特許異議申立
2018-700105
便座装置、および便器装置
- 審判番号
- 2018-700105
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-552335
- 登録番号
- 特許第6176336号(P6176336)
- 請求日
- 2018年02月08日
- 審決日
- 2018年09月10日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】TOTO 株式会社
- 【異議申立人代理人】日向寺 雅彦
- 審判長/審判官
- 審判長 前川 慎喜
- 審判官 井上 博之
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P1651.121-YAA(E03D) / P1651.851-YAA(E03D) / P1651.853-YAA(E03D) / P1651.857-YAA(E03D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6176336号発明「便座装置、および便器装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6176336号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2~12〕について訂正することを認める。
特許第6176336号の請求項2~12に係る特許を維持する。
特許第6176336号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6176336号の請求項1~12に係る特許についての出願は、平成26年12月9日(優先権主張平成25年12月13日)を国際出願日とし、平成29年7月21日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、平成30年2月8日に特許異議申立人TOTO株式会社(以下「申立人」という。)より、請求項1~12に対して特許異議の申立てがされ、同年4月13日付けで取消理由(発送日同年4月19日)が通知され、その指定期間内である同年6月18日に意見書の提出及び訂正請求がされたものである。
第2 訂正請求について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)~(11)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
請求項2に「前記サンプルデータには、第1のサンプルデータと、前記第1のサンプルデータとは異なる第2のサンプルデータとがあり、前記認識部は、前記第1の検出機能を実行する場合には前記第1のサンプルデータを用い、前記第2の検出機能を実行する場合には前記第2のサンプルデータを用いることを特徴とする請求項1記載の便座装置。」とあるのを、「便器上に載置される本体と、前記本体に開閉自在に付設された便座と、人体を検出対象とする人検出器とを備え、前記人検出器は、無線信号を送信し、物体で反射した前記無線信号を受信して、前記物体の動きに応じたセンサ信号を出力するセンサ部と、前記センサ信号を周波数領域の信号に変換し、周波数帯域の異なる複数のフィルタバンク毎の信号として抽出する周波数分析部と、前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号の周波数分布と、前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号強度の成分比との少なくとも一方を検出データとし、前記検出データにより人体の所定動作を検出する認識処理を行う認識部と、前記人体の所定動作に対応する周波数分布と、前記人体の所定動作に対応する信号強度の成分比との少なくとも一方をサンプルデータとして格納するデータベースとを備え、前記認識部は、前記検出データを前記サンプルデータと照合することによって前記認識処理を行い、少なくとも前記便器が設置された空間に侵入した前記人体の存否を検出する第1の検出機能と、前記便座に着座した前記人体の存否を検出する第2の検出機能とを有し、前記サンプルデータには、第1のサンプルデータと、前記第1のサンプルデータとは異なる第2のサンプルデータとがあり、前記認識部は、前記第1の検出機能を実行する場合には前記第1のサンプルデータを用い、前記第2の検出機能を実行する場合には前記第2のサンプルデータを用いることを特徴とする便座装置。」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3~12も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
請求項1を削除する。
(3)訂正事項3
請求項3に「前記認識部は、前記複数のフィルタバンクの各信号強度の総和が閾値以上である場合、前記認識処理を行う、もしくは前記認識処理の結果を有効とし、前記閾値には、第1の閾値と、前記第1の閾値とは異なる第2の閾値とがあり、前記認識部は、前記第1の検出機能を実行する場合には前記閾値として前記第1の閾値を用い、前記第2の検出機能を実行する場合には前記閾値として前記第2の闘値を用いることを特徴とする請求項1または2記載の便座装置。」とあるのを、「前記認識部は、前記複数のフィルタバンクの各信号強度の総和が閾値以上である湯合、前記認識処理を行う、もしくは前記認識処理の結果を有効とし、前記閾値には、第1の閾値と、前記第1の閾値とは異なる第2の閾値とがあり、前記認識部は、前記第1の検出機能を実行する場合には前記閾値として前記第1の閾値を用い、前記第2の検出機能を実行する場合には前記閾値として前記第2の閾値を用いることを特徴とする請求項2記載の便座装置。」に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項4~12も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
請求項4に「前記複数のフィルタバンクを通過した信号から背景信号を除去する背景信号除去部を備えることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の便座装置。」とあるのを、「前記複数のフィルタバンクを通過した信号から背景信号を除去する背景信号除去部を備えることを特徴とする請求項2又は3記載の便座装置。」に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項5~12も同様に訂正する。
(5)訂正事項5
請求項5に「前記センサ信号に基づいて前記人体までの距離を測定する測距部を備え、前記認識部は、前記測距部の測定結果も併せて用いて前記認識処理を行うことを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の便座装置。」とあるのを、「前記センサ信号に基づいて前記人体までの距離を測定する測距部を備え、前記認識部は、前記測距部の測定結果も併せて用いて前記認識処理を行うことを特徴とする請求項2乃至4いずれか記載の便座装置。」に訂正する。
請求項5の記載を引用する請求項6~12も同様に訂正する。
(6)訂正事項6
請求項6に「前記センサ信号に基づいて前記人体の移動方向を検出する方向検出部を備え、前記認識部は、前記方向検出部の検出結果も併せて用いて前記認識処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の便座装置。」とあるのを、「前記センサ信号に基づいて前記人体の移動方向を検出する方向検出部を備え、前記認識部は、前記方向検出部の検出結果も併せて用いて前記認識処理を行うことを特徴とする請求項2乃至5いずれか記載の便座装置。」に訂正する。
請求項6の記載を引用する請求項7~12も同様に訂正する。
(7)訂正事項7
請求項7に「前記センサ信号に基づいて、前記便座に着座した前記人体の呼吸の状態を検出する呼吸検出部を備えることを特徴とする請求項1乃至6いずれか記載の便座装置。」とあるのを、「前記センサ信号に基づいて、前記便座に着座した前記人体の呼吸の状態を検出する呼吸検出部を備えることを特徴とする請求項2乃至6いずれか記載の便座装置。」に訂正する。
請求項7の記載を引用する請求項8~12も同様に訂正する。
(8)訂正事項8
請求項8に「前記センサ部は、前記便座に着座した前記人体の背面と向き合うように設けられることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の便座装置。」とあるのを、「前記センサ部は、前記便座に着座した前記人体の背面と向き合うように設けられることを特徴とする請求項2乃至7いずれか記載の便座装置。」に訂正する。
請求項8の記載を引用する請求項9~12も同様に訂正する。
(9)訂正事項9
