特許異議申立
2024-700885
便座装置及び便器装置
- 審判番号
- 2024-700885
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-045631
- 登録番号
- 7450418
- 請求日
- 2024年09月13日
- 審決日
- 2025年12月09日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社LIXIL
- 【権利者代理人】及川 周
- 【権利者代理人】川渕 健一
- 【権利者代理人】松本 将尚
- 【異議申立人】TOTO 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人iX
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼川 康史
- 審判官 島田 保
- 審判官 ▲高▼橋 祐介
- 分類
- P1652.851-ZDA(A47K) / P1652.857-ZDA(A47K) / P1652.113-ZDA(A47K) / P1652.121-ZDA(A47K) / P1652.537-ZDA(A47K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7450418号発明「便座装置及び便器装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7450418号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の[1~5]について訂正することを認める。
特許第7450418号の請求項1、5に係る特許を取り消す。
同請求項4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7450418号(以下「本件特許」という。)に係る特許についての出願は、令和2年3月16日に出願され、令和6年3月7日にその特許権の設定登録がされ、同月15日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 9月13日 特許異議申立人TOTO株式会社(以下「申
立人」という。)による請求項1、4~5に
係る特許に対する特許異議の申立て
同年11月27日付け 取消理由通知書
令和7年 1月22日 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年 4月 2日 意見書の提出(申立人)
同年 5月20日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 7月16日 意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
なお、令和7年7月16日に訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、先にした同年1月22日付け訂正請求は取り下げられたものとみなす。
また、当審合議体は、令和7年8月6日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったが、当該期間内に申立人からは応答がなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和7年7月16日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記ゴム足は、前記便蓋の先端部に設けられる、便座装置。」と記載されているのを、「前記ゴム足は、前記便蓋の先端部に設けられ、前記ゴム足の当接面は、前記便座の外側ほど下方に傾斜している外周に、前側の端部の水平方向のカーブに沿って連続的に当接する、便座装置。」に訂正する(請求項1を引用する請求項5についても同様に訂正する。)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2について、請求項1との引用関係を解消し、「前記ゴム足は、前記便蓋の幅方向の中心に設けられた連結部と、・・・前記当接部は、前記便座と当接する当接面を有する、請求項1に記載の便座装置。」と記載されているのを、「便器の上部に設置される便座と、便座に対して回転自在に接続され、前記便座が前記便器の上部に設置された場合において、前記便座の上部を覆う閉状態と前記便座の上部を開放する開状態とを有する便蓋と、前記便蓋の裏面に設けられ、前記閉状態において前記便座の外周に沿って当接するゴム足と、を備え、前記ゴム足は、前記便蓋の先端部に設けられ、前記ゴム足は、前記便蓋の幅方向の中心に設けられた連結部と、・・・前記当接部は、前記便座と当接する当接面を有する、便座装置。」に訂正する(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3、5についても同様に訂正する。)。