特許異議申立
2025-700300
便器装置
- 審判番号
- 2025-700300
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-046498
- 登録番号
- 7550907
- 請求日
- 2025年03月13日
- 審決日
- 2025年06月26日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社LIXIL
- 【権利者代理人】弁理士法人グランダム特許事務所
- 【異議申立人】TOTO 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人iX
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 油原 博
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P1652.121-Y (E03D) / P1652.537-Y (E03D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号、特許法第36条第6号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7550907号発明「便器装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7550907号の請求項1~2、5~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本願特許の経緯
特許第7550907号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和5年3月23日に出願され、令和6年9月5日にその特許権の設定登録がされ、同月13日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和7年3月13日に特許異議申立人TOTO株式会社(以下「申立人」という。)より、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、本件特許の請求項1~2、5~7に係る特許について、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7550907号の請求項1~2、5~7の特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」等という。)は、それぞれ願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~2、5~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
便鉢部を有する便器本体の後部に配置される機能部を備えており、
前記機能部は、本体カバーと、前記本体カバー内の上部に配置されて外部と無線通信を行う通信基板と、前記通信基板と別体に設けられた制御基板と、を有しており、
前記通信基板は、前記本体カバー内の他の部品に上方を覆われない位置において実装面を上向きにして配置されており、
前記通信基板の実装面は、前記制御基板の実装面よりも高い位置に配置されている、便器装置。
【請求項2】
前記便鉢部の上方に配置される便座を備えており、
前記通信基板は、前記便座の座面よりも上方に配置されている、請求項1に記載の便器装置。
【請求項5】
前記機能部は、前記通信基板を収納する通信基板ケースを有しており、
前記通信基板ケースは、前記通信基板を保持する固定爪を有している、請求項1及び請求項2に記載の便器装置。
【請求項6】
前記機能部は、前記便器本体の後部上面に配置されて前記便器本体に対して昇降自在なベースプレートを有しており、
前記通信基板は、前記ベースプレートとともに昇降する、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の便器装置。
【請求項7】
前記機能部は、前記本体カバー内に配策されて水を流通させる給水部材と、前記給水部材と前記通信基板との間に配置される接触防止部と、を有している、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の便器装置。」
第3 異議申立理由の概要
1 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
