特許異議申立
2025-700285
水洗大便器
- 審判番号
- 2025-700285
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-028988
- 登録番号
- 7546842
- 請求日
- 2025年03月10日
- 審決日
- 2026年03月24日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】TOTO株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】▲高▼畑 明久
- 審判長/審判官
- 審判長 秋田 将行
- 審判官 小林 俊久
- 審判官 太田 恒明
- 分類
- P1651.113-ZAA(E03D) / P1651.121-ZAA(E03D) / P1651.537-ZAA(E03D) / P1651.851-ZAA(E03D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7546842号発明「水洗大便器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7546842号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。
特許第7546842号の請求項1-3に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7546842号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和3年2月25日の出願であって、令和6年7月17日付けで特許査定がなされるとともに同年8月30日に特許権の設定登録がなされ、同年9月9日に特許掲載公報が発行された。
本件特許の特許異議の申立ての主な経緯は次のとおりである。
令和7年 3月10日 特許異議申立人高畑明久(以下「特許異議
申立人」という。)による本件特許に対す
る特許異議の申立て
6月25日付け 取消理由通知書
8月29日 特許権者TOTO株式会社(以下「特許権
者」という。)による訂正請求書、意見書
の提出
10月14日 特許異議申立人による意見書、証拠の提出
11月10日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和8年 1月 9日 特許権者による訂正請求書、意見書の提出
2月24日 特許異議申立人による意見書の提出
なお、令和7年8月29日提出の訂正請求書でされた訂正の請求は、令和8年1月9日提出の訂正請求書で新たな訂正の請求がされたことにより取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。
第2 訂正の適否
令和8年1月9日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の適否について検討する。
1 訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、令和8年1月9日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める、というものである。
本件訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記ボウル部に洗浄水を吐水し、旋回流を形成する吐水部と、前記リム部の内周面は、前記ボウル部の側方領域に設けられる側面部と、前記ボウル部の前方領域に設けられる前面部と、前記ボウル部の後方領域に設けられる後面部と、を備え、前記吐水部は側面部に設けられ、前記側面部の垂直面に対する傾斜角度は、前記前面部又は前記後面部の垂直面に対する傾斜角度よりも大きい水洗大便器。」と記載されているものを、「前記リム部の内周面の下方に設けられ、洗浄水を旋回方向に導く棚面状の棚部と、前記リム部の内周面と前記棚部とを接続する連結部と、前記リム部の内周面の上方側に形成されるオーバーハング部と、前記ボウル部に洗浄水を吐水し、旋回流を形成する吐水部と、前記リム部の内周面は、前記ボウル部の側方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側側面部と、前記ボウル部の前方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側前面部と、前記ボウル部の後方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側後面部と、を備え、前記吐水部は側面部に設けられ、前記吐水部は前起ボウル部を前後方向に二等分する中心軸線よりも後方に設けられ、前記下側側面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度は、前記下側前面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度よりも大きい水洗大便器。」に訂正する(請求項1の記載を直接的または間接的に引用する請求項2、3も同様に訂正する)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記リム部の内周面の下方には、洗浄水を旋回方向に導く棚面状の棚部を備え、前記側方領域の前記棚部の水平面に対する傾斜角度は、前記前方領域又は前記後方領域の前記棚部の水平面に対する傾斜角度よりも大きい請求項1に記載の水洗大便器。」と記載されているものを、「前記棚部は、前記連結部と接続し断面視で直線状の棚部側直線部を含み、前記側方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平面に対する傾斜角度は、前記前方領域又は前記後方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平面に対する傾斜角度よりも大きい請求項1に記載の水洗大便器。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記側方領域の前記棚部の水平方向の幅は、前記前方領域又は前記後方領域の前記棚部の水平方向の幅よりも小さい請求項2に記載の水洗大便器。」と記載されているものを、「前記側方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平方向の幅は、前記前方領域又は前記後方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平方向の幅よりも小さい請求項2に記載の水洗大便器。」に訂正する。
2 一群の請求項
訂正前の請求項1~3について、請求項2、3は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項1~3は、特許法120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正事項1のうち、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記ボウル部に洗浄水を吐水し、」の前に、「前記リム部の内周面の下方に設けられ、洗浄水を旋回方向に導く棚面状の棚部と、前記リム部の内周面と前記棚部とを接続する連結部と、前記リム部の内周面の上方側に形成されるオーバーハング部と、」を加えた訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた「水洗大便器」が備える「リム部」の構成について限定したものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正については、本件特許の明細書の【0011】、【0012】、【0015】、【0019】~【0022】、【0024】~【0027】及び図1~図4の記載に基づくものである(「棚部」及び「連結部」については、特に、【0011】に、「ボウル部2の上部には、棚面状に形成された棚部7が形成されており、棚部7がリム部3と接続されている。リム部3は、その内周壁にリム内周面8(内周面)が形成されており、リム吐水部4から吐水された洗浄水は、棚部7及びリム内周面8上を流れ、ボウル部2を周方向に旋回する旋回流を形成する。」と記載され、【0019】に、「図2に示すよう、前方領域(A)において、棚状に形成された棚部7は、水平方向に平坦状に、長さLAとして形成されており、棚部7の水平方向外方の端部は、曲率を有する連結部10によって、前面部8Aに接続される。」と記載され、【0024】に、「右側側方領域(BR)において、・・・棚部7の水平方向外方の端部は、曲率を有する連結部10によって、側面部8BRに接続される。」と記載され、「オーバーハング部」については、特に、【0020】に、「本発明の第一実施形態においては、上側前面部8A2のさらに上方の傾斜面11は、オーバーハングするよう水平方向の外方から内方に傾斜して設けられており、リム部3の上面であるリム部上面12に連続するよう設けられている。」と記載され、【0025】に「本発明の第一実施形態においては、上側側面部8BR2のさらに上方の傾斜面11は、オーバーハングするように設けられており、リム部3の上面であるリム部上面12に連続するよう設けられている。」と記載されている。)から、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 訂正事項1のうち、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記吐水部は側面部に設けられ、」の後に、「前記吐水部は前起ボウル部を前後方向に二等分する中心軸線よりも後方に設けられ、」を加えた訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた「水洗大便器」が備える「吐水部」の位置について限定したものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正については、本件特許の明細書の【0011】、【0012】、【0015】、【0019】~【0022】、【0024】~【0027】及び図1~図4の記載に基づくものである(「吐水部」の位置については、特に、【0012】に、「水洗大便器1においては、ボウル部2の上面視において、ボウル部2を前後方向に二等分するように水平左右方向に延びる中心軸線を「X」で示し、・・・」と記載され、【0015】に、「リム吐水部4は、水平前後方向の中心軸線Yに対して、右側(R)に設けられており、より具体的には、右側(R)の側方領域(C)のリム部3に位置している。」と記載され、図1、図4には、吐水部4が、ボウル部2を前後方向に二等分する中心軸線Xよりも後方に設けられることが示されている。)から、本件特許の特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
ウ 訂正事項1のうち、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記ボウル部に洗浄水を吐水し、旋回流を形成する吐水部と、前記リム部の内周面は、前記ボウル部の側方領域に設けられ」と「側面部と、」の間と、「前記ボウル部の前方領域に設けられ」と「前面部と、」の間と、「前記ボウル部の後方領域に設けられ」と「後面部と、」の間のそれぞれに、「、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側」を加え、また、「前記側面部」と「の垂直面に対する傾斜角度は、」の間に「の前記内周面側直線部」を加えるとともに、当該「前記側面部」を「前記下側側面部」とし、さらに、「前記前面部又は前記後面部」のうちの「前記前面部」を「前記下側前面部」とするとともに「又は前記後面部」を削除し、続く「の垂直面に対する傾斜角度よりも大きい」の前に「の前記内周面側直線部」を加えた訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた「側面部」、「前面部」、「後面部」の断面視形状について限定し、「垂直面に対する傾斜角度」を比較する対象部位について限定したものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正は、「リム部の内周面」の「側面部」、「前面部」、「後面部」について、それぞれの断面視形状を特定して、「垂直面に対する傾斜角度」を比較する対象部位を明らかにしたものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正については、本件特許の明細書の【0011】、【0012】、【0015】、【0019】~【0022】、【0024】~【0027】及び図1~図4の記載に基づくものである(「側面部」、「前面部」、「後面部」におけるリム部の内周面の「下側」の形状については、特に、【0020】に、「さらに、前面部8Aは、連結部10と接続する下側前面部8A1と上側前面部8A2から構成されており、ボウル部2に露出し、上下方向に延出するように構成されている。」と記載され、【0021】に、「また下側前面部8A1は垂直面に対する傾斜角度が、β1(度)となるように構成されている。・・・前面部8A全体が直線状に形成される場合には、下側前面部8A1及び上側前面部8A2を含んだ前面部8A全体の傾斜角度をβ1としてもよい。」と記載され、【0022】に、「上記のとおり、図2を用いて、前面部8Aの構成について説明したが、後面部8Bについても同様の構成である・・・」と記載され、【0026】には、「下側側面部8BR1は垂直面に対する傾斜角度が、β2(度)となるように構成されている。・・・側面部8BR全体が直線状に形成される場合には、下側側面部8BR1及び上側側面部8BR2を含んだ側面部8BR全体の傾斜角度をβ2としてもよい。」と記載されている。また、図2、図3において、「リム部の内周面」が、棚部から連なる下側の一部に「断面視で直線状の内周面側直線部を含む」ものでないとはいえない。)から、本件特許の特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2) 訂正事項2について
訂正事項2のうち、本件特許の特許請求の範囲の請求項2の、「前記リム部の内周面の下方には、洗浄水を旋回方向に導く棚面状の棚部を備え、」とされる特定事項の削除については、請求項2が引用する請求項1において、上記訂正事項1により、「前記リム部の内周面の下方に設けられ、洗浄水を旋回方向に導く棚面状の棚部と、」を備えることが追加されたことに伴うものである。
次に、本件特許の特許請求の範囲の請求項2に、「前記棚部は、前記連結部と接続し断面視で直線状の棚部側直線部を含み、」を加えるとともに、「前記側方領域」の「前記棚部」と、「の水平面に対する傾斜角度は、」の間に、「の前記棚部側直線部」を加え、「前記前方領域又は前記後方領域」の「前記棚部」と、「の水平面に対する傾斜角度は、」の間に、「の前記棚部側直線部」を加えた訂正は、訂正前の請求項2に記載されていた「棚部」の断面視形状について限定し、「水平面に対する傾斜角度」を比較する対象部位について限定したものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正は、「棚部」の断面視形状を特定して、「水平面に対する傾斜角度」を比較する対象部位を明らかにしたものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正については、本件特許の明細書の【0021】、【0026】、【0029】及び図2~図3の記載に基づくものである(特に、図2、図3において、「棚部」は、リム部の内周面から連なる部位に「断面視で直線状の棚部側直線部を含む」ものである。)から、本件特許の特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3) 訂正事項3について
本件特許の特許請求の範囲の請求項3に記載された、「前記側方領域」の「前記棚部」と、「の水平方向の幅は、」の間に「の前記棚部側直線部」を加え、「前記前方領域又は前記後方領域の前記棚部」と、「の水平方向の幅よりも小さい」の間に「の前記棚部側直線部」を加えた訂正事項3の訂正は、訂正前の請求項3に記載されていた「水平方向の幅」を比較する対象部位について限定したものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該訂正は、「水平方向の幅」を比較する対象部位を明らかにしたものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き3号に掲げる、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、当該訂正については、本件特許の明細書の【0019】、【0024】、【0028】及び図2~図3の記載に基づくものであるから、本件特許の特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、また実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
また、訂正事項1~3に係る訂正については、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものを含むが、訂正事項1~3は、特許異議の申立てがされている請求項1~3に係る訂正であり、訂正事項1~3による特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正後の請求項1~3に係る発明について、同条9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項1~3に係る発明(以下「本件訂正発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
水洗大便器であって、
鉢状の汚物受け面を有するボウル部と、
前記ボウル部の上部に設けられたリム部と、
前記リム部の内周面の下方に設けられ、洗浄水を旋回方向に導く棚面状の棚部と、
前記リム部の内周面と前記棚部とを接続する連結部と、
前記リム部の内周面の上方側に形成されるオーバーハング部と、
前記ボウル部に洗浄水を吐水し、旋回流を形成する吐水部と、
前記リム部の内周面は、前記ボウル部の側方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側側面部と、前記ボウル部の前方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側前面部と、前記ボウル部の後方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側後面部と、
を備え、
前記吐水部は側面部に設けられ、前記吐水部は前記ボウル部を前後方向に二等分する中心軸線よりも後方に設けられ、
前記下側側面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度は、前記下側前面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度よりも大きい水洗大便器。
【請求項2】
前記棚部は、前記連結部と接続し断面視で直線状の棚部側直線部を含み、
前記側方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平面に対する傾斜角度は、前記前方領域又は前記後方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平面に対する傾斜角度よりも大きい請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記側方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平方向の幅は、前記前方領域又は前記後方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平方向の幅よりも小さい請求項2に記載の水洗大便器。」
第4 特許異議申立理由の概要、証拠、取消理由通知(決定の予告)における取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が申立書において主張する申立理由の概要は、次のとおりである。
・理由1
特許法29条1項(同法113条2号)
本件特許発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明と同一である。
本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明と同一である。
・理由2
特許法29条2項(同法113条2号)
本件特許発明1~3は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。
・理由3
特許法36条6項1号(同法113条4号)
本件特許発明1~3は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
・理由4
特許法36条6項2号(同法113条4号)
本件特許発明1~3は明確でない。
2 証拠
特許異議申立人が申立書に添付する証拠として提出した甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、及び令和7年10月15日提出の意見書に添付する証拠として提出した甲第4号証及び甲第5号証は以下のとおりであり、いずれも、本件特許(特願2021-28988号、令和3年2月25日出願)の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である(以下、甲第1号証等を「甲1」等という。)
(申立書に添付したもの)
・甲1:米国特許第10060113号明細書(平成30年(2018年)8月28日発行)
・甲2:特表2020-522629号公報(令和2年7月30日公表)
・甲3:特開2005-98005号公報(平成17年4月14日出願公開)
(令和7年10月15日提出の意見書に添付したもの)
・甲4:特開2013-44178号公報(平成25年3月4日出願公開)
・甲5:特開2009-97172号公報(平成21年5月7日出願公開)
3 取消理由通知(決定の予告)における取消理由の概要
本件訂正の前の請求項1~3(令和7年8月29日提出の訂正請求書による訂正後の請求項1~3)に係る特許に対して、合議体が令和7年11月10日付けの取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
・取消理由4(進歩性)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
具体的には、本件特許発明1及び2は、甲1発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明3は、甲1発明、甲3記載技術及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許発明1は、甲2発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由4(進歩性)について
1-1 甲1~甲5の記載
(1) 甲1
ア 記載事項
取消理由通知(決定の予告)で引用した甲1には以下の事項が記載されている(下線は合議体が付した。以下同様。)。
(ア) 「Recently, there has been increased interest in designing toilets that do not include a typical rim for distributing water about the bowl. Some of these designs incorporate a bowl design that includes features intended to keep the water swirling about the bowl from splashing upward toward a user, such as a top portion of the bowl that curves inward toward the center of the bowl to create a “channel” in which the water will travel (see, e.g., FIG. 1A). Such features result in an “undercut” configuration for the bowl, which may undesirably increase the overall cost to manufacture the toilet bowl since additional molding steps may be required to form the undercut features. It would be advantageous to provide a rimless toilet that is configured to prevent water from splashing out of the bowl, but that does not include an undercut feature such as that described above.」(第2欄7~21行)
(合議体による仮訳)
「最近、ボウル内に水を流すための典型的な縁を含まない便器の設計に対する関心が高まっている。これらの設計のいくつかは、水が移動する水路を形成するためにボウルの中心に向かって内側に湾曲するボウルの上側部分(例えば、図1Aを参照)など、ボウルについて旋回する水が使用者に向かって上方に飛散しないようにすることを意図した特徴を含むボウル設計を取り入れている。このような特徴は、ボウルのアンダーカット構成を生じ、アンダーカットの特徴を形成するために追加の成形工程が必要となる可能性があるため、便器を製造するための全体的なコストを望ましくないほど増大させる可能性がある。水がボウルから飛散するのを防止するように構成された、上述のようなアンダーカット特徴を含まない縁なし便器を提供することが有利であろう。」
(イ) 「BRIEF DESCRIPTION OF THE DRAWINGS
FIG. 1A illustrates a cutaway view of a prior art rimless toilet.
