審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2025-700521

匍匐害虫の防除方法および匍匐害虫防除用エアゾール装置

審判番号
2025-700521
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-557743
登録番号
7586707
請求日
2025年05月13日
審決日
2025年12月22日
公報発行日
2026年04月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】アース製薬株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人朝日奈特許事務所
  • 【異議申立人】石井 健治
審判長/審判官
  • 審判長 渋谷 知子
  • 審判官 秋田 将行
  • 審判官 ▲高▼橋 祐介
分類
P1651.112-YAA(A01M) / P1651.121-YAA(A01M) / P1651.537-YAA(A01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7586707号発明「匍匐害虫の防除方法および匍匐害虫防除用エアゾール装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7586707号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5について訂正することを認める。 特許第7586707号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7586707号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)11月26日(優先権主張 平成30年11月30日 日本)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 令和 6年11月11日 :特許権の設定登録 令和 6年11月19日 :特許掲載公報発行 令和 7年 5月13日 :特許異議申立人石井 健治(以下「申立人」という。)による本件特許の請求項1~5に対する特許異議の申立て 令和 7年 7月30日付け:取消理由通知書 令和 7年10月 3日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 令和 7年10月14日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知) 令和 7年11月10日 :申立人による意見書の提出 第2 本件訂正請求について 令和7年10月3日付けの訂正請求書によりなされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求によりなされた訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲について、以下のとおり訂正することを求めるものである。 1 本件訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1及び2のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1) 訂正事項1 本件特許の特許請求の範囲の請求項1において、 「対象空間に対して、エアゾール組成物を噴射して匍匐害虫を防除する、匍匐害虫の防除方法であり、 原液と噴射剤とを、配合割合(体積比)が5:95~40:60となるよう含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられ、容積が0.1~3.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブと、前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成され、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成された噴射ノズルを含む噴射部材と、を備え、前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が6.9を超え、75未満であるエアゾール装置を用いて、前記噴口から前記エアゾール組成物を噴射する、匍匐害虫の防除方法。」 と記載されているのを、 「対象空間に対して、エアゾール組成物を噴射して匍匐害虫を防除する、匍匐害虫の防除方法であり、 原液と噴射剤とを、配合割合(体積比)が5:95~40:60となるよう含み、パラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられ、容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブと、前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成され、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成された噴射ノズルを含む噴射部材と、を備え、前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であるエアゾール装置を用いて、前記噴口から前記エアゾール組成物を噴射する、匍匐害虫の防除方法。」 に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。) (2) 訂正事項2 本件特許の特許請求の範囲の請求項5において、 「原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられ、容積が0.1~3.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブと、前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材と、を備え、 前記噴射部材は、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成されており、 前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が6.9を超え、75未満であり、 前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~40:60である、匍匐害虫防除用エアゾール装置。」 と記載されているのを、 「原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられ、容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブと、前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材と、を備え、 前記噴射部材は、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成されており、 前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であり、 前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~40:60であり、 前記エアゾール組成物がパラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない、匍匐害虫防除用エアゾール装置。」 に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の在否 (1) 訂正事項1 訂正事項1は、エアゾール容器の定量室の容積を「0.1~3.0mL」から「0.1~1.0mL」に限定し、「前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)」を、「6.9を超え、75未満」から、「10~31.3」に限定し、エアゾール組成物を、「パラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される訂正の目的要件に適合するものである。 また、訂正事項1のうち、エアゾール容器の定量室の容積の限定については、本件特許の明細書及び図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0046】の記載等を根拠とするものであり、「前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)」の限定については、本件特許明細書等の【0046】の記載等を根拠とするものであり、エアゾール組成物の限定については、本件特許明細書等の【0021】、【0047】の記載等を根拠とするものであり、「セバシン酸ジブチルを含まない」との点については、訂正前は、セバシン酸ジブチルを含むエアゾール組成物と含まないエアゾール組成物を包含していたのに対して、訂正後は、セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物に限定されたものである。 訂正前の請求項1に係る発明の課題は、噴口周囲の液だれの抑制と匍匐害虫の防除であり(【0005】)、その解決手段は、噴射ノズルの噴口径と噴射通路の長さの比であるL/R及び原液と噴射剤の配合割合を所定範囲とすることであるところ(【0006】)、エアゾール組成物がセバシン酸ジブチルを含まないとの限定をしても、当該課題及び解決手段は変わらないので、セバシン酸ジブチルを含まないとの訂正は新たな技術的事項の導入にはあたらない。 以上のように、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した範囲内の訂正であり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。 そして、訂正事項1は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (2) 訂正事項2 訂正事項2は、エアゾール容器の定量室の容積を「0.1~3.0mL」から「0.1~1.0mL」に限定し、「前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)」を、「6.9を超え、75未満」から、「10~31.3」に限定し、エアゾール組成物を、「パラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない、」ものに限定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される訂正の目的要件に適合するものである。 また、訂正事項2のうち、エアゾール容器の定量室の容積の限定については、本件特許明細書等の【0046】の記載等を根拠とするものであり、「前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)」の限定については、本件特許明細書等の【0046】の記載等を根拠とするものである。 そして、エアゾール組成物の限定については、本件特許明細書等の【0021】、【0047】の記載等を根拠とするものであり、「セバシン酸ジブチルを含まない」との点については、訂正前は、セバシン酸ジブチルを含むエアゾール組成物と含まないエアゾール組成物を包含していたのに対して、訂正後は、セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物に限定されたものであり、訂正前の請求項5に係る発明の課題は、噴口周囲の液だれの抑制と匍匐害虫の防除であり(【0005】)、その解決手段は、噴射ノズルの噴口径と噴射通路の長さの比であるL/R及び原液と噴射剤の配合割合を所定範囲とすることであるところ(【0006】)、エアゾール組成物がセバシン酸ジブチルを含まないとの限定をしても、当該課題及び解決手段は変わらないので、セバシン酸ジブチルを含まないとの訂正は新たな技術的事項の導入にはあたらない。 以上のように、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した範囲内の訂正であり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、新規事項の追加に該当しない。 そして、訂正事項2は、上記のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (3) 訂正の適否についてのまとめ 上記(1)及び(2)のとおりであるから、訂正事項1及び2は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (4) 独立特許要件について 本件訂正においては、訂正前の請求項1~5が特許異議の申立ての対象とされているので、上記(1)及び(2)のとおり請求項1~5について特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正後の請求項1~5に係る発明には、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (5) 小括 上記(1)から(4)のとおり、本件訂正請求による訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、5について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、訂正後の特許請求の範囲について本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、1A等の符号は、分説するため当審合議体が付した。また、それぞれの符号により分説された事項を、以下では「構成1A」等という。 【請求項1】 1A 対象空間に対して、エアゾール組成物を噴射して匍匐害虫を防除する、匍匐害虫の防除方法であり、 1B 原液と噴射剤とを、配合割合(体積比)が5:95~40:60となるよう含み、パラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、 1C 前記エアゾール容器に取り付けられ、容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブと、 1D 前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成され、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成された噴射ノズルを含む噴射部材と、を備え、 1E 前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であるエアゾール装置を用いて、 1F 前記噴口から前記エアゾール組成物を噴射する、 1G 匍匐害虫の防除方法。 【請求項2】 2A 前記噴射通路の長さL(mm)が36を超える前記エアゾール装置を用いて、 2B 前記噴口から前記エアゾール組成物を噴射する、 2C 請求項1記載の匍匐害虫の防除方法。 【請求項3】 3A 縦360cm×横360cm×高さ250cmの空間において、壁の高さ150cmの位置に直径9cmの金属シャーレを床面に対して垂直に取り付け、水平方向50cmの距離から1mLのエアゾール組成物を2回噴射した直後にシャーレに付着した有効成分の付着率が10~75%となる条件で、対象空間に対して噴射する、 3B 請求項1または2記載の匍匐害虫の防除方法。 【請求項4】 4A 前記匍匐害虫が、クモであり、 4B 前記クモを防除するために前記エアゾール装置を用いて、前記噴口から前記エアゾール組成物を噴射する、 4C 請求項1~3のいずれか1項に記載の匍匐害虫の防除方法。 【請求項5】 5A 原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、 5B 前記エアゾール容器に取り付けられ、容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブと、 5C 前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材と、を備え、 5D 前記噴射部材は、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成されており、 5E 前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であり、 5F 前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~40:60であり、 5G 前記エアゾール組成物がパラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない、 5H 匍匐害虫防除用エアゾール装置。 第4 特許異議の申立てについて 1 特許異議の申立ての概要 (1) 申立理由の概要及び証拠方法 申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証の1~甲第9号証の2(以下、それぞれ「甲1の1」~「甲9の2」という。)を提出し、以下の申立理由を主張している。 ア 証拠方法 甲1の1:大日本除蟲菊株式会社の市販製品「ダニよけハーブ4ショット」 (甲1製品)の製品台紙,2010(平成22)年販売開始 甲1の2:大日本除蟲菊株式会社のカタログ,2010(平成22)年頒布開始 甲2の1:フマキラー株式会社の市販製品「ゴキブリすき間にワンプッシュPRO」(甲2製品)の製品台紙,2017(平成29)年販売開始 甲2の2:フマキラー株式会社のカタログ,2017(平成29)年頒布開始 甲3の1:アース製薬株式会社の市販製品「アースゴキプッシュプロ1」(甲3製品)の製品台紙,2018(平成30)年2月20日販売開始 甲3の2:アース製薬株式会社の販売促進用チラシ,2017(平成29)年頒布開始 甲3の3:アース製薬株式会社のプレスリリース,2018(平成30)年2月20日頒布開始 甲4:「計測結果報告書」,「件名:ノズル測定」「計測結果:別紙参照」,株式会社エージェントアシスト 計測サービスチーム,2025年4月11日 甲5:特開2018-172311号公報(平成30年11月18日公開) 甲6:特開2018-95565号公報(平成30年6月21日公開) 甲7:特開2018-121619号公報(平成30年8月9日公開) 甲8:特開2007-145350号公報(平成19年6月14日公開) 甲9の1:意匠登録第1599570号公報(平成30年3月12日公告) 甲9の2:甲第9号証の1の内部機構を省略したA-A断面図 イ 申立理由の概要 (ア) 申立理由1(新規性) 申立理由1をまとめると、概略、以下のとおりである。 本件訂正前の請求項1、2及び5に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、甲1の1及び甲1の2により認定される本件特許の優先日前に公然実施された発明(以下「甲1発明」という。)、甲2の1及び甲2の2により認定される本件特許の優先日前に公然実施された発明(以下「甲2発明」という。)、又は、甲3の1、甲3の2及び甲3の3により認定される本件特許の優先日前に公然実施された発明(以下「甲3発明」という。)と同一である。 よって、本件特許発明1、2及び5は、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件特許発明1、2及び5に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 (イ) 申立理由2(進歩性) 申立理由2をまとめると、概略、以下のとおりである。 