特許異議申立
2025-700468
発酵ビールテイスト飲料
- 審判番号
- 2025-700468
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-223897
- 登録番号
- 7573357
- 請求日
- 2025年04月25日
- 審決日
- 2025年06月18日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】サッポロビール株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】坂西 俊明
- 【権利者代理人】和田 雄二
- 【権利者代理人】田村 明照
- 【異議申立人】田中 眞喜子
- 審判長/審判官
- 審判長 柴田 昌弘
- 審判官 淺野 美奈
- 審判官 中村 和正
- 分類
- P1651.113-Y (C12C) / P1651.121-Y (C12C) / P1651.537-Y (C12C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7573357号発明「発酵ビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7573357号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7573357号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成30年11月29日の出願であって、令和6年10月17日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年4月25日に特許異議申立人 田中 眞喜子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
pHが3.6以上4.2以下であり、苦味価が5未満であり、かつ原料中の麦芽の比率が50重量%以上である、発酵ビールテイスト飲料。
【請求項2】
アルコール度数が5v/v%以上である、請求項1に記載の発酵ビールテイスト飲料。
【請求項3】
原料としてホップを含まない、請求項1又は2に記載の発酵ビールテイスト飲料。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和7年4月25日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明は、微生物の増殖抑制及び所望の香味(平板さ、渋味、華やかな香り)を課題とするものである。
(ア)ビール等の飲食品において、微生物の増殖抑制にエタノール濃度が関係することは技術常識であるが、本件実施例で抗微生物増殖効果が確認されたのはアルコール度数5.8v/v%と7.0v/v%だけであり、アルコール度数5.8v/v%未満の発酵ビールテイスト飲料においても同様に所望の微生物増殖抑制の課題を解決できるとは当業者であっても理解することができない。
また、本件明細書の表1、2では、アルコール度数5.8v/v%と7.0v/v%の発酵ビールテイスト飲料間で香味(平板さ、渋味、華やかな香り)に差が見られており、同じpHであってもアルコール度数が低いと「平板さ」、「渋味」が悪くなる傾向、アルコール度数が高いと「華やかな香り」が悪くなる傾向にあるように思われる。してみると、本件特許発明1~3の発酵ビールテイスト飲料のうち、アルコール度数5.8v/v%未満の発酵ビールテイスト飲料や、アルコール度数7.0v/v%を超える発酵ビールテイスト飲料については、同様に所望の香味課題を解決できるとは当業者であっても理解することができない。
(イ)同じpHであっても添加する酸味料の種類が違うことで香味が異なることは技術常識であり、pHの規定だけで所望の課題が解決できるとは当業者であっても理解することができない。
また、本件実施例では「紅茶」及び「みかん」を原料とした特殊な発酵ビールテイスト飲料に関する香味を評価しているが、「紅茶」及び「みかん」を原料としない場合においても所望の香味が得られることは具体的に示されておらず、これに関する説明もされていない。そもそも、本件特許発明において課題とする「華やかな香り」が如何なる系統の香りであるかは不明であるが、「紅茶」や「みかん」由来の香気成分に関して「華やか」であるとすれば、「紅茶」や「みかん」由来の香気成分を含まない「「紅茶」及び「みかん」を原料としない発酵ビールテイスト飲料」については、所望の香味課題(特に「華やかな香り」の課題)は解決できる筈がない。
3 証拠方法
甲第1号証:特開2018-29540号公報
甲第2号証:「平成29年度税制改正によるビールの定義の改正に関するQ&A」、国税庁
甲第3号証:「The Practical Brewer」、第288-291頁及び抄訳
甲第4号証:「TECHNOLOGY Brewing & Malting」、第828頁及び抄訳
甲第5号証:特開2018-23295号公報
甲第6号証:「ビール工場におけるビール有害菌の同定方法の進歩」、南方資源利用技術研究会誌、Vol.19、No.1、第35-40頁
甲第7号証:「pH調整剤について」、食品安全委員会ウェブページ、URL:https://www.fsc.go.jp/fsciis/questionAndAnswer/show/mob07005000006
