特許異議申立
2024-700958
便器装置及び便器素地の鋳込み成形方法
- 審判番号
- 2024-700958
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-238636
- 登録番号
- 7461740
- 請求日
- 2024年10月02日
- 審決日
- 2025年12月04日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社LIXIL
- 【権利者代理人】森下 賢樹
- 【異議申立人】TOTO 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 立澤 正樹
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P1652.113-YAA(E03D) / P1652.121-YAA(E03D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7461740号発明「便器装置及び便器素地の鋳込み成形方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7461740号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1,〔5,6〕,7,10 について訂正することを認める。
特許第7461740号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7461740号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、令和元年12月27日に出願され、令和6年3月27日にその特許権の設定登録がされ、同年4月4日に特許掲載公報が発行された。
これに対し、令和6年10月2日に、特許異議申立人 TOTO株式会社(以下、「申立人」という。)より特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、請求項1に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
その後の経緯は、次のとおりである。
令和6年11月28日付け:取消理由通知書
令和7年 1月31日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 3月27日 :申立人による意見書の提出
同年 4月24日付け:手続補正指令書(方式)
同年 5月 9日 :特許権者による手続補正書の提出
同年 6月16日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 8月21日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 9月30日 :申立人による意見書の提出
なお、令和7年1月31日にされた訂正の請求は、令和7年8月21日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。
第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨と訂正の内容
令和7年8月21日に提出された訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)による訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許第7461740号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、5~7、10について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「便鉢部を有する便器本体と、前記便鉢部の底部に接続される排水管路と、前記排水管路に設けられ、封水貯留部が設けられる管路構成部材と、前記管路構成部材に設けられ、配管部材が接続される配管接続部と、前記配管接続部の内側に設けられ、前記封水貯留部の水路形成面の頂部と、を備え、前記頂部の内下面には、前記配管接続部の内側において、前記封水貯留部に貯留される封水の最高水位を定める溢れ縁が設けられ、前記管路構成部材及び前記配管部材の内部には前記便鉢部内から排出される水が通る内部水路が形成され、前記頂部には、前記内部水路において下流側に向かって低くなる水落とし部が設けられ、記水落とし部は、前記管路構成部材を構成する前記便器本体により構成される便器装置。」と記載されているのを、
「便鉢部を有する便器本体と、前記便鉢部の底部に接続される排水管路と、前記排水管路に設けられ、封水貯留部が設けられる管路構成部材と、前記管路構成部材に設けられ、配管部材が接続される配管接続部と、前記配管接続部の内側に設けられ、前記封水貯留部の水路形成面の頂部と、を備え、前記頂部の内下面には、前記配管接続部の内側において、前記封水貯留部に貯留される封水の最高水位を定める溢れ縁が設けられ、前記管路構成部材及び前記配管部材の内部には前記便鉢部内から排出される水が通る内部水路が形成され、前記頂部には、前記内部水路において下流側に向かって低くなる水落とし部が設けられ、前記水落とし部は、前記管路構成部材を構成する前記便器本体により構成され、前記便器本体は、前記便鉢部を取り囲む外周壁部を備え、前記水落とし部は、前記外周壁部の後端よりも前方に設けられる便器装置。」 と訂正する。
イ 訂正事項2-1
特許請求の範囲の請求項5に「前記頂部には、前記頂部を通る流れ方向に直交する断面において、水平面と平行な平坦面が設けられる請求項1から4のいずれか1項に記載の便器装置。」と記載されているうち、請求項2から4を引用するものについて、「前記頂部には、前記頂部を通る流れ方向に直交する断面において、水平面と平行な平坦面が設けられる請求項2から4のいずれか1項に記載の便器装置。」と訂正する。(請求項5を引用する請求項6についても、同様に訂正する。)
ウ 訂正事項2-2
特許請求の範囲の請求項5に、「前記頂部には、前記頂部を通る流れ方向に直交する断面において、水平面と平行な平坦面が設けられる請求項1から4のいずれか1項に記載の便器装置。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「便鉢部を有する便器本体と、前記便鉢部の底部に接続される排水管路と、前記排水管路に設けられ、封水貯留部が設けられる管路構成部材と、前記管路構成部材に設けられ、配管部材が接続される配管接続部と、前記配管接続部の内側に設けられ、前記封水貯留部の水路形成面の頂部と、を備え、前記頂部の内下面には、前記配管接続部の内側において、前記封水貯留部に貯留される封水の最高水位を定める溢れ縁が設けられ、前記管路構成部材及び前記配管部材の内部には前記便鉢部内から排出される水が通る内部水路が形成され、前記頂部には、前記内部水路において下流側に向かって低くなる水落とし部が設けられ、前記水落とし部は、前記管路構成部材を構成する前記便器本体により構成され、前記頂部には、前記頂部を通る流れ方向に直交する断面において、水平面と平行な平坦面が設けられる便器装置。」と訂正し、新たな請求項10とする。
