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特許異議申立

2025-701017

接合用ペースト、及び接合体

審判番号
2025-701017
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-221139外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7666578
請求日
2025年10月22日
審決日
2026年02月27日
公報発行日
2026年03月27日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-Y (B22F) / P1651.121-Y (B22F) / P1651.537-Y (B22F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7666578号発明「接合用ペースト、及び接合体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7666578号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件の特許第7666578号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願(特願2023-221139号。以下「本願」という。)は、令和 5年12月27日の出願であって、令和 7年 4月14日にその特許権の設定登録がされ、同年 4月22日に特許掲載公報が発行され、その後、令和 7年10月22日に、その請求項1~10(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である小池 良(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~10に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、以下において、本願の請求項1~10に係る発明をそれぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明10」といい、総称して、「本件特許発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件特許明細書」という。 「 【請求項1】 金属粒子(A)と分散媒(B)とを含む接合用ペーストであって、 前記金属粒子(A)は、平均粒子径が100nm以上、500nm以下である金属粒子(a)を、金属粒子(A)の全質量を基準として、50質量%以上含有し、 前記金属粒子(A)は、銀及び/又は銅を含み、 該接合用ペーストの650℃における重量減少M650を100とした場合に、200℃における重量減少M200が88以上、98以下である(ただし、前記重量減少M650及び前記重量減少M200は、熱重量示差熱分析法により、試料10mgを窒素雰囲気下、スタート温度を30℃とし、昇温速度3℃/分で加熱して求める)、接合用ペースト。 【請求項2】 前記重量減少M650を100とした場合の、150℃における重量減少を、重量減少M150としたときに、前記重量減少M200に対する前記重量減少M150の割合(M150/M200)が、0.975以上である(ただし、前記重量減少M150は、熱重量示差熱分析法により、試料10mgを窒素雰囲気下、スタート温度を30℃とし、昇温速度3℃/分で加熱して求める)、請求項1に記載の接合用ペースト。 【請求項3】 前記分散媒(B)は、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、2-(1-メチル-1-(4-メチル-3-シクロヘキセニル)エトキシ)エタノール、イソボルニルシクロヘキサノール、テキサノール、カルビトール、カルビトールアセテート、ブチルカルビトール、イソホロン、γ-ブチルラクトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、エチレングリコール、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコール、1,3ブタンジオール、1,4ブタンジオール、2エチル1,3ヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及びイソパラフィン系分散媒からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の接合用ペースト。 【請求項4】 前記分散媒(B)は、沸点が250℃以上、300℃以下である分散媒(b1)の含有率が、分散媒(B)の全質量を基準として50質量%以上である、請求項1に記載の接合用ペースト。 【請求項5】 前記分散媒(b1)が、テルペン系及びグリコールエーテル系からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項4に記載の接合用ペースト。 