特許異議申立
2025-700556
プリン体濃度が低減されたビールテイスト飲料およびその製造方法
- 審判番号
- 2025-700556
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-116465
- 登録番号
- 7594054
- 請求日
- 2025年05月27日
- 審決日
- 2026年03月18日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】キリンホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
- 【異議申立人】廣瀬 久美
- 【異議申立人代理人】田久保 泰夫
- 審判長/審判官
- 審判長 松田 成正
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 宮久保 博幸
- 分類
- P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C) / P1651.537-YAA(C12C) / P1651.536-YAA(C12C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第2条第3項第1号、特許法第2条第3項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7594054号発明「プリン体濃度が低減されたビールテイスト飲料およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7594054号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、9及び10について訂正することを認める。
特許第7594054号の請求項1ないし3及び6ないし10に係る特許を維持する。
特許第7594054号の請求項4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7594054号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和5年7月18日の出願であって、令和6年11月25日にその特許権の設定登録がなされ、同年12月3日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年5月27日に特許異議申立人 廣瀬 久美(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~10)がされ、同年8月27日付けで取消理由が通知され、同年10月21日に特許権者 キリンホールディングス株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求がなされるとともに意見書の提出がされ、同年11月5日に特許権者から手続補正書(方式)が提出(以下、当該手続補正書により補正された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正請求を、「本件訂正請求」という。)され、令和7年11月21日付けで申立人に対し訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)が通知され、それに対し申立人からは何ら応答がなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7594054号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容等
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「プリン体濃度が5mg/100mL以下であるビールテイスト飲料であって、2-メチルピラジンを0.5~30ppb含有し、かつ、2,6-ジメチルピラジンを0.5~5ppb含有し、アルコール濃度が3~6v/v%である、ビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「プリン体濃度が5mg/100mL以下であるビールテイスト飲料であって、2-メチルピラジンを0.5~30ppb含有し、かつ、2,6-ジメチルピラジンを0.5~5ppb含有し、アルコール濃度が3~6v/v%であり、麦芽使用比率が50%未満である、ビールテイスト飲料。」に訂正する。請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、6、7及び8も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4及び5を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6~8に「・・・請求項1または2に記載のビーテイスト飲料。」と記載されているのを、「・・・請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に「アルコール濃度が3~6v/v%であり、プリン体濃度が5mg/100mL以下であるビールテイスト飲料の製造方法であって、製造された飲料の2-メチルピラジン濃度が0.5~30ppbとなり、かつ、製造された飲料の2,6-ジメチルピラジン濃度が0.5~5ppbとなるように2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンを含有させる工程を含む、製造方法。」と記載されているのを、「アルコール濃度が3~6v/v%であり、プリン体濃度が5mg/100mL以下であり、麦芽使用比率が50%未満であるビールテイスト飲料の製造方法であって、製造された飲料の2-メチルピラジン濃度が0.5~30ppbとなり、かつ、製造された飲料の2,6-ジメチルピラジン濃度が0.5~5ppbとなるように2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンを含有させる工程を含む、製造方法。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「アルコール濃度が3~6v/v%であり、プリン体濃度が5mg/100mL以下であるビールテイスト飲料の風味改善方法であって、製造された飲料の2-メチルピラジン濃度が0.5~30ppbとなり、かつ、製造された飲料の2,6-ジメチルピラジン濃度が0.5~5ppbとなるように2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンを含有させる工程を含む、風味改善方法。」と記載されているのを、「アルコール濃度が3~6v/v%であり、プリン体濃度が5mg/100mL以下であり、麦芽使用比率が50%未満であるビールテイスト飲料の風味改善方法であって、製造された飲料の2-メチルピラジン濃度が0.5~30ppbとなり、かつ、製造された飲料の2,6-ジメチルピラジン濃度が0.5~5ppbとなるように2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンを含有させる工程を含む、風味改善方法。」に訂正する。
(6)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし8について、請求項2ないし8は請求項1を直接または間接的に引用して特定するものであるから、訂正前の請求項1ないし8に対応する訂正後の請求項1ないし8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、ビールテイスト飲料につき「麦芽使用比率が50%未満である、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1の訂正により請求項1に追加された事項は、訂正前の請求項4及び本件特許の明細書の【0011】に記載されており、訂正事項1に係る請求項1の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3及び6~8についても同様である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項4及び5の訂正は、請求項4及び5を削除するというものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る請求項4及び5の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る請求項6~8の訂正は、「ビーテイスト飲料」との明らかな誤記を「ビールテイスト飲料」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とする訂正である。
そして、訂正事項3に係る請求項6~8の訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4に係る請求項9の訂正は、製造されるビールテイスト飲料につき「麦芽使用比率が50%未満である、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4の訂正により請求項9に追加された事項は、訂正前の請求項4及び本件特許の明細書の【0011】に記載されており、訂正事項4に係る請求項9の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る請求項10の訂正は、風味改善されるビールテイスト飲料につき「麦芽使用比率が50%未満である、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5の訂正により請求項10に追加された事項は、訂正前の請求項4及び本件特許の明細書の【0011】に記載されており、訂正事項5に係る請求項10の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
4 独立特許要件について
本件においては、訂正前のすべての請求項1~10に対して特許異議の申立てがされているので、上記訂正事項に係る訂正については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
