特許異議申立
2026-700051
応対システム、情報端末、及び、制御方法
- 審判番号
- 2026-700051
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-076831
- 登録番号
- 7742548
- 請求日
- 2026年01月16日
- 審決日
- 2026年05月29日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【異議申立人】山田 芳男
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 鈴木 圭一郎
- 審判官 寺谷 大亮
- 分類
- P1651.121-Y (H04M) / P1651.536-Y (H04M) / P1651.537-Y (H04M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7742548号発明「応対システム、情報端末、及び、制御方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7742548号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7742548号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和3年4月28日の出願であって、令和7年9月11日にその特許権の設定登録がされ、同年9月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その全請求項(請求項1~9)に係る特許に対し、令和8年1月16日に特許異議申立人 山田 芳男(以下「申立人」という。)は、特許異議申立書を提出して特許異議申立てを行った。その後、令和8年2月20日に申立人は手続補正書(方式)を提出して特許異議申立書の補正を行った。
以下では、令和8年2月20日の手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書を単に「申立書」という。
第2 本件の特許請求の範囲と本件発明
本件の特許請求の範囲の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、その請求項に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
なお、後の参照の便宜のために、本件発明1、7及び8については、以下に示すように分説し、「発明特定事項1A」のようにして参照する。
【請求項1】
1A 集合施設に設けられたインターホンシステムを通じて第1情報を取得する第1取得部と、
1B 前記集合施設を訪れる来訪者の第2情報を取得する第2取得部と、
1C 取得された前記第1情報が所定の条件を満たしたときに、取得された前記第2情報に基づいて前記集合施設の共用部に設けられた扉の解錠及び開放の少なくとも一方を制御する動作モードを有する制御部とを備え、
1D 前記来訪者は、荷物の配達サービスを提供し、
1E 前記第2情報は、前記荷物に付与される伝票番号を含み、
1F 前記動作モードにおいて、前記第1情報が取得されてから、前記扉の解錠及び開放の少なくとも一方が制御されるまでの間、前記荷物の配達先の前記集合施設の専有部に設けられたインターホン親機から呼出音は出力されない、
1G 応対システム。
【請求項2】
前記第1情報は、前記来訪者の操作に基づいて入力される
請求項1に記載の応対システム。
【請求項3】
前記第1情報は、前記来訪者の音声及び前記来訪者の画像の少なくとも一方を含む
請求項1または2に記載の応対システム。
【請求項4】
前記第1情報は、前記来訪者の用件を示す情報を含み、
前記所定の条件は、前記第1情報が示す前記用件が所定の用件であるという条件を含む
請求項1~3のいずれか1項に記載の応対システム。
【請求項5】
前記第1情報は、前記来訪者の属性を示す情報を含み、
前記所定の条件は、前記第1情報が示す前記属性が所定の属性であるという条件を含む
請求項1~4のいずれか1項に記載の応対システム。
【請求項6】
前記第2情報は、前記来訪者の操作に基づいて入力される
請求項1~5のいずれか1項に記載の応対システム。
【請求項7】
7A 集合施設を訪れる来訪者の第1情報を取得する第1取得部と、
7B 前記来訪者の第2情報を取得する第2取得部と、
7C 取得された前記第1情報が所定の条件を満たしたときに、取得された前記第2情報に基づいて前記集合施設の共用部に設けられた扉の解錠及び開放の少なくとも一方を制御する動作モードを有する制御部とを備え、
7D 前記来訪者は、荷物の配達サービスを提供し、
7E 前記第2情報は、前記荷物に付与される伝票番号を含み、
7F 前記動作モードにおいて、前記第1情報が取得されてから、前記扉の解錠及び開放の少なくとも一方が制御されるまでの間、前記荷物の配達先の前記集合施設の専有部に設けられたインターホン親機から呼出音は出力されない、
7G 情報端末。
【請求項8】
8A 集合施設に設けられたインターホンシステムを通じて第1情報を取得する第1取得ステップと、
8B 前記集合施設を訪れる来訪者の第2情報を取得する第2取得ステップと、
8C 取得された前記第1情報が所定の条件を満たしたときに、取得された前記第2情報に基づいて前記集合施設の共用部に設けられた扉の解錠及び開放の少なくとも一方を制御する動作モードを有する制御ステップとを含み、
8D 前記来訪者は、荷物の配達サービスを提供し、
8E 前記第2情報は、前記荷物に付与される伝票番号を含み、
8F 前記動作モードにおいて、前記第1情報が取得されてから、前記扉の解錠及び開放の少なくとも一方が制御されるまでの間、前記荷物の配達先の前記集合施設の専有部に設けられたインターホン親機から呼出音は出力されない、
8G 制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
第3 証拠方法及び申立理由
申立人は、申立書とともに以下の1に示す甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)を提出し、以下の2に示す申立理由により、請求項1~9に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
1 証拠方法
甲1 特開2020-127177号公報
甲2 特開2020-53047号公報
甲3 特許第6765147号公報
甲4 特開2020-155963号公報
甲5 特開2020-178316号公報
2 申立理由
申立書に記載された申立理由は、概略、以下のとおりである。
<申立理由A>
本件発明1~9は、甲1~5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条1項2号)
<申立理由B>
本件の発明の詳細な説明は、本件発明1~9を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、本件発明1~9についての特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条1項4号)
