特許異議申立
2025-700358
ショベル
- 審判番号
- 2025-700358
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-043083
- 登録番号
- 7560163
- 請求日
- 2025年03月28日
- 審決日
- 2026年01月30日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友建機株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人ITOH
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【異議申立人】角田 成夫
- 審判長/審判官
- 審判長 圓道 浩史
- 審判官 宮下 誠
- 審判官 合田 幸裕
- 分類
- P1651.121-YAA(H04N) / P1651.537-YAA(H04N) / P1651.851-YAA(H04N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7560163号発明「ショベル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7560163号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、5〕について訂正することを認める。
特許第7560163号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7560163号の請求項1~5に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成25年5月16日を出願日とする出願である特願2013-104506号の一部を、平成30年8月7日に新たな特許出願とした特願2018-148598号の一部を、令和2年4月7日に新たな特許出願とした特願2020-69401号の一部を、令和5年3月17日に新たな特許出願としたものであって、手続の経緯は、概ね、次のとおりである。
令和 6年 9月24日 : 特許権の設定登録
同年10月 2日 : 特許掲載公報の発行
令和 7年 3月28日 : 特許異議申立人 角田 成夫(以下、「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て、証拠として甲第1号証から甲第4号証の提出
同年 6月 3日付け: 取消理由通知書
同年 7月30日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 8月18日付け: 手続補正指令書(方式)
同年 9月16日 : 特許権者による手続補正書(方式)の提出及び既納手数料返還請求
同年10月 6日付け: 訂正拒絶理由通知書
同年11月10日 : 特許権者による意見書及び手続補正書(方式)の提出
同年11月25日付け: 通知書(訂正請求があった旨の通知)
同年12月25日 : 申立人による意見書及び証拠として甲第5号証から甲第7号証の提出
以下、令和7年7月30日に提出された訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正の適否
1 令和7年11月10日に提出された手続補正書による手続補正の内容及び適否について
令和7年11月10日に提出された手続補正書による手続補正は、同年7月30日に提出された訂正請求書における訂正事項2(請求項5に係る訂正事項)及び訂正事項3(請求項6に係る訂正事項)を削除する補正であるから、上記手続補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
したがって、上記手続補正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するものであるから、上記手続補正を認める。
2 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、令和7年11月10日に提出された手続補正書によって補正された、次のとおりのものである(下線は訂正箇所を示す。)。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、周囲の測定対象までの距離情報を取得する装置と画像を取得する装置とにより構成される二つ一組の対と、を有し、複数の前記対が前記上部旋回体に配置され、複数の前記画像を取得する装置の出力に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示させるように構成され、前記視点変換画像では、複数の前記画像を取得する装置のそれぞれの撮像範囲の重複領域内に存在する物体の画像に対応する枠が表示される、ショベル。」と記載されているのを、「下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、周囲の測定対象までの距離情報を取得する装置と画像を取得する装置とにより構成される二つ一組の対と、を有し、複数の前記対が前記上部旋回体に配置され、複数の前記画像を取得する装置の出力に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示させるように構成され、前記視点変換画像では、複数の前記画像を取得する装置のそれぞれの撮像範囲の重複領域内に存在する物体の画像と該物体の画像に対応する枠が表示され、前記視点変換画像において前記枠とともに表示される前記物体の画像は、二つの前記画像を取得する装置の一方が取得した画像部分と他方が取得した画像部分とを含む、ショベル。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)。
3 本件訂正の適否について
(1)訂正事項1について
ア 一群の請求項について
訂正前の請求項5は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1及び5に対応する訂正後の請求項1及び5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
イ 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、請求項1に係る発明における視点変換画像について、物体の画像に対応する枠に加えて、該「物体の画像」すなわち「複数の前記画像を取得する装置のそれぞれの撮像範囲の重複領域内に存在する物体の画像」が表示されること、及び、「前記視点変換画像において前記枠とともに表示される前記物体の画像は、二つの前記画像を取得する装置の一方が取得した画像部分と他方が取得した画像部分とを含む」ことを、さらに特定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものか否かについて
上記イの理由から明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明における「視点変換画像」に上記「物体の画像」が表示されること、及び、該「物体の画像」の構成を具体的に特定するものであり、訂正前の請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
エ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
訂正事項1は、明細書記載の実施形態に係る説明として、段落【0154】には、「具体的には、画像OB1は、後方カメラ2Bの入力画像における立体物OBの画像が、路面画像を生成するための視点変換によって、後方カメラ2Bと立体物OBとを結ぶ線の延長方向に伸長されたものを表す。すなわち、画像OB1は、後方カメラ2Bの入力画像を用いて出力画像部分における路面画像を生成した場合に表示される立体物OBの画像の一部である。」との記載がなされ、段落【0155】には、「また、画像OB2は、右側方カメラ2Rの入力画像における立体物OBの画像が、路面画像を生成するための視点変換によって、右側方カメラ2Rと立体物OBとを結ぶ線の延長方向に伸長されたものを表す。すなわち、画像OB2は、右側方カメラ2Rの入力画像を用いて出力画像部分における路面画像を生成した場合に表示される立体物OBの画像の一部である。」との記載がなされ、段落【0156】には、「このように、画像生成装置100は、重複領域において、後方カメラ2Bの入力画像平面上の座標が対応付けられる領域PR1と、右側方カメラ2Rの入力画像平面上の座標が対応付けられる領域PR2とを混在させる。その結果、画像生成装置100は、1つの立体物OBに関する2つの画像OB1及び画像OB2の双方を出力画像上に表示させ、立体物OBが出力画像から消失するのを防止する。」との記載がなされ、図13及び図14には関連する図が記載されている。
上記領域PR1は、後方カメラ2Bが取得した物体の画像に係る画像部分といえ、上記領域PR2は、右側方カメラ2Rが取得した物体の画像に係る画像部分といえるところ、上記明細書及び図面によれば、視点変換画像での重複領域における物体の画像は、後方カメラ2Bが取得した画像部分と右側方カメラ2Rが取得した画像部分が含まれているといえるから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
オ 特許出願の際に独立して特許を受けることができるかについて
本件特許異議事件においては、訂正前の請求項1及び5について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)まとめ
以上のとおりであるから、訂正前の請求項1及び5に対応する訂正後の請求項1及び5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、申立人による特許異議申立ては、訂正前の請求項1~5の全てに対してなされているので、同条第9項で読み替えて準用する同条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2より、本件訂正は認められるから、本件訂正後の本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、次のとおりのものである。
なお、説明のために、本件発明1~5における各構成に1A~5Bの符号を当審で付した(以下、「構成1A」~「構成5B」という。)。
【請求項1】
1A 下部走行体と、
