特許異議申立
2023-700770
ビールテイスト飲料
- 審判番号
- 2023-700770
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-213292
- 登録番号
- 7217335
- 請求日
- 2023年07月25日
- 審決日
- 2024年06月13日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】小林 浩
- 【権利者代理人】古橋 伸茂
- 【権利者代理人】石原 俊秀
- 【権利者代理人】末広 尚也
- 【異議申立人】齊藤 恵美子
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 磯貝 香苗
- 審判官 松本 陶子
- 分類
- P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7217335号発明「ビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7217335号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、4、5、6、7、8及び9について訂正することを認める。
特許第7217335号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7217335号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、
令和 3年12月27日を出願日とする特許出願であって、
令和 5年 1月25日にその特許権の設定登録(請求項の数 7)がされ、
令和 5年 2月 2日に特許掲載公報が発行され、
その後、当該特許に対し、
令和 5年 7月25日に 齊藤 恵美子 (以下、「特許異議申立人」という。)により全請求項に係る特許に対して特許異議申立てがされ、
令和 5年11月 2日付けで取消理由が通知され、
令和 5年12月26日に特許権者 サントリーホールディングス株式会社から訂正請求がされると共に意見書が提出され、
令和 6年 1月15日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、
令和 6年 2月 1日に特許異議申立人から意見書が提出され、
令和 6年 2月29日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、
令和 6年 4月24日に特許権者 サントリーホールディングス株式会社から訂正請求がされると共に意見書が提出されたものである。
なお、令和 5年12月26日に提出された訂正請求書による請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、令和 6年 4月24日にされた訂正請求については、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、後記の通り、訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見を踏まえてさらに審理を進めたとしても、特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したため、特許異議申立人に対して改めて意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるものと判断し、意見書提出の機会を与えないこととした。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和 6年 4月24日にされた訂正請求における訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、下線は訂正部分を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「外観発酵度が70.0%以上、アルコール度数が12.0(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、および、麦芽比率が66質量%以下であるビールテイスト飲料」と記載されているのを、
「外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、および、苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下である、ビールテイスト飲料」に訂正する。
請求項1を引用する請求項3も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「色度が5EBC以上である、請求項1に記載のビーステイスト飲料。」とあるものを独立形式に改め、
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.0(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、色度が5EBC以上80.0EBC以下である、および、苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」に訂正する。
請求項2を引用する請求項3も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
ア 訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項4に、
「麦芽比率が50質量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」とあるうち、請求項3を引用するものについて削除する。
イ 訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項4に、
「麦芽比率が50質量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が55質量%以上66質量%以下である、および、苦味価が80.0BUs以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」に訂正する。
ウ 訂正事項3-3
特許請求の範囲の請求項4に、
「麦芽比率が50質量%以上である、請求項1~3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.0(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が55質量%以上66質量%以下である、色度が5EBC以上80.0EBC以下である、および、苦味価が80.0BUs以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」と記載し、新たに請求項8とする。
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項5に、
「ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、請求項1~4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」とあるうち、請求項3~4を引用するものについて削除する。
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項5に、
「ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、請求項1~4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が97.0%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、および、苦味価が80.0BUs以下である、発酵ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」に訂正する。
ウ 訂正事項4-3
特許請求の範囲の請求項5に、
「ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、請求項1~4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が97.0%以上、アルコール度数が12.0(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、色度が5EBC以上80.0EBC以下である、および、苦味価が80.0BUs以下である、発酵ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」と記載し、新たに請求項9とする。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「外観発酵度が70.0%以上になるように発酵させる発酵工程を有する、オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.0(v/v)%以上25.0(v/v)%未満、および、麦芽比率が66質量%以下のビールテイスト飲料の製造方法」と記載されているのを、
「外観発酵度が90.0%以上になるように発酵させる発酵工程を有する、オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満、麦芽比率が66質量%以下、および、苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下のビールテイスト飲料の製造方法」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.0(v/v)%以上25.0(v/v)%未満、および、外観発酵度が70.0%以上となるように調整する工程を有する、麦芽比率が66質量%以下のビールテイスト飲料の香味改善方法」と記載されているのを、
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満、外観発酵度が90.0%以上、および、苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下となるように調整する工程を有する、麦芽比率が66質量%以下のビールテイスト飲料の香味改善方法」に訂正する。
(7)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし5のうち、請求項2ないし5はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1ないし4のとおり訂正される。
よって、訂正前の請求項1ないし5に対応する訂正後の請求項1ないし5、8及び9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1に係る請求項1の訂正について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、請求項1のビールテイスト飲料において、外観発酵度を「70.0%以上」から「90.0%以上」に特定し、かつ、アルコール度数を「12.0(v/v)%以上」から「12.5(v/v)%以上」に特定し、さらに「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許明細書【0010】、【0013】、【0028】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項1を引用する請求項3についても同様である。
(2)訂正事項2に係る請求項2の訂正について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改める訂正を含み、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正を含む。
さらに、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、請求項2のビールテイスト飲料において、外観発酵度を「70.0%以上」から「90.0%以上」に特定し、かつ、色度を「5EBC以上」から「5EBC以上80.0EBC以下」に特定し、さらに「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、本件特許明細書【0010】、【0016】、【0028】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項2を引用する請求項3についても同様である。
(3)訂正事項3-1及び3-2に係る請求項4の訂正について
訂正事項3-1に係る請求項4の訂正は、請求項4が請求項1~3のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項3の記載を引用する部分を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3-2に係る請求項4の訂正は、請求項4が請求項1~3のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1に対する引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正を含む。
そして、訂正事項3-1及び3-2に係る請求項4の訂正は、請求項4のビールテイスト飲料において、外観発酵度を「70.0%以上」から「90.0%以上」に特定し、かつ、アルコール度数を「12.0(v/v)%以上」から「12.5(v/v)%以上」に特定し、さらに、麦芽比率を「50質量%以上」から「55質量%以上」に特定し、そして、「苦味価が80.0BUs以下」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
当該訂正事項3-1及び3-2に係る請求項4の訂正は、本件特許明細書【0010】、【0013】、【0024】、【0028】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項3-1及び3-2に係る請求項4の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4-1及び4-2に係る請求項5の訂正について
訂正事項4-1に係る請求項5の訂正は、請求項5が請求項1~4のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項3及び請求項4の記載を引用する部分を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4-2に係る請求項5の訂正は、請求項5が請求項1~4のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項1に対する引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正を含む。
そして、訂正事項4-1及び4-2に係る請求項5の訂正は、請求項5の発酵ビールテイスト飲料において、外観発酵度を「70.0%以上」から「97.0%以上」に特定し、かつ、アルコール度数を「12.0(v/v)%以上」から「12.5(v/v)%以上」に特定し、さらに「苦味価が80.0BUs以下」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
当該訂正事項4-1及び4-2に係る請求項5の訂正は、本件特許明細書【0010】、【0013】、【0028】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項4-1及び4-2に係る請求項5の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項5に係る請求項6の訂正について
訂正事項5に係る請求項6の訂正は、請求項6のビールテイスト飲料の製造方法において、外観発酵度を「70.0%以上」から「90.0%以上」に特定し、かつ、アルコール度数を「12.0(v/v)%以上」から「12.5(v/v)%以上」に特定し、さらに「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
当該訂正事項5に係る請求項6の訂正は、本件特許明細書【0010】、【0013】、【0028】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項5に係る請求項6の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(6)訂正事項6に係る請求項7の訂正について
訂正事項6に係る請求項7の訂正は、請求項7のビールテイスト飲料の香味改善方法において、外観発酵度を「70.0%以上」から「90.0%以上」に特定し、かつ、アルコール度数を「12.0(v/v)%以上」から「12.5(v/v)%以上」に特定し、さらに「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
当該訂正事項6に係る請求項7の訂正は、本件特許明細書【0010】、【0013】、【0028】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項6に係る請求項7の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(7)訂正事項3-3に係る請求項8の訂正について
訂正事項3-3に係る請求項8の訂正は、請求項4が請求項1~3のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項2に対する引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、新たに請求項8とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正を含む。
そして、訂正事項3-3に係る請求項8の訂正は、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項4のビールテイスト飲料において、外観発酵度を「70.0%以上」から「90.0%以上」に特定し、麦芽比率を「50質量%以上」から「55質量%以上」に特定し、色度を「5EBC以上」から「5EBC以上80.0EBC以下」に特定し、さらに「苦味価が80.0BUs以下」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3-3に係る請求項8の訂正は、本件特許明細書【0010】、【0016】、【0024】、【0028】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項3-3に係る請求項8の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(8)訂正事項4-3に係る請求項9の訂正について
訂正事項4-3に係る請求項9の訂正は、請求項5が請求項1~4のいずれかの記載を引用する記載であるところ、請求項2に対する引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、新たに請求項9とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正を含む。
そして、訂正事項4-3に係る請求項9の訂正は、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項5の発酵ビールテイスト飲料において、外観発酵度を「70.0%以上」から「97.0%以上」に特定し、色度を「5EBC以上」から「5EBC以上80.0EBC以下」に特定し、さらに「苦味価が80.0BUs以下」に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4-3に係る請求項9の訂正は、本件特許明細書【0010】、【0016】、【0028】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項4-3に係る請求項9の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正前の請求項1ないし7に対して特許異議申立てがされているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
