特許異議申立
2025-700060
機器、装置、装着器具、及び盤システム
- 審判番号
- 2025-700060
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-012988
- 登録番号
- 7519617
- 請求日
- 2025年01月10日
- 審決日
- 2026年03月25日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】パナソニックIPマネジメント株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人北斗特許事務所
- 【異議申立人】山本 須恵
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 中屋 裕一郎
- 審判官 山田 由希子
- 分類
- P1651.113-YAA(H02B) / P1651.121-YAA(H02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7519617号発明「機器、装着器具、及び盤システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7519617号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
特許第7519617号の請求項2~8、10、11に係る特許を維持する。
特許第7519617号の請求項1、9に対する特許を異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概略
1 手続の経緯
特許第7519617号の請求項1~11に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年1月29日の出願であり、令和6年7月11日に特許権の設定登録がされ、令和6年7月22日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許について、特許異議申立人山本須恵(以下、「申立人」という。)により、請求項1~11に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、概ね、次のとおりである。
令和7年 1月10日 特許異議の申立て
令和7年 3月31日付け 取消理由通知書
令和7年 6月 2日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 7月 7日 訂正請求書を補正する手続補正書の提出
令和7年 7月23日付け 訂正請求があった旨の通知
令和7年10月29日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和7年12月22日 特許権者による意見書の提出
以下、令和7年7月7日に提出された手続補正書により補正された、令和7年6月2日に提出された訂正請求書に係る訂正を、「本件訂正」という。
なお、令和7年7月23日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、申立人からは指定期間内に応答がなかった。
2 証拠
特許異議申立書に記載されている証拠は以下のとおりである。
甲第1号証:特開2012-146934号公報
甲第2号証:特開2014-107366号公報
甲第3号証:特開平8-240057号公報
甲第4号証:実願昭59-174369号(実開昭61-90214号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
甲第5号証:特開2012-7385号公報
甲第6号証:特開2010-278292号公報
なお、異議申立書に甲第4号証として添付されているものは実願昭59-174369号(実開昭61-90214号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルムの写しであることに鑑み、異議申立書及び証拠説明書における甲第4号証に関する「実全昭61-90214号公報」との記載は、「実願昭59-174369号(実開昭61-90214号)のマイクロフィルム」であると認める。
以下、甲第1号証~甲第6号証を、それぞれ「甲1」~「甲6」という。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3の「前記装着具は、前記取付構造を利用して前記機器本体に取り付けられる、」との記載を、「前記装着具は、前記取付構造を利用して前記機器本体に取り付けられ、前記装着具は、永久磁石を含む、」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4~8、10、11も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4の「請求項1~3のいずれか1項に記載の機器。」との記載を、「請求項2又は3に記載の機器。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項7、8、10、11も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6から、訂正した請求項3及び5と重複する「前記装着具は、永久磁石を含み、」との限定事項を削除する(請求項6の記載を引用する請求項7、8、10、11も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7の「請求項1~6のいずれか1項に記載の機器。」との記載を、「請求項2~6のいずれか1項に記載の機器。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8、10、11も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8の「請求項1~7のいずれか1項に記載の機器。」との記載を、「請求項2~7のいずれか1項に記載の機器。」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項10、11も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10の「請求項1~8のいずれか1項に記載の機器」との記載を、「請求項2~8のいずれか1項に記載の機器」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11の「請求項1~8のいずれか1項に記載の機器」との記載を、「請求項2~8のいずれか1項に記載の機器」に訂正する。
(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の【発明の名称】を、「機器、装置、装着器具、及び盤システム」から「機器、装着器具、及び盤システム」に訂正する。