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4について、訂正前の請求項4が請求項1~3を引用する記載であるところ、請求項2、3を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項1との間で有していた引用関係を解消し、さらに、「前記便蓋は、便蓋の先端から下方に延在するアンダー部を有し、アンダー部は、便蓋の前記先端から後方に向かって突出している、請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の便座装置。」と記載されているのを、「便器の上部に設置される便座と、便座に対して回転自在に接続され、前記便座が前記便器の上部に設置された場合において、前記便座の上部を覆う閉状態と前記便座の上部を開放する開状態とを有する便蓋と、前記便蓋の裏面に設けられ、前記閉状態において前記便座の外周に沿って当接するゴム足と、を備え、前記ゴム足は、前記便蓋の先端部に設けられ、前記便蓋は、便蓋の先端から下方に延在するアンダー部を有し、アンダー部は、便蓋の前記先端から後方に向かって突出し、前記閉状態で、前記ゴム足と前記アンダー部とが上下方向に重なり、前記開状態における前記便蓋の裏面に対向する使用者に対し、前記ゴム足の縁側の端部が前記アンダー部に隠れる、便座装置。」に訂正する(請求項4を引用する請求項5についても同様に訂正する。)。
(4) 一群の請求項について
訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は請求項1を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項1~5について請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、請求項1に記載された「ゴム足」について、「前記ゴム足の当接面は、前記便座の外側ほど下方に傾斜している外周に、前側の端部の水平方向のカーブに沿って連続的に当接する」ことを特定して限定するものである。
また、訂正前の請求項5が請求項1を直接的又は間接的に引用するので、請求項1の訂正により、訂正後の請求項5も同様に限定するものである。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無
(ア) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)の【0023】には、「ゴム足5は、便蓋4の幅方向の中心線Oを介して対称に設けられ便座3に当接する当接部5cと、当接部5c同士を連結している連結部5mと、を有している。」と記載されており、「ゴム足5」が「便座3に当接する当接部5c」「を有している」ことが記載されている。
(イ) また、【0017】には、「外側面3oは、内側に、閉状態において略水平である平坦部3fを有している。外側面3oは、便座3の外側ほど下方に傾斜している。外側面3oは、便座3の外側ほど傾斜が急である。外側面3oは、外周に対応する。」と記載されており、「外周に対応する」「外側面3oは」、「内側に、閉状態において略水平である平坦部3f」と「外側ほど下方に傾斜している」部分を有していることが記載されている。
(ウ) さらに、【0024】及び図3には、「図3は、当接部5cを通る断面による断面図である。当接部5cは、便座3に当接する当接面5fを有している。当接面5fは、便座3の外側面3oに当接する。当接面5fは、平坦部3fに跨って、外側面3oに当接する。当接部5cと便座3とが当接する状態において、当接面5fと平坦部3fとは略平行である。当接面5fは、便座3の外周に、前側の端部の水平方向のカーブに沿って連続的に当接する。当接面5fと便座3とは面接触している。」と記載されており、上記(イ)から「外周に対応する」「外側面3o」に「平坦部3f」が含まれることを踏まえて、【0024】には「当接部5c」の「当接面5f」が「平坦部3fに跨って」「便座3の外側面3oに当接する」ことにより、「当接面5f」が「便座3の外周に、前側の端部の水平方向のカーブに沿って連続的に当接する」ことが記載されている。
(エ) そうすると、本件明細書等には、上記(ア)及び(ウ)より、「ゴム足5」の「当接面5f」が「便座3の外周に、前側の端部の水平方向のカーブに沿って連続的に当接する」ことが記載されているといえ、上記(イ)より、「便座3」の「外周」は「外側ほど下方に傾斜している」ことが記載されているといえる。
よって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2が請求項1を引用していたところ、請求項1との引用関係を解消して独立形式請求項とするものである。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、上記アのとおり、請求項間の引用関係を解消するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無