さらに、特許権者は令和 6年 4月24日提出の訂正請求書(第17頁)において、訂正後の請求項2、4、5、8、9について、訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされているが、訂正後の請求項3は、訂正後の請求項1又は2を引用するものであり、訂正後の請求項〔1ないし3〕は一群の請求項であるから、訂正後の請求項2については、別途訂正をすることは認められない。
したがって、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、4、5、6、7、8及び9について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、および、苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。
【請求項2】
オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.0(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、色度が5EBC以上80.0EBC以下である、および、苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。
【請求項3】
麦芽比率が40質量%以上である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】
オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が55質量%以上66質量%以下である、および、苦味価が80.0BUs以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。
【請求項5】
オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が97.0%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、および、苦味価が80.0BUs以下である、発酵ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。
【請求項6】
外観発酵度が90.0%以上になるように発酵させる発酵工程を有する、オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満、麦芽比率が66質量%以下、および、苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下のビールテイスト飲料の製造方法(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法を除く)。
【請求項7】
オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満、外観発酵度が90.0%以上、および、苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下となるように調整する工程を有する、麦芽比率が66質量%以下のビールテイスト飲料の香味改善方法(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の香味改善方法を除く)。
【請求項8】
オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.0(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が55質量%以上66質量%以下である、色度が5EBC以上80.0EBC以下である、および、苦味価が80.0BUs以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。
【請求項9】
オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が97.0%以上、アルコール度数が12.0(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、色度が5EBC以上80.0EBC以下である、および、苦味価が80.0BUs以下である、発酵ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由について
令和 5年 7月25日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第5号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由6(甲第6号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 証拠方法
甲第1号証:Brewer's Friendホームページ、2016年12月23日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/409914/smoked-braggot
甲第2号証:Brewer's Friendホームページ、2017年4月24日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/484111/stout-braggot-2
甲第3号証:Brewer's Friendホームページ、2020年3月8日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/959978/awesome-recipe
甲第4号証:Brewer's Friendホームページ、2020年6月21日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/1011668/pb-imp-porter
甲第5号証:Beer Smith LLCホームページ、web archive 2016年12月6日、URL:https://web.archive.org/web/20161206033412/https://beersmithrecipes.com/viewrecipe/896643/rochefort-10-clone
甲第6号証:American Homebrewers Associationホームページ、web archive 2021年7月26日、URL:https://web.archive.org/web/20210726131141/https://www.homebrewersassociation.org/homebrew-recipe/dogfish-head-120-minute-ipa/
甲第7号証:データのじかんホームページ、2018年7月30日、URL:https://data.wingarc.com/beer-ibu-srm-ebc-10796
甲第8号証:J.Inst.Brew.,2009年、115(4)、pp.318-327
甲第9号証:TECHNOLOGY BREWING AND MALTING,発行者VLB Berlin、1996年、pp.254-281
甲第10号証:Brewer's Friendホームページ、2015年3月31日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/230557/honey-bee-braggot
甲第11号証:Brewer's Friendホームページ、2017年7月17日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/516661/german-braggot
甲第12号証:Brewer's Friendホームページ、2019年1月23日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/202516/rocket-fuel-rye-iiipa
甲第13号証:Brewer's Friendホームページ、2020年2月6日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/913305/super-barleywine
なお、甲第10号証ないし甲第13号証は、令和 6年 2月 1日提出の意見書に添付されたものである。
また、証拠の表記は特許異議申立書及び令和 6年 2月 1日提出の意見書の記載におおむね従った。
以下、順に「甲1」等という。
第5 取消理由<決定の予告>の概要
当審が令和 6年 2月29日付けで特許権者に通した取消理由<決定の予告>(以下、「取消理由<決定の予告>」という。)の概要は次のとおりである。
1 取消理由7(甲10に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲10に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲10に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 取消理由8(甲11に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲11に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲11に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 取消理由9(甲12に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲12に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲12に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 取消理由10(甲13に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲13に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲13に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 取消理由<決定の予告>についての当審の判断
当審は、以下に述べるように、取消理由7ないし10は、いずれも理由がないと判断する。
以下、順に検討する。
1 取消理由7(甲10に基づく新規性・進歩性)について
(1)主な証拠の記載事項等
ア 甲10の記載事項
甲10には、ビールの分析値に関して次の事項が記載されている。なお、甲10は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
[図:0001414172000001.jpg]
イ 甲10に記載された発明
甲10には次の発明(以下、「甲10発明」、「甲10製法発明」、「甲10方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲10発明>
「発酵原料として、ペール2―ロウ 8ポンド、蜂蜜 8ポンド、ハニーモルト 1ポンド、カラフォーム 0.5ポンドを使用し、オリジナルエキス(比重)が1.116、外観エキス(比重)が1.004、アルコール度数が14.69v/v%、苦味価(IBU)が32.92、色度(SRM)が7.85であるビール。」
<甲10製法発明>
「甲10発明を製造する方法。」
<甲10方法発明>
「甲10発明を調整する方法」
ウ 甲7の記載事項
甲7にはビールの色合いについて次の事項が記載されている。
「
[図:0001414172000002.jpg]
」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲10発明とを対比する。
甲10発明における「オリジナルエキス(比重)が1.116」は、当業者に汎用されている自動変換ツール(https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/)を使用して、比重から質量%に変換すると、27.2144質量%である。
したがって、甲10発明における「オリジナルエキス(比重)が1.116」は、本件特許発明1における「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上」に相当する。
甲10発明における「アルコール度数が14.69v/v%」、「ビール」は、それぞれ、本件特許発明1における「アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
甲10発明の「外観エキス(比重)が1.004」は、当業者に汎用されている自動変換ツール(https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/)を使用して、比重から質量%に変換すると、1.0278質量%である。
本件特許明細書【0011】の記載の式(1)にしたがい、甲10発明の外観発酵度を計算すると、
式(1):外観発酵度AA(%)=100×(オリジナルエキスP-外観エキスEs)/オリジナルエキスP=100×(27.2144質量%―1.0278質量%)/27.2144質量%=96.2%である。
よって、甲10発明は本件特許発明1の「外観発酵度が90.0%以上」との特定を満たす。
また、甲10発明の麦芽比率について計算すると、麦芽比率は、水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合であるので、甲10発明の「発酵原料として、ペール2―ロウ 8ポンド、蜂蜜 8ポンド、ハニーモルト 1ポンド、カラフォーム 0.5ポンドを使用」から麦芽比率を計算すると、
麦芽重量=ペール2―ロウ 8ポンド+ハニーモルト 1ポンド+カラフォーム 0.5ポンド=9.5ポンド
水及びホップ以外の原料の重量=ペール2―ロウ 8ポンド+蜂蜜 8ポンド+ハニーモルト 1ポンド+カラフォーム 0.5ポンド=17.5ポンド
麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=9.5ポンド/17.5ポンド×100=54.3質量%である。
よって、甲10発明の「発酵原料として、ペール2―ロウ 8ポンド、蜂蜜 8ポンド、ハニーモルト 1ポンド、カラフォーム 0.5ポンドを使用」は、本件特許発明1における「麦芽比率が66質量%以下」に相当する。
そして、甲10発明は、本件特許発明1における「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明1と甲10発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」
<相違点10-1>
本件特許発明1は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲10発明はそのような特定がない点。
相違点10-1について検討する。
甲10発明のビールテイスト飲料は苦味価が32.92(IBU)であるから、相違点10-1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲10発明ではない。
そして、甲10及び他の全ての証拠をみても、甲10発明において、相違点10-1に係る苦味価を34.0BUs以上80.0BUs以下に調整する動機となる記載はない。
よって、本件特許発明1は甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲10発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
また、甲7の記載事項から、ビールの色度(EBC)=1.97×色度(SRM)であり、上記関係式から甲10発明の色度(EBC)を計算すると、甲10発明の「色度(SRM)が7.85」は、色度(EBC)では15.4645である。
したがって、甲10発明の「色度(SRM)が7.85」は、本件特許発明2における「色度が5EBC以上80.0EBC以下」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲10発明との相違点は次のとおりである。
<相違点10-2>
本件特許発明2は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲10発明はそのような特定がない点。
相違点10-2は上記アの相違点10-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明2は甲10発明ではなく、甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1又は請求項2を引用して特定するものであって、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3は甲10発明ではなく、甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲10発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明4と甲10発明との相違点は次のとおりである。
<相違点10-3>
本件特許発明4は、「麦芽比率が55質量%以上」との特定を有するのに対し、甲10発明はそのような特定がない点。
相違点10-3について検討する。
甲10発明のビールテイスト飲料における麦芽比率は、上記アで検討したとおり、54.3質量%である。したがって、相違点10-3は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明4は甲10発明ではない。
そして、甲10及び他の全ての証拠をみても、甲10発明において、相違点10-3に係る麦芽比率を55質量%以上に調整する動機となる記載はない。
よって、本件特許発明4は甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲10発明とを対比すると、上記ア、イ、エと同様の対応関係を有する。
また、甲10発明の「ビール」は、本件特許発明5における「発酵ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明5と甲10発明との相違点は次のとおりである。
<相違点10-4>
本件特許発明5は「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲10発明はそのような特定がない点。
相違点10-4について検討する。
甲10発明の外観発酵度は、上記アで検討したとおり、96.2%である。よって、相違点10-4は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明5は甲10発明ではない。
そして、甲10及び他の全ての証拠をみても、甲10発明において、相違点10-4に係る外観発酵度を97.0%以上に調整する動機となる記載はない。
よって、本件特許発明5は甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲10製法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
また、甲10製法発明は、甲10発明のビールを製造する方法であるから、本件特許発明6の「発酵させる発酵工程を有する」「ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。
また、甲10製法発明は本件特許発明6の「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明6と甲10製法発明との相違点は、次のとおりである。
<相違点10-5>
本件特許発明6は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対して、甲10製法発明はそのような特定がない点。
相違点10-5は、上記アの相違点10-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明6は甲10製法発明ではなく、甲10製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲10方法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そして、甲10方法発明においては、甲10方法発明によらない方法よりも、ビールテイスト飲料の香味が改善されていることは明らかであるから、甲10方法発明は、本件特許発明7における「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明7と甲10方法発明との相違点は次のとおりである。
