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特許異議申立

2024-700900

ダニ捕獲器

審判番号
2024-700900
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-236996
登録番号
7452995
請求日
2024年09月19日
審決日
2025年06月30日
公報発行日
2025年08月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】アース製薬株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人栄光事務所
  • 【異議申立人】飯田 進
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 澤田 真治
  • 審判官 立澤 正樹
分類
P1652.121-Y (A01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7452995号発明「ダニ捕獲器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7452995号の請求項2に係る特許を維持する。

理由

理 由 1 手続の経緯 特許第7452995号(以下「本件特許」という。)の請求項2に係る特許についての出願は、令和元12月26日に出願され、令和6年3月11日にその特許権の設定登録がされ、同月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和6年9月19日に特許異議申立人 飯田 進(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てが請求項2に対してされた。 その後の手続等の概要は、以下のとおりである。 令和7年 2月28日付け:取消理由通知書 同年 4月30日 :意見書(特許権者) 2 本件特許発明 本件特許の請求項2に係る発明(以下「本件特許発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項2】 不織布から構成される収容袋と、前記収容袋の内部に収容されるダニ捕獲用の捕獲シートと、前記収容袋の前記内部にダニを誘引する誘引剤と、を備えるダニ捕獲器であって、 前記捕獲シートは、 粘着性の捕獲面を有する捕獲層と、当該捕獲シートの厚さ方向に連通する複数の孔を有し且つ前記捕獲層に積層される多孔層と、を有し、 前記収容袋は、 当該ダニ捕獲器の最外層を構成し、 前記捕獲層は、当該捕獲層の表裏両面に前記捕獲面を有し、 前記多孔層は、前記捕獲層の表裏両面に積層される、 ダニ捕獲器。」 3 特許異議の申立ての理由の概要 令和6年9月19日に申立人が提出した特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)進歩性(特許法第29条第2項(同法第113条第2号)) 本件特許発明2は、甲第1号証に記載の発明、及び甲第2、3号証記載の周知技術1に基づいて、当業者ならば容易に想到し得たものである。 (2)証拠方法 ・甲第1号証:特許第6532995号公報(以下「甲1」という。) ・甲第2号証:特開2017-131139号公報(以下「甲2」という。) ・甲第3号証:特開2015-202062号公報(以下「甲3」という。) 4 取消理由の概要 当審において、令和7年2月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (進歩性)本件特許の特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1及び甲3に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 5 甲各号証の記載 (1)甲1について 本願の出願前の令和元年6月19日に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。 ア 記載事項 (ア)「【0006】 本発明に係るダニ誘引捕獲器は、ダニ誘引捕獲体、不織布および網袋を備える。ダニ誘引捕獲体は、基材、粘着剤、網状体およびダニ誘引剤を有する。基材は、粘着剤を支持するためのものであって、例えば、コルゲート紙・カート紙等の台紙や、樹脂フィルム、樹脂シート等である。粘着剤は、基材に塗布されている。なお、基材が紙や、樹脂フィルム、樹脂シート等である場合、粘着剤は、基材の少なくとも片側に塗布されればよく、基材の両面に塗布されてもよい。