【請求項6】 前記分散媒(B)は、沸点が300℃を超える分散媒(b2)の含有率が、分散媒(B)の全質量を基準として10質量%以下である、請求項1に記載の接合用ペースト。 【請求項7】 前記分散媒(B)は、水酸基を有する分散媒の含有率が、分散媒(B)の全質量を基準として、90質量%以上である、請求項1に記載の接合用ペースト。 【請求項8】 請求項1に記載の接合用ペーストによって、第一の被接合部と第二の被接合部とが接合された接合体。 【請求項9】 前記第一の被接合部が、非処理基材である請求項8に記載の接合体。 【請求項10】 前記第二の被接合部が、SiCである請求項8又は9に記載の接合体。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第4号証(以下「甲1」~「甲4」という。)を提出し(下記5参照。)、以下の理由により、本件特許の請求項1~10に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。 1 申立理由1(サポート要件) 本件特許の請求項1~10には、金属粒子(A)と分散媒(B)との比率に関する規定がなく、分散媒由来のボイドの発生を抑制するという課題を解決するための手段が反映されていない。 よって、本件特許発明1~10については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(明確性) 本件特許の請求項1~10は、望ましい自明の物性をパラメーター化しただけのものであり、そのパラメーターを実現するための技術的手段が記載されていない。 よって、本件特許発明1~10については、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3-1(新規性)、4-1(進歩性) 本件特許発明1~10は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 4 申立理由3-2(新規性)、4-2(進歩性) 本件特許発明1~10は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、また、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 5 証拠方法 甲1:特開2018-59192号公報 甲2:特開2022-46765号公報 甲3:特開2020-164895号公報 甲4:テルペン系溶剤の電子材料分野への応用,日本テルペン化学株式会社 営業部,2022年 7月 8日,p.1, 15-16 第4 当合議体の判断 以下に述べるとおり、当合議体は、上記第3のいずれの申立理由によっても、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことができないと判断する。(下線は当合議体が付した。以下、同様。) 1 申立理由1(サポート要件)について (1)本件特許明細書の段落【0007】によれば、本件特許発明が解決しようとする課題(以下、単に「課題」という。)は、「無加圧条件下においても、焼結後の塗膜中のボイドを抑制して高い熱伝導性を発現し、接合強度に優れ、且つ冷熱サイクルに伴う接合強度の低下を抑制可能な接合用ペースト、及び該接合ペーストを用いた接合体を提供すること」である。 (2)本件特許明細書の段落【0008】によれば、上記(1)に記載の課題は、金属粒子(A)と分散媒(B)とを含む接合用ペーストであって、前記金属粒子(A)は、平均粒子径が100nm以上、500nm以下である金属粒子(a)を、金属粒子(A)の全質量を基準として、50質量%以上含有し、該接合用ペーストを3℃/分の昇温速度で昇温したときの650℃における重量減少M650を100とした場合に、200℃における重量減少M200が88以上、98以下であることによって解決することができるとされている。 (3)上記(2)に記載の解決手段によって、上記(1)に記載の課題を解決し得る機序については、本件特許明細書の段落【0012】、【0018】に次のように記載されている。 「金属粒子(A)は、平均粒子径が100nm以上、500nm以下である金属粒子(a)(以下、金属粒子(a)と記載する。)を所定量以上含有することで、接合ペーストが加熱及び焼結される200℃から350℃の温度範囲で粒子同士が溶融又は結着(以下、焼結ともいう)する機能を発現し、バルクの金属に変化することが可能となる。その結果、被接合体を接合するに至る」(段落【0012】) 「200℃における重量減少M200の値が88以上98以下であると、焼結段階で分散媒が残存するため、塗膜の流動性が高まり、焼結後の塗膜中のボイド発生が抑制され、高い熱伝導性を発揮することができる。また、被接合部に対する濡れ性が向上して接触面積が増加することで、強固な接合を形成することができる。これにより、優れた接合強度及び冷熱サイクル性を発揮することができる。」(段落【0018】) (4)上記(3)の記載からみて、(2)によって課題を解決できることは妥当であると認められる。 