特許異議申立
2023-701365
局部洗浄装置
- 審判番号
- 2023-701365
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-057313
- 登録番号
- 7297487
- 請求日
- 2023年12月25日
- 審決日
- 2025年09月12日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社LIXIL
- 【権利者代理人】及川 周
- 【権利者代理人】川渕 健一
- 【権利者代理人】松本 将尚
- 【異議申立人】TOTO 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人iX
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 居島 一仁
- 分類
- P1651.113-YAA(E03D) / P1651.121-YAA(E03D) / P1651.537-YAA(E03D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7297487号発明「局部洗浄装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7297487号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第7297487号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許の請求項1~4に係る特許についての出願から現在までの手続きの経緯の概略は次のとおりである。
平成31年 3月25日 :出願(特願2019-57313号)
令和 5年 6月16日 :特許権の設定登録
同月26日 :特許掲載公報の発行
同年12月25日 :前記請求項1~4に係る特許に対する特許異
議申立人 TOTO株式会社(以下、「申立
人」という。)による特許異議の申立て
令和 6年 4月26日付:取消理由通知書
同年 7月 2日 :特許権者による意見書の提出
同年11月 8日付:取消理由通知書(決定の予告)
令和 7年 1月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 4月 2日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和7年1月10日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、特許第7297487号の特許請求の範囲を、本件訂正請求の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その内容は、次の訂正事項からなるものである(下線は訂正箇所を示す)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「前記支持部の側面に凹部が形成されている」と記載されているのを、「前記支持部の内側の側面が平坦面を有し、前記支持部の外側の側面に凹部が形成されている」と訂正する。
(請求項1の記載を引用する、請求項2~4も同様に訂正する。)
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4が、「前記シャッタは前記ノズル開口部に対して上下方向に回転可能に設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。」であったものを、「前記支持部は、支持アームと、前記支持アームの後端部に設けられ突起を有する回動部とを有し、前記支持アームの内側の側面が平坦面であり、前記支持アームの外側の側面に凹部が形成されており、前記シャッタは前記ノズル開口部に対して上下方向に回転可能に設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。」と訂正する。
(3) 一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否について
(1) 訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「前記支持部の側面に凹部が形成されている」ことに関して、「凹部」の位置について、「前記支持部の内側の側面が平坦面を有し、前記支持部の外側の側面に凹部が形成されている」と特定し、限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2) 訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項4が直接・間接的に引用する請求項1に記載された「支持部」に関して、「前記支持部は、支持アームと、前記支持アームの後端部に設けられ突起を有する回動部とを有し、前記支持アームの内側の側面が平坦面であり、前記支持アームの外側の側面に凹部が形成されており」と特定し、限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
3 新規事項の有無について
(1) 本件特許明細書等の記載について
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」といい、本件特許の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審の合議体が付与した。
ア 段落【0036】
「支持部24は、一対の支持アーム41,42で構成されている。図5に示すように、支持アーム41,42は、軸部22の左右方向T1の両端部から後方に延びている。支持アーム41,42のそれぞれの前端部及び後端部をつなぐアーム部44は、略矩形の断面を有する。」
イ 段落【0037】
「支持アーム41,42のそれぞれの後端部は、側面視において後端部から膨出する回動部50が設けられている。回動部50は、回動側面56と、回動上部52と、回動下部54と、バネ接続突起58とを備えている。回動側面56は、左右方向T1に沿った側面視では、前述のように支持アーム41,42の後端部から上下方向T3に膨出し、略三日月状に形成されている。側面視では、回動上部52は、アーム部44の後端から回動側面56の外周上端に沿って上方に延びる。回動下部54は、アーム部44の後端から回動側面56の外周下端に沿って延びる。前後方向T2に沿った正面視では、回動上部52及び回動下部54は、回動側面56から左右方向T1に沿って外側の領域に突出している。」
ウ 段落【0044】
「本実施形態の局部洗浄装置4によれば、シャッタアーム20を成形技術によって製造する際の肉抜きのための凹部60-1,60-2は支持部24の側面47に形成されている。側面47は、左右方向T1において、吐水ノズル17,18と対向する側面とは反対側の側面であり、且つアーム部44の中で最も外側に位置して上下方向T3に沿った面である。このように側面47はアーム部44の表面のうち、水、埃や汚物が到達し難い面である。このことによって、凹部60-1,60-2に水、埃や汚物が進入するのを極力抑えることができる。また、局部洗浄装置4によれば、上面46の平滑面を保持しつつ、支持部24に肉抜きのための凹部60-1,60-2を形成できる。そのため、射出成型等によりシャッタアーム20を製造した際に、シャッタアーム20の厚肉化が発生するのを抑え、設計通りの寸法のシャッタアーム20を製造し、且つシャッタアーム20の強度の維持及び軽量化を図ることができる。シャッタアーム20が設計通りの寸法で製造できれば、カバーケース6の内部空間で最小限の領域等にもシャッタアーム20を設置でき、且つシャッタベース30との相対配置のずれの発生も防止できる。」
エ 【図5】
「
[図:0001429969000001.jpg]
」
(2) 訂正事項1
訂正事項1の「前記支持部の内側の側面が平坦面を有し、前記支持部の外側の側面に凹部が形成されている」との事項は、前記(1)ア及びウの記載事項、同エの【図5】から「支持部の内側の側面が平坦面を有」することが看取できることからみて、本件特許明細書等に記載されている。
(3) 訂正事項2
訂正事項2の「前記支持部は、支持アームと、前記支持アームの後端部に設けられ突起を有する回動部とを有し、前記支持アームの内側の側面が平坦面であり、前記支持アームの外側の側面に凹部が形成されており」との事項は、前記(1)ア~ウの記載事項、同エの【図5】から「支持アームの内側の側面が平坦面を有」することが看取できることからみて、本件特許明細書等に記載されている。
(4) 新規事項についての小括
よって、訂正事項1及び訂正事項2に係る訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
よって、訂正事項1及び訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものである。
4 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
前記2に示したとおり、訂正事項1及び訂正事項2のそれぞれは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項1及び訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合するものである。
5 独立特許要件について
本件訂正により、本件訂正後の請求項1~4に係る発明は、特許請求の範囲の減縮が行われているところ、本件特許異議申立事件において、実質的にすべての請求項が申立の対象とされているため、本件訂正後の請求項1~4に係る発明について、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項の独立特許要件は適用されない。
6 訂正の適否のまとめ
以上のとおり、訂正事項1及び訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認めることができるので、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、各々を「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、令和7年1月10日に提出された訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1~4に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1~4の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