<相違点10-6>
本件特許発明7は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲10方法発明はそのような特定がない点。
相違点10-6は、上記アの相違点10-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明7は甲10方法発明でなく、甲10方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲10発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲10発明との相違点は次のとおりである。
<相違点10-7>
本件特許発明8は、「麦芽比率が55質量%以上」との特定を有するのに対して、甲10発明はそのような特定がない点。
相違点10-7は、上記エの相違点10-3と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明8は甲10発明でなく、甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲10発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲10発明との相違点は次のとおりである。
<相違点10-8>
本件特許発明9は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対して、甲10発明はそのような特定がない点。
相違点10-8は、上記オの相違点10-4と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明9は甲10発明でなく、甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由7についてのまとめ
本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由7によって本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由8(甲11に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲11の記載事項等
ア 甲11の記載事項
甲11には、ビールの分析値に関して次の事項が記載されている。なお、甲1は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
「
[図:0001414172000003.jpg]
」
イ 甲11に記載された発明
甲11には次の発明(以下、「甲11発明」、「甲11製法発明」、「甲11方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲11発明>
「発酵原料として、蜂蜜 7ポンド、液体モルトエキストラクト-ミュンヘン 8ポンドを使用し、オリジナルエキス(比重)が1.104、外観エキス(比重)が1.005、アルコール度数が12.99v/v%、苦味価(IBU)が12.35、色度(SRM)が9.2であるビール。」
<甲11製法発明>
「甲11発明を製造する方法。」
<甲11方法発明>
「甲11発明を調整する方法」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲11発明とを対比する。
甲11発明における「オリジナルエキス(比重)が1.104」は、当業者に汎用されている自動変換ツール(https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/)を使用して、比重から質量%に変換すると、24.6388質量%である。したがって、甲11発明における「オリジナルエキス(比重)が1.104」は、本件特許発明1における「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上」に相当する。
甲11発明における「アルコール度数が12.99v/v%」、「ビール」は、それぞれ、本件特許発明1における「アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
甲11発明の「外観エキス(比重)が1.005」は、当業者に汎用されている自動変換ツール(https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/)を使用して、比重から質量%に変換すると、1.2844質量%である。
本件特許明細書【0011】の記載の式(1)にしたがい、甲11発明の外観発酵度を計算すると、
式(1):外観発酵度AA(%)=100×(オリジナルエキスP-外観エキスEs)/オリジナルエキスP=100×(24.6388質量%―1.2844質量%)/24.6388質量%=94.8%である。よって、甲11発明は本件特許発明1の「外観発酵度が90.0%以上」との特定を満たす。
また、甲11発明の麦芽比率について計算すると、麦芽比率は、水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合であるので、甲11発明の「発酵原料として、蜂蜜 7ポンド、液体モルトエキストラクト-ミュンヘン 8ポンドを使用」から麦芽比率を計算すると、
麦芽重量=液体モルトエキストラクト-ミュンヘン 8ポンド=8ポンド
水及びホップ以外の原料の重量=蜂蜜 7ポンド+液体モルトエキストラクト-ミュンヘン 8ポンド=15ポンド
麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=8ポンド/15ポンド×100=53.3質量%である。
よって、甲11発明の「蜂蜜 7ポンド、液体モルトエキストラクト-ミュンヘン 8ポンド」は、本件特許発明1における「麦芽比率が66質量%以下」に相当する。
そして、甲11発明は、本件特許発明1における「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明1と甲11発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「オリジナルエキスが20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率66質量%以下であるビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」
<相違点11-1>
本件特許発明1は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲11発明はそのような特定がない点。
相違点11-1について検討する。
甲11発明のビールテイスト飲料は苦味価が12.35(IBU)であるから、相違点11-1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲11発明ではない。
そして、甲11及び他の全ての証拠をみても、甲11発明において、相違点11-1に係る苦味価を34.0BUs以上80.0BUs以下に調整する動機となる記載はない。
よって、本件特許発明1は甲11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲11発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
甲7の記載事項から、ビールの色度(EBC)=1.97×色度(SRM)である。
上記関係式から計算すると、甲11発明の「色度(SRM)が9.2」は、色度(EBC)では18.124である。
したがって、甲11発明の「色度(SRM)が9.2」は、本件特許発明2における「色度が5EBC以上80.0EBC以下」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲11発明との相違点は次のとおりである。
<相違点11-2>
本件特許発明2は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲11発明はそのような特定がない点。
相違点11-2は上記アの相違点11-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明2は甲11発明ではなく、甲11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1又は請求項2を引用して特定するものであって、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3は甲11発明ではなく、甲11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲11発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
上記アで検討したとおり、甲11発明の麦芽比率は53.3質量%であるから、本件特許発明4における「麦芽比率が」「60質量%以下」に相当する。
そうすると、本件特許発明4と甲11発明との相違点は次のとおりである。
<相違点11-3>
本件特許発明4は、「麦芽比率が55質量%以上」との特定を有するのに対し、甲11発明はそのような特定がない点。
相違点11-3について検討する。
甲11発明のビールテイスト飲料における麦芽比率は、上記アで検討したとおり、53.3質量%である。よって、相違点11-3は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明4は甲11発明ではない。
そして、甲11及び他の全ての証拠をみても、甲11発明において、相違点11-3に係る麦芽比率を55質量%以下に調整する動機となる記載はない。
よって、本件特許発明4は甲11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲11発明とを対比すると、上記ア、イ、エと同様の対応関係を有する。
甲11発明における「ビール」は、本件特許発明5における「発酵ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明5と甲11発明との相違点は次のとおりである。
<相違点11-4>
本件特許発明5は「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲11発明はそのような特定がない点。
相違点11-4について検討する。
甲11発明の外観発酵度は、上記アで検討したとおり、94.8%である。よって、相違点11-4は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明5は甲11発明ではない。
そして、甲11及び他の全ての証拠をみても、甲11発明において、相違点11-4に係る外観発酵度を97.0%以上に調整する動機となる記載はない。
よって、本件特許発明5は甲11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲11製法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
甲11製法発明は、甲11発明のビールを製造する方法であるから、本件特許発明6の「発酵させる発酵工程を有する」「ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。
また、甲11製法発明は本件特許発明6の「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明6と甲11製法発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<相違点11-5>
本件特許発明6は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対して、甲11製法発明はそのような特定がない点。
相違点11-5は、上記アの相違点11-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明6は甲11製法発明ではなく、甲11製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲11方法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そして、甲11方法発明においては、甲11方法発明によらない方法よりも、ビールテイスト飲料の香味が改善されていることは明らかであるから、甲11方法発明は、本件特許発明7における「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明7と甲11方法発明との相違点は次のとおりである。
<相違点11-6>
本件特許発明7は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲11方法発明はそのような特定がない点。
相違点11-6は、上記アの相違点11-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明7は甲11方法発明でなく、甲11方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲11発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲11発明との相違点は次のとおりである。
<相違点11-7>
本件特許発明8は、「麦芽比率が55質量%以上」との特定を有するのに対して、甲11発明はそのような特定がない点。
相違点11-7は、上記エの相違点11-3と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明8は甲11発明でなく、甲11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲11発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲11発明との相違点は次のとおりである。
<相違点11-8>
本件特許発明9は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対して、甲11発明はそのような特定がない点。
相違点11-8は、上記オの相違点11-4と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明9は甲11発明でなく、甲11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由8についてのまとめ
本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではなく、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもないから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由8によって本件特許の請求項1ないし9に係る特許は取り消すことはできない。
3 取消理由9(甲12に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲12の記載事項等
ア 甲12の記載事項
甲12には、ビールの分析値に関して次の事項が記載されている。なお、甲12は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
「
[図:0001414172000004.jpg]
[図:0001414172000005.jpg]
」
イ 甲12に記載された発明
甲12には次の発明(以下、「甲12発明」、「甲12製法発明」、「甲12方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲12発明>
「発酵原料として、ペール2-ロウ 18.5ポンド、ライ 18.5ポンド、ミュンヘン-ダーク 5.5ポンド、粉砕大麦 3ポンド、甘藷糖 21.5ポンドを使用し、オリジナルエキス(比重)が1.127、外観エキス(比重)が1.006、アルコール度数が15.8v/v%、苦味価(IBU)が124.26、色度(SRM)が8.5であるビール。」
<甲12製法発明>
「甲12発明を製造する方法。」
<甲12方法発明>
「甲12発明を調整する方法」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲12発明とを対比する。
甲12発明における「オリジナルエキス(比重)が1.127」は、当業者に汎用されている自動変換ツール(https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/)を使用して、比重から質量%に変換すると、29.5310質量%である。したがって、甲12発明における「オリジナルエキス(比重)が1.127」は、本件特許発明1における「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上」に相当する。
甲12発明における「アルコール度数が15.8v/v%」、「ビール」は、それぞれ、本件特許発明1における「アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
甲12発明の「外観エキス(比重)が1.006」は、当業者に汎用されている自動変換ツール(https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/)を使用して、比重から質量%に変換すると、1.5405質量%である。
本件特許明細書【0011】の記載の式(1)にしたがい、甲12発明の外観発酵度を計算すると、
式(1):外観発酵度AA(%)=100×(オリジナルエキスP-外観エキスEs)/オリジナルエキスP=100×(29.5310質量%―1.5405質量%)/29.5310質量%=94.8%である。よって、甲12発明は本件特許発明1の「外観発酵度が90.0%以上」との特定を満たす。
また、甲12発明の麦芽比率について計算すると、麦芽比率は、水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合であるので、甲12発明の「発酵原料として、ペール2-ロウ 18.5ポンド、ライ 18.5ポンド、ミュンヘン-ダーク 5.5ポンド、粉砕大麦 3ポンド、甘藷糖 21.5ポンドを使用」から麦芽比率を計算すると、
麦芽重量=ペール2-ロウ 18.5ポンド+ライ 18.5ポンド+ミュンヘン-ダーク 5.5ポンド=42.5ポンド
水及びホップ以外の原料の重量=ペール2-ロウ 18.5ポンド+ライ 18.5ポンド+ミュンヘン-ダーク 5.5ポンド+粉砕大麦 3ポンド+甘藷糖 21.5ポンド=67ポンド
麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=42.5ポンド/67ポンド×100=63.4質量%である。
よって、甲12発明の「発酵原料として、ペール2-ロウ 18.5ポンド、ライ 18.5ポンド、ミュンヘン-ダーク 5.5ポンド、粉砕大麦 3ポンド、甘藷糖 21.5ポンド」は、本件特許発明1における「麦芽比率が66質量%以下」に相当する。
そして、甲12発明は、本件特許発明1における「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明1と甲12発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」
<相違点12-1>
本件特許発明1は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲12発明はそのような特定がない点。
相違点12-1について検討する。
甲12発明のビールテイスト飲料は「苦味価(IBU)が124.26」であるから、相違点12-1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲12発明ではない。
そして、甲12及び他の全ての証拠をみても、甲12発明において、相違点12-1に係る苦味価を34.0BUs以上80.0BUs以下に調整する動機となる記載はない。
