3頁) そこで、該主張について検討する。 甲21は、キレが良好なビール用発泡飲料を提供することを課題とし、「オクタン酸及びデカン酸の濃度の合計が2.5ppm以下であり、β-ミルセンの濃度が4.5ppb以下であり、かつイソアミルアルコールの濃度が55~100ppm」とすることによってビール様発泡性飲料のキレを改善できることを見出したものである(請求項1、【0006】、【0007】等参照)。また、甲21には、「キレ」と「コク」はビール様発泡性飲料の重要な品質であり、一般的には互いにトレードオフの関係にあること(【0002】参照)、イソアミルアルコールはキレと正の相関があること、及びエステル様の香気成分があり、爽快感が増大し、キレが向上することが記載されている(【0007】、【0018】参照)。 他方、甲20発明は、充分なコク味を有しつつ、ビールと同様の優れた香味を有し、かつドリンカビリティが高められた低アルコールビールテイスト飲料を製造する方法を提供することを課題とするものである(【0002】、【0007】参照)。 そうすると、充分なコク味を有し、ビールと同様の香味を有する低アルコールビールテイスト飲料を製造する方法を提供することを課題とする甲20発明において、コクとトレードオフ関係にあるキレの改善を課題とし、エステル様の香気成分を持つ化合物であるイソアミルアルコールを積極的に増量する甲21に記載された技術的事項を適用する動機付けはないというべきである。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用することはできない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲20発明並びに甲20及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2~4、7~10について 本件特許発明2~4、7~10はいずれも、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲20発明並びに甲20及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明11、12について 本件特許発明11、12においても上記相違点20-2に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する事項を含むことから、それらについての判断は上記(2)及び(3)のとおりである。 したがって、本件特許発明11、12は、甲20に記載された発明並びに甲20及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由3(甲20に基づく進歩性)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許発明1~4、7~12は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。したがって、本件特許の請求項1~4、7~12の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。 4 申立理由4及び5(サポート要件)について (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3)本件特許発明の課題について 本件明細書の【0002】~【0006】等の記載からみて、本件特許発明1~4、7~12の課題は「良好な飲みごたえを有する、低アルコールのビールテイスト飲料を提供すること」にあるものと認められる。 (4)サポート要件の判断 本件特許発明の課題の解決手段に関し、本件明細書の【0017】には「ビールテイスト飲料のアルコール度数を3.8(v/v)%以下にすると、飲みごたえが不十分になってしまう傾向があった。しかし、本発明の一態様によれば、ピログルタミン酸の含有量を所定の範囲に調整することで、アルコール度数が上記のように比較的低い場合でも、ビールテイスト飲料に良好な飲みごたえを付与し得る。」との記載があり、【0018】には「本発明の一態様のビールテイスト飲料におけるピログルタミン酸の含有量は、上記観点から、好ましくは60mg/L以上、・・・であってもよい。」との記載がある。さらに、【0088】~【0107】には比較例及び実施例のビールテイスト飲料について、製造方法、成分含有量及び官能評価結果が記載されており、表1~10には、アルコール度数が1.1(v/v)%以上3.8(v/v)%以下であり、かつ、ピログルタミン酸の含有量が61mg/L以上460mg/L以下であるビールテイスト飲料が実施例とされ、飲みごたえが良好であることを示す指標が2.1以上である評価結果が示されている。他方、本件明細書の【0011】より「低アルコール」に該当しないアルコール度数3.9(v/v)%のビールテイスト飲料、又は、ピログルタミン酸の含有量が49mg/Lであるビールテイスト飲料が比較例とされ、飲みごたえの指標が1.8であり飲みごたえが不十分である評価結果が示されている。以上から、アルコール度数が1.0(v/v)%以上3.8(v/v)%以下であり、かつ、ピログルタミン酸の含有量が60mg/L以上であれば、本件特許発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1~4、7~12は、当該発明の課題を解決できると認識できるビールテイスト飲料の構成をさらに限定したものであるから、本件特許発明1~4、7~12は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1~4、7~12に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。 (5)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、上記第4 4のとおり、本件特許発明1でクエン酸の含有量の上限値を規定すべきである旨主張している。 上記主張において、特許異議申立人は、本件実施例39と実施例44とを比較し実施例44において総合評価Bであることを以て、本件特許発明の効果が達成されていないことを意味していると結論づけているが、実施例44の「ビールテイスト飲料に好適な飲みごたえ」の評価は「2.5」であるから、「ビールテイスト飲料らしい飲みごたえが強く感じられる」ものであり、したがって、当事者は実施例44が本件特許発明の課題を解決できると認識できる。 また、特許異議申立人は、上記第4 5のとおり、本件特許発明1で乳酸の含有量の上限値を規定すべきである旨主張している。 上記主張において、特許異議申立人は、本件実施例37と実施例42と実施例47とを比較し実施例47において総合評価Bであることを以て、本件特許発明の効果が達成されていないことを意味していると結論づけているが、実施例47の「ビールテイスト飲料に好適な飲みごたえ」の評価は「2.5」であるから、当事者は実施例47が本件特許発明の課題を解決できると認識できる。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。本件特許発明2~4、7~12についても同様である。 (6)申立理由4及び5(サポート要件)についてのまとめ 以上をまとめると、本件特許の請求項1~4、7~12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。したがって、本件特許の請求項1~4、7~12の特許は、特許法第113条第4号に該当しないので、申立理由4及び5によっては取り消すことはできない。 第8 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~4、7~12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~4、7~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項5及び6は訂正により削除され、これにより本件特許の請求項5及び6に係る特許に対する特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700403

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