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特許異議申立

2025-700328

便器装置

審判番号
2025-700328
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-179592
登録番号
7555016
請求日
2025年03月21日
審決日
2026年01月30日
公報発行日
2026年05月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
  • 【権利者代理人】協明国際弁理士法人
  • 【異議申立人】茂木 早苗
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 石川 信也
  • 審判官 澤田 真治
分類
P1651.121-YAA(E03D) / P1651.537-YAA(E03D) / P1651.851-YAA(E03D) / P1651.857-YAA(E03D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7555016号発明「便器装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7555016号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1、3、4]について訂正することを認める。 特許第7555016号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7555016号の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年10月27日の出願であって、令和6年9月12日にその特許権の設定登録がされ、同月24日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許について、令和7年3月21日に、特許異議申立人 茂木 早苗(以下「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 その後の経緯は、次のとおりである。 令和 7年 8月25日付け 取消理由通知書 同年10月27日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、令和7年11月17日付けで当審から申立人に対して訂正請求があった旨の通知を行い、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人から応答はなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和7年10月27日になされた訂正請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第7555016号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「 便蓋が閉じた閉状態であることを条件として、ボウルに対し洗浄水が吐出される便器装置であって、 前記ボウルと、閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内への空気の送風を行う空気流動手段と、人体検知部と、を備え、 前記空気流動手段は、前記ボウルヘの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行い、前記人体検知部が非検知状態となった後、空気の送風中に人を検知すると空気の送風を停止することを特徴とする」と記載されているのを、」と記載されているのを、 「 便蓋が閉じた閉状態であることを条件として、ボウルに対し洗浄水が吐出される便器装置であって、 前記ボウルと、閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内への空気の送風を行う空気流動手段と、人体検知部と、洗浄操作部とを備え、 前記洗浄操作部による洗浄指示を受けたとき、前記空気流動手段は、前記ボウルヘの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行い、前記人体検知部が非検知状態となった後、空気の送風中に人を検知すると空気の送風を停止することを特徴とする」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に 「請求項1又は2において、 前記空気流動手段は、前記ボウルヘの洗浄水の吐出による洗浄処理が終了してから所定時間経過後に空気の送風を行うことを特徴とする」と記載されているのを、独立形式に改め、 「 便蓋が閉じた閉状態であることを条件として、ボウルに対し洗浄水が吐出される便器装置であって、 前記ボウルと、閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内への空気の送風を行う空気流動手段と、人体検知部と、を備え、 前記空気流動手段は、前記ボウルヘの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行い、前記人体検知部が非検知状態となった後、空気の送風中に人を検知すると空気の送風を停止し、 前記空気流動手段は、前記ボウルヘの洗浄水の吐出による洗浄処理が終了してから所定時間経過後に空気の送風を行うことを特徴とする」に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1について、請求項3及び4は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1、3、4に対応する訂正後の請求項1、3、4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項に係る訂正は、当該一群の請求項〔1、3、4〕に対し請求されたものである。 3 別の訂正単位とする求めについて 訂正後の請求項3について、特許権者は、当該訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 4 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び独立特許要件について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「便器装置」に、「洗浄操作部」をさらに備えること、「空気流動手段」の空気の送風の停止に関し、「前記洗浄操作部による洗浄指示を受けたとき」であること、をそれぞれ限定したものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無について 本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0030】には、次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。 「さらに便器装置1は、便器洗浄部13に対する洗浄指示を出力する洗浄操作部29を備えている。」 また、同【0046】には、次の記載がある。 「便蓋20が閉状態であれば、便器洗浄部13はボウル12に洗浄水を吐出して洗浄処理が開始される(S302)。この洗浄処理中、もしくは洗浄処理終了後、人体検知部9によって便器本体10の近傍に人がいるかの人体検知を行う(S303)。便器本体10の近傍に人がいなければ、 空気流動手段32による乾燥処理を開始する(S303のN、S304)。便器本体10の近傍に人がいれば、人を検知しなくなるまで空気流動手段32による乾燥処理を開始しない(S303のY)。要するに、図6の動作例では、洗浄指示後に人体検知部9が人を検知しないことが、空気流動手段32の乾燥処理の起動条件である。この場合、洗浄処理中に人体検知部9が作動する構成であれば、洗浄処理中に人体検知部9が人を検知しなくなったタイミングで乾燥処理が開始されてもよいし、洗浄処理終了後まで乾燥処理を開始しなくてもよい。」 また、同【0052】には、次の記載がある。 「なお、図4、図5の動作例では、人体検知部9が人を検知していても乾燥処理が行われてもよい構成となっている。そのため、図4、図5の制御に加え図7の制御を便器装置1に加える場合には、人体検知部9が人を検知している状態で乾燥処理が開始された場合、乾燥処理はそのまま行われる。