特許異議申立
2024-700038
ビールテイスト飲料
- 審判番号
- 2024-700038
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-213293
- 登録番号
- 7312237
- 請求日
- 2024年01月19日
- 審決日
- 2025年05月26日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】小林 浩
- 【権利者代理人】古橋 伸茂
- 【権利者代理人】石原 俊秀
- 【権利者代理人】末広 尚也
- 【異議申立人】寺村 祥幸
- 【異議申立人】齊藤 恵美子
- 審判長/審判官
- 審判長 淺野 美奈
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C) / P1651.536-YAA(C12C) / P1651.537-YAA(C12C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7312237号発明「ビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7312237号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3-5〕、2、6、7、8、9、10、11、12について訂正することを認める。
特許第7312237号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7312237号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和3年12月27日を出願日とする特許出願であって、令和5年7月11日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和6年1月19日に特許異議申立人 寺村 祥幸(以下、「特許異議申立人A」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:全請求項)がされ、さらに、同年同月同日に特許異議申立人 齊藤 恵美子(以下、「特許異議申立人B」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:全請求項)がされ、同年2月21日に特許異議申立人Bより特許異議申立書に対する手続補正書が提出され、同年同月22日に特許異議申立人Aより特許異議申立書に対する手続補正書が提出され、同年5月17日付けで取消理由が通知され、同年7月19日に特許権者 サントリーホールディングス株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月25日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年8月14日に特許異議申立人Bから意見書が提出され、同年同月29日に特許異議申立人Aから意見書が提出され、同年11月29日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和7年1月27日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされたものである。
なお、令和6年7月19日になされた訂正請求については、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものと見なす。
また、本件は、既に特許異議申立人A及びBに意見書を提出する機会が与えられている場合であって、訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえてさらに審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したため、特許法第120条の5第5項ただし書きの「特別の事情」に該当し、改めて特許異議申立人A及びBに意見書を提出する機会を与えないものとする。
第2 訂正の適否について
1 請求の趣旨
令和7年1月27日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)における請求の趣旨は、訂正請求書の「6 請求の趣旨」に記載のとおり、「特許第7312237号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「リアルエキス濃度が6.5質量%以下、アルコール度数が12.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料。」
と記載されているのを、
「色度が20EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が14.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
に訂正する。
請求項1の記載を引用して特定する請求項5も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「色度が5.0EBC以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「色度が30EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が3.0以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
に訂正する。
(3) 訂正事項3
ア 訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項3に
「ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項1を直接引用するものについて、独立形式に改め、
「色度が30EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
リアルエキス濃度が6.5質量%以下、アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上80質量%以下であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料であって、
ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、
ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
に訂正する。
請求項3の記載を引用して特定する請求項5も同様に訂正する。
イ 訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項3に
「ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「色度が20EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上72質量%以下であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料であって、
ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、
ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
と記載し、新たに請求項8とする。
(4) 訂正事項4
ア 訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項4に
「遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上である、請求項1~3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項1を直接引用するものについて、独立形式に改め、
「色度が80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上66.6質量%以下であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
に訂正する。
請求項4の記載を引用して特定する請求項5も同様に訂正する。
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項4に
「遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上である、請求項1~3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項1を直接引用する請求項2を直接引用するものについて、独立形式に改め、
「遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上であり、
色度が5.0EBC以上80.0EBC以下であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が15.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
と記載し、新たに請求項9とする。
ウ 訂正事項4-3
特許請求の範囲の請求項4に
「遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上である、請求項1~3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項1を引用する請求項3を直接引用するものについて、独立形式に改め、
「遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が15.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上85質量%以下であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料であって、
ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、
ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
と記載し、新たに請求項10とする。
エ 訂正事項4-4
特許請求の範囲の請求項4に
「遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上である、請求項1~3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」
とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、
「色度が30EBC以上80.0EBC以下であり、
遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が15.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料であって、
ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、
ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
と記載し、新たに請求項11とする。
(5) 訂正事項5
ア 訂正事項5-1
特許請求の範囲の請求項5に
「下記式(1)を満たす、請求項1~4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
式(1):Y/X≦0.8
[上記式(1)中、Xは前記ビールテイスト飲料の遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量(単位:mg/100mL)を示し、Yは前記ビールテイスト飲料のリアルエキス濃度(単位:質量%)を示す。]」
とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「色度が20EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が14.0(v/v)%以上17.0(v/v)%以下、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
下記式(1)を満たし、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。
式(1):Y/X≦0.8
[上記式(1)中、Xは前記ビールテイスト飲料の遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量(単位:mg/100mL)を示し、Yは前記ビールテイスト飲料のリアルエキス濃度(単位:質量%)を示す。]」
と記載し、新たに請求項12とする。
イ 訂正事項5-2
特許請求の範囲の請求項5に
「下記式(1)を満たす、請求項1~4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
式(1):Y/X≦0.8
[上記式(1)中、Xは前記ビールテイスト飲料の遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量(単位:mg/100mL)を示し、Yは前記ビールテイスト飲料のリアルエキス濃度(単位:質量%)を示す。]」
とあるうち、請求項1、3及び4を引用するものについて、
「下記式(1)を満たす、請求項1、3及び4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
式(1):Y/X≦0.8
[上記式(1)中、Xは前記ビールテイスト飲料の遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量(単位:mg/100mL)を示し、Yは前記ビールテイスト飲料のリアルエキス濃度(単位:質量%)を示す。]」
に訂正する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「アルコール度数が12.0(v/v)%以上となるように発酵させる発酵工程を有する、リアルエキス濃度が6.5質量%以下、および、麦芽比率が50質量%以上のビールテイスト飲料の製造方法。」
と記載されているのを、
「色度が20EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
アルコール度数が14.0(v/v)%以上となるように発酵させる発酵工程を有する、リアルエキス濃度が6.0質量%以下、および、麦芽比率が50質量%以上のビールテイスト飲料の製造方法
(但し、麦芽比率が100質量%のビールの製造方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの製造方法を除く)。」
に訂正する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「リアルエキス濃度が6.5質量%以下、アルコール度数が12.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上となるように調整する工程を有する、原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれないビールテイスト飲料の香味改善方法。」
と記載されているのを、
「色度が20EBC以上80.0EBC以下、アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上、
リアルエキス濃度が6.5質量%以下、アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上となるように調整する工程を有する、原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれないビールテイスト飲料の香味改善方法
(但し、麦芽比率が100質量%のビールの香味改善方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの香味改善方法を除く)。」
に訂正する。
(7) 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし5のうち、請求項2ないし5はそれぞれ請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、訂正前の請求項1ないし5に対応する訂正後の請求項1ないし5及び8ないし12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の適否についての検討
(1) 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、請求項1のビールテイスト飲料について、「色度が20EBC以上80.0EBC以下」であること、「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」であること、「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であること、「アルコール度数が14.0(v/v)%以上」であること、「但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】、【0012】、【0018】及び【0072】の実施例21等の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項1の記載を引用して特定する請求項5についても同様である。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、訂正前の請求項2が請求項1を引用する形式であったものを独立形式に書き改めるとともに「色度が30EBC以上80.0EBC以下」であること、「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が3.0以上」であること、「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であること、「アルコール度数が13.0(v/v)%以上」であること、「但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであることを特定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】、【0010】、【0012】、【0018】及び【0072】の実施例32の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(3) 訂正事項3について
ア 訂正事項3-1について
訂正事項3-1に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3が請求項1または2を引用する形式であったもののうち、請求項1を直接引用するものについて独立形式に書き改めるとともに、「色度が30EBC以上80.0EBC以下」であること、「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」であること、「アルコール度数が13.0(v/v)%以上」であること、「麦芽比率が50質量%以上80質量%以下」であること、「但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであることを特定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3-1に係る請求項3の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】、【0012】、【0018】、【0026】及び【0072】の実施例32の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項3の記載を引用して特定する請求項5についても同様である。
イ 訂正事項3-2について
訂正事項3-2に係る請求項8の訂正は、訂正前の請求項3が請求項1または2を引用する形式であったもののうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて独立形式に書き改めて新たに請求項8とするとともに、「色度が20EBC以上80.0EBC以下」であること、「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」であること、「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であること、「アルコール度数が13.0(v/v)%以上」であること、「麦芽比率が50質量%以上72質量%以下」であること、「但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであることを特定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3-2に係る請求項8の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】、【0010】、【0012】、【0018】、【0026】及び【0072】の実施例21の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(4) 訂正事項4について
ア 訂正事項4-1について
訂正事項4-1に係る請求項4の訂正は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれかを引用する形式であったもののうち、請求項1を直接引用するものについて独立形式に書き改めるとともに、「色度が80.0EBC以下」であること、「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」であること、「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であること、「アルコール度数が13.0(v/v)%以上」であること、「麦芽比率が50質量%以上66.6質量%以下」であること、「但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであることを特定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4-1に係る請求項4の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】、【0010】、【0012】、【0018】、【0026】及び実施例22等の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項4の記載を引用して特定する請求項5についても同様である。
イ 訂正事項4-2について
訂正事項4-2に係る請求項9の訂正は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれかを引用する形式であったもののうち、請求項1を引用する請求項2を直接引用するものについて独立形式に書き改めて新たに請求項9とするとともに、「色度が5.0EBC以上80.0EBC以下」であること、「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であること、「アルコール度数が15.0(v/v)%以上」であること、「但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであることを特定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4-2に係る請求項9の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】、【0010】、【0018】及び【0026】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
ウ 訂正事項4-3について
訂正事項4-3に係る請求項10の訂正は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれかを引用する形式であったもののうち、請求項1を引用する請求項3を直接引用するものについて独立形式に書き改めて新たに請求項10とするとともに、「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であること、「アルコール度数が15.0(v/v)%以上」であること、「麦芽比率が50質量%以上85質量%以下」であること、「但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであることを特定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4-3に係る請求項10の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】、【0010】及び【0026】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
エ 訂正事項4-4について
訂正事項4-4に係る請求項11の訂正は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれかを引用する形式であったもののうち、請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を引用するものについて独立形式に書き改めて新たに請求項11とするとともに、「色度が30EBC以上80.0EBC以下」であること、「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であること、「アルコール度数が15.0(v/v)%以上」であること、「但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであることを特定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4-4に係る請求項11の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】、【0010】、【0018】及び【0026】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(5) 訂正事項5について
ア 訂正事項5-1について
訂正事項5-1に係る請求項12の訂正は、訂正前の請求項5が請求項1~4のいずれかを引用する形式であったもののうち、請求項1を引用する請求項2を直接引用するものについて独立形式で書き改めて新たに請求項12とするとともに、「色度が30EBC以上80.0EBC以下」であること、「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であること、「アルコール度数が14.0(v/v)%以上17.0(v/v)%以下」であること、「但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであることを特定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5-1に係る請求項12の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】、【0010】、【0018】、【0026】及び【0072】の実施例21の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
イ 訂正事項5-2について
訂正事項5-2に係る請求項5の訂正は、訂正前の請求項5が「請求項1~4のいずれか」の記載を引用するものであったところ、「請求項1、3及び4のいずれか」の記載を引用するものとするもの、すなわち、請求項2の記載を引用するものを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項5-2に係る請求項5の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(6) 訂正事項6について
訂正事項6に係る請求項6の訂正は、請求項6のビールテイスト飲料の製造方法について、「色度が20EBC以上80.0EBC以下」であること、「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」であること、「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であること、「アルコール度数が14.0(v/v)%以上」であること、「但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6に係る請求項6の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】、【0010】、【0012】、【0018】及び【0072】の実施例21の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(7) 訂正事項7について
訂正事項7に係る請求項7の訂正は、請求項7のビールテイスト飲料の香味改善方法について、「色度が20EBC以上80.0EBC以下」であること、「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」であること、「アルコール度数が13.0(v/v)%以上」であること、「但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項7に係る請求項7の訂正は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【0008】、【0012】、【0018】及び【0072】の実施例21の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
(8) 別の訂正単位とする求めについて
特許権者は、訂正請求書において訂正後の請求項2、3、4、8、9、10、11及び12については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。
そこで検討するに、訂正後の請求項5は「請求項1、3及び4のいずれか」を引用するものであるから、訂正後の請求項1、3ないし5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
よって、訂正後の請求項1ないし12について、訂正後の訂正単位ごとに分けると、〔1、3-5〕、2、6、7、8、9、10、11、12になると判断される。
4 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3-5〕、2、6、7、8、9、10、11、12について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1、3-5〕、2、6、7、8、9、10、11、12について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明12」という。また、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明12」をまとめて、「本件特許発明」という場合がある。)は、令和7年1月27日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
色度が20EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が14.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。
【請求項2】
色度が30EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が3.0以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。
【請求項3】
色度が30EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
