特許異議申立
2024-700739
飛翔害虫の駆除剤及び駆除方法
- 審判番号
- 2024-700739
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-079050
- 登録番号
- 7428357
- 請求日
- 2024年08月06日
- 審決日
- 2025年03月25日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】フマキラー株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人前田特許事務所
- 【異議申立人】合同会社 SAS
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 齊藤 真由美
- 審判官 瀬良 聡機
- 分類
- P1651.113-Y (A01N) / P1651.121-Y (A01N) / P1651.536-Y (A01N) / P1651.537-Y (A01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7428357号発明「飛翔害虫の駆除剤及び駆除方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7428357号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7428357号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成29年4月12日の出願であって、令和6年1月29日に特許権の設定登録がされ、同年2月6日にその特許掲載公報が発行され、その後、同年8月6日に、その請求項1~4に係る発明の特許に対し、特許異議申立人 合同会社SAS(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、同年11月13日に特許異議申立書の手続補正書(方式)が提出されたものである。
そして、令和6年12月16日付けで当審合議体から取消理由が通知され、令和7年2月17日に意見書が提出されたものである。
第2 特許請求の範囲の記載
特許登録時の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明4」という。また、これらをまとめて「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
エアゾール容器に収容され、飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射される飛翔害虫の駆除剤において、
上記駆除剤(ただし、被膜形成能を有する共重合体と被膜形成能を有する樹脂を含む場合を除く。)は、 測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であり、
水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に上記駆除剤を滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下になることを特徴とする飛翔害虫の駆除剤。
【請求項2】
請求項1に記載の飛翔害虫の駆除剤において、
上記接触角が50゜以下であることを特徴とする飛翔害虫の駆除剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の飛翔害虫の駆除剤において、
上記駆除剤は流動パラフィンを含んでいることを特徴とする飛翔害虫の駆除剤。
【請求項4】
測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体からなり、水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下になる駆除剤(ただし、被膜形成能を有する共重合体と被膜形成能を有する樹脂を含む場合を除く。)を エアゾール容器に収容し、 当該エアゾール容器から飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射して付着させることを特徴とする飛翔害虫の駆除方法。」
第3 特許異議申立人が申し立てた理由及び取消理由通知で示した取消理由
1 特許異議申立人が申し立てた理由
(1)異議申立理由1(新規性)
請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証~甲第15号証の技術常識を参照すれば、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)異議申立理由2(進歩性)
請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明及び甲第5~15号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)異議申立理由3(実施可能要件、サポート要件、明確性要件)
請求項1~4に係る発明に関して、界面活性剤の濃度が本件特許の特性に大きく関与するところ、界面活性剤の濃度は一切記載がなく、実施例においていかなる割合で調製すれば、本件特許発明の特性を満たすのか、本件特許発明が過度な試行錯誤なく実施可能なように記載されていないし、明細書にサポートされておらず、本件特許発明の外縁も不明確である。
したがって、請求項1~4に係る発明は、その発明の詳細な説明の記載が当業者が容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないので、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、その特許請求の範囲の記載が発明の詳細な説明に記載されているとはいえず、明確ではないので、特許法第36条第6項第1号及び第2号に適合するものではないから、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
特許異議申立人は、下記の甲第16号証を異議申立理由3に関連する証拠として提出している。
(4)異義申立理由4(明確性要件)
本件特許発明の「被膜形成能」を有するか否かの判断基準は不明であるし、「共重合体と樹脂を含む場合」とは、「共重合体又は樹脂を含む場合」であるのか、「共重合体及び樹脂を含む場合」であるのか不明であるし、「樹脂」と「共重合体」と「ゴム」の関係や切り分けが不明であるので、請求項1~4に係る発明は明確ではなく、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないので、請求項1~4に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
特許異議申立人は、下記の甲第17号証を明確性要件の申立理由に関連する証拠として提出している。
記
甲第1号証:特開2005-60295号公報
甲第2号証:特開2008-19226号公報
甲第3号証:特開2008-255055号公報
甲第4号証:特開2010-77036号公報
甲第5号証:ウィキペディア、「蝋」[online]、インターネット、<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9D%8B>[令和6年8月2日出力]
甲第6号証:川崎弘司、固体表面のぬれ、応用物理、1973年、42巻、8号、p.825~832
甲第7号証:浅原照三 外1名、パラフィン面上における界面活性剤の接触角に関する研究、工業化学雑誌、1955年、58巻、11号、p.864~867
甲第8号証:吉田時行 外3名編、新版 界面活性剤ハンドブック、平成12年5月20日、工学図書、4版、p.212
甲第9号証:岩垂芳男 外1名、粘度法によるドデシルおよびテトラデシル硫酸ナトリウム水溶液のミセル構造の研究、日本化学雑誌、1969年、90巻、11号、p.1106~1111
甲第10号証:黒岩茂隆、非イオン性界面活性剤水溶液の流動複屈折、工業化学雑誌、1960年、63巻、11号、p.1968~1971
甲第11号証:高分子化学協会、イソパラフィンの粘度と分子量並に分子構造との関係、高分子化学、1946年、3巻、22-24号、p.116~120[online]、インターネット、<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/koron1944/3/22-24/_contents/-char/ja https://www.jstage.jst.go.jp/article/koron1944/5/49/5_49_262/_pdf>
甲第12号証:出光興産株式会社ホームページ、[online]、インターネット、<URL:https://www.idemitsu.com/jp/business/ipc/products/ip.html>[令和6年8月2日出力]
甲第13号証:特開2006-312593号公報
甲第14号証:加藤健司 外4名、混相流、2016年、29巻、5号、p.467~476
甲第15号証:ネオチオゾールの製品情報、三光化学工業株式会社のウェブページ、[online]、インターネット、<URL:https://sankohm.securesite.jp/SCIWP/wp-content/uploads/2023/05/NEO-CHIOZOL.pdf>
甲第16号証:上野洋子、市販用台所洗剤の使用量の考察、北海道教育大学紀要(第2部C)32巻、1号、p.1~8
甲第17号証:特願2023-121069号における令和6年5月24日付け拒絶理由通知
2 取消理由の概要
請求項1~4に係る発明の特許に対して、当審合議体が令和6年12月16日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
理由1:(実施可能要件)請求項1~4に係る発明に関して、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
本件特許発明の動粘度に調整することができる数種の羅列例示記載や接触角の測定方法や親油性との関係の一般的説明、一部の例を除き、成分組成が曖昧な実施例と、具体的成分組成が不明な【図2】の実施例の結果からでは、具体的にどのような成分をどの程度入れることによって、動粘度の値と両立させながら接触角を調整するのかについて記載がないため、本件特許発明を実施するためには、具体的に実験を繰り返して測定するほかなく、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤が必要であるといえる。
結果として、本件特許発明の駆除剤を過度な試行錯誤なく、その物が作れ、かつその物が使用できるとはいえない。
第4 当審合議体の判断
当審合議体は、当審合議体の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては、本件特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のI及びIIのとおりである。
I 取消理由について
1 理由(実施可能要件)について(請求項1~4について)
(1)発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には、特許請求の範囲の記載の実質的繰り返しを除いて、以下の事項が記載されている。
ア まず、【0002】~【0005】には、背景技術として、ピレスロイド系殺虫剤や飛翔害虫に粘着剤や接着剤を付着させて行動を阻害することによって駆除する従来技術の駆除剤について記載され、【0006】~【0009】には、ピレスロイド系殺虫剤を用いた一般的な製品や、ポリイソブチレンやゴム等の噴射剤を用いた従来技術の問題と、発明の課題について記載され、【0010】には、発明が所定以上の動粘度と親油性を有する駆除剤であることが解決手段であることが記載され、【0018】には、発明の効果が記載されている。
次に、【0019】には、図1及び図2の簡単な説明の記載があり、【0021】~【0028】には、駆除剤の動粘度、駆除剤が収容される容器、動粘度の測定方法、動粘度の調整、ビーワックスと昆虫の体表面の炭素数、接触角の測定方法、及び親油性と接触角の関係について、一般的記載がある。
