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特許異議申立

2025-700253

ニッケル粉末、防カビ剤、塗料、部材、樹脂組成物及び樹脂成形品

審判番号
2025-700253
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-002887
登録番号
7543455
請求日
2025年02月28日
審決日
2025年06月27日
公報発行日
2025年08月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社神戸製鋼所
  • 【権利者代理人】池田 義典
  • 【権利者代理人】天野 一規
  • 【権利者代理人】藤本 勝誠
  • 【権利者代理人】石田 耕治
  • 【異議申立人】木村 知子
審判長/審判官
  • 審判長 井上 猛
  • 審判官 石川 雄太郎
  • 審判官 佐藤 陽一
分類
P1651.113-Y (B22F) / P1651.121-Y (B22F)
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特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
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特許第7543455号発明「ニッケル粉末、防カビ剤、塗料、部材、樹脂組成物及び樹脂成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7543455号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7543455号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和 5年 1月12日の出願(特願2023-2887号。以下「本願」という。)であって、令和 6年 8月23日にその特許権の設定登録がなされ、同年 9月 2日にその特許掲載公報が発行されたものである。 その後、令和 7年 2月28日に、請求項1~8(全請求項)に係る特許に対し、特許異議申立人である木村 知子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~8に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1~8に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」といい、これらを総称して「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 「【請求項1】 ニッケル又はニッケル合金を主成分とするニッケル粉末であって、 水素元素を含み、 ニッケル元素の含有量が70質量%以上であり、 当該ニッケル粉末の全質量に対する水素元素の含有量が0.050質量%以上1質量%以下であり、 ガス吸着法により測定される比表面積が1m2/g以上10m2/g以下であるニッケル粉末。 【請求項2】 ガス吸着法により測定される比表面積が9m2/g以下である請求項1に記載のニッケル粉末。 【請求項3】 当該ニッケル粉末の平均粒径が0.2μm以上20μm以下である請求項1または請求項2に記載のニッケル粉末。 【請求項4】 請求項1に記載のニッケル粉末からなる防カビ剤。 【請求項5】 請求項1に記載のニッケル粉末を含有する塗料。 【請求項6】 請求項5に記載の塗料を表面の少なくとも一部に有する部材。 【請求項7】 請求項1に記載のニッケル粉末を含有する樹脂組成物。 【請求項8】 請求項7に記載の樹脂組成物を有する樹脂成形品。」 第3 特許異議の申立ての理由の概要 申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証~甲第4号証を提出し、以下の申立理由1、2により、本件特許の請求項1~8に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。 1 申立理由1(新規性) 本件発明1~8は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性) 本件発明1~8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項又は技術常識に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 証拠方法 ・甲第1号証:特開2003-64401号公報 ・甲第2号証:国際公開第2021/020522号 ・甲第3号証:特開2021-188087号公報 ・甲第4号証:国際公開第2011/037150号 第4 当審における判断 以下に述べるように、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性) (1)甲第1号証に記載された発明 