リアルエキス濃度が6.5質量%以下、アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上80質量%以下であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料であって、
ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、
ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。
【請求項4】
色度が80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上66.6質量%以下であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。
【請求項5】
下記式(1)を満たす、請求項1、3及び4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。
式(1):Y/X≦0.8
[上記式(1)中、Xは前記ビールテイスト飲料の遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量(単位:mg/100mL)を示し、Yは前記ビールテイスト飲料のリアルエキス濃度(単位:質量%)を示す。]
【請求項6】
色度が20EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
アルコール度数が14.0(v/v)%以上となるように発酵させる発酵工程を有する、リアルエキス濃度が6.0質量%以下、および、麦芽比率が50質量%以上のビールテイスト飲料の製造方法
(但し、麦芽比率が100質量%のビールの製造方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの製造方法を除く)。
【請求項7】
色度が20EBC以上80.0EBC以下、アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上、
リアルエキス濃度が6.5質量%以下、アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上となるように調整する工程を有する、原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれないビールテイスト飲料の香味改善方法
(但し、麦芽比率が100質量%のビールの香味改善方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの香味改善方法を除く)。
【請求項8】
色度が20EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上72質量%以下であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料であって、
ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、
ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。
【請求項9】
遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上であり、
色度が5.0EBC以上80.0EBC以下であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が15.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。
【請求項10】
遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が15.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上85質量%以下であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料であって、
ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、
ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。
【請求項11】
色度が30EBC以上80.0EBC以下であり、
遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が3mg/100mL以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が15.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料であって、
ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、
ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。
【請求項12】
色度が20EBC以上80.0EBC以下であり、
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上であり、
リアルエキス濃度が6.0質量%以下、アルコール度数が14.0(v/v)%以上17.0(v/v)%以下、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
下記式(1)を満たし、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。
式(1):Y/X≦0.8
[上記式(1)中、Xは前記ビールテイスト飲料の遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量(単位:mg/100mL)を示し、Yは前記ビールテイスト飲料のリアルエキス濃度(単位:質量%)を示す。]」
第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について
1 特許異議申立人Aが申し立てた請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1) 申立理由A1-1(甲第A1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2) 申立理由A1-2(甲第A2号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3) 申立理由A1-3(甲第A3号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4) 申立理由A1-4(甲第A4号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(5) 申立理由A1-5(甲第A5号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(6) 申立理由A1-6(甲第A6号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(7) 申立理由A1-7(甲第A7号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(8) 申立理由A1-8(甲第A8号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(9) 申立理由A1-9(甲第A9号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(10) 申立理由A2-1(甲第A1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(11) 申立理由A2-2(甲第A2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(12) 申立理由A2-3(甲第A3号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(13) 申立理由A2-4(甲第A4号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(14) 申立理由A2-5(甲第A5号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A5号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(15) 申立理由A2-6(甲第A6号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A6号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(16) 申立理由A2-7(甲第A7号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A7号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(17) 申立理由A2-8(甲第A8号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A8号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(18) 申立理由A2-9(甲第A9号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A9号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(19) 申立理由A3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由A3の具体的理由は次のとおりである。
ア 申立理由A3-1
本件特許発明1は、リアルエキス濃度が6.5質量%以下、アルコール度数が12.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料である。
また、本件特許明細書の段落【0004】の記載から、本件特許発明が解決しようとする課題は、刺激感を有し、さらに、爽快な味わいを有するビールテイスト飲料を提供することにあると認められる。そして、本件特許明細書の実施例では、実施例1~39及び比較例1~11のビールテイスト飲料が調製され、「刺激感」、「スッキリした爽快な味わい」についての官能評価を行い、これらの評価結果に基づき「総合評価」を行っている。
ここで、実施例1~39及び比較例1~11のビールテイスト飲料の製造方法は、本件特許明細書の段落【0065】及び【0066】に記載される以下の点で共通しているところ、段落【0072】【表1】【表2】に示されるアルコール度数、リアルエキス、遊離アミノ態窒素、麦芽比率、色度の値は様々である。
<ビールテイスト飲料の製造方法の共通点>
粉砕した大麦麦芽を温水120Lが入った仕込槽に投入した後、段階的に温度を上げて保持し、ろ過して麦芽粕等を除去した。ろ過後、当該原料液およびホップを煮沸釜に投入し、表に記載の麦芽比率になるように糖液を添加し、温水で100Lに調整して熱麦汁を得た。なお、麦芽比率100%のビールテイスト飲料については糖液を添加しなかった。
得られた熱麦汁を冷却し、酸素による通気を実施することで酵母添加前の発酵前液60Lを得た。
このようにして得られた発酵前液にビール酵母(上面発酵酵母)を添加して約1週間発酵させた後、さらに約1週間の熟成期間を経て、酵母をろ過で除去して、エキス調整水を添加しビールテイスト飲料を調製した。
そして、アルコール度数、リアルエキス、遊離アミノ態窒素、麦芽比率、色度の値が異なるビールテイスト飲料が調製されている点について、本件特許明細書の段落【0066】には、以下の記載がある(下線は申立人が付けた)。
「それぞれの実施例および比較例において、麦芽やホップ等の原材料の量や種類、マッシングパターン、多糖分解酵素の種類、添加量および添加のタイミング、麦汁を調製する際の各温度領域の設定温度、保持時間、pH調整、麦汁油過時の濁度、ホップの添加タイミング、煮沸時間、発酵条件、等を適宜設定し、表1および表2に示すリアルエキス濃度、アルコール度数および遊離アミノ体窒素(FAN)の含有量となるように調整した。」
段落【0066】の「等」の記載から、リアルエキス濃度、アルコール度数および遊離アミノ態窒素(FAN)含有量の調整のために、ここで列挙される手段とは異なる手段で行われたことが分かる。
そして、本件特許明細書には、リアスエキス濃度、アルコール度数および遊離アミノ態窒素(FAN)含有量の調整について、以下の記載がある(下線は申立人が付けた)。
「アルコール度数の調整は、希釈水または炭酸水の添加、原材料(麦芽、コーングリッツ、糖液等)の種類、原材料の量、酵素の種類、酵素の添加量、酵素の添加のタイミング、仕込槽で糖化時間、仕込槽でのタンパク分解時間、仕込槽でのpH、仕込工程(麦芽投入から酵母添加前での麦汁製造工程)でのpH、pH調整の際に使用する酸の添加量、pH調整のタイミング(仕込時、発酵時、発酵完了時、ビール濾過前、ビール濾過後など)、麦汁を調製する際(糖化時含む)の各温度領域の設定温度及び保持時間、発酵前液のオリジナルエキス濃度、発酵工程でのオリジナルエキス濃度、発酵条件(酸素濃度、通気条件、酵母品種、酵母の添加量、酵母増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、圧力設定、二酸化炭素濃度等)、エタノールの添加、エタノール組成物(原料用アルコール、焼酎、泡盛、ウイスキー、ブランデー、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン等のスピリッツ(蒸留酒)、醸造アルコール等)の添加等を適宜設定して行うことができる。」(段落【0009】)
「リアルエキス濃度の調整は、希釈水または炭酸水の添加、原材料(麦芽、コーングリッツ、糖液等)の種類、麦芽の粉砕粒度、麦芽の粉砕様式(湿式粉砕、乾式粉砕など)、麦芽粉砕時の湿度(調湿の程度)、麦芽粉砕時の温度、麦芽粉砕の際に使用するミルの種類、原材料の量、酵素の種類、酵素の添加量、酵素の添加のタイミング、酵素分解の時間、仕込槽で糖化時間、仕込槽でのタンパク分解時間、仕込槽でのpH、仕込工程(麦芽投入から酵母添加前での麦汁製造工程)でのpH、pH調整の際に使用する酸の添加量、pH調整のタイミング(仕込時、発酵時、発酵完了時、ビール濾過前、ビール濾過後など)、麦汁を調製する際(糖化時含む)の各温度領域の設定温度及び保持時間、麦汁濾過の時間、麦汁濾過時の温度、麦汁濾過時のpH、麦汁濾過での麦汁回収量、麦汁濾過時のスパージング水の量、麦汁濾過時のスパージング水のpH、麦汁濾過時のスパージング水の温度、発酵条件(酸素濃度、通気条件、酵母品種、酵母の添加量、酵母増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、圧力設定、二酸化炭素濃度等)、スピリッツや醸造アルコールなどの添加等を適宜設定して行うことができる。」(段落【0011】)
「FANの含有量の調整は、希釈水または炭酸水の添加、スピリッツなどの蒸留酒の添加、醸造アルコールなどの醸造酒の添加、原材料(麦芽、コーングリッツ、糖液等)の種類、原材料の量、酵素の種類、酵素(タンパク分解酵素等も含む)の添加量、酵素反応時の温度、酵素の添加のタイミング、仕込槽でのタンパク分解時間、仕込槽でのpH、仕込槽での温度、仕込工程(麦芽投入から酵母添加前までの麦汁製造工程)でのpH、仕込工程での温度、麦汁濾過の時間、麦汁を調製する際の各温度領域の設定温度及び保持時間、煮沸工程での煮沸時間及びpH、発酵前液のオリジナルエキス濃度、発酵工程でのオリジナルエキス濃度、発酵条件(酸素濃度、通気条件、酵母品種、酵母の添加量、酵母増殖数、酵母の除去タイミング、発酵温度、発酵時間、圧力設定、二酸化炭素濃度等)等を適宜設定して行うことができる。」(段落0014)
そうすると、実施例1~39及び比較例1~11のビールテイスト飲料の製造方法では、段落【0066】の「等」の記載から、段落【0066】に列挙される手段とは異なる手段として、上記段落【0009】、【0011】及び【0014】に記載される手段、例えば、エタノールの添加やエタノール添加物の添加も行われていたと解される。してみると、実施例1~39のビールテイスト飲料が、原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれないビールテイスト飲料であるかどうか判断することができず、ひいては、これらのビールテイスト飲料が本件特許発明1に係るビールテイスト飲料であるかどうかも判断することができない。
よって、本件特許明細書の実施例では、刺激感及び爽快な味わいのスコアが高く、総合評価がA乃至Sの実施例1~39のビールテイスト飲料が示されているものの、当該ビールテイスト飲料が本件特許発明1に係るビールテイスト飲料であるかどうかを判断することができないため、 本件特許明細書の実施例は、本件特許発明1に係るビールテイスト飲料が本件特許発明が解決しようとする課題を解決できることを検証しているとは認められない。
よって、当業者は、本件特許明細書の記載から、本件特許発明1が本件特許発明が解決しようとする課題を解決できることを認識することができず、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、このことは、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5、並びに本件特許発明1と共通の発明特定事項を備える本件特許発明6及び7についても同様に当てはまることである。
イ 申立理由A3-2
本件特許発明1はビールテイスト飲料の組成に関して、リアルエキス濃度及びアルコール度数の記載はあるものの、リアルエキス濃度の下限値やアルコール度数の上限値は規定されておらず、リアルエキス濃度が極端に低く、アルコール度数が高いビールテイスト飲料も含まれると解される。
しかしながら、リアルエキス濃度が極端に低い場合、アルコール濃度が高いと、両者のバランスが崩れ、アルコール特有の異味が感じられ、飲みにくい飲料となることは例示するまでもなく技術常識として知られている。このため、本件特許明細書では、アルコール度数が高いビールテイスト飲料において、刺激感及び爽快な味わいのスコアが高く、総合評価がA乃至Sのビールテイスト飲料が示されているものの、当該ビールテイスト飲料の「刺激感」と「爽快な味わい」の両立には、リアルエキス濃度の上限値とアルコール度数の下限値を設定すること以外にも、他の特徴が寄与しているものと考えられる。
具体的には、実施例1~39において、リアルエキス濃度の下限値は2.0質量%であり、これは甲第A12号証の505頁右欄に示されるビールのエキス濃度3.1~4.0%よりも1%ほど低い値に過ぎない。このことから、本件特許明細書の実施例では、リアルエキス濃度が極端に低く、アルコール濃度が高い場合(言い換えればアルコール度数/リアルエキス濃度の値が極端に高い場合)に、刺激感を有し、さらに、爽快な味わいを有するビールテイスト飲料を提供できることを検証しているとはいえず、また、本件特許明細書は、このような場合に本件特許発明の課題が解決できる理由を何ら説明していない。
また、本件特許発明1の麦芽比率は50質量%以上であり、酒税法のビールの定義と同じ麦芽比率が記載されている。しかしながら、甲第A12号証の506頁右欄17~20行に記載されるように、通常のビールの遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量は4~10mg/100ml程度であるところ、実施例1~39ではそのすべてにおいて遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が10mg/100mLを超えており、その値は12~32g/100mLの範囲内にある(段落【0072】【表1】【表2】)。してみれば、本件特許明細書の実施例に示される結果から、「刺激感」と「爽快な味わい」の両立には、遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量も重要であると認識するのが自然であるといえる。また、本件特許明細書は、リアルエキス濃度が低く、アルコール濃度が高いビールテイスト飲料について、遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量が低い場合にも本件特許発明の課題が解決できる理由を何ら説明していない。
してみればリアルエキス濃度の下限値、アルコール度数/リアルエキス濃度、及び遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量を規定しない本件特許発明1は、本件特許発明が解決しようとする課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えた発明であるといえる。
よって、この点からも、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものではない。また、このことは、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5、並びに本件特許発明1と共通の発明特定事項を備える本件特許発明6及び7についても同様に当てはまることである。
ウ 申立理由A3-3
更に、本件特許明細書の実施例において、実施例6、21、29及び34のビールテイスト飲料は、アルコール度数は15v/v%程度でほぼ同じであるものの、リアルエキス濃度は2.0~5.0質量%と大幅に異なる値を示しているにも関わらず、「刺激感」及び「爽快な味わい」のスコアはほぼ同じである。このことは、実施例23、27、32及び35のビールテイスト飲料にも同様にあてはまることである(アルコール度数18v/v%程度、リアルエキス濃度2.0~5.0質量%)。よって、本件特許明細書の実施例の結果からも、ビールテイスト飲料の「刺激感」と「爽快な味わい」の調整ひいては両立には、リアルエキス濃度の上限値とアルコール度数の下限値を設定すること以外にも、他の特徴が寄与しているものと考えられる。してみれば、本件特許発明1は、本件特許発明が解決しようとする課題を解決するための手段が反映されていない発明であるといえ、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えた発明であると認められる。
よって、この点からも、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものではない。また、このことは、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5、並びに本件特許発明1と共通の発明特定事項を備える本件特許発明6及び7についても同様に当てはまることである。
エ 申立理由A3-4
更に、本件特許明細書の段落【0068】には、以下の記載がある(下線部は申立人が付けた)。
「4℃程度まで冷却したビールテイスト飲料を、各パネラーが試飲し、「刺激感」および「スッキリした爽快な味わい」という評価項目について、下記のスコア基準に基づき、3.0(最大値)~1.0(最小値)の範囲で、0.1刻みのスコアにて評価し、6人のパネラーのスコアの平均値を算出した。
評価に際しては、評価項目がそれぞれ下記基準「1.0」「2.0」および「3.0」に該当するサンプルを予め用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。また、すべての実施例および比較例の官能評価においても、同じ飲料に対して、各パネラー間での2.0以上のスコアの値の差異は確認されなかった。」
段落【0068】には、基準「1.0」「2.0」および「3.0」に該当するサンプルを予め用意したことが記載されるが、この基準となるサンプルの具体的な説明はなく、どのようなサンプルを基準として使用したのかが不明である。
また、「刺激感」及び「爽快な味わい」は、食品一般に使用される基本5味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)のような指標ではないため、出願時の技術常識を考慮しても、基準「1.0」「2.0」および「3.0」に該当するサンプルがどのように用意されたのかを理解することができない。
してみると、本件特許明細書の実施例に記載された「刺激感」及び「爽快な味わい」の評価は、原材料や組成等が不明なサンプルを基準とするものであり、客観的に正確な評価であるとは認められない。よって、本件特許明細書の実施例に記載された「刺激感」及び「爽快な味わい」の評価は、再現性のある結果が得られる評価であるといえず、信頼性が確保されていない。そして、このように、再現性、信頼性のない評価結果は、サポート要件の判断において参酌すべきものではない。
従って、当業者は、本件特許明細書の実施例に記載された「剌激感」及び「爽快な味わい」の評価結果を見ても、本件特許発明1が本件特許発明が解決しようとする課題を解決できることを認識することはできない。
よって、この点からも、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載したものではない。また、このことは、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~5、並びに本件特許発明1と共通の発明特定事項を備える本件特許発明6及び7についても同様に当てはまることである。
(20) 証拠方法
・甲第A1号証:特開昭63-42681号公報
・甲第A2号証:国際公開第2020/159964号
・甲第A3号証:米国醸造化学者協会(American Society of Brewing Chemists, ASBC)の2013年の学会(2013 Annual Meeting Proceedings)での口頭発表番号31(Oral Presentations No.31)で使用された資料、「High gravity brewing: Effects of aeration on fermentation ability, flavor compounds, and lipid composition of brewer's yeast」、2013年
・甲第A4号証:特開2020-195317号公報
・甲第A5号証:特表2010-517592号公報
・甲第A6号証:Mintel GNPD(世界新商品データベース)に掲載された商品情報、Modern Times社のビール、「Mordern Times Monster's Park Imperial Stout」、記録番号(ID#):2917751、2015年1月、(URL:https://www.gnpd.com)
・甲第A7号証:Mintel GNPD(世界新商品データベース)に掲載された商品情報、Uzvar社のビール、「2085-12 Imperial Stout」、記録番号(ID#):8598207、2021年3月、(URL:https://www.gnpd.com)
・甲第A8号証:Mintel GNPD(世界新商品データベース)に掲載された商品情報、Full Sail Brewing社のビール、「Full Sail Bourbon Barrel Aged Wheatwine Ale」、記録番号(ID#):3852637、2016年4月、(URL:https://www.gnpd.com)
・甲第A9号証:Mintel GNPD(世界新商品データベース)に掲載された商品情報、Zhigulevskoye Pivo社のビール、「Fon Vakano Elite」、記録番号(ID#):4462225、2016年12月、(URL:https://www.gnpd.com)
・甲第A10号証:改訂BCOJビール分析法、ビール酒造組合 国際技術委員会〔分析委員会〕編、公益財団法人日本醸造協会、2013年 増補改訂、目次、「7.2 エキス」、「8.8 色度」
・甲第A11号証:特開昭63-254975号公報
・甲第A12号証:日本醸造協會雑誌、公益財団法人日本醸造協会、第71巻、第7号、1976年、505~510頁
・甲第A13号証:科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE) のウェブページ印刷物、(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1915/71/7/71_7_505/_article/-char/ja)、印刷日2023年12月14日
・甲第A14号証:日本醸造協會雑誌、公益財団法人日本醸造協会、第75巻、第2号、1980年、128~132頁
・甲第A15号証:科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)のウェブページ印刷物、(URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapanl915/75/2/75_2_128/_article/-char/ja)、印刷日2023年12月15日
・甲第A16号証:米国醸造化学者協会(American Society of Brewing Chemists, ASBC)の2013年の学会(2013 Annual Meeting Proceedings)での口頭発表番号(Oral Presentations)の要約、2013年
・甲第A17号証:米国醸造化学者協会(American Society of Brewing Chemists, ASBC)の2013年の学会(2013 Annual Meeting Proceedings)のウェブページ印刷物、(URL:https://www.asbcnet.org/events/archives/20l3Proceedings/Pages/oral.aspx)、印刷日2023年12月26日
・甲第A18号証:Mintel GNPD(世界新商品データベース)に掲載された商品情報、Anthony Martin社のビール、「Gordon Finest Platinum」、記録番号(ID#):691881、2007年4月、(URL:https://www.gnpd.com)
・甲第A19号証:EUにおける食品ラベル表示に関する規制、日本貿易振興機構(ジェトロ)、2014年3月、(URL:https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfiIe/report/07001670/report_food_label.pdf)
・甲第A20号証:Brewing and Craft Beer、MDPI、2019年、目次、57~77頁
・甲第A21号証:英独和ビール用語辞典、公益財団法人日本醸造協会、平成16年2月15日、45頁、100頁、108~109頁
・甲第A22号証:エタノール換算表に関するウェブページ印刷物、(URL:https://www.pmda.go.jp/files/000163417.pdf)印刷日2024年1月16日
・甲第A23号証:独立行政法人医薬品医療器総合機構のウェブページ印刷物、(URL:https://ss.pmda.go.jp/ja_alI/search.x?q=%E3%82%A8%E3%82%BF%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%AB%E6%8F%9B%E7%AE%97%E8%Al%A8&x=O&y=O&ie=utf8&page=l&pagemax=lO&imgsize=l&pdf=ok&zoom=l&page=l&suggest=l&counsel=l&ref=www.pmda.go.jp&pid=N2WALSrsk5AvFRQazsYWlw..&qid=cANj66mGoSReO-ycSLma9d-B52mgXtus)、印刷日2024年1月16日
なお、特許異議申立人Aは、令和6年8月29日に提出した意見書に添付して、次の甲第A24号証ないし甲第A27号証を提出している。
・甲第A24号証:特開平10-57043号公報
・甲第A25号証:特開平11-178564号公報
・甲第A26号証:特開2005-40045号公報
・甲第A27号証:特開2008-109861号公報
証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。