ノズル開口部を通じて便鉢の内側空間とカバーケースとの間を移動可能に構成され、前記内側空間に位置したときに先端部から洗浄水を吐出する吐水ノズルと、
前記ノズル開口部を開閉可能に設けられたシャッタと、
前記シャッタを支持する支持部を有するシャッタアームと、
を備え、
前記支持部の上面は凹凸のない連続面で構成され、
前記支持部の内側の側面が平坦面を有し、前記支持部の外側の側面に凹部が形成されている、
局部洗浄装置。
【請求項2】
前記凹部の下面は、左右方向の内端から外端に進むに従って下降する第1傾斜面を有する、
請求項1に記載の局部洗浄装置。
【請求項3】
前記凹部の下面は、後部から前部に進むに従って下降する第2傾斜面を有する、
請求項1又は2に記載の局部洗浄装置。
【請求項4】
前記支持部は、支持アームと、前記支持アームの後端部に設けられ突起を有する回動部とを有し、
前記支持アームの内側の側面が平坦面であり、前記支持アームの外側の側面に凹部が形成されており、
前記シャッタは前記ノズル開口部に対して上下方向に回転可能に設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。」
第4 証拠方法、特許異議申立理由の概要、及び、先の取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
1 証拠方法
申立人が特許異議申立書とともに提出した証拠は次のとおり。
甲第1号証:特開2018-28225号公報
甲第2号証:特開2007-321443号公報
甲第3号証:特許第4016785号公報
甲第4号証:特開2017-48564号公報
(以下「甲第1号証」等を「甲1」等という場合がある。)
2 異議申立理由の概要
(1) 新規性の欠如
請求項1、3及び4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1、3及び4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2) 進歩性の欠如
請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2~甲4に記載された技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3) 明確性要件違反
本件特許は、特許請求の範囲の請求項1、3及び4の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3 先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
請求項1~4に係る特許に対して、当審が令和6年11月8日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1) 取消理由1(新規性)
請求項1、3及び4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明、又は甲4に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1、3及び4に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
(2) 取消理由2(進歩性)
請求項1~4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び周知技術、又は、甲4に記載された発明及び周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第5 先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての当審の判断
1 本件発明
本件発明1~本件発明4は、第3に示したとおりのものである。
2 引用文献について
(1) 甲1について
ア 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(下線は当審合議体が付与した。以下同様。)
(ア) 段落【0002】
「【0002】
従来、使用者の局部を洗浄する局部洗浄用のノズルと、使用者の局部へ向けて温風を吹き出す温風発生装置とを有する衛生洗浄装置において、汚れの付着を抑制するために、ケーシングの前面を便器のボウル部の開口端に沿って湾曲させるものが知られている。この衛生洗浄装置は、局部洗浄用のノズルが進退する第1開口部を開閉するノズルダンパーと、温風が吹き出される第2開口部を開閉する温風ダンパーとをさらに有している。」
(イ) 段落【0023】
「【0023】
【図1】 図1は、実施形態にかかる衛生洗浄装置が設置されたトイレ空間を示す模式斜視図である。
【図2】 図2は、実施形態に係る衛生洗浄装置および大便器の模式斜視図である。
【図3】 図3は、便座および蓋部を省略した衛生洗浄装置および大便器の模式斜視図である。
【図4】 図4は、ケーシングの模式斜視図である。
【図5】 図5は、衛生洗浄装置の一部をケーシング内から見た模式背面図である。
【図6】 図6は、前面部付近を拡大した衛生洗浄装置の模式平面図である。
【図7】 図7は、ノズルダンパーが開いた状態を示す衛生洗浄装置の模式斜視図である。
【図8】 図8は、温風ダンパーおよびノズルダンパーが開いた場合の温風ダンパーとノズルダンパーとの関係を説明する模式図である。
【図9】 図9は、図5の第1開口部付近の模式拡大図である。
【図10】 図10は、図5の第2開口部付近の模式拡大図である。
【図11】 図11は、ノズルダンパーが開いた状態の衛生洗浄装置を左側方から見た模式断面図である。
【図12】 図12は、温風ダンパーを左斜め後方から見た模式背面図である。
【図13】 図13は、図12における温風ダンパーの模式平面図である。
【図14】 図14は、温風ダンパーが開いた状態を示す衛生洗浄装置の模式斜視図である。」
(ウ) 段落【0028】~【0035】
「【0028】
図2および図3に示すように、衛生洗浄装置1は、ケーシング2と、使用者が着座する図示しない便座と、便座を覆う蓋部3と、ケーシング2に形成された第1開口部20を開閉するノズルダンパー7と、ケーシング2に形成された第2開口部21を開閉する温風ダンパー8とを備える。便座および蓋部3は、ケーシング2に対して開閉自在に軸支される。ケーシング2が大便器5の上縁に設けられるリム部50の後方側に取り付けられることにより、衛生洗浄装置1は大便器5に取り付けられる。
・・・(略)・・・
【0032】
洗浄ノズル27は、使用者の局部を洗浄する。洗浄ノズル27は、図示しないモータが駆動されることで、洗浄室28とともに第1開口部20を進退する。具 体的には、モータが駆動されることで、洗浄ノズル27はケーシング2から第1開口部20を通ってボウル部51(図3参照)へ進出したり、ボウル部51から第1開口部20を通ってケーシング2内へ後退したりする。また、洗浄ノズル27は、モータが駆動されることで、洗浄室28に対し進退する。
・・・(略)・・・
【0035】
<2-1.第1開口部20および第2開口部21の構成>
第1開口部20および第2開口部21の構成について図4を参照して説明する。第1開口部20は、大便器5(図3参照)の左右方向における中心線上(前面部24の左右方向における中心線上でもある)に形成され、前後方向および下方に開口する。第1開口部20は、洗浄ノズル27(図7参照)が進退し、洗浄ノズル27の進退によって洗浄ノズル27を遮蔽するノズルダンパー7(図3および図7参照)が上下方向に回動することで開閉される。」
(エ) 段落【0047】~【0065】
「【0047】
<3.ノズルダンパー7の構成>
次に、ノズルダンパー7の構成について図9および図11を参照して説明する。図11は、ノズルダンパー7が開いた状態の衛生洗浄装置1の一部を左側方から見た模式断面図である。
【0048】
図9に示すように、ノズルダンパー7は、薄板状の第1板部70と、ノズルダンパー7をケーシング2に取り付ける一対の第1腕部71,71とを備える。例えば、ノズルダンパー7は、軽量で、強度が高く、耐薬品性が高いポリプロピレン樹脂によって構成される。ノズルダンパー7は、左右方向に沿って延在する第1軸O1を中心に上下方向に回動する。
・・・(略)・・・
【0050】
図9に戻り、一対の第1腕部71,71は、第1板部70の背面に設けられる。第1腕部71は、左右方向の両端側にそれぞれ設けられる。一対の第1腕部71は、基端部710と、先端部711と、基端部710と先端部711との間に設けられる中間部712とをそれぞれ備える。
【0051】
基端部710は、上下方向における第1板部70の中央付近の背面から後方上側に向けて延設される。
【0052】
先端部711は、基端部710およびケーシング2の第1取付部25よりも外側に設けられ、背面視においてケーシング2と重なるように設けられる。基端部710およびケーシング2の第1取付部25よりも外側とは、左右方向における第1開口部20の中心線に対して、先端部711が基端部710および第1取付部25よりも外側に位置する意味である。例えば、ノズルダンパー7の左側方に設けられた第1腕部71では、先端部711は、基端部710およびケーシング2の第1取付部25よりも左側方に設けられる。ノズルダンパー7においては、第1開口部20の中心線に対し、この中心線に近い方を「内側」とし、中心線から遠い方を「外側」として説明する。先端部711は、第1取付ピン713と、規制部714とを備える。
【0053】
第1取付ピン713は、先端部711の上方側面から内側に向けて突出する。第1取付ピン713は、第1取付孔250に外側から挿入される。第1取付ピン713には、上方の先端に第1面取部715が形成される。これにより、ノズルダンパー7をケーシング2に取り付ける際に、第1取付ピン713を第1取付孔250に容易に挿入することができ、組み立てを容易に行うことができる。なお、第1取付ピン713の先端の全周に第1面取部715が形成されてもよい。
【0054】
