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特許異議申立

2023-700376

ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法

審判番号
2023-700376
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-138504
登録番号
7153617
請求日
2023年04月13日
審決日
2023年12月15日
公報発行日
2024年03月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】サッポロビール株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
  • 【異議申立人】田中 眞喜子
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 中村 和正
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C) / P1651.537-YAA(C12C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7153617号発明「ビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7153617号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。 特許第7153617号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7153617号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成30年5月25日に出願した特願2018-100849号の一部を令和1年7月29日に新たな特許出願(特願2019-138504号)としたものであって、令和4年10月5日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年同月14日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、令和5年4月13日に特許異議申立人 田中 眞喜子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年7月7日付けで取消理由が通知され、同年8月23日に特許権者 サッポロビール株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がされ、同年同月25日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年9月28日に特許異議申立人より意見書の提出があったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 本件訂正請求の趣旨 本件訂正請求における請求の趣旨は、「特許第7153617号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~2について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。) (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料を除く)」と記載されているのを、「(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料と、Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を原料に含むビールテイスト飲料と、を除く)」に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料を除く)」と記載されているのを、「(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料と、Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を原料に含むビールテイスト飲料と、を除く)」に訂正する。 (3) 訂正事項3 願書に添付した明細書の段落0008に、 「前記課題は、以下の手段により解決することができる。 (1)アルコール度数が8.5%以上であり、酢酸イソアミルの含有量が2.5~4.2ppmであり、麦芽比率が66%以下であるビールテイスト飲料(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料を除く)。…」 と記載されているのを、 「前記課題は、以下の手段により解決することができる。 (1)アルコール度数が8.5%以上であり、酢酸イソアミルの含有量が2.5~4.2ppmであり、麦芽比率が66%以下であるビールテイスト飲料(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料と、Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を原料に含むビールテイスト飲料と、を除く)。…」 に訂正する。 (4) 訂正事項4 願書に添付した明細書の段落0008に、 「前記課題は、以下の手段により解決することができる。 … (2)アルコール度数を8.5%以上とし、酢酸イソアミルの含有量を2.5~4.2ppmとし、麦芽比率を66%以下とする工程を含むビールテイスト飲料(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料を除く)の製造方法。…」 と記載されているのを、 「前記課題は、以下の手段により解決することができる。 … (2)アルコール度数を8.5%以上とし、酢酸イソアミルの含有量を2.5~4.2ppmとし、麦芽比率を66%以下とする工程を含むビールテイスト飲料(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料と、Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を原料に含むビールテイスト飲料と、を除く)の製造方法。…」 に訂正する。