(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0001】を、「本開示は、一般に機器、装置、装着器具、及び盤システムに関し、より詳細には、筐体に取り付け可能な機器、装置、装着器具、及び盤システムに関する。」から「本開示は、一般に機器、装着器具、及び盤システムに関し、より詳細には、筐体に取り付け可能な機器、装着器具、及び盤システムに関する。」に訂正する。
(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0008】の「本開示の一態様に係る機器は、機器本体と、装着具と、を備える。前記機器本体は、規格化された第1取付対象に取付可能である。前記装着具は、前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である。前記装着具は、永久磁石を含む。」との記載を削除し、「本開示の一態様に係る機器は、機器本体と、装着具と、を備える。前記機器本体は、規格化された第1取付対象に取付可能である。前記装着具は、前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である。前記機器本体は、前記第1取付対象に取り付けるための取付構造を有する。前記装着具は、前記取付構造を利用して前記機器本体に取り付けられる。」との記載を、「本開示の一態様に係る機器は、機器本体と、装着具と、を備える。前記機器本体は、規格化された第1取付対象に取付可能である。前記装着具は、前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である。前記機器本体は、前記第1取付対象に取り付けるための取付構造を有する。前記装着具は、前記取付構造を利用して前記機器本体に取り付けられる。前記装着具は、永久磁石を含む。」に訂正する。
(13)訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0009】を削除する。
2 本件訂正の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項3に係る特許発明の「装着具」について、「永久磁石を含む」との事項を付加し、より具体的に特定するものである。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
本件明細書等には「装着具2は、継鉄8と、永久磁石9と、ハトメリング10と、を備える。」(【0029】)と記載されているから、本件明細書等には、「前記装着具は、永久磁石を含む」ことが記載されていると認められる。
よって、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る訂正は、請求項1~3のいずれか1項を引用する本件訂正前の請求項4を、請求項2又は3を引用するように訂正するものであり、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正は、訂正事項2に係る訂正により請求項3に付加された「前記装着具は、永久磁石を含む」という事項と、請求項6の「前記装着具は、永久磁石を含み、」という事項が重複し、請求項3を引用している請求項6に係る発明が不明確となることを回避するために、本件訂正前の請求項6の「前記装着具は、永久磁石を含み、」という記載を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る訂正は、請求項1~6のいずれか1項を引用する本件訂正前の請求項7を、請求項2~6のいずれか1項を引用するように訂正するものであり、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6について
訂正事項6に係る訂正は、請求項1~7のいずれか1項を引用する本件訂正前の請求項8を、請求項2~7のいずれか1項を引用するように訂正するものであり、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7について
訂正事項7に係る訂正は、請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(8)訂正事項8について
訂正事項8に係る訂正は、請求項1~8のいずれか1項を引用する本件訂正前の請求項10を、請求項2~8のいずれか1項を引用するように訂正するものであり、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(9)訂正事項9について
訂正事項9に係る訂正は、請求項1~8のいずれか1項を引用する本件訂正前の請求項11を、請求項2~8のいずれか1項を引用するように訂正するものであり、引用する請求項の数を減少させるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(10)訂正事項10について
訂正事項10に係る訂正は、訂正事項7に係る訂正により請求項9が削除されることに伴って、特許請求の範囲と明細書の記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(11)訂正事項11について
訂正事項11に係る訂正は、訂正事項7に係る訂正により請求項9が削除されることに伴って、特許請求の範囲と明細書の記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(12)訂正事項12について
訂正事項12に係る訂正は、訂正事項1~2に係る訂正に伴って、特許請求の範囲と明細書の記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(13)訂正事項13について
訂正事項13に係る訂正は、訂正事項7に係る訂正により請求項9が削除されることに伴って、段落【0009】を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
(14)独立特許要件について
本件訂正前のすべての請求項について特許異議の申立てがされているので、独立特許要件は課されない。
(15)一群の請求項について
訂正事項1~訂正事項9において請求項2は文言上の訂正はされていないものの、訂正事項10は発明の名称の訂正であるから全請求項に係る訂正であり、訂正請求書の「6 請求の趣旨」に記載されている通り請求項2についても訂正することが求められている。
ここで、訂正前の請求項1、4、7~11に関し、請求項4、7~11は、請求項1を直接的又は間接的に引用しており、請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1、4、7~11に対応する訂正後の請求項1、4、7~11は、一群の請求項を構成する。
また、訂正前の請求項2、4、7~11に関し、請求項4、7~11は、請求項2を直接的又は間接的に引用しており、請求項2に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項2、4、7~11に対応する訂正後の請求項2、4、7~11は、一群の請求項を構成する。
