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特許異議申立

2026-700055

管理方法、プログラム、及び管理システム

審判番号
2026-700055
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-024962
登録番号
7710187
請求日
2026年01月17日
審決日
2026年03月30日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
  • 【異議申立人】山▲崎▼ 正芳
審判長/審判官
  • 審判長 野崎 大進
  • 審判官 田付 徳雄
  • 審判官 小池 堂夫
分類
P1651.121-Y (G06Q) / P1651.537-Y (G06Q)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7710187号発明「管理方法、プログラム、及び管理システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7710187号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7710187号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和元年7月31日に出願した特願2019-141619号の一部を令和6年2月21日に新たな特許出願としたものであって、令和7年7月10日にその特許権の設定登録がされ、同月18日に特許掲載公報が発行された。 そして、本件特許の請求項1~6に対して、令和8年1月17日に特許異議申立人 山崎 正芳(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件特許発明1」から「本件特許発明6」といい、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、本件特許の特許公報における特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 1以上のプロセッサにより実行される管理方法であって、 利用者が使用する予定の移動体の識別子の取得を促す画面を、前記利用者が使用する端末に表示させる案内ステップと、 前記案内ステップを経て取得した前記識別子と、前記識別子に対応する前記移動体のバッテリの残量情報とを含む確認画面を前記端末に表示させる表示制御ステップと、 前記確認画面において前記利用者による前記端末への第1操作に応じて、前記移動体を走行可能にする操作方法を前記端末に表示させ、かつ、前記利用者の第2操作を検知する検知ステップと、 前記検知ステップにおいて前記利用者の前記第2操作を検知した場合に、前記移動体の起動を行う制御処理ステップと、を有する 管理方法。 【請求項2】 前記表示制御ステップにおいて前記端末に表示される前記移動体の前記バッテリの前記残量情報を、前記移動体から取得する、 請求項1に記載の管理方法。 【請求項3】 前記移動体の前記バッテリの前記残量情報に基づいて前記移動体が使用可能か否かを判定する判定ステップを更に有する、 請求項1又は2に記載の管理方法。 【請求項4】 前記案内ステップにおいて、前記移動体の識別子は、前記移動体が備える二次元コードを前記端末で読み込むことにより前記端末から取得される、 請求項1~3のいずれか1項に記載の管理方法。 【請求項5】 1以上のプロセッサに、 請求項1~4のいずれか1項に記載の管理方法を実行させる、 プログラム。 【請求項6】 利用者が使用する予定の移動体の識別子の取得を促す画面を、前記利用者が使用する端末に表示させる案内部と、 前記識別子と、前記識別子に対応する前記移動体のバッテリの残量情報とを含む確認画面を前記端末に表示させる表示制御部と、 前記確認画面において前記利用者による前記端末への第1操作に応じて、前記移動体を走行可能にする操作方法を前記端末に表示させ、かつ、前記利用者の第2操作を検知する検知部と、 前記検知部が前記利用者の前記第2操作を検知した場合に、前記移動体の起動を行う制御処理部と、を備える 管理システム。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人が、請求項1~6に係る特許に対して申し立てた理由の概要及び証拠方法(甲号証)は次のとおりである。 1 申立理由及び主張の概要 (1)申立理由1(進歩性欠如) 本件特許発明1~6は、甲第1号証~甲第6号証に記載された発明、及び、出願時の技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件特許発明1~6についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(サポート要件違反) 本件特許発明1~6は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 したがって、本件特許発明1~6についての特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 証拠方法 甲第1号証の1:Trip Astute,“How to use an Electric Scooter | Using Services like Bird & Lime to Get Around While Traveling”,[online],[video],2018年10月20日,取得先<https://www.youtube.com/watch?v=bWN7GoXO_fU> 甲第1号証の2:甲第1号証の1の静止画(キャプチャ画像) 甲第2号証の1:Errol’s Adventures,“How to use Lime Scooter | Auckland”,[online],[video],2019年4月26日,取得先<https://www.youtube.com/watch?v=mDKr6h0YoTE> 甲第2号証の2:甲第2号証の1の静止画(キャプチャ画像) 甲第3号証:Lime,“Lime’s New Scooter Reserve Feature Goes For A Test Ride”,[online],[text],2019年4月18日,取得先<https://web.archive.org/web/20190618122312/https://www.li.me/second-street/lime-scooter-reserve-feature-test-ride> 甲第4号証の1:RYDE,“【Hello Cycling】使い方動画○1 「アプリ予約~利用まで」| シェアサイクル解説動画 by cycle.ryde-go.com”,[online],[video],2018年10月31日,取得先<https://www.youtube.com/watch?v=WJ-quYzQCog> 甲第4号証の2:甲第4号証の1の静止画(キャプチャ画像) (甲第4号証の1のタイトルの「○1」は、丸数字の1を意味する。以下において同様。) 