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、ビールテイスト飲料のうち、「Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を原料に含むビールテイスト飲料」を除くことで、令和5年7月7日付けで通知した取消理由における「甲1発明」を除くことを目的とするものであるから、特許請求の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項2の訂正は、ビールテイスト飲料の製造方法におけるビールテイスト飲料のうち、「Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を原料に含むビールテイスト飲料」を除くことで、令和5年7月7日付けで通知した取消理由における「甲1製法発明」を除くことを目的とするものであるから、特許請求の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 (3) 訂正事項3及び4について 訂正事項3及び4に係る明細書の訂正は、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項3及び4に係る明細書の訂正が、当該訂正に係る請求項の全てについて請求が行われていること、及び、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 4 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明3」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、令和5年8月23日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 アルコール度数が8.5%以上であり、 酢酸イソアミルの含有量が2.5~4.2ppmであり、 麦芽比率が66%以下であるビールテイスト飲料(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料と、Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を原料に含むビールテイスト飲料と、を除く)。 【請求項2】 アルコール度数を8.5%以上とし、酢酸イソアミルの含有量を2.5~4.2ppmとし、麦芽比率を66%以下とする工程を含むビールテイスト飲料(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料と、Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を原料に含むビールテイスト飲料と、を除く)の製造方法。 【請求項3】 ビールテイスト飲料(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料を除く)の爽快感を発揮させつつビールらしいアルコールの香味を増強する香味向上方法であって、 前記ビールテイスト飲料のアルコール度数を8.5%以上とし、酢酸イソアミルの含有量を2.5~4.2ppmとし、麦芽比率を66%以下とするビールテイスト飲料の香味向上方法。」 第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について 特許異議申立人が特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし3に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次の1ないし3のとおりである。 1 申立理由1(新規性) 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由2(進歩性) 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由3の具体的理由は、おおむね次のとおりである。 (1) 申立理由3-1 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、実施例として、アルコール度数9%、酢酸イソアミル1.9~3.9ppm、酢酸エチル18.8~38.8ppm、リナロール3.9~30.4ppm含むビールテイスト飲料が記載されているのみで、それぞれの含有量の上限値及び下限値を本件特許発明の範囲とすることについての具体的なデータは示されていない。本件特許の明細書の発明の詳細な説明における実施例のサンプル2-5などをみても「爽快感」が得られておらず、本件特許発明の各要件(アルコール度数が8.5%以上、酢酸イソアミルの含有量が2.5~4.2ppm、麦芽比率が66%以下)を単に満たすだけでは「爽快感を発揮しつつビールらしいアルコールの香味が増強」という、本件特許発明における発明の課題を解決できないことは明らかである。 (2) 申立理由3-2 本件特許の明細書の発明の詳細な説明の実施例のサンプル5-1とサンプル3-3に示されるように、麦芽比率が25%から40%に変わっただけで(15%変わっただけで)「ビールらしいアルコールの香味」、「爽快感」がいずれも顕著に変化していることからすれば、本件特許発明で規定する「麦芽比率66%以下」という広い範囲の全体に渡って本件特許発明における発明の課題を解決できるとは考えらない。 4 証拠方法 ・甲第1号証:Gregory P. Casey, E. C. -H. Chen, and W. M. Ingledew, 「High-Gravity Brewing: Production of High Levels of Ethanol Without Excessive Concentrations of Esters and Fusel Alcohols」 Journal of the American Society of Brewing Chemists, Vol. 43, No. 4, pp. 179-182 (1985) ・甲第2号証:「醸造諸表」、pp. 232-233、244-245、大阪高等工業學校醸造會、大正6年3月17日発行 ・甲第3号証:特願2018-100849号の平成30年11月13日(発送日)付け拒絶理由通知 ・甲第4号証:特願2018-100849号の平成30年12月27日付け意見書 また、令和5年9月28日に提出された意見書に添付して、次の証拠を提出している。 ・参考文献:「Ingredients used in the preparation of canned foods」、A Complete Course in Canning and Related Processes (2015)、Elsevier Ltd.、pp. 147-160 ・参考文献2:大室繭、「ビール酵母の発酵に寄与する因子解明と産業への利用」、日本農芸化学会2019年度受賞講演要旨集、pp.49-50、2019年3月19日発行 なお、証拠の表記については、おおむね特許異議申立書及び令和5年9月28日に提出された意見書における記載に従った。 第5 令和5年7月7日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要 請求項1及び2に係る特許に対して、当審が令和5年7月7日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。