さらに、訂正前の請求項3~11に関し、請求項4~11は、請求項3を直接的又は間接的に引用しており、請求項3に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項3~11に対応する訂正後の請求項3~11は、一群の請求項を構成する。
そして、これら3つの一群の請求項の間で、訂正前の請求項4、7~11に対応する訂正後の請求項4、7~11が共通するから、これら3つの一群の請求項は組み合わされ、訂正前の請求項1~11に対応する訂正後の請求項1~11が、一群の請求項を構成する。
よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である、訂正前の請求項1~11に対応する訂正後の請求項1~11についてされたものである。
(16)明細書の訂正について
訂正事項10~13における明細書の訂正に係る請求項は請求項1~11であって、本件訂正は当該明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについてされたものであるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第4項に適合する。
(17)まとめ
以上のとおりであるので、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対して請求されたものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~11に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
規格化された第1取付対象に取付可能である機器本体と、
前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である装着具と、を備え、
前記装着具は、継鉄を含み、
前記継鉄が有する上突出部が前記機器本体に設けられた嵌合部に引っ掛かることで、前記装着具は前記機器本体に取り付けられる、
機器。
【請求項3】
規格化された第1取付対象に取付可能である機器本体と、
前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である装着具と、を備え、
前記機器本体は、前記第1取付対象に取り付けるための取付構造を有し、
前記装着具は、前記取付構造を利用して前記機器本体に取り付けられ、
前記装着具は、永久磁石を含む、
機器。
【請求項4】
前記第1取付対象は、レールであって、
前記機器本体は、前記レールを前記レールの幅方向の両側から挟むようにして前記レールに取り付けられる、
請求項2又は3に記載の機器。
【請求項5】
前記取付構造から前記装着具が取り外されている状態において、前記機器本体は前記1取付対象に取り付けられる、
請求項3に記載の機器。
【請求項6】
前記取付構造は、凹部を含み、
前記永久磁石は、前記永久磁石の表面が前記機器本体の表面と面一となるように、前記凹部の底面から突出する、
請求項3又は5に記載の機器。
【請求項7】
前記装着具は、前記機器本体に対して着脱可能である、
請求項2~6のいずれか1項に記載の機器。
【請求項8】
前記機器本体は、環境監視機器又は開閉器を含む、
請求項2~7のいずれか1項に記載の機器。
【請求項9】(削除)
【請求項10】
請求項2~8のいずれか1項に記載の機器が備える前記装着具として用いられる、
装着器具。
【請求項11】
請求項2~8のいずれか1項に記載の機器と、
前記第1取付対象と、を備える、
盤システム。」
第4 取消理由通知の概要
1 本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由は、概ね、次のとおりである。
・請求項1に係る発明は甲2に記載された発明であるから、請求項1に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
・請求項1に係る発明は甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・請求項3~5、7~10に係る発明は甲6に記載された発明であるから、請求項3~5、7~10に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
・請求項3~5、7~10に係る発明は甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3~5及び7~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・請求項11に係る発明は甲6に記載された発明及び甲1や甲2に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・請求項9に係る発明は甲1に記載された発明であるから、請求項9に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
・請求項9に係る発明は甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 本件訂正後の本件特許に対し通知した取消理由は、概ね、次のとおりである。
・請求項2を引用する請求項10に係る発明及び請求項2を引用する請求項4、7、8のいずれかを引用する請求項10に係る発明は甲4に記載された発明であるから、請求項10に係る特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
・請求項2を引用する請求項10に係る発明及び請求項2を引用する請求項4、7、8のいずれかを引用する請求項10に係る発明は甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 本件訂正により、請求項1及び9は削除されたので、以下の第5では、上記取消理由のうち、本件発明3、本件発明3を引用する本件発明4、5、7、8、10、11、本件発明2を引用する本件発明10、及び本件発明2を引用する本件発明4、7、8のいずれかを引用する本件発明10に係る取消理由について検討する。
第5 取消理由について
1 甲1について
甲1の【0034】、【図1】、【図6】より、甲1には、電子機器10Aが支持固定されている電子機器取り付け治具11を含む構造体が記載されていると認められる。
よって、甲1(特に、【0030】~【0046】、【0064】、【0066】、【図1】、【図6】、【図11】)には次の発明(以下、それぞれ、「甲1発明1」、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明1]
「電子機器10Aが支持固定されている電子機器取り付け治具11を含む構造体であって、
前記電子機器取り付け治具11は前面側支持治具20と背面側支持治具30とが一体に連結されたものであり、前記背面側支持治具30にはDINレール43に固定するためのレール取付部54が形成されており、
前記背面側支持治具30には、DINレール43が無くても鉄製の背面壁41に容易に取り付け固定するための磁石55が設けられている、
構造体。」
[甲1発明2]
「電子機器10Aが支持固定されている電子機器取り付け治具11を含む構造体であって、