甲第5号証の1:RYDE,“【ドコモ・バイクシェア】使い方動画○3 「始め方|一日乗車券で利用する」| シェアサイクル解説動画 by cycle.ryde-go.com”,[online],[video],2018年10月31日,取得先<https://youtu.be/uhxYamDRfSc> 甲第5号証の2:甲第5号証の1の静止画(キャプチャ画像) 甲第6号証:特開2018-73002号公報 第4 当審における判断 1 申立理由1(進歩性欠如)について (1)甲号証の記載 特許異議申立の証拠方法として提出された甲第1号証の1から甲第6号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。 なお、「甲第1号証の2」は「甲第1号証の1」のキャプチャ画像であり、同様の技術的事項が開示されていることから、以下では両者を総称して「甲1」という。「甲2」、「甲4」及び「甲5」についても同様である。 また、「甲第3号証」及び「甲第6号証」を、「甲3」及び「甲6」という。 ア 甲1(How to use an Electric Scooter | Using Services like Bird & Lime to Get Around While Traveling) (ア)甲1の摘記 本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1には、次の開示がある。(下線は当審において付与した。下記イからカにおいて同様。) a 2分47秒時点のキャプチャ画面 「 [図:0001434210000001.jpg] 」 音声(再生時間 02:45~02:48) 原文:You will need to scan the QR code on the scooter. 翻訳文:スクーターのQRコードをスキャンする必要があります。 b 2分48秒時点のキャプチャ画面 「 [図:0001434210000002.jpg] 」 音声(再生時間 02:48~02:51) 原文:This should unlock and activate the scooter. 翻訳文:これにより、スクーターのロック解除が行われ、起動するはずです。 c 2分52秒時点のキャプチャ画面 「 [図:0001434210000003.jpg] 」 画面内の文字(再生時間 02:51~02:53) 原文: Kick start three times, then push throttle button with thumb to ride. 翻訳文:3回キックスタートして、それから走行するために親指でスロットルボタンを押してください。 音声(再生時間 02:51~02:55) 原文: You are now ready to start riding. The apps generally give you some guidelines on how to use a scooter. 翻訳文:これで、乗車を開始する準備が整いました。アプリでは通常、スクーターの使用方法に関するガイドラインが提供されます。 d 3分5秒時点のキャプチャ画面 「 [図:0001434210000004.jpg] 」 音声(再生時間 03:01~03:09) 原文: To start it up, you will want to start pushing the scooter two or three times with your foot then pressing the accelerator button with your right thumb. The scooter should start to accelerate. 翻訳文:始動するには、まず足でスクーターを2、3回押し、次に右手の親指でアクセルボタンを押します。すると、スクーターが加速し始めます。 (イ)甲1記載の技術的事項 上記(ア)で摘記した事項によると、甲1には、次の技術的事項が開示されているものと認められる。 a 上記(ア)aにおいて、端末に表示されている画面は、その内容及び位置付けから、利用者が使用する予定のスクーターのQRコードのスキャンを促すものといえる。したがって、甲1には、「利用者が使用する予定のスクーターのQRコードのスキャンを促す画面を、前記利用者が使用する端末に表示させる」ことが開示されているといえる。 b 上記(ア)bにおいて、端末の画面に、電動スクーターとともに「LL4W8」との文字列が表示されていることから、当該文字列は、当該電動スクーターを示す文字列と認められる。また、同画面には、バッテリを意味するアイコンとともに「56%」と表示されている。一般常識を勘案すれば、当該表示は、前記電動スクーターのバッテリ残量情報といえる。 以上を踏まえると、甲1には、「前記電動スクーターを示す「LL4W8」との文字列と、前記文字列に対応する前記電動スクーターのバッテリの残量情報とを含む画面を前記端末に表示させる」ことが開示されているといえる。 c 上記(ア)b及びcの画面の挙動から、「前記画面において、前記利用者による前記端末への「UNLOCK」ボタンのタップに応じて、前記スクーターの走行方法を前記端末に表示させる」ことが開示されているといえる。 d 上記(ア)dには、「足でスクーターを2、3回押し、次に右手の親指でアクセルボタンを押すと、スクーターが加速し始める」ことが開示されているといえる。 (ウ)甲1発明 上記(イ)から、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 利用者が使用する予定のスクーターのQRコードのスキャンを促す画面を、前記利用者が使用する端末に表示させ、(上記(イ)a) 前記電動スクーターを示す「LL4W8」との文字列と、前記文字列に対応する前記電動スクーターのバッテリの残量情報とを含む画面を前記端末に表示させ、(上記(イ)b) 前記画面において、前記利用者による前記端末への「UNLOCK」ボタンのタップに応じて、前記スクーターの走行方法を前記端末に表示させ、(上記(イ)c) 足でスクーターを2、3回押し、次に右手の親指でアクセルボタンを押すと、スクーターが加速し始める、(上記(イ)d) 方法 イ 甲2(How to use Lime Scooter | Auckland) (ア)甲2の摘記 本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2には、次の開示がある。 