よって、本件特許発明1は甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲12発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
甲7の記載事項から、ビールの色度(EBC)=1.97×色度(SRM)である。
上記関係式から計算すると、甲12発明の「色度(SRM)が8.5」は、色度(EBC)では16.745である。
したがって、甲12発明の「色度(SRM)が8.5」は、本件特許発明2における「色度が5EBC以上80.0EBC以下」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲12発明との相違点は次のとおりである。
<相違点12-2>
本件特許発明2は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲12発明はそのような特定がない点。
相違点12-2は上記アの相違点12-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明2は甲12発明ではなく、甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1又は請求項2を引用して特定するものであって、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3は甲12発明ではなく、甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲12発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
また、甲12発明のビールテイスト飲料における麦芽比率は、上記アで検討したとおり、63.4質量%であるから、本件特許発明4における「麦芽比率が55質量%以上66質量%以下」との特定事項を満たす。
そうすると、本件特許発明4と甲12発明との相違点は次のとおりである。
<相違点12-3>
本件特許発明4は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲12発明はそのような特定がない点。
相違点12-3は、上記アの相違点12-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明4は甲12発明ではなく、甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲12発明とを対比すると、上記ア、イ、エと同様の対応関係を有する。
甲12発明における「ビール」は、本件特許発明5における「発酵ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明5と甲12発明との相違点は次のとおりである。
<相違点12-4>
本件特許発明5は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲12発明はそのような特定がない点。
<相違点12-5>
本件特許発明5は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲12発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点12-5について検討する。
相違点12-5は、上記アの相違点12-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明5は甲12発明ではなく、甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲12製法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
また、甲12製法発明は、甲12発明のビールを製造する方法であるから、本件特許発明6の「発酵させる発酵工程を有する」「ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。
また、甲12製法発明は本件特許発明6の「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明6と甲12製法発明との相違点は次のとおりである。
<相違点12-6>
本件特許発明6は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対して、甲12製法発明はそのような特定がない点。
相違点12-6は、上記アの相違点12-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明6は甲12製法発明ではなく、甲12製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲12方法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そして、甲12方法発明においては、甲12方法発明によらない方法よりも、ビールテイスト飲料の香味が改善されていることは明らかであるから、甲12方法発明は、本件特許発明7における「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明7と甲12方法発明との相違点は次のとおりである。
<相違点12-7>
本件特許発明7は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲12方法発明はそのような特定がない点。
相違点12-7は、上記アの相違点12-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明7は甲12方法発明でなく、甲12方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲12発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲12発明との相違点は次のとおりである。
<相違点12-8>
本件特許発明8は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対して、甲12発明はそのような特定がない点。
相違点12-8は、上記アの相違点12-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明8は甲12発明でなく、甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲12発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲12発明との相違点は次のとおりである。
<相違点12-9>
本件特許発明9は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対して、甲12発明はそのような特定がない点。
<相違点12-10>
本件特許発明9は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対して、甲12発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点12-10について検討する。
相違点12-10は、上記アの相違点12-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明9は甲12発明でなく、甲12発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由9についてのまとめ
本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当して特許を受けることができないものではなく、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもないから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由9によって本件特許の請求項1ないし9に係る特許は取り消すことはできない。
4 取消理由10(甲13に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲13の記載事項等
ア 甲13の記載事項
甲13には、ビールの分析値に関して次の事項が記載されている。なお、甲13は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
「
[図:0001414172000006.jpg]
[図:0001414172000007.jpg]
」
イ 甲13に記載された発明
甲13には次の発明(以下、「甲13発明」、「甲13製法発明」、「甲13方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲13発明>
「発酵原料として、ペール2-ロウ 17ポンド、ビスケット 1ポンド、カラピルス(デキストリンモルト) 1ポンド、カラメル/クリスタル 120L 1ポンド、クリスタル 70L 1ポンド、スモークドモルト 0.5ポンド、メープルシロップ 2ポンド、コーヒー-シュガー-デキストロース 6ポンド、甘藷糖 4ポンドを使用し、オリジナルエキス(比重)が1.161、外観エキス(比重)が1.011、アルコール度数が19.65v/v%、苦味価(IBU)が111.8、色度(SRM)が19.32であるビール。」
<甲13製法発明>
「甲13発明を製造する方法。」
<甲13方法発明>
「甲13発明を調整する方法」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲13発明とを対比する。
甲13発明における「オリジナルエキス(比重)が1.161」は、当業者に汎用されている自動変換ツール(https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/)を使用して、比重から質量%に変換すると、36.4353質量%である。したがって、甲13発明における「オリジナルエキス(比重)が1.161」は、本件特許発明1における「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上」に相当する。
甲13発明における「アルコール度数が19.65v/v%」、「ビール」は、それぞれ、本件特許発明1における「アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
甲13発明の「外観エキス(比重)が1.011」は、当業者に汎用されている自動変換ツール(https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/)を使用して、比重から質量%に変換すると、2.8147質量%である。
本件特許明細書【0011】の記載の式(1)にしたがい、甲13発明の外観発酵度を計算すると、
式(1):外観発酵度AA(%)=100×(オリジナルエキスP-外観エキスEs)/オリジナルエキスP=100×(36.4353質量%―2.8147質量%)/36.4353質量%=92.3%である。よって、甲13発明は本件特許発明1の「外観発酵度が90.0%以上」との特定を満たす。
また、甲13発明の麦芽比率について計算すると、麦芽比率は、水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合であるので、甲13発明の「発酵原料として、ペール2-ロウ 17ポンド、ビスケット 1ポンド、カラピルス(デキストリンモルト) 1ポンド、カラメル/クリスタル 120L 1ポンド、クリスタル 70L 1ポンド、スモークドモルト 0.5ポンド、メープルシロップ 2ポンド、コーヒー-シュガー-デキストロース 6ポンド、甘藷糖 4ポンドを使用」から麦芽比率を計算すると、
麦芽重量=ペール2-ロウ 17ポンド+ビスケット 1ポンド+カラピルス(デキストリンモルト) 1ポンド+カラメル/クリスタル 120L 1ポンド+クリスタル 70L 1ポンド+スモークドモルト 0.5ポンド=21.5ポンド
水及びホップ以外の原料の重量=ペール2-ロウ 17ポンド+ビスケット 1ポンド+カラピルス(デキストリンモルト) 1ポンド+カラメル/クリスタル 120L 1ポンド+クリスタル 70L 1ポンド+スモークドモルト 0.5ポンド+メープルシロップ 2ポンド+コーヒー-シュガー-デキストロース 6ポンド+甘藷糖 4ポンド=33.5ポンド
麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=21.5ポンド/33.5ポンド×100=64.2質量%である。
よって、甲13発明の「発酵原料として、ペール2-ロウ 17ポンド、ビスケット 1ポンド、カラピルス(デキストリンモルト) 1ポンド、カラメル/クリスタル 120L 1ポンド、クリスタル 70L 1ポンド、スモークドモルト 0.5ポンド、メープルシロップ 2ポンド、コーヒー-シュガー-デキストロース 6ポンド、甘藷糖 4ポンド」は、本件特許発明1における「麦芽比率が66質量%以下」に相当する。
そして、甲13発明は、本件特許発明1における「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明1と甲13発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」
<相違点13-1>
本件特許発明1は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲13発明はそのような特定がない点。
相違点13-1について検討する。
甲13発明のビールテイスト飲料は苦味価が111.8(IBU)であるから、相違点13-1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲13発明ではない。
そして、甲13及び他の全ての証拠をみても、甲13発明において、相違点13-1に係る苦味価を34.0BUs以上80.0BUs以下に調整する動機となる記載はない。
よって、本件特許発明1は甲13発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲13発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
甲7の記載事項から、ビールの色度(EBC)=1.97×色度(SRM)である。
上記関係式から計算すると、甲13発明の「色度(SRM)が19.32」は、色度(EBC)では38.06である。
したがって、甲13発明の「色度(SRM)が19.32」は、本件特許発明2における「色度が5EBC以上80.0EBC以下」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲13発明との相違点は次のとおりである。
<相違点13-2>
本件特許発明2は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲13発明はそのような特定がない点。
相違点13-2は上記アの相違点13-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明2は甲13発明ではなく、甲13発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1又は請求項2を引用して特定するものであって、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3は甲13発明ではなく、甲13発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲13発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
上記アで検討したとおり、甲13発明の麦芽比率は64.2質量%であるから、本件特許発明4における「麦芽比率が55質量%以上60質量%以下」に相当する。
そうすると、本件特許発明4と甲13発明との相違点は次のとおりである。
<相違点13-3>
本件特許発明4は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲13発明はそのような特定がない点。
相違点13-3は上記アの相違点13-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明4は甲13発明ではなく、甲13発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲13発明とを対比すると、上記ア、イ、エと同様の対応関係を有する。
甲13発明における「ビール」は、本件特許発明5における「発酵ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明5と甲13発明との相違点は次のとおりである。
<相違点13-4>
本件特許発明5は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲13発明はそのような特定がない点。
<相違点13-5>
本件特許発明5は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲13発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点13-5について検討する。
相違点13-5は上記アの相違点13-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明5は甲13発明ではなく、甲13発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲13製法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そして、甲13製法発明は、甲13発明のビールを製造する方法であるから、本件特許発明6の「発酵させる発酵工程を有する」「ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。
また、甲13製法発明は本件特許発明6の「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明6は甲13製法発明との相違点は次のとおりである。
<相違点13-6>
本件特許発明6は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対して、甲13製法発明はそのような特定がない点。
相違点13-6は、上記アの相違点13-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明6は甲13製法発明ではなく、甲13製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲13方法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そして、甲13方法発明においては、甲13方法発明によらない方法よりも、ビールテイスト飲料の香味が改善されていることは明らかであるから、甲13方法発明は、本件特許発明7における「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明7と甲13方法発明との相違点は次のとおりである。
<相違点13-7>
本件特許発明7は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲13方法発明はそのような特定がない点。
相違点13-7は、上記アの相違点13-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明7は甲13方法発明でなく、甲13方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲13発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲13発明との相違点は次のとおりである。
<相違点13-8>
本件特許発明8は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対して、甲13発明はそのような特定がない点。
相違点13-8は、上記アの相違点13-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明8は甲13発明でなく、甲13発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲13発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲13発明との相違点は次のとおりである。