請求項9に「前記周波数分析部により抽出された信号の強度の総和もしくは所定の前記複数のフィルタバンクのうち所定数のフィルタバンクを通過した信号の強度の総和で、前記複数のフィルタバンクそれぞれを通過した信号の強度を規格化し規格化強度として出力する規格化部を備え、前記認識部は、前記規格化部から出力される前記複数のフィルタバンク毎の規格化強度から決まる周波数分布と前記規格化強度の成分比との少なくとも一方により前記人体の所定動作を検出する前記認識処理を行うことを特徴とする請求項1乃至8いずれか記載の便座装置。」とあるのを、「前記周波数分析部により抽出された信号の強度の総和もしくは所定の前記複数のフィルタバンクのうち所定数のフィルタバンクを通過した信号の強度の総和で、前記複数のフィルタバンクそれぞれを通過した信号の強度を規格化し規格化強度として出力する規格化部を備え、前記認識部は、前記規格化部から出力される前記複数のフィルタバンク毎の規格化強度から決まる周波数分布と前記規格化強度の成分比との少なくとも一方により前記人体の所定動作を検出する前記認識処理を行うことを特徴とする請求項2乃至8いずれか記載の便座装置。」に訂正する。
請求項9の記載を引用する請求項10~12も同様に訂正する。
(10)訂正事項10
請求項10に「請求項1乃至9いずれか記載の便座装置と、前記便座装置の前記本体が載置される前記便器とを備えることを特徴とする便器装置。」とあるのを、「請求項2乃至9いずれか記載の便座装置と、前記便座装置の前記本体が載置される前記便器とを備えることを特徴とする便器装置。」に訂正する。
請求項10の記載を引用する請求項11~12も同様に訂正する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0006】に「本発明の便座装置は、便器上に載置される本体と、前記本体に開閉自在に付設された便座と、人体を検出対象とする人検出器とを備え、前記人検出器は、無線信号を送信し、物体で反射した前記無線信号を受信して、前記物体の動きに応じたセンサ信号を出力するセンサ部と、前記センサ信号を周波数領域の信号に変換し、周波数帯域の異なる複数のフィルタバンク毎の信号として抽出する周波数分析部と、前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号の周波数分布と、前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号強度の成分比との少なくとも一方を検出データとし、前記検出データにより人体の所定動作を検出する認識処理を行う認識部と、前記人体の所定動作に対応する周波数分布と、前記人体の所定動作に対応する信号強度の成分比との少なくとも一方をサンプルデータとして格納するデータベースとを備え、前記認識部は、前記検出データを前記サンプルデータと照合することによって前記認識処理を行い、少なくとも前記便器が設置された空間に侵入した前記人体の存否を検出する第1の検出機能と、前記便座に着座した前記人体の存否を検出する第2の検出機能とを有することを特徴とする。」と記載されているのを、「本発明の便座装置は、便器上に載置される本体と、前記本体に開閉自在に付設された便座と、人体を検出対象とする人検出器とを備え、前記人検出器は、無線信号を送信し、物体で反射した前記無線信号を受信して、前記物体の動きに応じたセンサ信号を出力するセンサ部と、前記センサ信号を周波数領域の信号に変換し、周波数帯域の異なる複数のフィルタバンク毎の信号として抽出する周波数分析部と、前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号の周波数分布と、前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号強度の成分比との少なくとも一方を検出データとし、前記検出データにより人体の所定動作を検出する認識処理を行う認識部と、前記人体の所定動作に対応する周波数分布と、前記人体の所定動作に対応する信号強度の成分比との少なくとも一方をサンプルデータとして格納するデータベースとを備え、前記認識部は、前記検出データを前記サンプルデータと照合することによって前記認識処理を行い、少なくとも前記便器が設置された空間に侵入した前記人体の存否を検出する第1の検出機能と、前記便座に着座した前記人体の存否を検出する第2の検出機能とを有する。前記サンプルデータには、第1のサンプルデータと、前記第1のサンプルデータとは異なる第2のサンプルデータとがある。前記認識部は、前記第1の検出機能を実行する場合には前記第1のサンプルデータを用い、前記第2の検出機能を実行する場合には前記第2のサンプルデータを用いることを特徴とする。」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、引用関係を解消して、請求項1を引用しないものとするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3~10について
訂正事項3~10は、上記訂正事項2の訂正に伴って、引用する請求項を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3~10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(4)訂正事項11について
訂正事項11は、上記訂正事項1の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項11は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。
(5)一群の請求項について
訂正前の請求項1~12は、請求項2~12が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~12は、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。
(6)明細書の訂正と関係する一群の請求項について
明細書についての訂正である訂正事項11は、一群の請求項である請求項1~12についての訂正である訂正事項1との整合性をとるための訂正である。したがって、訂正事項11は、一群の請求項である請求項1~12に関連する訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する126条第4項に適合するものである。
3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1~11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1、〔2~12〕について訂正を認める。
訂正後の請求項2~12に係る訂正事項1、3~10は、引用関係の解消を目的とする訂正又は明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項2~12について訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項〔2~12〕について請求項ごとに訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の請求項2~12に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項2~12に係る発明(以下、「本件発明2」等、あるいはまとめて「本件発明」という。)は、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)
「【請求項2】
便器上に載置される本体と、
前記本体に開閉自在に付設された便座と、
人体を検出対象とする人検出器とを備え、
前記人検出器は、
無線信号を送信し、物体で反射した前記無線信号を受信して、前記物体の動きに応じたセンサ信号を出力するセンサ部と、
前記センサ信号を周波数領域の信号に変換し、周波数帯域の異なる複数のフィルタバンク毎の信号として抽出する周波数分析部と、
前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号の周波数分布と、前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号強度の成分比との少なくとも一方を検出データとし、前記検出データにより人体の所定動作を検出する認識処理を行う認識部と、
前記人体の所定動作に対応する周波数分布と、前記人体の所定動作に対応する信号強度の成分比との少なくとも一方をサンプルデータとして格納するデータベースとを備え、
前記認識部は、前記検出データを前記サンプルデータと照合することによって前記認識処理を行い、少なくとも前記便器が設置された空間に侵入した前記人体の存否を検出する第1の検出機能と、前記便座に着座した前記人体の存否を検出する第2の検出機能とを有し、
前記サンプルデータには、第1のサンプルデータと、前記第1のサンプルデータとは異なる第2のサンプルデータとがあり、
前記認識部は、前記第1の検出機能を実行する場合には前記第1のサンプルデータを用い、前記第2の検出機能を実行する場合には前記第2のサンプルデータを用いることを特徴とする便座装置。