FIG. 1B illustrates a perspective view of another prior art rimless toilet.
FIG. 2 illustrates a perspective view of a rimless toilet according to an exemplary embodiment.
FIG. 3 is another perspective view of the rimless toilet shown in FIG. 2.
FIG. 4 is a top perspective view of the rimless toilet shown in FIG. 2.
FIG. 5 illustrates a perspective view of a rimless toilet, according to another exemplary embodiment.
FIG. 6 is a top perspective view of the rimless toilet shown in FIG. 5.
FIG. 7 is a cross-sectional view of the rimless toilet shown in FIG. 6, taken along the line 7-7.
FIG. 8 is a cross-sectional view of the rimless toilet shown in FIG. 6, taken along the line 8-8.
・・・
FIG. 15 is a rimless toilet according to another exemplary embodiment that does not include an elongated shelf or terrace for directing water around the inner surface of the bowl.
FIG. 16A is a cross-sectional view of a rimless toilet having a short shelf which does not extend to a forward portion of a toilet bowl.
FIG. 16B is a cross-sectional view of a rimless toilet having a shelf extending to a forward portion of the bowl and a rear portion of the bowl, according to an exemplary embodiment.
FIG. 16C is a cross-sectional view illustrating the comparison between the rimless toilets shown in FIGS. 16A and 16B.」(第3欄32行~第4欄10行)
(合議体による仮訳)
「図面の簡単な説明
図1Aは、先行技術の縁なし便器の切断面図である。
図1Bは、別の先行技術の縁なし便器の透視図を示す。
図2は、例示的な実施形態による縁無し便器の透視図である。
図3は、図2に示す縁なし便器の別の透視図である。
図4は、図2に示す縁なし便器の上面透視図である。
図5は、別の例示的な実施形態による縁無し便器の透視図である。
図6は、図5に示す縁なし便器の上面透視図である。
図7は、図6に示す縁なし便器の、線7-7に沿って切り取った断面図である。
図8は、図6に示す縁なし便器の、線8-8に沿って切り取った断面図である。
・・・
図15は、ボウルの内面周りに水を導くための細長い棚またはテラスを含まない、別の例示的な実施形態による縁なし便器である。
図16Aは、ボウルの前方部分まで延びていない短い棚を有する縁なし便器の断面図である。
図16Bは、例示的な実施形態による、ボウルの前方部分およびボウルの後方部分まで延びる棚を有する縁なし便器の断面図である。
図16Cは、図16Aと図16Bに示す縁なし便器の比較を示す断面図である。」
(ウ) 「According to an exemplary embodiment, an improved rimless toilet is configured to provide effective bowl wash, ease of cleaning, and simplified low-cost manufacture. According to this embodiment, water from the toilet tank flows through a single jet orifice (e.g., hole, rim orifice, etc.) located towards the rear of the toilet bowl, near the top thereof. The water flows onto a shelf (e.g., terrace, ledge, plateau, protrusion, etc.) around the inside periphery of the bowl, which allows the water from a single orifice to flow completely around the periphery of the bowl. By controlling the shape, angle, length, and depth of the shelf, the amount of water that flows around the periphery and down the side of the bowl can be controlled, thus washing the sides of the bowl completely. The water flowing from a single jet hole (e.g., bowl wash jet, etc.) also creates a swirling flow in the toilet bowl aiding in the flushing action of the toilet, better removing waste contents in the bowl. By using an open shelf approach to distributing bowl wash water, there are no overhangs or undercuts of the ceramic bowl material. By doing this, the casting process to make this product is greatly simplified, and the toilet bowl can be completely cast with a simple four-part mold.」(第4欄20~41行)
(合議体による仮訳)
「例示的な実施形態によれば、改良された縁なし便器は、効果的なボウル洗浄、洗浄の容易さ、および簡素化された低コスト製造を提供するように構成される。この実施形態によれば、トイレタンクからの水は、ボウルの後方に向かって、その頂部近傍に配置された単一の噴出オリフィス(例えば、穴、リムオリフィスなど)を通って流れる。その水は、ボウルの外周の内側の棚(例えば、テラス、棚板、台地、突起など)上に流れ、これにより、単一のオリフィスからの水がボウルの外周にわたって完全に流れる。棚の形状、角度、長さ、深さをコントロールすることで、ボウルの外周から側面を流れる水量をコントロールし、ボウルの側面を完全に洗浄することができる。また、1つの噴射孔(例えば、ボウル洗浄噴射孔など)から流れる水は、ボウル内に旋回流を発生させ、便器の洗浄作用を助け、ボウル内の排泄物をよりよく除去する。ボウル洗浄水の分配にオープン棚方式を採用することで、セラミックボウル材にオーバーハングやアンダーカットが生じない。こうすることで、この製品を作るための鋳造工程が大幅に簡略化され、シンプルな4つの部品からなる鋳型でボウルを完全に鋳造することができる。」
(エ) 「Referring to FIGS. 2-3, according to an exemplary embodiment, a rimless toilet includes a toilet bowl 10 having a jet hole 12 that is positioned near the top of the bowl at between approximately a one o'clock position and a two o'clock position (i.e., the rearmost portion of the toilet bowl 10 being 12 o'clock). In other words, the jet hole 12 is positioned approximately between the rearmost portion of the bowl 10 and a lateral side (either a left or right side, although shown in FIGS. 2-3 as the right side from the perspective of an individual standing in front of the toilet facing the toilet) of the bowl 10. For example, the position of the jet hole 12 may be approximately 30-60° laterally (e.g., to the left or right) of the rearmost portion of the bowl 10. For example, 30° to the right of the rearmost portion of the bowl 10 (as seen from a top view, while standing in front of the bowl 10) would correspond to a one o'clock position and 60° would correspond to a two o'clock position. Similarly, 30° to the left of the rearmost position would correspond to an eleven o'clock position, and 60° to the left would correspond to a ten o'clock position. It should be understood that the jet hole 12 may be located at any suitable position within the bowl 10, and that the positions of the jet hole 12 disclosed herein are not intended as limiting.
・・・
A shelf 16 (ledge, terrace, etc.) is positioned below the jet hole 12 and is configured to guide flush water around the periphery of the bowl 10 such that water is distributed around the bowl surface. In other words, the shelf 16 is configured such that water distributed from the jet hole 12 is swirled around the toilet bowl 10. According to other exemplary embodiments (e.g., as shown in FIG. 12), the toilet bowl may be provided without a shelf, or with a partial shelf, for distributing the flush water.」(第4欄58行~第5欄26行)
(合議体による仮訳)
「図2~3を参照すると、例示的な実施形態によれば、縁なし便器は、ほぼ1時の位置と2時の位置との間(すなわち、ボウル10の最後部は12時の位置)にあるボウルの頂部付近に配置される噴射孔12を有するボウル10を含む。換言すれば、噴射孔12は、ボウル10の最後方部分と、ボウル10の側方(左側方または右側方のいずれかであるが、図2~3では、便器に面して便器の前に立つ人の視点から見て右側方として示されている)とのほぼ中間に配置されている。例えば、噴射孔12の位置は、ボウル10の最後部の横方向(例えば、左右方向)に約30~60°であってもよい。例えば、(ボウル10の正面に立った状態で、上面から見て)ボウル10の最後部から右に30°の位置は1時の位置に相当し、60°の位置は2時の位置に相当する。同様に、最後部の位置から左へ30°は11時の位置に対応し、左へ60°は10時の位置に対応する。噴射孔12は、ボウル10内の任意の適切な位置に配置することができ、本明細書に開示された噴射孔12の位置は、限定を意図するものではないことを理解されたい。
・・・
棚16(棚板、テラス等)は、噴射孔12の下方に配置され、ボウル10の外周面に水が流通するように洗浄水を案内するように構成されている。換言すれば、棚16は、噴射孔12から分配された水がボウル10の周囲を旋回するように構成される。他の例示的な実施形態によれば(例えば、図12に示すように)、ボウルは、洗浄水を分配するための棚を備えないか、または部分的な棚を備えてもよい。」
(オ) 「Referring now to FIGS. 5-7, according to an exemplary embodiment, a rimless toilet 10 is shown, which includes an inlet 14 and a jet hole 12. The jet hole 12 may be approximately 30-60° to the left or right of the rearmost portion of the bowl 10. According to another exemplary embodiment, the jet hole 12 may be up to approximately 90° to the left or right of the rearmost portion of the bowl 10. As shown in FIGS. 5-8 (and most easily seen in FIG. 8), the surface of the bowl is configured as having a concave portion which transitions into a convex portion, and the jet hole 12 is positioned above the convex portion. This shape may advantageously allow water dispensed from the jet hole 12 to flow around the bowl 10, and at least a portion of the water dispensed from the jet hole 12 may make a complete revolution around the bowl 10. The water may “ride” along the convex portion similar to the way water would travel along the shelves described above with respect to FIGS. 2-4. Thus, cleaning of the toilet bowl 10 may be greatly improved. Similar to the toilet 10 shown in FIGS. 2-4, air may be evenly displaced from within a water channel between the jet hole 12 and the inlet 14. Thus, the improved jet hole 12 reduces splashing and provides for a less turbulent flow of flush water. As a result, an upper portion of the toilet bowl 10 may be designed without any overhangs or undercuts of the ceramic bowl material.