本願の出願前に公知となった甲第1号証には、「抗菌・防かび性に優れたNi系粉末およびその製法、並びに該Ni系粉末を含む抗菌・防かび性に優れた材料、樹脂および部材」(発明の名称)に関する記載があり、その請求項1の記載を前提に、特に、段落【0068】の表1、試験No.8のNi系粉末に着目すると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> NiまたはNi合金部分が純Niであり、水素含量が10,000ppmであるNiまたはNi合金粉末の表面に、P含有化合物として、Pd-5質量%Pが付着しており、該Pd-5質量%Pの付着量が粉末全体中に占める比率で0.1質量%であり、且つ該Pd-5質量%P中のPの合計含量が、粉末全体中に占める比率で0.05質量%である抗菌・防かび性に優れたNi系粉末。 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲第1号証の段落【0038】には、P,S含有化合物の付着処理が施されたNi系粉末に水素を含有させた後のNi系粉末について、「得られるNi系粉末中の水素含有量を1~10,000ppmの範囲に制御できる。」と記載されているから、甲1発明のNi系粉末における水素含量は、Ni系粉末全体中に占める比率であると認められる。また、Ni系粉末に含まれるP含有化合物の比率が、「質量%」で記載されていることから、甲1発明のNi系粉末における水素含量も質量割合であると認められる。そうすると、甲1発明のNi系粉末における水素含量は、10,000質量ppm(1質量%)であるから、甲1発明のNi系粉末におけるNiの含有量は、NiまたはNi合金部分が純Niであることを考慮すると、100-(1(水素)+0.1(P含有化合物))=98.9質量%程度であると認められる。そして、このNi含有量であれば、Niは、Ni系粉末における主成分であるといえる。 一方、本件発明1のニッケル粉末におけるニッケル元素の含有量は、ニッケル粉末の全質量に対するニッケル元素の含有量である(本件明細書の段落【0029】)。 そうすると、甲1発明のNi系粉末が、98.9質量%程度のNi含有量のNi系粉末であることは、本件発明1の「ニッケル又はニッケル合金を主成分とするニッケル粉末であって、」「ニッケル元素の含有量が70質量%以上であ」る、「ニッケル粉末。」に相当する。 (イ)甲1発明のNi系粉末の「水素含量が10,000ppm」であることは、上記(ア)で述べたとおり、Ni系粉末全体中に占める水素の含有量が、10,000質量ppm(1質量%)であることを意味するから、本件発明1のニッケル粉末が、「水素元素を含み、」「当該ニッケル粉末の全質量に対する水素元素の含有量が0.050質量%以上1質量%以下」であることに相当する。 (ウ)以上から、本件発明1と甲1発明とは、 「ニッケル又はニッケル合金を主成分とするニッケル粉末であって、 水素元素を含み、 ニッケル元素の含有量が70質量%以上であり、 当該ニッケル粉末の全質量に対する水素元素の含有量が0.050質量%以上1質量%以下であるニッケル粉末。」である点で一致するとともに、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1のニッケル粉末は、「ガス吸着法により測定される比表面積が1m2/g以上10m2/g以下」であるのに対し、甲1発明のNi系粉末は、「ガス吸着法により測定される比表面積が1m2/g以上10m2/g以下」であるのか不明である点。 イ 判断 (ア)相違点1について a 相違点1が実質的な相違点であるかについて (a)甲第1号証には、Ni系粉末の「ガス吸着法により測定される比表面積」の具体的な値が記載されていないから、甲1発明のNi系粉末における、ガス吸着法により測定される比表面積の値は不明である。また、技術常識を考慮しても、甲1発明のNi系粉末のガス吸着法により測定される比表面積の値が「1m2/g以上10m2/g以下」であるかは不明である。 よって、相違点1は、実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。 (b)申立人は、特許異議申立書の第12ページ第16~30行において、「本件明細書の段落[0037]に、「当該ニッケル粉末の比表面積を調整する方法は、特に限定されないが、例えばジェットミル、ローラーミル、ハンマーミル、ピンミル、回転ミル、振動ミル、遊星ミル、アトライター、ビーズミル等の粉砕機による処理時間の制御のほか、酸などの水溶液への浸漬・溶出による方法を用いることができる。なお、粉砕機による粉砕は乾式であっても、湿式であってもよい。」とあるように、本件特許発明においては、比表面積の調整に特別の処理を行っておらず、通常の粉砕処理による調整を行うことのみが記載されている。また、この粉砕処理によって得られるニッケル粉末の平均粒径も「0.2μm~20μm」([請求項3]参照)となっている。 