【請求項3】
前記認識部は、前記複数のフィルタバンクの各信号強度の総和が閾値以上である湯合、前記認識処理を行う、もしくは前記認識処理の結果を有効とし、
前記閾値には、第1の閾値と、前記第1の閾値とは異なる第2の閾値とがあり、
前記認識部は、前記第1の検出機能を実行する場合には前記閾値として前記第1の閾値を用い、前記第2の検出機能を実行する場合には前記閾値として前記第2の閾値を用いることを特徴とする請求項2記載の便座装置。
【請求項4】
前記複数のフィルタバンクを通過した信号から背景信号を除去する背景信号除去部を備えることを特徴とする請求項2又は3記載の便座装置。
【請求項5】
前記センサ信号に基づいて前記人体までの距離を測定する測距部を備え、前記認識部は、前記測距部の測定結果も併せて用いて前記認識処理を行うことを特徴とする請求項2乃至4いずれか記載の便座装置。
【請求項6】
前記センサ信号に基づいて前記人体の移動方向を検出する方向検出部を備え、前記認識部は、前記方向検出部の検出結果も併せて用いて前記認識処理を行うことを特徴とする請求項2乃至5いずれか記載の便座装置。
【請求項7】
前記センサ信号に基づいて、前記便座に着座した前記人体の呼吸の状態を検出する呼吸検出部を備えることを特徴とする請求項2乃至6いずれか記載の便座装置。
【請求項8】
前記センサ部は、前記便座に着座した前記人体の背面と向き合うように設けられることを特徴とする請求項2乃至7いずれか記載の便座装置。
【請求項9】
前記周波数分析部により抽出された信号の強度の総和もしくは所定の前記複数のフィルタバンクのうち所定数のフィルタバンクを通過した信号の強度の総和で、前記複数のフィルタバンクそれぞれを通過した信号の強度を規格化し規格化強度として出力する規格化部を備え、
前記認識部は、前記規格化部から出力される前記複数のフィルタバンク毎の規格化強度から決まる周波数分布と前記規格化強度の成分比との少なくとも一方により前記人体の所定動作を検出する前記認識処理を行う
ことを特徴とする請求項2乃至8いずれか記載の便座装置。
【請求項10】
請求項2乃至9いずれか記載の便座装置と、前記便座装置の前記本体が載置される前記便器とを備えることを特徴とする便器装置。
【請求項11】
前記人検出器の検出結果に基づいて、前記便器内にて水を吐出する給水装置の動作を制御するコントローラを備えることを特徴とする請求項10記載の便器装置。
【請求項12】
前記便器内に供給する水を貯める水洗タンクを、前記便座に着座した前記人体の背面と向き合うように備え、
前記センサ部は、前記水洗タンクに設けられる
ことを特徴とする請求項11記載の便器装置。」
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1~12に係る特許に対して平成30年4月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証~甲第5号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
甲第1号証:特開2013-142221号公報
甲第2号証:国際公開2013/183271号
甲第3号証:特開2003-121534号公報
甲第4号証:特開2002-71825号公報
甲第5号証:特開2005-90192号公報
3 刊行物の記載
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、図面と共に次の事項が記載されている。(下線は当決定で付与。以下同じ。)
(ア)「【請求項1】
便座と、
放射した電波の反射波によって被検知体に関する情報を取得するドップラーセンサと、
前記ドップラーセンサから出力された検知信号に基づいて使用者の前記便座からの離座を判定し制御信号を出力する制御部と、
前記制御信号に基づいて制御される被制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記検知信号から前記離座に近似する信号を抽出する第1のステップを実行した後、前記抽出した検知信号と、格納した離座波形のサンプルデータと、を比較し前記離座を判定する第2のステップを実行することを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記第1のステップは、所定数の波数が前記検知信号に存在するか否かを前記制御部が判定する波数判定ステップを有することを特徴とする請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記所定数は、前記使用者が離座動作において前記便座から立ち上がる際に検知信号に生ずる振動の波数に設定されたことを特徴とする請求項2記載のトイレ装置。
・・・
【請求項6】
前記制御部は、前記使用者が前記便座から実際に離座したときに前記ドップラーセンサから出力される前記検知信号の波形を前記サンプルデータとして記憶することを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記検知信号の振幅の大きさと第1の閾値とを比較し前記使用者のトイレルームへの入室を判定し、
前記検知信号の振幅の大きさと第2の閾値とを比較し前記使用者の前記便座への着座を判定し、
前記検知信号の振幅の大きさと第3の閾値とを比較し前記使用者の前記トイレルームからの退室を判定することを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、トイレ装置に関する。
・・・
【0006】
着座検知について誤検知が生ずる場合とは、例えば、使用者が便座に着座していないにもかかわらず使用者が便座に着座しているとセンサが判断する場合や、使用者が便座に着座しているにもかかわらず使用者が便座に着座していないとセンサが判断する場合などである。使用者が便座に着座していないにもかかわらず使用者が着座しているとセンサが判断すると、例えば、「おしり洗浄」の動作が禁止されず実行可能となる。その結果として、間違って「おしり洗浄」のスイッチを操作したときに、使用者や床に洗浄水がかかる。一方、使用者が便座に着座しているにもかかわらず使用者が着座していないとセンサが判断すると、「おしり洗浄」の動作が禁止される。その結果として、使用者が「おしり洗浄」のスイッチを操作しても、「おしり洗浄」が実行されない。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、制御部への負荷を抑えつつより高い精度の離座判定を実行することができる、あるいはトイレ装置の美観を向上させることができるトイレ装置を提供することを目的とする。」
(イ)「【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置を表す斜視模式図である。
また、図2および図3は、本実施形態にかかるトイレ装置の要部構成を表すブロック図である。
また、図4は、本実施形態のドップラーセンサの設置位置と送信波の放射方向とを表す平面模式図である。
なお、図4(a)は、使用者が便器の前に立った状態を例示する平面模式図である。図4(b)は、使用者が便座に着座した状態を例示する平面模式図である。
【0026】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0027】
図2に表したように、ケーシング400の内部には、ドップラーセンサ410と、制御部420と、被制御部401と、が設けられている。
ドップラーセンサ410は、マイクロ波あるいはミリ波などの高周波の電波を放射(送信)し、放射した電波の被検知体からの反射波を受信する。そして、ドップラーセンサ410は、被検知体の有無や状態を検知し、その検知信号を出力する。制御部420は、ドップラーセンサ410から出力された検知信号に基づいて制御信号を出力する。ドップラーセンサ410および制御部420については、後に詳述する。
・・・
【0031】
図2に表したように、ドップラーセンサ410には、アンテナ412と、送信部414と、受信部416と、ミキサ部418と、が設けられている。送信部414に接続されたアンテナ412からは、高周波、マイクロ波あるはミリ波などの10kHz~100GHzの周波数帯の電波が放射される。具体的には、アンテナ412からは、例えば24.15GHzの周波数を有する送信波T1が放射される。人体などの被検知体からの反射波または透過波T2は、アンテナ412を経由して受信部416に入力される。ここで、アンテナは、図2に表したように、送信側と受信側とを共通としてもよく、または、図3に表したように、送信部414にはアンテナ412aを接続し、受信部416にはアンテナ4
12bを接続してもよい。
【0032】
送信波の一部と受信波とは、ミキサ部418にそれぞれ入力されて合成され、例えばドップラー効果が反映された出力信号が出力される。ミキサ部418から出力された検知信号は、制御部420に出力される。制御部420には、フィルタ421と、周波数や波数や振幅値などを検出する物理量検出部422と、判定部423と、記憶手段427と、駆動制御部428と、が設けられている。判定部423は、離座判定部424と、着座判定部425と、入退室判定部426と、を有する。ミキサ部418から出力された検知信号は、まずフィルタ421において高周波数成分が取り除かれる。この際のフィルタリング周波数は、例えば200Hzとすることができる。