1B 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
1C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、
1D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、
1E 周囲の測定対象までの距離情報を取得する装置と画像を取得する装置とにより構成される二つ一組の対と、を有し、
1F 複数の前記対が前記上部旋回体に配置され、
1G 複数の前記画像を取得する装置の出力に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示させるように構成され、
1H 前記視点変換画像では、複数の前記画像を取得する装置のそれぞれの撮像範囲の重複領域内に存在する物体の画像と該物体の画像に対応する枠が表示され、
1I 前記視点変換画像において前記枠とともに表示される前記物体の画像は、二つの前記画像を取得する装置の一方が取得した画像部分と他方が取得した画像部分とを含む、
1J ショベル。
【請求項2】
2A 下部走行体と、
2B 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
2C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、
2D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、
2E 周囲の測定対象までの距離情報を取得する装置と画像を取得する装置とにより構成される二つ一組の対と、を有し、
2F 複数の前記対が前記上部旋回体に配置され、
2G 前記距離情報を取得する装置は、前記上部旋回体の上部に斜め下方を向くように取り付けられ、
2H 前記距離情報を取得する装置の監視範囲内においてショベルから所定距離の範囲内に存在し且つショベルの設置面から所定高さ以上の高さを有する物体を衝突するおそれのある物体として検出し、前記距離情報を取得する装置の監視範囲内においてショベルから前記所定距離の範囲内に存在し且つ前記設置面から前記所定高さ未満の高さを有する物体を衝突するおそれのある物体として検出しないように構成されている、
2I ショベル。
【請求項3】
3A 下部走行体と、
3B 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
3C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、
3D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、
3E 周囲の測定対象までの距離情報を取得する装置と画像を取得する装置とにより構成される二つ一組の対と、を有し、
3F 複数の前記対が前記上部旋回体に配置され、
3G 前記距離情報を取得する装置は、前記上部旋回体の上部に斜め下方を向くように取り付けられ、
3H 前記距離情報を取得する装置と2つの物体のそれぞれとの間の直線距離が同じであり、且つ、前記距離情報を取得する装置と前記2つの物体のそれぞれとの間の水平距離が互いに異なる場合、前記距離情報を取得する装置と前記2つの物体のそれぞれとの間の直線距離が同じであることを認識でき、且つ、前記距離情報を取得する装置と前記2つの物体のそれぞれとの間の水平距離が互いに異なることを認識できるように構成されている、
3I ショベル。
【請求項4】
4A 下部走行体と、
4B 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
4C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、
4D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、
4E 周囲の測定対象までの距離情報を取得する装置と画像を取得する装置とにより構成される二つ一組の対と、を有し、
4F 複数の前記対が前記上部旋回体に配置され、
4G 前記距離情報を取得する装置は、前記上部旋回体の上部に斜め下方を向くように取り付けられ、
4H 前記距離情報を取得する装置の出力に基づき、前記距離情報を取得する装置と前記測定対象との間の水平距離を算出し、且つ、前記測定対象の高さを算出するように構成されている、
4I ショベル。
【請求項5】
5A 前記距離情報を取得する装置及び前記画像を取得する装置は何れも、前記上部旋回体の上部に斜め下方を向くように取り付けられている、
5B 請求項1乃至4の何れかに記載のショベル。
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1及び5に係る特許に対して、当審が令和7年6月3日付けで被申立人である特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由1(進歩性)本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明、甲3及び甲4に開示された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1及び請求項1を引用する請求項5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
記
<引用文献等一覧>
甲1:特開2013-66010号公報
甲3:特開2008-248613号公報
甲4:特開2010-112100号公報
2 取消理由通知書で採用した甲1、3、4について
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
「【0009】
しかし、仮想視点画像は、斜め上方から撮影しているカメラの視点を上方に仮想的に設置した場合に水平面方向に展開した画像であり、仮想視点画像間の境界部に立体物が存在する場合、その立体物の上部(地面より高い部分)が仮想視点画像から消失する可能性がある。この場合には、仮想視点画像を合成して表示したパノラマ画像において、境界部に位置している立体物の上部が表示されないことになる。従って、実際には作業機の近傍に固定的或いは動的な障害物が存在するにもかかわらず、仮想視点画像から障害物が消失し、オペレータは障害物の存在を認識することができなくなる。これにより、作業機の周囲の状況を的確に監視することができなくなる。」
「【0027】
図1に示すように、油圧ショベル1は車体2とフロント作業機3とを有して構成している。車体2は下部走行体4と上部旋回体5とを有しており、下部走行体4と上部旋回体5との間には旋回装置が設けられている。上部旋回体5にはオペレータが搭乗して油圧ショベル1を操作するための運転室6が設置されており、また土砂の掘削等の作業を行うフロント作業機3が運転室6の右手において、ほぼ並ぶような位置に上部旋回体5に設けられている。上部旋回体5には、運転室6およびフロント作業機3の後方位置に建屋7等が設けられており、最後端部にはカウンタウェイト8が設置されている。
【0028】
フロント作業機3はブーム10とアーム11とバケット12とを有して構成される土砂の掘削作業手段である。・・・。」
「【0031】
そこで、上部旋回体5の後方、左側方および右側方の監視を可能にするために、監視用のカメラ13B(後方カメラ13B)、カメラ13R(右方カメラ13R)、カメラ13L(左方カメラ13L)の3台のカメラを、補助的に視野を確保するために設けている。すなわち、カウンタウェイト8の上面において、左右のほぼ中間位置に後方カメラ13Bを設置し、建屋7の左方向の上面には左方カメラ13Lを、上部旋回体5の右側の建屋7またはタンクの上面に右方カメラ13Rを設置している。」
「【0033】
各カメラ13B、13R、13Lのレンズの視野角とそれらの配設位置とによって、少なくとも各レンズの視野範囲の一部がオーバラップするように設定されている。具体的には、後方カメラ13Bの視野角の左右の両側部分が左右のカメラ13R、13Lの視野角とが部分的に重複するようにしている。これにより、上部旋回体5の周囲において、ブラインドとなる箇所がなくなる。
【0034】
そして、運転室6の内部にはモニタ14が設置されており、各カメラ13B、13R、13Lから取得した画像がモニタ14に動画状態にして表示される。モニタ14には、各カメラ13B、13R、13Lで取得したカメラ画像がそのままの画像(カメラスルー画像)として表示され、且つ上方視点となるように視点変換された画像(仮想視点画像)としても表示される。カメラスルー画像と仮想視点画像とは1つの画面で両者が同時に表示される。
【0035】
ここで、後方カメラ13Bを例に取ると、図2に示したように、後方カメラ13Bが上部旋回体5の後方に対して角度θを持った斜め下方に対物レンズの光軸を向けている。このときに、油圧ショベル1の下部走行体4の接地面をLとし、この接地面Lに対して角度θを持ったカメラ画像を得ることができる。この接地面Lを仮想平面とした仮想視点VFの光軸が垂直方向(水平面と直交する方向)になるように座標変換した画像が仮想視点画像として生成される。つまり、仮想視点VFから接地面Lを見下ろした仮想的な画像が仮想視点画像となる。
【0036】
これにより、角度θを持った斜め上方からのカメラ画像が仮想視点画像(或いは俯瞰画像)に変換されて、モニタ14に表示される。また、左右の両側カメラ13R、13Lも後方カメラ13Bと同様に、接地面Lに対する光軸の傾斜角はθとする。後方カメラ13Bは上部旋回体5の後方に向いているのに対して、左右のカメラ13R、13Lは側方に向いている。つまり、仮想平面としての接地面Lに対する後方カメラ13Bの方向と左右両側のカメラ13L、13Rとでは概ね90度異なっている。つまり、各カメラ13B、13R、13Lは撮影する方向がそれぞれ90度異なるようにしている。」
「【0038】
図3はモニタ14の構成を示している。この図に示すように、モニタ14は画像が表示される表示部15とスイッチを設けた入力部16とを有して構成している。表示部15は仮想視点画像表示領域17とカメラスルー画像表示領域18とを有している。仮想視点画像表示領域17は仮想視点画像を表示する領域である。仮想視点画像は第1の画像であり、油圧ショベルの平面図を図形化した作業機画像17Mを中央の位置に表示している。作業機画像17Mの周囲の領域には、カメラ13B、13R、13Lで取得したカメラ画像に基づいて視点変換した仮想視点画像が表示される。
【0039】
