特許異議申立
2025-700433
害虫防除方法及びエアゾール製品
- 審判番号
- 2025-700433
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-143849
- 登録番号
- 7568448
- 請求日
- 2025年04月16日
- 審決日
- 2025年07月28日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】アース製薬株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人栄光事務所
- 【異議申立人】黒田 貴哉
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 典之
- 審判官 小石 真弓
- 審判官 野田 定文
- 分類
- P1651.536-Y (A01N) / P1651.537-Y (A01N) / P1651.121-Y (A01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7568448号発明「害虫防除方法及びエアゾール製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7568448号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7568448号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和2年8月27日(優先権主張 令和元年8月27日)の出願(以下「本件特許出願」という。)であって、令和6年10月7日にその特許権の設定登録がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その全請求項に係る特許に対し、令和7年4月16日に特許異議申立人 黒田 貴哉(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号順に「本件発明1」等といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3(以下、請求項の番号順に「本件請求項1」等という。)に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、記号「A.」等を用いた本件請求項1の構成要件の分説は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に従った。
「【請求項1】
A.金属製又は樹脂製の対象物及び害虫に噴霧して用いる害虫防除用のエアゾール製品であって、
B.有効成分と有機溶剤を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなり、
前記エアゾール組成物中の前記原液と前記噴射剤の体積比は、原液:噴射剤で1:99~30:70であり、
C.前記耐圧容器がエアゾールバルブによりその開口を閉止され、前記エアゾールバルブに噴射ボタンが取り付けられており、
D.前記エアゾールバルブのステムのステム孔の面積に対する前記噴射ボタンの噴口の面積の比が1~30であり、前記噴射ボタンの噴口の面積は0.19~16mm2であり、
E.噴霧粒子の平均粒子径を切り替える粒子径切替機構を備え、前記粒子径切替機構は前記噴射ボタンの噴口に取り付け及び取り外しが可能とされており、
F.前記エアゾールバルブのステムのステム孔の面積に対する前記粒子径切替機構の噴口の面積の比が1~10であり、前記粒子径切替機構の噴口の面積は0.8~1.8mm2であり、
G.前記粒子径切替機構の噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲である噴霧パターンAと、前記噴射ボタンの噴口から50cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が30~120μmの範囲である噴霧パターンBとが切り替え可能であり、前記金属製又は樹脂製の対象物に対して前記噴霧パターンAで噴霧され、前記害虫に対して前記噴霧パターンBで噴霧されることを特徴とする
(A.)エアゾール製品。
【請求項2】
前記対象物が、屋内と屋外を仕切る建物部材であることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール製品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエアゾール製品を用いることを特徴とする害虫防除方法。」
第3 申立理由の概要
申立人が申立書において本件請求項1~3に係る特許を取り消すべきであると申し立てている理由(以下「申立理由」という。)の概要及び申立書に添付して提出した証拠方法は、以下に示すとおりであり、下記4に示す甲号証を、それぞれ番号順に「甲1」等という。
1 申立理由1(特許法第36条第4項第1号:実施可能要件)
本件特許の明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載は、以下に示す(1)及び(2)の点で、本件発明1~3について、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、特許法第36条第4項第1号に適合するものでないから、本件請求項1~3に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(1) 噴霧パターンAの噴霧粒子径の調整について
特許権者は、令和6年6月20日付け意見書において、噴霧パターンAの粒子径切替機構の噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径((D50):4~50μm)を得るに際し、構成要件B、E及びFにより粒子径が調整できる旨を主張しているが、比較例2と比較例4は、構成要件B(原液と噴射剤の体積比)、同E(粒子径切替機構が取り外し可能であること)及び同F(ステム孔の面積に対する粒子径切替機構の噴口の面積比及び粒子径切替機構の噴口の面積)が全て同じであるにもかかわらず、平均粒子径が異なっているから、構成要件B、E及びF以外の何らかの機構が粒子径調整に影響しているのは明確であり、構成要件B、E及びFのみでは噴霧パターンAの平均粒子径を得ることができない。
(2) 噴霧距離について
本件明細書の【0076】の記載は、構成要件A~Gを有するエアゾール製品であっても、対象面又は対象害虫に対する噴霧距離が適正でないと、本件発明の効果が得られない可能性を示唆しているところ、噴霧パターンA及び噴霧パターンBが、それぞれどの程度の噴霧距離を許容しうるものかまでは本件明細書の記載からは推認できない。
2 申立理由2(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)
本件請求項1~3の記載は、以下に示す(1)~(4)の点で、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に適合するものでないから、本件請求項1~3に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(1) 噴霧粒子の平均粒子径の数値範囲について
噴霧パターンAで噴霧される際に、「害虫防除用のエアゾール製品を金属製又は樹脂製の対象物に噴霧しても対してエアゾール内容物を液ダレすることなく均一に付着させることができ、かつ十分な害虫の侵入防止効果を発揮する」という課題の解決について、以下のア~イの点で、噴霧パターンAの平均粒子径の範囲が4~50μmであれば、当該課題を解決できるとはいえない。
また、噴霧パターンBで噴霧される際に、直接害虫に噴霧したときに優れた防除効果を発揮するという効果について、以下のウの点で、十分にサポートされていない。
ア 害虫侵入予防効果を確認したのは、切替用ノズルを装着した場合の25cm距離における平均粒子径(D50)が4.5μmである実施例3のみであり、その他のエアゾール製品の噴霧パターンAによる効果は不明である。
イ 本件明細書の【0076】における「切替用ノズル未装着の実施例1~5、比較例1~4においては、25cm離れた位置から窓枠に噴霧した時には、液ダレが生じる結果となった。」との記載、並びに、切替用ノズル装着で25cm距離における平均粒子径(D50)が21.9μm及び4.5μmである実施例6及び実施例7では、液ダレが無く、害虫侵入防止効果も確認できたのに対し、切替用ノズル未装着で25cm距離における平均粒子径(D50)が2.7μmである比較例5では、構成要件E~Fが外れているところ、液ダレは無かったが、害虫の侵入を防止できなかったという、結果の差異を考慮すると、ノズルの有無が影響している可能性がある。
ウ 噴霧パターンBの噴射ボタンの噴口から50cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が30~120μmの範囲の根拠は、表3の結果であるが、当該範囲以外の粒子径を噴霧した結果がないため、上限値や下限値の臨界的意義が示されたわけでもなく、噴霧パターンBの粒子径範囲の課題解決に対する貢献等はほとんどない。
(2) 対象害虫と有機溶剤について
特定の処方の原液を用いてカメムシで試験した実施例6、7及び比較例5の結果を含む本件明細書の記載から、平均粒子径(D50)が4μm未満の噴霧粒子では、害虫の体表に付着する効果が低く、害虫の侵入防止の効果が低いという推察(【0087】)が、多種多様な対象害虫と有効成分との関係(【0019】)について成り立つと、当業者が容易に想到できない。
また、有機溶剤には、原液の粘度の調整、生産適性の向上、害虫に対する有効成分の浸透性の向上など様々な目的があるところ(【0021】)、ミリスチン酸イソプロピル及びイソパラフィンの系1つの結果をもって、全ての有機溶剤が同様の害虫の体表への付着の効果を得ると、当業者は容易に想到できない。
(3) 対象物と原液について(証拠:甲1,甲2)