<申立理由C>
本件発明1~9は発明の詳細な説明に記載されていないから、本件発明1~9についての特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条1項4号)
<申立理由D>
本件発明1~9は明確ではないから、本件発明1~9についての特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(同法113条1項4号)
なお、事案に鑑み、まず、申立理由B、C及びDについて判断し(以下の第4、5及び6)、最後に、申立理由Aについて判断する(以下の第7)。
第4 申立理由B(実施可能要件)についての判断
申立人は、申立理由Bについて、概略、主張B1及びB2を以下の1及び2のとおり主張するので、これらの主張について以下の3及び4で検討し、申立理由Bについての判断を、以下の5で小括する。
1 主張B1(申立書60頁下3行~61頁14行)
一般的なインターホンシステムにおいては、来訪者によって所定の操作が行われると、ロビーインターホンから制御装置を介してインターホン親機に呼出要求が出力される。本件発明においても、【0017】に「なお、サイレント解錠モードでは、呼出音が所定音量以下(例えば、作業等の妨げにならない程度の音量)で鳴らされる場合もある。」とあるため、サイレント解錠モードにおいても、所望のインターホン親機に向けて呼出要求が出力されているものと思われる。
しかし、発明の詳細な説明には、応対システム10の動作例1に呼出要求に関する記載が一切ないので、サイレント解錠モードへ遷移した際に呼出要求の処理をどのように行うのかが当業者であっても理解できない。
したがって、本件の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~9を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
2 主張B2(申立書61頁15行~下3行)
応対システム10の動作例1においては、第2サーバ82(サービス提供事業者によって使用されるサーバ)は、認証要求に含まれる伝票番号及びゲートウェイIDと、部屋番号等を含む配達予定情報と、を照合することにより認証を行い、認証が成立すると、オートロック式ドア70が解錠される。つまり、サイレント解錠モードにおけるオートロック式ドア70の解錠にあたっては、配達先を特定するために、第2サーバ82の記憶部85に記憶されている配達予定情報(例えば、部屋番号)を参照する必要があり、また、応対システム10(インターホンシステム)は第2サーバ82を備えている必要がある。
しかし、本件発明1は、インターホンシステムのシステム構成が不明であり、第2サーバ82を備えているかどうか不明であるため、第2サーバ82を備えていない態様も含んでいるものと解釈できる。
そうすると、本件の発明の詳細な説明(動作例1)は、当業者が、本件発明1のうち第2サーバ82を備えていない態様の発明について、実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
3 主張B1についての検討
申立人は、「発明の詳細な説明には、応対システム10の動作例1に呼出要求に関する記載が一切ないので、サイレント解錠モードへ遷移した際に呼出要求の処理をどのように行うのかが当業者であっても理解できない。」と主張している。
しかしながら、本件発明1~9には、「呼出要求」が発明を特定する事項として含まれておらず、本件発明1~9の発明特定事項を検討しても、「呼出要求の処理をどのように行うか」を示さなければ実施することができないと認められる事項はない。また、主張B1を検討しても、本件発明1~9におけるどの発明特定事項が実施することができないかは示されていない。
よって、主張B1で示される事項により、本件発明1~9を実施することができないとはいえない。
したがって、主張B1は採用できない。
4 主張B2についての検討
申立人は、「配達先を特定するために、第2サーバ82の記憶部85に記憶されている配達予定情報(例えば、部屋番号)を参照する必要があり、また、応対システム10 (インターホンシステム)は第2サーバ82を備えている必要がある」が、本件発明1は「第2サーバ82を備えているかどうか不明であるため、第2サーバ82を備えていない態様も含んでいるものと解釈できる。」と主張している。
しかしながら、本件発明1には、「配達先を特定する」処理を行うことや、「配達予定情報」を参照することが特定されておらず、また、「配達予定情報」を参照しないため、「第2サーバ82」を備えていることも特定されていない。そのため、第2サーバを備えるか否かに関わらず、本件発明1の発明特定事項はいずれも実施できると認められる。さらに、主張B2を検討しても、本件発明1におけるどの発明特定事項を実施することができないかは示されていない。
よって、主張B2で示される事項により、本件発明1を実施することができないとはいえない。
同様の理由で、本件発明1を引用する本件発明2~6及び本件発明7~9についても実施することができないとはいえない。
したがって、主張B2は採用できない。
5 申立理由Bについての小括
前記3及び4のとおりであり、他に本件発明を実施することができないとする理由もないから、本件発明は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものであると認められ、申立理由Bには理由がない。
第5 申立理由C(サポート要件)についての判断
申立人は、申立理由Cについて、概略、主張C1及びC2を以下の1及び2のとおり主張するので、これらの主張について以下の3及び4で検討し、申立理由Cについての判断を、以下の5で小括する。
1 主張C1(申立書62頁3~12行)
サイレント解錠モードにおいても、所望のインターホン親機に向けて呼出要求が出力されているものと思われる。また、本件発明1、7及び8の記載では、呼出要求が出力されているのかどうかは不明であるから、呼出要求が出力されている態様も含んでいるものと解釈しうる。一方で、本件特許の応対システム10の動作例1に関する詳細な説明には、呼出要求に関する記載が一切ないので、動作例1のうち呼出要求が出力されている態様については、発明の詳細な説明に記載したものとは言えない。
したがって、本件発明1~9は発明の詳細な説明に記載されていない。
2 主張C2(申立書62頁13~22行)
応対システム10の動作例1においては、サイレント解錠モードにおけるオートロック式ドア70の解錠にあたり、配達先を特定するために、第2サーバ82の記憶部85に記憶されている配達予定情報(例えば、部屋番号)を参照する必要がある。つまり、応対システム10(インターホンシステム)は第2サーバ82を備えている必要がある。しかし、本件発明1、7及び8の記載では、インターホンシステムのシステム構成が不明であり、また、第2サーバ82を備えているかどうか不明であるから、第2サーバ82を備えていない態様も含んでいるものと解釈できる。そうとすると、応対システム10の動作例1のうち第2サーバ82を備えていない態様については、発明の詳細な説明に記載したものとは言えない。