本件特許の請求項1、2に係る発明は、その出願日よりも前に頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項5に係る発明は、その出願日よりも前に頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項、及び甲第3、4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項6に係る発明は、その出願日よりも前に頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項、及び甲第5、6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件特許の請求項7に係る発明は、その出願日よりも前に頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項、及び甲第7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、これらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号に該当し、取り消されるものである。
2 特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)
本件特許発明5を特定する請求項5の記載及び本件特許発明7を特定する請求項7の記載は、明確でなく、特許法第36条第6号第2号に規定する要件を満たしておらず、これらの発明に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるものである。
第4 証拠
1 証拠一覧
申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2007-146569号公報
甲第2号証:特開2014-173393号公報
甲第3号証:特開2003-163475号公報
甲第4号証:特開2017-124112号公報
甲第5号証:特開2020-75003号公報
甲第6号証:特開2017-89206号公報
甲第7号証:特開2002-21154号公報
2 各証拠について
(1)甲第1号証(以下「甲1」等という。以下同様)
ア 記載事項
甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。
(ア)「【0001】
本発明は、トイレ装置の技術に関し、特に衛生洗浄装置などのように便器に設置されるトイレ装置本体と、このトイレ装置本体を制御するための電波信号を送信するリモコン装置とを有するトイレ装置に関する。
(イ)「【0038】
図1に示すように、本発明の実施形態におけるトイレ装置Sは、トイレブースBの後方壁面11前方に設置された便器3に設けられたトイレ装置本体1と、トイレブースBの左側壁面10にリモコンホルダ8を介して取り付けられ、このトイレ装置本体1を制御するための電波信号を送信する後述の無線回路25とループアンテナ29とを有するリモコン装置2とから構成される。
【0039】
トイレ装置本体1は、便器3の後方部上面に設けられ、各種機能を制御するための後述の本体制御部81等を有する衛生洗浄装置本体4aと、衛生洗浄装置本体4aに回動可能に連結された便座5と、同じく衛生洗浄装置本体4aに回動可能に連結された便蓋6とから構成される。なお、本実施形態においては、トイレ装置本体1として衛生洗浄装置を説明するが、トイレ装置本体1はこれに限られるものではない。
【0040】
衛生洗浄装置本体4aは、図2に示すように、洗浄機能、乾燥機能、脱臭機能、便座保温機能など各種機能を動作させる本体制御部81を有しており、さらにリモコン装置2から電波によって送信される制御信号(以下、「電波信号」とも呼ぶ。)を受信する受信アンテナ54a及び本体側無線回路70を備えている。そして、リモコン装置2から出力される電波信号を、受信アンテナ54aを介して本体側無線回路70で受信すると、制御部としての本体制御部81は、その電波信号に従った制御を行う。」
(ウ)「【0046】
図3及び図4(a)(b)に示すように、衛生洗浄装置本体4aの筐体84内部には、メイン基板83が筐体84の後端上方部側に位置するように収納されている。メイン基板83上には受信アンテナ54aを配置したサブ基板85がメイン基板83から垂直に立設するようにメイン基板83に接続されている。なお、図4(b)は、図4(a)におけるA-A線の断面図である。
【0047】
メイン基板83上には、図4(c)に示すように、本体制御部81、記憶部80及び本体側無線回路70などを実装されており、このメイン基板83上にコネクタ86を介してサブ基板85が接続される。
【0048】
ここで、メイン基板83及びサブ基板85は、いわゆるプリント基板と呼ばれるものであり、紙フェノール(XPC)、ガラス基材エポキシ(CEM-3)、ガラス布エポキシ(FR-4)などの材質の基板上に、銅などの金属箔で配線パターンを形成したものである。受信アンテナ54aは、ループ状に配線パターンを形成することによってループアンテナとして機能するように構成している。
【0049】