イ 具体的記載としては、【0029】~【0044】には、実施例1~10、比較例1~4の駆除剤の動粘度、接触角、8種の供試虫に対する駆除剤付着後の落下の有無の結果が、【表1】に示され、実施例1~10と比較例1~4に対する結果の考察が示されている。
そして、図2には、実施例1~10、比較例1~4とは別に実施例及び比較例について、動粘度と接触角が測定された結果が示されている。
(2)判断
ア 判断の前提
発明の詳細な説明の記載が明細書の実施可能要件に適合するか否かは、当業者が、明細書及び図面に記載された発明の実施についての説明と出願時の技術常識に基づいて、請求項に係る発明を実施できるように理解できる必要があり、物の発明については、その物が明確に説明され、その物が作れ、かつその物が使用できることが必要であるとされている。
以上の前提で以下の判断を行う。
イ 実施可能要件の具体的判断
(ア)本件特許発明は、「エアゾール容器に収容され、飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射される飛翔害虫の駆除剤において、」「駆除剤」が「被膜形成能を有する共重合体と被膜形成能を有する樹脂を含む場合」でないことのほかに、「測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であ」ることと、「水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に上記駆除剤を滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下になる」ことを特定した物の発明であって、駆除剤の具体的特定事項が、駆除剤の2つの特性で記載されている発明である。
(イ)物の発明については、その物が明確に説明されていなければならないところ、本件特許発明は、駆除剤が物を特定するための具体的手段である成分や組成や形状で特定されず、特性のみで特定されているため、一見して物の構成が理解できるとはいえない。
しかしながら、【0025】には、「駆除剤の動粘度は、駆除剤に含まれる成分によって調整することができる。駆除剤は、たとえば流動パラフィン、食用油、エタノール、台所用洗剤、灯油、各種増粘剤等のいずれか1種または任意の複数種を含んでいてもよい。駆除剤の動粘度は5cst以上にするのが好ましく、より好ましくは6cst以上、さらに好ましいのは7cst以上である。」と記載され、本件特許発明の動粘度に調整することができる数種の例示記載がある。
また、接触角の調整に関しては、【0026】~【0028】には、「・・・駆除剤の親油性は上述したように接触角が70゜以下となるように設定されている。駆除剤の親油性の測定要領について図1に基づいて説明する。まず、平らなガラス板1を水平となるように配置し、ガラス板1の上面にビーワックス(蜜蝋)を加温しながら塗り広げて略均一厚さのビーワックス層2を形成する。ビーワックスの炭素数は25である。このビーワックスの炭素数は昆虫の体表面の炭素数(20~30)に近い。・・・ガラス板1の上面にビーワックス層2を形成した後、ビーワックス層2の上面に駆除剤3を1ml滴下する。駆除液がビーワックス層2の上面で広がりきったときの直径を3回測定する。そして、接触角θをθ/2法で求める。θ/2法は従来から周知の方法であることから詳細な説明は省略する。・・・つまり、ビーワックス層2の上面で駆除剤3が広く広がるということはビーワックスに対する親和性が高く(親油性が高く)、接触角θが小さくなり、一方、ビーワックス層2の上面で駆除剤3が球状に近い形状となって広がらないということはビーワックスに対する親和性が低く、接触角θが大きくなる。この原理を利用して駆除剤3の親油性を接触角θで表すことができる。」と記載され、ビーワックス層の炭素数や昆虫の体表面の炭素数の関係からビーワックス層を測定表面に用いることの技術的意義が説明され、接触角θと親和性の関係に基づく発現機構の説明がある。
そして、【0012】には、「この構成によれば、ビーワックス層に滴下したときの接触角が70゜以下になる親油性を駆除剤が有しているので、飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射して飛翔害虫に付着すると、飛翔害虫の体表面への馴染みが良好で、駆除剤が体表面に付着し易くなる。これにより、駆除剤が重りとなって飛翔害虫が早期に落下する。しかも、体表面に付着した駆除剤の動粘度が6cst以上であることから、飛翔害虫が羽ばたこうとしても駆除剤の粘性によって阻害され、このことによっても飛翔害虫の落下が早まる。よって、従来例の粘着剤や接着剤を使用することなく、飛翔害虫の行動を物理的に阻害することが可能になる。」と記載され、駆除剤の粘度と接触角を特定範囲にする構成による作用効果との関係が説明されている。
さらに、具体例の記載においては、表1の実施例1~10が示され、そのうち実施例2~4、6~9が本件特許発明に該当する実施例として示され、比較例1~4の記載があり、【図2】においては、動粘度と接触角の本件特許発明で特定された領域がイエバエを落下させ、特定領域外が落下させないことが示されている。
(ウ)したがって、駆除剤の動粘度の調整と接触角の調整の間にトレードオフの関係がある等、独立して調整できないという事情がない以上、上記各発明特定事項に対応した技術的意義の記載、本件特許発明の構成に基づく発現機構の説明及び作用効果の説明と、表1及び図2のそれぞれの実施例及び比較例の記載や結果を、特許権者の令和7年2月17日に提出された意見書の説明を考慮して総合的に理解すれば、本件特許発明を明確に理解できるし、具体的にどのような成分をどの程度入れるかについてや、動粘度の値と接触角の値の両立した調整をどのようにするのかについて記載はないものの、本件特許発明を実施するために、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤が必要であるとまでいえない。
(エ)以上のとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、請求項1~4に係る特許を受けようとする発明を、当業者が実施できる程度に、明確かつ十分に記載されていると評価できる。
3 取消理由の判断のまとめ
以上のとおり、取消理由通知で示した取消理由は、意見書による主張により解消しており、理由がない。
II 取消理由に採用しなかった特許異議申立人が申し立てた理由について
特許異議申立人の申し立てた理由のうち、異議申立理由3(実施可能要件、サポート要件、明確性要件)のうち、界面活性剤の濃度が本件特許の特性に大きく関与するところ、界面活性剤の濃度は一切記載がないため、記載要件を満たさないという点を除いて、いかなる割合で調製すれば、本件特許発明の特性を満たすのか、本件特許発明が過度な試行錯誤なく実施可能なように記載されていないし、明細書にサポートされておらず、本件特許発明の外縁も不明確である点は、令和6年12月16日付け取消理由通知書で通知した理由として実質的に採用されている。
以下に、取消理由に採用しなかった異議申立理由1(新規性)、異議申立理由2(進歩性)及び異議申立理由4(明確性要件)について述べる。
1 異議申立理由1(新規性)及び異議申立理由2(進歩性)について(請求項1~4について)
(1)甲第1~4号証及び甲第5~15号証の記載
ア 甲第1号証の記載
(1a)「【0001】
この発明は、ハエ、蚊、ゴキブリ等の害虫駆除に適したエアゾール殺虫剤に関するものである。」
(1b)「【0007】
この発明のエアゾール殺虫剤は、分子量が150~250の脂肪族炭化水素に溶け得る界面活性剤と、分子量が150~250の脂肪族炭化水素に溶け難い界面活性剤とを併用することを特徴とするものであり、これら界面活性剤を殺虫成分、水および溶剤を含む原液に配合したものとしている。
【0008】
前記脂肪族炭化水素に溶け得る界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(5)モノオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレン(5)イソステアリン酸グリセリン、ポリオキシエチレン(5)植物脂肪酸グリセリン、ポリオキシエチレン(10)ポリオキシプロピレン(20)デシルテトラデシルエーテルより選ばれる少なくとも一種が挙げられる。この発明のエアゾール殺虫剤に含有される前記脂肪族炭化水素に溶け得る界面活性剤の量は、通常0.05~20重量%、好ましくは0.1~5重量%とすることができる。
【0009】
前記脂肪族炭化水素に溶け難い界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(24)ポリオキシプロピレン(13)デシルテトラデシルエーテル、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(8EO)、イソステアリン酸ポリエチレングリコール(10EO)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10EO)、ポリオキシエチレン(30)テトラオレイン酸ソルビット、ポリオキシエチレン(40)テトラオレイン酸ソルビットより選ばれる少なくとも一種が挙げられる。この発明のエアゾール殺虫剤に含有される前記脂肪族炭化水素に溶け難い界面活性剤の量は、通常0.05~20重量%、好ましくは0.1~5重量%とすることができる。」
(1c)「【実施例1】
【0015】
下記処方の成分を混合して原液総量を120mlとし、これをエアゾール缶に入れ、LPG180mlを充填した。
(処方)
フタルスリン 0.45g
レスメトリン 0.06g
ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル 4g
ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエート 8g
ポリオキシエチレン(24)ポリオキシプロピレン(13)デシルテトラデシルエーテル g
水 20ml
1号灯油 適量
上記エアゾール殺虫剤は、原液の溶解状態が優れたものとなり、40°Cおよび5°Cで1週間経過後の乳化安定性においても優れたものとなった。
【実施例2】
【0016】
下記処方の成分を混合して原液総量を135mlとし、これをエアゾール缶に入れ、LPG165mlを充填した。
(処方)
イミプロトリン 1.0g
ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル 4.95g
ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエート 9.9g
ポリオキシエチレン(24)ポリオキシプロピレン(13)デシルテトラデシルエーテル 2.47g
水 22.5ml
1号灯油 適量
上記エアゾール殺虫剤は、原液の溶解状態が優れたものとなり、40°Cおよび5°Cで1週間経過後の乳化安定性においても優れたものとなった。
【実施例3】
【0017】
下記処方の成分を混合して原液総量を60mlとし、これをエアゾール缶に入れ、LPG240mlを充填した。
(処方)
フタルスリン 0.279g
レスメトリン 0.037g
ポリオキシエチレン(5)イソステアリン酸グリセリン 8.25g
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(10)デシルテトラデシルエーテル 2.5g
モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10EO) 1.25g
水 10ml
1号灯油 適量
上記エアゾール殺虫剤は、原液の溶解状態が優れたものとなり、40°Cおよび5°Cで1週間経過後の乳化安定性においても優れたものとなった。
【実施例4】
【0018】
下記処方の成分を混合して原液総量を60mlとし、これをエアゾール缶に入れ、LPG240mlを充填した。
(処方)
フタルスリン 0.279g
レスメトリン 0.037g
ポリオキシエチレン(5)イソステアリン酸グリセリン 8.25g
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(10)デシルテトラデシルエーテル 2.0g