a 0分49秒時点のキャプチャ画像 「 [図:0001434210000005.jpg] 」 b 0分55秒時点のキャプチャ画像 「 [図:0001434210000006.jpg] 」 画面内の文字(再生時間 00:55~01:05) 原文:How to Ride 翻訳文:乗り方 c 1分40秒時点のキャプチャ画像 「 [図:0001434210000007.jpg] 」 画面内の文字(再生時間 01:28~01:42) 原文:I agree 翻訳文:同意します d 1分47秒時点のキャプチャ画像 「 [図:0001434210000008.jpg] 」 画面内の文字(再生時間 01:46~01:54) 原文:Unlocking 翻訳文:ロック解除中 (イ)甲2記載の技術的事項 上記(ア)で摘記した記載によると、甲2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 利用者が使用する予定のスクーターのQRコードのスキャンを促す画面を、前記利用者が使用する端末に表示させ、(上記(イ)a) 前記利用者によるQRコードのスキャンに応じて、前記スクーターの走行方法を前記端末に表示させ、(上記(イ)b) 「Rules and Regulations」を表示する画面において、前記利用者による前記端末への「I agree」ボタンのタップに応じて、(上記(イ)c) スクーターの開錠を行う、(上記(イ)d) 方法 ウ 甲3(Lime’s New Scooter Reserve Feature Goes For A Test Ride) (ア)甲3の摘記 本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3には、次の開示がある。 「The days of missing out on an electric scooter rental may soon be coming to an end. Beginning this week, Lime iOS users in Lyon (FR), Brisbane (AU) and Tel Aviv (IL) can beta test a new reserve feature that allows them to “book” an electric scooter up to 15 minutes before their ride. Once a particular scooter is reserved, other riders will neither be able to see the vehicle on the Lime map nor unlock it during the 15-minute reservation period. “We understand how frustrating it can be to find a scooter on the map and walk to it, only to find out that another rider has already taken it,” said Will Lee, Product Manager at Lime. “This new reserve feature helps to assure our riders that a Lime scooter will be waiting for them when they get there.” The reservation process is simple: 1. Tap on a scooter in the Lime app 2. Press the “Reserve” button in the banner 3. Arrive and unlock the scooter within 15 minutes」 (訳: 電動スクーターのレンタルを逃してしまう日々は、まもなく終わりを迎えるかもしれません。 今週から、リヨン(フランス)、ブリスベン(オーストラリア)、およびテルアビブ(イスラエル)のLime iOSューザーは、乗車前の最大15分間、電動スクーターを「予約」できる新しい予約機能のベータテストを行うことができます。 特定のスクーターが予約されると、他の利用者は15分間の予約期間中、Limeマップ上でその車両を確認することも、ロックを解除することもできなくなります。 「マップ上でスクーターを見つけてそこまで歩いて行ったのに、別の利用者がすでにそれを持って行ってしまったと知ることが、いかに苛立たしいことであるか我々は理解しています」と、Limeのプロダクトマネージャーであるウィル・リー氏は述べました。 「この新しい予約機能は、利用者が現地に到着した際に、Limeのスクーターがそこで待っているという安心感を利用者に与えるのに役立ちます」。 予約プロセスは簡単です: 1. Limeアプリでスクーターをタップする 2. バナー内の「予約(Reserve) 」ボタンを押す 3. 15分以内に到着し、スクーターのロックを解除する) [図:0001434210000009.jpg] (訳: 左側のアプリ画面(車両選択)における文字: 残り15.0マイル ロック解除に1ドル+0.15ドル/1分 鳴らす 予約する 4分・0.2マイル スキャンして乗車 右側のアプリ画面(予約確認ポップアップ)における文字: 車両を15分間予約する 今後15分間、あなただけがこの車両のロックを解除できます。この時間を過ぎると、誰でもロックを解除できるようになります。 予約開始 キャンセル) 「Similar to non-reserved scooters, trip billing for reserved scooters during the beta test period begins once the vehicle is unlocked. The new feature announcement comes shortly after Lime’s integration with Google Maps expanded to over 80 new cities around the world in March, including Lyon and Tel Aviv. Subscribe to Lime’s 2nd Street to learn more about product updates and developments from around the world of micromobility, or download the Lime app to take (or reserve) your next scooter ride today.」 (訳: 非予約のスクーターと同様に、ベータテスト期間中の予約スクーターの利用料金は、車両のロックが解除された時点で発生します。 この新機能の発表は、リヨンやテルアビブを含む世界80以上の新都市において、3月にLimeとGoogleマップの統合が拡大された直後に行われました。 マイクロモビリティの世界からの製品アップデートや開発状況を詳しく知るためにLimeの「2ndStreet」を購読するか、あるいはLimeアプリをダウンロードして、今すぐ次回のスクーター乗車(または予約)を体験してください。」 (イ)甲3記載の技術的事項 上記(ア)で摘記した記載によると、甲3には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 「XXX-173」との文字列と、前記文字列に対応する前記電動スクーターのバッテリの残量情報とを含む画面を端末に表示させ、 前記画面において、前記利用者による前記端末への「Reserve」ボタン及び「Start reservation」ボタンのタップが可能な、 方法 エ 甲4(【Hello Cycling】使い方動画○1 「アプリ予約~利用まで」| シェアサイクル解説動画 by cycle.ryde-go.com) (ア)甲4の摘記 本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4には、次の開示がある。 