本件特許発明1~5は、甲1発明、甲2発明、又は、甲3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本件特許発明1~5は、甲5、甲6、甲7、甲8、甲9の1及び甲9の2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本件特許発明1~5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。 (ウ) 申立理由3(サポート要件) 本件特許発明1~5は、発明の詳細な説明に記載したものではないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、本件特許発明1~5に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 令和7年7月30日付け取消理由の概要 本件特許発明1~5に係る特許に対して、当審合議体が令和7年7月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (取消理由) 理由1(サポート要件) 本件特許発明1及び5において特定された、エアゾール容器に取り付けられた定量噴射用エアゾールバルブの容積である「0.1~3.0mL」の数値範囲、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)である「6.9を超え、75未満」の数値範囲、原液と噴射剤との配合割合(体積比)の「5:95~40:60」の数値範囲を組み合わせた全ての範囲に含まれるものが、防除成分の種類、原液に含まれる溶剤の有無や防除成分との比率、溶剤の種類、噴射剤の種類にかかわらず、本件特許明細書等の【0005】に記載された発明の課題を解決できると当業者が認識し得るとは認められず、本件特許の優先日における技術常識に照らしても、本件特許発明1及び5の範囲まで、本件特許明細書等に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは認められない。 よって、本件特許発明1及び5は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~4についても同様である。 以上のことから、本件特許発明1~5に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 理由2(新規性及び進歩性) 本件特許発明1及び2は、甲1の1及び甲1の2により認定される本件特許の優先日前に公然実施された方法の発明(以下、「甲1方法発明」という。)、甲2の1及び甲2の2により認定される本件特許の優先日前に公然実施された方法の発明(以下「甲2方法発明」という。)、又は、甲3の1、甲3の2及び甲3の3により認定される本件特許の優先日前に公然実施された発明(以下「甲3方法発明」という。)と同一である。 また、本件特許発明5は、甲1の1及び甲1の2により認定される本件特許の優先日前に公然実施された製品の発明(以下「甲1発明」という。)、甲2の1及び甲2の2により認定される本件特許の優先日前に公然実施された製品の発明(以下「甲2発明」という。)、又は、甲3の1、甲3の2及び甲3の3により認定される本件特許の優先日前に公然実施された製品の発明(以下「甲3発明」という。)と同一である。 よって、本件特許発明1、2及び5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、また、前記公然実施された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に対する特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 理由3(進歩性) 本件特許発明1~5は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲6、甲9の1及び甲9の2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に対する特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第5 当審合議体の判断 1 取消理由通知に記載した取消理由について (1) 理由1(サポート要件)について 本件訂正により、本件訂正発明1~5は、「エアゾール組成物」が「パラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない」ものに特定され、定量室の容積が「0.1~1.0mL」に特定され、噴口の噴口径R(mm)と噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が「10~31.3」に特定された。 そして、エアゾール組成物に関して、本件特許明細書等の【0047】の記載に基づき「パラフィン類または低級アルコールを含」ものである点が限定され、作用効果が確認されたものに限定された。 また、噴口の噴口径R(mm)と噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)に関して、本件特許明細書等の【0046】の記載に基づき、作用効果が確認されたものに限定された。 さらに、定量室の容積に関して、本件特許明細書等の【0046】の記載に基づき、その上限の値として「1.0mL」が特定され、それよりも吐出量が少なければ、「床面などの噴射周囲への汚染がなく、噴口周囲への液ダレを生じにくい」という作用効果が「1.0mL」のものと同等以上となることは当業者にとって明らかであるから、その数値を上限値としたものであり、その下限値については、その根拠は示されていないが、少なくとも匍匐害虫に対して0.1mL程度の防除成分を噴射すれば、多少なりとも防除効果は期待できると推測される。 してみると、本件訂正発明1~5は本件特許明細書等に記載したものとなり、取消理由における理由1を有しない。 (2) 理由2(新規性、進歩性)について ア 取消理由通知において引用した証拠に記載された事項 (ア) 甲1の1及び甲1の2 a 甲1の1に記載された事項 甲1の1は、大日本除虫菊株式会社の市販製品「ダニよけハーブ4ショット」の製品台紙であり、以下の記載がある。 「 [図:0001434169000001.jpg] 」 「 [図:0001434169000002.jpg] 」 上記の記載より、甲1の1には、以下の記載(以下「甲1の1記載事項」という。)が存在すると認められる。 「●1週間に一度のダニよけ習慣で、ダニのいない快適空間!」 「●4回押すだけ、部屋中ダニよけ!」 「●これ1本(20ml)で40ショット」 「有効成分 セバシン酸ジブチル」 「内容量 20ml」 「高圧ガス:LPG」 「一石6ml」 また、甲1の1には、当該商品を示すバーコードとともに以下の数字が記載されている。 「4 987115 541535」 b 甲1の2に記載された事項 甲1の2は大日本除虫菊株式会社のカタログであり、「ALL SEASON GUIDE 2010」とあることから、2010(平成22)年に頒布開始されたものであり、以下の記載がある。 「 [図:0001434169000003.jpg] 」(第11頁上部) 「 [図:0001434169000004.jpg] 」(第11頁下部) 「 [図:0001434169000005.jpg] 」(第31頁右上欄) 上記の記載より、甲1の2の第11頁には、以下の記載が存在すると認められる。 「1本であらゆるお部屋のダニよけに」 「週に1回お部屋に4ショットするだけ。 エアゾールタイプのダニよけ剤、無香料で新登場。」 「ダニよけハーブ 4ショット」 「1本で家中あらゆるお部屋に使える」 「無駄のない定量噴射タイプで、1本約40ショット使用可能。」 「ショット数の目安 4.5畳 3ショット 6畳 4ショット 8畳 6ショット 12条 8ショット 押入れ 1ショット」 「スプレータイプだから気になるところの集中処理もできます」 また、甲1の2の第31頁には、以下の記載が存在すると認められる。 「お部屋の空間に6畳あたり4ショットするだけで、お部屋全体を約1週間ダニから守る定量噴射式ダニよけ剤です。」 以上の事項をまとめて、以下「甲1の2記載事項」という。 さらに、甲1の2の第31頁には、「ダニよけハーブ 4ショット」を示すJANコードとともに以下の数字が記載されている。 「4 987115 541535」 (イ) 甲2の1及び甲2の2 a 甲2の1に記載された事項 甲2の1は、フマキラー株式会社の市販製品「ゴキブリすき間にワンプッシュPRO」の製品台紙であり、以下の記載がある。 「 [図:0001434169000006.jpg] 」 「 [図:0001434169000007.jpg] 」 上記の記載より、甲2の1には、以下の記載が存在すると認められる。 「ゴキブリすき間にワンプッシュPRO」 「ゴキブリが潜んでいそうなすき間にワンプッシュするだけ!」 「【有効成分】d-d-T-シフェノトリン(ピレスロイド系)…1g/本 【その他の成分】ミリスチン酸イソプロピル、LPガス」 「【内容量】20mL. 火気厳禁 第三石油類 3.2mL」 以上の事項をまとめて、以下「甲2の1記載事項」という。 また、甲2の1には、当該商品を示すバーコードとともに以下の数字が記載されている。 「4 902424 440324」 b 甲2の2に記載された事項 甲2の2は、「2017 FUMAKILLA PRODUCTS GUIDE」と記載されていることから、2017(平成29)年に頒布開始された、フマキラー株式会社のカタログであり、以下の記載がある。 「 [図:0001434169000008.jpg] 」(第18頁上部) 「 [図:0001434169000009.jpg] 」(第45頁下部) 上記の記載より、甲2の2の第18頁には、以下の記載が存在すると認められる。 「世界初のゴキブリ用ワンプッシュ剤」 「ゴキブリに向けて噴霧を続けるエアゾール製品と異なり、ワンプッシュで優れた効果を発揮。」 「効き目が見える追い出し効果。」 「ミクロの霧がすき間の奥まで届いて効果を発揮。」 「NEW20ml 約80回使える」 また、甲2の2の第45頁には、以下の記載が存在すると認められる。 「世界初のゴキブリ用ワンプッシュ式殺虫剤」 「ゴキブリワンプッシュ」 以上の事項をまとめて、以下「甲2の2記載事項」という。 また、甲2の2の第45頁には、ゴキブリワンプッシュを示すバーコードとともに以下の数字が記載されている。 「4 902424 440324」 (ウ) 甲3の1、甲3の2及び甲3の3 a 甲3の1に記載された事項 甲3の1は、アース製薬株式会社の市販製品「アースゴキプッシュプロ1」の製品台紙であり、以下の記載がある。 「 [図:0001434169000010.jpg] 」 「 [図:0001434169000011.jpg] 」 上記の記載より、甲3の1には、以下の記載が存在すると認められる。 「アースゴキプッシュプロ1」 「内容量:34ml」 「有効成分:ペルメトリン(ピレスロイド系)5.1g/本」 「●本品34mlで約160回使用できます。」 「第三石油類 8.2mL」 以上の事項をまとめて、以下「甲3の1記載事項」という。 また、甲3の1には、当該商品を示すバーコードとともに以下の数字が記載されている。 「4 901080 012418」 b 甲3の2に記載された事項 甲3の2は、アース製薬株式会社の販売促進用チラシであり、以下の記載がある。 「 [図:0001434169000012.jpg] 」(表面上部) 「 [図:0001434169000013.jpg] 」(裏面中央部) 「 [図:0001434169000014.jpg] 」(裏面下部) 上記の記載より、甲3の2の表面及び裏面中央部には、以下の記載が存在すると認められる。 「アースゴキプッシュプロ1」 「1プッシュするだけで隠れたゴキブリを1ヵ月駆除!」 「すき間に使いやすいノズルを採用」 「使いやすさにこだわった1プッシュ式スプレー」 以上の事項をまとめて、以下「甲3の2記載事項」という。 また、甲3の2の裏面の下部には、「アースゴキプッシュプロ1 160回分」と記載され、当該商品を示すバーコードとともに以下の数字が記載されている。 「4 901080 012418」 また、「2017年12月現在」との記載がある。 c 甲3の3に記載された事項 甲3の3は、アース製薬株式会社のプレスリリースであり、以下の記載がある。 「 [図:0001434169000015.jpg] 」 「 [図:0001434169000016.jpg] 」 「 [図:0001434169000017.jpg] [図:0001434169000018.jpg] 」 上記の記載より、甲3の3には、以下の記載が存在すると認められる。 「1プッシュするだけで隠れたゴキブリを1ヵ月駆除!「アースゴキプッシュプロ1」新発売」 「アース製薬株式会社 2018年2月20日 11時01分」 「アース製薬株式会社(本社:東京都千代田区、社長:川端克宜)は、1プッシュで手軽にすき間に潜むゴキブリを駆除できる、ワンプッシュタイプのゴキブリ駆除剤「アースゴキプッシュプロ1」を、2月20日より全国で新発売いたします。」 「【発売日・地域】 2018年2月20日 (火) ・全国」 「【仕様・価格】」 「アースゴキプッシュプロ1 160回分 34mL オープン価格」 以上の事項をまとめて、以下「甲3の3記載事項」という。 (エ) 甲4 甲4は、株式会社エージェンシーアシスト、計測サービスチームにおいて、甲1の1に示した大日本除虫菊株式会社の市販製品「ダニよけハーブ4ショット」、甲2の1に示したフマキラー株式会社の市販製品「ゴキブリすき間にワンプッシュPRO」、及び、甲3の1に示したアース製薬株式会社の市販製品「アースゴキプッシュプロ1」のノズルについて、噴射通路の長さL、噴口の噴口径R、及び、L/Rの値を実測し、その結果を示したものである。 その結果は、以下に示すとおりである。 [図:0001434169000019.jpg] イ 公然実施発明について (ア) 甲1の1及び甲1の2より認定できる製品 a 甲1の1及び甲1の2の記載より認定できる事項 甲1の1と甲1の2は、いずれも、「4 987115 541535」のコードで示される商品であり、同じ製品(以下「甲1製品」という。)である。そして、甲1の2より、2010(平成22)年に頒布開始された大日本除虫菊株式会社のカタログに掲載されたものであるから、甲1製品は、2010年時点において広く販売されていた製品である。 甲1の2の第11頁上部の図の右下端に示された甲1製品の外観写真を参照すると、甲1製品が、有効成分を内蔵する本体部と、直線状のノズルを有し、ノズルには噴口があり、直線状のノズルには噴口に至る噴射通路が形成される点が見て取れる。 甲1の2記載事項において、「ショット数の目安」「4.5畳 3ショット」「6畳 4ショット」「8畳 6ショット」「12畳 8ショット」「押入れ 1ショット」とあることから、対象面積に応じてショット数を変更する定量噴射のスプレータイプのダニよけ剤である点が認定できる。 そして、甲4を参照すると、甲1製品は、ノズルの噴射通路の長さLが14.00mm、噴口の噴口径Rが0.697mm、L/Rが20.1であることが認定できる。 また、甲1の2記載事項より、20mlで約40ショット使用することができることが認定できることから、1回あたりの散布量は約0.5mlである。 さらに、甲1の1記載事項において、「一石」は第一石油類であり、「一石6ml」とあるから、20mlのうち、6mlは、有効成分の溶媒である第一石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPGが占めると認められる。 b 甲1製品 以上のことから、甲1製品は、本件特許の優先日前に販売されていた製品であって、以下の構成を有するものであると認められる。 有効成分であるセバシン酸ジブチルを内蔵する本体部と、噴口と噴口に至る噴射通路が形成された直線状のノズルを有し、 対象面積に応じてショット数を変更する定量噴射のスプレータイプのダニよけ剤であって、 ノズルの噴射通路の長さLが14.00mm、噴口の噴口径Rが0.697mm、L/Rが20.1であり、 内容量が20mlであって、20mlで40ショット使用することができることから、1回あたりの散布量は約0.5mlであり、 20mlのうち6mlは、有効成分の溶媒である第一石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPGが占める 「ダニよけハーブ4ショット」。 (イ) 甲2の1及び甲2の2より認定できる製品 a 甲2の1及び甲2の2の記載より認定できる事項 甲2の1と甲2の2は、いずれも、「4 902424 440324」のコードで示される商品であり、同じ製品(以下「甲2製品」という。)である。そして、甲2の2より、2017(平成29)年に頒布開始されたフマキラー株式会社のカタログに掲載されたものであるから、甲2製品は、2017年時点において広く販売されていた製品である。 甲2の2の第18頁上部の図の右上部又は左下部に示された甲2製品の使用形態のイラストを参照すると、甲2製品が、有効成分を内蔵する本体部と、直線状のノズルを有し、ノズルには噴口があり、直線状のノズルには噴口に至る噴射通路が形成される点が見て取れる。 甲2の1記載事項に「ゴキブリが潜んでいそうなすき間にワンプッシュするだけ!」とあり、甲2の2記載事項に「世界初のゴキブリ用ワンプッシュ剤」、「ゴキブリに向けて噴霧を続けるエアゾール製品と異なり、ワンプッシュで優れた効果を発揮。」とあることから、ワンプッシュ式殺虫剤である点が認定できる。 そして、甲4を参照すると、甲2製品は、ノズルの噴射通路の長さLが34.22mm、噴口の噴口径Rが0.775mm、L/Rが44.2であることが認定できる。 また、甲2の1に基づくと、20mlで約80回使用することができることから、1回あたりの散布量は約0.25mlである。 さらに、「第三石油類 3.2mL」の記載があることから、内容量20mLのうち、3.2mLは、有効成分の溶媒である第三石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPガスが占めると認められる。 b 甲2製品 以上のことから、甲2製品は、本件特許の優先日前に販売されていた製品であって、以下の構成を有するものであると認められる。 有効成分であるd-d-T-シフェノトリン(ピレスロイド系)を内蔵する本体部と、噴口と噴口に至る噴射通路が形成された直線状のノズルを有するワンプッシュ式殺虫剤であって、 ミクロの霧がすき間の奥まで届いて効果を発揮するものであり、 ノズルの噴射通路の長さLが34.22mm、噴口の噴口径Rが0.775mm、L/Rが44.2であり、 内容量が20mLであって、20mLで約80回使用することができることから、1回あたりの散布量は約0.25mLであり、 20mLのうち3.2mLは、有効成分の溶媒である第三石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPガスが占める 「ゴキブリすき間にワンプッシュPRO」。 (ウ) 甲3の1、甲3の2及び甲3の3より認定できる製品 a 甲3の1、甲3の2及び甲3の3の記載より認定できる事項 甲3の1と甲3の2は、いずれも、「4 901080 012418」のコードで示される「アースゴキプッシュプロ1 160回分」という商品であり、同じ製品(以下「甲3製品」という。)である。そして、甲3の3には、ワンプッシュタイプのゴキブリ駆除剤「アースゴキプッシュプロ1」の「発売開始日・地域」は「2018年2月20」「全国」であるから、甲3製品は、2018年2月20より全国で販売されたものであると認定できる。 