網状体は、粘着剤を露出するように粘着剤上に配設されている。なお、この網状体は、粘着剤により粘着されている。ダニ誘引剤は、(a)網状体に含有されているか、(b)網状体上に塗布(コーティング)されている。不織布は、少なくともダニ誘引捕獲体の網状体側に配設されている。なお、この不織布は、ダニ誘引捕獲体を挟み込んでいてもよい。網袋は、ダニ誘引捕獲体および不織布を覆う。」 (イ)「【0010】 (1)ダニ誘引捕獲体 ダニ誘引捕獲体110は、図2に示されるように、主に、基材111、粘着剤112および網状体113から構成される。また、このダニ誘引捕獲体110において、ダニの誘引剤は、粘着剤に含侵されてもよいし、通気性を有する布製の袋に収容されて粘着剤上に配設されてもよいし、通気性を有する布に覆われた状態で粘着剤上に配設されてもよいし、網状体113に含有されてもよいし、網状体113上に塗布されてもよい。以下、ダニ誘引捕獲体110の構成につき詳述する。 【0011】 (1-1)基材 基材111は、粘着剤112を支持するためのものであって、例えば、コルゲート紙・カート紙等の台紙や、樹脂フィルム、樹脂シート等である。 【0012】 (1-2)粘着剤 粘着剤112は、ダニの捕獲、ダニの死骸や糞の保持を目的とするものであって、図2に示されるように基材111に塗布されている。また、この粘着剤112は、例えば、ポリブデン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ホットメルト系粘着剤等の粘着剤であって、基材111上に1g~1,000g/m2で塗布されている。なお、粘着剤112がポリブデン系粘着剤である場合、その塗布量は600g~700g/m2で塗布されるのが好ましい。 【0013】 (1-3)網状体 網状体113は、粘着剤112の保護、ダニの囲い込み、ダニやその糞・死骸の拡散防止を目的とするものであって、粘着剤112の上に配設されている。なお、この網状体113は、粘着剤112によって固定されている。また、この網状体113の網目形状は、特に限定されないが、方形であることが好ましい。かかる場合、網状体113の網目寸法は、2.5mm×2.5mm~20mm×20mmであることが好ましい。また、この網状体113は、合成繊維やガラス繊維等の繊維から形成されるのが好ましい。 【0014】 (1-4)ダニ誘引剤 ダニ誘引剤は、文字通り、ダニを誘引するための剤であって、粘着剤に含有されるか、通気性を有する布に覆われた状態で粘着剤上に配設されるか、網状体に含有されるか、網状体に塗布(コーティング)されている。 【0015】 ダニ誘引剤は、特に限定されないが、煮干し粉末・削り節粉末・ビール酵母・パン粉等を混合して煮込んで得たエキスであることが好ましい。このダニ誘引剤には香料が含まれることが好ましい。香料としては、例えば、ココナッツオイル等が挙げられる。なお、上記エキスに結合剤を添加してエキスを固形化してもかまわない。結合剤としては、例えば、ゼラチンや寒天粉、タロイモ粉、コーンスターチ、ポリプロピレングリコール、ポバール(登録商標)(ポリビニルアルコール)、エマルジョン合成樹脂等が挙げられる。ダニ誘引剤が粘着剤や網状体に含有される場合、上述のエキス等をそのまま粘着剤や、網状体の原料に練り込んでもよいし、コーティングしてもよい。また、固形化させたエキス等を細かく粉砕して粘着剤や、網状体の原料に練り込んでもよいし、コーティングしてもよい。また、通気性を有する布でダニ誘引剤が覆われる場合、上記エキスに結合剤を添加して粒状に加工してもよい。なお、粒状に加工する場合、その直径は0.3mm~2.0mmであることが好ましい。また、網状体上にダニ誘引剤が塗布される場合、上記エキスに結合剤を添加して、固形化する前に網状体にそれを塗工してもよいし、固形化させたエキス等を細かく粉砕してその粉にバインダーを混ぜ合わせてそれを網状体に塗工してもよい。 【0016】 (2)不織布 不織布120は、ダニやその糞・死骸が容易にダニ誘引捕獲体110の外部に飛散等することを防止するものであって、ダニ誘引捕獲体110を挟み込んでいる。なお、この不織布120は、例えば、ポリエステル樹脂や、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリエステル/アクリル酸エステル樹脂等から形成されていることが好ましい。不織布120がこのような材料から形成されていると、不織布120同士を超音波溶着してダニ誘引捕獲体110を包み込むことができるからである。また、この不織布120の目付は、ダニを容易に通過させる観点から15g~100g/m2であることが好ましい。 