甲第8号証:「HACCPの展望」、日本食品微生物学会雑誌、Vol.29、No.1、第1-10頁
甲第9号証:特開2011-87600号公報
甲第10号証:本件の令和5年4月20日付け審判請求書
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。
第4 当審の判断
1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)について
(1)甲第1号証に記載された事項等
ア 甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、「ビールテイスト飲料およびビールテイスト飲料の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸換算の酸度が0.05g/100mL以上0.30g/100mL未満であり、苦味価が15B.U.以下である、ビールテイスト飲料。」
・「【請求項5】
発酵麦芽飲料であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ビールテイスト飲料の苦味を低減させると、原料である穀物由来成分による甘味や、発酵飲料の場合には発酵に伴い生じる香気成分による甘味が際立ち、おいしい飲料を得ることが難しくなる。そこで、本発明の課題は、甘味を際立たせること無く、苦味を低減することができる、ビールテイスト飲料を提供することにある。」
・「【0009】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明する。
(ビールテイスト飲料)
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、アルコール度数や麦芽の使用の有無に関わらず、ビールと同等の又はそれと似た風味・味覚及びテクスチャーを有し、高い止渇感・ドリンカビリティーを有する飲料を意味する。「ビールテイスト飲料」との用語には、ビールそのものも包含される。」
・「【0011】
穀物由来成分の原料となる穀物としては、例えば、麦(麦芽を含む)、米、トウモロコシ、大豆、及びエンドウ豆などが挙げられる。好ましくは、麦芽を含む原料を用いることが好ましく、より好ましくは、麦芽及びトウモロコシ(コーンスターチ)を含む原料を用いることが好ましい。また、好ましくは、ビールテイスト飲料における麦芽使用比率が30%以上、より好ましくは40%以上である。麦芽使用比率とは、水を除く全原料に対する麦芽の割合(重量%)である。
【0012】
ビールテイスト飲料の苦味価は、上述のように、15B.U.以下である。苦味価が15B.U.以下であることにより、一般的なビール(苦味価が15B.U.超)の苦味を敬遠する消費者層にも受け入れ可能な程度に、飲料の苦味を低減することができる。苦味価は、好ましくは10B.U.以下、より好ましくは3B.U.以上10B.U.以下、更に好ましくは5B.U.以上10B.U.以下である。
ここで、「苦味価」とは、イソフムロンを主成分とするホップ由来物質群により与えられる苦味の指標である。苦味価は、例えばEBC法(ビール酒造組合:「ビール分析法」8.15 1990年)により測定することができる。
苦味価は、ホップエキス等のホップ由来成分の添加量を変えることによって調整することができる。すなわち、ビールテイスト飲料には、苦味価が15B.U.以下になる範囲において、ホップ由来成分が含まれていてもよい。但し、ホップ由来成分が含まれていなくてもよい。」
・「【0014】
ビールテイスト飲料のpHは、3.0~5.0であることが好ましく、より好ましくは3.5~4.5である。pHをこのような範囲に設定することにより、苦味の低減に伴う甘味の際立ちを抑制することができる。また、味のキレを飲料に付与することができる。」
・「【0016】
ビールテイスト飲料は、アルコール飲料であることが好ましい。ビールテイスト飲料のアルコール度数は、好ましくは1~10(v/v)%、より好ましくは3~7(v/v)%、更に好ましくは5~6(v/v)%である。尚、本発明において、アルコール度数とは、エタノール濃度を示す。」
・「【0020】
まず、穀物由来成分を含有する原料液を調製する。例えば、麦芽を原料として使用する場合、主原料である麦芽の粉砕物と、必要に応じて副原料である米やコーンスターチ等のデンプン質とを用意し、これらに温水を加えて混合・加温し、主に麦芽の酵素を利用してデンプン質を糖化させる。得られた糖化液を濾過し、原料液を得る。
一方、麦芽以外の原料を使用する場合、例えば、炭素源を含有する液糖、及び麦芽以外の窒素源含有材料(例えば、大豆、エンドウ豆及びトウモロコシ等のタンパク質原料の分解物)等を温水と共に混合し、液糖溶液を原料液として調製する。
次いで、原料液を煮沸する。煮沸後、ワールプールと呼ばれる槽で沈殿物を除去する。その後、熱交換器を用いて、原料液を適切な温度まで冷却する。冷却した原料液に、酵母を接種して、発酵を行う。次いで、得られた発酵液を熟成させる。熟成後、濾過により酵母及びタンパク質等を除去して、目的のビールテイスト飲料を得る。
尚、発酵及び熟成工程を省略し、煮沸後の溶液に炭酸ガスを添加することにより、非発酵のノンアルコールビールテイスト飲料を得ることもできる。」