甲3の2の裏面中央部に掲載された写真及び使用箇所を説明するためのイラストを参照すると、甲3製品が、ゴキブリの駆除剤を内蔵する本体部と、直線状のノズルを有し、ノズルには噴口があり、直線状のノズルには噴口に至る噴射通路が形成される点が見て取れる。 そして、甲4を参照すると、甲3製品は、ノズルの噴射通路の長さLが52.84mm、噴口の噴口径Rが1.551mm、L/Rが34.1であることが認定できる。 また、甲3の1記載事項及び甲3の2記載事項に基づくと、34mlで約160回使用することができることから、1回あたりの散布量は約0.21mlである。 さらに、甲3の1記載事項より「第三石油類 8.2mL」が認定できることから、内容量34mLのうち、8.2mLは、第三石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPガスが占めると認められる。 b 甲3製品 以上のことから、甲3製品は、本件特許の優先日前に販売されていた製品であって、以下の構成を有するものであると認められる。 有効成分であるペルメトリン(ピレスロイド系)を内蔵する本体部と、噴口と噴口に至る噴射通路が形成された直線状のノズルを有するワンプッシュ式スプレーのゴキブリ駆除剤であって、 ノズルの噴射通路の長さLが52.84mm、噴口の噴口径Rが1.551mm、L/Rが34.1であり、 内容量が34mLであって、34mLで約160回使用することができることから、1回あたりの散布量は約0.21mLであり、 34mLのうち8.2mLは、有効成分の溶媒である第三石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPガスが占める 「アースゴキプッシュプロ1」。 ウ 本件訂正発明5について (ア) 甲1発明との対比 甲1製品は、上記イ(ア)aに示したように、2010年時点において広く販売されていたものであるから、甲1製品に係る発明(以下「甲1発明」という。)は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明である。 そこで、本件訂正発明5と甲1発明とを対比する。 a 構成5Aに関して 甲1発明における第一石油類は有効成分の溶媒であるから、甲1発明における有効成分を含む第一石油類は、本件訂正発明5の構成5Aにおける原液に相当する。 甲1発明における「高圧ガスであるLPG」は、本件訂正発明5の構成5Aにおける「噴射剤」に相当する。 また、甲1発明における「有効成分」「を内蔵」し、「内容量が20mlであって」、「20mlのうち6mlは、有効成分の溶媒である第一石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPGが占める」「本体部」は、本件訂正発明5の構成5Aにおける「原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器」に相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明5の構成5Aに相当する構成を有する。 b 構成5Bに関して 甲1発明は、「ショット数を変更する定量噴射のスプレータイプ」のものであり、「1回あたりの散布量は約0.5ml」である。そして、定量噴射のものが、もっぱら、1回あたりの散布量に対応する定量室が設けられた有効成分の開閉機構を有することは、当業者の技術常識である。 してみると、甲1発明は、容積が「1回あたりの散布量」である「約0.5ml」の定量室が設けられた有効成分の開閉機構を有することは自明であり、それは、本件訂正発明5の構成5Bにおける「容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブ」に相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明5の構成5Bに相当する構成を有する。 c 構成5Cに関して 甲1発明における「噴口」「が形成された直線状のノズル」は、本件訂正発明5の構成5Cにおける「エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材」に相当する。 また、甲1発明における「噴口が」「形成された直線状のノズル」が有効成分の開閉機構に接続され、有効成分を内蔵する本体部から有効成分が供給されることは当業者にとって明らかであるから、甲1発明において、「噴口」「が形成された直線状のノズル」は、定量室が設けられた有効成分の開閉機構を介して「有効成分」「を内蔵する本体部」に接続されると認められる。 そして、甲1発明における定量室が設けられた有効成分の開閉機構を介して「有効成分」「を内蔵する本体部」に接続される「噴口」「が形成された直線状のノズル」は、本件訂正発明5の構成5Cにおける「前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材」に相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明5の構成5Cに相当する構成を有する。 d 構成5Dに関して 甲1発明における「ノズル」が「噴口と噴口に至る噴射通路が形成された直線状」であることは、本件訂正発明5の構成5Dにおける「噴射部材」が「一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成され」たものであることに相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明5の構成5Dに相当する構成を有する。 e 構成5Eに関して 甲1発明における「ノズルの噴射通路の長さLが14.00mm、噴口の噴口径Rが0.697mm、L/Rが20.1であ」ることは、本件訂正発明5の構成5Eにおける「前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であ」るとの特定事項を満たす。 よって、甲1発明は、本件訂正発明5の構成5Eに相当する構成を有する。 f 構成5Fに関して 甲1発明の「20mlのうち6mlは、有効成分の溶媒である第一石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPGが占める」ことは、第一石油類:LPGの体積比が6:14(30:70)であるから、本件訂正発明5の構成5Fにおける「前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~40:60である」との特定事項を満たす。 よって、甲1発明は、本件訂正発明5の構成5Fに相当する構成を有する。 g 構成5Hに関して 甲1発明の「ダニよけハーブ4ショット」は、本件訂正発明5の構成5Hにおける「匍匐害虫防除用エアゾール装置」に相当する。 よって、甲1発明は、本件訂正発明5の構成5Hに相当する構成を有する。 h 一致点及び相違点 上記aからgより、本件訂正発明5と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 5A 原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、 5B 前記エアゾール容器に取り付けられ、容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブと、 5C 前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材と、を備え、 5D 前記噴射部材は、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成されており、 5E 前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であり、 5F 前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~40:60であり、 5H 匍匐害虫防除用エアゾール装置 そして両者は以下の点で相違する。 <相違点1> (構成5Gに関して) 本件訂正発明5は、エアゾール組成物がパラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まないものであるのに対して、甲1発明は、有効成分の溶媒が第一石油類であるから、エアゾール組成物にはパラフィン類、及び、低級アルコールは含まれないとともに、エアゾール組成物にセバシン酸ジブチルが含まれる点。 i 相違点についての検討 本件訂正発明5は、相違点1に係る構成を備えていることから、本件訂正発明5は、甲1発明ではない。 また、甲1発明において、有効成分の溶媒を第一石油類からパラフィン類または低級アルコールに変更し、かつ、セバシン酸ジブチルを含まないものとすることが、当業者にとって容易になし得ることとはいえない。 j 小括 よって、本件訂正発明5は、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ) 甲2発明との対比 甲2製品は、上記イ(イ)aに示したように、2017年に頒布開始されたフマキラー株式会社のカタログに掲載されたものであるから、甲2製品に係る発明(以下「甲2発明」という。)は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明である。 そこで、本件訂正発明5と甲2発明とを対比する。 a 構成5Aに関して 甲2発明における第三石油類は有効成分の溶媒であるから、甲2発明における有効成分を含む第三石油類は、本件訂正発明5の構成5Aにおける原液に相当する。 甲2発明における「高圧ガスであるLPガス」は、本件訂正発明5の構成5Aにおける「噴射剤」に相当する。 また、甲2発明における「有効成分」「を内蔵」し、「内容量が20mLであって」、「20mLのうち3.2mLは、有効成分の溶媒である第三石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPガスが占める」「本体部」は、本件訂正発明5の構成5Aにおける「原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器」に相当する。 よって、甲2発明は、本件訂正発明5の構成5Aに相当する構成を有する。 b 構成5Bに関して 甲2発明は、「ワンプッシュ式殺虫剤」であり、「1回あたりの散布量は約0.25mL」である。そして、散布量が規定される「ワンプッシュ式」のものが、もっぱら、散布量に対応する定量室が設けられた有効成分の開閉機構を有することは、当業者の技術常識である。 してみると、甲2発明は、容積が「1回あたりの散布量」である「約0.25mL」の定量室が設けられた有効成分の開閉機構を有することは自明であり、それは、本件訂正発明5の構成5Bにおける「容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブ」に相当する。 よって、甲2発明は、本件訂正発明5の構成5Bに相当する構成を有する。 c 構成5Cに関して 甲2発明における「噴口が」「形成された直線状のノズル」は、本件訂正発明5の構成5Cにおける「エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材」に相当する。 また、甲2発明における「噴口が」「形成された直線状のノズル」が有効成分の開閉機構に接続され、有効成分を内蔵する本体部から有効成分が供給されることは当業者にとって明らかであるから、甲2発明において、「噴口が」「形成された直線状のノズル」は、定量室が設けられた有効成分の開閉機構を介して「有効成分」「を内蔵する本体部」に接続されると認められる。 そして、甲2発明における定量室が設けられた有効成分の開閉機構を介して「有効成分」「を内蔵する本体部」に接続される「噴口」「が形成された直線状のノズル」は、本件訂正発明5の構成5Cにおける「前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材」に相当する。 よって、甲2発明は、本件訂正発明5の構成5Cに相当する構成を有する。 d 構成5Dに関して 甲2発明における「ノズル」が「噴口と噴口に至る噴射通路が形成された直線状」であることは、本件訂正発明5の構成5Dにおける「噴射部材」が「一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成されて」いることに相当する。 よって、甲2発明は、本件訂正発明5の構成5Dに相当する構成を有する。 e 構成5Eに関して 本件訂正発明5の構成5Eにおける「前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であ」ることと、甲2発明における「ノズルの噴射通路の長さLが34.22mm、噴口の噴口径Rが0.775mm、L/Rが44.2であ」ることは、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が特定されている点で一致する。 f 構成5Fに関して 甲2発明の「20mLのうち3.2mlは、有効成分の溶媒である第三石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPガスが占める」ことは、第三石油類:LPガスの体積比が3.2:16.8(16:84)であるから、本件訂正発明5の構成5Fにおける「前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~40:60である」との特定事項を満たす。 よって、甲2発明は、本件訂正発明5の構成5Fに相当する構成を有する。 g 構成5Gに関して 甲2発明の「有効成分の溶媒」が「第三石油類であ」り、「有効成分」が「d-d-T-シフェノトリン(ピレスロイド系)」であることは、第三石油類はパラフィン類を包含しており、有効成分として「d-d-T-シフェノトリン(ピレスロイド系)」と「セバシン酸ジブチル」を同時に含有させることは通常行われないことから、本件訂正発明5の構成5Gにおける「前記エアゾール組成物がパラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない」との特定事項を満たす。 よって、甲2発明は、本件訂正発明5の構成5Gに相当する構成を有する。 h 構成5Hに関して 甲2発明の「ゴキブリすき間にワンプッシュPRO」は、本件訂正発明5の構成5Hにおける「匍匐害虫防除用エアゾール装置」に相当する。 よって、甲2発明は、本件訂正発明5の構成5Hに相当する構成を有する。 i 一致点及び相違点 上記aからhより、本件訂正発明5と甲2発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 5A 原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、 5B 前記エアゾール容器に取り付けられ、容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブと、 5C 前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材と、を備え、 5D 前記噴射部材は、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成されており、 5E’前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が特定されており、 5F 前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~40:60であり、 5G 前記エアゾール組成物がパラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない 5H 匍匐害虫防除用エアゾール装置。 そして両者は以下の点で相違する。 <相違点2> (構成5Eに関して) 本件訂正発明5は、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であるのに対して、甲2発明は、「ノズルの噴射通路の長さLが34.22mm、墳口の墳口径R0.775がmm、L/Rが44.2であ」る点。 j 相違点についての検討 本件訂正発明5は、相違点2に係る構成を備えていることから、本件訂正発明5は、甲2発明ではない。 また、甲2発明は、第三石油類を含むエアゾール組成物を用いたものであるが、甲2の1及び甲2の2には、液だれに関連した記載が存在しないことから、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)の数値範囲を検討する動機は見いだせず、そのことによって液だれの抑制を行うことを当業者が容易になし得ることとは認められない。 してみると、相違点2に係る構成に係る本件訂正発明5に係る構成は、甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 k 小括 よって、本件訂正発明5は、甲2発明ではなく、また、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ) 甲3発明との対比 甲3製品は、上記イ(ウ)aに示したように、2018年2月20日に日本全国において発売開始されたものであるから、甲3製品に係る発明(以下「甲3発明」という。)は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明である。 そこで、本件訂正発明5と甲3発明とを対比する。 a 構成5Aに関して 甲3発明における第三石油類は有効成分の溶媒であることは当業者の技術常識であるから、甲3発明における有効成分を含む第三石油類は、本件訂正発明5の構成5Aにおける原液に相当する。 甲3発明における「高圧ガスであるLPガス」は、本件訂正発明5の構成5Aにおける「噴射剤」に相当する。 また、甲3発明における「有効成分を内蔵」し、「内容量が34mLであって」、「34mLのうち8.2mLは、有効成分の溶媒である第三石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPガスが占める」「本体部」は、本件訂正発明5の構成5Aにおける「原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器」に相当する。 よって、甲3発明は、本件訂正発明5の構成5Aに相当する構成を有する。 b 構成5Bに関して 甲3発明は、「ワンプッシュ式」のものであり、「1回あたりの散布量は約0.21ml」である。そして、散布量が規定される「ワンプッシュ式」のものが、もっぱら、散布量に対応する定量室が設けられた有効成分の開閉機構を有することは、当業者の技術常識である。 してみると、甲3発明は、容積が「1回あたりの散布量」である「約0.21ml」の定量室が設けられた有効成分の開閉機構を有することは自明であり、それは、本件訂正発明5の構成5Bにおける「容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブ」に相当する。 よって、甲3発明は、本件訂正発明5の構成5Bに相当する構成を有する。 c 構成5Cに関して 甲3発明における「噴口」「が形成された直線状のノズル」は、本件訂正発明5の構成5Cにおける「エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材」に相当する。 また、甲3発明における「噴口が」「形成された直線状のノズル」が有効成分の開閉機構に接続され、有効成分を内蔵する本体部から有効成分が供給されることは当業者にとって明らかであるから、甲3発明において、「噴口が」「形成された直線状のノズル」は、定量室が設けられた有効成分の開閉機構を介して「有効成分」「を内蔵する本体部」に接続されると認められる。 