【0017】 (3)網袋 網袋130は、ダニ誘引捕獲体110および不織布120を収容している。なお、この網袋130を構成する網状体は、例えば、ポリエチレン等の樹脂から形成されていることが好ましく、製造コストを安価にする観点から押出成形品であることが好ましい。かかる場合、その網状体同士を超音波溶着させることによって網袋130を容易に製造することができる。また、この網袋130を構成する網状体の目数は、ダニを容易に通過させる観点から18~180メッシュであることが好ましい。」 イ 甲1発明 上記「ア」で示した事項からみて、甲1には下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ダニ誘引捕獲体、不織布および網袋を備え、基材は、粘着剤を支持し、樹脂シートであり、粘着剤は、基材に塗布されており、粘着剤は、基材の両面に塗布されてもよく(【0006】)、 ダニ誘引捕獲体110は、基材111、粘着剤112および網状体113から構成され、ダニの誘引剤は、通気性を有する布製の袋に収容されて粘着剤上に配設され(【0010】)、 粘着剤112は、ダニの捕獲を目的とするものであり、基材111に塗布され(【0012】)、 網状体113は、粘着剤112の上に配設され、粘着剤112によって固定され(【0013】)、 ダニ誘引剤は、粘着剤に含有されるか、通気性を有する布に覆われた状態で粘着剤上に配設されるか、網状体に含有されるか、網状体に塗布(コーティング)されており(【0014】)、 不織布120は、ダニ誘引捕獲体110を挟み込んでおり、不織布120同士を超音波溶着してダニ誘引捕獲体110を包み込むことができ(【0016】)、 網袋130は、ダニ誘引捕獲体110および不織布120を収容し、ポリエチレン等の樹脂から形成されている(【0017】)、 ダニ誘引捕獲器(【0006】)。」 (2)甲2、甲2に記載された技術事項 ア 記載事項 本願の出願前の平成29年8月3日に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0015】 図3は、この実施の形態に係るダニ捕獲シートを示す図1のIII-III断面図である。図3に示すように、第2の接合部220a,220bのそれぞれは、第1のシート部材20aと、両面粘着層40と、誘引層60と、第2のシート部材20bとが互いに接合された4層構造である。したがって、図3の断面図において、両面粘着層40および誘引層60は、第1のシート部材20aと第2のシート部材20bとの間に層状に挟まれた態様である。 【0016】 第1の接合部210a,210b、および第2の接合部220a,220bのそれぞれにおける熱溶着は、ヒーターを用いた熱板を押しつける熱板溶着によって行うことが好ましい。なお、超音波溶着などの他の溶着方法を用いてもよい。 【0017】 <第1および第2のシート部材20a,20bについて> 第1および第2のシート部材20a,20bは、両面粘着層40および誘引層60を層状に挟みこんで保持するととともに、ダニをその内部に引き込むために設けられる。なお、第1および第2のシート部材20a,20bのそれぞれは、互いに同様の構造を有する。 【0018】 第1および第2のシート部材20a,20bは、外層22a,22bおよび内層32a,32bからなる2層構造である。第1のシート部材20aの内層32aと、第2のシート部材20bの内層32bとが、両面粘着層40および誘引層60を間に挟んだ状態で、互いに対向して配設される。外層22a,22bおよび内層32a,32bは、ともに多孔質な不織布で形成される。外層22a,22bは、天然繊維を含む不織布で形成されることが好ましい。天然繊維としては、綿繊維を用いることが好ましい。また、内層32a,32bは、合成繊維を含む不織布で形成されることが好ましい。合成繊維としては、ポリプロピレンおよびポリエチレンを用いることが好ましい。なお、内層32a,32bは、合成繊維として、ポリプロピレン、ポリエチレンのどちらか一方のみを用いてもよい。また、外層22a,22bが内層32a,32bと同様の合成繊維を含んでもよい。 【0019】 ダニは、小さい孔に入り込む習性を持つため、第1および第2のシート部材20a,20b(外層22a,22bおよび内層32a,32b)が多孔質な不織布で形成されることにより、ダニ捕獲シート10の内部に多くのダニを引き込むことができる。 【0020】 なお、外層22a,22bの天然繊維にテンセル(登録商標)などのセルロース繊維を交絡させてもよい。これにより、コストの低減を図ることができる。