エアゾール剤の組成が特定されていない本件発明の方法に包含される全てが、本件明細書に具体的に開示された「所定の成分からなる原液(シフルトリン等及びイソパラフィン)」と「所定の噴射剤(LPG及びDME)」とを「液ガス比5/95」で含むエアゾール剤を使用する方法と、金属製又は樹脂製の対象物に液ダレなく均一に付着させる効果及び害虫の侵入防止効果の点で同等であるとは推認できず、甲1及び甲2の記載を参照すると、ABS樹脂に対する結果からは、樹脂全般においてミリスチン酸イソプロピル及びイソパラフィンを含む系以外でも、上記の効果の点で同様の現象を示すと、当業者は推測できない。
(4) 粒子径切替機構について
噴霧パターンAと噴霧パターンBの噴霧を同距離で比較した場合の結果、すなわち、表1及び表5に記載のノズルが、粒子を切り替えた否かの判断がつかないから、粒子径切替機構の噴口の面積及びステム孔との面積比を規定しさえすれば、形状等の影響を受けないのかなど、その他の具体的な構造までは、当業者は容易に想到しえない。
3 申立理由3(特許法第29条第2項:進歩性)
本件発明1~3は、本件特許出願の前に日本国内又は外国において、甲3、5及び6に記載の製品として公然実施をされた発明、並びに、本件特許出願の前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明に基いて、本件特許出願の前に本件特許の発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1~3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
4 申立人が提出した証拠方法(甲号証)
甲1:社団法人日本化学会編, 改訂3版 化学便覧 基礎編II, 丸善株式会社, 昭和59年6月25日, p. 90
甲2:杉田和之, 日本印刷学会誌, 1998年, 第35巻, 第4号, p. 30-38
甲3:黒田, 医薬品ゴキブリジェットプロ 秒殺+まちぶせ450mL 分析結果, 2025年4月10日, p. 1-8
甲4:特開2011-121894号公報
甲5:アース製薬株式会社, Earth ALL Products 2016 アース総合カタログ, 2016年, p. 81
甲6:独立行政法人 医薬品医療機器総合機構, 一般用医薬品・要指導医薬品 情報検索, 販売名:ゴキジェットプロ秒殺+まちぶせ, 添付文書:HTML(一般用医薬品・要指導医薬品 詳細表示) アース製薬(株) PDF(2014年11月22日), 印刷日2025年4月16日,
HTML <https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/100123_J0801000423_01_01>,
PDF <https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/ResultDataSetPDF/100123_J0801000423_01_01/A>
当審注:甲6については、職権によりウェブページのアドレスを追記している。
第4 当審合議体の判断
当審合議体は、申立人の申立て理由によっては、本件請求項1~3に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
その理由は次のとおりである。
1 甲号証の記載事項
上記第3の4に示した申立人が証拠方法として提出した甲号証について、申立理由について判断するために必要な範囲で、それらの記載事項を以下に摘記する。
(1) 甲1の記載事項
摘記(1a)
「
[図:0001425810000001.jpg]
」
(90頁、表7・16)
(2) 甲2の記載事項
摘記(2a)
「
[図:0001425810000002.jpg]
」
(204頁、表1)
摘記(2b)
「こうして求めたγsは,その値が大きいほどぬれ易い固体であり,小さいほどぬれ難い固体であることを一般的に示す.また,γcについて述べた問題点の内いくつかは改善されており,γsは一番ぬらし易い系列の液体を用いた場合のぬれ易さを表す.いつも一番ぬらし易い系列の液体によるぬればかりが問題になるとは限らない.例えば,ポリオレフィンフィルムを水性インキで印刷したり,PETシートを親水性情報録媒体のベースとして用いたり,ABS樹脂成型品に無電解メッキを施したりする必要が生じる場合もある.」
(206頁右欄5~14行)
(3) 甲3の記載事項
摘記(3a)
「
[図:0001425810000003.jpg]
」
(1頁1~9行)
摘記(3b)
「
[図:0001425810000004.jpg]
」
(2頁1行~下から7行)
(4) 甲4の記載事項
摘記(4a)
「【0016】
エアゾールを広角噴霧するに際しては、20cm離れた垂直板面に向けてエアゾールを噴霧後、その板面の濡れた部分の最大直径を測定し、これを噴霧パターン(SP)とするとき、このSPが8cm以上であるように設計するのが良い。
上記エアゾールを用い、このような噴霧方法によれば、ガラス窓、ショーウインドー等のガラス面に噴き付けたときでも、対象処理面にエアゾール内容液を散在化させ、噴霧被膜を形成しないので、ガラス面の透明性を全く損なうことがないというメリットを有する。」
(5) 甲5の記載事項
摘記(5a)
「
[図:0001425810000005.jpg]
」
(6) 甲6の記載事項
摘記(6a)
「
[図:0001425810000006.jpg]
」
摘記(6b)
「
[図:0001425810000007.jpg]
」
摘記(6c)
「
[図:0001425810000008.jpg]
」
摘記(6d)
「
[図:0001425810000009.jpg]
」
2 本件明細書の記載事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。以下、下線は当審合議体が追記したものであり、「・・・」は記載の省略を表す。
摘記(A)
「【0004】
また、カメムシ類等の臭いを放つ害虫に対しては、害虫被害を防ぐために建物内への侵入を阻止することが望まれるが、そのための方法として、例えば、(4-エトキシフェニル)〔3-(3-フェノキシ-4-フルオロフェニル)プロピル〕(ジメチル)シランとピレスロイド系殺虫剤を含有する液剤もしくはエアゾール剤の家屋用カメムシ防除剤を家屋の窓枠、扉等に処理し、カメムシの家屋内への侵入を阻止するカメムシ防除方法が提案されている(特許文献2参照)。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載された方法では、害虫の建物内への侵入を阻止するためにエアゾール製品を窓枠、扉等に処理して使用するが、屋外に面する窓枠や扉の材質はアルミニウムや塩化ビニル樹脂等が使用されることが多く、このような金属製や樹脂製の建材に噴霧すると、付着面にエアゾール内容物の液ダレが生じることがあった。エアゾール内容物が窓枠や扉に液ダレした状態で付着すると、害虫がエアゾール内容物(特に、有効成分)が付着していない所を通って屋内へ侵入するおそれがあり、害虫の侵入防止効果が十分に得られず、また外観上汚れるという問題があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、害虫防除用のエアゾール製品を金属製又は樹脂製の対象物に噴霧してもエアゾール内容物を液ダレすることなく均一に付着させることができ、かつ十分な害虫の侵入防止効果を発揮する害虫防除方法、並びに当該方法に用いるためのエアゾール製品を提供することを課題とする。」
摘記(B)
「【0013】
処理する対象物は、屋内と屋外を仕切る建物部材であることが好ましく、具体的には、窓枠、玄関扉等が挙げられる。窓枠や玄関扉等の建物部材に本発明の害虫防除方法を用いて害虫防除用のエアゾール製品を処理することで、対象物が金属製又は樹脂製であっても対象面にエアゾール組成物を液ダレすることなく均一に付着させることができ、よって屋外から建物内への害虫の侵入を阻止することができる。
【0014】
対象物は、上記したように金属又は樹脂により構成される。金属表面及び樹脂表面は、木材等に比べて薬液の浸透力が弱く、エアゾール製品を噴霧したときに噴霧粒子同士が結合して液滴になりやすい。金属製又は樹脂製の対象物に対して噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲となるように噴霧することで、対象物の表面に結合のし難い大きさで噴霧粒子を付着させることができ、対象物に均一に有効成分を付着できると推測される。また窓枠の材質が木のような薬液の浸透力の強い材質の場合、薬液が材質中に染み込んでしまい、表面に薬液が残りにくい。結果、害虫の表皮に付着する薬液が減少し、有効成分の効果を効果的に発現することが難しくなる。
【0015】
対象物を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、鋼、ステンレス、銅及びこれらの合金等が挙げられ、樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂等が挙げられ、これらの複合材料でもよい。また、対象物の表面が金属又は樹脂で構成されていればよく、対象物は、木材や紙などの金属及び樹脂以外の材質の表面を金属又は樹脂で覆った積層体であってもよい。」
摘記(C)
「【0016】
(エアゾール製品)
本発明の害虫防除方法に用いるエアゾール製品は、有効成分を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなるものである。
【0017】
(原液)
エアゾール組成物を構成する原液は、少なくとも有効成分である薬剤を含有する。有効成分は対象害虫を忌避、ノックダウン、殺虫等をさせることができる成分であり、有効成分の種類は、特に限定されず、公知の化合物を使用できる。
【0018】