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル 0.5g
モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10EO) 1.25g
水 10ml
1号灯油 適量
上記エアゾール殺虫剤は、原液の溶解状態が優れたものとなり、40°Cおよび5°Cで1週間経過後の乳化安定性においても優れたものとなった。
【実施例5】
【0019】
下記処方の成分を混合して原液総量を70mlとし、これをエアゾール缶に入れ、LPG230mlを充填した。
(処方)
イミプロトリン 0.333g
ポリオキシエチレン(5)イソステアリン酸グリセリン 7.29g
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(10)デシルテトラデシルエーテル 2.92g
モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10EO) 1.46g
水 11.7ml
1号灯油 適量
上記エアゾール殺虫剤は、原液の溶解状態が優れたものとなり、40°Cおよび5°Cで1週間経過後の乳化安定性においても優れたものとなった。
【実施例6】
【0020】
下記処方の成分を混合して原液総量を70mlとし、これをエアゾール缶に入れ、LPG230mlを充填した。
(処方)
イミプロトリン 0.333g
ポリオキシエチレン(5)イソステアリン酸グリセリ 7.29g
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(10)デシルテトラデシルエーテル 2.34g
ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(6)デシルテトラデシルエーテル 0.58g
モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10EO) 1.46g
水 11.7ml
1号灯油 適量
上記エアゾール殺虫剤は、原液の溶解状態が優れたものとなり、40°Cおよび5°Cで1週間経過後の乳化安定性においても優れたものとなった。
・・・
【0022】
上記エアゾール殺虫剤(比較例)とエアゾール殺虫剤(実施例5)とをそれぞれ、15×15cmの化粧板に30cmの距離から定量噴霧装置を用いて約2.5秒(噴射量:約4.3g)均一に噴霧した。噴霧1日後にクロゴキブリ雌成虫5頭を5分間接触させた。その後にクロゴキブリは、餌と水を入れた容器に移し、24時間後の致死数を観察して致死率(%)を求めた。」
イ 甲第2号証の記載
(2a)「【0001】
本発明は、殺虫原体を使用せずともコバエ類の防除に有用な組成物、およびこれを用いたスプレー製品およびコバエ類防除方法に関するものである。」
(2b)「【0004】
そこで本願発明は、殺虫原体や可燃性ガスを必要とせずともコバエ類に対して優れた防除効果を奏することができ、かつ使用者への安心感を与え得る新規なコバエ類防除用組成物および製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エタノール、界面活性剤、植物精油、還元澱粉糖化物より選ばれた少なくとも一種以上を有効成分として含有する組成物が、コバエ類に対する防除効果に優れていることを見出し本発明に至った。すなわち本発明は、以下の手段により達成されるものである。
(1)水もしくは水を含む溶媒に溶解または可溶化しうる界面活性剤、植物精油、エタノール、還元澱粉糖化物より選ばれた少なくとも一種以上を有効成分として含有することを特徴とするコバエ類防除用組成物。
(2)(1)に記載の組成物を噴霧器に充填したことを特徴とするコバエ類防除用スプレー製品。
(3)前記組成物がエタノールを45重量%以上配合したことを特徴とする(2)に記載のコバエ類防除用スプレー製品。
(4)噴霧粒子の体積平均粒子径d50が70~160μmであることを特徴とする(2)または(3)に記載のコバエ類防除用スプレー製品。
(5)前記噴霧器がエアゾールであることを特徴とする(2)から(4)のいずれかに記載のコバエ類防除用スプレー製品。
(6)圧縮ガスを噴射剤として含有することを特徴とする(5)に記載のコバエ類防除用スプレー製品。
(7)前記噴霧器が加圧式ハンドポンプであることを特徴とする(2)から(4)のいずれかに記載のコバエ類防除用スプレー製品。
(8)(2)から(7)のいずれかに記載のコバエ類防除用スプレー製品を、コバエ類に噴霧することを特徴とするコバエ類防除方法。」
(2c)「【0008】
本発明に用いる界面活性剤としては、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレィン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、POE-POPセチルエーテル、POE-POPラウリルエーテル、POE-POPステアリルエーテル、POE-POPデシルテトラデシルエーテル等のPOE-POP共重合体、PEGラウレート、PEGオレエート等のPEGアルキルエステル、POEラウリルエーテル等のPOE脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POE硬化ヒマシ油などが挙げられる。
含有量としては、組成物の全量に対して好ましくは0.01w/w%以上で実施を妨げない範囲の含有量であればよく、0.05~2w/w%が例示できる。」
(2d)「【0010】
本発明に用いる還元澱粉糖化物としては「あめんこ1 0 0」(ヤシマ産業製)、「エコピタ液剤」(協友アグリ(株))、等が挙げられるが、これら以外にも「シリーズHS」(林原商事(株))、 「ダイヤトール」(サンエイ糖化(株))等の食品原料などの還元澱粉糖化物であってもよい。
本発明では上記還元澱粉糖化物に代えてまたは併用して、グルコース、ガラクトース、マルトース、キシロース、フルクトース、ラクトース等の還元糖も用いることができる。還元澱粉糖化物の含有量としては、組成物の全量に対して0.01w/w%以上で実施を妨げない範囲の含有量であればよく、0.1~5w/w%が例示できる。
【0011】
本発明の組成物では、水もしくは水を含む溶媒を溶剤として挙げることができるが、水を含まない溶媒であってもよい。溶媒としては水;イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール等のグリコール類;ジエチルエーテル等のエーテル類;ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類、灯油等の炭化水素類が挙げられ、水と該溶媒を混合する場合の混合比は0:100~80:20(重量比)が例示できる。
・・・
【0014】
本発明は、上記組成物を噴霧器に充填してなるコバエ類防除用スプレー製品(以下、単に「スプレー製品」ともいう。)にも関する。
・・・
【0016】
噴霧器としては電動式散布器、エアゾール、加圧式ハンドポンプ等が挙げられ、エアゾール、加圧式ハンドポンプが好ましい。また、その噴霧器の噴射口がメカニカル・ブレークアップ機構を備えていることが好ましい。
【0017】
噴霧器がエアゾールの場合は、噴射剤として不燃性の窒素、二酸化炭素、空気などの圧縮ガス、ハロゲン化炭化水素類のうち難燃性であるHFC-152a、HFC-134aなどの液化ガス等を含有することが好ましい。また、噴射剤として可燃性ガスのジメチルエーテル、液化石油ガス、炭化水素類(プロパン、ブタン、ペンタン等)、なども例示できるが、本発明の組成物は、前記その他の可燃性ガスを実質的に含まなくとも十分な効果を有する。
上記の噴射剤1種又は2種以上を混合して用いることができ、エアゾール内容物の全量に対して10~90容量/容量%(以下、「v/v%」とも言う)、好ましくは30~70v/v%として含有するのがよい。
【0018】
本発明の防除対象となる害虫の種類としては、双翅目(ハエ目)昆虫のうちでコバエといわれる小型のハエ類、具体的にはショウジョウバエ類、ノミバエ類その他のコバエ類に対して優れた防除効果を奏する。なかでもショウジョウバエ類に含まれるショウジョウバエ科(キイロショウジョウバエ、クロショウジョウバエ等)、ノミバエ科(オオキモンノミバエ、コシアキノミバエ等)、キノコバエ科、クロバネキノコバエ科、ケバエ科、ニセケバエ科、ショクガバエ科(ハナアブ科)、チーズバエ科、チョウバエ科、ツヤホソバエ科、トゲハネバエ科、ハネフリバエ科、ハマベバエ科、ハヤトビバエ科、ミギワバエ科等が好ましい対象害虫として挙げられるが.これらに限定されるものではない。」
(2e)「
[図:0001422449000001.jpg]
[図:0001422449000002.jpg]
[図:0001422449000003.jpg]
[図:0001422449000004.jpg]
[図:0001422449000005.jpg]
[図:0001422449000006.jpg]
」
ウ 甲第3号証の記載
(3a)「【0001】
本発明は、有害生物防除用溶剤組成物及び該溶剤組成物を含む有害生物防除剤に関する。さらに詳しくいえば、本発明は、特にエアゾール用として好適に用いられ、噴霧から殺虫、殺ダニなどの効力を発現するまでの時間(ノックダウン時間)を短縮し得ると共に、臭気の問題を引き起こすことがない上、消防法で規定される危険物第4類第三石油類を満足することができる有害生物防除用溶剤組成物、及びこの溶剤組成物を含む、殺虫、殺ダニなどの有害生物防除剤、特にエアゾール剤に関するものである。」
(3b)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、特にエアゾール用として好適に用いられ、噴霧から殺虫、殺ダニなどの効力を発現するまでの時間(ノックダウン時間)を短縮し得ると共に、臭気の問題を引き起こすことがない上、消防法で規定される危険物第4類第三石油類を満足することができる有害生物防除用溶剤組成物、及びこの溶剤組成物を含む、殺虫、殺ダニなどの有害生物防除剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、イソパラフィンを含み、好ましくは引火点が70℃以上のパラフィン系溶剤と界面活性剤とを含有する溶剤組成物により、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)イソパラフィンを含むパラフィン系溶剤と界面活性剤とを含有することを特徴とする有害生物防除用溶剤組成物、
(2)パラフィン系溶剤の引火点が70℃以上である上記(1)に記載の有害生物防除用溶剤組成物、
(3)パラフィン系溶剤が、引火点70℃以上のイソパラフィンのみからなるもの、又は引火点70℃以上のイソパラフィンと引火点70℃未満のイソパラフィンとの混合物である上記(1)又は(2)に記載の有害生物防除用溶剤組成物、
(4)パラフィン系溶剤が、引火点70℃以上のイソパラフィンと引火点70℃未満のイソパラフィンとを、質量比100:0~80:20の割合で含む上記(3)に記載の有害生物防除用溶剤組成物、
(5)パラフィン系溶剤が、n-パラフィンとイソパラフィンとを含む上記(1)又は(2)に記載の有害生物防除用溶剤組成物、
(6)パラフィン系溶剤が、n-パラフィンと引火点70℃未満のイソパラフィンとの混合物である上記(5)に記載の有害生物防除用溶剤組成物、
(7)パラフィン系溶剤が、n-パラフィンと引火点70℃未満のイソパラフィンとを、質量比99.95:0.05~80:20の割合で含む上記(6)に記載の有害生物防除用溶剤組成物、
(8)界面活性剤の含有量が、組成物全量基準で0.05~0.25質量%である上記(1)~(7)のいずれかに記載の有害生物防除用溶剤組成物、
(9)界面活性剤が、一般式(I)
R1-O-(CH2CHR2O)n-H ・・・(I)
(式中、R1は炭素数8~30の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、R2は水素原子又はメチル基、nは平均で1~20の数を示す。)
で表される化合物である上記(1)~(8)のいずれかに記載の有害生物防除用溶剤組成物、
(10)エアゾール用として用いられる上記(1)~(9)のいずれかに記載の有害生物防除用溶剤組成物、