また、内層32a,32bの合成樹脂にセルロース繊維を交絡させてもよい。これにより、内層32a,32bの肌触りが良好になるため、ダニ捕獲シート10の内部により多くのダニを引き込むことができる。このような場合、内層32a,32bは、ポリプロピレンおよびポリエチレンの含有率が約97%、セルロースの含有率が約3%であることが好ましい。」 (イ)「【0029】 また、この実施の形態に係るダニ捕獲シート10は、第2の接合部220a,220bのそれぞれが、第1のシート部材20aと、両面粘着層40と、誘引層60と、第2のシート部材20bとが互いに接合された4層構造である。したがって、ダニ捕獲シート10は、重ね合わせた4層の部材を熱溶着などによりまとめて接合することにより形成することができるため、製造が容易となる。」 (ウ)「 [図:0001425755000001.jpg] 」 (エ)「 [図:0001425755000002.jpg] 」 イ 甲2記載の技術事項 上記「ア」で示した事項からみて、甲2には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲2記載の技術事項」という。)。 「第1のシート部材20aと、両面粘着層40と、誘引層60と、第2のシート部材20bとが互いに接合された4層構造であって、両面粘着層40および誘引層60は、第1のシート部材20aと第2のシート部材20bとの間に層状に挟まれた態様であるダニ捕獲シートにおいて、 第1および第2のシート部材20a,20bは、外層22a,22bおよび内層32a,32bからなる2層構造であり、第1のシート部材20aの内層32aと、第2のシート部材20bの内層32bとが、両面粘着層40および誘引層60を間に挟んだ状態で、互いに対向して配設され、外層22a,22bおよび内層32a,32bは、ともに多孔質な不織布で形成され、重ね合わせた4層の部材を熱溶着などによりまとめて接合することにより形成すること。」 (2)甲3、甲3に記載された技術事項 ア 記載事項 本願の出願前の平成27年11月16日に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0014】 図1は、この発明の防ダニシートの一例を示す斜視図である。防ダニシート10は、平面視略長方形で、その角部が円弧状に形成された袋体12を含む。袋体12は、図2に示すように、2つのシート部材14を含み、その周囲部分を固着した接合部12aによって中空の袋状に形成される。袋体12の大きさは、例えば、190mm×130mmになるように形成され、接合部12aは、例えば10mmの幅で袋体12の周囲部分を固着するように形成される。 【0015】 それぞれのシート部材14は、異なる材料で形成された不織布を重ねた2層構造に形成される。袋体12の外側となる外側シート層14aは、天然繊維を含む不織布で形成される。天然繊維としては、例えば綿繊維を用いることが好ましい。なお、綿繊維のみで不織布を作製すると高コストとなるため、低コストで不織布を作製するために、例えばテンセル(登録商標)などのセルロース繊維を混ぜたものを使用してもよい。不織布は多孔質のシートであり、小さい孔に入り込む性質を有するダニを引き入れやすいものであるが、合成樹脂繊維を用いた不織布に比べて、綿繊維などの天然繊維を用いた不織布のほうが、ダニを引き入れやすい。 ・・・ 【0019】 シート部材14の内側シート層14b上に粘着シート16を貼り付けることによって、内側シート層14bの表面に粘着剤層16bが配置される。ここで、内側シート層14bの表面を粗く形成しておくことにより、図3に示すように、内側シート層14bの繊維の突出する外側部分に粘着剤層16bが付着し、粘着剤層16b上に多数の空間が形成される。したがって、粘着剤層16b上の空間に侵入したダニを粘着剤層16bによって捉えることができる。図2では、片方の シート部材14に2枚の粘着シート16が貼り付けられているが、これは、2枚の粘着シート16の間から後述のダニ誘引物質を放出するためである。 【0020】 粘着シート16が貼り付けられた2つのシート部材14の間には、ダニ誘引シート18が配置される。ダニ誘引シート18は、図4に示すように、濾過紙として用いられているヒートロン紙で形成された紙パック20を含む。ここで用いられるヒートロン紙は、例えば、木材パルプと麻パルプとポリプロピレン繊維と紙力剤とで形成されたものである。紙パック20の大きさは、例えば、160mm×65mmの大きさに形成され、その周囲部部が6~10mmの幅で熱溶着されたものである。紙パック20内には、薬剤シート22が封入されている。