仮想視点画像は、後方カメラ13Bが撮影したカメラ画像に基づく仮想視点画像である仮想視点後方画像17Bと、右方カメラ13Rで撮影したカメラ画像に基づく仮想視点画像である仮想視点右方画像17Rと、左方カメラ13Lで撮影したカメラ画像に基づく仮想視点画像である仮想視点左方画像17Lとを有している。そして、仮想視点後方画像17Bと仮想視点右方画像17Rとの間には境界部としての境界ライン19R、仮想視点後方画像17Bと仮想視点右方画像17Rとの間には境界部としての境界ライン19Lが形成されている。」
「【0098】
次に、変形例について説明する。本変形例の表示コントローラ20を図13に示す。本変形例の表示コントローラ20は、図4で示した表示コントローラ20に障害物検出部51を追加している。その他の構成は図4の表示コントローラ20と同じである。障害物検出部51は画像補正部22の後段に設けており、障害物検出部51で障害検出処理を行ったカメラ画像が視点変換部23および画像整形部26に出力される。
【0099】
障害物検出部51は画像補正部22が補正処理したカメラ画像から障害物(作業員や車両等)といった特徴点を検出して、検出した障害物の周囲にマーク52を重畳表示する。図14はパターンDにおける仮想視点画像およびカメラスルー画像に表示されている作業員Mに楕円形のマーク52を重畳表示している。マーク52は障害物の周囲に形成されるものであれば、楕円形ではなく、円形或いは四角形であってもよい。
【0100】
図14a)に示すように、仮想視点画像およびカメラスルー画像の作業員Mの周囲に楕円形のマーク52を重畳表示している。この状態から、上部旋回体5が旋回すると、図14b)に示すように、仮想視点画像では作業員Mの像が境界ライン19Lに位置し、カメラスルー画像では作業員Mが画面中央から端部に移動する。このとき、仮想視点画像では作業員Mの像の殆どが消失しているため、作業員Mの像自体は認識することが困難になっている。しかし、作業員Mの像の周囲にはマーク52が表示されており、作業員Mの像が見えなくなったとしても、マーク52は表示されているため、このマーク52に基づいて作業員Mの存在をオペレータは認識することができる。また、カメラスルー画像にも作業員Mの周囲にマーク52を形成しており、オペレータは作業員Mの存在を認識することができる。
【0101】
図14c)の場合も同様であり、仮想視点後方画像17Bからは作業員Mの像は完全に退出しており、仮想視点左方画像17Lの一部に作業員Mの像が出現している。従って、仮想視点左方画像17Lには作業員Mの像が部分的に表示されており、作業員Mの像自体ではその存在を認識することは困難である。このとき、マーク52を表示していることで、作業員Mの存在をオペレータが容易に認識することができる。また、カメラスルー画像にも作業員Mの周囲にマーク52を形成していることから、オペレータはその存在を認識することができる。」
「
[図:0001435186000001.jpg]
」
「
[図:0001435186000002.jpg]
」
「
[図:0001435186000003.jpg]
」
「
[図:0001435186000004.jpg]
」
「
[図:0001435186000005.jpg]
」
イ 甲1の記載よりいえる事項
(ア)上記【0027】の記載によれば、油圧ショベル1は、下部走行体4を有しており、さらに、該下部走行体4と上部旋回体5との間には旋回装置が設けられているといえる。
(イ)上記【0028】の記載によれば、フロント作業機3は、少なくとも、ブーム10とアーム11を有して構成されているから、該フロント作業機3は、ブーム10及びアーム11を含むものであるといえる。
図1及び図2の記載からみて、ブーム10は上部旋回体5に取り付けられており、アーム11はブーム10に取り付けられていることが看取できる。
(ウ)上記【0027】、【0031】、図1及び図2によれば、カメラ13B、カメラ13R、カメラ13Lの3台のカメラは上部旋回体5の上部に配置されているといえる。
(エ)上記【0039】の記載のうち、「仮想視点後方画像17Bと仮想視点右方画像17Rとの間には境界部としての境界ライン19Lが形成されている」との部分は、「仮想視点後方画像17Bと仮想視点左方画像17Lとの間には境界部としての境界ライン19Lが形成されている」の誤記であると認められるから、同【0039】によれば、後方カメラ13Bが撮影したカメラ画像に基づく仮想視点画像である仮想視点後方画像17Bと、左方カメラ13Lで撮影したカメラ画像に基づく仮想視点画像である仮想視点左方画像17Lとの間には境界ライン19Lが形成されているといえる。
上記【0038】及び図3によれば、モニタ14は仮想視点画像を表示する仮想視点画像表示領域17を有するところ、上記【0100】及び【0101】の説明を踏まえれば、図14(b)及び(c)から、図14(b)及び(c)の紙面左側に表示される仮想視点画像について、仮想視点後方画像17Bと仮想視点左方画像17Lとの間に境界ライン19Lが形成されているといえる。
上記【0099】の「検出した障害物の周囲に」「重畳表示する」「マーク52」は、上記【0100】の「楕円形のマーク52」のことであるので、上記【0099】ないし【0101】によれば、障害物検出部51は画像補正部22が補正処理したカメラ画像から障害物(作業員や車両等)といった特徴点を検出し、仮想視点画像では作業員Mの像が境界ライン19Lに位置し、カメラスルー画像では作業員Mが画面中央から端部に移動するとき、仮想視点画像では作業員Mの像の殆どが消失しているため、作業員Mの像自体は認識することが困難になっているが、作業員Mの像の周囲にはマーク52が表示されており、作業員Mの像が見えなくなったとしても、マーク52は表示されているため、このマーク52に基づいて作業員Mの存在をオペレータは認識することができる。
また、上記【0099】によれば、マーク52は四角形であってもよいものである。
ウ 甲1発明
上記ア及びイより、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。なお、1a等の符号は、分説するため当審合議体が付した。また、それぞれの符号により分説された事項を、以下では「構成1a」等という。
「1a 下部走行体4と、
1b 前記下部走行体4との間に旋回装置が設けられた上部旋回体5と
1c 上部旋回体5に取り付けられ、フロント作業機3に含まれるブーム10と、
1d 前記ブーム10に取り付けられ、前記フロント作業機3に含まれるアーム11と、
1e 監視用のカメラ13B、カメラ13R、カメラ13Lの3台のカメラと、を有し、
1f 前記上部旋回体5には、運転室6および前記フロント作業機3の後方位置に建屋7等が設けられており、最後端部にはカウンタウェイト8が設置されており、該カウンタウェイト8の上面において、左右のほぼ中間位置に前記カメラ13Bを設置し、前記建屋7の左方向の上面には前記カメラ13Lを、前記上部旋回体5の右側の前記建屋7の上面に前記カメラ13Rを設置しており、
1g 運転室6の内部にはモニタ14が設置されており、各カメラ13B、13R、13Lから取得した画像がモニタ14に動画状態にして表示され、モニタ14には、上方視点となるように視点変換された画像(仮想視点画像)としても表示され、
1h 障害物検出部51は画像補正部22の後段に設けており、障害物検出部51で障害検出処理を行ったカメラ画像が視点変換部23および画像整形部26に出力され、障害物検出部51は画像補正部22が補正処理したカメラ画像から障害物(作業員や車両等)といった特徴点を検出して、仮想視点画像の作業員Mの周囲に楕円形のマーク52を重畳表示し、仮想視点画像では作業員Mの像が境界ライン19Lに位置するとき、仮想視点画像では作業員Mの像の殆どが消失しているため、作業員Mの像自体は認識することが困難になっているが、作業員Mの像の周囲にはマーク52が表示されており、作業員Mの像が見えなくなったとしても、マーク52は表示されているため、このマーク52に基づいて作業員Mの存在をオペレータは認識することができ、前記マーク52は四角形であってもよい、
1j 油圧ショベル。」
(2)甲3に記載された事項及び甲3開示事項
ア 甲3に記載された事項
甲3には、図面とともに、以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、作業機械周囲の障害物を監視する作業機械周辺監視装置に係り、特に、作業機械と障害物との位置関係を容易かつ正確に把握でき、フロント作業機の旋回などの適否を瞬時に判断できるようにする周囲情報提示手段に関する。」
「【0026】
図1は、本発明を適用すべき作業機械の一例として油圧ショベルを示す斜視図である。」
「【0030】
上部旋回体1dの上部には、車体1Bの右側方監視カメラ13a,後方監視カメラ13bが備えられ、監視範囲12a,12bを撮影する。点線14は、フロント作業機1Aの作業範囲を示している。作業員がフロント作業機1Aの作業範囲に進入すると、フロント作業機1Aと作業員とが衝突するおそれがある。」
「【0043】
画像位置補正手段400は、作業機械が稼動中のカメラ13aおよび13bの画像が上部旋回体1dの姿勢データに応じて傾きや回転などの影響を受けているので、これらの傾きや回転などを補正した画像を作成する。
【0044】
俯瞰変換手段500は、画像位置補正手段400で補正した画像を俯瞰画像に変換する。俯瞰変換手段500は、例えば、特開2006-48451号の技術を用いると、実現できる。
【0045】
パノラマ合成手段600は、俯瞰画像を統合処理したパノラマ合成画像を作成する。
【0046】
障害物検出手段700は、障害物40や障害物41を障害物として検知する。障害物検出手段700は、例えば、特開平6-333049号の技術を用いると、実現できる。
【0047】
表示画像生成手段800は、パノラマ合成手段600で俯廠変換したパノラマ画像に、障害物検出手段700が検知した障害物の位置および距離と、作業機械姿勢取込み手段300が算出したフロント作業機1Aの大きさおよび長さと、下部走行体1eからの上部旋回体1dの旋回方向を反映した車体1Bをパノラマ画像の中央部に重畳させて表示画像を生成し、表示装置900に出力する。」
「【0083】
パノラマ画像から障害物を検出する上記障害物検出手段700に代えて、上部旋回体1dの右側面および後面に障害物検出器10a,10bを設置し、上部旋回体1dの左側面に障害物検出器10cを設置してもよい。
【0084】
障害物検出器10a,10b,10cは、周囲の作業員や構造物などの障害物を検出し、その距離と方向から障害物の位置を得る近接センサであり、例えば、レーザレーダなどである。」
「【0087】