(11)(A)上記(1)~(10)のいずれかに記載の溶剤組成物、及び(B)有害生物防除成分を含有することを特徴とする有害生物防除剤、及び
(12)エアゾール形態である上記(11)に記載の有害生物防除剤、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特にエアゾール用として好適に用いられ、噴霧から殺虫、殺ダニなどの効力を発現するまでの時間(ノックダウン時間)を短縮し得ると共に、臭気の問題を引き起こすことがない上、消防法で規定される危険物第4類第三石油類を満足することができる有害生物防除用溶剤組成物、及びこの溶剤組成物を含む、殺虫、殺ダニなどの有害生物防除剤、特にエアゾール剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の有害生物防除用溶剤組成物(以下、単に溶剤組成物と称することがある。)は、イソパラフィンを含むパラフィン系溶剤と界面活性剤とを含有することを特徴とする。
[パラフィン系溶剤]
本発明の溶剤組成物を構成するパラフィン系溶剤は、イソパラフィンを含むものであって、引火点70℃以上のものであることが肝要である。
当該パラフィン系溶剤の引火点が70℃以上であれば、安全性の面で、消防法で規定される危険物第4類第三石油類(引火点:70℃以上200℃未満)を満足することができる。
イソパラフィンとしては、炭素数6~28程度の分岐状パラフィンを挙げることができ、引火点が70℃以上のイソパラフィン(以下、高引火点イソパラフィンと称することがある。)の炭素数は10~28程度であり、引火点が70℃未満のイソパラフィン(以下、低引火点イソパラフィンと称することがある。)は、炭素数6~20程度である。
引火点が70℃以上の高引火点イソパラフィンとしては、例えばIPソルベント-2028、IPソルベント-2835、IPクリーン-HX(商品名、出光興産株式会社製)、アイソパーL,アイソパーM(商品名、エクソンモービルケミカル社製)、シェルゾールTM(商品名、シェルケミカルズ社製)などが挙げられ、さらに好ましくはIPソルベント-2028、IPクリーン-HX、アイソパーL、シェルゾールTMが挙げられる。これらは単一組成であっても、複数成分の混合物であってもよい。また、構成成分として引火点が70℃未満の成分が含まれてもよい。
【0008】
一方、引火点が70℃未満の低引火点イソパラフィンとしては、例えばIPソルベント-1016、IPソルベント-1620、IPクリーン-LX(商品名、出光興産株式会社製)、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH(商品名、エクソンモービルケミカル社製)、シェルゾールTG、シェルゾールTK(商品名、シェルケミカルズ社製)などが挙げられる。特に引火性の観点から消防法第四類第二石油類である引火点が21℃以上70℃未満のIPソルベント-1620、IPクリーン-LX、アイソパーG、アイソパーH、シェルゾールTGが好ましい。これらは単一組成であっても、複数成分の混合物であっても良く、複数成分の混合物の場合は、構成成分に引火点が70℃以上の成分が含まれてもよい。
当該パラフィン系溶剤としては、引火点が70℃以上の高引火点イソパラフィンのみからなるもの、又は引火点が70℃以上の高引火点イソパラフィンと引火点が70℃未満の低引火点イソパラフィンとの混合物であって、引火点が70℃以上のものを好ましく挙げることができる。高引火点イソパラフィンと低引火点イソパラフィンとの混合割合は、混合物の引火点が70℃以上であればよく、質量比で100:0~80:20であることが好ましい。高引火点イソパラフィンと低引火点イソパラフィンとの含有割合が上記範囲にあれば、当該パラフィン系溶剤の引火点を70℃以上にすることができ、安全性の観点から好ましい。
【0009】
また、当該パラフィン系溶剤としては、n-パラフィンと引火点が70℃未満の低引火点イソパラフィンとの混合物であって、引火点が70℃以上であるものを用いることもできる。前記n-パラフィンとしては、炭素数6~16程度の直鎖状パラフィンであって、単独あるいは混合物で引火点が70℃以上のものを挙げることができる。
この場合、n-パラフィンと低引火点イソパラフィンとの含有割合は、質量比で99.95:0.05~80:20であることが好ましい。n-パラフィンと低引火点イソパラフィンとの含有割合が上記範囲にあれば、当該パラフィン系溶剤の引火点を70℃以上とすることができ、安全性の観点から好ましい。
当該パラフィン系溶剤には、本発明の効果が損なわれない範囲で、殺虫エアゾール組成物などに、通常使用されるその他の溶剤、例えばナフテン系、ケロシン、芳香族炭化水素系、アルコール系、エステル系、ケトン系、エーテルアルコール系溶剤などを適宜含有させることができる。
【0010】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、一般的な界面活性剤であるアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、さらにはフッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、水中でアニオン性を示す基を有するもの、具体的にはスルホン酸を形成する基(以下、スルホン酸基と記す。)、硫酸エステルを形成する基(以下、硫酸エステル基と記す。) 、リン酸エステルを形成する基(以下、リン酸エステル基と記す。)、カルボン酸を形成する基(以下、カルボン酸基と記す。)を有するもの等が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物として、具体的にはアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、アルキレンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、フェノールスルホン酸ホルマリン縮合物、フェニルフェノールスルホン酸ホルマリン縮合物等の分子構造中にアニオン系官能基を2つ以上有する化合物、アルキルベンゼンスルホン酸、ジアルキルサクシネートスルホン酸、モノアルキルサクシネートスルホン酸、アルキルフェノキシエトキシエチルスルホン酸等の化合物又はその塩等が挙げられ、硫酸エステル基を有する化合物としてアルキルメチルタウリン、アシルメチルタウリン、脂肪酸メチルタウリン等のメチルタウリン類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル硫酸エステル等の化合物又はその塩、リン酸エステル基を有する化合物としてはポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸等の化合物またはその塩、カルボン酸基を有する化合物としてはアシルサルコシン、脂肪酸サルコシン等のサルコシン類化合物、やし油脂肪酸、オレイン酸等の脂肪酸類化合物またはその塩、更に分子構造中に異なった2つのアニオン系官能基を有する化合物としてスルホン酸基及びカルボン酸基を有する化合物であるアルキルスルホコハク酸、ポリオキシアルキレンアルキルスルホコハク酸等の化合物またはその塩が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。」
(3c)「【0013】
次に、本発明の有害生物防除剤について説明する。
本発明の有害生物防除剤は、(A)前述した本発明の溶剤組成物、及び(B)有害生物防除成分を含有することを特徴とするものであり、特にエアゾール形態であることが好ましい。
[噴射剤]
本発明の有害生物防除剤がエアゾール形態である場合、噴射剤が用いられる。この噴射剤としては特に制限はなく、従来殺虫エアゾール組成物などに噴射剤として用いられている公知のものの中から、任意のものを適宜選択することができる。このような噴射剤としては、例えば液化石油ガス、ジメチルエーテル、ジフルオロモノクロロエタンなどの液化ガス;二酸化炭素、窒素、圧縮空気などの圧縮ガスなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
[有害生物防除成分]
本発明の有害生物防除剤において、(B)成分として用いられる有害生物防除成分としては、例えば殺虫・殺ダニ剤、忌避剤、殺菌剤などが挙げられる。
殺虫・殺ダニ剤としては、例えば天然ピレトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、プラレトリン、トランスフルトリン、イミプロトリン、エンペントリン、エトフェンプロックス等のピレスロイド系化合物;プロポクサー、カルバリル等のカーバメイト系化合物;フェニトロチオン、DDVP等の有機リン系化合物;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物;フィプロニル等のピラゾール系化合物;フィットンチッド、ハッカ油、オレンジ油、桂皮油、丁子油等の精油類;IBTA;IBTE;四級アンモニウム塩;サリチル酸ベンジル等が挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
忌避剤としては、例えばジエチルメタトルアミド、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソールなどが、殺菌剤としては、例えばPCMX、IPBCなどが挙げられる。
本発明の有害生物防除剤には、所望により消臭剤や芳香剤、酸化防止剤などを含有させることができる。消臭剤としては、例えばラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトネート、カテキンなどが、芳香剤としては、例えばバラ油、ラベンダー油、ハッカ油などの精油;ピネン、リモネン、リナロール、メントール、オイゲノールなどの香料等を挙げることができる。
【0015】
[防除し得る有害生物]
本発明の有害生物防除剤を施用することにより、防除し得る有害生物としては、下記のものが挙げられる。
衛生害虫としては、イエバエ、オオイエバエ等のハエ類、アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエカ、ヒトスジシマカ等のカ類、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ等のゴキブリ類、ケナガコナダニ、コナヒョウヒダニ、クワガタツメダニ、ミナミツメダニ等の屋内ダニ類、コロモジラミ等のシラミ類が挙げられる。木材害虫としては、ヤマトシロアリ、イエシロアリ等のシロアリ類、キクイムシ類等が挙げられる。
不快害虫としては、ユスリカ類、チョウバエ類、アリ類、ハチ類等が挙げられる。衣料害虫としては、イガ、コイガ等が挙げられる。動物害虫としては、ネコノミ、イヌノミ、ヒトノミ、ケオプスネズミノミ等のノミ類、フタトゲチマダニ、ヤマトマダニ、オウシマダニ等のマダニ類、ウシジラミ等のシラミ類等が挙げられる。
農業害虫としては、モモアカアブラムシ等のアブラムシ類、アオクサカメムシ等のカメムシ類、ヒメトビウンカ等のウンカ類、シルバーリーフコナジラミ等のコナジラミ類等が挙げられる。
このような有害生物の防除においては、本発明の有害生物防除剤を有害生物に直接噴霧または噴射したり、有害生物がいる密閉空間や通り道、更には窓や壁、網戸等、あるいは有害生物の巣などの生息地等の種々の有害生物の生息域に噴霧あるいは噴射することにより施用することができる。」
エ 甲第4号証の記載
(4a)「【0001】
本発明は、噴射した際に噴射物が対象物に付着しやすく、対象物を蒸発潜熱により冷却させるエアゾール組成物、特には、対象物を虫とした場合に蒸発潜熱により虫を致死させるエアゾール組成物に関する。」
(4b)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアゾールからの噴射物が対象物を持続的に冷却させるためには、蒸発(気化)して対象物の熱を奪う成分(以降、「冷却成分」と表記する場合あり)を対象物に付着させる必要がある。また、特許文献4では、冷却成分としてペンタンを使用することを開示しているが、ペンタンは強燃性であり、目、皮膚、気道を刺激するので、人体に対する安全面から代替物質が提供されることが望まれている。また、冷却をコンセプトとする殺虫剤は、殺虫剤の使用者に火災とは正反対のイメージを抱かせることもあり、使用者の火に対する警戒感を低減させやすい。