本実施形態においては、受信アンテナ54aはメイン基板83とは別基板であるサブ基板85上に構成するようにしている。このように構成していることから、本体制御部81や記憶部80を実装するメイン基板83にスペースが十分に取れない場合にも基板上に受信アンテナ54aを設けることができる。
・・・(中略)・・・
【0052】
なお、受信アンテナ54aを図3に示すように筐体84左側面側に設け、乾燥モータ72やノズルモータ77を筐体84右側に配置することによって、受信アンテナ54aとこれらのモータ類を離隔させ、モータによる上記S/Nの悪化を回避するようにしてもよい。また、受信アンテナ54aを筐体84の左側面上方部側に配置すると共に、モータ類を筐体84の左側面下方部側に配置するようにしてもよい。」
(エ)「【0059】
また、メイン基板83上に配線パターンで形成するループアンテナを配置するスペースがあるときには、サブ基板85を設けなくてもよい。すなわち、受信アンテナ54aとして、図7に示すように、メイン基板83上に受信アンテナ54aを形成する。このように構成することにより、受信アンテナを配置するための基板を別途設ける必要がなく、コストの面及び製造工程の面でメリットが大きい。」
(オ)「【0079】
図13(a)は衛生洗浄装置本体4bの平面図、図13(b)はその側面図、図13(c)はその斜視図であり、それぞれ受信アンテナ54bの配置を示すものである。これらの図に示すように、受信アンテナ54bは、衛生洗浄装置本体4bの筐体84の後端背面部の上部近傍に設けられる。
【0080】
このように、受信アンテナ54bが衛生洗浄装置本体4bの筐体84後端背面部近傍に配置されているため、トイレブースBの後方壁面11(トイレ装置の背面方向の壁面)が導電体などの電波を反射するように形成されているとき、受信状態を良好にできる。この理由を以下に述べる。」
(カ)「【0088】
また、メイン基板83上に配線パターンで形成するループアンテナを配置するスペースがあるときには、サブ基板85を設けなくてもよい。すなわち、受信アンテナ54bとして、図16に示すように、メイン基板83上に受信アンテナ54bを形成する。このように構成することにより、受信アンテナを配置するための基板を別途設ける必要がなく、コストの面及び製造工程の面でメリットが大きい。」
(キ)「【0091】
図17(a)は衛生洗浄装置本体4cの平面図、図17(b)はその側面図、図17(c)はその斜視図であり、それぞれ受信アンテナ54cの配置を示すものである。図17(c)に示すように、受信アンテナ54cは、衛生洗浄装置本体4c の筐体84の後端一側面側から後端他側面側かけて設けられる。
【0092】
このように、衛生洗浄装置本体4cの筐体84の後端一側面近傍から後端他側面近傍にかけて受信アンテナ54cのアンテナ長を延長させている。したがって、リモコン装置2を左側壁面10に取り付けた場合でも、右側壁面12に取り付けた場合であっても、使用者7が衛生洗浄装置本体4cに着座して使用するときにリモコン装置2との間に遮断されない位置が確保され、衛生洗浄装置本体4cにおいてリモコン装置2から出力される電波信号を効率良く電波受信できる。」
(ク)「【0094】
また、メイン基板83上に配線パターンで形成するループアンテナを配置するスペースがあるときには、サブ基板85を設けなくてもよい。すなわち、受信アンテナ54cとして、図19に示すように、メイン基板83上に受信アンテナ54cを形成する。このように構成することにより、受信アンテナを配置するための基板を別途設ける必要がなく、コストの面及び製造工程の面でメリットが大きい。」
(ケ)「【図4】
[図:0001425794000001.jpg]
」
(コ)「【図7】
[図:0001425794000002.jpg]
」
イ 認定事項について
【0046】の記載を踏まえると、図4より、受信アンテナ54aを配置したサブ基板85の側面がメイン基板83の上面から垂直に立設するようコネクタ86を介して接続されることがみてとれる。また、前記サブ基板85の上方が筐体84のみによって覆われることがみてとれる。
そうすると、甲1には、次の事項が記載されていると認められる(以下、「甲1認定事項」という。)。
「受信アンテナ54aを配置したサブ基板85がメイン基板83の上面から垂直に立設するよう筐体84のみによって覆われる」こと(「甲1認定事項」)。
ウ 甲1発明
上記(ア)~(コ)から、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。なお、部材に付した符号の半角と全角は全て全角に統一し、各構成の根拠となる段落等をかっこ書きで付した。
<甲1発明>
「便器3に設けられたトイレ装置本体1と、このトイレ装置本体1を制御するための電波信号を送信する無線回路25とループアンテナ29とを有するリモコン装置2とから構成されるトイレ装置Sが備えるトイレ装置本体1であって、(【0038】)