【0033】
なお、本実施形態においては、フィルタ421は設けなくてもよい。また、本実施形態の制御部は、図2に表したように、フィルタ421と、物理量検出部422と、判定部423と、記憶手段427と、駆動制御部428と、を含む1つの制御部420として設けられていてもよい。あるいは、本実施形態の制御部は、図3に表したように、第1の制御部(駆動制御部)420aと、フィルタ421と物理量検出部422と判定部423と記憶手段427とを含む第2の制御部420bと、に別体として分割されていてもよい。
【0034】
ミキサ部418から出力された検知信号は、周波数の低いベースラインに周波数の高い信号が重畳した波形を有する。高周波数成分には、ドップラー効果に関する情報が含まれる。すなわち、人体などの被検知体が移動すると、ドップラー効果によって反射波の波長がシフトする。ドップラー周波数ΔF(Hz)は、下記の式(1)により表すことができる。
ΔF=Fs-Fb=2×Fs×v/c 式(1)
但し、Fs:送信周波数(Hz)
Fb:反射周波数(Hz)
v:物体の移動速度(m/s)
c:光速(=300×106m/s)
ドップラーセンサ410に対して被検知体が相対的に移動すると、式(1)で表されるように、その速度vに比例した周波数ΔFを含む出力信号が得られる。出力信号は周波数スペクトラムを有し、スペクトラムのピークに対応するピーク周波数と移動体の速度vとの間には相関関係がある。従って、ドップラー周波数ΔFを測定することにより速度vを求めることができる。なお、日本においては、人体を検知する目的には10.50~10.55GHzまたは24.05~24.25GHzの周波数が使用できる。
【0035】
本実施形態においては、図4(a)および図4(b)に表したように、ドップラーセンサ410は、例えば便座200の後方に設けられている。具体的には、図1に表したように、便座200の後方であってケーシング400の内部の前方部に設けられている。
【0036】
なお、本願明細書においては、便座200に座った使用者からみて前方を「前方」とし、便座200に座った使用者からみて後方を「後方」とする。また、後方を向いて便器800の前に立った使用者からみて右側を「右側方」とし、左側を「左側方」とする。
【0037】
図4(a)および図4(b)に表したように、ドップラーセンサ410は、前方へ向けて送信波T1を放射している。そして、ドップラーセンサ410は、便器800の前から便座200へ向かって移動し便座200に着座する使用者850を前述したドップラー効果あるいはドップラー周波数ΔFにより検知することができる。
【0038】
ドップラーセンサ410が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が操作部500を操作すると、洗浄ノズル473を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、洗浄ノズル473がボウル801内に進出した状態を表している。
【0039】
洗浄ノズル473の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水口474が設けられている。そして、洗浄ノズル473は、その先端部に設けられた吐水口474から水を噴射して、便座200に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加温されたお湯も含むものとする。
【0040】
次に、使用者がトイレ室に入室してから退室するまでの一連の動作と、ドップラーセンサ410から出力された検知信号の電圧値および振幅値と、の関係について、図面を参照しつつ説明する。
図5は、使用者の動作と、ドップラーセンサの検知信号と、の関係を例示する概念図である。
なお、図5(a)は、ドップラーセンサから出力された検知信号の電圧値を例示するグラフ図である。すなわち、同図の縦軸は、ドップラーセンサから出力された検知信号の電圧値を表し、同図の横軸は、時間を表す。図5(b)は、ドップラーセンサから出力された検知信号の振幅値を例示するグラフ図である。すなわち、同図の縦軸は、ドップラーセンサから出力された検知信号の振幅値を表し、同図の横軸は、時間を表す。
【0041】
まず、使用者がトイレ室の前に立ち(動作M11)、トイレ室の扉を開けてトイレ室に入室すると(動作M13:入室動作)、ドップラーセンサ410から出力された検知信号(ドップラー信号)の電圧値は、基準値を中心として振動を始める。そして、使用者がトイレ装置に近づくと、ドップラーセンサ410から出力された検知信号の振幅値は、徐々に増加する(動作M13:入室動作)。
【0042】
ここで、図5(b)に表したように、検知信号の振幅値が入室動作に関する閾値(入室閾値:第1の閾値)以上となると、制御部420(入退室判定部426)は、使用者がトイレ室に入室したと判定する(時間t11)。つまり、本実施形態では、制御部420(入退室判定部426)は、検知信号の振幅値(振幅の大きさ)と第1の閾値とを比較し使用者の入室を判定する。
【0043】
続いて、使用者が脱衣動作を行い便座200に着座するときには、検知信号の電圧値は、入室動作のときの検知信号の電圧値よりも大きく振動する(動作M15:着座動作)。つまり、使用者が便座200に着座するときには、検知信号の振幅値は、入室動作のときの検知信号の振幅値よりも大きくなる(動作M15:着座動作)。
【0044】
ここで、図5(b)に表したように、検知信号の振幅値が着座動作に関する閾値(着座閾値:第2の閾値)以上となると、制御部420(着座判定部425)は、使用者が便座200に着座したと判定する(時間t13)。つまり、本実施形態では、制御部420(着座判定部425)は、検知信号の振幅値(振幅の大きさ)と第2の閾値とを比較し使用者の便座200への着座を判定する。
【0045】
続いて、使用者が着座中に静止しているときには、検知信号の電圧値は、振動しない(動作M17:着座/静止)。これは、図2に関して前述した式(1)において、移動体(使用者)の速度vが略ゼロとなり、ドップラー周波数ΔFが略ゼロとなるためである。そのため、使用者が着座中に静止しているときには、検知信号の振幅値は、略ゼロとなる。
【0046】
一方、使用者が着座中に身体を例えば前傾させたり、揺らしたり、捻ったりするなどの動作を行うと、検知信号の電圧値は、基準値を中心として振動を始める(動作M19:着座/動作)。そして、図5(b)に表したように、検知信号の振幅値は、第2の閾値と略同じ大きさとなる場合がある。使用者の着座中の動作については、後に詳述する。
続いて、使用者が着座中に再び静止すると、検知信号の電圧値は、振動しない(動作M21:着座/静止)。そのため、使用者が着座中に再び静止すると、検知信号の振幅値は、再び略ゼロとなる。
【0047】
続いて、使用者が便座200から離座して立ち上がると、検知信号の電圧値は、基準値を中心として振動を始める(動作M23:離座動作)。そして、使用者が着衣動作を行い便座200から遠ざかると、検知信号の振幅値は、徐々に減少する(動作M23:離座動作)。続いて、使用者がトイレ室の扉を開けてトイレ室から退室すると、検知信号の振幅値は、離座動作のときの検知信号の振幅値よりも減少する(動作M25:退室動作)。
【0048】
ここで、図5(b)に表したように、検知信号の振幅値が退室動作に関する閾値(退室閾値:第3の閾値)以下となると、制御部420(入退室判定部426)は、使用者がトイレ室から退室したと判定する(時間t15)。つまり、本実施形態では、制御部420(入退室判定部426)は、検知信号の振幅値(振幅の大きさ)と第3の閾値とを比較し使用者の退室を判定する。
なお、退室動作に関する退室閾値(第3の閾値)は、図5に表したように入室動作に関する入室閾値(第1の閾値)と異なっていてもよいし、あるいは同じであってもよい。
【0049】
このように、使用者が着座中に身体を例えば前傾させたり、揺らしたり、捻ったりするなどの動作を行うと、検知信号の電圧値は、比較的大きい振動を行う。つまり、検知信号の振幅値は、比較的大きくなる。一方で、使用者が着座中に再び静止すると、検知信号の電圧値は、振動しない。つまり、検知信号の振幅値は、略ゼロとなる。そのため、前述した入室判定や、着座判定や、退室判定のように、制御部420が所定の閾値に基づいて離座判定や着座中判定を行うと、誤検知(誤判定)を行う場合がある。
【0050】