【0006】
他方、エアゾールからの噴射物は、大気中に放出されることになるので、エアゾール組成物に含まれる化合物には環境負荷の小さい、例えば、GWP値の低いものを使用する必要がある。特許文献2及び3では、噴射剤として低GWP値を有するテトラフルオロプロペンを含むエアゾールが開示されている。この場合、噴射剤の気化時に蒸発潜熱により噴射される対象物の周囲環境が冷却されることがあっても、冷却成分の対象物への付着が十分ではなく、対象物を持続的に冷却させることが難しく、対象物が虫の場合は、十分な殺虫効果を得ることが難しい。
【0007】
本発明は、エアゾール組成物の一成分にテトラフルオロプロペンを使用し、さらには人体への安全の高い冷却成分を含み、且つエアゾール組成物からの噴射物を難燃あるいは不燃性としやすい殺虫用エアゾール組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエアゾール組成物は、テトラフルオロプロペン(以下、「A成分」と表記することがある)と、水及び界面活性剤(以下、B成分と表記することがある)とを含むことを特徴とする。」
(4c)「【0011】
前記A成分は、エアゾール組成物から蒸発しようとする力(蒸気圧)が大きいので、前記B成分がテトラフルオロプロペンに押し出されるようにして対象物に微小な液滴状で対象物に付着する。そして、テトラフルオロプロペン(A成分)が気化していくことによって、水を凍結するとともに対象物から熱を奪い、対象物を冷却する。B成分中の界面活性剤は、A成分との相溶性を高めるとともに、水の対象物への付着性を向上させ、付着後に残存するA成分とともに蒸発しやすくさせる機能を担うことにより、冷却効果を高めていくものと考えられる。
【0012】
また、本発明のB成分は、噴射の対象物又は非対象物(噴射時に目標物と違って非意図的に噴射されてしまった物)に付着後汚染しにくく、例えば、非特許文献4のようにペンタンを使用した場合と比べて対象物又は非対象物の汚染少なくなり好ましい。加えて、引火も生じないことから、エアゾールの安全に大きく寄与する。
【0013】
さらには、本発明のエアゾール組成物は、エアゾール組成物からの噴射物の対象物への付着性を向上させるために、さらに、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびα-澱粉からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むものとしてもよい。これらの樹脂はいずれも生分解性が高く環境に対する負荷が小さいものである。
・・・
【0019】
B成分中の界面活性剤には、例えば、組成物中に0.05~12質量%、好ましくは0.1~10質量%含まれてもよい。界面活性剤には、非イオン性のもの、陰イオン性のもの、陽イオン性のもの、両イオン性のものが使用され、例えば、脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル、ポリエーテル系変性シリコン、ポリグリセリン系変性シリコン等が例示される。
【0020】
本発明のエアゾール組成物に含まれることのあるポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、α-澱粉(以下、これらを「C成分」と表記する場合がある)は、エアゾール組成物中に0.05~20質量%、好ましくは0.5~10質量%含ませてもよい。C成分が20質量%超では、エアゾール組成物からの噴射物が吹き付けられ対象物や、意図せずに吹き付けられた物に、C成分が過度に付着し、噴射物が乾燥した後清掃が必要となることや、エアゾール缶の噴射ノズルが閉塞することがある。
・・・
【0026】
本発明の前記に挙げた成分の他に本発明の効果を損なわない範囲で、溶剤、香料、消臭剤、着色剤等の添加剤が加えられることがある。また、噴射対象物が敏捷性の大きな虫等の場合、殺虫効果を増強するために本発明の殺虫用エアゾール組成物は、さらに殺虫薬剤等を微量含むことがある。
・・・
【0031】
噴射対象物が虫の場合、虫の具体例としては、蚊、ハエ、蛾、虻等の飛翔性虫、ゴキブリ、ダニ、蚤、虱、蟻等の家屋害虫、コクゾウムシ、コクヌスト等の貯穀害虫等が挙げられる。」
(4d)「【実施例】
【0033】
表1に示した組成の各成分を噴射口径が1.58mmφ、噴射量が2.65g/秒のエアゾール容器に充填してエアゾールを調製し、以下の評価を行った。
【0034】
<評価1>
金網(4mm目)で作製された直径45mm、高さ30mmの円筒にクロゴキブリの雌成虫を1匹放入れ、同じ金網で作製された蓋をする。ゴキブリに対して50~60cmの距離からクロゴキブリに向けてエアゾールを5秒間噴射した。そして、これを5回繰り返す。5回ともクロゴキブリが致死したものを「3」、4~1回クロゴキブリが致死したものを「2」、5回ともクロゴキブリの致死がなかったもののクロゴキブリの行動が明らかに鈍化したものを「1」、クロゴキブリが致死せず、しかもクロゴキブリの行動に明らかな鈍化が見られなかったものを「0」として評価した。結果を表1に合わせて示す。
・・・
【0036】
<評価3>
エアゾールの噴射状態を観察した。その結果を合わせて表1に示す。
【0037】
【表1】
[図:0001422449000007.jpg]
」
オ 甲第5号証の記載
(5a)「
[図:0001422449000008.jpg]
[図:0001422449000009.jpg]
」
カ 甲第6号証の記載
(6a)「
[図:0001422449000010.jpg]
キ 甲第7号証の記載
(7a)「
[図:0001422449000011.jpg]
」
(7b)「
[図:0001422449000012.jpg]
」
(7c)「
[図:0001422449000013.jpg]
」
ク 甲第8号証の記載
(8a)「
[図:0001422449000014.jpg]
」
ケ 甲第9号証の記載
(9a)「
[図:0001422449000015.jpg]
」
(9b)「
[図:0001422449000016.jpg]
」
コ 甲第10号証の記載
(10a)「
[図:0001422449000017.jpg]
」
サ 甲第11号証の記載
(11a)「
[図:0001422449000018.jpg]
[図:0001422449000019.jpg]
」
シ 甲第12号証の記載
(12a)「
[図:0001422449000020.jpg]
・・・
[図:0001422449000021.jpg]
[図:0001422449000022.jpg]
・・・
[図:0001422449000023.jpg]
」
ス 甲第13号証の記載
(13a)「【0002】
従来、育毛剤、ヘアトニック、ヘアローションやスキンローションなどの水を基剤とする化粧料においては、多くの場合、エタノールが配合され、水ーエタノール系化粧料として利用されている。その中でも、清涼感の付与、油溶成分の可溶化、防腐、経皮吸収性の向上などを目的として、エタノールが20重量%以上と高濃度配合されているものがある。しかし、これらのエタノール高濃度含有の化粧料は多くの場合保形性を有さない、もしくは保形性が小さいものであるため目的部位に塗布しようとする際にたれ落ちやすく、塗布が困難な上、万が一目に入った場合には激しい刺激があるという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するために増粘剤を配合し粘度を上げてたれ落ちにくくしようとすることが行われている。しかしながら、エタノールを高濃度含有するため、一般的に化粧料に用いられる増粘剤を通常の方法で使用したのでは、使用感を悪化せずに、経時で一定の粘度を維持することが困難であった。すなわち、一般にエタノールの配合は増粘剤の増粘効果を低下させるため、高濃度のエタノールを配合する系においては、エタノールを配合しない系よりも高濃度の増粘剤を使用する必要がある。それによって、使用感が悪化したり、経時において粘度が増加又は減少することがあった。
【0004】
例えば、カルボキシビニルポリマーを増粘剤として使用した場合は経時での粘度変化は防げるものの、べたつきがあり使用感が著しく低下する。一方、例えばキサンタンガムを増粘剤として用いた場合には、使用感は良好であるものの経時で粘度が増加し、さらにゲル化し、安定性を確保できなかった。
【0005】
エタノールを高濃度含む水系の製剤で、良好な使用感と粘度安定性を満たすものとしては、例えば特開2001-261550号公報に使用後の感触が良好で安定なゲル状手指殺菌洗浄剤組成物が開示されている。しかしながら開示の発明では界面活性剤、殺菌剤、保湿剤、水溶性増粘剤、保湿剤をそれぞれ所定の濃度配合しなければ効果を達成できない上、殺菌洗浄剤と化粧料は洗い流すか否かという使用方法の点において異なっており、化粧料として使用できるものではない。
【0006】
また、特開2004-339092号公報および特開2004-339096号公報において、ベタツキがなく経時安定性に優れたエタノール含有の水系化粧料がいずれも開示されているが、ジトリメチロールのエステル化合物やエリスリトールなどの特定の成分と、非イオン性界面活性剤、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを各所定濃度配合しなければ効果を達成できない。また、開示の発明ではエタノールの含有量の上限が40質量%であり、それ以上のエタノール濃度での使用感および経時安定性は達成されていない。
【0007】
特開2001-261550号公報特開2004-339092号公報特開2004-339096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、エタノールを高濃度配合した化粧料において、良好な使用感と粘度の維持を同時に満足させるような化粧料が望まれていた。
【0009】
本発明は、上記課題を解決すべく、良好な使用感と粘度の維持を同時に満たす水-エタノール系化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討の結果、美容液などで保湿剤として使用されるキトサン誘導体と増粘剤であるキサンタンガムを配合することによって、エタノールが20重量%以上含有する水-エタノール系でも増粘し、経時でゲル化せず一定の粘性を保つことができ、かつべたつかず使用感にも優れる化粧料を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。」
セ 甲第14号証の記載
(14a)「
[図:0001422449000024.jpg]
」
(14b)「
[図:0001422449000025.jpg]
」
ソ 甲第15号証の記載
(15a)「
[図:0001422449000026.jpg]
・・・
[図:0001422449000027.jpg]
」(NEO-CHIOZOLの製品情報の特徴と主要用途の項目)
(2)甲第1号証~甲第4号証に記載された発明
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、実施例1として、原液120mlをエアゾール缶に入れ、LPG180mlを充填したエアゾール殺虫剤において、フタルスリン0.45g、レスメトリン0.06g、ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル4g、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエート8g、ポリオキシエチレン(24)ポリオキシプロピレン(13)デシルテトラデシルエーテル2g、水20ml、1号灯油適量の処方で混合したものが記載されているので(摘記(1c))、実施例1に係る発明として、以下の発明が認定できるといえる。
「フタルスリン0.45g、レスメトリン0.06g、ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル4g、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエート8g、ポリオキシエチレン(24)ポリオキシプロピレン(13)デシルテトラデシルエーテル2g、水20ml、1号灯油適量の処方で混合した原液120mlをエアゾール缶に入れ、LPG180mlを充填したエアゾール殺虫剤」(以下「甲1発明」という。)