なお、取消理由には、申立理由1及び申立理由2のうち請求項1及び2に係る部分が包含される。 1 取消理由1(新規性) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 1 令和5年7月7日付け取消理由通知で通知した取消理由についての判断 ●取消理由1及び2(新規性及び進歩性)について (1) 甲第1号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、「High-Gravity Brewing: Production of High Levels of Ethanol Without Excessive Concentrations of Esters and Fusel Alcohols」について、次の記載がある。なお、甲第1号証は外国語文献であるため、抄訳のみ摘記する。 「高比重麦汁 11.5°P(副原料22.5%コーングリッツ)の商用麦汁をベースとして使用し、溶解固形分27%(w/v)の麦汁を調製した。追加の抽出物は、Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)の添加によるものである。このシロップについての製造業者の炭水化物仕様は、19.4% DP4+、10.7% DP3、39.0% DP2および30.9% DP1である。このシロップは事実上窒素非含有であり、0.03~0.06%(w/v)のタンパク質のみを含む。 発酵条件 これらは、嫌気性(10,11)及び半嫌気性(11)発酵の両方について以前に記載されている。希釈前ビール中、最終エタノール濃度は9.0%(w/v)であった。」(第179頁右欄第19ないし30行) 「 [図:0001407833000001.jpg] 」(第180頁 表2) イ 甲第1号証に記載された発明 上記アの記載のうち、表2の嫌気性条件下、「非補充」または「40ppmエルゴステロール0.40%(v/v)Tween 80」ありで発酵させた高比重醸造物である希釈前ビールに着目して整理すると、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認める。 「麦汁とCascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を用いて製造されるビールであって、 アルコール度数が9%であり、 酢酸イソアミルが3.40mg/L又は3.74mg/Lであり、 とうもろこしタンパク質分解物を原料に含まないビール。」(以下、「甲1発明」という。) 「甲1発明を製造する方法。」(以下、「甲1製法発明」という。) (2) 対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「ビール」は、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料」に相当する。 また、甲1発明の「酢酸イソアミルが3.40mg/L又は3.74mg/L含有する」、「アルコール度数が9%」は、それぞれ、本件特許発明1の「酢酸イソアミルの含有量が2.5~4.2ppm」、「アルコール度数が8.5%以上」との特定事項を満たす。 してみると、両者は、 「アルコール度数が8.5%以上であり、 酢酸イソアミルの含有量が2.5~4.2ppmである、 ビールテイスト飲料。」 で一致し、次の点で一応相違する。 (相違点1) 麦芽比率について、本件特許発明1は「66%以下」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。 (相違点2) ビールテイスト飲料に関し、本件特許発明1は「(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料と、Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を原料に含むビールテイスト飲料と、を除く)」と特定するのに対し、甲1発明は「Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)」を用いて作製されるビールである点。 事案に鑑み、相違点2について検討する。 甲1発明は、「Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)」を用いて製造されるビールであるから、本件特許発明1の「ビールテイスト飲料(ただし、とうもろこしタンパク質分解物を原料に含むビールテイスト飲料と、Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を原料に含むビールテイスト飲料と、を除く)。」との特定事項を満たさないことは明らかである。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明ではない。 また、甲第1号証及びその他の全ての証拠の記載を見ても、甲1発明において、「Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)を原料に含むビールテイスト飲料と、を除く」、とする動機付けもない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 なお、特許異議申立人は、甲1発明において、「Cascoシロップ番号1636U(Canada Starch Co.Ltd.)」に代えて、他のコーンシロップを用いて製造することは当業者が適宜なし得たことである旨主張する(意見書第2頁)。 しかしながら、その場合、異なる原料からビールを得ることとなるため、アルコール度数、酢酸イソアミルの濃度も当然変わることとなる。そして、原料を変更し得られたビールのアルコール度数、酢酸イソアミルの濃度を推認させる記載があるともいえないから、特許異議申立人の当該主張は採用することができない。 イ 本件特許発明2について 本件特許発明2は、ビールテイスト飲料の製造方法に関する発明であるところ、本件特許発明2と甲1製法発明とを対比すると、結局のところ、上記アと同じことがいえる。 よって、本件特許発明2は、甲1製法発明ではなく、また、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3) 取消理由1及び2についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、取消理由1及び2の理由では、本件特許発明1及び2に係る特許を取消すことができない。 2 令和5年7月7日付取消理由通知で通知した取消理由において採用しなかった異議申立理由についての判断 令和5年7月7日付取消理由通知で通知した取消理由において採用しなかった異議申立理由は、申立理由1及び2のうち請求項3に係る部分、並びに、申立理由3である。 