有効成分としては、例えば、ペルメトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフルトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等のピレスロイド系化合物;フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物;カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物;メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト等の化合物;ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ブチグレン油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、シトラール、l-メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、cis-ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8-シネオール、ゲラニオール、α-ピネン、p-メンタン-3,8-ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等の各種精油成分;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;アジピン酸ジブチル等の二塩基酸エステル類等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
なお、有効成分は、対象害虫の種類に合わせて適宜選択すればよい。対象害虫としては、例えば、蚊、ハエ、ガ、ハチ、カメムシ、ゴキブリ、アリ、クモ、ダンゴムシ、ダニ、シラミ、ムカデ、ケムシ、ヤスデ、クモ、アブ、ブユ、チョウバエ、シロアリ、ユスリカ、ヨコバイ、キクイムシ、ゴミムシ、ハサミムシ、シミ、カミキリムシ、カツオブシムシ、チャタテムシ、イガ、コイガ等が挙げられる。
ゴキブリ、カメムシ、アリ、クモ、ダンゴムシ、ダニ、シラミ、ムカデ、ケムシ、ヤスデ、クモ、シロアリ、キクイムシ、ゴミムシ、ハサミムシ、シミ等の匍匐害虫に対しては、シフルトリン、シフェノトリン、フェンプロパトリン、フタルスリン、プラレトリン、イミプロトリン、ペルメトリン、フェノトリン等が好適である。特に匍匐害虫の屋内への侵入防止に使う場合は、シフルトリン、フェンプロパトリン、ペルメトリンが好ましい。また、蚊、ハエ、ガ、ハチ、アブ、ブユ、ユスリカ、ヨコバイ、チョウバエ、イガ、コイガ等の飛翔害虫に対しては、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、フタルスリン、プラレトリン、モンフルオロトリン等が好適である。
【0020】
有効成分の含有量は、原液中0.1~5質量/容量%であることが好ましい。有効成分が原液中に0.1質量/容量%以上であることで、十分な薬剤の効果を得ることができ、5質量/容量%以下であると生産適性が向上される。有効成分の含有量は、下限は0.8質量/容量%以上であることがより好ましく、2質量/容量%以上がさらに好ましく、また上限は4質量/容量%以下がより好ましく、3質量/容量%以下がさらに好ましい。
【0021】
原液には、有効成分を溶解させるため、原液の粘度を調整するため、生産適性を向上させるため、害虫に対する有効成分の浸透性を上げるため等の目的のために溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、水や有機溶剤を挙げることができる。
【0022】
水としては、水道水、精製水、イオン交換水等が挙げられる。
【0023】
有機溶剤としては、例えば、上記したグリコールエーテル類や、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、パラフィン系炭化水素やナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素が挙げられ、JIS 1号灯油等の灯油が好ましい。具体的にはノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。ノルマルパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが代表的で、例えば、中央化成株式会社製のネオチオゾール、JXTGエネルギー株式会社製のノルマルパラフィンMA等が挙げられる。イソパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが代表的で、例えば、出光興産株式会社製のIPクリーンLX、スーパーゾルFP25等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等が挙げられる。
特に溶剤の中でも炭化水素系溶剤、エステル系溶剤が対象物に処理する際に好適に付着する点から好ましく、特に炭化水素系溶剤が特に好ましい。
【0024】
溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
溶媒の含有量は、原液中80~99.9質量/容量%であることが好ましい。溶媒が原液中に80質量/容量%以上であることで、生産適性を向上させることができ、99.9質量/容量%以下であると、十分な薬剤の効果を担保できるため好ましい。溶媒の含有量は、下限は90質量/容量%以上であることがより好ましく、95質量/容量%以上がさらに好ましく、また上限は99質量/容量%以下がより好ましく、97質量/容量%以下がさらに好ましい。」
摘記(D)
「【0038】
(噴射剤)
噴射剤は、上記原液を噴霧するための媒体であり、原液とともに耐圧容器に加圧充填される。
噴射剤としては、例えば、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン等の液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)等の液化ガス、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気等の圧縮ガス、HFC-152a、HFC-134a、HFO-1234yf、HFO-1234ze等のハロゲン化炭素ガス等の1種又は2種以上を用いることができる。使用する噴射剤は、原液との相溶性やエアゾールバルブ等の容器部材に合わせて適宜選択すればよい。
【0039】
エアゾール組成物中の噴射剤の含有量は、原液との組み合わせや噴霧粒子の粒子径の調整等のエアゾール製品の仕様に応じて適宜変更可能であり、特に限定されないが、例えば、エアゾール組成物中に70~99容量%とすることができる。エアゾール組成物中に噴射剤が70容量%以上であると、原液を噴霧粒子として噴霧することができるため薬剤がより拡散しやすくなり、液ダレを防ぐことができる。また、噴霧した際の冷却効果が高くなり、この冷却効果により害虫をより防除しやすくなる。また、噴射剤が99容量%以下であると、十分な薬剤の効果を得ることができる。噴射剤の含有量は、冷却効果をさらに得られやすく、また、噴霧されたエアゾール組成物が乾きやすいという点で、エアゾール組成物中、下限は80容量%以上であることがより好ましく、85容量%以上がさらに好ましく、また、上限は98容量%以下がより好ましく、95容量%以下がさらに好ましい。
なお、噴射剤の内ジメチルエーテルは含有多寡になり過ぎるとワックスなどの樹脂やゴム等への腐食性が高くなる傾向があるので部材への影響が出やすい。よって、ジメチルエーテルの含有量は、噴射剤中、70容量%以下とすることが好ましく、55容量%以下がより好ましい。
【0040】
エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は、1:99~30:70であることが好ましく、5:95~15:85がより好ましい。このような体積比とすることで、有効成分の効果を十分に得るとともに、噴霧粒子の粒子径の調整ができる。」
摘記(E)
「【0041】
本発明のエアゾール製品は、上記した原液と噴射剤がエアゾール用の耐圧容器に充填され、該耐圧容器がエアゾールバルブによりその開口を閉止され、該エアゾールバルブに噴射部材が取り付けられることにより構成される。
【0042】
(エアゾールバルブ)
エアゾールバルブは、噴射部材が使用者により操作されることにより耐圧容器内と外部との連通および遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングを耐圧容器の所定の位置に保持するためのマウント部材を備える。また、開閉部材は、噴射部材と連動して上下に摺動するステムを含む。ステムの摺動によりエアゾール組成物の連通(噴射状態)および遮断(非噴射状態)が切り替えられる。ハウジングには、耐圧容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔が形成されている。ステムには、ハウジング内に取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔が形成されている。ハウジング孔からステム孔までの経路は、エアゾール組成物が通過する内部通路を構成する。
【0043】
エアゾールバルブのステムにおけるステム孔の形状は、円形であってもよいし、多角形でもよい。ステム孔の大きさは、噴霧量を所望の範囲とするという観点から、その断面の面積が0.05~4mm2であることが好ましく、0.1~2mm2がより好ましい。
ステム孔は1個でもよいし、複数個有していてもよい。ステム孔の面積は、ステム孔が複数ある場合はその合計面積である。
【0044】
(噴射部材)
噴射部材(噴射ボタン)は、エアゾールバルブを介して耐圧容器に取り付けられる部材である。噴射ボタンには、エアゾールバルブのステム孔を介して耐圧容器から取り込まれるエアゾール組成物が通過する操作部内通路とエアゾール組成物が噴霧される噴口とが形成されている。
【0045】
噴射ボタンは、後述する粒子径切替機構(例えば、噴射ノズル)を取り付け可能な構成、例えば、噴射ノズルを嵌め込むための凹部、ネジ部等を備えていてもよい。