図11に示すように、規制部714は、第1取付ピン713よりも下方側であり、先端部711の下端側に設けられる。規制部714は、ノズルダンパー7が開いた場合に、第1取付ピン713よりも下方側のケーシング2の背面に当接し、ノズルダンパー7の開き(回動)を規制する。規制部714は、ノズルダンパー7が開き、ケーシング2の背面に当接する場合に、ケーシング2の背面と面接触するように形成される。これにより、規制部714がケーシング2に当接した場合に、接触面の応力を小さくすることができ、ケーシング2および規制部714の劣化を抑制することができる。
・・・(略)・・・
【0064】
<4.温風ダンパー8の構成>
次に、温風ダンパー8の構成について図10、図12および図13を参照して説明する。図12は、温風ダンパー8を左斜め後方から見た模式背面図である。また、図13は、図12における温風ダンパー8の模式平面図である。
【0065】
図10、図12および図13に示すように、温風ダンパー8は、第2板部80と、第2腕部81と、第3腕部82と、風受け部83と、補強部材84とを備える。補強部材84を除く、温風ダンパー8は、ノズルダンパー7と同様に、例えば、ポリプロピレン樹脂によって構成される。また、補強部材84は、例えば、ポリプロピレン樹脂よりも硬いポリブチレンテレフタレート樹脂によって構成される。なお、補強部材84を、ポリプロピレン樹脂によって構成してもよい。温風ダンパー8は、平面視において第1軸O1に対して傾斜する第2軸O2を中心に上下方向に回動する。」
(オ) 段落【0086】
「【0086】
上述してきたように、実施形態に係る衛生洗浄装置1は、洗浄ノズル27と、ケーシング2と、ノズルダンパー7(第1開閉板の一例)と、温風ダンパー8(第2開閉板の一例)とを備える。洗浄ノズル27は、使用者の局部へ向けて洗浄水を吐水する。ケーシング2は、湾曲した前面部24を有し、洗浄ノズル27が進退する第1開口部20と、使用者の局部に向けて温風が吹き出される第2開口部21とが前面部24に形成される。ノズルダンパー7は、ケーシング2に取り付けられ、第1軸O1を中心に上下方向に回動して第1開口部20を開閉する。温風ダンパー8は、ケーシング2に取り付けられ、第2軸O2を中心に上下方向に回動して第2開口部21を開閉する。第1開口部20および第2開口部21は、ノズルダンパー7および温風ダンパー8が開いた場合に互いに干渉しないように離隔して配置される。」
(カ) 【図5】、【図7】、【図9】~【図11】
「【図5】
[図:0001429969000002.jpg]
【図7】
[図:0001429969000003.jpg]
【図9】
[図:0001429969000004.jpg]
【図10】
[図:0001429969000005.jpg]
【図11】
[図:0001429969000006.jpg]
」
(キ) 図面から看取できる事項
a 前記(イ)から、図9は、衛生洗浄装置の一部をケーシング内から見た第1開口部付近の模式背面図であり、図11は、ノズルダンパーが開いた状態の衛生洗浄装置を左側方から見た模式断面図である。
よって、前記(ウ)及び(エ)の記載をもとに、次の2つの事項を看取することができる。
(a) 図9の第1腕部71の構造及び図5、9からみて、「規制部714は、ノズルダンパー7において先端部711の上面側に配置され、規制部714と面接触するケーシング2の形状は略平面である点。」(図面看取事項1)
(b) 図11から、先端部711の側面の内側に描かれた実線で囲まれた領域には、破線で描かれた第1取付ピン713が含まれており、図9から、先端部711において、第1取付ピン713と反対側には凸状の構造を有するものがないことからみて、「第1取付ピン713と反対側の先端部711の側面の内側は、後部から前部に進むに従って下降した下部を有する囲われた領域を有し、凸状の構造を有するものがなく、前記側面の反対側であって前記領域と重複する箇所に第1取付ピン713が配置されている点。」(図面看取事項2)
b 前記(エ)の記載をもとに、図10から、「温風ダンパー8の第3腕部82は、内側の側面に平坦な部分を有すること。」(図面看取事項3)
イ 甲1発明
前記アより、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
<甲1発明>
「ケーシング2から第1開口部20を通って便器のボウル部51へ進出したり、ボウル部51から第1開口部20を通ってケーシング2内へ後退したりする、洗浄水を吐水する洗浄ノズル27と、(段落【0002】、【0032】、【0086】)
ケーシング2に形成された第1開口部20を開閉するノズルダンパー7であって、第1開口部20は、洗浄ノズル27が進退し、洗浄ノズル27の進退によって洗浄ノズル27を遮蔽するノズルダンパー7が上下方向に回動することで開閉され、薄板状の第1板部70と、ノズルダンパー7をケーシング2に取り付ける一対の第1腕部71,71とを備えたノズルダンパー7と、(段落【0028】、【0035】、【0048】)
を備え、
一対の第1腕部71,71は、第1板部70の背面に設けられ、基端部710と、先端部711と、基端部710と先端部711との間に設けられる中間部712とをそれぞれ備え、(段落【0050】)
先端部711は、第1取付ピン713と、規制部714とを備え、規制部714は、第1取付ピン713よりも下方側であり、先端部711の下端側に設けられ、ノズルダンパー7が開いた場合に、第1取付ピン713よりも下方側のケーシング2の背面に当接し、ノズルダンパー7の開き(回動)を規制し、ノズルダンパー7が開き、ケーシング2の背面に当接する場合に、ケーシング2の背面と面接触するように形成され、(段落【0052】、【0054】)
規制部714は、ノズルダンパー7において先端部711の上面側に配置され、規制部714と面接触するケーシング2の形状は略平面であり、(図面看取事項1)
第1取付ピン713と反対側の先端部711の側面の内側は、後部から前部に進むに従って下降した下部を有する囲われた領域を有し、凸状の構造を有するものがなく、前記側面の反対側であって前記領域と重複する箇所に第1取付ピン713が配置され、(図面看取事項2)
第1取付ピン713は、先端部711の上方側面から内側に向けて突出し、第1取付ピン713は、第1取付孔250に外側から挿入され、ノズルダンパー7をケーシング2に取り付ける際に、第1取付ピン713を第1取付孔250に容易に挿入することができる、(段落【0053】)
衛生洗浄装置1。(段落【0028】」
ウ 甲1記載技術
前記アより、甲1には、次の技術的事項(以下、「甲1記載技術」)が記載されている。
<甲1記載技術>
「第2板部80と、第2腕部81と、第3腕部82と、風受け部83と、補強部材84とを備えた、衛生洗浄装置の温風ダンパー8において、第3腕部82は、内側の側面に平坦な部分を有すること。(段落【0028】、【0065】、図面看取事項3)」
(2) 甲2について
ア 甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
(ア) 段落【0044】~【0053】
「【0044】
図17は、温風ダンパー470と第2レバー474との結合部を表す模式図である。すなわち、同図は、これらの要素を下方から眺めた模式図である。
モータ472からの駆動力を伝達する第2レバー474の先端に設けられた保持部475は、第2レバー474の移動方向Aに対してほぼ垂直な方向に延在している。一方、温風ダンパー470に設けられたリンク軸476は、図17(a)に表したように温風ダンパー470が閉じた状態においては、保持部475に対してほぼ平行である。しかし、図17(b)に表したように温風ダンパー470が開いた状態においては、リンク軸476は、保持部475に対して平行ではなく、傾いてねじれた配置関係にある。これは、本体部400の湾曲凹面402(図2、図3参照)に沿って温風ダンパー470を開閉させるために、温風ダンパー470の回転軸Cが、第2レバー474の移動方向A及びBに対して、非垂直すなわち垂直ではなく傾斜して設けられているからである。
【0045】
従って、温風ダンパー470の開閉動作を円滑に行うためには、温風ダンパー470と第2レバー474との結合部に非対称な部分を設ける必要がある。本具体例の場合には、図17(b)に表したように温風ダンパー470を開いた状態において、保持部475がリンク軸476の「ねじれ」を吸収するように形成する必要がある。これに対して、本具体例においては、保持部475の開口形状を非対称に形成している。
【0046】
図18は、第2レバー474の保持部475を拡大して表す模式図である。
保持部475の幅は、その延在方向Lに対して一定ではなく、端部寄り(吐水ノズルから遠い側)の幅W1よりも、中央寄り(吐水ノズルに近い側)の幅W2のほうが大きい。このように保持部475の幅を変化させることにより、図17(b)に表したようにリンク軸476の方向がねじれた場合にも、この「ねじれ」を吸収できる。その結果として、図17(a)に表したように第2レバー474を矢印Aの方向に引いて温風ダンパー470を開く時も、その逆に図17(b)に表したように第2レバー474を矢印Bの方向に押して温風ダンパー470を閉じる時も、リンク軸476を円滑に回転させ、スムーズに開閉動作させることができる。このようにして、温風ダンパー470を開く第2レバー474の移動方向を、吐水ノズルの進退方向と一致させることができ、本体部400内にデッドスペースを生じないようにすることができる。
・・・(略)・・・
【0049】
また一方、温風ダンパー470およびノズルダンパー460を同じフレーム480に取り付けることにより、これら温風ダンパー470およびノズルダンパー460の位置合わせが容易となり、また組立も簡単になる。例えば、ケースカバー430は、衛生洗浄装置の筐体を構成するために、強度の高い樹脂により形成することが望ましい。しかし、そのような樹脂の場合、成型性が十分に高くないこともあり得る。つまり、成形時の変型などが無視できず、温風ダンパー470やノズルダンパー460を精度よく取り付けるための精密な構造を形成することが容易でない場合もあり得る。
・・・(略)・・・
【0053】
しかる後に、図22に表したように、ノズルダンパー460をフレーム480に取り付ける。図23は、ノズルダンパー460の取付部を図22の矢印Aの方向から眺めた拡大断面図である。
ノズルダンパー460は、その背面の上部に、略S字状に屈曲した取付部461を有する。取付部461の屈曲部には、取付溝462が形成されている。そして、この取付部461の先端がスプリング481の端部を押さえ込むように、ノズルダンパー460を矢印Aの方向に圧入する。すると、図23(a)乃至(c)に表したように、取付部461の先端がスプリング481の付勢力に対抗してその先端を押さえ込みながら前進し、軸体482が取付溝462に挿入される。ここでも、スナップフィット方式により軸体482を取付溝462に固定できる。」