以下、順に検討する。 (1) 申立理由1及び2のうち請求項3に係る部分について 甲第1号証の記載事項は、上記1(1)アのとおりであるところ、甲第1号証の記載からは、「ビールテイスト飲料の香味向上方法」に対応する発明を認定することができない。 よって、本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明ではないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、申立理由1及び2の理由では、本件特許発明3に係る特許を取消すことができない。 (2) 申立理由3(サポート要件)について ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。 ウ サポート要件についての判断 本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「爽快感を発揮しつつビールらしいアルコールの香味が増強したビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法を提供すること」(【0007】)である。 そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコール度数が所定値以上であり、酢酸イソアミルの含有量が所定範囲内である飲料であり、麦芽比率が所定値以下であるのが好ましい」(【0011】)こと、「アルコール度数を所定値以上とすることによって、ビールテイスト飲料の爽快感を増強させることができるとともに、後に詳述するが酢酸イソアミルとの関係においてビールらしいアルコールの香味を増強させることもできる」(【0012】)こと、「本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、8.0%(v/v%)以上が好ましく、8.0%超、8.3%以上、8.5%以上、8.7%以上がより好ましい。ビールテイスト飲料のアルコール度数が所定値以上であることによって、爽快感を増強させることができる」(【0013】)こと、「酢酸イソアミルは、アルコール度数が所定値以上のビールテイスト飲料に所定範囲で含有させることによって、爽快感の発揮という効果を奏しつつも、突出したアルコールの香味を、ビールらしいアルコールの香味(ピルスナータイプのビールを想起させるようなアルコールの香味)とし、当該香味を増強させることができる」(【0016】)こと、「本実施形態に係るビールテイスト飲料の酢酸イソアミルの含有量は、1.5ppm(mg/L)以上が好ましく、1.8ppm以上、2.0ppm以上、2.5ppm以上、2.8ppm以上、3.0ppm以上、3.5ppm以上、3.8ppm以上がより好ましい。ビールテイスト飲料の酢酸イソアミルの含有量が所定値以上であることによって、アルコールの香味をビールらしいアルコールの香味とし、当該香味を増強させることができる」(【0017】)こと、「本実施形態に係るビールテイスト飲料の酢酸イソアミルの含有量は、4.5ppm以下が好ましく、4.2ppm以下、4.0ppm以下、3.8ppm以下、3.5ppm以下、3.2ppm以下、3.0ppm以下、2.8ppm以下、2.5ppm以下がより好ましい。ビールテイスト飲料の酢酸イソアミルの含有量が所定値以下であることによって、爽快感の発揮という効果を奏しつつビールらしいアルコールの香味とすることができる」(【0017】)こと、「本実施形態に係るビールテイスト飲料の麦芽比率は、66%(重量%)以下が好ましく、50%未満、40%以下、30%以下がより好ましい。ビールテイスト飲料の麦芽比率が所定値以下(又は未満)であることによって、爽快感がより増強されるとともに、アルコールの香味がビールらしい香味から大きく離れてしまうという課題がより明確化する」(【0029】)ことが記載され、これらのことを裏付ける具体的な実施例の記載もある。 してみると、当業者であれば、「アルコール度数が8.0%以上であり、酢酸イソアミルの含有量が1.5~4.5ppmであり、麦芽比率が66%以下」であるビールテイスト飲料(ビールテイスト飲料の製造方法、ビールテイスト飲料の香味向上方法)との特定事項を満たすことにより、発明の課題を解決できるものと認識できる。 そして、本件特許発明1ないし3はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。 よって、本件特許発明1ないし3に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。 エ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、実施例において、アルコール度数や酢酸イソアミルの上限値及び下限値を本件特許発明の範囲とすることについての具体的なデータが示されていないこと、麦芽比率66%以下という広い範囲の全体にわたって同じ効果が得られるとは考えられない旨主張するが、サポート要件については上記アの判断基準にしたがって、上記ウのとおり判断されるものであり、特許異議申立人の上記主張はいずれも、上記ウの判断に影響を与えるものではない。 オ 申立理由3についてのまとめ 上記ウ及びエのとおりであるから、申立理由3の理由では、本件特許発明1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。 第7 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700376

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    共通の審決分類: 113・C12C、121・C12C、537・C12C
  • 2025-700556異議申立 / 2026-03-18 / 訂正認容プリン体濃度が低減されたビールテイスト飲料およびその製造方法
    共通の審決分類: 113・C12C、121・C12C、537・C12C
  • 2025-700403異議申立 / 2026-03-06 / 訂正認容ビールテイスト飲料
    共通の審決分類: 113・C12C、121・C12C、537・C12C
  • 2025-700978異議申立 / 2026-01-14 / 維持ビールテイスト発酵アルコール飲料およびその製造方法
    共通の審決分類: 113・C12C、121・C12C、537・C12C
  • 2025-700533異議申立 / 2025-08-25 / 維持ビールテイスト発酵アルコール飲料およびその製造方法
    共通の審決分類: 113・C12C、121・C12C、537・C12C

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