・「【実施例】
【0023】
(実験例1):苦味価の検討
麦芽粉砕物20kg、コーンスターチ375kg、及び湯800Lを仕込釜にて混合し、20分かけて50℃から70℃まで昇温した。70℃で10分間、でんぷんを分解させ、30分間煮沸した。一方で、仕込槽において、麦芽230kgと湯575Lを混合し、50℃で30分間タンパク質分解反応を行った。30分後、湯500Lを仕込槽に添加し、仕込釜の内容物を仕込槽へと移し替えた。仕込槽の内容物を、65℃で40分間糖化させ、76℃で5分間維持することで酵素を失活させ、麦汁を得た。麦汁濾過後、70分間煮沸させた。煮沸後、ワールプールでトルーブを除去した。トルーブの除去後、麦汁を冷却した。冷却後、酵母を添加し、10℃で7日間、発酵させた。その後、熟成及び冷却し、ビール濾過を実施して、例1に係るビールテイスト飲料を得た。ホップ由来成分を添加していないため、例1に係る飲料の苦味価は、実質的に0B.U.である。また、真正エキスは約3.4~3.5%であり、アルコール度数は5~6(v/v)%であり、pHは約4.1であった。
【0024】
例1に係るビールテイスト飲料に、イソ化させたホップ抽出物を添加し、苦味価が異なる複数のビールテイスト飲料(例2~例6)を得た。
得られたビールテイスト飲料に対して、苦味を苦手とする20~30代の女性8名の専門パネリストにより、ブラインドにて官能検査を実施し、「苦味」及び「好き嫌い」を評価した。「苦味」の評価には、5段階の採点法を用いた。また、「好き嫌い」の評価には、VASを用いた。評価基準および評価方法は以下の通りである。
(A)「苦味」の評価基準
1点:全く感じない
2点:ほとんど感じない
3点:やや感じる
4点:強く感じる
5点:非常に強く感じる
(B)「好き嫌い」の評価方法(VAS)
左端の「0」を「嫌い」、右端の「1」を「好き」として検査カードに印をつけ、左端から印までの距離を相対値として算出した。」
・「【0028】
(実験例3):酸味料の種類の検討
例1に係るビールテイスト飲料に対して、異なる種類の酸味料を添加し、複数のビールテイスト飲料(例16~例22)を得た。各飲料において、酸味料の添加量は、酸度が0.1g/100mLになるような量とした。各飲料のpHは約3.6であった。得られたビールテイスト飲料について、苦味を苦手とする20~30代の女性8名の専門パネリストにより、ブラインドで官能検査を行い、「甘味」、「酸味」、「苦味」、及び「味のふくらみ」、「甘酸バランス」及び「キレ」を評価した。評価には、5段階の採点法を用いた。また、実験例1と同様に、VASを用いて「好き嫌い」を評価した。
「甘味」、「酸味」、「苦味」、及び「味のふくらみ」、「甘酸バランス」及び「キレ」の評価基準は以下の通りである。
(A)「甘味」、「酸味」、「苦味」、「味のふくらみ」
1点:全く感じない
2点:ほとんど感じない
3点:やや感じる
4点:強く感じる
5点:非常に強く感じる
(B)「甘酸バランス」、「キレ」
1点:非常に悪い
2点:悪い
3点:ふつう
4点:良い
5点:非常に良い」
・「【0033】
得られた結果を表5に示す。表5に示されるように、苦味価が10B.U.である場合においても、酸度が0.05g/100mL以上0.30g/100mL未満の範囲にある場合に、良好な結果が得られた。
【表1】
[図:0001424633000001.jpg]
【表2】
[図:0001424633000002.jpg]
【表3】
[図:0001424633000003.jpg]
【表4】
[図:0001424633000004.jpg]
【表5】
[図:0001424633000005.jpg]
」
イ 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証に記載された事項を、特に実験例1に関して整理すると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「麦芽粉砕物20kg、コーンスターチ375kg、及び湯800Lを仕込釜にて混合し、20分かけて50℃から70℃まで昇温し、70℃で10分間、でんぷんを分解させ、30分間煮沸し、一方で、仕込槽において、麦芽230kgと湯575Lを混合し、50℃で30分間タンパク質分解反応を行い、30分後、湯500Lを仕込槽に添加し、仕込釜の内容物を仕込槽へと移し替え、仕込槽の内容物を、65℃で40分間糖化させ、76℃で5分間維持することで酵素を失活させ、麦汁を得、麦汁濾過後、70分間煮沸させ、煮沸後、ワールプールでトルーブを除去し、トルーブの除去後、麦汁を冷却し、冷却後、酵母を添加し、10℃で7日間、発酵させ、その後、熟成及び冷却し、ビール濾過を実施して得たビールテイスト飲料であって、ホップ由来成分を添加していないため飲料の苦味価は実質的に0B.U.であり、アルコール度数は5~6(v/v)%であり、pHは約4.1である、ビールテイスト飲料。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「ビールテイスト飲料」は、酵母を添加して発酵させて得られたものであることから、本件特許発明1における「発酵ビールテイスト飲料」に相当する。