上記実施例では、障害物検出器10とカメラ13を上部旋回体1d側方と後方に1つずつ備えた例を示した。障害物検出器10とカメラ13の位置および数は、この実施例に限定されない。障害物検出器10とカメラ13は、側方のみ、後方のみに備えてもよいし、より多くの個所に搭載して、更に広範囲に監視してもよい。その場合は、表示装置900内にカメラ画像領域を増やしてもよいし、または表示装置900を複数設けてもよい。」
「【0095】
カメラ13a,13が、監視対象シーン20,21の対象物体40,41を撮影すると、俯眼変換手段500が、撮影した映像信号を俯轍変換し、パノラマ合成手段600が、パノラマ画像を合成し、障害物検出手段700が、障害物40または41を検知し、カメラ13a,13bから障害物40,41までの距離を算出する。」
「
[図:0001435186000006.jpg]
」
「
[図:0001435186000007.jpg]
」
「
[図:0001435186000008.jpg]
」
「
[図:0001435186000009.jpg]
」
イ 甲3の記載よりいえる事項
(ア)上記【0001】の「作業機械周囲の障害物を監視する作業機械周辺監視装置」の「作業機械」は、上記【0026】によれば、油圧ショベルであるから、甲3に記載された装置は、油圧ショベル周囲の障害物を監視する油圧ショベル周辺監視装置であるといえる。
(イ)上記【0083】のとおり、パノラマ画像から障害物を検出する障害物検出手段700に代えて、上部旋回体1dの右側面および後面に障害物検出器10a、10bを設置する実施例において、上記【0087】には、「障害物検出器10とカメラ13を上部旋回体1d側方と後方に1つずつ備え」ることが記載されているところ、図14によれば、各障害物検出器10と各カメラ13は二つ一組の対で、上部旋回体1dに設けられていることが看取できる。
(ウ)上記【0095】によれば、カメラ13a,13が、監視対象シーン20,21の対象物体40,41を撮影すると、俯眼変換手段500が、撮影した映像信号を俯轍変換し、パノラマ合成手段600が、パノラマ画像を合成しているから、パノラマ合成手段600は、俯瞰画像を統合処理したパノラマ合成画像を作成するといえる。
ウ 甲3開示事項
上記ア、イより、甲3には、次の事項が開示されているものと認められる(以下「甲3開示事項」という。)。
油圧ショベル周囲の障害物を監視する油圧ショベル周辺監視装置において、 上部旋回体1dの上部には、車体1Bの右側方監視カメラ13a、後方監視カメラ13bが備えられ、監視範囲12a、12bを撮影し、
画像位置補正手段400は、作業機械が稼動中のカメラ13aおよび13bの画像が上部旋回体1dの姿勢データに応じて傾きや回転などの影響を受けているので、これらの傾きや回転などを補正した画像を作成し、
俯瞰変換手段500は、画像位置補正手段400で補正した画像を俯瞰画像に変換し、
パノラマ合成手段600は、俯瞰画像を統合処理したパノラマ合成画像を作成し、
障害物検出手段700は、障害物40や障害物41を障害物として検知するところ、
パノラマ画像から障害物を検出する上記障害物検出手段700に代えて、上部旋回体1dの右側面および後面に障害物検出器10a、10bを設置し、
各障害物検出器10と各カメラ13は二つ一組の対で、上部旋回体1dに設けられていること。
(3) 甲4に記載された事項及び甲4開示事項
ア 甲4に記載された事項
甲4には、図面とともに、以下の記載がある。
「【0007】
以下、図1~図16を参照して本発明による作業機械の監視装置の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る警報装置が適用される作業機械の一例である油圧ショベルの外観斜視図である。なお、以下では図示のように機体の前後左右方向を定義する。油圧ショベルは、フロント作業機1Aと車体1Bとを有する。車体1Bは、左右一対の下部走行体1eと、下部走行体1eの上方に旋回可能に搭載された上部旋回体1dとを備え、上部旋回体1dには運転室1fが設けられている。」
「【0009】
図2は、図1の油圧ショベルを上方から見た図である。図1,2に示すように上部旋回体1dの左右側面および後面には、それぞれ障害物検出用センサ10a~10Cが取り付けられている。センサ10a~10Cは、周囲の作業員や構造物などの障害物を検出し、その距離と方向から障害物の位置(相対位置)を得るセンサであり、例えばレーザレーダにより構成される。図2の斜線領域は、各センサ10a~10Cによる監視可能な範囲(監視範囲)11a~11bを示している。センサ10aは機体の左後側方を、センサ10Cは機体の後方を、センサ10Cは機体の右後側方をそれぞれ監視する。
【0010】
各センサ10a~10cの上方には、それぞれ監視カメラ13a~13cが搭載されている。監視カメラ13a~13cは、例えばCCDなどの撮像素子を有するビデオカメラであり、電源オン時に、常時油圧ショベルの周囲の動画を撮影する。各監視カメラ13a~13cは、センサ10a~10cの検出方向とそれぞれ同一方向に向けられている。各監視カメラ13a~13cの撮影範囲は図2の14a~14cに示す通りであり、センサ10a~10cの監視範囲とほぼ一致している。これによりセンサ10a~10cによって検出された障害物の画像をカメラ13a~13cで撮影できる。」
「
[図:0001435186000010.jpg]
」
「
[図:0001435186000011.jpg]
」
イ 甲4の記載よりいえる事項
(ア)上記【0007】の「作業機械の監視装置」と「作業機械の一例である油圧ショベル」によれば、甲4に記載されたものは、作業機械(油圧ショベル)の監視装置であるといえる。
(イ)上記【0009】によれば、センサ10a~10cは、障害物の距離と方向を検出しているといえる。
(ウ)上記【0010】によれば、各監視カメラ13a~13cは、センサ10a~10cの検出方向とそれぞれ同一方向に向けられていて、各監視カメラ13a~13cの撮影範囲とセンサ10a~10cの監視範囲はほぼ一致しており、図1及び図2によれば各監視カメラ13a~13cとセンサ10a~10cは対応して上部旋回体1dに取り付けられていることが看取できるから、センサ10a~10cと、監視カメラ13a~13cとを二つ一組の対で上部旋回体1dに設けているといえる。
ウ 甲4開示事項
上記ア、イより、甲4には、次の事項が開示されているものと認められる(以下「甲4開示事項」という。)。
作業機械(油圧ショベル)の監視装置において、障害物の距離と方向を検出するセンサ10a~10cと、周囲の動画を撮影する監視カメラ13a~13cとを二つ一組の対で上部旋回体1dに設けること、及び、各監視カメラ13a~13cは、センサ10a~10cの検出方向とそれぞれ同一方向に向けられていること。
3 取消理由通知書で採用していない甲号証について
(1)甲2に記載された事項及び甲2発明
ア 甲2に記載された事項
甲2(特開平10-72851号公報)には、図面とともに、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
「【0020】図1において、油圧ショベル1のフロント部は、ブーム2、スティック3およびバケット4が回動自在に連結されており、それぞれが油圧アクチュエータであるブームシリンダ5、スティックシリンダ6およびバケットシリンダ7で駆動される。
【0021】油圧ショベル1には侵入移動体検出用のカメラ8が搭載されている。このカメラ8の取付は模式的に記載されており、実際には、頑丈に固定し且つカメラ8に振動が作用しないようにマウントすることになる。
【0022】また、油圧ショベル1には油圧ショベルの作業範囲への人体の侵入を検出する侵入移動体検出装置主要部9と、遠隔操作室15へ信号を無線で送信する送信装置10とが搭載されている。」
「【0024】図2(a)において、カメラ8からのデータが本発明の侵入移動体検出装置主要部9に人力(当審注:「入力」の誤記である。)される。上記侵入移動体検出装置主要部9は次の機器および処理部で構成される。
【0025】すなわち、侵入移動体検出装置主要部9は、カメラ8からの信号を変換する変換器50と、画像データを格納する画像メモリ51と、プログラム中のデータを格納するプログラムメモリ52と、画像データを対象にした演算処理を行う画像処理演算部53と、上記画像データから得られる特徴量(後述するラベリングデータの面積、重心位置、外接長方形など)や既知のデータを用いた数値演算を行う数値演算処理部54と、演算処理の全体を管理するプロセッサ55とにより構成されている。」
「【0030】次に、図3~図13を用いて、上記実施形態の作用について説明する。本作用は、侵入移動体検出装置主要部9中の画像処理演算部53と数値演算処理部54の処理内容が中心になる。
【0031】図3は、画像処理演算部53と数値演算処理部54で行われる侵入移動体検出処理の全体フローを示している。なお、フローチャート中の丸数字は、処理順序を示す(ステップ番号)を表わす。
【0032】図3において、まず撮画データ読み込み部100 で、時間間隔Δtごとに格納された撮画データを画像メモリ51から読込み(ステップ1)、移動物抽出処理部[1]101 で侵入移動体(以下、移動物という)の抽出処理を行う(ステップ2)。この移動物抽出処理部[1]101 の説明は、図4、図5、図6および図8を用いて後述する。この移動物抽出処理部[1]101 では、後述する移動物のラベリングデータの特徴量が出力される。」
「【0044】次の(ステップ15)における移動物に関する物理量算出部107 では、移動物の物理的な高さ(画像のデータより例えば物体の高さ170 cm)や、油圧ショベルの旋回中心から移動物までの物理的侵入距離(m)などを算出する。上記物理量算出部107 での処理内容の説明は、図9および図10を用いて後述する。
【0045】(ステップ16)における人体評価部108は、抽出した物体が人体であるか否かを評価し、人体である確信度を出力するものである。上記人体評価部108の説明は、図11および図12を用いて後述する。
【0046】(ステップ17)では、抽出された移動物(人体)の油圧ショベル旋回中心からの距離が許容距離より小さいか否かを判定器109 で判定し、許容距離より小さい場合は(ステップ17でY)、出力部110 で警報信号や人体の確信度データなどを出力する(ステップ18)。」
「【0074】次に、図3中の移動物に関する物理量算出部107 (以降は物理量算出部107 と略称する)を、図9および図10を用いて説明する。なお、上記(ステップ15)および(ステップ16)の物理量算出部107 と、後述する人体評価部108 での処理は、図2中の数値演算処理部54で行われ、そのプログラムおよびデータはプログラムメモリ52に格納される。