トイレ装置本体1は、便器3の後方部上面に設けられ、各種機能を制御するための本体制御部81を有する衛生洗浄装置本体4aと、衛生洗浄装置本体4aに回動可能に連結された便座5と、同じく衛生洗浄装置本体4aに回動可能に連結された便蓋6とから構成され、(【0039】)
衛生洗浄装置本体4aは、洗浄機能、乾燥機能、脱臭機能、便座保温機能など各種機能を動作させる本体制御部81を有しており、さらにリモコン装置2から電波によって送信される制御信号を受信する受信アンテナ54a及び本体側無線回路70を備え、リモコン装置2から出力される電波信号を、受信アンテナ54aを介して本体側無線回路70で受信すると、制御部としての本体制御部81は、その電波信号に従った制御を行い、(【0040】)
衛生洗浄装置本体4aの筐体84内部には、メイン基板83が筐体84の後端上方部側に位置するように収納され、メイン基板83上には受信アンテナ54aを配置したサブ基板85がメイン基板83から垂直に立設するようにメイン基板83に接続され、(【0046】)
メイン基板83上には、本体制御部81、記憶部80及び本体側無線回路70などを実装されており、このメイン基板83上にコネクタ86を介してサブ基板85が接続され、(【0047】)
受信アンテナ54aはメイン基板83とは別基板であるサブ基板85上に構成することから、本体制御部81や記憶部80を実装するメイン基板83にスペースが十分に取れない場合にも基板上に受信アンテナ54aを設けることができ、受信アンテナ54aを配置したサブ基板85がメイン基板83の上面から垂直に立設するよう筐体84のみによって覆われ、(【0049】、甲1認定事項)
また、メイン基板83上に配線パターンで形成するループアンテナを配置するスペースがあるときには、サブ基板85を設けなくてもよく、メイン基板83上に受信アンテナ54aを形成することにより、受信アンテナを配置するための基板を別途設ける必要がなく、コストの面及び製造工程の面でメリットが大きい、(【0059】)
トイレ装置本体1(【0038】)。」
(2)甲2
ア 記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0015】
図1に示すように、便器装置は、無線信号の受信部2を備えた便器装置本体1と、無線信号の発信部を備えた遠隔操作部3と、を備え、トイレルーム4にて使用されるものである。
【0016】
トイレルーム4には、便器5が設置される。以下の説明では、便宜上、前後左右は、使用者が便器5に所定の向きで着座した状態における前後左右をいうものとする。図中の矢印Fは前方を示し、矢印Bは後方を示す。本実施形態では、トイレルーム4の左右の幅は約90cm、前後の長さが約150cmであるが、幅や長さは特に限定されない。また本実施形態では、便器5は、トイレルーム4の後部に配置され、トイレルーム4の前部は使用者のスペースとして利用される。
【0017】
図1に示すように、便器5のボウル部51よりも後側の上面に、便器装置本体1が取り付けられるものである。さらに、便器装置本体1の前部に、便座(不図示)および便蓋11の後部が回動自在に連結されており、便器装置が便座および便蓋11を備えている。これにより、便座および便蓋11は、それぞれ、ボウル部51の後側より起立した状態と、ボウル部51のリム上に載置されて寝かされた状態と、が選択自在となるものである。なお本発明において、便座は任意の構成である。
【0018】
本実施形態では、便器装置は局部洗浄装置である。局部洗浄装置は、局部洗浄装置本体(便器装置本体1)と、遠隔操作部3とを備えている。局部洗浄装置本体は、図示しないが、局部洗浄ノズルを備え、局部洗浄ノズルより水や温水を人体の局部に向けて吐出可能とするものである。このような局部洗浄装置については、従来より様々なものが公知で、これらが適宜利用可能であり、詳細な説明は省略する。また、便器装置は、本実施形態では局部洗浄装置であるが、特に局部洗浄装置に限定されず、便器装置本体1が便器洗浄水の流水開始/停止のみを行うもの等でもよい。
【0019】
遠隔操作部3は、図1に示すように、トイレルーム4の側壁41に設置され、使用者が便座に着座した状態および、便器5の前側に立った状態で操作可能となるものである。遠隔操作部3は、赤外線等の無線信号の発信部を備えるものである。発信部の発信方向は、所定の方向(中心方向31)を中心に所定の範囲32を有している。そして、その中心方向31が上方又は上斜め後方(但し、左右方向成分は任意)を向くように設定される。なお、本実施形態では、中心方向31に発信される信号が最も強く(単位面積当たりのエネルギーにおいて)、中心方向31から離れる程、発信される信号は弱くなるが、特にこのようになっていなくてもよい。
【0020】