訂正事項2に係る訂正は、上記アのとおり、請求項間の引用関係を解消するものであり、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項4が請求項1~3を引用していたところ、請求項1を引用する請求項4について、請求項1との引用関係を解消して独立形式請求項とするとともに、請求項4における「ゴム足」について、「前記閉状態で、前記ゴム足と前記アンダー部とが上下方向に重なり、前記開状態における前記便蓋の裏面に対向する使用者に対し、前記ゴム足の縁側の端部が前記アンダー部に隠れる」ことを特定して限定するものである。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び、同項ただし書第4号に掲げる請求項間の引用関係の解消(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係を解消するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
訂正事項3に係る訂正は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係を解消するものである。そして、請求項4の「ゴム足」について限定した事項について、本件明細書等の【0022】には「ゴム足5は、縁4fに沿って、アーチ形に形成されている。ゴム足5は、エラストマーを用いて形成されている。アンダー部4uが傾斜を有するため、開状態における便蓋4の裏面4bに対向する使用者に対し、ゴム足5の縁4f側の端部5aがアンダー部4uに隠れる。」と記載されており、「ゴム足5」が「縁4fに沿って、アーチ形に形成されている」こと、及び、「アンダー部4uが傾斜を有するため、開状態における便蓋4の裏面4bに対向する使用者に対し、ゴム足5の縁4f側の端部5aがアンダー部4uに隠れる」ことが記載されている。
また、図3からは、便蓋4が便座3の上部を覆う閉状態で、ゴム足5の縁4f側の端部5aがアンダー部4uの先端と上下方向に重なっていることが見て取れる。
したがって、これらの記載から、本件明細書等には「前記閉状態で、前記ゴム足と前記アンダー部とが上下方向に重なり、前記開状態における前記便蓋の裏面に対向する使用者に対し、前記ゴム足の縁側の端部が前記アンダー部に隠れる」ことが記載されているといえる。
よって、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
3 独立特許要件
(1) 本件訂正後の請求項1について
本件訂正前の請求項1は、訂正事項1により訂正される請求項であり、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるが、本件訂正前の請求項1には、本件特許異議の申立てがされている。
したがって、本件訂正後の請求項1については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2) 本件訂正後の請求項2、3について
本件訂正前の請求項2、3は、訂正事項2により訂正される請求項であり、訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
したがって、本件訂正後の請求項2、3については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3) 本件訂正後の請求項4について
本件訂正前の請求項4は、訂正事項3により訂正される請求項であり、訂正事項3は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるが、本件訂正前の請求項4には、本件特許異議の申立てがされている。
したがって、本件訂正後の請求項4については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4) 本件訂正後の請求項5について
本件訂正前の請求項5は、訂正事項1~3により訂正される請求項であり、訂正事項1~3の訂正の目的は上記(1)~(3)で検討したとおりであるが、本件訂正前の請求項5には、本件特許異議の申立てがされている。
したがって、本件訂正後の請求項5については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ請求項番号を付して「本件発明1」等という。請求項1、4、5の「A1」等は、分説するために当審で付した。以下「A1」等が付された事項を「特定事項A1」等という。)。
「【請求項1】
A1 便器の上部に設置される便座と、
A2 便座に対して回転自在に接続され、前記便座が前記便器の上部に設置された場合において、前記便座の上部を覆う閉状態と前記便座の上部を開放する開状態とを有する便蓋と、
A3 前記便蓋の裏面に設けられ、前記閉状態において前記便座の外周に沿って当接するゴム足と、
を備え、
A4 前記ゴム足は、前記便蓋の先端部に設けられ、