(イ) 【図17】、【図18】、【図22】及び【図23】
「【図17】
[図:0001429969000007.jpg]
【図18】
[図:0001429969000008.jpg]
【図22】
[図:0001429969000009.jpg]
【図23】
[図:0001429969000010.jpg]
」
イ 甲2記載技術
前記アより、甲2には、次の2つの技術的事項(以下、それぞれを「甲2記載技術1」、「甲2記載技術2」という。)が記載されている。
<甲2記載技術1>
「衛生洗浄装置の温風ダンパー470において、モータ472からの駆動力を伝達する第2レバー474の先端に設けられた保持部475が、第2レバー474の移動方向Aに対してほぼ垂直な方向に延在し、温風ダンパー470に設けられたリンク軸476が、温風ダンパー470が閉じた状態において、保持部475に対してほぼ平行になるよう結合すること。(段落【0044】及び【0049】)」
<甲2記載技術2>
「衛生洗浄装置において、ノズルダンパー460がその背面の上部に、略S字状に屈曲した取付部461を有し、取付部461の屈曲部には、取付溝462が形成され、この取付部461の先端がスプリング481の端部を押さえ込むように、ノズルダンパー460を矢印Aの方向に圧入すると、取付部461の先端がスプリング481の付勢力に対抗してその先端を押さえ込みながら前進し、軸体482が取付溝462に挿入され、スナップフィット方式により軸体482を取付溝462に固定できること。(段落【0049】及び【0053】)」
(3) 甲3について
ア 甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。
(ア) 段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば交差する鉄筋同士をワイヤで結束固定する鉄筋結束機及びそのリールに関し、更に詳しくは、ワイヤの送り出しのときにワイヤがケースから外れることを防止した鉄筋結束機及びこれに用いられるリールに関する。」
(イ) 段落【0027】
「【0027】
フランジ50は極力肉抜きされており、低コスト化と軽量化が図られている。片方のフランジ50には、図5に示すように、ワイヤ27の巻き付け開始側の端部を固定するための取付溝52が形成されている。」
(ウ) 段落【0052】~【0058】
「【0052】
次にワイヤリール150を、図15乃至図21に基づいて説明する。
図15は、ワイヤリール150の正面図を示したものである。このワイヤリール150は、ABS樹脂・ポリエチレン等のプラスチックスからなるものであり、ワイヤ27を巻き付けるハブ部151の両側に一対のフランジ152,153が形成されている。ハブ部151は円筒形状に形成されており、一対のフランジ152,153と一体成型されている。ハブ部151は円筒形状に形成されているが、他の多角形状でも良い。
【0053】
一対のフランジ152,153は直径の異なる円板形状とされており、直径の小さいフランジ152のハブ部151周面から外周縁部までの高さは、未使用状態にあるワイヤ27を巻き付けた高さより高く設定されている。直径の大きいフランジ153の高さは、未使用状態のワイヤ27の巻き付け終了端部27Eを巻き付けられた状態から著しく曲げない状態で保持可能な高さを有している。このワイヤリール150は一対のフランジ152,153の直径が異なることにより、鉄筋結束機20に装着する場合に、ワイヤ27の装着方法を確認しやすくなっている。
【0054】
ハブ部151の中央部には、鉄筋結束機20のリール取付軸79が挿入される装着孔155が形成されている。装着孔155の抜き勾配により大径とされた縁部は、フランジ152より一段低い平面156を形成しており、この平面156に六ヶ所の突起157が形成されている。隣り合う突起157同士の間には、フランジ152と同心円状の内壁面158,159を備えた凹部160が形成されている。また、隣り合う凹部160同士の間の壁部161の上に突起157が形成されている。ハブ部151の他方の面には、突起157を挿入する凹部162が六ヶ所形成されている。
・・・(略)・・・
【0058】
なお、図17において突起157は細く描かれているが、図15のワイヤリール150のIII-III線に沿った断面図であるためであり、図18に示すように、凹部160,162はそれぞれ抜き勾配により開口部が広くなっている。装着孔155のフランジ153側の縁部には段部が形成されており、ワイヤリール150を抜け落ちないように装着する際のナットや固定リングを挿入可能になっている。」
(エ) 【図15】、【図17】及び【図18】
「【図15】
[図:0001429969000011.jpg]
【図17】
[図:0001429969000012.jpg]
【図18】
[図:0001429969000013.jpg]
」
イ 甲3記載技術
前記アより、甲3には、次の2つの技術的事項(以下、それぞれを「甲3記載技術1」、「甲3記載技術2」という。)が記載されている。
<甲3記載技術1>
「鉄筋結束機に用いられるリールにおいて、フランジ50は極力肉抜きされており、低コスト化と軽量化が図られていること。(段落【0001】及び【0027】)」
<甲3記載技術2>
「ワイヤリール150のハブ部151において、ハブ部151の中央部に形成された装着孔155は抜き勾配を有し、(段落【0052】及び【0054】)
ハブ部151の凹部160,162はそれぞれ抜き勾配により開口部が広くなっていること。(段落【0058】)」
(3) 甲4について
ア 甲4の記載
甲4には、以下の記載がある。
(ア) 段落【0024】~【0029】
「【0024】
便器本体1は、便鉢のボウル部1aと、ボウル部1aの上部に設けられ、便器本体1の内側に突出しつつ外周縁を形成するリム部1bとを備えて形成されている。
・・・(略)・・・
【0028】
局部洗浄装置4は、図1から図5に示すように、洗浄機構部2とともにカバーケース6内に収容して設けられ、例えばリモコン操作によって便器本体1内に進出する局部洗浄ノズル7、8と、カバーケース6に設けられたノズル開口部9を開閉し、局部洗浄時に局部洗浄ノズル7、8の便器本体1内への進出動作に応じてノズル開口部9を開き、局部洗浄ノズル8、9がカバーケース6内に退避するとともにノズル開口部9を閉じて、汚物、洗浄水の飛沫などが局部洗浄ノズル7、8にかかったり、内部に入り込むことを防止するためのシャッタ10とを備えている。
【0029】
また、本実施形態において、局部洗浄装置4は、局部洗浄時に、リモコン操作などに応じて便器本体1の内側に局部洗浄ノズル7、8が進出するとともに、局部洗浄ノズル7、8の先端部がシャッタ10の背面側を押圧してシャッタ10が回動して開く。そして、便器本体1の内側に進出した局部洗浄ノズル7、8の先端部から洗浄水が吐出して局部を洗浄するように構成されている。局部洗浄後は、局部洗浄ノズル7、8が退避するとともにシャッタ10の押圧状態が解除されて自動的にシャッタ10が回動しノズル開口部9を閉じるように構成されている。」
(イ) 段落【0035】及び【0036】
「【0035】
ここで、本実施形態の局部洗浄装置4においては、図2、図3、図6に示すように、一対の局部洗浄ノズル7、8がカバーケース6内に退避した状態でノズル開口部9を閉じて、汚物、洗浄水の飛沫などが局部洗浄ノズル7、8にかかったり、内部に入り込むことを防止し、図1、図4、図5に示すように、局部洗浄ノズル7、8の進出とともに回動してノズル開口部9を開くシャッタ10がシャッタユニット(シャッタ開閉機構)17に具備されている。
【0036】
本実施形態のシャッタユニット17は、図6から図9に示すように、カバーケース6のベース6aのノズル開口部9に着脱可能に位置決め固定するためのシャッタベース20と、シャッタベース20に後端側を支持させて配設されるシャッタアーム21と、シャッタアーム21に着脱可能に且つ回動可能に接続して配設されるシャッタ受け22と、シャッタ受け22の前方に重ねて配設されるとともにシャッタアーム21に着脱可能に且つ回動可能に接続して配設されるシャッタ10とを備えて構成されている。」
(ウ) 段落【0049】~【0053】
【0049】
シャッタアーム21は、図13、図14に示すように、軸線O3方向を横方向T1に向けて配設される軸部35と、軸部35の両端部側のそれぞれに前端側(一端側)を接続し、軸部35の軸線O3に直交する方向に且つ平行に延設される断面略方形状の一対のアーム部36とを備えて略コ字状に形成されている。なお、アーム部36は必ずしも断面略方形状で形成することに限定しなくてもよい。
【0050】
本実施形態では、シャッタアーム21の軸部35が、円柱棒状に形成されるとともに、外面から突出し、シャッタ受け22を保持するための係止片部35aを備えて形成されている。
【0051】
アーム部36の後端側(他端側)には、シャッタアーム21をカバーケース内の後方に付勢するようにベース6aとアーム部36にバネ部材(不図示)をアーム保持部23bの後端側の開口を通じて着脱可能に引っ掛けて接続するためのバネ接続部36aが突設されている。
【0052】
また、一対のアーム部36はそれぞれ、後端側に(バネ接続部36aよりも前端側)に、上面から上方に延び、また下面から下方に延び、同心円の円弧面状に形成された上方回動面37a及び下方回動面37bを備えた回動部37が設けられている。この回動部37の上方回動面37a及び下方回動面37bは、アーム挿通部24cの上方回動係止面31及び下方回動係止面32と同じ曲率半径の円弧面として形成されている。
【0053】
また、各アーム部36は、下面の幅方向略中央に、下面から下方に突出し、アーム部36の延設方向の前後方向T2に延びるリブ38を備えている。リブ38は、アーム部36の先端よりも回動部37側から、回動部37よりも先端側までの所定の長さ範囲に設けられている。また、このリブ38は、前端から突出長を一定にして後端側に延び、アーム部36の進退時にアーム部36の軸線O4方向(延設方向)の向きを一定に保持する支持突部38aと、支持突部38aから後端に向かうに従い突出長が小になる傾斜部38bとを備えて形成されている。」
(エ) 段落【0066】~【0070】
「【0066】