エ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7に「前記頂部には、前記内部水路において下流側に向かって段階的に低くなる前記水落とし部が設けられる請求項1に記載の便器装置。」と記載されているのを、独立形式に改め、「便鉢部を有する便器本体と、前記便鉢部の底部に接続される排水管路と、前記排水管路に設けられ、封水貯留部が設けられる管路構成部材と、前記管路構成部材に設けられ、配管部材が接続される配管接続部と、前記配管接続部の内側に設けられ、前記封水貯留部の水路形成面の頂部と、を備え、前記頂部の内下面には、前記配管接続部の内側において、前記封水貯留部に貯留される封水の最高水位を定める溢れ縁が設けられ、前記管路構成部材及び前記配管部材の内部には前記便鉢部内から排出される水が通る内部水路が形成され、前記頂部には、前記内部水路において下流側に向かって低くなる水落とし部が設けられ、前記水落とし部は、前記管路構成部材を構成する前記便器本体により構成され、前記頂部には、前記内部水路において下流側に向かって段階的に低くなる前記水落とし部が設けられる便器装置。」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、訂正の単位、及び独立特許要件について
なお、訂正事項2-1及び訂正事項2-2については、訂正前の請求項5に関する訂正事項であることから、便宜的に併せて検討する。
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載された「便器本体」及び「水落とし部」について、訂正後の請求項1において、「前記便器本体は、前記便鉢部を取り囲む外周壁部を備え、前記水落とし部は、前記外周壁部の後端よりも前方に設けられ」との記載により、便器本体の構成、水落とし部の位置を具体的に特定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(1)で説示したとおり、訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に係る発明について限定を行うものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
願書に添付した明細書及び図面には、次の記載がある。
(ア)「【0012】
本実施形態の便器装置10は、便鉢部12を取り囲む外周壁部26を備える。・・・
・・・
【0017】
図2に戻る。排水管路16は、建物に設置される排水管44に接続される。本実施形態の排水管44は、トイレ室の床面Fに埋め込まれている。排水管路16は、便器本体14に設けられる便器排水路46を備える。本実施形態の排水管路16は、更に、便器排水路46と排水管44を接続する排水ソケット48と、便器排水路46と排水ソケット48を接続する接続配管50と、を備える。」
(イ)「【0137】
次に、第4の工夫点に関する他の特徴を説明する。図12を参照する。第2管路構成部材300の水路頂部314には、内部水路306において下流側に向かって段階的に低くなる水落とし部340が設けられる。ここでの「段階的」とは、水落とし部340を境界として、内部水路306において不連続な高低差があることをいう。本実施形態の水落とし部340は、第2配管部材302の内下面と水路頂部314との間で不連続な高低差を形成するように設けられる。水落とし部340は、これらの間で段差部を形成するように設けられるとも捉えることができる。本実施形態の水落とし部340は、第2管路構成部材300の下流側端面が構成しており、水路頂部314との間に角部342を形成している。水落とし部340は、水路頂部314を乗り越える水を重力を用いて落とすことができる。
【0138】
これにより、水路頂部314を乗り超えた水を水落とし部340よりも下流側にて重力を用いて方向Pbに落とすことで、排水管路16の内部水路306内で下流側に水を流し易くなる。これに伴い、水路頂部314に水落とし部340がない場合と比べ、排水管路16内を流れる水の抵抗を小さくできる。ひいては、排水流量を確保し易くなる。」
(ウ)「【0154】
本実施形態の索状部材504は、排水管路16の全体よりも後方を経由しないように配置される。索状部材504の直交断面の少なくとも一部は、便器本体14と前後方向Xに重なる箇所の全域において、便器装置10の外周壁部26の後端26aから前方に位置するように設けられる。ここでの直交断面とは、索状部材504の軸線方向に直交する断面をいう。索状部材504の直交断面の全体は、便器本体14の前後方向Xに重なる箇所の全域において、便器装置10の外周壁部26の後端26aよりも後方に位置しないように設けられるとも捉えることができる。」
(エ)図3
「
[図:0001433062000001.jpg]
」
(オ)図12
「
[図:0001433062000002.jpg]
」
(カ)図23
「
[図:0001433062000003.jpg]
」
上記(ア)~(ウ)の記載をふまえると、図3及び図23から、便器本体14が、便鉢部12を取り囲む外周壁部26を備えていることが看取できる。
また、上記図23から、外周壁部26の後端26aより前方に接続配管50が設けられることが看取できるとともに、上記図12から、内部水路306の下流側の接続配管50が設けられている側に水落とし部340が位置していることが看取できる。当該水落とし部340に相当する構成は、図3からも看取できる。これらの記載から、水落とし部340が、外周壁部の後端26aよりも前方に設けられていることを導くことができる。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載されたすべての事項に対して、新たな技術的事項を追加するものではない。
よって、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1について、特許異議の申立てがされているので、訂正事項1において、請求項1について特許請求の範囲の減縮が行われていても、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項1に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2-1及び訂正事項2-2について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項2-1について
訂正事項2-1に係る訂正は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1~4のいずれか1項を引用する記載であったものを、請求項2~4のいずれか1項を引用する記載とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項2-2について