Referring now to the cross-sectional view of FIG. 8, the curvature of the bowl 10 is shown. According to an exemplary embodiment, the curvature of the bowl 10 is configured to facilitate the flow of flush water from the jet hole 12 around the bowl 10, and as the flush water makes a revolution around the bowl, at least a portion of the flush water washes down every portion of the bowl in order to effectively wash the bowl. The bowl curvature shown in FIG. 8 includes a concave portion which is positioned above a convex portion. The jet hole 12 is vertically aligned above the convex portion. Thus, the concave portion of the bowl 10 is designed to carry flush water around the bowl 10.」(第6欄17~53行)
(合議体による仮訳)
「次に図5~7を参照すると、例示的な実施形態によれば、縁なしボウル10が示されており、このボウル10は、入口14と噴射孔12とを含む。噴射孔12は、ボウル10の最後部の左又は右に対して約30~60°であってよい。別の例示的な実施形態によれば、噴射孔12は、ボウル10の最後部の左又は右に対して最大約90°であってもよい。図5~図8に示すように(図8が最もわかりやすい)、ボウルの表面は、凸状部分に移行する凹状部分を有するように構成され、噴射孔12は、凸状部分の上方に配置される。この形状は、有利には、噴射孔12から吐出された水がボウル10の周りを流れることを可能にし、噴射孔12から吐出された水の少なくとも一部は、ボウル10の周りを完全に一回転することができる。水は、図2~4に関して上述した棚に沿って水が移動する方法と同様に、凸状部分に沿って「流れる」ことが可能である。したがって、ボウル10の洗浄が大幅に改善される可能性がある。図2~4に示すボウル10と同様に、空気は、噴射孔12と流入口14との間の水路内から均等に排出され得る。したがって、ボウル10の洗浄が大幅に改善され得る。図2~4に示すボウル10と同様に、空気は、噴射孔12と流入口14との間の水路内から均等に排出され得る。従って、改善された噴射孔12は、飛散を低減し、乱れの少ない洗浄水の流れを提供する。その結果、ボウル10の上部は、セラミックボウル材料のオーバーハングやアンダーカットのない設計とすることができる。
ここで図8の断面図を参照すると、ボウル10の湾曲が示されている。例示的な実施形態によれば、ボウル10の湾曲は、ボウル10の周りの噴射孔12からの洗浄水の流れを容易にするように構成され、洗浄水がボウルの周りを一回転するにつれて、ボウルを効果的に洗浄するために、洗浄水の少なくとも一部がボウルのあらゆる部分を洗浄する。図8に示すボウルの曲率は、凸状部分の上に位置する凹状部分を含む。噴射孔12は凸状部分の上方に垂直に配置されている。したがって、ボウル10の凹状部分は、ボウル10の周囲に洗浄水を運ぶように設計されている。」
(カ) 「According to one exemplary embodiment as shown, for example, in FIGS. 2-4, the toilet bowl 10 may include a single terrace (i.e., a ledge, shelf, ramp, etc.) that is used and configured to direct flush water along a specific flow path. Such a terrace is configured to provide some initial direction (i.e., guidance) to the flush water flowing from the jet hole. The kinetic energy of the water flowing from the jet hole 12 may be sufficient to carry the water along a flow path established by the terrace.
Referring to FIGS. 2-4, a toilet may include a single terrace that extends from approximately a jet hole, around a front of the toilet bowl, and to approximately a rear portion of the bowl (see, e.g., a terrace 22 shown in FIG. 3). However, it should be understood that a toilet may include a single terrace having any suitable length, which extends around to any suitable portion of the toilet bowl (e.g., only between the jet hole and to a location near the front of the toilet bowl, etc.).
Further, the terrace 22 may extend from the jet hole in either an upward, downward, or level (i.e., horizontal) direction. For example, the terrace 22 may rise in height from the jet hole to a front portion of the toilet bowl 10, and then may decrease in height from the front portion of the bowl 10 to an opposite rear portion of the bowl 10. A width of the terrace 22 may also vary across its length. For example, the width of the terrace may decrease from the jet hole to an end of the terrace. Also, the position of the terrace within the bowl may be configured to control splashing of flush water flowing along the terrace. For example, the terrace may be positioned at a suitable height to prevent flush water from splashing. The terrace 22 may also be canted (i.e., tilted, sloped, etc.) downwards or upwards relative to the curvature of the bowl surface of the toilet bowl 10 in order to control splashing or to control the amount of water that falls off the terrace. For example, the terrace 22 may be configured such that an outer portion of the terrace adjacent the inner wall of the bowl 10 is higher than an inner portion of the terrace so as to direct the flush water down the inner wall into the bowl. It should be understood that a terrace may be configured in any suitable way, and that the lengths, slopes, shapes, and widths of the terraces described herein are not limiting.」(第9欄40行~第10欄14行)
(合議体による仮訳)
「例えば図2~4に示されるような例示的な一実施形態によれば、ボウル10は、特定の流路に沿って洗浄水を導くために使用され構成される単一のテラス(すなわち、レッジ、棚、傾斜路など)を含むことができる。このようなテラスは、噴射孔から流れる水洗水に何らかの初期方向(すなわち、誘導)を与えるように構成される。噴射孔12から流れる水の運動エネルギーは、テラスによって確立された流路に沿って水を運ぶのに十分な場合がある。
図2~4を参照すると、トイレは、ほぼ噴出孔から、便器の前部の周囲を回り、便器のほぼ後部まで延びる単一のテラスを含み得る(例えば、図3に示すテラス22を参照)。しかしながら、トイレは、便器の任意の適切な部分(例えば、噴射孔の間のみ、および便器の前部近傍の位置まで等)まで周囲に延びる、任意の適切な長さを有する単一のテラスを含み得ることを理解すべきである。
さらに、テラス22は、噴出孔から上方向、下方向、または水平方向(すなわち、水平方向)のいずれかに延びていてもよい。例えば、テラス22は、噴出孔からボウル10の前方部分まで高さが上昇し、その後、ボウル10の前方部分からボウル10の反対側の後方部分まで高さが低下してもよい。テラス22の幅は、その長さにわたって変化することもある。例えば、テラスの幅は、噴出孔からテラスの端部に向かって小さくなってもよい。また、ボウル内のテラスの位置は、テラスに沿って流れる洗浄水の飛散を制御するように構成されてもよい。例えば、テラスは、洗浄水が飛散しないように適切な高さに配置されてもよい。また、テラス22は、飛散を抑制するため、またはテラスから落ちる水の量を抑制するために、ボウル10のボウル面の曲率に対して下方または上方に傾斜(すなわち、チルト、スロープなど)させることができる。例えば、テラス22は、ボウル10の内壁に隣接するテラスの外側部分がテラスの内側部分よりも高くなるように構成され、洗浄水を内壁からボウル内に導くようにすることができる。テラスは任意の適切な方法で構成することができ、本明細書に記載されるテラスの長さ、傾斜、形状、および幅は限定的なものではないことを理解されたい。」
(キ) 「FIGS. 16A-16C illustrate the differences between a toilet bowl having a relatively long terrace and a bowl having a relatively short terrace which does not extend to a forward position of the bowl (or, alternatively, a bowl without a terrace). In particular, FIG. 16A shows a cross-section of a toilet bowl having a relatively short terrace (or, alternatively, a bowl without a terrace). FIG. 16B shows a toilet bowl having a relatively long terrace that extends at least to a forward position of the bowl. FIG. 16C shows how the toilet bowls of FIGS. 16A-16B compare to each other when the bowl of FIG. 16A is superimposed over the bowl of FIG. 16B. For example, the bowl openings and outlets for both toilet bowls are approximately the same dimensions, but the terrace is “smoothed over” for the toilet bowl having a relatively short terrace (or, alternatively, no terrace).」(第10欄42~56行)
(合議体による仮訳)
「図16A~16Cは、比較的長いテラスを有する便器と、便器の前方位置まで延びていない比較的短いテラスを有するボウル(または、これに代えて、テラスのないボウル)との違いを示す図である。特に、図16Aは、比較的短いテラスを有するボウル(または、テラスのないボウル)の断面を示す。図16Bは、少なくともボウルの前方位置まで延びる比較的長いテラスを有するボウルを示す。図16Cは、図16Aのボウルを図16Bのボウルの上に重ねたときに、図16A~16Bのボウルがどのように互いに比較されるかを示す。例えば、両方のボウルのボウル開口部および出口はほぼ同じ寸法であるが、テラスは、比較的短いテラスを有する(あるいは、テラスがない)ボウルのために平準化されている。」
(ク) 【図2】
「
[図:0001438272000001.jpg]
」
(ケ) 【図3】
「
[図:0001438272000002.jpg]
」
(コ) 【図4】
「
[図:0001438272000003.jpg]
」
(サ) 【図5】
「
[図:0001438272000004.jpg]
」
(シ) 【図6】
「
[図:0001438272000005.jpg]
」
(ス) 【図8】
「
[図:0001438272000006.jpg]
」
(セ) 【図16A】
「
[図:0001438272000007.jpg]
」
(ソ) 【図16B】
「
[図:0001438272000008.jpg]