A5 前記ゴム足の当接面は、前記便座の外側ほど下方に傾斜している外周に、前側の端部の水平方向のカーブに沿って連続的に当接する、
A6 便座装置。
【請求項2】
便器の上部に設置される便座と、
便座に対して回転自在に接続され、前記便座が前記便器の上部に設置された場合において、前記便座の上部を覆う閉状態と前記便座の上部を開放する開状態とを有する便蓋と、
前記便蓋の裏面に設けられ、前記閉状態において前記便座の外周に沿って当接するゴム足と、
を備え、
前記ゴム足は、前記便蓋の先端部に設けられ、
前記ゴム足は、前記便蓋の幅方向の中心に設けられた連結部と、
前記幅方向における前記連結部の左側及び右側に設けられ、前記連結部によって連結された2つの当接部と、
を有し、
前記当接部は、前記便座と当接する当接面を有する、
便座装置。
【請求項3】
前記連結部は、前記便座と当接しない、
請求項2に記載の便座装置
【請求項4】
B1 便器の上部に設置される便座と、
B2 便座に対して回転自在に接続され、前記便座が前記便器の上部に設置された場合において、前記便座の上部を覆う閉状態と前記便座の上部を開放する開状態とを有する便蓋と、
B3 前記便蓋の裏面に設けられ、前記閉状態において前記便座の外周に沿って当接するゴム足と、
を備え、
B4 前記ゴム足は、前記便蓋の先端部に設けられ、
B5 前記便蓋は、便蓋の先端から下方に延在するアンダー部を有し、
B6 アンダー部は、便蓋の前記先端から後方に向かって突出し、
B7 前記閉状態で、前記ゴム足と前記アンダー部とが上下方向に重なり、
B8 前記開状態における前記便蓋の裏面に対向する使用者に対し、前記ゴム足の縁側の端部が前記アンダー部に隠れる、
B9 便座装置。
【請求項5】
C1 請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の便座装置を備える、
C2 便器装置。」
第4 取消理由の概要
当審において、令和7年5月20日付け取消理由通知書(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(新規性)
訂正前の本件発明1、5は甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(進歩性)
訂正前の本件発明1、5は甲第1号証に記載された発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由3(明確性)
訂正前の本件発明4~5は明確でないため、訂正前の本件特許は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。
引用文献
甲第1号証: 特開2008-253721号公報
(以下、甲第1号証等を「甲1」等という。)
第5 当審の判断
1 甲1について
(1) 記載事項
甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
「【0021】
請求項6に記載の発明によれば、被覆部材の上方に便蓋が配設され、前記便蓋の下面に前記被覆部材と当接する脚部が配設され、前記脚部は前記ベース部材の材料よりも軟質の材料で形成されているので、便蓋が被覆部材に汚れ等が付着するのを防止するために前記被覆部材を覆う時に、前記便蓋の脚部が前記被覆部材に当接した時に生ずる力を減じて前記被覆部材に圧痕等が付くのを抑制することができ、前記被覆部材の外観保持の観点で好ましい。」
「【0023】
図1乃至図3において、1は便器、2は人体局部洗浄装置で、21は後部装置収納部、21aは後部装置収納部の上カバー、21bは後部装置収納部の下カバーである。3は便蓋、4は便座で、後部装置収納部21に回動自在に取り付けられる。」
「【0048】
次に、便座装置の他の実施形態について説明する。
【0049】
図11において、便座24は、上方部材241と下方部材242からなるベース部材247と、上方部材241の表面を覆うように取り付けられた軟質材の発泡構造部材から成る被覆部材243を備え、上方部材241の内面にはアルミ箔245に固着したチュービングヒータ244が密着している。またチュービングヒータ244の内方には断熱部材246が下方部材242の内面に接するように構成されている。
【0050】
さらに、被覆部材243は、使用者の着座する範囲が均等肉厚で、且つ発泡倍率が均一となっているので、チュービングヒータ244からの熱を均一に伝達させることができる。
【0051】
また、被覆部材243やベース部材247の上方部材241は、金属繊維等の熱伝導性の高い材料を混合させているので、チュービングヒータ244からの熱伝導が良好で均一化されることによって、被覆部材243の表面温度が均一に保持できる。また、チュービングヒータ244からの熱伝導が良好で均一化されることから、消費電力も抑制することができ、省エネにもつながる。
【0052】