前記電子機器取り付け治具11は前面側支持治具20と背面側支持治具30とが一体に連結されたものであり、前記背面側支持治具30にはDINレール43に固定するためのレール取付部54が形成されており、
前記背面側支持治具30には、DINレール43が無くても鉄製の背面壁41に容易に取り付け固定するための磁石55が設けられている、
構造体
が備える
前記磁石55。」
2 甲2について
甲2の【0011】~【0028】、【図2】、【図4】より、甲2には、PLC2が取り付けられているベースユニット1と、PLC2が取り付けられるベースユニット1が、ベースユニット1より幅が狭いDINレール3に取り付けられたときに、前記DINレール3からはみ出る前記ベースユニット1の角部分に設けられる補助金具100と、を備えた構造体が記載されていると認められる。
また、甲2の【0021】、【0023】、【図2】、【図4】(3)より、甲2に記載された補助金具100の固定部が、金属製のベースユニット1に固定される磁石104を有することから、前記補助金具100は前記ベースユニット1に対して取り外し可能に装着されることが理解できる。
よって、甲2(特に、【0011】~【0028】、【図2】、【図4】)には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲2発明]
「PLC2が取り付けられているベースユニット1と、
前記PLC2が取り付けられているベースユニット1が、ベースユニット1より幅が狭いDINレール3に取り付けられたときに、前記DINレール3からはみ出る前記ベースユニット1の角部分に設けられる補助金具100と、を備えた構造体であって、
前記補助金具100は、前記ベースユニット1の角部分に固定される固定部と、前記DINレール3が設置される制御盤の盤面4側へ突起して盤面4に接触し、前記ベースユニット1の角部分を支える突起部を備え、
前記補助金具100は前記ベースユニット1に対して取り外し可能に装着され、
前記突起部が、金属で構成される前記盤面4に磁力で固定される磁石103を柱状の先端部分に有し、
前記補助金具100は、前記DINレール3に取り付けた前記ベースユニット1が外力または振動によって傾いて変位しないようにするためのものである
構造体。」
3 甲3について
甲3(特に、【0013】~【0015】、【図1】~【図6】)には次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲3記載事項]
ハウジング2と、前記ハウジング2内に嵌入係止されるマグネット部材3と、上記ハウジング2を機器の開口部1の側板1aに固定するための一対の取付部4,4などから構成されるマグネットキャッチMにおいて、前記マグネット部材3は磁石3aと、前記磁石3aの両側面に吸着された磁性体からなる一対のヨーク3b,3bとからなり、前記ハウジング2に一体突設された凸状係止片10,10に前記各ヨーク3b,3bの中央部に貫通形成された係止孔7,7が遊嵌状に嵌入することで前記マグネット部材3を前記ハウジング2に係止する構造。
4 甲4について
マグネットキャッチは、一般に、磁石の力を利用して扉等が閉まった状態を保持するものであるから、甲4の明細書第2頁第6行~第3頁第12行より、マグネットキャッチに備えられている磁石体2は、扉等の何らかの相手部材に磁気吸着されることが理解でき、明細書第2頁第6行~第3頁第12行、第5図より、2個のスリット1Cを挿通させて前板1Bの外面から突出させるヨーク板2Bの先端は、ヨーク板2Bの先端側の突出した形状の部分であると認められる。
よって、甲4(特に、明細書第2頁第6行~第3頁第12行、第5図)には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲4発明]
「ケース本体1と、
前記ケース本体1の側板開口部1Aから前記ケース本体1内部に挿入され、相手部材に磁気吸着される磁石体2と、を備え、
前記磁石体2が前記ケース本体1内部に挿入された後、ケース蓋4が前記ケース本体1に装着されることによって前記側板開口部1Aが塞がれ、
前記磁石体2は、磁石2Aと、前記磁石2Aの両側面に吸着されている一対のヨーク板2Bとからなり、
前記ヨーク板2Bの先端側の突出した形状の部分を前記ケース本体1の前板1Bに形成された2個のスリット1Cを挿通させて前板1Bの外面から突出させ、磁石体2のケース本体1からの飛び出しは前板1Bによって阻止される、
マグネットキャッチ
に備えられた前記磁石体2。」
5 甲5について
甲5(特に、【0038】、【0047】、【0049】、【0060】~【0062】)には次の事項(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲5記載事項]
マグネットブロック10、一対のヨーク21・22およびケース30を具備するマグネットキャッチ100において、前記マグネットブロック10および前記一対のヨーク21・22を合わせたものは、前記ケース30が具備する筒部31の収容部31aに移動可能に収容され、前記収容部31aの内周面に形成された係合突起31b・31cと、前記一対のヨーク21・22に形成された係合孔21c・22cが嵌る構造。
6 甲6について
甲6の【0025】~【0066】より、甲6には、電子機器100と、機器取付用アダプタ10とからなる構成が記載されており、機器取付用アダプタ10は、電子機器100に取り外し可能に取り付けることができると認められる。
また、甲6の【0040】より、機器取付用アダプタ10は、所定サイズのDINレール200とは別の機器取付部材の平坦な壁面に対して固定することができると認められ、【0026】~【0035】より、電子機器100は、所定サイズのDINレール200の幅方向の両側から挟むことによって所定サイズのDINレール200に取り付けるための構造を有することが認められ、【0055】~【0057】より、機器取付用アダプタ10は、電子機器100が有する所定サイズのDINレール200に取り付けるための構造を利用して電子機器100に取り付けられることが認められる。
よって、甲6(特に、【0025】~【0066】、【図1】~【図10】)には次の発明(以下、それぞれ、「甲6発明1」、「甲6発明2」という。)が記載されていると認められる。
[甲6発明1]
「所定サイズのDINレール200に取付可能である電子機器100と、
前記電子機器100に取り外し可能に取り付けることができ、機器取付部材の平坦な壁面に対して固定することができる機器取付用アダプタ10と、を備え、
前記電子機器100は、前記所定サイズのDINレール200の幅方向の両側から挟むことによって前記所定サイズのDINレール200に取り付けるための構造を有し、
前記機器取付用アダプタ10は、前記電子機器100が有する前記所定サイズのDINレール200に取り付けるための構造を利用して前記電子機器100に取り付けられ、