離座判定や着座中判定について誤検知(誤判定)が生ずると、制御部420は、例えば、使用者が便座200に着座していないにもかかわらず使用者が便座200に着座していると判定したり、使用者が便座200に着座しているにもかかわらず使用者が便座200に着座していないと判定したりする。使用者が便座200に着座していないにもかかわらず使用者が便座200に着座していると制御部420が判定すると、例えば、「おしり洗浄」の動作が禁止されず実行可能となる。そうすると、使用者や床に洗浄水がかかる場合がある。一方、使用者が便座200に着座しているにもかかわらず使用者が便座200に着座していないと制御部420が判定すると、使用者が「おしり洗浄」を実行しても「おしり洗浄」の動作が禁止される。そうすると、使用者は、洗浄水を利用した「おしり洗浄」を実行できない場合がある。
【0051】
これに対して、本実施形態にかかるトイレ装置の制御部420は、ドップラーセンサから出力された検知信号から離座に近似する信号を抽出する第1のステップを実行する。その後、制御部420は、第1のステップにおいて抽出した検知信号の波形と、記憶手段427に格納された離座波形のサンプルデータと、を比較し離座を判定する第2のステップを実行する。
【0052】
これによれば、制御部420は、第1のステップにおいて抽出された離座に近似する信号のみを第2のステップにおいて離座波形のサンプルデータと比較することができる。そのため、制御部420への負荷を抑えつつより高い精度の離座検知(離座判定)を実行することができる。また、ドップラーセンサ410を使用することで、光電センサのために
必要であった窓部を省略することができる。そのため、トイレ装置の美観を向上させることができる。
【0053】
また、制御部420は、検知信号の振幅の大きさと閾値とを比較することで、離座判定以外の判定、すなわち入室判定、着座判定、および退室判定を行っている。つまり、制御部420は、離座判定の動作よりも簡略化された動作により入室判定、着座判定、および退室判定を行っている。そのため、制御部420にかかる負荷を抑えることができる。
・・・
【0059】
・・・
発振波長は、ドップラーセンサ410が放射する電波の振動の周波数(発振周波数)により決定される。そのため、制御部420は、検知信号の電圧値の波形に表れる振動の波数を数えることで、使用者の移動距離を推定することができる。これについては、後に詳述する。
・・・
【0091】
このように、制御部420は、波形の最初の振幅値から最後の振幅値への減衰率が所定値以下であるか否かを判定することで、使用者がドップラーセンサ410から遠ざかったか否かを判定することができる。なお、図12に表したように、ステップS109~ステップS113の動作は、図5に関して前述した第1のステップに相当する。
・・・
【0094】
記憶手段427は、使用者が便座200から実際に離座したときにドップラーセンサ410から出力される検知信号の波形をサンプルデータとして記憶することができる。例えば、制御部420(離座判定部424)は、予め記憶手段427に記憶されたサンプルデータに基づいて、離座判定を行う。ここで、制御部420は、使用者が便座200から離座したと判定していないにもかかわらず、所定時間が経過しても検知信号がドップラーセンサ410から出力されない場合には、過去の検知信号の波形を参照することができる。そして、制御部420は、過去の検知信号の波形を参照し、使用者が便座200から実際に離座したと推定できるときの検知信号の波形をサンプルデータとして記憶手段427に格納することができる。つまり、制御部420は、学習機能を有する。これによれば、制御部420は、使用者の動作の癖などを学習し、より高い精度の離座判定を実行することができる。」
(ウ)図2から、制御部420は、離席判定部424、着座判定部425、入退室判定部426からなる判定部423、記憶手段427及び駆動制御部428を有することが看て取れる。
イ 甲第1号証に記載された発明の認定
甲第1号証には、上記アを踏まえると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
甲1発明
「便器と、その上に設けられた衛生洗浄装置と、を備え、衛生洗浄装置は、ケーシングと、便座と、便蓋と、を有し、便座と便蓋とは、ケーシングに対して開閉自在にそれぞれ軸支されており、
放射した電波の反射波によって被検知体に関する情報を取得するドップラーセンサと、
ドップラーセンサは、被検知体の有無や状態を検知し、その検知信号を出力し、
ドップラーセンサから出力された検知信号に基づいて使用者の前記便座からの離座を判定し制御信号を出力する制御部と、
前記制御信号に基づいて制御される被制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記検知信号から前記離座に近似する信号を抽出する第1のステップを実行した後、前記抽出した検知信号と、格納した離座波形のサンプルデータと、を比較し前記離座を判定する第2のステップを実行し、
前記制御部は、
前記検知信号の振幅の大きさと第1の閾値とを比較し前記使用者のトイレルームへの入室を判定し、
前記検知信号の振幅の大きさと第2の閾値とを比較し前記使用者の前記便座への着座を判定し、
前記検知信号の振幅の大きさと第3の閾値とを比較し前記使用者の前記トイレルームからの退室を判定し、
前記制御部は、離席判定部、着座判定部、入退室判定部からなる判定部、記憶手段、及び駆動制御部を有し、
記憶手段は、使用者が便座から実際に離座したときにドップラーセンサから出力される検知信号の波形をサンプルデータとして記憶することができる、
トイレ装置」
(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)「[0001]本発明は、電波センサからのセンサ信号を信号処理する信号処理装置に関するものである。」
(イ)「[0013] 本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、検知対象以外の物体の動きに起因した誤検出を低減することが可能な信号処理装置を提供することにある。
[0014] 本発明に係る第1の形態の信号処理装置は、物体で反射された電波に応じたセンサ信号を周波数領域の信号に変換し周波数帯域の異なるフィルタバンクの群における前記フィルタバンク毎の信号として抽出する周波数分析手段と、前記周波数分析手段により抽出された信号の総和もしくは所定の複数の前記フィルタバンクを通過した信号の強度の総和で、前記各フィルタバンクそれぞれを通過した信号の強度を規格化し規格化強度として出力する規格化手段と、前記規格化手段から出力される前記フィルタバンク毎の規格化強度から決まる周波数分布もしくは前記規格化強度の成分比との少なくとも一方により前記物体を識別する認識処理を行う認識手段と、を備える。
[0015] 本発明に係る第2の形態の信号処理装置は、第1の形態において、前記センサ信号を増幅する増幅部と、前記増幅部によって増幅されたセンサ信号をディジタルのセンサ信号に変換して出力するA/D変換部と、を備える。前記周波数分析手段は、前記A/D変換部から出力されるセンサ信号を周波数領域の信号に変換し前記フィルタバンクの群における前記フィルタバンク毎の信号として抽出するように構成される。
[0016] 本発明に係る第3の形態の信号処理装置では、第1または第2の形態において、前記周波数分析手段が、前記A/D変換部から出力されるセンサ信号を離散コサイン変換することで前記周波数領域の信号に変換する機能を有するものである。前記各フィルタバンクの各々が複数の周波数ビンを有する。前記信号処理装置は、前記周波数分析手段と前記規格化手段との間に、前記各フィルタバンク毎に前記周波数ビン毎の信号の強度を周波数領域において平滑化処理する機能と、前記各フィルタバンク毎に前記周波数ビン毎の信号の強度を時間軸方向において平滑化処理する機能との少なくとも一方を有する平滑化処理手段を備える。
[0017] 本発明に係る第4の形態の信号処理装置は、第1~第3の形態のいずれか1つにおいて、前記フィルタバンクを通過した信号から背景信号を除去する背景信号除去手段を備える。」
(ウ)「[0042]電波センサ1としては、所定周波数の電波を検知エリアに向けて送信して、検知エリア内で動いている物体で反射された電波を受信し、送信した電波と受信した電波との周波数の差分に相当するドップラ周波数のセンサ信号を出力するドップラセンサを用いている。したがって、センサ信号(電波センサ1から出力されるセンサ信号)は、物体の動きに対応するアナログの時間軸信号である。このように、電波センサ1は、所定の検知エリアに電波を送信する。電波センサ1は、検知エリアからの電波を受信すると、受信した電波に応じた信号であるセンサ信号(アナログのセンサ信号)を出力する。」
(エ)「[0049] 換言すれば、周波数分析手段5は、物体で反射された電波に応じたセンサ信号を周波数領域の信号に変換し、周波数領域の信号を周波数帯域の異なる複数のフィルタバンク5aの群(フィルタ)に通して複数のフィルタバンク5aにそれぞれ対応する複数の信号を抽出するように構成される。ここで、フィルタバンク5aに対応する信号とは、フィルタバンク5aを通過した信号を意味する。
[0050] このように、周波数分析手段5は、センサ信号(周波数領域の信号)を周波数軸において分割して、周波数帯域が異なる複数の信号を生成する。」