また、ベース部材247の上方部材241の内面にあるチュービングヒータ244は、対向する被覆部材243の上下方向の範囲内に収まっているので、被覆部材243に覆われていないベース部材247の下方部材242に高温が伝達されることがなく、温度安全性が高い。
【0053】
一方、便蓋23は閉じられた状態であり、先端付近に当接部25が構成され、中空部252を持つベース部材50の材料よりも軟質な材料(軟質材)から成る脚部251が取り付けられ、脚部251の嵌合部253が便蓋23の嵌合突起部232の溝に固定されている。また脚部251は対向する便座24の被覆部材243の表面形状と合致した形状の接触面254を有している。この中空部252を持つ軟質材から成る脚部251は便座24の先端領域の両側に左右対称に複数個が構成されているものである。またその他の方法として、先端領域に略円弧状の連続した長い突起形状としても良い。ここで軟質材は、例えばEPDMやNBR等のゴム材料やスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが使用できる。」
「【0073】
【図1】 本発明に係る便座4を備えた一般的なトイレ装置の図。
【図2】 本発明に係る便座4を備えた一般的なトイレ装置の図。
【図3】 本発明に係る便座4を備えた一般的なトイレ装置の図。
【図4】 本発明に係る便座4を備えた一般的なトイレ装置の図。
【図5】 便座4の分解斜視図。
【図6】 図4におけるA-A線に沿う断面図。
【図7】 図4におけるB-B線に沿う断面図。
【図8】 図4におけるC-C線に沿う断面図。
【図9】 被覆部材40とベース部材50との嵌合部を示す図。
【図10】 被覆部材40とベース部材50との嵌合部を示す図。
【図11】 便座4の他の実施形態を示す図。
【図12】 便座4の他の実施形態を示す図。
【図13】 便座4の他の実施形態を示す図。
【図14】 便座4の他の実施形態を示す図。
【図15】 便座4の他の実施形態を示す図。
【図16】 便座4の他の実施形態を示す図。
【図17】 便座4の他の実施形態を示す図。
【図18】 便座4の他の実施形態を示す図。」
図1 本発明に係る便座4を備えた一般的なトイレ装置の図
「
[図:0001434121000001.jpg]
」
図3 本発明に係る便座4を備えた一般的なトイレ装置の図
「
[図:0001434121000002.jpg]
」
図4 本発明に係る便座4を備えた一般的なトイレ装置の図
「
[図:0001434121000003.jpg]
」
図11 便座4の他の実施形態を示す図
「
[図:0001434121000004.jpg]
」
(2) 認定事項
【0048】以降に記載の「便座装置の他の実施形態」を基に甲1に記載された発明を認定する。【0023】、図1に記載の「便蓋3」、「便座4」と、【0049】、【0053】、図11等に記載の「便蓋23」、「便座24」はそれぞれ対応する部材であることは明らかであるから、以下では「便蓋」、「便座」については「便蓋23」、「便座24」と記載する。
ア 認定事項1
図1からは、「便器1」の上部に「便座24」が設置されていることが見て取れる(認定事項1)。
イ 認定事項2
図1からは、「便器1」の上部に「便座24」が設置されている場合において、「便蓋23」が「便座24」の上部を覆う状態となっていることが見て取れる。
また、【0023】には「便蓋23」及び「便座24」が共に「後部装置収納部21に回動自在に取り付けられる」ことが記載されていることから、「便蓋23」が「便座24」に対して「回動自在に取り付けられ」ていることは明らかである。
そして、便蓋が便座に対して回動自在な便座装置において、便蓋を便座に対して回動させて便座の上部を開放した状態で便座装置を使用することは技術常識であることを勘案すると、【0023】、図1に記載された「便蓋23」においても「便座24」の上部を開放する開状態となることが可能であることは明らかである。
してみると、甲1には、「便器1」の上部に「便座24」が設置されている場合において、「便座24」に対して「回動自在に取り付けられ」て、「便座24」の上部を覆う状態と「便座24」の上部を開放する開状態とになることが可能である「便蓋23」を便座装置が備えること(認定事項2)が記載されていると認められる。
ウ 認定事項3
図4からは、「便座24」は先端に水平方向のカーブを有する形状であることが見て取れ、図11からは、「便座24」は内側及び外側ほど下方に傾斜する領域と、内側及び外側の当該傾斜する領域に挟まれる略平坦な領域で構成されていることが見て取れる。
してみると、甲1には、「便座24」は水平方向のカーブを有する形状の先端において略平坦な領域と外側ほど下方に傾斜する領域を備えること(認定事項3)が記載されていると認められる。
エ 認定事項4
