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特許異議申立

2025-700590

プレス成形品の製造方法および製造装置

審判番号
2025-700590
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-039608
登録番号
7607477
請求日
2025年06月04日
審決日
2026年06月23日
公報発行日
2026年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社神戸製鋼所
  • 【権利者代理人】山尾 憲人
  • 【権利者代理人】前堀 義之
  • 【権利者代理人】近田 暢朗
  • 【異議申立人】谷口 充弘
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 貴雄
  • 審判官 永田 和彦
  • 審判官 本庄 亮太郎
分類
P1651.121-YAA(B21D) / P1651.537-YAA(B21D)
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7607477号発明「プレス成形品の製造方法および製造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7607477号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1~7〕、8について訂正することを認める。 特許第7607477号の請求項1、3~8に係る特許を維持する。 特許第7607477号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7607477号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、令和3年3月11日にされた特許出願であって、令和6年12月19日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。 令和7年 6月 4日:特許異議申立人 谷口 充弘(以下「申立人」という。)による全請求項(請求項1~8)に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立て」ということがあり、また、当該申立てのために提出された特許異議申立書を「申立書」という。) 令和7年11月20日付け:取消理由通知書 令和8年 1月20日提出:特許権者 株式会社神戸製鋼所(以下「特許権者」という。)による訂正請求書及び意見書 令和8年 2月10日付け:訂正請求書に対する手続補正指令書(方式) 令和8年 3月 4日提出:特許権者による訂正請求書を補正の対象とする手続補正書 (当該手続補正書により補正がされた訂正請求書を、以下「訂正請求書」といい、当該訂正請求書により請求がされた訂正を「本件訂正」ということがある。) 令和8年 3月10日付け:訂正の請求があった旨の通知書 (その後、期限までに申立人による意見書の提出はなかった。) 令和8年 6月18~19日:特許権者との電話応対(以下「電話応対」という。) 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 特許権者は訂正請求書の請求の趣旨において、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、請求項1~8について訂正することを求めているところ、その訂正の内容は以下の訂正事項1~8のとおりである(下線部は、訂正により変更又は追加された箇所を示す。一群の請求項については、後述する「2」で説明する)。 (1) 一群の請求項〔1~7〕について ア 訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、 「ことを含む、プレス成形品の製造方法。」と記載されているのを、 「ことを含み、 前記折曲部の折り曲げ角度は、2.5度以上かつ37.5度以下である、プレス成形品の製造方法。」に訂正する(訂正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3~4、6~7も同様に訂正する)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ウ 訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、 「請求項1または請求項2に」と記載されているのを、 「請求項1に」に訂正する(訂正後の請求項3を直接的又は間接的に引用する請求項4、6~7も同様に訂正する)。 