(オ)「[0055] また、信号処理装置2は、規格化手段6から出力されるフィルタバンク5a毎の規格化強度から決まる周波数分布により物体を認識する認識処理を行う認識手段7を備えている。つまり、認識手段7は、規格化手段6で求められた規格化強度により決定されるセンサ信号(周波数領域の信号)の規格化強度に関する特徴により物体を識別する認識処理を行うように構成される。ここで、センサ信号(周波数領域の信号)の規格化強度に関する特徴は、規格化手段6から出力されるフィルタバンク5a毎の規格化強度から決まる周波数分布、すなわち、センサ信号(周波数領域の信号)の規格化強度の周波数分布である。」
(カ)「[0071] 背景信号除去手段10は、例えば、フィルタバンク5aから出力される信号から背景信号を減算することで背景信号を除去するようにしてもよい。この場合、背景信号除去手段10は、例えば、各フィルタバンク5aそれぞれを通過した信号m1 、m2 、・・・(図9参照)の強度から、背景信号推定手段9で推定された背景信号の強度b1、b2、・・(図8参照)を減算する減算器により構成することができる。図10は、同一のフィルタバンク5a同士で信号から背景信号を減算することで得られた信号の強度を示している。ここで、左から1番目のフィルタバンク5aの信号の強度をL1とすれば、強度L1 は、下記の(8)式により求められる。」
(キ)「[0087] 認識手段7は、例えば、主成分分析(principal component analysis)によるパターン認識処理を行うことによって物体を識別するようにすることができる。この認識手段7は、主成分分析を用いた認識アルゴリズムに従って動作する。このような認識手段7を採用するには、あらかじめ、電波センサ1の検知エリアに検出対象の物体を含まない場合の学習サンプルデータ、検出対象の物体の異なった動きそれぞれに対応した学習サンプルデータを取得し、これら複数の学習データに対して主成分分析を施すことで得られたデータをデータベース(データベース装置)11に記憶させておく。ここにおいて、データベース11に記憶させておくデータは、パターン認識に利用するデータであり、物体の動きと射影ベクトル及び判別境界値(閾値)とを対応付けたカテゴリデータである。
[0088] ここでは、説明の便宜上、電波センサ1の検知エリアに検出対象の物体を含まない場合の学習サンプルデータに対応する規格化強度の周波数領域での分布が図15、検出対象の物体を含む場合の学習サンプルデータに対応する規格化強度の周波数領域での分布が図16であるとする。そして、図15では、各フィルタバンク5aそれぞれを通過した信号の規格化強度が、低周波側から順に、m10 、m20 、m30 、m40 及びm50 とする。図16では、各フィルタバンク5aそれぞれを通過した信号の規格化強度が、低周波側から順に、m11、m21、m31、m41及びm51とする。そして、図15,16のいずれにおいても、低周波側の3つのフィルタバンク5aそれぞれを通過した信号の規格化強度の総和を変量m1とし、高周波側の2つのフィルタバンク5aそれぞれを通過した信号の規格化強度の総和を変量m2 とする。要するに、図15では、変量m1、m2はそれぞれ下記の(19)及び(20)式により求められる。」
(ク)「[0092] 図17は、2つの変量m1 ,m2 を互いに直交する座標軸とした場合の2次元散布図と射影軸及び識別境界とをイメージ的に説明するために2次元で図示したものである。図17では、破線で囲んだ領域内の各散布点(図17中の“+”)の座標位置をμ0 (m2 ,m1 )、実線で囲んだ領域内の各散布点の座標位置をμ1 (m2 ,m1 )としている。主成分分析では、あらかじめ、電波センサ1の検知エリアに検出対象の物体を含まない場合の学習サンプルデータに対応するデータのグループGr0と、電波センサ1の検知エリアに検出対象の物体を含む場合の学習サンプルデータに対応するデータのグループGr1とを決める。そして、主成分分析では、図17において破線、実線で囲んだそれぞれの領域内の各散布点を射影軸上に射影したデータの分布(破線、実線で模式的に示してある)の平均値の間隔が最大となり、且つ、分散(variance)が最大となる条件で射影軸を決める。これにより、主成分分析では、学習サンプルごとに射影ベクトルを求めることができる。」
(ケ)「[0109] 認識手段7は、規格化手段6から出力されるフィルタバンク5a毎の規格化強度の成分比により物体を識別する認識処理を行うようにしてもよい。つまり、認識手段7は、規格化手段6で求められた規格化強度により決定されるセンサ信号(周波数領域の信号)の規格化強度に関する特徴により物体を識別する認識処理を行うように構成されていてもよい。ここで、センサ信号(周波数領域の信号)の規格化強度に関する特徴は、規格化手段6から出力されるフィルタバンク5a毎の規格化強度から決まる規格化強度の成分比、すなわち、センサ信号(周波数領域の信号)の規格化強度の成分比である。
[0110] このような認識手段7は、例えば、重回帰分析による認識処理を行うことによって物体を識別するようにすればよい。この場合、認識手段7は、重回帰分析を用いた認識アルゴリズムに従って動作する。
[0111] このような認識手段7を採用する場合には、あらかじめ、電波センサ1の検知エリア内での検出対象の物体の異なった動きそれぞれに対応した学習データを取得し、これら複数の学習データに対して重回帰分析を施すことで得られたデータをデータベース11に記憶させておく。重回帰分析によれば、図28に示すように、信号成分s1と信号成分s2と信号成分s3とが合成された合成波形Gsは、信号成分s1,s2,s3の種別、信号成分の数、各信号成分s1,s2,s3それぞれの強度が未知であっても、合成波形から各信号成分s1,s2,s3に分離推定することが可能である。図28中の〔S〕は、信号成分s1、s2、s3を行列要素とする行列を示し、〔S〕-1 は〔S〕の逆行列を意味し、Iは規格化強度の成分比(係数)を意味している。より詳しくは、Iは、規格化強度の成分比(係数)i1、i2、i3を行列要素とする行列を意味している。ここにおいて、データベース11に記憶させておくデータは、認識処理に利用するデータであり、物体の動きと信号成分s1,s2,s3とを対応付けたデータである。」
(コ)「[0114] なお、認識手段7では、上述の周波数分布の特徴及び規格化強度の成分比に基づいて検知対象の物体を識別するようにしてもよい。つまり、認識手段7は、規格化手段6で求められた規格化強度により決定されるセンサ信号(周波数領域の信号)の規格化強度に関する特徴により物体を識別する認識処理を行うように構成されていてもよい。ここで、センサ信号(周波数領域の信号)の規格化強度に関する特徴は、センサ信号(周波数領域の信号)の規格化強度の周波数分布および規格化強度の成分比である。」
(サ)「[0119] また、信号処理装置2は、規格化手段6による規格化前の複数の所定のフィルタバンク5aを1つのフィルタバンク群50とし(図34参照)、複数のフィルタバンク群50のそれぞれにおいて、規格化前の信号成分の強度の総和もしくは重み付け総和が所定値(Eth2)以上であるか否かを判定してもよい。すなわち、信号処理装置2は、いずれかのフィルタバンク群50において、規格化前の信号成分の強度の総和が所定値(Eth2)以上である場合のみ、認識手段7による認識処理を行うかもしくは認識手段による認識処理の結果を有効とする。または、信号処理装置2は、全てのフィルタバンク群50において、規格化前の信号成分の強度の総和もしくは重み付け総和が所定値(Eth2)以上である場合のみ、認識手段7による認識処理を行うかもしくは認識手段による認識処理の結果を有効としてもよい。以下、この判定処理を含む一連の処理について、図35のフローチャートにしたがって説明する。なお、以降、「規格化前の信号成分の強度の総和もしくは重み付け総和」を、単に「規格化前の信号成分の強度の総和」と称す。」
(シ)「[0175] また、本実施形態の信号処理装置2は、以下の第4の特徴を備えていてもよい。第4の特徴では、信号処理装置2は、フィルタバンク5aを通過した信号から背景信号を除去する背景信号除去手段10を備える。
[0176] また、本実施形態の信号処理装置2は、第4の特徴に加えて、以下の第5の特徴を備えていてもよい。第5の特徴では、背景信号除去手段10は、フィルタバンク5aを通過した信号から背景信号を減算することで背景信号を除去する。また、本実施形態の信号処理装置2は、第5の特徴に加えて、以下の第6および第7の特徴を選択的に備えていてもよい。第6の特徴では、背景信号除去手段10は、事前に得た各フィルタバンク5a毎における複数点の信号の時間軸上での平均値を背景信号として除去する。第7の特徴では、背景信号除去手段10は、フィルタバンク5a毎の直前の信号を背景信号として除去する。」
(ス)「[0182] また、本実施形態の信号処理装置2は、以下の第16の特徴を備えていてもよい。第16の特徴では、信号処理装置2は、規格化手段6による規格化前の複数のフィルタバンク5aの信号の強度の総和が所定値以上である場合のみ、認識手段7による認識処理を行うかもしくは認識手段7による認識処理の結果を有効とする。」