(ア) 【0049】、図11には、「便座24」の表面が「被覆部材243」により形成されることが記載されている。そして、【0021】には「前記便蓋の下面に前記被覆部材と当接する脚部が配設され」ることが記載されており、【0053】には「閉じられた状態」の「便蓋23」の「先端付近に当接部25が構成され」、当該「当接部25」には「軟質な材料(軟質材)から成る脚部251が取り付けられ」、「軟質材」には「ゴム材料」が使用でき、「脚部251は対向する便座24の被覆部材243の表面形状と合致した形状の接触面254を有し」、「便座24の先端領域」「に略円弧状の連続した長い突起形状としても良い」ことが記載されている。
(イ) 図11からは、「便蓋23」が「閉じられた状態」において「脚部251」の「接触面254」が「便座24」の略平坦な領域に当接することが見て取れる。よって、上記ウ及び(ア)の検討を踏まえると、「便座24の先端領域」「に略円弧状の連続した長い突起形状」とした「脚部251」が、「便座24」の先端の水平方向のカーブを有する形状に沿って「便座24」の略平坦な領域に当接することは、明らかである。
(ウ) してみると、甲1には、「便蓋23」の「下面」の「先端付近に」「取り付けられ」、「便蓋23」が「閉じられた状態」において「便座24」の略平坦な領域に当接する、「対向する便座24の被覆部材243の表面形状と合致した形状の接触面254」を有した、「便座24の先端領域」「に略円弧状の連続した長い突起形状」とした「ゴム材料」「から成る脚部251」を便座装置が備えること(認定事項4)が記載されていると認められる。
(3) 甲1に記載された発明
上記(1)及び(2)から、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(符号「a1」等は分説するために当審で付した。)。
「a1 便器1の上部に便座24が設置され(認定事項1)、
a2 便器1の上部に便座24が設置されている場合において、便座24に対して回動自在に取り付けられて、便座24の上部を覆う状態と便座24の上部を開放する開状態とになることが可能である便蓋23と(認定事項2)、
a3 便蓋23の下面に取り付けられ、便蓋23が閉じられた状態において便座24の略平坦な領域に当接する、対向する便座24の被覆部材243の表面形状と合致した形状の接触面254を有した、便座24の先端領域に略円弧状の連続した長い突起形状としたゴム材料から成る脚部251と(認定事項4)、を備え、
a4 ゴム材料から成る脚部251は便蓋23の下面の先端付近に取り付けられ(認定事項4)、
a5 便座24は水平方向のカーブを有する形状の先端において略平坦な領域と外側ほど下方に傾斜する領域を備える(認定事項3)、
a6 便座装置(【0048】)、
a7 及び、当該便座装置を備えるトイレ装置(【0023】、【0073】、図1)。」
2 対比・判断
(1) 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 特定事項A1
甲1発明のa1の「便器1の上部に」「設置され」る「便座24」は、本件発明1の特定事項A1の「便器の上部に設置される便座」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の特定事項A1を備える。
イ 特定事項A2
甲1発明のa2の「便座24に対して回動自在に取り付けられ」る「便蓋23」は、本件発明1の特定事項A2の「便座に対して回転自在に接続され」る「便蓋」に相当する。
また、甲1発明のa2の「便器1の上部に便座24が設置されている場合において」、「便座24の上部を覆う状態と便座24の上部を開放する開状態とになることが可能である便蓋23」は、本件発明1の特定事項A2の「前記便座が前記便器の上部に設置された場合において、前記便座の上部を覆う閉状態と前記便座の上部を開放する開状態とを有する便蓋」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の特定事項A2を備える。
ウ 特定事項A3
(ア) 甲1発明のa3の「便蓋23の下面に取り付けられ」た「ゴム材料から成る脚部251」は、本件発明1の特定事項A3の「前記便蓋の裏面に設けられ」た「ゴム足」に相当する。
(イ) 上記第2の2(1)ウで検討したとおり、本件明細書等に記載された「便座の外周」という用語は、便座の外側の傾斜している部分とその内側の平坦部の両方を含む領域、すなわち、便座の内側を除いた領域を意味することから、甲1発明のa3の「便座24の略平坦な領域」は、本件発明1の特定事項A3の「便座の外周」に相当する。
また、甲1発明のa5より「便座24は水平方向のカーブを有する形状の先端において略平坦な領域」を備えることから、甲1発明のa3の「便座24の先端領域に略円弧状の連続した長い突起形状としたゴム材料から成る脚部251」が有する「接触面254」が「便座24の略平坦な領域に当接する」ことは、便座24の先端領域における水平方向のカーブを有する形状の略平坦な領域に対して脚部251の略円弧状の連続した長い接触面254が当接することとなり、本件発明1の特定事項A3の「ゴム足」が「前記便座の外周に沿って当接する」ことに相当する。