エ 訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項4に、 「請求項1から請求項3のいずれか1項に」と記載されているのを、 「請求項1または3のいずれか1項に」に訂正する(当審注:訂正前の請求項4の「請求項1から請求項3のいずれか1項」との記載を、本件訂正により、訂正請求書(3~4ページ及び8ページ)においては「請求項1または3」と訂正する旨が説明される一方、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲においては「請求項1または3のいずれか1項」と記載されるため、両者が整合していない。そのため、訂正請求書の請求の趣旨及び電話応対に鑑み、訂正特許請求の範囲の記載に基づいて、特許権者が求める請求項4に係る本件訂正の内容は上述のとおりであると認める。)(訂正後の請求項4を直接的又は間接的に引用する請求項6~7も同様に訂正する。)。 オ 訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、 「前記折曲部は、前記長手方向の前記湾曲部を含む一部のみに設けられる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。」と記載されているのを、 「長尺であり、長手方向および高さ方向に湾曲する湾曲部を有するプレス成形品の製造方法であって、 製品として使用される製品部および前記製品として使用されない余剰部を含む金属製の板材を準備し、 前記湾曲部の形成と、前記製品部におけるハット形の成形と、前記余剰部における前記ハット形の凸の向きへの折り曲げによる折曲部の形成とを同時に行うプレス成形を実行し、 前記プレス成形の後に前記折曲部が形成された前記余剰部を除去する ことを含み、 前記折曲部は、前記長手方向の前記湾曲部を含む一部のみに設けられる、プレス成形品の製造方法。」に訂正する(訂正後の請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項6~7も同様に訂正する)。 カ 訂正事項6 訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、 「請求項1から請求項5のいずれか1項に」と記載されているのを、 「請求項1,3~5のいずれか1項に」に訂正する(訂正後の請求項6を引用する請求項7も同様に訂正する)。 キ 訂正事項7 訂正前の特許請求の範囲の請求項7に、 「請求項1から請求項6のいずれか1項に」と記載されているのを、 「請求項1,3~6のいずれか1項に」に訂正する。 (2) 請求項8について ・ 訂正事項8 訂正前の特許請求の範囲の請求項8に、 「を備える、プレス成形品の製造装置。」と記載されているのを、 「を備え、 前記折曲部の折り曲げ角度は、2.5度以上かつ37.5度以下である、プレス成形品の製造装置。」に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の特許請求の範囲の請求項1~7は、請求項2~7がそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、本件訂正は、特許法(以下、単に「法」ということがある。)120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項〔1~7〕及び請求項8について請求をするものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 一群の請求項〔1~7〕について ア 訂正事項1について (ア) 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1について、1(1)アの下線部の事項をさらに限定して特定するものである。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (イ) 新規事項 訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2において特定していた事項を請求項1に組み入れて特定したものであるから、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項1は、(ア)のとおり特許請求の範囲を減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条6項の規定に適合する。 イ 訂正事項2について 訂正事項2は訂正前の特許請求の範囲の請求項2を削除するものであるから、訂正事項2に係る訂正は、法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、請求項を削除するという訂正事項2に係る訂正が、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことも明らかであるから、訂正事項2に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条5項及び6項の規定に適合する。 