a 0分38秒時点のキャプチャ画像 「 [図:0001434210000010.jpg] 」 なお、利用者の端末の画面には、「自転車を予約いただいた段階です。30分以内にスマートロックを開錠してご利用を開始してください。」、「車両番号 A1073」及び「暗証番号 5622」が表示されている。 b 0分54秒時点のキャプチャ画像 「 [図:0001434210000011.jpg] 」 なお、暗証番号を入力するための数字ボタンの左上には、電源ボタンが存在している。 (イ)甲4記載の技術的事項 上記(ア)で摘記した記載によると、甲4には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 利用者が使用する予定の自転車の車両IDと、暗証番号と、「30分以内にスマートロックを開錠してご利用を開始してください。」との表示を含む画面を前記端末に表示させ、(上記(イ)a) 前記自転車に前記暗証番号を入力すると、前記自転車が解錠される、(上記(イ)b) 方法 オ 甲5(【ドコモ・バイクシェア】使い方動画○3 「始め方|一日乗車券で利用する」| シェアサイクル解説動画 by cycle.ryde-go.com) (ア)甲5の摘記 本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5には、次の開示がある。 a 0分53秒時点のキャプチャ画像 「 [図:0001434210000012.jpg] 」 なお、利用者の端末の画面には、「自転車番号 TYO3395」、「開錠パスコード 4011」及び「20分以内に自転車の操作機から利用開始操作を実施して下さい。」が表示されている。 b 1分2秒時点のキャプチャ画像 「 [図:0001434210000013.jpg] 」 (イ)甲5記載の技術的事項 上記(ア)で摘記した記載によると、甲5には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 利用者が使用する予定の自転車の自転車番号と、開錠パスコードと、「20分以内に自転車の操作機から利用開始操作を実施して下さい。」との表示を含む画面を前記端末に表示させ、(上記(イ)a) 前記自転車に前記開錠パスコードを入力すると、前記自転車が解錠される、(上記(イ)b) 方法 カ 甲6(特開2018-73002号公報) (ア)甲6の摘記 本件特許の出願前に頒布された、特開2018-73002号公報(平成30年5月10日出願公開。)には、次のとおり記載されている。 「【0011】 [実施形態1] 図1は管理システム1及び自転車2の外観を示す図である。管理システム1は、ポートと呼ばれる駐輪設備で自転車2を貸し出すサービスにおいて用いられる。駐輪設備は、離れた場所に複数設けられてよい。これにより、ユーザは、借用した自転車を借用した場所と異なる場所で返却することが可能である。管理システム1は提示部15を有し、当該提示部15を介して、管理システム1を利用するユーザに各種情報を提示する。 【0012】 図2に示すように自転車2のハンドルバーには、着脱自在に情報端末2aが取り付けられる。情報端末2aは、例えばスマートフォン、フィーチャーフォン、PC(Personal Computer)、タブレット型PC等の任意の端末装置であってよい。情報端末2aにはコントローラ21、提示部22、第1バッテリ23及び通信部24が備えられる。提示部22は例えばモニタであり、自転車2に搭乗するユーザが視認可能なように設けられる。また本実施形態の自転車2のサドル下方のシートチューブ近傍には、第2バッテリ25が取り付けられる。代替例として、コントローラ21、提示部22、第1バッテリ23、通信部24及び第2バッテリ25は自転車2に内蔵されてよい。」 「【0044】 コントローラ14は、入力部13を介して自転車2の貸し出し要求を受け付けると、バッテリ残量が閾値以上の自転車2を複数台特定する。コントローラ14は、特定された自転車2を、図6に示すように提示部15に提示させる。具体的にはコントローラ14は、特定された自転車2に関する情報B2及び情報B3を、図6に示すように選択可能に提示部15に提示させる。このとき提示部15には、バッテリ残量が95%で最大の自転車2が最上部に提示され、バッテリ残量が91%で2番目に大きい自転車2がその下部に提示される。すなわち提示部15は、バッテリ残量が大きい順に自転車2を上から提示する。このとき提示部15は、情報B2と情報B3との背景色を異ならせて判別を容易にしてよい。 【0045】 コントローラ14は選択を受け付けると、選択された自転車2のロックを解除する。これにより当該自転車2は貸し出され、利用可能となる。」 「【図1】 [図:0001434210000014.jpg] 」 「【図6】 [図:0001434210000015.jpg] 」 (イ)甲6記載の技術的事項 上記(ア)で摘記した記載によると、甲6には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 自転車2を貸し出すサービスにおいて用いられる管理システム1において(【0011】、【図1】)、 自転車2は、第1バッテリ23を有する情報端末2aと、第2バッテリ25とを有し(【0012】)、 コントローラ14は、入力部13を介して自転車2の貸し出し要求を受け付けると、バッテリ残量が閾値以上の自転車2を複数台特定し、特定した自転車2に関する識別番号やバッテリ残量を選択可能に提示部15に提示させ(【0044】、【図6】)、 コントローラ14は選択を受け付けると、選択された自転車2のロックを解除する(【0045】)、 方法 (2)本件特許発明1について ア 対比 (ア)本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 a 「利用者が使用する予定の移動体の識別子の取得を促す画面を、前記利用者が使用する端末に表示させる案内ステップ」について 甲1発明の「利用者が使用する予定のスクーターのQRコードのスキャンを促す画面を、前記利用者が使用する端末に表示させ」るとの動作は、利用者にスキャンを案内するステップといえるから、「案内ステップ」と称し得るものである。 甲1発明の「スクーター」は、本件特許発明1の「移動体」に相当する。 技術常識からすれば、甲1発明の「スクーターのQRコード」には、スクーターを特定する情報が含まれるのは明らかである。そうすると、甲1発明の「スクーターのQRコードのスキャンを促す画面」と、本件特許発明1の「移動体の識別子の取得を促す画面」とは、「移動体を特定する情報の取得を促す画面」である点で共通する。 以上を総合すると、本件特許発明1と甲1発明は、「利用者が使用する予定の移動体を特定する情報の取得を促す画面を、前記利用者が使用する端末に表示させる案内ステップ」を有する点で共通し、下記相違点1において相違する。 b 「前記案内ステップを経て取得した前記識別子と、前記識別子に対応する前記移動体のバッテリの残量情報とを含む確認画面を前記端末に表示させる表示制御ステップ」について 甲1発明の「前記電動スクーターを示す「LL4W8」との文字列と、前記文字列に対応する前記電動スクーターのバッテリの残量情報とを含む画面を前記端末に表示させ」るとの動作は、画面の表示制御を行うステップといえるから、「表示制御ステップ」と称し得るものである。 