そうすると、甲1発明のa3の「便座24の先端領域に略円弧状の連続した長い突起形状としたゴム材料から成る脚部251」の「接触面254」が「便蓋23が閉じられた状態において便座24の略平坦な領域に当接する」ことは、本件発明1の特定事項A3の「ゴム足」が「前記閉状態において前記便座の外周に沿って当接する」ことに相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の特定事項A3を備える。
エ 特定事項A4
甲1発明のa4の「便蓋23の下面の先端付近に取り付けられ」る「ゴム材料から成る脚部251」は、本件発明1の特定事項A4の「前記便蓋の先端部に設けられ」る「前記ゴム足」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の特定事項A4を備える。
オ 特定事項A5
上記ウ(イ)の検討を踏まえると、甲1発明のa3の「便座24の先端領域に略円弧状の連続した長い突起形状としたゴム材料から成る脚部251」が有する「接触面254」が「便座24の略平坦な領域に当接する」ことは、本件発明1の特定事項A5の「前記ゴム足の当接面は、前記便座の」「外周に、前側の端部の水平方向のカーブに沿って連続的に当接する」ことに相当し、甲1発明のa5の「便座24」の「水平方向のカーブを有する形状の先端」における「略平坦な領域と外側ほど下方に傾斜する領域」は、本件発明1の特定事項A5の「前記便座の外側ほど下方に傾斜している外周」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の特定事項A5を備える。
カ 特定事項A6
甲1発明のa6の「便座装置」は、本件発明1の特定事項A6の「便座装置」に相当する。
よって、甲1発明は、本件発明1の特定事項A6を備える。
キ 一致点・相違点
上記ア~カを踏まえると、本件発明1と甲1発明は全ての点で一致し、相違点はない。
よって、本件発明1は、甲1発明である。
また、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件発明4について
ア 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由(明確性)について
(ア) 本件訂正前の請求項4には、「開状態における前記便蓋の裏面に対向する使用者に対し、前記ゴム足の縁側の端部が前記アンダー部に隠れる、便座装置。」と記載されていた(本件発明4の特定事項B8、B9に対応)。そして、当該特定事項B8、B9の記載に対応する記載として、本件明細書等の【0022】、【0032】には、アンダー部4uが便蓋4の前側の先端から後方に向かって突出することで、便蓋4の前側の先端近傍に設けられたゴム足5の端部5a側の一部が、開状態における便蓋4の裏面4bに対向する使用者に対し、アンダー部4uに隠れることが記載されている。
ところが、ゴム足5の端部5a側の一部がアンダー部4uに隠れるために便座装置が満たすべき構造条件は、アンダー部4uの傾斜角度だけではなく、便蓋の開角度や、開状態における便蓋の裏面に対向する使用者の身長や姿勢(すなわち、目線の位置)などの、便座装置の使用条件により変化するものであるため、本件明細書等の記載を参酌しても、上記特定事項B8、B9に対応する記載だけでは「便座装置」がどのような構造を備えるのかが不明であり、その結果として本件訂正前の請求項4に係る発明が有する技術的範囲を明確に把握することができなかった。
(イ) しかし、本件訂正の訂正事項3により、「前記閉状態で、前記ゴム足と前記アンダー部とが上下方向に重なり、」と限定され、ゴム足の縁側の端部がアンダー部に隠れるための構造として、閉状態におけるゴム足とアンダー部の相対的な位置関係が特定され、本件発明4の特定事項B7を備えることで特定事項B8、B9を満たすことが明確であるから、上記(ア)の取消理由(明確性)を解消している。
よって、本件発明4は特許法第36条第6項第2号の要件を満たしている。
イ 取消理由通知書(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由(進歩性)について
(ア) 申立人が令和7年4月2日に提出した意見書について
a 本件発明4の特定事項B1~B4は、本件発明1の特定事項A1~A4と同一であるから、上記(1)ア~エで検討したとおり、甲1発明は本件発明4の特定事項B1~B4を備える。そして、申立人は本件発明4の特定事項B5、B6、B8について、甲2(特開2018-27174号公報)及び参考資料1(特開2010-82073号公報)の記載から、開状態における便蓋の裏面に対向する使用者に対し、ゴム足の縁側の端部がアンダー部に隠れる便座装置は周知技術(以下、「周知技術(甲2、参考1)」とする。)であるから、甲1発明及び周知技術(甲2、参考1)に基づいて当業者が容易に想到し得たことを主張している。