そして、本件特許発明1と、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~10は、上記解決手段を備えているから、本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (5)ア 申立人は、特許異議申立書の第12頁において、「「分散媒由来のボイドの発生」はまさに本特許発明の主要な課題であり、作用効果でもある。ゆえに、金属粒子(A)の含有比率が例えば1~79質量%、96~99質量%のきわめて広い範囲の少なくとも一部において、分散媒(B)由来のボイド発生が抑制できないであろうことは自明である。ゆえに、請求項1の組成の全範囲にわたっては本発明の課題を解決できないであろうと理解することができるから、サポート要件を欠如している。」と主張している。 イ しかしながら、上記(3)の通り、請求項1に記載の「該接合用ペーストの650℃における重量減少M650を100とした場合に、200℃における重量減少M200が88以上、98以下である」場合に、「焼結段階で分散媒が残存するため、塗膜の流動性が高ま」るという機序によって、金属粒子の含有比率に拘わらず、分散媒由来のボイドの発生が抑制できることは、当業者であれば十分理解できることといえる。 ウ ここで、上記ア(金属粒子の含有比率)と、上記イ(M200の数値範囲)は、それぞれ別の機序によって、互いに関係なく独立してボイドの発生を抑制しているから、本件特許明細書の記載からは、上記アの通り、金属粒子の含有比率が特定されていないとしても、上記イの機序によってボイドの発生が抑制されるものであると理解できる。 そして、申立人は、上記アの範囲外である場合に、上記イの機序が存在しているにも関わらず、ボイドの発生が抑制されないという合理的な疑義が生じる程度の具体的な根拠を示すことができていないから、申立人の主張は採用しない。 (6)申立理由1についてのまとめ 以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件特許発明1~10について、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2(明確性)について (1)本件特許の請求項1~10の記載は、上記第2のとおりのものであるところ、請求項1~10の記載に不明確なところはなく、その意味は明確であるから、本件特許発明1~10について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。 (2)ア 申立人は、特許異議申立書の第14頁において、「本請求項1で規定するパラメーターは、「200℃で接合用ペースト=塗膜中に分散媒が若干残っていること」をそのまま重量減少として数値化しただけである。 ゆえに、望ましい自明の物性をパラメーター化しただけのものであり、そのパラメーターを実現するための技術的手段を請求項1が欠如しているのである。 ゆえに、請求項1記載の発明は不明確である。」と主張している。 イ しかしながら、本件特許の請求項1に記載の「該接合用ペーストの650℃における重量減少M650を100とした場合に、200℃における重量減少M200が88以上、98以下である」という、M200のパラメータについては、本件特許明細書の段落【0068】~【0082】の実施例の記載に基づいており、この数値範囲を取ることで、所定の効果が奏されることは、実施例によって実証されているから、「望ましい自明の物性をパラメーター化しただけのもの」とはいえず、そうであるとすれば、「そのパラメーターを実現するための技術的手段を請求項1が欠如している」との主張は前提を欠いていると認められる。 ウ さらに、出願人が請求項において特許を受けようとする発明について記載するに当たっては、種々の表現形式を用いることができ、接合ペーストのような、「物の発明」の場合には、特性を含む様々な表現方式を用いることができるから、請求項1に記載の「該接合用ペーストの650℃における重量減少M650を100とした場合に、200℃における重量減少M200が88以上、98以下である」という表現について、単に、請求項1に記載の「接合用ペースト」を「M200」の数値範囲という特性で特定したこと自体を以て、直ちに発明が不明確であるとはいえない。 エ(ア)ここで、出願時の技術常識を考慮すると、特性によって記載された発明特定事項が技術的に十分に特定されていないことが明らかであり、明細書及び図面の記載を考慮しても、当業者が請求項の記載から発明を明確に把握できない場合は、当該特性によって記載された発明特定事項を含む発明は不明確であるといえる。 (イ)しかし、申立人の主張は、「重量減少M200」が「88以上、98以下」で規定された「接合用ペースト」が具体的にどのようなものであるかを理解することが困難であることを指し示す根拠を述べたものではなく、上記特性で規定された請求項が、技術的に十分に特定されていないといえる根拠を主張するものではない。また、そのような根拠も存在しない。 (ウ)したがって、「重量減少M200」が「88以上、98以下」で規定された「接合用ペースト」が、技術的に十分に特定されていないとはいえないため、請求項1に、何らかの記載が追加的に必要であるとはいえず、請求項1は、一の請求項から発明が明確に把握されるように記載されているものである。 よって、申立人の主張は採用しない。 (3)申立理由2についてのまとめ 以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件特許発明1~10について、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、申立理由2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由3-1(新規性)、4-1(進歩性)について (1)甲1に記載された発明 本願の出願前に公知となった甲1(発明の名称:接合材およびそれを用いた接合方法)の【0029】~【0039】の記載を総合勘案し、特に、【0035】~【0036】の記載を考慮し、実施例1に着目すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。 「平均一次粒子径17nmの(ヘキサン酸で被覆された)銀微粒子の乾燥粉末(第1の銀粒子(小粒子))14.5gと、平均一次粒子径85nmの(ソルビン酸で被覆された)銀微粒子の乾燥粉末(第2の銀粒子(中粒子))7.5gと、第3の銀粒子(大粒子)として(SEM像により求められる平均一次粒子径が0.3μmの)ミクロンサイズの(オレイン酸で被覆された)銀粒子(DOWAエレクトロニクス社製のAG2-1C)70gと、第1の分散剤(カルボン酸系分散剤)としてのブトキシエトキシ酢酸(BEA)(東京化成工業株式会社製)0.5gと、第2の分散剤としてのリン酸エステル系分散剤(Lubrizol社製のSOLPLUS D540)0.05gと、第1の溶剤としての1-デカノール(和光純薬工業株式会社製)2.45gと、第2の溶剤としてのオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製の2-エチル-1,3-ヘキサンジオール)1.5gと、第3の溶剤としての2-メチル-ブタン-1,3,4-トリオール(イソプレントリオールB(IPTL-B))(日本テルペン化学株式会社製)3.5gとを混練し、得られた混練物を三本ロールに通して得られた、銀ペーストからなる接合材。」(以下「甲1発明」という。) (2)本件特許発明1について ア 甲1発明との対比・判断 (ア)本件特許発明1と甲1発明との対比 a 甲1発明の「平均一次粒子径17nmの(ヘキサン酸で被覆された)銀微粒子の乾燥粉末(第1の銀粒子(小粒子))14.5gと、平均一次粒子径85nmの(ソルビン酸で被覆された)銀微粒子の乾燥粉末(第2の銀粒子(中粒子))7.5gと、第3の銀粒子(大粒子)として(SEM像により求められる平均一次粒子径が0.3μmの)ミクロンサイズの(オレイン酸で被覆された)銀粒子(DOWAエレクトロニクス社製のAG2-1C)70g」は、全て銀粒子であることから、本件特許発明1の「金属粒子(A)」に相当し、また、「前記金属粒子(A)は、銀」を含むことに相当する。 b 甲1発明の「第1の溶剤としての1-デカノール(和光純薬工業株式会社製)2.45gと、第2の溶剤としてのオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製の2-エチル-1,3-ヘキサンジオール)1.5gと、第3の溶剤としての2-メチル-ブタン-1,3,4-トリオール(イソプレントリオールB(IPTL-B))(日本テルペン化学株式会社製)3.5g」は、全て分散媒であり、本件特許発明1の「分散媒(B)」に相当する。 c 甲1発明の「銀ペーストからなる接合材」は、本件特許発明1の「接合用ペースト」に相当する。 d 甲1発明において、第1~3の「銀粒子」と、第1~3の「溶剤」を混練し、得られた混練物を三本ロールに通して得られたものが、「銀ペーストからなる接合材」であることから、本件特許発明1の「接合用ペースト」が、「金属粒子(A)と分散媒(B)とを含む」ことに相当する。 e そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、 「金属粒子(A)と分散媒(B)とを含む接合用ペーストであって、 前記金属粒子(A)は、銀及び/又は銅を含む、 接合用ペースト。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1-1> 本件特許発明1では、「前記金属粒子(A)は、平均粒子径が100nm以上、500nm以下である金属粒子(a)を、金属粒子(A)の全質量を基準として、50質量%以上含有」するのに対し、甲1発明では、第1~第3の銀粒子中の平均粒子径が100nm以上、500nm以下である銀粒子の含有量が不明である点。 <相違点1-2> 本件特許発明1では、「該接合用ペーストの650℃における重量減少M650を100とした場合に、200℃における重量減少M200が88以上、98以下である(ただし、前記重量減少M650及び前記重量減少M200は、熱重量示差熱分析法により、試料10mgを窒素雰囲気下、スタート温度を30℃とし、昇温速度3℃/分で加熱して求める)」のに対し、甲1発明では、上記重量減少M200の値が不明である点。 (イ)相違点についての検討 a 事案に鑑み、まず、上記相違点1-2について検討する。 (a)i 甲1では、熱重量示差分析法による重量減少について何ら記載がない。 ii そして、甲1発明のペーストを熱重量示差分析法で測定しても、M200がどうなるかは実際に測定してみないと不明である。 iii この点、本件特許明細書には、以下の記載がある。 「【0079】 【表1】 [図:0001433123000001.jpg] ・・・ 【0081】 【表3】 [図:0001433123000002.jpg] 」 iv そして、上記iiiに記載の通り、表1の実施例1(金属粒子(A)としてA1を88部、分散媒(B)としてB1を12部用いた例)と、表3の比較例4(金属粒子(A)としてA6を88部、分散媒(B)としてB1を12部用いた例)を比較すると、全く同じ溶剤(B1:トリエチレングリコールモノブチルエーテル)を用いることから、沸点が278℃で同一になるにも拘わらず、それぞれのM200は96.2、87.5と異なっているから、溶剤の沸点の値と、接合用ペーストのM200との関係を単純に関係づけることはできないといえる。 v したがって、上記相違点1-2は実質的な相違点である。 (b)次に上記相違点1-2の容易想到性について検討する。 i 甲1では、熱重量示差分析法による重量減少について何ら記載がないことから、甲1発明において、熱重量示差分析法による重量減少M200を88以上、98以下にする動機付けがあるとはいえない。 ii 甲2、4には、熱重量示差分析法による重量減少について何ら記載がないが、甲3には以下の記載が存在する。(「・・・」は省略を示す。) (i)「【0023】 <加熱減量> 本発明の接合材の実施の形態を窒素雰囲気中で3℃/分の昇温速度で40℃から700℃まで昇温したときの重量の減少(加熱減量L700)を100%としたとき、100℃における加熱減量L100、150℃における加熱減量L150、及び200℃における加熱減量L200が所定の範囲にある。 【0024】 (加熱減量L700) 前記加熱減量L100、L150、L200及びL700は、より詳細には以下のようにして求める。 【0025】 SII社製TG/DTA(TG/DTA6300)を用いて、測定用アルミナパン(φ0.5mm)に接合材を10±1mmg計量し、200mL/分の窒素雰囲気下で40℃から700℃までを昇温速度3℃/分で昇温させ、TG(熱重量測定)データを得る。温度が100℃、150℃、200℃及び700℃になった時点での加熱減量を記録し、700℃になった時点での加熱減量分を100%とし、これに対する100℃、150℃及び200℃時点での加熱減量分の相対値(%)を求める。このとき、同様の測定方法が実施可能な場合は測定装置として他社製のものを用いてもよいが、使用する測定用アルミナパンとしてはφ0.5mmのものを使用する。 ・・・ 【0028】 (加熱減量L200) 本発明の接合材の実施の形態は、上記のようにして求めた加熱減量L700を100%としたとき、昇温して200℃になった時点での加熱減量L200が98%以上である。このように200℃の時点で接合材中の非金属成分のほぼ全てが揮発して残存していないことによって、非金属成分が残存して金属接合層中にボイドが形成されることが有効に防止される。このような作用を良好に発揮する観点から、加熱減量L200は98.5%以上であることが好ましい。なお、200℃時点で有機成分が一切残存しなくなることは稀であり、加熱減量L200は通常99.9%以下である。」 ここで、甲3の上記記載は、加熱減量L200を98%以上にすることにより、200℃の時点で接合材中の非金属成分のほぼ全てが揮発して残存していないことによって、非金属成分が残存して金属接合層中にボイドが形成されることが有効に防止されるものであり、650℃における重量減少M650を100とした場合に、200℃における重量減少M200を88以上、98以下にするというものではない。 よって、甲2~甲4には、甲1発明において、熱重量示差分析法による重量減少M200を88以上、98以下にすることを動機付ける記載は見当たらない。 iii したがって、甲1発明において、上記相違点1-2に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)a 申立人は、上記相違点1-2について、特許異議申立書の第19~20頁において、甲1に記載の3種類の溶剤(1-デカノール、オクタンジオール、2-メチル-ブタン-1,3,4-トリオール(イソプレントリオールB))の沸点を各質量比率に応じて重み付けすると、混合溶剤の沸点は概略で、260℃程度(257℃)となり、本件特許明細書の実施例7、実施例17の溶剤の沸点がそれぞれ252℃、239℃であり、その際のM200が0.973、0.968であることから、甲1に記載の混合溶剤と、本件特許明細書の実施例7、実施例17の溶剤を比較すると、甲1の混合溶剤のM200は、当然、88以上、98以下の範囲に入るとしか考えられない旨主張する。 