また、便器装置本体1は、遠隔操作部3から発信される無線信号の受信部2を備えるものである。受信部2の受信方向は所定の方向(中心方向22)を中心に所定の範囲(後述する)を有している。そして、その中心方向22が上方又は上斜め前方(但し、左右方向成分は任意)を向くように設定されるもので、本実施形態では、便器装置本体1の上面部の便座および便蓋11が設けられた部分よりも後側に、受信部2が設けられる。そして、発信部から発信された無線信号は、便座および便蓋11が、便器5上に寝かされた状態でも起立した状態でも、トイレルーム4の天井42に反射して、受信部2で受信可能となっている。なお、本実施形態では、中心方向22に受信される信号が最も強く(単位面積当たりのエネルギーにおいて)、中心方向22から離れる程、受信される信号は弱くなるが、特にこのようになっていなくてもよい。」
(イ)「【0024】
これに対し、本実施形態では、図2に示すように、無線信号を屈折させることで受信方向を狭める屈折手段6が設けられる。本実施形態では、便器装置本体1のケーシング10に透光部が形成され、この透光部に、前後方向の中央側程厚いレンズ(シリンドリカルレンズ)からなる屈折手段6が設けられている。受信部2は、基板21に感知部20が設けられて形成されている。図中の符号24、25は、屈折手段6が設けられない場合の受信可能な所定の範囲の前側の境界、後側の境界を示している。」
(ウ)「【図1】
[図:0001425794000003.jpg]
」
(エ)「【図2】
[図:0001425794000004.jpg]
」
イ 認定事項について
(ア)図1において「2」として示される「受信部」は、【0020】の記載から、遠隔操作部3から発信される無線信号を受信するものである。また、【0024】の記載を踏まえると、図2より「20」として示される感知部は、「21」として示される基板のうち上を向く部位に形成されることがみてとれる。
そうすると、甲2には、次の事項が記載されていると認められる(以下、「甲2認定事項」という。)。
「受信部2を構成する基板21のうち上を向く部位に感知部20が形成される」こと(「甲2認定事項」)。
ウ 甲2記載技術
前記(ア)~(エ)から、甲2には、次の技術が記載されていると認められる(以下「甲2記載技術」という。)。
<甲2記載技術>
「便器装置は、無線信号の受信部2を備えた便器装置本体1と、無線信号の発信部を備えた遠隔操作部3と、を備え、(【0015】)
便器5のボウル部51よりも後側の上面に、便器装置本体1が取り付けられ、便器装置本体1の前部に、便座および便蓋11の後部が回動自在に連結され、(【0017】)
遠隔操作部3は、トイレルーム4の側壁41に設置され、使用者が便座に着座した状態および、便器5の前側に立った状態で操作可能となるものであり、遠隔操作部3は、赤外線等の無線信号の発信部を備えるものであり、(【0019】)
便器装置本体1は、遠隔操作部3から発信される無線信号の受信部2を備えるものであり、受信部2の受信方向は中心方向22を中心に上方を向くように設定され、便器装置本体1の上面部の便座および便蓋11が設けられた部分よりも後側に、受信部2が設けられ、発信部から発信された無線信号は、便座および便蓋11が、便器5上に寝かされた状態でも起立した状態でも、トイレルーム4の天井42に反射して、受信部2で受信可能となっており、(【0020】)
便器装置本体1のケーシング10に透光部が形成され、この透光部に、前後方向の中央側程厚いレンズからなる屈折手段6が設けられ、受信部2は、基板21に感知部20が設けられて形成され、(【0024】)
受信部2を構成する基板21のうち上を向く部位に感知部20が形成される、(甲2認定事項)
便器装置本体1。(【0015】)」
(3)甲3~甲7について
特許異議申立人が提出した甲3~甲7には、それぞれ摘記は省略するが、以下の事項が記載されている。
ア 甲3
甲3には、便器装置における基板の固定に爪を用いるという事項が記載されている(【0016】、【0017】、【図1】)。
イ 甲4
甲4には、便座装置を構成する機能部カバー部材に制御基板を保持するための係合爪を設けるという事項が記載されている(【0014】、【0018】、【0021】、【0023】)。
ウ 甲5
甲5には、便器本体の後部かつ上部にベースプレートを介して載置される便座装置が垂直方向に昇降させる昇降装置を備える事項が記載されている(【0025】、【0027】、【0041】)。
エ 甲6
甲6には、便座ボックスが便器本体に対して昇降自在な便座ボックス昇降装置を有する事項が記載されている(【0015】、【0017】、【0020】)。
オ 甲7
甲7には、ノズル本体と、前記ノズル本体と前記制御基板との間に配置される被水防止壁と、を局部洗浄装置本体のケース内部に取り付ける事項が記載されている(【0026】~【0028】、【0058】、【0069】)。
第5 当審の判断
1 特許法第29条第2項(同法第113条第2号)