<相違点13-9>
本件特許発明9は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対して、甲13発明はそのような特定がない点。
<相違点13-10>
本件特許発明9は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対して、甲13発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点13-10について検討する。
相違点13-10は、上記アの相違点13-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明9は甲13発明でなく、甲13発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由10についてのまとめ
本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものでなく、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもないから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由10によって本件特許の請求項1ないし9に係る特許は取り消すことはできない。
第7 取消理由<決定の予告>に採用しなかった特許異議申立書に記載した異議申立理由について
取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した異議申立理由は、
・申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
・申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)
・申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)
・申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)
・申立理由5(甲5に基づく新規性・進歩性)
・申立理由6(甲6に基づく新規性・進歩性)である。
以下、順に検討する。
1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲1の記載事項等
ア 甲1の記載事項
甲1には、ビールの分析値に関して次の事項が記載されている。なお、甲1は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
「
[図:0001414172000008.jpg]
」
(第1頁第6~12行)
「
[図:0001414172000009.jpg]
」
(第2頁第3~7行)
イ 甲1に記載された発明
甲1には次の発明(以下、「甲1発明」、「甲1製法発明」、「甲1方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「発酵原料として、スモークモルト2kg、蜂蜜2kg、カラアロマ(モルト)0.1kg、カラボヘミアン(モルト)0.2kgを使用し、オリジナルエキス濃度が34.0質量%、外観エキス濃度が6.3質量%、アルコール度数が16.3v/v%、色度(SRM)が18.62、苦味価(IBU)が46.85であるビール。」
<甲1製法発明>
「甲1発明を製造する方法。」
<甲1方法発明>
「甲1発明を調整する方法」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「オリジナルエキス濃度が34.0質量%」、「アルコール度数が16.3v/v%」、「ビール」は、それぞれ、本件特許発明1における「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上」、「アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲1発明の麦芽比率について計算すると、麦芽比率は、水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合であるので、甲1発明の「発酵原料として、スモークモルト2kg、蜂蜜2kg、カラアロマ(モルト)0.1kg、カラボヘミアン(モルト)0.2kgを使用」から計算すると、
麦芽重量=スモークモルト2kg+カラアロマ(モルト)0.1kg+カラボヘミアン(モルト)0.2kg=2.3kg
水及びホップ以外の原料の重量=スモークモルト2kg+蜂蜜2kg+カラアロマ(モルト)0.1kg+カラボヘミアン(モルト)0.2kg=4.3kg
麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=2.3kg/4.3kg×100=53.5質量%である。
よって、甲1発明の「発酵原料として、スモークモルト2kg、蜂蜜2kg、カラアロマ(モルト)0.1kg、カラボヘミアン(モルト)0.2kgを使用」は、本件特許発明1における「麦芽比率が66質量%以下」に相当する。
また、甲1発明の「苦味価(IBU)が46.85」は、本件特許発明1における「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」に相当する。
さらに、甲1発明は「オリジナルエキス濃度が34.0質量%」であるから、本件特許発明1における「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、および、苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」
<相違点1-1>
本件特許発明1は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲1発明はそのような特定を有さない点。
相違点1-1について検討する。
本件特許明細書【0011】の記載の式(1)にしたがい、甲1発明の外観発酵度を計算すると、
式(1):外観発酵度AA(%)=100×(オリジナルエキスP-外観エキスEs)/オリジナルエキスP=100×(34.0質量%―6.3質量%)/34.0質量%=81.4%となる。
よって、相違点1-1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲1発明ではない。
そして、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明において、相違点1-1に係る外観発酵度を90.0%以上とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
甲7の記載事項から、ビールの色度(EBC)=1.97×色度(SRM)である。
上記関係式から甲1発明の色度(EBC)を計算すると、甲1発明の「色度(SRM)が18.62」は、色度(EBC)では36.6814である。
そうすると、甲1発明の「色度(SRM)が18.62」は、本件特許発明2における「色度が5EBC以上80.0EBC以下」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲1発明との相違点は次のとおりである。
<相違点1-2>
本件特許発明2は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
相違点1-2は上記アの相違点1-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明2は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1又は請求項2を引用して特定するものであって、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3は甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
また、甲1発明の麦芽比率は上記アから53.5質量であるから、本件特許発明4における「麦芽比率が」「66質量%以下」との特定事項を満たす。
そうすると、本件特許発明4と甲1発明との相違点は次のとおりである。
<相違点1-3>
本件特許発明4は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
<相違点1-4>
本件特許発明4は、麦芽比率が「55質量%以上」との特定を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
相違点1-3は、上記アの相違点1-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明4は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲1発明とを対比すると、上記ア、イ、エと同様の対応関係を有する。
甲1発明における「ビール」は、本件特許発明5における「発酵ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明5と甲1発明との相違点は次のとおりである。
<相違点1-5>
本件特許発明5は「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
相違点1-5について検討する。
上記アにおいて検討したとおり、甲1発明の外観発酵度は81.4%であるから、相違点1-5は実質的な相違点である。
そして、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明において、相違点1-5に係る外観発酵度を97.0%以上とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明5は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲1製法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の相当関係を有する。
また、甲1製法発明は、甲1発明のビールを製造する方法であるから、本件特許発明6の「発酵させる発酵工程を有する」「ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明6と甲1製法発明との相違点は次のとおりである。
<相違点1-6>
本件特許発明6は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲1製法発明はそのような特定はない点。
相違点1-6は上記アの相違点1-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明6は甲1製法発明ではなく、また、甲1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲1方法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の相当関係を有する。
そして、甲1方法発明においては、甲1方法発明によらない方法よりも、ビールテイスト飲料の香味が改善されていることは明らかであるから、甲1方法発明は、本件特許発明7における「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明7と甲1方法発明とは次の点で相違する。
<相違点1-7>
本件特許発明7は、「外観発酵度が90.0%以上となるように」調整する工程を有するとの特定を有するのに対して、甲1方法発明はそのような特定はない点。
相違点1-7は、上記アの相違点1-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明7は甲1方法発明ではなく、また、甲1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲1発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲1発明との相違点は次のとおりである。
<相違点1-8>
本件特許発明8は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
<相違点1-9>
本件特許発明8は、麦芽比率が「55質量%以上」との特定を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
相違点1-8は、上記アの相違点1-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明8は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲1発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲1発明との相違点は次のとおりである。
<相違点1-10>
本件特許発明9は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
相違点1-10は、上記オの相違点1-5と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明9は甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由1についてのまとめ
本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由1によって本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲2の記載事項等
ア 甲2の記載事項
甲2には、ビールの分析値に関して次の事項が記載されている。なお、甲2は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
「
[図:0001414172000010.jpg]
」
(第6~21行)
「
[図:0001414172000011.jpg]
」
(下から5行~末行)
イ 甲2に記載された発明
甲2には次の発明(以下、「甲2発明」、「甲2製法発明」、「甲2方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2発明>
「発酵原料として、蜂蜜(そば)1.3kg、蜂蜜1kg、モルトエキストラクト(液体)(アンバー)1.7kg、カラレッド(モルト)0.2kg、カラアロマ(モルト)0.2kg、カラファ(モルト)0.1kg、焙煎大麦0.1kgを使用し、オリジナルエキス濃度が31.4質量%、外観エキス濃度が3.8質量%、アルコール度数が15.9v/v%、色度(SRM)が40.81、苦味価(IBU)が0であるビール。」
<甲2製法発明>
「甲2発明を製造する方法。」
<甲2方法発明>
「甲2発明を調整する方法」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明における「オリジナルエキス濃度が31.4質量%」、「アルコール度数が15.9v/v%」、「ビール」は、それぞれ、本件特許発明1における「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上」、「アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲2発明の麦芽比率について計算すると、麦芽比率は、水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合であるので、甲2発明の「発酵原料として、蜂蜜(そば)1.3kg、蜂蜜1kg、モルトエキストラクト(液体)(アンバー)1.7kg、カラレッド(モルト)0.2kg、カラアロマ(モルト)0.2kg、カラファ(モルト)0.1kg、焙煎大麦0.1kg」から計算すると、
麦芽重量=モルトエキストラクト(液体)(アンバー)1.7kg+カラレッド(モルト)0.2kg+カラアロマ(モルト)0.2kg+カラファ(モルト)0.1kg+焙煎大麦0.1kg=2.3kg
水及びホップ以外の原料の重量=麦芽重量2.3kg+蜂蜜(そば)1.3kg+蜂蜜1kg=4.6kg
麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=2.3kg/4.6kg×100=50.0質量%である。
よって、甲2発明の「発酵原料として、蜂蜜(そば)1.3kg、蜂蜜1kg、モルトエキストラクト(液体)(アンバー)1.7kg、カラレッド(モルト)0.2kg、カラアロマ(モルト)0.2kg、カラファ(モルト)0.1kg、焙煎大麦0.1kgを使用」は、本件特許発明1における「麦芽比率が66質量%以下」に相当する。
また、甲2には、ビール酵母を添加した麦汁に、24時間以上通気を行いながら麦汁を発酵させることについては記載されていないから、甲2発明は、本件特許発明1における「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下であるビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」
<相違点2-1>
本件特許発明1は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定を有さない点。
<相違点2-2>
本件特許発明1は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
相違点2-1について検討する。
本件特許明細書【0011】の記載の式(1)にしたがい、甲2発明の外観発酵度を計算すると、
式(1):外観発酵度AA(%)=100×(オリジナルエキスP-外観エキスEs)/オリジナルエキスP=100×(31.4質量%―3.8質量%)/31.4質量%=87.9%である。
よって、相違点2-1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲2発明ではない。
そして、甲2及び他の全ての証拠をみても、甲2発明において、相違点2-1に係る外観発酵度を90.0%以上とする動機となる記載はない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
甲7の記載事項から、ビールの色度(EBC)=1.97×色度(SRM)である。
上記関係式から甲2発明の色度(EBC)を計算すると、甲2発明の「色度(SRM)が40.81」は、色度(EBC)では80.40である。
そうすると、甲2発明の「色度(SRM)が40.81」は、本件特許発明2における「色度が5EBC以上」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲2発明との相違点は次のとおりである。
<相違点2-3>
本件特許発明2は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
<相違点2-4>
本件特許発明2は、色度が「5EBC以上80.0EBC以下」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
<相違点2-5>
本件特許発明2は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
相違点2-3は上記アの相違点2-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明2は甲2発明ではない。
また、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1又は請求項2を引用して特定するものであって、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3は甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲2発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
また、上記アから、甲2発明の麦芽比率は50.0質量%であるから、本件特許発明4の「麦芽比率が」「66質量%以下」との特定事項を満たす。
そうすると、本件特許発明4と甲2発明との相違点は次のとおりである。
<相違点2-6>
本件特許発明4は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