【0046】
また、噴射ボタンの噴口の形状は、円形であってもよいし、多角形でもよい。噴口の形状が多角形である場合、噴口の大きさは円形の場合と同等であればよい。
【0047】
(粒子径切替機構)
本発明のエアゾール製品は、噴霧粒子の平均粒子径を切り替えることのできる粒子径切替機構を備えることが好ましい。粒子径切替機構としては、噴霧粒子の平均粒子径を切り替えることができれば特に限定されないが、例えば、噴射部材の噴口に噴射ノズルを取り付ける、噴霧パターンの切替機構を備えた噴射部材を用いる等が挙げられる。なかでも、取り外し可能な噴射ノズルを備えると、噴射ノズルがある時とない時とで2つのパターンの粒子径で噴霧でき、また、製造コストも高額になりにくいため好ましい。
【0048】
本発明では、粒子径切替機構により、例えば、噴射部材の噴口に噴射ノズルを嵌め込む又は取り外すことにより、エアゾール組成物が吐出される噴口の面積、内径を変化させて所望の平均粒子径を有する噴霧粒子を噴霧できる。
【0049】
噴射ボタンの噴口に粒子径切替機構により、例えば、噴射ノズルを嵌め込む又は取り外すことにより、エアゾール組成物が吐出される噴口の面積を、好ましくは0.07~5.0mm2、より好ましくは0.12~3.2mm2、さらに好ましくは0.19~1.8mm2とすることにより、噴霧面に対して液ダレをすることなく、良好に噴霧できる。
また、エアゾール組成物が吐出される噴口が円形である場合、噴射ボタンの噴口に粒子径切替機構により、例えば、噴射ノズルを嵌め込む又は取り外すことにより、その内径(噴口孔径)を、好ましくは0.3~2.5mm、より好ましくは0.4~2.0mm、さらに好ましくは0.5~1.5mmとすることにより、噴霧面に対して液ダレをすることなく、良好に噴霧できる。
【0050】
さらに、噴射ボタンの噴口に粒子径切替機構により、例えば、噴射ノズルを嵌め込む又は取り外すことにより、エアゾール組成物が吐出される噴口の面積を、好ましくは0.19~16mm2、より好ましくは0.78~9.7mm2、さらに好ましくは1.7~7.1mm2とすることで、害虫に直接噴霧して、害虫を冷却することにより所望の殺虫効果を得ることができる。
また、エアゾール組成物が吐出される噴口が円形である場合、噴射ボタンの噴口に粒子径切替機構により、例えば、噴射ノズルを嵌め込む又は取り外すことにより、その内径(噴口孔径)を、好ましくは0.5~4.5mm、より好ましくは1.0~3.5mm、さらに好ましくは1.5~3.0mmとすることにより、害虫に直接噴霧して、害虫を冷却することにより所望の殺虫効果を得ることができる。
【0051】
なお、ステム孔の面積に対する噴射ボタンの噴口の面積の比(噴口面積/ステム孔面積)は、1~30がより好ましい。噴口面積/ステム孔面積が前記範囲であると、エアゾール組成物の目詰まりを抑制しつつ、良好な噴霧パターンを形成することができる。
【0052】
上記した噴射ノズルは噴霧パターンを細かくすることのできる部材である。噴射ノズルとしては、例えば、長軸方向に長い流路を備え、先端に粒子径を調整する噴口を有するものを使用することができる。
【0053】
噴射ノズルの流路(チューブ)の長さとしては、取り扱いの容易性の観点から、50~200mmであることが好ましく、100~150mmがより好ましい。噴射ノズルの流路径(チューブの内径)としては、エアゾール組成物の噴出を妨げないために、直径φ0.3~3mmであることが好ましく、直径φ0.5~2mmがより好ましい。
噴射ノズルの噴口の直径としては、噴霧量及び粒子径を所望の範囲とするという観点から、エアゾール組成物が吐出される噴口の面積は、0.07~5.0mm2とすることが好ましく、より好ましくは0.12~3.2mm2、さらに好ましくは0.19~1.8mm2であり、その内径(噴口孔径)は、エアゾール組成物が吐出される噴口が円形である場合、0.3~2.5mmとすることが好ましく、より好ましくは0.4~2.0mm、さらに好ましくは0.5~1.5mmである。噴射ノズルの噴口の形状は、円形であってもよいし、多角形でもよい。噴射ノズルの噴口が多角形の場合、噴口の面積は円形の場合と同等であればよい。噴射ノズルの噴口は1個でもよいし、複数個有していてもよい。なお、噴射ノズルの噴口の面積は、噴口が複数ある場合はその合計面積である。
【0054】
ステム孔の面積に対する噴射ノズルの噴口の面積の比(噴口面積/ステム孔面積)は、1~10がより好ましい。噴口面積/ステム孔面積が前記範囲であると、エアゾール組成物の粒子径を好適に調整し、液ダレが気にならない良好な噴霧パターンを形成することができる。」
摘記(F)
「【0056】
(噴射粒子径)
また、本発明のエアゾール製品は、エアゾール製品の噴口(エアゾール組成物の吐出位置)から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲であることが好ましい。エアゾール製品の噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4μm以上であると、有効成分による本発明の効果を十分に得ることができ、50μm以下であると、金属製又は樹脂製の対象物に噴霧した場合であっても液ダレをすることがない。噴霧粒子の平均粒子径(D50)は、下限は4.5μm以上であることがより好ましく、また上限は47μm以下であることがより好ましい。
なお、前記した噴霧粒子の平均粒子径(D50)は、粒子径切替機構を用いたときのものであっても、粒子径切替機構を用いず噴射ボタンの噴口から直接噴霧されたときのものであってもよい。
【0057】
さらに、本発明のエアゾール製品は、前記粒子径切替機構を備えたときに、エアゾール製品の噴口(エアゾール組成物の吐出位置)から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲である噴霧パターンAと、同じく吐出位置から50cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が30~120μmの範囲である噴霧パターンBとが切り替え可能とされていることが好ましい。
噴霧パターンAで噴霧された際には、処理対象物が金属製又は樹脂製の場合にエアゾール内容物を処理面に対して液ダレすることなく付着させることができ、噴霧パターンBで噴霧された際には噴霧粒子の平均粒子径が大きくなるので、直接害虫に噴霧した際に害虫に付着する有効成分の量が増え、さらに冷却効果も十分に得ることができ、優れた防除効果を発揮することができる。噴射パターンAの噴霧粒子の平均粒子径(D50)は、下限が4.5μm以上であることがより好ましく、また上限は47μm以下がより好ましい。噴射パターンBの噴霧粒子の平均粒子径(D50)は、下限が35μm以上であることがより好ましく、また上限は105μm以下がより好ましい。
【0058】
なお、粒子径切替機構により、窓枠等の金属製又は樹脂製の対象物に対して噴霧した時に液ダレ防止効果のある粒子径に調整した場合には、害虫に直接噴霧すると、害虫を冷却させる効果は弱まり、所望の殺虫効果を得にくくなる。一方、粒子径切替機構により、害虫に直接噴霧して冷却殺虫効果を得るために粒子径を調節した場合には、窓枠等の金属製又は樹脂製の対象物に噴霧すると、液ダレしやすくなる。よって、直接噴霧する標的に応じて、噴射パターンAと噴射パターンBとを使い分けることが好ましい。」
摘記(G)
「【0062】
<試験例1>
1.原液の調製
100mLのメスフラスコに、シフルトリン1.0g、フタルスリン1.5g、ミリスチン酸イソプロピル10gを測り取り、イソパラフィン(比重0.755(15℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液を調製した。25℃における原液の比重は0.762であった。
【0063】
2.エアゾール製品の作製
表1に従い、実施例1~5、比較例1~4のエアゾール製品を作製した。
【0064】
(実施例1)
エアゾール用耐圧缶(満注容量579mL)に、原液を24mL充填し、エアゾールバルブ(ステム孔面積0.4mm2、円形のステム孔)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤として液化石油ガスLPG2.0(25℃での圧力0.2MPa)228mLとジメチルエーテル(DME)228mLを加圧充填した。
エアゾールバルブに噴射ボタン(噴口径φ2.5mm、噴口面積4.9mm2)を取り付け、エアゾール検体を得た。また、噴射パターンを切り替えるための切替用ノズルとして、チューブ内径1.5mm、チューブ長113mm、噴口径φ1.5mm、噴口面積1.8mm2のノズルを用意した。
【0065】
(実施例2~5、比較例1~4)
原液と噴射剤の含有比、噴射剤の組成、エアゾールバルブ、噴射ボタン及びノズルを表1に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様にしてエアゾール検体を作製した。
なお、実施例2、4~5及び比較例1~4で用いたバルブステムの孔は円形であり、実施例3で用いたバルブステムの孔は四角形である。表1中のステム孔大きさについて、バルブステム孔の形状が円形である場合を「φ」、形状が四角形である場合を「□」で示している。
【0066】
【表1】
[図:0001425810000010.jpg]
【0067】
3.エアゾール製品の評価
実施例1~5、比較例1~4のエアゾール検体に切替用ノズルを装着したとき(噴射ボタン+切替用ノズル)と未装着のとき(噴射ボタンのみ)のそれぞれについて、噴霧量を測定し、切替用ノズル装着時については25cm距離における噴霧粒子の平均粒子径を、切替用ノズル未装着については50cm距離における噴霧粒子の平均粒子径を測定した。
また、切替用ノズル装着時のエアゾール検体については、窓枠に噴霧したときの液ダレの有無を評価し、切替用ノズル未装着のエアゾール検体については、害虫駆除効果を確認した。
【0068】
(1)噴霧量の測定
エアゾール検体を、25℃で10秒間噴霧し、噴霧前のエアゾール検体の重量から減少した重量を噴霧量とした。結果を表2、3に示す。