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「便器3」は、ボウルまたは便鉢を備えていることが明らかであることを踏まえると、本件特許発明1の「便鉢部を有する便器本体」に相当する。
また、甲1発明の「衛生洗浄装置本体4a」は、洗浄機能、乾燥機能、脱臭機能、便座保温機能などの各種機能を動作させるものであるから、本件特許発明1の「機能部」に相当する。
そして、甲1発明において、前記「衛生洗浄装置本体4a」を含む「トイレ装置本体1」が「便器3の後方部上面に設けられ」、「衛生洗浄装置本体4a」も「便座3の後方部上面」に位置することが明らかであるから、甲1発明における「衛生洗浄装置本体4a」が「便器3の後方部上面」に位置することは、本件特許発明1における「機能部」が「便器本体の後部に配置される」ことに相当する。
(イ)甲1発明の「衛生洗浄装置本体4a」が有する「筐体84」は、本件特許発明1の「機能部」が有する「本体カバー」に相当する。
また、甲1発明の「サブ基板85」は、「受信アンテナ54aを配置」するものであるから、通信に関する基板ということができ、甲1発明の「サブ基板85」と、本件特許発明1における「通信基板」とは、「通信に関する基板」という点で共通する。
さらに、甲1発明の「メイン基板83」は、「本体制御部81、記憶部80」を「実装」するものであるから、制御機能を有する基板ということができ、甲1発明の「メイン基板83」と、本件特許発明1における「通信基板」とは、「制御機能を有する基板」という点で共通する。
(ウ)甲1発明において、「筐体84内部」において「後端上方部側に位置」する「メイン基板83」から「垂直に立設」し、「リモコン装置2から出力される電波信号を」「受信する」「受信アンテナ54aを配置したサブ基板85」は、本件特許発明1における「本体カバー内の上部に配置されて外部と無線通信を行う通信基板」と、「本体カバー内の上部に配置された通信に関する基板」という点で共通する。
また、甲1発明において、「コネクタ86を介してサブ基板85に接続される」「メイン基板83」に関し、サブ基板85とメイン基板83とを別基板で構成することが明らかであることと、本件特許発明1において、「制御基板」が「通信基板と別体に設けられた」構成とは、「制御機能を有する基板」が「通信に関する基板と別体に設けられた」点で共通する。
そして、甲1発明における「衛生洗浄装置本体4a」が、「筐体84」と、「サブ基板85」と、及び前記筐体84内部の「メイン基板83」とを備える構成と、本件特許発明1における「機能部」が、「本体カバー」と、「通信基板」と、「制御基板」とを有する構成とは、「機能部」が、「本体カバー」と、「通信に関する基板」と、「制御機能を有する基板」とを有する点で共通する。
(エ)甲1発明の「サブ基板85」が、「筐体84内部」の「後端上方部側に位置」する「メイン基板83の上面から垂直に立設」して「筐体84のみによって覆われ」る構成と、本件特許発明1における「前記通信基板」が、「前記本体カバー内の他の部品に上方を覆われない位置において」「配置され」る構成とは、「通信に関する基板」が「前記本体カバー内の他の部品に上方を覆われない位置において」「配置され」る点で共通する。
(オ)甲1発明における「サブ基板85」の「受信アンテナ54a」が配置される面、及び、甲1発明における「メイン基板83」の「本体制御部81、記憶部80」が「実装され」る面と、本願特許発明1における「前記通信基板の実装面」、及び、「前記制御基板の実装面」とは、それぞれ「通信に関する基板」の「実装面」、及び、「制御機能を有する基板」の「実装面」という点で共通する。
また、甲1発明における「受信アンテナ54aを配置したサブ基板85」が、「メイン基板83から垂直に立設するようにメイン基板83に接続され」る構成は、「サブ基板85」の「受信アンテナ54a」を配置した面が「メイン基板83」の「本体制御部81」等を実装した面よりも高い位置にあることが明らかであるから、本件特許発明1において「前記通信基板の実装面は、前記制御基板の実装面よりも高い位置に配置されている」構成と、「通信に関する基板」の「実装面」は、「制御機能を有する基板」の「実装面」「よりも高い位置に配置されている」点で共通する。
(カ)甲1発明における「トイレ装置本体1」は、「便器3の後方部上面に設けられ」るから、「便器3」に関する装置ということができ、本件特許発明1における「便器装置」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
「便鉢部を有する便器本体の後部に配置される機能部を備えており、
前記機能部は、本体カバーと、前記本体カバー内の上部に配置された通信に関する基板と、前記通信に関する基板と別体に設けられた制御機能を有する基板と、を有しており、
前記通信に関する基板は、前記本体カバー内の他の部品に上方を覆われない位置において配置されており、
前記通信に関する基板の実装面は、前記制御機能を有する基板の実装面よりも高い位置に配置されている、便器装置。」