【0075】図9は移動物抽出のための範囲設定を説明した図である。本処理は、図7で対象にしたラベリング総面積の重心位置より、物理的高さ±ΔΗ(cm)に相当する画面上のY座標の範囲(yL,yU)と、物理的幅±ΔW(cm)に相当する画面上のΧ座標の範囲(xL,xU)を求めるものである。なお、高さΔΗに対する画面上高さをΔhで表し、幅ΔWに対する画面上幅をΔwで表している。」
「【0080】
xU =xg +{(yU -yL)/2} /2 …(7)-1
xL =xg -{(yU -yL)/2} /2 …(7)-2
次に、図10は、移動物のカメラ8からの距離と移動物(人体)の高さ(身長)を算出する説明図である。本処理は、図9で設定した範囲である±ΔΗ(cm)と±ΔW(cm)内にあるラベリングデータを対象にし、図8で示した全体を囲む外接長方形の画面座標を使用する。以下に、図10に関する説明を数式を用いて行なう。
【0081】[数式説明4]移動物(人体)の接地点に対する画面のY座標yx1が求められると、油圧ショベルに対する移動物の物理的侵入距離を表わす、移動物のカメラからの距離Lx1は、次のようにして式(8)-1~4より算出することができる。」
「【0083】[数式説明5]移動物(人体)の物理的高さ(身長)の算出は、上記式(8)を利用する。なお、ここでは説明を簡単にするため、上記式(8)を次のように関数の形で表すことにする。
【0084】
(Lx1,θx21)=f{yx1,定数(ym ,θy ,θo ,L1)}…(8)´
移動物の上端での画像のy座標yx2より、同様に、物体上端を通過する直線が地面に達するまでの距離Lx2を、次の式(9)で求める。」
「【0088】図11は人体らしさの評価関数を示したものである。
【0089】図11において、(a)は移動物の物理的高さに関する評価関数、すなわち人体の身長LB に対する評価関数f1 、(b)は移動物の物理的高さと幅との比に関する評価関数、すなわち前記ラべリング総面積の外接長方形の縦横比αに対する評価関数f2 、(c)は移動物の重心高さと物理的高さとの比に関する評価関数、すなわち前記ラベリング総面積の外接長方形の高さに対するラベリング総面積の重心高さの比βに関する評価関数f3 である。前記関数の値が1に近いほど人体らしいことを意味している。」
「
[図:0001435186000012.jpg]
」
「
[図:0001435186000013.jpg]
」
「
[図:0001435186000014.jpg]
」
「
[図:0001435186000015.jpg]
」
「
[図:0001435186000016.jpg]
」
イ 甲2の記載よりいえる事項
(ア)【0020】及び図1によれば、ブーム2、スティック3およびバケット4が回動自在に連結されている油圧ショベル1のフロント部の下部に、該油圧ショベル1を走行させる走行体が看取できる。
そうすると、上記油圧ショベル1は、ブーム2、スティック3およびバケット4が回動自在に連結されている油圧ショベル1のフロント部の下部に、該油圧ショベル1を走行させる走行体が設けられているといえる。
(イ)【0024】、【0025】、【0044】及び図3によれば、カメラ8から出力されたデータを変換して格納した画像データを対象とした演算処理及び数値演算を行うことにより、移動物の物理的な高さ(画像のデータより例えば物体の高さ170 cm)や、油圧ショベルの旋回中心から移動物までの物理的侵入距離(m)などを算出するといえる。
(ウ)図1及び図10によれば、カメラ8は、油圧ショベル1のフロント部と逆側に斜め下方を向くように取り付けられていることが看取できる。
(エ)【0075】記載の内容は、【0074】によれば、図3中の物理量算出部107の説明であるところ、【0032】によれば図3の侵入移動体検出処理はステップ1で画像メモリ51から読込んだ撮画データ、すなわち、【0025】によれば画像データに基づくから、【0075】記載の画面上のX座標、Y座標は、上記画像データ上のX座標、Y座標といえる。
そして、【0081】、【0083】及び【0084】によれば、画像データ上の座標を用いて移動物の物理的な高さや、油圧ショベルの旋回中心から移動物までの物理的侵入距離を算出しているといえる。
ウ 甲2発明
上記ア及びイより、甲2には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「油圧ショベル1のフロント部の下部に設けられる、前記油圧ショベルを走行させる走行体と、
前記油圧ショベル1のフロント部は、ブーム2、スティック3およびバケット4が回動自在に連結されており、
カメラ8、及び、画像データを対象にした演算処理を行う画像処理演算部53と、前記画像データから得られる特徴量(後述するラベリングデータの面積、重心位置、外接長方形など)や既知のデータを用いた数値演算を行う数値演算処理部54により構成されている侵入移動体検出装置主要部9を有し、
前記カメラ8は、前記油圧ショベル1の前記フロント部と逆側に斜め下方を向くように取り付けられ、
前記カメラ8から出力されたデータを変換した画像データを対象とした演算処理及び数値演算を行うことにより、前記画像データ上の座標を用いて移動物の物理的な高さ(画像のデータより例えば物体の高さ170 cm)や、前記油圧ショベルの旋回中心から前記移動物までの物理的侵入距離(m)を算出し、抽出した物体が人体であるか否かを評価し、抽出された移動物(人体)の油圧ショベル旋回中心からの距離が許容距離より小さいか否かを判定器109 で判定し、許容距離より小さい場合は、出力部110 で警報信号や人体の確信度データなどを出力するように構成されている、
油圧ショベル1。」
(2)甲5に記載された事項及び甲5開示事項
ア 甲5に記載された事項
甲5(特開2012-254650号公報)には、図面とともに、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
「【0056】
一般的に、俯瞰画像が、複数の撮像部によって撮像された画像から合成される場合、俯瞰画像において、各撮像部の撮像範囲の境界部分に位置する物体が消失するという問題がある。例えば、図13(a)に示すように、地面と同じ高さに位置する仮想投影面300を用いて俯瞰画像を作成する例について説明する。この例では、仮想投影面300は、複数の撮像部101,102が撮像する領域ごとに分割されている。周辺監視装置は、各撮像部101,102によって撮像された画像を仮想投影面300上に投影することにより、作業車両100の上方に位置する仮想視点103から見た俯瞰画像に変換する。この場合、仮想投影面300上に投影された画像の画素300の値は、当該画素300が含まれる領域を担当する撮像部101から当該画素300を見た値である。従って、物体OBが、仮想投影面300において、隣接する2つの撮像部101,102の領域の境界BL上に位置していると、物体OBの上部を貫く撮像部101,102の視線が存在しない。この場合、撮像部101,102は、地面上の物体OBの設置部P1のみしか撮像していない。このため、図13(b)に示すように、俯瞰画像400において物体OBを示す像401は、極小さな点でしか示されないか、或いは、俯瞰画像400において物体が消失する。このような物体の消失の問題は、撮像範囲の重複領域において、各撮像範囲の画像データを足し合わせることによって解決することができる。この場合、図14(a)に示すように、重複領域OAにおいて物体OBの上部を貫く撮像部101の視線LS1と撮像部102の視線LS2とが存在する。このため、図16(b)に示すように、俯瞰画像400の重複領域OAにおいて、撮像部101が撮像した像402と撮像部102が撮像した像403とが共に表示される。これにより、重複領域OA内の物体OBの消失が防止される。」
「
[図:0001435186000017.jpg]
」
イ 甲5開示事項
2つの撮像部の撮像範囲の重複領域において、各撮像範囲の画像データを足し合わせること。
(3)甲6に記載された事項及び甲6開示事項
ア 甲6に記載された事項
甲6(特開2002-19556号公報)には、図面とともに、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
「【0028】
図4は図2に示すカメラ配置における各カメラの撮影範囲を示す図である。図4に示すように、各ペアカメラの撮影範囲は互いに重複している。そして、画像合成の際には、この重複範囲OLa~OLdについては、各カメラ画像の画素データをブレンド、すなわち重み付けして混合することによって、合成画像を生成する。」
「
[図:0001435186000018.jpg]
」
イ 甲6開示事項
ペアカメラの重複する撮影範囲については、各カメラ画像の画素データをブレンド、すなわち重み付けして混合する画像合成を行うこと。
(4)甲7に記載された事項及び甲7開示事項
ア 甲7に記載された事項
甲7(特開2002-166802号公報)には、図面とともに、以下の記載がある。なお、下線は、当審にて付した。
「【0024】画像処理ECU11は、さらに、各カメラで取得した画像から視点変換により任意の視点、例えば、車両1の上方から車両の周囲を見た画像をそれぞれ生成し、これらとメモリ等に格納されている車両1のその位置から見た画像とを合成することで、あたかも車両1の上方から撮影したかのような画像を合成して表示装置32へと表示するものである。」
「【0026】例えば、図5に示されるように、車両1の右後方に障害物としてポール5が存在する場合を例に考える。右側方カメラ20dで取得した画像から車両1の上方から見た画像へと視点変換を行うと図6(a)に示されるように、ポール5の画像は斜線の領域5Aに示されるように本来のポール5の位置から斜め後ろに伸びている領域の画像として変換される。一方、後方カメラ20cで取得した画像から車両1の上方から見た画像へと視点変換を行うと図6(b)に示されるように、ポール5の画像は斜線の領域5Bに示されるように本来のポール5の位置から横方向へと斜めに伸びている領域の画像として変換される。
【0027】これらを重ね合わせて表示画像を生成する際の重複領域の処理方法として従来のように重複領域全体についていわゆるαブレンディングを用いた場合、図6(c)に示されるように両カメラ20c、20dの撮像領域の重複領域7内には、ポール5を変換した画像5A、5Bがそれぞれ映し出されるとともに、輝度が半分になるため、いずれも薄く表示されることから、ぼやけた画像として表示されることになる。従来は、このため、運転者にとって立体物の認識が困難であるという欠点があった。」