訂正事項2-2に係る訂正は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1~4を引用する記載であったものを、請求項1を引用するものについて独立形式請求項へ改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、特許法120条の5第2項ただし書4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものを目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項2-1及び訂正事項2-2に係る訂正は、訂正前の請求項5に係る発明について限定を行い、または、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
訂正事項2-1及び訂正事項2-2に係る訂正は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1~4のいずれか1項を引用する記載であったものを、請求項2~4のいずれか1項を引用する記載とし、また、請求項1を引用するものについて請求項1の記載を引用しないものとするものであるから、いずれも願書に添付された特許請求の範囲の請求項5に記載された事項から導出されるものである。
よって、訂正事項2-1及び訂正事項2-2に係る訂正は、本件明細書等に記載されたすべての事項に対して、新たな技術的事項を追加するものではない。
したがって、訂正事項2-1及び2-2に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項5及び6について、特許異議の申立てがされていないので、訂正事項2-1において、請求項5及び6について特許請求の範囲の減縮が行われているから、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項5及び6に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件が課される。
一方、訂正前の請求項5について、特許異議の申立てがされていないものの、訂正事項2-2に係る訂正は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1~4を引用する記載であったものを、請求項1を引用するものについて独立形式請求項へ改めるものであるから、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項10に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
以下、訂正後の請求項5及び6に係る発明が、独立特許要件を満たしているかについて検討する。
訂正後の請求項5に係る発明と、下記第5の1(2)に認定する甲1に記載された発明(甲1発明)とを対比すると、「封水貯留部の水路形成面」の「頂部」について、訂正後の請求項5に係る発明は、「前記頂部を通る流れ方向に直交する断面において、水平面と平行な平坦面が設けられる」のに対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点で、少なくとも相違する。
甲第1号証には、本件訂正後の請求項5に係る「封水貯留部の水路形成面」の「頂部」についての特定事項である、「前記頂部を通る流れ方向に直交する断面において、水平面と平行な平坦面が設けられる」ことは、記載も示唆もされていない。なお、本件特許異議申立において提出された先行技術を示す証拠は、甲第1号証のみである。
したがって、本件訂正後の請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法29条2項の規定に違反するものではない。
本件訂正後の請求項5に係る発明の構成を有する、本件訂正後の請求項6に係る発明についても、同様である。
また、他に本件訂正後の請求項5及び6に係る発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しない。
よって、本件訂正後の請求項5及び6に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項1の記載を引用しないものとするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものを目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アで説示したとおり、訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項7に係る発明について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであり、発明のカテゴリーや対象又は目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の有無について
訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項1の記載を引用しないものとするものである。
よって、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等に記載されたすべての事項に対して、新たな技術的事項を追加するものではない。
したがって、訂正事項3に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
エ 独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項7について、特許異議の申立てがされていないものの、訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項1との間の引用関係を解消するとともに独立形式請求項へ改めるものであるから、訂正の適否の要件として、訂正後の請求項7に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件が課されない。
(4)一群の請求項及び別の訂正単位とする求めについて
訂正前の請求項1、5~7について、請求項5~7は、請求項1を直接的または間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1、5~7に対応する訂正後の請求項1、5~7、10は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
特許権者は、訂正後の請求項5、7、10については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めているので以下検討する。