」
イ 認定事項
(ア) 上記ア(オ)に、「図5~図8に示すように(図8が最もわかりやすい)、ボウルの表面は、凸状部分に移行する凹状部分を有するように構成され、・・・この形状は、有利には、噴射孔12から吐出された水がボウル10の周りを流れることを可能にし、噴射孔12から吐出された水の少なくとも一部は、ボウル10の周りを完全に一回転することができる。水は、図2~4に関して上述した棚に沿って水が移動する方法と同様に、凸状部分に沿って「流れる」ことが可能である。」と記載されているところ、上記ア(ス)に示す【図8】からは、上記の「棚」としての「凸状部分に移行する凹状部分」が水平面に対して傾斜していること、及び、当該「棚」としての「凸状部分に移行する凹状部分」の上側に連なる「ボウルの表面」が、垂直面に対して傾斜していることが見て取れる。
そして、「図8」は「図6に示す縁なし便器の、線8-8に沿って切り取った断面図」(上記ア(イ))であるところ、上記ア(シ)に示す【図6】からは、「線8-8」が、ボウル10の左側面部分とボウル10の右側面部分を通る直線であることが見てとれるから、上で述べたように、棚としての凸状部分に移行する凹状部分が水平面に対して傾斜し、棚としての凸状部分に移行する凹状部分の上側に連なるボウルの表面が垂直面に対して傾斜しているのは、「ボウル10の左側面部分と右側面部分において」であると認められる。
(イ) 上記ア(セ)に示される【図16A】と、上記ア(ソ)に示される【図16B】について、「図16Aは、ボウルの前方部分まで延びていない短い棚を有する縁なし便器の断面図である。図16Bは、例示的な実施形態による、ボウルの前方部分およびボウルの後方部分まで延びる棚を有する縁なし便器の断面図である。」(上記ア(イ))、「図16Aは、比較的短いテラスを有するボウル(または、テラスのないボウル)の断面を示す。図16Bは、少なくともボウルの前方位置まで延びる比較的長いテラスを有するボウルを示す。」(上記ア(キ))と記載されている。
ここで、【図16B】の縁なし便器については、「少なくともボウルの前方位置まで延びる比較的長いテラスを有する」ことにおいて、上記ア(シ)に示される【図6】の縁なし便器と同様であると認められるところ、同【図16B】からは、側面部に示される線(右下がりの線)の前方側の延長として、「ボウルの前方位置」において形成された「テラス」(棚)より上方に、当該「テラス」(棚)とは別の、ボウルの表面のほぼ垂直に形成された部位の下方に連なる、水平面に対して傾斜したテラス(棚)状の部位が形成されていること、及び、同じく側面部に示される線(右下がりの線)の後方側の延長として、「ボウルの後方位置」に、ボウルの表面のほぼ垂直に形成された部位の下方に連なる、水平面に対して傾斜したテラス(棚)状の部位が形成されていることが見て取れる。
上記の、「ボウルの前方位置」及び「ボウルの後方位置」に形成された、水平面に対して傾斜したテラス(棚)状の部位については、「比較的短いテラスを有するボウル(または、テラスのないボウル)」を示す【図16A】の断面には描かれておらず、「少なくともボウルの前方位置まで延びる比較的長いテラスを有するボウル」を示す【図16B】の断面に描かれていることや、当該テラス(棚)状の部位を説明する記載が甲1には他に認められないことから、【図16B】の「ボウルの前方位置」に形成された、テラス(棚)状の部位は、実際に「テラス(棚)」を示しているということができ、また、「ボウルの後方位置」に形成されたテラス(棚)状の部位についても、同様に「テラス(棚)」を示していると認められる。
(ウ) 上記(ア)、(イ)で述べたことから、以下の事項が認定される。
「ボウル10の左側面部分と右側面部分に、水平面に対して傾斜した棚が形成され、棚の上側に連なるボウル10の表面が、垂直面に対して傾斜していること。」(認定事項1-1)
「少なくともボウルの前方位置まで延びる比較的長いテラスを有する便器において、ボウルの前方位置及び後方位置には、ボウルの表面のほぼ垂直に形成された部位の下方に連なって、水平面に対して傾斜したテラス(棚)が形成されていること。」(認定事項1-2)
ウ 甲1発明、甲1記載技術
(ア) 甲1発明
上記アに示した記載事項及び上記イに示した認定事項から、甲1には次の発明が開示されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。
「トイレタンクからの水が、ボウル10の後方に向かって、ボウル10の頂部近傍に配置された単一の噴出オリフィスを通り、ボウル10の外周の内側の棚(テラス)上に流れることにより、ボウル10の外周にわたって完全に流れて、ボウル10内に旋回流を発生させ、ボウル10内の排泄物を除去する(上記ア(ウ))、ボウル10内に水を流すための縁を含まない縁なし便器であって(上記ア(ア))、
棚(テラス)が、噴出オリフィスとしての噴射孔12の下方に配置され、ボウル10の外周面に水が流通するように洗浄水を案内するように構成され(上記ア(ウ)、(エ))、
噴射孔12の位置は、ボウル10の最後部の横方向(左右方向)に約30~60°であり(上記ア(エ))、
ボウル10の左側面部分と右側面部分に、水平面に対して傾斜した棚が形成され、棚の上側に連なるボウル10の表面が、垂直面に対して傾斜している(上記イ(ウ)の認定事項1-1)、
ボウル10内に水を流すための縁を含まない縁なし便器(上記ア(ア))。」
(イ) 甲1記載技術
また、上記イ(ウ)に示した認定事項1-2から、甲1には次の技術が記載されていると認められる(以下「甲1記載技術」という。)。
「少なくともボウルの前方位置まで延びる比較的長いテラスを有する便器において、ボウルの前方位置及び後方位置には、ボウルの表面のほぼ垂直に形成された部位の下方に連なって、水平面に対して傾斜したテラス(棚)が形成されていること。」
(2) 甲2
ア 記載事項
取消理由通知(決定の予告)で引用した甲2には以下の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
本発明は水洗便器に関し、以下、水洗便器をWC(Water Closet)と略記する。」
(イ) 「【0009】
WC容器の内部形状および洗浄水流を判り易く説明するために、平面図で容器開口部を眺めたときの座標系を使用(仮定)する。この場合、円形状または(細長く歪んだ円形状という意味での)楕円形状の容器の開口部形状を想定する。この容器の開口部形状は、一般的に、少なくともその上部領域において、ほぼ容器の内部形状に似ている。したがって、容器の開口部形状を通る最長の内側寸法を縦軸として定めるとともに、その垂直二等分線を横軸として定めると有意義である。これは、一般的なWC容器の場合、WC上の一般的な座位において、使用者は縦軸の方向を見ており、その両肩が横軸の方向を向いていることを意味する。壁に取り付けられた場合、縦軸は一般的には壁に対して垂直であり、横軸は壁と平行である。」
(ウ) 「【0017】
上記の縦軸および横軸の定義に基づき、容器内の流れの旋回運動および容器の内部形状の所定の特徴部の位置について、方位角を用いて説明するが、その方位角は、(平面図で)容器内の特定の位置から両軸の交点に向けて示され、すなわち、縦軸に対する角度で示される。例えば、容器開口部の、壁に最も近い点は、縦軸上にあり、したがって、0°または180°の方位角にある。これに対して、横方向の領域は、90°または270°付近にある。
【0018】
本発明によれば、洗浄水は、流入開口部を通って、WC容器の内壁の凹状の湾曲領域(平面図で視認可能)に向けられ、この目的のためにこの流入開口部は、80°から180°の間の方位角に位置する。この流入開口部は、好ましくは、170°、160°、150°よりも小さい方位角にあり、またはさらには140°よりも小さい方位角にあり、最小でも90°の方位角にあることが好ましい。この場合、洗浄水は、より大きな方位角の方向に流出する。言い換えれば、この流入開口部は、好ましくは、容器開口部の特に凹んだ湾曲部の上流の四分円内に位置し、この特に凹んだ個所に向けられる。その理由は、特に大きく(急に)凹んだ湾曲部では、遠心力が、容器の内部形状の所定の残りの傾斜(垂直断面で視認可能)と合わせて安定化作用を有して、洗浄水流を最初は比較的安定的にこの湾曲部を通って導くことにある。この場合、容器の内部形状の大部分が下から上に向けて幾分広がっていて、これに対応する傾斜が存在することが仮定できる。上述したように、一般的には、容器縁部(リム)の上部には、下方を切り取った部分(アンダーカット)の形状が例外的に存在する。」
(エ) 「【0025】
これまでの議論は、方位角の値0°が、前部から始まるか、それとも後部から始まるかとは無関係であり、それらは、WC使用者の通常の座位(着座した位置)に関し、したがって、「後部」は、容器内部形状のうちで尻に近い部分(水平方向で)に相当する。また、これまでの議論は、WC容器における洗浄水流の旋回方向が左回りであるか、それとも右回りであるかとは無関係であり、すなわち、方位角が平面図で見て時計回りで大きくなるか、それとも反時計回りで大きくなるかとは無関係である。より一般的で好ましい場合では、上方から見て右回りの旋回方向とは、すなわち時計回りの方向である。さらに、方位角が、後部から数えられる(カウントされる)のが好ましい。したがって、この好ましい場合では、流入開口部から出る洗浄水流は、WC容器の内部形状の凹状の湾曲部に向かって前方に向かう(方位角のゼロ°を前方に規定する場合は、後方に向かう)。両方とも可能であるが、特に一般的には後部に向って配置される吸い上げ管排出口と関連して、上記の変更例が好ましい。」
(オ) 「【0030】
上述のように、第2の流路は、水流の一部が過度に水位低下するのを防止する役目と比べて、下流へ向かう旋回流を案内または補助する役目はより少ない。その点に関し、第2の流路は好ましくは、(その長手方向に関して)ほぼ水平に延在することができる。この場合、具体的には、上記の凸状縁部と凹状縁部との間の中心線(それぞれ、曲率の極値を基準にする)を基準にすることができ、この中心線の角度は、流路に沿って水平方向に対して好ましくは15°以下であるのが好ましく、より好ましくは、13°、11°、9°、7°以下である。好ましくは、この流路は、流れ方向に沿ってわずかに下降傾斜し、すなわち方位角につれてわずかに下降傾斜する。」
(カ) 「【0051】
【図1】本発明によるWC容器を前方、右側、かつ上方から見た斜視図であって、三次元形状を明確にするためにグレースケールを施した図である。(実施例1)
【図2】本発明によるWC容器を前方、左側、かつ上方から見た斜視図であって、三次元形状を明確にするためにグレースケールを施した図である。(実施例1)
【図3】図1および図2のWC容器の右半分の側面図の長手方向断面図である。(実施例1)
【図4】簡易化された実施例に関して、図1から図3のWC容器の横断面のグレースケールを施していない側面図であって、後部に向けて示した図である。(実施例2)
【図5】図4の実施例の側面図であって、図3に対応した図と同じ高さで横並びに示し、グレースケールを施していない図である。(実施例2)
【図6】図4および図5の実施例の平面図であって、第1の実施例の理解のためにも使用される方位角の説明を付した図である。(実施例2)」
(キ) 「【0052】
図1から図6を参照すると、2つのWC容器または容器設備の実施例に関して、本発明が例示されている。即ち、図1から図3では、第1の実施例が、シャワーWCのシャワーユニットを組み込むために構成されているが、これに対応した窪み(凹部)および開口部(穴あき部)は、図4から図6に示される第2の実施例では省かれている。本発明に関しては、これらの相違点は特に重要ではないが、本発明をシャワーWCと非常に有利に組み合わせることができることを示している。
【0053】
図1および図2は、第1の実施例のWC容器(水洗便器容器)1の斜視図を示している。WC容器1は、通常の容器開口部2と、シャワーユニット(図示せず)の組み込みのための背面側(すなわち、図1では上部右側および図2では上部左側)の開口部3と、容器開口部2の周りの容器縁部の後部のWC容器の上縁部にシャワーユニットのシャワーアーム(図示せず)を通すための窪み(凹部)4と、を有する。以下、容器開口部2を通して視認可能なWC容器1の内部形状について説明する。
【0054】
引用した上記特許文献1から公知なWC容器で説明されているように、WC容器内にはほぼ螺旋状の第1の流路5が設けられている。この場合、この流路5は、後部で例えば方位角10°で僅かに右にオフセットされて始まり、連続的な下降(傾斜)形状で進み、方位角180°で最も幅が広くなり、方位角約350°までほぼ全周し、すなわち、再び後部に戻るが、ただし、僅かに左にオフセットされて戻る。その機能は、引用された先行技術で記載されており、本明細書で上述されているため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0055】
しかしながら、引用した上記特許文献1とは異なり、ここでは、洗浄水用の流入開口部6は、この先行技術で行われているように後方(わずかに右にオフセットされている)に向けられているのではなく、方位角約100°の横方向で始まって、前方に向けられ、すなわち、より大きな方位角に向けられている。したがって、洗浄水は第1の流路に注がれるが、その始まり(10°)で注がれない。なお、ここで言う方位角については、図6を参照されたい。
【0056】
さらに、引用された先行技術に加えて、図1にはっきりと示されているように、後部左隅に第2の流路7が、第1の流路5の上方で、容器内壁にもう一つの肩部として設けられて、所定長さ延びている。この第2の流路7は、厳密には、(上側かつ外側の)凹状縁部と(下側かつ内側の)凸状縁部との間の内壁領域として定義される。第2流路7は、方位角で約250°から約350°の間に延びている。第2流路7は、同様に僅かに下降傾斜して構成されており、(凸部縁部と凹部縁部との間の描かれていない中心線を基準にして)水平方向に対して約5°の傾斜角を有する。その最も広い箇所での幅は約1.2cmであるが、第1の流路5よりも著しく傾斜が大きく、すなわち最も平坦な箇所で水平に対して約48°の角度を有する。これに対して、第1流路5は、例えば180°において、最大幅16cmにて、水平方に対して約11°しか傾いていない。なお、ここで云う幅は、上記の両縁部(最も凸状の線と最も凹状の線)間の距離を指し、すなわち、最も急な下降傾斜方向に沿った両縁部間の直線距離、すなわち、最短距離を指す。
【0057】
しかしながら、第2の流路7の上方及び下方での容器内壁は、特に方位角が0°においても水平方向に対して約80°の傾きで非常に急傾斜である。特に図3及び図4に示しているように、その容器壁はそこから前方に向かってさらに急傾斜となり、その傾斜は方位角180°で約89°となる。すなわち、下方を切り取った部分(アンダーカット)を厳密に防ぐ。」