「
[図:0001435186000019.jpg]
」
イ 甲7開示事項
右側方カメラ20dで取得した画像から車両1の上方から見た画像へと視点変換を行うと、ポール5の画像は斜線の領域5Aに示されるように本来のポール5の位置から斜め後ろに伸びている領域の画像として変換され、後方カメラ20cで取得した画像から車両1の上方から見た画像へと視点変換を行うと、ポール5の画像は斜線の領域5Bに示されるように本来のポール5の位置から横方向へと斜めに伸びている領域の画像として変換され、これらを重ね合わせて表示画像を生成する際の重複領域の処理方法として従来のように重複領域全体についていわゆるαブレンディングを用いた場合、両カメラ20c、20dの撮像領域の重複領域7内には、ポール5を変換した画像5A、5Bがそれぞれ映し出されるとともに、輝度が半分になること。
4 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 引用発明1との対比
(ア)本件発明1の構成1Aに関して
甲1発明における構成1aの「下部走行体4」は、本件発明1の「下部走行体」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1における構成1Aに相当する構成を有する。
(イ)本件発明1の構成1Bに関して
甲1発明における構成1bの「上部旋回体5」は、上記下部走行体4との間に取り付けられている旋回装置により、旋回するものであるから、本件発明1の「前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体」に相当する。 よって、甲1発明は、本件発明1の構成1Bに相当する構成を有する。
(ウ)本件発明1の構成1C及び1Dに関して
甲1発明の構成1c及び構成1dの「フロント作業機3」は、「ブーム」及び「アーム」を含む点で本件発明1の「アタッチメント」と共通するから、本件発明1の「アタッチメント」に相当する。
そうすると、該構成1cのブーム10は、本件発明1の「前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブーム」に相当し、前記構成1dのアーム11は、本件発明1の「前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアーム」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の構成1C及び1Dに相当する構成を有する。
(エ)本件発明1の構成1Eに関して
甲1発明における構成1gのとおり、構成1eのカメラ13B、13R、13Lは、画像を取得するカメラであるから、本件発明1における構成1Eの「画像を取得する装置」に相当する。
(オ)本件発明1の構成1Fに関して
甲1発明における構成1fのとおり、構成1eの複数のカメラ13B、13R、13Lは、上部旋回体5の上部に配置されているから、本件発明1における構成1Fの複数の対のうち画像を取得する装置が上部旋回体に配置されている点で共通する。
(カ)本件発明1の構成1Gに関して
甲1発明における構成1gの「上方視点となるように視点変換された画像(仮想視点画像)」は、本件発明1における構成1Gの「ショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像」に相当する。
甲1発明における構成1gの「モニタ14」は運転室6の内部に設置されているから、本件発明1における構成1Gの「操作者が視認し易い位置に設置された表示部」に相当する。
そうすると、甲1発明における構成1gは、各カメラ13B、13R、13Lから取得した画像がモニタ14に動画状態にして表示されているから、各カメラ13R、13B、13Lの出力に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示させているから、甲1発明は、本件発明1の構成1Gに相当する構成を有する。
(キ)本件発明1の構成1Hに関して
甲1発明における構成1fのとおり、構成1eのカメラ13B、13R、13Lは、画像を取得するカメラであるから、本件発明1における構成1Hの「複数の」「画像を取得する装置」に相当する。
甲1発明では、構成1hのとおり、カメラ画像から障害物(作業員や車両等)といった特徴点を検出して、仮想視点画像の作業員Mの周囲に楕円形のマーク52を重畳表示し、仮想視点画像では作業員Mの像が境界ライン19Lに位置するとき、仮想視点画像では作業員Mの像の殆どが消失しているため、作業員Mの像自体は認識することが困難になっているが、作業員Mの像の周囲にはマーク52が表示されており、作業員Mの像が見えなくなったとしても、マーク52は表示されているため、このマーク52に基づいて作業員Mの存在をオペレータは認識することができるところ、作業員Mの像が、境界ラインに位置するか否かに関わらずマーク52を重畳表示しており、このことは図14(a)からも看取できるから、「複数の前記画像を取得する装置のそれぞれの撮像範囲の重複領域内に存在する」作業員Mの像にマーク52を重畳表示していることは明らかである。
甲1発明における構成1hのマーク52は、障害物である作業員Mの周囲に重畳表示させるものであるから、本件発明1の「該物体の画像に対応する枠」に相当する。
なお、該「枠」が矩形状のものとだけ解釈できるとしても、甲1の【0099】に四角形が例示されているから、該マーク52は、本件発明1の「該物体の画像に対応する枠」に相当する。
そして、仮想視点画像では作業員Mの像が境界ライン19Lに位置するとき、仮想視点画像では作業員Mの像の一部が表示されていることからみて、当該作業員Mの像の一部は、本件発明1の「複数の前記画像を取得する装置のそれぞれの撮像範囲の重複領域内に存在する物体の画像」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の構成1Hに相当する構成を有する。
(ク)本件発明1の構成1Jに関して
甲1発明における構成1jの「油圧ショベル」は、ショベルの一種であるから、本件発明1の「ショベル」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の構成1Jに相当する構成を有する。
(ケ) 一致点及び相違点
上記(ア)から(ク)をまとめると、本件発明1と甲1発明は、下記の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「1A 下部走行体と、
1B 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、
1C 前記上部旋回体に取り付けられ、アタッチメントに含まれるブームと、
1D 前記ブームに取り付けられ、前記アタッチメントに含まれるアームと、
1E’ 画像を取得する装置と、を有し、
1F’ 複数の画像を取得する装置が前記上部旋回体に配置され、
1G 複数の前記画像を取得する装置の出力に基づいてショベルの周囲を上空から見たときの様子を表す画像である視点変換画像を生成し、操作者が視認し易い位置に設置された表示部に前記視点変換画像を表示させるように構成され、
1H 前記視点変換画像では、複数の前記画像を取得する装置のそれぞれの撮像範囲の重複領域内に存在する物体の画像と該物体の画像に対応する枠が表示される、
1J ショベル。」
<相違点>
相違点1:
上記1E’について、本件発明1は「周囲の測定対象までの距離情報を取得する装置と画像を取得する装置とにより構成される二つ一組の対と、を有し」ているのに対し、甲1発明は画像を取得する装置だけを有する点。
相違点2:
上記1F’について、本件発明1は「複数の前記対が前記上部旋回体に配置され」ているのに対し、甲1発明は複数の画像を取得する装置だけが前記上部旋回体に配置されている点。
相違点3:
視点変換画像において枠とともに表示される物体の画像に関して、本件発明1は、構成1Iのとおり「二つの前記画像を取得する装置の一方が取得した画像部分と他方が取得した画像部分とを含む」のに対し、甲1発明はそのような構成となっていない点。
(コ) 相違点の検討
事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
a 本件発明1の構成1Iの「二つの前記画像を取得する装置の一方が取得した画像部分」と「他方が取得した画像部分」は、いずれも「前記物体の画像」の部分を意味すると解される。そうすると、該構成1Iは「前記物体の画像」が、「二つの前記画像を取得する装置の一方が取得した画像部分」と「他方が取得した画像部分」に区分されていることを特定しているといえる。
他方、甲5開示事項は、撮像範囲の重複領域において、各撮像範囲の画像データを足し合わせることであるところ、該足し合わせることによる技術的特徴は各画像データの輝度値を足して合わせることと解されるから、撮像範囲の重複領域全体で各画像データが足し合わせられているといえ、2つの撮像部の撮像範囲の重複領域には区分された、2つの画像部分はないといえる。
そうすると、上記相違点3に係る構成と甲5開示事項は、異なる構成であるといえる。
したがって、甲1発明に甲5開示事項を適用しても、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者であっても容易とまではいえない。
b 仮に、甲5開示事項の「足し合わせる」ことが、上記相違点3に係る構成でいう2つの画像部分を含むことに相当し得たとしても、甲5開示事項には、物体の画像を表示することだけが開示されているにすぎず、該物体の画像に対応する枠は開示されていない。
ここで、甲1発明は、物体の画像である作業員Mの像のほとんどが消失することにより作業員Mの像自体を認識することが困難であるために、作業員Mの像に該当する位置にマーク52を表示するものである(甲1の段落【0100】)から、作業員Mの像のほとんどが消失することのない甲5開示事項を適用することにより、該マーク52の表示を残したまま、物体の画像だけを上記相違点3に係る構成とする動機付けは見当たらない。
したがって、甲1発明を上記相違点3に係る構成とすることは、当業者であっても容易とまではいえない。
c 甲6開示事項は、重複する撮影範囲については、各カメラ画像の画素データを重み付けして混合することであるから、各カメラ画像に対応する、区分された、2つの画像部分はないといえる。
そうすると、上記aのとおりであって、相違点3に係る構成と甲6開示事項は異なる構成である。