5 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、9及び10について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、9及び10について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件発明1」のようにいい、総称して「本件発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
プリン体濃度が5mg/100mL以下であるビールテイスト飲料であって、2-メチルピラジンを0.5~30ppb含有し、かつ、2,6-ジメチルピラジンを0.5~5ppb含有し、アルコール濃度が3~6v/v%であり、麦芽使用比率が50%未満である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
2-メチルピラジンおよび2,6-ジメチルピラジンの合計含有量が1ppb以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
プリン体濃度が0.5mg/100mL以下である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
糖質濃度が1.5g/100mL以下である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項7】
糖質濃度が0.5g/100mL以下である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項8】
プリン体濃度が3.5mg/100mL以下であり、糖質濃度が0.5g/100mL以下である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。
【請求項9】
アルコール濃度が3~6v/v%であり、プリン体濃度が5mg/100mL以下であり、麦芽使用比率が50%未満であるビールテイスト飲料の製造方法であって、製造された飲料の2-メチルピラジン濃度が0.5~30ppbとなり、かつ、製造された飲料の2,6-ジメチルピラジン濃度が0.5~5ppbとなるように2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンを含有させる工程を含む、製造方法。
【請求項10】
アルコール濃度が3~6v/v%であり、プリン体濃度が5mg/100mL以下であり、麦芽使用比率が50%未満であるビールテイスト飲料の風味改善方法であって、製造された飲料の2-メチルピラジン濃度が0.5~30ppbとなり、かつ、製造された飲料の2,6-ジメチルピラジン濃度が0.5~5ppbとなるように2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンを含有させる工程を含む、風味改善方法。」
第4 特許異議申立理由の要旨
令和7年5月27日に申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。なお、判断の便宜上、当審において、主たる証拠ごとに特許異議申立の理由を整理した。
1 申立理由
(1)申立理由1(甲第1号証の1を主たる証拠とする進歩性)
本件発明1、2及び5~10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証の1に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び5~10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲第1号証の2を主たる証拠とする新規性・進歩性)
本件発明1、2、5~7、9及び10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証の2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件発明1、2、5~7、9及び10は、甲第1号証の2に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、5~7、9及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由3(甲第1号証の3を主たる証拠とする新規性・進歩性)
本件発明1、2、5~7、9及び10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証の3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件発明1、2、5~7、9及び10は、甲第1号証の3に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、5~7、9及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4)申立理由4(甲第2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)
本件発明1、2、4及び6~10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件発明1、2、4及び6~10は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4及び6~10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(5)申立理由5(実施可能要件)及び申立理由6(サポート要件)
本件発明1~10についての特許は、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
ア 申立理由5及び申立理由6(ア)(特許異議申立書の42~44頁)
本件発明は、「プリン体濃度が低減されつつも、中後半の厚み、重厚な味わいおよびバランスが良好な新規なビールテイスト飲料並びにその製造方法の提供」(本件明細書【0005】)を課題とするものである。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明の実施例では、市販の発泡酒(プリン体濃度:0.5mg/100mL未満、糖質:0.5g/100mL未満、麦芽使用比率:25%未満、アルコール濃度:5.5%)を水で希釈し、必要に応じて醸造用エタノール(95%)を添加して所定のプリン体総量およびアルコール濃度のベース飲料を準備した旨の記載がある(本件明細書【0047】)。また、官能評価に当たっては試験区1の試飲サンプルの中後半の厚み、重厚な味わいおよびバランスの評点をそれぞれ2.0、2.0、3.0とし、パネリスト間で評価基準を統一したこと(本件明細書【0050】)、試験区1は発泡酒から調製されたものであること(本件明細書【表3】)が記載されている。また、官能評価の評価基準は、本件明細書【表2】に記載されている。
ここで、甲2の2には、第10位としてキリン淡麗プラチナダブル(発泡酒、プリンゼロであるため、プリン体濃度0.5mg/100mL未満、糖質濃度は0g/100mL、アルコール度数5.5%)が記載されている(甲2の2 5頁)。本件明細書の実施例で使用された発泡酒と数値が一致しているため、実施例で使用された発泡酒は、キリン淡麗プラチナダブルであると強く推認される。そして、甲2の2に記載されるとおり、キリン淡麗プラチナダブルは、希釈前の段階でビール感が1と評価されており、コメントには、「トータルバランスがよくない」、「人工的で、ビールとは別の飲み物」、「ビールには遠い」といったものがあり、ビールらしさに著しく欠けるビールテイスト飲料であったと言える。
本件明細書の実施例のように、このような飲料(キリン淡麗プラチナダブル)を更に希釈して必要に応じて醸造用エタノールを添加してしまえば、より一層ビール感(ビールらしい味わい)が損なわれることは自明である。市販されている発泡酒の中でも顕著にビールらしさが欠如したビールテイスト飲料を選択し、「バランス(ビールらしい調和のとれた味わい)」の官能評価評点を恣意的に3.0点と固定してしまえば、他の官能評価サンプルは自ずと高評価になりやすくなることは自明である。よって、少なくとも「バランス」の官能評価指標についてはどの程度の評点で効果があると推認できるか、という点が当業者であっても理解できない。また、元々ビールらしさに著しく欠ける発泡酒を更に希釈等してさらにビールらしさを欠如させたビールテイスト飲料の「バランス(ビールらしい調和のとれた味わい)」の評点(固定点)3.0に対し、高くても3.68程度の評点しかついていない試飲サンプルの「バランス(ビールらしい調和のとれた味わい)」が優れているとは理解できず、本件請求項1~10に記載された発明の構成を採用しても、本件発明の課題を解決できるとは理解できない。したがって、本件請求項1~10に係る発明は、サポート要件を満たしていない。
さらに、以上のような状況であるため、本件明細書の発明の詳細な説明を読んだ当業者が、本件発明で奏されるとされている効果を奏するビールテイスト飲料等を実施できるとはいえず、実施可能要件を満たしていない。
イ 申立理由6(イ)
本件請求項1~3及び5~10に係る発明は、麦芽使用比率が50%以上100%以下であることが特定されている、乃至麦芽使用比率が50%以上100%以下である態様を含むものである。
一方、本件明細書の実施例は、麦芽使用比率が50%未満の試験区がほとんどであり、市販のビールをベースとした試飲サンプルに至っては麦芽使用比率が5%を下回ったもので試験されていると推認できる。よって、麦芽使用比率が50%以上100%以下である場合の効果が立証されているとはいえない。
本件明細書【0047】の例1では、市販の発泡酒(プリン体濃度:0.5mg/100mL未満、糖質:0.5g/100mL未満、麦芽使用比率:25%未満、アルコール濃度:5.5%)又は市販のビール(麦芽使用比率:100%、アルコール濃度:5%)を水で希釈し、必要に応じて醸造用エタノール(95%)を添加して所定のプリン体総量およびアルコール濃度のベース飲料を準備したことが記載されている。
