特許異議申立
2024-701112
水洗大便器
- 審判番号
- 2024-701112
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-176069
- 登録番号
- 7483215
- 請求日
- 2024年11月15日
- 審決日
- 2026年02月20日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOTO株式会社
- 【権利者代理人】▲吉▼田 和彦
- 【権利者代理人】須田 洋之
- 【権利者代理人】山崎 一夫
- 【権利者代理人】弟子丸 健
- 【権利者代理人】山本 泰史
- 【権利者代理人】鈴木 博子
- 【異議申立人】▲高▼畑 明久
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 門 良成
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P1651.113-YAA(E03D) / P1651.121-YAA(E03D) / P1651.537-YAA(E03D) / P1651.55 -YAA(E03D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7483215号発明「水洗大便器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7483215号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7483215号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7483215号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和2年2月4日に出願した特願2020-16746号の一部を、令和3年10月28日に新たな特許出願としたものであって、令和6年5月7日にその特許権の設定登録がされ、同月15日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~6に係る特許に対し、令和6年11月15日に特許異議申立人 高畑 明久(「高」は「はしごだか」である。以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後、その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。
令和7年 1月31日付け:取消理由通知書
同年 4月 7日 :意見書の提出(特許権者)
同年 7月23日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 9月24日 :意見書及び訂正請求書の提出(特許権者)
同年12月 5日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知)
なお、上記令和7年12月5日付けの通知で、申立人に、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人からは応答がなかった。
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨
令和7年9月24日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、特許第7483215号の特許請求の範囲を、本件訂正請求の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部、前記ボウル部の上縁に形成されたリム部、給水された洗浄水を前記リム部に吐水するリム吐水口、及び、給水された洗浄水を排水トラップ管に向けて吐水するゼット吐水口を有する、便器本体と、
前記便器本体を洗浄するための洗浄水を貯水するための洗浄水タンクと、
前記洗浄水タンク内の洗浄水を前記便器本体に供給するように構成されたポンプ装置と、
前記洗浄水タンク内に洗浄水を供給するように構成された給水装置と、
前記ポンプ装置の駆動を制御するとともに、前記給水装置の洗浄水の給水を制御可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ポンプ装置により前記リム吐水口と前記ゼット吐水口の両方へ排出される洗浄水の排出総量が、前記洗浄水タンクのタンク容量よりも大きい洗浄モードを実行可能であり、
前記制御装置は、前記洗浄モードにおいて、前記給水装置により洗浄水の給水を行う給水期間の少なくとも一部が、前記ポンプ装置により洗浄水の排出を行う排出期間の少なくとも一部と重なるように、前記ポンプ装置及び前記給水装置の駆動を制御するように構成されている、
ことを特徴とする水洗大便器。」
と記載されているのを、
「洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部、前記ボウル部の上縁に形成されたリム部、給水された洗浄水を前記リム部に吐水するリム吐水口、及び、給水された洗浄水を排水トラップ管に向けて吐水するゼット吐水口を有する、便器本体と、
前記便器本体を洗浄するための洗浄水を貯水するための洗浄水タンクと、
前記洗浄水タンク内の洗浄水を前記便器本体に供給するように構成されたポンプ装置と、
前記洗浄水タンク内に洗浄水を供給するように構成された給水装置と、
前記ポンプ装置の駆動を制御するとともに、前記給水装置の洗浄水の給水を制御可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ポンプ装置により前記リム吐水口と前記ゼット吐水口の両方へ排出される洗浄水の排出総量が、前記洗浄水タンクのタンク容量よりも大きい第1の洗浄モード及び前記洗浄水タンクのタンク容量よりも小さい第2の洗浄モードを実行可能であり、
前記制御装置は、前記第1の洗浄モードにおいて、前記給水装置により洗浄水の給水を行う給水期間の少なくとも一部が、前記ポンプ装置により洗浄水の排出を行う排出期間の少なくとも一部と重なるように、且つ、上記第2の洗浄モードにおいて、前記給水期間と前記排出期間とが重ならないように、前記ポンプ装置及び前記給水装置の駆動を制御するように構成されている、
ことを特徴とする水洗大便器。」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する訂正後の請求項2~6も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記洗浄モードにおいて、」
と記載されているのを、
「前記第1の洗浄モードにおいて、」
に訂正する。
請求項2の記載を引用する訂正後の請求項3~6も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記洗浄モードにおいて、」
と記載されているのを、
「前記第1の洗浄モードにおいて、」
に訂正する。
請求項3の記載を引用する訂正後の請求項4~6も同様に訂正する。
3 本件訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正前の請求項1の「前記ポンプ装置により前記リム吐水口と前記ゼット吐水口の両方へ排出される洗浄水の排出総量が、前記洗浄水タンクのタンク容量よりも大きい洗浄モード」を「第1の洗浄モード」とし、「制御装置」が「実行可能」な「洗浄モード」について、「第1の洗浄モード」に加え、さらに「記洗浄水タンクのタンク容量よりも小さ」く、かつ「前記給水期間と前記排出期間とが重ならないように、前記ポンプ装置及び前記給水装置の駆動を制御する」、「第2の洗浄モード」を有する点を限定するものである。
そうすると、訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1は、前記アに記載したとおり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、明細書の段落【0034】、【0041】の記載に基づくものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
請求項1は、本件特許異議の申立てがされている請求項であるから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正後の請求項1に整合させるための訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書き3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項2は、明瞭でない記載を釈明するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合するものである。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、訂正後の請求項1に整合させるための訂正であるから、明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
請求項2は、本件特許異議の申立てがされている請求項であるから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正後の請求項1に整合させるための訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書き3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項3は、明瞭でない記載を釈明するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合するものである。
ウ 明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、訂正後の請求項1に整合させるための訂正であるから、明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
請求項3は、本件特許異議の申立てがされている請求項であるから、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~6について、請求項2~6はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(5)別の訂正単位とする求めについて
特許権者は訂正後の請求項1~3について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
しかしながら、請求項4~6は、請求項1を直接又は間接的に引用しているから、訂正後の請求項1~6は一群の請求項となる。
したがって、別の訂正単位とする求めは認められない。
4 訂正の適否のまとめ
本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件異議申立対象請求項である請求項1~6に対応する訂正後の本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明6」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部、前記ボウル部の上縁に形成されたリム部、給水された洗浄水を前記リム部に吐水するリム吐水口、及び、給水された洗浄水を排水トラップ管に向けて吐水するゼット吐水口を有する、便器本体と、
前記便器本体を洗浄するための洗浄水を貯水するための洗浄水タンクと、
前記洗浄水タンク内の洗浄水を前記便器本体に供給するように構成されたポンプ装置と、
前記洗浄水タンク内に洗浄水を供給するように構成された給水装置と、
前記ポンプ装置の駆動を制御するとともに、前記給水装置の洗浄水の給水を制御可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ポンプ装置により前記リム吐水口と前記ゼット吐水口の両方へ排出される洗浄水の排出総量が、前記洗浄水タンクのタンク容量よりも大きい第1の洗浄モード及び前記洗浄水タンクのタンク容量よりも小さい第2の洗浄モードを実行可能であり、
前記制御装置は、前記第1の洗浄モードにおいて、前記給水装置により洗浄水の給水を行う給水期間の少なくとも一部が、前記ポンプ装置により洗浄水の排出を行う排出期間の少なくとも一部と重なるように、且つ、上記第2の洗浄モードにおいて、前記給水期間と前記排出期間とが重ならないように、前記ポンプ装置及び前記給水装置の駆動を制御するように構成されている、
ことを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1の洗浄モードにおいて、前記給水装置による洗浄水の給水と、前記ポンプ装置による洗浄水の排出とを同時に開始するように構成されている、
請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記洗浄水タンクは、外部に開放された開放部を有し、