前記機器取付用アダプタ10には、前記電子機器100を機器取付部材の平坦な壁面の所定の位置に動かないように固定するために使用する螺子80を挿通可能な第1の螺子挿通孔51及び第2の螺子挿通孔52、ならびに、前記電子機器100をパイプPの所定の位置に動かないように固定するために使用する結束バンド82及びホースバンド81を挿通可能な中間バンド挿通孔17及び前記結束バンド82を挿通可能な側部バンド挿通孔14が形成されている、
前記電子機器100と、前記機器取付用アダプタ10とを備える機器。」
[甲6発明2]
「所定サイズのDINレール200に取付可能である電子機器100と、
前記電子機器100に取り外し可能に取り付けることができ、機器取付部材の平坦な壁面に対して固定することができる機器取付用アダプタ10と、を備え、
前記電子機器100は、前記所定サイズのDINレール200の幅方向の両側から挟むことによって前記所定サイズのDINレール200に取り付けるための構造を有し、
前記機器取付用アダプタ10は、前記電子機器100が有する前記所定サイズのDINレール200に取り付けるための構造を利用して前記電子機器100に取り付けられ、
前記機器取付用アダプタ10には、前記電子機器100を機器取付部材の平坦な壁面の所定の位置に動かないように固定するために使用する螺子80を挿通可能な第1の螺子挿通孔51及び第2の螺子挿通孔52、ならびに、前記電子機器100をパイプPの所定の位置に動かないように固定するために使用する結束バンド82及びホースバンド81を挿通可能な中間バンド挿通孔17及び前記結束バンド82を挿通可能な側部バンド挿通孔14が形成されている、
前記電子機器100と、前記機器取付用アダプタ10とを備える機器
が備える
前記機器取付用アダプタ10。」
7 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と甲6発明1を対比する。
ア 甲6発明1の「所定サイズのDINレール200」、「電子機器100」、及び「機器取付用アダプタ10」は、それぞれ本件発明3の「規格化された第1取付対象」、「機器本体」、及び「装着具」に相当する。
イ 甲6発明1の「取り外し可能に取り付ける」ことは、本件発明3の「取り外し可能に装着され」ることに相当し、甲6発明1の「機器取付部材の平坦な壁面」は、電子機器100が取り付けられる所定サイズのDINレール200とは別の取付対象であるから、本件発明3の「前記第1取付対象とは別の第2取付対象」に相当する。
また、甲6発明1の「固定することができる」ことは、本件発明3の「取付可能である」ことに相当する。
したがって、甲6発明1の「前記電子機器100に取り外し可能に取り付けることができ、機器取付部材の平坦な壁面に対して固定することができる機器取付用アダプタ10」は、本件発明3の「前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である装着具」に相当する。
ウ 甲6発明1の「前記所定サイズのDINレール200に取り付けるための構造」は、本件発明3の「前記第1取付対象に取り付けるための取付構造」又は「取付構造」に相当する。
したがって、甲6発明1の「前記電子機器100は、前記所定サイズのDINレール200の幅方向の両側から挟むことによって前記所定サイズのDINレール200に取り付けるための構造を有」することは、本件発明3の「前記機器本体は、前記第1取付対象に取り付けるための取付構造を有」することに相当する。
エ 甲6発明1の「前記電子機器100と、前記機器取付用アダプタ10とを備える機器」は、本件発明3の「機器本体」と、「装着具」とを「備え」た「機器」又は「機器」に相当する。
よって、本件発明3と甲6発明1は、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「規格化された第1取付対象に取付可能である機器本体と、
前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である装着具と、を備え、
前記機器本体は、前記第1取付対象に取り付けるための取付構造を有し、
前記装着具は、前記取付構造を利用して前記機器本体に取り付けられる
機器。」
[相違点1]
本件発明3は、「前記装着具は、永久磁石を含む」ものであるのに対し、甲6発明1は、機器取付用アダプタ10に、電子機器100を機器取付部材の平坦な壁面の所定の位置に動かないように固定するために使用する螺子80を挿通可能な第1の螺子挿通孔51及び第2の螺子挿通孔52、ならびに、前記電子機器100をパイプPの所定の位置に動かないように固定するために使用する結束バンド82及びホースバンド81を挿通可能な中間バンド挿通孔17、及び前記結束バンド82を挿通可能な側部バンド挿通孔14が形成されているものである点。
(2)判断
ア 新規性について
本件発明3は甲6発明1と相違点1において相違するから、本件発明3は甲6発明1ではない。
イ 進歩性について
提出された証拠には、電子機器100を螺子80により動かないように固定することができる機器取付部材の平坦な壁面に対して永久磁石を使用して電子機器100を固定する構成や、電子機器100をパイプPの所定の位置に動かないように固定するために永久磁石を使用する構成は記載されていない。
したがって、本件発明3は、甲6発明1及び甲1~5に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
また、電子機器100を機器取付部材の平坦な壁面の所定の位置に動かないように固定するための構成として、螺子80による固定に変えて永久磁石による固定を採用することが、設計的事項に過ぎないと認められる証拠はなく、電子機器100をパイプPの所定の位置に動かないように固定するための構成として、結束バンド82による固定や、ホースバンド81による固定に変えて永久磁石による固定を採用することが、設計的事項に過ぎないと認められる証拠もない。
したがって、本件発明3は甲6発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
8 本件発明3を引用する本件発明4、5、7、8、11について
本件発明3を引用する本件発明4、5、7、8、11は、本件発明3の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記7(2)と同じ理由により、本件発明3を引用する本件発明4、5、7、8、11は甲6発明1ではなく、甲6発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲6発明1及び甲1~5に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
9 本件発明3を引用する本件発明10について
(1)本件発明3を引用する本件発明10
請求項10には、「請求項2~8のいずれか1項に記載の機器が備える前記装着具として用いられる、装着器具。」と記載されているところ、本件発明3を引用する本件発明10は、上記第3の請求項3の記載を参照すると、次のとおりのものである。
「規格化された第1取付対象に取付可能である機器本体と、
前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である装着具と、を備え、