ウ 訂正事項3~4、6~7について 訂正事項3~4、6~7は、それぞれ、本件訂正前の請求項3~4、6~7が引用する請求項として請求項2を含んでいたところ、引用する請求項から請求項2を削除するように訂正するものであるから、その訂正の目的は、法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 また、引用する請求項から請求項2を削除する訂正事項3~4、6~7に係る訂正が、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことも明らかであるから、訂正事項3~4、6~7に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条5項及び6項の規定に適合する。 エ 訂正事項5について (ア) 訂正の目的 訂正事項5は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1から請求項3のいずれか1項を引用していた請求項5について、引用関係を解消し、当該請求項1で特定していた1(1)オの下線部の事項を組み入れて独立形式の請求項とする訂正である。 したがって、訂正事項5に係る訂正は、法120条の5第2項ただし書4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。 (イ) 新規事項 訂正事項5は、(ア)のとおりのものであるから、訂正事項5に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項5に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条5項の規定に適合する。 (ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項5は、(ア)のとおりのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。 したがって、訂正事項5に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条6項の規定に適合する。 (2) 請求項8について ・ 訂正事項8について ア 訂正の目的 訂正事項8は、訂正前の特許請求の範囲の請求項8について、1(2)の下線部の事項をさらに限定して特定するものである。 したがって、訂正事項8に係る訂正は、法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 イ 新規事項 訂正事項8は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2において特定していた事項を請求項8に組み入れて特定したものであり、また本件明細書等には、プレス成形品の製造方法のみならず、プレス成形品100の製造装置200(段落【0037】~【0042】、【0044】~【0045】、【0048】)、図7~8)として、折曲部141の折り曲げ角度θを2.5度以上かつ37.5度以下とする、平坦面212及び傾斜面213を有する上型210、並びに、平坦面222及び傾斜面223を有する下型220を備えたプレス成形機201について開示されているから、訂正事項8に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。 したがって、訂正事項8に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項8は、アのとおり、特許請求の範囲を減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。 したがって、訂正事項8に係る訂正は、法120条の5第9項において準用する法126条6項の規定に適合する。 4 独立特許要件 全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~8について法120条の5第9項で読み替えて準用する法126条7項の独立特許要件は課されない。 5 訂正の適否についての小括 以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1~7〕及び請求項8について訂正することを認める。 第3 本件発明 第2のとおり本件訂正は認められたから、請求項1、3~8に係る発明(以下、まとめて「本件発明」という。また、請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、他の請求項に係る発明についても同様にいう。なお、請求項2は削除された。)は、次の事項により特定されるものである。 【請求項1】 長尺であり、長手方向および高さ方向に湾曲する湾曲部を有するプレス成形品の製造方法であって、 製品として使用される製品部および前記製品として使用されない余剰部を含む金属製の板材を準備し、 前記湾曲部の形成と、前記製品部におけるハット形の成形と、前記余剰部における前記ハット形の凸の向きへの折り曲げによる折曲部の形成とを同時に行うプレス成形を実行し、 前記プレス成形の後に前記折曲部が形成された前記余剰部を除去する ことを含み、 前記折曲部の折り曲げ角度は、2.5度以上かつ37.5度以下である、プレス成形品の製造方法。