前記第1の洗浄モードにおいて、前記ポンプ装置による前記便器本体への洗浄水の排出瞬間流量(L/min)は、前記給水装置による前記洗浄水タンクへの洗浄水の給水瞬間流量(L/min)よりも大きい、
請求項2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記洗浄水タンクにはオーバーフロー流路が接続され、
前記オーバーフロー流路は前記リム吐水口と連通している、
請求項1~3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記水洗大便器は、さらに、前記洗浄水タンク内に設けられ、前記洗浄水タンク内の洗浄水が所定の水位以上であることを検知すると検知信号を前記制御装置に送信することができるフロートスイッチを有し、
前記制御装置は、前記フロートスイッチから前記検知信号を受信すると、前記給水装置の駆動を停止するように構成されている、
請求項3に記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記制御装置は、前記給水装置による給水の開始から所定の時間経過すると、前記給水装置による給水を停止させるように構成されている、
請求項5に記載の水洗大便器。」
第4 証拠方法、特許異議申立理由の概要、及び取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
1 証拠方法
申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2016-180243号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開2016-191255号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開2009-84779号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証:特開2018-100575号公報(以下「甲4」という。)
2 異議申立理由の概要
申立人による特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
(1)申立理由1-1(甲1を主引例とする新規性)
本件特許の請求項1~3、5に係る発明は、甲1に記載された発明と同一であるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2(甲2を主引例とする新規性)
本件特許の請求項1~3、5に係る発明は、甲2に記載された発明と同一であるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由2-1(甲1を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲1に記載された発明、及び甲2~甲4に記載された発明から、当業者が容易に発明することができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由2-2(甲2を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲2に記載された発明、及び甲1、甲3、甲4に記載された発明から、当業者が容易に発明することができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由2-3(甲3を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲3に記載された発明、及び甲1、甲2、甲4に記載された発明から、当業者が容易に発明することができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(6)申立理由3(新規事項)
本件特許の請求項1~6についてした補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものであって、同法113条1号に該当し、取り消されるべきものである。
(7)申立理由4(サポート要件)
本件特許の請求項1~6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法36条6項1号の規定を満たさないから、これらの発明に係る特許は、同法同条同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
令和7年7月23日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
取消理由1(新規性)本件特許の請求項1~3、5に係る発明は、本件特許出願の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(進歩性)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許出願の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第5 先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての当審の判断
1 引用文献について
(1)甲1について
ア 記載事項
本願の出願日前に発行された甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審において付した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0019】
つぎに、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器を説明する。
まず、図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、この便器本体2の後方上部には、局部洗浄装置4を含む機能部6が配置されている。
【0020】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部8と、このボウル部8の底部から延びる排水トラップ管路10と、ジェット吐水を行うジェット吐水口12と、リム吐水を行う第1リム吐水口14及び第2リム吐水口16が形成されている。
ジェット吐水口12は、ボウル部8の底部に形成されており、排水トラップ管路10の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路10に向けて吐出するようになっている。
2つのリム吐水口14,16は、ボウル部8の上部側方に形成されており、ボウル部8の縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。
【0021】
排水トラップ管路10は、入口部10aと、この入口部10aから上昇するトラップ上昇管10bと、このトラップ上昇管10bから下降するトラップ下降管10cとからなり、トラップ上昇管10bとトラップ下降管10cとの間が頂部10dとなっている。
【0022】
本実施形態による水洗大便器1では、貯水タンク18が加圧ポンプ20からジェット吐水口12及び第2リム吐水口16から吐水すべき洗浄水を貯水するように構成されており、ジェット吐水口12におけるジェット吐水及び第1リム吐水口14における第1のリム吐水に関しては、詳細は後述するように、機能部6に内蔵された貯水タンク18に貯水された洗浄水を加圧ポンプ20によって加圧することにより行われるようになっている。
また、水洗大便器1自体は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力により第2リム吐水口16から洗浄水が第2のリム吐水として吐出されるようになっている。
【0023】
つぎに、図1により、第1実施形態による水洗大便器1の機能部6の詳細について説明する。
図1に示すように、機能部6には、加圧ポンプ20、定流量弁22、貯水タンク給水用電磁弁24、第2リム吐水用電磁弁26、貯水タンク給水用バキュームブレーカ28、第1リム給水用バキュームブレーカ30、ジェット給水用バキュームブレーカ32、及び第2リム吐水用バキュームブレーカ34が内蔵されている。
また、機能部6には、電磁弁24,26の開閉操作、及び、加圧ポンプ20の正転と逆転の回転数や作動時間等を制御するコントローラ36が内蔵されている。
さらに、コントローラ36は、タイマー36aを備えており、このタイマー36aが計測した時間に基づいて各電磁弁24,26の開閉動作や加圧ポンプ20の作動を制御することができるようになっている。
【0024】
定流量弁22は、止水栓38及びストレーナ40を介して流入した洗浄水を所定の流量以下に絞るためのものである。
また、定流量弁22を通過した洗浄水は、電磁弁24,26のそれぞれに流入し、貯水タンク給水用電磁弁24を通過した洗浄水は、貯水タンク18に供給されるようになっている。
一方、第2リム吐水用電磁弁26を通過した洗浄水は、第1リム吐水口14に供給されるようになっている。
すなわち、各電磁弁24,26は、コントローラ36の制御信号により開閉され、各電磁弁24,26に供給された洗浄水を貯水タンク18及び第2リム吐水口14のそれぞれに流入させ、又は停止させるようになっている。
【0025】
貯水タンク給水用バキュームブレーカ28は、定流量弁22から貯水タンク給水用電磁弁24を通過した洗浄水を貯水タンク18へ導く貯水タンク側給水路42の途中に配置され、洗浄水の貯水タンク18からの逆流を防止している。
また、貯水タンク給水用バキュームブレーカ28の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路44を通って貯水タンク18に流入するようになっている。
【0026】
第1リム吐水用バキュームブレーカ30は、貯水タンク18から加圧ポンプ20を通過した洗浄水を第1リム吐水口14へ導く第1リム側給水路46の途中に配置され、洗浄水の第1リム吐水口14からの逆流を防止し、加圧ポンプ20のリム側排出部70から吐水された洗浄水が便器本体2の第1リム吐水口14以外に流入することを防ぐ流入防止手段として機能するようになっている。
また、第1リム吐水用バキュームブレーカ30の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路44を通って貯水タンク18に流入するようになっている。
【0027】
ジェット給水用バキュームブレーカ32は、貯水タンク18から加圧ポンプ20を通過した洗浄水をジェット吐水口12へ導くジェット側給水路48の途中に配置され、洗浄水のジェット吐水口12から加圧ポンプ20への逆流を防止している。
また、ジェット給水用バキュームブレーカ32の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路50を通って貯水タンク18に流入するようになっている。
【0028】
第2リム吐水用バキュームブレーカ34は、定流量弁22から第2リム吐水用電磁弁26を通過した洗浄水を第2リム吐水口16へ導く第2リム側給水路52の途中に配置され、洗浄水の第2リム吐水口16からの逆流を防止し、第2リム吐水用電磁弁26を通過した洗浄水(直圧の水道水)が便器本体2の第2リム吐水口16以外に流入することを防ぐ流入防止手段として機能するようになっている。
また、第2リム吐水用バキュームブレーカ34の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路44を通って貯水タンク18に流入するようになっている。
【0029】
さらに、第1リム側給水路46は、加圧ポンプ20のリム側排出部70と第1リム吐水用バキュームブレーカ30とを接続する第1流路46aと、第1リム吐水口14と第1リム吐水用バキュームブレーカ30とを接続する第第2流路46bとを備えていると共に、第2リム側給水路52が、第2リム吐水用電磁弁26と第2リム吐水用バキュームブレーカ34とを接続する第1流路52aと、第2リム吐水口16と第2リム吐水用バキュームブレーカ34とを接続する第2流路52bとを備えている。
これらにより、加圧ポンプ20のリム側排出部70から第1リム側給水路46を経て第1のリム吐水口14に吐水される場合には、第2リム吐水用バキュームブレーカ34が第2リム側給水路52の第1流路52aを閉止して、第1リム側給水路46の第2流路46bから第1リム吐水口14よりボウル部8へ吐水することができるようになっている。
一方、第2リム吐水用電磁弁26から第2リム側給水路52を経て第2のリム吐水口16に吐水される場合には、第1リム吐水用バキュームブレーカ30が第1リム側給水路46の第1流路46aを閉止して、第2リム側給水路52の第2流路52bから第2リム吐水口16よりボウル部8へ吐水することができるようになっている。
【0030】