そして、甲3発明における定量室が設けられた有効成分の開閉機構を介して「有効成分」「を内蔵する本体部」に接続される「噴口」「が形成された直線状のノズル」は、本件訂正発明5の構成5Cにおける「前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材」に相当する。 よって、甲3発明は、本件訂正発明5の構成5Cに相当する構成を有する。 d 構成5Dに関して 甲3発明における「ノズル」が「噴口と噴口に至る噴射通路が形成された直線状」であることは、本件訂正発明5の構成5Dにおける「噴射部材」が「一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成され」たものであることに相当する。 よって、甲3発明は、本件訂正発明5の構成5Dに相当する構成を有する。 e 構成5Eに関して 本件訂正発明5の構成5Eにおける「前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であ」ることと、甲3発明における「ノズルの噴射通路の長さLが52.84mm、噴口の噴口径Rが1.551mm、L/Rが34.1であ」ることは、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が特定されている点で一致する。 f 構成5Fに関して 甲3発明の「34mLのうち8.2mLは、有効成分の溶媒である第三石油類であり、他の体積部分は、高圧ガスであるLPガスが占める」ことは、第三石油類:LPガスの体積比が8.2:25.8(約24.1:約75.9)であるから、本件訂正発明5の構成5Fにおける「前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~40:60である」との特定事項を満たす。 よって、甲3発明は、本件訂正発明5の構成5Fに相当する構成を有する。 g 構成5Gに関して 甲3発明の「有効成分の溶媒」が「第三石油類であ」り、「有効成分」が「ペルメトリン(ピレスロイド系)」であることは、第三石油類はパラフィン類を包含しており、有効成分として「ペルメトリン(ピレスロイド系)」と「セバシン酸ジブチル」を同時に含有させることは通常行われないことから、本件訂正発明5の構成5Gにおける「前記エアゾール組成物がパラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない」との特定事項を満たす。 よって、甲3発明は、本件訂正発明5の構成5Gに相当する構成を有する。 h 構成5Hに関して 甲3発明の「アースゴキプッシュプロ1」は、本件訂正発明5の構成5Hにおける「匍匐害虫防除用エアゾール装置」に相当する。 よって、甲3発明は、本件訂正発明5の構成5Hに相当する構成を有する。 i 一致点及び相違点 上記aからhより、本件訂正発明5と甲3発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 5A 原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、 5B 前記エアゾール容器に取り付けられ、容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブと、 5C 前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材と、を備え、 5D 前記噴射部材は、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成されており、 5E’前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が特定されており、 5F 前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~40:60であり、 5G 前記エアゾール組成物がパラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない 5H 匍匐害虫防除用エアゾール装置 そして両者は以下の点で相違する。 <相違点3> (構成5Eに関して) 本件訂正発明5は、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であるのに対して、甲2発明は、「ノズルの噴射通路の長さLが52.84mm、墳口の墳口径Rが1.551mm、L/Rが44.2であ」る点。 j 相違点についての検討 本件訂正発明5は、相違点3に係る構成を備えていることから、本件訂正発明5は、甲3発明ではない。 また、甲3発明は、第三石油類を含むエアゾール組成物を用いたものであるが、甲3の1、甲3の2及び甲3の3には、液だれに関連した記載が存在しないことから、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)の数値範囲を検討する動機は見いだせず、そのことによって液だれの抑制を行うことを当業者が容易になし得ることとは認められない。 してみると、相違点3に係る構成に係る本件訂正発明5に係る構成は、甲3発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 k 小括 よって、本件訂正発明5は、甲3発明ではなく、また、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (エ) まとめ 以上のことから、本件訂正発明5は、甲1発明、甲2発明又は甲3発明ではなく、また、甲1発明、甲2発明又は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件訂正発明1について 甲1の2、甲2の2及び甲3の2には、それぞれ、害虫防除のための甲1製品、甲2製品及び甲3製品の使用方法が解説されていることから、甲1製品に係る害虫防除方法の発明、甲2製品に係る害虫防除方法の発明、及び、甲3製品に係る害虫防除方法の発明(以下、それぞれ「甲1方法発明」等という。)も、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明である。 そして、本件訂正発明1は、実質的に、本件訂正発明5であるエアゾール装置を用いて、噴口からエアゾール組成物を噴射して匍匐害虫を防除する、匍匐害虫の防除方法の発明であるから、本件訂正発明1と、甲1方法発明、甲2方法発明、及び、甲3方法発明とを対比すると、それぞれ、上記した相違点1、相違点2及び相違点3において両者は相違する。 そして、相違点1、相違点2及び相違点3については、上記ウ(ア)i、ウ(イ)j及びウ(ウ)jにおいて検討したとおりであり、本件訂正発明1は、甲1方法発明、甲2方法発明、又は、甲3方法発明ではなく、また、本件訂正発明1は、甲1方法発明、甲2方法発明、又は、甲3方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 オ 本件訂正発明2~4について 本件訂正発明2~4は、いずれも、本件訂正発明1を引用するものであって、本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。 そうすると上記エのとおり、本件訂正発明1が、甲1方法発明、甲2方法発明、又は、甲3方法発明ではなく、また、本件訂正発明1は、甲1方法発明、甲2方法発明、又は、甲3方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件訂正発明2~4も甲1方法発明、甲2方法発明、又は、甲3方法発明ではなく、また、甲1方法発明、甲2方法発明、又は、甲3方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3) 理由3(進歩性)について ア 甲号証の記載事項等 (ア) 甲6に記載された事項、甲6装置発明及び甲6方法発明 a 甲6に記載された事項 甲6には、以下の記載がある(下線は、当審合議体が付した。以下同様。)。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、エアゾール製品および害虫防除方法に関する。より詳細には、本発明は、室内の対象物(たとえばカーテン等の布製品や、壁紙、家具等)への付着が抑制され、対象物を汚染しにくいエアゾール製品および害虫防除方法に関する。」 「【発明を実施するための形態】 【0014】 <エアゾール製品> 本発明の一実施形態のエアゾール製品は、殺虫成分を含む原液と、噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填され、エアゾール組成物を噴射する噴口が形成されたエアゾール製品である。原液は、溶剤を含まないか、または、オクタノール/水分配係数Log Powが8.0以下であるエアゾール溶剤を含む。原液と噴射剤との配合割合(容量比)は、1/99~16/84である。噴口から50cm離れた位置における、噴射されたエアゾール組成物の体積積算分布に基づく50%平均粒子径は、20μm以下となるよう調整されている。以下、それぞれの構成について説明する。なお、本実施形態のエアゾール製品は、殺虫成分の種類、溶剤の有無および種類、原液と噴射剤との配合割合、および、噴射されたエアゾール組成物の体積積算分布に基づく50%平均粒子径が上記特定の種類および範囲となるよう調整されていることを特徴とする。そのため、その他の構成(たとえばエアゾール製品の形状、他の成分および配合量、容器内圧等の各種物性等)は、上記範囲を満たすものであればよく、特に限定されない。したがって、以下の詳細な説明のうち、殺虫成分の種類、溶剤の有無および種類、原液と噴射剤との配合割合、および、噴射されたエアゾール組成物の体積積算分布に基づく50%平均粒子径が上記特定の種類および範囲となるよう調整されていること以外は、いずれも例示である。」 「【0016】 (原液) ・殺虫成分 殺虫成分は、原液としてエアゾール容器に充填される内容物であり、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、メパフルトリンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。これら殺虫成分は、たとえば、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ等のゴキブリ、クモ、ムカデ、アリ、ゲジ、ヤスデ、ダンゴムシ、ワラジムシ、シロアリ、ケムシ、ダニ、ノミ、トコジラミ、シラミ等の匍匐害虫、カ、ハエ、ガ、ハチ、カメムシ、カツオブシムシ、シバンムシ、キクイムシ、イガ、コイガ等の飛翔害虫を好適に防除し得る。これらの中でも、殺虫成分は、殺虫効果が高く、かつ、対象物への付着率が低い点からトランスフルトリンを含むことが好ましい。 【0017】 殺虫成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、殺虫成分の含有量は、エアゾール組成物中、0.5w/v%以上であることが好ましく、1.0w/v%以上であることがより好ましい。一方、殺虫成分の含有量は、エアゾール組成物中、10w/v%未満であることが好ましく、8w/v%以下であることがより好ましい。殺虫成分の含有量が0.5w/v%未満である場合、エアゾール製品は、殺虫効果を充分に発揮できない可能性がある。一方、殺虫成分の含有量が10w/v%以上である場合、エアゾール製品は、期待される効力の増加よりも使用感の低下の方が大きくなりやすい。 【0018】 ・溶剤 原液は、溶剤を含まないか、または、オクタノール/水分配係数Log Powが8.0以下であるエアゾール溶剤を含む。溶剤は、たとえば殺虫成分を均一に配合するために適宜に含有される。 【0019】 本実施形態のエアゾール製品は、溶剤を含まない場合か、または、溶剤を含む場合にはオクタノール/水分配係数Log Powが8.0以下であるエアゾール溶剤を含んでいる場合に限り、噴射されたエアゾール組成物の対象物への付着を抑制することができる。エアゾール溶剤が含まれることにより、殺虫成分は、エアゾール組成物中に均一に配合されやすい。なお、本実施形態では、このようなオクタノール/水分配係数Log Powが8.0以下であるエアゾール溶剤を含んでいることにより噴射されたエアゾール組成物の対象物への付着を抑制し得る場合に限り、これらオクタノール/水分配係数Log Powが8.0以下であるエアゾール溶剤以外の溶剤(オクタノール/水分配係数Log Powが8.0を超える溶剤)が含まれてもよい。 【0020】 エアゾール溶剤は、オクタノール/水分配係数Log Powが8.0以下であればよく、特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール溶剤は、エタノール(Log Pow=0.32)、イソプロピルアルコール(IPA)(Log Pow=0.05)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)(Log Pow=7.43)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Log Pow=0.121)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(Log Pow=0.3)、プロピレングリコールジアセテート(Log Pow=0.8)等である。これらの中でも、噴射されたエアゾール組成物の対象物への付着をより抑制しやすい点から、エアゾール溶剤は、イソプロピルアルコール、エタノールおよびミリスチン酸イソプロピルであることが好ましく、イソプロピルアルコール、エタノールであることがより好ましい。なお、「オクタノール/水分配係数Log Pow」は、有機化合物の水と1-オクタノールに対する親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水との2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数LogPowの形で一般的に表される。代表的なLogPowは、たとえばDaylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)等から入手し得る。 【0021】 また、エアゾール溶剤が含まれる場合において、エアゾール溶剤の比重は、20℃で0.77以上であることが好ましく、0.78以上であることがより好ましい。また、エアゾール溶剤の比重は、0.90以下であることが好ましく、0.88以下であることがより好ましい。エアゾール溶剤が含まれる場合において、比重が0.77~0.90であるエアゾール溶剤が配合されていることにより、噴射されたエアゾール組成物は、対象物により付着しにくい。 【0022】 エアゾール溶剤が含まれる場合、エアゾール溶剤の含有量は、原液中、99容量%以下であることが好ましく、80容量%以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、エアゾール溶剤は、エアゾール製品の効果を阻害せず、かつ、殺虫成分を均一に配合しやすい。 【0023】 ・任意成分 原液は、殺虫成分のほかに、適宜任意成分が含まれてもよい。一例を挙げると、その他の成分は、上記以外の殺虫成分、非イオン、陰イオンまたは陽イオン界面活性剤、ブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;クエン酸、アスコルビン酸等の安定化剤;タルク、珪酸等の無機粉体、殺菌剤(防黴剤)、消臭剤、芳香剤(香料)、色素等である。上記以外の殺虫成分としては、ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミンオイル、ネロリオイル、ペパーミントオイル、ベルガモットオイル、ブチグレンオイル、レモンオイル、レモングラスオイル、シナモンオイル、シトロネラオイル、ゼラニウムオイル、シトラール、l-メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、cis-ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8-シネオール、ゲラニオール、α-ピネン、p -メンタン-3,8-ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等の各種殺虫性の精油成分、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、アジピン酸ジブチル等の二塩基酸エステル類、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物、カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物、メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト等の殺虫性化合物が例示される。 【0024】 ・噴射剤 噴射剤は、原液とともにエアゾール容器に加圧充填される内容物である。噴射剤は、後述するバルブ機構が作動されることにより、エアゾール組成物とともに後述する噴射ボタンの噴口から噴射される。その際、噴射剤は、エアゾール組成物を噴射する際の推進力を付与するとともに、エアゾール組成物を微粒子化する。 【0025】 噴射剤の種類は特に限定されない。一例を挙げると、噴射剤は、液化ガスである。液化ガスとしては、液化石油ガス、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン等の炭素数3~5個の脂肪族炭化水素、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン等のハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテルおよびこれらの混合物等が例示される。液化ガスは、圧縮ガスが併用されてもよい。圧縮ガスとしては、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガス、圧縮空気等が例示される。 【0026】 液化ガスの充填量は特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスの充填量は、原液および噴射剤の合計に対し、20~99質量%である。また、液化ガスの充填量は、25℃におけるエアゾール容器内の圧力が0.1~0.7MPaとなる量であることが好ましい。液化ガスの充填量が20質量%未満である場合または圧力が0.1MPa未満となる量である場合、エアゾール組成物は、液だれ等が発生し、商品性を損なう虞がある。一方、液化ガスの充填量が99質量%を超える場合、または、圧力が0.7MPaを超える量である場合、エアゾール組成物は、内容物が容器から漏洩する傾向がある。 【0027】 噴射剤として圧縮ガスが併用される場合、圧縮ガスの充填量は特に限定されない。一例を挙げると、圧縮ガスの充填量は、25℃におけるエアゾール容器内の圧力が0.1~1.0MPaとなる量である。充填量が、圧力が0.1MPa未満となる量である場合、エアゾール組成物は、充分に薬剤が拡散しなくなる傾向がある。一方、充填量が、圧力が1.0MPaを超える量である場合、エアゾール組成物は、内容物が容器から漏洩する傾向がある。 【0028】 エアゾール製品全体の説明に戻り、原液と噴射剤との配合割合(容量比)は、1/99~16/84であればよい。原液の配合割合が1容量%未満である場合、殺虫成分による害虫の防除効果が不充分となり得る。一方、原液の配合割合が16容量%を超える場合、噴射されたエアゾール組成物は、壁などの対象物への付着が抑制されにくい傾向がある。 【0029】 (エアゾール容器) エアゾール容器は、エアゾール組成物を加圧充填するための容器である。