薬剤シート22は、パルプを綿状に加工した綿状パルプ板24を含み、2つの綿状パルプ板24の間にマイクロカプセル26が挟み込まれる。綿状パルプ板24の大きさは、例えば、105mm×35mmの大きさとなるように形成される。 【0021】 マイクロカプセル26は、例えば非晶質シリカなどで形成された多孔質のものであり、マイクロカプセル26内には、ダニ誘引剤が封入される。ダニ誘引剤は、例えばグレープフルーツなどのフルーツを酵素処理したものであり、ダニが好む香りを放出するものである。 【0022】 さらに、ダニ誘引シート18の一方側には、多孔質シート28が配置される。多孔質シート28は、例えばポリプロピレンとポリエステルとを用いて、130mm×80mmの大きさの多孔質の板状に形成されたシートである。なお、多孔質シート28の角部分は円弧状に形成されている。ただし、この多孔質シート28は、必ずしも配置されなければならないというものではない。 【0023】 これらの粘着シート16、ダニ誘引シート18および多孔質シート28を内包するようにして、2つのシート部材14の周囲部分が熱溶着され、接合部12aが形成される。このとき、熱溶着のための熱がダニ誘引剤の働きに影響を与えない程度に、溶着部分と薬剤シート22とが離れている必要がある。熱溶着は、例えば、ヒーターを使用した熱板を溶着部分に押し付ける熱板溶着により行われるが、超音波溶着などの他の溶着方法を用いてもよい。他の2つのシート部材14を熱溶着することができるのは、ポリプロピレン繊維を含む内側シート層14b同士が対向して配置されていることによる。このように、熱溶着により接合部12bを形成することができるため、縫製によって袋体12を形成する場合に比べて、低コストで防ダニシート10を製造することができる。 【0024】 防ダニシート10の製造は、粘着シート16、ダニ誘引シート18および多孔質シート28を2つのシート部材14の間に配置した後、これらの内蔵物の周囲において2つのシート部材14を熱溶着することにより行われる。このとき、個別の防ダニシート10について、1つずつ熱溶着を行ってもよいし、大きいシート部材14間に複数の内蔵物を並べて配置した後、それらの内蔵物の周囲を囲むように縦横に熱溶着を行い、溶着部を切断することにより個別の防ダニシート10を製造してもよい。 【0025】 このようにして得られた防ダニシート10は、例えば布団の下などのダニが繁殖しやすい場所に設置される。ここで、袋体12の表面側には、綿繊維とセルロース繊維とで形成された不織布を用いた外側シート層14aが配置されているため、周囲の水分が外側シート層に吸収されやすい。そのため、不織布で形成された袋体12の孔の内部は、湿度の高い状態となる。 【0026】 防ダニシート10内のダニ誘引剤からは、マイクロカプセル26、綿状パルプ板24、シート部材14を介して、ダニ誘引物質が放出される。このダニ誘引物質に誘われて、ダニが防ダニシート10に近寄ってくる。ダニは、光が届かず、湿度の高い隙間に入り込む性質を有するため、袋体12に含まれる細かい孔に入り込む。このとき、ダニは天然素材を好むため、綿繊維とセルロース繊維とで形成された不織布を用いた外側シート層14aに入り込みやすい。」 (イ)「 [図:0001425755000003.jpg] 」 (エ)「 [図:0001425755000004.jpg] 」 イ 甲3記載の技術事項 上記「ア」で示した事項からみて、甲3には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲3記載の技術事項」という。)。 「2つのシート部材14を含み、その周囲部分を固着した接合部12aによって中空の袋状に形成される防ダニシート10において、それぞれのシート部材14は、異なる材料で形成された不織布を重ねた2層構造に形成され、シート部材14の内側シート層14b上に粘着シート16を貼り付けることによって、内側シート層14bの表面に粘着剤層16bが配置され、粘着シート16が貼り付けられた2つのシート部材14の間には、ダニ誘引シート18が配置され、粘着シート16、ダニ誘引シート18および多孔質シート28を内包するようにして、2つのシート部材14の周囲部分が熱溶着され、接合部12aが形成されること。」 