そして、上記のように構成した本実施形態の局部洗浄装置4、水洗大便器Aでは、まず、図10、図11、図13に示すように、シャッタベース20の第1ベース23の前面に第2ベース24の背面を面接触させつつ係合させ、第1ベース23と第2ベース24を接合状態にする。このとき、シャッタアーム21の各アーム部36を第1ベース23と第2ベース24の幅方向両側端部にそれぞれ設けられて互いに連通する一対のアーム保持部23b(及びアーム挿通部24c)の空間内に嵌め込むように配置しながら、第1ベース23と第2ベース24を係合させ、互いに連通する第1ベース23の本体部23aのネジ挿通孔27と第2ベース24の本体部24aの雌ネジ孔にネジ34を挿入して螺合させることによって、第1ベース23と第2ベース24を一体に接続する。
【0067】
このように第1ベース23と第2ベース24を接続すると、図13、図14、図15に示すように、シャッタアーム21の軸部35がその軸線O3方向を横方向T1に向けて配設されるとともに、各アーム部36がアーム保持部23b及びアーム挿通部24cの空間内で、前後方向T2に進退自在に保持される。
【0068】
また、第1ベース23のアーム挿通部24cの上方回動係止面31、下方回動係止面32の上下の円弧面に、シャッタアーム21のアーム部36の後端側に設けられた回動部37の円弧面状の上方回動面37a、下方回動面37bが当接することによって、各アーム部36がアーム保持部23b及びアーム挿通部24cの空間内で、前後方向T2に進退自在に保持される。さらに、図13、図14、図15、図16に示すように、これら上方回動係止面31、下方回動係止面32と上方回動面37a、下方回動面37bが面接触しつつ摺動することによって、各アーム部36が上下方向に回動自在に保持される。
【0069】
また、各アーム部36に設けられたリブ38がアーム挿通部24cの下方回動係止面32に設けられたガイド溝33に係合することによって、各アーム部36が軸線O4方向に沿う前後方向T2に案内されて進退する。さらに、リブ38がガイド溝33に係合していることによって、シャッタアーム21がアーム部36の軸線O4方向をアーム保持部23b及びアーム挿通部24cの軸線方向に沿う前後方向T2に沿うように保持される。すなわち、リブ38がガイド溝33に係合していることによって、シャッタアーム21などの自重によってアーム部36が下方に傾くことがないようにしつつアーム保持部23b及びアーム挿通部24cの空間内で進退自在に保持される。
【0070】
ここで、本実施形態のリブ38は、後端側に、後端に向かうに従いその突出長が小となる傾斜部(R形状部)38bを備えて形成されている。これにより、アーム部36が前方に進出し、傾斜部38bのみがガイド溝33に係合した状態になると、アーム部36が前方に進出する従いアーム部36が下方に傾斜してゆく。そして、さらに前方に進出して傾斜部38bがガイド溝33から外れると、上方回動係止面31、下方回動係止面32と上方回動面37a、下方回動面37bが面接触し、各アーム部36が上下方向T3に回動自在に保持される。」
(オ) 段落【0091】~【0099】
「【0091】
一方、例えば使用者がビデ洗浄ボタンをリモコン操作すると、これを制御装置が検知するとともに動作指令を出し、モータ及びピニオンが一方向に回転して肛門洗浄用ノズルである一方の局部洗浄ノズル7が前方に進出し、上記と同様に第1当接回動部40の傾斜面40aを押圧してシャッタ受け22、シャッタアーム21を前方に進出させつつ上方に回動させ、背面が下方を向くようにシャッタ10を上方に回動させてノズル開口部9が開く。
・・・(略)・・・
【0099】
このとき、他方の局部洗浄ノズル8に対向する位置に、下方に向かうに従い漸次背面から離れる逆傾斜面41aを備えたシャッタ受け22の第2当接回動部41が設けられている。このため、図6、図9に示すように、他方の局部洗浄ノズル8が進出して第2当接回動部41の逆傾斜面41aに先端部が当接し、さらに進出すると、第2当接回動部41の逆傾斜面41aが押圧されてシャッタ受け22、ひいてはシャッタ10がその内面を上方に向けるように下方に回動する。」
(カ) 【図13】及び【図14】
「【図13】
[図:0001429969000014.jpg]
【図14】
[図:0001429969000015.jpg]
」
(キ) 図面から看取できる事項
前記(ウ)の記載をもとに、図14から、次の事項を看取できる。
「一対のアーム部36のそれぞれは、一対のアーム部36が対向する内側の側面に長方形で囲われた領域を有するとともに、外側の側面は平坦な面を有する点。」(図面看取事項1)
そして、前記(エ)の記載をもとに、図13から、次の事項を看取できる。
「一対のアーム部36は、後部から前部に進むに従って下降している点。」(図面看取事項2)
イ 甲4発明
前記アより、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。
<甲4発明>
「局部洗浄時に、便鉢のボウル部1aを備えた便器本体1の内側に局部洗浄ノズル7、8が進出するとともに、局部洗浄ノズル7、8の先端部がシャッタ10の背面側を押圧してシャッタ10が回動して開き、便器本体1の内側に進出した局部洗浄ノズル7、8の先端部から洗浄水が吐出して局部を洗浄するように構成されている局部洗浄ノズル7、8と、(段落【0024】、【0029】)
カバーケース6に設けられたノズル開口部9を開閉し、局部洗浄時に局部洗浄ノズル7、8の便器本体1内への進出動作に応じてノズル開口部9を開き、局部洗浄ノズル8、9がカバーケース6内に退避するとともにノズル開口部9を閉じて、汚物、洗浄水の飛沫などが局部洗浄ノズル7、8にかかったり、内部に入り込むことを防止するためのシャッタ10と、(段落【0028】)
軸線O3方向を横方向T1に向けて配設される軸部35と、軸部35の両端部側のそれぞれに前端側(一端側)を接続し、軸部35の軸線O3に直交する方向に且つ平行に延設される断面略方形状の一対のアーム部36とを備えて略コ字状に形成されたシャッタアーム21であって、シャッタ10が、シャッタアーム21に着脱可能に且つ回動可能に接続して配設されるシャッタアーム21と、(段落【0036】、【0049】)
を備え、
一対のアーム部36のそれぞれは、一対のアーム部36が対向する内側の側面に長方形で囲われた領域を有するとともに、外側の側面は平坦な面を有し、(図面看取事項1)
各アーム部36は、下面の幅方向略中央に、下面から下方に突出し、アーム部36の延設方向の前後方向T2に延びるリブ38を備え、(段落【0053】)
一対のアーム部36は、後部から前部に進むに従って下降し、(図面看取事項2)
例えば使用者がビデ洗浄ボタンをリモコン操作すると、シャッタアーム21を前方に進出させつつ上方に回動させ、背面が下方を向くようにシャッタ10を上方に回動させてノズル開口部9が開く、(段落【0091】)
局部洗浄装置4。」
3 甲1を主引用例とした新規性及び進歩性について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア) 甲1発明の「第1開口部20」は、「洗浄ノズル27」が「ケーシング2から第1開口部20を通ってボウル部51へ進出したり、ボウル部51から第1開口部20を通ってケーシング2内へ後退したりする」から、本件発明1の「ノズル開口部」に相当する。
そして、甲1発明の「便器のボウル部51」及び「ケーシング2」のそれぞれは、本件発明1の「便鉢」、「カバーケース」に相当する。
そうすると、甲1発明の「洗浄水を吐水する洗浄ノズル27」は、「ケーシング2から第1開口部20を通って便器のボウル部51へ進出したり、ボウル部51から第1開口部20を通ってケーシング2内へ後退したりする」から、本件発明1の「ノズル開口部を通じて便鉢の内側空間とカバーケースとの間を移動可能に構成され、前記内側空間に位置したときに先端部から洗浄水を吐出する吐水ノズル」に相当する。
(イ) 甲1発明において、「第1開口部20」は、「洗浄ノズル27が進退し、洗浄ノズル27の進退によって洗浄ノズル27を遮蔽するノズルダンパー7が上下方向に回動することで開閉され」、「ノズルダンパー7」は、「薄板状の第1板部70と、ノズルダンパー7をケーシング2に取り付ける一対の第1腕部71,71とを備え」るから、甲1発明の「薄板状の第1板部70」は、本件発明1の「前記ノズル開口部を開閉可能に設けられたシャッタ」に相当する。
(ウ) 甲1発明の「ノズルダンパー7」に備えられた「一対の第1腕部71,71」の「先端部711」は、「第1板部70の背面に設けられ」、「ノズルダンパー7をケーシング2に取り付ける」から、本件発明1の「前記シャッタを支持する支持部」に相当する。
そうすると、甲1発明の「一対の第1腕部71,71」は、「先端部711」を有するから、本件発明1の「前記シャッタを支持する支持部を有するシャッタアーム」に相当する。
(エ) 甲1発明の「衛生洗浄装置1」は、本件発明1の「局部洗浄装置」に相当する。
(オ) そうすると、本件発明1と甲1発明は、次の一致点Aで一致し、相違点1A及び相違点2Aで相違する。
(一致点A)
「ノズル開口部を通じて便鉢の内側空間とカバーケースとの間を移動可能に構成され、前記内側空間に位置したときに先端部から洗浄水を吐出する吐水ノズルと、
前記ノズル開口部を開閉可能に設けられたシャッタと、
前記シャッタを支持する支持部を有するシャッタアームと、
を備えた、
局部洗浄装置。」
(相違点1A)
本件発明1は、「前記支持部の上面は凹凸のない連続面で構成され」るのに対し、甲1発明の「先端部711」が有する「規制部714」は、「ノズルダンパー7において先端部711の上面側に配置され、規制部714と面接触するケーシング2の形状は略平面であ」る点。
(相違点2A)
本件発明1は、「前記支持部の内側の側面が平坦面を有し、前記支持部の外側の側面に凹部が形成されている」のに対し、甲1発明は、「第1取付ピン713と反対側の先端部711の側面の内側は、後部から前部に進むに従って下降した下部を有する囲われた領域を有し、凸状の構造を有するものがなく、前記側面の反対側であって前記領域と重複する箇所に第1取付ピン713が配置され」、「第1取付ピン713は、先端部711の上方側面から内側に向けて突出し、第1取付ピン713は、第1取付孔250に外側から挿入され、ノズルダンパー7をケーシング2に取り付ける際に、第1取付ピン713を第1取付孔250に容易に挿入することができる」点。
イ 検討・判断
(ア) 相違点1Aについて