エアゾール容器は、特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール容器は、上部に開口が形成された略円筒状の耐圧容器である。開口は、エアゾール組成物を充填するための充填口であり、原液が充填されたのち、後述するバルブ機構によって閉止される。 【0030】 エアゾール容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール容器の材質は、アルミニウムやブリキ等の金属、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂、耐圧ガラス等である。 【0031】 ・バルブ機構 バルブ機構は、エアゾール容器内に充填されたエアゾール組成物を取り出すための機構であり、エアゾール容器の開口に取り付けられ、開口を閉止する。 【0032】 ・ステム機構 ステム機構は、バルブ機構に取り付けられる部位であり、バルブ機構に取り込まれた原液および噴射剤を、後述する噴射ボタンに送るための内部通路が形成されている。内部通路は、ステム機構のステムラバーによって適宜開閉される。 【0033】 ・噴射ボタン 噴射ボタンは、エアゾール容器から、バルブ機構によってステム機構を介して取り込まれた原液を、噴射剤とともに噴射するための部材である。噴射ボタンには、エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成されている。 【0034】 本実施形態のエアゾール製品は、使用者によって噴射ボタンが操作されることにより、ステム機構およびバルブ機構が作動し、エアゾール容器内と外部とが連通する。これにより、エアゾール容器内のエアゾール組成物は、エアゾール容器内と外部との圧力差に従ってエアゾール容器から取り出され、噴射部材の噴口から噴射される。エアゾール組成物は、所定の粒子径となるよう適宜調整され、噴射される。 【0035】 本実施形態のエアゾール製品によって噴射されるエアゾール組成物は、噴口から50cm離れた位置における体積積算分布に基づく50%平均粒子径r50が20μm以下となるよう調整されている。なお、噴射されたエアゾール組成物の平均粒子径は、たとえばレーザー光回折式粒度測定装置(LDSA-1400A マイクロトラック・ベル(株)製)を用いて測定し得る。 【0036】 また、噴口から50cm離れた位置に設けられた綿製の布に対してエアゾール組成物を噴射する場合において、噴射されたエアゾール組成物のうち、布に付着したエアゾール組成物の量(50cm付着率)は、10質量%未満であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。なお、本実施形態において、50cm付着率は、噴口から50cm離れた位置に設けた綿製の布(寸法:15cm×15cm)に対して、25℃に調整したエアゾール組成物を、5回噴射(1回の噴射量:0.2cc)し、噴射後の布をガラス瓶容器(容量:140mL)に入れ、内標準物質およびアセトンを加え、付着した薬剤を抽出し、ガスクロマトグラフィにて定量し、噴射量に対する割合として算出し得る。 【0037】 本実施形態のエアゾール製品の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール製品は、エアゾール容器に原液を充填し、バルブ機構によってエアゾール容器の開口を閉止し、ステム機構を介して噴射剤を加圧充填することによって製造することができる。一例を挙げると、噴射ボタンとしては、トリガーボタン、プッシュダウンボタン等であってもよい。これらの噴射ボタンの噴口の大きさとしては、φ0.1~2.0mmであってもよく、噴口は複数であってもよい。 【0038】 以上、本実施形態のエアゾール製品によれば、噴射されるエアゾール組成物は、室内の対象物(たとえばカーテン等の布製品や、壁紙、家具等)への付着が抑制され、対象物を汚染しにくい。 【0039】 <害虫防除方法> 本発明の一実施形態の害虫防除方法は、殺虫成分を含む原液と、噴射剤とを含むエアゾール組成物が充填され、エアゾール組成物を噴射する噴口が形成されたエアゾール製品を用いて、エアゾール組成物を室内に噴霧する方法である。殺虫成分は、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、メパフルトリンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。原液は、溶剤を含まないか、または、オクタノール/水分配係数Log Powが8.0以下であるエアゾール溶剤を含む。原液と噴射剤との配合割合(容量比)は、1/99~16/84である。噴口から50cm離れた位置における、噴射されたエアゾール組成物の体積積算分布に基づく50%平均粒子径は、20μm以下となるよう調整されている。 【0040】 本実施形態の害虫防除方法を実施するにあたり、エアゾール成分を含むエアゾール組成物およびエアゾール製品は、いずれも上記実施形態において説明したものと同様のものを使用し得る。 【0041】 本実施形態において、噴射回数は特に限定されない。噴射回数は、1回であってもよく、複数回であってもよい。噴射回数が複数回である場合、エアゾール製品は、たとえば1回の噴射量を少量にすることができるため、より対象物への付着を抑制し得る。また、少量ずつ噴射されることにより、結果として、室内に浮遊し得るエアゾール組成物の割合を増やすことができ、薬効(殺虫効果、害虫防除効果)を長期間発現させやすい。 【0042】 また、本実施形態において、噴口から50cm離れた位置に設けられた綿製の布に対して、噴射されたエアゾール組成物のうち、布に付着したエアゾール組成物の量(50cm付着率)が10質量%未満となるように噴射され得る。 【0043】 以上、本実施形態の害虫防除方法によれば、エアゾール組成物が室内の対象物(たとえばカーテン等の布製品や、壁紙、家具等)に付着しにくく、対象物を汚染しにくい。また、結果として、付着しなかったエアゾール組成物は、室内に浮遊し続けやすい。浮遊するエアゾール組成物は、適宜、室内に拡散され、広範囲において薬効(殺虫効果、害虫防除効果)を長期間発現し得る。 【実施例】 【0044】 以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。 【0045】 <エアゾール製品> 使用したエアゾール製品の詳細を以下に示す。 噴射ボタン:(株)三谷バルブ製(品番:P94W W0668D"3")、噴口径:φ0.5mm、1回吐出量:約0.2cc) 【0046】 (実施例1) 100質量部のトランスフルトリン(原液)を、容量59mLのエアゾール容器に充填し、バルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(容量比)が1.4/98.6となるよう液化石油ガス(プロパン、イソブタンおよびノルマルブタンの混合物 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、エアゾール製品を作製した。 【0047】 (実施例2) 100質量部のトランスフルトリンを、原液中の濃度が50重量/容量%となるように100質量部のイソプロピルアルコール(IPA)とともに容量59mLのエアゾール容器に充填し(原液)、バルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(容量比)が10/90となるよう液化石油ガス(プロパン、イソブタンおよびノルマルブタンの混合物飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填し、エアゾール製品を作製した。」 b 甲6の記載より認定できる事項 (a) 認定事項ア 【0029】~【0034】の記載を総合すると、 エアゾール製品は、エアゾール容器と、バルブ機構と、ステム機構と、噴射ボタンとから成る点(以下「認定事項ア」という。)が認定できる。 (b) 認定事項イ 【0016】を参照すると、防除対象の匍匐害虫として「クモ」が例示されている。 よって、甲6には、エアゾール組成物を噴射して「クモ」を防除する防除方法が記載されていると認められる(以下「認定事項イ」という。)。 c 甲6装置発明、及び、甲6方法発明 (a) 上記(a)及び(b)より、甲6には、以下に示す装置の発明(以下「甲6装置発明」という。)が記載されていると認められる。 「殺虫成分を含む原液と、噴射剤とを含み、殺虫成分は、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、メパフルトリンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、オクタノール/水分配係数Log Powが8.0以下であるエアゾール溶剤を含むエアゾール組成物が充填され、エアゾール組成物を噴射する噴口が形成されたエアゾール製品であって、原液と噴射剤との配合割合(容量比)は、1/99~16/84であり(【0014】、【0028】、【0039】)、 エアゾール製品は、エアゾール容器と、バルブ機構と、ステム機構と、噴射ボタンとから成り(認定事項ア)、 エアゾール容器は、エアゾール組成物を加圧充填するための容器であって、上部に開口が形成された略円筒状の耐圧容器であり(【0029】)、 バルブ機構は、エアゾール容器内に充填されたエアゾール組成物を取り出すための機構であり、エアゾール容器の開口に取り付けられ、開口を閉止するものであり(【0031】)、 ステム機構は、バルブ機構に取り付けられる部位であり、バルブ機構に取り込まれた原液および噴射剤を、噴射ボタンに送るための内部通路が形成されており、内部通路は、ステム機構のステムラバーによって適宜開閉され(【0032】)、 噴射ボタンは、エアゾール容器から、バルブ機構によってステム機構を介して取り込まれた原液を、噴射剤とともに噴射するための部材であり、エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成されており(【0033】)、 使用者によって噴射ボタンが操作されることにより、ステム機構およびバルブ機構が作動し、エアゾール容器内と外部とが連通し、これにより、エアゾール容器内のエアゾール組成物は、エアゾール容器内と外部との圧力差に従ってエアゾール容器から取り出され、噴射部材の噴口から噴射され(【0034】)、 噴射ボタンの噴口の大きさとしては、φ0.1~2.0mmであり(【0037】)、 1回の噴射量は約0.2cc(【0036】、【0041】、【0045】)である 匍匐害虫を防除し得るエアゾール製品(【0001】、【0016】)。」 (b) また、甲6には、以下に示す方法の発明(以下「甲6方法発明」という。)も記載されていると認められる。 「殺虫成分を含む原液と、噴射剤とを含み、殺虫成分は、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、メパフルトリンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、オクタノール/水分配係数Log Powが8.0以下であるエアゾール溶剤を含むエアゾール組成物が充填され、エアゾール組成物を噴射する噴口が形成されたエアゾール製品を用いて、エアゾール組成物を室内に噴霧する害虫防除方法であって、原液と噴射剤との配合割合(容量比)は、1/99~16/84であり(【0039】)、 エアゾール製品は、エアゾール容器と、バルブ機構と、ステム機構と、噴射ボタンとから成り(認定事項ア)、 エアゾール容器は、エアゾール組成物を加圧充填するための容器であって、上部に開口が形成された略円筒状の耐圧容器であり(【0029】)、 バルブ機構は、エアゾール容器内に充填されたエアゾール組成物を取り出すための機構であり、エアゾール容器の開口に取り付けられ、開口を閉止するものであり(【0031】)、 ステム機構は、バルブ機構に取り付けられる部位であり、バルブ機構に取り込まれた原液および噴射剤を、噴射ボタンに送るための内部通路が形成されており、内部通路は、ステム機構のステムラバーによって適宜開閉され(【0032】)、 噴射ボタンは、エアゾール容器から、バルブ機構によってステム機構を介して取り込まれた原液を、噴射剤とともに噴射するための部材であり、エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成されており(【0033】)、 使用者によって噴射ボタンが操作されることにより、ステム機構およびバルブ機構が作動し、エアゾール容器内と外部とが連通し、これにより、エアゾール容器内のエアゾール組成物は、エアゾール容器内と外部との圧力差に従ってエアゾール容器から取り出され、噴射部材の噴口から噴射され(【0034】)、 噴射ボタンの噴口の大きさとしては、φ0.1~2.0mmであり(【0037】)、 1回の噴射量は約0.2ccであり(【0026】、【0041】、【0045】)、 エアゾール組成物を噴射して「クモ」を防除する(認定事項イ、【0016】) 害虫防除方法(【0001】)。」 (イ) 甲9の1、甲9の2に記載された事項及び甲9記載事項 a 甲9の1に記載された事項 甲9の1には、以下の記載がある。 「(45)【発行日】平成30年3月12日(2018.3.12)」 「(54)【意匠に係る物品】包装用噴霧器のノズル付きキャップ」 「 [図:0001434169000020.jpg] 」 「 [図:0001434169000021.jpg] 」 「 [図:0001434169000022.jpg] 」 「 [図:0001434169000023.jpg] 」 b 甲9の2に記載された事項 甲9の2には、以下の記載がある。 「 [図:0001434169000024.jpg] 」 c 甲9の1及び甲9の2の記載より認定できる事項 甲9の1における「【意匠に係る物品】包装用噴霧器のノズル付きキャップ」の記載、及び、【前方斜視図】、【底面側斜視図】、【正面図】、【内部機構を省略したA-A断面図】を参照すると、甲9の1には、噴霧器のノズル付きキャップが記載されており、ノズルの先端には噴口があり、ノズルの内部には直線状の空洞が設けられる点が見て取れる。 また、甲9の1に示された【内部機構を省略したA-A断面図】の図面に記載された部材の寸法を実測し、その数値を追記した甲9の2に基づくと、直線状の空洞(幅(L))と噴口の径(高さ(R))の比率であるL/Rが38.0である点が認定できる。 d 甲9記載事項 上記a~cより、甲9の1には、以下の事項(以下「甲9記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「噴霧器に用いられるノズル付きキャップであって、ノズルの先端には噴口があり、ノズルの内部には直線状の空洞が設けられ、直線状の空洞(幅(L))と噴口の径(高さ(R))の比率であるL/Rが38.0である点。」 イ 本件訂正発明5について (ア) 対比 本件訂正発明5と甲6装置発明とを対比する。 a 構成5Aに関して 甲6装置発明における「殺虫成分を含む原液と、噴射剤とを含む」「エアゾール組成物を加圧充填するための容器」は、本件訂正発明5の構成5Aにおける「原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器」に相当する。 よって、甲6装置発明は、本件訂正発明5の構成5Aに相当する構成を有する。 b 構成5Bに関して 甲6装置発明における「1回の噴射量は約0.2cc」であり「エアゾール容器内に充填されたエアゾール組成物を取り出すための機構であり、エアゾール容器の開口に取り付けられ、開口を閉止するものであ」る「バルブ機構」及び「バルブ機構に取り込まれた原液および噴射剤を、噴射ボタンに送るための内部通路が形成されており、内部通路」が「ステムラバーによって適宜開閉され」る「ステム機構」は、「1回の噴射量」が「約0.2cc」に規定されることから「定量噴射」のためのものであると認められ、本件訂正発明5の構成5Bにおける「前記エアゾール容器に取り付けられ」た「定量噴射用エアゾールバルブ」に相当する。 よって、本件訂正発明5と甲6装置発明とは、「前記エアゾール容器に取り付けられ」た「定量噴射用エアゾールバルブ」を備える点で一致する。 c 構成5Cに関して 甲6装置発明における「エアゾール容器から、バルブ機構によってステム機構を介して取り込まれた原液を、噴射剤とともに噴射するための部材であ」り、「エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成され」た「噴射ボタン」は、本件訂正発明5の構成5Cにおける「前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が」「形成された」「噴射部材」に相当する。 よって、本件訂正発明5と甲6装置発明とは、「前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が」「形成された」「噴射部材」を備える点で一致する。 d 構成5Fに関して 本件訂正発明5の構成5Fにおける「前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~40:60である」ことと、甲6装置発明における「原液と噴射剤との配合割合(容量比)は、1/99~16/84であ」ることは、原液と噴射剤との配合割合(容量比)は、5:95~16:84の範囲で一致する。 e 構成5Gに関して 甲6装置発明における「エアゾール組成物」が、「殺虫成分は、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、メパフルトリンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、オクタノール/水分配係数Log Powが8.0以下であるエアゾール溶剤を含む」ことは、オクタノールは低級アルコールであり、有効成分がセバシン酸ジブチルとは異なる物質であることを考慮すると、本件訂正発明5の構成5Gにおける「前記エアゾール組成物がパラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない」との特定事項を満たす。 よって、甲6装置発明は、本件訂正発明5の構成5Gに相当する構成を有する。 f 構成5Hに関して 甲6装置発明における「匍匐害虫を防除し得るエアゾール製品」は、本件訂正発明5の構成5Hにおける「匍匐害虫防除用エアゾール装置」に相当する。 よって、甲6装置発明は、本件訂正発明5の構成5Hに相当する構成を有する。 g 一致点及び相違点 上記a~fより、本件訂正発明5と甲6装置発明は、以下の点で一致する。 <一致点> 5A 原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、 5B’前記エアゾール容器に取り付けられた定量噴射用エアゾールバルブと、 5C’前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成された噴射部材と、を備え、 5F’前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~16:84であり、 5G 前記エアゾール組成物がパラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない、 5H 匍匐害虫防除用エアゾール装置。 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点4>(構成5Bに関して) 定量噴射用エアゾールバルブに関して、本件訂正発明5は、定量噴射用エアゾールバルブに容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられる点が特定されているのに対して、甲6装置発明は、定量室の容積の数値範囲についての特定がされていない点。 <相違点5>(構成5C、5D及び5Eに関して) エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成された噴射部材に関して、本件訂正発明5は、噴射部材が噴口が先端に形成された噴射ノズルを含むとともに、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成され、前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であるのに対して、甲6装置発明は、噴口が先端に形成された噴射ノズルを有する点、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成された点、及び、前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が特定されていない点。 <相違点6>(構成5Fに関して) 原液と噴射剤との配合割合(体積比)に関して、本件訂正発明5は、5:95~40:60であるのに対して、甲6装置発明は、原液と噴射剤との配合割合(容量比)は、1/99~16/84である点。 (イ) 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点5について検討する。 甲9の1及び甲9の2には、上記ア(イ)dに示した甲9記載事項が記載されている。 そして、甲9記載事項における「ノズル付きキャップ」における「先端に」「噴口があ」る「ノズル」は、相違点5に係る本件訂正発明5の構成における「噴射部材」が「含む」「噴口が先端に形成された噴射ノズル」に相当し、甲9記載事項における「ノズルの先端には噴口があり、ノズルの内部には直線状の空洞が設けられ」ることは、相違点5に係る本件訂正発明5の構成における「噴射部材」に「一端に」「噴口が形成された直線状の噴射通路が形成され」ることに相当する。 しかしながら、甲9記載事項における「直線状の空洞(幅(L))と噴口の径(高さ(R))の比率であるL/R」の数値である「38.0」は、相違点5に係る本件訂正発明5の構成における「前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3」の範囲外である。 してみると、甲6装置発明に甲9記載事項を適用しても、相違点5に係る本件訂正発明5の構成とはならないと認められる。 さらに、甲6、甲9の1及び甲9の2には、液だれに関連した記載が存在しないことから、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)の数値範囲を検討する動機は見いだせず、甲6装置発明に甲9記載事項を適用した上で、さらに、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)の数値範囲の検討を行い、液だれの抑制を行うことを当業者が容易になし得ることとは認められない。 してみると、相違点5に係る構成に係る本件訂正発明5に係る構成は、甲6装置発明及び甲9記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 そして、本件訂正発明5は、噴口周囲への液ダレを生じにくいという、当業者が予測することのできなかった顕著な効果を奏するものである。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲6装置発明及び甲9記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 (ウ) 小括 以上のことから、本件訂正発明5は、甲6装置発明及び甲9記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件訂正発明1について (ア) 対比 本件訂正発明1と甲6方法発明とを対比する。 a 構成1Aに関して 甲6方法発明における「エアゾール組成物を室内に噴霧する害虫防除方法」は、本件訂正発明1の構成1Aにおける「対象空間に対して、エアゾール組成物を噴射して匍匐害虫を防除する、匍匐害虫の防除方法」に相当する。 よって、甲6方法発明は、本件訂正発明1の構成1Aに相当する構成を有する。 b 構成1Bに関して 甲6方法発明における「殺虫成分を含む原液と、噴射剤とを含み、殺虫成分は、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、メパフルトリンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、オクタノール/水分配係数Log Powが8.0以下であるエアゾール溶剤を含むエアゾール組成物」は、オクタノールは低級アルコールであり、有効成分がセバシン酸ジブチルとは異なる物質であることを考慮すると、本件訂正発明1の構成1Bにおける「原液と噴射剤とを」「含み、」「パラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物」との特定事項を満たす。 また、本件訂正発明1の構成1Bにおける「原液と噴射剤とを、配合割合(体積比)が5:95~40:60となるよう含」む「エアゾール組成物が充填されたエアゾール容器」と、甲6方法発明における「殺虫成分を含む原液と、噴射剤とを含」み、「前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~16:84であ」る「エアゾール組成物を加圧充填するための容器」とは、原液と噴射剤とを、配合割合(体積比)が5:95~16:84となるよう含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器である点で一致する。 よって、本件訂正発明1と甲6方法発明とは、「原液と噴射剤とを、配合割合(体積比)が」5:95~16:84「となるよう含み、」「パラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器」「を備え」る点で一致する。 c 構成1Cに関して 甲6方法発明における「1回の噴射量は約0.2cc」であり「エアゾール容器内に充填されたエアゾール組成物を取り出すための機構であり、エアゾール容器の開口に取り付けられ、開口を閉止するものであ」る「バルブ機構」及び「バルブ機構に取り込まれた原液および噴射剤を、噴射ボタンに送るための内部通路が形成されており、内部通路」が「ステムラバーによって適宜開閉され」る「ステム機構」は、「1回の噴射量」が「約0.2cc」に規定されることから「定量噴射」のためのものであると認められ、本件訂正発明1の構成1Cにおける「前記エアゾール容器に取り付けられ」た「定量噴射用エアゾールバルブ」に相当する。 よって、本件訂正発明1と甲6方法発明とは、「前記エアゾール容器に取り付けられ」た「定量噴射用エアゾールバルブ」「を備え」る点で一致する。 d 構成1Dに関して 甲6方法発明における「エアゾール容器から、バルブ機構によってステム機構を介して取り込まれた原液を、噴射剤とともに噴射するための部材であり、エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成され」た「噴射ボタン」は、本件訂正発明1の構成1Dにおける「前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が」「形成された」「噴射部材」に相当する。 よって、本件訂正発明1と甲6方法発明とは、「前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が」「形成された」「噴射部材」「を備え」る点で一致する。 e 構成1Fに関して 甲6方法発明における「エアゾール組成物」が「噴射部材の噴口から噴射され」ることは、本件訂正発明1の構成1Fにおける「前記噴口から前記エアゾール組成物を噴射する」ことに相当する。 f 構成1Gに関して 甲6方法発明における「「クモ」を防除する」「害虫防除方法」は、本件訂正発明1の構成1Gにおける「匍匐害虫の防除方法」に相当する。 よって、甲6方法発明は、本件訂正発明1の構成1Gに相当する構成を有する。 g 一致点及び相違点 上記a~fより、本件訂正発明1と甲6方法発明は、以下の点で一致する。 <一致点> 1A 対象空間に対して、エアゾール組成物を噴射して匍匐害虫を防除する、匍匐害虫の防除方法であり、 1B’ 原液と噴射剤とを、配合割合(体積比)が5:95~16:84となるよう含み、パラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、 1C’前記エアゾール容器に取り付けられた定量噴射用エアゾールバルブと、 1D’前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成された噴射部材と、を備え、 1F 前記噴口から前記エアゾール組成物を噴射する、 1G 匍匐害虫の防除方法。 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点7>(構成1Bに関して) 原液と噴射剤との配合割合(体積比)に関して、本件訂正発明1は、5:95~40:60であるのに対して、甲6方法発明は、原液と噴射剤との配合割合(容量比)は、1/99~16/84である点。 <相違点8>(構成1Cに関して) 定量噴射用エアゾールバルブに関して、本件訂正発明1は、定量噴射用エアゾールバルブに容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられる点が特定されているのに対して、甲6方法発明は、定量室の容積の数値範囲についての特定がされていない点。 <相違点9>(構成1D及び1Eに関して) エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成された噴射部材に関して、本件訂正発明1は、噴射部材が噴口が先端に形成された噴射ノズルを含むとともに、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成され、前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であるのに対して、甲6方法発明は、噴口が先端に形成された噴射ノズルを有する点、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成された点、及び、前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)の数値範囲が特定されていない点。 (イ) 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点9について検討する。 甲9の1及び甲9の2には、上記ア(イ)dに示した甲9記載事項が記載されている。 そして、甲9記載事項における「ノズル付きキャップ」における「先端に」「噴口があ」る「ノズル」は、相違点9に係る本件訂正発明1の構成における「噴射部材」が「含む」「噴口が先端に形成された噴射ノズル」に相当し、甲9記載事項における「ノズルの先端には噴口があり、ノズルの内部には直線状の空洞が設けられ」ることは、相違点9に係る本件訂正発明1の構成における「噴射部材」に「一端に」「噴口が形成された直線状の噴射通路が形成され」ることに相当する。 しかしながら、甲9記載事項における「直線状の空洞(幅(L))と噴口の径(高さ(R))の比率であるL/R」の数値である「38.0」は、相違点9に係る本件訂正発明1の構成における「前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3」の範囲外である。 してみると、甲6装置発明に甲9記載事項を適用しても、相違点9に係る本件訂正発明1の構成とはならないと認められる。 さらに、甲6、甲9の1及び甲9の2には、液だれに関連した記載が存在しないことから、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)の数値範囲を検討する動機は見いだせず、甲6方法発明に甲9記載事項を適用した上で、さらに、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)の数値範囲の検討を行い、液だれの抑制を行うことを当業者が容易になし得ることとは認められない。 してみると、相違点9に係る構成に係る本件訂正発明1に係る構成は、甲6方法発明及び甲9記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 そして、本件訂正発明1は、噴口周囲への液ダレを生じにくいという、当業者が予測することのできなかった顕著な効果を奏するものである。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲6方法発明及び甲9記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 (ウ) 小括 以上のことから、本件訂正発明1は、甲6方法発明及び甲9記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 本件訂正発明2~4について 本件訂正発明2~4は、いずれも、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。 そうすると上記ウのとおり、本件訂正発明1が、甲6装置発明及び甲9記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明2~4も甲6方法発明及び甲9記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4) 取消理由通知のまとめ 以上のことから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。 2 申立理由について (1) 取消理由通知に採用した申立理由について ア 申立理由1(新規性)について 取消理由通知の理由2(新規性及び進歩性)は、申立理由1(新規性)を包含するものである。 そして、取消理由通知の理由2についての判断は、上記1(2)イ~エにおいて検討したとおりである。 イ 申立理由2(進歩性)について 取消理由通知の理由2(新規性及び進歩性)は、申立理由2(進歩性)のうち、本件特許発明1、2及び5についての甲1~甲3に記載された発明に基づく進歩性欠如を包含するものであり、その判断は、上記1(2)イ~エにおいて検討したとおりである。 また、取消理由通知の理由3(進歩性)は、申立理由2(進歩性)のうち、本件特許発明1~5についての甲6、甲9の1及び甲9の2に記載された発明に基づく進歩性欠如を包含するものであり、その判断は、上記1(3)において検討したとおりである。 ウ 申立理由3(サポート要件)について 取消理由通知の理由1(サポート要件)は、申立理由3(サポート要件)を包含するものである。 そして、取消理由通知の理由1についての判断は、上記1(1)において検討したとおりである。 (2) 取消理由通知に採用しなかった申立理由について ア 申立理由2のうち本件特許発明3及び4についての甲1発明、甲2発明、又は、甲3発明に基づく進歩性欠如について 本件訂正後の請求項3及び4に係る発明である本件訂正発明3及び4は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものである。 してみると、本件訂正発明3及び4は、本件訂正発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。 そうすると、上記1(2)エのとおり、本件訂正発明1が、甲1方法発明、甲2方法発明、又は、甲3方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件訂正発明3及び4も甲1方法発明、甲2方法発明、又は、甲3方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 申立理由2のうち本件特許発明1~5についての甲5、甲6、甲7、甲8、甲9の1及び甲9の2に記載された発明に基づく進歩性欠如について (ア) 各甲号証の記載事項等について a 甲5 (a) 甲5に記載された事項 甲5には、以下の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の目的は、床下などの狭い空間においても、エアゾールから3~4m離れた場所に生息する害虫に対して正確に噴霧して確実に害虫を防除できるエアゾールを提供することにある。」 「【0008】 【図1】害虫防除用エアゾールの噴射用ボタンと、噴射用ノズルの断面図である。 【図2】害虫防除用エアゾールの噴射用ボタンに噴射用ノズルを接続した断面図である。 【図3】床下の見取り図 である。」 「【0012】 本発明の溶剤としては、水の他、エタノールやイソプロパノール等の一価アルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチルジグリコール等のグリコール系溶剤 およびその誘導体、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の含窒素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤等を挙げることができるが、ブチルジグリコールが好ましい。本発明の溶剤の含有量は3~60重量%が好ましい。また、溶剤は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。 【0013】 本発明の噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、HFO-1234Ze、窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等の圧縮ガスがあげられ、そのうちの1種または2種以上を適宜用いることができるが、LPG又はDMEが好ましい。噴射剤の含有量は35.0~96.9重量%の範囲内が好ましい。 【0014】 本発明の害虫防除組成物は、基本的には害虫防除成分、溶剤及び噴射剤により構成されるが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を適宜含有していてもよい。例えば、当該他の成分として、前記害虫防除成分以外の合成品あるいは天然由来の害虫防除成分、防除剤、香料、害虫防除成分溶解助剤、などを含有させてもよい。 【0015】 本発明の害虫防除用エアゾールは、前記害虫防除剤を収容するエアゾール容器に装着された噴射用ボタンに、噴射用ノズルが取り外し可能に付設されていることに特徴を有する。 噴射用ノズルは害虫防除剤を噴出させるためのもので、エアゾール容器から流出した害虫防除剤は、噴射用ノズルに流入し、さらにノズルの流路を通して噴射口から噴出される。そして、噴射用ノズル内における噴射流路の入口側の内径(D1)と出口側の内径(D2)が同じである。 【0016】 本発明の害虫防除用エアゾールで用いる噴射用ノズルの具体的な構成としては、噴射用ノズルの入口側の内径(D1)、及び出口側の内径(D2)が0.8~1.5mmであることが好ましく、さらに、前記噴射用ノズルの長さが3cm~20cmであることが好ましく、より好ましくは5cm~15cmである。 【0017】 本発明の害虫防除用エアゾールは、本発明の害虫防除用エアゾール組成物がエアゾール容器に充填されてなるものである。エアゾール容器としては特に限定はなく、例えば、耐圧容器、エアゾールバルブ、アクチュエーター等を備えた公知のエアゾール容器を用いることができる。」 「【0019】 本発明の防除対象となる害虫としては、以下のものが挙げられる。 