2 特許異議申立人Bが申し立てた請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1) 申立理由B1-1(甲第B1号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2) 申立理由B1-2(甲第B2号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3) 申立理由B1-3(甲第B3号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4) 申立理由B1-4(甲第B4号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(5) 申立理由B1-5(甲第B5号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(6) 申立理由B1-6(甲第B7号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(7) 申立理由B2-1(甲第B1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(8) 申立理由B2-2(甲第B2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(9) 申立理由B2-3(甲第B3号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(10) 申立理由B2-4(甲第B4号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(11) 申立理由B2-5(甲第B5号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B5号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(12) 申立理由B2-6(甲第B6号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B6号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(13) 申立理由B2-7(甲第B7号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B7号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(14) 証拠方法
・甲第B1号証:Brewer's Friend ホームページ、2017年7月17日、印刷日2024年1月4日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/516661/german-braggot
・甲第B2号証:Brewer's Friend ホームページ、2015年12月3日、印刷日2024年1月4日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/297676/saison-braggot
・甲第B3号証:BeerSmith LLC ホームページ、2019年6月2日、印刷日2023年12月7日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewrecipe/2520061/yiganqingtai32
・甲第B3号証の2:BeerSmith LLC ホームページ、印刷日2023年12月7日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewuser/124280/beaver
・甲第B4号証:BeerSmith LLC ホームページ、2015年2月14日、印刷日2023年12月7日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewrecipe/693561/carolus-clone
・甲第B4号証の2:BeerSmith LLC ホームページ、印刷日2023年12月7日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewuser/861/ditlev
・甲第B5号証:Brewer's Friend ホームページ、2015年3月31日、印刷日2024年1月4日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/230557/honey-bee-braggot
・甲第B6号証:BrewingScience、2019年、Vol.72、pp.89-93
・甲第B7号証:ordeast Brewers Alliance ホームページ、web archive 2020年11月12日、印刷日2023年7月7日、URL:https://web.archive.org/web/20201112003127/https://www.nordeastbrewersaIIiance.org/education/education/nicks-tips-for-brewing-high-gravity-beers/
・甲第B8号証:The Brewers Journalホームページ、2017年9月12日、印刷日2023年8月21日、URL:https://www.brewersjournal.info/science-basic-beer-alcohol-extract-determinations/
・甲第B9号証:データのじかんホームページ、2018年7月30日、印刷日2023年7月6日、URL:https://data.wingarc.com/beer-ibu-srm-ebc-10796
・甲第B10号証:TECHNOLOGY BREWING AND MALTING, VLB Berlin、Verlagsabteilung発行、1996年、pp.30-37,82-87,156-167,190-203, 323-341,562-587
・甲第B11号証:醸協、2000年、第95巻、第12号、pp.856-866
・甲第B12号証:J.Am.Soc.Brew.Chem.、1999年、Vol.57、No.2、pp.39-45
・甲第B13号証:醸協、1976年、第71巻、第7号、pp.505-510
・甲第B14号証:Brewer's Friend ホームページ、2021年11月24日、印刷日2024年1月7日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/1222371/takamisan
・甲第B15号証:Brewer's Friend ホームページ、2021年11月16日、印刷日2024年1月7日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/1219457/fred-and-josh-s-tripel
・甲第B16号証:Brewer's Friend ホームページ、2020年7月10日、印刷日2024年1月7日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/994466/imperia1-saison-ipa
・甲第B17号証:Brewer's Friend ホームページ、2019年10月2日、印刷日2024年1月7日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/889745/high-gravity-rye-lager
・甲第B18号証:BeerSmith LLC ホームページ、2017年1月12日、印刷日2023年12月7日、URL:https ://beersmithrecipes.com/viewrecipe/1390002/deus-3
・甲第B18号証の2:BeerSmith LLC ホームページ、印刷日2023年12月7日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewuser/11424/kb
・甲第B18号証の3:Fermentation、2018年、4、22、pp.1-11
・甲第B18号証の4:Applied Microbiology and Biotechnology、2019年、103、pp.7597-7615
・甲第B19号証:BeerSmith LLC ホームページ、2015年8月25日、印刷日2023年12月7日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewrecipe/875730/borjes-spontaneous-emmy
・甲第B19号証の2:BeerSmith LLC ホームページ、印刷日2023年12月7日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewuser/53430/borje81
・甲第B20号証:BeerSmith LLC ホームページ、2016年4月24日、印刷日2023年12月7日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewrecipe/896643/rochefort-10-clone
・甲第B20号証の2:BeerSmith LLC ホームページ、印刷日2023年12月7日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewuser/47683/bjja
・甲第B21号証:BREWDOG ホームページ、2013年5月、印刷日2023年12月7日、URL:https://brewdogrecipes.com/recipes/dog-b
・甲第B22号証:BREWDOG ホームページ、2014年5月、印刷日2023年12月7日、URL:https://brewdogrecipes.com/recipes/dog-c
・甲第B23号証:BREWDOG ホームページ、2012年3月、印刷日2023年12月7日、URL:https://brewdogrecipes.com/recipes/anarchist-alchemist
・甲第B24号証:BREWDOG ホームページ、2012年5月、印刷日2023年12月7日、URL:https://brewdogrecipes.com/recipes/dog-a
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。
また、特許異議申立人Bは、令和6年8月14日提出の意見書において、甲第B25号証ないし甲第B26号証を提出するとともに、次の申立理由を主張している。
(15) 申立理由B1-7(甲第B25号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、2及び5ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B25号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(16) 申立理由B1-8(甲第B26号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、2及び5ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B26号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(17) 申立理由B2-8(甲第B25号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1、2及び5ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B25号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(18) 申立理由B2-9(甲第B26号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1、2及び5ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B26号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(19) 証拠方法
・甲第B25号証:BeerSmith LLC ホームページ、印刷日2024年7月30日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewrecipe/1511092/why-did-i-drink-that-belgian-dark-ale
・甲第B25号証の2:BeerSmith LLC ホームページ、印刷日2024年7月30日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewuser/936773/waltg1977
・甲第B26号証:Brewer's Friend ホームページ、2019年10月29日、印刷日2024年8月8日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/882432/17-percent
証拠の表記は、意見書における記載におおむね従った。
第5 令和6年11月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の理由について
令和6年11月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の理由は、次の1ないし4のとおりである。
1 取消理由1-25(甲第B25号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、2、5及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第B25号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 取消理由1-26(甲第B26号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1、2、5及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第B26号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
3 取消理由2-25(甲第B25号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1、2、5及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第B25号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
4 取消理由2-26(甲第B26号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1、2、5及び6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第B26号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 当審の判断
以下で検討するとおり、当審は、令和6年11月29日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告)の理由及び当該取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。
1 令和6年11月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の理由について
(1)取消理由1-25及び取消理由2-25(甲第B25号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第B25号証の記載事項等
(ア) 甲第B25号証の記載事項
甲第B25号証には、「Why did I drink that Belgian Dark Ale」に関し、次の記載がある。なお、抄訳についても併せて摘記する。
「
[図:0001425725000001.jpg]
[図:0001425725000002.jpg]
」
(イ) 甲第B25号証に記載された発明
上記(ア)の記載を整理すると、甲第B25号証には、次の発明が記載されていると認める。
「原料として以下の表のものを用いて製造された、オリジナルエキス1.103(24.4質量%)、外観エキス1.002(0.5質量%)、アルコール度数13.5v/v%、色度21.3SRMのビール。
[図:0001425725000003.jpg]
」(以下、「甲B25ビール発明」という。)
「甲B25ビール発明の製造方法。」(以下、「甲B25ビール製法発明」という。)
なお、甲第B25号証の記載は、いわゆるレシピを示すに過ぎず、香味やその改善について何ら言及されないものであるから、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B25ビール発明とを対比する。
甲B25ビール発明の「ビール」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。
さらに、甲B25ビール発明の発酵原料は、「ピルスナー(2ロウ)ドイツ産(2.0SRM) 9ポンド、粉砕オーツ麦(1.0SRM) 1ポンド4.00オンス、スペシャルBモルト(180.0SRM) 8.00オンス、ペールモルト(2ロウ)ベルギー産 6ポンド、キャンディーシュガー,アンバー(75.0SRM) 2ポンド」であるから、麦芽原料にあたる「ピルスナー(2ロウ)ドイツ産(2.0SRM)、スペシャルBモルト(180.0SRM)、ペールモルト(2ロウ)ベルギー産」の発酵原料に対する割合は(9ポンド+8.00オンス+6ポンド)/(9ポンド+1ポンド4.00オンス+8.00オンス+6ポンド+2ポンド)=15ポンド8オンス/18ポンド12オンス≒82.7質量%と計算される。してみると、甲B25ビール発明の麦芽比率は82.7質量%であり、本件特許発明1の「麦芽比率が50質量%以上」との特定事項を満たす。
また、上記麦芽比率の計算から、甲B25ビール発明が「麦芽比率100質量%のビール」ではないことも明らかである。
そして、甲B25ビール発明の原材料から見て、本件特許発明1の「原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない」との特定事項を満たすことは明らかである。
さらに、甲B25ビール発明において、発酵工程において12時間以上のエアレーションを行う旨の記載もないことからすると、甲B25ビール発明は、本件特許発明1の「但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」との特定事項であげられている「麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビール」に該当しないことも明らかである。
してみると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点B25-1
ビールの色度について、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B25ビール発明は「21.3SRM」である点。
・相違点B25-2
本件特許発明1は「リアルエキス濃度が6.5質量%以下」であって「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」と特定するのに対し、甲B25ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点B25-3
アルコール度数に関して、本件特許発明1は「14.0(v/v)%以上」と特定するのに対し、甲B25ビール発明は「13.5v/v%」である点。
事案に鑑み、相違点B25-3について検討する。
相違点B25-3は実質的な相違点である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B25ビール発明ではない。
また、甲第B25号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B25ビール発明において、アルコール度数をより高いものに変更し、相違点B25-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B25ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲B25ビール発明とを対比すると、上記アと同様の相当関係がとれるから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点B25-4
ビールの色度について、本件特許発明2は「30EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B25ビール発明は「21.3SRM」である点。
・相違点B25-5
本件特許発明2は「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であって「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が3.0以上」と特定するのに対し、甲B25ビール発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点B25-5について検討する。
甲第B8号証によると、リアルエキス濃度は、オリジナルエキス濃度及び外観エキス濃度から、次式にしたがって算出が可能である。
RE=(0.1948×OE)+(0.8052×AE)
ここで、REはリアルエキス濃度、OEはオリジナルエキス濃度、AEは外観エキス濃度を示す。
そこで、上記の換算式にしたがって甲B25ビール発明のリアルエキス濃度を算出する。
甲B25ビール発明のオリジナルエキスは24.4質量%、外観エキスは0.5質量%であるから、リアルエキス濃度は、(0.1948×24.4質量%)+(0.8052×0.5質量%)≒5.16質量%と算出される。
次いで、得られたリアルエキス濃度の値を元に、「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比」を計算すると、甲B25ビール発明のアルコール濃度は13.5v/v%であるから、13.5(v/v%)/5.16(質量%)≒2.62と計算される。
すると、相違点B25-5は実質的な相違点であるといえる。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲B25ビール発明ではない。
また、甲第B25号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B25ビール発明において、「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比」をより高いものに変更し、相違点B25-5に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B25ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は甲B25ビール発明ではなく、甲B25ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明5も甲B25ビール発明ではなく、甲B25ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲B25ビール製法発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がとれる。
また、甲B25ビール製法発明において、「発酵工程」を有することも明らかである。
すると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「発酵させる発酵工程を有する、麦芽比率が50質量%以上のビールテイスト飲料の製造方法
(但し、麦芽比率が100質量%のビールの製造方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの製造方法を除く)。」
(相違点)
・相違点B25-6
ビールの色度について、本件特許発明6は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B25ビール製法発明は「21.3SRM」である点。
・相違点B25-7
本件特許発明6は「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であって「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」と特定するのに対し、甲B25ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点B25-8
アルコール度数に関して、本件特許発明6は「14.0(v/v)%以上」と特定するのに対し、甲B25ビール製法発明は「13.5v/v%」である点。
事案に鑑み、相違点B25-8について検討する。
相違点B25-8は上記相違点B25-3と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲B25ビール製法発明ではなく、甲B25ビール製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ) 本件特許発明12について
本件特許発明12と甲B25ビール発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がとれることから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点B25-9
ビールの色度について、本件特許発明12は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B25ビール発明は「21.3SRM」である点。
・相違点B25-10
本件特許発明12は「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であって「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」と特定するのに対し、甲B25ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点B25-11
アルコール度数に関して、本件特許発明12は「14.0(v/v)%以上」と特定するのに対し、甲B25ビール発明は「13.5v/v%」である点。
・相違点B25-12
本件特許発明12は「式(1)を満たし、」(合議体注:式(1)についてはここでの記載は省略する。要すれば上記第3を参照のこと。以下、同様。)と特定するのに対し、甲B25ビール発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点B25-11について検討する。
相違点B25-11は上記相違点B25-3と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明12は、甲B25ビール発明ではなく、甲B25ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 取消理由1-25及び取消理由2-25についてのまとめ
上記イのとおりであるから、取消理由1-25及び取消理由2-25の理由では、本件特許発明1、2、5、6及び12に係る特許を取り消すことはできない。
(2)取消理由1-26及び取消理由2-26(甲第B26号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第B26号証の記載事項等
(ア) 甲第B26号証の記載事項
甲第B26号証には、「17 Percent」に関し、次の記載がある。なお、抄訳についても併せて摘記する。
「
[図:0001425725000004.jpg]
[図:0001425725000005.jpg]
[図:0001425725000006.jpg]
[図:0001425725000007.jpg]
」
(イ) 甲第B26号証に記載された発明
上記(ア)の記載を整理すると、甲第B26号証には、次の発明が記載されていると認める。
「原料として以下の表のものを用いて製造された、オリジナルエキス(比重)1.131、外観エキス(比重)1.001、アルコール度数17.15v/v%、色度(SRM)15.25のビール。
[図:0001425725000008.jpg]
[図:0001425725000009.jpg]
」(以下、「甲B26ビール発明」という。)
「甲B26ビール発明の製造方法。」(以下、「甲B26ビール製法発明」という。)
なお、甲第B26号証の記載は、いわゆるレシピを示すに過ぎず、香味やその改善について何ら言及されないものであるから、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B26ビール発明とを対比する。
甲B26ビール発明の「ビール」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲B26ビール発明は「アルコール度数17.15v/v%」であるから、本件特許発明1の「アルコール度数が14.0(v/v)%以上」との特定事項を満たす。
さらに、甲B26ビール発明の発酵原料は、「ペール2-ロウ 13ポンド、ウィーン 6ポンド、スペシャルロースト 2ポンド、LMEゴールデンライト(煮沸釜後半添加) 3.3ポンド、酸性モルト 10オンス、ブラウンシュガー(煮沸釜後半添加) 1ポンド」であるから、麦芽原料にあたる「ペール2-ロウ、ウィーン、スペシャルロースト、LMEゴールデンライト、酸性モルト」の発酵原料に対する割合は(13ポンド+6ポンド+2ポンド+3.3ポンド+10オンス)/(13ポンド+6ポンド+2ポンド+3.3ポンド+10オンス+1ポンド)≒96.1質量%と計算される。してみると、甲B26ビール発明の麦芽比率は96.1質量%であり、本件特許発明1の「麦芽比率が50質量%以上」との特定事項を満たす。
また、上記麦芽比率の計算から、甲B26ビール発明が「麦芽比率100質量%のビール」ではないことも明らかである。
そして、甲B26ビール発明の原材料から見て、本件特許発明1の「原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない」との特定事項を満たすことは明らかである。
さらに、甲B26ビール発明において、発酵工程において12時間以上のエアレーションを行う旨の記載もないことからすると、甲B26ビール発明は、本件特許発明1の「但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」との特定事項であげられている「麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビール」に該当しないことも明らかである。
してみると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「アルコール度数が14.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点B26-1
ビールの色度について、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B26ビール発明は「15.25SRM」である点。
・相違点B26-2
本件特許発明1は「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であって「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」と特定するのに対し、甲B26ビール発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点B26-2について検討する。
甲第B8号証によると、リアルエキス濃度は、オリジナルエキス濃度及び外観エキス濃度から、次式にしたがって算出が可能である。
RE=(0.1948×OE)+(0.8052×AE)