上記(1)~(3)のとおり、訂正事項1に係る訂正、訂正事項2-1及び2-2に係る訂正、訂正事項3に係る訂正は、それぞれ適法なものである。
また、本件訂正後の請求項1に係る発明、請求項5に係る発明、請求項7に係る発明、及び請求項10に係る発明は、互いに引用関係にないから、これらの請求項に係る発明について、別の訂正単位とする求めを認めない理由はない。なお、本件訂正後の請求項6に係る発明は、本件訂正後の請求項5に係る発明を引用するから、本件訂正後の請求項5及び6に係る発明は、別の訂正単位とされるものではない。
したがって、本件訂正後の請求項1に係る発明、請求項〔5-6〕に係る発明、請求項7に係る発明及び請求項10に係る発明について、別の訂正単位とすることを認める。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項乃至7項の規定に適合するので、訂正後の請求項について、本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたので、本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、各々を「本件発明1」等という。)は、令和7年8月21日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の、請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そのうち、本件特許異議申立の対象である本件発明1は、次のとおりのものである。
なお、本件発明1の各構成の分説は、申立人が申立書において付した分説を参考に、当審において付した、また当審において、適宜改行した。
「【請求項1】
A 便鉢部を有する便器本体と、
B 前記便鉢部の底部に接続される排水管路と、
C 前記排水管路に設けられ、封水貯留部が設けられる管路構成部材と、
D 前記管路構成部材に設けられ、配管部材が接続される配管接続部と、
E 前記配管接続部の内側に設けられ、前記封水貯留部の水路形成面の頂部と、
を備え、
F 前記頂部の内下面には、前記配管接続部の内側において、前記封水貯留部に貯留される封水の最高水位を定める溢れ縁が設けられ、
G 前記管路構成部材及び前記配管部材の内部には前記便鉢部内から排出される水が通る内部水路が形成され、
H 前記頂部には、前記内部水路において下流側に向かって低くなる水落とし部が設けられ、
I 前記水落とし部は、前記管路構成部材を構成する前記便器本体により構成され、
L 前記便器本体は、前記便鉢部を取り囲む外周壁部を備え、
M 前記水落とし部は、前記外周壁部の後端よりも前方に設けられる
J 便器装置。」
第4 証拠方法、特許異議申立理由の概要、及び決定の予告に記載した取消理由の概要
1 証拠方法
申立人が提示する証拠は、以下のとおりである。なお、以下では甲第1号証等を、「甲1」等という。
(1)申立書に添付して提出された証拠
甲1:国際公開第00/66841号
(2)令和7年9月30日付け意見書に添付して提出された証拠
甲2:特開2008-267026号公報
甲3:特開2013-238106号公報
2 特許異議申立理由の概要
申立人が申立書において主張する申立理由の概要は、次のとおりである。なお、本件特許異議申立て時点の請求項1に係る発明を、以下「本件訂正前発明1」という。
(1)本件訂正前発明1について、甲1を主たる証拠とした新規性欠如
本件訂正前発明1は、本件出願より前に公開された、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、本件訂正前発明1に係る特許は、同条1項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件訂正前発明1に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)本件訂正前発明1について、甲1を主たる証拠とした進歩性欠如
本件訂正前発明1は、本件出願より前に公開された、甲1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前発明1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件訂正前発明1に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 決定の予告に記載した取消理由の概要
先の取消理由通知書(令和7年6月16日付け取消理由通知書(決定の予告))に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
・令和7年1月31日提出の訂正請求書により訂正された本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正前発明1」という。)について、甲1を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如
本件訂正前発明1は、本件出願より前に公開された、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、本件訂正前発明1に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
本件訂正前発明1は、本件出願より前に公開された、甲1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前発明1に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第5 証拠について
1 甲1
(1)甲1の記載
甲第1号証には、以下の記載がある(下線は、当審で付加した。)。
日本語訳は、申立人が提出した訳文を参考に当審が作成した。
ア 1頁5-14行
「
[図:0001433062000004.jpg]
」
(日本語訳)
「
[図:0001433062000005.jpg]
」
イ 4頁31行-5頁11行
「
[図:0001433062000006.jpg]
[図:0001433062000007.jpg]
」
(日本語訳)
「
[図:0001433062000008.jpg]
」
ウ 5頁13-18行
「
[図:0001433062000009.jpg]
」
(日本語訳)
「
[図:0001433062000010.jpg]
」
エ 5頁20-27行
「
[図:0001433062000011.jpg]
」
(日本語訳)
「
[図:0001433062000012.jpg]
」
オ 5頁29行-6頁15行
「
[図:0001433062000013.jpg]
[図:0001433062000014.jpg]
」
(日本語訳)
「
[図:0001433062000015.jpg]
[図:0001433062000016.jpg]