本件発明1~9は発明の詳細な説明に記載されていない。
3 主張C1についての検討
申立人は、「本件発明1、7及び8の記載では、呼出要求が出力されているのかどうかは不明であるから、呼出要求が出力されている態様も含んでいるものと解釈し」えるものの、「動作例1に関する詳細な説明には、呼出要求に関する記載が一切ない」と主張している。
しかしながら、本件発明1、7及び8には「呼出要求」に関する処理が特定されていない。また、本件発明1、7及び8の発明特定事項を検討しても、「呼出要求の処理をどのように行うか」を示さなければ、サポート要件を満たすことができないと認められる発明特定事項もない。そして、主張C1を検討しても、本件発明1、7及び8におけるどの発明特定事項がサポートされないかは示されていない。
よって、主張C1で示される事項により、本件発明1、7及び8について、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。
同様の理由で、本件発明1を引用する本件発明2~6及び本件発明8を引用する本件発明9についても、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。
したがって、主張C1は採用できない。
4 主張C2についての検討
申立人は、「配達先を特定するため」に、「第2サーバ82の記憶部85に記憶されている配達予定情報(例えば、部屋番号)を参照する必要がある」が、「本件発明1、7及び8の記載では、インターホンシステムのシステム構成が不明であり、また、第2サーバ82を備えているかどうか不明であるから、第2サーバ82を備えていない態様も含んでいるものと解釈でき」、「応対システム10の動作例1のうち第2サーバ82を備えていない態様については、発明の詳細な説明に記載したものとは言えない」と主張している。
しかしながら、本件発明1、7及び8には、「配達先を特定する」ための処理や「配達予定情報」を参照するための処理が特定されていない。また、「配達先を特定する」ための処理や「配達予定情報」を参照するための処理をどのように行うかを示さなければ、サポート要件を満たすことができないと認められる発明特定事項もない。そして、主張C2を検討しても、本件発明1、7及び8におけるどの発明特定事項がサポートされないかは示されていない。
よって、主張C1で示される事項により、本件発明1、7及び8について、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。
同様の理由で、本件発明1を引用する本件発明2~6及び本件発明8を引用する本件発明9についても、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。
したがって、主張C2は採用できない。
5 申立理由Cについての小括
前記3及び4のとおりであり、他に本件発明を実施することができないとはいえないとする理由もないから、本件発明は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものであると認められ、申立理由Cには理由がない。
第6 申立理由D(明確性)についての判断
申立人は、申立理由Dについて、概略、主張D1~D3を以下の1~3のとおり主張するので、これらの主張について以下の4~6で検討し、申立理由Dについての判断を、以下の7で小括する。
1 主張D1(申立書62頁下1行~63頁9行、申立書63頁22行~64頁3行)
請求項1の「前記第2情報は、前記荷物に付与される伝票番号を含み、」(発明特定事項1E)という記載および「前記荷物の配達先の前記集合施設の専有部に設けられたインターホン親機から呼出音は出力されない」(発明特定事項1F)という記載を考慮すると、伝票番号を用いて特定された荷物の配達先(例えば、部屋番号)のインターホン親機に対して呼出要求が出力されているものの、インターホン親機から呼出音は出力されないという構成であるものと推測される。そうとすると、どのようにして伝票番号から荷物の配達先を特定しているのか、また、特定した荷物の配達先のインターホン親機に対して呼出要求が出力されているにも関わらず、なぜ、インターホン親機から呼出音が出力されないのかが本件発明1の記載からは明確に把握できない
同様の理由で、本件発明1を引用する本件発明2~6及び本件発明7~9も明確ではない。
2 主張D2(申立書63頁10行~14行、申立書63頁22行~64頁3行)
本件発明1に含まれる「動作モード」とは、サイレント解錠モードを指すものと推測できるが、「動作モード」という記載は、サイレント解錠モードのみならず、来訪者が呼出操作を行うと居住者を呼び出すための呼出音が出力される通常の動作モードも含むため、「動作モード」という記載では、サイレント解錠モードであるかどうか不明確である。
同様の理由で、本件発明1を引用する本件発明2~6及び本件発明7~9も明確ではない。
3 主張D3(申立書63頁15~21行、申立書63頁22行~64頁3行)
応対システム10の動作例1においては、サイレント解錠モードにおけるオートロック式ドア70の解錠にあたり、配達先を特定するために、第2サーバ82の記憶部85に記憶されている配達予定情報(例えば、部屋番号)を参照する必要がある。つまり、応対システム10(インターホンシステム)は第2サーバ82を備えている必要がある。しかし、請求項1の記載では、インターホンシステムが第2サーバ82を備えているかどうか不明であるから、本件発明1は不明確である。
同様の理由で、本件発明1を引用する本件発明2~6及び本件発明7~9も明確ではない。
4 主張D1についての検討
申立人は、発明特定事項1E及び1Fから「伝票番号を用いて特定された荷物の配達先(例えば、部屋番号)のインターホン親機に対して呼出要求が出力されているものの、インターホン親機から呼出音は出力されないという構成であるものと推測」すると主張している。
しかしながら、本件発明1には、「前記荷物の配達先」の「インターホン親機から呼出音は出力されない」(発明特定事項1F)ことが特定されるのみであって、「伝票番号」を用いて「荷物の配達先を特定」することを前提とするものでもなく、さらに、特定された「荷物の配達先のインターホン親機に対して呼出要求」を出力することを前提とするものでもないから、申立人の主張は前提において失当である。
本件発明1を引用する本件発明2~6及び本件発明7~9についても同様である。
よって、主張D1は採用できない。
5 主張D2について検討
申立人は、「「動作モード」という記載は、サイレント解錠モードのみならず、来訪者が呼出操作を行うと居住者を呼び出すための呼出音が出力される通常の動作モードも含む」と主張している。
しかしながら、本件発明1の「動作モード」は、「取得された前記第1情報が所定の条件を満たしたときに、取得された前記第2情報に基づいて前記集合施設の共用部に設けられた扉の解錠及び開放の少なくとも一方を制御する動作モード」(発明特定事項1C)のことであり、「動作モード」として明確である。