<相違点1>
本件特許発明1では、「外部と無線通信を行う通信基板」と「制御基板」とが「別体」であるのに対し、甲1発明では、「受信アンテナ54a」を配置した「サブ基板85」が外部と無線通信と行ううえでは「メイン基板83」上の「本体側無線回路70」が必要な点。
<相違点2>
本件特許発明1では、「通信基板」が「実装面を上向きにして配置」されるのに対し、甲1発明では、「受信アンテナ54a」を配置した「サブ基板85」が「メイン基板83の上面から垂直に立設」している点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
(ア)甲1発明における選択肢、及びその余の甲1の記載を考慮して
甲1発明は、「サブ基板85を設け」ず「メイン基板83上に受信アンテナ54aを形成」する選択肢を有し、当該選択肢をとる場合には、「受信アンテナ54a」は「メイン基板83の上面」に対して「垂直」になるものではなく、「受信アンテナ54a」の面は「メイン基板83」上で上向きになるものと解される。
しかしながら、「メイン基板83上に受信アンテナ54aを形成」する選択肢を採る場合には、「サブ基板85」を用いないから、「メイン基板83」と別体である「サブ基板85」の「実装面」が上向きとなるものではなく、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成とはならない。
また、甲1発明は、「メイン基板83上にループアンテナを配置するスペース」が有るか無いかによって、上記2つの選択肢を使い分けるところ、上記2つの選択肢では「サブ基板85」の有無が異なるから、2つの選択肢が部分的に組み合わせるものではない。また、甲1のその余の記載を考慮しても、甲1発明において、メイン基板83及びサブ基板85の両者を用い、サブ基板85の実装面を、メイン基板83の実装面よりも高い位置に配置し、かつ、サブ基板85の実装面を上向きに配置することが記載または示唆されているということはできない。
したがって、甲1発明において、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成に至ることは、「受信アンテナ54a」の配置に関する甲1発明の選択肢、及びその余の甲1発明の記載を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものではない。
(イ)甲2記載技術を考慮して
甲2には、上記第4の2(2)ウにおいて認定した甲2記載技術が記載されている。
甲2記載技術が有する「受信部2を構成する基板21のうち上を向く部位に感知部20が形成される」構成は、「受信部2を構成する基板21」について「感知部20」を形成する面が「上を向く」面になる点で、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成と類似している。
しかしながら、甲2記載技術は、「遠隔操作部3から発信される無線信号」が「赤外線等」であり、「トイレルーム4の天井42に反射し」た無線信号を「透光部」の「レンズからなる屈折手段6」を介して「受信部2で受信可能とする」ものであるから、甲2記載技術の無線信号は、赤外線や可視光線などの光信号であることを前提としている。
一方、甲1発明においては、「ループアンテナ」である「受信アンテナ54a」で「電波信号」を受信することを前提としたものであるから、甲1発明に甲2記載技術を適用する動機付けは存在しない。
したがって、甲1発明において、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成に至ることは、甲2記載技術を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものではない。
(ウ)甲3~甲7記載技術を考慮して
甲3~甲7記載技術のいずれにも、甲1発明において上記相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、記載も示唆もされていない。
そして、本願特許発明1は、上記相違点2に係る構成を備えることにより、外部機器と良好に通信できるという効果を奏するものと認められる。
したがって、甲1発明において、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成に至ることは、その余の甲1の記載、及び甲2~甲7記載技術を考慮しても、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 申立人の主張についての検討
(ア)申立人の主張