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 前記湾曲部の曲率半径は、50mm以上かつ400mm以下である、請求項1に記載のプレス成形品の製造方法。 【請求項4】 前記折曲部は、前記長手方向の全体にわたって設けられる、請求項1または3のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。 【請求項5】 長尺であり、長手方向および高さ方向に湾曲する湾曲部を有するプレス成形品の製造方法であって、 製品として使用される製品部および前記製品として使用されない余剰部を含む金属製の板材を準備し、 前記湾曲部の形成と、前記製品部におけるハット形の成形と、前記余剰部における前記ハット形の凸の向きへの折り曲げによる折曲部の形成とを同時に行うプレス成形を実行し、 前記プレス成形の後に前記折曲部が形成された前記余剰部を除去する ことを含み、 前記折曲部は、前記長手方向の前記湾曲部を含む一部のみに設けられる、プレス成形品の製造方法。 【請求項6】 前記余剰部に段差形状を形成し、 前記折曲部は、前記段差形状に含まれる、請求項1,3~5のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。 【請求項7】 前記プレス成形品は、車体部品のフロントサイドメンバである、請求項1,3~6のいずれか1項に記載のプレス成形品の製造方法。 【請求項8】 長尺であり、長手方向および高さ方向に湾曲する湾曲部を有するプレス成形品の製造装置であって、 製品として使用される製品部および前記製品として使用されない余剰部を含む金属製の板材に対して、前記湾曲部の形成と、前記製品部におけるハット形の成形と、前記余剰部における前記ハット形の凸の向きへの折り曲げによる折曲部の形成とを同時に行うプレス成形機と、 前記プレス成形機による成形の後に前記折曲部が形成された前記余剰部を除去する切断機と を備え、 前記折曲部の折り曲げ角度は、2.5度以上かつ37.5度以下である、プレス成形品の製造装置。 第4 取消理由通知書で通知した取消理由の概要 取消理由通知書で通知した取消理由(以下、単に「取消理由」という。)の概要は以下のとおりである。 1 進歩性 訂正前の本件特許の請求項1~4、6~8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4、6~8に係る特許は、法29条2項の規定に違反してされたものである。 2 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2015/046023号 甲第2号証:国際公開第2015/092963号 甲第3号証:特開2018-51584号公報 (いずれも申立書に添付して提出されたもの。以下、各甲号証を「甲1」などという。甲2は取消理由で用いていない。) 第5 各甲号証等の記載 1 甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。) (1) 甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 「[0001] 本発明は、ハット形断面とされた部品を製造するハット形断面部品の製造装置に関する。 背景技術 [0002] 自動車車体の骨格を構成する構造部材としては、例えばフロントサイドメンバのようにハット形断面とされた形状のプレス成形部品(本明細書では「ハット形断面部品」ともいう)が知られている。また、このようなハット形断面部品は、素材である金属板(例えば鋼板)にプレス加工(絞り加工)等が施されることによって形成される・・・。 ・・・ [0010] (ハット型断面部品の構成) 図1A~図1D及び図2には、本実施形態のハット型断面部品の製造装置500(図5参照)で絞り加工が施されることによって製造されたハット型断面部品としての湾曲部品10が示されている。・・・。 ・・・ [0014] 以上説明した湾曲部品10は、図3Aに示された金属板としての矩形状の素材金属板201に絞り加工が施されることによって図3Bに示された絞りパネル301が形成され、この絞りパネル301の不要部分がトリミングされることによって形成される。 [0015] ところで、ハット形断面とされた湾曲部品10を絞り加工を経て製造する場合、図4に示されるように、絞りパネル301を成形する段階で、絞りパネル301の凹状湾曲部の天板301aおよび凸状湾曲部のフランジ301bでは材料が余りしわが発生し易い。しわの発生を抑制するためには、ブランクホルダの加圧力を高めたり、あるいはブランクホルダにドロービードを形成する部位を追加する等により、成形過程における素材金属板201の周囲の拘束を高め、素材金属板201のブランクホルダ内への流入を抑制することが有効であることが知られる。 [0016] しかし、素材金属板201のブランクホルダ内への流入の抑制を強化すると、絞りパネル301の凸状湾曲部の天板301c、凹状湾曲部のフランジ301d、長手方向の両端部301e,301e等の各部において板厚が大きく減少し、素材金属板201が伸び性の特に低い材料(例えば高張力鋼)の場合には、これら各部において割れが発生することが考えられる。 ・・・ [0025] 次に、上記ハット型断面部品の製造装置500によって素材金属板601をプレスする工程について説明する。 ・・・ [0028] また、パッド加圧装置506及びブランクホルダ加圧装置507が作動することによって、素材金属板601の中央部分601a及び両側部分601b,601cが所定の押圧力で加圧及び挟持される。この結果、素材金属板601の中央部分601a及び両側部分601b,601cは、加圧湾曲面の湾曲形状に沿った湾曲形状に形成される。 ・・・ [0031] そして、図6Dに示されるように、ブランクホルダ505およびダイ502が所定の距離を移動して、縦壁501a,501bの高さが所定の高さとなった時点で成形が完了する。 [0032] ここで、図6A~図6Dに示された例では、パンチ504及びパッド503が移動しない状態で、ブランクホルダ505及びダイ502を移動させることによって湾曲部品501を成形した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、下記のように湾曲部品501を成形してもよい。」 「 [図:0001439199000001.jpg] ・・・ [図:0001439199000002.jpg] [図:0001439199000003.jpg] [図:0001439199000004.jpg] [図:0001439199000005.jpg] 」 (2) 甲1から理解できる事項 (1)から次の事項を理解できる(括弧内に理解の根拠となる記載箇所を付記する。)。 ア 甲1には、自動車車体のフロントサイドメンバのような、ハット形断面とされた形状のプレス成形部品([0002])の製造装置([0001])が記載されている。 イ ハット形断面部品としての湾曲部品10は、ハット形断面部品の製造装置500で絞り加工が施されることによって製造される([0010])が、湾曲部品10は長尺であり、凸状湾曲部11aが、長手方向及び高さ方向に湾曲しているといえる([図2])。 ウ 湾曲部品10は、矩形状の素材金属板201に絞り加工が施されて絞りパネル301が形成され、この絞りパネル301の不要部分がトリミングされることによって形成される([0014])。 エ 甲1には、ハット形断面部品の製造装置500によって素材金属板601をプレスする工程([0025])についても記載されており、1工程のプレス成形で(図6A~図6D)湾曲形状の形成([0028])とハット形断面の縦壁501a及び501bが形成されて([0031])、湾曲部品501が製造される([0032])。 オ 上記ウの湾曲部品10と上記エの湾曲部品501は、同じ製造装置500で製造されるから、湾曲部品501を製造する素材金属板601には、上記ウの素材金属板201と同様に、トリミングされる不要部分が存在するといえるし、トリミングで残った部分が、製品として使用される製品部分であるといえる。 カ 湾曲部品10を絞り加工で製造する場合、凸状湾曲部のフランジ301bでは材料が余って、しわが発生し易いため、素材金属板201がブランクホルダ内へ流入することを抑制して、しわの発生を抑制するが([0015])、素材金属板201のブランクホルダ内への流入の抑制を強化すると、凸状湾曲部の天板301cにおいて板厚が大きく減少し、割れが発生する([0016])。 (3) 甲1発明 (1)~(2)を、本件発明1の発明特定事項に合わせて整理すると、甲1には、次の甲1発明が記載されているといえる。なお、括弧内に甲1発明の用語に対応する本件発明1の用語を付記する。 「長尺であり、長手方向及び高さ方向に湾曲する凸状湾曲部(湾曲部)を有するハット形断面部品としての湾曲部品501(プレス成形品)の製造方法であって、 製品として使用される製品部分(製品部)及びトリミングされる不要部分(前記製品として使用されない余剰部)を含む素材金属板601(金属製の板材)を準備し、 前記凸状湾曲部の形成と、前記製品部分におけるハット形断面の形成(ハット形の成形)とを1工程のプレス成形で実行し(同時に行うプレス成形を実行し)、 前記プレス成形の後に前記不要部分をトリミングする(前記余剰部を除去する) ことを含む 湾曲部品501の製造方法。」 2 甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 「[0011] 次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。 筆者らは、使用する金属板が、延性やランクフォード値の劣る高張力鋼板やアルミニウム合金板のような難成形部材であっても、図1及び図2に示すような部品形状1(プレス成形部品)に成形して製造する際に、部品形状1に割れやしわが発生することなく成形できるプレス方法について、下記の検討を行った。 すなわち、平坦な金属板を、1回のプレス成形で図1のような部品形状1に成形する場合、図3に示すような引張り変形や圧縮変形が長手方向の各湾曲部分に発生し、割れやしわの発生原因となる。