そして、人がトイレルームから退室して、人体検知部9が非検知状態になった後、乾燥処理中に再び人を検知すれば、図7に示されている動作例を行い、乾燥処理が停止される。要するに、この場合では、人体検知部9が非検知から検知に変化した場合に乾燥処理を停止させる。」 また、図5には、次の記載がある。 「 [図:0001435184000001.jpg] 」 また、図7には、次の記載がある。 「 [図:0001435184000002.jpg] 」 よって、訂正事項1は、本件特許明細書等の【0030】、【0046】、【0052】、図5及び図7の記載に基づくものであって、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更について 訂正事項1は、上記アのとおり「便器装置」に、「洗浄操作部」をさらに備えること、「空気流動手段」の空気の送風の停止に関し、「前記洗浄操作部による洗浄指示を受けたとき」であること、をそれぞれ減縮するものであって、発明のカテゴリーを変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正である。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 新規事項の有無について 訂正事項2に係る訂正は、上記アのとおり、請求項間の引用関係を解消するものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更について 訂正事項2は、上記アのとおり、請求項間の引用関係を解消するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (3)独立特許要件 本件においては、訂正前のすべての請求項について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (4)一群の請求項及び別の訂正単位とする求めについて 本件訂正前の請求項1~4について、請求項3及び4が、本件訂正前の請求項1の記載を引用するものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1、3、4〕について請求されたものである。 一方、特許権者は、上記3に示したとおり、本件訂正後の請求項3について、当該訂正が認められるときに請求項1及び4とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 しかしながら、訂正後の請求項3は、請求項1との引用関係が解消しても、請求項1の記載を引用する請求項4を介して、請求項1と連関する関係にあり、依然として特許法第120条の5第4項(特許法施行規則第45条の4)に規定する一群の請求項を構成するから、前記別の訂正単位とする求めは認められない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、3、4〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、各々を「本件訂正発明1」等という。)は、令和7年10月27日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の、請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 便蓋が閉じた閉状態であることを条件として、ボウルに対し洗浄水が吐出される便器装置であって、 前記ボウルと、閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内への空気の送風を行う空気流動手段と、人体検知部と、洗浄操作部とを備え、 前記洗浄操作部による洗浄指示を受けたとき、前記空気流動手段は、前記ボウルへの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行い、前記人体検知部が非検知状態となった後、空気の送風中に人を検知すると空気の送風を停止することを特徴とする便器装置。 【請求項2】 便蓋が閉じた閉状態であることを条件として、ボウルに対し洗浄水が吐出される便器装置であって、 前記ボウルと、閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内への空気の送風を行う空気流動手段と、人が着座する着座面を有する便座と、を備え、 前記空気流動手段は、前記ボウルへの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行い、 前記便座は、前記着座面を温める便座加温部を備えており、 該便座加温部は、前記空気流動手段による空気の送風に連動して、前記便器内部空間内の空気を温めることを特徴とする便器装置。 【請求項3】 便蓋が閉じた閉状態であることを条件として、ボウルに対し洗浄水が吐出される便器装置であって、 前記ボウルと、閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内への空気の送風を行う空気流動手段と、人体検知部と、を備え、 前記空気流動手段は、前記ボウルへの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行い、前記人体検知部が非検知状態となった後、空気の送風中に人を検知すると空気の送風を停止し、 前記空気流動手段は、前記ボウルへの洗浄水の吐出による洗浄処理が終了してから所定時間経過後に空気の送風を行うことを特徴とする便器装置。 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか一項において、 前記空気流動手段による空気の送風が行われている間、前記便蓋の開動作を禁止する便蓋開禁止手段を備えていることを特徴とする便器装置。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について (1)取消理由の概要 訂正前の請求項1、3及び4に係る特許に対して、当審において、令和7年8月25日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (進歩性)請求項1、3及び4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ・請求項1、3 ・下記引用文献1及び2 ・請求項4 ・下記引用文献1~4 引用文献1:韓国公開特許第10-2011-0046131号公報 (申立人 茂木早苗が提出した甲第1号証) 引用文献2:特開2008-240379号公報 (申立人 茂木早苗が提出した甲第2号証) 引用文献3:特開2018-100491号公報 (申立人 茂木早苗が提出した甲第4号証) 引用文献4:特開2006-75314号公報 (申立人 茂木早苗が提出した甲第5号証) (2)当審の判断 ア 本件訂正発明1~4について 本件訂正発明1~4は、上記第3に記載したとおりのものである。 イ 甲号証について 甲第1号証:韓国公開特許第10-2011-0046131号公報(以下「甲1」という。) 甲第2号証:特開2008-240379号公報(以下「甲2」という。) 甲第3号証:特開2015-209670号公報(以下「甲3」という。) 甲第4号証:特開2018-100491号公報(以下「甲4」という。) 甲第5号証:特開2006-75314号公報(以下「甲5」という。) (ア)甲1、甲1発明 a 記載事項 本願の出願日前の平成23年5月4日に発行された甲1には、次の事項が記載されている。なお、日本語訳は、申立人が提出したものを参考にしつつ合議体が作成した。下線は合議体が付した。 「 [図:0001435184000003.jpg] 」 ([0023]このとき、上記便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じていない場合、警報音を発生させ(S500)、警報音発生後、再び上記便座カバーの閉鎖の有無を判断(S300)し、便座カバーが閉じている場合、便器内の除菌のための除菌機を一定時間動作させる(S400)。 [0024]ここで、図2に示すように、上記除菌器(500)の動作は、ダクト(520)の一端に具備されるファン(510)を使用して空気を強制送風させ、上記ダクト(520)の内部に具備される除菌モジュール(530)で除菌物質を発生させ、上記ファン(510)によって強制送風される空気がダクト(520)内部を通じて除菌物質と共に便器(100)内に排出されるようにして、上記除菌物質が便器(100)内の細菌を除去させるようにする。) 