また、貯水タンク18とジェット側給水路48との間には、オーバーフロー流路54が設けられ、このオーバーフロー流路54の上端54aは貯水タンク18内に開口し、その下端54bは、ジェット側給水路48に接続されている。このオーバーフロー流路54には、フラッパー弁56が設けられており、このフラッパー弁56により、洗浄水のジェット吐水口16から貯水タンク18への逆流を防止すると共に、貯水タンク18とジェット側給水路48との間の縁切りを行うことができるようになっている。
【0031】
さらに、本実施形態においては、貯水タンク18の内部には、加圧ポンプ20により加圧されて貯水タンク18から便器本体2に吐水された洗浄水量を検知し、その検知した信号をコントローラ36に出力する吐水量検知手段である水位センサとして、上端フロートスイッチ58及び下端フロートスイッチ60がそれぞれ配置されており、貯水タンク18内の水位を検出できるようになっている。上端フロートスイッチ58は、貯水タンク18内の水位が所定の貯水水位W1に達するとオンに切り替わり、コントローラ36がこれを検知して、貯水タンク給水用電磁弁24を閉鎖するようになっている。
一方、下端フロートスイッチ60は、貯水タンク18内の水位が所定の水位W2まで低下するとオンに切り替わり、コントローラ36がこれを検知して、加圧ポンプ20を停止させるようになっている。」
「【0037】
つぎに、図1~図3を参照して、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1の動作(作用)について説明する。
図3は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の基本動作を示すタイムチャートである。
まず、図3に示すように、待機状態(時刻t0~t1)では、貯水タンク18内の洗浄水の水位が、オーバーフロー流路54の上端54aに相当する満水水位W0よりも下方の所定の上限水位W1にあり、この水位W1が上端フロートスイッチ58に達しているため、上端フロートスイッチ58がオンしている。
そして、時刻t1で、使用者が便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、コントローラ36は、貯水タンク給水用電磁弁24に信号を送信して開弁させると共に、第1リム吐水用電磁弁24に信号を送信して閉弁させる。
また、コントローラ36の制御により加圧ポンプ20がオンし、1回目の第1リム吐水口14による第1リム吐水(前リム洗浄)が開始され、その後の時刻t3までの間、コントローラ36が第1シーケンスを実行する。この第1シーケンスの実行により、貯水タンク18内の洗浄水が加圧ポンプ20を経て第1リム側給水路46に供給され、第1リム吐水口14から所定量の洗浄水が吐出される。
ここで、貯水タンク給水用電磁弁24は、時刻t1~t13まで開弁し、水道から供給された洗浄水が止水栓38及びストレーナ40を経て定流量弁22に流入する。
さらに、定流量弁22では、水道の給水圧力が高い場合には、通過する洗浄水の流量が所定流量に制限され、給水圧力が低い場合には、洗浄水は流れを制限されることなくそのまま通過される。そして、定流量弁22を通過した洗浄水は、貯水タンク給水用電磁弁24を通過し、貯水タンク側給水路42を流れ、貯水タンク給水用バキュームブレーカ28を通過し、貯水タンク18内に流入する。
【0038】
さらに、時刻t1で加圧ポンプ20がオンすると、インペラ64が逆転方向に回転し、インペラ64の回転数N[rpm]が時刻t2で所定回転数N1[rpm]に達するまで加速する。
そして、インペラ46は、時刻t2以後、一定の所定回転数N1で逆転方向に回転し、時刻t3で加圧ポンプ20がオフとなり、インペラ64が減速する、その後、時刻t4でインペラ64の回転数N[rpm]が0となり、加圧ポンプ20が実質的に停止する。
このような時刻t1~時刻t4までの加圧ポンプ20のインペラ64の逆転方向の回転により、貯水タンク18内の洗浄水が洗浄水管路66を経て加圧ポンプ20の吸入部68からケーシング62内に吸入された後、加圧ポンプ20のリム側排出部70から第1リム側給水路46に圧送される。そして、第1リム側給水路46の洗浄水は、第1リム吐水口14から所定の瞬間流量Q1[L/min](例えば、Q1=10L/min)で第1リム吐水(図3参照)として吐出される。第1リム吐水口14から吐出された洗浄水はボウル部8内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部8の内壁面が洗浄される。
なお、第1リム側給水路46の洗浄水の瞬間流量Q1は流量センサ76によって検知され、この検知した信号がコントローラ36に送信され、第1リム吐水口14における吐水量が所定量になるように加圧ポンプ20が制御される。
【0039】
一方、時刻t1~t5では、第2リム吐水用電磁弁26は閉弁しているため、第2リム吐水口16による第2リム吐水(図3参照)は行われない。
さらに、インペラ64が逆転方向に回転している間(t1~t4)は、加圧ポンプ20のジェット側排出部72からジェット給水路48に洗浄水が供給されないため、ジェット吐水口12からのジェット吐水(図3参照)も行われない。
また、図3に示すように、時刻t1以後、加圧ポンプ20の作動により貯水タンク18内の洗浄水が洗浄水管路66を経て加圧ポンプ20の吸入部68に吸入されるため、貯水タンク18の水位が、上端フロートスイッチ58が検知する所定の上限水位W1よりも低下し、上端フロートスイッチ58がオフとなる。
一方、下端フロートスイッチ60は、貯水タンク18内の水位が所定の下限水位W2よりも上回っているため、オフの状態となっている。
【0040】
つぎに、図3に示すように、時刻t5~t11では、コントローラ36が第2シーケンスを実行し、貯水タンク18内の洗浄水が加圧ポンプ20を経てジェット側給水路48に供給され、ジェット吐水口12から所定量の洗浄水が吐出されるジェット吐水による洗浄が行われると共に、第2リム吐水用電磁弁26が開弁し、第2リム側給水路52から第2リム吐水口16に供給される水道水の第2リム吐水のみによる洗浄(中リム洗浄)が行われる。
具体的には、時刻t5でコントローラ36の制御により再び加圧ポンプ20がオンし、加圧ポンプ20のインペラ64は、正転方向に回転し、インペラ64の回転数N[rpm]が時刻t6で所定回転数N2[rpm]に達するまで加速した後、時刻t7まで一定の所定回転数N2[rpm]で正転方向に回転する。なお、この所定回転数N2は、時刻t2~t3までの所定回転数N1よりも小さく設定される。
【0041】
なお、時刻t3で加圧ポンプ20がオフとなり、第1シーケンスが終了し、時刻t5で加圧ポンプ20が再びオンとなり、第2シーケンスが開始するまでの時間(t5-t3)は、加圧ポンプ20のインペラ64が逆転方向の回転から正転方向の回転に切り替わるまでのタイムラグ(t5-t3)であり、このタイムラグ(t5-t3)においては、例えば、0.5msecに設定される。この間、特に、時刻t4では、インペラ64が実質的に停止しても、貯水タンク18と加圧ポンプ20との間の洗浄水管路66の途中のフラッパー弁74により、加圧ポンプ20のケーシング62内の洗浄水が洗浄水管路66から貯水タンク18に逆流し、加圧ポンプ20のケーシング62内の洗浄水が抜けて、加圧ポンプ20の始動時にケーシング62内の呼び水がなくなるのが防止される。
【0042】
さらに、時刻t7~t8では、インペラ64の回転数N[rpm]が所定回転数N1[rpm]よりも大きい最大の所定回転数N3[rpm]に達するまでインペラ64が加速し、時刻t8~t9では、インペラ64が一定の所定回転数N3[rpm]で正転方向に回転する。
また、時刻t9~t10では、インペラ64は、最大の所定回転数N3[rpm]から所定回転数N1まで減速し、時刻t10~t11では、インペラ64が一定の所定回転数N1[rpm]で正転方向に回転する。そして、時刻t11で加圧ポンプ20がオフとなり、インペラ64が減速し、その後の時刻t12でインペラ64の回転数N[rpm]が0となり、加圧ポンプ20が実質的に停止し、以後、次の2回目の便器洗浄が開始されるまで、加圧ポンプ20は停止状態が維持される。
【0043】
すなわち、これらの時刻t5~t11の第2シーケンスによる加圧ポンプ20の動作により、時刻t5で1回目のジェット吐水口12によるジェット吐水が開始されると、貯水タンク18内の洗浄水が洗浄水管路66を経て加圧ポンプ20の吸入部68からケーシング62内に吸入された後、加圧ポンプ20のジェット側排出部72から、ジェット側給水路48のそれぞれに圧送される。
そして、ジェット側給水路48の洗浄水は、ジェット吐水口12から所定の瞬間流量Q2[L/min](例えば、Q2=85L/min)でジェット吐水(図3参照)として吐出され、排水トラップ管路10内に流入し、排水トラップ管路10を満水にしてサイホン現象を引き起こす。このサイホン現象により、ボウル部8内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路10に吸引され、排水管Dから排出される。
同時に、時刻t5~t11においては、第2リム吐水用電磁弁26が開弁し、第2リム側給水路52を通過した洗浄水(直圧の水道水)は、第2リム吐水口16から所定の瞬間流量Q3[L/min](例えば、Q3=6L/min)で第2リム吐水として吐出され、ボウル部8内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部8の内壁面が洗浄される。
【0044】
なお、本実施形態では、時刻t5~t11の間の第2シーケンスにおいて、第2リム吐水口16から第2リム吐水を行う例について説明しているが、第2リム吐水口16から第2リム吐水を行う代わりに、第2リム吐水用電磁弁26が閉弁すると共に、加圧ポンプ20のリム側排出部70から第1リム側給水路46を経て第1リム吐水口14から第1リム吐水を行い、便器本体2のジェット吐水口12及び第1リム吐水口14のそれぞれからの同時吐水を行うようにしてもよい。
或いは、さらなる変形例として、時刻t5~t11の間の第2シーケンスにおいて、第1リム吐水口14の第1リム吐水や第2リム吐水口16の第2リム吐水を一切行わず、ジェット吐水口12のジェット吐水のみを行うようにして、節水化を行ってもよい。
【0045】
つぎに、時刻t11で第2リム吐水用電磁弁26が閉弁し、第2シーケンスの第2リム吐水及びジェット吐水による洗浄(中リム洗浄)が終了し、第2シーケンスが終了した後、時刻t12付近で貯水タンク18内の水位が下限水位W2を下回ると、下端フロートスイッチ60がオンとなる。
そして、時刻t13~t14において、貯水タンク給水用電磁弁24が閉弁すると共に、第2リム吐水用電磁弁26が再び開弁し、第2リム側給水路52から第2リム吐水口16に供給される水道水の第2リム吐水のみによる洗浄(後リム洗浄)が所定の瞬間流量Q4[L/min](例えば、Q4=6L/min)で行われる第3シーケンスが実行される。
ここで、時刻t1以後、加圧ポンプ20の作動により貯水タンク18内の水位が上端フロートスイッチ58の位置よりも低下して上端フロートスイッチ58がオフになった後、時刻t12付近で貯水タンク18内の水位が下限水位W2を下回り、下端フロートスイッチ60がオンとなると、第1シーケンスにおいて加圧ポンプ20により第1リム吐水口14に吐水された吐水量と第1シーケンスにおいて加圧ポンプ20によりジェット吐水口12に吐水された吐水量との総吐水量を検知し、コントローラ36は、この検知した吐水量に基づいて、時刻t13~t14までの第3シーケンスにおいて、第2リム吐水用電磁弁26を開弁する。
【0046】
つぎに、時刻t14において、貯水タンク給水用電磁弁24が再び開弁すると共に、第2リム吐水用電磁弁26が再び閉弁し、貯水タンク側給水路42から貯水タンク18に所定の瞬間流量Q5[L/min](例えば、Q5=6L/min)で給水され、貯水タンク18内の水位が上昇する。
そして、時刻t15で、貯水タンク18内の水位が所定の下限水位W2よりも上昇すると、下端フロートスイッチ60がオフとなり、さらに、貯水タンク18内の水位が上昇して、時刻t16で所定の上限水位W1に達すると、上端フロートスイッチ58がオンとなる。
そして、時刻t17において、貯水タンク給水用電磁弁24が閉弁し、貯水タンク18がほぼ満水状態となり、時刻t17以後については、次の2回目の便器洗浄が開始されるまで、上述した元の待機状態(時刻t0~t1)と同様な状態となる。」
「【図1】
[図:0001435169000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001435169000002.jpg]
」
イ 認定事項
前記ア【0038】の「このような時刻t1~時刻t4までの加圧ポンプ20のインペラ64の逆転方向の回転により、貯水タンク18内の洗浄水が洗浄水管路66を経て加圧ポンプ20の吸入部68からケーシング62内に吸入された後、加圧ポンプ20のリム側排出部70から第1リム側給水路46に圧送される。そして、第1リム側給水路46の洗浄水は、第1リム吐水口14から所定の瞬間流量Q1[L/min](例えば、Q1=10L/min)で第1リム吐水(図3参照)として吐出される。」との記載、前記ア【図3】から、時刻t1~t3の間、瞬間流量Q1[L/min]で第1リム吐水が行われていることが看取できる。