まず、市販の発泡酒を希釈して調製した試飲サンプルについて、市販の発泡酒のプリン体濃度を0.5mg/100mLと仮定し、プリン体濃度を表3~表5に記載されるとおり、2810μg/L(すなわち、0.281mg/100mL)となるまで希釈した場合、希釈倍率は約1.78倍である。その際、アルコール濃度は3.09v/v%に希釈される。
そして、麦芽使用比率25%でアルコール濃度3.09v/v%のベースビールを1L醸造しようと考えたときに、当業者であれば例えば麦芽24.72g、副原料74.16gの設計により麦芽使用比率25%とすることができる。このように得られたビールテイスト飲料に対して、アルコール濃度を表3~表5に記載されるとおり、3.09v/v%から5v/v%となるように95%醸造用エタノールを添加したとすると、その添加量は21.2mLとなる。ここで、日本の酒税法ではアルコール含有物を原料としているとき、当該アルコール含有物のアルコール分1度1kLにつき20kgとして計算(つまり、1度1Lにつき20g)する決まりであるため、95%で0.0212Lのアルコール含有物を用いた場合、20g×95度×0.0212L=40.28gの副原料を用いたことと同義となる。すなわち、麦芽24.72g、副原料74.16g+40.28gを使用している扱いとなるため、麦芽使用比率は約18%になる。
同様に、市販のビールを希釈して調製した試飲サンプルについて、本件明細書には、プリン体濃度が明記されていないが、キリン一番搾りと仮定すると、「キリン一番搾り生ビール」は、プリン体濃度が9.0mg/100mLであり(甲1の3の4 5頁下から2行目)、プリン体濃度を表3~表5に記載されるとおり、2810μg/L(すなわち、0.281mg/100mL)となるまで希釈した場合、希釈倍率は約32.03倍である(なお、市販のビールを約32倍も希釈したらただの水と変わらない。)。その際、アルコール濃度は0.16v/v%に希釈される。
そして、麦芽使用比率100%でアルコール濃度0.16v/v%のベースビールを1L醸造しようと考えたときに、当業者であれば例えば麦芽4.99gの設計により醸造することができる。このように得られたビールテイスト飲料に対して、アルコール濃度を表3~表5に記載されるとおり、0.16v/v%から5v/v%となるように95%醸造用エタノールを添加したとすると、その添加量は53.8mLとなる。ここで、日本の酒税法ではアルコール含有物を原料としているとき、当該アルコール含有物のアルコール分1度1kLにつき20kgとして計算(つまり、1度1Lにつき20g)する決まりであるため、95%で0.0538Lのアルコール含有物を用いた場合、20g×95度×0.0538L=102.22gの副原料を用いたことと同義となる。すなわち、麦芽4.99g、副原料102.22gを使用している扱いとなるため、麦芽使用比率は約4.66%になる。
以上のとおり、本件明細書の実施例では、麦芽使用比率が50%未満の試験区がほとんどであり、市販のビールをベースとした試飲サンプルに至っては麦芽使用比率が5%を下回ったもので試験されていると推認できる。麦芽使用比率が50%以上100%以下である場合の効果が立証されているとはいえないので、本件請求項1~3及び5~10に係る発明の範囲まで、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を拡張乃至一般化できるとはいえず、サポート要件を満たしていない。
2 証拠方法
甲第1号証の1:キリンホールディングスホームページ,「「キリン一番搾り 糖質ゼロ」、10月6日(火)新発売!」,2020年8月27日,<URL:https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2020/0827_01.html>
甲第1号証の1の2:酒飲みコルクの糖質制限ホームページ,「糖質0でも美味くて本当に驚いた!パーフェクトサントリービール」,2022年1月25日(更新日),<URL:https://sake-koruku.com/perfect-suntory/>
甲第1号証の1の3:健康ダンディぶらぶらブログホームページ,「糖質ゼロビール 「サントリーパーフェクトビール」と「麒麟一番搾り糖質0」を忖度なしで比較しました。」,2021年6月6日(更新日),<URL:https://web.archive.org/web/20210606070226/https://www.kenko-dandy.com/1812/>
甲第1号証の2:キリンホールディングスホームページ,「「キリン一番搾り 糖質ゼロ」大刷新して新発売」,2022年6月29日,<URL:https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2022/0629_01.html>
甲第1号証の2の2:グルメ Watch,「「キリン一番搾り 糖質ゼロ」リニューアル、新旧飲み比べると違いが分かる」,2022年6月29日,<URL:https://web.archive.org/web/20220815155006/https://gourmet.watch.impress.co.jp/docs/news/1421191.html>
甲第1号証の2の3:価格.comマガジン,「「糖質ゼロビール」どっちがおいしい!? 「キリン一番搾り 糖質ゼロ」vs「パーフェクトサントリービール」」,2022年8月3日,<URL:https://web.archive.org/web/20221204182911/https://kakakumag.com/food/?id=16824>
甲第1号証の2の4:Tomo Logホームページ,「【まずいと評判】キリン一番搾り 糖質ゼロを徹底調査!レビューや体に悪いのかも解説」,2022年12月25日(更新日),<URL:https://web.archive.org/web/20230201184638/https://watches-me.net/review-ichibanshiborizero>
甲第1号証の3:キリンホールディングスホームページ,「「キリン一番搾り 糖質ゼロ」リニューアル発売!」,2023年4月26日,<URL:https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2023/0426_01.html>
甲第1号証の3の2:健康ダンディぶらぶらブログホームページ,「リニューアルしたサントリーPSBとキリン一番搾り糖質ゼロを味・成分・カロリー比較しました。」,2023年9月12日(更新日),<URL:https://www.kenko-dandy.com/4402/>
甲第1号証の3の3:価格.comマガジン,「どれがいちばんおいしい? 「糖質ゼロ・オフビール」の新作4缶を飲み比べ!」,2023年10月23日,<https://kakakumag.com/food/?id=20131>
甲第1号証の3の4:アウトサイド シーナホームページ,「キリン一番搾り糖質ゼロを試す!カロリー、プリン体、原材料は!【口コミ】」,2020年10月10日,<URL:https://web.archive.org/web/20230923120305/https://outside.inside-shiina.com/entry/Calories-and-carbohydrates-kirin-beer-zero>
甲第2号証:ビール部【ビールブログ】ホームページ,「【濃い味糖質0(ゼロ)】味は?うまい?まずい?評判や口コミは?売ってない?」,2022年4月22日,<URL:https://web.archive.org/web/20220717095552/https://beer-beer.net/?p=1029>
甲第2号証の2:価格.comマガジン,「ビールに近いのはどれ? 糖質ゼロ・オフの発泡酒12種を飲み比べて勝手にランキング」,2017年9月28日,<URL:https://web.archive.org/web/20230328125943/https://kakakumag.com/food/?id=11119>
甲第3号証:キリンホールディングスホームページ,「「キリン のどごし<生>」をリニューアル!」,2021年3月25日,<URL:https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2021/0325_01.html>
甲第4号証:特許第3836117号公報,2006年10月18日発行
甲第5号証:特許第6779751号公報,2020年11月4日発行
甲第6号証:サントリーホールディングスホームページ,「「パーフェクトサントリービール」リニューアル新発売」,2022年8月9日,<URL:https://www.suntory.co.jp/news/article/mt_items/14205.pdf>
なお、証拠の表記については、特許異議申立書における記載におおむね従った。以下、順に「甲1の1」のようにいう。
第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要
令和7年8月27日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。なお、取消理由1は上記申立理由6(イ)を包含する。
1 取消理由1(サポート要件)
本件特許の請求項1~3及び5~10に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許の明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の実施例として調製されたサンプルはいずれも麦芽使用比率が50%未満のものであり、麦芽使用比率を50%以上とした場合の実施例は示されてない。
麦芽使用比率を50%以上として調製されたビールテイスト飲料は、その風味が実施例に記載されたサンプルとは大きく異なるものと考えられるから、発明の詳細な説明の記載からは、麦芽使用比率を50%以上として調製されたビールテイスト飲料においても、2-メチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの含有量を【0020】~【0022】に記載された範囲とすることにより発明の課題を解決できると認識することはできない。