本件発明1を引用する本件発明2~6及び本件発明7~9についても同様である。
よって、主張D2は採用できない。
6 主張D3についての検討
申立人は、「配達先を特定するために、第2サーバ82の記憶部85に記憶されている配達予定情報」を「参照する必要」があり、「応対システム10」は「第2サーバ82を備えている必要」があることを主張している。
しかしながら、本件発明1は、「配達先を特定する」ことを前提とするものではないため、「配達予定情報」を「参照する」ことや「第2サーバ82」を備えることも前提として特定するものではないから、申立人の主張は前提において失当である。
本件発明1を引用する本件発明2~6及び本件発明7~9についても同様である。
よって、主張D3は採用できない。
7 申立理由Dについての小括
前記4~6のとおりであり、他に本件発明が明確ではないとする理由もないから、本件発明は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものであると認められ、申立理由Dには理由がない。
第7 申立理由A(進歩性)についての判断
1 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。なお、下線は後述の甲1発明の認定に使用する箇所を示すために当審で付した。
(1)「【0019】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る集合宅配インターホンシステムの一例を示す構成図であり、主要機器をブロック図で表している。
集合住宅インターホンシステムは、エントランス(集合玄関)に設置されて来訪者が居住者を呼び出すための集合玄関機1と、個々の住戸に設置されて呼び出しに応答するための居室親機2と、集合玄関機1と居室親機2との間の通信を制御する制御機3と、個々の住戸玄関に設置されて居住者を呼び出すための玄関子機4、インターネット等の公衆通信網で形成されたクラウドN上に配置されたサーバ5等を備えて構成されている。」
(2)「【0025】
また、防犯設定情報記憶部32では、防犯設定された住戸は留守として登録され、防犯設定されていない住戸は在宅と登録され記憶される。居室親機CPU25の制御により、防犯設定ボタンが操作されて防犯設定が成されると、この情報が制御機3に送信され、防犯設定情報記憶部32が更新される。
尚、オートドア7は、エントランスに設置され、居住エリアに進む際に通過するドアであり、居住者及び許可された人物のみ通過を可能とするために設けられている。」
(3)「【0028】
図2は、集合玄関機1が表示する案内画面を示し、図2を参照して説明する。荷物を配達に来た宅配業者が集合玄関機1の前に立つと、集合玄関機1の人感センサ16がそれを感知して、表示部14に操作案内の画面が表示される。この時の表示は、図2のM1に示す表示「訪問先の住戸番号を押し、呼出ボタンを押してください」、「複数の住戸へお届け物がある方は#ボタンを押してください」が成され、複数の住戸への配達物がある宅配業者に対しては専用の操作画面に入ることが促される。
【0029】
来訪者或いは1つの荷物のみ配達する宅配業者は、最初の案内に従い住戸番号を押して居住者に応答してもらう従来の操作になるが、ここでは複数の荷物を配達する宅配業者であるため、操作部15にあるテンキーの中の「#」ボタンを押し、先に進む。
「#」ボタンが操作されると、M2の画面に切り替わる。M2の画面ではカメラ11の正面に立つことが促され、カメラ11の撮像映像が表示部14に表示される。尚、カメラ11は人感センサ16が感知動作した時点で起動し、撮像を開始する。
同時に、集合玄関機CPU17の制御により、撮像映像データが制御機3を介してサーバ5に送信される。」
(4)「【0031】
サーバ5では、顔画像データが送信されると、登録されている多数の宅配業者の顔データと比較照合がなされ、一致するデータがあるか判定が行われる。一致するデータがあれば許可信号が返信され、一致するデータが無ければ不許可信号が返信される。
【0032】
サーバ5から判定結果が返信された集合玄関機CPU17は、それが許可信号であったら表示部14の表示を図2のM3に示す画面に変更して、配達先住戸を入力する入力画面を表示する。一方、不許可信号であったら図3に示す画面を表示し、通常の来訪者が操作する手順による呼出操作が促される。
そして、不許可信号を受け取った集合玄関機CPU17は、不許可となった宅配業者のカメラ11の撮像画像を制御機3のNG画像記憶部33に保存し、不審者画像として登録される。」
(5)「【0035】
M3の画面では、配達する順に住戸番号の入力が促され、宅配業者は自身の思い描いた配達順で住戸番号が入力される。こうして、複数住戸の住戸番号の入力が終了したら、表示に従い操作部15の中の呼出ボタン(図示せず)を押して終了操作が成される。
終了操作を受けた集合玄関機1は、集合玄関機CPU17の制御により、制御機3の防犯設定情報記憶部32から届け先住戸の在/不在の情報を入手し、表示部14が図2のM4に示す画面に切り替わる。ここでは、入手した在/不在の情報から住戸別に「在宅」、「留守」が表示される。また同時に、オートドア7のロック(電気錠)が解除され、居住エリアへの進入が可能となる。」
(6)「【0043】
このように、宅配業者に対しては訪問者に対する画面とは異なる複数の配達先住戸の一括入力を可能とする画面が表示されるため、配達先が複数あっても短時間で入力操作できる。また、入力された全ての住戸の居室親機2に通知が行くため、1回の操作で配達先に通知することができ、個別に呼出操作してそれぞれ応答を待って会話する従来のステップを無くすことができる。結果、時間短縮でき宅配業者の負担を軽減できる。
一方、配達先の居室親機2は宅配業者が来た旨の通知を受けるため、いきなり住戸玄関に宅配業者が現れるようなことが無くなり、居住者がセキュリティへの不安を感じることが無い。更に、居住者を呼び出して通話しなくても宅配業者はオートドア7を開けるためには認証を必要とするため、セキュリティを維持できる。
また、居住者を呼び出して居住者にオートドア7を開けて貰うこと無く、居住エリアに入って行くことができ、配達時間を短縮できる。」
(7)図2
[図:0001437412000001.jpg]
前記(3)下線には、「図2は、集合玄関機1が表示する案内画面を示し」と記載されているから、図2によれば、集合玄関機1が表示する案内画面において、M1~M4に示す内容が表示されるといえる。
2 甲1発明の認定
前記1の記載によれば、甲1には、以下の「甲1発明」が記載されている。後の参照の便宜のため、甲1発明に符号を付して分説し、「構成1a」のようにして参照する。
<甲1発明>
1a エントランス(集合玄関)に設置されて来訪者が居住者を呼び出すための集合玄関機1と、個々の住戸に設置されて呼び出しに応答するための居室親機2を備えて構成されている集合住宅インターホンシステムにおいて、(【0019】)