ウ 甲1発明
前記ア、イで示した事項からみて、甲1には下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって(【0001】)、
便器本体2と、機能部6が配置され(【0019】)、
便器本体2には、汚物を受けるボウル部8と、このボウル部8の底部から延びる排水トラップ管路10と、ジェット吐水を行うジェット吐水口12と、リム吐水を行う第1リム吐水口14が形成されており(【0020】)、
第1リム吐水口14は、ボウル部8の上部側方に形成されており、ボウル部8の縁に沿って洗浄水を吐出するようになっており(【0020】)、
ジェット吐水口12は、ボウル部8の底部に形成されており、排水トラップ管路10の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路10に向けて吐出し、サイホン現象により、ボウル部8内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路10に吸引され、排水管Dから排出されるようになっており(【0020】、【0043】)、
ジェット吐水口12におけるジェット吐水及び第1リム吐水口14における第1のリム吐水は、機能部6に内蔵された貯水タンク18に貯水された洗浄水を加圧ポンプ20によって加圧することにより行われ(【0022】)、
電磁弁24は、コントローラ36の制御信号により開閉され、電磁弁24に供給された洗浄水を貯水タンク18に流入させ、又は停止させるようになっており(【0024】)、
機能部6には、貯水タンク18、加圧ポンプ20、電磁弁24、ジェット給水用バキュームブレーカ32、電磁弁24の開閉操作、及び、加圧ポンプ20の正転と逆転の回転数や作動時間等を制御するコントローラ36が内蔵されており(【0022】、【0023】)、
ジェット給水用バキュームブレーカ32の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路50を通って貯水タンク18に流入するようになっており(【0027】)、
貯水タンク18の内部には、加圧ポンプ20により加圧されて貯水タンク18から便器本体2に吐水された洗浄水量を検知し、その検知した信号をコントローラ36に出力する吐水量検知手段である水位センサとして、上端フロートスイッチ58及び下端フロートスイッチ60がそれぞれ配置されており、上端フロートスイッチ58は、貯水タンク18内の水位が所定の貯水水位W1に達するとオンに切り替わり、コントローラ36がこれを検知して、電磁弁24を閉鎖するようになっており(【0031】)、
電磁弁24は、時刻t1~t13まで開弁し(【0037】)、
時刻t1で加圧ポンプ20がオンし、時刻t3でオフとなり、時刻t1~t3の間、洗浄水は第1リム吐水口14から瞬間流量10L/minで第1リム吐水として吐出され(【0038】、イ)、
時刻t5~t11では、貯水タンク18内の洗浄水が加圧ポンプ20を経てジェット側給水路48に供給され、85L/minでジェット吐水による洗浄が行われ(【0040】、【0043】)、
時刻t1以後、加圧ポンプ20の作動により貯水タンク18内の水位が上端フロートスイッチ58の位置よりも低下して上端フロートスイッチ58がオフになった後、時刻t11で、ジェット吐水による洗浄が終了した後、時刻t12付近で貯水タンク18内の水位が下限水位W2を下回ると、下端フロートスイッチ60がオンとなり(【0045】)、
時刻t14において、貯水タンク給水用電磁弁24が再び開弁し、貯水タンク側給水路42から貯水タンク18に6L/minで給水され、貯水タンク18内の水位が上昇し、貯水タンク18内の水位が上昇して、時刻t16で所定の上限水位W1に達すると、上端フロートスイッチ58がオンとなる(【0046】)、
水洗大便器。」
(2)甲2について
ア 記載事項
本願の出願日前に発行された甲2には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】、
本発明は、水洗大便器に係り、特に、加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器に関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態による水洗大便器を説明する。
まず、図1は、本発明の第1実施形態による水洗大便器を示す全体構成図である。
図1に示すように、本発明の第1実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、この便器本体2の後方上部には、局部洗浄装置4を含む機能部6が配置されている。
【0025】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部8と、このボウル部8の底部から延びる排水トラップ管路10と、ジェット吐水を行うジェット吐水口12と、リム吐水を行う第1リム吐水口14及び第2リム吐水口16が形成されている。
ジェット吐水口12は、ボウル部8の底部に形成されており、排水トラップ管路10の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路10に向けて吐出するようになっている。
2つのリム吐水口14,16は、ボウル部8の上部側方に形成されており、ボウル部8の縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。
【0026】
排水トラップ管路10は、入口部10aと、この入口部10aから上昇するトラップ上昇管10bと、このトラップ上昇管10bから下降するトラップ下降管10cとからなり、トラップ上昇管10bとトラップ下降管10cとの間が頂部10dとなっている。
【0027】
本実施形態による水洗大便器1では、貯水タンク18が加圧ポンプ20からジェット吐水口12及び第2リム吐水口16から吐水すべき洗浄水を貯水するように構成されており、ジェット吐水口12におけるジェット吐水及び第1リム吐水口14における第1のリム吐水に関しては、詳細は後述するように、機能部6に内蔵された貯水タンク18に貯水された洗浄水を加圧ポンプ20によって加圧することにより行われるようになっている。
また、水洗大便器1自体は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力により第2リム吐水口16から洗浄水が第2のリム吐水として吐出されるようになっている。
【0028】
つぎに、図1により、第1実施形態による水洗大便器1の機能部6の詳細について説明する。
図1に示すように、機能部6には、加圧ポンプ20、定流量弁22、貯水タンク給水用電磁弁24、第2リム吐水用電磁弁26、貯水タンク給水用バキュームブレーカ28、第1リム給水用バキュームブレーカ30、ジェット給水用バキュームブレーカ32、及び第2リム吐水用バキュームブレーカ34が内蔵されている。
また、機能部6には、電磁弁24,26の開閉操作、及び、加圧ポンプ20の正転と逆転の回転数や作動時間等を制御するコントローラ36が内蔵されている。
さらに、コントローラ36は、タイマー36aを備えており、このタイマー36aが計測した時間に基づいて各電磁弁24,26の開閉動作や加圧ポンプ20の作動を制御することができるようになっている。
【0029】
定流量弁22は、止水栓38及びストレーナ40を介して流入した洗浄水を所定の流量以下に絞るためのものである。
また、定流量弁22を通過した洗浄水は、電磁弁24,26のそれぞれに流入し、貯水タンク給水用電磁弁24を通過した洗浄水は、貯水タンク18に供給されるようになっている。
一方、第2リム吐水用電磁弁26を通過した洗浄水は、第1リム吐水口14に供給されるようになっている。
すなわち、各電磁弁24,26は、コントローラ36の制御信号により開閉され、各電磁弁24,26に供給された洗浄水を貯水タンク18及び第2リム吐水口14のそれぞれに流入させ、又は停止させるようになっている。
【0030】
貯水タンク給水用バキュームブレーカ28は、定流量弁22から貯水タンク給水用電磁弁24を通過した洗浄水を貯水タンク18へ導く貯水タンク側給水路42の途中に配置され、洗浄水の貯水タンク18からの逆流を防止している。
また、貯水タンク給水用バキュームブレーカ28の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路44を通って貯水タンク18に流入するようになっている。
【0031】
第1リム吐水用バキュームブレーカ30は、貯水タンク18から加圧ポンプ20を通過した洗浄水を第1リム吐水口14へ導く第1リム側給水路46の途中に配置され、洗浄水の第1リム吐水口14からの逆流を防止し、加圧ポンプ20のリム側排出部70から吐水された洗浄水が便器本体2の第1リム吐水口14以外に流入することを防ぐ流入防止手段として機能するようになっている。
また、第1リム吐水用バキュームブレーカ30の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路44を通って貯水タンク18に流入するようになっている。
【0032】
ジェット給水用バキュームブレーカ32は、貯水タンク18から加圧ポンプ20を通過した洗浄水をジェット吐水口12へ導くジェット側給水路48の途中に配置され、洗浄水のジェット吐水口12から加圧ポンプ20への逆流を防止している。
また、ジェット給水用バキュームブレーカ32の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路50を通って貯水タンク18に流入するようになっている。
【0033】
第2リム吐水用バキュームブレーカ34は、定流量弁22から第2リム吐水用電磁弁26を通過した洗浄水を第2リム吐水口16へ導く第2リム側給水路52の途中に配置され、洗浄水の第2リム吐水口16からの逆流を防止し、第2リム吐水用電磁弁26を通過した洗浄水(直圧の水道水)が便器本体2の第2リム吐水口16以外に流入することを防ぐ流入防止手段として機能するようになっている。
また、第2リム吐水用バキュームブレーカ34の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路44を通って貯水タンク18に流入するようになっている。
【0034】
さらに、第1リム側給水路46は、加圧ポンプ20のリム側排出部70と第1リム吐水用バキュームブレーカ30とを接続する第1流路46aと、第1リム吐水口14と第1リム吐水用バキュームブレーカ30とを接続する第第2流路46bとを備えていると共に、第2リム側給水路52が、第2リム吐水用電磁弁26と第2リム吐水用バキュームブレーカ34とを接続する第1流路52aと、第2リム吐水口16と第2リム吐水用バキュームブレーカ34とを接続する第2流路52bとを備えている。
これらにより、加圧ポンプ20のリム側排出部70から第1リム側給水路46を経て第1のリム吐水口14に吐水される場合には、第2リム吐水用バキュームブレーカ34が第2リム側給水路52の第1流路52aを閉止して、第1リム側給水路46の第2流路46bから第1リム吐水口14よりボウル部8へ吐水することができるようになっている。
一方、第2リム吐水用電磁弁26から第2リム側給水路52を経て第2のリム吐水口16に吐水される場合には、第1リム吐水用バキュームブレーカ30が第1リム側給水路46の第1流路46aを閉止して、第2リム側給水路52の第2流路52bから第2リム吐水口16よりボウル部8へ吐水することができるようになっている。
【0035】
また、貯水タンク18とジェット側給水路48との間には、オーバーフロー流路54が設けられ、このオーバーフロー流路54の上端54aは貯水タンク18内に開口し、その下端54bは、ジェット側給水路48に接続されている。このオーバーフロー流路54には、フラッパー弁56が設けられており、このフラッパー弁56により、洗浄水のジェット吐水口16から貯水タンク18への逆流を防止すると共に、貯水タンク18とジェット側給水路48との間の縁切りを行うことができるようになっている。
【0036】
さらに、本実施形態においては、貯水タンク18の内部には、加圧ポンプ20により加圧されて貯水タンク18から便器本体2に吐水された洗浄水量を検知し、その検知した信号をコントローラ36に出力する吐水量検知手段である水位センサとして、上端フロートスイッチ58及び下端フロートスイッチ60がそれぞれ配置されており、貯水タンク18内の水位を検出できるようになっている。上端フロートスイッチ58は、貯水タンク18内の水位が所定の貯水水位W1に達するとオンに切り替わり、コントローラ36がこれを検知して、貯水タンク給水用電磁弁24を閉鎖するようになっている。
一方、下端フロートスイッチ60は、貯水タンク18内の水位が所定の水位W2まで低下するとオンに切り替わり、コントローラ36がこれを検知して、加圧ポンプ20を停止させるようになっている。」