「 [図:0001435184000004.jpg] 」 ([0032]一方、図4に示すように、前記便器の使用可否を判断するステップ(S100)で、前記便器の使用可否の判断の結果、便器の使用と判断されると、便器の使用が終了したかを判断し(S200)、前記判断の結果、便器の使用が終了したら、便座カバーの自動閉鎖動作を実行するステップ(S600)を含めることができる。すなわち、ユーザーが便座の使用を終えて、便器から離脱すると、便座カバーの自動閉鎖動作が実行されるのである。 [0033]また、前記便座カバーが閉じているか否かを判断するステップ(S300)で、判断の結果、便座カバーが閉じていれば、自動降水動作を実行するステップ(S700)を含めることができる。) 「 [図:0001435184000005.jpg] 」 ( [図:0001435184000006.jpg] ) 「 [図:0001435184000007.jpg] 」 ( [図:0001435184000008.jpg] ) 上記図4から、便座カバーが閉じている場合、自動降水動作を実行し、その後、便器内の除菌のための除菌機を動作させることが見て取れる。 b 甲1に記載された発明 上記aによれば、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「便座カバーが閉じているか否かを判断し、便座カバーが閉じていれば、自動降水動作を実行する便器において([0023]、[0033])、 便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合、自動降水動作を実行し、その後、便器内の除菌のための除菌機を一定時間動作させ([0023]、[0033]、図4)、 上記除菌器(500)の動作は、ダクト(520)の一端に具備されるファン(510)を使用して空気を強制送風させ、上記ダクト(520)の内部に具備される除菌モジュール(530)で除菌物質を発生させ、上記ファン(510)によって強制送風される空気がダクト(520)内部を通じて除菌物質と共に便器(100)内に排出されるようにして、上記除菌物質が便器(100)内の細菌を除去させるようにする([0024]) 便器([0023])。」 (イ)甲2、甲2に記載の技術事項 a 記載事項 本願の出願日前の平成20年10月9日に発行された甲2には、次の事項が記載されている。 「【0004】 上記課題を解決するために本発明を、ボウル状を成す便器20に設置され、霧化液を保持する霧化電極6に高電圧を印加することで帯電微粒子液を生成して便器20内に放出する静電霧化装置1であって、便器20内を旋回する流れを発生させて帯電微粒子液を便器20内に拡散させる送風装置1bを具備したものとする。このようにすることで、静電霧化装置1から便器20内に放出した帯電微粒子液を、送風装置1bにより便器20内を旋回するように発生させた流れに乗せて該便器20内の細部にまでに行き渡らせ、効果的に除菌、脱臭することができる。」 「【0006】 また、トイレ室内への人体の入退室を検知する入退室センサ5を具備し、入退室センサ5の検知信号に基づいて送風装置1bの運転のオンオフを制御することも好適である。このようにすることで、送風装置1bを効率的に稼動させて省電力化を図ることができる。」 「【0016】 そして、上記静電霧化装置本体1aの下側に連結されて位置する送風装置1bは、前面に送風口10を開口させたケース11内にファンモータ12を配したものであり、送風口10を通じて便器20の内部空間Sに送風を行うようになっている(図2中の矢印B参照)。内部空間Sの後部に位置する送風装置1bからの送風は、内部空間S内において前方に向けて略水平に送り込まれ、便器20の前壁内面に当たって該内面沿いに四方に分流する。分流した各流れはそのまま便器内を旋回する流れとなり、上記送風を継続的に発生させることで便器20の内部空間Sには該内部空間Sを旋回する流れ(以下「旋回流」という)が生じることとなる。」 「【0019】 図4には、入退室センサ5の検知結果に基づいて静電霧化装置本体1a及び送風装置1bの運転のオンオフを制御する場合の制御例を示している。この制御例では、入退室センサ5により人体が入室状態にあると検知される場合には、静電霧化装置本体1a側の霧化電極6への高電圧印加と、送風装置1b側のファンモータ12への電圧印加を共にオフにしておく。そして、入退室センサ5により人体が退室状態にあると検知される間に、霧化電極6とファンモータ12への電圧印加を共にオンとし、霧化電極6の先端部にて静電霧化現象により帯電微粒子液を生成して便器20内に放出するともに、この放出された帯電微粒子液を、ファンモータ12より発生させた旋回流に乗せて便器20内に行き渡らせる。なお、入退室センサ5により退室状態になったと検知されてから所定時間経過した時点で、霧化電極6とファンモータ12への電圧印加をオフにするように設けてもよい。」 「 [図:0001435184000009.jpg] 」 b 甲2記載の技術事項 上記aによれば、甲2には、次の技術事項(以下「甲2記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「ボウル状を成す便器20に設置され、霧化液を保持する霧化電極6に高電圧を印加することで帯電微粒子液を生成して便器20内に放出する静電霧化装置1であって、 便器20内を旋回する流れを発生させて帯電微粒子液を便器20内に拡散させる送風装置1bを具備し(【0004】)、 トイレ室内への人体の入退室を検知する入退室センサ5を具備し、入退室センサ5の検知信号に基づいて送風装置1bの運転のオンオフを制御し(【0006】)、 上記静電霧化装置本体1aの下側に連結されて位置する送風装置1bは、前面に送風口10を開口させたケース11内にファンモータ12を配したものであり、送風口10を通じて便器20の内部空間Sに送風を行うようになっており(【0016】)、 入退室センサ5により人体が入室状態にあると検知される場合には、静電霧化装置本体1a側の霧化電極6への高電圧印加と、送風装置1b側のファンモータ12への電圧印加を共にオフにしておき、入退室センサ5により人体が退室状態にあると検知される間に、霧化電極6とファンモータ12への電圧印加を共にオンとし、霧化電極6の先端部にて静電霧化現象により帯電微粒子液を生成して便器20内に放出するともに、この放出された帯電微粒子液を、ファンモータ12より発生させた旋回流に乗せて便器20内に行き渡らせる(【0019】) 静電霧化装置1(【0004】)。」 (ウ)甲3、甲3に記載された技術事項 a 記載事項 本願の出願日前の平成27年11月24日に発行された甲3には、次の事項が記載されている。 「【0026】 <1>衛生洗浄装置の構成 図1に示すように、衛生洗浄装置100は、本体200、便蓋300、便座400、リモートコントローラ500により構成され、本体200、便蓋300、便座400は一体で構成され便器110の上面に設置される。 【0027】 本体200には、便蓋300および便座400が電動の便座便蓋回動機構102を介して開閉可能に取り付けられている。図1に示すように便蓋300を開放した状態においては、便蓋300は衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立する。また、便蓋300を閉塞すると便座400の上面を隠蔽する。便座400は便座ヒータ(図示せず)を内蔵しており、便座400の着座面が快適な温度になるように加熱する。」 「【0039】 本発明の衛生洗浄装置100はトイレ室に使用者が存在しない場合は、便座ヒータへの通電を停止、もしくは20℃程度の低温に保温している。トイレ室に使用者が入室すると、人体検知センサ502からの信号を受け、便座ヒータに通電を行う。便座ヒータは800W程度の非常に高出力のヒータであり、使用者がトイレ室に入室してから便座に着座するまでの6秒から10秒程度の間に、便座400の着座面を40℃程度の適温に温める。便座400が適温に達した後は、便座ヒータへの通電を50W程度の低ワットに下げ、適温を保つ。使用者がトイレルーム内から出ると、便座ヒータへの通電を停止、もしくは20℃程度の低温保温となる。つまり、トイレルームに使用者がいないときの電力を大幅に削減した便座装置である。」 「【0060】 <3>乾燥装置の動作および作用 上記構成の乾燥装置の動作および作用について、図9の駆動回路図および図10のフローチャートも併用しながら以下に説明する。 【0061】 本実施の形態における乾燥装置700は、乾燥機能と静電霧化機能の2つの機能を備えたものである。 