1b 集合玄関機1が表示する案内画面で、M1に示す「訪問先の住戸番号を押し、呼出ボタンを押してください」、「複数の住戸へお届け物がある方は#ボタンを押してください」が表示され、(【0028】、前記2(7))
1c 宅配業者は、「#」ボタンを押し、「#」ボタンが操作されると、M2の画面に切り替わり、(【0029】)
1d 集合玄関機1が表示する案内画面で、M2の画面ではカメラ11の撮像映像が表示部14に表示され、カメラ11は撮像を開始し、撮像映像データがサーバ5に送信され、(【0029】、前記2(7))
1e サーバ5では、顔画像データが送信されると、登録されている多数の宅配業者の顔データと比較照合がなされ、一致するデータがあるか判定が行われ、サーバ5から判定結果が返信された集合玄関機CPU17は、それが許可信号であったら表示部14の表示をM3に示す画面に変更して、配達先住戸を入力する入力画面を表示し、(【0031】、【0032】)
1f 集合玄関機1が表示する案内画面で、M3の画面では、配達順で住戸番号が入力され操作部15の中の呼出ボタンを押して終了操作が成され、終了操作を受けた集合玄関機1は、集合玄関機CPU17の制御により、オートドア7のロックが解除され、居住エリアへの進入が可能となり、(【0035】、前記2(7))
1g オートドア7は、エントランスに設置され、居住エリアに進む際に通過するドアであり、(【0025】)
1h 居住者を呼び出して通話しなくても宅配業者はオートドア7を開ける(【0043】)
1i 集合住宅インターホンシステム(【0019】)。
3 甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。なお、下線は後述の甲2技術の認定に使用する箇所を示すために当審で付した。
(1)「【0018】
(実施の形態1)
図1は、本実施形態に係る自動ドア制御システムの全体図である。自動ドア制御システム100は、自動ドア制御サーバ10、開錠装置20、建物設置端末30から構成される。自動ドア制御サーバ10、開錠装置20、建物設置端末30、ECサイトサーバ40が、情報を通信するためのネットワーク200に接続されることにより構成される。なお、自動ドア制御システム100を構成するこれらの機器は、その全てが互いにネットワーク200を介して通信できなくてもよい。例えば、自動ドア制御サーバ10は、開錠装置20、建物設置端末30、ECサイトサーバ40のそれぞれと通信することができるが、開錠装置20、建物設置端末30、ECサイトサーバ40は、それぞれ、自動ドア制御サーバ10とだけ通信することができればよい。」
(2)「【0050】
建物設置端末30は、各建物に設置された、スマートフォン、パソコン、ネットワークと接続されたインターフォン、ネットワークと接続されたテンキー・カメラ・センサー等を備えた端末である。建物設置端末30は、建物に設置された自動ドアに対して建物の外側に設置されている。荷物の配送員は、建物設置端末30を用いて、自動ドア制御サーバ10に対して、配送する荷物の荷物特定情報を送信することにより、建物設置端末30が設置された建物に割り当てられた建物特定情報を共に送信することができる。」
(3)「【0053】
S203において、建物設置端末30は、自動ドア制御サーバ10に対して、荷物特定情報、建物特定情報、開錠要求を送信する。荷物の配送員は、建物設置端末30を用いて、荷物に印字されたQRコードを読み取る、テンキーによる数字の入力等の方法で、荷物特定情報を取得し、自動ドア制御サーバ10に対して、送信する。その際、建物設置端末30から、送信することにより、当該建物設置端末30に割り当てられた建物特定情報、建物設置端末30に設置された自動ドアに対応する開錠装置20の開錠要求を共に送信することができる。
【0054】
S204において、自動ドア制御サーバ10は、S203において受信した荷物特定情報が、荷物情報記憶部132に記憶された荷物特定情報と一致するか否かを判定する(第1の条件の判定)。」
(4)「【0058】
S208において、自動ドア制御サーバ10は、開錠に必要な開錠条件をみたしていたことを判断し、荷物特定情報により特定される荷物の配送先の建物の自動ドアに対応する開錠装置20の開錠を決定する。開錠すべき開錠装置20の特定は、S203において受信した建物特定情報に基づき、開錠装置情報記憶部131に記憶された開錠装置特定情報を特定することにより行われてもよい。
【0059】
S209において、自動ドア制御サーバ10は、S208において開錠を決定した開錠装置20に対する開錠指示を送信する。
【0060】
S210において、開錠装置20は、S209の開錠指示に基づき、移動部240を移動させ、自動ドアを開ける。」
4 甲2技術の認定
前記3の記載によれば、甲2には、以下の「甲2技術」が記載されている。後の参照の便宜のため、甲2技術に符号を付して分説し、「構成2a」のようにして参照する。
<甲2技術>
2a 自動ドア制御サーバ10、開錠装置20、建物設置端末30から構成される自動ドア制御システム100において、(【0018】)
2b 建物設置端末30は、建物に設置された自動ドアに対して建物の外側に設置され、荷物の配送員は、建物設置端末30を用いて、自動ドア制御サーバ10に対して、配送する荷物の荷物特定情報を送信し、(【0050】)
2c 荷物の配送員は、建物設置端末30を用いて、荷物に印字されたQRコードを読み取る、テンキーによる数字の入力等の方法で、荷物特定情報を取得し、(【0053】)
2d 自動ドア制御サーバ10は、受信した荷物特定情報が、荷物情報記憶部132に記憶された荷物特定情報と一致するか否かを判定し、(【0054】)
2e 自動ドア制御サーバ10は、開錠に必要な開錠条件をみたしていたことを判断し、荷物特定情報により特定される荷物の配送先の建物の自動ドアに対応する開錠装置20の開錠を決定し、(【0058】)
2f 自動ドア制御サーバ10は、開錠を決定した開錠装置20に対する開錠指示を送信し、(【0059】)
2g 開錠装置20は、開錠指示に基づき、移動部240を移動させ、自動ドアを開ける、(【0060】)
2h 自動ドア制御システム100(【0018】)。
5 甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。なお、下線は後述の甲3技術の認定に使用する箇所を示すために当審で付した。
(1)「【0018】
図1に示すように、扉解錠システム1は、一又は複数の扉制御装置10と、サーバ装置12と、宅配業者端末14と、ユーザ端末16と、を備える。これらの装置は、インターネットや電話回線等の通信ネットワークNTを介して互いに通信可能となっている。
【0019】