・・・。」 3 甲3に記載された技術的事項(以下「甲3技術」という。) (1) 甲3の記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【0013】 本実施形態に係るプレス成形装置は、図1に示すようなワークWを成形するものである。ワークWは、金属板、例えば鋼板、特にハイテン材からなる。ワークWは、例えば、自動車の車体のフレーム等を構成する長尺部材であり、断面ハット形状を成している。図示例のワークWは、断面形状が長手方向で同一である。具体的に、ワークWは、長手方向に延びる帯板状の天板部W1と、天板部W1の短手方向(以下、「幅方向」と言う。)両端から下方に延びる一対の縦壁部W2と、両縦壁部W2の下端から外側に延びる一対のフランジ部W3とを有する。尚、ワークWの使用態様は、図1の姿勢に限定されない。 【0014】 プレス成形装置は、図2に示すように、ダイ1と、ポンチ2と、ブランクホルダ3と、曲げ型4とを主に備える。 ・・・ 【0017】 曲げ型4は、ブランクホルダ3の外側(ポンチ2と反対側)に設けられ、図示例では、各ブランクホルダ3の幅方向外側に設けられる。曲げ型4は、ブランクホルダ3の延在方向に沿って、連続的あるいは間欠的に配される。・・・。 【0018】 次に、上記のプレス成形装置を用いて、ブランク材W’にプレス成形(絞り加工)を施す手順を説明する。 ・・・ 【0020】 さらにダイ1を下降させることにより、ブランク材W’の絞り加工が進行する。この絞り加工の途中で、ブランク材W’の端部近傍に曲げ加工が施される。具体的には、図4に示すように、ダイ1の押さえ面1aの幅方向外側の肩部1bと、曲げ型4の上面4aの幅方向内側の肩部4bとで、ブランク材W’のうち、ブランクホルダ3よりも幅方向外側にはみ出した部分が上方に折り曲げられる。すなわち、ブランク材W’の端部近傍がダイ1とブランクホルダ3とで挟持された状態で、この領域の外側(成形部と反対側)に隣接した領域が上向きに折り曲げられる。これにより、ブランク材W’の幅方向端部に、曲げ部Bを介して上方に延びる延在部Cが形成される。曲げ部Bは、材料の流入方向と交差する方向(好ましくは直交する方向)に延びる。図示例の曲げ部Bは、ブランク材W’の長手方向(紙面と直交する方向)に沿って直線状に延びる。また、図示例の曲げ部Bは、ブランク材W’の長手方向全域に形成される。 【0021】 このように、絞り加工の途中に、ブランク材W’の幅方向端部近傍に曲げ加工を施すことで、その後、ブランク材W’がさらに絞られた際に、ブランク材W’の端部(延在部C)から成形部側への材料の流入が、曲げ部Bにより阻害される。従って、曲げ加工を施した後は、曲げ加工を施す前と比べて、ブランク材W’の端部から成形部側への材料の流入量が少なくなる。 【0022】 例えば、ブランク材W’の端部から成形部への材料流入が多すぎると、ブランク材W’の縦壁部W2’に加わる引張力が不足し、スプリングバックを十分に抑えることができない。この場合、曲げ型4の上面4aの高さを高くして、ダイ1と曲げ型4とで曲げ加工が開始される時期を早めればよい。これにより、曲げ部Bにより材料の流入が阻害された状態で絞り加工が施される期間が長くなるため、縦壁部W2’に加わる引張力が増大し、離型後のスプリングバックを確実に抑えることができる。 【0023】 一方、ブランク材W’の端部から成形部への材料の流入が少なすぎると、ブランク材W’の縦壁部W2’にワレが生じる。この場合、曲げ型4の上面4aの高さを低くして、ダイ1と曲げ型4とで曲げ加工が開始される時期を遅らせればよい。これにより、曲げ加工が開始されるまでにブランク材W’の端部から成形部へ材料を十分に流入させることができるため、ワレを防止できる。 【0024】 以上のように、上記のプレス成形装置では、曲げ型4の上面4aの高さを調整して、曲げ加工の開始時期を調整することで、ブランク材W’の端部から成形部への材料流入を適切に制御し、スプリングバックやワレの発生を防止することができる。曲げ型4の上面4aの高さは、例えば、異なる高さの曲げ型4に交換したり、曲げ型4と下型本体6との間に高さ調整用のプレート等を介在させたりすることにより、容易に調整することができる。 ・・・ 【0026】 その後、さらにダイ1を下降させ、ダイ1が下端位置に達すると、図6に示すように、所定形状の成形品W”が成形される。成形品W”は、天板部W1’、縦壁部W2’、フランジ部W3’、及び延在部Cを有する。その後、ダイ1を上昇させて、成形品W”をプレス成形装置から取り出す。そして、成形品W”の不要部分(本実施形態では、延在部C及びこれに連なるフランジ部W3’の一部)を除去する切断加工を施すことにより、図1に示すワークWが完成する。」 「 [図:0001439199000006.jpg] [図:0001439199000007.jpg] [図:0001439199000008.jpg] [図:0001439199000009.jpg] [図:0001439199000010.jpg] 」 (2) 甲3から理解できる事項 (1)から次の事項を理解できる(括弧内に理解の根拠となる記載箇所を付記する。)