【0062】 乾燥機能は洗浄により濡れた使用者の局部を温風により乾燥するものであり、使用者の局部に直接温風を当てて乾燥する機能である。 【0063】 使用者がリモートコントローラ500の乾燥機能の操作スイッチ501を操作し、乾燥機能が使用される場合、制御部900は送風装置720とヒータユニット730を駆動する。本来、乾燥機能時は、送風装置720には12Vの直流電圧を供給して強パワーで駆動されるものであるが、図10のタイムチャートに示されたとおり、乾燥運転開始時Dにおいて、まず静電霧化用送風駆動素子906がマイコン902によってONされ、小さい負荷電流で駆動開始される。 【0064】 そしてEの時点で、乾燥用送風駆動素子出力端子904がONされると同時に静電霧化用送風駆動素子906がOFFされ、送風装置720は直流モータで駆動されるシロッコファン回転数が、低速回転から高速回転に切り替わる。 【0065】 このように、制御部900は、送風装置720を小さい負荷電流で駆動する静電霧化用送風駆動素子906と、送風装置720を静電霧化用送風駆動素子906より大きい負荷電流で駆動する乾燥用送風駆動素子901と、を備え、制御部900は、乾燥装置700の動作開始時に、静電霧化用送風駆動素子906による駆動を経て乾燥用送風駆動素子901で駆動する構成により、乾燥運転開始時の突入電流が抑制される。 【0066】 したがって、小型コンパクトな電源であっても、乾燥運転開始時に突入電流によって電源が一時的に不安定になるような不具合がなく、乾燥装置700と静電霧化装置740の送風装置720を共用することも含めて、設置スペースを縮小できるともに、コストと組立工数を削減でき、電源回路の電圧供給の安定化を実現させることができ、使い勝手の良い衛生洗浄装置を低コストで提供することができる。 【0067】 送風装置720で送給された空気は吸気口705に向かって送給される。送給された空気の約90%は矢印Y1に示すように主風路701に送給され、約10%は矢印Y2で示すように副風路702に送給される。主風路701に送給された空気はヒータユニット730により加熱され、加熱された温風は矢印Y3に示すように噴出風路703へと送給される。 【0068】 一方、矢印Y2で示すように副風路702に送給された空気は副風路702を通過して矢印Y4に示すように噴出風路703へと送給される。噴出風路703で合流した空気は噴出口706より噴出される。噴出口706から噴出する温風の風力は最大となり、図6に示すように、乾燥シャッター750は風圧により略水平位置まで(開度約90度に)開放され、温風は矢印Y6に示すように略水平方向に噴出し、便座400に着座した使用者の局部に向かって送給され、洗浄により濡れた局部を短時間に乾燥することができる。 【0069】 一方、静電霧化機能を使用する場合は、制御部900は送風装置720と静電霧化装置740を駆動する。送風装置720には約7Vの直流電圧を供給して強パワーの約60パーセントの弱パワーで駆動させる。 【0070】 乾燥機能の使用時と同様に、送風装置720で送給された空気は吸気口705に向かって送給される。送給された空気の約90%は矢印Y1に示すように主風路701に送給され、約10%は矢印Y2で示すように副風路702に送給される。主風路701に送給された空気は主風路701を通過して噴出風路703へと送給される。 【0071】 一方、矢印Y2で示すように副風路702に送給された空気は、静電霧化装置により生成された帯電微粒子水が付加され空気が噴出風路703へと送給される。 【0072】 噴出口706から噴出される帯電微粒子水を含む空気は風力が弱いため、乾燥シャッター750は40度~45度の角度(乾燥時よりも小さな角度)に開放され、噴出口706から噴出した空気はシャッター750に当たって矢印Y6で示すように下方に方向を変えて、便器110の内部に向かって送給される。 【0073】 特に、前記構成の静電霧化装置で生成される帯電微粒子水はナノメータサイズと非常に小さいため、広い範囲に拡散が可能であるとともに、細孔内部や狭い隙間等に入り込むことが可能である。このため、表面に付着したものはもちろん狭い隙間に入り込んだ臭気物質、カビ類、菌類に対して脱臭効果、除菌効果、殺菌効果が得られるのである。 【0074】 ナノメータサイズの帯電微粒子水は、アンモニア、アセトアルデヒド、酢酸、メタン、一酸化炭素、一酸化窒素、ホルムアルデヒド等の臭気物質の分解除去と各種菌類への殺菌効果を備えており、トイレルーム内に浮遊および壁面や床面に付着した臭気物質や菌類に対して脱臭と除菌および殺菌の効果を発揮することができる。 【0075】 乾燥装置700と静電霧化装置740の送風装置720を共用しながらも、乾燥時は人体へ(上方へ)、静電霧化発生時は便器内にむけて(下方へ)の送風制御が適切に行われ、コンパクトでありながら使い勝手のよい衛生洗浄装置とすることができる。」 「【0085】 便蓋300が閉塞すると、制御部900は、乾燥装置700の静電霧化機能を駆動するため送風装置720と静電霧化装置740の通電を開始する。このとき送風装置720には7Vの直流電圧が供給され弱パワーで駆動される。 【0086】 乾燥装置700の噴出口706より噴出した帯電微粒子水を含む空気は、乾燥シャッター750に当たって下方に向きを変え、便器110の内部に送給される。便器110の内部に送給された帯電微粒子水を含む空気は、便器110内部と便蓋300で閉塞された空間に充満するとともに、一部は便座400の下面と便器110の上面との隙間からトイレルーム空間に放出される。 【0087】 便器110内部と便蓋300で閉塞された空間に充満した帯電微粒子水により、便器110の内面および便座400の外面および便蓋300の内面に付着した臭気物質や菌類に対して脱臭と除菌および殺菌の効果を発揮する。」 「 [図:0001435184000010.jpg] 」 b 甲3に記載の技術事項 上記aからみて、甲3には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「甲3記載の技術事項」という。)。 「本体200、便蓋300、便座400、リモートコントローラ500により構成された衛生洗浄装置100であって(【0026】)、 便座400は便座ヒータを内蔵しており、便座400の着座面が快適な温度になるように加熱し(【0027】)、トイレ室に使用者が存在しない場合は、20℃程度の低温に保温し、使用者がトイレ室に入室してから便座に着座するまでの6秒から10秒程度の間に、便座400の着座面を40℃程度の適温に温め、適温に達した後は、便座ヒータへの通電を50W程度の低ワットに下げ、適温を保ち、使用者がトイレルーム内から出ると、20℃程度の低温保温となり(【0039】)、 便蓋300が閉塞すると、静電霧化装置740の通電を開始し、送風装置720には7Vの直流電圧が供給され弱パワーで駆動され(【0085】)、乾燥装置700の噴出口706より噴出した空気は、便器110の内部に送給され、便器110内部と便蓋300で閉塞された空間に充満するとともに、一部は便座400の下面と便器110の上面との隙間からトイレルーム空間に放出され(【0086】)、便器110の内面および便座400の外面および便蓋300の内面に付着した臭気物質や菌類に対して脱臭と除菌および殺菌の効果を発揮すること(【0087】)。」 (エ)甲4、甲4に記載された技術事項 a 記載事項 本願の出願日前の平成30年6月28日に発行された甲4には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、薬液を散布してボウルを除菌する機能を有した便器装置の改良に関する。」 「【0028】 図6(a)、(b)はいずれも除菌処理を予め報知するようにした基本動作を示すタイムチャートである。除菌処理の報知としては、例えば報知部17を点灯又は点滅させればよい。 タイムチャートC3、C4では、装置状態、指令操作、ボウル洗浄動作、除菌処理動作、報知動作を要素として示している。またタイムチャートC3、C4の横軸は時間経過を示している。 タイムチャートC3では、ボウル洗浄と除菌処理とを組み合わせた一連の動作の開始時点から終了時点まで報知を行っている(時刻T18参照)。 タイムチャートC4では、除菌予定状態の開始時点から終了時点まで報知を行っている(時刻T19参照)。 この例のように除菌処理を予め報知すれば、除菌処理前に使用者の退室を促すことができる。なお変形例として、報知部17を除菌予定状態になったときに点灯させ、除菌処理中には点滅させてもよい。 