扉制御装置10は、マンションやアパート、寮等の集合住宅Mの入口(エントランス)付近に設置されている。そして、扉制御装置10は、集合住宅Mの入口に設置されたオートロック式の扉11の施錠及び解錠を制御する。例えば、扉制御装置10は、一対のインターホンで構成され、一方のインターホンが集合住宅Mの入口付近に設置され、他方のインターホンが構成集合住宅Mの各部屋に設置されている。宅配業者は一対のインターホンを利用して他方インターホンの先の住人と通話が可能であり、住人の遠隔操作により、扉11を解錠してもらい、集合住宅Mに入ることができる。しかしながら、住人が不在であれば、通話が不可能なため扉11を解錠できずに集合住宅Mに入ることができず、集合住宅M内の宅配ボックスに荷物を投函したり、宅配ボックスから荷物を集荷したりすることができない。そこで、インターホンの機能に扉制御機能を設けることで扉制御装置10を構成している。」
(2)「【0021】
宅配業者端末14は、宅配業者が操作する通信端末装置である。宅配業者は、第三者(送り主)からユーザ宛に荷物を受け取った際又は受け取った後に、サービス番号、特に、当該荷物の追跡番号を設定(決定)する。そして、宅配業者は、設定した追跡番号を送り主に知らせる。送り主は、送り先(荷受人)のユーザに追跡番号を知らせる。送り先のユーザは、知らされた追跡番号を、当該ユーザのユーザIDと共に第二サーバ装置12Bに送信し、サーバ装置12は、受信した追跡番号を受信したユーザIDに紐づけて記憶する。この宅配業者端末14としては、携帯電話やスマートフォン、タブレット、ノートパソコン、パーソナルコンピュータ等が挙げられる。」
(3)「【0077】
<効果>
以上、本実施形態では、サーバ装置12が、集合住宅の入口に設置された扉11の施錠及び解錠を制御する扉制御装置10と通信可能である。そして、サーバ装置12が、宅配業者により設定されたサービス番号をユーザ毎に記憶する記憶手段70と、扉制御装置10から、当該扉制御装置10の装置ID及びサービス番号を含む解錠要求を受け付ける要求受付手段72と、要求受付手段72が受け付けた解錠要求に含まれる情報と、記憶手段70に記憶されている情報とに基づき、認証を実行する認証手段74と、認証が成功した場合に、扉制御装置10に解錠指示を送信する解錠指示手段78と、を備える。
【0078】
この構成によれば、宅配業者は、集合住宅の入口に来た場合、サービス番号を扉制御装置10に取得させると、サーバ装置12において認証が行われて扉制御装置10により扉11が解錠される。この結果、ユーザの許可が無くても宅配業者が扉11を解錠することができる。」
6 甲3技術の認定
前記5の記載によれば、甲3には、以下の「甲3技術」が記載されている。後の参照の便宜のため、甲3技術に符号を付して分説し、「構成3a」のようにして参照する。
<甲3技術>
3a 一又は複数の扉制御装置10と、サーバ装置12と、宅配業者端末14と、ユーザ端末16と、を備える扉解錠システム1において、(【0018】)
3b 扉制御装置10は、マンションやアパート、寮等の集合住宅Mの入口(エントランス)付近に設置され、(【0019】)
3c サーバ装置12が、集合住宅の入口に設置された扉11の施錠及び解錠を制御する扉制御装置10と通信可能であり、(【0077】)
3d サーバ装置12が、宅配業者により設定されたサービス番号をユーザ毎に記憶する記憶手段70と、扉制御装置10から、当該扉制御装置10の装置ID及びサービス番号を含む解錠要求を受け付ける要求受付手段72と、要求受付手段72が受け付けた解錠要求に含まれる情報と、記憶手段70に記憶されている情報とに基づき、認証を実行する認証手段74と、認証が成功した場合に、扉制御装置10に解錠指示を送信する解錠指示手段78と、を備え、(【0077】)
3e 宅配業者は、第三者(送り主)からユーザ宛に荷物を受け取った際又は受け取った後に、サービス番号、特に、当該荷物の追跡番号を設定(決定)し、(【0021】)
3f ユーザの許可が無くても宅配業者が扉11を解錠する、(【0078】)
3g 扉解錠システム1。(【0018】)
7 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりである。
(1)発明特定事項1Aについて
発明特定事項1Aは「集合施設に設けられたインターホンシステムを通じて第1情報を取得する第1取得部と、」というものである。
甲1発明の「集合住宅インターホンシステム」(構成1a)は、本件発明の「集合施設に設けられたインターホンシステム」に相当する。
また、甲1発明の「集合住宅インターホンシステム」の「集合玄関機1」(構成1a)では、「M1」の「画面」に「「訪問先の住戸番号を押し、呼出ボタンを押してください」、「複数の住戸へお届け物がある方は#ボタンを押してください」が表示され」(構成1b)、「宅配業者は、「#」ボタンを押し、「#」ボタンが操作されると、M2の画面に切り替わ」(構成1c)る。このことから、「集合玄関機1」の「呼出ボタン」又は「#ボタン」の操作によって入力された入力情報は、「集合玄関機1」を通じて「取得」されていることは明らかである。また、「集合玄関機1」が、そのような入力情報を取得するものであるから、情報を取得するための「第1取得部」に相当する手段を有しているといえる。
そして、甲1発明の「呼出ボタン」又は「#ボタン」の操作によって入力された入力情報は、「集合住宅インターホンシステム」の「集合玄関機1」を通じて取得するものであるから、本件発明1の「第1情報」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「集合施設に設けられたインターホンシステムを通じて第1情報を取得する第1取得部」を備える点で一致する。
(2)発明特定事項1Bについて
発明特定事項1Bは「前記集合施設を訪れる来訪者の第2情報を取得する第2取得部と、」というものである。
ア 甲1発明の「集合玄関機1」(構成1a)は、「M2の画面」において「カメラ11の撮像映像」を「表示」(構成1d)させ、その後「カメラ11」は「撮像を開始」し、「撮像映像データがサーバ5に送信され」(構成1d)ることから、甲1発明の「集合玄関機1」は「撮像映像データ」を「取得」していることは明らかである。また、甲1発明の「集合玄関機1」は、「撮像映像データ」を「取得」しているから、「データ」を「取得」するための「第2取得部」に相当する手段を有しているといえる。
イ 甲1発明の「集合玄関機1」は、「エントランス(集合玄関)に設置され」たものであって、「来訪者が居住者を呼び出すため」(構成1a)のものであるから、甲1発明の「来訪者」は、本件発明1の「集合施設を訪れる来訪者」に相当する。そして、甲1発明では、「宅配業者」が「「#」ボタンを押し」て「M2の画面」に「切り替え」(構成1c)、「カメラ11の撮像映像」を「表示」(構成1d)していることを踏まえると、甲1発明の「撮像映像データ」は「宅配業者」を撮像映像したデータである。ここで、「宅配業者」は「集合玄関機1」を操作していることから、「来訪者」であることは明らかであり、甲1発明の「宅配業者」の「撮像映像データ」は、本件発明1の「来訪者」の「第2情報」に相当する。
ウ 前記ア及びイによれば、本件発明1と甲1発明とは、「前記集合施設を訪れる来訪者の第2情報を取得する第2取得部」を備える点で一致する。
(3)発明特定事項1Cについて
発明特定事項1Cは「取得された前記第1情報が所定の条件を満たしたときに、取得された前記第2情報に基づいて前記集合施設の共用部に設けられた扉の解錠及び開放の少なくとも一方を制御する動作モードを有する制御部とを備え、」というものである。