ここで、REはリアルエキス濃度、OEはオリジナルエキス濃度、AEは外観エキス濃度を示す。
そこで、上記の換算式にしたがって甲B26ビール発明のリアルエキス濃度を算出する。
まず、甲B26ビール発明のオリジナルエキス(比重)は1.131、外観エキス(比重)は1.001であるから、換算すると、オリジナルエキス濃度は30.36質量%、外観エキス濃度は0.26質量%となる(必要であれば、https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/などの変換ツールを参照されたい。)。
そうすると、リアルエキス濃度は、(0.1948×30.36質量%)+(0.8052×0.26質量%)≒5.91+0.21=6.12質量%と算出される。
してみると、相違点B26-2は実質的な相違点である。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲B26ビール発明ではない。
また、甲第B26号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B26ビール発明において、リアルエキス濃度を低減し、相違点B26-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
したがって、甲B26ビール発明において、リアルエキス濃度を低減し、相違点B26-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲B26ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲B26ビール発明とを対比すると、上記アと同様の相当関係がとれるから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「アルコール度数が14.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点B26-3
ビールの色度について、本件特許発明2は「30EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B26ビール発明は「15.25SRM」である点。
・相違点B26-4
本件特許発明2は「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であって「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」と特定するのに対し、甲B26ビール発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点B26-4について検討する。
相違点B26-4は、上記の相違点B26-2と同旨であり、上記アと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲B26ビール発明ではなく、また、甲B26ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有しさらに限定するものである。
そして、上記(ア)のとおり、本件特許発明1は甲B26ビール発明ではなく、甲B26ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明5も甲B26ビール発明ではなく、甲B26ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲B26ビール製法発明を対比すると、上記アの場合と同様の相当関係がいえる。
また、甲B26ビール製法発明において、「発酵工程」を有することも明らかである。
すると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「発酵させる発酵工程を有する、麦芽比率が50質量%以上のビールテイスト飲料の製造方法
(但し、麦芽比率が100質量%のビールの製造方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの製造方法を除く)。」
(相違点)
・相違点B26-5
ビールの色度について、本件特許発明6は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B26ビール製法発明は「21.3SRM」である点。
・相違点B26-6
本件特許発明6は「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であって「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」と特定するのに対し、甲B26ビール製法発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点B26-6について検討する。
相違点B26-6は上記相違点B26-2と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲B26ビール製法発明ではなく、甲B26ビール製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ) 本件特許発明12について
本件特許発明12と甲B26ビール発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がとれることから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点B26-7
ビールの色度について、本件特許発明12は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B26ビール発明は「21.3SRM」である点。
・相違点B26-8
本件特許発明12は「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」であって「アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]が2.5以上」と特定するのに対し、甲B26ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点B26-9
本件特許発明12は「式(1)を満たし、」と特定するのに対し、甲B26ビール発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点B26-8について検討する。
相違点B26-8は上記相違点B26-2と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明12は、甲B26ビール発明ではなく、甲B26ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 取消理由1-26及び取消理由2-26についてのまとめ
上記イのとおりであるから、取消理由1-26及び取消理由2-26の理由では、本件特許発明1、2、5、6及び12に係る特許を取り消すことはできない。
2 令和6年11月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の理由として採用しなかった異議申立理由について
令和6年11月29日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の理由として採用しなかった異議申立理由は、申立理由A1-1ないし申立理由A3-4、申立理由B1-1ないし申立理由B1-6、申立理由B1-7のうち本件特許発明7に係る部分、申立理由B1-8のうち本件特許発明7に係る部分、申立理由B2-1ないし申立理由B2-7、申立理由B2-8のうち本件特許発明7に係る部分、申立理由B2-9のうち本件特許発明7に係る部分である。
(1) 申立理由A1-1及び申立理由A2-1(甲第A1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第A1号証の記載事項等
(ア) 甲第A1号証の記載事項
甲第A1号証には、「調理用麦芽酒およびその製造法」に関し、次の記載がある。なお、英数字については、全角に改めた部分がある(他の証拠についても同様である。)。
「(1) 麦汁を主原料として得られるアルコール濃度が8~20%v/v以上、カルボニル化合物(アセトアルデヒドとして)濃度が1.0mg%以上、エステル濃度が3.0mg%以上、酸度(試料10ml当りの1/10N NaOHml数)が4.0以下、全糖量が2~10%w/v、苦味価(EBC法)が10.0(B.U.)以下、全窒素が50~150mg%、pHが4.0~5.0、色度(430mμのOD、10mmセル)が0.45以上であり、蒸留していないことを特徴とする調理用麦芽酒。」(第1頁左下欄 特許請求の範囲第1項)
「(産業上の利用分野)
本発明は、調理用麦芽酒およびその製造法に関し、さらに詳しくは、発酵度を高めることにより、香味成分含量、アルコール濃度を上げ、調理効果を高めた調理用麦芽酒およびその製造法に関する。」(第2頁左上欄第3ないし7行)
「本発明の目的は、アルコール濃度が高く、天然香気成分の種類および天然香気成分含量を多くし、調理効果が充分高い調理用麦芽酒および製造法を提供することである。」(第2頁左下欄第9ないし12行)
「(問題点を解決するための手段)
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、高濃度麦汁を発酵させ、発酵過程において酵母が資化可能な糖を補糖しながら発酵させることにより、その目的を達成することを見い出し、本発明を完成するに至つた。」(第2頁左下欄第13ないし18行)
「ここでいう麦芽酒とは、酒税法で定義されるビールも含まれる。なお、調理用麦芽酒の成分分析値の測定法を以下に記す。
・・・(略)・・・
(9)色度:430mμのOD(10mmセル)を分光光度計により測定」(第2頁右下欄第15行ないし第3頁左上欄第14行)
「本発明の調理用麦芽酒は、エキス濃度12%w/w以上、好ましくは16%w/w以上の高濃度麦汁を発酵して得られる。高濃度麦汁は、麦芽のみから調製したものであつても、麦芽に米、澱粉などの副原料を併用して調製したものでもよく、通常のビール醸造で採用される糖化法によつて得ることができる。
本発明における副原料は、本発明の目的である。エステル、高級アルコール含量を高め、麦芽発酵独特の香味を高めた麦芽酒を得るということを考慮すれば、その使用は、できるだけ制限した方がよい。」(第3頁左上欄第15行ないし右上欄第6行)
「本発明による発酵は、培養液中に酵母が資化可能な糖を補糖しながら行なわれる。かかる補糖源としては、たとえば、精製糖、異性化糖、粗糖、モルトエキスなどの糖類が適する。補糖量としては、100%糖換算した重量が発酵前の麦芽使用量の30%w/w以上、好ましくは45%w/w以上補糖することにより、充分発酵度を高めることができ、アルコール濃度8%w/w以上の香味成分に富んだ麦芽発酵酒を得ることができる。
補糖方法としては、(1)発酵初期から全補糖分の均等分割量を分割して添加する方法、(2)発酵初期に全補糖分を一括添加する方法、(3)発酵中期に全補糖分を一括添加する方法、(4)発酵中期から全補糖分の均等分割量を分割して添加する方法がある。発酵初期とは、発酵開始0~2日目までとする。発酵中期とは、発酵開始3~6日目までとする。発酵槽への補糖の方法は、直接補糖分を発酵槽へ添加してもよく、また、発酵液の一部を取り出し、それに補糖分を溶解させ添加する方がより好ましい。補糖分の均等分割量および添加時期としては、3回以上、好ましくは5回以上に均等分割して、12~36時間経過ごとに、特に24時間経過ごとに添加するのが、発酵度を高めるのに最も望ましい。
上記(1)~(4)の方法により、いずれも発酵度を高めることができるが、(1)の方法が発酵度を高めるのに最も適している。第1図に示すように、発酵開始1日目~7日目まで毎日24時間ごとに補糖分の均等分割量を添加する方法が、発酵初日もしくは4日目に補糖分を一括添加する方法や、発酵4日目~7日目まで毎日24時間ごとに補糖分の均等分割量を添加する方法と比較して、酵母の糖資化量が最も多いことがわかる。
以上の条件下で8~20日間、好ましくは10~15日間発酵を行ない、最終アルコール濃度は8%v/v以上、好ましくは12%v/v以上に達する。以下、この発酵を前発酵という。この前発酵を終了した段階での発酵液は、調理用麦芽酒の香味上好ましくないアルデヒド類、ジアセチルなどの発酵副産物を刺激閾値以上含有するため、熟成および安定化を行ないこれら副産物の濃度を低下させる必要がある。」(第3頁左下欄第9行ないし第4頁左上欄第10行)
「このようにして得られる調理用麦芽酒は、調理上好ましい天然香気成分を豊富に含有し、麦芽発酵香味が充分高まつた麦芽酒である。」(第4頁左下欄第8ないし10行)
「(発明の効果)
本発明の調理用麦芽酒の効果は、下記のとおりである。
(1)種々のエステル類、高級アルコールエステル類を豊富に含有し、麦芽発酵独特のモルトからくる香味も強く、調理に用いた場合、風味、呈味向上効果が非常に高い。
(2)ホツプの風味がうすく、苦味価が低いので、調理用途が広く、多量に使用できる。
(3)種々のエステル類、カルボニル類を含有するので、加熱により魚類、畜肉類などのアミンと反応して、魚臭、畜肉臭などをマスキングする効果がある。
(4)含有するポリフエノール成分による料理の味の引き締め効果がある。
(5)含有するアルコールによる天然食品の溶出効果がある。
(6)アルコール含量が高いので、調理に用いた場合、料理の保存性を向上させることができる。
(7)アルコール含量が高く、微生物的に安定である。」(第4頁右下欄第13行ないし第5頁左上欄第14行)
「実施例1
麦芽18kgに水115lを加え、ビール醸造の常法により仕込を行ない、エキス濃度16.7%w/wの麦汁70lを得た。これに酵母を添加し、15℃で発酵開始24時間後より、砂糖1.18kgを24時間毎に計7回添加しながら10日間発酵を行なつた。発酵終了後、発酵液を5℃に冷却し、貯槽に移した後、1カ月間の香味熟成および安定化を常圧下で行ない、ろ過(合議体注:「ろ過」の「ろ」は、さんずいに戸を表す。以下同様。)を行なつて麦芽酒56lを得た。この麦芽酒の分析値を第1表に示す。
実施例2
麦芽18kg、ホツプ0.09kg、水115kgをビール醸造の常法により仕込を行ない、エキス濃度16.7%w/wの麦汁70lを得る。これに酵母を添加し、15℃で発酵開始24時間後より、砂糖1.18kgを24時間毎に計7回添加しながら10日間発酵を行なつた。発酵終了後、発酵液を5℃に冷却し、貯槽に移した後、1カ月間の香味熟成および安定化を密閉槽で行ない、炭酸ガスを圧入させ、ろ過を行なつてビール56lを得た。このビールの分析値を第1表に示す。
・・・(略)・・・
[図:0001425725000010.jpg]
」(第5頁左上欄第15行ないし右下欄末行)
(イ) 甲第A1号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に実施例2の記載を中心に整理すると、甲第A1号証には次の発明が記載されているものと認める。
「麦芽18kg、ホップ0.09kg、水115kgをビール醸造の常法により仕込を行ない、エキス濃度16.7%w/wの麦汁70lを得、これに酵母を添加し、15℃で発酵開始24時間後より、砂糖1.18kgを24時間毎に計7回添加しながら10日間発酵を行ない、発酵終了後、発酵液を5℃に冷却し、貯槽に移した後、1カ月間の香味熟成および安定化を密閉槽で行ない、炭酸ガスを圧入させ、ろ過を行なって得られた、真正エキスが5.72%、アルコールが12.52v/v%、色度(430mμのOD(10mmセル)を分光光度計により測定)0.51である、調理用ビール。」(以下、「甲A1ビール発明」という。)
「麦芽18kg、ホップ0.09kg、水115kgをビール醸造の常法により仕込を行ない、エキス濃度16.7%w/wの麦汁70lを得、これに酵母を添加し、15℃で発酵開始24時間後より、砂糖1.18kgを24時間毎に計7回添加しながら10日間発酵を行ない、発酵終了後、発酵液を5℃に冷却し、貯槽に移した後、1カ月間の香味熟成および安定化を密閉槽で行ない、炭酸ガスを圧入させ、ろ過を行なうものである、真正エキスが5.72%、アルコールが12.52v/v%、色度(430mμのOD(10mmセル)を分光光度計により測定)0.51である、調理用ビールの製造方法。」(以下、「甲A1ビール製法発明」という。)
「麦芽18kg、ホップ0.09kg、水115kgをビール醸造の常法により仕込を行ない、エキス濃度16.7%w/wの麦汁70lを得、これに酵母を添加し、15℃で発酵開始24時間後より、砂糖1.18kgを24時間毎に計7回添加しながら10日間発酵を行ない、発酵終了後、発酵液を5℃に冷却し、貯槽に移した後、1カ月間の香味熟成および安定化を密閉槽で行ない、炭酸ガスを圧入させ、ろ過を行なうことによる、真正エキスが5.72%、アルコールが12.52v/v%、色度(430mμのOD(10mmセル)を分光光度計により測定)0.51である、調理用ビールの香味調整方法。」(以下、「甲A1ビール香味調整方法発明」という。)
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲A1ビール発明とを対比する。
甲A1ビール発明の「真正エキス」は、本件特許発明1の「リアルエキス」に相当する。
そして、甲A1ビール発明の「調理用ビール」は本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」のうち、「ビール」の限りにおいて一致する。
そして、甲A1ビール発明は「真正エキスが5.72%」であるから、甲A1ビール発明は、本件特許発明1の「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」との特定事項を満たす。
また、甲A1ビール発明の原料は、麦芽18kg、ホップ0.09kg、水115kg、砂糖1.18kgを7回であるから、麦芽比率は、18kg/(18kg+0.09kg+1.18kg×7)≒68.3質量%と算出される。すると、甲A1ビール発明は、その製造工程も踏まえると、「麦芽比率が50質量%以上」との特定事項及び「原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない」との特定事項を満たすとともに、「麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビール」にあたらないことも明らかである。
してみると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「リアルエキス濃度が6.0質量%以下、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビール
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点A1-1
色度に関し、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A1ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A1-2
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明1は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A1ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A1-3
アルコール度数に関し、本件特許発明1は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A1ビール発明は「12.52v/v%」である点。
・相違点A1-4
本件特許発明1は「ビールテイスト飲料」であるのに対し、甲A1ビール発明は「調理用ビール」である点。
事案に鑑み、相違点A1-4について検討する。
甲A1ビール発明の「調理用ビール」はあくまで調理の際に用いることを前提として調整されたものであって、飲料として用いることを想定したものではない。
よって、相違点A1-4は実質的な相違点である。
また、甲第A1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲A1ビール発明を飲料用として用いることを示唆,あるいは用途を変更する動機付けとなる記載もない。
すると、甲A1ビール発明において、調理用ビールを「ビールテイスト飲料」に用途変更し、相違点A1-4に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲A1ビール発明ではなく、甲A1ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2ないし5及び8ないし12について
本件特許発明2ないし5及び8ないし12と、甲A1ビール発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同等の相当関係がいえるため、いずれも、少なくとも次の点で両者は相違する。
・相違点A1-5
本件特許発明2ないし5及び8ないし12は「ビールテイスト飲料」であるのに対し、甲A1ビール発明は「調理用ビール」である点。
相違点A1-5について検討する。
相違点A1-5は、上記相違点A1-4と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
してみると、本件特許発明1は甲A1ビール発明ではなく、甲A1ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲A1ビール製法発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同等の相当関係がいえるため、いずれも、少なくとも次の点で両者は相違する。
・相違点A1-6
本件特許発明6は「ビールテイスト飲料の製造方法」であるのに対し、甲A1ビール製法発明は「調理用ビールの製造方法」である点。
相違点A1-6について検討する。
相違点A1-6は、上記相違点A1-4と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
してみると、本件特許発明1は甲A1ビール製法発明ではなく、甲A1ビール製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲A1ビール香味調整方法発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同等の相当関係がいえるため、いずれも、少なくとも次の点で両者は相違する。
・相違点A1-7
本件特許発明7は「ビールテイスト飲料の香味改善方法」であるのに対し、甲A1ビール香味調整方法発明は「調理用ビールの香味調整方法」である点。
相違点A1-7について検討する。
相違点A1-7は、上記相違点A1-4と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
してみると、本件特許発明1は甲A1ビール香味調整方法発明ではなく、甲A1ビール香味調整方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由A1-1及び申立理由A2-1についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由A1-1及び申立理由A2-1の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(2) 申立理由A1-2及び申立理由A2-2(甲第A2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第A2号証の記載事項等
(ア) 甲第A2号証の記載事項
甲第A2号証には、「METHOD FOR FERMENTATION UNDER REDUCED PRESSURE」に関し、次の記載がある。なお、甲第A2号証は外国語文献であるため、以下、訳文のみ摘記する(以下、他の外国語文献についても同様。)。
「[0024] 図13A~図13Bは、実施例4に従い、30°Pの初期糖度を有する麦汁を用いた、対照(大気圧)条件(図13A)と比較した、部分的真空条件(図13B)下での発酵プロセス中に生成されたデータを示す。」
「[0025] 図14A~図14Bは、実施例4に従い、30°Pの初期糖度を有する麦汁を用いた、対照(大気圧)条件と比較した、部分的真空条件下での発酵プロセス中に生成されたデータを示し、図14Aには懸濁液中の酵母細胞の数、図14Bには生成したエタノール及びエキスが含まれる。」
「[0049 一態様において、本開示は、ビールの製造に使用される工業的な醸造プロセスに関連する発酵方法に関する。一般に、ビールの製造では、デンプン源を水に浸して発酵性糖を含む液体(麦汁)を作り、その麦汁を酵母で発酵させる。発酵プロセス中、酵母は麦汁中の発酵性糖をエタノールと二酸化炭素に変換し、その結果生じる発酵産物はビールである。典型的な醸造プロセスには、とりわけ、麦汁製造、酵母の再水和と増殖、及び発酵を含む複数のステップが含まれる。開示された方法に関連するステップは、以下でより詳細に説明される。」
「6.実施例4.超高濃度発酵
[0160] この実施例では、高濃度基質に対する例示的な発酵プロセスを、部分真空(3.5psia、「真空」または「V」と表示)および大気圧(14.7psia、「対照」または「C」と表示)条件下で実施した。この実施例の目的は、高濃度(初期糖度20°P)および超高濃度(初期糖度30°P)の発酵プロセスにおける真空の効果を実証することであった。」
「[0161] 基質の調整
[0162] この実施例に使用した麦汁は、以下の表4の工業的超高濃度麦汁処方に基づいて製造した。
[図:0001425725000011.jpg]
[0163] ホップを2つに分け、以下の表5のように導入した。
[図:0001425725000012.jpg]
[図:0001425725000013.jpg]
[0164] 製造した麦汁は、発酵ステップの両方にのみ使用した。
[0165] 酵母の再水和
・・・(略)・・・
[0167] 酵母の増殖
・・・(略)・・・
[0175] 発酵
[0176] この実施例では、発酵プロセスを、BioFlo(登録商標)310 Benchtop Bioreactorを用いて30℃で行った。発酵中、糖濃度、pH、エタノール濃度、懸濁液中の酵母細胞の数、酵母の生存率などのパラメーターをモニタリングしながら、リアクターの温度と圧力を制御した。
[0177] 酵母細胞を対照発酵プロセスと真空発酵プロセスの両方に添加(ピッチング)した後で、真空プロセスに部分真空圧を適用する前に、対照発酵と同様にピッチング後に酵母細胞を増殖させた。これにより、酵素の存在により、グリセロール、トレハロースなどの保護化合物の通常の形成が促進された。溶存酸素パラメーターは、酸素が完全に枯渇するまで、発酵の最初の(約)4時間の間注意深く監視された。酸素が枯渇したら、真空プロセスに真空圧を適用して3.5psiaの圧力を維持し、一方、対照プロセスは大気圧(約14.7psia)に維持した。発酵は、発酵可能な糖がなくなるまで続けられ、その間、糖濃度、pH、エタノール濃度、懸濁液中の酵母細胞の数、および酵母の生存率が監視および記録された。超高濃度(初期糖度30°P)発酵の結果を図13A~13Bおよび図14A~14Bに報告する。
[0178] 高濃度麦汁(20°P)の場合では、真空下での発酵は対照と大きく変わらないことが観察された。この例で使用した酵母は、より濃度の高い麦汁に対する体制を考慮して選択され、20°Pの麦汁ではこれらの条件下で高いストレスを受けず、真空の利点が測定しにくくなったと理論化される。しかし、真空下での発酵は、超高濃度麦汁(30°P)内で対照と大きく異なっていた。図14Aを参照すると、真空下での発酵は、大気圧下での発酵と比較して、より迅速に行われ、懸濁酵母細胞の数が約40%増加した。図14Bを参照すると、真空圧下での発酵は発酵速度を高め、糖濃度およびエタノール生成は、大気条件下での対照発酵よりも前に、100時間(約4日)で最終発酵度に達した。一方、得られたpH(約4.1)と酵母の生存率は、対照サンプルと真空サンプルの間で大きな差はなかった。」
「請求の範囲
・・・(略)・・・
1.発酵方法であって、
容器内で発酵微生物と発酵性炭水化物を含む液体基質とを組み合わせて発酵組成物を提供すること;
前記発酵性炭水化物の少なくとも一部がアルコールに変換されるように、容器内で前記発酵組成物を発酵させ、アルコールを含む発酵製品を得ること;
を含み、
前記発酵は、
前記発酵組成物中の酸素を実質的に枯渇させること;
前記酸素を実質的に枯渇させた後、前記容器内の圧力を14.0psia以下の減圧に低下させること;及び
前記減圧にて嫌気性条件下で発酵を継続し、前記発酵製品を製造すること
を含む、方法。
・・・(略)・・・
3.前記発酵製品がアルコール飲料である、請求項1に記載の方法。
・・・(略)・・・
8.前記液体基質が麦汁を含む、請求項1に記載の方法。」
「
[図:0001425725000014.jpg]
[図:0001425725000015.jpg]
・・・(略)・・・
[図:0001425725000016.jpg]
」
(イ) 甲第A2号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に実施例4及び図13A、図13B及び図14Bの記載をまとめると、甲第A2号証には次の発明が記載されているものと認める。
(図13Aの対照エール発酵30°P及び図13Bの真空エール発酵30°Pのチャートより)
「麦芽として淡色大麦14.59kg、副原料として米国産フレーク米4.33kg、ホップとしてハラタウ ヘルスブルッカー222.0gを用いて得られた超高濃度麦汁を用い、発酵プロセスを経て得られた、エキスが約6~6.5°Pで、エタノールが約10w/w%であるビール。」(以下、「甲A2実施例4図13ビール発明」という。)
(図14Bの実際のエキス対照より)
「麦芽として淡色大麦14.59kg、副原料として米国産フレーク米4.33kg、ホップとしてハラタウ ヘルスブルッカー222.0gを用いて得られた超高濃度麦汁を用い、発酵プロセスを経て得られた、エキスが約6.5°Pで、エタノールが約11.5w/w%であるビール。」(以下、「甲A2実施例4図14対照ビール発明」という。)
(図14Bの実際のエキス真空より)
「麦芽として淡色大麦14.59kg、副原料として米国産フレーク米4.33kg、ホップとしてハラタウ ヘルスブルッカー222.0gを用いて得られた超高濃度麦汁を用い、発酵プロセスを経て得られた、エキスが約6.5°Pで、エタノールが約10w/w%であるビール。」(以下、「甲A2実施例4図14真空ビール発明」という。)
「甲A2実施例4図13ビール発明の製造方法。」(以下、「甲A2実施例4図13ビール製法発明」という。)
「甲A2実施例4図14対照ビール発明の製造方法。」(以下、「甲A2実施例4図14対照ビール製法発明」という。)
「甲A2実施例4図14真空ビール発明の製造方法。」(以下、「甲A2実施例4図14真空ビール製法発明」という。)
なお、甲第A2号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
A 甲A2実施例4図13ビール発明との対比・判断
本件特許発明1と甲A2実施例4図13ビール発明とを対比する。
甲A2実施例4図13ビール発明の「エキス」、「エタノール」、「ビール」は、それぞれ、本件特許発明1の「リアルエキス」、「アルコール」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
そして、甲A2実施例4図13ビール発明のビールは、「麦芽として淡色大麦14.59kg、副原料として米国産フレーク米4.33kg、ホップとしてハラタウ ヘルスブルッカー222.0gを用いて得られた超高濃度麦汁」を原料として得られたものであるから、本件特許発明1の「麦芽比率が50質量%以上であり、」「原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない」との特定事項を満たすとともに、「麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビール」のいずれにもあたらないことは明らかである。
してみると、本件特許発明1と甲A2実施例4図13ビール発明との間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点A2-1