【0069】
(2)噴霧粒子の平均粒子径の測定
(2-1)切替用ノズル装着時(切替用ノズル+噴射ボタン)の測定
エアゾール検体の噴口(ノズルの噴口)から噴射方向(水平方向)に直線で25cm離れた位置に、レーザー光回析式粒度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「LDSA-1400A」)を設置し、粒度測定装置に向けてエアゾール検体を噴霧することにより粒子径(D50)を測定した。
この測定を2回行い、その平均を平均粒子径(D50)として求めた。結果を表2に示す。
【0070】
(2-2)切替用ノズル未装着時(噴射ボタンのみ)の測定
エアゾール検体の噴口(噴射ボタンの噴口)から噴射方向(水平方向)に直線で50cm離れた位置に、レーザー光回析式粒度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「LDSA-1400A」)を設置し、粒度測定装置に向けてエアゾール検体を噴霧することにより粒子径(D50)を測定した。
この測定を2回行い、その平均を平均粒子径(D50)として求めた。結果を表3に示す。
【0071】
(3)窓枠噴霧時の液ダレの確認
試験は、切替用ノズルを装着した実施例1~5、比較例1~4のエアゾール検体を用いた。
アルミニウム製の窓枠(幅5cm、長さ90cm)に向けて、ノズルの噴口までの距離が25cm離れた位置から、窓枠の0.045m2の範囲に各エアゾール検体それぞれを30mL噴霧し、噴霧粒子を付着させた。続けて、目視により窓枠表面における液ダレの有無を確認した。
液ダレが全く見られなかったものを「○」、液ダレがあったものを「×」と評価した。結果を表2に示す。
【0072】
(4)害虫駆除効果の確認
試験は、切替用ノズル未装着時の実施例1~5、比較例1~4のエアゾール検体を用いた。
ミナミアオカメムシ(成虫)2頭をKPカップに入れた。ミナミアオカメムシに向けて、噴射ボタンの噴口までの距離が50cm離れた位置から3秒間検体を噴霧した。直後に、ノックダウン(転倒して動けなくなる)の有無を確認した。
ミナミアオカメムシがノックダウンしたものをノックダウン効果あり「○」、ノックダウンしなかったものをノックダウン効果なし「×」と評価した。結果を表3に示す。
【0073】
(5)害虫侵入予防効果の確認
さらに、切替用ノズルを装着した実施例3のエアゾール検体を用いて、害虫の侵入予防効果の確認試験を行った。
4月中旬に、クサギカメムシの侵入が頻繁に見られる兵庫県北部の一般家庭において、ベランダのアルミニウム製の窓枠(幅5cm、縦180cm×横180cm)に向けて、エアゾール組成物の噴霧量が窓枠全体に対して約70gとなるようエアゾール検体を噴霧した。なお、窓枠からノズルの噴口までの距離が25cm離れた位置から噴霧した。
処理一日後にベランダの様子を確認し、クサギカメムシの致死状況を確認したところ、クサギカメムシは屋内へ入ることはできず、ベランダで致死していた。また、処理してから約1か月間、処理した窓枠周辺で生きたクサギカメムシを見ることはなかった。
【0074】
【表2】
[図:0001425810000011.jpg]
【0075】
【表3】
[図:0001425810000012.jpg]
【0076】
表2の結果より、アルミニウム製の窓枠に対して噴霧粒子の平均粒子径が4~50μmの範囲となるように噴霧した実施例1~5は、窓枠に対して液ダレすることなくエアゾール組成物を付着させることができた。また、害虫侵入予防効果の確認試験の結果より、噴霧粒子の平均粒子径が4~50μmの範囲となるように噴霧したときは、害虫に対する優れた侵入防止効果が得られることがわかった。
そして、表3より、害虫に対して噴霧粒子の平均粒子径が30~120μmの範囲となるように噴霧し付着させたときには、優れた防除効果も有するものであることが分かった。なお、切替用ノズル未装着の実施例1~5、比較例1~4においては、25cm離れた位置から窓枠に噴霧した時には、液ダレが生じる結果となった。
【0077】
<試験例2>
1.原液の調製
表4に示した処方に基づき、100mLのメスフラスコに、シフルトリン及びミリスチン酸イソプロピルを測り取り、イソパラフィン(比重0.755(15℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液を調製した。
【0078】
【表4】
[図:0001425810000013.jpg]
【0079】
2.エアゾール製品の作製
表5に従い、実施例6~7、比較例5のエアゾール製品を作製した。」
摘記(H)
「【0080】
(実施例6~7、比較例5)
試験例1と同様にして、原液と噴射剤の含有比、噴射剤の組成、エアゾールバルブ、噴射ボタン及びノズルを表5に記載の仕様に従って、エアゾール検体を作製した。
なお、実施例6で用いたバルブステムの孔は円形であり、実施例7及び比較例5で用いたバルブステムの孔は四角形である。
【0081】
【表5】
[図:0001425810000014.jpg]
【0082】
3.エアゾール製品の評価
切替用ノズルを装着した実施例6~7のエアゾール検体(噴射ボタン+切替用ノズル)と、比較例5のエアゾール検体(噴射ボタンのみ)のそれぞれについて、25cm距離における噴霧粒子の平均粒子径を計測し、害虫侵入防止試験と窓枠に噴霧したときの液ダレの有無を評価した。
【0083】
(1)噴霧粒子の平均粒子径の測定
エアゾール検体の噴口(ノズル又は噴射ボタンの噴口)から噴射方向(水平方向)に直線で25cm離れた位置に、レーザー光回析式粒度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「LDSA-1400A」)を設置し、粒度測定装置に向けてエアゾール検体を噴霧することにより粒子径(D50)を測定した。
この測定を2回行い、その平均を平均粒子径(D50)として求めた。結果を表6に示す。
【0084】
(2)害虫侵入防止試験
図1(a)及び(b)に示すような試験区を作製した。なお、図1において、矢印B側から見たとき、奥行き方向を前後方向、幅方向を左右方向といい、側壁をそれぞれ、「後壁」、「左壁」等という。
図1(a)に示したように、縦15cm×横15cm×高さ15cmの上方開口のボックス(第1ボックス1a、第2ボックス1b)を2個準備し、側壁同士が接するように並置した。第1ボックス1aと第2ボックス1bが接する隣接壁2と底壁と後壁との入隅部における隣接壁2に穴をあけ、第1ボックス1aと第2ボックス1bとを連通可能とした。
図1(b)に示したような長尺の底板と該底板の長手方向に立ち上がる側板とを有するABS樹脂製のレール部材4に対し、エアゾール検体の噴口までの距離が25cm離れた位置から、エアゾール検体を満遍なく約3g噴霧した。これを第1ボックス1aに、その一端が第1ボックス1aの左壁に当接し、他端が隣接壁2に設けた穴を貫通して第2ボックス1b内に突出するようにして、設置した。
その後、第1ボックス1a内にミナミアオカメムシ(成虫)7を5頭放ち、第2ボックス1b内に水を含ませた脱脂綿5を載せたトレイ6を設置し、透明な板材3でボックス1a,1bの上部開口部を覆い、一晩放置した。翌日、第2ボックス1bに侵入したミナミアオカメムシの生虫数をカウントした。
侵入したミナミアオカメムシの生虫数より、下記式に基づいて侵入防止率(%)を計算した。侵入防止率が100%の場合を侵入なし「○」、それ以外を侵入あり「×」として評価した。結果を表6に示す。
侵入防止率(%)=(第1ボックス内に放ったカメムシの数-第2ボックス内に侵入したカメムシの生虫数)/第1ボックス内に放ったカメムシの数×100
【0085】
(3)窓枠噴霧時の液ダレの確認
アルミニウム製の窓枠(幅5cm、長さ90cm)に向けて、エアゾール検体の噴口までの距離が25cm離れた位置から、窓枠の0.045m2の範囲に各エアゾール検体それぞれを30mL噴霧し、噴霧粒子を付着させた。続けて、目視により窓枠表面における液ダレの有無を確認した。
液ダレが全く見られなかったものを「○」、液ダレがあったものを「×」と評価した。結果を表6に示す。
【0086】
【表6】
[図:0001425810000015.jpg]
【0087】
表6の結果より、実施例6、7は害虫の侵入防止効果が確認でき、窓枠に対する液ダレも無かった。これに対し、エアゾール検体の噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4μmに満たない比較例5は、害虫の侵入を防止できなかった。このことから、平均粒子径(D50)が4μm未満の噴霧粒子は、害虫が噴霧の対象物を通る際に噴霧粒子が害虫の体表に付着する効果が低く、害虫の侵入防止効果が低下するものと推察される。また、噴霧粒子の平均粒子径が小さいほど環境の影響を受けやすいため、屋外で使用する場合は、風などの影響で対象物への付着量が減少する可能性があると推察される。
【0088】
<試験例3>
試験例2で作製した実施例6のエアゾール検体を用いて、レール部材の異なる材質に対する害虫侵入防止試験及び液ダレの有無の確認を行った。
【0089】
(1)害虫侵入防止試験
試験例2の(2)害虫侵入防止試験に記載の方法に従い、レール部材4として、アルミニウム製部材、ABS樹脂製部材、ヒノキ製部材を用いて、害虫侵入防止試験を行った。結果を表7に示す。
【0090】
(2)窓枠噴霧時の液ダレの確認
試験例2の(3)窓枠噴霧時の液ダレの確認に記載の方法に従い、窓枠としてアルミニウム製部材、ABS樹脂製部材、ヒノキ製部材を用いて液ダレの有無の確認試験を行った。結果を表7に示す。
【0091】
【表7】
[図:0001425810000016.jpg]
【0092】
表7の結果より、噴霧対象の材質がアルミニウム(金属)、ABS樹脂(樹脂)及びヒノキ(木)のいずれであっても、本実施形態である実施例6のエアゾール検体を噴霧した際には液ダレはなかった。一方、害虫の侵入防止については、木製のレール部材を使用した害虫侵入防止試験では侵入防止が十分ではなく、本発明の方法により金属製又は樹脂製の対象物に対して使用した際に優れた害虫防除効果を発揮できることがわかった。木材は薬液の浸透力が強く、薬液が材質中に染み込んでしまい、表面に薬液が残りにくく、よって、害虫表皮に付着する薬液が減少し、有効成分の効果を効果的に発現することが難しくなると考えられる。」