イ 甲第2号証に記載された技術の認定
甲第2号証には、上記アを踏まえると、次の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。
甲2技術
「電波センサからのセンサ信号を信号処理する信号処理装置であって、
物体で反射された電波に応じたセンサ信号を周波数領域の信号に変換し周波数帯域の異なるフィルタバンクの群における前記フィルタバンク毎の信号として抽出する周波数分析手段と、
前記周波数分析手段により抽出された信号の総和もしくは所定の複数の前記フィルタバンクを通過した信号の強度の総和で、前記各フィルタバンクそれぞれを通過した信号の強度を規格化し規格化強度として出力する規格化手段と、
前記規格化手段から出力される前記フィルタバンク毎の規格化強度から決まる周波数分布もしくは前記規格化強度の成分比との少なくとも一方により前記物体を識別する認識処理を行う認識手段と、
前記認識手段を採用する場合には、あらかじめ、電波センサの検知エリア内での検出対象の物体の異なった動きそれぞれに対応した学習データを取得し、これら複数の学習データに対して重回帰分析を施すことで得られたデータをデータベースに記憶させておき、データベースに記憶させておくデータは、認識処理に利用するデータであり、物体の動きと信号成分とを対応付けたデータであり、
規格化手段による規格化前の複数のフィルタバンクの信号の強度の総和が所定値以上である場合のみ、認識手段による認識処理を行うかもしくは認識手段による認識処理の結果を有効とし、
フィルタバンクを通過した信号から背景信号を除去する背景信号除去手段を備える、
信号処理装置。」
(3)甲第3号証について
甲第3号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 検知対象エリアに向けてマイクロ波を送信し、この検知対象エリア内に物体が存在する場合に、マイクロ波の反射波を受信して物体までの距離を計測するマイクロウエーブセンサにおいて、
上記計測された物体までの距離とその物体からの反射波の信号レベルとに基づいて物体の大きさを判別し、物体の大きさが所定以上である場合にのみ物体検知信号を発信する物体検知手段を備えていることを特徴とするマイクロウエーブセンサ。
【請求項2】 請求項1記載のマイクロウエーブセンサにおいて、
計測された物体までの距離に応じて、物体検知信号を発信する反射波の信号レベルの値が変更されたトリガレベルが予め設定されており、
物体検知手段は、このトリガレベルを超える信号レベルの反射波を受信したときにのみ物体検知信号を発信するよう構成されていることを特徴とするマイクロウエーブセンサ。
【請求項3】 請求項1または2記載のマイクロウエーブセンサにおいて、
検知対象とする物体は人体であって、
物体検知手段は、検知物体の大きさが人体以上である場合にのみ物体検知信号を発信するよう構成されていることを特徴とするマイクロウエーブセンサ。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可視光線よりも低周波の電磁波を用いた能動型のセンサであるマイクロウエーブセンサ(以下、「MWセンサ」という)に係る。特に、本発明は、検知物体を特定するのに有効なセンシング技術の改良に関するものである。」
ウ 「【0024】-物体検知判定部38の説明-
次に、コンパレータ36,37からの出力信号波形を受ける物体検知判定部38について説明する。この物体検知判定部38は、上記各コンパレータ36,37の出力信号波形を受け、これに基づいて検知物体(人体等)までの距離を計測するものである。また、この物体検知判定部38は、検知した物体からの反射波の信号レベルを認識し、上記計測した検知物体までの距離と、この信号レベルとに基づいて物体の大きさを判別し、物体の大きさが所定以上の大きさである場合にのみ物体検知信号を発信するようになっている。
【0025】具体的には、物体までの距離とその物体からの反射波の信号レベルとを関連付けたトリガレベルを予め設定しておき、反射波の受信レベルがこのトリガレベルを超える状況であるときにのみ物体検知判定部38から物体検知信号が発信(発報)されるようになっている。このトリガレベルとしては、図2に実線で示すように、検知物体までの距離が長くなるほど、物体の検知判断を行う信号レベルを次第に小さくしていくように設定している。尚、このトリガレベルの傾斜角度は、センサの設置環境や受信アンテナの指向性などに応じて設定されている。」
(4)甲第4号証について
甲第4号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 トイレ、洗面所、キッチン、風呂、シャワー、等の生活シーンで、マイクロ波を送信波とし、マイクロ波を受信する単一のアンテナと、前記アンテナで受信されたマイクロ波を検波する検波手段と、変化成分検出手段の出力を所定位置と比較する比較手段と、前記比較手段からの信号により、人の存在と、人の生体情報を検出する手段とを有するマイクロ波利用人体検出装置。
【請求項2】 前記検波手段は、送信に対する反射波のドップラーシフトを検出するドップラーセンサーを備えることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波利用人体検知装置。
【請求項3】 前記検波手段と比較手段によって得られる信号は、人間の脈拍に同期した信号であることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波利用人体検知装置。
【請求項4】 前記検波手段と比較手段によって得られる信号は、人間の呼吸動作に同期した信号であることを特徴とする請求項1記載のマイクロ波利用人体検知装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人体検出装置に関わり、特にドップラー効果により人体検出と微少な脈動を捕らえること出来る装置に関わる。
【0002】
【従来の技術】従来、人の存在を検知するためには人が発する赤外線を捕らえる焦電センサーを用いたものや、赤外線をアクティブに発光して反射光を捕らえる事で人体の検知が行えるものが一般的で、その他にカメラのように三角測量法による測距情報であったり、音波の反射で対象物を捕らえたりするものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来例では、人体検知手段として単一機能のみでいずれも対象物を捕らえるだけの機能しか有しておらず、他の機能を持つ事が出来なかった。そのため、機能毎の処理回路を準備する必要があり、スペース、組み立て性に問題があった。
【0004】本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、小型軽量な人体検出手段に検知された人の心拍、呼吸の動作も検知できる人体センサーの提供する事にある。」
イ 「【0015】第3図はマイクロ波の受発信機をトイレに組み込んだもので、第6図に示すように肺や、心臓の動きによって人体の胸部が動く事によるドップラー効果を選られる場所に設置できれば良い。便ブタ31内部、W/Lコントローラー32内部、便座33の内部、ロータンク34等の陶器の内部等が考えられる。また不図示ではあるが、トイレの壁天井に設置されても同様な効果である。」
(5)甲第5号証について
甲第5号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
便器本体の後部上側に便器の洗浄水を貯える洗浄タンクを設置するとともに、該洗浄タンクの前側位置に人体検知センサとしてのドップラセンサを前方に向けて配置し、該ドップラセンサによる人体検知に基づき、制御部において各種機器を動作制御するようになしたトイレ設備において、
前記ドップラセンサから前記洗浄タンク内部に向けての電波の透過を遮断する電波遮断層を設けたことを特徴とするトイレ設備。
【請求項2】
請求項1において、前記電波遮断層は前記洗浄タンクに直接設けてあることを特徴とするトイレ設備。
【請求項3】
請求項1において、前記電波遮断層は前記ドップラセンサに且つその後面に直接設けてあることを特徴とするトイレ設備。
【請求項4】
便器本体の後部上側に便器の洗浄水を貯える洗浄タンクを設置するとともに、該洗浄タンクの前側位置に人体検知センサとしてのドップラセンサを前方に向けて配置し、該ドップラセンサによる人体検知に基づき、制御部において各種機器を動作制御するようになしたトイレ設備において、
便器洗浄に基づいて前記洗浄タンク内部の洗浄水の水位が変動する間、前記制御部において前記ドップラセンサによる検知を実質的に停止することを特徴とするトイレ設備。
【請求項5】
請求項4において、前記制御部は洗浄開始を表す信号の入力から前記洗浄タンク内が満水化したことを表す信号の入力までの間、前記ドップラセンサによる検知を実質的に停止することを特徴とするトイレ設備。
【請求項6】
請求項4において、前記制御部は洗浄開始を表す信号の入力から予め定めた設定時間を経過するまでの間、前記ドップラセンサによる検知を実質的に停止することを特徴とするトイレ設備。