色度に関し、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A2実施例4図13ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A2-2
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明1は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A2実施例4図13ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A2-3
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明1は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲A2実施例4図13ビール発明は「約6~6.5°P」である点。
・相違点A2-4
アルコール度数に関し、本件特許発明1は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A2実施例4図13ビール発明は「約10w/w%」である点。
事案に鑑み、相違点A2-2について検討する。
アルコール度数「約10w/w%」は、「約12.39(v/v%)」と換算される。
すると、アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比は「約1.9~約2.1」と算出される。
してみれば、相違点A2-2は実質的な相違点である。
そして、甲第A2号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲A2実施例4図13ビール発明において、アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比を変更し、相違点A2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
すると、甲A2実施例4図13ビール発明において、相違点A2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A2実施例4図13ビール発明ではなく、甲A2実施例4図13ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
B 甲A2実施例4図14真空ビール発明との対比・判断
「甲A2実施例4図13ビール発明」と同様のことが、「甲A2実施例4図14真空ビール発明」の場合にもいえる。
C 甲A2実施例4図14対照ビール発明との対比・判断
本件特許発明1と甲A2実施例4図14対照ビール発明とを対比すると、上記Aと同様の相当関係がいえるから、両者の間の一致点、一応の相違点は次のとおりである。
(一致点)
「麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点A2-5
色度に関し、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A2実施例4図14対照ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A2-6
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明1は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A2実施例4図14対照ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A2-7
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明1は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲A2実施例4図14対照ビール発明は「約6.5°P」である点。
・相違点A2-8
アルコール度数に関し、本件特許発明1は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A2実施例4図14対照ビール発明は「約11.5w/w%」である点。
事案に鑑み、相違点A2-6について検討する。
アルコール度数「約11.5w/w%」は、「約14.22(v/v%)」と換算される。
すると、アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比は「約2.2」と算出される。
してみれば、相違点A2-6は実質的な相違点である。
そして、甲第A2号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲A2実施例4図14対照ビール発明において、アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比を変更し、相違点A2-6に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
すると、甲A2実施例4図14対照ビール発明において、相違点A2-6に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A2実施例4図14対照ビール発明ではなく、甲A2実施例4図14対照ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
以下、「甲A2実施例4図13ビール発明」、「甲A2実施例4図14真空ビール発明」及び「甲A2実施例4図14対照ビール発明」を総称し、「甲A2ビール発明」という場合がある。
(イ) 本件特許発明2ないし5、8及び12について
本件特許発明2ないし5、8及び12に係る発明と甲A2ビール発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、いずれの場合も、少なくとも次の点で相違する。
・相違点A2-9
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明2ないし5、8及び12は「2.5以上」あるいは「3.0以上」と特定するのに対し、甲A2ビール発明にはそのような特定がない点。
相違点A2-9について検討する。
相違点A2-9は、上記相違点A2-2あるいは相違点A2-6と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2ないし5、8及び12は、甲A2ビール発明ではなく、甲A2ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明9ないし11について
本件特許発明9ないし11と甲A2ビール発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、いずれの場合も、少なくとも次の点で相違する。
・相違点A2-10
アルコール度数に関し、本件特許発明9ないし11はいずれも「15.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A2ビール発明は「約10.0w/w%」あるいは「約11.5w/w%」である点。
相違点A2-10について検討する。
上記(ア)A及びBで検討したとおり、甲A2ビール発明のアルコール度数は「約12.39v/v%」あるいは「約14.22v/v%」と換算される。
したがって、相違点A2-10は実質的な相違点である。
また、甲第A2号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲A2ビール発明において、アルコール度数を上げ、相違点A2-10に係る本件特許発明9ないし11の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
すると、甲A2ビール発明において、アルコール度数を高め、相違点A2-10に係る本件特許発明9ないし11の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9ないし11は、甲A2ビール発明ではなく、甲A2ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明6について
A 甲A2実施例4図13ビール製法発明との対比・判断
本件特許発明6と甲A2実施例4図13ビール製法発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)Aと同様の相当関係がいえるから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「発酵させる発酵工程を有する、麦芽比率が50質量%以上のビールテイスト飲料の製造方法
(但し、麦芽比率が100質量%のビールの製造方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの製造方法を除く)。」
(相違点)
・相違点A2-11
色度に関し、本件特許発明6は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A2実施例4図13ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A2-12
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明6は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A2実施例4図13ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A2-13
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明1は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲A2実施例4図13ビール発明は「約6~6.5°P」である点。
・相違点A2-14
アルコール度数に関し、本件特許発明6は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A2実施例4図13ビール製法発明は「約10w/w%」である点。
事案に鑑み、相違点A2-12について検討する。
相違点A2-12は上記相違点A2-2と同旨であり、上記(ア)Aと同様に判断される。
したがって、本件特許発明6は、甲A2実施例4図13ビール製法発明ではなく、甲A2実施例4図13ビール製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
B 甲A2実施例4図14真空ビール製法発明との対比・判断
「甲A2実施例4図13ビール製法発明」と同様のことが、「甲A2実施例4図14真空ビール製法発明」の場合にもいえる。
C 甲A2実施例4図14対照ビール製法発明との対比・判断
本件特許発明6と甲A2実施例4図14対照ビール製法発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)Cと同様の相当関係がいえるから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「発酵させる発酵工程を有する、麦芽比率が50質量%以上のビールテイスト飲料の製造方法
(但し、麦芽比率が100質量%のビールの製造方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの製造方法を除く)。」
(相違点)
・相違点A2-15
色度に関し、本件特許発明6は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A2実施例4図14対照ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A2-16
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明6は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A2実施例4図14対照ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A2-17
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明6は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲A2実施例4図14対照ビール製法発明は「約6.5°P」である点。
・相違点A2-18
アルコール度数に関し、本件特許発明6は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A2実施例4図14対照ビール製法発明は「約11.5w/w%」である点。
事案に鑑み、相違点A2-16について検討する。
相違点A2-16は上記相違点A2-6と同旨であり、上記(ア)Cと同様に判断される。
したがって、本件特許発明6は、甲A2実施例4図14対照ビール製法発明ではなく、甲A2実施例4図14対照ビール製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第A2号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第A2号証に記載された発明ではなく、甲第A2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由A1-2及び申立理由A2-2についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由A1-2及び申立理由A2-2の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(3) 申立理由A1-3及び申立理由A2-3(甲第A3号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第A3号証の記載事項等
(ア) 甲第A3号証の記載事項
甲第A3号証には、「High gravity brewing: Effects of aeration on fermentation ability, flavor compounds, and lipid composition of brewer's yeast」に関し、次の記載がある。
「・200L規模のパイロットプラントで30°P原麦汁エキス及びラガー酵母を使用したエアレーションの影響を調べた。
・この長期エアレーション法を用いて製造されたHGBビールの風味を評価した。」(第8頁下から4行ないし末行)
「材料及び方法1
方法
・17°Pのラガー麦汁を標準的な製造手順に従って醸造した。
・次いで、モルトエキス及び液糖を麦汁釜に加え、原麦汁エキスレベルを30°Pまで増加させた。」(第9頁第1行ないし第5行)
「材料及び方法2
方法
・ピッチング速度:40×106細胞/mL
・発酵温度:15℃
・エアレーション:発酵タンクに0~72時間、1NL/分
[図:0001425725000017.jpg]
」(第10頁)
「材料及び方法3
エアレーションパターン
[図:0001425725000018.jpg]
」(第11頁)
「結果4:エキスの消費
[図:0001425725000019.jpg]
・エキスの消費は、麦汁のみのエアレーションにより、非常にゆっくりと進行した。
・エアレーションパターンA~Cでは未発酵エキスが残っていた。
・24時間以上のエアレーションで十分な発酵を達成した。」(第18頁)
「結果6:アルコール、同化エキス、AN、VDK
[図:0001425725000020.jpg]
・24時間以上のエアレーションは、15%(v/v)以上のアルコールを生成した。」(第20頁)
「・長期エアレーションを用いて製造されたビールは、標準的なラガービールと同等の良好な風味を有していた。」(第23頁)
(イ) 甲第A3号証に記載された発明
上記(ア)の記載のうち、第18頁及び第20頁の図より、サンプルC~Gのエキス濃度及びアルコール濃度は次の値であることが看守できる。
[図:0001425725000021.jpg]
そこで、上記アの記載のうち、サンプルC~Gについての記載を整理すると、甲第A3号証には次の発明が記載されているものと認める。
「標準的な製造方法で17°Pのラガー麦汁を製造し、モルトエキス及び液糖を加え、原麦汁エキスが30°Pの麦汁を準備し、
次いで酵母を加え、15℃で発酵を行い、ここで、発酵タンクのエアレーションを0~72時間行い、得られた下記表のエキス濃度及びアルコール濃度を有するサンプルC~Gのビール。
[図:0001425725000022.jpg]
」(以下、各サンプルに応じて、「甲A3サンプルCビール発明」のようにいう。)
「甲A3サンプルC~Gビール発明の製造方法。」(以下、各サンプルに応じて、「甲A3サンプルCビール製法発明」のようにいう。)
なお、甲第A3号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲A3サンプルCビール発明とを対比する。
甲A3サンプルCビール発明の「エキス」及び「ビール」はそれぞれ、本件特許発明1の「リアルエキス」及び「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲A3サンプルCビール発明は「エキス」の濃度が6%、アルコールの濃度が14.9v/v%であるから、本件特許発明1の「リアルエキス濃度が6.0質量%以下」、「アルコール度数が12.0(v/v)%以上」との特定事項を満たす。
してみると、本件特許発明1と甲A3サンプルCビール発明との間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「リアルエキス濃度が6.5質量%以下、アルコール度数が12.0(v/v)%以上である、
ビールテイスト飲料。」
(相違点)
・相違点A3-1
色度に関し、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A3サンプルCビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A3-2
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明1は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A3サンプルCビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A3-3
本件特許発明1は「麦芽比率が50質量%以上」と特定するのに対し、甲A3サンプルCビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A3-4
本件特許発明1は「原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない」と特定されるのに対し、甲A3サンプルCビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A3-5
本件特許発明1は「但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」と特定するのに対し、甲A3サンプルCビール発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点A3-5について検討する。
甲A3サンプルCビール発明は、甲第A3号証の第11頁の「材料及び方法3 エアレーションパターン」に示されているように、12時間のエアレーションを行うことで得られたものである。
そして、本件特許発明1は「発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」ものであるから、相違点A3-5は実質的な相違点である。
また、甲第A3号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲A3サンプルCビール発明において、エアレーションの時間を12時間未満とする、即ち、相違点A3-5に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
してみると、甲A3サンプルCビール発明において、相違点A3-5に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A3サンプルCビール発明ではなく、甲A3サンプルCビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
甲A3サンプルDビール発明ないし甲A3サンプルGビール発明それぞれについても、甲A3サンプルCビール発明と同様のことがいえる。
以下、「甲A3サンプルCビール発明」ないし「甲A3サンプルGビール発明」を総称し、「甲A3ビール発明」という。
(イ) 本件特許発明2ないし5及び8ないし12について
本件特許発明2ないし5及び8ないし12に係る発明と、甲A3ビール発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、いずれの場合においても、少なくとも次の点で相違する。
・相違点A3-6
本件特許発明2ないし5及び8ないし12は「但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」と特定するのに対し、甲A3ビール発明にはそのような特定がない点。
相違点A3-6について検討する。
相違点A3-6は上記相違点A3-5と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明2ないし5及び8なし12は、甲A3ビール発明ではなく、甲A3ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲A3サンプルCビール製法発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「アルコール度数が14.0(v/v)%以上となるように発酵させる発酵工程を有する、リアルエキス濃度が6.0質量%以下のビールテイスト飲料の製造方法。」
(相違点)
・相違点A3-7
色度に関し、本件特許発明6は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A3サンプルCビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A3-8
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明6は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A3サンプルC製法ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A3-9
本件特許発明6は「麦芽比率が50質量%以上」と特定するのに対し、甲A3サンプルCビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A3-10
本件特許発明6は「但し、麦芽比率が100質量%のビールの製造方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの製造方法を除く」と特定するのに対し、甲A3サンプルCビール製法発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点A3-10について検討する
相違点A3-10は上記相違点A3-5と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明6は、甲A3サンプルCビール製法発明ではなく、甲A3サンプルCビール製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
甲A3サンプルDビール製法発明ないし甲A3サンプルGビール製法発明それぞれについても、甲A3サンプルCビール製法発明と同様のことがいえる。
(エ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第A3号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第A3号証に記載された発明ではなく、甲第A3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由A1-3及び申立理由A2-3についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由A1-3及び申立理由A2-3の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(4) 申立理由A1-4及び申立理由A2-4(甲第A4号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第A4号証の記載事項等
(ア) 甲第A4号証の記載事項
甲第A4号証には、「ビールテイスト飲料」に関し、次の記載がある。
「【請求項1】
麦芽比率が50質量%以上100質量%以下であり、
糖質濃度が1.0g/100mL以下であり、且つ、
アルコール度数が4.5(v/v)%以上である、ビールテイスト飲料。
【請求項2】
前記ビールテイスト飲料が、ビールである、請求項1に記載のビールテイスト飲料。
【請求項3】
下記条件式(1)を満たす、請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料。
・条件式(1): Y/X≧10.0
[上記式(1)中、Xは前記ビールテイスト飲料の糖質濃度(単位:g/100mL)を示し、Yは前記ビールテイスト飲料のアルコール度数(単位:(v/v)%)を示す。]
【請求項4】
総ポリフェノールの含有量が、前記ビールテイスト飲料の全量基準で、60質量ppm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
【請求項5】
下記条件式(2)を満たす、請求項1~4のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
・条件式(2): Z/X≧180
[上記式(2)中、Xは前記ビールテイスト飲料の糖質濃度(単位:g/100mL)を示し、Zは前記ビールテイスト飲料の総ポリフェノールの含有量(単位:質量ppm)を示す。]
【請求項6】
麦芽比率が50質量%以上100質量%以下であり、糖質濃度が1.0g/100mL以下であり、且つ、アルコール度数が4.5(v/v)%以上であるビールテイスト飲料を製造する方法であって、
下記工程(1)~(2)を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。
・工程(1):水及び麦芽を含む混合物を糖化処理して発酵原料液を調製する工程。
・工程(2):前記発酵原料液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程。
【請求項7】
穀物に由来するスピリッツを添加する工程を有しない、請求項6に記載のビールテイスト飲料の製造方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況において、新規なビールテイスト飲料(例えば、良質な味わい、爽快な刺激、及び芳醇なビールらしさをバランス良く感じ得るようなビールテイスト飲料)が求められている。」
「【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、麦芽比率、糖質濃度、及びアルコール度数を所定の範囲に調製したビールテイスト飲料を提供する。
すなわち、本発明には、以下の態様の発明が含まれる。
[1]
麦芽比率が50質量%以上100質量%以下であり、
糖質濃度が1.0g/100mL以下であり、且つ、
アルコール度数が4.5(v/v)%以上である、ビールテイスト飲料。
[2]
前記ビールテイスト飲料が、ビールである、上記[1]に記載のビールテイスト飲料。
[3]
下記条件式(1)を満たす、上記[1]又は[2]に記載のビールテイスト飲料。
・条件式(1): Y/X≧10.0
[上記式(1)中、Xは前記ビールテイスト飲料の糖質濃度(単位:g/100mL)を示し、Yは前記ビールテイスト飲料のアルコール度数(単位:(v/v)%)を示す。]
[4]
総ポリフェノールの含有量が、前記ビールテイスト飲料の全量基準で、60質量ppm以上である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
[5]
下記条件式(2)を満たす、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料。
・条件式(2): Z/X≧180
[上記式(2)中、Xは前記ビールテイスト飲料の糖質濃度(単位:g/100mL)を示し、Zは前記ビールテイスト飲料の総ポリフェノールの含有量(単位:質量ppm)を示す。]
[6]
麦芽比率が50質量%以上100質量%以下であり、糖質濃度が1.0g/100mL以下であり、且つ、アルコール度数が4.5(v/v)%以上である、ビールテイスト飲料を製造する方法であって、
下記工程(1)~(2)を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。
・工程(1):水及び麦芽を含む混合物を糖化処理して発酵原料液を調製する工程。
・工程(2):前記発酵原料液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程。
[7]
穀物に由来するスピリッツを添加する工程を有しない、上記[6]に記載のビールテイスト飲料の製造方法。」
「【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様のビールテイスト飲料は、良質な味わい、爽快な刺激、及び芳醇なビールらしさをバランス良く感じることができる。」
「【0007】
1.ビールテイスト飲料
本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、ビール様の風味をもつアルコール含有の炭酸飲料をいう。そのため、「ビールテイスト飲料」には、麦芽、ホップ、及び水を
原料として、これらを、酵母を用いて発酵させて得られる麦芽発酵飲料であるビールだけでなく、エステルや高級アルコール(例えば、酢酸イソアミル、酢酸エチル、n-プロパノール、イソブタノール、アセトアルデヒド)等を含むビール香料が添加され、ビール風味を有する炭酸飲料をも包含する。
【0008】
本発明のビールテイスト飲料は、製造過程において、糖質の分解と、酵母による資化条件を調製して、麦芽比率が50質量%以上100質量%以下であり、糖質濃度が1.0g/100mL以下であり、且つ、アルコール度数が4.5(v/v)%以上となるように調製した飲料である。
【0009】
近年、健康面の観点から、低糖質ビールテイスト飲料の需要が高まってきている。
これまで一般的に流通している低糖質ビールテイスト飲料は、麦芽比率を下げて、麦芽由来の糖質を少なくして糖質濃度を下げているため、麦芽由来の味わいが感じにくく、ビールらしさが損なわれた飲料となり易い。
また、高い麦芽比率で得たビールテイスト飲料を、希釈して糖質濃度を下げて、低糖質ビールテイスト飲料を調製する方法もあるが、このような飲料は、味わいだけでなく、アルコール濃度も低下し、刺激が弱く、ビールらしさが損なわれた飲料となってしまう。
【0010】
一方で、本発明のビールテイスト飲料は、糖質濃度が1.0g/100mL以下と低糖質でありつつも、麦芽比率が高いため、良質な味わいを有するものとなる。また、アルコール度数が4.5(v/v)%以上となるように調製しており、爽快な刺激を感じることができる。
そのため、本発明のビールテイスト飲料は、低糖質でありつつも、良質な味わい、爽快な刺激、及び芳醇なビールらしさをバランス良く感じることができる飲料となり得る。
【0011】
本発明のビールテイスト飲料の麦芽比率は、50質量%以上100質量%以下であるが、60質量%以上100質量%以下であってもよく、70質量%以上100質量%以下であってもよく、80質量%以上100質量%以下であってもよく、90質量%以上100質量%以下であってもよい。