そうすると、麦芽使用比率が50%以上のビールテイスト飲料をその範囲に含む本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できることを認識し得る範囲を超えるものである。本件発明2、3及び5~10についても同様である。
2 取消理由2(明確性)
本件特許の請求項6~8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許の請求項6~8には「請求項1または2に記載のビーテイスト飲料」との記載があるが、請求項1及び2のいずれにも「ビーテイスト飲料」は記載されておらず、また当該用語の意味も明確でない。(「ビールテイスト飲料」の誤記と認められる。)
第6 当審の判断
当審は、取消理由1及び2並びに申立理由1~6によって、本件発明1~3及び6~10についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおり。
なお、取消理由1についての判断は申立理由6(イ)の判断と重複するため、申立理由6についての判断とまとめて示す。
1 取消理由1及び申立理由6(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(4)本件発明の課題について
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0005】によると、本件発明1~3、5~8及び10が解決しようとする課題は、プリン体濃度が低減されつつも、中後半の厚み、重厚な味わいおよびバランスが良好な新規なビールテイスト飲料の提供であり、本件特許発明9が解決しようとする課題は、プリン体濃度が低減されつつも、中後半の厚み、重厚な味わいおよびバランスが良好な新規なビールテイスト飲料の製造方法の提供であると認められる(以下、総称して「発明の課題」という。)。
(3)本件明細書の記載について
本件特許の明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には、課題を解決するための手段として、「プリン体濃度が低減されたビールテイスト飲料にピラジン類が所定量含まれるようにする」(【0006】)ことが記載され、さらに、ビールテイスト飲料における各成分の含有量について、「本発明のビールテイスト飲料のプリン体濃度の上限値(以下または下回る)は、12mg/100mLであり、・・・5.0mg/100mL・・・とすることもできる。」(【0016】)との記載、「本発明のビールテイスト飲料の2-メチルピラジン濃度の下限値(以上または上回る)は0.5ppbであり・・・」(【0020】)との記載、「本発明のビールテイスト飲料の2,6-ジメチルピラジン濃度の下限値(以上または上回る)は0.5ppbであり、・・・」(【0021】)との記載、「本発明のビールテイスト飲料の2-メチルピラジンおよび2,6-ジメチルピラジンの合計濃度の下限値(以上または上回る)は、例えば1ppb・・・とすることができる。」(【0022】)との記載、及び、「本発明のビールテイスト飲料においては、2-メチルピラジンおよび2,6-ジメチルピラジンの少なくともいずれかの含有量が0.5ppb以上であればよく、この場合、2-メチルピラジンおよび2,6-ジメチルピラジンの合計濃度が1ppb以上であることが好ましい。」(【0023】)との記載がある。
また、本件発明に係るビールテイスト飲料の麦芽使用比率について、【0011】には、「本発明により製造されるビールテイスト発酵麦芽アルコール飲料は麦芽を原料の少なくとも一部とするものであり、好ましくは、麦芽として、例えば、大麦麦芽および小麦麦芽のいずれかまたは両方を使用するものとすることができる。本発明により製造されるビールテイスト発酵麦芽アルコール飲料が麦芽を原料の少なくとも一部として使用する場合、麦芽使用比率は、例えば、20%以下、20%以上、25%未満、25%以上、30%以下、30%以上、40%以下、40%以上、50%未満、50%以上、55%以下、55%以上、60%以下、60%以上、65%以下、65%以上、70%以下、70%以上、75%以下、75%以上、80%以下、80%以上、85%以下、85%以上、90%以下、90%以上、95%以下、95%以上または100%とすることができ、これらの上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。本明細書において「麦芽使用比率」とは、ホップおよび醸造用水を除く全原料の質量に対する麦芽質量の割合をいう。」との記載がある。
そして、上記解決手段による本件発明の効果について、【0026】には、「低プリン体のビールテイスト飲料(特に、低プリン体のビールおよび発泡酒)は、低プリン体に調整する方法の特殊性等に起因して、中後半の厚みおよび重厚な味わいが十分ではないという課題があった。本発明のビールテイスト飲料は、中後半の厚みおよび重厚な味わいが良好な状態に改善され、バランスも良好であることから、低プリン体のビールテイスト飲料の上記課題を解決することができる。」との記載がある。
さらに、【0040】~【0054】には実施例の記載があり、サンプルの調製方法として、「市販の発泡酒(プリン体濃度:0.5mg/100mL未満、糖質:0.5g/100mL未満、麦芽使用比率:25%未満、アルコール濃度:5.5%)および市販のビール(麦芽使用比率:100%、アルコール濃度:5%)を水で希釈し、必要に応じて醸造用エタノール(95%)を添加して所定のプリン体総量およびアルコール濃度のベース飲料を準備した。準備したベース飲料に含まれるピラジン類の濃度を考慮し、後記表3~5に記載された濃度となるように飲料サンプルに2-メチルピラジンおよび2,6-ジメチルピラジンを添加して試験区1~20の試飲サンプルを調製した。」(【0047】)との記載があり、表3~5(【0050】~【0053】)には、各試験区の成分含有量と官能評価の結果が示されている。
(4)サポート要件の判断
上記(3)の官能評価の結果によれば、表3から、市販の発泡酒(プリン体濃度:0.5mg/100mL未満、糖質:0.5g/100mL未満、麦芽使用比率:25%未満、アルコール濃度:5.5%)及び市販のビール(麦芽使用比率:100%、アルコール濃度:5%)のいずれを原料とする場合であっても、全ての試験区のサンプルのプリン体濃度を2810μg/l、アルコール濃度を5v/v%に統一した上で、2-メチルピラジンの含有量を0.6、5.0又は30ppbとした試験区2、3、4及び7では、2-メチルピラジンの含有量が0.35ppbの試験区1及び6に比して「中後半の厚み」「重厚な味わい」「バランス」の官能評価の結果がいずれも3.0以上となり良好であったことが読み取れる。同様に、表4から、2,6-ジメチルピラジンの含有量を0.5、2.0又は5ppbとした試験区9~11及び14では当該含有量が0.16ppbの試験区8及び13に比して各官能評価の結果がいずれも良好であったこと、表5から、2-メチルピラジンの含有量を0.6又は30ppbとし、2,6-ジメチルピラジンの含有量を0.5又は5ppbとした試験区16、17、19及び20では、両化合物の含有量をそれぞれ0.35ppb、0.16ppbとした試験区15及び18に比して各官能評価の結果がいずれも良好であったことが、それぞれ読み取れる。
ここで、実施例の各試験区で調製されたサンプルの麦芽使用比率に着目すると、発泡酒を用いたサンプルでは麦芽使用比率25%未満の発泡酒を水で希釈しているから、麦芽使用比率は50%未満である。また、市販のビール(麦芽使用比率100%、アルコール濃度5%)を用いたサンプルでは、一般的なビールのプリン体濃度は3~7mg/100ml程度であるから、プリン体濃度2810μg/lのサンプルを調製するためには市販のビールを水で10倍以上に薄めるとともに醸造エタノールを添加してアルコール濃度を5v/v%とする必要があり、添加される醸造エタノールの原材料を考慮すると麦芽使用比率は50%未満といえる。そうすると、実施例で調製されたサンプルはいずれも麦芽使用比率が50%未満のものである。
以上検討した実施例における官能評価の結果と、上記(3)の一般記載における成分の含有量及び作用効果についての記載等を参酌すると、発明の詳細な説明に接した当業者であれば、プリン体濃度が5.0mg/100mL以下に低減された、麦芽使用比率が50%未満のビールテイスト飲料において、2-メチルピラジンを0.5~30ppb又は2,6-ジメチルピラジンを0.5~5ppb含有させることにより、中後半の厚み、重厚な味わい及びバランスが良好なものとなり、発明の課題を解決できることを認識できる。
そして、本件発明1は、上記発明の課題を解決し得るものと認識できる特定事項の全てを有し、さらに限定するものであるから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
請求項1と同様の発明特定事項を備える本件発明9及び10、並びに請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定される本件発明2、3及び6~8も、本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(5)取消理由1について
上記第5 1のサポート要件についての取消理由は、要するに、発明の詳細な説明の実施例として調製されたサンプルはいずれも麦芽使用比率が50%未満のものであり、麦芽使用比率を50%以上として調製されたビールテイスト飲料においても、2-メチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの含有量を所定の範囲とすることにより発明の課題を解決できると認識することはできない、というものである。
これに対し、本件訂正により、請求項1~3及び6~10は、ビールテイスト飲料について「麦芽使用比率が50%未満である」ことが特定された。
よって、取消理由1(サポート要件)は解消した。
(6)申立人の主張について
申立人は、本件特許のサポート要件に関して上記第4 1(5)のように主張しているので、その各点について検討する。