ア 前記(1)で説示したとおり、「集合玄関機1」は「呼出ボタン」又は「#ボタン」の操作によって入力された入力情報を「取得」するものである。そして、「呼出ボタン」及び「#ボタン」のうち、「「#」ボタンが操作されると、M2の画面に切り替わ」(構成1c)ることから、第1情報(前記(1))が「#ボタン」の操作によって入力された入力情報であることが、本件発明1の「所定の条件を満たしたとき」に相当する。
イ 甲1発明の「オートドア7」(構成1f及び1g)は、本件発明1の「扉」に相当する。また、甲1発明の「オートドア7」は「エントランスに設置され、居住エリアに進む際に通過するドア」(構成1g)であり、この「エントランス」とは「集合玄関」(構成1a)のことであるから、「オートドア7」は「集合施設の共用部に設けられ」ているといえる。
ウ 甲1発明は、「集合玄関機CPU17の制御により、オートドア7のロックが解除」(構成1f)することから、甲1発明の「集合玄関機1」が「オートドア7のロック」の解除を制御すると解することができる。
一方、甲1発明の「集合玄関機CPU17」は、「オートドア7のロック」の「解除」を制御するものであって開放を制御するものではないものの、本件発明1のように「解錠及び開放の少なくとも一方を制御する」ものに他ならない。
よって、本件発明1と甲1発明は、前記イも踏まえると、「集合施設の共用部に設けられた扉の解錠及び開放の少なくとも一方を制御する」点で一致する。
エ 甲1発明の「集合玄関機1」は「撮像映像データ」を「サーバ5」に「送信」し(構成1d)、次に「サーバ5」は「顔画像データが送信されると、登録されている多数の宅配業者の顔データと比較照合がなされ、一致するデータがあるか判定」(構成1e)する。ここで、「撮像映像データ」をサーバ5に送信し、サーバ5が「顔画像データ」を受信しているところ、「撮像映像データ」には「顔画像データ」が含まれることは明らかである。そして、「サーバ5から判定結果が返信された集合玄関機CPU17は、それが許可信号であったら表示部14の表示をM3に示す画面に変更して、配達先住戸を入力する入力画面を表示し」(構成1e)、「M3の画面では、配達順で住戸番号が入力され操作部15の中の呼出ボタンを押して終了操作が成され、終了操作を受けた集合玄関機1は、集合玄関機CPU17の制御により、オートドア7のロックが解除され」(構成1f)る。つまり、甲1発明の「集合玄関機1」は、「撮像映像データ」に基づいてM3の画面に進み、「オートドア7のロック」の解除を制御する動作モードを有するものである。
さらに、甲1発明の「集合玄関機1」は、上述のような「動作モードを有する」ため、本件発明1の「動作モードを有する制御部」に相当する手段を備えているといえる。
ここで、甲1発明の「撮像映像データ」が本件発明1の「第2情報」(前記(2))に相当する。
したがって、前記ア及びウも踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「取得された前記第1情報が所定の条件を満たしたときに、取得された前記第2情報に基づいて前記集合施設の共用部に設けられた扉の解錠及び開放の少なくとも一方を制御する動作モードを有する制御部とを備え、」という点で一致する。
(4)発明特定事項1Dについて
発明特定事項1Dは「前記来訪者は、荷物の配達サービスを提供し、」というものである。
甲1発明の「集合玄関機1」は、「来訪者が居住者を呼び出すため」(構成1a)のものであって、「集合玄関機1」の「案内画面」に、「複数の住戸へお届け物がある方は#ボタンを押してください」(構成1b)と表示され、「宅配業者」は「「#」ボタンを押し」(構成1c)て、「居住エリアへの進入」(構成1g)することから、「来訪者」が「荷物の配達サービスを提供」していることは明らかである。
よって、本件発明と甲1発明は「前記来訪者は、荷物の配達サービスを提供し、」という点で一致する。
(5)発明特定事項1Eについて
発明特定事項1Eは「前記第2情報は、前記荷物に付与される伝票番号を含み、」というものである。
前記(2)で説示したとおり、甲1発明の「撮像映像データ」は本件発明1の「第2情報」に相当する。そして、前記(3)エで説示したように、甲1発明の「撮像映像データ」には「顔画像データ」が含まれている。
ただし、第2情報は、本件発明1では「荷物に付与される伝票番号を含」んでいるのに対し、甲1発明では「荷物に付与される伝票番号」を含んでいない点で相違する。
(6)発明特定事項1Fについて
発明特定事項1Fは「前記動作モードにおいて、前記第1情報が取得されてから、前記扉の解錠及び開放の少なくとも一方が制御されるまでの間、前記荷物の配達先の前記集合施設の専有部に設けられたインターホン親機から呼出音は出力されない、」というものである。
ア 甲1発明の「居室親機2」は、「集合住宅インターホンシステム」において、「集合玄関機1」からの「呼び出しに応答する」(構成1a)ものであるから、本件発明1の「インターホン親機」に相当する。また、甲1発明の「居室親機2」は、「個々の住戸に設置されて」いるから、本件発明1の「インターホン親機」と甲1発明の「居室親機2」は、「集合施設の専有部に設けられ」ている点で一致する。
イ 甲1発明は、「集合玄関機1」によって「居住者を呼び出して通話しなくても宅配業者はオートドア7を開ける」(構成1h)ことから、「集合玄関機1」から「居室親機2」を介して、居住者を呼び出す必要がないことは明らかであり、また、呼び出す必要がないということは、「居室親機2」から呼出音を出力しないと解される。ここで、「居住者」は「荷物の配達先」のことである。
したがって、前記アを踏まえると、本件発明1と甲1発明は、「前記荷物の配達先の前記集合施設の専有部に設けられたインターホン親機から呼出音は出力されない」という点で一致する。
ウ 前記(3)ウで示したように、甲1発明の「集合玄関機1」は、本件発明1のように、「取得された前記第1情報が所定の条件を満たしたときに、取得された前記第2情報に基づいて前記集合施設の共用部に設けられた扉の解錠及び開放の少なくとも一方を制御する動作モード」を有する。そして、当該「動作モード」では、「第1情報」が取得されて、扉の解錠及び開放の少なくとも一方が制御されるものであり、上記イのとおり、その間、甲1発明の「集合玄関機1」は「荷物の配達先」の「居室親機2」(前記イ)を呼び出すことはしない。
よって、本件発明1と甲1発明とは、「前記動作モードにおいて、前記第1情報が取得されてから、前記扉の解錠及び開放の少なくとも一方が制御されるまでの間、前記荷物の配達先の前記集合施設の専有部に設けられたインターホン親機から呼出音は出力されない、」という点で一致する。
(7)発明特定事項1Gについて
発明特定事項1Gは「応対システム。」というものである。
甲1発明の「集合住宅インターホンシステム」の「集合玄関機1」(構成1a)には、前記(1)に示すような「第1取得部」に相当する手段、前記(2)に示すような「第2取得部」に相当する手段、前記(3)に示すような「制御部」に相当する手段が備えられていることから、甲1発明の「集合住宅インターホンシステム」は、本件発明1の「応対システム」に相当する。