前記機器本体は、前記第1取付対象に取り付けるための取付構造を有し、
前記装着具は、前記取付構造を利用して前記機器本体に取り付けられ、
前記装着具は、永久磁石を含む、
機器
が備える前記装着具として用いられる、
装着器具。」
(2)対比
本件発明3を引用する本件発明10と甲6発明2を対比すると、上記7(1)と同様の対比に加えて、甲6発明2の「前記機器取付用アダプタ10」は、本件発明3を引用する本件発明10の「前記装着具として用いられる、装着器具」にも相当する。
よって、本件発明3を引用する本件発明10と甲6発明2は、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「規格化された第1取付対象に取付可能である機器本体と、
前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である装着具と、を備え、
前記機器本体は、前記第1取付対象に取り付けるための取付構造を有し、
前記装着具は、前記取付構造を利用して前記機器本体に取り付けられる
機器
が備える前記装着具として用いられる、
装着器具。」
[相違点2]
本件発明3を引用する本件発明10は、「前記装着具は、永久磁石を含む」ものであるのに対し、甲6発明2は、機器取付用アダプタ10に、電子機器100を機器取付部材の平坦な壁面の所定の位置に動かないように固定するために使用する螺子80を挿通可能な第1の螺子挿通孔51及び第2の螺子挿通孔52、ならびに、前記電子機器100をパイプPの所定の位置に動かないように固定するために使用する結束バンド82及びホースバンド81を挿通可能な中間バンド挿通孔17、及び前記結束バンド82を挿通可能な側部バンド挿通孔14が形成されているものである点。
(3)判断
上記相違点2は上記相違点1と同じであるから、上記7(2)と同様の理由により、本件発明3を引用する本件発明10は甲6発明2ではなく、甲6発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
10 本件発明2を引用する本件発明10について
(1)本件発明2を引用する本件発明10
請求項10には、「請求項2~8のいずれか1項に記載の機器が備える前記装着具として用いられる、装着器具。」と記載されているところ、本件発明2を引用する本件発明10は、上記第3の請求項2の記載を参照すると、次のとおりのものである。
「規格化された第1取付対象に取付可能である機器本体と、
前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である装着具と、を備え、
前記装着具は、継鉄を含み、
前記継鉄が有する上突出部が前記機器本体に設けられた嵌合部に引っ掛かることで、前記装着具は前記機器本体に取り付けられる、
機器
が備える前記装着具として用いられる、
装着器具。」
(2)対比
本件発明2を引用する本件発明10と甲4発明とを対比する。
ア 甲4発明の「ケース本体1」、「磁石体2」は、それぞれ、本件発明2を引用する本件発明10の「機器本体」、「装着具」に相当する。
イ 甲4発明では、ケース蓋4がケース本体1にどのように装着されるか不明であるため、磁石体2がケース本体1に対して取り外し可能であるか不明である。
よって、甲4発明の「前記磁石体2」が「ケース本体1の側板開口部1Aから前記ケース本体1内部に挿入され、」「前記ケース本体1内部に挿入された後、ケース蓋4が前記ケース本体1に装着されることによって前記側板開口部1Aが塞がれ、」という事項は、本件発明2を引用する本件発明10の「装着具」が「前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、」という事項との対比において、「装着具」が「前記機器本体に対して装着され、」という事項の限りにおいて一致する。
ウ 甲4発明の「相手部材」は、本件発明2を引用する本件発明10の「第2取付対象」に相当し、甲4発明の「磁気吸着される」という事項は、本件発明2を引用する本件発明10の「取付可能である」に相当する。
エ 甲4発明の「一対のヨーク板2B」ないし「ヨーク板2B」は、本件発明2を引用する本件発明10の「継鉄」に相当し、甲4発明の「磁石2Aと、磁石2Aの両側面に吸着されている一対のヨーク板2Bとからなり、」という事項は、本件発明2を引用する本件発明10の「継鉄を含み、」という事項に相当する。
オ 甲4発明の「前記ヨーク板2Bの先端側の突出した形状の部分を前記ケース本体1の前板1Bに形成された2個のスリット1Cを挿通させて前板1Bの外面から突出させ、磁石体2のケース本体1からの飛び出しは前板1Bによって阻止される、」という事項は、本件発明2を引用する本件発明10の「前記継鉄が有する上突出部が前記機器本体に設けられた嵌合部に引っ掛かることで、前記装着具は前記機器本体に取り付けられる、」という事項に相当する。
カ 甲4発明の「マグネットキャッチ」は、本件発明2を引用する本件発明10の「機器」に相当し、甲4発明の「マグネットキャッチに備えられた前記磁石体2」は、本件発明2を引用する本件発明10の「機器が備える前記装着具として用いられる、装着器具」に相当する。
よって、本件発明2を引用する本件発明10と甲4発明は、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「機器本体と、
第2取付対象に取付可能である装着具と、を備え、
前記装着具は、継鉄を含み、
前記継鉄が有する上突出部が前記機器本体に設けられた嵌合部に引っ掛かることで、前記装着具は前記機器本体に取り付けられる、
機器
が備える前記装着具として用いられる、
装着器具。」
[相違点3]
本件発明2を引用する本件発明10の「機器本体」は「規格化された第1取付対象に取付可能である」のに対し、甲4発明のケース本体1は、規格化された第1取付対象に取付可能であるか否か不明である点。
[相違点4]
本件発明2を引用する本件発明10の「装着具」は「前記機器本体に対して取り外し可能に装着され」るのに対し、甲4発明の磁石体2はケース本体1に対して装着されるものの、取り外し可能であるか否か不明である点。
[相違点5]
本件発明2を引用する本件発明10の「第2取付対象」は「前記第1取付対象とは別の」ものであるのに対し、甲4発明の相手部材は、前記第1取付対象とは別のものであるか否か不明である点。
(3)判断
事案に鑑み、上記相違点4について検討する。
提出された証拠には、相違点4に係る構成は記載されていないから、本件発明2を引用する本件発明10は、甲4発明及び甲1~3、5~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、甲4発明において、ケース蓋4をケース本体1に取り外し可能に装着し、結果的に、磁石体2がケース本体1に対して取り外し可能とすることが、設計的事項に過ぎないと認められる証拠はない。
よって、本件発明2を引用する本件発明10は甲4発明ではなく、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲4発明及び甲1~3、5~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