」
カ 6頁17行-7頁12行
「
[図:0001433062000017.jpg]
[図:0001433062000018.jpg]
」
(日本語訳)
「
[図:0001433062000019.jpg]
」
キ 7頁14行-8頁27行
「
[図:0001433062000020.jpg]
[図:0001433062000021.jpg]
」
(日本語訳)
「
[図:0001433062000022.jpg]
[図:0001433062000023.jpg]
」
ク 12頁5-26行
「
[図:0001433062000024.jpg]
」
(日本語訳)
「
[図:0001433062000025.jpg]
[図:0001433062000026.jpg]
」
ケ Fig.1
「
[図:0001433062000027.jpg]
」
上記Fig.1から、下記の点が看取できる。
(ア)ノズル12が、ボウル8における排水路(下記コ(ア)参照)の終端部に位置している点。
(イ)上記水が落下する部位は、ボウル8における排水路の終端部に位置しており、また、排水路のハッチングが、ボウル8が指す部位のハッチングと同じであることから、前記ボウル8における排水路がボウル8の一部である点。
(ウ)ノズル12が外周においてゴム弾性シールスリーブ13を介して排水ベンド14の端部に接続されている点。
(エ)排水ベンド14の上側のほぼ水平な端部15に連続して下流側に向かって延びる部位が形成され、当該部位が、ノズル12の円形の開口部12aよりも下流に位置していて、内側に丸みを帯びた角部を形成して、下方に屈曲し、垂直領域17に通じている点。
(オ)上記水が落下する部位は、ボウル8から後方に突出するノズル12の後端であり、ボウル8を支持するフレーム6より後方に位置する点。
コ Fig.3~Fig.5
「
[図:0001433062000028.jpg]
」
上記Fig.3から以下の点が看取できる。
(ア)洗面器型内部34の底部において、左上に向かう洗面器型内部34の外面に沿って上昇し、その後、左側に略水平に伸びるボウル8における排水路が接続されている点。
(イ)上記ボウル8における排水路には、水11が貯留する部位が形成されている点。
上記Fig.4から以下の点が看取できる。
(ウ)洗面器型内部34の内部に矢印23が示されている場合に洗面器型内部34の外面に沿って上昇するボウル8における排水路及び排水ベンド14の内部において、流れ27が発生している点。
サ 上記キ及び上記コ(ウ)から、以下の点が認められる。
・洗浄プロセスにおいて、水がノズル9aを通って洗面器型内部34に流入すると、水位24が上昇し、上記ボウル8における排水路及び排水ベンド14の内部において、流れ27が発生する点。
シ 上記キ及び上記コのFig.1及びFig.3から、以下の点が認められる。
(ア)オーバーフローエッジ28は、ボウル8における排水路のノズル12の内側の下面に形成される点。
(イ)オーバーフローエッジ28の上端は、ノズル12の後端の内側の下面となっていて、オーバーフローエッジ28の上端からノズル12に接続される排水ベンド14内に向かって水11が落下する点。
(2)甲第1号証に記載された発明
上記(1)より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、上記(1)において参酌した日本語訳の「便器8」は、「ボウル8」の誤記、「臭気トラップ8」は、「臭気トラップ10」の誤記と解し、また「出口ベンド14」及び「排水ベンド14」の記載については、以下では、「排水ベンド14」により統一して記載することとした。
(甲1発明)
「セラミック製またはプラスチック製のボウル8を備えた便器を含むトイレシステム1において、(上記(1)イ)
タンク2が、ボウル8を洗浄するために設けられており、(上記(1)ウ)
タンク2から流出した洗浄水は、ボウル8の上縁にある洗浄チャネル9に流れ込み、最終的にノズル9aを経由してボウル8の洗面器型内部34に流れ込み、(上記(1)エ)
洗面器型内部34の底部において、左上に向かう洗面器型内部34の外面に沿って上昇し、その後、左側に略水平に伸びるボウル8における排水路が接続されており、(上記(1)コ(ア))
上記ボウル8における排水路には、水11が貯留する部位が形成されており、(上記(1)コ(イ))
ボウル8の後壁8a上には、自由断面Aを有し、流れ方向で見て臭気トラップ10の後ろに配置される円筒状のノズル12が形成されており、ノズル12の円形の開口部12aは、排水ベンド14に通じており、(上記(1)オ)
ノズル12が、ボウル8における排水路の終端部に位置しており、(上記(1)ケ(ア))
排水ベンド14は、上側のほぼ水平な端部15でノズル12に接続されており、(上記(1)オ)
ゴム弾性シールスリーブ13は、排水ベンド14に対してノズル12をシールしていて、ノズル12が外周においてゴム弾性シールスリーブ13を介して排水ベンド14に接続されており、(上記(1)オ、ケ(ウ))
臭気トラップ10は、水11で満たされ、水11のレベル24は、オーバーフローエッジ28によって決定されるものであり、(上記(1)キ)
オーバーフローエッジ28は、ボウル8における排水路のノズル12の内側の下面に形成され、(上記(1)シ(ア))
オーバーフローエッジ28の上端は、ノズル12の後端の内側の下面となっていて、オーバーフローエッジ28の上端からノズル12に接続される排水ベンド14内に向かって水11が落下し、(上記(1)シ(イ))
洗浄プロセスにおいて、水がノズル9aを通って洗面器型内部34に流入すると、水位24が上昇し、上記ボウル8における排水路及び排水ベンド14の内部において、流れ27が発生し、(上記(1)サ)
上記水11が落下する部位は、ボウル8における排水路の終端部に位置しており、前記ボウル8における排水路がボウル8の一部であり、(上記(1)ケ(イ))
排水ベンド14の上側のほぼ水平な端部15に連続して下流側に向かって延びる部位が形成され、当該部位が、ノズル12の円形の開口部12aよりも下流に位置していて、内側に丸みを帯びた角部を形成して、下方に屈曲し、垂直領域17に通じており、(上記(1)ケ(エ))
上記水が落下する部位は、ボウル8から後方に突出するノズル12の後端であり、ボウル8を支持するフレーム6より後方に位置する、(上記(1)ケ(オ))
トイレシステム1。」
2 甲2
(1)甲2の記載
ア「【0020】
洋風便器本体1は、床面Fに載置される外周壁1Wと、外周壁1W内に形成された便鉢2とを備えている。また、洋風便器本体1は、外周壁1W内で便鉢2より後方に形成された収納空間1Sを備えている。
【0021】
外周壁1Wは、収納空間1Sを区画する後部壁10を有している。後部壁10は収納空間1Sの左右側壁11及び後側壁12から構成されている。後側壁12は、図3に示すように、床面Fから略垂直に立ち上がる下部立壁12dと、下部立壁12dの上端から外方へ略水平に延びる水平壁12hと、水平壁12hの外端から略垂直に立ち上がる上部立壁12uとから構成されている。下部立壁12dは下方に向かって外方に傾斜している。上部立壁12uは上方に向かって外方に傾斜している。