本明細書において、「麦芽比率」とは、平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達に従って計算された値を意味する。」
「【0014】
本発明の一態様のビールテイスト飲料において、爽快な刺激を感じることができるビールテイスト飲料とする観点から、アルコール度数は、好ましくは4.6(v/v)%以上、より好ましくは5.1(v/v)%以上、更に好ましくは5.4(v/v)%以上、より更に好ましくは6.0(v/v)%以上である。
また、飲みやすいビールテイスト飲料とする観点から、アルコール度数は、好ましくは20.0(v/v)%以下、より好ましくは15.0(v/v)%以下、更に好ましくは10.0(v/v)%以下である。」
「【0017】
なお、ビールテイスト飲料のアルコール度数を調製するために、アルコール成分として、さらに、穀物に由来するスピリッツを含有し、調整することも考えられる。
ここで、スピリッツとは、麦、米、そば、とうもろこし等の穀物を原料として、麦芽又は必要により酵素剤を用いて糖化し、酵母を用いて発酵させた後、更に蒸留して得られる酒類を意味する。
ただし、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、良質な味わいを有し、ビールらしいビールテイスト飲料とする観点から、スピリッツを含有しないことが好ましい。
【0018】
また、上記と同様の観点から、本発明の一態様のビールテイスト飲料は、ビールであることが好ましい。
本明細書において、「ビール」とは、麦芽、ホップ、及び水を原料として、これらを、酵母を用いて発酵させて得られる飲料をいい、具体的には、平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達で定義されたものを意味する。
つまり、本発明の一態様のビールテイスト飲料がビールである場合、アルコール度数(Z)は、酵母を用いた発酵工程によって調整されている。」
「【0054】
実施例1~4、比較例1~4
<飲料の調製>
粉砕した大麦麦芽及び多糖分解酵素を、52℃で保持された温水40Lが入った仕込槽に投入した後、52℃で30分間保持し、続いて65℃で40分間、さらに76℃で5分間と段階的に温度を上げて保持して糖化液を調製した後、濾過して麦芽粕を除去し、麦汁を得た。得られた麦汁に、表1に示す麦芽比率となるようにショ糖を添加し、さらにホップを添加して煮沸を行った。煮沸後の麦汁を固液分離処理し、得られた清澄な麦汁を冷却し、酵母を添加して、発酵温度及び発酵時間、トランスグルコシダーゼ等の多糖分解酵素の添加量や添加のタイミングを調整して発酵液を調製し、当該発酵液を濾過して、試験用飲料を調製した。
なお、各実施例及び比較例での飲料の調製に際しては、発酵液の調製に際しては、発酵温度及び発酵時間や、酵素の種類、添加量及び添加のタイミングを適宜設定し、表1に示す糖質濃度(X)及びアルコール度数(Y)となるように調整した。そして、得られた飲料における、総ポリフェノール含有量(Z)は、表1に示すとおりであった。
【0055】
<官能評価>
得られた飲料について、日頃から訓練を受けた5人のパネラーが、各飲料の「味わい」「刺激」及び「ビールらしさ」について、下記のスコア基準に基づき、5(最大値)~1(最小値)の範囲で、0.1刻みのスコアにて評価し、5人のパネラーのスコアの平均値を算出した。結果を表1に示す。
なお、評価に際しては、下記基準「5」、「4」、「3」、「2」及び「1」に適合するサンプルを予め用意し、各パネラー間での基準の統一を図った。また、表1のいずれの官能評価においても、同じ飲料に対して、各パネラー間での2.0以上のスコアの値の差異は確認されなかった。
[味わいのスコア基準]
・「5」:非常に良質な味わいを感じる。
・「4」:良質な味わいを感じる。
・「3」:味わいを感じる。
・「2」:味わいが少しだけ感じられる。
・「1」:味わいがほとんど感じられない。
[刺激のスコア基準]
・「5」:非常に爽快な刺激を感じる。
・「4」:爽快な刺激を感じる。
・「3」:刺激を感じる。
・「2」:刺激を感じるが弱い。
・「1」:刺激がほとんど感じられない。
[ビールらしさスコア基準]
・「5」:非常に芳醇なビールらしさを感じる。
・「4」:芳醇なビールらしさを感じる。
・「3」:ビールらしさを感じる。
・「2」:ビールらしさを感じるが弱い。
・「1」:ビールらしさがほとんど感じられない。
【0056】
【表1】
[図:0001425725000023.jpg]
【0057】
表1より、実施例1~4で調製したビールは、味わい、刺激、及びビールらしさのいずれもがバランスよく良好であった。一方で、比較例1~4で調製した飲料は、味わい、刺激、及びビールらしさの少なくとも1つが劣り、これらのバランスに欠ける結果となった。」
(イ) 甲第A4号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に実施例3の記載を中心に整理すると、甲第A4号証には次の発明が記載されていると認める。
「粉砕した大麦麦芽及び多糖分解酵素を、52℃で保持された温水40Lが入った仕込槽に投入した後、52℃で30分間保持し、続いて65℃で40分間、さらに76℃で5分間と段階的に温度を上げて保持して糖化液を調製した後、濾過して麦芽粕を除去し、麦汁を得、
得られた麦汁に、麦芽比率51質量%となるようにショ糖を添加し、さらにホップを添加して煮沸を行い、煮沸後の麦汁を固液分離処理し、得られた清澄な麦汁を冷却し、酵母を添加して、発酵温度及び発酵時間、トランスグルコシダーゼ等の多糖分解酵素の添加量や添加のタイミングを調整して発酵液を調製し、当該発酵液を濾過して、得られた、麦芽比率51質量%、糖質濃度0.4g/100mL、アルコール度数6.5(v/v)%であるビールテイスト飲料。」(以下、「甲A4発明」という。)
「甲A4発明の製造方法。」(以下、「甲A4製法発明」という。)
なお、甲第A4号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
また、特許異議申立人Aは、甲第A4号証の請求項1、6、【0014】及び【0017】の記載を根拠として、
「糖質濃度が1.0g/100mL以下、アルコール度数が6.0(v/v)%以上20.0(v/v)%以下、麦芽比率が50質量%以上100質量%以下であり、スピリッツを含有しない、ビールテイスト飲料。」
との発明を認定できる旨主張する(異議申立書第83頁ないし第84頁)が、これは、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載を恣意的に組み合わせたものであるから、甲第A4号証の記載から、そのような発明を直ちに認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲A4発明とを対比する。
甲A4発明のビールテイスト飲料は、「麦芽比率51質量%」であるから、本件特許発明1の「麦芽比率が50質量%以上」との特定事項を満たす。
また、甲A4発明のビールテイスト飲料は、その原料及び製法からみて、本件特許発明1の「原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない」との特定事項を満たすものであり、さらに、「麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビール」のいずれにも該当しないことは明らかである。
してみると、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点A4-1
色度に関し、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A4発明にはそのような特定がない点。
・相違点A4-2
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明1は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A4発明にはそのような特定がない点。
・相違点A4-3
アルコール度数に関し、本件特許発明1は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A4発明は「6.5(v/v)%」である点。
事案に鑑み、相違点A4-3について検討する。
相違点A4-3は実質的な相違点である。
また、甲A4発明において、アルコール度数として、「6.0(v/v)%以上」「20.0(v/v)%以下」とし得る旨の記載(【0014】)はあるものの、実施例・比較例を通じて具体的に示されているのは2.6(v/v)%以上6.5(v/v)%以下であること、また、「飲みやすいビールテイスト飲料とする観点から、アルコール度数は、好ましくは20.0(v/v)%以下、・・・さらに好ましくは10.0(v/v)%以下である」(【0014】)と、アルコール度数の上限はむしろ低い方が好ましい点が示されていることを併せて考慮すると、甲A4発明において、アルコール度数を6.5(v/v)%から高めて、相違点A4-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがあるともいえない。
してみると、甲A4発明において、相違点A4-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A4発明ではなく、甲A4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2ないし5及び8ないし12について
本件特許発明2ないし5及び8ないし12と甲A4発明とを対比すると、いずれの場合においても、次の相違点がある。
・相違点A4-4
アルコール度数に関し、本件特許発明1は「13.0(v/v)%以上」、「14.0(v/v%)以上」、「15/0(v/v)%以上」あるいは「14/0(v/v)%以上17.0(v/v)%以下」と特定するのに対し、甲A4発明は「6.5(v/v)%」である点。
相違点A4-4について検討する。
相違点A4-4は、アルコール度数の下限値あるいは上限値の違いはあるものの、実質的には上記相違点A4-3と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明2ないし5及び8ないし12はいずれも、甲A4発明ではなく、甲A4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲A4製法発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「発酵させる発酵工程を有する、麦芽比率が50質量%以上のビールテイスト飲料の製造方法
(但し、麦芽比率が100質量%のビールの製造方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの製造方法を除く)。」
(相違点)
・相違点A4-5
色度に関し、本件特許発明6は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A4製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A4-6
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明6は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A4製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A4-7
アルコール度数に関し、本件特許発明6は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A4製法発明は「6.5(v/v)%」である点。
事案に鑑み、相違点A4-7について検討する。
相違点A4-7は、上記相違点A4-3と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲A4製法発明ではなく、甲A4製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第A4号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第A4号証に記載された発明ではなく、甲第A4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由A1-4及び申立理由A2-4についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由A1-4及び申立理由A2-4の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(5) 申立理由A1-5及び申立理由A2-5(甲第A5号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第A5号証及び甲第A18号証の記載事項等
(ア) 甲第A5号証の記載事項
甲第A5号証には、「ビールにおけるアラビノキシロオリゴ糖」に関し、次の記載がある。
「【0062】
ノンアルコールビール、ピルスナースタイルビール、アメリカンライトビール、エール、サワーエール、ベルギーホワイトビール、ドイツのヴァイツェンビール(小麦ビール)、(ベルギーアビートリプルの中の)ブロンドストロングエール、ダークストロングエール、およびグーズ・ランビックビールを含む広く異なるビールのスタイルを代表する市販のビールの連なりを収集した。各ビールは、アルコール含有量と、真性エキスと、元々のエキス(元々の麦汁重量)と、マルトデキストリン含有量と、アラビノキシロオリゴ糖(AXOS)含有量と、平均アラビノース対キシロースの比(A/X)と、AXOSの平均重合度(avDP)とについて分析され、結果が表1に示される。」
「【0099】
【表1】
[図:0001425725000024.jpg]
」
(イ) 甲第A5号証に記載された発明
上記(ア)の記載のうち、「Gordon Finest Platinum」に関し整理すると、甲第A5号証には、次の発明が記載されているものと認める。
「真正エキスが3.21g/100ml、アルコールが11.99v/v%であるビール。」(以下、「甲A5ビール発明」という。)
「甲A5ビール発明の製造方法。」(以下、「甲A5ビール製法発明」という。)
なお、甲第A5号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
(ウ) 甲第A18号証の記載事項
甲第A18号証には、「Finest Platinum Beer」に関し、次の記載がある。
「
[図:0001425725000025.jpg]
[図:0001425725000026.jpg]
」
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲A5ビール発明とを対比する。
甲A5ビール発明の「真正エキス」、「ビール」は、それぞれ、本件特許発明1の「リアルエキス」、「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲A5ビール発明の「真正エキス」は「3.21g/100mg」であるから、本件特許発明1の「リアルエキス濃度が6.5質量%以下」との特定事項を満たす。
してみると、本件特許発明1と甲A5ビール発明との間の一致点、相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「リアルエキス濃度が6.0質量%以下である、
ビールテイスト飲料。」
(相違点)
・相違点A5-1
色度に関し、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A5ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A5-2
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明1は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A5ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A5-3
アルコール度数に関し、本件特許発明1は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A5ビール発明は「11.99v/v%」である点。
・相違点A5-4
麦芽比率に関し、本件特許発明1は「50質量%以上」と特定するのに対し、甲A5ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A5-5
本件特許発明1は「原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない」と特定するのに対し、甲A5ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A5-6
本件特許発明1は「但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」と特定するのに対し、甲A5ビール発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点A5-3について検討する。
甲A5ビール発明のアルコール度数は、甲第A18号証における公称値でも「12.00v/v%」であるから、相違点A5-3は実質的な相違点である。
そして、甲第A5号証およびその他の全ての証拠の記載をみても、甲A5ビール発明において、アルコール度数を変更し、相違点A5-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けはない。
してみると、甲A5ビール発明において、相違点A5-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A5ビール発明ではなく、甲A5ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2ないし5及び8ないし12について
本件特許発明2ないし5及び8ないし12と甲A5ビール発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、いずれの場合も、少なくとも次の点で相違する。
・相違点A5-7
アルコール度数に関し、本件特許発明2ないし5及び8ないし12は「13.0(v/v%)以上」、「15.0(v/v%)以上」または「14.0(v/v)%以上17.0(v/v)%以下」と特定するのに対し、甲A5ビール発明は「11.99v/v%」である点。
相違点A5-7について検討する。
相違点A5-7は上記相違点A5-3と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明2ないし5及び8ないし12は、甲A5ビール発明ではなく、甲A5ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲A5ビール製法発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「発酵させる発酵工程を有する、リアルエキス濃度が6.0質量%以下、および、麦芽比率が50質量%以上のビールテイスト飲料の製造方法
(相違点)
・相違点A5-8
色度に関し、本件特許発明6は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A5ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A5-9
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明6は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A5ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A5-10
アルコール度数に関し、本件特許発明6は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A5ビール発明は「11.99v/v%」である点。
・相違点A5-11
麦芽比率に関し、本件特許発明6は「50質量%以上」と特定するのに対し、甲A5ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A5-12
本件特許発明6は「但し、麦芽比率が100質量%のビールに製造方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの製造方法を除く」と特定するのに対し、甲A5ビール発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点A5-10について検討する。
相違点A5-10は上記相違点A5-3と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲A5ビール製法発明ではなく、甲A5ビール製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第A5号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第A5号証に記載された発明ではなく、甲第A5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由A1-5及び申立理由A2-5についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由A1-5及び申立理由A2-5の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(6) 申立理由A1-6及び申立理由A2-6(甲第A6号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第A6号証の記載事項等
(ア) 甲第A6号証の記載事項
甲第A6号証には、「Monster's Park Imperial Stout」に関し、次の記載がある。
「
[図:0001425725000027.jpg]
[図:0001425725000028.jpg]
[図:0001425725000029.jpg]
」
イ 甲第A6号証に記載された発明
上記アの記載について整理すると、甲第A6号証には、次の発明が記載されていると認める。
「最終比重が1.022、アルコール含有量が12.00%、SRMが50であるビール。」(以下、「甲A6ビール発明」という。)
「甲A6ビール発明の製造方法。」(以下、「甲A6ビール製法発明」という。)
なお、甲第A6号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲A6ビール発明を対比する。
甲A6ビール発明の「ビール」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。
してみると、本件特許発明1と甲A6ビール発明との間の一致点、相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「ビールテイスト飲料。」
(相違点)
・相違点A6-1
色度に関し、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A6ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A6-2
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明1は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A6ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A6-3
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明1は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲A6ビール発明はそのような特定がない点。
・相違点A6-4
アルコール度数に関し、本件特許発明1は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A6ビール発明は「12.00%」である点。
・相違点A6-5
麦芽比率に関し、本件特許発明1は「50質量%以上」と特定するのに対し、甲A6ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A6-6
本件特許発明1は「原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない」と特定するのに対し、甲A6ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点A6-7
本件特許発明1は「但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く」と特定するのに対し、甲A6ビール発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点A6-4について検討する。
相違点A6-4は実質的な相違点である。
そして、甲第A6号証及びその他の全ての証拠の記載をみても、甲A6ビール発明において、アルコール度数を変更し、相違点A6-4に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けはない。
してみると、甲A6ビール発明において、相違点A6-4に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A6ビール発明ではなく、甲A6ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2ないし5及び8ないし12について
本件特許発明2ないし5及び8ないし12と甲A6ビール発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、いずれの場合も、少なくとも次の点で相違する。
・相違点A6-8
アルコール度数に関し、本件特許発明2ないし5及び8ないし12は「13.0(v/v%)以上」、「15.0(v/v%)以上」または「14.0(v/v)%以上17.0(v/v)%以下」と特定するのに対し、甲A6ビール発明は「12.00%」である点。
相違点A6-8について検討する。
相違点A6-8は上記相違点A6-4と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明2ないし5及び8ないし12は、甲A6ビール発明ではなく、甲A6ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲A6ビール製法発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「発酵工程を有する、ビールテイスト飲料の製造方法。」
(相違点)
・相違点A6-9
色度に関し、本件特許発明6は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲A6ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A6-10
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明6は「2.5以上」と特定するのに対し、甲A6ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A6-11
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明6は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲A6ビール製法発明はそのような特定がない点。
・相違点A6-12
アルコール度数に関し、本件特許発明6は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲A6ビール製法発明は「12.00%」である点。
・相違点A6-13
麦芽比率に関し、本件特許発明6は「50質量%以上」と特定するのに対し、甲A6ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点A6-14
本件特許発明6は「但し、麦芽比率が100質量%のビールの製造方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールに製造方法を除く」と特定するのに対し、甲A6ビール製法発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点A6-12について検討する。
相違点A6-12は上記相違点A6-4と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明6は、甲A6ビール製法発明ではなく、甲A6ビール製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第A6号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第A6号証に記載された発明ではなく、甲第A6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由A1-6及び申立理由A2-6についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由A1-6及び申立理由A2-6の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(7) 申立理由A1-7ないし申立理由A1-9及び申立理由A2-7ないし申立理由A2-9(甲第A7号証ないし甲第A9号証それぞれを主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第A7号証ないし甲第A9号証の記載事項等
(ア) 甲第A7号証の記載事項等
A 甲第A7号証の記載事項
甲第A7号証には、「Imperial Stout」に関し、次の記載がある。
「
[図:0001425725000030.jpg]
[図:0001425725000031.jpg]
」
B 甲第A7号証に記載された発明
上記Aの記載を整理すると、甲第A7号証には次の発明が記載されていると認める。
「水、大麦麦芽、ロースト麦芽、ホップ、酵母からなり、アルコール含有量が12.00%、タンパク質が0.40g/100.00ml、脂質が0.10g/100.00ml未満、炭水化物が5.50g/100.00mlであるビール。」(以下、「甲A7ビール発明」という。)
「甲A7ビール発明の製造方法。」(以下、「甲A7ビール製法発明」という。)
なお、甲第A7号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
(イ) 甲第A8号証の記載事項等
A 甲第A8号証の記載事項
甲第A8号証には、「Bourbon Barrel Aged Wheatwine Ale」に関し、次の記載がある。
「
[図:0001425725000032.jpg]
[図:0001425725000033.jpg]
」
B 甲第A8号証に記載された発明
上記Aの記載を整理すると、甲第A8号証には次の発明が記載されていると認める。
「水、小麦麦芽、ホップ、酵母からなり、アルコール含有量が12.00%であり、11.00オンスあたりの層脂肪分が0.20g、ナトリウムが0.00mg、総炭水化物が2.30g、タンパク質が3.60gであるビール。」(以下、「甲A8ビール発明」という。)
「甲A8ビール発明の製造方法。」(以下、「甲A8ビール製法発明」という。)
なお、甲第A8号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
(ウ) 甲第A9号証の記載事項等
A 甲第A9号証の記載事項
甲第A9号証には、「Lager Beer」に関し、次の記載がある。
「
[図:0001425725000034.jpg]
[図:0001425725000035.jpg]
」
B 甲第A9号証に記載された発明
上記Aの記載を整理すると、甲第A9号証には次の発明が記載されていると認める。