仮に、甲6開示事項の各カメラ画像の画素データを重み付けして混合する画像合成を行うことが、上記相違点3に係る構成でいう2つの画像部分を含むことに相当し得たとしても、甲6開示事項は物体の画像に対応する枠を開示しないから、上記bのとおり甲1発明に甲6開示事項を適用する動機付けは見当たらない。
したがって、甲6開示事項により甲1発明において上記相違点3に係る構成とすることは、当業者であっても容易とまではいえない。
d 甲7開示事項は、重複領域については、各カメラで取得したポール5を変換した画像5A、5Bの輝度が半分になるから、上記甲5開示事項及び上記甲6開示事項と同じく、重複領域については、各画像5A、5Bに対応する、区分された、2つの画像部分はないといえる。
そうすると、上記aのとおりであって、相違点3に係る構成と甲7開示事項は異なる構成である。
仮に、甲7開示事項の、重複領域全体についてαブレンディングを用いることが、上記相違点3に係る構成でいう2つの画像部分を含むことに相当し得たとしても、甲7開示事項は物体の画像に対応する枠を開示しないから、上記bのとおり甲1発明に甲7開示事項を適用する動機付けは見当たらない。
したがって、甲7開示事項により甲1発明において上記相違点3に係る構成とすることは、当業者であっても容易とまではいえない。
e さらに、上記「2」「(2)」「ウ」及び同「(3)」「ウ」のとおり、甲3~4には、上記相違点3に係る構成については記載も示唆もない。
そうすると、甲5~7開示事項に加えて、甲3~4開示事項を勘案したとしても、甲1発明において上記相違点3に係る構成とすることは、当業者であっても容易とまではいえない。
f 以上のことから、甲1発明において、甲3~7開示事項に基いて、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者であっても容易とまではいえない。
(サ)まとめ
したがって、上記相違点1及び上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲3~7開示事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
(シ) 申立人の主張
申立人は、令和7年12月25日に提出した意見書において、「車両の周辺監視に係る技術において、二つの画像取得装置が取得した画像に基づいて視点変換画像を生成すること、及び、視点変換画像における二つの画像取得装置の撮像範囲の重複領域内に存在する物体の画像は、二つの画像取得装置のうちの一方が取得した画像部分と他方が取得した画像部分とを含むことは、例えば甲5号証~甲7号証にも開示されるように従来周知である。」、「そして、俯諏画像における障害物の画像消失対策を念頭におく当業者にとって、甲1号証に開示されている枠表示に係る構成に加えて甲5~7号証に記載の各カメラによる画像部分を合成する周知の技術を適用すればより確実な効果を奏し得ることは自明である。」旨主張している。
しかしながら、上記(コ)のとおりであるから、車両の周辺監視に係る技術において、視点変換画像における二つの画像取得装置の撮像範囲の重複領域内に存在する物体の画像が、二つの画像取得装置のうちの一方が取得した画像部分と他方が取得した画像部分とを含むことは、甲5~7開示事項からみて従来周知とまではいえない。
そして、上記(コ)のとおり、俯諏画像における障害物の画像消失対策を念頭におく当業者にとって、甲1発明におけるマークを表示する構成に加えて、甲5~7開示事項を適用することに動機付けが見当たらない。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。
(2)本件発明5について
上記(1)(サ)のとおり、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件発明1を引用する本件発明5は当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
5 まとめ
したがって、取消理由通知書に記載した取消理由(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)又は令和7年12月25日に提出された意見書「4(1)イ」に記載した取消理由(特許法第29条第2項、同法第113条第2号)により、請求項1及び5に係る特許を取り消すことはできない。
第5 取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由の概要
(1)進歩性
請求項2~5に係る発明は、甲2発明と甲3開示事項又は甲4開示事項とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 当審の判断
(1)進歩性について
ア 本件発明2について
甲2発明は、抽出された移動物の油圧ショベル旋回中心からの距離が許容距離より小さい場合は、警報信号や人体の確信度データを出力することからみて、警報信号や人体の確信度データを出力する条件は、抽出された移動物の油圧ショベル旋回中心からの距離が許容距離より小さい場合だけであるから、甲2発明は、当該場合には、移動物の物理的高さに関わらず、警報信号や人体の確信度データを出力するものといえるため、「前記距離情報を取得する装置の監視範囲内においてショベルから前記所定距離の範囲内に存在し且つ前記設置面から前記所定高さ未満の高さを有する物体を衝突するおそれのある物体として検出」していると認められる。
そうすると、本件発明2と甲2発明を対比すると、少なくとも、本件発明2は、(構成2H)「前記距離情報を取得する装置の監視範囲内においてショベルから所定距離の範囲内に存在し且つショベルの設置面から所定高さ以上の高さを有する物体を衝突するおそれのある物体として検出し、前記距離情報を取得する装置の監視範囲内においてショベルから前記所定距離の範囲内に存在し且つ前記設置面から前記所定高さ未満の高さを有する物体を衝突するおそれのある物体として検出しないように構成されている」のに対し、甲2発明は、そのような構成を有するものではない点で相違する。
申立人の特許異議申立書における主張のとおり、甲2の記載から「前記距離情報を取得する装置の監視範囲内においてショベルから所定距離の範囲内に存在し且つショベルの設置面から所定高さ以上の高さを有する物体を衝突するおそれのある物体として検出」することを言い得たとしても、甲2発明は「前記距離情報を取得する装置の監視範囲内においてショベルから所定距離の範囲内に存在し且つショベルの設置面から所定高さ以上の高さを有する物体を衝突するおそれのある物体として検出し、前記距離情報を取得する装置の監視範囲内においてショベルから前記所定距離の範囲内に存在し且つ前記設置面から前記所定高さ未満の高さを有する物体を衝突するおそれのある物体として検出しないように構成されている」ものであるとは認められない。
そして、甲3開示事項又は甲4開示事項には、当該構成2Hに関する記載も示唆もない。
したがって、甲2発明、及び、甲3開示事項又は甲4開示事項から、甲2発明に構成2Hのとおりの構成を設けることは、当業者であっても容易とまではいえない。
以上のことから、その余の相違点について検討するまでもなく、請求項2に係る発明は、甲2発明、及び、甲3~4開示事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
申立人は特許異議申立書において、「甲2発明の「警報信号」は、所定範囲内への人体の侵入を検出した結果出力されるものであり・・・、この検出の目的は、油圧ショベルとの衝突防止であることは自明である。これより、甲2発明において、移動物を人体として検出しないことは、本件発明2の「物体を衝突するおそれのある物体として検出しない」ことに相当する。」旨主張する。
しかしながら、上記したとおりであって、申立人の主張は採用できない。
イ 本件発明3について
甲2発明は、カメラ8(本件発明3の「距離情報を取得する装置」の一部に相当する。)と1つの物体との距離を算出するものであるものの、距離情報を取得する装置と2つの物体のそれぞれとの間の距離を算出することまでは記載されていない。
仮に、カメラ8の撮像範囲に2つの物体が存在する場合、甲2発明は、距離情報を取得する装置と2つの物体のそれぞれとの間の距離(直線距離及び水平距離)を算出すると言い得たとしても、「前記距離情報を取得する装置と2つの物体のそれぞれとの間の直線距離が同じであり、且つ、前記距離情報を取得する装置と前記2つの物体のそれぞれとの間の水平距離が互いに異なる場合」を判定することは甲2に記載も示唆もなく、当該場合を判定した際に、距離情報を取得する装置と2つの物体のそれぞれとの間の直線距離が同じであることを認識でき、且つ、前記距離情報を取得する装置と前記2つの物体のそれぞれとの間の水平距離が互いに異なることを認識できることは解し得ない。
そうすると、本件発明3が(構成3H)「前記距離情報を取得する装置と2つの物体のそれぞれとの間の直線距離が同じであり、且つ、前記距離情報を取得する装置と前記2つの物体のそれぞれとの間の水平距離が互いに異なる場合、前記距離情報を取得する装置と前記2つの物体のそれぞれとの間の直線距離が同じであることを認識でき、且つ、前記距離情報を取得する装置と前記2つの物体のそれぞれとの間の水平距離が互いに異なることを認識できるように構成されている」のに対し、甲2発明は、「前記距離情報を取得する装置と2つの物体のそれぞれとの間の直線距離が同じであり、且つ、前記距離情報を取得する装置と前記2つの物体のそれぞれとの間の水平距離が互いに異なる場合」を想定しておらず、当該場合に「前記距離情報を取得する装置と前記2つの物体のそれぞれとの間の直線距離が同じであることを認識でき、且つ、前記距離情報を取得する装置と前記2つの物体のそれぞれとの間の水平距離が互いに異なることを認識できるように構成」されていない点で、少なくとも相違する。
そして、甲3開示事項又は甲4開示事項には、当該相違点に関する記載も示唆もない。
したがって、甲2発明、及び、甲3~4開示事項から、甲2発明に構成3Hのとおりの構成を設けることは、当業者であっても容易とまではいえないと認められる。
以上のことから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2発明、及び、甲3~4開示事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