11 本件発明2を引用する本件発明4、7、8のいずれかを引用する本件発明10について
本件発明2を引用する本件発明4、7、8のいずれかを引用する本件発明10は、本件発明2を引用する本件発明10の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記10(3)と同様の理由により、本件発明2を引用する本件発明4、7、8のいずれかを引用する本件発明10は甲4発明ではなく、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲4発明及び甲1~3、5~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
12 小括
以上のとおりであるから、本件発明3、本件発明3を引用する本件発明4、5、7、8、10、11、本件発明2を引用する本件発明10、及び本件発明2を引用する本件発明4、7、8のいずれかを引用する本件発明10は、取消理由によって取り消すことができない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由の概要は、次のとおりである。
・請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項4、7、8、10、11に係る発明は甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4、7、8、10、11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・請求項1に係る発明及び請求項1を引用する請求項4、7、8、10、11に係る発明は甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4、7、8、10、11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・請求項2に係る発明及び請求項2を引用する請求項4、7、8、10、11に係る発明は甲1に記載された発明及び甲3~5に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、4、7、8、10、11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・請求項2に係る発明及び請求項2を引用する請求項4、7、8、10、11に係る発明は甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲3~5に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、4、7、8、10、11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・請求項6に係る発明は甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
本件訂正により、請求項1及び9は削除されたので、以下では、上記申立て理由のうち、本件発明2、本件発明2を引用する本件発明4、7、8、10、11、及び本件発明6に係る申立て理由について検討する。
2 本件発明2について
(1)対比
本件発明2と甲1発明1を対比する。
ア 甲1発明1の「DINレール43」は本件発明2の「規格化された第1取付対象」に相当し、甲1発明1の「固定する」ことは本件発明2の「取付可能である」ことに相当する。
そして、甲1発明1の「電子機器10Aが支持固定されている電子機器取り付け治具11」に関し、「前記電子機器取り付け治具11は前面側支持治具20と背面側支持治具30とが一体に連結されたものであり、前記背面側支持治具30にはDINレール43に固定するためのレール取付部54が形成されて」いることから、「電子機器10Aが支持固定されている電子機器取り付け治具11」は「DINレール43に固定する」ものである。
したがって、甲1発明1の「DINレール43に固定する」「電子機器10Aが支持固定されている電子機器取り付け治具11」は本件発明2の「規格化された第1取付対象に取付可能である」「機器本体」に相当する。
イ 甲1発明1の「鉄製の背面壁41」は、DINレール43とは別の取付対象であるから、本件発明2の「前記第1取付対象とは別の第2取付対象」に相当する。
また、甲1発明1の「容易に取り付け固定する」こと及び「設けられている」ことは、それぞれ、本件発明2の「取付可能である」こと及び「装着され」ることに相当し、甲1発明1の「磁石55」は本件発明2の「装着具」に相当する。
したがって、甲1発明1の「前記背面側支持治具30には、DINレール43が無くても鉄製の背面壁41に容易に取り付け固定するための磁石55が設けられている」という事項は本件発明2の「前記機器本体に対して取り外し可能に装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である装着具と、を備え」るという事項との対比において、「前記機器本体に対して装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である装着具と、を備え」るという事項の限りにおいて一致する。
ウ 甲1発明1の「構造体」は本件発明2の「機器」に相当する。
よって、本件発明2と甲1発明1は、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「規格化された第1取付対象に取付可能である機器本体と、
前記機器本体に対して装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である装着具と、を備える
機器。」
[相違点6]
本件発明2は、装着具が前記機器本体に対して「取り外し可能に」装着されているのに対し、甲1発明1は、磁石55が、電子機器10Aが支持固定されている電子機器取り付け治具11に装着されてはいるものの、取り外し可能に装着されているか不明な点。
[相違点7]
本件発明2は、装着具が「継鉄を含み」、「前記継鉄が有する上突出部が前記機器本体に設けられた嵌合部に引っ掛かることで、前記装着具は前記機器本体に取り付けられる」のに対し、甲1発明1は、磁石55が継鉄を含まず、継鉄による取り付けの構成も有さない点。
(2)判断
上記相違点6について検討する。
甲2発明の、盤面4に磁力で固定される磁石103を有した突起部を備えた補助金具100は、ベースユニット1に対して取り外し可能に装着されるものではある。
しかしながら、甲2発明の、盤面4に磁力で固定される磁石103を有した突起部を備えた補助金具100は、DINレール3に取り付けたベースユニット1が外力または振動によって傾いて変位しないようにするためのものであるから、甲1発明1のDINレール43への取り付けを前提としない磁石55とは役割が異なるものである。
したがって、甲1発明1の磁石55に、甲2発明の盤面4に磁力で固定される磁石103を有した突起部を備えた補助金具100をベースユニット1に対して取り外し可能に装着する構成を適用することで、前記磁石55を電子機器取り付け治具11に対して取り外し可能とする動機付けがあるとは認められない。