「【0043】
つぎに、図1~図4を参照して、上述した本発明の第1実施形態による水洗大便器1の動作(作用)について説明する。
図4は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の基本動作を示すタイムチャートである。
まず、図4に示すように、待機状態(時刻t0~t1)では、貯水タンク18内の洗浄水の水位が、オーバーフロー流路54の上端54aに相当する満水水位W0よりも下方の所定の上限水位W1にあり、この水位W1が上端フロートスイッチ58に達しているため、上端フロートスイッチ58がオンしている。
そして、時刻t1で、使用者が便器洗浄スイッチ(図示せず)を操作すると、コントローラ36は、貯水タンク給水用電磁弁24に信号を送信して開弁させると共に、第1リム吐水用電磁弁24に信号を送信して閉弁させる。
また、コントローラ36の制御により加圧ポンプ20がオンし、1回目の第1リム吐水口14による第1リム吐水(前リム洗浄)が開始され、その後の時刻t3までの間、コントローラ36が第1シーケンスを実行する。この第1シーケンスの実行により、貯水タンク18内の洗浄水が加圧ポンプ20を経て第1リム側給水路46に供給され、第1リム吐水口14から所定量の洗浄水が吐出される。
ここで、貯水タンク給水用電磁弁24は、時刻t1~t13まで開弁し、水道から供給された洗浄水が止水栓38及びストレーナ40を経て定流量弁22に流入する。
さらに、定流量弁22では、水道の給水圧力が高い場合には、通過する洗浄水の流量が所定流量に制限され、給水圧力が低い場合には、洗浄水は流れを制限されることなくそのまま通過される。そして、定流量弁22を通過した洗浄水は、貯水タンク給水用電磁弁24を通過し、貯水タンク側給水路42を流れ、貯水タンク給水用バキュームブレーカ28を通過し、貯水タンク18内に流入する。
【0044】
さらに、時刻t1で加圧ポンプ20がオンすると、インペラ64が逆転方向に回転し、インペラ64の回転数N[rpm]が時刻t2で所定回転数N1[rpm]に達するまで加速する。
そして、インペラ46は、時刻t2以後、一定の所定回転数N1で逆転方向に回転し、時刻t3で加圧ポンプ20がオフとなり、コントローラ36は、モータMの両端子をショートさせ、回転を止める方向に回転力を生じさせ、これによりインペラ64が減速する、その後、時刻t4でインペラ64の回転数N[rpm]が0となり、加圧ポンプ20が実質的に停止する。
このような時刻t1~時刻t4までの加圧ポンプ20のインペラ64の逆転方向の回転により、貯水タンク18内の洗浄水が洗浄水管路66を経て加圧ポンプ20の吸入部68からケーシング62内に吸入された後、加圧ポンプ20のリム側排出部70から第1リム側給水路46に圧送される。そして、第1リム側給水路46の洗浄水は、第1リム吐水口14から所定の瞬間流量Q1[L/min](例えば、Q1=10L/min)で第1リム吐水(図4参照)として吐出される。第1リム吐水口14から吐出された洗浄水はボウル部8内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部8の内壁面が洗浄される。
なお、第1リム側給水路46の洗浄水の瞬間流量Q1は流量センサ76によって検知され、この検知した信号がコントローラ36に送信され、第1リム吐水口14における吐水量が所定量になるように加圧ポンプ20が制御される。
【0045】
一方、時刻t1~t5では、第2リム吐水用電磁弁26は閉弁しているため、第2リム吐水口16による第2リム吐水(図4参照)は行われない。
さらに、インペラ64が逆転方向に回転している間(t1~t4)は、加圧ポンプ20のジェット側排出部72からジェット給水路48に洗浄水が供給されないため、ジェット吐水口12からのジェット吐水(図4参照)も行われない。
また、図4に示すように、時刻t1以後、加圧ポンプ20の作動により貯水タンク18内の洗浄水が洗浄水管路66を経て加圧ポンプ20の吸入部68に吸入されるため、貯水タンク18の水位が、上端フロートスイッチ58が検知する所定の上限水位W1よりも低下し、上端フロートスイッチ58がオフとなる。
一方、下端フロートスイッチ60は、貯水タンク18内の水位が所定の下限水位W2よりも上回っているため、オフの状態となっている。
【0046】
つぎに、図4に示すように、時刻t5~t11では、コントローラ36が第2シーケンスを実行し、貯水タンク18内の洗浄水が加圧ポンプ20を経てジェット側給水路48に供給され、ジェット吐水口12から所定量の洗浄水が吐出されるジェット吐水による洗浄が行われると共に、第2リム吐水用電磁弁26が開弁し、第2リム側給水路52から第2リム吐水口16に供給される水道水の第2リム吐水のみによる洗浄(中リム洗浄)が行われる。
具体的には、時刻t5でコントローラ36の制御により再び加圧ポンプ20がオンし、加圧ポンプ20のインペラ64は、正転方向に回転し、インペラ64の回転数N[rpm]が時刻t6で所定回転数N2[rpm]に達するまで加速した後、時刻t7まで一定の所定回転数N2[rpm]で正転方向に回転する。なお、この所定回転数N2は、時刻t2~t3までの所定回転数N1よりも小さく設定される。
【0047】
なお、時刻t3で加圧ポンプ20がオフとなり、第1シーケンスが終了し、時刻t5で加圧ポンプ20が再びオンとなり、第2シーケンスが開始するまでの時間(t5-t3)は、加圧ポンプ20のインペラ64が逆転方向の回転から正転方向の回転に切り替わるまでのタイムラグ(t5-t3)であり、このタイムラグ(t5-t3)においては、例えば、0.5msecに設定される。この間、特に、時刻t4では、インペラ64が実質的に停止しても、貯水タンク18と加圧ポンプ20との間の洗浄水管路66の途中のフラッパー弁74により、加圧ポンプ20のケーシング62内の洗浄水が洗浄水管路66から貯水タンク18に逆流し、加圧ポンプ20のケーシング62内の洗浄水が抜けて、加圧ポンプ20の始動時にケーシング62内の呼び水がなくなるのが防止される。
【0048】
さらに、時刻t7~t8では、インペラ64の回転数N[rpm]が所定回転数N1[rpm]よりも大きい最大の所定回転数N3[rpm]に達するまでインペラ64が加速し、時刻t8~t9では、インペラ64が一定の所定回転数N3[rpm]で正転方向に回転する。
また、時刻t9~t10では、インペラ64は、最大の所定回転数N3[rpm]から所定回転数N1まで減速し、時刻t10~t11では、インペラ64が一定の所定回転数N1[rpm]で正転方向に回転する。そして、時刻t11で加圧ポンプ20がオフとなり、コントローラ36は、モータMの両端子をショートさせ、回転を止める方向に回転力を生じさせ、これによりインペラ64が減速し、その後の時刻t12でインペラ64の回転数N[rpm]が0となり、加圧ポンプ20が実質的に停止し、以後、次の2回目の便器洗浄が開始されるまで、加圧ポンプ20は停止状態が維持される。
【0049】
すなわち、これらの時刻t5~t11の第2シーケンスによる加圧ポンプ20の動作により、時刻t5で1回目のジェット吐水口12によるジェット吐水が開始されると、貯水タンク18内の洗浄水が洗浄水管路66を経て加圧ポンプ20の吸入部68からケーシング62内に吸入された後、加圧ポンプ20のジェット側排出部72から、ジェット側給水路48のそれぞれに圧送される。
そして、ジェット側給水路48の洗浄水は、ジェット吐水口12から所定の瞬間流量Q2[L/min](例えば、Q2=85L/min)でジェット吐水(図4参照)として吐出され、排水トラップ管路10内に流入し、排水トラップ管路10を満水にしてサイホン現象を引き起こす。このサイホン現象により、ボウル部8内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路10に吸引され、排水管Dから排出される。
同時に、時刻t5~t11においては、第2リム吐水用電磁弁26が開弁し、第2リム側給水路52を通過した洗浄水(直圧の水道水)は、第2リム吐水口16から所定の瞬間流量Q3[L/min](例えば、Q3=6L/min)で第2リム吐水として吐出され、ボウル部8内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部8の内壁面が洗浄される。
【0050】
なお、本実施形態では、時刻t5~t11の間の第2シーケンスにおいて、第2リム吐水口16から第2リム吐水を行う例について説明しているが、第2リム吐水口16から第2リム吐水を行う代わりに、第2リム吐水用電磁弁26が閉弁すると共に、加圧ポンプ20のリム側排出部70から第1リム側給水路46を経て第1リム吐水口14から第1リム吐水を行い、便器本体2のジェット吐水口12及び第1リム吐水口14のそれぞれからの同時吐水を行うようにしてもよい。
或いは、さらなる変形例として、時刻t5~t11の間の第2シーケンスにおいて、第1リム吐水口14の第1リム吐水や第2リム吐水口16の第2リム吐水を一切行わず、ジェット吐水口12のジェット吐水のみを行うようにして、節水化を行ってもよい。
【0051】
つぎに、時刻t11で第2リム吐水用電磁弁26が閉弁し、第2シーケンスの第2リム吐水及びジェット吐水による洗浄(中リム洗浄)が終了し、第2シーケンスが終了した後、時刻t12付近で貯水タンク18内の水位が下限水位W2を下回ると、下端フロートスイッチ60がオンとなる。
そして、時刻t13~t14において、貯水タンク給水用電磁弁24が閉弁すると共に、第2リム吐水用電磁弁26が再び開弁し、第2リム側給水路52から第2リム吐水口16に供給される水道水の第2リム吐水のみによる洗浄(後リム洗浄)が所定の瞬間流量Q4[L/min](例えば、Q4=6L/min)で行われる第3シーケンスが実行される。
ここで、時刻t1以後、加圧ポンプ20の作動により貯水タンク18内の水位が上端フロートスイッチ58の位置よりも低下して上端フロートスイッチ58がオフになった後、時刻t12付近で貯水タンク18内の水位が下限水位W2を下回り、下端フロートスイッチ60がオンとなると、第1シーケンスにおいて加圧ポンプ20により第1リム吐水口14に吐水された吐水量と第1シーケンスにおいて加圧ポンプ20によりジェット吐水口12に吐水された吐水量との総吐水量を検知し、コントローラ36は、この検知した吐水量に基づいて、時刻t13~t14までの第3シーケンスにおいて、第2リム吐水用電磁弁26を開弁する。
【0052】
つぎに、時刻t14において、貯水タンク給水用電磁弁24が再び開弁すると共に、第2リム吐水用電磁弁26が再び閉弁し、貯水タンク側給水路42から貯水タンク18に所定の瞬間流量Q5[L/min](例えば、Q5=6L/min)で給水され、貯水タンク18内の水位が上昇する。
そして、時刻t15で、貯水タンク18内の水位が所定の下限水位W2よりも上昇すると、下端フロートスイッチ60がオフとなり、さらに、貯水タンク18内の水位が上昇して、時刻t16で所定の上限水位W1に達すると、上端フロートスイッチ58がオンとなる。
そして、時刻t17において、貯水タンク給水用電磁弁24が閉弁し、貯水タンク18がほぼ満水状態となり、時刻t17以後については、次の2回目の便器洗浄が開始されるまで、上述した元の待機状態(時刻t0~t1)と同様な状態となる。」
「【図1】
[図:0001435169000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001435169000004.jpg]
」
イ 認定事項
前記ア【0044】の「このような時刻t1~時刻t4までの加圧ポンプ20のインペラ64の逆転方向の回転により、貯水タンク18内の洗浄水が洗浄水管路66を経て加圧ポンプ20の吸入部68からケーシング62内に吸入された後、加圧ポンプ20のリム側排出部70から第1リム側給水路46に圧送される。そして、第1リム側給水路46の洗浄水は、第1リム吐水口14から所定の瞬間流量Q1[L/min](例えば、Q1=10L/min)で第1リム吐水(図3参照)として吐出される。」との記載、前記ア【図4】から、時刻t1~t3の間、第1リム吐水が行われていることが看取できる。
ウ 甲2発明
前記ア、イで示した事項からみて、甲2には下記の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「加圧した洗浄水によって洗浄される水洗大便器であって(【0001】)、
便器本体2と、機能部6が配置され(【0024】)、
便器本体2には、汚物を受けるボウル部8と、このボウル部8の底部から延びる排水トラップ管路10と、ジェット吐水を行うジェット吐水口12と、リム吐水を行う第1リム吐水口14が形成されており(【0025】)、
第1リム吐水口14は、ボウル部8の上部側方に形成されており、ボウル部8の縁に沿って洗浄水を吐出するようになっており(【0025】)、
ジェット吐水口12は、ボウル部8の底部に形成されており、排水トラップ管路10の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路10に向けて吐出し、サイホン現象により、ボウル部8内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路10に吸引され、排水管Dから排出されるようになっており(【0025】、【0049】)、