ア 申立理由6(ア)について
申立人による上記第4 1(5)アの主張について検討する。
申立人は、その主張の前提として、発明の詳細な説明に記載された実施例で使用された発泡酒が「キリン淡麗プラチナダブル」であるとしている。しかし、市場にはきわめて多数の発泡酒が流通している以上、成分値が一致しているという事実のみをもって当該実施例に用いられた発泡酒が「キリン淡麗プラチナダブル」であると推認することはできない。
さらに、仮に当該実施例で調製された試験区1がビールらしさを欠くビールテイスト飲料であったとしても、任意の成分含有量を変更すれば「バランス」が良好になると直ちにいえるものではなく、他の官能評価サンプルが高評価となりやすくなるともいえない。
そして、上記(4)で検討したとおり、発明の詳細な説明の実施例には、2-メチルピラジンを0.5~30ppb又は2,6-ジメチルピラジンを0.5~5ppb含有させたビールテイスト飲料は、試験区1のビールテイスト飲料に比べて「中後半の厚み」「重厚な味わい」の評価点がいずれも2.0から3.0以上に向上し、さらに「バランス」の評価点が3.0以上に維持されたことが示されている。そうすると、発明の詳細な説明に接した当業者は、プリン体濃度が5.0mg/100mL以下に低減された、麦芽使用比率が50%未満のビールテイスト飲料において、2-メチルピラジンを0.5~30ppb又は2,6-ジメチルピラジンを0.5~5ppb含有させることにより、発明の課題を解決できることを認識できる。
また、申立人は、本件発明1~3及び6~10において、発明の詳細な説明の実施例に記載されたベース飲料以外のビールテイスト飲料を用いた場合には発明の課題を解決し得ないことを具体的な根拠を示して主張するものでもない。
よって、申立人の上記第4 1(5)アの主張は採用できない。
イ 申立理由6(イ)について
申立人による上記第4 1(5)イの主張について検討すると、申立人の主張は取消理由1と概略同旨であり、上記(5)で検討したとおり当該取消理由は本件訂正により解消したから、申立人の主張も理由がなくなったといえる。
(7)取消理由1及び申立理由6についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1~3及び6~10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、取消理由1及び申立理由6では、本件特許の請求項1~3及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2(明確性)について
本件訂正により、本件特許の請求項6~8における明らかな誤記は訂正された。
よって、本件訂正により取消理由2は解消した。
3 申立理由5(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断手法
物の発明における実施とは、物の生産、使用等の行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。
また、物を生産する方法の発明における実施とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができること及びその方法により生産した物の使用等をすることができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができ、かつその方法により生産した物の使用等をすることができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
さらに、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、例えば、明細書等に当業者がその方法を使用することができる程度の記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
(2)本件明細書の記載事項
発明の詳細な説明には、上記1(3)のとおりの記載に加え、以下の記載がある。
2-メチルピラジンおよび2,6-ジメチルピラジンの添加について、【0024】には「本発明のビールテイスト飲料の製造において、2-メチルピラジンおよび2,6-ジメチルピラジンのいずれかまたは両方を添加する場合、これらは食品製造に適しているものであればよく、その形態も、水性溶媒に容易に溶解するものであればよく、精製品であっても、粗精製品であってもよい。2-メチルピラジンおよび2,6-ジメチルピラジンは食品添加物(香料)として食品への添加が認められており、香料として入手可能なものを本発明に使用できる。本発明においてはまた、2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンを含有する食品素材を本発明のビールテイスト飲料の製造に用いてもよく、また、後述のように2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンを生成する工程を製造工程で実施してもよい。」との記載がある。また、ビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法について、【0028】には「ビールテイスト発酵アルコール飲料については、例えば、下記のように通常のビールテイスト発酵アルコール飲料の製造方法に従って製造することができる。すなわち、麦芽等の醸造原料および醸造用水から調製された麦汁に発酵用ビール酵母を添加して発酵を行い、得られた発酵液を低温にて貯蔵した後、濾過工程により酵母を除去することによりビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。飲料におけるプリン体含量の低減は後記の公知の方法に従って行うことができる。このようにして得られたプリン体濃度が低減されたビールテイスト発酵アルコール飲料に、2-メチルピラジンおよび2,6-ジメチルピラジンのいずれかまたは両方の濃度が所定値となるよう2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンを添加し、本発明のビールテイスト発酵アルコール飲料とすることができる。ビールテイスト発酵アルコール飲料への2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンの配合は、発酵液の2-メチルピラジンおよび2,6-ジメチルピラジンの濃度を考慮し、発酵後の発酵液への添加により行うことができ、このようにしてプリン体濃度が低減され、かつ、2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンが所定量で含まれるビールテイスト発酵アルコール飲料を製造することができる。」との記載がある。さらに、製造工程におけるピラジン類の生成について、【0034】には「ピラジン類は糖とアミノ酸の加熱反応(メイラード反応)により生成することが知られている。従って、麦汁等の仕込み液の調製においてデコクション法を採用したり、熱煮沸時間を延長したりすることにより、ビールテイスト飲料に含まれる2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンの濃度を所定の値にすることができる。これらの手順以外は上記のように、飲料中のプリン体濃度を所定の範囲内に低減する方法を実施しつつ、通常のビールテイスト飲料の製造方法に従って本発明のビールテイスト飲料を製造することができる。」との記載がある。
(3)実施可能要件についての判断
当業者は、上記(2)に示した本件明細書の記載事項に基づいて、プリン体濃度が低減され、かつ、2-メチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの含有量が所定値に調整されたビールテイスト飲料を製造することができ、また、その製造にあたり麦芽使用比率及びアルコール濃度を任意に設定することができる。さらに、2-メチルピラジン又は2,6-ジメチルピラジンの含有量が所定値にある場合に、中後半の厚み、重厚な味わい及びバランスが良好なビールテイスト飲料となることが理解できる。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1~3及び6~8に関し、その物を生産し、かつ、その物を使用することができる程度に具体的に記載されており、本件発明9に関し、その物を生産する方法を使用することができること、及び、その方法により生産した物の使用等をすることができる程度に具体的に記載されており、また、本件発明10に関し、その方法を使用することができる程度に具体的に記載されているものといえる。
よって、本件発明1~3及び6~10に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を満たす。
(4)申立人の主張について
申立人による上記第4 1(5)アの主張について検討する。
上記1(6)アで検討したとおり、当業者は本件明細書の記載に基づいて、プリン体濃度が5.0mg/100mL以下に低減された、麦芽使用比率が50%未満のビールテイスト飲料において、2-メチルピラジンを0.5~30ppb又は2,6-ジメチルピラジンを0.5~5ppb含有させることにより、中後半の厚み、重厚な味わい及びバランスが良好なものとなることを認識できるから、当該範囲に包含される本件発明1~3及び6~8に係る飲料を、中後半の厚み、重厚な味わい及びバランスが良好な飲料として使用できるものと認識できる。同様に、当業者は本件発明9に係る製造方法により生産した飲料を、中後半の厚み、重厚な味わい及びバランスが良好な飲料として使用できるものと認識できる。また、当業者は本件発明10に係る方法を、ビールテイスト飲料の風味を中後半の厚み、重厚な味わい及びバランスが良好なものとする、風味改善方法として使用できるものと認識できる。
よって、申立人の上記第4 1(5)アの主張は採用できない。
(5)申立理由5についてのまとめ
以上のことから、本件特許の請求項1~3及び6~10に係る特許は、いずれも特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、申立理由5では、本件発明1~3及び6~10についての特許を取り消すことはできない。