【0022】
図1~図3に示すように、下部立壁12dの上端と水平壁12hと上部立壁12uとに跨り、収納空間1Sを外部に連通させる開口20が貫設されている。図3に示すように、この開口20を洋風便器本体1の後方から目視した場合、下方から目視した場合の開口20の縦方向の最大寸法Lより、水平方向から目視した場合の開口20の縦方向の寸法Mの方が小さい。さらに、この寸法Mより、上方から目視した場合の開口20の縦方向の寸法Sの方がさらに小さい。このため、この洋風水洗式便器を使用する使用者は、開口20を上方から目視するため、開口20が小さく認識される。また、開口20から収納空間1Sの内部は見え難くなっている。
・・・
【0026】
吸気装置40は、水封部4の下流側に連通され、便器排水路5を形成する接続管6に接続される吸引タンク41と、吸引タンク41に開閉弁43を介して接続され、機械式ポンプにより負圧を発生する負圧発生装置42とを有している。吸気装置40は、便器洗浄が実行されると、適切なタイミングで開閉弁43が開閉され便器排水路5から空気を吸引する。これにより、便器排水路5内を早期に洗浄水で満水にしてサイホン作用を発生させることができる。吸気装置40は収納空間1Sの上部空間内に収納されている。この収納空間1Sの上部空間は、上方に向かって外方に傾斜する上部立壁12uにより広く形成されているため、良好に吸気装置40を収納することができている。」
イ 図2
「
[図:0001433062000029.jpg]
」
ウ 図3
「
[図:0001433062000030.jpg]
」
3 甲3
(1)甲3の記載
ア「【0013】
<実施例1>
図1~図3に示すように、実施例1の洋風便器では、側壁1が床面Fに載置される。側壁1内には、便鉢2が形成されている。側壁1は、便鉢2の前方部を覆う前壁部1Aと、前壁部1Aの左右両端から後方に略直線状に延びる左右壁部1Bと、各左右壁部1Bの後端を連結する後壁部1Cとから構成されている。
【0014】
前壁部1A及び各左右壁部1Bの前側部分と、便鉢2との上端に天板3が連結されている。この天板3は、便鉢2の鉢面2Aを上方に開放する開口部3Aと、開口部3Aの後方に設けられ、便器装置4が載置される載置面3Bとを有している。
【0015】
天板3の後端より後方に延びる各左右壁部1Bの後側部分と後壁部1Cとに囲まれ、上下方向に貫通した収納空間Sが形成されている。収納空間Sの上部開口8の周縁は、天板3の後端縁と、各左右壁部1Bの後側部分の上端と、後壁部1Cの上端とから形成されている。天板3の上面と、天板3の後端より後方の側壁1(各左右壁部1Bの後側部分及び後壁部1C)の上面とは面一に形成されている。
【0016】
この洋風便器の上面には、便器装置4が載置可能である。便器装置4は、機能装置が収納された収納ケース5と、収納ケース5の前方上面に回動可能に軸支された便座及び便蓋6とを有している。収納ケース5には、局部洗浄装置、脱臭装置、乾燥装置、空気清浄装置、音楽再生装置、人体検知装置及び便器洗浄装置等の少なくとも一つ以上の機能装置が収納されている。収納ケース5は、天板3の載置面3Bと、天板3の後端より後方の側壁1(各左右壁部1Bの後側部分及び後壁部1C)の上面とに支持され、取り付けられる。
【0017】
収納空間S内には、便鉢2の下端に連結され、便鉢2と一体に形成された便器排水管7の排水口7Aが開口している。この洋風便器を床面Fに据え付ける際には、図示しない排水接続管により、排水口7Aと床面Fに引き出された図示しない排水管の接続口とが連結される。この排水接続管は収納空間S内に収納される。また、収納空間S内には、排水接続管から空気を吸引する図示しない吸気装置が収納される。この収納空間Sの上部開口8は、便器装置4が載置されると、収納ケース5により閉鎖される。」
イ 図1
「
[図:0001433062000031.jpg]
」
ウ 図2
「
[図:0001433062000032.jpg]
」
エ 図3
「
[図:0001433062000033.jpg]
」
4 周知技術
甲2の段落【0020】、【0026】、及び、上記2の図2~3を参照すると、甲2には、洋風便器本体1において、便鉢2を取り囲む外周壁1Wを備え、外周壁1W内で便鉢2より後方であって、外周壁1Wが有する後側壁12より前方に形成される収納空間1Sに、便器排水路5を形成する接続管6を配置した点が記載され、また、甲3の段落【0013】、【0017】、及び、上記3の図1~3を参照すると、甲3には、洋風便器において、前壁部1A、左右壁部1B及び後壁部1Cとから構成される側壁1を備え、側壁1内で便鉢2より後方であって、後壁部1Cより前方に、排水接続管(図示は省略されている)を収納する収納空間Sが形成されている点が記載されている。
そうすると、便器本体が、便鉢部を取り囲む外周壁を備え、外周壁の後側壁より前方の収納空間内に排水管との接続部を配置することは、周知の技術(以下、「周知技術」という。)といえる。
第6 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 本件発明1の<構成A>及び<構成J>に関して
甲1発明の「洗面器型内部34」及び「ボウル8」は、本件発明1の「便鉢部」及び「便器本体」に、それぞれ相当する。
また、甲1発明において、「ボウル8」が「洗面器型内部34」を有していることは明らかである。
よって、甲1発明の「洗面器型内部34」を有する「ボウル8」は、本件発明1の「便鉢部を有する便器本体」に相当する。
また、本件発明1の「便器装置」に関して、本件明細書の段落【0009】には、「便器装置10は、便鉢部12を有する便器本体14と、便鉢部12に接続される排水管路16と、便器本体14に液体を供給する液体供給装置18と、便器本体14に取り付けられる便座20及び便蓋22とを備える。」と記載されており、「便器装置10」は、「便鉢部12を有する便器本体14」に加えて、「便鉢部12に接続される排水管路16」及び「便器本体14に液体を供給する液体供給装置18」等を備えたものとされている。
本件発明1の「便器装置」について上記本件明細書記載をふまえて対比すると、甲1発明において、「ボウル8」に加えて、「排水ベンド14」及び「タンク2」等を備えた「トイレシステム1」は、本件発明1の「便器装置」に相当する。
イ 本件発明1の<構成B>に関して
甲1発明の「ボウル8の洗面器型内部34の底部」において「接続され」る「ボウル8における排水路」は、「洗面器型内部34」が狭まって「ボウル8における排水路」となるとともに、「洗面器型内部34の外面に沿って」いて、水が流れていることから、管路となっていることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「ボウル8の洗面器型内部34の底部」において「接続され」る「ボウル8における排水路」は、本件発明1の「前記便鉢部の底部に接続される排水管路」に相当する。