<相違点2-7>
本件特許発明4は、麦芽比率が「55質量%以上」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
相違点2-6は、上記アの相違点2-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明4は甲2発明ではない。
また、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲2発明とを対比すると、上記ア、イ、エと同様の対応関係を有する。
また、甲2発明の「ビール」は、本件特許発明5における「発酵ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明5と甲2発明との相違点は次のとおりである。
<相違点2-8>
本件特許発明5は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
相違点2-8について検討する。
上記アより、甲2発明の外観発酵度は87.9%であるから、相違点2-8は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明5は甲2発明ではない。
そして、甲2及び他の全ての証拠をみても、甲2発明において、相違点2-8に係る外観発酵度を97.0%以上とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明5は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲2製法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の相当関係を有する。
また、甲2製法発明は、甲2明のビールを製造する方法であるから、本件特許発明6の「発酵させる発酵工程を有する」「ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。
そして、甲2には、ビール酵母を添加した麦汁に、24時間以上通気を行いながら麦汁を発酵させることについては記載されていないから、甲2製法発明は、「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する発酵飲料の製造方法を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明6と甲2製法発明とは次の点で相違する。
<相違点2-9>
本件特許発明6は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲2製法発明はそのような特定はない点。
<相違点2-10>
本件特許発明6は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲2製法発明にはそのような特定がない点。
相違点2-9は上記アの相違点2-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明6は甲2製法発明ではなく、また、甲2製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲2方法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の相当関係を有する。
そして、甲2方法発明において、甲2方法発明によらない方法よりも、ビールテイスト飲料の香味が改善されていることは明らかであるから、甲2方法発明は、本件特許発明7における「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明7と甲2方法発明とは次の点で相違する。
<相違点2-11>
本件特許発明7は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対して、甲2方法発明はそのような特定はない点。
<相違点2-12>
本件特許発明7は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲2方法発明にはそのような特定がない点。
相違点2-11は、上記アの相違点2-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲2方法発明ではなく、また、甲2方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲2発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲2発明との相違点は次のとおりである。
<相違点2-13>
本件特許発明8は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
<相違点2-14>
本件特許発明8は、麦芽比率が「55質量%以上」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
<相違点2-15>
本件特許発明8は、色度が「5EBC以上80.0EBC以下」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
相違点2-13は、上記アの相違点2-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明8は甲2発明でなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲2発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲2発明との相違点は次のとおりである。
<相違点2-16>
本件特許発明9は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
<相違点2-17>
本件特許発明9は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲2発明はそのような特定がない点。
相違点2-16は、上記オの相違点2-8と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9は甲2発明でなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由2についてのまとめ
本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由2によって本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
7 申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲3の記載事項等
ア 甲3の記載事項
甲3には、ビールのレシピに関して次の事項が記載されている。なお、甲3は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
「
[図:0001414172000012.jpg]
」
(第1頁第7~20行)
「バッチサイズ:20.8L(発酵容量)」
(第1頁第3~4行)
「
[図:0001414172000013.jpg]
」
(第1頁下から2行~第2頁末行)
イ 甲3に記載された発明
甲3には次の発明(以下、「甲3発明」、「甲3製法発明」、「甲3方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲3発明>
「発酵原料として、モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g、モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g、モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g、甘藷糖3000g、蜂蜜1800gを使用し、オリジナルエキス濃度が34.7質量%、外観エキス濃度が4.6質量%、アルコール度数が17.59v/v%、色度(SRM)が7.05、苦味価(IBU)が43.83であるビール。」
<甲3製法発明>
「甲3発明を製造する方法。」
<甲3方法発明>
「甲3発明を調整する方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「オリジナルエキス濃度が34.7質量%」、「アルコール度数が17.59v/v%」、「ビール」は、それぞれ、本件特許発明1における「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上」、「アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲3発明の麦芽比率について計算すると、麦芽比率は、水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合であるので、甲3発明の「発酵原料として、モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g、モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g、モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g、甘藷糖3000g、蜂蜜1800gを使用」から計算すると、
麦芽重量=モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g+モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g+モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g=5100g
水及びホップ以外の原料の重量=モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g+モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g+モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g+甘藷糖3000g+蜂蜜1800g=9900g
麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=5100g/9900g×100=51.5質量%である。
よって、甲3発明の「発酵原料として、モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g、モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g、モルトエキストラクト(液体)(ライト)1700g、甘藷糖3000g、蜂蜜1800gを使用」は、本件特許発明1における「麦芽比率が66質量%以下」に相当する。
そして、甲3発明の「苦味価(IBU)が43.83」は、本件特許発明1における「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」に相当する。
さらに、甲3発明は「オリジナルエキス濃度が34.7%」であるから、「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、および、苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下であるビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」
<相違点3-1>
本件特許発明1は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲3発明はそのような特定を有さない点。
相違点3-1について検討する。
本件特許明細書【0011】の記載の式(1)にしたがい、甲3発明の外観発酵度を計算すると、
式(1):外観発酵度AA(%)=100×(オリジナルエキスP-外観エキスEs)/オリジナルエキスP=100×(34.7質量%―4.6質量%)/34.7質量%=86.7%である。よって、相違点3-1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲3発明ではない。
そして、甲3及び他の全ての証拠をみても、甲3発明において、相違点3-1に係る外観発酵度を90.0%以上とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明1は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲3発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
甲7の記載事項から、ビールの色度(EBC)=1.97×色度(SRM)である。
上記関係式から計算すると、甲3発明の「色度(SRM)が7.05」は、色度(EBC)では13.88である。
そうすると、甲3発明の「色度(SRM)が7.05」は、本件特許発明2における「色度が5EBC以上80.0EBC以下」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲3発明との相違点は次のとおりである。
<相違点3-2>
本件特許発明2は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲3発明はそのような特定がない点
相違点3-2は、上記アの相違点3-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明2は甲3発明ではなく、また、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3は、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲3発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
また、上記アで検討したとおり、甲3発明の麦芽比率は51.5質量%であるから、本件特許発明4の「麦芽比率が」「66質量%以下」との特定事項を満たす。
そうすると、本件特許発明4と甲3発明との相違点は次のとおりである。
<相違点3-3>
本件特許発明4は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲3発明はそのような特定がない点
<相違点3-4>
本件特許発明4は、麦芽比率が「55質量%以上」との特定を有するのに対し、甲3発明はそのような特定がない点。
相違点3-3は、上記アの相違点3-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明4は甲3発明ではなく、また、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲3発明とを対比すると、上記ア、イ、エと同様の対応関係を有する。
また、甲3発明の「ビール」は、本件特許発明5における「発酵ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明5と甲3発明との相違点は次のとおりである。
<相違点3-5>
本件特許発明5は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲3発明はそのような特定がない点。
相違点3-5について検討する。
上記アより、甲3発明の外観発酵度は86.7%であるから、相違点3-5は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明5は甲3発明ではない。
そして、甲3及び他の全ての証拠をみても、甲3発明において、相違点3-5に係る外観発酵度を97.0%以上とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明5は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲3製法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
また、甲3製法発明は、甲3発明のビールを製造する方法であるから、本件特許発明6の「発酵させる発酵工程を有する」「ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。
また、甲3製法発明は本件特許発明6の「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明6と甲3製法発明との相違点は次のとおりである。
<相違点3-6>
本件特許発明6は、「外観発酵度が90.0%以上となるように」発酵させるとの特定を有するのに対し、甲3製法発明はそのような特定はない点。
相違点3-6は上記アの相違点3-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明6は甲3製法発明ではなく、また、甲3製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲3方法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オ、カと同様の相当関係を有する。
そして、甲3方法発明において、甲3方法発明によらない方法よりも、ビールテイスト飲料の香味が改善されていることは明らかであるから、甲3方法発明は、本件特許発明7における「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明7と甲3方法発明とは次の点で相違する。
<相違点3-7>
本件特許発明7は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対して、甲3方法発明はそのような特定はない点。
相違点3-7は、上記アの相違点3-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明7は甲3方法発明ではなく、また、甲3方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲3発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲3発明との相違点は次のとおりである。
<相違点3-8>
本件特許発明8は、「麦芽比率が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲3発明はそのような特定がない点。
<相違点3-9>
本件特許発明8は、麦芽比率が「55質量%以上」との特定を有するのに対し、甲3発明はそのような特定がない点。
相違点3-8は、上記アの相違点3-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明8は甲3発明ではなく、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲3発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲3発明との相違点は次のとおりである。
<相違点3-10>
本件特許発明9は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対して、甲3発明はそのような特定がない点。
相違点3-10は、上記オの相違点3-5と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明9は甲3発明ではなく、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由3についてのまとめ
本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由3によって本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲4の記載事項等
ア 甲4の記載事項
甲4には、ビールの分析値に関して次の事項が記載されている。なお、甲4は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
「
[図:0001414172000014.jpg]
」
(第1頁第7~31行)
「
[図:0001414172000015.jpg]
」
(第2頁下から5行~末行)
イ 甲4に記載された発明