ジェット吐水口12におけるジェット吐水及び第1リム吐水口14における第1のリム吐水は、機能部6に内蔵された貯水タンク18に貯水された洗浄水を加圧ポンプ20によって加圧することにより行われ(【0027】)、
機能部6には、貯水タンク18、加圧ポンプ20、電磁弁24、ジェット給水用バキュームブレーカ32、電磁弁24の開閉操作、及び、加圧ポンプ20の正転と逆転の回転数や作動時間等を制御するコントローラ36が内蔵されており(【0028】、【0029】)、
ジェット給水用バキュームブレーカ32の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路50を通って貯水タンク18に流入するようになっており(【0032】)、
貯水タンク18の内部には、加圧ポンプ20により加圧されて貯水タンク18から便器本体2に吐水された洗浄水量を検知し、その検知した信号をコントローラ36に出力する吐水量検知手段である水位センサとして、上端フロートスイッチ58及び下端フロートスイッチ60がそれぞれ配置されており、上端フロートスイッチ58は、貯水タンク18内の水位が所定の貯水水位W1に達するとオンに切り替わり、コントローラ36がこれを検知して、電磁弁24を閉鎖するようになっており(【0036】)、
電磁弁24は、時刻t1~t13まで開弁し(【0043】)、
時刻t1で加圧ポンプ20がオンし、時刻t3でオフとなり、時刻t1~t3の間、洗浄水は第1リム吐水口14から瞬間流量10L/minで第1リム吐水として吐出され(【0044】、イ)、
時刻t5~t11では、貯水タンク18内の洗浄水が加圧ポンプ20を経てジェット側給水路48に供給され、85L/minでジェット吐水による洗浄が行われ(【0046】、【0049】)、
時刻t1以後、加圧ポンプ20の作動により貯水タンク18内の水位が上端フロートスイッチ58の位置よりも低下して上端フロートスイッチ58がオフになった後、時刻t11で、ジェット吐水による洗浄が終了した後、時刻t12付近で貯水タンク18内の水位が下限水位W2を下回ると、下端フロートスイッチ60がオンとなり(【0051】)、
時刻t14において、貯水タンク給水用電磁弁24が再び開弁し、貯水タンク側給水路42から貯水タンク18に6L/minで給水され、貯水タンク18内の水位が上昇し、貯水タンク18内の水位が上昇して、時刻t16で所定の上限水位W1に達すると、上端フロートスイッチ58がオンとなる(【0052】)、
水洗大便器。」
(3)甲3について
ア 記載事項
本願の出願日前に発行された甲3には、次の事項が記載されている。
「【0012】
図1(a)及び図1(b)は、本発明の実施例1の便器装置100の概略部分透過側面図及び側面図である。図2は、便器装置100のブロック図である。便器装置100は、便器1と便器1を洗浄する洗浄部を有し、ゼット口への給水(係る給水を以下「ゼット給水」と呼ぶ場合もある。)をポンプにより行う。
【0013】
便器1は、水洗大便器であり、内側に汚物を受けるボール12を有する陶器製の本体2と、本体2の上に配置された便座4と、便座4を覆うように配置された蓋7と、本体2の後方上部に配置された図示しない局部洗浄装置と、を有する。便座4の内部又は本体側には、後述する図3に示すように、便器1への使用者の着座を検出する着座検出手段として機能する着座センサ5が設けられる。着座センサ5は、例えば、便座4の便座ヒータの静電容量の変化を測定するセンサや圧力センサを使用することができる。2aは水受けトレイである。また、便器装置100は、使用者のトイレの入出を検出する人体センサ6を更に有する。人体センサ6は、赤外線センサ、トイレのライトの点灯を検出するセンサ、便器装置100のいずれかのスイッチを検出するセンサ、蓋7の開口を検出するセンサなどを利用することができる。
【0014】
洗浄部は、リム洗浄(又はボール洗浄)と、便器洗浄と、溜水供給とを行う。リム洗浄では、ボール12の上縁近傍にあるリム口18からリム13に沿って絞り17を介して旋回状に吐水してボール12を洗浄する。便器洗浄では、ボール12の下部にあるゼット口16から吐水し、サイホン現象を利用してボール12の汚物と溜水を排水管Dから排水する。溜水供給は、下水からの臭気が便器内に流入することを防止する溜水をボール12に供給する。
【0015】
洗浄部は、給水系と、リム洗浄/溜水供給系(リム給水手段)と、便器洗浄/溜水供給系(ゼット給水手段)と、制御系とを有する。洗浄部の幾つかの構成要素は、図1に示す本体2の後方に設けられた機能部10に設けられている。機能部10はサイドパネル10aにより覆われている。
【0016】
給水系は、洗浄水を供給する水道管に直結され、便器洗浄/溜水供給系への給水とリム洗浄/溜水供給系への給水を行い、バルブユニット30を有する。バルブユニット30は、給水金具20、手洗器用の分岐金具21を介して入水口22から流入した水をフレキホース24を介して受け取る。給水金具20は、止水栓20aとストレーナ20bを有する。入水口22には局部洗浄用の分岐金具23が接続され、フレキホース24を介して局部洗浄装置へ給水する。
【0017】
定流量弁31は、流入した水を、例えば、16リットル/分の所定の流量以下に制限する。定流量弁31を通過した洗浄水は給水電磁弁33に流入する。
【0018】
給水電磁弁33は、後述する図3に示す給水電磁弁駆動部32によって開閉駆動され、流路切替弁35に至る流路を開閉する。給水電磁弁33を通過した水の流路は流路切替弁35により切り替えられる。
【0019】
流路切替弁35は、後述する図3に示す流路切替弁駆動部34によって駆動され、便器洗浄/溜水供給系への給水の場合にはタンク給水路35aに流路を選択し、リム洗浄/溜水供給系への給水の場合にはリム給水路35bに流路を選択する。」
「【0023】
ゼット口16は、サイホン現象を発生させるのに必要な水の噴出しと溜水の供給を行う。ゼット口16は、ボール12の底部に形成され、排水トラップ管路14の入口に向けて吐水する。ゼット口16の大きさは、従来の約10mmの円形形状から10mm×20mmの角型と大きくなっており、大容量の水を供給することができる。
【0024】
タンク40は、サイホン現象の発生に必要な水を貯える。本実施形態のタンク40は、3リットル以下(約2.5リットル乃至3リットル)の内容積を有する。
【0025】
タンク給水路35aの先端はタンク40の溢れ縁の上方に開口され、タンク40からタンク給水路35aへの逆流を防止する。タンク40の内部には、上端フロートスイッチ41a及び下端フロートスイッチ41bが配置され、タンク40内の水位を検出する。上端フロートスイッチ41aは、タンク40内の水位が所定の貯水水位に達するとオンに切り替わり、後述する制御部60はこれを検知して給水電磁弁33を閉じる。下端フロートスイッチ41bは、タンク40内の水位が所定の水位まで低下するとオンに切り替わり、制御部60はこれを検知してポンプユニット50を停止する。
【0026】
タンク40の上部には、その上端の開口部を覆うように蓋体42aが取り付けられており、蓋体42aの外周とタンク40上部の内壁面の間は水密的に接合されている。蓋体42aには、円形の穴が設けられ、この穴を取り囲むように、筒体42bが上方に向けて延びるように取り付けられている。筒体42bの上端が、タンク40の溢れ縁となっている。タンク40の壁面は、蓋体42aよりも上方まで延び、タンク40の溢れ縁から溢れた洗浄水は、筒体42bの外側を流下し、蓋体42aの上に溜まる(吐水空間)。
【0027】
ポンプユニット50は、タンク40に貯水された水を加圧してゼット口16から吐き出す。ポンプユニット50は、図3に示すように、ポンプモータ駆動部51と、直流モータであるポンプモータ52を内蔵した直流ポンプである。後述するように、ポンプユニット50は、便器洗浄時と溜水供給時で回転数を変更して流量を変更する。本実施例では、後述するように、75リットル/分から20リットル/分に変更する。ポンプには直流ポンプと交流ポンプがあるが、直流ポンプは回転数制御が容易である。ポンプユニット50は、タンク40の下部から延びる洗浄水管路44aにより接続され、タンク40の満水位置(オーバーフローライン)OFLよりも下に配置されている。この結果、タンク40の満水時にもポンプユニット50に水が供給される。」
「【0035】
洗浄部は、タンク40の容量を約3リットル以下に抑えることによってタンクレス式と同等の小型化を実現している。便器1の洗浄には5.5リットルの水が必要であり、サイホン現象を起こす最小限の水量は3リットルである。また、リム洗浄で使用する2.5リットルの水は水圧が低くても洗浄効果を維持することができる。このため、リム洗浄/溜水供給系の経路であるリム給水路35bを、ポンプユニット50を使用する経路である洗浄水管路44bとは分離してリム洗浄にはタンク40の水を使用しないことにした。この結果、タンク40はリム洗浄用の水を貯める必要がなくなる。更に、洗浄部は、便器洗浄と溜水供給の間にポンプユニット50を停止してタンク40への給水を行っている。これによってタンク40が便器洗浄用の洗浄水と溜水を併せた量を収納せずに、便器洗浄用の洗浄水のみを収納する容量を持てば足りることとした。この結果、タンク40の容量を、サイホン現象に必要な3リットルの容量とすることができる。タンク40の容量を小さく押さえることによって便器装置100の小型化を実現することができる。なお、タンク40が貯めるべき水量を3リットル未満(例えば、2.5リットル)として更なる便器装置100の小型化を実現し、便器洗浄時にタンク40への給水を同時に行うことによって便器洗浄用の3リットルを確保してもよい。
【0036】
制御系は、図3に示すように、制御部60と、電源部61と、操作部62と、メモリ63と、タイマ64と、遅延時間設定部(遅延時間設定手段)65と、遅延時間変更部(遅延時間変更手段)66と、を有する。制御部60は、制御系の構成要素に加えて、着座センサ5、人体センサ6、給水電磁弁駆動部32、流路切替弁駆動部34、上端フロートスイッチ41a、下端フロートスイッチ41b、ポンプモータ駆動部51、に電気的に接続されている。」
「【0048】
リム洗浄が終了すると、制御部60は、給水電磁弁駆動部32を制御して給水電磁弁33の開口状態を維持し、流路切替弁駆動部34を制御して流路切替弁35をタンク側に切り替える。そして、制御部60は、流量8リットル/分でタンク40への給水を開始すると共に、ポンプモータ駆動部51を制御してポンプモータ52を制御して便器洗浄を行う(ステップ1006)。」
「【0051】
便器洗浄においては、制御部は75リットル/分の大容量の水がゼット口16から低速で吐出されるようにポンプユニット50を高速回転(約3300rpm)に制御する。この結果、サイホン現象を素早く発生させて溜水及び汚物を素早く排出することができる。また、サイホン現象が素早く発生するので無駄水も少なくなる。
【0052】
便器洗浄は2.9秒間継続される(ステップ1008)。この2.9秒の後半でポンプユニット50の回転数を減少させてもよい。この後半では、サイホン切れの際の空気の吸い込み量を抑えるために水を供給する期間である。便器洗浄においては、低速で大容量の水を供給しているので、サイホン切れの際の騒音と浮揚する汚物を押し込む際の騒音が低減して静音を実現している。ポンプユニット50が慣性により数回転回ることの押し出し水によって排水トラップ管路14の入口が水没することによって、排水管Dからの臭気逆流がないように封止している。
【0053】
制御部60は、2.9秒経過後にポンプモータ駆動部51を制御してポンプモータ52を停止して便器洗浄を終了する(ステップ1010)。但し、制御部60は、タンクへの給水は維持する。制御部60は、便器洗浄の開始と共にタンク40への給水を行っており、溜水を早期に供給することができる。タンク40への給水は更に5秒間、合計7.9秒間継続する(ステップ1012)。これにより、タンク40には溜水に必要な水が貯まる。」
「【0057】
タンク40への給水は上端フロートスイッチ41aが満水を検出するまで(通常、更に20秒間)継続する(ステップ1020)。これにより、タンク40は満水となる。」
「【図2】
[図:0001435169000005.jpg]
」
イ 甲3発明
前記アで示した事項からみて、甲3には下記の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「便器1と便器1を洗浄する洗浄部を有する便器装置100であって(【0012】)、
便器1は、内側に汚物を受けるボール12を有する陶器製の本体2を有し(【0013】)、
洗浄部は、リム洗浄と、便器洗浄を行い、リム洗浄では、ボール12の上縁近傍にあるリム口18からリム13に沿って吐水してボール12を洗浄し、便器洗浄では、ボール12の底部に形成されたゼット口16から排水トラップ管路14の入口に向けて吐水し、サイホン現象を利用してボール12の汚物と溜水を排水管Dから排水し(【0014】、【0023】)、