a 甲1発明の「先端部711」が有する「規制部714」は、「ノズルダンパー7において先端部711の上面側に配置され」、「規制部714と面接触するケーシング2の形状は略平面であ」るから、「規制部714」の上面も「ケーシング2」に「面接触」するように「略平面」、すなわち凹凸のない連続面であるが、「先端部711」の他の上面側の形状は甲1の図面から看取できる程度の記載がなく不明である。
一方、本件発明1の「支持部支持部の上面は凹凸のない連続面で構成され」ることについて、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0043】に次の記載がある。
「【0043】
以上説明した本実施形態の局部洗浄装置4は、上述の吐水ノズル17,18と、シャッタ10と、シャッタアーム20と、を備える。シャッタアーム20の支持部24の上面46は平滑面で構成されている。吐水ノズル17,18の少なくとも先端部が便鉢21の内側空間23に位置している場合、シャッタ10が開いており、主に支持部24が内側空間23に露出される。局部洗浄装置4によれば、上面46は平滑面で構成されて上面46に凹凸がないので、水、埃や汚物が支持部24に到達しても上面46に滞留しにくく、支持部24が清潔に保たれる。また、上面46を清掃しやすくなり、局部洗浄装置4を清潔に保つことができる。」
この記載からみて、本件発明1の前記構成は、「上面は平滑面で構成されて上面に凹凸がないので、水、埃や汚物が支持部に到達しても上面に滞留しにくく、支持部が清潔に保たれ、上面を清掃しやすくなり、局部洗浄装置を清潔に保つことができる」という技術的意義を有するものである。
b しかしながら、甲1において、甲1発明の「先端部711」を、そのような技術的意義を有する構造とすることを動機づける記載や示唆はなく、甲2~甲4も同様にそのようなことを動機づける記載も示唆もない。
c また、甲2記載技術1の「第2レバー474」は、「温風ダンパー470」と「リンク軸476」を介して回動可能に接続し、「モータ472」で駆動するものであり、甲2記載技術2の「ノズルダンパー460」の「略S字状に屈曲した取付部461」は、「スナップフィット方式により軸体482を取付溝462に固定」するものであるから、これらは、甲1発明の「第1腕部71,71」の「第1取付ピン713」回動部の取り付け構造とは異なるものである。また、甲4発明は「シャッタ10が、シャッタアーム21に着脱可能に且つ回動可能に接続して配設される」ものであるから、甲1発明の「第1腕部71,71」とは構造が異なる。
このように、甲2記載技術1、甲2記載技術2、及び甲4発明が有する構造は、甲1発明の「第1腕部71,71」に関する構造と異なるものであり、構造が異なる他の部材に適用する動機を示す記載も示唆も甲2及び4に記載されておらず、技術常識ともいえないから、甲2記載技術1、甲2記載技術2、及び甲4発明の構成要素を、甲1発明の「第1腕部71,71」の「先端部711」に適用することは、当業者にとって容易に想到し得たことではない。
また、甲3記載技術1及び甲3記載技術2についても同様である。
したがって、当業者であっても、甲1発明において相違点1Aに係る本件発明1の構成とすることが容易に想到し得たことではない。
(イ) 相違点2Aについて
a 「先端部711」の外側の側面に凹部が形成されているか否かについて
甲1発明の「第1取付ピン713と反対側の先端部711の側面の内側は、後部から前部に進むに従って下降した下部を有する囲われた領域を有し、凸状の構造を有するものがなく、前記側面の反対側であって前記領域と重複する箇所に第1取付ピン713が配置され」ているから、「領域」内は凸状の構造を有さないことは自明である。
また、「第1取付ピン713」は、「先端部711の上方側面から内側に向けて突出し、第1取付ピン713は、第1取付孔250に外側から挿入され」るから、「第1取付ピン713と反対側の先端部711の側面」は、「先端部711」の外側の「側面」と解することができる。
また、甲1発明の「先端部711」は、「衛生洗浄装置1」の「ノズルダンパー7」に備えられたものであって、甲1の図9及び図11において「囲われた領域」について、甲1に特段の記載もないから、「領域」を示す実線が、意匠を表すものといえないことも自明である。
そして、「前記側面の反対側であって前記領域と重複する箇所に第1取付ピン713が配置されて」おり、図11には「第1取付ピン713」が破線で作図されているから、作図の常識からみて、「領域」の裏面に「第1取付ピン713」が配置され、かつ、「領域」内は貫通部となっていないことも自明である。
これらを総合すると、甲1発明の「先端部711の側面の内側」の「後部から前部に進むに従って下降した下部を有する領域」は、凹部の構造を有するものと認識することができるから、本件発明1の「前記支持部の外側の側面に凹部が形成されている」こととの間で相違するものでない。
仮に実質的に相違するとしても、甲1の図面を参酌して、部材の製造の際に必要な凹部を設計することは、当業者の通常の創作活動の範囲でなし得ることである。
したがって、相違点2Aに係る本願発明1の構成のうち、「前記支持部の外側の側面に凹部が形成されている」構成については、甲1発明との実質的な相違点ではないか、設計事項程度である。
b 「先端部711」の内側の側面が平坦面を有するか否かについて
「第1取付ピン713」は、「先端部711の上方側面から内側に向けて突出し、第1取付ピン713は、第1取付孔250に外側から挿入され」るから、「先端部711」の「第1取付ピン713」が設けられている「側面」が、「先端部711」の内側の「側面」と解することができ、本件発明1の「支持部の内側の側面」に相当する。
ここで、「先端部711」の「第1取付ピン713」が設けられた面は、「第1取付ピン713」があるから、「平坦面」であるということはできない。また、「第1取付ピン713」が設けられている以外の構造については甲1からは特定することができない。
そして、甲1発明の「先端部711」の「第1取付ピン713」のある側面部について、「第1取付ピン713」をなくして、全体を「平坦面」とすること、または「第1取付ピン713」以外の箇所を「平坦面」を有するようにすることについて、甲2~甲4を考慮しても、記載も示唆もない。
したがって、当業者であっても、甲1発明において相違点2Aに係る本件発明1の構成とすることが容易に想到し得たことではない。
ウ 申立人の主張について
(ア) 主張の概要
申立人は、特許異議申立書及び令和7年4月2日に提出した意見書において、甲1発明において、「第1板部70の背面に設けられ、基端部710と、先端部711と、基端部710と先端部711との間に設けられる中間部712とをそれぞれ備え」た、「一対の第1腕部71,71」が本件発明1の「シャッタを支持する支持部」に相当することを前提とした主張を行っている。
(イ) 主張に対する見解
本件発明1の「前記シャッタを支持する支持部」が、甲1発明の「一対の第1腕部71,71」に相当するとした場合、甲1発明の「一対の第1腕部71,71」は、前記ア(ウ)で本件発明1の「前記シャッタを支持する支持部」に相当するとした「一対の第1腕部71,71」の「先端部711」を含むものであるから、前記ア(オ)に示した相違点1Aと同様に「支持部の上面は凹凸のない連続面で構成され」るものとはならない。
また、甲1発明の「一対の第1腕部71,71」は、甲1の【図11】の図示を考慮しても、側面視において複雑な形状をしているところ、甲1~甲4の記載事項等を考慮しても、「第1腕部71,71」の全体について「上面」を「平滑面」かつ「凹凸がない」ものとすることが示唆されるものではない。また、「第1腕部71,71」のうち、「先端部711」について「平滑面」かつ「凹凸がない」ものとすることについては、前記イ(ア)に判断したとおりである。
そして、甲1発明の「第1の腕部71,71」またはその「先端部711」について、「上面は平滑面で構成されて上面に凹凸がないので、水、埃や汚物が支持部に到達しても上面に滞留しにくく、支持部が清潔に保たれ、上面を清掃しやすくなり、局部洗浄装置を清潔に保つことができる」という技術的意義を有する構造とすることについて、甲2~甲4を考慮しても記載も示唆もないから、「支持部の上面は凹凸のない連続面で構成され」るものとすることについて、当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、申立人の主張を考慮しても、前記ア及びイの判断が左右されるものではなく、採用できない。
エ 甲1を主引用例とした本件発明1の新規性及び進歩性のまとめ
前記ア及びイに示したとおり、本件発明1と甲1発明とは、相違点1A及び相違点2Aで相違するから、本件発明1は、甲1発明ではない。
そして、前記イ及びウに示したとおり、本件発明1は、甲1発明、及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(2) 本件発明2~4について
本件発明2~4のそれぞれは、本件発明1の構成を有し、さらに構成を付加したものである。
前記(1)で対比・判断したとおり、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明、及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件発明2~4のそれぞれにおいて付加された構成について検討するまでもなく、本件発明2及び4のそれぞれは、甲1発明ではない。
また、本件発明2~4のそれぞれは、甲1発明、及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(3) 甲1を主引用例とした本件発明の新規性及び進歩性のまとめ
本件発明1、3及び4のそれぞれは、甲1発明ではなく、また、本件発明1~4のそれぞれは、甲1発明、及び甲2~甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
4 甲4を主引用例とした新規性及び進歩性について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明を対比する。
(ア) 甲4発明の「便鉢」及び「カバーケース6」のそれぞれは、本件発明1の「便鉢」及び「カバーケース」に相当する。
そうすると、甲4発明の「局部洗浄ノズル7、8」は、「局部洗浄時に、便鉢のボウル部1aを備えた便器本体1の内側に局部洗浄ノズル7、8が進出するとともに、局部洗浄ノズル7、8の先端部がシャッタ10の背面側を押圧してシャッタ10が回動して開き、便器本体1の内側に進出した局部洗浄ノズル7、8の先端部から洗浄水が吐出して局部を洗浄するように構成されている」から、本件発明1の「ノズル開口部を通じて便鉢の内側空間とカバーケースとの間を移動可能に構成され、前記内側空間に位置したときに先端部から洗浄水を吐出する吐水ノズル」に相当する。