ヤマトシロアリ、イエシロアリ、アメリカカンザイシロアリ、ダイコクシロアリ、タイワンシロアリ、コウシュンシロアリ、サツマシロアリ、ナカジマシロアリ)、カタンシロアリ、コダマシロアリ、クシモトシロアリ、オオシロアリ、コウシュウイエシロアリ、アマミシロアリ、キアシシロアリ、カンモンシロアリ、タカサゴシロアリ、ニトベシロアリ、ムシャシロアリ等のシロアリ類、ヤシリアゲアリ、アミメアリ、イエヒメアリ、ヒメアリ、オオズアリ、トビイロシワアリ、ハキリアリ、アカカミアリ、オオハリアリ、アギトアリ、クロヤマアリ、クロオオアリ、カーペンターアント、トビイロケアリ、ルリアリ、グンタイアリ等のアリ類、トビズムカデ、アオズムカデ等のムカデ類、ゲジ類、ヤケヤスデ、アカヤスデ等のヤスデ類、ヒラタチャタテ等のチャタテムシ類、ジョロウグモ、イエオニグモ、オオヒメグモ、コガネグモ、カバキコマチグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ、イエユウレイグモ等のクモ類、タバコシバンムシ、ジンサンシバンムシ等のシバンムシ類、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、コワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、コバネゴキブリ等のゴキブリ類、アオクサカメムシ、ホソヘリカメムシ、オオトゲシラホシカメムシ、トゲシラホシカメムシ、チャバネアオカメムシ、クサギカメムシ、アカスジメクラガメ、アカヒゲホソミドリメクラガメ等のカメムシ類、カマドウマ類、オカダンゴムシ等のダンゴムシ類、ワラジムシ類、セスジユスリカ、ウスイロユスリカ、ハイイロユスリカ、オオユスリカ、アカムシユスリカ等のユスリカ類、及びオオチョウバエ、ホシチョウバエ等のチョウバエ類・コシアキノミバエ、オオキモンノミバエ等のノミバエ類・キイロショウジョウバエ等のショウジョウバエ類等のコバエ類等が挙げられ、特にシロアリ、または双翅目害虫に優れた防除効果が期待できる。」 「【0021】 (実施例1) 本発明化合物(3)0.35gおよびジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトールTMソルベント)(ダウ・ケミカル日本株式会社)9.65gを混合して得たエアゾール原液10.0gを内容積200mLのエアゾール缶 に入れ、噴射剤として液化石油ガス(LPG)104.5gを充填した。取り外し可能に付設されている噴射用ノズルを備えた噴射用ボタンをこのエアゾール缶に取り付けて、本発明の害虫防除用エアゾールを得た。尚、この取り外し可能に付設されている噴射用ノズルの入口側の内径と出口側の内径は同じであり、1.5mmであった。」 「【0024】 (試験例1) 図3に示すように、家屋の床下(長さ4m、幅3.4m、図3)の一方の端側に、直径9cmの濾紙を3枚設置した。濾紙を設置した側と反対側の床下通気口から、実施例1、2および比較例1で得られたエアゾールを5秒間噴霧した。噴霧処理24時間後に該濾紙を回収し、直径9cmのシャーレ内に収納し、水分を加えて、イエシロアリ職蟻50頭を放ち、40日後の死亡率を求めた。試験結果を表1に示す。」 「【0028】 1. 害虫防除用エアゾール 2. エアゾール容器 3. 噴射用ボタン 4. 噴射用ノズル 5. 噴射用ノズルの入口側 6. 噴射用ノズルの出口側 D1.噴射用ノズルの入口側の内径 D2.噴射用ノズルの出口側の内径」 【図2】 「 [図:0001434169000025.jpg] 」 (b) 甲5の記載より認定できる事項 【0021】における「本発明化合物(3)」は害虫防除剤であると認められる。 また、ジエチレングリコールモノブチルエーテルの比重は、概ね0.95であるから、エアゾール原液が10.0gの体積は約10.5mlであると認められ、200mlのエアゾール缶に入れた時の体積比は、エアゾール原液:噴射剤=約10.5:189.5=約5.25:94.75となると認められる。 そして、【0024】には「エアゾールを5秒間噴霧した。」と記載されていることから、甲5に記載された「害虫防除用エアゾール1」は、所望の時間噴霧が可能である連続噴射可能なものであると認められる。 さらに、害虫防除用エアゾールの噴射用ボタン3に噴射用ノズル4を接続した断面図である図2を参照すると、噴射用ノズル4は直線状であり、先端に噴出口を備えたものである点が見て取れ、【0021】における「エアゾール缶」は、「噴射用ノズルを備えた噴射用ボタンをこのエアゾール缶に取り付けて」と記載されていることを勘案すると、図2に記載されたエアゾール容器2と同じものであると認められる。 (c) 甲5発明 上記(a)及び(b)より、甲5には以下の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。 「害虫防除剤を収容するエアゾール容器2に装着された噴射用ボタン3に、噴射用ノズル4が取り外し可能に付設されている連続噴射可能な害虫防除用エアゾール1であって(【0015】)、 エアゾールバルブを備えたエアゾール容器2を用い(【0017】)、 害虫防除剤0.35gおよびジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトールTMソルベント)(ダウ・ケミカル日本株式会社)9.65gを混合して得たエアゾール原液10.0gを内容積200mLのエアゾール容器2に入れ、噴射剤として液化石油ガス(LPG)104.5gを充填し(【0021】)、エアゾール容器2に入れた時の体積比は、エアゾール原液:噴射剤=約5.25:94.75であり(上記(b))、 害虫防除用エアゾール1で用いる噴射用ノズル4は直線状で、先端に噴出口を備えたものであり(【図2】)、噴射用ノズル4の具体的な構成としては、噴射用ノズル4の出口側の内径(D2)が0.8~1.5mmであることが好ましく、前記噴射用ノズル4の長さが3cm~20cmであることが好ましく(【0016】)、 ジョロウグモ、イエオニグモ、オオヒメグモ、コガネグモ、カバキコマチグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ、イエユウレイグモ等のクモ類を防除対象とした(【0019】) 害虫防除用エアゾール1(【0015】)。」 b 甲6 甲6に記載された事項、及び、甲6に記載された事項に基づいて認定した甲6装置発明及び甲6製品発明については、上記1(3)ア(ア)に記載したとおりである。 c 甲7 (a) 甲7に記載された事項 甲7には、以下の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するため、本発明の害虫防除エアゾール装置は、害虫防除剤を含むエアゾールを噴霧する害虫防除エアゾール装置であって、ノズルの長さが80~150mm、ノズル内径が0.5~2.0mmかつ噴霧口径が0.5~2.0mmであり、前記エアゾールの噴射圧が8~14gfであることを特徴とする。 【0008】 このようなロングノズルを備えることで、害虫防除エアゾール装置から害虫に対して効果的にエアゾールを噴霧し、害虫の行動を停止させる効果が得られる。」 「【0061】 エアゾールの噴霧位置と噴射時間の条件を変更して、噴射後20分における試験室内のノックダウン数(KD数)およびノックダウン率(KD率)と、直方体の裏側や隙間位置におけるKD数およびKD率をカウントした結果を表4に示す。噴霧は、噴霧箇所63の1箇所から6秒間と12秒間、噴霧箇所63~65の3箇所からそれぞれ2秒間(合計6秒間)と4秒間(合計12秒間)の4条件で試験を実施した。」 (b) 甲7の記載より認定できる事項 【0021】における「本発明化合物(3)」は害虫防除剤であると認められる。 また、【0061】には「噴霧は、噴霧箇所63の1箇所から6秒間と12秒間、噴霧箇所63~65の3箇所からそれぞれ2秒間(合計6秒間)と4秒間(合計12秒間)の4条件で試験を実施した。」と記載されていることから、甲7に記載された「害虫防除エアゾール装置」は、所望の時間噴霧が可能である連続噴射可能なものであると認められる。 (c) 甲7記載事項 上記(a)及び(b)より、甲7には以下の発明(以下「甲7記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「害虫防除剤を含むエアゾールを噴霧する連続噴射可能な害虫防除エアゾール装置であって、ノズルの長さが80~150mm、ノズル内径が0.5~2.0mmかつ噴霧口径が0.5~2.0mmである点。」 d 甲8 (a) 甲8に記載された事項 甲8には、以下の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、エアゾール容器に装着されると共にエアゾール容器から溶液を噴射させるキャップ具、及び、そのキャップ具を備えるエアゾール噴霧器に関する。」 「【0006】 このキャップ具100では、ボタン部108を下方へ押すことにより、口部110を下方へ押し下げて、口部110の下方にあるバルブを開放する。バルブが開放されることで口部110から溶液が噴出し、噴出した溶液は、通路106を通じて噴射口104から噴射される構成となっている。」 「【0053】 ここで、本実施形態の構成では、キャップ具12のノズル孔32Aの長さLが3mm~20mmとされ、ノズル孔32Aの直径B2が0.6mm~1.8mmとされているため、噴射された溶液は、拡散しにくく、浮遊する量が少なく、また、液だれ等の噴射不良がおきにくいため、皮膚への付着性が良い。また、噴射される溶液の粒子径が大きくなり、溶液を噴射する際の噴射音を低減できる。」 (b) 甲8の記載より認定できる事項 【0006】における「ボタン部108を下方へ押すことにより、口部110を下方へ押し下げて、口部110の下方にあるバルブを開放する。バルブが開放されることで口部110から溶液が噴出し、噴出した溶液は、通路106を通じて噴射口104から噴射される構成となっている。」の記載を参照すると、「ボタン部108を下方へ押すことにより」「バルブが開放されることで口部110から溶液が噴出」するものであるから、甲8に記載された「エアゾール噴霧器」は、ボタン部108を下方へ押すことにより溶液を連続噴射可能なものであると認められる。 (c) 甲8記載事項 上記(a)及び(b)より、甲8には以下の発明(以下「甲8記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「エアゾール容器から溶液を噴射させるキャップ具を備えるエアゾール噴霧器において、ボタン部108を下方へ押すことにより、口部110を下方へ押し下げて、口部110の下方にあるバルブが開放されることで口部110から溶液が噴出し、噴出した溶液は、通路106を通じて噴射口104から連続噴射される構成となっており、キャップ具12のノズル孔32Aの長さLが3mm~20mmとされ、ノズル孔32Aの直径B2が0.6mm~1.8mmとされている点。」 e 甲9の1及び甲9の2 甲9の1及び甲9の2に記載された事項及び甲9記載事項については、上記1(3)ア(イ)に記載したとおりである。 (イ) 甲5発明を主引用例とした場合についての対比・検討 事案に鑑み、本件訂正発明5に対して、甲5発明を主引用例とした場合について検討を行い、本件訂正発明5と甲5発明とを対比する。 a 構成5Aに関して 甲5発明における「害虫防除剤0.35gおよびジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトールTMソルベント)(ダウ・ケミカル日本株式会社)9.65gを混合して得たエアゾール原液」、「噴射剤として液化石油ガス(LPG)」及び「エアゾール容器2」は、それぞれ、本件訂正発明5の構成5Aにおける「原液」、「噴射剤」及び「エアゾール容器」に相当することから、甲5発明における「害虫防除剤0.35gおよびジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトールTMソルベント)(ダウ・ケミカル日本株式会社)9.65gを混合して得たエアゾール原液10.0gを」「入れ、」「噴射剤として液化石油ガス(LPG)104.5gを充填」した「内容積200mLのエアゾール容器2」は、本件訂正発明5の構成5Aにおける「原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器」に相当する。 よって、甲5発明は、本件訂正発明5の構成5Aに相当する構成を有する。 b 構成5Bに関して 本件訂正発明5の構成5Bにおける「前記エアゾール容器に取り付けられ、容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブ」と、甲5発明における「エアゾール容器2」が「備え」る「エアゾールバルブ」とは、「エアゾール容器に取り付けられ」た「エアゾールバルブ」である点で一致する。 よって、本件訂正発明5と甲5発明とは、「前記エアゾール容器に取り付けられ」た「エアゾールバルブ」「を備え」る点で一致する。 c 構成5Cに関して 本件訂正発明5の構成5Cにおける「前記定量噴射用エアゾールバルブを介して前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材」と、甲5発明における「エアゾール容器2に装着された噴射用ボタン3」と「噴射用ボタン3に、」「取り外し可能に付設されている」「先端に噴出口を備えた」「噴射用ノズル4」とは、「エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材」である点で一致する。 よって、本件訂正発明5と甲5発明とは、「エアゾール容器に取り付けられ、」「エアゾール組成物を噴射するための噴口が先端に形成された噴射ノズルを含む噴射部材」「を備え」る点で一致する。 d 構成5Dに関して 甲5発明における「噴射用ノズル4が直線状で、先端に噴出口を備えたものであ」ることは、本件訂正発明5の構成5Dにおける「前記噴射部材は、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成されて」いることに相当する。 よって、甲5発明は、本件訂正発明5の構成5Dに相当する構成を有する。 e 構成5Eに関して 本件訂正発明5の構成5Cにおける「前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であ」ることと、甲5発明における「噴射用ノズル4の出口側の内径(D2)が0.8~1.5mmであることが好ましく、前記噴射用ノズル4の長さが3cm~20cmであること」とは、「前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が」所定の数値範囲内に特定されている点で一致する。 f 構成5Fに関して 本件訂正発明5の構成5Fにおける「前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が5:95~40:60であ」ることと、甲5発明における「エアゾール容器2に入れた時の体積比」が「エアゾール原液:噴射剤=約5.25:94.75であ」ることとは、「前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が約5.25:94.75であ」る点で一致する。 g 構成5Hに関して 甲5発明における「クモ類を防除対象とした」「害虫防除用エアゾール1」は、クモ類は匍匐害虫といえるから、本件訂正発明5の構成5Hにおける「匍匐害虫防除用エアゾール装置」に相当する。 よって、甲5発明は、本件訂正発明5の構成5Hに相当する構成を有する。 h 一致点及び相違点 上記a~gより、本件訂正発明5と甲5発明は、以下の点で一致する。 <一致点> 5A 原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、 5B’前記エアゾール容器に取り付けられたエアゾールバルブと、 5C’前記エアゾール容器に取り付けられ、前記エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成された噴射部材と、を備え、 5D 前記噴射部材は、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成されており、 5F’前記原液と前記噴射剤との配合割合(体積比)が約5.25:94.75である 5H 匍匐害虫防除用エアゾール装置。 そして、両者は、以下の点で相違する。 <相違点A>(構成5B及び5Cに関して) エアゾールバルブに関して、本件訂正発明5は、エアゾールバルブが容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられた定量噴射用エアゾールバルブであり、噴射部材が定量噴射用エアゾールバルブを介してエアゾール容器に取り付けられているのに対して、甲5発明は連続噴射可能なものであることから、エアゾールバルブには定量室が設けられておらず、また、エアゾールバルブと他の構成要素との関係が不明である点。 <相違点B>(構成Eに関して) 本件訂正発明5は、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であることが特定されているのに対して、甲5発明は、「噴射用ノズル4の具体的な構成としては、噴射用ノズル4の出口側の内径(D2)が0.8~1.5mmであることが好ましく、前記噴射用ノズル4の長さが3cm~20cmであることが好まし」いことが特定されているが、比率(L/R)の数値範囲が特定されていない点。 <相違点C>(構成Fに関して) 本件訂正発明5は、原液と噴射剤との配合割合(体積比)の範囲として5:95~40:60が特定されているのに対して、甲5発明は、エアゾール原液:噴射剤が約5.25:94.75であるが、その数値範囲は特定されていない点。 <相違点D>(構成Gに関して) 本件訂正発明5は、「エアゾール組成物がパラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない」ことが特定されているのに対して、甲5発明は、その点が不明である点。 i 相違点についての検討 事案に鑑み、まず、相違点Aについて検討する。 甲7記載事項及び甲8記載事項は、エアゾール組成物を連続噴射可能なものであるから、エアゾールバルブが定量室を有するものではない。 また、甲6装置発明は「1回の噴射量は約0.2cc」であるから、定量室を有するものと認められるが、エアゾール組成物を連続噴射可能なものである甲5発明に対して、1回の噴射量を規定するための構成である定量室を設ける動機は見いだせず、甲6装置発明の構成を適用することには阻害要因が存在することから、甲5発明に甲6装置発明を適用することによって、相違点Aに係る本件訂正発明5の構成を当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 そして、本件訂正発明5は、定量噴射を行う場合において、噴口周囲への液ダレを生じにくいという、当業者が予測することのできなかった顕著な効果を奏するものである。 j 本件訂正発明5についての小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲5発明に、甲6装置発明、甲7記載事項、甲8記載事項、及び、甲9記載事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 k 本件訂正発明1~4について 本件訂正発明5の匍匐害虫防除用エアゾール装置を用いた匍匐害虫の駆除方法の発明である本件訂正発明1は、甲5発明に対して、上記した相違点A~Dを有するものである。 そして、その相違点についての判断は、上記gに記載したとおりである。 