4 申立理由1(甲1の1を主たる証拠とする進歩性)について
(1)甲1の1に記載された事項等
ア 甲1の1に記載された事項
甲1の1にはキリンビール株式会社から発売されたビールである「キリン一番搾り 糖質ゼロ」に関し、次の事項が記載されている。
・「
[図:0001436190000001.jpg]
」
・「
[図:0001436190000002.jpg]
」
・「
[図:0001436190000003.jpg]
」
イ 甲1の1に記載された発明
上記アの記載事項を、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」に関して整理すると、甲1の1には次の発明が記載されていると認められる。
「糖質が0.5g/100ml未満であり、アルコール分が4%であり、酒税法上のビールである、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」。」(以下、「甲1の1発明」という。)
また、上記アには「キリン一番搾り 糖質ゼロ」の製法として「一番搾り製法」及び「新・糖質カット製法」を用いることの記載があり、さらに、「一番搾り製法」により雑味のない澄んだ麦のうまみを引き出すことについての記載もあるから、甲1の1には次の発明も記載されている。
「一番搾り製法を用いた麦汁ろ過工程と、
新・糖質カット製法を用いた仕込・発酵工程を含む、
糖質が0.5g/100ml未満であり、アルコール分が4%であり、酒税法上のビールである、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」の製造方法。」(以下、「甲1の1製法発明」という。)
「一番搾り製法を用いた麦汁ろ過工程と、
新・糖質カット製法を用いた仕込・発酵工程を含む、
糖質が0.5g/100ml未満であり、アルコール分が4%であり、酒税法上のビールである「キリン一番搾り 糖質ゼロ」において、雑味のない澄んだ麦のうまみを引き出す方法。」(以下、「甲1の1方法発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1の1発明との対比
両者を対比すると、甲1の1発明の「キリン一番搾り 糖質ゼロ」は、「酒税法上のビール」であるから、本件発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲1の1発明は「アルコール分が4%」であり、食品表示においてアルコール分は体積%で表されるから、本件発明1の「アルコール濃度が3~6v/v%である、」との特定事項を満たす。
してみると、両者の一致点、相違点は以下の通りである。
(一致点)
「ビールテイスト飲料であって、アルコール濃度が3~6v/v%である、ビールテイスト飲料。」
(相違点)
・相違点1-1-1
プリン体濃度について、本件発明1は「5mg/100mL以下である」と特定するのに対し、甲1の1発明はプリン体濃度が不明である点。
・相違点1-1-2
ピラジン類について、本件発明1は「2-メチルピラジンを0.5~30ppb含有し、かつ、2,6-ジメチルピラジンを0.5~5ppb含有し、」と特定するのに対し、甲1の1発明は各ピラジン類を含有するか否かを含めその含有量が不明である点。
・相違点1-1-3
麦芽使用比率について、本件発明1は「50%未満である、」と特定するのに対し、甲1の1発明は酒税法上のビールである点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1-1-3について検討する。
甲1の1発明は、酒税法上のビールであるから、その麦芽使用比率は50%以上である。よって、甲1の1発明が相違点1-1-3に係る本件発明1の特定事項を満たさないことは明らかであり、相違点1-1-3は実質的な相違点である。
そして、甲1の1発明は、酒税法上のビールとして販売されている製品であって、麦芽使用比率が50%未満であると酒税法上のビールとしての要件を満たさなくなるから、甲1の1発明の麦芽使用比率を変更して相違点1-1-3に係る本件発明1の特定事項を満たすものとすることには、阻害要因があるといえる。
よって、相違点1-1-3に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1の1発明並びに甲1の1及び他の全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書29~32頁において、甲1の1発明に甲1の2に記載の技術を組み合わせることにより、甲1の1発明の各ピラジン類含有量が本件発明1の特定事項を満たすものとなり、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができた旨を主張している。
しかしながら、上記(イ)で検討したとおり、相違点1-1-3に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1及び他の全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものとはいえない。よって、上記申立人の主張が妥当であるか否かにかかわらず、本件発明1は甲1の1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ)本件発明1についてのまとめ
以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1の1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2及び6~8について
本件発明2及び6~8は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記アで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び6~8は、いずれも甲1の1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明9について
本件発明9と甲1の1製法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1-1-4
製造するビールテイスト飲料の麦芽使用比率について、本件発明9は「50%未満である」と特定するのに対し、甲1の1製法発明は酒税法上のビールである点。
相違点1-1-4について検討すると、相違点1-1-4は実質的に上記相違点1-1-3と同じ内容の相違点であり、上記アと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は甲1の1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明10について
本件発明10と甲1の1方法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1-1-5
ビールテイスト飲料の麦芽使用比率について、本件発明10は「50%未満である」と特定するのに対し、甲1の1方法発明は酒税法上のビールである点。
相違点1-1-5について検討すると、相違点1-1-5は実質的に上記相違点1-1-3と同じ内容の相違点であり、上記アと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明10は甲1の1方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由1(甲1の1を主たる証拠とする進歩性)のまとめ
以上まとめると、本件発明1、2及び6~10は、いずれも甲1の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
よって、申立理由1の理由では、本件特許の請求項1、2及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由2(甲1の2を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1)甲1の2に記載された事項等
ア 甲1の2に記載された事項
甲1の2にはキリンビール株式会社から刷新されて新発売されたビールである「キリン一番搾り 糖質ゼロ」に関し、次の事項が記載されている。
・「
[図:0001436190000004.jpg]
」
・「
[図:0001436190000005.jpg]
」
・「
[図:0001436190000006.jpg]
」
・「
[図:0001436190000007.jpg]
」
イ 甲1の2に記載された発明
上記アの記載事項を、刷新された「キリン一番搾り 糖質ゼロ」に関して整理すると、甲1の2には次の発明が記載されていると認められる。
「食品表示基準による糖質がゼロであり、アルコール分が5%であり、酒税法上のビールである、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」。」(以下、「甲1の2発明」という。)
また、上記アには「キリン一番搾り 糖質ゼロ」の製法として「一番搾り製法」及び「新・糖質カット製法」で醸造したことの記載があり、さらに、麦芽を増量しホップ配合を見直すことで、一口目に感じるビールの飲みごたえを向上させ、後味はすっきりと澄んだ味わいを実現したことについての記載もあるから、甲1の2には次の発明も記載されている。
「一番搾り製法を用いた麦汁ろ過工程と、
新・糖質カット製法を用いた醸造工程を含む、
食品表示基準による糖質がゼロであり、アルコール分が5%であり、酒税法上のビールである、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」の製造方法。」(以下、「甲1の2製法発明」という。)
「一番搾り製法を用いた麦汁ろ過工程と、
新・糖質カット製法を用いた醸造工程を含む、
食品表示基準による糖質がゼロであり、アルコール分が5%であり、酒税法上のビールである、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」において、一口目に感じるビールの飲みごたえを向上させ、後味はすっきりと澄んだ味わいを実現する方法。」(以下、「甲1の2方法発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1の2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1-2-1