甲1発明の「前記電動スクーターを示す「LL4W8」との文字列」は、電動スクーターを識別する情報と認められるから、「移動体の識別子」といえる。 甲1発明の「前記電動スクーターを示す「LL4W8」との文字列と、前記文字列に対応する前記電動スクーターのバッテリの残量情報とを含む画面」は、当該文字列及びバッテリ残量情報を確認可能な画面であるから、「確認画面」と称し得るものである。 以上を総合すると、本件特許発明1と甲1発明は、「前記移動体の識別子と、前記識別子に対応する前記移動体のバッテリの残量情報とを含む確認画面を前記端末に表示させる表示制御ステップ」を有する点で共通し、下記相違点2において相違する。 c 「前記確認画面において前記利用者による前記端末への第1操作に応じて、前記移動体を走行可能にする操作方法を前記端末に表示させ、かつ、前記利用者の第2操作を検知する検知ステップ」について 甲1発明の「前記画面において、前記利用者による前記端末への「UNLOCK」ボタンのタップに応じて、前記スクーターの走行方法を前記端末に表示させ」るとの動作は、ボタンのタップを検知するステップといえるから、「検知ステップ」と称し得るものである。 甲1発明の「「UNLOCK」ボタンのタップ」は、本件特許発明1の「第1操作」に相当する。 甲1発明の「前記スクーターの走行方法」と、本件特許発明1の「前記移動体を走行可能にする操作方法」は、「前記移動体についての操作方法」である点で共通する。 甲1発明の「足でスクーターを2、3回押し、次に右手の親指でアクセルボタンを押す」点は、本件特許発明1の「第2操作」に相当する。そして、当該第2操作に応じてスクーターが加速し始めるのであるから、スクーターが当該「第2操作を検知」しているのは明らかである。 以上を総合すると、本件特許発明1と甲1発明は、「前記確認画面において前記利用者による前記端末への第1操作に応じて、前記移動体についての操作方法を前記端末に表示させ、かつ、前記利用者の第2操作を検知する検知ステップ」を有する点で共通し、下記相違点3において相違する。 d 「前記検知ステップにおいて前記利用者の前記第2操作を検知した場合に、前記移動体の起動を行う制御処理ステップ」について 甲1発明の「足でスクーターを2、3回押し、次に右手の親指でアクセルボタンを押すと、スクーターが加速し始める」との動作は、電動スクーターの制御処理を行うステップといえるから、「制御処理ステップ」と称し得るものである。 そして、甲1発明と本件特許発明1の両ステップは、「前記移動体の制御処理を行う」点において共通する。 上記cで検討した点も踏まえると、本件特許発明1と甲1発明は、「前記検知ステップにおいて前記利用者の前記第2操作を検知した場合に、前記移動体の制御処理を行う制御処理ステップ」を有する点で共通し、下記相違点4において相違する。 e 「管理方法」について 甲1発明の方法は、電動スクーターの管理を行う方法といえるから、「管理方法」と称し得るものである。 したがって、本件特許発明1と甲1発明は、下記相違点を除き、上記a~dで検討した各ステップを有する管理方法である点で共通する。 (イ)以上のことから、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 管理方法であって、 利用者が使用する予定の移動体を特定する情報の取得を促す画面を、前記利用者が使用する端末に表示させる案内ステップと、 前記移動体の識別子と、前記識別子に対応する前記移動体のバッテリの残量情報とを含む確認画面を前記端末に表示させる表示制御ステップと、 前記確認画面において前記利用者による前記端末への第1操作に応じて、前記移動体についての操作方法を前記端末に表示させ、かつ、前記利用者の第2操作を検知する検知ステップと、 前記検知ステップにおいて前記利用者の前記第2操作を検知した場合に、前記移動体の制御処理を行う制御処理ステップと、を有する 管理方法。 <相違点1> 「案内ステップ」に関し、本件特許発明1は、「利用者が使用する予定の移動体の識別子の取得を促す」のに対し、甲1発明は、「利用者が使用する予定の移動体を特定する情報の取得を促す」ものの、取得される「移動体を特定する情報」が「移動体の識別子」であるか否か不明な点。 <相違点2> 「表示制御ステップ」に関し、本件特許発明1は、「前記案内ステップを経て取得した前記識別子」を表示するのに対し、甲1発明は、「前記移動体の識別子」を表示するものの、当該識別子が「前記案内ステップを経て取得した」ものであるか否か不明な点。 <相違点3> 「検知ステップ」に関し、本件特許発明1は、「前記移動体を走行可能にする操作方法」を表示するのに対し、甲1発明は、前記移動体の走行方法を表示する点。 <相違点4> 「制御処理ステップ」に関し、「前記利用者の前記第2操作を検知した場合」に、本件特許発明1においては、「前記移動体の起動を行う」のに対し、甲1発明においては、前記移動体が加速し始める点。 <相違点5> 本件特許発明1は、「1以上のプロセッサにより実行される」のに対し、甲1発明においては、1以上のプロセッサにより実行されるか否か不明な点。 イ 判断 (ア)相違点3及び4について 事案に鑑み、上記相違点3及び4について検討する。 上記甲1~甲6には、上記(1)のア~カのとおりの事項が記載されているものの、少なくとも、「前記移動体を走行可能にする操作方法」を表示する点(相違点3)、及び、「前記第2操作を検知した場合に、前記移動体の起動を行う」点(相違点4)については、甲1~甲6のいずれにも記載されていないから、甲1発明と甲2~甲6記載の事項を組み合わせても、当該相違点3及び4の構成には至らない。 そして、当該構成と関連して、本件特許の明細書には、「【0100】 また、本実施形態では、通知ステップS13が実行される時点においては、電動自転車(移動体)2は開錠可能状態までしか移行しておらず、開錠状態までは移行していない。このため、本実施形態では、利用者A1が操作することで初めて電動自転車2が開錠状態に移行するため、自動的に開錠状態まで移行する場合と比較して、第三者による不正使用を防ぎやすい、という利点がある。・・・さらに、本実施形態では、利用者A1が意図しない状態で電動自転車2が開錠動作することがないため、利用者A1の安全が確保されやすい。」と記載されており、当該記載を踏まえると、本件特許発明1においては、上記相違点3及び4に関する構成、特に、第1操作とは別に、「走行可能にする操作」又は「第2操作」を設ける構成としたことで、「前記確認画面において前記利用者による前記端末への第1操作」を検知して直ちに「前記移動体の開錠と前記移動体の起動とのうち少なくとも一方を行う」構成と比べて、第三者による不正使用を防ぎやすく、利用者の安全が確保されやすい、との効果を得ることができ、これによって利用者は円滑・確実に移動体を使用できることから、ひいては「移動体を使用する際における利用者の利便性を向上する」(【0004】)との本件特許発明1の課題解決にも資するものと認められる。 したがって、上記相違点3及び4に関する構成は単なる設計的事項ともいえるものではない。 