【0029】 図7(a)、(b)はそれぞれ使用者が退室したあと、あるいは便蓋25が閉じられたあと、除菌処理を開始するようにした基本動作を示すタイムチャートである。タイムチャートC5、C6では、装置状態、指令操作、ボウル洗浄動作、除菌処理動作、検知動作を要素として示している。 タイムチャートC5では、人感センサー15が人体検知している間は、ボウル洗浄と除菌処理とを組み合わせた一連の動作において薬液の散布を行わずに待機する(時刻T22参照)。そして、その後人感センサー15が人体検知をしなくなってから薬液の散布を開始している(時刻T23参照)。 タイムチャートC6では、便蓋センサー16が便蓋閉を検知していない間(便蓋開)は、ボウル洗浄と除菌処理とを組み合わせた一連の動作において薬液の散布を開始せずに待機する(時刻T24参照)。そして、その後便蓋センサー16が便蓋閉を検知した時点で薬液の散布を開始している(時刻T25参照)。 この例のように使用者が退室したあと、あるいは便蓋25が閉じられたあと、除菌処理(薬液散布)を開始すれば、薬液に臭気や毒性があったとしても使用者への悪影響が抑えられる。」 「 [図:0001435184000011.jpg] 」 【図7】「 [図:0001435184000012.jpg] 」(当審において、90°右に回転させた。) b 甲4記載の技術事項 上記アによれば、甲4には、次の技術事項(以下「甲4記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「薬液を散布してボウルを除菌する機能を有した便器装置であって(【0001】)、 便蓋センサー16が便蓋閉を検知していない間(便蓋開)は、ボウル洗浄と除菌処理とを組み合わせた一連の動作において薬液の散布を開始せずに待機し、その後便蓋センサー16が便蓋閉を検知した時点で薬液の散布を開始して(【0029】)、 除菌処理を予め報知するため、ボウル洗浄と除菌処理とを組み合わせた一連の動作の開始時点から終了時点まで報知を行っていること(【0028】)。」 (オ)甲5、甲5に記載の技術事項 a 記載事項 本願の出願日前の平成18年3月23日に発行された甲5には、次の事項が記載されている。 「【0023】 (実施の形態1) 図1は本発明の実施の形態1における暖房便座の構成図である。図1において、便座1はk。便座1の外郭は、図4に示す従来の便座101と同じ透明ポリプロピレン樹脂性の着座部、表面の輻射熱吸収層を有し、ランプヒータ2からの輻射熱を輻射熱吸収層で熱変換し着座部を速断する構成にしてある。 【0024】 そして、便座本体部1aには便座1に着座している人を検出する着座センサ4、ランプヒータ2の制御用の半導体スイッチング素子であるトライアック5、交流100Vから交流信号のゼロクロス点を検出するゼロクロス検出回路6、ランプヒータ2の通電を制御する制御手段であるランプヒータ制御手段7、バッファー8、サーミスタ3と直列に接続された抵抗9、トイレを使用するためトイレ空間に入ってきた人を検出する人体検出センサ10からの信号の受信部11などが納められている。 【0025】 人体検出センサ10、サーミスタ3、着座センサ4、ゼロクロス検出回路6からの信号は、ランプヒータ制御手段7に入力され、その信号入力から演算されて、バッファー8へランプヒータ2の制御信号が出力される。ランプヒータ2は、トライアック5を介してスイッチング制御され、交流100Vの電圧が印加されてランプヒータ2の出力が決定される。 【0026】 ここで、人体検出センサ10は焦電型赤外線センサで人体を検出し、その検出信号を最終的にランプヒータ制御手段7に送信するものである。人体検出センサ10からの信号は信号受光部11で受信され、ランプヒータ制御手段7に入力される。また、便蓋12は便座駆動手段13からの出力によって回動され、便座1の高温設定時に便座1の表面を覆うものである。また、トイレのドア14のロック手段である鍵部15にはランプヒータ制御手段7からドアロック信号が出力される。 【0027】 ランプヒータ制御手段7は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、人体検出センサ10から人体を検出していない(トイレ内に人がいない)信号が入力されると、便座1の暖房時の温度より10℃から20℃高い除菌可能な高温設定で、かつ除菌可能な所定時間の間中、ランプヒータ2への通電を制御して便座1の除菌制御を行うとともに、便座駆動手段13を制御して便蓋12を便座1の表面近傍に移動させて蓋をさせて停止させ、人が便座1に触れないようにして安全を図り、かつ保温効果を狙うもので、前記所定時間が終了すれば通電が停止するものである。 【0028】 また、ランプヒータ制御手段7は、除菌可能な高温設定時に人体検出手段が10がトイレに入ってきた人体を検知したら、便座1の除菌可能な高温設定を解除する制御を行うものである。 【0029】 このような構成において、人体検出センサ10で人体を検出して、便座暖房用の熱発生源であるランプヒータ2に通電を開始する。通常、ランプヒータ2はは便座1の暖房に適した40℃程度の温度に制御されるのであるが、便座1の除菌の状態では、人体検出センサ10で人がトイレ内に居ないことを確認して、ランプヒータ2の通電時間、サーミスタ3で制御する温度を暖房時の通常より10℃から20℃高い温度で制御を行なう。 【0030】 このようにトイレ内に人体の有無を確認した上で、便座1を除菌可能な温度に制御することが可能なので、使用者が高温の便座に驚くことなく安全に便座を清潔に保つことができ、かつ便座を暖房する熱発生源を利用しているので、構成を簡単にできるだけでなく、熱発生源の特異性である直ぐ暖まるランプヒータ等なので、便座を使用しない合間でも即座に高温に上昇させて除菌を行うことができる。 【0031】 また、高温除菌時に便蓋12は便蓋駆動手段13によって駆動され、便座1を覆う状態に移動するので、高温時に便座に座ってしまう恐れもなく安全に除菌ができる。また、ランプヒータ制御手段7が高温状態に設定中であっても、人体検出センサ10が人体を検出した時は使用者の意思を優先して高温での除菌を停止することによって使用者に配慮した暖房便座を実現することができる。 【0032】 なお、上記実施の形態では、便座1の高温設定中にトイレに入ってきた人体を検知した人体検知手段10からの信号を取り込んでランプヒータ制御手段7が、便座1の高温設定を解除するように構成したが、高温設定時にはトイレのドア14をロックするドアロック手段としての鍵部15をロックするようにするとともに、除菌可能な一定時間の高温設定の終了後は鍵部15のロックを解錠するようにランプヒータ制御手段を構成し、この構成を単独、または上記実施の形態のランプヒータ制御手段7と組み合わせて使用しても良く、便座表面が高温の時はトイレに入れなく安全、かつ使用者に高温状態を知らせることが可能になる。 【0033】 (実施の形態2) 図2は、本発明の実施の形態2における暖房便座の構成図である。本実施の形態は、便座の高温設定時の終了予定時間と便座表面が高温になっていることを報知する報知手段としての表示部と、高温設定をする信号を入力する指示手段を備えた点が実施の形態1の発明と異なり、それ以外の構成並びに作用効果は実施の形態1と同じなので図1に示す符号と同一符号を付して詳細な説明を省略し、異なるところを中心に説明する。 【0034】 表示部16は便座本体1aの上面に設け、ランプヒータ制御手段7aにより制御され、便座1の除菌可能な高温設定の終了予定時間と高温であることの注意を喚起する報知を行うもので、除菌終了時刻を表示することで通常使用開始の目安にするとともに、高温部に触れないようにするものである。 【0035】 指示手段としての手動除菌ボタン17は、便座本体1aの前面に設け、手動で便座1の高温設定に入ることをランプヒータ制御手段7aに指示するボタンである。ランプヒータ制御手段7aは、手動除菌ボタン17の高温設定の信号が入ると便蓋駆動手段13を制御し、便蓋12を便座1の表面近傍に移動させ蓋をさせて停止させ、便座1の温度が通常使用状態に戻ったときには便蓋12の固定状態を解除し、便蓋駆動手段13によって便蓋12を開状態に回動するように制御する。 【0036】 このような構成において、手動除菌ボタン17を手で押すことによりランプヒータ制御手段7aに便座1を高温設定にするための信号が伝えられ、ランプヒータ2が高温設定の状態で制御される。従って、表示部16には、高温設定の終了予定時間が報知され通常の便座1の使用開始の目安にできるとともに、使用者が便座1を通常使用しない時に高温除菌を行うことができ、さらに便座1が高温であることを表示部16により報知し便座1に触れないように注意を喚起する。 