甲4には次の発明(以下、「甲4発明」、「甲4製法発明」、「甲4方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲4発明>
「発酵原料として、ボヘミアンピルスナー(モルト)550ポンド、カラメル/クリスタル60L(モルト)55ポンド、チョコレート(モルト)100ポンド、蜂蜜10ポンド、甘藷糖250ポンド、フレークドオーツ150ポンドを使用し、オリジナルエキス濃度が29.2質量%、外観エキス濃度が5.2質量%、アルコール度数が13.8v/v%、色度(SRM)が46.97、苦味価(IBU)が42.76であるビール。」
<甲4製法発明>
「甲4発明を製造する方法。」
<甲4方法発明>
「甲4発明を調整する方法」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明における「オリジナルエキス濃度が29.2質量%」、「アルコール度数が13.8v/v%」、「ビール」は、それぞれ、本件特許発明1における「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上」、「アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲4発明の麦芽比率について計算すると、麦芽比率は、水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合であるので、甲4発明の「発酵原料として、ボヘミアンピルスナー(モルト)550ポンド、カラメル/クリスタル60L(モルト)55ポンド、チョコレート(モルト)100ポンド、蜂蜜10ポンド、甘藷糖250ポンド、フレークドオーツ150ポンドを使用」から計算すると、
麦芽重量=ボヘミアンピルスナー(モルト)550ポンド+カラメル/クリスタル60L(モルト)55ポンド+チョコレート(モルト)100ポンド=705ポンド
水及びホップ以外の原料の重量=ボヘミアンピルスナー(モルト)550ポンド+カラメル/クリスタル60L(モルト)55ポンド+、チョコレート(モルト)100ポンド+蜂蜜10ポンド+甘藷糖250ポンド+フレークドオーツ150ポンド=1115ポンド
麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=705ポンド/1115ポンド×100=58.7質量%である。
よって、甲4発明の「発酵原料として、ボヘミアンピルスナー(モルト)550ポンド、カラメル/クリスタル60L(モルト)55ポンド、チョコレート(モルト)100ポンド、蜂蜜10ポンド、甘藷糖250ポンド、フレークドオーツ150ポンドを使用」は、本件特許発明1における「麦芽比率が66質量%以下」に相当する。
さらに、甲4発明における「苦味価(IBU)が42.76」は、本件特許発明1における「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」に相当する。
また、甲4には、ビール酵母を添加した麦汁に、24時間以上通気を行いながら麦汁を発酵させることについては記載されていないから、甲4発明は、本件特許発明1における(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明1と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、および、苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」
<相違点4-1>
本件特許発明1は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲4発明はそのような特定を有さない点。
上記相違点4-1について検討する。
本件特許明細書【0011】の記載の式(1)にしたがい、甲4発明の外観発酵度を計算すると、
式(1):外観発酵度AA(%)=100×(オリジナルエキスP-外観エキスEs)/オリジナルエキスP=100×(29.2質量%―5.2質量%)/29.2質量%=82.19%である。よって、相違点4-1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲4発明ではない。
そして、甲4及び他の全ての証拠をみても、甲4発明において、相違点4-1に係る外観発酵度を90.0%以上とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明1は甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲4発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
甲7の記載事項から、ビールの色度(EBC)=1.97×色度(SRM)である。
上記関係式から計算すると、甲4発明の「色度(SRM)が46.97」は、色度(EBC)では92.53である。
そうすると、甲4発明の「色度(SRM)が46.97」は、本件特許発明2における「色度が5EBC以上」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.0(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、および、色度が5EBC以上である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」
<相違点4-2>
本件特許発明2は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲4発明はそのような特定がない点。
<相違点4-3>
本件特許発明2は、色度が「5EB以上80.0EBC以下」との特定を有するのに対し、甲4発明はそのような特定がない点
相違点4-2は上記アの相違点4-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は甲4発明ではなく、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3は甲4発明ではなく、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲4発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明4と甲4発明との相違点は次のとおりである。
<相違点4-4>
本件特許発明4は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲4発明はそのような特定がない点。
相違点4-4は上記アの相違点4-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明4は甲4発明ではなく、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲4発明とを対比すると、上記ア、イ、エと同様の対応関係を有する。
また、甲4発明の「ビール」は、本件特許発明5における「発酵ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明5と甲4発明との相違点は次のとおりである。
<相違点4-5>
本件特許発明5は、「外観発酵度が97.0以上」との特定を有するのに対し、甲4発明はそのような特定がない点。
相違点4-5について検討する。
上記アより、甲4発明の外観発酵度は82.19%であるから、相違点4-5は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明5は甲4発明ではない。
そして、甲4及び他の全ての証拠をみても、甲4発明において、相違点4-5に係る外観発酵度を97.0%以上とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明5は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲4製法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の相当関係を有する。
また、甲4製法発明は、甲4発明のビールを製造する方法であるから、本件特許発明6の「発酵させる発酵工程を有する」「ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明6と甲4製法発明とは次の点で相違する。
<相違点4-6>
本件特許発明6は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲4製法発明はそのような特定がない点。
相違点4-6は上記アの相違点4-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明6は甲4製法発明ではなく、また、甲4製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲4方法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の相当関係を有する。
そして、甲4方法発明において、甲4方法発明によらない方法よりも、ビールテイスト飲料の香味が改善されていることは明らかであるから、甲4方法発明は、本件特許発明7における「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明7と甲4方法発明とは次の点で相違する。
<相違点4-7>
本件特許発明7は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対して、甲4方法発明はそのような特定がない点。
相違点4-7は、上記アの相違点4-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明7は甲4方法発明ではなく、また、甲4方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲4発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲4発明との相違点は次のとおりである。
<相違点4-8>
本件特許発明8は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲4発明はそのような特定がない点。
<相違点4-9>
本件特許発明8は、色度が「5EBC以上80.0EBC以下」との特定を有するのに対し、甲4発明はそのような特定がない点。
相違点4-8は、上記アの相違点4-1と同旨であり同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明8は甲4発明ではなく、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲4発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲4発明との相違点は次のとおりである。
<相違点4-10>
本件特許発明9は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し甲4発明はそのような特定がない点。
<相違点4-11>
本件特許発明9は、色度が「5EBC以上80.0EBC以下」との特定を有するのに対し、甲4発明はそのような特定がない点。
相違点4-10は、上記オの相違点4-5と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明9は、甲4発明ではなく、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由4についてのまとめ
本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由4によって本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由5(甲5に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲5の記載事項等
ア 甲5の記載事項
甲5には、Rochefort 10 Cloneと名付けられたビールのレシピに関し、次の事項が記載されている。なお、甲5は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
[図:0001414172000016.jpg]
(第1頁左上欄)
[図:0001414172000017.jpg]
(第1~2頁 原料の表)
イ 甲5に記載された発明
甲5には次の発明(以下、「甲5発明」、「甲5製法発明」、「甲5方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲5発明>
「原料として、第1~2頁 原料の表のものを用いた、オリジナルエキス濃度が23.6質量%、外観エキス濃度が2.0質量%、アルコール度数が12.3v/v%、色度(SRM)が51.0、苦味価(IBU)が24.4であるビール。」
<甲5製法発明>
「甲5発明を製造する方法。」
<甲5方法発明>
「甲5発明を調整する方法」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明における「オリジナルエキス濃度が23.6質量%」、「アルコール度数が12.3v/v%」、「ビール」は、それぞれ、本件特許発明1における「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上」、「アルコール度数が」「以上25.0(v/v)%未満」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲5発明の麦芽比率について、麦芽比率は、水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合であるので、甲5発明の原料の表から計算すると、
麦芽重量=ピルスナー(2ロウ)6ポンド+ペールモルト,マリスオッター3ポンド+カラミューニッヒモルト1ポンド8.00オンス+カラビエンヌモルト1ポンド8.00オンス+アロマティックモルト8.00オンス+スペシャルBモルト4.00オンス=12ポンド12オンス
水及びホップ以外の原料の重量=麦芽重量12ポンド12オンス+小麦フレーク1ポンド+ブラウンシュガー,ダーク1ポンド+キャンディーシュガー,クリア1ポンド+キャンディーシュガー,ダーク1ポンド+ダークロックキャンディーシロップ1ポンド+タービナド1ポンド+デーツシュガー11.04オンス+Servomyces酵母栄養剤小さじ1(=約5.0g=約0.18オンス)+pH5.2(もろみ5分間)小さじ1(小さじ1は約5.0g=約0.18オンス)=約19ポンド7.76オンス
麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=12ポンド12オンス/約19ポンド7.76オンス×100=約65.4質量%である。
よって、甲5発明は、本件特許発明1における「麦芽比率が66質量%以下」との特定事項を満たす。
さらに、本件特許明細書【0011】の記載の式(1)にしたがい、甲5発明の外観発酵度を計算すると、
式(1):外観発酵度AA(%)=100×(オリジナルエキスP-外観エキスEs)/オリジナルエキスP=100×(23.6質量%―2.0質量%)/23.6質量%=91.5%である。
よって、甲5発明は、本件特許発明1における「外観発酵度が90.0%以上」との特定事項を満たす。
そして、甲5発明は「オリジナルエキス濃度が23.6質量%」であるから、本件特許発明1における「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明1と甲5発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、外観発酵度が90.0%以上、アルコール度数が25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下である、ビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」
<相違点5-1>
本件特許発明1は、アルコール度数が「12.5(v/v)%以上」との特定を有するのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
<相違点5-2>
本件特許発明1は、苦味価が「34.0BUs以上80.0Bus以下」との特定を有するのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
相違点5-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲5発明ではない。
そして、甲5及び他の全ての証拠をみても、甲5発明において、相違点5-1に係るアルコール度数を12.5(v/v)%以上とする動機となる記載はない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲5発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
甲5発明における「アルコール度数が12.3v/v%」は、本件特許発明2における「アルコール度数が12.0(v/v)%以上25.0(v/v)%未満」に相当する。
甲7の記載事項から、ビールの色度(EBC)=1.97×色度(SRM)である。
上記関係式から計算すると、甲5発明の「色度(SRM)が51.0」は、色度(EBC)では100.47である。
そうすると、甲5発明の「色度(SRM)が51.0」は、本件特許発明2における「色度が5EBC以上」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲5発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<相違点5-3>
本件特許発明2は、色度が「5EBC以上80.0EBC以下」との特定を有するのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
<相違点5-4>
本件特許発明2は、苦味価が「34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
相違点5-3は実質的な相違点であるから、本件特許発明2は甲5発明ではない。
そして、甲5及び他の全ての証拠をみても、甲5発明において、相違点5-3に係る色度を5EBC以上80.0EBC以下とする動機となる記載はない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3は、甲5発明ではなく、また、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲5発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明4と甲5発明の相違点は次のとおりである。
<相違点5-5>
本件特許発明4は、アルコール度数が「12.5(v/v)%以上」との特定を有するのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
相違点5-5は、上記アの相違点5-1と同旨であり同様に判断される。
よって、本件特許発明4は甲5発明ではなく、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲5発明とを対比すると、上記ア、イ、エと同様の対応関係を有する。
また、甲5発明の「ビール」は、本件特許発明5における「発酵ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明5と甲5発明との相違点は次のとおりである。
<相違点5-6>
本件特許発明5は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
<相違点5-7>
本件特許発明5は、アルコール度数が「12.5(v/v)%以上」との特定を有するのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
議案に鑑み、相違点5-7について検討する。
相違点5-7は、上記アの相違点5-1と同旨であり同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は甲5発明ではなく、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲5製法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の相当関係を有する。