(ク) 「【0062】
図4を参照すると、容器の断面図とともに、容器の内部形状の後部領域の側面図を示している。この断面は、WC容器の最下部にある、符号8で示された封水水位を通る。容器内部形状の左側部分には第2の流路7が視認でき、右側部分には第1の流路5が視認できる。これら両流路は、CADプログラムの境界線で識別されているが、これら境界線は、(封水水位8を通る)垂直断面におけるまっすぐな断面輪郭によって表面を区別しており、例えば、流路5および流路7の上方の急傾斜の容器内壁を、湾曲した表面から区別している。その点については、2つの流路5および7は、実際には、直線状の中央部の帯(ストリップ)を有し、その帯に対して、湾曲した帯が上部及び下部で接続されている。
【0063】
図6は、図4および図5に示した第2の実施例の平面図を示しており、これに方位角分布と幾つかの数値が付されている。特に、0°が容器の内部形状の後方中央部に対応し、180°が前方中央部に対応していることが分かる。特許請求の範囲に記載のように、洗浄水用の流入開口部の方位角範囲を、80°から180°の間で定めることができる。また、前方の方位角範囲を、150°から210°の間で定めることもでき、その際、特許請求の範囲に記載のように、凹状の湾曲部が存在し(必ずしもこの角度範囲全体に亘る必要はない)、流入する洗浄水はこの湾曲部に向けられる。さらに、90°から270°の間に上記流路の最小範囲を定めることができる。さらに、第2の流路または第2の流路の一部の最小範囲(310°から340°の間)の限界があり、これは特許請求の範囲によれば、230°から90°の間の角度範囲を超えて延びず、時計回り方向において300°で引かれた線から左側に少しオフセットされ、かつ同一方向で330°の線の近傍でオフセットされる。」
(ケ) 【図1】
「
[図:0001438272000009.jpg]
」
(コ) 【図2】
「
[図:0001438272000010.jpg]
」
(サ) 【図3】
「
[図:0001438272000011.jpg]
」
(シ) 【図4】
「
[図:0001438272000012.jpg]
」
(ス) 【図6】
「
[図:0001438272000013.jpg]
」
イ 認定事項
(ア) 上記ア(サ)に示す【図3】は、「実施例1」の「図1および図2のWC容器の右半分の側面図の長手方向断面図(【0051】)であるところ、上記の「長手方向」は、上記ア(ス)の【図6】に示される「方位角」で、0°(後部)と180°(前部)を結ぶ方向と言い換えることができる。これを前提とすると、当該【図3】からは、「WC容器の内壁は、方位角が180°の断面で、垂直面に対する角度がほぼ0°である」ことが見て取れる。
(イ) また、上記ア(シ)に示す【図4】は、「実施例2」の「図1から図3のWC容器の横断面のグレースケールを施していない側面図であって、後部に向けて示した図」(【0051】)であるところ、上記の「横断面」は、方位角で90°(右)と270°(左)の断面であると言い換えることができ、これを前提とすると、当該【図4】から、方位角が90°と270°の断面において、WC容器の内壁が垂直面に対して傾斜していることが見て取れる。
(ウ) ここで、【図4】は「実施例2」に係る図であり、【図3】が示す「実施例1」と異なる実施例について示したものであるが、実施例について、「第1の実施例が、シャワーWCのシャワーユニットを組み込むために構成されているが、これに対応した窪み(凹部)および開口部(穴あき部)は、図4から図6に示される第2の実施例では省かれている。」(【0052】)とされた記載があるほかには、甲1に、両実施例の区別についての特段の記載がないことから、両実施例は、シャワーユニットの組み込みの有無で区別されているに過ぎず、上で述べた【図4】から見て取れること(方位角が90°と270°の断面において、WC容器の内壁が垂直面に対して傾斜していること)は、シャワーユニットが設けられる部位についてのものではないから、「実施例1」のWC容器も、これと同様の特徴を備えているということができる。
(エ) そうすると、上記(ア)及び(イ)に基づいて、実施例1においては、「WC容器の内壁は、方位角が180°の断面における垂直面に対する角度と比べて、方位角が90°と270°の断面における垂直面に対する角度の方が大きくなる」ものと認められる(認定事項2)。
ウ 甲2発明
上記アに示した記載事項及び上記イに示した認定事項から、甲2には次の発明が開示されていると認められる(以下「甲2発明」という。)。
「水洗便器(WC)であって(【0001】)、WC容器の楕円形状の開口部形状を通る最長の内側寸法を縦軸として定めるとともに、その垂直二等分線を横軸として定め(【0009】)、上記の縦軸および横軸の定義に基づき、方位角は、平面図で縦軸に対する角度で示され(【0017】)、WC容器内にはほぼ螺旋状の第1の流路5が設けられ、この流路5は、後部の方位角10°で僅かに右にオフセットされて始まり、連続的な下降形状で進み、方位角約350°までほぼ全周し、再び後部に戻るが、僅かに左にオフセットされて戻り(【0054】)、洗浄水用の流入開口部6は、方位角約100°の横方向で始まって、前方に向けられており(【0055】)、WC容器の内壁は、方位角が180°の断面における垂直面に対する角度と比べて、方位角が90°と270°の断面における垂直面に対する角度が大きい(認定事項2)、水洗便器(WC)(【0001】)。」
(3) 甲3
ア 記載事項
取消理由通知(決定の予告)で引用した甲3には以下の事項が記載されている。
(ア) 「【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第一の実施形態に係わる水洗便器の平面図、図2は同水洗便器の断面図、図3はボウル部への導水路を透視した図、図4は図3のA-A,B-Bにおける断面図、図5は図3におけるリム洗浄水の流れを示した図である。
【0015】
この水洗便器Aは陶器製であり、排泄物受け面であるボウル部1と、このボウル部1の開口縁を形成するリム部2と、ボウル部1の後方に設けられたタンク部3とから構成されており、この図1においては、タンク部3がリム部2と連続して一体的に成形されたいわゆるワンピース型の水洗便器である。
【0016】
ボウル部1とリム部2との間には主洗浄棚部1aと副洗浄棚部1bとが形成されている。この2つの棚部1a,1bは、ボウル部1の上方のリム部2に近い位置に形成された床面と平行に近い面であり、本発明においては、その面の傾斜角度である、リム部2からボウル部1へ向う面の接線が床面と水平な面と成す角度が、0度~15度の範囲である面を棚部1a,1bとして定義する。
【0017】
そして、図2に示すように、主洗浄棚部1aと副洗浄棚部1bとの間は主洗浄縦面1cによって繋がれおり、副洗浄棚部1bとリム部2とは副洗浄縦面1dにて繋がれている。具体的にいうと、ボウル部1断面において、その内側から外側(リム部2側)に向って、手前に形成されている水平な面と成す角度が0度~15度の範囲の面が主洗浄棚部1aであり、この主洗浄棚部1aと連続した面であって水平面と成す角度が15度を超えている面が主洗浄縦面1cであり、この主洗浄縦面1cと連続した面であって水平な面と成す角度が0度~15度の範囲の面が副洗浄棚部1bであり、この副洗浄棚部1bと連続した面であって、水平面と成す角度が15度を超えてリム部2に繋がる面が副洗浄縦面1dである。
【0018】
便器洗浄時には、使用者が排水レバー5を回動することにより排水弁6が上方に移動し、タンク部3に貯められた洗浄水が洗浄水導水路7へ流れ込む。この洗浄水導水路7へ流れ込んだ洗浄水がリム導水路8とゼット導水路9とに分流し、リム導水路8に流れ込んだリム洗浄水Wは図5に示すように主ボウル部噴出部(リム吐水口)10から棚部1a,1bの上面に向けて噴出される。一方、ゼット導水路9に流れ込んだゼット洗浄水Wzは、ゼット吐水口11から溜水12中に噴出され、溜水12をトラップ部13へ向けて押し出してサイホン作用を発生させ、汚物を排出させる。
なお、トラップ部13と床面に設けられた排水管(図示せず)とは、水洗便器Aとは別に形成された樹脂製の排水ソケット14にて連結されており、この排水ソケット14の流路内部には、サイホン作用の発生を促進させるために流路が屈曲形成されている。
【0019】
次に、ボウル部1の洗浄について図3~図5に基づいて説明する。
ボウル部1へ向けて洗浄水を噴出する主ボウル部噴出部10は、副洗浄棚部1bとその底部を共通して構成されている(図4(A)参照)。そして、主ボウル部噴出部10から噴出したリム洗浄水Wは副洗浄棚部1bに載って噴出されるが、主ボウル部噴出部10の近傍において、この副洗浄棚部1bの棚幅は狭く構成されている。即ち、図4(B)に示すように、副洗浄棚部1bと主洗浄縦面1cとを曲率の大きな面で繋ぐことにより、水平面と成す角度が15度以下となる副洗浄棚部1bの幅は狭く構成されている。
従って、主ボウル部噴出部10から噴出されたリム洗浄水Wの大部分は主洗浄棚面1aへと流れ落ちる。そのため、リム洗浄水Wから分岐した大流量の主洗浄棚部洗浄水Waが主洗浄棚部1aを旋回して、その大流量の主洗浄棚部洗浄水Waにて強力にボウル部1を洗浄する。
【0020】
一方、副洗浄棚部洗浄水Wbは小流量であり、しかも、副洗浄棚部1bは前方にて幅広に形成されているため、この副洗浄棚部洗浄水Wbによる副洗浄棚部1bにおける流れは弱く、棚部に広く分散する。従って、副洗浄縦面1dが略垂直に立ち上がるのみであって折り返し部等がなくても、副洗浄棚部洗浄水Wbがリム部2から飛び出して水洗便器Aの外側を濡らすことが無い。
なお、主洗浄棚部洗浄水Waは流量が大きいので、主洗浄縦面1cを越えてしまうこともあるが、そこには副洗浄棚部1bが存在しており、水洗便器Aの外側への飛び出しは発生しない。」
(イ) 【図1】
「
[図:0001438272000014.jpg]
」
(ウ) 【図2】
「
[図:0001438272000015.jpg]
」
(エ) 【図4】
「
[図:0001438272000016.jpg]
」
イ 認定事項
「ボウル部1とリム部2との間には主洗浄棚部1aと副洗浄棚部1bとが形成されている」(【0016】)とされるところ、上記ア(イ)に示す【図1】からは、「副洗浄棚部1bが、水洗便器Aの前側の方が側方よりも幅広となるように形成されていること」が見て取れる(認定事項3)。
ウ 甲3記載技術
上記アに示した記載事項及び上記イに示した認定事項から、甲3には次の技術が記載されていると認められる(以下「甲3記載技術」という。)。
「排泄物受け面であるボウル部1と、このボウル部1の開口縁を形成するリム部2と、タンク部3とから構成された水洗便器Aであって(【0015】)、ボウル部1とリム部2との間には主洗浄棚部1aと副洗浄棚部1bとが形成され(【0016】)、リム洗浄水Wは主ボウル部噴出部10から棚部1a,1bの上面に向けて噴出される(【0018】)が、主ボウル部噴出部10から噴出されたリム洗浄水Wの大部分は主洗浄棚面1aへと流れ落ち、大流量の主洗浄棚部洗浄水Waが主洗浄棚部1aを旋回して、その大流量の主洗浄棚部洗浄水Waにて強力にボウル部1を洗浄し(【0019】)、副洗浄棚部洗浄水Wbは小流量であり、副洗浄棚部1bは前方にて幅広に形成されているため、この副洗浄棚部洗浄水Wbによる副洗浄棚部1bにおける流れは弱く、棚部に広く分散することで、副洗浄棚部洗浄水Wbがリム部2から飛び出して水洗便器Aの外側を濡らすことが無く(【0020】)、副洗浄棚部1bが、水洗便器Aの前側の方が側方よりも幅広となるように形成されている(認定事項3)技術。」
(4) 甲4
ア 記載事項
取消理由通知(決定の予告)で引用した甲4には以下の事項が記載されている。
(ア) 「【0013】
・・・
【図3】本発明の一実施形態による水洗大便器からの便器本体を示す平面図である。
・・・
【図6】図3のVI-VI線に沿って見た断面図である。
・・・
【図9】本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部内の前側領域のリム吐水口を後方側斜め下方から見た拡大斜視図である。
【図10】図3に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の前方部分を拡大した部分拡大平面図である。
【図11】図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器のリム吐水口部分を拡大した部分拡大斜視図である。
・・・
す。
【図17】図17の(a)は、本発明の一実施形態による水洗大便器を用いて便器洗浄を行ったときのゼット吐水に関する流速分布と流れの様子を解析した結果の一例を示す。・・・」
(イ) 「【0025】
つぎに、図3、図5~図7及び図9~図11を参照して、水洗大便器1のボウル部8のリム部16、棚部18及びリム吐水口26について詳細に説明する。
・・・
【0027】
また、リム吐水口26は、ボウル部8のリム部16の前方側領域F1内の前端部16aに対して、便器本体2の前方側から見て左側に隣接し且つ後方から前方に向って曲率半径ρ2が大きな曲率半径から小さな曲率半径に変化している部分である前方側領域F2内に形成されている。これにより、リム吐水口26から吐水された洗浄水が、強い水勢を維持した状態で、直ちにリム部16の前端部16aに到達し、その後、リム部16の後方側領域Rへ旋回することができるため、最小の曲率半径のリム部16の前端部16aにおいて洗浄水が旋回することができずに洗浄不良となることを防ぐことができるようになっている。さらに、リム吐水口26からリム部16の前方側領域F1内の前端部16aに向けて強い水勢で吐水される洗浄水は、最小曲率半径ρ1により形成されたリム部16の前方側領域F1内の前端を通過する際に生ずる適度なエネルギー損失により、水勢が適度に抑制され、洗浄水が、勢いが強すぎることにより便器の外側に飛び出すことを防ぐことができるようになっている。」
(ウ) 「【0030】
ボウル部8のリム部16は、前方側領域F2内のリム吐水口26から前方側に向ってリム部16の前方側領域F1内の前端部16a付近までの部分の上縁部が局所的に内方へ突出するオーバーハングした形状に形成されたオーバーハング部16bを備え、このオーバーハング部16bにより、リム吐水口26の上方が覆われるようになっている。
また、ボウル部8のリム部16は、オーバーハング部16b以外の内周面17の領域がほぼ鉛直方向に立ち上がる形状となっている立ち上がり部16cを備えている。