ウ 本件発明1の<構成C>に関して
(ア)甲1発明の、上記イのとおり管路となることが明らかな「上記ボウル8における排水路」は、当該排水路を管路とするための構成部材を備えていることは明らかである。
よって、甲1発明において、「ボウル8における排水路」において明らかに備えている管路とするための構成部材は、本件発明1の「排水管路に設けられ」る「管路構成部材」に相当する。
(イ)甲1発明の「水11」は、貯留することにより、「上記ボウル8における排水路」を封水していることは明らかであり、また、甲1発明の「上記ボウル8における排水路」が備える管路とするための構成部材において、「水11が貯留する部位」が設けられていることは明らかである。
そうすると、甲1発明において、「水11が貯留する部位が形成されて」いる「上記ボウル8における排水路」が備える管路とするための構成部材は、本件発明1の「封水貯留部が設けられる管路構成部材」に相当する。
エ 本件発明1の<構成D>に関して
甲1発明の「上記ボウル8における排水路」は、その「終端部」に「ノズル12」が位置しており、当該「ノズル12」は、「外周においてゴム弾性シールスリーブ13を介して排水ベンド14の端部に接続」されている。
また、甲1発明の「排水ベンド14」は、本件発明1の「配管部材」に相当する。
そうすると、甲1発明の「上記ボウル8における排水路」の「終端部」の「ノズル12」の「外周」は、「排水ベンド14」が「接続」される部位といえるから、本件発明1の「配管部材が接続される配管接続部」に相当する。
また、上記ウ(ア)のとおり、甲1発明の「上記ボウル8における排水路」は、当該排水路を管路とするための構成部材を有しているといえるところ、「ノズル12」の「外周」は、この排水路を管路とするための構成部材に設けられていることは明らかである。
以上を総合すると、甲1発明において、「上記ボウル8における排水路」の排水路を管路とするための構成部材に設けられていて、「排水ベンド14」が「接続」される「ノズル12」の「外周」は、本件発明1の「前記管路構成部材に設けられ、配管部材が接続される配管接続部」に相当する。
オ 本件発明1の<構成E>に関して
甲1発明の「オーバーフローエッジ28」は、「ボウル8における排水路のノズル12の内側」に形成されることから、「ボウル8における排水路」を管路とするための構成部材の内側に形成されることは明らかである。
また、甲1発明の「オーバーフローエッジ28」は、「臭気トラップ10」を満たす「水11」の「レベル24」を「決定」するものであるから、「臭気トラップ10」における「水11」を流す水路の頂部を有していることは明らかである。
そうすると、甲1発明において、「ボウル8における排水路のノズル12の内側」に明らかに形成される「オーバーフローエッジ28」は、本件発明1の「前記配管接続部の内側に設けられ、前記封水貯留部の水路形成面の頂部」に相当する構成を有しているといえる。
カ 本件発明1の<構成F>に関して
本件発明1の「内下面」に関して、本件明細書の段落【0126】には、「本実施形態の第1非相似面328は、水路形成面310の内下面に設けられ」、「水路形成面310の内下面には、水路頂部314を通る特定断面において、水平面と平行な平坦面330が設けられる」の記載がある。この点は、図12における、「第1非相似面328」が、「水路形成面310」の内面のうち下方に位置する面に形成されていること、また「水平面と平行な平坦面330」が、同じく「水路形成面310」の内面のうち下方に位置する面に形成されていることを指していると解される。
「内下面」について、上記本件明細書の記載をふまえて、水路形成面のうち下方に位置する面の意味と解して、対比する。
甲1発明の「オーバーフローエッジ28の上端」が、「オーバーフロー」させる部位であることから、「臭気トラップ10」に満たされる「水11」の最高の水位定めるとともに、「水11」が溢れる部位であることは明らかである。
また、甲1発明の「オーバーフローエッジ28の上端」となる「ノズル12の後端の内側の下面」は、「ボウル8における排水路」における水路形成面のうち下方に位置する面であるといえる。
なお、本件発明1において「頂部」は、「水路形成面」のうちの下面に位置する面を構成するものと解されるから、「頂部の内下面」は、実質的に「内下面」を意味するものと解される。
そうすると、甲1発明の「オーバーフローエッジ28の上端」が、「ノズル12の後端の内側の下面」となっていることは、本件発明1の水路形成面の「前記頂部の内下面には、前記配管接続部の内側において、前記封水貯留部に貯留される封水の最高水位を定める溢れ縁が設けられ」ることに相当する。
キ 本件発明1の<構成G>に関して
甲1発明は、「洗浄プロセスにおいて、水がノズル9aを通って洗面器型内部34に流入すると、水位24が上昇し、洗面器型内部34の外面に沿って上昇する排水路及び排水ベンド14の内部において、流れ27が発生し」ているから、甲1発明の「上記ボウル8における排水路」において備えている管路構成部材(「管路構成部材」)及び「排水ベンド14」(「配管部材」)の内部には、洗面器型内部34(「便鉢部」)内から排出される水が通る内部水路が形成されていることは明らかである。
よって、甲1発明は、本件発明1の「前記管路構成部材及び前記配管部材の内部には前記便鉢部内から排出される水が通る内部水路が形成され」るという構成に相当する構成を有しているといえる。
ク 本件発明1の<構成H>に関して
上記オのとおり、甲1発明の「オーバーフローエッジ28」は、本件発明1の「前記配管接続部の内側に設けられ、前記封水貯留部の水路形成面の頂部」に相当する構成を有している。
また、甲1発明の「オーバーフローエッジ28の上端」において、「ノズル12に接続される排水ベンド14内に向かって水11が落下」することは、本件発明1の「前記内部水路において下流側に向かって低くなる水落とし部が設けられ」ることに相当する。
そうすると、甲1発明の「オーバーフローエッジ28の上端」において、「ノズル12に接続される排水ベンド14内に向かって水11が落下」することは、本件発明1の「前記頂部には、前記内部水路において下流側に向かって低くなる水落とし部が設けられ」る、との構成を有していると言える。
ケ 本件発明1の<構成I>に関して
本件発明1は、「前記管路構成部材に設けられ、配管部材が接続される配管接続部」(構成D)「を備え」ていることから、「配管接続部」で接続される「配管部材」は別として、「便鉢部」から「管路構成部材」までは、「便器本体」側の部材であることが理解できる。
上記の点をふまえると、本件発明1の(構成I)のうち「前記管路構成部材を構成する前記便器本体により構成される」の部分については、「管路構成部材」が「便器本体」側の部材であることを示していると理解でき、さらに「前記水落とし部は、前記管路構成部材を構成する前記便器本体により構成される」(構成I)については、「水落とし部」が、「便器本体」の一部である「管路構成部材」により構成されている趣旨であると理解できる。