6 当審の判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第2項)について ア 本件特許発明2について (ア)対比 a 甲1発明の「網袋」は、「ダニ誘引捕獲体110および不織布120を収容」するものであるから、本件特許発明2の「不織布から構成される収容袋」と「収容袋」である点において共通し、甲1発明の「ダニ誘引捕獲体110」は、「樹脂シート」からなる「基材」の両面に「粘着剤」を「塗布」し、「粘着剤112の上に」「網状体」が「配設され、」「粘着剤112によって固定され」、かつ、上記「網袋」に「収容」されるものであるから、本件特許発明2の「収容袋の内部に収容されるダニ捕獲用の捕獲シート」に相当し、甲1発明の「誘引剤」は、「粘着剤上に配設され」、上記「ダニ誘引捕獲体110」とともに、「網袋」に「収容」されると解されるから、本件特許発明2の「収容袋の」「内部にダニを誘引する誘引剤」に相当する。 また、甲1発明の「ダニ誘引捕獲器」は、本件特許発明2の「ダニ捕獲器」に相当する。 b 甲1発明の「粘着剤112」は、「ダニの捕獲を目的とするものであり、基材111に塗布され」ることからみて、本件特許発明2の「粘着性の捕獲面を有する捕獲層」に相当し、甲1発明の「網状体113」は、「網」として網目寸法の大きさの開口が並んだものであると解されるから、本件特許発明2の「多孔層」と、「捕獲シートの厚さ方向に連通する複数の孔を有」する点において一致するとともに、「樹脂シート」からなる「基材」の両面に「粘着剤」を「塗布」した上で、「粘着剤112の上に」「配設され、」「粘着剤112によって固定され」るものであるから、本件特許発明2の「多孔層」と、「捕獲層に積層される多孔層」「を有」する点においても一致する。 c 甲1発明の「網袋」は、「ダニ誘引捕獲体110および不織布120を収容」するから、本件特許発明2の「収容袋」と、「ダニ捕獲器の最外層を構成」する点において一致する。 また、甲1発明の「粘着剤」が「基材の両面に塗布され」ることは、上記aを踏まえると、本件特許発明2の「捕獲層は、当該捕獲層の表裏両面に」「捕獲面を有」することに相当する。 さらに、甲1発明の「網状体113」は、「粘着剤112の上に配設され、粘着剤112によって固定され」ることからみて、「粘着剤」が「基材の両面に塗布され」た「ダニ誘引捕獲体111」においては、「網状体113」も同様に基材の両面に配設され固定されると解されるから、本件特許発明2の「多孔層」と 、「捕獲層の表裏両面に積層される」点において一致する。 d 一致点・相違点 上記a~cからみて、本件特許発明2と甲1発明とは、以下の一致点において一致し、相違点において相違する。 [一致点] 「 収容袋と、前記収容袋の内部に収容されるダニ捕獲用の捕獲シートと、前記収容袋の前記内部にダニを誘引する誘引剤と、を備えるダニ捕獲器であって、 前記捕獲シートは、 粘着性の捕獲面を有する捕獲層と、当該捕獲シートの厚さ方向に連通する複数の孔を有し且つ前記捕獲層に積層される多孔層と、を有し、 前記収容袋は、 当該ダニ捕獲器の最外層を構成し、 前記捕獲層は、当該捕獲層の表裏両面に前記捕獲面を有し、 前記多孔層は、前記捕獲層の表裏両面に積層される、 ダニ捕獲器。」 [相違点] ダニ捕獲器の収容袋に関し、本件特許発明2が「不織布から構成される」ものであるのに対して、甲1発明では、「ポリエチレン等の樹脂から形成されている」「網袋130」が、「ダニ誘引捕獲体110」を「収容」するとともに、「不織布120」が「網袋130」に収容されるものである点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 a 甲3記載の技術事項の「防ダニシート10」は、「ダニ誘引シート18」により誘引したダニを、「粘着シート16」により捉えるものであることが明らかであるから、本件特許発明2の「ダニ捕獲器」に相当する。 また、甲3記載の技術事項の「2つのシート部材14」が本件特許発明2における「収容袋」に相当する。 しかしながら、甲1発明における「ダニ誘引捕獲体110および不織布120を収容し」た「網袋130」のうち「網袋130」自体の機能については明記がないため不明であるものの、甲3記載の技術事項の「2層構造に形成され」た「不織布」は、「周囲の水分が外側シート層に吸収されやす」く「不織布で形成された袋体12の孔の内部は、湿度の高い状態となる」(【0025】)、「ダニは天然素材を好むため、綿繊維とセルロース繊維とで形成された不織布を用いた外側シート層14aに入り込みやすい」(【0026】)という機能を有しており、甲1の「網袋130」は「不織布120を収容し」ていることからも、不織布が有する機能とは異なる機能を有していることは明らかである。 そうすると、甲1発明の「網袋130」を甲3記載の技術事項の「不織布」からなる「2つのシート部材14」と置換して、「不織布」からなる「2つのシート部材14」で「ダニ誘引捕獲体110および不織布120を収容」する動機があるとはいえない。 