申立人は特許異議申立書において、「数値演算処理部54は、カメラ8に対してそれぞれ直線距離が同じであり、かつ、水平距離が異なる2つの移動物を想定した場合に、両者を異なる移動物として検出可能であるから、当然に2つの移動物それぞれについてカメラ8に対する直線距離や水平距離も認識できる。」、「「認識できる」という事項が「算出する」又は「判定する」という処理に係る事項を特定しているとしても、甲2には、カメラ8と2つの移動物との間の直線距離が認識可能であることが示されているし、水平距離については算出式も開示されているから、これらを実際に算出又は判定するように構成することは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことに過ぎない。」旨主張する。
しかしながら、上記したとおりであって、申立人の主張は採用できない。
ウ 本件発明4について
甲2発明は、カメラ8が撮像した画像データの座標を用いて、侵入移動体検出装置主要部9が、移動物の物理的な高さ(本件発明4の「高さ」に相当する。)や、油圧ショベルの旋回中心から移動物までの物理的侵入距離(本件発明4の「水平距離」に相当する。)を算出するから、該カメラ8及び該侵入移動体検出装置主要部9は、本件発明4の距離情報を取得する装置に相当する。
ここで、甲2発明における画像データは、カメラが撮像して取得したものであって、移動物が撮像されているものである。
そうすると、該カメラは移動物の画像を取得しているといえるから、該カメラは、距離情報を取得するとともに、画像を取得するものといえる。
本件発明4と甲2発明を対比すると、本件発明4は、「周囲の測定対象までの距離情報を取得する装置と画像を取得する装置とにより構成される二つ一組の対と、を有し」ているのに対し、甲2発明は、カメラ8と侵入移動体検出装置主要部9により、周囲の測定対象までの距離情報を取得し画像を取得する点で相違する。
甲3開示事項又は甲4開示事項によれば、距離情報を取得する装置と画像を取得する装置を二つ一組の対とすることが周知技術であるといえる。
しかしながら、上記周知技術により、甲2発明のカメラ8だけを、画像を取得する装置としてのカメラと距離情報を取得する装置としてのカメラとする動機付けはなく、仮に、甲2発明のカメラ8を侵入移動体検出装置主要部9から切り離した上で、上記周知技術のとおり二つ一組の対のカメラとすることで、画像を取得する装置と距離情報を取得する装置を構成したとしても、画像を取得するカメラと距離情報を取得するカメラの各画像データを処理する主要部を各々設けることになって、装置を構成するに当たりコストを低減するとの周知課題を解決できないこととなるから、甲2発明に上記周知技術を適用する動機付けは見当たらない。
なお、甲1発明及び甲5~7開示事項を参酌しても、甲2発明の1つのカメラ及び侵入移動体検出装置主要部からなるものを二つ一組の対の装置とする動機付けは見当たらない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲2発明、及び、甲3~4号証に開示される事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
申立人は特許異議申立書において、「以上のことから、甲2発明と本件特許発明4との間には、次の点で相違が存在するものの、その余の点では一致するものと認められる。
<相違点4>
本件特許発明4は、周囲の測定対象までの距離情報を取得する装置と画像を取得する装置とにより構成される二つ一組の対を複数有し、複数の対を上部旋回体にするのに対して、甲2発明は、距離情報を取得する装置と画像を取得する装置とを兼ねるカメラ8を単独で一つ有し、これを上部旋回体に配置する点。
上記相違点4について検討するに、相違点4は上記6-2(2)の相違点2-1と同じであり、その検討内容についても同様である。」といい、該6-2(2)の相違点2-1については、「上記相違点2-1について検討する。
上記5-3(2)で示した甲3開示事項の「右側方監視カメラ13a」及び「後方監視カメラ13b」は、本件特許発明2の「複数の」「画像を取得する装置」に相当する。また、同「障害物検出器10a」及び「障害物検出器10b」は、本件特許発明1の「複数の」「周囲の測定対象までの距離情報を取得する装置」に相当する。
そうすると、甲3開示事項には、本件特許発明2に倣うと、「周囲の測定対象までの距離情報を取得する装置と画像を取得する装置とにより構成される二つ一組の対を有し、複数の対を上部旋回体に配置する」こと、すなわち、相違点2-1に係る本件特許発明2の構成が開示されている。また、上記5-4(2)で示した甲4開示事項にも同様の事項が開示されている。
甲2発明の油圧ショベル1は、侵入移動体検出装置主要部9を有するものであるから、油圧ショベル1の周囲の障害物を監視する手段を備えるものである。そして、油圧ショベルの周囲の障害物を監視する手段において、周囲を広く監視することや障害物までの距離を検出することは、例示するまでもなく周知の課題であり、甲2発明に甲3開示事項や甲4開示事項を適用する動機付けは十分認められる(特に、甲3開示事項には、画像を取得する装置と距離情報を取得する装置とを一つの装置(監視カメラ13)で構成することと、両装置を別装置(監視カメラ13と障害物検出器10)で構成することとが代替的であることも示唆されている)。また、甲2発明に甲3開示事項や甲4開示事項を適用するにあたって、これを阻害する事情も見当たらない。」旨主張する。
しかしながら、上記したとおりであって、申立人の主張は採用できない。
エ 本件発明5について
上記ア~ウのとおり、本件発明2~4は当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件発明2~4を引用する本件発明5は当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
オ 進歩性についてのまとめ
したがって、本件発明2~5は、甲2発明と甲3開示事項又は甲4開示事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)まとめ
以上のことから、本件発明2~5に係る特許について、取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由、すなわち、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとして、同法第113条第2号に該当するとの理由によって取り消すことはできない。
第6 令和7年12月25日に提出された意見書について
1 訂正請求項1、5に係る特許について
(1) 記載不備の取消理由があるかについて
ア 申立人は、追加事項のうち「前記枠とともに表示される前記物体の画像は、二つの前記画像を取得する装置の一方が取得した画像部分と他方が取得した画像部分とを含む」という事項が、縞模様に配置された領域PR1及び領域PR2に係る構成を前提としているのか、訂正請求項1の記載からは明らかでなく、追加事項の範囲は明確でない旨主張する。
上記「第4」「4」「(1)」「ア」「(コ)」のとおり、上記追加事項である構成1Iのうち「前記枠とともに表示される前記物体の画像は、二つの前記画像を取得する装置の一方が取得した画像部分と他方が取得した画像部分とを含む」という事項は、「前記物体の画像」が、「二つの前記画像を取得する装置の一方が取得した画像部分」と「他方が取得した画像部分」に区分されていることを特定しているといえる。
このとおり、本件発明1において縞模様に配置された領域PR1及び領域PR2に係る構成がなくとも、構成1Iの記載により、複数の画像を取得する装置のそれぞれの撮像範囲の重複領域においては、2つの画像部分に区分されているとの技術的特徴が解釈できるから、本件発明1の外縁は明確であるといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
イ さらに、申立人は、本件明細書に「枠とともに表示される物体の画像」が「二つの画像を取得する装置の一方が取得した画像部分と他方が取得した画像部分とを含む」ことについて明示的な記載がないことを踏まえると、出願時の技術常識に照らして、根拠箇所に開示された内容を追加事項の範囲まで拡張ないし一般化できるという理由もない旨主張している。
しかしながら、上記「第2」「3」「(1)」「エ」のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。
ウ 上記ア~イのとおり、本件発明1は明確であり、発明の詳細な説明に記載されているから、本件発明1を引用する本件発明5も明確であり、発明の詳細な説明に記載されていると認められる。
エ したがって、本件発明1及び5に係る特許について、特許法第36条第6項第1号又は第2号の規定に違反してされたものとして、同法第113条第4号に該当するとの理由によって取り消すことはできない。
(2) 進歩性なしの取消理由があるかについて
申立人は、車両の周辺監視に係る技術において、二つの画像取得装置が取得した画像に基づいて視点変換画像を生成すること、及び、視点変換画像における二つの画像取得装置の撮像範囲の重複領域内に存在する物体の画像は、二つの画像取得装置のうちの一方が取得した画像部分と他方が取得した画像部分とを含むことは、例えば甲5号証~甲7号証にも開示されるように従来周知であるから、本件発明1及び5は、甲1発明と当該周知技術とに基づいて当業者が容易に想到し得たといえ、本件発明1及び5は、依然として進歩性を有さないと主張する。
しかしながら、上記「第4」「4」のとおりであるから、本件発明1及び5は進歩性がないとの申立人の主張は採用できない。
2 請求項2~4に係る特許について
申立人は、特許異議申立書の6-2~6-4に記載したとおり、本件発明2~4は、甲2発明、及び、甲3開示事項又は甲4開示事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。
しかしながら、上記「第5」「2」のとおりであるから、本件発明2~4に係る特許について、取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由、すなわち、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとして、同法第113条第2号に該当するとの理由によって取り消すことはできない。
第7 むすび
以上より、取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書及び申立人が提出した意見書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700358