また、甲第1号証には、上記エアゾール殺虫剤を噴射する害虫駆除方法が記載されているので(摘記(1a)及び摘記(1c))、以下の発明も認定できるといえる。
「フタルスリン0.45g、レスメトリン0.06g、ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル4g、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエート8g、ポリオキシエチレン(24)ポリオキシプロピレン(13)デシルテトラデシルエーテル2g、水20ml、1号灯油適量の処方で混合した原液120mlをエアゾール缶に入れ、LPG180mlを充填したエアゾール殺虫剤を噴射する害虫駆除方法」(以下「甲1方法発明」という。)
イ 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、コバエ類の防除に有用な組成物を用いたスプレー製品に関して(摘記(2a))、組成物をエアゾール容器に充填し検体とした試験例1と同様にしてエアゾール検体として行った実施例7において、モノラウリン酸デカグリセリル0.1w/w%、オレンジオイル0.1w/w%、95%エタノール47.27w/w%、イオン交換水52.53w/w%からなるを調製したことが記載されているので(摘記(2e))、実施例7に係る発明として、以下の発明が認定できるといえる。
「モノラウリン酸デカグリセリル0.1w/w%、オレンジオイル0.1w/w%、95%エタノール47.27w/w%、イオン交換水52.53w/w%からなる組成物を調製し、エアゾール容器に充填した、コバエ類の防除に有用な該組成物を用いたスプレー製品」(以下「甲2発明」という。)
また、甲第2号証には、上記組成物を用いた防除方法が記載されているので(摘記(2a))、以下の発明も認定できるといえる。
「モノラウリン酸デカグリセリル0.1w/w%、オレンジオイル0.1w/w%、95%エタノール47.27w/w%、イオン交換水52.53w/w%からなる組成物を調製し、エアゾール容器に充填した、コバエ類の防除に有用な該組成物を用いたスプレー製品を用いた防除方法」(以下「甲2方法発明」という。)
ウ 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証には、エアゾール用に好適に用いられる溶剤組成物を含む有害生物防除剤に関して(摘記(3a))、引火点が70℃以上であるイソパラフィンを含むパラフィン系溶剤と界面活性剤とを含有する有害生物防除用溶剤組成物が記載されているので(摘記(3b))、以下の発明が認定できるといえる。
「引火点が70℃以上であるイソパラフィンを含むパラフィン系溶剤と界面活性剤とを含有する有害生物防除用溶剤組成物を含むエアゾール用に好適に用いられる有害生物防除剤」(以下「甲3発明」という。)
また、甲第3号証には、上記防除剤を有害生物に噴射することが記載されているので(摘記(3c))、以下の発明も認定できるといえる。
「引火点が70℃以上であるイソパラフィンを含むパラフィン系溶剤と界面活性剤とを含有する有害生物防除用溶剤組成物を含むエアゾール用に好適に用いられる有害生物防除剤を有害生物に噴射する方法」(以下「甲3方法発明」という。)
エ 甲第4号証に記載された発明
甲第4号証には、噴射した際に噴射物が対象物である虫に付着しやすいエアゾール組成物に関して(摘記(4a))、実施例1には、噴射剤であるA成分として1234ze(E)が90質量%、B成分として、界面活性剤であるPOEが5質量%、水が5質量%含まれたエアゾール組成物を調製し、エアゾール容器に充填しエアゾールを調製したことが記載されているので(摘記(4d))、以下の発明が認定できるといえる。
「噴射剤であるA成分として1234ze(E)が90質量%、B成分として、界面活性剤であるPOEが5質量%、水が5質量%含まれた、噴射した際に噴射物が対象物である虫に付着しやすいエアゾール容器に充填したエアゾール」(以下「甲4発明」という。)
また、甲第4号証には、上記エアゾールを対象物に噴射することが記載されているので(摘記(3c))、以下の発明も認定できるといえる。
「噴射剤であるA成分として1234ze(E)が90質量%、B成分として、界面活性剤であるPOEが5質量%、水が5質量%含まれた、噴射した際に噴射物が対象物である虫に付着しやすいエアゾールを噴射する方法」(以下「甲4方法発明」という。)
(3)本件特許発明1について
(3-1)甲第1号証に記載された発明との対比判断
ア 甲1発明との対比
甲1発明の「エアゾール」は噴射されることは自明であるから、「エアゾール缶」及び「LPG180mlを充填したエアゾール殺虫剤」は、それぞれ、本件特許発明1の「エアゾール容器」及び「噴射される」「害虫の駆除剤」に相当するので、甲1発明の「原液120mlをエアゾール缶に入れ、LPG180mlを充填したエアゾール殺虫剤」は、本件特許発明1の「エアゾール容器に収容され、飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射される飛翔害虫の駆除剤」と、「エアゾール容器に収容され、」「噴射される」「害虫を対象とした害虫の駆除剤」という点で共通している。
イ 一致点・相違点の認定
以上のことから、本件特許発明1と甲1発明は、
「エアゾール容器に収容され、噴射される害虫を対象とした害虫の駆除剤。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1-1:害虫の駆除剤に関して、本件特許発明1は、「飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射される飛翔害虫の駆除剤」との特定事項を有しているのに対して、甲1発明は、害虫の種類や噴射の態様について特定されていない点。
相違点2-1:駆除剤の特性に関して、本件特許発明1は、「上記駆除剤(ただし、被膜形成能を有する共重合体と被膜形成能を有する樹脂を含む場合を除く。)は、 測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であり、水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に上記駆除剤を滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下になる」と特定されているのに対して、甲1発明は、「フタルスリン0.45g、レスメトリン0.06g、ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル4g、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエート8g、ポリオキシエチレン(24)ポリオキシプロピレン(13)デシルテトラデシルエーテル2g、水20ml、1号灯油適量の処方で混合した原液120mlをエアゾール缶に入れ、LPG180mlを充填した」ものであるが、その特性は明らかでない点。
ウ 相違点の判断
事案に鑑み、相違点2-1から検討する。
(ア)甲1発明においては、その殺虫剤に、被膜形成能を有する共重合体と被膜形成能を有する樹脂を含まれていないといえるが、「測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であ」ることも、「水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に上記駆除剤を滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下になる」こともいずれも特定されていないし、本願出願時の技術常識から明らかなことともいえない。
また、甲第5号証~甲第8号証を参照しても、甲第5号証には、蜜蝋(ビーズワックス)の技術的説明があり、甲第6号証には、固体表面のぬれに関して、パラフィンと水の接触角が103度又は106.6度であった実験結果があり、甲第7号証には、パラフィン面上における界面活性剤の接触角に関して、界面活性剤濃度とパラフィン面上の接触角の関係について、いくつか特定の化合物を用いた結果が示され、甲第8号証には、界面活性剤の各種水溶液のパラフィンワックスに対する接触角等に関する表が示されているだけで、「水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に上記駆除剤を滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下になる」ことに関して、甲第1号証に記載されているに等しいとはいえない。
また、甲第9号証~甲第15号証を参照しても、甲第9号証には、粘度法によるドデシル及びテトラデシル硫酸ナトリウム水溶液のミセル構造の研究に関して、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度とSDS水溶液の25℃における相対粘度の関係が示され、甲第10号証には、非イオン性界面活性剤水溶液の流動複屈折率に関して、溶液の濃度がある限界以上に達するとミセルを形成すること及び相対粘度の濃度による変化が示され、甲第11号証には、イソパラフィンの種々の温度における動粘度の値が示され、甲第12号証には、イソパラフィン系溶剤であるIPソルベントに関して、成分・性状の一つとして動粘度が37.8℃で12.7であることや用途として溶剤等が挙げられることが示され、甲第13号証には、水-エタノール系化粧料組成物に関して、キトサン誘導体と増粘剤であるキサンタンガムを配合することで、エタノールが20重量%以上含有する水-エタノール系でも増粘し、経時安定性を保つことが示され、甲第14号証には、平板及び円柱外壁を流下する液膜流れのドライアウト消滅機構に関する研究として、試料板の材質にステンレス鋼、塩化ビニル、アクリル及びテフロンを用いた、供試液体としてのエタノール水溶液の動粘度の値が示されており、甲第15号証には、低粘度無臭性溶剤として、製品名「NEO-CHIOZOL」が高度精製された無色透明で無味無臭の油状液体であることや主要用途として虫ケア用品の希釈用溶剤が挙げられることが示されているだけで、「測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であ」ることに関して、甲第1号証に記載されているに等しいとはいえない。
したがって、相違点2-1は、実質的な相違点である。
(イ)また、甲1発明においては、「水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に」甲1発明の殺虫剤を「滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下に」なるようにし、かつ甲1発明の殺虫剤の「測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であ」るように設定することに関して、示唆があるともいえないし、そのような構成とすることに動機付けがあるともいえない。
そして、本件特許発明1は、その発明の構成全体によって、粘着剤や接着剤を使用することなく、飛翔害虫の行動を物理的に阻害して駆除効果を高めることができるという当業者の予測できない、かつ顕著な効果を奏しているといえる。
(ウ)異特許異義申立人は、甲第5号証~甲第8号証から、甲1に記載された発明として、1号灯油の比重が0.8であることを技術常識として用い、成分の含有量からの計算により処方された殺虫剤中に、界面活性剤が約15重量%含まれていることが記載されているとの前提で、甲第5号証には、パラフィンワックスが蜜蝋(ビーワックス)に代替可能であるとか、甲第6号証の水のパラフィンに対する接触角の値や、甲第7号証や甲第8号証から界面活性剤水溶液のパラフィンに対する接触角は、濃度に比例して減じていき、0.1重量%にもなれば、大半の界面活性剤において、θ/2法で求めた接触角が70°以下になることが示されている旨主張している。