この粉砕処理について、甲1発明では、甲1の明細書段落[0057]に、「試験に用いたNi系粉末は、溶製後、平均粒径が約1μmとなる様に粉砕して使用した。・・・」とあるように、本件特許発明と同様に、粉砕によってのみNi粉末を調整している。そして、得られた粉末の平均粒径も同等である。 したがって、甲1発明の構成cの「比表面積」は、実質的に同一であり、両者に相違はない。」と主張する。 しかしながら、申立人が摘記した本件明細書の段落【0037】には、「ニッケル粉末の比表面積を調整する方法」として、「粉砕機による処理時間」を制御することなどが記載されているのであって、ニッケル粉末の平均粒径が「0.2μm~20μm」の範囲内であれば、比表面積の値が「1m2/g以上10m2/g以下」の範囲内になることが記載されているわけではないから、甲1発明のNi系粉末の平均粒径が約1μmであるとしても、比表面積の値が「1m2/g以上10m2/g以下」の範囲内になるかどうかは不明である。 次に、具体的な製造方法について検討すると、本件明細書の段落【0059】には、「No.2では、水アトマイズ法により原料ニッケル粉を調製した。その後、上記原料ニッケル粉を、ビーズミル粉砕機を用いて比表面積が5m2/gになるまで湿式粉砕した。」と記載されている。一方、申立人が摘記した甲第1号証の明細書の段落【0057】には、「試験に用いたNi系粉末は、溶製後、平均粒径が約1μmとなる様に粉砕して使用した。」と記載されている。 本件発明1のニッケル粉末の製造方法と、甲1発明のNi系粉末の製造方法とは、粉砕前の工程が、いずれも同一であるとはいえないから、具体的な製造方法を考慮しても、甲1発明のNi系粉末の比表面積の値は、本件発明1のニッケル粉末の比表面積の値と実質的に同一であるとはいえず、不明である。 以上のとおりであるから、申立人の上記主張は採用できない。 b 相違点1の容易想到性について (a)甲第2~4号証には、以下の事項が記載されている。 ・甲第2号証(国際公開第2021/020522号)の記載事項 「[請求項1] 略球状の粒子形状を有し、 数平均粒径が0.03μm~0.4μmであり、 表面に水酸化ニッケルの塩基性塩を主成分とする酸化被膜を備え、 粒径が0.8μmを超える、板状水酸化ニッケルを主成分とする粗大粒子の含有量が200質量ppm以下であり、 粒径が1.2μmを超える、板状水酸化ニッケルを主成分とする粗大粒子の含有量が100質量ppm以下である、ニッケル粉末。」 「[請求項3] ニッケル粉末の比表面積に対する酸素含有量が0.35質量%・g/m2以上であり、ニッケル粉末の比表面積に対する硫黄含有量が0.04質量%・g/m2以下である、請求項1または2に記載のニッケル粉末。」 「[0001] 本発明は、積層セラミック部品の電極材として用いられる高性能なニッケル粉末およびニッケル粉末の製造方法に関し、ニッケル粉末と水とを少なくとも含有するニッケル粉含水ケーキを経由して製造されるニッケル粉末およびニッケル粉末の製造方法、特に湿式法により得られる安価で高性能なニッケル粉末およびニッケル粉末の製造方法に関する。」 「[0045] ニッケル粉末に対する硫黄含有量は、多くなると硫黄に起因する内部電極欠陥が発生することがあるため、好ましくはニッケル粉末の比表面積(m2/g)に対して0.1質量%・g/m2以下、より好ましくは0.07質量%・g/m2以下、さらに好ましくは0.04質量%・g/m2以下である、例えば平均粒径0.2μmのニッケル粉末だと比表面積は4m2/g程度のため、その硫黄含有量は、好ましくは0.40質量%以下程度、より好ましくは0.28質量%以下程度、さらに好ましくは0.16質量%以下程度である。硫黄含有量の下限は特に限定されることはなく、含有量の分析で用いられる分析機器、例えば燃焼法による硫黄分析装置やICP分析装置により検出限界以下の測定結果となるようなごく微量の含有量でもよい。 [0046] ただし、ニッケル粉末の比表面積(m2/g)に対する硫黄含有量が0.04質量%・g/m2以下まで少なくなると、前述した硫黄によるバインダー樹脂の分解抑制効果が小さくなって積層セラミックコンデンサ製造時の脱バインダー処理において積層体の強度低下やクラック発生などが起きやすくなるが、本発明のニッケル粉末では、表面に形成された水酸化ニッケルの塩基性塩を主成分とする酸化被膜により、触媒活性の高い金属ニッケル部分がバインダー樹脂と接触しにくくなって樹脂分解が抑制されるという副次効果が発現する。 [0047] したがって、本発明のニッケル粉末において、硫黄含有量を少なくするために硫黄コート処理を施さなかったとしても、酸化被膜の厚みを所定以上にすれば、バインダー樹脂分解を抑制することができる。具体的には、ニッケル粉末の比表面積(m2/g)に対する硫黄含有量(質量%)が0.04質量%・g/m2以下の場合には、ニッケル粉末の比表面積(m2/g)に対する酸素含有量(質量%)は好ましくは0.35質量%・g/m2以上、より好ましくは0.40質量%・g/m2以上にすればよい。例えば平均粒径0.2μmのニッケル粉末だと比表面積は4m2/g程度のため、その酸素含有量は、好ましくは1.4質量%以上程度、より好ましくは1.6質量%以上程度である。」 