b この点、上記(イ)a(a)で検討した通り、溶剤の沸点の値と、接合用ペーストのM200との関係を単純に関係づけることはできないといえる。 c したがって、溶剤の沸点の値と、接合用ペーストのM200との関係を単純に関係づけることはできないから、甲1の溶剤と、本件特許明細書の実施例7、実施例17の溶剤の沸点が近いからといって、甲1の混合溶剤のM200が、88以上、98以下の範囲に入るか否かは不明である。 よって、申立人の主張は採用しない。 (エ)小括 よって、上記相違点1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2~10について ア 甲1発明との対比・判断 (ア)上記(2)アの検討結果を踏まえて、本件特許発明2~10と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも、上記相違点1-2と同様の点で相違する。 そして、相違点1-2については、上記(2)ア(イ)で検討したとおりであるから、甲1発明において、上記相違点1―2に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。 以上によれば、甲1発明において、上記相違点1-2に係る特定事項を備えさせることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (イ)小括 したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許発明2~10は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)申立理由3-1、4-1についてのまとめ 以上のとおり、本件特許発明1~10は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるとはいえないし、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由3-1、4-1によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由3-2(新規性)、4-2(進歩性)について (1)甲2に記載された発明 本願の出願前に公知となった甲2(発明の名称:銅ペースト、接合方法および接合体の製造方法)の【0066】~【0076】の記載を総合勘案し、特に、【0067】、【0070】、 【0071】、【0076】の記載を考慮し、実施例6に着目すると、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。 「粒子H:CuLox製「Cu6500」(平均粒子径50μmの球状銅粉)を大気下で撹拌しながら、100℃で10分、150℃で10分、200℃で10分、250℃で10分、300℃で10分、350℃に昇温して10分、400℃で30分加熱し粒子Uを得て、第一種粒子として粒子Uを40質量部、第二種粒子として粒子A:太陽日酸製「Tn-Cu100」(平均粒子径0.1μmの球状銅粉)を60質量部、および分散媒としてトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFTG;沸点242.4℃)18質量部を混合し、減圧下で、撹拌機(クラボウ製「マゼルスター KK-V300」)を用いて、公転回転数1340rpm、自転回転数737rpmで2分間混合物を遊星撹拌して得た無加圧接合用銅ペースト。」(以下「甲2発明」という。) (2)本件特許発明1について ア 甲2発明との対比・判断 (ア)本件特許発明1と甲2発明との対比 a 甲2発明の「粒子U」、及び、「粒子A:太陽日酸製「Tn-Cu100」(平均粒子径0.1μmの球状銅粉)」は、全て球状銅粉であることから、本件特許発明1の「金属粒子(A)」に相当し、また、「前記金属粒子(A)」は、「銅」を含むことに相当する。 b 甲2発明の「分散媒としてトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFTG;沸点242.4℃)」は、本件特許発明1の「分散媒(B)」に相当する。 c 甲2発明の「無加圧接合用銅ペースト」は、本件特許発明1の「接合用ペースト」に相当する。 d 甲2発明において、「粒子U」と「粒子A」と「トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFTG;沸点242.4℃)」を混合し、減圧下で、撹拌機(クラボウ製「マゼルスター KK-V300」)を用いて、公転回転数1340rpm、自転回転数737rpmで2分間混合物を遊星撹拌して得られたものが、「無加圧接合用銅ペースト」であることから、本件特許発明1の「接合用ペースト」が、「金属粒子(A)と分散媒(B)とを含む」ことに相当する。 e そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、 「金属粒子(A)と分散媒(B)とを含む接合用ペーストであって、 前記金属粒子(A)は、銀及び/又は銅を含む、 接合用ペースト。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点2-1> 本件特許発明1では、「前記金属粒子(A)は、平均粒子径が100nm以上、500nm以下である金属粒子(a)を、金属粒子(A)の全質量を基準として、50質量%以上含有」するのに対し、甲2発明では、「粒子U」と「粒子A」における平均粒子径が100nm以上、500nm以下である銅粉の含有量が不明である点。 <相違点2-2> 本件特許発明1では、「該接合用ペーストの650℃における重量減少M650を100とした場合に、200℃における重量減少M200が88以上、98以下である(ただし、前記重量減少M650及び前記重量減少M200は、熱重量示差熱分析法により、試料10mgを窒素雰囲気下、スタート温度を30℃とし、昇温速度3℃/分で加熱して求める)」のに対し、甲2発明では、上記重量減少M200の値が不明である点。 (イ)相違点についての検討 a 事案に鑑み、まず、上記相違点2-2について検討する。 (a)甲2では、熱重量示差分析法による重量減少について何ら記載がないこと、及び上記3(1)ア(イ)(a)で検討した通り、甲2発明のペーストを熱重量示差分析法で測定しても、M200がどうなるかは実際に測定してみないと不明であるから、相違点2-2は、本件特許発明1と甲2発明との実質的な相違点である。 (b)次に上記相違点2-2の容易想到性について検討する。 i 甲2では、熱重量示差分析法による重量減少について何ら記載がないことから、甲2発明において、熱重量示差分析法による重量減少M200を88以上、98以下にする動機付けがあるとはいえない。 ii 上記3(1)ア(イ)a(b)で検討したとおり、甲1、及び甲3~甲4には、甲2発明において、熱重量示差分析法による重量減少M200を88以上、98以下にすることを動機付ける記載は見当たらない。 iii したがって、甲2発明において、上記相違点2-2に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (ウ)なお、申立人は、上記相違点2-2について、以下のとおり主張する。 a 申立人は、特許異議申立書の第26頁において、甲2に記載の分散媒(トリプロピレングリコールモノブチルエーテル)の沸点は、242.4℃であり、本件特許明細書の実施例17の溶剤の沸点が239℃であり、その際のM200が0.968であることから、甲2に記載の分散媒と、本件特許明細書の実施例17の溶剤を比較すると、甲2の分散媒のM200は、当然、88以上、98以下の範囲に入るとしか考えられない旨主張する。 b しかしながら、上記3(1)ア(ウ)で検討したとおり、溶剤の沸点の値と、接合用ペーストのM200との関係を単純に関係づけることはできないから、甲2の分散媒と、本件特許明細書の実施例17の溶剤の沸点が近いからといって、甲2の分散媒のM200が、88以上、98以下の範囲に入るか否かは不明である。 よって、申立人の主張は採用しない。 (エ)小括 よって、上記相違点2-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2~10について ア 甲2発明との対比・判断 (ア)上記(2)アの検討結果を踏まえて、本件特許発明2~10と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも、上記相違点2-2と同様の点で相違する。 そして、相違点2-2については、上記(2)ア(イ)で検討したとおりであるから、甲2発明において、上記相違点2―2に係る特定事項を備えようとする動機付けがあるとはいえない。 以上によれば、甲2発明において、上記相違点2-2に係る特定事項を備えさせることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (イ)小括 したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件特許発明2~10は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)申立理由3-2、4-2についてのまとめ 以上のとおり、本件特許発明1~10は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるとはいえないし、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、申立理由3-2、4-2によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701017

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