【0037】 また、手動除菌ボタン17が押された時は便蓋駆動手段13が動作し、便蓋12を便座1の近くに駆動して蓋をさせ固定し、便座1の除菌を指示した場合でも便蓋12で便座1を覆い、安全性を確保することができる。一方、サーミスタ3で便座1の温度を検出しているので、ランプヒータ制御手段7aは便座1のランプヒータ2への通電が停止され、温度が通常の使用状態に便座1が戻ったときには、便蓋12の固定状態を解除し、便蓋駆動手段13によって便蓋12は開状態に回動する。」 b 甲5記載の技術事項 上記aによれば、甲5には、次の技術事項(以下「甲5記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。 「人体検出センサ10で人体を検出して、便座暖房用の熱発生源であるランプヒータ2に通電を開始し、ランプヒータ2は便座1の暖房に適した40℃程度の温度に制御されるのであるが、便座1の除菌の状態では、人体検出センサ10で人がトイレ内に居ないことを確認して、ランプヒータ2の通電時間、サーミスタ3で制御する温度を暖房時の通常より10℃から20℃高い温度で制御を行なう暖房便座において(【0023】、【0029】)、 高温除菌時に便蓋12は便蓋駆動手段13によって駆動され、便座1を覆う状態に移動するので、高温時に便座に座ってしまう恐れもなく安全に除菌ができ、ランプヒータ制御手段7が高温状態に設定中であっても、人体検出センサ10が人体を検出した時は使用者の意思を優先して高温での除菌を停止することによって使用者に配慮した暖房便座を実現することができ(【0031】)、 高温設定をする信号を入力する指示手段を備え(【0033】)、 指示手段としての手動除菌ボタン17は、便座本体1aの前面に設け、手動で便座1の高温設定に入ることをランプヒータ制御手段7aに指示するボタンであり、ランプヒータ制御手段7aは、手動除菌ボタン17の高温設定の信号が入ると便蓋駆動手段13を制御し、便蓋12を便座1の表面近傍に移動させ蓋をさせて停止させ、便座1の温度が通常使用状態に戻ったときには便蓋12の固定状態を解除し、便蓋駆動手段13によって便蓋12を開状態に回動するように制御し(【0035】)、 表示部16には、高温設定の終了予定時間が報知され通常の便座1の使用開始の目安にできるとともに、使用者が便座1を通常使用しない時に高温除菌を行うことができ、さらに便座1が高温であることを表示部16により報知し便座1に触れないように注意を喚起し(【0036】)、 ランプヒータ制御手段7aは便座1のランプヒータ2への通電が停止され、温度が通常の使用状態に便座1が戻ったときには、便蓋12の固定状態を解除し、便蓋駆動手段13によって便蓋12は開状態に回動する(【0037】)こと。」 (カ)周知技術 上記(エ)の甲4記載の技術事項及び上記(オ)の甲5記載の技術事項を総合すると、 「便器装置において、便蓋が閉じているときに除菌処理を行って、除菌処理について報知することや便蓋を閉状態で固定すること。」は本件特許出願前に便器装置の技術分野で周知(以下「周知技術」という。)であったと認められる。 ウ 対比・判断 (ア)本件訂正発明1について a 対比 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「便座カバー」、「便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合」、「便器」は、それぞれ本件訂正発明1の「便蓋」、「便蓋が閉じた閉状態であることを条件と」すること、「便器装置」に相当する。 また、甲1発明の「降水」は、本件訂正発明1の「吐出され」る「洗浄水」に相当し、甲1発明の便器において、降水動作は、便器のボウル部に行われることは技術常識であるから、甲1発明は、本件訂正発明1の「ボウルに対し洗浄水が吐出される」ことに相当する構成を有するといえ、甲1発明の「便座カバーが閉じている場合」の「便器内」、「空気を強制送風させ」る「ファン(510)」は、それぞれ本件訂正発明1の「閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内」、「空気の送風を行う空気流動手段」に相当する。 甲1発明では、「便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合、自動降水動作を実行し、その後、便器内の除菌のための除菌機を一定時間動作させ」ており、「除菌機」の「動作」は、「ダクト(520)の一端に具備されるファン(510)を使用して空気を強制送風させ、上記ダクト(520)の内部に具備される除菌モジュール(530)で除菌物質を発生させ、上記ファン(510)によって強制送風される空気がダクト(520)内部を通じて除菌物質と共に便器(100)内に排出されるように」することであるから、甲1発明では「便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合、自動降水動作を実行し、その後、便器内の除菌のための除菌機を一定時間動作させ」るときに「ファン(510)」を一定時間動作させているといえる。 そうすると、本件訂正発明1と甲1発明は「前記空気流動手段は、前記ボウルへの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行」った後、「空気の送風を停止する」点で共通する。 以上によれば、本件訂正発明1と甲1発明は、以下の一致点及び相違点を有する。 <一致点> 「便蓋が閉じた閉状態であることを条件として、ボウルに対し洗浄水が吐出される便器装置であって、 前記ボウルと、閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内への空気の送風を行う空気流動手段と、を備え、 前記空気流動手段は、前記ボウルへの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行った後、空気の送風を停止する便器装置。」 <相違点1> 本件訂正発明1では、「人体検知部と、洗浄操作部」とを備え、「前記洗浄操作部による洗浄指示を受けたとき、前記空気流動手段」は、「前記人体検知部が非検知状態となった後、空気の送風中に人を検知すると空気の送風を停止する」のに対して、 甲1発明では、人体検知部と洗浄操作部とを有しておらず、それにより、「便座カバーが閉じている場合、自動降水動作を実行し、」「ファン(510)」を一定時間動作させている点。 b 判断 相違点1について 上記相違点1について検討すると、上記甲2記載の技術事項では、「トイレ室内への人体の入退室を検知する入退室センサ5を具備し、入退室センサ5の検知信号に基づいて送風装置1bの運転のオンオフを制御」し、「入退室センサ5により人体が入室状態にあると検知される場合には、」「送風装置1b側のファンモータ12への電圧印加を共にオフにして」いるものの、甲2記載の技術事項には、「洗浄操作部」を備えておらず、便器(「便器装置」)において、洗浄操作部を備えることが技術常識あるいは例示するまでもない周知技術であるとしても、甲2記載の技術事項からは、洗浄操作部の指示による降水(「吐出され」る「洗浄水」)と、空気を強制送風させるファン(510)(「空気の送風を行う空気流動手段」)の空気の送風と停止との関係が不明であり、両者を如何なるタイミングで行うかは明らかではない。 また、甲3~甲5記載の技術事項にも、相違点1に係る本件訂正発明1に係る構成については記載も示唆もない。 そして、本件訂正発明1によれば、洗浄操作部による洗浄指示を行った場合においても、便蓋が閉状態であることを条件として、ボウルへの洗浄水の吐出後に、便蓋が閉状態で空気の送風を行われるから、排泄物に含まれる汚染物質や洗浄水の水滴等が便器の周囲に飛散することは抑制できるとともに、便器内部空間を効率的に乾燥させるという格別の効果を奏する。 c 小括 以上のことから、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲2~5記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当しない。 (イ)本件訂正発明3について a 対比 本件訂正発明3と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「便座カバー」、「便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合」、「便器」は、それぞれ本件訂正発明3の「便蓋」、「便蓋が閉じた閉状態であることを条件と」すること、「便器装置」に相当する。 