しかしながら、甲1発明の殺虫剤成分の組成物に関して、パラフィンワックスの接触角が、蜜蝋(ビーワックス)の接触角の測定値と同じであることは何ら示されておらず、これらが代替可能であることを前提とすることはできないし、界面活性剤水溶液のパラフィンに対する接触角の変化が濃度と関係しているからといって、甲1発明の殺虫剤成分の組成物に関して、接触角の測定値が「水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に」甲1発明の殺虫剤「を滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下になる」ということは、記載されているに等しいともいえないし、示唆があって動機付けられるともいえない。
また、特許異義申立人は、甲第9号証及び甲第10号証から界面活性剤の濃度が高まれば、その粘度が上昇するのは自明であるとか、本件特許発明の効果は、界面活性剤の濃度を上昇させれば、自然に達成する効果で、界面活性剤の濃度を上昇させる動機付けもある旨主張している。
しかしながら、甲第9号証及び甲第10号証は、特定の界面活性剤の濃度と溶液の特性との関係を示しているにすぎず、本件特許発明1の効果が、界面活性剤の濃度を上昇させれば、自然に達成する効果であるともいえないし、甲第1号証の記載から甲1発明の殺虫剤成分の組成物に関して、界面活性剤の濃度を上昇させる動機付けがあるともいえない。
したがって、上記特許異義申立人の主張はいずれも採用できない。
また、甲第1号証に記載された発明として、実施例2~6に係る発明を認定した場合も、上記の実施例1に係る発明である甲1発明に関する対比・判断と同様に、実質的な相違点を有するとともに、該相違点に係る構成が当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
エ 小括
本件特許発明1は、相違点1-1について検討するまでもなく、甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項を参照しても、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明1は、相違点1-1について検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明することができたものともいえない。
(3-2)甲第2号証に記載された発明との対比判断
ア 甲2発明との対比
甲2発明の「エアゾール容器」、「コバエ類」及び「エアゾール容器に充填した、コバエ類の防除に有用な該組成物を用いたスプレー製品」は、それぞれ、本件特許発明1の「エアゾール容器」、「飛翔害虫」及び「噴射される」「害虫の駆除剤」に相当するので、甲2発明の「組成物を調製し、エアゾール容器に充填した、コバエ類の防除に有用な該組成物を用いたスプレー製品」は、本件特許発明1の「エアゾール容器に収容され、飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射される飛翔害虫の駆除剤」と、「エアゾール容器に収容され、」「飛翔害虫を対象とした飛翔害虫の駆除剤」という点で共通している。
イ 一致点・相違点の認定
以上のことから、本件特許発明1と甲2発明は、
「エアゾール容器に収容され、噴射される飛翔害虫を対象とした飛翔害虫の駆除剤。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1-2:飛翔害虫の駆除剤に関して、本件特許発明1は、「飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射される飛翔害虫の駆除剤」との特定事項を有しているのに対して、甲2発明は、飛翔害虫の駆除剤ではあるものの飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射されるという噴射の態様について特定されていない点。
相違点2-2:駆除剤の特性に関して、本件特許発明1は、「上記駆除剤(ただし、被膜形成能を有する共重合体と被膜形成能を有する樹脂を含む場合を除く。)は、 測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であり、水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に上記駆除剤を滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下になる」と特定されているのに対して、甲2発明は、「モノラウリン酸デカグリセリル0.1w/w%、オレンジオイル0.1w/w%、95%エタノール47.27w/w%、イオン交換水52.53w/w%からなる組成物」であることが特定されているが、その特性は明らかでない点。
ウ 相違点の判断
事案に鑑み、相違点2-2から検討する。
前記(3-1)の相違点2-1に関して検討したのと同様に、他の甲号証を参照しても、相違点2-2は、実質的な相違点である。
また、甲2発明においては、他の甲号証の記載を考慮しても、「水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に」甲2発明のスプレー製品の組成物を「滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下に」なるようにし、かつ甲2発明の該組成物の「測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であ」ように設定することに関して、示唆があるともいえないし、そのような構成とすることに動機付けがあるともいえない。
また、甲第2号証に記載された発明として、実施例8、9及び11に係る発明を認定した場合も、上記の実施例7に係る発明である甲2発明に関する対比・判断と同様に、実質的な相違点を有するとともに、該相違点に係る構成が当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
特許異議申立人は、甲第2号証の界面活性剤の含有量の例示範囲の記載(【0008】)や還元澱粉糖化物の記載(【0010】)や甲第13号証のキサンタンガム誘導体のエタノール溶液への添加による粘度上昇に関する記載を指摘して、本件特許発明1における動粘度に関する特定事項が動機付けられる旨主張しているが、甲2発明は、粘度を上昇させることを動機付ける記載はなく、殺虫原体や可燃性ガスを用いないで優れた防除効果を奏することを課題としたものであるから、動粘度に関する特定事項が動機付けられるとはいえず、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
エ 小括
本件特許発明1は、相違点1-2について検討するまでもなく、甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項を参照しても、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明1は、相違点1-2について検討するまでもなく、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明することができたものともいえない。
(3-3)甲第3号証に記載された発明との対比判断
ア 甲3発明との対比
甲3発明の甲3発明の「エアゾール用に好適に用いられる」「防除剤」は、何らかの容器に収容され噴射されることは明らかであるから、「有害生物防除用溶剤組成物を含むエアゾール用に好適に用いられる有害生物防除剤」は、本件特許発明1の「エアゾール容器に収容され、飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射される飛翔害虫の駆除剤」と、「エアゾール容器に収容され、」「噴射される」「有害生物を対象とした有害生物の駆除剤」という点で共通している。
イ 一致点・相違点の認定
以上のことから、本件特許発明1と甲3発明は、
「エアゾール容器に収容され、噴射される有害生物を対象とした有害生物の駆除剤。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1-3:飛翔害虫の駆除剤に関して、本件特許発明1は、「飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射される飛翔害虫の駆除剤」との特定事項を有しているのに対して、甲3発明は、有害生物の駆除剤ではあるものの有害生物の種類も、飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射されるという噴射の態様についても特定されていない点。
相違点2-3:駆除剤の特性に関して、本件特許発明1は、「上記駆除剤(ただし、被膜形成能を有する共重合体と被膜形成能を有する樹脂を含む場合を除く。)は、 測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であり、水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に上記駆除剤を滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下になる」と特定されているのに対して、甲3発明は、「引火点が70℃以上であるイソパラフィンを含むパラフィン系溶剤と界面活性剤とを含有する」「組成物」であることが特定されているが、その特性は明らかでない点。
ウ 相違点の判断
事案に鑑み、相違点2-3から検討する。
前記(3-1)の相違点2-1に関して検討したのと同様に、他の甲号証を参照しても、相違点2-3は、実質的な相違点である。
また、甲3発明においては、他の甲号証の記載を考慮しても、「水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に」甲3発明の防除剤組成物を「滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下に」なるようにし、かつ甲3発明の該組成物の「測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であ」ように設定することに関して、示唆があるともいえないし、そのような構成とすることに動機付けがあるともいえない。
特許異議申立人は、甲第3号証の引火点が70℃以上のイソパラフィンの炭素数は10~28程度である(【0007】)であることや、甲第11号証及び甲第12号証のイソパラフィンの動粘度が6cst以上である指摘して、本件特許発明1における動粘度や接触角に関する特定事項が記載されているに等しいことや、甲第3号証には、ノックダウン時間短縮効果の観点から界面活性剤濃度を上げる動機付けがある旨主張しているが、甲3発明は、臭気の問題、消防法の問題、ノックダウン時間短縮の観点からイソパラフィンを含むパラフィン系溶剤と界面活性剤を含有させたものにすぎず、動粘度や接触角に関する特定事項が記載されているに等しいことや粘度を上昇させることを動機付ける記載はなく、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
エ 小括
本件特許発明1は、相違点1-3について検討するまでもなく、甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項を参照しても、甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明1は、相違点1-3について検討するまでもなく、甲第3号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明することができたものともいえない。
(3-4)甲第4号証に記載された発明との対比判断
ア 甲4発明との対比
甲4発明の「エアゾール容器」、「対象物である虫」及び「エアゾール」は、それぞれ、本件特許発明1の「エアゾール容器」、「害虫」及び「噴射される」「害虫の駆除剤」に相当するので、甲4発明の「噴射した際に噴射物が対象物である虫に付着しやすいエアゾール容器に充填したエアゾール」は、本件特許発明1の「エアゾール容器に収容され、飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射される飛翔害虫の駆除剤」と、「エアゾール容器に収容され、」「噴射される」「害虫の駆除剤」という点で共通している。
イ 一致点・相違点の認定
以上のことから、本件特許発明1と甲4発明は、