【請求項7】
請求項4~6の何れかにおいて、前記制御部において前記ドップラセンサを動作停止若しくは感度低下させ又は該ドップラセンサからの検知信号を無効とすることによって該ドップラセンサによる検知を実質的に停止することを特徴とするトイレ設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はドップラセンサを人体検知センサとして備えたトイレ設備に関し、特に便器の洗浄水を貯える洗浄タンクを備えたものに関する。」
イ 「【0036】
尚、ドップラセンサ54は図2に示しているようにタンクカバー22で囲まれた内側の
洗浄タンク20の前側位置に配置されており、且つこれから発する送信波(電波)のビームが便器から見て正面方向を向くようにその取付けの向きが選ばれている。
【0037】
ドップラセンサ54は、検知対象即ち使用者に対して送信波(10GHz程度の高周波の電波)を送り、そして使用者が移動しているときに使用者からの反射波の周波数が変化する、いわゆるドップラ効果に基づいて移動する使用者を検知するもので、図2に示しているようにセンサ素子58と、センサ素子58からの信号を処理する信号処理回路を搭載したセンサ基板59と、樹脂製のセンサケーシング60とを有している。
センサ素子58とセンサ基板59とはこのセンサケーシング60内部に収容されている。」
4 取消理由通知に記載した取消理由(第29条第2項)について
(1)本件発明2について
ア 対比
(ア)甲1発明の「便器」、「便座」、「ケーシング」は、それぞれ本件発明2の「便器」、「便座」、「本体」に相当する。甲1発明の「トイレ装置」は、「便座」等の機器を有しているから、本件発明2の「便座装置」を含んでいる。
(イ)甲1発明の「放射した電波の反射波によって被検知体に関する情報を取得するドップラーセンサ」は「被検知体の有無や状態を検知し、その検知信号を出力」するので、甲1発明の「ドップラーセンサ」は、本件発明2の「無線信号を送信し、物体で反射した前記無線信号を受信して、前記物体の動きに応じたセンサ信号を出力するセンサ部」に相当する。
(ウ)甲1発明の「制御部」は、「ドップラーセンサから出力された検知信号に基づいて使用者の前記便座からの離座を判定し制御信号を出力する」と共に「サンプルデータと、を比較し前記離座を判定する」から、本件発明2の「認識部」と、「センサ信号に係るデータにより人体の所定動作を検出する認識処理を行う」点、及び「便座への人体の存否を検出するために、前記データを前記サンプルデータと照合することによって前記認識処理を行う」点で共通する。
(エ)甲1発明の「記憶手段」は「サンプルデータ」を記憶するから、甲1発明の「記憶手段」は、本件発明2の「データベース」と、「サンプルデータ」を「格納する」点で共通する。
(オ)甲1発明において「ドップラーセンサ」、「制御部」は「被検知体(使用者)の有無や状態を検知」「判定」しているから、甲1発明の「ドップラーセンサ」及び「制御部」は、本件発明2の「人体を検出対象とする人検出器」に相当する。
(カ)甲1発明において「制御部は、前記検知信号の振幅の大きさと第1の閾値とを比較し前記使用者のトイレルームへの入室を判定し、前記検知信号の振幅の大きさと第2の閾値とを比較し前記使用者の前記便座への着座を判定し」ているから、当該構成は、本件発明2の「少なくとも前記便器が設置された空間に侵入した前記人体の存否を検出する第1の検出機能と、前記便座に着座した前記人体の存否を検出する第2の検出機能とを有し」に相当する。
(キ)上記(ア)~(カ)から、本件発明2と甲1発明は、以下の点で、一致し相違する。
<一致点>
「便器上に載置される本体と、
前記本体に開閉自在に付設された便座と、
人体を検出対象とする人検出器とを備え、
前記人検出器は、
無線信号を送信し、物体で反射した前記無線信号を受信して、前記物体の動きに応じたセンサ信号を出力するセンサ部と、
センサ信号に係るデータにより人体の所定動作を検出する認識処理を行う認識部と、
サンプルデータを格納するデータベースとを備え、
前記認識部は、便座への人体の存否を検出するために、前記データを前記サンプルデータと照合することによって前記認識処理を行い、
少なくとも前記便器が設置された空間に侵入した前記人体の存否を検出する第1の検出機能と、前記便座に着座した前記人体の存否を検出する第2の検出機能とを有する、
便座装置。」
<相違点1>
センサ信号に係るデータに関して、本件発明2が「前記センサ信号を周波数領域の信号に変換し、周波数帯域の異なる複数のフィルタバンク毎の信号として抽出する周波数分析部」を有し、「前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号の周波数分布と、前記複数のフィルタバンク毎の信号に基づく信号強度の成分比との少なくとも一方を検出データとし」て用いているのに対し、甲1発明では、検知信号(センサ信号)を用いている点。
<相違点2>
サンプルデータに関して、本件発明2が「前記人体の所定動作に対応する周波数分布と、前記人体の所定動作に対応する信号強度の成分比との少なくとも一方」をサンプルデータとし、「サンプルデータには、第1のサンプルデータと、前記第1のサンプルデータとは異なる第2のサンプルデータとがあり、前記認識部は、前記第1の検出機能を実行する場合には前記第1のサンプルデータを用い、前記第2の検出機能を実行する場合には前記第2のサンプルデータを用いる」のに対して、甲1発明では「(便座からの)離座波形のサンプルデータ」を「ドップラーセンサから出力される検知信号の波形をサンプルデータ」として用いている点。
イ 判断
相違点1、2は関連しているので、併せて検討する。
甲第1号証の【0008】、【0053】によれば、甲1発明は、制御部への負荷を抑えつつ、離座判定のみサンプルデータを用いた判定を実行し、入室判定、着座判定等の他の判定については簡略化された判定を行うものであるから、当該他の判定について、サンプルデータを用いたような甲1発明における閾値比較よりも複雑になる判定を採用する動機付けはないというべきである。
したがって、相違点1に係る構成のような信号変換を行って検出データを得ることが、甲第2号証に記載されており、甲2技術を甲1発明に適用できたとしても、入室判定、着座判定についてまで、判定のためにサンプルデータを用いるようにする動機付けはなく、当業者が容易に想到しうる程度のこととはいえない。
また、甲第3号証~甲第5号証にも、相違点1、2に係る構成に関する記載はない。
申立人は、「甲第2号証には、サンプルデータとして、サンプルデータ(Gr0)と、このサンプルデータとは異なる別のサンプルデータ(Gr1)と、があることが記載されている。そして、甲1発明に甲第2号証の上記記載事項を適用した際、認識処理において、第1の検出機能を実行する場合には或るサンプルデータを用い、第2の検出機能を実行する場合には別のサンプルデータを用いることは、設計的事項にすぎない」(特許異議申立書27頁7行~12行)旨主張するが、上記で説示したように、甲1発明において、入室判定等の他の判定に対して、サンプルデータを用いた判定を採用する動機付けはないため、設計事項ということはできない。
よって、甲1発明において相違点1、2に係る本件発明2の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(2)本件発明3~12について
本件発明3~12は、本件発明2に従属し、本件発明2の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明2と同様の理由(上記(1)参照)により、甲1発明において、相違点1、2に係る本件発明3~12の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(3)まとめ
したがって、本件発明2~12は、甲1発明及び甲第2号証~甲第5号証に記載されたものから、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、それらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
5 請求項1に対する特許異議の申立てについて
上記第2のとおり、請求項1を削除する本件訂正が認められたので、請求項1に対する本件特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
したがって、請求項1に対する本件特許異議の申立ては、不適法な特許異議の申立てであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、平成30年4月13日付け取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項2~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1に対する本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-700105