よって、本件発明1と甲1発明は「応対システム。」である点で一致する。
(8)一致点・相違点
前記(1)~(7)によれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
集合施設に設けられたインターホンシステムを通じて第1情報を取得する第1取得部と、
前記集合施設を訪れる来訪者の第2情報を取得する第2取得部と、
取得された前記第1情報が所定の条件を満たしたときに、取得された前記第2情報に基づいて前記集合施設の共用部に設けられた扉の解錠及び開放の少なくとも一方を制御する動作モードを有する制御部とを備え、
前記来訪者は、荷物の配達サービスを提供し、
前記動作モードにおいて、前記第1情報が取得されてから、前記扉の解錠及び開放の少なくとも一方が制御されるまでの間、前記荷物の配達先の前記集合施設の専有部に設けられたインターホン親機から呼出音は出力されない、
応対システム。
<相違点>
第2情報は、本件発明1では「荷物に付与される伝票番号を含」んでいるのに対し、甲1発明では「荷物に付与される伝票番号」を含んでいない点。
(発明特定事項1E)
(9)申立人の主張について
申立人の、本件発明1と甲1発明との対比に係る主張について判断する。
ア 申立人は、甲第1号証は、請求項1の発明特定事項1A~1D、1F及び1Gを開示している一方で、発明特定事項1Eについては開示していないが、発明特定事項1Eは、甲第2号証および甲第3号証に開示されているため、当業者であれば甲第1号証~甲第3号証に基づいて本件発明1に容易に想到できたといえ、また、第2情報には荷物に付与される伝票番号が含まれることを勘案した上で発明特定事項1B及び1Cを検討したとしても、発明特定事項1B及び1Cは甲第2号証及び甲第3号証に開示されているため、依然として、本件発明1は進歩性を有しない旨、主張している。
イ ここで、甲2技術は、「建物設置端末30を用いて、荷物に印字されたQRコードを読み取る、テンキーによる数字の入力等の方法で、荷物特定情報を取得」(構成2c)するものであり、甲2技術の「荷物特定情報」は、本件発明1の「荷物に付与される伝票番号」を含む「第2情報」に相当する。
ウ また、甲3技術は、「宅配業者は、第三者(送り主)からユーザ宛に荷物を受け取った際又は受け取った後に、サービス番号、特に、当該荷物の追跡番号を設定(決定)」(構成3e)するものであり、甲3技術の「サービス番号」は、本件発明1の「荷物に付与される伝票番号」を含む「第2情報」に相当する。
エ 甲1発明並びに甲2技術及び甲3技術から、当業者が本件発明1を容易に想到できたことの論理の構築ができるか否かを検討する。
甲1発明の「集合住宅インターホンシステム」は、M1の画面で「#ボタンを押」すときは、「複数の住戸へお届け物がある」(構成1b)ことを前提としているため、次に、M2の画面で「撮像映像データ」を取得し、「登録されている多数の宅配業者の顔データと比較照合がなされ」「判定が行われ」(構成1e)、許可されれば、最後に、M3の画面で「配達順で住戸番号が入力」(構成1f)することになる。つまり、M1の画面で複数の荷物が存在するという情報を入力し、次の画面で、宅配業者の「撮像映像データ」を1つのみ取得して、「オートドア7のロック」の「解除」(構成1f)を制御するものであって、配送する荷物が複数存在する場合であっても、オートドア7のロック解除の制御のために、「撮像映像データ」を1つのみ用いればよいものである。
一方、甲2技術は、「荷物特定情報」により「特定される荷物の配送先の建物の自動ドア」の「開錠」(構成2e)を制御するものであり、甲3技術は、「第三者(送り主)からユーザ宛に荷物を受け取った際又は受け取った後に、サービス番号」を「設定」(構成3e)し、「ユーザの許可が無くても宅配業者が扉11」の「解錠」(構成3f)を制御するものであり、いずれの技術も、配送の荷物が一つのみを前提としているため、一つのみの「伝票番号」に基づいて扉の解錠を制御するものである。
甲1発明と、甲2及び甲3に記載された技術事項は、いずれも一つの情報に基づいて扉の解錠を制御しているものではあるものの、配送する荷物が複数か1つかで前提が異なり、そのため、解錠に必要な情報も「撮像映像データ」とするか、「伝票番号」とするかで異なる。
そうすると、配送する荷物が複数あることを前提とする甲1発明において、宅配業者の「撮像映像データ」に代えて、甲2技術及び甲3技術の「伝票番号」とする動機づけが見当たらない。
よって、甲1発明並びに甲2技術及び甲3技術から、相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
オ したがって、申立人の主張は採用できない。
(10) 本件発明1についての小括
前記(9)のとおり、甲1発明並びに甲2技術及び甲3技術から、相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たものとはいえない。
また、相違点にかかる構成は、甲4及び5に記載も示唆もされていないし、技術常識であるともいえない。
したがって、本件発明1は、当業者が甲1発明及び甲2~5に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとは認められない。
8 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を有するものであるから、本件発明2~6と甲1発明とを対比すると、少なくとも前記7(8)で示した相違点について相違する。
そうすると、本件発明1と同様に、本件発明2~6は当業者が甲1発明及び甲2~5に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとは認められない。
9 本件発明7~9について
本件発明7は制御端末の発明であり、本件発明8は制御方法の発明であって、本件発明1とカテゴリー違いの発明である。そのため、本件発明7又は8と甲1発明とを対比すると、少なくとも前記7(8)で示した相違点と同様の相違点(発明特定事項7E又は8E)について相違する。
そうすると、本件発明1と同様に、本件発明7又は8は当業者が甲1発明及び甲2~5に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとは認められない。
また、本件発明9は、本件発明8の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を有するものであるから、本件発明9と甲1発明とを対比すると、少なくとも前記7(8)で示した相違点と同様の相違点(発明特定事項8E)について相違する。
そうすると、本件発明1と同様に、本件発明9は当業者が甲1発明及び甲2~5に記載の事項に基づいて容易に発明をすることができたとは認められない。
第8 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2026-700051