「水、大麦、ホップからなり、アルコール含有量が12.00%であり、炭水化物が最大4.70質量%であるビール。」(以下、「甲A9ビール発明」という。)
「甲A9ビール発明の製造方法。」(以下、「甲A9ビール製法発明」という。)
なお、甲第A9号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1ないし5及び8ないし12について
本件特許発明1ないし5及び8ないし12と甲A7ビール発明、甲A8ビール発明、甲A9ビール発明とを対比すると、少なくとも、次の点で相違することは明らかである。
・相違点A789-1
アルコール度数に関し、本件特許発明1ないし5及び8ないし12は「13.0(v/v%)以上」、「14.0(v/v%)以上」、「15.0(v/v%)以上」または「14.0(v/v)%以上17.0(v/v)%以下」と特定するのに対し、甲A7ビール発明、甲A8ビール発明、甲A9ビール発明はいずれも「12.00%」である点。
相違点A789-1について検討する。
相違点A789-1は実質的な相違点である。
そして、甲第A7号証、甲第A8号証、甲第A9号証及びその他の全ての証拠の記載をみても、甲A7ビール発明、甲A8ビール発明、甲A9ビール発明において、アルコール度数を変更し、相違点A789-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けはない。
してみると、甲A7ビール発明、甲A8ビール発明、甲A9ビール発明において、相違点A789-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲A7ビール発明、甲A8ビール発明、甲A9ビール発明のいずれでもなく、甲A7ビール発明、甲A8ビール発明、甲A9ビール発明のそれぞれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲A7ビール製法発明、甲A8ビール製法発明、甲A9ビール製法発明を対比すると、結局のところ、アルコール度数の点で少なくとも相違するものであり、上記(ア)と同様に判断されるものといえる。
したがって、本件特許発明6は、甲A7ビール製法発明、甲A8ビール製法発明、甲A9ビール製法発明のいずれでもなく、甲A7ビール製法発明、甲A8ビール製法発明、甲A9ビール製法発明のそれぞれに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明7について
上記(ア)B、(イ)B、(ウ)Bのとおり、甲第A7号証、甲第A8号証、甲第A9号証のいずれの記載からも、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第A7号証、甲第A8号証、甲第A9号証のいずれに記載された発明ではなく、甲第A7号証、甲第A8号証、甲第A9号証のそれぞれに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由A1-7ないし申立理由A1-9及び申立理由A2-7ないし申立理由A2-9についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由A1-7ないし申立理由A1-9及び申立理由A2-7ないし申立理由A2-9の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(8) 申立理由A3(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 特許請求の範囲の記載
上記第3のとおりである。
ウ サポート要件についての判断
本件特許発明は、「ビールテイスト飲料に関する」(【0001】)ものであって、本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、明細書の発明の詳細な説明の【0004】及び【0006】の記載からみて、「刺激感を有し、さらに、爽快な味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」ことである。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明は、リアルエキス濃度が11.8質量%以下、および、アルコール度数が10.5(v/v)%以上である、ビールテイスト飲料を提供する」(【0005】)との記載、「本発明の一態様のビールテイスト飲料は刺激感を付与できるようにアルコール度数は、10.5(v/v)%以上であり」(【0008】)との記載、「本発明の一態様のビールテイスト飲料は刺激感を付与できるようにアルコール度数は10.5(v/v)%以上であるため、辛口になって飲みにくい味わいになりやすい。そこで、刺激感を有しながら、スッキリした爽快な味わいにするために、本発明のビールテイスト飲料のリアルエキス濃度は11.8質量%以下であり」(【0010】)との記載があり、具体的な実施例・比較例による効果の検討についての記載(【0064】ないし【0073】)もある。
これらの記載に接した当業者であれば、ビールテイスト飲料において、「リアルエキス濃度が11.8質量%以下」であって、「アルコール度数が10.5(v/v)%以上」との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし12はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項の全てを有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
エ 特許異議申立人Aの主張について
特許異議申立人Aは、上記第4 1(19)の申立理由、すなわち、「実施例1~39のビールテイスト飲料が、原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれないビールテイスト飲料であるかどうか判断することができず、ひいては、これらのビールテイスト飲料が本件特許発明1に係るビールテイスト飲料であるかどうかも判断することができない」(申立理由A3-1)、「リアルエキス濃度の下限値、アルコール度数/リアルエキス濃度、及び遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量を規定しない本件特許発明1は、本件特許発明が解決しようとする課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えた発明である」(申立理由A3-2)、「本件特許明細書の実施例の結果からも、ビールテイスト飲料の「刺激感」と「爽快な味わい」の調整ひいては両立には、リアルエキス濃度の上限値とアルコール度数の下限値を設定すること以外にも、他の特徴が寄与しているものと考えられる。してみれば、本件特許発明1は、本件特許発明が解決しようとする課題を解決するための手段が反映されていない発明であるといえ、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えた発明である」(申立理由A3-3)、「本件特許明細書の実施例に記載された「刺激感」及び「爽快な味わい」の評価は、原材料や組成等が不明なサンプルを基準とするものであり、客観的に正確な評価であるとは認められない」(申立理由A3-4)との主張をする。
しかしながら、上記ウで検討したとおり、本件特許の発明の課題は、ビールテイスト飲料において、「リアルエキス濃度が11.8質量%以下」であって、「アルコール度数が10.5(v/v)%以上」との特定事項を満たすことにより、解決できると認識できるものであり、実施例・比較例を通じてみても、当該特定事項を満たすものとすることにより、当該特定事項を満たさないものに比して、「刺激感を有し、さらに、爽快な味わいを有する」ものとなることは当業者であれば認識できる。
してみると、原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれるか否か(申立理由A3-1)は発明の課題の解決とは関係がないものであるし、そもそも、アルコール度数とリアルエキス濃度の以外の条件が同じである場合において、「リアルエキス濃度が11.8質量%以下」であって、「アルコール度数が10.5(v/v)%以上」との特定事項を満たすことにより、そうではないものに比して「刺激感を有し、さらに、爽快な味わいを有する」ものとなるから、申立理由A3-2ないし申立理由A3-4はいずれも当該判断に影響するものではない。
また、申立理由A3のいずれの理由も、具体的に本件特許発明1ないし12が発明の課題を解決し得ないとの証拠を提示するものでもない。
よって、特許異議申立人Aの上記主張はいずれも採用できない。
オ 申立理由A3についてのまとめ
上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由A3の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(9) 申立理由B1-1及び申立理由B2-1(甲第B1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第B1号証の記載事項等
(ア) 甲第B1号証の記載事項
甲第B1号証には、「German Braggot」に関し、次の記載がある。なお、抄訳についても併せて摘記する。
「
[図:0001425725000036.jpg]
[図:0001425725000037.jpg]
」
(イ) 甲第B1号証に記載された発明
上記(ア)の記載を整理すると、甲第B1号証には、次の発明が記載されていると認める。
「発酵原料として、液体モルトエクストラクト(ミュンヘン)8ポンド、蜂蜜7ポンドを用い、ホップ、酵母を用いて製造された、オリジナルエキス(比重)1.104、外観エキス(比重)1.005、アルコール度数12.99v/v%、色度(SRM)9.2のビール。」(以下、「甲B1ビール発明」という。)
「甲B1ビール発明の製造方法。」(以下、「甲B1ビール製法発明」という。)
なお、甲第B1号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B1ビール発明とを対比する。
甲B1ビール発明の「ビール」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。
さらに、甲B1ビール発明の発酵原料は、「液体モルトエクストラクト(ミュンヘン)8ポンド、蜂蜜7ポンド」であるから、麦芽原料にあたる「液体モルトエクストラクト(ミュンヘン)」の割合は、8/(8+7)=53.3質量%であり、本件特許発明1の「麦芽比率が50質量%以上」との特定事項を満たす。
そして、甲第B1号証には、甲B1ビール発明の原料に、エタノールまたはエタノール含有組成物を用いる旨の記載はないから、本件特許発明1の「原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない」との発明特定事項を満たすことも明らかであり、また、「麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビール」でないことも明らかである。
してみると、本件特許発明1と甲B1ビール発明との間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点B1-1
色度に関し、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B1ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点B1-2
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明1は「2.5以上」と特定するのに対し、甲B1ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点B1-3
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明1は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲B1ビール発明はそのような特定がない点。
・相違点B1-4
アルコール度数に関し、本件特許発明1は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲B1ビール発明は「12.99v/v%」である点。
事案に鑑み、相違点B1-2について検討する。
甲第B8号証によると、リアルエキス濃度は、オリジナルエキス濃度及び外観エキス濃度から、次式にしたがって算出が可能である。
RE=(0.1948×OE)+(0.8052×AE)
ここで、REはリアルエキス濃度、OEはオリジナルエキス濃度、AEは外観エキス濃度を示す。
そこで、上記の換算式にしたがって甲B1ビール発明のリアルエキス濃度を算出する。
まず、甲B1ビール発明のオリジナルエキス(比重)は1.104、外観エキス(比重)は1.005であるから、換算すると、オリジナルエキス濃度は24.6質量%、外観エキス濃度は1.28質量%となる(必要であれば、https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/などの変換ツールを参照されたい。)。
そして、リアルエキス濃度は、(0.1948×24.6質量%)+(0.8052×1.28質量%)≒4.79+1.03=5.82質量%と算出される。
すると、甲B1ビール発明のアルコール度数は「12.99v/v%」であるから、アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]は12.99/5.82≒2.23と算出される。
してみると、相違点B1-2は実質的な相違点である。
また、甲第B1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B1ビール発明において、アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]を変更し、相違点B1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
してみると、甲B1ビール発明において、相違点B1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B1ビール発明ではなく、甲B1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2ないし5、8及び12について
本件特許発明2ないし5、8及び12に係る発明と甲B1ビール発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、いずれの場合も、少なくとも次の点で相違する。
・相違点B1-5
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明2ないし5、8及び12は「2.5以上」あるいは「3.0以上」と特定するのに対し、甲B1ビール発明にはそのような特定がない点。
相違点B1-5について検討する。
相違点B1-5は、上記相違点B1-2と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2ないし5、8及び12は、甲B1ビール発明ではなく、甲B1ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明9ないし11について
本件特許発明9ないし11と甲B1ビール発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、いずれの場合も、少なくとも次の点で相違する。
・相違点B1-6
アルコール度数に関し、本件特許発明9ないし11はいずれも「15.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲B1ビール発明は「12.99v/v%」である点。
相違点B1-6について検討する。
相違点B1-6は、実質的な相違点である。
また、甲第B1号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B1ビール発明において、アルコール度数(v/v)%を変更し、相違点B1-6に係る本件特許発明9ないし11の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
してみると、甲B1ビール発明において、相違点B1-6に係る本件特許発明9ないし11の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9ないし11は、甲B1ビール発明ではなく、甲B1ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲B1ビール製法発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「発酵工程を有する、麦芽比率が50質量%以上のビールテイスト飲料の製造方法
(但し、麦芽比率が100質量%のビールの製造方法、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールの製造方法を除く)。」
(相違点)
・相違点B1-7
色度に関し、本件特許発明6は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B1ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点B1-8
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明6は「2.5以上」と特定するのに対し、甲B1ビール製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点B1-9
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明6は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲B1ビール製法発明はそのような特定がない点。
・相違点B1-10
アルコール度数に関し、本件特許発明6は「14.0(v/v%)以上」と特定するのに対し、甲B1ビール製法発明は「12.99v/v%」である点。
事案に鑑み、相違点B1-8について検討する。
相違点B1-8は上記相違点B1-2と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲B1ビール製法発明ではなく、甲B1ビール製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第B1号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第B1号証に記載された発明ではなく、甲第B1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由B1-1及び申立理由B2-1についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由B1-1及び申立理由B2-1の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(10) 申立理由B1-2及び申立理由B2-2(甲第B2号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第B2号証の記載事項等
(ア) 甲第B2号証の記載事項
甲第B2号証には、「Saison Braggot」に関し、次の記載がある。なお、抄訳についても併せて摘記する。
「
[図:0001425725000038.jpg]
[図:0001425725000039.jpg]
[図:0001425725000040.jpg]
」
イ 甲第B2号証に記載された発明
上記アの記載を整理すると、甲第B2号証には、次の発明が記載されていると認める。
「発酵原料として、液体モルトエクストラクト(ライト)2.55kg、ドライモルトエクストラクト(小麦)0.245kg、蜂蜜2.7kgを用い、ホップ、酵母を用いて製造された、オリジナルエキス(比重)1.099、外観エキス(比重)1.007、アルコール度数12.05v/v%、色度(SRM)5.98のビール。」(以下、「甲B2ビール発明」という。)
「甲B2ビール発明の製造方法。」(以下、「甲B2ビール製法発明」という。)
なお、甲第B2号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1ないし5及び8ないし12について
本件特許発明1ないし5及び8ないし12と甲B2ビール発明とを対比すると、少なくとも、次の点で相違することは明らかである。
・相違点B2
アルコール度数に関し、本件特許発明1ないし5及び8ないし12は「13.0(v/v%)以上」、「14.0(v/v%)以上」、「15.0(v/v%)以上」または「14.0(v/v)%以上17.0(v/v)%以下」と特定するのに対し、甲B2ビール発明は「12.05v/v%」である点。
相違点B2について検討する。
相違点B2は実質的な相違点である。
そして、甲第B2号証及びその他の全ての証拠の記載をみても、甲B2ビール発明において、アルコール度数を変更し、相違点B2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けはない。
してみると、甲B2ビール発明において、相違点B2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲B2ビール発明ではなく、甲B2ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲B2ビール製法発明を対比すると、結局のところ、アルコール度数の点で少なくとも相違するものであり、上記(ア)と同様に判断されるものといえる。
したがって、本件特許発明6は、甲B2ビール製法発明ではなく、甲B2ビール製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第B2号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第B2号証に記載された発明ではなく、甲第B2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由B1-2及び申立理由B2-2についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由B1-2及び申立理由B2-2の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(11) 申立理由B1-3及び申立理由B2-3(甲第B3号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第B3号証の記載事項等
(ア) 甲第B3号証の記載事項
甲第B3号証には、「yiganqingtai32」に関し、次の記載がある。なお、抄訳についても併せて摘記する。
「
[図:0001425725000041.jpg]
[図:0001425725000042.jpg]
」
(イ) 甲第B3号証に記載された発明
上記(ア)の記載を整理すると、甲第B3号証には、次の発明が記載されていると認める。
「原料として以下の表のものを用いて製造された、オリジナルエキス1.109(25.7質量%)、外観エキス0.999(-0.3質量%)、アルコール度数14.7v/v%、色度64.8SRMのビール。
[図:0001425725000043.jpg]
」(以下、「甲B3ビール発明」という。)
「甲B3ビール発明の製造方法。」(以下、「甲B3ビール製法発明」という。)
なお、甲第B3号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B3ビール発明とを対比する。
甲B3ビール発明の「ビール」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲B3ビール発明の原料から見て、麦芽(マリスオッター(クリスプ)、シャトーペールエール、シャトーチョコレート、シャトークリスタル)の比率は概ね57.0重量%と計算されるから、本件特許発明1の「麦芽比率が50質量%以上」との特定事項を満たす。
さらに、甲B3ビール発明は、アルコール度数「14.7v/v%」であるから、本件特許発明1のアルコール度数が「14.0(v/v%)以上」との特定事項を満たす。
そして、甲B3ビール発明が、本件特許発明1の「原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない」との発明特定事項を満たすことも明らかであり、また、「麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビール」でないことも明らかである。
してみると、本件特許発明1と甲B3ビール発明との間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「アルコール度数が14.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点B3-1
色度に関し、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B3ビール発明は「色度64.8SRM」である点。
・相違点B3-2
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明1は「2.5以上」と特定するのに対し、甲B3ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点B3-3
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明1は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲B3ビール発明はそのような特定がない点。
相違点B3-1について検討する。
甲B3ビール発明の色度は「色度64.8SRM」である。そこで、甲第B9号証の換算式にしたがってEBCの色度に換算すると、64.8(SRM)×1.97≒127.7(EBC)となる。
よって、相違点B3-1は実質的な相違点である。
また、甲第B3号証及び他のすべての証拠の記載を見ても、甲B3ビール発明において色度を調整し、「20EBC以上80.0EBC以下」となるようにする、すなわち、相違点B3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
すると、甲B3ビール発明において、相違点B3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になしえたこととはいえない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B3ビール発明ではなく、甲B3ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(特許異議申立人の主張について)
特許異議申立人Aは、令和6年8月29日に提出した意見書(以下、「意見書A」という。)において、「ビールについてその色(色度)を調整することは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない」(意見書A 第8頁)旨主張するが、すべての証拠の記載を見ても、甲B3ビール発明においてそもそも色度に着目し調整する動機付け、さらにいえば、色度を小さくする動機付けがあるとはいえないから、特許異議申立人Aの上記主張は採用することができない。
(イ) 本件特許発明2ないし5、8、9、11及び12について
本件特許発明2ないし5、8、9、11及び12と甲B3ビール発明とを対比すると、両者は少なくとも、色度の点で相違するが、当該相違点は、上記相違点B3-1と同様に判断される。
したがって、本件特許発明2ないし5、8、9、11及び12は、甲B3ビール発明ではなく、甲B3ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明10について
本件特許発明10と甲B3ビール発明とを対比すると、両者は少なくとも、次の点で相違する。
・相違点B3-4
アルコール度数に関して、本件特許発明10は「15.0(v/v)%以上」と特定するのに対して、甲B3ビール発明は「14.7v/v%」である点。
相違点B3-4について検討する。
相違点B3-4は実質的な相違点である。
また、甲第B3号証及び他のすべての証拠の記載を見ても、甲B3ビール発明において、アルコール度数を「15.0(v/v)%以上」とすること、すなわち、相違点B3-4に係る本件特許発明10の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
よって、甲B3ビール発明において、相違点B3-4に係る本件特許発明10の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件特許発明10は甲B3ビール発明ではなく、甲B3ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲B3ビール製法発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、両者の間は少なくとも、次の点で相違する。
・相違点B3-5
色度に関し、本件特許発明6は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B3ビール製法発明は「色度64.8SRM」である点。
相違点B3-5について検討する。
相違点B3-5は上記相違点B3-1と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明6は甲B3ビール製法発明ではなく、甲B3ビール製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第B3号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第B3号証に記載された発明ではなく、甲第B3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由B1-3び申立理由B2-3についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由B1-3及び申立理由B2-3の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(12) 申立理由B1-4及び申立理由B2-4(甲第B4号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第B4号証の記載事項等
(ア) 甲第B4号証の記載事項
甲第B4号証には、「Carolus clone」に関し、次の記載がある。なお、抄訳についても併せて摘記する。
「
[図:0001425725000044.jpg]
[図:0001425725000045.jpg]
」
(イ) 甲第B4号証に記載された発明
上記(ア)の記載を整理すると、甲第B4号証には、次の発明が記載されていると認める。
「原料として以下の表のものを用いて製造された、オリジナルエキス1.097(23.1質量%)、外観エキス1.003(0.7質量%)、アルコール度数12.6v/v%、色度18.2SRMのビール。
[図:0001425725000046.jpg]
」(以下、「甲B4ビール発明」という。)
「甲B4ビール発明の製造方法。」(以下、「甲B4ビール製法発明」という。)
なお、甲第B4号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1ないし5及び8ないし12について
本件特許発明1ないし5及び8ないし12と甲B4ビール発明とを対比すると、少なくとも、次の点で相違することは明らかである。
・相違点B4
アルコール度数に関し、本件特許発明1ないし5及び8ないし12は「13.0(v/v%)以上」、「14.0(v/v%)以上」、「15.0(v/v%)以上」または「14.0(v/v)%以上17.0(v/v)%以下」と特定するのに対し、甲B2ビール発明は「12.6v/v%」である点。
相違点B4について検討する。
相違点B4は実質的な相違点である。