タンク40は、サイホン現象の発生に必要な水を貯え(【0024】)、
ポンプユニット50は、タンク40に貯水された水を加圧してゼット口16から吐き出し(【0027】)、
制御部60は、タンク40への給水を行い(【0048】、【0053】)、
リム洗浄にはタンク40の水を使用せず、タンク40が貯めるべき水量を2.5リットルとして便器装置100の小型化を実現し、便器洗浄時にタンク40への給水を同時に行うことによって便器洗浄用のサイホン現象に必要な3リットルを確保した(【0035】)、
便器装置100。」
(4)甲4について
ア 記載事項
本願の出願日前に発行された甲4には、次の事項が記載されている
「【0017】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態による水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座4と、便座4を覆うように配置されたカバー6と、便器本体の後方上部に配置された局部洗浄装置8と、を備えている。さらに、便器本体2の後方には、機能部10が配置されており、この機能部10はサイドパネル11により覆われている。
【0018】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部12と、このボウル部12の底部から延びる排水トラップ管路14と、排水トラップ管路14の下端に接続された排水管15と、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されている。
ジェット吐水口16は、ボウル部12の底部に形成されており、排水トラップ管路14の入口に指向してほぼ水平に配置され、洗浄水を排水トラップ管路14に向けて吐水するようになっている。リム吐水口18は、ボウル部12の左側上部後方に形成されており、ボウル部12の上縁に沿って洗浄水を吐出するようになっている。
【0019】
排水トラップ管路14は、入口部14aと、この入口部14aから上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管14bから下降するトラップ下降管14cとからなり、トラップ上昇管14bとトラップ下降管14cとの間が頂部14dとなっている。トラップ下降管14cの下端に上述した排水管15が接続されている。
【0020】
本実施形態による水洗大便器1は、洗浄水を供給する水道に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口18から洗浄水が吐出される。また、ジェット吐水に関しては、後述するように、機能部10に内蔵された貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧ポンプ22によって加圧して、大流量でジェット吐水口16から吐出させるようになっている。
【0021】
次に、図3により、本実施形態による水洗大便器1の機能部10を詳細に説明する。
図3に示すように、機能部10には、水道から洗浄水が供給される給水路24が設けられ、この給水路24には、上流側から、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30、定流量弁32、ダイヤフラム式の電磁開閉弁34、給水路切替弁36がそれぞれ設けられている。定流量弁32は、止水栓26、ストレーナ28、分岐金具30を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るためのものである。
【0022】
これらの定流量弁32、電磁開閉弁34、及び、給水路切替弁36は、図3に示すように、バルブユニット37(給水手段)として、一体的に組み立てられたものとなっている。また、給水路切替弁36の下流側には、リム吐水口18に洗浄水を供給するためのリム側給水路38、及び、貯水タンク20に洗浄水を供給するためのタンク側給水路40が接続されている。」
「【0030】
さらに、貯水タンク20の上方フロートスイッチ64aよりも上方位置に、その一端が開口し(開口70a)、他端70bが下流ジェット側給水路46bに接続されたオーバーフロー流路70が設けられている。このオーバーフロー流路70には、逆止弁であるフラッパー弁72が取り付けられている。
このオーバーフロー流路70は、貯水タンク20において、水位が開口70aより高くなるような場合、その貯水タンク20内の水をジェット側給水路46を介してジェット吐水口16から便器本体2に逃がして、貯水タンク20から水が溢れ出すことがないようにするものである。」
「【0050】
最後に、上方フロートスイッチ64aに故障等の異常があり、オフからオンに切り替わらずにオフのままとなってしまう場合について説明する。
タンク給水開始から一定時間が経過すると、貯水タンク20内の水位が上昇してきて貯水タンク20内の水位が下方位置L3まで上昇する。このとき、下方フロートスイッチ64bが正常であるとすると、下方フロートスイッチ64bがオフとなる(ステップS24)。その後、さらに一定時間が経過すると、貯水タンク20内の水位がさらに上昇してきて貯水タンク20内の水位が上方位置L1まで上昇する。しかし、上述したように、上方フロートスイッチ64aには故障等の異常があり、オンに切り替わらずにオフのままとなる。そして、ステップS24での下方フロートスイッチ64bのオフへの切り替わりから所定時間T7が経過するまでに上方フロートスイッチ64aがオンに切り替わらなかった場合、コントローラ62は、上方フロートスイッチ64aの異常を検知する(ステップS27)。そして、上方フロートスイッチ64aの異常を検知した場合、コントローラ62は給水路切替弁36を切り替え制御して、全洗浄水のうちタンク側に20~30%、リム側に70~80%を供給する状態(タンク20~30%、リム70~80%)にしてタンク給水開始から所定時間T8が経過するまでタンク給水を行なった後に、タンク給水を停止する(ステップS28~30)。」
「【0056】
例えば、上記実施形態においては、貯水タンク20内の洗浄水をジェット側給水路46を介してジェット吐水口16へ供給することとしたが、本発明はこれに限らず、貯水タンク20内の洗浄水をリム吐水口18へ供給するような構成としてもよい。また、同様に、オーバーフロー流路70に流入した洗浄水を、リム吐水口18から便器本体2へ逃がすような構成としてもよい。」
イ 甲4発明
前記アで示した事項からみて、甲4には下記の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「便器本体2を備え、便器本体2の後方に機能部10が配置された水洗大便器1であって(【0017】)、
便器本体2には、ジェット吐水を行うジェット吐水口16と、リム吐水を行うリム吐水口18が形成されており(【0018】)、
機能部10には、水道から洗浄水が供給される給水路24が設けられ、この給水路24には給水路切替弁36が設けられており(【0021】)、
機能部10に内蔵された貯水タンク20に貯水された洗浄水を加圧ポンプ22によって加圧して、ジェット吐水口16から吐出させるようになっており(【0020】)、
貯水タンク20に、オーバーフロー流路70が設けられており(【0030】)、
オーバーフロー流路70に流入した洗浄水を、リム吐水口18から便器本体2へ逃がし(【0056】)、
コントローラ62は給水路切替弁36を切り替え制御して、タンク給水開始から所定時間T8が経過するまでタンク給水を行なった後に、タンク給水を停止する(【0050】)、
水洗大便器1。」
2 甲1を主引例とした新規性及び進歩性について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、両者は少なくとも次の相違点1において相違する。
<相違点1>
本件特許発明1の「制御装置」は、「前記ポンプ装置により前記リム吐水口と前記ゼット吐水口の両方へ排出される洗浄水の排出総量」が「前記洗浄水タンクのタンク容量よりも小さい第2の洗浄モードを実行可能であ」るのに対し、甲1発明は、そのような構成ではない点。
イ 判断
前記相違点1は実質的な相違点であるので、本件特許発明1は甲1発明ではない。
また、前記相違点1に係る本件特許発明1の構成は、甲2~甲4のいずれにも記載も示唆もされていないし、同構成が公知の技術、周知慣用技術、又は技術常識であることを示す他の証拠を発見することもできない。
さらに、甲1発明において、前記相違点1に係る本件特許発明1の構成とする動機付けを見いだすこともできない。
そうすると、甲1発明において、前記相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
また、前記相違点1の構成とすることで、給水装置による給水期間とポンプ装置による排水時間とが重ならないようになっているので、ポンプ装置による排水時間の終了後に給水ポンプを作動させて給水すれば良いので、給水装置とポンプ装置の制御がより簡単になり、また、給水音が排水音と同時に生じることがなく、給水音が気になりにくい、との格別顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではない。
また、本件特許発明1は、甲1~甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2~6について
本件特許発明2~6のそれぞれは、本件特許発明1の構成を有し、さらに構成を付加したものである。
前記(1)で対比・判断したとおり、本件特許発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件特許発明2~6のそれぞれにおいて付加された構成について検討するまでもなく、本件特許発明2~6のそれぞれは、甲1発明ではない。
また、本件特許発明2~6のそれぞれは、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(3)甲1を主引用例とした本件特許発明の新規性及び進歩性のまとめ
本件特許発明1~6のそれぞれは、甲1発明ではなく、また、本件特許発明1~6のそれぞれは、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
3 甲2を主引例とした新規性及び進歩性について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明を対比すると、両者は少なくとも次の相違点2において相違する。
<相違点2>
本件特許発明1の「制御装置」は、「前記ポンプ装置により前記リム吐水口と前記ゼット吐水口の両方へ排出される洗浄水の排出総量」が「前記洗浄水タンクのタンク容量よりも小さい第2の洗浄モードを実行可能であ」るのに対し、甲2発明は、そのような構成ではない点。
イ 判断
前記相違点2は実質的な相違点であるので、本件特許発明1は甲2発明ではない。
また、前記相違点2に係る本件特許発明1の構成は、甲1、甲3、甲4のいずれにも記載も示唆もされていないし、同構成が公知の技術、周知慣用技術、又は技術常識であることを示す他の証拠を発見することもできない。
さらに、甲2発明において、前記相違点2に係る本件特許発明1の構成とする動機付けを見いだすこともできない。
そうすると、甲2発明において、前記相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
また、前記相違点1の構成とすることで、給水装置による給水期間とポンプ装置による排水時間とが重ならないようになっているので、ポンプ装置による排水時間の終了後に給水ポンプを作動させて給水すれば良いので、給水装置とポンプ装置の制御がより簡単になり、また、給水音が排水音と同時に生じることがなく、給水音が気になりにくい、との格別顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではない。
また、本件特許発明1は、甲1~甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2~6について
本件特許発明2~6のそれぞれは、本件特許発明1の構成を有し、さらに構成を付加したものである。
前記(1)で対比・判断したとおり、本件特許発明1は、甲2発明ではなく、また、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件特許発明2~6のそれぞれにおいて付加された構成について検討するまでもなく、本件特許発明2~6のそれぞれは、甲2発明ではない。
また、本件特許発明2~6のそれぞれは、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(3)甲2を主引用例とした本件特許発明の新規性及び進歩性のまとめ
本件特許発明1~6のそれぞれは、甲2発明ではなく、また、本件特許発明1~6のそれぞれは、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