(イ) 甲4発明の「シャッタ10」は、「カバーケース6に設けられたノズル開口部9を開閉し、局部洗浄時に局部洗浄ノズル7、8の便器本体1内への進出動作に応じてノズル開口部9を開き、局部洗浄ノズル8、9がカバーケース6内に退避するとともにノズル開口部9を閉じて、汚物、洗浄水の飛沫などが局部洗浄ノズル7、8にかかったり、内部に入り込むことを防止する」から、本件発明1の「前記ノズル開口部を開閉可能に設けられたシャッタ」に相当する。
(ウ) 甲4発明の「一対のアーム部36」は、「シャッタアーム21」に備えられた「シャッタ10が、シャッタアーム21に着脱可能に且つ回動可能に接続して配設され」、実質的に「シャッタ10」を支持するから、本件発明1の「前記シャッタを支持する支持部」に相当する。
そうすると、甲4発明の「シャッタアーム21」は、「一対のアーム部36とを備え」るから、本件発明1の「前記シャッタを支持する支持部を有するシャッタアーム」に相当する。
(エ) 甲4発明の「局部洗浄装置4」は、本件発明1の「局部洗浄装置」に相当する。
(オ) そうすると、本件発明1と甲4発明は、次の一致点Bで一致し、相違点1B及び2Bで相違する。
(一致点B)
「ノズル開口部を通じて便鉢の内側空間とカバーケースとの間を移動可能に構成され、前記内側空間に位置したときに先端部から洗浄水を吐出する吐水ノズルと、
前記ノズル開口部を開閉可能に設けられたシャッタと、
前記シャッタを支持する支持部を有するシャッタアームと、
を備えた、
局部洗浄装置。」
(相違点1B)
本件発明1は、「前記支持部の上面は凹凸のない連続面で構成され」るのに対し、甲4発明の「一対のアーム部36」は「断面略方形状」であり、「各アーム部36は、下面の幅方向略中央に、下面から下方に突出し、アーム部36の延設方向の前後方向T2に延びるリブ38を備えている」が上面にはそのような特定がない点。
(相違点2B)
本件発明1は、「前記支持部の内側の側面が平坦面を有し、前記支持部の外側の側面に凹部が形成されている」のに対し、甲4発明の「一対のアーム部36のそれぞれは、一対のアーム部36が対向する内側の側面に長方形で囲われた領域を有するとともに、外側の側面は平坦な面を有し」ている点。
イ 検討・判断
(ア) 相違点1Bについて
相違点1Bについて検討する。
甲4発明の「一対のアーム部36」は「断面略方形状」であり、下面に「リブ38」を備えているが、上面の構造について甲4に特段の記載も示唆もない。また、「一対のアーム部36」の上面に特段の機能等があることについての記載も示唆もない。
そうすると、「断面略方形状」である「一対のアーム部36」の上面は、構造上最も単純な凹凸のない連続面で構成されると解することが自然である。そうすると、相違点1Bは実質的な相違点でない。
仮に相違点1Bが実質的な相違点であったとしても、甲4発明は、「局部洗浄ノズル8、9がカバーケース6内に退避するとともにノズル開口部9を閉じて、汚物、洗浄水の飛沫などが局部洗浄ノズル7、8にかかったり、内部に入り込むことを防止する」ものであり、その周辺に配置される「一対のアーム部36」も「局部洗浄ノズル8、9」を使用しているとき等に「汚物、洗浄水の飛沫など」を受ける可能性があることは自明の課題であるから、甲4発明において、「断面略方形状」である「一対のアーム部36」の上面を構造上最も単純な凹凸のない連続面で構成するように設計して、相違点1Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点2Bについて
相違点2Bについて検討する。
a 本件発明1の「前記支持部の内側の側面が平坦面を有し、前記支持部の外側の側面に凹部が形成されている」ことの技術的意義について
本件発明1の「前記支持部の内側の側面が平坦面を有し、前記支持部の外側の側面に凹部が形成されている」ことについて、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0044】に次の記載がある。
「【0044】
本実施形態の局部洗浄装置4によれば、シャッタアーム20を成形技術によって製造する際の肉抜きのための凹部60-1,60-2は支持部24の側面47に形成されている。側面47は、左右方向T1において、吐水ノズル17,18と対向する側面とは反対側の側面であり、且つアーム部44の中で最も外側に位置して上下方向T3に沿った面である。このように側面47はアーム部44の表面のうち、水、埃や汚物が到達し難い面である。このことによって、凹部60-1,60-2に水、埃や汚物が進入するのを極力抑えることができる。また、局部洗浄装置4によれば、上面46の平滑面を保持しつつ、支持部24に肉抜きのための凹部60-1,60-2を形成できる。そのため、射出成型等によりシャッタアーム20を製造した際に、シャッタアーム20の厚肉化が発生するのを抑え、設計通りの寸法のシャッタアーム20を製造し、且つシャッタアーム20の強度の維持及び軽量化を図ることができる。シャッタアーム20が設計通りの寸法で製造できれば、カバーケース6の内部空間で最小限の領域等にもシャッタアーム20を設置でき、且つシャッタベース30との相対配置のずれの発生も防止できる。」との記載がある。
これらの記載からみて、本件発明1の前記構成は、強度の維持及び軽量化のための凹部を設けると同時に、当該凹部を形成する面を、吐水ノズルと対向する側面とは反対側の側面であり、水、埃や汚物が到達し難い外側の面とし、吐水ノズルと対向する内側の側面を平坦面とすることで、凹部に水、埃や汚物が進入するのを極力抑えることができるという技術的意義を有するものである。
b 相違点2Bについての検討・判断
甲4発明の「アーム部36」は、「局部洗浄装置4」の「シャッタアーム21」に備えられたものであって、「内側の側面」の「長方形で囲われた領域」について、構造的に意味のあるものと解され、低コスト化や軽量化のための肉抜きとして射出成形により凹部を形成することが、周知技術であることを踏まえると、甲4発明の「一対のアーム部36が対向する内側の側面に長方形で囲われた領域」は、「肉抜き」により形成された凹部である蓋然性が高いといえる。
しかしながら、甲4発明において、「凹部」が形成されているのは、「一対のアーム部36が対向する内側の側面」であると共に、「外側の側面は平坦な面を有」するから、「凹部」と「平坦な面」を有する側面について、本件発明1と甲4発明とは反対の位置関係を有する。
ここで、甲4において「凹部」を「シャッターアーム21」の外側の側面に配置して、内側の側面を平坦な面とする記載や示唆はない。
また、甲1~甲3にも甲4発明にそのような変更を加える記載や示唆はない。
そして、本件発明1は、相違点2に係る構成により、前記aに示した技術的意義を有し、効果を奏するものである。
したがって、相違点2Bは、実質的な相違点であり、当業者であっても、甲4発明において相違点2Bに係る本件発明1の構成とすることは、容易に想到し得たことではない。
ウ 甲4を主引用例とした本件発明1の新規性及び進歩性のまとめ
前記ア及びイに示したとおり、少なくとも相違点2Bは実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲4発明ではない。
そして、本件発明1は、甲4発明、及び甲1~甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(2) 本件発明2~4について
本件発明2~4のそれぞれは、本件発明1の構成を有し、さらに構成を付加したものである。
前記(1)で対比・判断したとおり、本件発明1は、甲4発明ではなく、また、甲4発明、及び甲1~甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえないから、本件発明2~4のそれぞれにおいて付加された構成について検討するまでもなく、本件発明2及び4のそれぞれは、甲4発明ではなく、また、本件発明2~4のそれぞれは、甲4発明、及び甲1~甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(3) 甲4を主引用例とした本件発明の新規性及び進歩性のまとめ
本件発明1、3及び4のそれぞれは、甲4発明ではなく、また、本件発明1~4のそれぞれは、甲4発明、及び甲1~甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
第6 先の取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由についての当審の判断
1 はじめに
前記第4の2に示したとおり、申立人は、甲1を主引用例とした本件発明1、3及び4についての新規性の欠如の特許異議申立理由1、甲1を主引用例とした本件発明1~4についての進歩性の欠如の特許異議申立理由2、及び本件発明1、3及び4についての明確性要件違反の特許異議申立理由3を申し立てているが、このうち、甲1を主引用例とした新規性の欠如及び進歩性の欠如の特許異議申立1及び2によっては、前記第5の3に示したとおり、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
したがって、以下では、申立人の主張する明確性要件違反の特許異議申立3について検討・判断を示す。
2 申立人の主張
申立人は、明確性要件違反について、概ね次の主張をしている(申立書17頁下から4行~20頁10行)。
(1) 本件特許発明1について
ア 本件特許発明1に記載された「前記支持部の上面は凹凸のない連続面で構成され」が、どのような状態なのかが不明確である。
本件特許では、「支持部」について、以下のように記載されている。
「支持部24は、一対の支持アーム41,42で構成されている。・・・支持アーム41,42のそれぞれの前端部及び後端部をつなぐアーム部44は、略矩形の断面を有する。」(段落【0036】)
「支持アーム41,42のそれぞれの後端部は、側面視において後端部から膨出する回動部50が設けられている。・・・」(段落【0037】)
アーム部44は、支持アーム41,42のそれぞれの前端部及び後端部をつないでいることから、支持アーム41,42は、それぞれ、前端部、アーム部44、及び後端部を有すると考えられる。一方で、「後端部は、側面視において後端部から膨出する回動部50が設けられている。」という記載からは、支持アーム41,42の後端部が回動部50を含むのか、含まないのかが不明確である。