ここで、本件明細書の段落【0117】をみると「便器装置10の第4の工夫点を説明する。図12、図13を参照する。排水管路16は、第2管路構成部材300と、第2配管部材302とを備える。本実施形態の第2管路構成部材300は便器本体14であり、第2配管部材302は接続配管50である。」との記載があり、「第2管路構成部材300は便器本体14であること」が示されている。このことから、「第2管路構成部材300」は、「便器本体14」と区別されるものではないと理解でき、また、「第2管路構成部材300」との記載から、「便器本体14」における「部材」(一部分)と理解でき、「第2管路構成部材300」は、部材として「便器本体14」を構成するもの(あるいは、「便器本体14」の一部分であること)と理解できる。このような理解は、上記の本件発明1の構成Iについての理解とも整合する。
上記理解に基づいて以下、検討する。
甲1発明において、「前記ボウル8における排水路がボウル8の一部であ」ることから、「前記ボウル8における排水路」を構成する部材(「管路構成部材」)が、「ボウル8」(「便器本体」)の部材となっているといえる。また、甲1発明の「ボウル8における排水路」が「ボウル8」の一部であって、「ボウル8における排水路の終端部」に「水11が落下する」部位(水落とし部)が位置していることから、「水が落下する」部位が、「ボウル8」において形成されているといえる。
そうすると、甲1発明において、「水が落下する」部位が、「ボウル8」において形成されていて、「前記ボウル8における排水路」を構成する部材(「管路構成部材」)が、「ボウル8」の一部となっていていることは、本件発明1において、「前記水落とし部は、前記管路構成部材を構成する前記便器本体により構成され」ることに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「便鉢部を有する便器本体と、
前記便鉢部の底部に接続される排水管路と、
前記排水管路に設けられ、封水貯留部が設けられる管路構成部材と、
前記管路構成部材に設けられ、配管部材が接続される配管接続部と、
前記配管接続部の内側に設けられ、前記封水貯留部の水路形成面の頂部と、を備え、
前記頂部の内下面には、前記配管接続部の内側において、前記封水貯留部に貯留される封水の最高水位を定める溢れ縁が設けられ、
前記管路構成部材及び前記配管部材の内部には前記便鉢部内から排出される水が通る内部水路が形成され、
前記頂部には、前記内部水路において下流側に向かって低くなる水落とし部が設けられ、
前記水落とし部は、前記管路構成部材を構成する前記便器本体により構成される便器装置。」
(相違点1)
本件発明1は、「前記便器本体は、前記便鉢部を取り囲む外周壁部を備え、前記水落とし部は、前記外周壁部の後端よりも前方に設けられる」ものであるのに対して、甲1発明は、「便鉢部を取り囲む外周壁部を備え」ていることは特定されておらず、「前記水落とし部は、前記外周壁部の後端よりも前方に設けられる」ことも特定されていない点。
(2)判断
ア 上記相違点1は、実質的な相違点であることから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。
イ 相違点1について検討する。
ここで、上記第5の4で認定した周知技術が備える、「便器本体が、便鉢部を取り囲む外周壁を備え」る構成は、上記相違点1に係る本件発明1の構成のうち、「便器本体は、前記便鉢部を取り囲む外周壁部を備え」る構成に、相当する。また、同周知技術が備える、「排水管との接続部」を「外周壁の後側壁より前方の収納空間内」に配置する構成は、上記相違点1に係る本件発明1の構成のうち、「前記水落とし部は、前記外周壁部の後端よりも前方に設けられる」構成と、排水に関する部位が「外周壁部の後端よりも前方に設けられる」点で、類似する。
しかしながら、甲1発明に、上記周知技術のうち「便器本体が、便鉢部を取り囲む外周壁部を備え」る構成を適用し、便鉢部を取り囲む外周壁部を備えることができたとしても、外周壁部を、フレーム6より後ろに突出するノズル12の後端より後ろまで囲むように設ける動機付けはないから、ノズル12の後端である水が落下する部位を、外周壁部の後端よりも前方に設けることが想到容易であったとはいえない。
また、甲1発明において、上記周知技術が備える「便器本体が、便鉢部を取り囲む外周壁を備え」る構成、及び「排水管との接続部」を「外周壁の後側壁より前方の収納空間内」に配置する構成の両構成を適用するとしても、その場合には、外周壁部によってボウル8及び排水ベンド14等を全て囲むために、フレーム6によってボウル8が支持される甲1発明の構成、及びフレーム6よりも後ろに突出するノズル12に排水ベンド14が接続される甲1発明の構成を変更する必要があり、また接続部を含む配管全体もコンパクトにすることが自然であるから、ノズル12の後端が水が落下する部位となる甲1発明の構成を維持したままで、上記周知技術が備える上記の両構成を適用する動機付けがあったとはいえない。
したがって、甲1発明において、たとえ上記周知技術を考慮しても、上記相違点1に係る本件発明1の構成に至ることが、当業者にとって容易であったとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立人の主張について
申立人は、甲1には、ボウル8が、支持フレーム6に固定して設置するのみならず、壁接続(壁掛け式)も可能であると記載され、ボウル8を床面に設置し、建物の壁35に近づけて設置することが記載され、また、「便鉢部を外部から隠蔽するように外周壁部を備える便器装置であって、かつ便鉢部、封水貯留部、配管接続部等を含む内部水路が外周壁部の後端よりも前方に設けられた便器装置」自体、本件出願前に周知であるから、甲1の便器装置において、外周壁部によって便鉢部(ボウル8)を取り囲むように設け、便鉢部等を外部から隠蔽し、意匠性の向上、埃等のよごれの抑制等を考慮して、外周壁部を便鉢部の前方、左右両側を経由して便鉢部よりも後方、配管接続部等の内部水路を含めて取り囲むように設けることは、当業者であれば、当然に思い至る設計事項であり、結果として、便鉢部の頂部からの水落とし部は、外周壁部の後端よりも前方に設けられることとなる旨を、主張している。(令和7年9月30日付け意見書)
しかしながら、上記(2)で説明したとおり、甲1発明において、たとえ周知技術を考慮しても、上記相違点1に係る本件発明の構成に至ることが容易であったとはいえない。
よって、申立人の主張を採用することはできない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る特許は、決定の予告に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことができない。
さらに、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700958