上記相違点2に関し、申立人は申立書において、甲1にはメイン基板83上に受信アンテナ54cを上向きに配置する実施例も記載されているから、上記相違点2に係る構成は想到容易である旨を主張している。また申立人は、甲2には検知部20を基板21の上面に形成することが記載されているから、甲1発明において上記相違点2に係る構成をとることは、甲2に基づいて想到容易である旨を主張している(申立書の第31頁第1行~第32頁第17行。)。
(イ)上記主張についての検討
上記主張について検討する。
上記イ(ア)に示したとおり、甲1において「サブ基板85」を有する実施例及び有さない実施例の両方を考慮しても、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成に至ることが示唆されるとはいえない。
また、上記イ(イ)に示したとおり、電波信号を用いることを前提とした甲1発明において、光信号を用いることを前提とした甲2記載技術を適用する動機付けはない。
したがって、上記申立人の主張について検討しても、上記相違点2の容易想到性において、上記イの判断を変更すべき事情はない。
エ 小括
以上のとおりであるから、相違点1を検討するまでもなく、本件特許発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないので、特許法第113条第2号に該当せず、特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
(2)本件特許発明2、5~7について
ア 本件特許発明2、5~7は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明2、5~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないので、特許法第113条第2号に該当せず、特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
(3)まとめ
本件特許発明1~2、5~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないので、特許法第113条第2号に該当せず、特許異議申立理由によって、取り消されるべきものではない。
2 特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)
(1)判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から、判断されるべきものである。
(2)判断
そこで、上記判断基準に基づいて、以下、判断する。
ア 本件特許発明5について
(ア)申立人の具体的主張
本件特許発明5を特定する請求項5の記載のうち、「請求項1及び請求項2記載の便座装置」の記載について、「請求項1」と「請求項2」とが択一的ではなく、明確でない。
(イ)上記具体的主張についての判断
本件特許発明5を特定する請求項5には「前記機能部」との構成が記載されることによって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2において記載される「機能部」を具体的に特定するものであるところ、本件特許発明3~4、6~7と同様に、請求項1及び請求項2「のいずれか一項」を択一的に引用するよう解するのが自然であるから、本件特許発明5の「請求項1及び請求項2記載の便座装置」という記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明5は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
イ 本件特許発明7について
(ア)申立人の具体的主張
本件特許発明7を特定する請求項7の記載のうち、「前記本体カバー内に配策されて水を流通させる給水部材と、前記給水部材と前記通信基板との間に配置される接触防止部」の記載について、「接触防止部」の意味するところが明確でない。
(イ)上記具体的主張についての判断
「接触防止部」について、請求項7の記載より「給水部材」と「通信基板」との間に配置されて「接触防止」の機能を奏するものであることが理解できるから、上記申立人の主張を参酌しても、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明7は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
(3)まとめ
本件特許発明5、7は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1~2、5~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~2、5~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、上記結論のとおり決定する。
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2025-700300