つまり、本件特許発明1に記載された「支持部」は、回動部50を含むのか含まないのかが不明確である。そして、「支持部」が回動部50を含む場合には、上に凸の形状で湾曲している回動部50の上面も「凹凸のない連続面」に含まれるのか否かが不明確である。
イ また、本件特許では、「凹凸のない連続面」について、以下のように記載されている。
「アーム部(支持部)44の上面46は、凹凸のない平滑面(連続面)で構成されている。ここで、「凹凸がない」とは、例えば上面46を所定の間隔で任意の方向に進むにしたがって上面46の平均線又は上面46の平均線の接線の傾きの絶対値の変化が所定値以内であり、且つ前述の上面46又は上面46の接線の傾きの正負の変化が1回以内であり、表面粗さについて算術平均粗さがRa1.6以下であることを意味する。・・・」(段落【0040】)
「例えば、上述の実施形態のアーム部44は軸線方向に沿って直線状に形成され、上面46は平滑面で構成されている。しかしながら、本発明のシャッタアームはシャッタを支持する支持部を有していればよく、本発明のシャッタアームの形状は上述の実施形態のシャッタアーム20の形状に限定されない。支持部の軸線方向は、湾曲していてもよい。即ち、支持部の上面は、凹凸のない曲面(連続面)で構成されていてもよい。汚れの蓄積を確実に防止する観点から、支持部の上面は、水平な平滑面、線形な傾斜面、上側に突出する凸曲面の何れかであることが好ましい。」(段落【0048】)
「支持部の上面は、凹凸のない曲面(連続面)で構成されていてもよい」と記載されているが、曲面は凹部や凸部を構成するため、「凹凸のない連続面(凹凸のない曲面)」がどのような曲面を含み、どのような曲面を含まないのかが不明確である。
また、「所定の間隔で任意の方向に進むにしたがって上面46の平均線又は上面46の平均線の接線の傾きの絶対値の変化が所定値以内」という定義は、「所定の間隔」を小さくすれば、曲率の小さい曲面も曲率の大きい曲面も含みうる定義である。したがって、「凹凸のない連続面(凹凸のない曲面)」がどのような曲面を含み、どのような曲面を含まないのかが不明確である。
(2) 本件特許発明3について
請求項3に記載された「後部から前部に進むに従って下降する第2傾斜面」が、どのような面なのかが不明確である。
本件特許の図3、図4に示されるように、シャッタの位置が変わると、シャッタアームの向きが変わり、支持部に形成された凹部の下面の向きも変わる。つまり、凹部の下面の向きは、シャッタがどの位置にあるかによって異なる。
本件特許発明3では、シャッタがどの位置にあるときの凹部の下面の向きかを規定していないため、「後部から前部に進むに従って下降する第2傾斜面」が、どのような面なのかが不明確である。
(3) 本件特許発明4について
請求項4に記載された「前記シャッタは前記ノズル開口部に対して上下方向に回転可能に設けられている」が、どのような状態なのかが不明確である。
本件特許の図4には、シャッタ10が吐水ノズル18よりも上方に位置する状態(実線)と、シャッタ10が吐水ノズル18よりも下方に位置する状態(破線)と、の2つの状態になることが示されている。しかし、本件特許の図4には、このとき、シャッタ10がノズル開口部9に対してどの位置にあるかは示されていない。つまり、「前記シャッタは前記ノズル開口部に対して上下方向に回転可能に設けられている」が、どのような状態なのかが不明確である。
また、「前記シャッタは前記ノズル開口部に対して上下方向に回転可能に設けられている」が、「シャッタ10がノズル開口部9に対して上方及び下方の少なくともいずれかに回転可能」という意味なのか、「シャッタ10がノズル開口部9に対して上方及び下方の両方に回転可能」という意味なのか、が不明確である。
3 判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の本件出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断するのが相当である。
4 当審合議体の判断
前記3の観点から、本件発明1、3及び4が明確であるか否かについて検討する。
(1) 本件発明1について
ア 「回動部」を特定することについて
請求項1に記載された「支持部」は、「シャッタアーム」が有するものであって「シャッタを支持する」と特定されているから、「シャッタアーム」の一部分を構成するものであって、「シャッタを支持する」機能・作用を有するものと理解することができる。
そして、その「支持部」の「上面は凹凸のない連続面が構成され」とあることは、後記イに示すように「支持部」の「上面」の構造について理解することができる。
そのため、「シャッターアーム」のうち「支持部」以外の構成要素として、本件明細書に記載された「シャッターアーム」の「回動部」を特定しなければ請求項1に記載された構成要素が表す機能・作用等が不明確となる特段の理由があるとはいえず、当業者であれば、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたような「回動部」について特定することなく、「前記支持部」について理解することができる。
イ 「前記支持部の上面は凹凸のない連続面で構成され」ることについて
(ア) 請求項1に記載された「支持部」は、「前記支持部の上面は凹凸のない連続面で構成され」ると特定される。
ここで、「前記支持部の上面」が「凹凸のない連続面」とは、「前記支持部の上面」が「凹凸のない」ものである「連続面」を表すところ、「前記支持部の上面」について、「凹凸のない」ということから上面には凹と凸とを組み合わせた部分がないと理解でき、「連続面」であることからも不連続な面ではないことを表すから、略平坦な面と理解することができる。
(イ) 申立人の指摘する本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0040】及び【0048】において、「前記支持部の上面は凹凸のない連続面で構成され」ることについての記載があるが、段落【0040】及び【0048】の記載は、前記(ア)に示した「凹凸のない連続面」についてより具体的な例を示したものであって、前記(ア)の理解の範囲でこれらの記載内容を理解するのが相当である。
そして、本件明細書の段落【0040】及び【0048】の記載を考慮しても、申立人が主張するように、曲面には必ず凹か凸があるから「凹凸のない連続面」と曲面とは矛盾するとか、「凹凸のない連続面」が曲面を含む場合には「凹凸のない連続面」について不明確となるといった事情はないから、「凹凸のない連続面」について、第三者に不測の不利益を生じさせる程に不明確となるものではない。
ウ 前記ア及びイに示したように、当業者であれば、請求項1に記載された「前記支持部の上面は凹凸のない連続面で構成され」ることについて理解することができ、当業者の本件出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(2) 本件発明3について
ア 請求項3に記載された「後部から前部に進むに従って下降する第2傾斜面」について、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0018】に「図1に示すように、本実施形態の便器100は、便器本体1と、洗浄機能部2と、便座3と、便蓋5、を備えている。以下、便器100の使用者が便座3に着座した際に使用者から見て左の相対位置を左側、使用者から見て右の相対位置を右側とし、左側と右側とを結ぶ方向を左右方向T1とする。使用者が便座3に着座した際に使用者の前にあたる相対位置を前側、使用者の後にあたる相対位置を後側とし、前側と後側とを結ぶ方向を前後方向T2とする。使用者が便座3に着座した際に使用者から見て上にあたる相対位置を上側、使用者から見て下にあたる相対位置を下側とし、上側と下側とを結ぶ方向を上下方向T3とする。」との記載を参酌すると、「前部」と「後部」に関し、本件発明3の「局部洗浄装置」が備える「支持部」の外側の側面の「凹部」の「前部」と「後部」は、「局部洗浄装置」において、「使用者が便座に着座した際に使用者の前にあたる相対位置を前側、使用者の後にあたる相対位置を後側」としてその位置を特定できるから、「凹部の下面」の「前部」と「後部」についても、同様にその位置を特定できるものである。
また、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0045】に「本実施形態の局部洗浄装置4によれば、凹部60-1,60-2の下面62は、上述の傾斜面64,68を有する。このことによって、凹部60-1,60-2に水、埃や汚物が入っても、水、埃や汚物の凹部60-1,60-2からの自然な排出を促し、凹部60-1,60-2における汚れの蓄積を防止できる。このことによって、支持部24を清潔に保ち、局部洗浄装置4を清潔に保つことができる。」と記載されていることを参酌すると、請求項3に記載された「凹部の下面」が「後部から前部に進むに従って下降する第2傾斜面」を有する構成は、「シャッタ」が通常の位置にあり「局部洗浄装置」が「洗浄水を吐出」していない状態での「支持部」について、「外側の側面」の「凹部の下面」における前後方向の傾斜構造を特定すると理解することができるものである。
イ 前記アに示したように、当業者であれば、請求項3に記載された「前記凹部の下面は、後部から前部に進むに従って下降する第2傾斜面を有する」ことについて理解することができ、当業者の本件出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3) 本件発明4について
ア 請求項4に記載された「前記シャッタは前記ノズル開口部に対して上下方向に回転可能に設けられている」ことについて、同請求項が引用する請求項1に記載されたとおり、「シャッタ」が「前記ノズル開口部を開閉可能に設けられ」ていることからみて、「回転可能」な「シャッタ」が、「ノズル開口部」に対して「開閉」のために「上下方向」に回転可能であることを意味すると自然に理解されるから、当業者の本件出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由についてのまとめ
よって、申立人が主張する特許法36条6項2号違反に係る特許異議申立理由3は、採用すべき理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701365