3 申立理由1について
(1) 実施可能要件の判断の前提
物の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があることを要し、また、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法の使用をすることができる程度の記載があることを要するものである。
(2) 判断
ア 本件明細書の発明の詳細な説明には、「エアゾール組成物中の噴射剤の含有量」(摘記(D))、「エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比」(摘記(D))、「粒子径切替機構」(摘記(E))、「エアゾール組成物が吐出される噴口の面積、内径」(摘記(E))、及び「噴口面積/ステム孔面積」(摘記(E))によって、「噴霧粒子の粒子径の調整」をすることの一般的な説明が記載され、実施例及び比較例として、エアゾール組成物の組成だけでなく、ステム孔(大きさ、個数、面積)、ボタンの噴口(直径、個数、面積、噴口面積/ステム孔面積)、及び、粒子径切替機構であるノズル(チューブ内径、チューブ長さ、ノズル噴口直径、ノズル噴口数、ノズル面積、噴口面積/ステム孔面積)のサイズ等が具体的に記載されており(摘記(G)表1、摘記(H)表5)、それらの噴霧粒子の平均粒子径の結果(切替用ノズル装着、切替用ノズル未装着)も示されている(摘記(G)表2,3、摘記(H)表6)。
イ そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、「噴霧粒子の粒子径の調整」についての説明が記載されているだけでなく、本件発明1及び2の「エアゾール製品」並びに本件発明3の「害虫防除方法」も、実施例として具体的に記載され、本件発明の条件を満たさない比較例との対比説明も記載されているのであるから、これら実施例及び比較例を参考に、一般的な説明も参照すれば、当業者は、過度な試行錯誤なく、本件発明1及び2の「エアゾール製品」を製造し、使用することができ、また、本件発明3の「害虫防除方法」の使用をすることができるといえる。
ウ よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1~3を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
(3) 申立人の主張について
ア 噴霧パターンAの噴霧粒子径の調整について
上記第3の1(1)のとおり、申立人は、構成要件B、E及びF以外の何らかの機構が粒子径調整に影響しているから、構成要件B、E及びFのみでは噴霧パターンAの平均粒子径を得ることができない旨の主張をしている。
上記(2)で説示したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、「噴霧粒子の粒子径の調整」についても、当業者が過度な試行錯誤なく、実施することができる程度の記載があるものであるところ、本件明細書に記載の比較例2と4は、「粒子径切替機構」である「ノズル」を装着前の「ボタン」の「噴口直径」が異なるものであり、「エアゾール組成物」の噴霧までの経路が異なるから、構成要件B、E及びFが同じであっても、「25cm距離における平均粒子径(D50)(μm)」が異なる場合があることは、当業者が十分に理解できる事項である。
そうすると、本件明細書には、そのような事項も含めて記載されているといえ、構成要件B、E及びF以外の何らかの機構が粒子径調整に影響しているとしても、本件明細書全体の記載を参照すれば、当業者は噴霧パターンAの粒子径を得ることができるといえるから、申立人の主張は採用できない。
イ 噴霧距離について
上記第3の1(2)のとおり、申立人は、構成要件A~Gを有するエアゾール製品であっても、対象面又は対象害虫に対する噴霧距離が適正でないと、本件発明の効果が得られない可能性があるので、噴霧パターンA及び噴霧パターンBのそれぞれが、どの程度の噴霧距離を許容し得るのか推認できない旨の主張をしている。
しかしながら、本件発明において、「噴霧パターンA」及び「噴霧パターンB」は、それぞれ、「25cm」及び「50cm」における「噴霧粒子の平均粒子径」を特定するものであるから、当該距離を参考にすれば、当業者が過度な試行なく、実際に本件発明を使用できることは明らかといえる。
したがって、本件発明の効果を奏するのに許容される「噴霧距離」自体の特定の有無は、実施可能要件を満たすかどうかに影響を及ぼすのもではないから、申立人の主張は採用できない。
(4) 小括
したがって、申立理由1によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由2について
(1) サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) 本件発明の課題
本件発明が解決しようとする課題は、特許請求の範囲の記載、並びに本件明細書の【0006】、【0007】、【0047】、【0057】及び【0058】を含む本件明細書全体の記載からみて、
『害虫防除用のエアゾール製品を、「直接害虫に噴霧した際に、優れた防除効果を発揮する」とともに、「粒子径切替機構」により、「金属製又は樹脂製の対象物に噴霧してもエアゾール内容物を液ダレすることなく均一に付着させることができ、かつ十分な害虫の侵入防止効果を発揮する」害虫防除方法、並びに、当該方法に用いるためのエアゾール製品を提供すること』
であると認められる。
(3) 判断
ア 噴霧粒子の粒子径の調整について
上記3(2)アにおいて説示したとおり、「噴霧粒子の粒子径の調整」について、一般的な説明とともに詳細な条件が明らかな実施例及び比較例が示されており、噴霧パターンAの噴霧粒子の平均粒子径の範囲内であれば、金属製又は樹脂製の対象物に噴霧しても対してエアゾール内容物を液ダレすることなく均一に付着させることができ、かつ十分な害虫の侵入防止効果を発揮すること、噴霧パターンBの噴霧粒子の平均粒子径の範囲内であれば、直接害虫に噴霧したときに優れた防除効果を発揮すること、が確認できるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載され、かつ、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
イ 「有効成分と対象害虫」、「溶媒」及び「噴射剤」について
本件明細書には、「有効成分と対象害虫」及び「溶媒」について、「有効成分は、対象害虫の種類に合わせて適宜選択」すること、及び「害虫に対する有効成分の浸透性を上げるため等の目的のために溶媒を含有すること」などの一般的な説明が記載され(摘記(C))、「噴射剤」についても、その成分及びエアゾール組成物中の含有量などの一般的な説明が記載され(摘記(D))、実施例及び比較例では、「シフルトリン」(有効成分)、「イソパラフィン」(溶媒)及び「液化石油ガスLPG2.0」(噴射剤)等を具体的に含有するエアゾール組成物を使用して、「ミナミアオカメムシ(成虫)」に対する「害虫駆除効果(ノックダウン効果)」や「クサギカメムシ」に対する「害虫侵入予防効果」を確認することで実際に評価をしている(摘記(G)、摘記(H))。
そうすると、「ミナミアオカメムシ(成虫)」や「クサギカメムシ」に対して有用な「有効成分」及び「溶媒」の組合せの効果、すなわち、直接噴霧による防除ができ、液ダレなく害虫の侵入を防止できる効果は、一般的な説明に示された組合せにおいても、同様に奏すると推認し得るといえる。
したがって、本件発明の範囲内の「有効成分と対象害虫」、「溶媒」及び「噴射剤」、並びに、これらから構成される「原液」及び「エアゾール組成物」は、いずれも、実施例及び比較例といった具体例から当業者が一般化できる程度に発明の詳細な説明に記載され、かつ、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
ウ 対象物について
(ア) 害虫の場合
本件明細書【0057】(摘記(F))には、「噴霧パターンBで噴霧された際には噴霧粒子の平均粒子径が大きくなるので、直接害虫に噴霧した際に害虫に付着する有効成分の量が増え、さらに冷却効果も十分に得ることができ、優れた防除効果を発揮することができる。」との説明が記載されているところ、本件発明に該当する種々の「噴霧パターンB」(切替用ノズル未装着時(噴射ボタンのみ))で、害虫である「ミナミアオカメムシ(成虫)」に実際に噴霧した場合、いずれも「駆除効果(ノックダウン効果)」が確認されているから(摘記(G)表3)、「噴霧パターンB」は、「平均粒子径」及び「有効成分の量」の点から相対的に「害虫」の駆除に有効であって、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
(イ) 金属製又は樹脂製の場合
本件明細書【0014】(摘記(B))には、「金属製又は樹脂製の対象物に対して噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲となるように噴霧することで、対象物の表面に結合のし難い大きさで噴霧粒子を付着させることができ、対象物に均一に有効成分を付着できると推測される」との説明が記載され、同【0057】(摘記(F))には、「噴霧パターンAで噴霧された際には、処理対象物が金属製又は樹脂製の場合にエアゾール内容物を処理面に対して液ダレすることなく付着させることができ」るとの説明が記載されている。
さらに、本件発明の種々の「噴霧パターンA」(切替用ノズル装着時(切替用ノズル+噴射ボタン))で、「金属製の対象物」である「アルミニウム製窓枠」に実際に噴霧した場合、いずれも「液ダレ」が全く見られなかったこと(摘記(G)表2)及び「害虫侵入予防効果」(摘記(G)【0073】)を確認し、かつ、「窓枠」が「金属製又は樹脂製の対象物」である「アルミニウム」及び「ABS樹脂」の場合、害虫の侵入防止効果があるのに対して、木材である「ヒノキ」の場合は害虫の侵入が確認されている(摘記(H)表6)。