以上を踏まえると甲1発明及び甲2~甲6記載の事項に基づいて相違点3及び4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (イ)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書において、主に相違点3及び4に関連するものとして、次のとおり主張している。これらについて、以下、検討する。 a 特許異議申立書 12頁~13頁 「1d.甲1の2には、確認画面における利用者によるスマートフォンヘの第1操作((3)の「UNLOCK」ボタン操作)に応じて、電動キックボードを走行可能にする操作方法(「Kick start three times, then push throttle button with thumb to ride」(和訳:3回キックスタートして、それから走行するために親指でスロットルボタンを押してください))をスマートフォンに表示させる画面((4))が表示されている様子が示されている。・・・ 1e.甲第1号証の2(5)には、電動キックボードにおいて、利用者の第2操作(電動キックボードの起動を行うためのスロットルボタン(親指の下のボタン)操作)が行われている様子が示されている。なお、動画では、次のナレーションがある。「To start it up, you will want to start pushing the scooter two or three times with your foot then pressing the accelerator button with your right thumb. The scooter should start to accelerate.」(和訳:始動するには、まず足でスクーターを2、3回押し、次に右手の親指でアクセルボタンを押します。すると、スクーターが加速し始めます。) ここで、これに関する出願時の技術常識について説明する。電動キックボードに採用されているこの仕組みは、一般的に「キックスタート機能」や「プッシュスタート方式」と呼ばれている。いきなりモータが作動するのではなく、まずは自力で助走をつける必要があるのには、主に安全面とメカニズム面の2つの理由がある。 一番の理由は、誤操作による急発進を防いで安全性を確保することである。もし停止状態でユーザがうっかりアクセルレバーに触れてしまい、そこからいきなり急加速が始まると、車両の飛び出しや転倒を招く危険がある。そのため、センサが時速3~5km程度の速度を検知して初めてアクセルが有効になるよう制御されている。 また、モータとバッテリヘの負荷を軽減するという側面もある。停止した状態から人間を乗せて動かし始めるには非常に大きなエネルギーが必要であるが、最初の一番重い動き出しを人間の足で行うことで、バッテリの消耗を抑え、航続距離を伸ばすことができる。さらに、モータはある程度回転している状態の方が効率よく動作するため、加速もスムーズで乗り心地が滑らかになる。」 b 特許異議申立書 15頁~16頁 「・・・さらに付け加えれば、当該構成要件1Dについては、甲2の2(3)、甲4の2(2)、甲5の2(2)においても開示されている。・・・具体的には、甲2の2(3)では、移動体を走行可能にする操作方法として、利用者のスマートフォンに、「How to Ride」以下の文字情報が表示されている。甲4の2(2)では、移動体を走行可能にする操作方法として、利用者のスマートフォンに、「30分以内にスマートロックを開錠してご利用を開始してください」という文字情報が表示されている。甲5の2(2)では、移動体を走行可能にする操作方法として、利用者のスマートフォンに、「20分以内に自転車の操作機から利用開始操作を実施してください。」という文字情報が表示されている。また、甲1、甲2、甲4、甲5は、いずれも移動体のシェアリング管理という共通の技術分野に属する。よって、当該構成要件1Dは、甲1、甲2、甲4、甲5の証拠に示されている通り、本件出願時において一般的な技術である。・・・」 「・・・さらに付け加えれば、当該構成要件1Eについては、甲2の2(4)、甲4の2(3)、甲5の2(3)においても開示されている。具体的には、甲2の2(4)では、第2操作として、「I agree」ボタン操作が示されている。 また、その直後の画面として、甲2の2(5)において、「Unlocking」と表示されている。これは、つまり、第2操作が検知されることで、移動体の開錠や起動が実行されることを示している。そして、令和7年2月25日付提出の意見書において、「明細書の段落0100に記載されているように、『利用者A1が操作することで初めて電動自転車2が開錠状態に移行するため、自動的に開錠状態まで移行する場合と比較して、第三者による不正使用を防ぎやすい』との利点があります。また、本願発明1及び本願発明6では、例えば、利用者が移動体を使用できる時間に制限がある場合、または移動体を使用した時間に応じて利用者が使用料を負担する場合において、第1操作を検知した時刻ではなく第2操作を検知した時刻を、利用者が移動体の使用を開始した時刻として扱えます。」との記載があるが、甲2の技術によっても、同様の作用効果を奏する(甲1、甲4、甲5の技術についても同様)。 甲4の2(3)では、第2操作として、電動キックボードの起動を行うための暗証番号入力操作が示されている。甲5の2(3)では、第2操作として、電動キックボードの起動を行うための予約番号入力操作が示されている。また、前述したように、甲1、甲2、甲4、甲5は、いずれも移動体のシェアリング管理という共通の技術分野に属する。 よって、当該構成要件1Eは、甲1、甲2、甲4、甲5の証拠に示されている通り、本件出願時において一般的な技術である。」 c 上記主張に対する検討 (a)本件特許発明1の用語「前記移動体を走行可能にする」及び「前記移動体の起動を行う」に関連するものとして、本件特許の明細書には、次のとおり記載されている。(下線は当審において付与。) 「【0098】 通知画面P6を見た利用者A1は、電動自転車2の操作装置23の電源スイッチを押操作する(S120)。これにより、電動自転車2の制御部21は、操作装置23からの起動信号を受け付けることで、駆動処理を実行してモータ51を起動させ、かつ、錠制御処理を実行してサークル錠6を開錠可能状態から開錠状態へと移行させる(S121)。つまり、本実施形態の端末制御方法では、特定操作(操作装置23の電源スイッチの押操作)は、電動自転車(移動体)2を起動させる操作を兼ねている。これにより、利用者A1は、電動自転車2に乗って走行することが可能である。」 「【0133】 第9の態様に係る端末制御方法では、第8の態様において、特定操作は、移動体(2)を起動させる操作を兼ねている。 【0134】 この態様によれば、移動体(2)を開錠させる操作と、移動体(2)を起動させる操作と、の両方を利用者(A1)が行う場合と比較して、移動体(2)を利用可能となるまでに利用者(A1)が操作すべき回数を低減でき、利用者(A1)の利便性が向上する、という利点がある。」 以上の記載を踏まえると、本件特許発明1の用語「前記移動体を走行可能にする」及び「前記移動体の起動を行う」とは、移動体の開錠やモータ起動といった、移動体を走行不可能な状態から走行可能な状態にすること、又は、移動体を起動すること(いわゆる電源のオン)を含むものと認められる。 (b)上記申立人の主張aについて、甲1発明の「足でスクーターを2、3回押し、次に右手の親指でアクセルボタンを押す」操作(第2操作)は、スクーターを走行させる方法であって、当該操作を行う時点では、すでに移動体は走行可能であり、かつ、起動されていると認められる。甲1発明は、当該操作によって、本件特許発明1のような「前記移動体を走行可能にする」又は「前記移動体の起動を行う」ものとはいえず、甲1発明には、上記相違点3及び4に係る構成が開示されているとはいえない。 (c)また、上記申立人の主張bにおいて、申立人は、甲2には、移動体を走行可能にする操作方法として、利用者のスマートフォンに、「How to Ride」との文字情報が表示されており、さらに、第2操作として「I agree」ボタン操作が示されており、その後の画面において、第2操作が検知されることで、移動体の開錠や起動が実行されることが開示されている旨主張している。 しかしながら、甲2には、「前記スクーターの走行方法を前記端末に表示させ」ることは開示されているとはいえるものの、本件特許発明1のような「前記移動体を走行可能にする操作方法を前記端末に表示させ」ることが開示されているとはいえない。 また、甲2には、「前記利用者による前記端末への「I agree」ボタンのタップに応じて、スクーターの開錠を行う」ことは開示されているといえるものの、本件特許発明1のような、「前記利用者の前記第2操作を検知した場合に、前記移動体の起動を行う」ことが開示されているとはいえない。 (d)上記申立人の主張bにおいて、申立人は、甲4には、移動体を走行可能にする操作方法として、利用者のスマートフォンに「30分以内にスマートロックを開錠してご利用を開始してください」という文字情報が表示されており、第2操作として、起動を行うための暗証番号入力操作が示されていることが記載されている旨主張している。 しかしながら、甲4の「「30分以内にスマートロックを開錠してご利用を開始してください。」との表示」は、利用開始に向けての単なる案内又は注意喚起に過ぎず、本件特許発明1のような「前記移動体を走行可能にする操作方法」とはいえない。 また、甲4には、「前記自転車に前記暗証番号を入力すると、前記自転車が解錠される」ことは開示されているといえるものの、本件特許発明1のような、「前記利用者の前記第2操作を検知した場合に、前記移動体の起動を行う」ことが開示されているとはいえない。なお、上記(1)エ(ア)bのとおり、暗証番号を入力するボタンとは別に電源ボタンも存在することからも、甲4の解錠と本件特許発明1の起動は異なるものと推認される。 (e)上記申立人の主張bにおいて、申立人は、甲5には、移動体を走行可能にする操作方法として、利用者のスマートフォンに「20分以内に自転車の操作機から利用開始操作を実施してください。」という文字情報が表示されており、第2操作として、起動を行うための予約番号入力操作が示されている旨主張している。 しかしながら、甲5についても同様に、本件特許発明1のような「前記移動体を走行可能にする操作方法」と、「前記利用者の前記第2操作を検知した場合に、前記移動体の起動を行う」ことが開示されているとはいえない。 (f)したがって、本件特許発明1の上記相違点3及び4に係る構成は、甲1~甲6のいずれにも開示されておらず、甲1発明及び甲2~甲6に記載の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものともいえないから、異議申立人の主張には理由が無い。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2~甲6に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件特許発明2~6について 本件特許発明2~5は本件特許発明1を引用する。また、本件特許発明6は、本件特許発明1と同等の構成を備える管理システムの発明である。そのため、本件特許発明2~6は、いずれも上記(2)ア(イ)に示した相違点に係る構成を有する。 したがって、上記(2)に示したのと同様の理由により、本件特許発明2~6は、甲1発明及び甲2~甲6に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)申立理由1についてのまとめ 以上のとおり、本件特許発明1~6は、甲1発明及び甲2~甲6に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許発明1~6についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 2 申立理由2(サポート要件違反)について (1)サポート要件の考え方 本決定に際して参照した平成17年行(ケ)第10042号の判決には「特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。」と判示されている。 そこで、本件特許発明がサポート要件を満たすかについて、上記判示事項を参考にしつつ、以下検討する。 (2)本件特許発明の課題 本件特許の明細書には次のとおり記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本開示は、移動体を使用する際における利用者の利便性を向上することのできる管理方法、プログラム、及び管理システムを提供することを目的とする。」 すなわち、本件特許発明の課題は、移動体を使用する際における利用者の利便性を向上することと認められる。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、次のとおり記載されている。(下線は当審において付与。) 「【0094】 確認画面P4を見た利用者A1は、残量情報を確認した上で、電動自転車2を使用する意思がある場合はアイコンP43を、電動自転車2を使用する意思がない場合はアイコンP44を選択する。アイコンP43が選択された場合、つまり利用者A1に電動自転車2の使用意思がある場合(S12:Yes)、端末1は、利用者A1の使用意思の有無を表す確認情報を制御システム3へ送信する(S115)。一方、アイコンP44が選択された場合、つまり利用者A1に電動自転車2の使用意思がない場合(S12:No)、端末1は、再度、表示部13に案内画面P2を表示させる。この場合、利用者A1は、他の電動自転車2の識別子10の取得を試みてもよいし、電動自転車2の使用を断念してもよい。 【0095】 確認情報を受信した制御システム3は、開錠処理を実行する。つまり、制御システム3は、特定処理にて特定された電動自転車2に対して、電動自転車2を施錠状態から開錠可能状態へと移行させる制御情報を送信する(S116)。制御情報を受信した電動自転車2は、錠制御処理を実行することにより、サークル錠6を施錠状態から開錠可能状態へと移行させる(S117)。 【0096】 また、制御システム3は、開錠処理を実行した後に、通知処理を実行することにより、電動自転車2が施錠状態から開錠可能状態へ移行したことを表す通知情報を端末1へ送信する(S118)。