第6 先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
1 はじめに
前記第4の2に示した特許異議申立理由のうち、申立理由1-1、1-2、2-1、2-2によっては、前記第5の2、3に示したとおり、本件特許発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。
したがって、以下では、申立理由2-3、3、4について検討・判断を示す。
2 申立理由2-3(甲3を主引例とする進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明を対比すると、両者は少なくとも次の相違点3において相違する。
<相違点3>
本件特許発明1の「制御装置」は、「前記ポンプ装置により前記リム吐水口と前記ゼット吐水口の両方へ排出される洗浄水の排出総量」が「前記洗浄水タンクのタンク容量よりも小さい第2の洗浄モードを実行可能であ」るのに対し、甲3発明は、そのような構成ではない点。
イ 判断
前記相違点3に係る本件特許発明1の構成は、甲1、甲2、甲4のいずれにも記載も示唆もされていないし、同構成が公知の技術、周知慣用技術、又は技術常識であることを示す他の証拠を発見することもできない。
さらに、甲3発明において、前記相違点3に係る本件特許発明1の構成とする動機付けを見いだすこともできない。
そうすると、甲3発明において、前記相違点3に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
また、前記相違点1の構成とすることで、給水装置による給水期間とポンプ装置による排水時間とが重ならないようになっているので、ポンプ装置による排水時間の終了後に給水ポンプを作動させて給水すれば良いので、給水装置とポンプ装置の制御がより簡単になり、また、給水音が排水音と同時に生じることがなく、給水音が気になりにくい、との格別顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
本件特許発明1は、甲1~甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2~6について
本件特許発明2~6のそれぞれは、本件特許発明1の構成を有し、さらに構成を付加したものである。
前記(1)で対比・判断したとおり、本件特許発明1は、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件特許発明2~6のそれぞれにおいて付加された構成について検討するまでもなく、本件特許発明2~6のそれぞれは、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(3)甲3を主引用例とした本件特許発明の進歩性のまとめ
本件特許発明1~6のそれぞれは、甲1~甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
3 申立理由3(新規事項)について
(1)申立人の主張
申立人は、概ね次の主張をしている(特許異議申立書3(4)エ(エ))。
ア 洗浄水タンク内の洗浄水をポンプ装置によってゼット吐水口に排出させることは、当初明細書等に記載されていない(以下「主張ア」という。)。
イ リム吐水口とゼット吐水口の両方に排出される洗浄水の排出総量が、洗浄水タンクのタンク容量よりも大きいことは、当初明細書等に記載されていない(以下「主張イ」という。)。
ウ ゼット吐水口からの排出瞬間流量は、当初明細書等に記載されていない(以下「主張ウ」という。)。
(2)当合議体の判断
ア 当初明細書等の記載事項
(ア)本件特許の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)には、下記のとおりの記載がある。
「【0018】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態による大便器装置を示す全体構成図である。図1に示すように、本発明の第1実施形態による大便器装置1は、洗浄水により汚物を排出し、便器を洗浄する水洗大便器装置である。大便器装置1は、便器本体2と、便器本体2の後方に配置された洗浄水タンク装置(洗浄水タンク)4と、洗浄水タンク装置4に貯水された洗浄水を便器本体2に供給するポンプ装置6と、洗浄水タンク装置4に洗浄水を供給する給水装置8と、制御装置10と、を備える。
【0019】
便器本体2は陶器製であり、便器本体2は、汚物を受けるボウル部2aと、このボウル部2aの底部から延びてボウル部2a内の汚物を排出する排水トラップ管2bと、ボウル部2aの上縁に形成されるリム部2cと、を備えている。便器本体2の後方の横方向一側には、リム導水路2dが形成されており、リム導水路2dにはポンプ装置6から延びる給水管12が接続されている。また、排水トラップ管2bは、下水道(図示せず)に接続されている。
【0020】
ポンプ装置6から吐水管14を通じてリム導水路2dに供給された洗浄水は、リム導水路2dの下流端のリム吐水口2fからボウル部2a内に吐水され、便器洗浄(いわゆる、リム吐水100%による便器洗浄)が行われるようになっている。そして、リム吐水口2fからボウル部2aに吐水された洗浄水は、汚水とともに排水トラップ管2bを通り、下水に排水される。なお、本実施形態の便器本体2は、吐水口として、リム吐水口2fのみしか設けられておらず、洗浄水はリム吐水口2fのみから吐水される。なお、本実施形態では、洗浄水をリム吐水口2fのみから吐水する構成としているが、排水トラップ管2bにゼット吐水口を設け、リム吐水口及びゼット吐水口から吐水を行うなど、他の吐水口を設けてもよい。」
「【0034】
本実施形態では、制御装置10は、リモコン61による入力に応じて、便器本体2に排出される洗浄水の水量が異なる洗浄モードを設定可能である。具体的には、制御装置10は、ポンプ装置6により便器本体2へ排出される洗浄水の排出総量が、洗浄水タンクのタンク容量よりも大きい第1の洗浄モードと、ポンプ装置6により便器本体2へ排出される洗浄水の排出総量が、洗浄水タンクのタンク容量よりも小さい第2の洗浄モードと、を実行可能である。なお、必ずしも、第1の洗浄モードが大洗浄に対応し、第2の洗浄モードが小洗浄に対応するものではなく、例えば、各自治体で定められた洗浄水量を確保できるように大洗浄を第1の洗浄モード及び第2の洗浄モードの何れかに設定し、第2の洗浄モードよりも排出総量が少ない第3の洗浄モードを小洗浄に設定してもよい。」
「【図1】
[図:0001435169000006.jpg]
」
「【図2】
[図:0001435169000007.jpg]
」
(イ)前記(ア)【0018】の「本発明の第1実施形態による大便器装置1は、洗浄水により汚物を排出し、便器を洗浄する水洗大便器装置である。大便器装置1は、便器本体2と、便器本体2の後方に配置された洗浄水タンク装置(洗浄水タンク)4と、洗浄水タンク装置4に貯水された洗浄水を便器本体2に供給するポンプ装置6と、洗浄水タンク装置4に洗浄水を供給する給水装置8と、制御装置10と、を備える。」との記載、及び前記(ア)【0020】の「本実施形態では、洗浄水をリム吐水口2fのみから吐水する構成としているが、排水トラップ管2bにゼット吐水口を設け、リム吐水口及びゼット吐水口から吐水を行うなど、他の吐水口を設けてもよい。」との記載から、大便器装置において、リム吐水口及びゼット吐水口から吐水を行うことで便器洗浄を行うものと認められる。
(ウ)前記(ア)【0019】、【0020】、及び前記(ア)【図1】から、ポンプ装置6によりリム吐水による便器洗浄が行われるものと認められる。
(エ)前記(ア)【図2】から、給水ポンプと給ポンプ装置の駆動期間が一部重なることが看取できる。
イ 主張アについて
(ア)前記ア(イ)、(ウ)のとおり、当初明細書等には、リム吐水口及びゼット吐水口から吐水を行うことで便器洗浄を行う大便器装置において、ポンプ装置6によりリム吐水による便器洗浄が行われることが記載されているといえる。
(イ)ここで、リム吐水口とゼット吐水口を備えた水洗大便器の技術分野においては、リム吐水口から吐水される洗浄水はポンプ加圧せず(水道の給水圧を利用)且つゼット吐水口から吐水される洗浄水はポンプ加圧する水洗大便器、リム吐水口とゼット吐水口から吐水する洗浄水の両方をポンプ加圧する水洗大便器、及びリム吐水口とゼット吐水口から吐水する洗浄水の両方をポンプ加圧しない水洗大便器の3種類が存在することは、例を挙げるまでもなく周知の技術であって、本件特許出願時における技術常識であるといえる。
(ウ)そして、前記(イ)の技術常識をふまえれば、前記(ア)の大便器装置が、リム吐水口とゼット吐水口から吐水する洗浄水の両方をポンプ加圧するものであることは自明であるから、主張アは採用することができない。
ウ 主張イについて
(ア)前記イ(ア)のとおり、当初明細書等には、リム吐水口及びゼット吐水口から吐水を行うことで便器洗浄を行う大便器装置において、ポンプ装置6によりリム吐水による便器洗浄が行われることが記載されているといえる。
(イ)そして、前記ア【0034】の「制御装置10は、ポンプ装置6により便器本体2へ排出される洗浄水の排出総量が、洗浄水タンクのタンク容量よりも大きい第1の洗浄モード」との記載と併せると、当初明細書等には、ポンプ装置6によりリム吐水口及びゼット吐水口から便器本体2へ排出される洗浄水の排出総量が、洗浄水タンクのタンク容量よりも大きい洗浄モードが記載されているといえるから、主張イは採用することができない。
エ 主張ウについて
(ア)本件特許発明3は、「前記第1の洗浄モードにおいて、前記ポンプ装置による前記便器本体への洗浄水の排出瞬間流量(L/min)は、前記給水装置による前記洗浄水タンクヘの洗浄水の給水瞬間流量(L/min)よりも大きい」ものである。
そして、「第1の洗浄モード」は、「前記ポンプ装置により前記リム吐水口と前記ゼット吐水口の両方へ排出される洗浄水の排出総量が、前記洗浄水タンクのタンク容量よりも大きい」ものであるから、本件特許発明3の「前記ポンプ装置による前記便器本体への洗浄水の排出瞬間流量(L/min)」が、「前記ポンプ装置により前記リム吐水口と前記ゼット吐水口の両方へ排出される洗浄水」の「排出瞬間流量(L/min)」を指すことは自明である。
(イ)そうすると、本件特許発明3は、「ゼット吐水口」単体からの「排出瞬間流量(L/min)」を規定したものではないので、当初明細書等に、「ゼット吐水口」単体からの「排出瞬間流量(L/min)」が記載されている必要はなく、主張ウは採用することができない。
(3)申立理由3(新規事項)についてのまとめ
以上のとおり、申立理由3は採用すべき理由がない。
4 申立理由4(サポート要件)について
(1)申立人の主張
申立人は、概ね次の主張をしている(特許異議申立書3(4)エ(オ))。
ア 審査請求時の補正によって追加された事項は、発明の詳細な説明に記載されていない(以下「主張エ」という。)。
イ 本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載された、「リム吐水による便器洗浄を行う水洗大便器において、洗浄水タンクを小型化することが可能であるとともに、十分な量の洗浄水を便器本体へ吐水する」との課題を解決できない(以下「主張オ」という。)。
(2)当合議体の判断
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲 のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技 術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
イ 判断基準に基づく判断
前記アの判断基準に基づいて以下判断する。
(ア)主張エについて
前記3に示したとおり、本件明細書に記載された発明であり、主張エは採用することができない。
(イ)主張オについて
本件明細書の【0007】の記載から、本件特許発明の課題は、「リム吐水による便器洗浄を行う水洗大便器において、洗浄水タンクを小型化することが可能であるとともに、十分な量の洗浄水を便器本体へ吐水すること」であると認められるところ、本件特許発明の「前記ポンプ装置により前記リム吐水口と前記ゼット吐水口の両方へ排出される洗浄水の排出総量が、前記洗浄水タンクのタンク容量よりも大きい第1の洗浄モード」を実行可能な構成により、ポンプ装置による洗浄水の排出総量以上の量を洗浄水のタンクに貯めてから洗浄を行う装置と比較すると洗浄水のタンク容量は小型化できるといえるから、当該課題解決されると理解できる。
よって、主張オは採用することができない。
(3)申立理由4(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、申立理由4は採用すべき理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1~6に係る特許は、特許異議申立理由、及び先の取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701112