また、甲1発明の「降水」は、本件訂正発明3の「吐出され」る「洗浄水」に相当し、甲1発明の便器において、降水動作は、便器のボウル部に行われることは技術常識であるから、甲1発明は、本件訂正発明3の「ボウルに対し洗浄水が吐出される」ことに相当する構成を有するといえ、甲1発明の「便座カバーが閉じている場合」の「便器内」、「空気を強制送風させ」る「ファン(510)」は、それぞれ本件訂正発明3の「閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内」、「空気の送風を行う空気流動手段」に相当する。 甲1発明では、「便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合、自動降水動作を実行し、その後、便器内の除菌のための除菌機を一定時間動作させ」ており、「除菌機」の「動作」は、「ダクト(520)の一端に具備されるファン(510)を使用して空気を強制送風させ、上記ダクト(520)の内部に具備される除菌モジュール(530)で除菌物質を発生させ、上記ファン(510)によって強制送風される空気がダクト(520)内部を通じて除菌物質と共に便器(100)内に排出されるように」することであるから、甲1発明では「便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合、自動降水動作を実行し、その後、便器内の除菌のための除菌機を一定時間動作させ」るときに「ファン(510)」を一定時間動作させているといえる。 そうすると、本件訂正発明3と甲1発明は「前記空気流動手段は、前記ボウルへの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行」った後、「空気の送風を停止する」点で共通する。 以上によれば、本件訂正発明3と甲1発明は、以下の一致点及び相違点を有する。 <一致点> 「便蓋が閉じた閉状態であることを条件として、ボウルに対し洗浄水が吐出される便器装置であって、 前記ボウルと、閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内への空気の送風を行う空気流動手段と、を備え、 前記空気流動手段は、前記ボウルへの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行った後、空気の送風を停止する便器装置。」 <相違点2> 本件訂正発明3では、「人体検知部」を備え、「前記空気流動手段」は、「前記人体検知部が非検知状態となった後、空気の送風中に人を検知すると空気の送風を停止する」のに対して、 甲1発明では、人体検知部を有しておらず、それにより、「ファン(510)」を一定時間動作させている点。 <相違点3> 本件訂正発明3では、「前記空気流動手段は、前記ボウルへの洗浄水の吐出による洗浄処理が終了してから所定時間経過後に空気の送風を行」っているのに対して、 甲1発明では、「便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合、自動降水動作を実行し、その後、便器内の除菌のための除菌機を一定時間動作させ」ており、降水が終了してから除菌機を動作させていない点。 b 判断 事案に鑑み、相違点3についてまず検討する。 甲1発明では、「便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合、自動降水動作を実行し、その後、便器内の除菌のための除菌機を一定時間動作させ」ており、降水が終了してから除菌機を動作させていない。 また、甲2~甲5記載の技術事項にも、相違点3に係る本件訂正発明3に係る構成については記載も示唆もない。 そして、本件訂正発明3によれば、ボウルの表面に付着した洗浄水が溜め水にある程度落ちてから乾燥処理が開始されるので、空気流動手段が稼働する時間を短くすることができるという格別の効果を奏する。 c 小括 以上のことから、本件訂正発明3は、甲1発明及び甲2~5記載の技術事項に基いて、相違点2について検討するまでもなく、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当しない。 (ウ)本件訂正発明1又は本件訂正発明3を引用する本件訂正発明4について 本件訂正発明1又は本件訂正発明3を引用する本件訂正発明4は、本件訂正発明1又は本件訂正発明3の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(ア)及び(イ)と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)取消理由通知に記載した取消理由のまとめ 以上のことから、本件訂正発明1、本件訂正発明3、本件訂正発明1又は本件訂正発明3を引用する本件訂正発明4は、甲1発明及び甲2~5記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当しない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 申立人が、申立書において主張する、取消理由通知において採用しなかった請求項2についての特許法第29条第2項及び同法第36条第6項第2号に関する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 (1)理由1 本件訂正発明2は、甲1と甲3の記載から容易想到である(以下「理由1」という。)。 (2)理由2 本件訂正発明2の「連動して」の意味するところが明確でない(以下「理由2」という。)。 2 甲各号証の記載 甲1~甲5の記載は、上記第4(2)イの(ア)~(オ)のとおりである。 3 理由1について (1)本件訂正発明2について ア 対比 本件訂正発明2と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「便座カバー」、「便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合」、「便器」は、それぞれ本件訂正発明2の「便蓋」、「便蓋が閉じた閉状態であることを条件と」すること、「便器装置」に相当する。 また、甲1発明の「降水」は、本件訂正発明2の「吐出され」る「洗浄水」に相当し、甲1発明の便器において、降水動作は、便器のボウル部に行われることは技術常識であるから、甲1発明は、本件訂正発明2の「ボウルに対し洗浄水が吐出される」ことに相当する構成を有するといえ、甲1発明の「便座カバーが閉じている場合」の「便器内」、「空気を強制送風させ」る「ファン(510)」は、それぞれ本件訂正発明2の「閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内」、「空気の送風を行う空気流動手段」に相当する。 甲1発明は、「便座カバー」を有していることから、「便座」を備えていることは明らかであって、「便座」は人が着座する着座面を有したものであることは技術常識である。 よって、甲1発明は本件訂正発明2の「人が着座する着座面を有する便座」に相当する構成を有する。 甲1発明では、「便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合、自動降水動作を実行し、その後、便器内の除菌のための除菌機を一定時間動作させ」ており、「除菌機」の「動作」は、「ダクト(520)の一端に具備されるファン(510)を使用して空気を強制送風させ、上記ダクト(520)の内部に具備される除菌モジュール(530)で除菌物質を発生させ、上記ファン(510)によって強制送風される空気がダクト(520)内部を通じて除菌物質と共に便器(100)内に排出されるように」することであるから、甲1発明では「便座カバーの閉鎖の有無を判断した結果、便座カバーが閉じている場合、自動降水動作を実行し、その後、便器内の除菌のための除菌機を一定時間動作させ」るときに「ファン(510)」を一定時間動作させているといえる。 そうすると、甲1発明は、本件訂正発明2の「前記空気流動手段は、前記ボウルへの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行」うことに相当する構成を有する。 以上によれば、本件訂正発明2と甲1発明は、以下の一致点及び相違点を有する。 <一致点> 「便蓋が閉じた閉状態であることを条件として、ボウルに対し洗浄水が吐出される便器装置であって、 前記ボウルと、閉状態にある前記便蓋とにより形成された便器内部空間内への空気の送風を行う空気流動手段と、人が着座する着座面を有する便座と、を備え、 前記空気流動手段は、前記ボウルへの洗浄水の吐出後に、前記便蓋が閉状態で空気の送風を行う便器装置。」 <相違点4> 本件訂正発明2では、「前記便座は、前記着座面を温める便座加温部を備えており、該便座加温部は、前記空気流動手段による空気の送風に連動して、前記便器内部空間内の空気を温める」のに対して、 甲1発明は、そのような構成を有していない点。 イ 判断 上記相違点4について検討すると、甲3記載の技術事項の「便座400」、「便座400の着座面を」「適温に温め」る「便座ヒータ」は、それぞれ本件訂正発明2の相違点4に係る構成の「便座」、「前記着座面を温める便座加温部」に相当し、甲3記載の技術事項の「便座400は」「、便座400の着座面が快適な温度になるように加熱し、便座400の着座面を40℃程度の適温に温め、」「使用者がトイレルーム内から出ると、20℃程度の低温保温となり、便蓋300が閉塞すると、静電霧化装置740の通電を開始し、」「乾燥装置700の噴出口706より噴出した空気」が「便器110内部と便蓋300で閉塞された空間に充満するとともに、一部は便座400の下面と便器110の上面との隙間からトイレルーム空間に放出され、便器110の内面および便座400の外面および便蓋300の内面に付着した臭気物質や菌類に対して脱臭と除菌および殺菌の効果を発揮」している。 ここで、上記相違点4に係る構成の「連動」とは、一般に「一部分を動かすと、それとひと続きの装置が、いっしょに作動すること。」(デジタル大辞泉、小学館)を意味し、本件特許明細書等の【0014】には、 「便器装置1は、人が着座する着座面24aを有する便座24を備えており、便座24は、着座面24aを温める便座加温部24bを備えている。便座加温部24bは、冬場や寒冷地といったトイレ空間(トイレルーム)内の室温が低い場合に、使用者が便座24の着座面24aに着座の際に冷たく感じないように温める機能を有する。さらに、本実施形態の便座加温部24bは、空気流動手段32による乾燥処理に連動して、便器内部空間A内の空気を温める構成となっている。空気流動手段32による乾燥処理の際に便座加温部24bが作動することによって、便座24の周囲の空気が温められ、便器内部空間A内で対流が起こる。これにより、温められた空気が便器内部空間Aの隅々まで届くので、便器内部空間A内を効率よく乾燥させることができる。なお、便座加温部24bによる温められた着座面24aの温度は特に限定されることはないが、人の体温と同程度が若干高い温度の約30度~40度の間が好ましい。本実施形態においては、便座加温部24bの温度は使用者の所望の温度に調整可能であるが、空気流動手段32による乾燥処理が行われている間、便座加温部24bは、着座面24aの温度を約38度とするのが望ましい。日本国内であれば38度は室温よりも高い温度である場合が多いので、効率よく乾燥させることができる。」(下線は合議体が付した。以下同様。)と、また、同【0023】には、 「空気流動手段32である乾燥装置33は、局部洗浄装置31の使用により濡れた臀部等を乾燥させるために使用者が操作したときや、ボウル12への洗浄水の吐出に連動して乾燥処理である送風を行う。空気流動手段32は、送風ファン33aが作動して吸気口33bから空気を取り込み、送風口33cからボウル12側(便器内部空間A側)に送風する。このとき、送風ファン33aの動作に連動して、もしくは送風ファン33aの動作前に送風加温部34が作動することが好ましい。これにより、室温よりも温度の高い空気が送風されるので、効率よく乾燥させることができる。なお、送風加温部34の構成は特に限定されないが、例えば電熱線を熱源として用いて、電熱線と電熱線との間を送風ファン33aから送風された空気が通ることで温めてもよい。送風加温部34が温める空気の温度は特に限定されることはないが、人の体温と同程度が若干高い温度が好ましい。本実施形態においては、約38度の温度に空気を温める。また、乾燥装置33は、送風加温部34を有しない構成であってもよい。」と、また、同【0024】には、 「空気流動手段32としては、乾燥装置33の代わりにもしくは加えて、脱臭するための脱臭装置の脱臭ファンが用いられてもよい。脱臭ファンは、脱臭のためにボウル12内の空気を吸気するように回転するファンである。そのため、便蓋20が閉状態のときに脱臭ファンが回転すると、便蓋20とリム部14との間の隙間や便座24とリム部14との間の隙間から便器本体10の外部からの空気が流入する。これにより、便器内部空間A内の空気が流動され、特に空気が流入される便蓋20付近や便座24付近が乾燥されやすくなる。また、このとき便座加温部24bが作動していると、便座24周囲の温められた空気が便器内部空間A内全体に広がるのでより便器内部空間Aが乾燥されやすくなる。なお、空気流動手段32は、乾燥装置33や脱臭装置の脱臭ファンを用いることに限定されることはなく、便器内部空間A内の空気を流動させるための専用のファン等が設けられてもよい。」と、また、同【0039】には、 「S102の洗浄処理と同時に、もしくは洗浄処理の開始後、所定時間経過後の洗浄処理中に、空気流動手段32による乾燥処理が開始される(S103)。乾燥処理は、上述したような局部洗浄装置31の乾燥装置33や脱臭装置の脱臭ファンを用いてもよく、図例や上述したものとは異なる構成の空気流動手段32で乾燥処理するものであってもよい。さらに、本実施形態では、空気流動手段32の乾燥処理に連動して、便座加温部24bが便器内部空間A内の空気を温めるので、より効率よく乾燥処理を行うことができる。」と記載されており、本件特許明細書等の「連動」は、上記一般的な意味内容と整合している。 そして、甲3記載の技術事項の「衛生洗浄装置100」の「便座400は」「使用者がトイレルーム内から出ると、20℃程度の低温保温とな」ることと、「便蓋300が閉塞」して、「乾燥装置700の噴出口706より噴出した空気」が、「便器110内部と便蓋300で閉塞された空間に充満するとともに、一部は便座400の下面と便器110の上面との隙間からトイレルーム空間に放出され、便器110の内面および便座400の外面および便蓋300の内面に付着した臭気物質や菌類に対して脱臭と除菌および殺菌の効果を発揮」することとは、「便座400」の加熱が、「トイレ室に使用者が存在しない場合は、20℃程度の低温に保温し、使用者がトイレ室に入室してから便座に着座するまでの6秒から10秒程度の間に、便座400の着座面を40℃程度の適温に温め」ていることをふまえると、「乾燥装置700」の「空気」の「噴出」と連動しているとはいえない。 また、甲2、甲4及び甲5記載の技術事項にも、相違点4に係る本件訂正発明2に係る構成については記載も示唆もない。 そして、本件訂正発明2によれば、空気流動手段の乾燥処理に連動して、便座加温部が便器内部空間内の空気を温めるので、より効率よく乾燥処理を行うことができるという格別の効果を奏する。 ウ 小括 以上のことから、本件訂正発明2は、甲1発明及び甲2~5記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項に該当しない。 (2)本件訂正発明2を引用する本件訂正発明4について 本件訂正発明2を引用する本件訂正発明4は、本件訂正発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 理由2について (1)本件訂正発明2について ア 判断基準 特許請求の範囲に記載された発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の本件出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 イ 明確性要件についての判断 本件特許の特許請求の範囲の請求項2の記載は上記第3のとおりである。そして、請求項2の記載自体は明確であり、本件特許明細書等の発明の詳細な説明における記載とも、上記3(1)イで検討したとおり、整合するものである。 よって、本件訂正発明2については、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書及び図面の記載を考慮し、また、本件特許に係る出願の出願当時における当業者の技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700328

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