また、甲5製法発明は、甲5発明のビールを製造する方法であるから、本件特許発明6の「発酵させる発酵工程を有する」「ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明6と甲5製法発明とは次の点で相違する。
<相違点5-8>
本件特許発明6は、アルコール度数が「12.5(v/v)%以上」との特定を有するのに対し、甲5製法発明はそのような特定がない点。
<相違点5-9>
本件特許発明6は、苦味価が「34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲5製法発明はそのような特定がない点。
相違点5-8は上記アの相違点5-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明6は甲5製法発明ではなく、また、甲5製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲5方法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の相当関係を有する。
そして、甲5方法発明において、甲5方法発明によらない方法よりも、ビールテイスト飲料の香味が改善されていることは明らかであるから、甲5方法発明は、本件特許発明7における「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明7と甲5方法発明とは次の点で相違する。
<相違点5-10>
本件特許発明7は、アルコール度数が「12.5(v/v)%以上」との特定を有するのに対し、甲5方法発明はそのような特定がない点。
<相違点5-11>
本件特許発明7は、苦味価が「34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲5方法発明はそのような特定がない点。
相違点5-10は、上記アの相違点5-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明7は甲5方法発明ではなく、甲5方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲5発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲5発明との相違点は次のとおりである。
<相違点5-12>
本件特許発明8は、色度が「5EBC以上80.0EBC以下」との特定を有するのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
相違点5-12は上記イの相違点5-3と同旨であり同様に判断される。
よって、本件特許発明8は甲5発明ではなく、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲5発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲5発明との相違点は次のとおりである。
<相違点5-13>
本件特許発明9は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対して、甲5発明はそのような特定がない点。
<相違点5-14>
本件特許発明9は、色度が「5EBC以上80.0EBC以下」との特定を有するのに対し、甲5発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点5-14について検討する。
相違点5-14は、上記イの相違点5-3と同旨であり同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明9は甲5発明ではなく、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由5についてのまとめ
本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではなく、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもないから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由5によって本件特許の請求項1ないし9に係る特許は取り消すことはできない。
6 申立理由6(甲6に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲6の記載事項等
ア 甲6の記載事項
甲6には、Dogfish Head 120 Minute IPAと名付けられたビールのレシピに関し、次の事項が記載されている。なお、甲6は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
[図:0001414172000018.jpg]
(材料及び仕様欄)
イ 甲6に記載された発明
甲6には次の発明(以下、「甲6発明」、「甲6製法発明」、「甲6方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲6発明>
「材料として、ピルスナー・モルト16ポンド(7.26kg)、イングリッシュアンバーモルト0.5ポンド(0.23kg)、デキストロース(発酵中に添加する)11.0ポンド(5kg)、一次発酵にWhite Labs WLP001 California AleまたはWyeast 1056 American Ale酵母、二次発酵にWhite Labs WLP099 Super High Gravity Ale酵母を用い、オリジナルエキスが1.192、アルコール度数が21v/v%、苦味価(IBU)が120であるビール。」
<甲6製法発明>
「甲6発明を製造する方法。」
<甲6方法発明>
「甲6発明を調整する方法。」
ウ 甲8の記載事項
甲8にはアルコール度数(容積/容積ベース)、オリジナルエキス(比重)及び外観エキス(比重)について次の事項が記載されている。なお、甲8は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
[図:0001414172000019.jpg]
(第319頁左欄下から17行~下から8行)
エ 甲9の記載事項
甲9には麦汁の色度について次の記載がある。なお、甲9は外国語文献のため、抄訳を摘記する。
「3.4 麦汁煮沸
得られた麦汁を1~2時間煮沸する。この間にホップを添加する。」
(第254頁右欄第1~3行)
「3.4.1 麦汁沸騰操作
麦汁を煮沸する間、以下のような重要なプロセスが生じる。
・・・(中略)・・・
麦汁の色度の増加
・・・(以下略)・・・」
(第254頁右欄第12~26行)
「3.4.1.6 麦汁の色度の増加
麦汁はいくらか色が濃くなる。煮沸の結果、メラノイジンが形成され、またポリフェノールが酸化される。これにより、麦汁の色が、煮沸後、製造されるビールよりもわずかに濃くなる。発酵中に再び色が薄くなる。淡い色のビールの場合、おおよそ以下のとおりである。
EBCユニット
煮沸前の麦汁 8.8
煮沸後の麦汁 13.0
ピルスナービール 12.3」
(第257頁右欄第8~21行)
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲6発明とを対比する。
甲6発明における「オリジナルエキスが1.192」は、当業者に汎用されている自動変換ツール(https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/)を使用して、比重から質量%に変換すると、42.41質量%である。したがって、甲6発明における「オリジナルエキスが1.192」は、本件特許発明1における「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上」に相当する。
また、甲6発明における「アルコール度数が21v/v%」、「ビール」は、本件特許発明1における「アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
そして、甲6発明の麦芽比率について計算すると、麦芽比率は、水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合であるので、
麦芽重量=ピルスナー・モルト16ポンド+イングリッシュアンバーモルト0.5ポンド=16.5ポンド
水及びホップ以外の原料の重量=麦芽重量16.5ポンド+デキストロース11.0ポンド=27.5ポンド
麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=16.5ポンド/27.5ポンド=60.0質量%である。
よって、甲6発明は、本件特許発明1における「麦芽比率が66質量%以下」との特定事項を満たす。
さらに、甲6発明はオリジナルエキス濃度が42.41質量%であるから、本件特許発明1における「(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」との特定で除外される対象にはあたらない。
そうすると、本件特許発明1と甲6発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「オリジナルエキス濃度が20.0質量%以上、アルコール度数が12.5(v/v)%以上25.0(v/v)%未満である、麦芽比率が66質量%以下であるビールテイスト飲料(但し、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」
<相違点6-1>
本件特許発明1は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定を有さない点。
<相違点6-2>
本件特許発明1は、「苦味価が34.0BUS以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対して、甲6発明はそのような特定がない点。
上記相違点6-1について検討する。
甲8に記載されているとおり、オリジナルエキス及びアルコール度数と外観エキスは次の関係式を満たすことが知られており、
式(6)Av/v=f*(OG―PG)
ここで、OGとPGはオリジナルエキス(比重)及び外観エキス(比重)に1000を掛けたもの、fは0.125~0.135の係数、Av/vはアルコール濃度である。
この式(6)を使って甲6発明の外観エキス(比重)を求めると、
f=0.125のとき、
式(6)21v/v%=0.125(1.192×1000-PG)より
PG=1024、外観エキス比重は1.024
f=0.135のとき、
式(6)21v/v%=0.135(1.192×1000-PG)より
PG=1036、外観エキス比重は1.036
外観エキス比重1.024~1.036は、オリジナエキス比重と同様に、当業者に汎用されている自動変換ツール(https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/)を使用して、比重から質量%に変換すると、6.0769~9.0244質量%となる。
さらに、本件特許明細書【0011】の記載の式(1)にしたがい、甲6発明の外観発酵度を計算すると、
式(1):外観発酵度AA(%)=100×(オリジナルエキスP-外観エキスEs)/オリジナルエキスP=100×(42.41質量%―6.0769~9.0244質量%)/42.41質量%=78.7~85.7%である。
したがって、相違点6-1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲6発明ではない。
そして、甲6及び他の全ての証拠をみても、甲6発明において、相違点6-1に係る外観発酵度を90.0%以上とする動機となる記載はない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲6発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明2と甲6発明との相違点は次のとおりである。
<相違点6-3>
本件特許発明2は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
<相違点6-4>
本件特許発明2は、「色度が5EBC以上80.0EBC以下」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
<相違点6-5>
本件特許発明2は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
相違点6-3は上記アの相違点6-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は甲6発明ではなく、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1又は請求項2を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1又は本件特許発明2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は本件特許発明2と同様に判断される。
よって、本件特許発明3は甲6発明ではなく、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲6発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
また、上記アより、甲6発明の麦芽比率は60.0質量%であるから、本件特許発明4における「麦芽比率が55質量%以上66質量%以下」との特定事項を満たす。
そうすると、本件特許発明4と甲6発明との相違点は次のとおりである。
<相違点6-6>
本件特許発明4は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
<相違点6-7>
本件特許発明4は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
相違点6-6は、上記アの相違点6-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は甲6発明ではなく、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5と甲6発明とを対比すると、上記ア、イ、エと同様の対応関係を有する。
また、甲6発明の「ビール」は、本件特許発明5における「発酵ビールテイスト飲料」に相当する。
そうすると、本件特許発明5と甲6発明との相違点は次のとおりである。
<相違点6-8>
本件特許発明5は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定を有さない点。
<相違点6-9>
本件特許発明5は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対して、甲6発明はそのような特定がない点。
相違点6-8について検討する。
上記アより、甲6発明の外観発酵度は78.7~85.7%であるから、相違点6-8は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明5は甲6発明ではない。
そして、甲6及び他の全ての証拠をみても、甲6発明において、相違点6-8に係る外観発酵度を97.0%以上とする動機となる記載はない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲6製法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の相当関係を有する。
また、甲6製法発明は、甲6発明のビールを製造する方法であるから、本件特許発明6の「発酵させる発酵工程を有する」「ビールテイスト飲料の製造方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明6と甲6製法発明とは次の点で相違する。
<相違点6-10>
本件特許発明6は、「外観発酵度が90.0%以上との特定を有するのに対し、甲6製法発明はそのような特定がない点。
<相違点6-11>
本件特許発明6は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対して、甲6発明はそのような特定がない点。
相違点6-10は上記アの相違点6-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明6は甲6製法発明ではなく、甲6製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲6方法発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の相当関係を有する。
また、甲6方法発明において、甲6方法発明によらない方法よりも、ビールテイスト飲料の香味が改善されていることは明らかであるから、甲6方法発明は、本件特許発明7における「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に相当する。
そうすると、本件特許発明7と甲6方法発明とは次の点で相違する。
<相違点6-12>
本件特許発明7は、「外観発酵度が90.0%以上となるように」調整する工程を有するとの特定を有するのに対して、甲6方法発明はそのような特定がない点。
<相違点6-13>
本件特許発明7は、「苦味価が34.0BUs以上80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲6方法発明はそのような特定がない点。
相違点6-12は、上記アの相違点6-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明7は甲6方法発明ではなく、また、甲6方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲6発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲6発明との相違点は次のとおりである。
<相違点6-14>
本件特許発明8は、「外観発酵度が90.0%以上」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
<相違点6-15>
本件特許発明8は、「色度が5EBC以上80.0EBC以下」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
<相違点6-16>
本件特許発明8は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
相違点6-14は上記アの相違点6-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明8は甲6発明ではなく、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲6発明とを対比すると、上記ア、イ、エ、オと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲6発明との相違点は次のとおりである。
<相違点6-17>
本件特許発明9は、「外観発酵度が97.0%以上」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
<相違点6-18>
本件特許発明9は、「色度が5EBC以上80.0EBC以下」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
<相違点6-19>
本件特許発明9は、「苦味価が80.0BUs以下」との特定を有するのに対し、甲6発明はそのような特定がない点。
相違点6-17は、上記オの相違点6-8と同旨であり同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明9は甲6発明ではなく、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由6についてのまとめ
本件特許発明1ないし9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由6によって本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
第8 結語
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700770