そうすると、「噴霧パターンA」は、「平均粒子径」の点から「液ダレ」が発生せず、かつ、一定程度「害虫侵入予防」にも有効であるといえるから、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
(ウ) まとめ
「害虫」を対象物とする「噴霧パターンB」及び「金属製又は樹脂製」を対象物とする「噴霧パターンA」は、いずれも当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
エ 粒子径切替機構について
「粒子径切替機構」は、「噴霧粒子の平均粒子径を切り替えることのできる」ものであって、「噴口の面積」、「噴射ノズルの流路(チューブ)の長さ」、「噴射ノズルの噴口の形状と個数」及び「噴口面積/ステム孔面積」などの一般的な説明が記載され(摘記(E))、実施例及び比較例では、ステム孔(大きさ、個数、面積)、ボタンの噴口(直径、個数、面積、噴口面積/ステム孔面積)、及び、粒子径切替機構であるノズル(チューブ内径、チューブ長さ、ノズル噴口直径、ノズル噴口数、ノズル面積、噴口面積/ステム孔面積)のサイズ等が具体的に記載されている(摘記(G)表1、摘記(H)表5)。
したがって、「粒子径切替機構」は、実施例及び比較例の具体的実験例、並びに、出願時の技術常識に照らせば、当業者が、本件発明の「噴霧パターンA」と「噴霧パターンB」を切り替えるように設定できるものといえるから、発明の詳細な説明に記載され、かつ、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。
オ サポート要件の判断のまとめ
以上のとおり、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(4) 申立人の主張について
ア 噴霧粒子の平均粒子径の数値範囲について
申立人は、(ア)害虫侵入駆除効果が確認されたのは、平均粒子径が粒径4.5μmの実施例3のみで、その他エアゾール製品の噴霧パターンAによる駆除効果は不明であり、(イ)本件明細書【0076】の「なお、切替用ノズル未装着の実施例1~5、比較例1~4においては、25cm離れた位置から窓枠に噴霧した時には、液ダレが生じる結果となった。」との記載、並びに、実施例6、実施例7及び比較例5の結果の差異を考慮すると、ノズルの有無が影響している可能性があり、(ウ)噴霧パターンBの粒子径範囲の課題解決に対する貢献等はほとんどなく、本件発明の「対象物に噴霧しても対してエアゾール内容物を液ダレすることなく均一に付着させることができ、かつ十分な害虫の侵入防止効果を発揮する」という課題が解決できない旨の主張をしている。
しかしながら、上記(3)ア~ウに説示したとおり、「噴霧パターンA」及び「噴霧パターンB」は、各対象物に対して、いずれも当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。更に補足すると、「噴霧パターンA」による駆除効果である害虫の「侵入防止効果」は、実際上「有効成分」に対応した効果であるといえるから、平均粒子径が粒径4.5μmに限らず、本件発明の範囲で奏する効果といえ、また、本件明細書に記載の表3の「切替用ノズル未装着」時の「平均粒子径」は、「50cm距離」における「噴霧パターンB」に該当するものであって、参考として示したにすぎない上記「なお書き」の「液ダレ」が生じた結果は、「25cm距離」における「平均粒子径」が不明であって、更に「切替用ノズル」という「粒子径切替機構」を用いた「噴霧パターンA」に該当するものでもないから、本件発明に該当しない当該事項によって、本件発明が本件発明の課題を解決できない理由にはならないし、「噴霧パターンB」の粒子径範囲の技術的意味は上記(3)ウ(ア)で説示したとおりであって、課題解決に寄与していることは明らかである。
したがって、申立人の主張は採用できない。
イ 対象害虫と有機溶剤について
申立人は、多種多様な害虫の全てに、本件明細書【0019】の推察が成り立つものとは、実施例及び比較例の結果(例えば、実施例6、7及び比較例5の結果)並びに明細書の記載から当業者が容易には想到できず、また、ミリスチン酸イソプロピル及びイソパラフィンの系1つの結果をもって、全ての有機溶剤が同様の効果を得るとも当業者が容易に想到できない旨の主張をしている。
しかしながら、上記(3)イ及びウに説示したとおり、本件明細書【0019】及び【0023】始めとする一般的な説明に記載の「対象害虫と有機溶剤」の組合せについて、害虫の直接噴霧による防除ができ、液ダレなく害虫の侵入を防止できる効果を、実施例の組合せ(「ミナミアオカメムシ(成虫)」や「クサギカメムシ」と、「ミリスチン酸イソプロピル」及び「イソパラフィン」の組合せ等)と同様に一定程度も奏することができないという合理的な理由はないから、本件発明の「対象害虫」及び「溶媒」である「有機溶剤」は、いずれも、発明の詳細な説明に記載され、かつ、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえるから、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 対象物と原液について
申立人は、本件発明の方法に包含される全てが、本件明細書において具体的に開示された「所定の成分からなる原液(シフルトリン等及びイソパラフィン)」と「所定の噴射剤(LPG及びDME)」とを「液ガス比5/95」で含むエアゾール剤を使用する方法と同等であるとは推認できないし、甲1及び甲2の記載によれば(摘記(1a)、(2a)及び(2b))、有機溶剤及び対象物によって、「液ダレ」に影響する「ぬれ性(接触角)」は変化するものであるから、ABS樹脂に対する結果をもって、樹脂全般においてミリスチン酸イソプロピル及びイソパラフィンを含む系以外でも同様の現象を示すとは当業者は推測できない旨の主張をしている。
しかしながら、本件発明の範囲において、「金属製又は樹脂製の対象物」又は「原液」に違いがあったとしても、上記(3)イ及び(3)ウ(イ)に説示したとおり、本件発明の「金属製又は樹脂製の対象物」及び「原液」の全般について、いずれも、発明の詳細な説明に記載され、かつ、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえるものであるから、申立人の主張は採用できない。
エ 粒子径切替機構について
申立人は、噴霧パターンAと噴霧パターンBの噴霧を同距離で比較した場合の結果、すなわち、表1及び表5に記載のノズルが、粒子を切り替えた否かの判断がつくものではなく、噴口及びステム孔の形状等の影響が不明であるから、当業者は具体的構造を容易に想到しえない旨の主張をしている。
しかしながら、本件明細書に記載の表1及び表5では、各例における「ステム」、「ボタン」及び「ノズル」の詳細なサイズ及び形状等が記載され、本件明細書【0064】の記載によれば、「噴霧パターンB(表3:切替用ノズル未装着)」が「ステム」及び「ボタン」を使用した噴霧であり、「噴霧パターンA(表2:切替用ノズル装着)」が「ステム」、「ボタン」及び「ノズル」を使用した噴霧であるものと理解され、「粒子径切替機構」である「ノズル」の有無により、粒子径が切り替えられていることは明らかであるから、申立人の「ノズルが粒子を切り替えた否かの判断がつかない」という前提が誤っており、申立人の主張は採用できない。
(5) 小括
したがって、申立理由2によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由3について
(1) 甲3について
ア 甲3には、その作成日が2025年4月10日であることを客観的に確認できる事項はなく、その提出日を印刷日とすることができるにとどまる。さらに、甲3の文書作成者と推測される「黒田」とは、自然人又は法人であるのかも含め、申立人との関係も不明で、甲3に記載された分析内容の分析能力の信頼性の裏付けとなる経歴も不明であり(摘記(3a))、証拠としての信頼性が担保される第三者公的機関に該当する者とはいえない。
そうすると、甲3は、作成日が2025年4月10日であるとはいえず、かつ、作成者の点で、その内容が真正である証拠として採用することができない。
イ 仮に、甲3の作成者が信頼性が高い第三者公的機関であったとしても、甲3には、「医薬品ゴキブリジェットプロ 秒殺+まちぶせ450mL」の入手について、その購入時期、購入場所及び保管方法の詳細が記載されておらず(摘記(3b))、さらに、同じ商品名又は同じ「JANコード」の商品であっても、改善・改良を重ねることで、製造時期等によって組成を変更することは一般的である。
そうすると、甲3において具体的に分析した商品の「JANコード」が、甲5及び甲6に記載の「JANコード」と一致するからといって、入手時期又は製造ロットの違いによって、溶媒又は成分比などに全く変更がないとはいえないから、甲3の分析結果が甲5及び甲6の「医薬品ゴキブリジェットプロ 秒殺+まちぶせ450mL」の分析結果と同じになるということはできない。
したがって、甲3の分析結果は、甲5及び甲6の「医薬品ゴキブリジェットプロ 秒殺+まちぶせ450mL」の分析結果として採用することはできない。
ウ まとめ
上記ア及びイのとおり、甲3に記載の分析結果にかかわらず、甲5又は甲6を補完するものとして、甲3の内容を公然実施発明の証拠として採用することはできない。
(2) 甲5及び甲6について
ア 同じ商品名又は同じ「JANコード」の商品であっても、改善・改良を重ねることで、製造時期等によって組成を変更することは一般的であるから、甲5及び甲6に記載の「JANコード」が一致するからといって、製造時期等の違いによって、溶媒又は成分比などに全く違いがないとはいえない。
しかしながら、甲6の「一般用医薬品・要指導医薬品 詳細表示」には、成分分量である「イミプロトリン」及び「メトキサジアゾン」の「分量」については記載されているものの、添加物については詳細な「分量」は記載されておらず(摘記(6b)及び(6c))、製造時期によって各成分に変更があったとしても、甲6に記載の範囲を逸脱する変更を施すほどの特段の理由は見当たらない。