このように、リム部16の内周面17の前端部16a付近の前方側領域F1,F2ではオーバーハング部16bにより内方に向かってオーバーハングした形状に形成され、リム部16の前端部16a付近以外の前方側領域F3及び後方側領域Rでは、ほぼ鉛直方向に立ち上がる形状に形成されているので、最小の曲率半径ρ1のリム部16の前端部16a付近において、便器1の外部への水飛びが発生することがなく、リム吐水口26から吐水された洗浄水の水勢を高めることができるようになっている。また、リム部16の後方側領域Rまで比較的強い水勢を十分に維持した状態で旋回することができ、汚れやすいボウル部16の後方側領域Rもより確実に洗浄することができるようになっている。
また、リム部16の前端部16a付近の前方側領域F1,F2のオーバーハング部16bにより、特に水飛びが発生しやすいリム部16のリム吐水口26近傍において、水撥ねが発生したとしても、この水撥ねがリム部16のオーバーハング部16bの上縁部に当たるため、便器1の外部への水飛びを防ぐことができるようになっている。
さらに、ボウル部8のリム部16の内周面17は、前端部16a付近以外ではほぼ鉛直方向に立ち上がる形状に形成されているので、万一汚れが付着したとしても、拭き取りやすくなっている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、例として、リム部16の内周面17が立ち上がり部16cを備えた形態について説明するが、この立ち上がり部16cの代わりに、リム部の内周面のほぼ全周に亘ってオーバーハングした形状に設定してもよいし、リム部16の周方向に沿って形成されたリム導水路の内側が開放されている、いわゆる、オープンリムタイプの形態としてもよい。」
(エ) 【図3】
「
[図:0001438272000017.jpg]
」
(オ) 【図6】
「
[図:0001438272000018.jpg]
」
(カ) 【図9】
「
[図:0001438272000019.jpg]
」
(キ) 【図10】
「
[図:0001438272000020.jpg]
」
(ク) 【図11】
「
[図:0001438272000021.jpg]
」
(ケ) 【図17】の(a)
「
[図:0001438272000022.jpg]
」
イ 認定事項
上記ア(エ)に示した【図3】のVI-VI線に沿った断面図としての、上記ア(オ)に示した【図6】、ボウル部8の前方側領域に設けたリム吐水口部分の部分拡大斜視図としての、上記ア(ク)に示した【図11】、ボウル部8の前後方向の断面図としての、上記ア(ケ)に示した【図17】の(a)から、「リム部の内周面が、ボウル部の側方領域で、断面視で直線状の内周面側直線部を含む側面部とされ、ボウル部の前方領域で、断面視で直線状の内周面側直線部を含む側面部とされ、ボウル部の後方側領域で、断面視で直線状の内周面側直線部を含む側面部とされており、棚部が、ボウル部の側方領域で、断面視で直線状の棚部側直線部を含み、ボウル部の前方領域で、断面視で直線状の棚部側直線部を含み、ボウル部の後方側領域で、断面視で直線状の棚部側直線部を含むこと」が見て取れる(認定事項4)。
ウ 甲4記載技術
上記アに示した記載事項及び上記イに示した認定事項から、甲4には次の技術が記載されていると認められる(以下「甲4記載技術」という。)。
「リム吐水口26が、ボウル部8のリム部16の前方側領域F1内の前端部16aに対して、便器本体2の前方側から見て左側に隣接して、前方側領域F2内に形成されて、リム吐水口26から吐水された洗浄水が、強い水勢を維持した状態で、直ちにリム部16の前端部16aに到達し、その後、リム部16の後方側領域Rへ旋回することができるようにされており(【0027】)、ボウル部8のリム部16は、前方側領域F2内のリム吐水口26から前方側に向ってリム部16の前方側領域F1内の前端部16a付近までの部分の上縁部が局所的に内方へ突出するオーバーハングした形状に形成されたオーバーハング部16bを備え、このオーバーハング部16bにより、リム吐水口26の上方が覆われるようになっていることで、便器1の外部への水飛びが発生することがなく、リム吐水口26から吐水された洗浄水の水勢を高めることができるようになっており(【0030】)、リム部の内周面が、ボウル部の側方領域で、断面視で直線状の内周面側直線部を含む側面部とされ、ボウル部の前方領域で、断面視で直線状の内周面側直線部を含む側面部とされ、ボウル部の後方側領域で、断面視で直線状の内周面側直線部を含む側面部とされ、棚部が、ボウル部の側方領域で、断面視で直線状の棚部側直線部を含み、ボウル部の前方領域で、断面視で直線状の棚部側直線部を含み、ボウル部の後方側領域で、断面視で直線状の棚部側直線部を含み(認定事項4)、さらに、オーバーハングした形状を、リム部の内周面のほぼ全周に亘るように設定した(【0030】)技術。」
(5) 甲5
ア 記載事項
取消理由通知(決定の予告)で引用した甲5には以下の事項が記載されている。
(ア) 「【0039】
本実施形態においては、左右のスリット開口56から吐水される洗浄水の水流の断面形状を偏平とすることにより、境界28に沿って流れる旋回流の上方向の拡がりを抑制できる。しかし、このようにして上方向の拡がりが抑制された旋回流が左右から到達して水洗便器10の前方の端部のリム面32において合流する時、水勢が相乗されることにより水の一部が便器外に飛び出すこともあり得る。そこでこのような場合には、水洗便器の前方において、リム面32にオーバーハングを設けてもよい。
【0040】
この場合、図14に表したように、リム面32の上下方向の全体にわたって下方に傾斜させたオーバーハングを設けてもよい。または、図15に表したように、リム面32の上方のみに突出したオーバーハング32Pを設けてもよい。このようにすれば、水洗便器の左右のリム面32はほぼ垂直面としつつ、前方のみに必要に応じてオーバーハングを設けて、旋回流の飛び出しを確実に抑制しつつ、清掃性を可及的に良好にでき汚れなども可及的に防ぐことができる。
なお、水洗便器の左右のリム面32に対しても、図14あるいは図15に例示したようなオーバーハングを適宜設けてもよいことは言うまでもない。このような場合でも、本実施形態によれば、左右のスリット開口56から吐水される洗浄水の水流の断面形状を偏平とすることにより、リム面32を流れる旋回流の上方向の拡がりを抑制できるので、オーバーハングの量を可及的に少なくすることができる。」
(イ) 【図1】
「
[図:0001438272000023.jpg]
」
(ウ) 【図15】
「
[図:0001438272000024.jpg]
」
イ 甲5記載技術
上記アに示した記載事項から、甲5には次の技術が記載されていると認められる(以下「甲5記載技術」という。)。
「旋回流が左右から到達して前方の端部のリム面32において合流する水洗便器において、前方のリム面32に、突出したオーバーハング32Pを設けて、旋回流の飛び出しを抑制した(【0039】、【0040】)技術。」
(6) 周知技術
上記(4)ウで述べた甲4記載技術、上記(5)イで述べた甲5記載技術に例示されるように、以下の技術は、本件特許の出願前の周知技術であると認められる(以下「周知技術1」という。)。
「旋回流を発生させる便器における旋回流の飛び出しを抑制するために、リム部の内周面の一部又は全周の上方側に、内方へ突出するオーバーハングを形成すること。」
1-2 対比・判断(甲1発明を主引用発明とした検討)
(1) 本件訂正発明1について
ア 対比
(ア) 甲1発明の「ボウル10内に旋回流を発生させ、ボウル10内の排泄物を除去する」「便器」は、本件訂正発明1の「水洗大便器」に相当し、また、甲1発明の上記「ボウル10」は自ずと鉢状の形状であって、本件訂正発明1の「鉢状の汚物受け面を有するボウル部」に相当することが明らかである。
(イ) 甲1発明の便器は「ボウル10内に水を流すための縁を含まない縁なし便器」であるところ、「ボウル10内に水を流すための縁を含まない」としても、ボウル10が鉢状の形状であることは上記(ア)で述べたとおりであって、その上部に「縁」状の部位があることも明らかであるところ、当該「縁」状の部位は、本件訂正発明1の「ボウル部の上部に設けられたリム部」に相当する。
(ウ) 甲1発明において、「ボウル10の外周の内側の棚(テラス)」は、その上を、「トイレタンクからの水」が、「ボウル10の外周にわたって完全に流れて、ボウル10内に旋回流を発生させ」ることから、上記(イ)で検討したこと(ボウル部の上部に設けられたリム部)も踏まえると、上記「ボウル10の外周の内側の棚(テラス)」は、本件訂正発明1における「リム部の内周面の下方に設けられ」た「洗浄水を旋回方向に導く棚面状の棚部」に相当する。
(エ) 甲1発明において、「トイレタンクからの水」を「ボウル10の外周の内側の棚(テラス)上に流」して「ボウル10内に旋回流を発生させ」る「噴出オリフィス」は、本件訂正発明1の「ボウル部に洗浄水を吐水し、旋回流を形成する吐水部」に相当する。
(オ) 甲1発明における「ボウル10の」「棚の上側に連なる表面」は、本件訂正発明1における「リム部の内周面」に相当し、当該「棚の上側に連なる表面」が、上記(ウ)で検討した、甲1発明における「ボウル10の外周の内側の棚(テラス)」(棚部)との間に、両者を「接続する連結部」を備えることは明らかであって、甲1発明は、本件訂正発明1における「リム部の内周面と前記棚部とを接続する連結部」に相当する構成を備えているということができる。
また、甲1発明において、上記の「棚の上側に連なる表面」(リム部の内周面)が形成される、「ボウル10の左側面部分と右側面部分」の「表面」は、本件訂正発明1における、「ボウル部の側方領域に設けられ」た「側面部」に相当し、当該「棚の上側に連なる表面」は、その一部である「下側側面部」を、上記「連結部」と「接続し」ているといえる。
そして、甲1発明における、上記の「ボウル10の左側面部分及び右側面部分」の「表面」(側面部)が、その一部である「下側側面部」に、本件訂正発明1の「断面視で直線状の内周面側直線部」に相当する部位を含んでいることは、上記1-1(1)ア(ス)に示す【図8】から明らかである。仮に、同図から明らかとまではいえないとしても、ボウルの表面を「断面視で直線状の内周面側直線部」を含む形状に形成することは一般的である(上記1-1(4)ウの甲4記載技術では、ボウルの表面を「断面視で直線状の内周面側直線部」を含む形状に形成していることが、より明らかである。)。
(カ) 甲1発明の「ボウル10の最後部」は、本件訂正発明1の「ボウル部の後方領域に設けられ」た「後面部」に相当する。また、甲1発明は、「単一の噴出オリフィスを通」った「水」が、「ボウル10の外周にわたって完全に流れて、ボウル10内に旋回流を発生させ」るものであるから、甲1発明の「ボウル10」に、「左側面部分及び右側面部分」、「後方領域に設けられ」た「最後部」に加えて、本件訂正発明1の「ボウル部の前方領域に設けられ」た「前面部」に相当する部位があること明らかである。
(キ) 上記(エ)で検討した、甲1発明における「噴出オリフィス」(吐水部)としての「噴射孔12」が、「ボウル10の最後部の横方向(左右方向)に約30~60°」に「位置」することは、上記(オ)で述べたこと(側面部)も踏まえて、本件訂正発明1の「吐水部は側面部に設けられ、吐水部は前記ボウル部を前後方向に二等分する中心軸線よりも後方に設けられ」ることに相当する。
(ク) 上記(ア)~(キ)からみて、本件訂正発明1と甲1発明とは、
「水洗大便器であって、
鉢状の汚物受け面を有するボウル部と、
前記ボウル部の上部に設けられたリム部と、
前記リム部の内周面の下方に設けられ、洗浄水を旋回方向に導く棚面状の棚部と、
前記リム部の内周面と前記棚部とを接続する連結部と、
前記ボウル部に洗浄水を吐水し、旋回流を形成する吐水部と、
前記リム部の内周面は、前記ボウル部の側方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側側面部と、前記ボウル部の前方領域に設けられた前面部と、前記ボウル部の後方領域に設けられた後面部と、
を備え、
前記吐水部は側面部に設けられ、前記吐水部は前記ボウル部を前後方向に二等分する中心軸線よりも後方に設けられた、
水洗大便器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件訂正発明1の水洗大便器は、「リム部の内周面の上方側に形成されるオーバーハング部」の構成を備えるのに対し、甲1発明の便器は当該構成を備えていない点。
[相違点2]
本件訂正発明1の水洗大便器は、「ボウル部の前方領域に設けられた前面部」の一部としての「下側前面部」と、「ボウル部の後方領域に設けられた後面部」の一部としての「下側後面部」が、それぞれ、(棚部と接続する)「連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む」構成を備えているのに対し、甲1発明の便器が当該構成を備えるのか否かが不明である点。
[相違点3]
本件訂正発明1の水洗大便器は、「下側側面部の内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度は、下側前面部の内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度よりも大きい」構成を備えるのに対し、甲1発明の便器が当該構成を備えるのか否かが不明である点。
イ 判断
(ア) 相違点1について
上記1(6)で周知技術1として述べたように、「旋回流を発生させる便器における旋回流の飛び出しを抑制するために、リム部の内周面の一部又は全周の上方側に、内方へ突出するオーバーハングを形成すること」は、本件特許の出願前の周知技術であり、「旋回流を発生させる便器における旋回流の飛び出しを抑制する」という技術課題は、旋回流を発生させる便器に内在する共通の課題といえるから、旋回流を発生させる便器についての発明である甲1発明に上記周知技術1を採用し、相違点1に係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者であれば適宜なしうることである。
(イ) 相違点2について
上記1-1(1)ウ(イ)に甲1記載技術として示したように、甲1には、「少なくともボウルの前方位置まで延びる比較的長いテラスを有する便器において、ボウルの前方位置及び後方位置には、ボウルの表面のほぼ垂直に形成された部位の下方に連なって、水平面に対して傾斜したテラス(棚)が形成」された技術が記載されるところ、甲1記載技術における「ボウルの前方位置」の「ボウルの表面」、「ボウルの」「後方位置」の「ボウルの表面」、「ほぼ垂直に形成された部位」、「テラス(棚)」は、それぞれ、本件訂正発明1における「ボウル部の前方領域に設けられた前面部」、「ボウル部の後方領域に設けられた後面部」、「断面視で直線状の内周面側直線部」、「棚部」に相当し、また、甲1記載技術において、「ボウルの表面」の「下方に連なって」「テラス(棚)が形成」されていることから、甲1記載技術が、本件訂正発明1における、「下側前面部」が(棚部と接続する)「連結部と接続」し、「下側後面部」が(棚部と接続する)「連結部と接続」する構成を備えているといいうる。