通知情報を受信した端末1は、図11に示す通知画面P6を表示部13に表示させる(S13(S119))。つまり、本実施形態の端末制御方法は、出力ステップS7を経て電動自転車(移動体)2が施錠状態から開錠可能状態へと移行したことを知らせる画面(通知画面P6)を、端末1に表示させる通知ステップS13を有している。 【0097】 通知画面P6には、開錠処理が完了して施錠状態から開錠可能状態へ移行したことを表す文字列が表示される。また、通知画面P6には、利用者A1が使用を予定している電動自転車2の識別子10を表す画像P61と、サークル錠6を開錠させるための開錠操作を表す画像P62と、が表示される。画像P62は、電動自転車2の操作装置23を表している。また、画像P62には、操作装置23の電源スイッチを押操作することを促す画像P621が含まれている。 【0098】 通知画面P6を見た利用者A1は、電動自転車2の操作装置23の電源スイッチを押操作する(S120)。これにより、電動自転車2の制御部21は、操作装置23からの起動信号を受け付けることで、駆動処理を実行してモータ51を起動させ、かつ、錠制御処理を実行してサークル錠6を開錠可能状態から開錠状態へと移行させる(S121)。つまり、本実施形態の端末制御方法では、特定操作(操作装置23の電源スイッチの押操作)は、電動自転車(移動体)2を起動させる操作を兼ねている。これにより、利用者A1は、電動自転車2に乗って走行することが可能である。」 「【0100】 また、本実施形態では、通知ステップS13が実行される時点においては、電動自転車(移動体)2は開錠可能状態までしか移行しておらず、開錠状態までは移行していない。このため、本実施形態では、利用者A1が操作することで初めて電動自転車2が開錠状態に移行するため、自動的に開錠状態まで移行する場合と比較して、第三者による不正使用を防ぎやすい、という利点がある。つまり、自動的に開錠状態まで移行する場合であれば、仮に電動自転車2の周囲から利用者A1が一時的に離れているとすると、開錠状態にある電動自転車2を見た第三者が不正使用する可能性がある。これに対して、本実施形態では、一見すると電動自転車2は施錠状態にあるため、電動自転車2を見た第三者が不正使用する可能性を低減することができる。さらに、本実施形態では、利用者A1が意図しない状態で電動自転車2が開錠動作することがないため、利用者A1の安全が確保されやすい。」 (4)判断 ア 上記(3)の記載によれば、本件特許の発明の詳細な説明には、 「前記確認画面において前記利用者による前記端末への第1操作に応じて、前記移動体を走行可能にする操作方法を前記端末に表示させ」ること(【0094】、【0097】)、 「前記利用者の第2操作を検知する」こと(【0098】)、 「前記検知ステップにおいて前記利用者の前記第2操作を検知した場合に、前記移動体の起動を行う」こと(【0098】) が記載されているといえる。 したがって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載された発明といえる。 イ 上記(3)の【0100】の記載によれば、上記アの構成、特に、第1操作とは別に、「走行可能にする操作」又は「第2操作」を設ける構成としたことで、「前記確認画面において前記利用者による前記端末への第1操作」を検知して直ちに「前記移動体の開錠と前記移動体の起動とのうち少なくとも一方を行う」構成と比べて、第三者による不正使用を防ぎやすく、利用者の安全が確保されやすい、との効果を得ることができる。そして、当該構成及び効果によって利用者の利便性が向上すると認められるから、上記(2)の本件特許発明の課題(移動体を使用する際における利用者の利便性を向上する)の解決が実現されるといえる。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、その記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 ウ 以上によれば、本件特許発明1~6についての特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 エ 申立人は、特許異議申立書において、次のとおり主張する。 「ア.「移動体を走行可能にする操作方法」について 発明の詳細な説明(以下、「本明細書」とも称する。)において、当該操作方法として具体的に開示されているのは、段落0097に記載された、移動体2の操作装置23の電源スイッチの押操作のみである。 一方で、請求項の「移動体を走行可能にする操作方法」という表現は、本明細書に記載された電源スイッチの物理的操作のみならず、例えば「端末1の画面上に表示されたソフトスイッチの操作」など、多様な手段を包含する広範な概念である。しかし、本明細書には、移動体2の電源スイッチ押操作以外の具体的な手段について何ら記載がなく、出願時の技術常識に照らしても、当該特定の物理操作から「端末上での操作」等を含む広範な操作方法へと拡張ないし一般化できる合理的根拠は見当たらない。 イ.「利用者の第2操作」について 「第2操作」についても同様に、本明細書の段落0098には、移動体2の操作装置23の電源スイッチの押操作のみが具体的に開示されている。ここで、第1操作については「前記端末への第1操作」と操作対象が限定されているのに対し、第2操作については「利用者の第2操作」とあるのみで、操作対象となる機器の限定すら存在しない。このため、第2操作は「移動体への操作」のみならず「端末への操作」等をも含む、極めて広範な概念を包含するものとなっている。しかしながら、本明細書において、移動体2の電源スイッチ押操作以外の具体的な操作態様は一切開示されていない。したがって、単一の具体的態様から、操作対象を問わない「第2操作」という広範な概念へと拡張ないし一般化することは、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えている。」 当該主張について検討すると、上記ア~ウで検討したとおり、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。したがって、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものではないから、異議申立人の主張には理由が無い。 (5)申立理由2についてのまとめ 以上のとおり、本件特許発明1~6は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件に適合する。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び特許異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700055

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  • 2025-700795異議申立 / 2026-03-09 / 訂正認容CM枠の割当装置、割当方法及び割当プログラム
    共通の審決分類: 121・G06Q、537・G06Q

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