甲1発明における「ビールテイスト飲料」は、「苦味価は実質的に0B.U.であり」「pHは約4.1である」ことから、本件特許発明1における「pHが3.6以上4.2以下であり、苦味価が5未満」との特定事項を満たす。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「pHが3.6以上4.2以下であり、苦味価が5未満である、発酵ビールテイスト飲料。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点>
本件特許発明1は、「原料中の麦芽の比率が50重量%以上」とあるのに対して、甲1発明は、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点について検討する。
甲1発明における「ビールテイスト飲料」は、麦芽粉砕物20kg、コーンスターチ375kg、麦芽230kgを含むものであり、その麦芽使用比率を算出すると({(20+230)/(20+230+375)}×100=)40%であることから、上記相違点は実質的な相違点である
そして、甲第1号証及び他の証拠には、甲1発明において相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することの動機付けとなる記載はない。
してみると、甲1発明において、相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「微生物の増殖を抑制でき」、「香味(特に「平板さ」、「渋味」及び「華やかな香り」)が良好になる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0007】、【0008】、【0012】、【0052】及び【0058】)という効果は、甲1発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書第22頁において、甲第1号証の出願当時(2016年)におけるビールの麦芽比率が67~100重量%であったことは当業者において周知の事実であり、甲第1号証の【0009】の「ビールそのもの」との記載から、甲第1号証には、麦芽の比率を67~100重量%とすることについても記載されているに等しい旨主張するが、甲1発明における「ビールテイスト飲料」は、甲第1号証の【0009】より、「ビールそのもの」も包含するビールテイスト飲料であり、「ビールそのもの」に限られるものではないことから、甲1発明における「ビールテイスト飲料」の麦芽比率が67~100重量%であるとは認められない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
ウ まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲第1号証及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。
本件特許の発明の詳細な説明の【0005】によると、本件特許発明1ないし3の解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は、「ホップの使用量が少なくても又はホップを一切使用しなくても、微生物の増殖を抑制できる、発酵ビールテイスト飲料を提供すること」ことである。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0006】ないし【0011】、【0017】、【0019】、【0020】、【0023】及び【0026】には、本件特許発明1ないし3に対応する記載がある。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0043】ないし【0058】には本件特許発明の実施形態について説明があり、【0012】には本件特許発明による発明の効果が記載されている。
そうすると、当業者は、「pHが3.6以上4.2以下であり、苦味価が5未満であり、かつ原料中の麦芽の比率が50重量%以上である、発酵ビールテイスト飲料」は、本件特許発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明2及び3は本件特許発明の課題を解決できると認識できる上記「発酵ビールテイスト飲料」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし3は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし3に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第3 2のとおり主張しているが、発明の課題は、上記(2)に記載したとおり微生物の増殖を抑制できる、発酵ビールテイスト飲料を提供することであるから、アルコール度数や酸味料によって香味が異なるとしても上記(2)のとおり判断されるものであるし、また、本件特許発明1ないし3の発明特定事項を満たしても発明の課題を解決できないとする具体的な証拠を挙げて主張するものでもない。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(4)申立理由2(サポート要件)についてのむすび
本件特許発明1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700468