そうすると、甲1記載技術は、相違点2に係る本件訂正発明1の構成を備えていることになる。
そして、甲1発明と甲1記載技術は、「ボウル10内に旋回流を発生させ」る「便器」であって、「少なくともボウルの前方位置まで延びる比較的長いテラスを有する便器」に係る技術である点で共通するから、甲1記載技術を甲1発明に適用して、相違点2に係る本件訂正発明1の構成の如くすることは、当業者であれば想到容易である。
(ウ) 相違点3について
甲1発明は、「ボウル10の左側面部分と右側面部分に、水平面に対して傾斜した棚が形成され、棚の上側に連なるボウル10の表面が、垂直面に対して傾斜している」ものであり、また、甲1記載技術は、「ボウルの前方位置及び後方位置には、ボウルの表面のほぼ垂直に形成された部位の下方に連なって、水平面に対して傾斜したテラス(棚)が形成され」たものであるところ、上記(イ)で検討したように甲1記載技術を甲1発明に適用したものにおいては、ボウル10の「左側面部分と右側面部分」の「ボウル10の表面」の垂直面に対する傾斜角度が、「ボウルの前方位置」の「ボウルの表面」の垂直面に対する傾斜角度よりも大きくなることは明らかである。
そうすると、上記(イ)で検討したように甲1記載技術を甲1発明に適用することで、相違点3に係る本件訂正発明1の構成の如くすることは、当業者であれば想到容易である。
(エ) 効果について
本件訂正発明1が奏する効果は、甲1発明、甲1記載技術及び周知技術(周知技術1)から予測される程度のものに過ぎず、予測困難かつ格別顕著な効果を認めることはできない。
(オ) 特許権者の主張について
特許権者は、令和8年1月9日提出の意見書で次の主張をしている(2ページ下から9行~7ページ下から7行。下線は特許権者によるもの。)。
「(4)取消理由4について
・・・
(C)本件特許と刊行物との対比について
(C1)本件特許発明1について
本件特許発明1は、甲1~5発明に記載も示唆もされておりません。
取消理由通知書において、審判官殿は、本件特許発明1が、下記に示す甲1発明の図8、16B等に記載されていると認められる、と認定されました。しかしながら、かかる審判官殿のご認定については、承服致しかねます。
[図:0001438272000025.jpg]
[図:0001438272000026.jpg]
具体的には、取消理由通知書の「第5 取消理由」の「(1) 甲1」の「イ 認定事項」の(ア)(イ)(ウ)において、『【図8】からは、・・・当該「棚」としての「凸状部分に移行する凹状部分」の上側に連なる「ボウルの表面」が、垂直面に対して傾斜していることが見て取れる。』、『前後方向の断面図としての【図16B】からは、「ボウルの前方部分及び後方部分」において、・・・「テラス」の上側に連なる「ボウルの表面」が垂直面に対してほとんど傾斜していないことが見て取れる。』、『ポウル10の左側面部分とボウル10の右側面部分における、棚(テラス)の上側に連なるボウルの表面の垂直面に対する傾斜角度が、ボウルの前方部分及び後方部分における、テラスの上側に連なるボウルの表面の垂直面に対する傾斜角度より大きいことが見て取れる。』と認定されました。
ここで、審判官殿が認定された『棚(テラス)の上側に連なるボウルの表面』(以下「垂直部」と記載致します)は、上記した甲1発明の図16Bにおいて、破線の閉曲線Aで囲まれた部位を指すものと思料致します。しかしながら、本件特許発明1に係る「下側前面部の内周面側直線部」に相当する部位は、上記図16Bの「垂直部」ではありません。
具体的に説明致しますと、甲1発明においては、図16Bにおける棚(テラス)ついて、『図16Bは、少なくともボウルの前方位置まで延びる比較的長いテラスを有するボウルを示す。』、『図16Bは、例示的な実施形態によるボウルの前方部分およびボウルの後方部分まで延びる棚を有する縁なし便器の断面図である。』と記載されているだけです。そのため、甲1発明にあっては、ボウル部に記載されている補助線(上記図16Bの閉曲線Bで囲まれた部位)から吐水口に連なる棚(テラス)は、前方にいくにつれて下方に傾斜しているものと思料致します。
かかる場合、棚(テラス)と前方のリム内周面との「連結部」は、上記図16Bの閉曲線Cで囲まれた部位となり、当該連結部と接続する「下側前面部」は、上記図16Bの閉曲線Dで囲まれた部位となります。この甲1発明に係る「下側前面部」(閉曲線Dで囲まれた部位)は、垂直面に対して傾斜しており、また、緩やかにカープしています。また、甲1発明にあっては、「下側前面部」(閉曲線Dで囲まれた部位)の上側で大きく水平方向に傾斜した面(上記図16Bの閉曲線E参照)を挟み、それより上方でほぼ垂直な面(垂直部。上記図16Bの閉曲線A参照)が形成されます。
以上から分かりますように、本件特許発明1に係る「下側前面部の内周面側直線部」に相当する部位は、甲1発明において、緩やかにカーブするように形成された「下側前面部」(閉曲線Dで囲まれた部位)であり、審判官殿が認定された「垂直部」(閉曲線Aで囲まれた部位)ではありません。
甲1発明には、この「下側前面部」(閉曲線Dで囲まれた部位)の傾斜角度と、図8に示される「下側側面部」の傾斜角度との関係について何ら開示されておらず、示唆もありません。
従いまして、甲1発明にあっては、本件特許発明1のように「前記下側側面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度は、前記下側前面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度よりも大き」くなるように構成されておらず、その示唆もありません。
なお、仮に甲1発明の「垂直部」(閉曲線Aの部位)が、本件特許発明1に係る「下側前面部の内周面側直線部」に相当すると認定された場合であっても、図16Bのテラスは図16Aのテラスと形状が大きく異なると思料致します。また、図8は、図16Aと対応する図面です。そのため、図16Bの水洗大便器における「下側側面部の内周面側直線部」は、図8に示される形状とは全く異なると考えます。すなわち、図8の断面図を、図16Bの水洗大便器における「下側側面部の内周面側直線部」と認定することはできないと思料致します。
従いまして、仮に甲1発明の「垂直部」(閉曲線Aの部位)垂直部が、本件特許発明1に係る「下側前面部の内周面側直線部」に相当すると認定された場合であっても、本件特許発明1のように「前記下側側面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度は、前記下側前面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度よりも大き」くなるという構成については、何ら開示されておらず、示唆もされていないと考えます。」
として、本件訂正発明1の進歩性を主張する。
特許権者の主張について検討する。
甲1の図16Bからは、上記1-1(1)イ(イ)で述べたように、便器の側面部に示される線(右下がりの線)の前方側の延長として、「ボウルの前方位置」において形成された「テラス」(棚)より上方に、当該「テラス」(棚)とは別に、ボウルの表面のほぼ垂直に形成された部位の下方に連なる、水平面に対して傾斜したテラス(棚)状の部位が形成されていることが見て取れる。
ここで、「側面部の線(右下がりの線)」、「(側面部の線(右下がりの線)の)前方側の延長としての「ボウルの前方位置」において形成された「テラス」(棚)」、「(「ボウルの前方位置」において形成された「テラス」(棚)の)上方の、当該「テラス」(棚)とは別の、(ボウルの表面のほぼ垂直に形成された部位の下方に連なる、)水平面に対して傾斜したテラス(棚)状の部位」、「ボウルの表面のほぼ垂直に形成された部位」は、それぞれ、特許権者が示す図16Bに書き込まれた閉曲線B、閉曲線C、閉曲線E、閉曲線Aに囲まれる領域内にあり、このうち、「ボウルの表面のほぼ垂直に形成された部位」(閉曲線Aに囲まれる領域に形成されたもの)については、上記1-1(1)イ(イ)で述べたように、下方に「テラス(棚)」を連ねたものであると認められるから、上記(イ)で述べたように、「ボウル部の前方領域に設けられた前面部」において、(棚部と接続する)「連結部と接続」した「下側前面部」に含まれる「断面視で直線状の内周面側直線部」に相当する。
そして、甲1に記載された上記の技術事項を含む甲1記載技術を甲1発明に適用して、「下側側面部の内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度」を「下側前面部の内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度よりも大きい」ものとすることは、当業者であれば想到容易であることは、上記(イ)及び(ウ)で述べたとおりである。
よって特許権者の主張を採用することはできない。
ウ 小括
したがって、本件訂正発明1は、甲1発明、甲1記載技術及び周知技術(周知技術1)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件訂正発明2について
以下、請求項2で付加された点について検討する。
ア 対比
(ア) 上記(1)ア(オ)で「断面視で直線状の内周面側直線部」について述べたことと同様に、甲1発明における、「ボウル10の左側面部分及び右側面部分」の「水平面に対して傾斜した棚」(棚部)が、本件訂正発明2の「断面視で直線状の棚部側直線部」に相当する部位を含んでいることは、上記1-1(1)ア(ス)に示す【図8】から明らかである。仮に、同図から明らかとまではいえないとしても、棚部を「断面視で直線状の棚部側直線部」を含む形状に形成することは一般的である(上記1(4)ウの甲4記載技術では、棚部を「断面視で直線状の棚部側直線部」を含む形状に形成していることが、より明らかである。)。
(イ) そうすると、本件訂正発明2は、上記(1)ア(ク)に示した相違点1~3に加えて、以下の相違点4で相違する。
[相違点4]
本件訂正発明2は、「側方領域における棚部の棚部側直線部の水平面に対する傾斜角度は、前方領域又は後方領域における棚部の棚部側直線部の水平面に対する傾斜角度よりも大きい」構成を備えるのに対し、甲1発明は、そのような構成を備えない点。
イ 判断
相違点1~3についての判断は上記(1)イで述べたとおりである。
次に、相違点4について、甲1発明は、「ボウル10の左側面部分と右側面部分に、水平面に対して傾斜した棚が形成され、棚の上側に連なるボウル10の表面が、垂直面に対して傾斜している」ものであり、また、甲1記載技術は、「ボウルの前方位置及び後方位置には、ボウルの表面のほぼ垂直に形成された部位の下方に連なって、水平面に対して傾斜したテラス(棚)が形成され」たものであるところ、上記(1)イ(イ)で検討したように甲1記載技術を甲1発明に適用したものにおいて、ボウル10の「左側面部分と右側面部分」の「棚」の水平面に対する傾斜角度が、「ボウルの前方位置」、「後方位置」の「テラス(棚)」の水平面に対する傾斜角度よりも大きくなることは、上記1-1(1)ア(ス)に示す【図8】及び同(ソ)に示す【図16B】から明らかである。
そうすると、上記(1)イ(イ)で検討したように甲1記載技術を甲1発明に適用することで、相違点4に係る本件訂正発明2の構成の如くすることは、当業者であれば想到容易である。
そして、本件訂正発明2が奏する効果は、甲1発明、甲1記載技術及び周知技術(周知技術1)から予測される程度のものに過ぎず、予測困難かつ格別顕著な効果を認めることはできない。
ウ 小括
したがって、本件訂正発明2は、甲1発明、甲1記載技術及び周知技術(周知技術1)に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
(3) 本件訂正発明3について
以下、請求項3で付加された点について検討する。
ア 対比
本件訂正発明3と甲1発明は、上記(1)ア(ク)に示した相違点1~3、上記(2)ア(イ)に示した相違点4に加えて、以下の相違点5で相違する。
[相違点5]
本件訂正発明3は、「側方領域における棚部の棚部側直線部の水平方向の幅は、前方領域又は後方領域における棚部の棚部側直線部の水平方向の幅よりも小さい」構成を備えるのに対し、甲1発明は、そのような構成を備えない点。
イ 判断
相違点1~3についての判断は上記(1)イで述べたとおりであり、相違点4についての判断は上記(2)イで述べたとおりである。
次に、相違点5について、甲3には、上記第5の1-1(3)ウに示した甲3記載技術が記載されており、当該甲3記載技術(水洗便器A)は、ボウル部1とリム部2との間に形成された主洗浄棚部1aと副洗浄棚部1bのうち、副洗浄棚部1bは、水洗便器Aの前側の方が側方よりも幅広となるように形成し、洗浄水Wbがリム部2から飛び出して水洗便器Aの外側を濡らすことがないようにしたものである。
上記甲3記載技術の「副洗浄棚部1b」、「前側」、「側方」は、それぞれ、本件訂正発明3の「棚部」、「前方領域」、「側方領域」に相当し、甲3記載技術において、「副洗浄棚部1bは、水洗便器Aの前側の方が側方よりも幅広となるように形成し」たことは、上記(2)ア(ア)での検討(棚部側直線部)も踏まえると、本件訂正発明3において、「前記側方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平方向の幅は、前記前方領域」「における前記棚部の前記棚部側直線部の水平方向の幅よりも小さい」ことに相当するから、甲3記載技術は、上記相違点5に係る本件訂正発明3の構成を備えているといえる。
甲3記載技術は、上記したように、水洗便器Aの前側の方が側方よりも副洗浄棚部1bを幅広に形成して、「洗浄水Wbがリム部2から飛び出して水洗便器Aの外側を濡らすことがないようにした」ものであるところ、上記第1-1(1)ア(ア)に示したように、甲1発明は、「ボウルについて旋回する水が使用者に向かって上方に飛散しないようにすることを意図した特徴を含むボウル設計を取り入れ」た「縁を含まない」便器についてのものであるから、両者は技術課題が共通しているということができて、甲1発明に上記甲3記載技術を適用して上記相違点5に係る本件訂正発明の構成とすることは、当業者であれば想到容易である。
そして、本件訂正発明3が奏する効果は、甲1発明、甲1記載技術、甲3記載技術及び周知技術(周知技術1)から予測される程度のものに過ぎず、予測困難かつ格別顕著な効果を認めることはできない。
ウ 小括