イ さらに、甲6は、第三者公的機関である「独立行政法人 医薬品医療機器総合機構」によるものであって、かつ、その画像(摘記(6d))の「PDF」は、「(2014年11月22日)」と記載されているから(摘記(6a))、その「一般用医薬品・要指導医薬品 詳細表示」(摘記(6b)及び(6c))の「HTML」も同時期に収録されているものと認められ、その収録時期は、甲5の公知日の1年強~2年ほど前である。
ウ 甲5と甲6において、商品名である「医薬品ゴキブリジェットプロ 秒殺+まちぶせ450mL」と「JANコード」である「4901080420114」は、いずれも一致するものである(摘記(5a)及び(6d))。
エ 以上のことを考慮すると、甲6の印刷日は、本件特許出願の日の後の2025年4月16日であるものの、甲5と甲6の「医薬品ゴキブリジェットプロ 秒殺+まちぶせ450mL」は、同一の商品を意味するものと認められ、甲5及び甲6に基づいて、本件の特許出願日前の公然実施品を認定することができる。
(3) 公然実施発明5・6
甲5には、「医薬品ゴキブリジェットプロ 秒殺+まちぶせ450mL」が「ゴキブリ用エアゾール」であることが記載され、甲6には、「医薬品ゴキブリジェットプロ 秒殺+まちぶせ450mL」の「用法・用量」、「成分分量」及び「添加物」が記載されているから、以下に示す「公然実施発明5・6」が認定できる。
<公然実施発明5・6>
450mL中、成分分量として、0.5gのイミプロトリン及び0.41gのメトキサジアゾンを含有し、並びに、添加物として、無水ケイ酸、オレンジ油、無水エタノール、ミリスチン酸イソプロピル、1号灯油、LPG及びDMEを含有する、ゴキブリ用エアゾールであり、小型の害虫(チャバネゴキブリ、ノミ、トコジラミ(ナンキンムシ)及びイエダニ)には約1~2秒、大型の害虫(クロゴキブリ等)には約6~8秒、噴射レバーを引いて直接噴射するものであり、また、害虫の逃げ込んだ隙間には約1~2秒噴射し、隙間より出てきた害虫には更に前記の量を再度直接噴射するものであり、さらに、害虫の潜伏場所や出現頻度の高い場所に、約20cmの距離から帯状にじゅうぶん濡れる程度噴射塗布するものであり、使用量の目安が45~65秒/1m2程度である、以下の外観を有するゴキブリ用エアゾール。
[図:0001425810000017.jpg]
(4) 本件発明と公然実施発明5・6との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と公然実施発明5・6との対比
公然実施発明5・6の「イミプロトリン」及び「メトキサジアゾン」は、本件明細書【0018】によれば、いずれも本件発明1の「有効成分」に相当し、公然実施発明5・6の「無水エタノール」及び「1号灯油」は、本件明細書【0023】によれば、いずれも本件発明1の「有機溶剤」に相当し、公然実施発明5・6の「LPG」及び「DME」は、本件明細書【0038】によれば、いずれも本件発明1の「噴射剤」に相当し、公然実施発明5・6の「ゴキブリ用エアゾール」は、本件発明1の「エアゾール製品」に相当する。
また、公然実施発明5・6の「成分分量」及び「添加物」からなる組成物は、本件発明1の「エアゾール組成物」といえ、公然実施発明5・6の「成分分量」及び「添加物」からなる組成物から「LPG」及び「DME」を除外した組成物は、本件発明1の「原液」といえる。
さらに、公然実施発明5・6は、「害虫」自体に噴霧するだけでなく、害虫の潜伏場所や出現頻度の高い場所に、帯状に噴霧することも想定しているから、害虫以外の対象物及び害虫に噴霧して用いる害虫防除用のエアゾール製品といえ、エアゾールであるから、当然に組成物が耐圧容器に充填されてなるものである。
そして、公然実施発明5・6は、「噴射レバー」によって組成物を噴射するものであって、さらに、その外観及びスプレー缶に関する技術常識を考慮すると、公然実施発明5・6における
「
[図:0001425810000018.jpg]
」
は、本件発明1の「噴射ボタン」に相当し、公然実施発明5・6は、「耐圧容器がエアゾールバルブによりその開口を閉止」され、当該「エアゾールバルブ」に「噴射ボタン」が取り付けられたものであって、「エアゾールバルブ」は「ステム」を当然に有しているものと認められる。
そうすると、本件発明1と公然実施発明5・6とは、
「対象物及び害虫に噴霧して用いる害虫防除用のエアゾール製品であって、
有効成分と有機溶剤を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなり、
前記耐圧容器がエアゾールバルブによりその開口を閉止され、前記エアゾールバルブに噴射ボタンが取り付けられている、
エアゾール製品。」
である点で一致し、以下の相違点1~3で相違する。
相違点1:
害虫以外の対象物について、本件発明1は、金属製又は樹脂製であるのに対して、公然実施発明5・6は、害虫の潜伏場所や出現頻度の高い場所である点
相違点2:
本件発明1は、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤で1:99~30:70であるのに対して、公然実施発明5・6は、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は不明である点
相違点3:
本件発明1は、エアゾールバルブのステムのステム孔の面積に対する噴射ボタンの噴口の面積の比が1~30であり、前記噴射ボタンの噴口の面積は0.19~16mm2であり、前記噴射ボタンの噴口から50cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が30~120μmの範囲である噴霧パターンBで、害虫に対して噴霧されるのに対して、公然実施発明5・6は、害虫に対して噴霧される際の、エアゾールバルブのステムのステム孔の面積に対する噴射ボタンの噴口の面積の比、噴射ボタンの噴口の面積、及び、噴射ボタンの噴口から50cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)は不明である点
相違点4:
本件発明1は、噴霧粒子の平均粒子径を切り替える粒子径切替機構を備え、前記粒子径切替機構は噴射ボタンの噴口に取り付け及び取り外しが可能とされており、エアゾールバルブのステムのステム孔の面積に対する前記粒子径切替機構の噴口の面積の比が1~10であり、前記粒子径切替機構の噴口の面積は0.8~1.8mm2であり、前記粒子径切替機構の噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)が4~50μmの範囲である噴霧パターンAで、害虫以外の対象物に対して噴霧され、噴霧パターンAと噴霧パターンBとが切り替え可能であるのに対して、公然実施発明5・6は、粒子径切替機構を備えておらず、噴霧パターンを切り替えるものではなく、害虫と害虫以外に対して噴霧される際に、エアゾールバルブのステムのステム孔の面積に対する噴射ボタンの噴口の面積の比、噴射ボタンの噴口の面積、及び、噴射ボタンの噴口から25cm離れた距離における噴霧粒子の平均粒子径(D50)に変化はなく、かつ、これらの値は不明である点
(イ) 相違点についての検討
事案に鑑み、相違点3と相違点4を合わせて検討する。
公然実施発明5・6は、粒子径切替機構によって、噴霧パターンを切り替えるものではなく、当然に、害虫と害虫以外で噴霧パターンを変更することはできないものであって、噴霧時間及び噴口と対象物間の距離で、噴霧を調整するものにすぎない。
そして、公然実施発明5・6に、粒子径切替機構を示唆する事項は認められず、また、甲4には、一般的な噴霧距離に関する記載はあるものの(摘記(4a))、粒子径切替機構についての記載はない。
そうすると、公然実施発明5・6において、粒子径切替機構を設け、噴霧パターンを切り替える動機付けはなく、さらに、害虫と害虫以外で、相違点3及び4に係る本件発明1の噴霧パターンをそれぞれ採用することは、当業者が容易に想到することとはいえない。
そして、本件発明1は、「噴霧パターンB」では、直接害虫に噴霧した際に優れた防除効果を発揮し、「噴霧パターンA」では、金属製又は樹脂製の対象物に噴霧した際にエアゾール内容物を液ダレすることなく均一に付着させ、かつ十分な害虫の侵入防止効果を発揮するという、公然実施発明5・6の効果及び甲4の記載事項から、当業者が予測できない優れた効果を奏するものである。
(ウ) 相違点3及び4についての申立人の主張について
申立人は、「甲3号証および甲4号証を読み併せれば、甲3号証のエアゾール製品に関しノズルを取り付けた状態でサッシや壁面などに噴霧することを試みる動機付けを当業者に与えるものであり、さらに当業者はサッシや壁面上でエアゾール内容液を散在化することを目的にさらに噴霧パターンを調整しうることも当業者が容易になし得るはず」である旨の主張している。
しかしながら、甲4~甲6のいずれにも、粒子径切替機構を設け、噴霧パターンを切り替えることの動機付けはなく、さらに、対象物に応じた本件発明1の特定の噴霧パターンとすることは、当業者が容易に想到するものとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(エ) よって、本件発明1は、相違点1及び2について検討するまでもなく、甲5及び6に記載の「医薬品ゴキブリジェットプロ 秒殺+まちぶせ450mL」として公然実施をされた発明、並びに、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2及び3は、上記アと同様の理由により、甲5及び6に記載の「医薬品ゴキブリジェットプロ 秒殺+まちぶせ450mL」として公然実施をされた発明、並びに、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
(5) 小括
よって、申立理由3(進歩性)によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700433