「エアゾール容器に収容され、噴射される害虫の駆除剤。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1-4:害虫の駆除剤に関して、本件特許発明1は、「飛翔中の飛翔害虫に向けて噴射される飛翔害虫の駆除剤」との特定事項を有しているのに対して、甲4発明は、害虫の種類や噴射の態様について特定されていない点。
相違点2-4:駆除剤の特性に関して、本件特許発明1は、「上記駆除剤(ただし、被膜形成能を有する共重合体と被膜形成能を有する樹脂を含む場合を除く。)は、 測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であり、水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に上記駆除剤を滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下になる」と特定されているのに対して、甲4発明は、「噴射剤であるA成分として1234ze(E)が90質量%、B成分として、界面活性剤であるPOEが5質量%、水が5質量%含まれた」ものであるが、その特性は明らかでない点。
ウ 相違点の判断
事案に鑑み、相違点2-4から検討する。
前記(3-1)の相違点2-1に関して検討したのと同様に、他の甲号証を参照しても、相違点2-4は、実質的な相違点である。
また、甲4発明においては、他の甲号証の記載を考慮しても、「水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に」甲4発明のエアゾールを「滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下に」なるようにし、かつ甲4発明の該エアゾールが「測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であ」ように設定することに関して、示唆があるともいえないし、そのような構成とすることに動機付けがあるともいえない。
また、甲第4号証に記載された発明として、実施例2~8に係る発明を認定した場合も、上記の実施例1に係る発明である甲4発明に関する対比・判断と同様に、実質的な相違点を有するとともに、該相違点に係る構成が当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。
特許異議申立人は、甲第4号証のエアゾールが噴射剤であるA成分としての1234ze(E)を除くと、界面活性剤であるPOEが50重量%含有されていることを指摘して、本願明細書の実施例2の動粘度の値や甲第9号証や甲第10号証を参照し、甲4発明は、本件特許発明1における動粘度や接触角に関する特定事項が記載されているに等しいことや、甲第4号証には界面活性剤濃度や粘度を上げる動機付けがある旨主張しているが、甲4発明は、臭気の問題、消防法の問題、ノックダウン時間短縮の観点からイソパラフィンを含むパラフィン系溶剤と界面活性剤を含有させたものにすぎず、動粘度や接触角に関する特定事項が記載されているに等しいことや粘度を上昇させることを動機付ける記載はなく、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
エ 小括
本件特許発明1は、相違点1-4について検討するまでもなく、甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項を参照しても、甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明1は、相違点1-4について検討するまでもなく、甲第4号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明することができたものともいえない。
(4)本件特許発明2及び3について
ア 甲1発明~甲4発明との対比
本件特許発明2は、本件特許発明1において、「接触角が50゜以下であること」を特定し、接触角に関する特定事項をさらに限定したものであり、本件特許発明3は、本件特許発明1又は2において、「駆除剤は流動パラフィンを含んでいること」を特定したものであるが、本件特許発明2及び3と甲1発明~甲4発明との対比において、それぞれ、少なくとも上記相違点2-1、相違点2-2、相違点2-3、相違点2-4を有する。
イ 相違点の判断
前記(3-1)~(3-4)で検討したのと同様に、相違点2-1~相違点2-4は、実質的な相違点である。
また、甲1発明~甲4発明においては、他の甲号証の記載を考慮しても、「水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に」甲1発明~甲4発明の組成物を「滴下したときにθ/2法で求めた接触角が50゜以下に」なるようにし、かつ甲1発明~甲4発明の該組成物が「測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であ」ように設定することに関して、示唆があるともいえないし、そのような構成とすることに動機付けがあるともいえない。
ウ 小括
本件特許発明2及び3は、その他の点について検討するまでもなく、甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項を参照しても、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明2及び3は、その他の点について検討するまでもなく、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明することができたものともいえない。
(5)本件特許発明4について
ア 甲1方法発明~甲4方法発明との対比
本件特許発明4は、本件特許発明1の飛翔害虫の駆除剤の発明を、飛翔害虫の駆除方法の発明として特定したものにすぎないので、本件特許発明4と甲1方法発明~甲4方法発明とは、少なくとも上記相違点2-1、相違点2-2、相違点2-3、相違点2-4を有する。
イ 相違点の判断
本件特許発明4についての相違点2-1~相違点2-4の判断は、実質的に相違点2-1~相違点2-4の判断と同一であるから、前記(3-1)~(3-4)で検討したのと同様に、相違点2-1~相違点2-4は、実質的な相違点である。
また、甲1方法発明~甲4方法発明においては、他の甲号証の記載を考慮しても、「水平なガラス板に形成されたビーワックス層の上面に」甲1発明~甲4発明の組成物を「滴下したときにθ/2法で求めた接触角が70゜以下に」なるようにし、かつ甲1方法発明~甲4方法発明の該組成物が「測定温度が20℃である状態でJIS Z 8803で規定される測定方法で測定した時の動粘度が6cst以上の液体であ」るように設定することに関して、示唆があるともいえないし、そのような構成とすることに動機付けがあるともいえない。
ウ 小括
本件特許発明4は、その他の点について検討するまでもなく、甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項を参照しても、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明4は、その他の点について検討するまでもなく、甲第1号証~甲第4号証に記載された発明及び甲第1号証~甲第15号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明することができたものともいえない。
(6)理由1及び2のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1~4に関して、異議申立理由1(新規性)及び異議申立理由2(進歩性)には、理由がない。
2 理由3(実施可能要件、サポート要件、明確性要件)について(請求項1~4について)
特許異議申立人は、請求項1~4に係る発明に関して、下記の甲第16号証を提示して、台所用洗剤にも多種多様な粘度のものがあり、界面活性剤の濃度が本件特許の特性に大きく関与するところ、界面活性剤の濃度は一切記載がないことを指摘し本件特許明細書の記載は、記載要件を満たさない旨主張している。
(1)甲第16号証の記載
(16a)「
[図:0001422449000028.jpg]
(2)判断
台所用洗剤の粘度に種々のものがあり、界面活性剤の濃度が記載されていないとしても、上記Iの取消理由の判断で述べたように、【0025】の本件特許発明の動粘度に調整することができる数種の例示記載、【0026】~【0028】のビーワックス層の炭素数や昆虫の体表面の炭素数の関係からビーワックス層を測定表面に用いることの技術的意義の説明や接触角θと親和性の関係に基づく発現機構の説明、【0012】の駆除剤の粘度と接触角を特定範囲にする構成による作用効果との関係が説明の記載に加えて、表1の実施例2~4、6~9や比較例1~4の記載、【図2】の動粘度と接触角の本件特許発明で特定された領域での結果を参考にすれば、本件特許発明が、過度な試行錯誤なく実施可能なように記載されていないとまではいえない。また、明細書にサポートされていない、及び本件特許発明の外縁が不明確であるとまではいえない。
(3)まとめ
したがって、異議申立理由3には理由がない。
3 異議申立理由4(明確性要件)について(請求項1~4について)
(1)特許法第36条第6項第2号に規定する要件(明確性要件)の判断の前提
明確性要件に適合するか否かは、第三者の不測の不利益を生じるほどに不明確かどうかで判断すべきであるとされている。
(2)判断
ア 本件特許発明の「被膜形成能」を有するか否かの判断基準は不明であること、「共重合体と樹脂を含む場合」とは、「共重合体又は樹脂を含む場合」であるのか、「共重合体及び樹脂を含む場合」であるのか不明であること、並びに「樹脂」と「共重合体」と「ゴム」の関係や切り分けが不明であることから発明特定事項が不明確で本件特許発明が明確でないというのが、異議申立理由4の内容である。
なお、特許異議申立人は、本件特許の分割出願(特願2023-121069)に対する令和6年5月24日付け拒絶理由が示され(甲第17号証)、異議申立理由4と同様の明確性要件の拒絶理由が通知されたことを指摘している(特許異議申立書53頁)。
イ しかしながら、本件特許明細書全体の記載及び本件の出願時の技術常識を参酌すれば、本件特許発明の「被膜形成能」を有するとは、【背景技術】の【0002】~【0004】の記載や【発明が解決しようとする課題】の【0007】~【0009】の記載を考慮すれば、単に何らかの被膜が形成されることではなく、飛翔害虫に付着させて行動を阻害できて駆除できる程度の実質的な被膜形成機能を意味していると理解できる。
また、「共重合体と樹脂を含む場合」とは、発明特定事項では、「被膜形成能を有する共重合体と被膜形成能を有する樹脂を含む場合」と特定され、「共重合体」の場合も除外し、共重合体ではない「樹脂」の場合も除外していることは、文脈から明らかである。
さらに、「樹脂」と「共重合体」と「ゴム」の関係や切り分けが不明である点は、被膜を形成する材料を提示した文献の文脈上、「樹脂」や「共重合体」や「ゴム」と表現しているにすぎず、いずれも飛翔害虫に付着させて行動を阻害できて駆除できる程度の実質的な被膜形成機能を有する高分子有機材料として例示して表現しているにすぎず、明確な切り分けをして使用しているわけではないし、その必要性もないといえる。
したがって、本件特許発明の「共重合体」や「樹脂」等の用語が、第三者の不測の不利益を生じるほどに不明確であるとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおり、請求項1~4に係る特許を受けようとする発明は明確であり、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものであり、同法第113条第1項第4号の規定により取消されるべきものではない。
したがって、明確性要件に関する異義申立理由4には、理由がない。
第5 むすび
以上のとおり、本件請求項1~4に係る発明の特許は、取消理由通知で示した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
また、ほかに本件請求項1~4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700739