したがって、本件訂正発明3は、甲1発明、甲1記載技術、甲3記載技術及び周知技術(周知技術1)に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
1-3 対比・判断(甲2発明を主引用発明とした検討)
(1) 本件訂正発明1について
ア 対比
(ア) 甲2発明の「水洗便器(WC)」は、本件訂正発明1の「水洗大便器」に相当し、また、甲2発明の「WC容器」は自ずと鉢状の形状であって、本件訂正発明1の「鉢状の汚物受け面を有するボウル部」に相当することが明らかである。
(イ) 甲2発明における「WC容器」(ボウル部)は「楕円形状の開口部形状」を備えているところ、「楕円形状の開口部」は、その近傍の部位を含めて、本件訂正発明1の「ボウル部の上部に設けられたリム部」に相当する。
(ウ) 甲2発明において、「WC容器内」に設けられる「ほぼ螺旋状の第1の流路5」は、「後部の方位角10°で僅かに右にオフセットされて始まり、連続的な下降形状で進み、方位角約350°までほぼ全周」するものであるところ、当該「ほぼ螺旋状の第1の流路5」が、「楕円形状の開口部」(リム部)の下方で洗浄水を流すことは明らかであるから、本件訂正発明1における「リム部の内周面の下方に設けられ」た「洗浄水を旋回方向に導く棚面状の棚部」に相当する。
(エ) 甲2発明における「WC容器の内壁」のうち「方位角」が「90°」と「270°」を含む近傍の内壁、同じく「方位角」が「180°」を含む近傍の内壁、同じく「方位角」が「0°」を含む近傍の内壁は、それぞれ、本件訂正発明1における、「リム部の内周面」の「ボウル部の側方領域に設けられ」た「側面部」、同「ボウル部の前方領域に設けられ」た「前面部」、同「ボウル部の後方領域に設けられ」た「後面部」に相当する。
そして、上記した、甲2発明の「WC容器の内壁」のうち「方位角」が「90°」と「270°」を含む近傍の内壁(側面部)、「方位角」が「180°」を含む近傍の内壁(前面部)、「方位角」が「0°」を含む近傍の内壁(後面部)が、それぞれ、本件訂正発明1の「断面視で直線状の内周面側直線部」に相当する部位を含んでいることは、上記1-1(2)ア(サ)に示す【図3】及び同(シ)に示す【図4】から明らかである。
(オ) 甲2発明において、上記(ウ)で検討した「ほぼ螺旋状の第1の流路5」(棚部)が、上記(エ)で検討した、「WC容器の内壁」(リム部の内周面)との間に、両者を「接続」する「連結部」を備えることは明らかであって、甲2発明は、本件訂正発明1における「リム部の内周面と棚部とを接続する連結部」に相当する構成を備えているということができ、また、甲2発明における上記「WC容器の内壁」のうち、上記(エ)で検討した、「方位角」が「90°」と「270°」を含む近傍の内壁(側面部)、「方位角」が「180°」を含む近傍の内壁(前面部)、「方位角」が「0°」を含む近傍の内壁(後面部)は、それぞれ、その「下側」の部位を、上記「連結部」と「接続し」ているといえる。
(カ) 甲2発明における、「後部の方位角10°」で始まり、「方位角約350°までほぼ全周」する「第1の流路5」への「洗浄水用の流入開口部6」は、本件訂正発明1の「ボウル部に洗浄水を吐水し、旋回流を形成する吐水部」に相当する。
そして、甲2発明において、上記「洗浄水用の流入開口部6」が「方位角約100°の横方向で始まって、前方に向けられ」ていることは、上記(エ)で述べたこと(側面部)も踏まえて、本件訂正発明1の「吐水部は側面部に設けられ」ることに相当する。
(キ) 甲2発明において、「WC容器の内壁は、方位角が180°の断面における垂直面に対する角度と比べて、方位角が90°と270°の断面における垂直面に対する角度が大きい」ことは、上記(エ)で述べたこと(断面視で直線状の内周面側直線部を含む側面部、前面部)、及び上記(オ)で述べたこと(下側の側面部、前面部)も踏まえると、本件訂正発明1における、「下側側面部の内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度は、下側前面部の内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度よりも大きい」ことに相当する。
(ク) 上記(ア)~(キ)からみて、本件訂正発明1と甲2発明とは、
「水洗大便器であって、
鉢状の汚物受け面を有するボウル部と、
前記ボウル部の上部に設けられたリム部と、
前記リム部の内周面の下方に設けられ、洗浄水を旋回方向に導く棚面状の棚部と、
前記リム部の内周面と前記棚部とを接続する連結部と、
前記ボウル部に洗浄水を吐水し、旋回流を形成する吐水部と、
前記リム部の内周面は、前記ボウル部の側方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側側面部と、前記ボウル部の前方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側前面部と、前記ボウル部の後方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側後面部と、
を備え、
前記吐水部は側面部に設けられ、
前記下側側面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度は、前記下側前面部の前記内周面側直線部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度よりも大きい水洗大便器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点ア]
本件訂正発明1の水洗大便器は、「リム部の内周面の上方側に形成されるオーバーハング部」の構成を備えるのに対し、甲2発明の便器は当該構成を備えていない点。
[相違点イ]
本件訂正発明1の水洗大便器は、「吐水部はボウル部を前後方向に二等分する中心軸線よりも後方に設けられ」た構成を備えるのに対し、甲2発明の水洗便器は、「洗浄水用の流入開口部6」(吐水部)が「方位角約100°の横方向で始まって、前方に向けられ」たものである点。
イ 判断
(ア) 相違点アについて
上記1(6)で周知技術1として述べたように、「旋回流を発生させる便器における旋回流の飛び出しを抑制するために、リム部の内周面の一部又は全周の上方側に、内方へ突出するオーバーハングを形成すること」は、本件特許の出願前の周知技術であり、「旋回流を発生させる便器における旋回流の飛び出しを抑制する」という技術課題は、旋回流を発生させる便器に内在する共通の課題といえるから、旋回流を発生させる便器についての発明である甲2発明に上記周知技術1を採用し、相違点アに係る本件訂正発明1の構成とすることは、当業者であれば適宜なしうることである。
(イ) 相違点イについて
甲2発明の水洗便器は、「洗浄水用の流入開口部6は、方位角約100°の横方向で始まって、前方に向けられ」たものであり、「洗浄水用の流入開口部6」(吐水部)が「ボウル部を前後方向に二等分する中心軸線」よりも「前方」に設けられているといえるが、これを「後方」に移して、相違点イに係る本件訂正発明1の構成の如くすることについて、甲2には、動機付けを示す記載や示唆があるとはいえない。
そして、本件訂正発明1は、上記相違点イに係る構成を備えることにより、「旋回する洗浄水を、水洗大便器の側方から多く流下させ、傾斜が小さく構成された前面部」「に到達した洗浄水は、前面部」「を駆け上がらずに、その下流側に旋回するため、便器外に洗浄水が飛散することを抑制することができる」(明細書の〔【0008】)という効果を奏するものである。
ウ 小括
したがって、本件訂正発明1は、甲2発明及び周知技術(周知技術1)に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(2) 本件訂正発明2~3について
本件訂正発明2~3は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含みさらに減縮した発明であるから、本件訂正発明1についての判断と同様の理由により、甲2発明及び周知技術(周知技術1)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
1-4 まとめ
上記1-3で検討したとおり、本件訂正発明1は、甲2発明及び周知技術(周知技術1)に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
しかし、上記1-2で検討したとおり、本件訂正発明1~3は、甲1発明及び周知技術(周知技術1)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件訂正発明1~3に係る特許は特許法29条2項の規定に違反したものである。
2 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議の申立ての理由について
上記第4の1に示した特許異議申立理由のうち、以下の理由は上記1で検討した取消理由に含まれていないため、本件訂正発明1~3がこれらの理由を有するかを改めて検討する。
・特許法29条1項
本件特許発明1及び2は、甲1に記載された発明と同一である。
本件特許発明1は、甲2に記載された発明と同一である。
・特許法36条6項1号
本件特許発明1~3は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
・特許法36条6項2号
本件特許発明1~3は明確でない。
(1) 特許法29条1項について
上記1-2(1)アで検討したように、本件訂正発明1は、相違点1~3で甲1発明と相違するから、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではない。
また、上記1-3(1)アで検討したように、本件訂正発明1は、相違点ア~イで甲2発明と相違するから、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明ではない。
そして、本件訂正発明2~3は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含みさらに減縮した発明であるから、本件訂正発明1についての上で述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明でもない。
よって、本件訂正発明1~3に係る特許は特許法29条1項の規定に違反したものではない。
(2) 特許法36条6項1号について
本件訂正発明1の「水洗大便器」は、「便器外に洗浄水が飛散することを抑制可能とする」(本件特許の明細書の【0006】を参照。)という課題を解決するために、「前記リム部の内周面は、前記ボウル部の側方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側側面部と、前記ボウル部の前方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側前面部と」「を備え」、「前記下側側面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度は、前記下側前面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度よりも大き」くされており、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段を備えるものと認められる。
そして、本件訂正発明2~3は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて含みさらに減縮した発明であるから、本件訂正発明1と同様に、発明の詳細な説明に記載された発明の課題を解決するための手段を備えるものと認められる。
よって、本件訂正発明1~3は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えておらず、本件訂正発明1~3に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしている。
(3) 特許法36条6項2号について
本件訂正発明1の「水洗大便器」は、「前記リム部の内周面は、前記ボウル部の側方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側側面部と、前記ボウル部の前方領域に設けられ、前記連結部と接続し断面視で直線状の内周面側直線部を含む下側前面部と」「を備え」、「前記下側側面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度は、前記下側前面部の前記内周面側直線部の垂直面に対する傾斜角度よりも大き」くされたものであるところ、「垂直面に対する傾斜角度」の大きさが比較される「断面視で直線状の内周面側直線部」の部位がそれぞれ特定されており明確である。
また、本件訂正発明2の「水洗大便器」は、「前記棚部は、前記連結部と接続し断面視で直線状の棚部側直線部を含み」、「前記側方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平面に対する傾斜角度は、前記前方領域又は前記後方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平面に対する傾斜角度よりも大き」くされたものであるところ、「水平面に対する傾斜角度」の大きさが比較される「断面視で直線状の棚部側直線部」の部位がそれぞれ特定されており明確である。
さらに、本件訂正発明3の「水洗大便器」は、「前記側方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平方向の幅は、前記前方領域又は前記後方領域における前記棚部の前記棚部側直線部の水平方向の幅よりも小さ」くされたものであるところ、「水平方向の幅」の大きさが比較される「前記棚部側直線部」は、本件訂正発明2において、「前記連結部と接続し断面視で直線状の棚部側直線部」として特定されており明確である。
よって、本件訂正発明1~3は、上で述べた点で明確であり、本件訂正発明1~3に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしている。
(4) まとめ
以上述べたとおりであって、本件訂正発明1~3に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反したものではない。
また、本件訂正発明1~3に係る特許は、同法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たしている。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700285