そして、甲第B4号証及びその他の全ての証拠の記載をみても、甲B4ビール発明において、アルコール度数を変更し、相違点B4に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けはない。
してみると、甲B4ビール発明において、相違点B4に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲B4ビール発明ではなく、甲B4ビール発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲B4ビール製法発明を対比すると、結局のところ、アルコール度数の点で少なくとも相違するものであり、上記(ア)と同様に判断されるものといえる。
したがって、本件特許発明6は、甲B4ビール製法発明ではなく、甲B4ビール製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第B4号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第B4号証に記載された発明ではなく、甲第B4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由B1-4及び申立理由B2-4についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由B1-4及び申立理由B2-4の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(13) 申立理由B1-5及び申立理由B2-5(甲第B5号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第B5号証の記載事項等
(ア) 甲第B5号証の記載事項
甲第B5号証には、「Honey Bee Braggot」に関し、次の記載がある。なお、抄訳についても併せて摘記する。
「
[図:0001425725000047.jpg]
[図:0001425725000048.jpg]
[図:0001425725000049.jpg]
[図:0001425725000050.jpg]
」
(イ) 甲第B5号証に記載された発明
上記(ア)の記載を整理すると、甲第B5号証には、次の発明が記載されていると認める。
「発酵原料として、ペール 2-ロウ8ポンド、蜂蜜8ポンド、ハニーモルト1ポンド、カラフォーム0.5ポンドを用い、ホップ、酵母を用いて製造された、オリジナルエキス(比重)1.166、外観エキス(比重)1.004、アルコール度数14.69v/v%、色度(SRM)7.85のビール。」(以下、「甲B5ビール発明」という。)
「甲B5ビール発明の製造方法。」(以下、「甲B5ビール製法発明」という。)
なお、甲第B5号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B5ビール発明とを対比する。
甲B5ビール発明の「ビール」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。
また、甲B5ビール発明の原料から見て、麦芽(ペール2-ロウ、ハニーモルト、カラフォーム)の比率は概ね54.3重量%と計算されるから、本件特許発明1の「麦芽比率が50質量%以上」との特定事項を満たす。
さらに、甲B5ビール発明は、アルコール度数「14.69v/v%」であるから、本件特許発明1のアルコール度数が「14.0(v/v%)以上」との特定事項を満たす。
そして、甲B5ビール発明が、本件特許発明1の「原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない」との発明特定事項を満たすことも明らかであり、また、「麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビール」でないことも明らかである。
してみると、本件特許発明1と甲B5ビール発明との間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「アルコール度数が14.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点B5-1
色度に関し、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B5ビール発明は「色度(SRM)7.85」である点。
・相違点B5-2
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明1は「2.5以上」と特定するのに対し、甲B5ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点B5-3
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明1は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲B5ビール発明はそのような特定がない点。
相違点B5-1について検討する。
甲B5ビール発明の色度は「色度(SRM)7.85」である。そこで、甲第B9号証の換算式にしたがってEBCの色度に換算すると、7.85(SRM)×1.97≒15.5(EBC)となる。
よって、相違点B5-1は実質的な相違点である。
また、甲第B5号証及び他のすべての証拠の記載を見ても、甲B5ビール発明において色度を調整し、「20EBC以上80.0EBC以下」となるようにする、すなわち、相違点B5-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
すると、甲B5ビール発明において、相違点B5-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になしえたこととはいえない。
してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B5ビール発明ではなく、甲B5ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2、3、5、8、11及び12について
本件特許発明2、3、5、8、11及び12と甲B5ビール発明とを対比すると、両者は少なくとも、色度の点で相違するが、当該相違点は、上記相違点B5-1と同様に判断される。
したがって、本件特許発明2、3、5、8、11及び12は、甲B5ビール発明ではなく、甲B5ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(ウ) 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲B5ビール発明とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「アルコール度数が13.0(v/v)%以上、および、麦芽比率が50質量%以上66.6質量%以下であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点B5-4
色度に関し、本件特許発明4は「80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B5ビール発明は「色度(SRM)7.85」である点。
・相違点B5-5
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明4は「2.5以上」と特定するのに対し、甲B5ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点B5-6
遊離アミノ態窒素(FAN)の含有量に関し、本件特許発明4は「3mg/100mL以上」と特定するのに対し、甲B5ビール発明にはそのような特定がない点。
・相違点B5-7
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明4は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲B5ビール発明はそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点B5-7について検討する。
甲B5ビール発明は、「オリジナルエキス(比重)1.166」、「外観エキス(比重)1.004」を質量%に換算すると、オリジナルエキスは27.2質量%、外観エキスは1.03質量%と算出される(要すれば、「https://beerandbrewing.com/tools/sg-plato-converter/」における換算ツールを参照のこと)。
そして、甲第B8号証の3/12頁に示されるように、リアルエキス濃度は、オリジナルエキス濃度、外観エキス濃度から次の式によって換算される。
RE=(0.1948×OE)+(0.8052×AE)
ここで、REはリアルエキス濃度、OEはオリジナルエキス濃度、AEは外観エキス濃度である。
してみると、甲B5ビール発明のリアルエキス濃度は、次のように算出される。
RE=(0.1948×27.2)+(0.8052×1.03)≒6.11質量%
よって、相違点B5-7は実質的な相違点である。
また、甲第B5号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B5ビール発明において、リアルエキス濃度が「6.0質量%以下」となるように調整する、すなわち、相違点B5-7に係る本件特許発明4の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
すると、甲B5ビール発明において、相違点B5-7に係る本件特許発明4の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明4は甲B5ビール発明ではなく、甲B5ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(エ) 本件特許発明9及び10について
本件特許発明9及び10と甲B5ビール発明とを対比すると、両者は少なくとも、次の点で相違する。
・相違点B5-8
アルコール度数に関して、本件特許発明9及び10は「15.0(v/v)%以上」と特定するのに対して、甲B5ビール発明は「14.69v/v%」である点。
相違点B5-8について検討する。
相違点B5-8は実質的な相違点である。
また、甲第B5号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B5ビール発明において、アルコール度数を「15.0(v/v)%以上」とすること、すなわち、相違点B5-8に係る本件特許発明9及び10の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
よって、甲B5ビール発明において、相違点B5-8に係る本件特許発明9及び10の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件特許発明9及び10は甲B5ビール発明ではなく、甲B5ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(オ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲B5ビール製法発明とを対比すると、おおむね、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、両者は少なくとも次の点で相違する。
・相違点B5-9
色度に関し、本件特許発明6は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B5ビール製法発明は「色度(SRM)7.85」である点。
相違点B5-9について検討する。
相違点B5-9は上記相違点B5-1と同旨であり、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明6は甲B5ビール製法発明ではなく、甲B5ビール製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(カ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第B5号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第B5号証に記載された発明ではなく、甲第B5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由B1-5及び申立理由B2-5についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由B1-5及び申立理由B2-5の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(14) 申立理由B2-6(甲第B6号証を主たる証拠とする進歩性)について
ア 甲第B6号証の記載事項等
(ア) 甲第B6号証の記載事項
甲第B6号証には、「Strain specific performance of active dry yeast for fermentation of very high gravity wort」に関し、次の記載がある。
「本研究は、超高濃度麦汁(18-36°P)における選択した活性のある乾燥醸造酵母株の発酵性能を特徴付け、これらの条件下での発酵の株特異的限界を決定することを目的とした。」(第89頁右欄下から第10行ないし下から第7行)
「表1.オリジナルエキス濃度18-36°Pの麦汁を調製するためのモルトレシピ
[図:0001425725000051.jpg]
」(第90頁左欄 表1)
「表2.超高濃度麦汁(18-36°P)への接種に使用した酵母株の説明
[図:0001425725000052.jpg]
選択された酵母株は、Lallemand社製である。」(第90頁左欄 表2)
「
[図:0001425725000053.jpg]
図1.超高濃度麦汁(18-36°P)で発酵させた9種類の酵母株の外観発酵度。各データ点は、同じ麦汁から振盪フラスコ中で発酵させた3つのレプリケートの平均値である。エラーバーは95%信頼間隔を表す。」(第90頁左欄 図1)
「150mLの麦汁を含む各振盪フラスコに1g/Lのピッチレート(1mL当たり>5×106生細胞)で1.5mlの再水和酵母を接種した。」(第91頁左欄第7行ないし第10行)
「 エタノール
[図:0001425725000054.jpg]
図5.超高濃度麦汁(18-36°P)を9種の異なる酵母株で発酵させたビール中のエタノールレベル。各データ点は、同じ麦汁から振盪フラスコ中で発酵させた3つのレプリケートの平均値である。エラーバーは、95%信頼区間を示す。」(第92頁左欄 図5)
「超高濃度発酵のピッチレートを増加させると発酵性能が改善されるだろう。
マルトース代謝及びマルトトリオース代謝は酵母株によって変化するので、超高濃度発酵に対して最適化された酵母ブレンドを設計することが可能であろう。例えば。Nottingham(優れたマルトース代謝酵母株)をBelle Saison(優れたマルトトリオース代謝酵母株)とブレンドして、いずれかの酵母株単独よりも高い外観発酵度とエタノールレベルを達成することが可能である。」(第92頁右欄下から第6行ないし第93頁左欄第2行)
(イ) 甲第B6号証に記載された発明
上記(ア)の記載、特に図1及び図5の記載を中心に、酵母株Belle Saisonを使用し、オリジナルエキス濃度18°Pの麦汁を発酵させて得られたビールに着目して整理すると、甲第B6号証には次の発明が記載されていると認める。
「酵母株Belle Saisonを使用し、オリジナルエキス濃度18°Pの麦汁を発酵させて得られた、外観発酵度が約85%、エタノール濃度が約8.5(v/v%)であるビール。」(以下、「甲B6-Belle Saison-18°Pビール発明」という。)
「甲B6-Belle Saison-18°Pビール発明の製造方法。」(以下、「甲B6-Belle Saison-18°Pビール製法発明」という。)
図1及び図5に示される他の酵母株及び他のオリジナルエキス濃度の麦汁を用いたものについても同様に認定できる。(各発明の呼称も上記認定発明例に従う。また、各発明を発明のカテゴリー毎に総称して「甲B6ビール発明」、「甲B6ビール製法発明」という。)
なお、甲第B6号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B6-Belle Saison-18°Pビール発明とを対比する。
甲B6-Belle Saison-18°Pビール発明のオリジナルエキス濃度は18°P、外観発酵度は約85%であるので、甲第B8号証の換算式にしたがってリアルエキス濃度を算出すると約5.7質量%(°P)と算出される。
しかしながら、甲B6-Belle Saison-18°Pビール発明のエタノール濃度は「約8.5(v/v%)」であるから、少なくともこの点で本件特許発明1と相違(相違点B6-1)する。
そして、甲第B6号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲B6-Belle Saison-18°Pビール発明において、エタノール濃度を高めて相違点B6-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
したがって、本件特許発明1は甲B6-Belle Saison-18°Pビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
次に、酵母株Belle Saisonを用いた他の例について検討するに、オリジナルエキス濃度20°Pの麦汁を用いた例では、リアルエキス濃度が約6.3質量%(°P)と算出されるとともに、エタノール濃度が約10.0(v/v%)であるから、本件特許発明1とは、リアルエキス濃度及びアルコール度数の点で相違する。
酵母株Belle Saisonを用いた他の例においても、本件特許発明1のリアルエキス濃度とアルコール度数の特定事項をともに満たす例はない(相違点B6-2)。
さらに、他の酵母株を用いた各例においても同様である。
そして、甲第B6号証及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲第B6号証の図1及び図5に示される各例から認定できる発明において、相違点B6-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとする動機付けがない。
したがって、本件特許発明1は、甲B6ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ) 本件特許発明2ないし5及び8ないし12について
本件特許発明2ないし5及び8ないし12と甲第B6号証の図1及び図5に示される各例から認定できる発明とを対比しても、いずれも、リアルエキス濃度とアルコール度数に関し、ともに満たす例がない点で相違する(相違点B6-3)ものであるが、当該相違点B6-3は、上記相違点B6-2と同旨であるから、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明2ないし5及び8ないし12はいずれも、甲B6ビール発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲第B6号証の図1及び図5に示される各例から認定できる発明(甲B6ビール製法発明)とを対比すると、上記(ア)と同様の相当関係がいえるから、いずれも、リアルエキス濃度とアルコール度数に関し、ともに満たす例がない点で相違する(相違点B6-4)ものであるが、当該相違点B6-4は、上記相違点B6-2と同旨であるから、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明6は、甲B6ビール製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(エ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第B6号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第B6号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立理由B2-6についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由B2-6の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(15) 申立理由B1-6及び申立理由B2-7(甲第B7号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について
ア 甲第B7号証の記載事項等
(ア) 甲第B7号証の記載事項
甲第B7号証には、「Brewing High gravity Beers」に関し、次の記載がある。
「・10.5ボンドのブリティッシュ2-ロウ
・1ポンドのクリスタル60
・0.50ポンドのチョコレートモルト
・1ポンドの焙煎大麦」(第1頁下から第14行ないし下から第11行)
「・12.5ボンドのブリティッシュ2-ロウ
・4ポンドのDME(ドライモルトエキス)
・1ポンドのクリスタル60
・1ポンドのチョコレートモルト
・1.5ポンドの焙煎大麦」(第2頁第7行ないし第11行)
「方法4:糖を加える
醸造用糖は、ビール中の発酵可能な糖を増加させるために古くから使用されてきました。私は個人的に、ベルジャンビールで使われている酵母が高い外観発酵度を達成してドライビールを生産しているのは、この醸造用糖に秘密があるのだと思います!糖の選択肢はたくさんありますが、発酵度が異なるので注意してください。100%発酵するものもあります。これは急速にビールをドライにし、非常に低い最終比重(FG)に達します。補正のためにもろみを高温(154~160度)にするか、100%発酵できない糖を選ぶか、どちらかに注意する。これがリストです。
例えば、上記のレシピでDememeraシュガーを使用する場合は、4ポンドのDME又は5.5ポンドの2-ロウの代わりに3ポンドを使用しますが、適切な口当たりを実現するために、少し多めに糖を使用します。一般に、糖が“淡色である”ほど発酵しやすくなり、典型的には100%発酵します。糖が“濃色である”ほど発酵しにくくなります。」(第2頁第15行ないし第25行)
「水を切って、初期比重1.110の麦汁があるはずです。これは11v/v%-12.5v/v%のアルコール度数の飲料を生成するはずです。」(第4頁下から第19行ないし下から第18行)
「アルコール度数21v・v%のオールグレインビール(http://www.byo.com/component/resource/article/51-21-alchohol-all-grain-beer)」(第7頁第11行ないし第12行)
「4.お勧めの酵母
a.White Labs製
i.WLP007 Dry English Ale
ii.WLP099 Super High Gravity Ale(25%まで発酵可能)
iii.WLP500 Trappist Ale
iv.WLP510 Belgian Bastogne Ale
v.WLP530 Abbey Ale or WLP540 Abbey IV Ale
vi.WLP570 Belgian Golden Ale
b.Wyeast Labs製
i.1728 Scottish Ale
ii.1084 Irish Ale
iii.1214 Belgian Abbey
iv.1388 Belgian Strong
v.1762 Belgian Abbey II
vi.3787 Trappist High Gravity
vii.American Ale 1056(14%) or American Ale II 1272(18%)」(第6頁下から第13行ない次第7頁第3行)
(イ) 甲第B7号証に記載された発明
上記(ア)の記載のうち、次のレシピ
「・12.5ボンドのブリティッシュ2-ロウ
・4ポンドのDME(ドライモルトエキス)
・1ポンドのクリスタル60
・1ポンドのチョコレートモルト
・1.5ポンドの焙煎大麦」
のものに着目して整理すると、甲第B7号証には次の発明が記載されていると認める。
「12.5ボンドのブリティッシュ2-ロウ、4ポンドのDME(ドライモルトエキス)、1ポンドのクリスタル60、1ポンドのチョコレートモルト、1.5ポンドの焙煎大麦を発酵原料として用いて得られたビール。」(以下、「甲B7発明」という。)
「甲B7発明の製造方法。」(以下、「甲B7製法発明」という。)
なお、甲第B7号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア) 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B7発明とを対比する。
甲B7発明は、その発酵原料から見て、麦芽比率が50質量%以上であり100質量%未満であることは明らかであるとともに、原材料にエタノール又はエタノール含有組成物を含まないこと、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されるものではないことも明らかである。
してみると両者の間の一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「麦芽比率が50質量%以上であり、
原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、ビールテイスト飲料
(但し、麦芽比率が100質量%のビール、および、発酵工程で12時間以上のエアレーションを用いて製造されたビールを除く)。」
(相違点)
・相違点B7-1
色度に関し、本件特許発明1は「20EBC以上80.0EBC以下」と特定するのに対し、甲B7発明にはそのような特定がない点。
・相違点B7-2
アルコール度数(v/v)%とリアルエキス濃度(質量%)との比[アルコール度数/リアルエキス濃度]に関し、本件特許発明1は「2.5以上」と特定するのに対し、甲B7発明にはそのような特定がない点。
・相違点B7-3
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明1は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲B7発明にはそのような特定がない点。
・相違点B7-4
アルコール度数に関し、本件特許発明1は「14.0(v/v)%以上」と特定するのに対し、甲B7発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点B7-3について検討する。
甲第B7号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲B7発明におけるリアルエキス濃度を算出することはできない。
よって、相違点B7-3は実質的な相違点である。
また、甲B7発明において、リアルエキス濃度に着目し、その濃度を調整する動機付けもない。
したがって、甲B7発明において、相違点B7-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
なお、この点に関し、特許異議申立人Bは異議申立書Bにおいて、甲第B7号証には、高濃度醸造にお勧めの酵母が紹介されていることからみて、当該酵母により発酵されたビールは、糖が十分に消費され、結果としてリアルエキス濃度も十分に低下すると理解できるため、リアルエキス濃度が6.5質量%以下であることは、甲第B7号証に記載されているに等しい事項である旨主張する(異議申立書B 第106頁)。
確かに、甲第B7号証には、高濃度醸造にお勧めの酵母が記載されているものの、当該酵母を適用し醸造した場合(例えば甲B7発明)に、リアルエキス濃度が具体的にどの程度であるのか不明である。また、得られたビールのリアルエキス濃度は、酵母の種類にのみ依存するものではなく、種々の発酵条件の影響を受けるものであることを考慮すると、甲B7発明において、甲第B7号証において示されている高濃度醸造にお勧めの酵母を用いたから、必ずリアルエキス濃度が6.0質量%以下(あるいは6.5質量%以下)となるという技術常識があるということもできない。
よって、特許異議申立人Bの上記主張は採用できない。
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B7発明ではなく、甲B7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ) 本件特許発明2ないし5及び8ないし12について
本件特許発明2ないし5及び8ないし12に係る発明と甲B7発明とを対比すると、いずれも、少なくとも次の点で相違する。
・相違点B7-5
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明2ないし5及び8ないし12は「6.0質量%以下」あるいは「6.5質量%以下」と特定するのに対し、甲B7発明にはそのような特定がない点。
相違点B7-5について検討する。
相違点B7-5は、上限数値に違いがあるものの、実質的には上記相違点B7-3と同旨であるから、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明2ないし5及び8ないし12は、甲B7発明ではなく、甲B7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(カ) 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲B7製法発明とを対比すると、おおむね上記(ア)と同様の相当関係がいえる。
してみると、両者は少なくとも次の点で相違することは明らかである。
・相違点B7-6
リアルエキス濃度に関し、本件特許発明6は「6.0質量%以下」と特定するのに対し、甲B7製法発明にはそのような特定がない点。
相違点B7-6について検討する。
相違点B7-6は上記相違点B7-3と同旨であるから、上記(ア)と同様に判断される。
したがって、本件特許発明6は、甲B7製法発明ではなく、甲B7製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(キ) 本件特許発明7について
上記ア(イ)のとおり、甲第B7号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第B7号証に記載された発明ではなく、甲第B7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 申立理由B1-6及び申立理由B2-7についてのまとめ
上記イのとおりであるから、申立理由B1-6及び申立理由B2-7の理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
(16) 申立理由B1-7及び申立理由B2-8(甲第B25号証を主たる証拠とする新規性・進歩性のうち本件特許発明7に係る部分)について
上記1(1)ア(イ)のとおり、甲第B25号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第B25号証に記載された発明ではなく、甲第B25号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(17) 申立理由B1-8及び申立理由B2-9(甲第B26号証を主たる証拠とする新規性・進歩性のうち本件特許発明7に係る部分)について
上記1(2)ア(イ)のとおり、甲第B26号証の記載から、本件特許発明7の「ビールテイスト飲料の香味改善方法」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明7は、甲第B26号証に記載された発明ではなく、甲第B26号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第7 結語
上記第6のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由及び特許異議申立理由では、本件特許発明1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1ないし12に係る特許を取消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700038