よって、本件訂正発明1は、甲5発明に、甲6装置発明、甲7記載事項、甲8記載事項、及び、甲9記載事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 さらに、本件訂正発明2~4は、いずれも、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。 そうすると上記のとおり、本件訂正発明1が、甲5発明に、甲6装置発明、甲7記載事項、甲8記載事項、及び、甲9記載事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明2~4も、甲5発明に、甲6装置発明、甲7記載事項、甲8記載事項、及び、甲9記載事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ) 甲6装置発明を主引用例とした場合についての対比・検討 a 一致点及び相違点 本件訂正発明5に対して、甲6装置発明を主引用例とした場合について対比は、上記1(3)イ(ア)に記載したとおりであり、再掲すると両者は以下の点で相違し、その余の点で一致する。 <相違点4>(構成5Bに関して) 定量噴射用エアゾールバルブに関して、本件訂正発明5は、定量噴射用エアゾールバルブに容積が0.1~1.0mLである定量室が設けられる点が特定されているのに対して、甲6装置発明は、定量室の容積の数値範囲についての特定がされていない点。 <相違点5>(構成5C、5D及び5Eに関して) エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成された噴射部材に関して、本件訂正発明5は、噴射部材が噴口が先端に形成された噴射ノズルを含むとともに、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成され、前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が10~31.3であるのに対して、甲6装置発明は、噴口が先端に形成された噴射ノズルを有する点、一端に前記噴口が形成された直線状の噴射通路が形成された点、及び、前記噴口の噴口径R(mm)と、前記噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)が特定されていない点。 <相違点6>(構成5Fに関して) 原液と噴射剤との配合割合(体積比)に関して、本件訂正発明5は、5:95~40:60であるのに対して、甲6装置発明は、原液と噴射剤との配合割合(容量比)は、1/99~16/84である点。 b 相違点についての検討 事案に鑑み相違点5について検討する。 甲5発明、甲7記載事項及び甲8記載事項には、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)の数値範囲が特定されており、その特定に基づき比率(L/R)を計算可能ではあるが、甲5発明、甲7記載事項及び甲8記載事項は、いずれも、エアゾール組成物を連続噴射可能なものであって、定量噴射のものではないことから、甲5発明、甲7記載事項及び甲8記載事項に特定された数値より計算された比率(L/R)の値を甲6装置発明に適用する動機は見いだせず、またその適用には阻害要因が存在する。 そして、甲6装置発明に甲9記載事項を適用する場合についての判断は、上記1(3)イ(イ)に記載したとおりである。 してみると、相違点5に係る本件訂正発明5の構成は、甲6装置発明、甲5発明、甲7記載事項、甲8記載事項及び甲9記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 c 本件訂正発明5についての小括 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明5は、甲6装置発明に甲5発明、甲7記載事項、甲8記載事項、及び、甲9記載事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 d 本件訂正発明1~4について 本件訂正発明5の匍匐害虫防除用エアゾール装置を用いた匍匐害虫の駆除方法の発明である本件訂正発明1は、甲6方法発明に対して、上記1(3)ウ(ア)に記載したとおり相違点7~9を有するものである。 そして、その相違点についての判断は、上記b及び上記1(3)ウ(イ)に記載したとおりである。 よって、本件訂正発明1は、甲6方法発明に、甲5発明、甲7記載事項、甲8記載事項、及び、甲9記載事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 さらに、本件訂正発明2~4は、いずれも、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件訂正発明2~4は、本件訂正発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。 そうすると上記のとおり、本件訂正発明1が、甲6方法発明に、甲5発明、甲7記載事項、甲8記載事項、及び、甲9記載事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件訂正発明2~4も、甲6方法発明に、甲5発明、甲7記載事項、甲8記載事項、及び、甲9記載事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (エ) まとめ 以上のことから、本件訂正発明1~5は、甲5~8、甲9の1及び甲9の2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 令和7年11月10日付け意見書(申立人)について (1) 意見書(申立人)における主張の概要 申立人は、上記意見書において、概ね以下の主張を行っている。 ア 訂正要件 特許権者は、訂正事項1及び2において、「エアゾール組成物」を「パラフィン類又は低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まない」ものとする訂正を行ったが、本件特許明細書等には、「セバシン酸ブチルを含むエアゾール組成物」は一切記載されていないことから、「セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物」が記載されているとはいえない。 このように、訂正事項1及び2は、エアゾール組成物を「セバシン酸ジブチルを含まない」ものとする訂正を含む点において、本件特許明細書等に記載されていない事項を追加するものである。 よって、訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものではなく、訂正要件を満たさないものである。 イ 取消理由1(サポート要件) (ア) 定量室 特許権者は、定量室の容積が「0.1mL以上1.0mL未満」の場合は、出願前の市販品である甲2の1、甲3の1を根拠とし、本件訂正発明はサポート要件を満たすと述べているが、特許権者は本件訂正発明とは全く構成が異なるエアゾール組成物を根拠として、本件訂正発明がサポート要件を満たしていると主張していることになる。 そして、「0.1mL以上1.0mL未満」の場合に、定量室の容積が「1.0mL」の場合と同様に液だれの抑制、及び匍匐害虫の防除効果を発揮し得ることを示す根拠は、何ら示していない。 よって、本件訂正発明は、少なくとも定量室が「0.1~1.0mL」である点において、サポート要件を満たしていない。 (イ) 防除成分 特許権者は、「溶剤に溶解した後の溶液の物理的な性状は各防除成分において大きくは変わらない」と主張する根拠を、何ら示していない。 防除成分がそれなりに含まれた場合、防除成分の影響によって、溶液全体の物性が大きく変わるのは技術常識である。 よって、本件訂正発明は、防除成分の含有量が何ら特定されていない点においても、サポート要件を満たしていない。 (ウ) 溶剤 当業者において、液だれが生じるか否かは、溶剤の揮発性や粘度、噴射ボタンの部材との親和性等も重要であると考えられるところ、本件特許明細書等の[実施例]の記載のみで、全てのパラフィン類や低級アルコールにおいて同様の効果が得られるとは到底理解できるものではない。 よって、本件訂正発明は、溶剤が「パラフィン類又は低級アルコールを含む」とのみ特定されている点においても、サポート要件を満たしていない。 ウ 取消理由2(新規性、進歩性) (ア) 甲4について 甲4は、甲1の1及び甲1の2、甲2の1及び甲2の2、甲3の1及び甲3の2に表示されている各製品と同じものを分析したものであることは明らかである。 エアゾール装置において、噴射ロの変更を伴うリニューアルがなされる場合があることは事実である。しかしながら、具体的に甲1~甲3において、上記のような変更がなされたという事実は見当たらない。 そして、甲1~3の発売日を示す資料と、甲4の資料とを見比べても当業者が認識し得るような差異はなく、十分に信用に足るものである。 以上のとおり、甲4を根拠として、各公然実施発明の「噴射通路の長さL」、「噴ロの噴口径R」及び「L/R」の数値を認定することはできるものである。 (イ) 甲1発明について 本件訂正発明において「セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物」とする訂正が新規事項の追加ではなかったとしても、甲1発明において、匍匐害虫を防除するとの周知の課題を解決すべく、エアゾール組成物の有効成分を種々検討し、セバシン酸ジブチル以外の有効成分を採用する(すなわち、セバシン酸ジブチルを含まないように有効成分を採用する) ことは、当業者であれば当然に行ったはずであろうというような検討事項に過ぎない。 よって、仮に、本件訂正発明において「セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物」とする訂正が新規事項の追加ではなかったとしても、本件訂正発明は、少なくとも甲1発明に基づいて当業者が容易に想到することができた発明であり、進歩性を有しない。 (ウ) 甲2発明について 甲2発明の44.2よりも小さい数値の範囲(44.2~6.9)内において、L/Rを10~31.3とすることは、壁面等に対する付着性を有するとの課題(一定の課題)を解決するための数値範囲の最適化又は好適化であり、それゆえ、 当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。 また、L/Rが10~31.3の範囲では臨界的意義は認められず、エアゾール装置5における若干の効果の低下は、単なる誤差レベルに過ぎない。 よって、仮に、本件訂正発明において「セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物」とする訂正が新規事項の追加ではなかったとしても、本件訂正発明は、少なくとも甲2発明に基づいて当業者が容易に想到することができた発明であり、進歩性を有しない。 (エ) 甲3発明について エアゾール装置において、「付着率が高く、液ダレも生じない」とすることは、当業者がエアゾール装置を開発する上で当然に検討すべき課題であり、この課題を解決すべくエアゾール装置の噴射ノズルの構成(噴口径、噴射通路の長さ)を検討することも、当業者であれば当然に検討すべき事項である。このため、当該周知の課題を解決すべく噴射ノズルの構成を検討するにあたり、甲3発明のL/R「34.1」を暫定的な仮の基準、仮の初期値とする等、目安として検討し、L/Rが「34.1」よりも小さい範囲において適宜設定することは、上記周知の課題(一定の課題)を解決するための数値範囲の最適化又は好適化であり、それゆえ、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、特段の困難性もない。 また、上記「甲2発明について」と同様、L/Rが10~31.3の範囲では臨界的意義は認められない。 よって、仮に、本件訂正発明において「セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物」とする訂正が新規事項の追加ではなかったとしても、本件訂正発明は、少なくとも甲3発明に基づいて当業者が容易に想到することができた発明であり、進歩性を有しない。 エ 取消理由3(進歩性) 元来、ノズル付きの噴射ボタンが、 害虫防除用、特に匍匐害虫防除用のエアゾール装置において広く使用されてきたものであることは、当業者にとって技術常識である。 また、エアゾール装置において、「付着率が高く、液ダレも生じない」とすることは、当業者がエアゾール装置を開発する上で当然に検討すべき課題であり、この課題を解決すべくエアゾール装置の噴射ノズルの構成(噴口径、噴射通路の長さ)を検討することも、当業者であれば当然に検討すべき事項であり、この点において、甲6と甲9とでは解決すべき課題が共通し、両者を組み合わせる動機付けが存在する。 そして、甲6発明において当該周知の課題を解決すべく噴射ノズルの構成を検討するにあたり、甲9記載事項のL/R「38.0」を暫定的な仮の基準、仮の初期値とする等、目安として検討し、L/Rが「38.0」よりも小さい範囲において適宜設定することは、上記一定の課題を解決するための数値範囲の最適化又は好適化であり、それゆえ、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎず、特段の何の困難性もない。 また、「甲2発明について」、「甲3発明について」と同様、L/Rが10~31.3の範囲では臨界的意義は認められない。 よって、本件訂正発明は、甲6発明及び甲9記載事項に基づいて当業者が容易に想到することができた発明であり、進歩性を欠如している。 (2) 申立人の主張についての検討 ア 上記(1)アに対して 訂正事項1及び2における「エアゾール組成物」を「セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物」とする訂正は、請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみをその請求項に記載した事項から除外する、いわゆる「除くクレーム」に該当し、除外した後の「除くクレーム」が新たな技術的事項を導入するものではない場合には、許されるものである。 そして、本件訂正発明1~5は、訂正事項1及び2により新たな技術的事項が導入されたものではないことから、訂正事項1及び2は訂正要件を満たすものである。 よって、申立人の主張は採用できない。 イ 上記(1)イ(ア)に対して 定量室が「0.1~1.0mL」の数値範囲のサポート要件に関しては、上記1(1)に記載したとおりである。 よって、申立人の主張は採用できない。 ウ 上記(1)イ(イ)に対して 本件訂正発明1~5において、溶剤に対する防除成分の含有量は特定されていないが、溶液全体の物性が大きく変わるほど防除成分を溶媒に添加しないことは、当業者の技術常識であると認められ、防除成分の含有量に関して、本件訂正発明1~5がサポート要件を満たしていないとまではいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 エ 上記(1)イ(ウ)に対して 一般的に防除成分の溶剤として採用される「パラフィン類又は低級アルコールを含む」溶剤の物性が大きく異なるものとは認められないことから、通常「パラフィン類又は低級アルコールを含む」溶剤として使用されるものであれば、本件特許明細書等の作用効果は認められると推定され、「パラフィン類や低級アルコールを含む」溶剤に関して、本件訂正発明1~5がサポート要件を満たしていないとまではいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 オ 上記(1)ウに対して 本件訂正により、エアゾール組成物に関して、「セバシン酸ジブチルを含まないエアゾール組成物」に訂正され、比率(L/R)が10~31.3に訂正されたことから、本件訂正発明1~5における比率(L/R)の数値範囲は、甲2発明と甲3発明と重複しないものとなり、甲1発明とは比率(L/R)の数値範囲では重複するものの、「セバシン酸ジブチルを含まない」との特定がされたことによって、甲1発明と同一の発明ではなくなった。 また、甲1発明のエアゾール装置の構成を変更せずに、溶剤と有効成分を、それぞれ、パラフィン類または低級アルコールを含み、セバシン酸ジブチルを含まないものに変更する動機も見いだせないとともに、甲2及び甲3には、液だれに関連した記載が存在しないことから、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)の数値範囲を検討する動機は見いだせず、そのことによって液だれの抑制を行うことを当業者が容易になし得ることとは認められない。 よって、甲4の証拠能力について検証するまでもなく、本件訂正発明1~5は甲1発明、甲2発明又は甲3発明と同一ではなく、また、それらの発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとも認められないことから、申立人の主張は採用できない。 カ 上記(1)エに対して 甲6及び甲9には、液だれに関連した記載が存在しないことから、噴口の噴口径R(mm)と、噴射通路の長さL(mm)との比率(L/R)の数値範囲を検討する動機は見いだせず、そのことによって液だれの抑制を行うことを当業者が容易になし得ることとは認められない。 よって、この点においても、申立人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由並びに特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正後の請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700521

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決71件(アース製薬株式会社、石井 健治)
  • 2019-701052異議申立 / 2025-12-09 / 維持噴射製品および噴射方法
    同じ当事者: アース製薬株式会社、石井 健治
  • 2022-701312異議申立 / 2024-09-12 / 訂正認容害虫防除エアゾール装置
    同じ当事者: アース製薬株式会社、石井 健治
  • 2026-700169異議申立 / 2026-06-30 / 維持人体用害虫忌避剤乳化組成物
    同じ当事者: 石井 健治
  • 2024-701113異議申立 / 2026-02-05 / 訂正認容薬剤揮散装置、及び、薬剤揮散方法
    同じ当事者: アース製薬株式会社
  • 2025-700433異議申立 / 2025-07-28 / 維持害虫防除方法及びエアゾール製品
    同じ当事者: アース製薬株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)66件(112・A01M、121・A01M、537・A01M)
  • 2022-701312異議申立 / 2024-09-12 / 訂正認容害虫防除エアゾール装置
    共通の審決分類: 121・A01M、537・A01M
  • 2023-700361異議申立 / 2024-06-25 / 訂正認容被覆物用のダニ防除装置及びダニ防除装置を用いたダニ防除方法
    共通の審決分類: 121・A01M、537・A01M
  • 2024-700024異議申立 / 2024-03-29 / 維持匍匐害虫駆除方法
    共通の審決分類: 121・A01M、537・A01M
  • 2022-701035異議申立 / 2023-07-27 / 訂正認容自走式防除機
    共通の審決分類: 121・A01M、537・A01M
  • 2022-700831異議申立 / 2022-11-11 / 維持蚊類防除用エアゾール、及び蚊類防除方法
    共通の審決分類: 112・A01M、121・A01M

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存