麦芽使用比率について、本件発明1は「50%未満である、」と特定するのに対し、甲1の2発明は酒税法上のビールである点。
相違点1-2-1について検討すると、相違点1-2-1は実質的に上記相違点1-1-3と同じ内容の相違点であり、上記4(2)アと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1の2発明ではなく、甲1の2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2、6及び7について
本件発明2、6及び7は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記アで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2、6及び7はいずれも甲1の2発明ではなく、甲1の2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明9について
本件発明9と甲1の2製法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1-2-2
製造するビールテイスト飲料の麦芽使用比率について、本件発明9は「50%未満である」と特定するのに対し、甲1の2製法発明は酒税法上のビールである点。
相違点1-2-2について検討すると、相違点1-2-2は実質的に上記相違点1-2-1と同じ内容の相違点であり、上記アと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は甲1の2製法発明ではなく、甲1の2製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明10について
本件発明10と甲1の2方法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1-2-3
ビールテイスト飲料の麦芽使用比率について、本件発明10は「50%未満である」と特定するのに対し、甲1の2方法発明は酒税法上のビールである点。
相違点1-2-3について検討すると、相違点1-2-3は実質的に上記相違点1-2-1と同じ内容の相違点であり、上記アと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明10は甲1の2方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由2(甲1の2を主たる証拠とする新規性・進歩性)のまとめ
以上まとめると、本件発明1、2、6、7、9及び10は、いずれも甲1の2に記載された発明ではないから特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、甲1の2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
よって、申立理由2の理由では、本件特許の請求項1、2、6、7、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。
6 申立理由3(甲1の3を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1)甲1の3に記載された事項等
ア 甲1の3に記載された事項
甲1の3にはキリンビール株式会社からリニューアル発売されたビールである「キリン一番搾り 糖質ゼロ」に関し、次の事項が記載されている。
・「
[図:0001436190000008.jpg]
」
・「
[図:0001436190000009.jpg]
」
・「
[図:0001436190000010.jpg]
」
イ 甲1の3に記載された発明
上記アの記載事項を、リニューアルされた「キリン一番搾り 糖質ゼロ」に関して整理すると、甲1の3には次の発明が記載されていると認められる。
「食品表示基準による糖質がゼロであり、アルコール分が5%であり、酒税法上のビールである、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」。」(以下、「甲1の3発明」という。)
また、上記アには「キリン一番搾り 糖質ゼロ」を製造するにあたりトラディションホップを増量するとともにザーツホップを用いたこと、及び、それによりビールとしての飲みごたえを高めながら雑味が無く飲みやすい後味を実現したことについての記載があるから、甲1の3には次の発明も記載されている。
「増量されたトラディションホップとザーツホップとを用いる工程を含む、
食品表示基準による糖質がゼロであり、アルコール分が5%であり、酒税法上のビールである、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」の製造方法。」(以下、「甲1の3製法発明」という。)
「増量されたトラディションホップとザーツホップとを用いる工程を含む、
食品表示基準による糖質がゼロであり、アルコール分が5%であり、酒税法上のビールである、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」の製造において、ビールとしての飲みごたえを高めながら雑味が無く飲みやすい後味を実現する方法。」(以下、「甲1の3方法発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1の3発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1-3-1
麦芽使用比率について、本件発明1は「50%未満である、」と特定するのに対し、甲1の3発明は酒税法上のビールである点。
相違点1-3-1について検討すると、相違点1-3-1は実質的に上記相違点1-1-3と同じ内容の相違点であり、上記4(2)アと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1の3発明ではなく、甲1の3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2、6及び7について
本件発明2、6及び7は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記アで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2、6及び7はいずれも甲1の3発明ではなく、甲1の3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明9について
本件発明9と甲1の3製法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1-3-2
製造するビールテイスト飲料の麦芽使用比率について、本件発明9は「50%未満である」と特定するのに対し、甲1の3製法発明は酒税法上のビールである点。
相違点1-3-2について検討すると、相違点1-3-2は実質的に上記相違点1-3-1と同じ内容の相違点であり、上記アと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は甲1の3製法発明ではなく、甲1の3製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明10について
本件発明10と甲1の3方法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点1-3-3
ビールテイスト飲料の麦芽使用比率について、本件発明10は「50%未満である」と特定するのに対し、甲1の3方法発明は酒税法上のビールである点。
相違点1-3-3について検討すると、相違点1-3-3は実質的に上記相違点1-3-1と同じ内容の相違点であり、上記アと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明10は甲1の3方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由3(甲1の3を主たる証拠とする新規性・進歩性)のまとめ
以上まとめると、本件発明1、2、6、7、9及び10は、いずれも甲1の3に記載された発明ではないから特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、甲1の3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
よって、申立理由3の理由では、本件特許の請求項1、2、6、7、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。
7 申立理由4(甲2を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2にはキリンビール株式会社から発売された新ジャンルビールである「濃い味 糖質0」に関し、次の事項が記載されている。
・「
[図:0001436190000011.jpg]
」(1頁)
・「
[図:0001436190000012.jpg]
」(3頁)
・「
[図:0001436190000013.jpg]
」(4頁)
・「
[図:0001436190000014.jpg]
」(18頁)
・「
[図:0001436190000015.jpg]
[図:0001436190000016.jpg]
」(20~21頁)
イ 甲2に記載された発明
上記アの記載事項を新ジャンルビールである「濃い味糖質0」に関して整理すると、甲2には次の発明が記載されていると認められる。
「キリンビール独自のコク味付与技術及びカラメル麦芽を用いて製造され、アルコール分2.5%以上3.5%未満、糖質3.1g/100ml、プリン体0.6~1.7mg/100mlである、リキュール(発泡性)(1)の新ジャンルビールである「濃い味糖質0」。」(以下、「甲2発明」という。なお、丸数字はシステム上表記できないため括弧付きの数字で代用した。以下同様。)