また、甲1発明1の磁石55を電子機器取り付け治具11に対して取り外し可能とすることが設計的事項に過ぎないと認められる証拠もない。
よって、甲1発明1において、上記相違点6に係る本件発明2の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
上記相違点7について検討する。
甲3記載事項、甲4発明、甲5記載事項はいずれもマグネットキャッチに係るものであり、甲1発明1の電子機器10Aが支持固定されている電子機器取り付け治具11を含む構造体とは技術分野が異なる。
したがって、甲1発明1に、甲3記載事項、甲4発明、甲5記載事項のようなマグネットキャッチの分野で周知の構成を適用する動機付けがあるとは認められない。
また、甲1発明1の磁石55に上突出部を有する継鉄を付加し、電子機器取り付け治具11に嵌合部を設け、前記継鉄が有する前記上突出部が前記電子機器取り付け治具11に設けられた前記嵌合部に引っ掛かることで、前記磁石55が電子機器取り付け治具11に取り付けられる構成とすることが、設計的事項に過ぎないと認められる証拠ない。
よって、甲1発明1において、上記相違点7に係る本件発明2の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、本件発明2は、甲1発明1、ならびに、甲3記載事項、甲4発明及び甲5記載事項のような周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲1発明1、甲2発明、ならびに、甲3記載事項、甲4発明及び甲5記載事項のような周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3 本件発明2を引用する本件発明4、7、8、11について
本件発明2を引用する本件発明4、7、8、11は、本件発明2の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記2(2)と同じ理由により、本件発明2を引用する本件発明4、7、8、11は、甲1発明1、ならびに、甲3記載事項、甲4発明及び甲5記載事項のような周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲1発明1、甲2発明、ならびに、甲3記載事項、甲4発明及び甲5記載事項のような周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
4 本件発明2を引用する本件発明10について
(1)本件発明2を引用する本件発明10
本件発明2を引用する本件発明10は、上記第5の10(1)のとおりである。
(2)対比
本件発明2を引用する本件発明10と甲1発明2を対比すると、上記2(1)と同様の対比に加えて、甲1発明2の「前記磁石55」は、本件発明2を引用する本件発明10の「前記装着具として用いられる、装着器具」にも相当する。
よって、本件発明2を引用する本件発明10と甲1発明2は、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「規格化された第1取付対象に取付可能である機器本体と、
前記機器本体に対して装着され、前記第1取付対象とは別の第2取付対象に取付可能である装着具と、を備える
機器
が備える前記装着具として用いられる、
装着器具。」
[相違点8]
本件発明2を引用する本件発明10は、装着具が前記機器本体に対して「取り外し可能に」装着されているのに対し、甲1発明2は、磁石55が、電子機器10Aが支持固定されている電子機器取り付け治具11に装着されてはいるものの、取り外し可能に装着されているか不明な点。
[相違点9]
本件発明2を引用する本件発明10は、装着具が「継鉄を含み」、「前記継鉄が有する上突出部が前記機器本体に設けられた嵌合部に引っ掛かることで、前記装着具は前記機器本体に取り付けられる」のに対し、甲1発明2は、磁石55が継鉄を含まず、継鉄による取り付けの構成も有さない点。
(3)判断
上記相違点8、9はそれぞれ上記相違点6、7と同じであるから、上記2(2)と同様の理由により、本件発明2を引用する本件発明10は、甲1発明2、ならびに、甲3記載事項、甲4発明及び甲5記載事項のような周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、甲1発明2、甲2発明、ならびに、甲3記載事項、甲4発明及び甲5記載事項のような周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
5 本件発明6について
本件発明6は、本件発明3の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記第5の7(2)と同じ理由により、甲6発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 小括
以上のとおりであるから、本件発明2、本件発明2を引用する本件発明4、7、8、10、11、及び本件発明6は、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によって取り消すことができない。
第7 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書において、上記相違点6(特許異議申立書では相違点3)に関し、磁石を取り外し可能に装着するか否かは適宜定める設計事項であるし、また、甲2に開示されているように当業者が容易になし得るところである旨、主張するが、上記第6の2(2)に示したとおり、当該主張は採用できない。
また、申立人は特許異議申立書において、上記相違点7(特許異議申立書では相違点4)に関し、磁石に継鉄(ヨーク)を備えるようにすることや、磁石の周りに配置した継鉄(ヨーク)を、継鉄を支えるものに結合する際に、突部を凹部に挿入させて行うことは周知であり、このような周知の構成は甲3~5に開示されている旨、主張するが、上記第6の2(2)に示したとおり甲3~5はマグネットキャッチに関する構成が開示されているものであり、甲1発明の技術分野で磁石に継鉄(ヨーク)を備えるようにすることや、磁石の周りに配置した継鉄(ヨーク)を、継鉄を支えるものに結合する際に、突部を凹部に挿入させて行うことが周知であることを示す証拠ではないため、当該主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件の請求項2~8、10、11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項2~8、10、11に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
本件の請求項1、9に係る特許は、本件訂正により削除され、特許異議の申立ての対象が存在しなくなったため、当該特許に係る申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700060