加えて、「網袋130」の機能については明らかではないものの、甲1発明の「網袋130」をなくすことを示す記載や示唆が甲1にはないため、そのような設計変更を行う動機もない。 b そして、本件特許発明2は、相違点に係る本件特許発明2の構成を備えることにより、設置後の意図しない位置ズレ及び位置ズレに伴うシワの発生を抑制可能であるという格別の効果を奏するものである。 (ウ)申立人の主張について 申立人は特許異議申立書において、 「以上のように、一般にダニ捕獲器において、ダニ捕獲器の最外層を構成し、ダニを内部に引き込むための収納袋を不織布にて構成することは周知技術1として周知である。 甲1発明の網袋130は、甲第1号証の記載事項エに「この網袋130を構成する網状体の目数は、ダニを容易に通過させる観点から18~180メッシュである」と記載されているように、ダニを容易に通過させる役割を有している。 したがって、ダニ捕獲器の最外層を構成し、ダニを内部に引き込むための収納袋を不織布にて構成するとの周知技術1を甲1発明に適用して、本件発明を構成することは、当業者ならば容易に想到し得たことである。」(特許異議申立書12頁1行~9行)と主張している。 しかしながら、上記(イ)で説示したとおり、甲2及び甲3には、最外層の不織布からなるシート状の部材を熱溶着により接合することは記載されているものの、不織布からなるシート状の部材は、本件特許発明2における「収容袋」に相当するとはいえず、仮に、シート状の部材が本件特許発明2における「収容袋」に相当するとしても、甲1発明における「ダニ誘引捕獲体110および不織布120を収容し」た「網袋130」のうち、「網袋130」をシート状の部材とする動機付けが見出せない。 よって、上記申立人の主張は妥当ではなく採用できない。 (エ)小括 よって、本件特許発明2は、甲1発明及び甲3記載の技術事項から当業者が容易に想到し得るものではない。 (2)取消理由として採用しなかった特許異議申立理由について 申立人による特許異議申立理由の概要は、当審において令和7年2月28日付けで特許権者に通知した本件特許発明2に対する取消理由の概要と同様であるが、採用しなかった甲2について検討する。 ア 甲2記載の技術事項の「ダニ捕獲シート」は、「誘引層60」により誘引したダニを、「両面粘着層40」により捉えるものであることが明らかであるから、本件特許発明2の「ダニ捕獲器」に相当する。 また、甲2記載の技術事項の「第1および第2のシート部材20a,20b」が本件特許発明2における「収容袋」に相当する。 しかしながら、甲1発明における「ダニ誘引捕獲体110および不織布120を収容し」た「網袋130」のうち「網袋130」自体の機能については明記がないため不明であるものの、甲2記載の技術事項の「外層22a,22bおよび内層32a,32bからなる2層構造であ」る「不織布で形成され」た「第1および第2のシート部材20a,20b」は、「多孔質な不織布で形成されることにより、ダニ捕獲シート10の内部に多くのダニを引き込むことができ」(【0019】)、「内層32a,32bの合成樹脂にセルロース繊維を交絡させ」ることにより「内層32a,32bの肌触りが良好になるため、ダニ捕獲シート10の内部により多くのダニを引き込むことができる」(【0020】)という機能を有しており、甲1の「網袋130」は「不織布120を収容し」ていることからも、不織布が有する機能とは異なる機能を有していることは明らかである。 そうすると、甲1発明の「網袋130」を甲2記載の技術事項の「不織布で形成され」た「第1および第2のシート部材20a,20b」と置換して、「不織布で形成され」た「第1および第2のシート部材20a,20b」で「ダニ誘引捕獲体110および不織布120を収容」する動機があるとはいえない。 加えて、上記(1)イの説示と同様に、「網袋130」の機能については明らかではないものの、甲1発明の「網袋130」をなくすことを示す記載や示唆が甲1にはないため、そのような設計変更を行う動機もない。 イ そして、本件特許発明2は、相違点に係る本件特許発明2の構成を備えることにより、設置後の意図しない位置ズレ及び位置ズレに伴うシワの発生を抑制可能であるという格別の効果を奏するものである。 ウ 小括 よって、本件特許発明2は、甲1発明及び甲2記載の技術事項から当業者が容易に想到し得るものではない。 7 まとめ 以上述べたとおり、請求項2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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