b しかし、周知技術(甲2、参考1)の根拠とする甲2について、申立人は「便蓋12の裏面に設けられたゴム足の縁側の端部が垂下部38の裏面に当接していることが、図2(下図)から看取できる。」と主張しているものの、図2からはゴム足の縁側の端部が垂下部38の近傍に位置することは見て取れるものの、ゴム足の縁側の端部が垂下部38の裏面に当接しているか否かは図2からは判別できない。そして、【0056】には「垂下部38の前端面38aは、閉状態において、下方に向かうに従って後退するように変化する。」と記載されているものの、前端面38aの傾斜角度やゴム足の縁側の端部から垂下部38までの距離については記載がなく把握できないため、甲2に記載されたトイレ装置2において、開状態における便蓋12の裏面に対向する使用者に対し、ゴム足の縁側の端部が垂下部38(アンダー部)に隠れるか否かは、甲2の記載からは明らかでない。そのため、甲2は申立人が主張する周知技術(甲2、参考1)を裏付けるものではない。
また、参考資料1の図18からは、便蓋400から突出する側板430の外側面が便蓋先端から後方に向かって傾斜していることは見て取れるものの、便蓋クッション475の縁側の側面が後方に向かって傾斜していることは見て取ることができない。そのため、参考資料1には、開状態における便蓋400の裏面に対向する使用者に対して便蓋クッション475の縁側の端部が突出する側板430に隠れることが記載されているとはいえず、参考資料1も申立人が主張する周知技術(甲2、参考1)を裏付けるものではない。
そのため、甲2及び参考資料1の記載から「開状態における便蓋の裏面に対向する使用者に対し、ゴム足の縁側の端部がアンダー部に隠れる便座装置」が周知技術であるとは、直ちにはいえない。
c そして、仮に「開状態における便蓋の裏面に対向する使用者に対し、ゴム足の縁側の端部がアンダー部に隠れる便座装置」が周知技術であるとしても、甲2の図2には、ゴム足が垂下部38から離れる方向に延伸する態様で便蓋12の裏面に設けられることが示されており、開状態における便蓋12の裏面に対向する使用者からはゴム足が容易に視認できることから、ゴム足の一部を垂下部38で隠すことで便蓋12の美観が損なわれることを抑制する技術的思想が甲2に内在しているとはいえない。そして、甲2の記載からは、当該構成により何らかの有利な作用効果を奏することを見出すことはできない。参考資料1においても同様である。
そうすると、上記周知技術(甲2、参考1)を甲1発明に適用する動機が存在するとはいえない。
(イ) 令和6年11月27日付け取消理由通知で認定した周知技技術(甲2、3)について
令和6年11月27日付け取消理由通知に示したとおり(第2の2(2)を参照)、甲3(特開2016-152869号公報)には、便座3と便蓋4を備え、便蓋4は上面を構成する平板状の蓋本体部40と、蓋本体部40の外周縁部から垂下した垂下片部41とを備え、垂下片部41は、便蓋4の先端から後方に向かって突出している便器装置1が記載されており、甲2及び甲3の記載から「便蓋の前端に垂下片部を備えた便器装置において、垂下片部を、先端から後方に向かって突出させる構成」は周知技術(以下、「周知技術(甲2、甲3)」とする。)といえる。
しかし、甲1の図11からは、便蓋23の裏面に設けられる脚部251が、閉状態における便蓋23の先端から下方に延在する部位から離れた位置にあることが見て取れることから、甲1発明に周知技術(甲2、甲3)を適用して、便蓋23の先端から下方に延在する部位を先端から後方に向かって突出させる構成としても、閉状態における便蓋23の裏面に対向する使用者に対し、脚部251の縁側の端部が便蓋23の先端から下方に延在する部位に隠れるとはいえない。
(ウ) よって、本件発明4は、甲1発明と甲2、甲3及び参考資料1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3) 本件発明5について
本件発明5(請求項1を引用する請求項5に係る発明)と甲1発明とを対比する。
ア 特定事項A1~A6、C1
特定事項A1~A6、C1については、上記第5の2(1)ア~カのとおりである。
よって、甲1発明は、本件発明5の特定事項A1~A6、C1を備える。
イ 特定事項C2
甲1発明のa7の「トイレ装置」は、本件発明5の特定事項C2の「便器装置」に相当する。
よって、甲1発明は本件発明5の特定事項C2を備える。
ウ 一致点・相違点
上記ア~イを踏まえると、本件発明5と甲1発明は全ての点で一致し、相違点はない。
よって、本件発明5は、甲1発明である。
また、本件発明5は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1、5に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1、5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項4に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由により取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700885