「[0124] (比表面積) ニッケル粉末の比表面積はマウンテック社製の「マックソーブ」を用いて測定した。」 「[0178] [表1] 実施例10 粒子特性 平均粒径 0.20μm 比表面積 4.3m2/g ニッケル粉末中のニッケル以外の構成元素 O 1.7質量% 酸化被膜/Ni(OH)2の塩基性塩 Ni(OH)X(CH3COO)Y」(当合議体注:部分抽出) ・甲第3号証(特開2021-188087号公報)の記載事項 「【請求項1】 平均粒子径が5~100nmのニッケルナノ粒子及びバインダー樹脂を非極性溶媒中に分散させたニッケルナノ粒子ペーストに、水又は1wt%以上の過酸化水素水を接触させることによって、前記ニッケルナノ粒子の表面に皮膜を生成させるとともに、ニッケルナノ粒子同士を直接又は前記皮膜を介して凝集させて得られるニッケルナノ粒子凝集体。」 「【0001】 本発明は、ニッケルナノ粒子表面に水酸化ニッケルを生成させることで低温接合を可能にしたニッケルナノ粒子凝集体、その製造方法及びニッケルナノ粒子複合基板に関する。」 「【0042】 [ニッケルナノ粒子] 以上のようにして、ニッケルナノ粒子を含有する合成液スラリーを得ることが出来る。なお、得られたニッケルナノ粒子合成液スラリーを、例えば、静置分離し、上澄み液を取り除いた後、ニッケルナノ粒子表面のニッケルイオンの活性低下をおさえるため、洗浄溶媒にて洗浄・置換することが好ましい(工程C)。この工程Cで用いる洗浄溶媒中には、水酸基を含有しないことが好ましい。したがって、洗浄溶媒としては、0.1wt%以上の水分を含まない溶媒を用いることが好ましく、この条件を満たすトルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの有機溶媒を好ましく利用できる。なお、炭素数3以下の親水性アルコールは、通常、0.1wt%以上の水分を含有するため、洗浄溶媒として好ましくない。 また、ニッケルナノ粒子は、酸素、水素、炭素、窒素、等の金属元素以外の元素を少量含有していてもよいし、これらの合金であってもよい。さらに、単一のニッケルナノ粒子で構成されていてもよく、2種以上のニッケルナノ粒子を混合したものであってもよい。」 「【0059】 [比表面積の測定] ガス吸着法によりニッケル粒子の比表面積[m2/g]を測定した。」 「【0067】 (合成例1) 600gのオレイルアミンに246.8gの酢酸ニッケル四水和物を加え、窒素フロー下で140℃、3時間加熱することで錯化反応液1(ニッケルイオン濃度;7.5重量%)を得た。この錯化反応液1を約60℃に冷却した後に有機金属化合物(1)を0.10g加え、215℃で7分間反応させた後、急冷しニッケルナノ粒子スラリー1を得た。得られたニッケルナノ粒子スラリー1の分析結果を表1と表2に示した。また、得られたニッケルナノ粒子1の一部を80℃で1時間乾燥させた後、水を10wt%含むイソプロパノール溶液を霧吹きにて吹きかけ、80℃で1時間乾燥させた後に分析した結果を表3に示した。」 「【0071】 【表1】 [図:0001425787000001.jpg] 【0072】 【表2】 [図:0001425787000002.jpg] 【0073】 【表3】 [図:0001425787000003.jpg] 」 ・甲第4号証(国際公開第2011/037150号)の記載事項 「[請求項1] 平均粒径が0.05~0.3μm、比表面積径に対する結晶子径が60~90%、硫黄含有量が0.1~0.5質量%、及び酸素含有量が0.4~1.5質量%であり、 表面に酸素を含む厚さが2~15nmの被覆層を有し、少なくとも該被覆層の最外面がニッケル硫黄化合物及びニッケル酸素化合物を含む混合物で構成されていることを特徴とするニッケル微粉。」 [[0001] 本発明は、ニッケル微粉及びその製造方法に関する。より詳しくは、積層セラミックコンデンサの内部電極などの電子部品用電極材料として用いられるニッケル微粉及びその製造方法に関するものである。 ・・・(略)・・・」 「[0087] ・・・(略)・・・ (2)比表面積径(以下、BET径と記載する。):多検体BET比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製、Multisorb-16)を用いて比表面積を測定し、BET径に換算した。 ・・・(略)・・・」 「[0117] [実施例8] ニッケル粉としてニッケル原料中の硫黄含有量は0.18質量%とし、プラズマ入力約60kWで高周波プラズマを点火して、アルゴンの総量175L/分、水素6.4L/分、雰囲気圧力60kPaに調整し、安定したプラズマ炎を得た。搬送ガス(アルゴン15リットル/分)により、プラズマ炎の内部にニッケル原料を1.6kg/hrで供給して微粉を作製した。ニッケル微粉のBET径は、86nmであった。硫黄及び酸素含有量はそれぞれ0.27質量%、1.30質量%であった。」 (b)上記(a)に摘記したとおり、甲第2号証には、積層セラミック部品の電極材として用いられる高性能なニッケル粉末において、平均粒径が0.20μm、比表面積が4.3m2/gの具体例(実施例10)が記載されている。甲第3号証には、ニッケルナノ粒子表面に水酸化ニッケルを生成させることで低温接合を可能にしたニッケルナノ粒子凝集体において、平均粒子径が51.4nm(0.0514μm)、比表面積が10.9m2/gのニッケルナノ粒子(合成例1)が記載されている。甲第4号証には、積層セラミック部品の電極材として用いられる高性能なニッケル粉末において、比表面積が7.84m2/g(比表面積=6/(密度×BET径)=6/(8.9×106(g/m3)×86×10-9(m))の具体例(実施例8)が記載されている(なお、平均粒径は、請求項1から、0.05~0.3μmの範囲内と認める。)。 これら甲第2~4号証に記載されるニッケル粉末(粒子)の平均粒径は、いずれも甲1発明のNi系粉末(約1μm)に比べて小径であるから、体積(平均粒径)に依存する比表面積の値を、そのまま甲1発明に適用できるとはいえないし、また、甲第2~4号証に記載されるニッケル粉末(粒子)の想定される用途も、甲1発明のNi系粉末の用途(抗菌・防かび)とは異なるから、甲第2~4号証に、比表面積がそれぞれ、4.3m2/g、10.9m2/g、7.84m2/gであることが記載されていたとしても、甲1発明のNi系粉末において、「ガス吸着法により測定される比表面積が1m2/g以上10m2/g以下」とすることが動機付けられるとはいえない。 したがって、甲1発明において、相違点1に係る特定事項を備えようとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるとはいえない。 (c)申立人は、特許異議申立書の第14ページ下から第16行~第15ページ第3行において、「さらに、ニッケル粉末の比表面積については、以下の文献にも本件特許発明1の構成要件Cと同等の記載がされている。」として、甲第2号証及び甲第4号証の記載を指摘し、「以上のように、本件特許発明1の構成要件B(水素含有量)及び構成要件C(比表面積)については、甲第2号証ないし甲第4号証の文献に記載された技術内容と同等であり、これらの技術内容は、本件特許の出願時における技術常識である。 さらに、本件特許発明の課題(構成Y)である「防カビ作用に優れるニッケル粉末の提供」と、甲1発明の課題(構成y)である「安定して優れた抗菌・防かび性を示す金属粉末の提供」とは、課題も共通である。 したがって、これらの記載から構成Bを「水素含有量を0.050質量%~1質量%」とし、構成Cを「比表面積を1m2/g~10m2/g」と特定することに特段の工夫もなく、当業者が適宜採用し得る設計的事項であり、また、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化にすぎない。」と主張する。 申立人の構成要件C(比表面積)についての主張は、甲第2号証及び甲第4号証を根拠として、ニッケル粉末において、「ガス吸着法により測定される比表面積が1m2/g以上10m2/g以下」であることが技術常識であることを前提とするものと解される。 しかしながら、甲第3号証に記載の比表面積は、合成例1では10.9m2/gであり、合成例3では24.5m2/gであるから、甲第3号証の記載も考慮すると、ニッケル粉末において、「ガス吸着法により測定される比表面積が1m2/g以上10m2/g以下」であることが技術常識であるとはいえないし、この範囲に設定することが、特段の工夫もなく、当業者が適宜採用し得る設計的事項であるとはいえず、また、当業者が適宜なし得る数値範囲の最適化にすぎないともいえない。 この点、水素元素の含有量が、本件発明1と甲1発明との相違点であったとしても変わるものではない。 以上のとおりであるから、申立人の上記主張は採用できない。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。また、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項又は技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件特許の請求項1の記載を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項又は技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明2~8についても同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項又は技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)のまとめ 以上によれば、申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700253

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