また、上記アには「濃い味糖質0」の製造、及び、コク味付与技術及びカラメル麦芽を用いることにより深みがある濃い味を出したことについての記載もあるから、甲2には次の発明も記載されている。
「キリンビール独自のコク味付与技術及びカラメル麦芽を用いる工程を含む、アルコール分2.5%以上3.5%未満、糖質3.1g/100ml、プリン体0.6~1.7mg/100mlである、リキュール(発泡性)(1)の新ジャンルビールである「濃い味糖質0」の製造方法。」(以下、「甲2製法発明」という。)
「キリンビール独自のコク味付与技術及びカラメル麦芽を用いる工程を含む、アルコール分2.5%以上3.5%未満、糖質3.1g/100ml、プリン体0.6~1.7mg/100mlである、リキュール(発泡性)(1)の新ジャンルビールである「濃い味糖質0」の製造において深みがある濃い味を付与する方法。」(以下、「甲2方法発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲2発明との対比
両者を対比すると、甲2発明は、リキュール(発泡性)(1)の新ジャンルビールであって、通常に製造されたビール様の風味を有する飲料であるから、本件発明1における「ビールテイスト飲料」(本件明細書の【0009】~【0010】)に相当する。また、甲2発明は、リキュール(発泡性)(1)の飲料であって、麦芽使用比率が50%未満である発泡酒とその他のアルコールから製造されるものであるから、本件発明1の「麦芽使用比率が50%未満である、」との特定事項を満たす。
さらに、甲2発明は、プリン体濃度が0.6~1.7mg/100mlであるから、本件発明1の「プリン体濃度が5mg/100mL以下である」との特定事項を満たす。
してみると、両者の一致点、相違点は以下の通りである。
(一致点)
「プリン体濃度が5mg/100mL以下であるビールテイスト飲料であって、麦芽使用比率が50%未満である、ビールテイスト飲料。」
(相違点)
・相違点2-1
ピラジン類について、本件発明1は「2-メチルピラジンを0.5~30ppb含有し、かつ、2,6-ジメチルピラジンを0.5~5ppb含有し、」と特定するのに対し、甲2発明は各ピラジン類を含有するか否かを含めその含有量が不明である点。
・相違点2-2
アルコール濃度について、本件発明1は「3~6v/v%であり、」と特定するのに対し、甲2発明は「アルコール分2.5%以上3.5%未満」である点。
(イ)相違点についての判断
相違点2-1について検討する。
甲2及び他のいずれの証拠にも、甲2発明におけるピラジン類の含有量を示す記載はなく、甲2発明の2-メチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの含有量は不明である。よって相違点2-1は実質的な相違点である。
さらに、甲2及び他のいずれの証拠にも、甲2発明におけるピラジン類の含有量に着目し、これを調整することを動機付ける記載はないから、甲2発明において相違点2-1に係る本件発明1の特定事項を満たすものとすることは、甲2及び他の全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)申立人の主張について
上記相違点2-1に関し、申立人は、特許異議申立書40~42頁において以下のように主張している。
「甲2発明は、「キリンのどごし<生>」で培ったコク味付与技術を採用し、深みのある味わいとボディ感をつくりあげたところ、甲3~甲5を参照すれば、当該コク味付与技術とは、甲4及び甲5に記載された技術であると解される。そして、甲4及び甲5に記載された技術は、「糖とタンパク分解物とのメイラード反応物またはその調製物を用いて発酵アルコール飲料の液色および風味を調整する」ものであるから、甲2発明は、メイラード反応物を含むものである。なお、仮にコク味付与技術と、甲4及び甲5に記載された技術が同一ではなかったとしても、甲3-甲5を参照して、甲4及び甲5に記載された技術を採用することは当業者が容易になし得たことである。
そして、甲2発明は、麦芽のコクが感じられ、程よい飲みごたえ感があり、重みや厚み感が高く、うまく、深く味が濃いものであり、ビール感に優れるものであり、これらの効果は、本件発明が奏するとされている「中後半の厚み、重厚な味わいおよびバランスが良好」という効果と区別がつかない。すなわち、甲2発明は、メイラード反応物を含み、本件発明と同じ効果を奏するものであるから、2-メチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの含有量が、本件発明で特定している範囲内である蓋然性が高い。」
上記主張について検討する。
甲2及び甲2の2には、「濃い味糖質0」が「キリンのどごし<生>」で培ったコク味付与技術を採用している旨が記載され、甲3には「キリンのどごし<生>」が、特許技術である「ブラウニング製法」及びそれを改良した「新ブラウニング製法」を用いていることが記載されている。さらに、甲4及び甲5には、それぞれ「ブラウニング製法」及び「新ブラウニング製法」の技術についての記載がされている。
しかしながら、甲2及び甲2の2の記載を参酌しても、「濃い味糖質0」に用いられているコク味付与技術が、甲3の「ブラウニング製法」もしくは「新ブラウニング製法」に該当する技術か否かは明らかでない。また仮に、「濃い味糖質0」の製造に甲4の「ブラウニング製法」又は甲5の「新ブラウニング製法」が用いられていたとしても、甲4及び甲5にはメイラード反応物を用いる旨の記載はあるものの、2-メチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンに関する記載はなく、甲2発明に「ブラウニング製法」又は「新ブラウニング製法」を適用したときに必ず相違点2-1に係る本件発明1の特定事項を満たすとはいえない。
さらに、申立人は、甲2発明が有する良好な風味は本件発明の効果と区別できないことを根拠に、甲2発明の2-メチルピラジン及び2,6-ジメチルピラジンの含有量が本件発明1の範囲内である蓋然性が高いと主張している。しかし、甲2及び甲2の2に記載された甲2発明の「厚み」「ビール感」等の風味は、本件特許の実施例における官能評価の基準とは異なる。また、ビールテイスト飲料の風味はピラジン類以外の多様な成分によっても左右されるところ、甲2発明の風味が具体的にどの成分に起因するかも不明である。そうすると、甲2及び甲2の2の風味に関する記載を参酌しても、甲2発明が相違点2-1に係る本件発明1の特定事項を満たす蓋然性が高いということはできない。
以上のとおり、特許異議申立書における申立人の主張は採用できない。
(エ)本件発明1についてのまとめ
以上まとめると、相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項は、実質的な相違点であり、甲2及び他の全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2及び6~8について
本件発明2及び6~8は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記アで検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2及び6~8はいずれも甲2発明ではなく、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明9について
本件発明9と甲2製法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点2-3
本件発明9は「製造された飲料の2-メチルピラジン濃度が0.5~30ppbとなり、かつ、製造された飲料の2,6-ジメチルピラジン濃度が0.5~5ppbとなるように2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンを含有させる工程を含む、」と特定するのに対し、甲2製法発明はそのような工程を含まない点。
相違点2-3について検討すると、相違点2-3は実質的に上記相違点2-1と同じ内容の相違点であり、上記アと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は甲2製法発明ではなく、甲2製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明10について
本件発明10と甲2方法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点2-4
本件発明10は「製造された飲料の2-メチルピラジン濃度が0.5~30ppbとなり、かつ、製造された飲料の2,6-ジメチルピラジン濃度が0.5~5ppbとなるように2-メチルピラジンおよび/または2,6-ジメチルピラジンを含有させる工程を含む、」と特定するのに対し、甲2方法発明はそのような工程を含まない点。
相違点2-4について検討すると、相違点2-4は実質的に上記相違点2-1と同じ内容の相違点であり、上記アと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明10は甲2方法発明ではなく、甲2方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由4(甲2を主たる証拠とする新規性・進歩性)のまとめ
以上まとめると、本件発明1、2及び6~10は、いずれも甲2に記載された発明ではないから特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
よって、申立理由4の理由では、本件特許の請求項1、2及び6~10に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、本件発明1~3及び6~10についての特許を取り消すことはできない。また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項4及び5は訂正により削除され、これにより、本件発明4及び5についての特許に係る特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700556