。 ア 甲3には、自動車の車体のフレームのような、ハット形状の断面のワークWを成形するプレス成形装置(【0013】)が記載され、プレス成形装置は、ダイ1、ポンチ2、ブランクホルダ3及び曲げ型4を備える(【0014】)。 イ ブランク材W’にプレス成形する際に(【0018】)、ブランク材W’の端部から成形部への材料流入が多すぎると、スプリングバックを十分に抑えることができない(【0022】)が、ブランク材W’の端部から成形部への材料の流入が少なすぎると、ブランク材W’の縦壁部W2’に割れが生じる(【0023】)。 ウ 甲3のプレス成形装置は、ダイ1の押さえ面1aの幅方向外側の肩部1bと、曲げ型4の上面4aの幅方向内側の肩部4b(図4)とで、ブランク材W’のうち、ブランクホルダ3よりも幅方向外側にはみ出した部分を上方に折り曲げることで、ブランク材W’の幅方向端部に、曲げ部Bを介して上方に延びる延在部Cを形成する(【0020】)。延在部Cは、ハット形状の凸の向きへ折り曲げられており(図6)、ハット形状の形成と延在部Cの折り曲げは、1工程のプレス成形で実行される(図2~図6)。 エ 曲げ部Bは、ブランク材W’の端部(延在部C)から成形部側への材料の流入を阻害するので(【0021】)、曲げ型4の上面4aの高さを調整して、曲げ部Bの曲げ加工の開始時期を調整することで、ブランク材W’の端部から成形部への材料流入を適切に制御し、上記イのスプリングバックと割れの発生を防止することができる(【0024】)。 オ 成形品W”の不要部分に延在部Cが存在し、不要部分を除去することにより、ワークWが完成する(【0026】)から、ブランク材W’には、ワークWとして使用される部分と、不要部分が含まれるといえる。また、ワークWは金属板からなるため(【0013】)、ブランク材W’が金属製であることは明らかである。 (3) 甲3技術 (1)~(2)の事項を、本件発明1の記載に合わせて整理すると、甲3には、次の甲3技術が記載されているといえる。なお、括弧内に甲3技術の用語に対応する本件発明1の用語を付記する。 「ハット形状の断面のワークWを成形するプレス成形方法(プレス成形品の製造方法)であって、 ワークW(製品)として使用される部分(製品部)及び不要部分(前記製品として使用されない余剰部)を含む金属製のブランク材W’(板材)を準備し、 前記ワークWにおけるハット形状(ハット形)の成形と、前記不要部分における前記ハット形状の凸の向きへの折り曲げによる延在部C(折曲部)の形成とを1工程のプレス成形で実行し(同時に行うプレス成形を実行し)、 前記プレス成形の後に前記延在部Cが形成された前記不要部分を除去すること。」 第6 取消理由についての判断 第2のとおり本件訂正は認められたから、第3に示した本件発明1、3~4、6~8について、第4の1に示した取消理由を検討する。 1 本件発明1について (1) 対比 第5の1(3)における括弧内の付記を踏まえ本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者の一致点・相違点は以下のとおりである。 ア 一致点 「長尺であり、長手方向および高さ方向に湾曲する湾曲部を有するプレス成形品の製造方法であって、 製品として使用される製品部および前記製品として使用されない余剰部を含む金属製の板材を準備し、 前記湾曲部の形成と、前記製品部におけるハット形の成形とを同時に行うプレス成形を実行し、 前記プレス成形の後に前記余剰部を除去する ことを含む、プレス成形品の製造方法。」 イ 相違点1 折曲部に関し、本件発明1では「前記余剰部における前記ハット形の凸の向きへの折り曲げによる折曲部の形成」を行うプレス成形を実行し、「前記折曲部が形成された」前記余剰部を除去し、かつ、「前記折曲部の折り曲げ角度は、2.5度以上かつ37.5度以下である」のに対して、甲1発明では、トリミングされる不要部分(本件発明1の「余剰部」)に折曲部を形成していない点。 (2) 相違点1についての判断 甲3技術では、折曲部を「ハット形状の凸の向き」へ折り曲げて、曲げ部Bを介して上方に延びる延在部Cが形成されるところ、甲3の図4~5から、その曲げ部Bの折り曲げ角度は、約90度であることが看取される。つまり、甲3には、甲3技術として、ハット形状の凸の向きへの折り曲げ角度を約90度とする技術のみが開示される。 そうすると、甲1発明のプレス成形に、不要部分におけるハット形状の凸の向きへの折り曲げによる延在部Cを形成する甲3技術を適用することで、本件発明1のように「折曲部」を余剰部に形成することまではできたとしても、甲3技術のように折曲部の折り曲げ角度を約90度とすることを想到するにとどまり、相違点1に係る本件発明1のように「2.5度以上かつ37.5度以下」とすることまでは当業者といえども容易に想到できない。 そして、本件発明1における折り曲げ角度の「2.5度以上かつ37.5度以下である」との数値範囲は、2.5度未満では製品部の板厚減少を効果的に抑制できずに割れが生じ易く、37.5度を超えると製品部にしわが発生するおそれがあるという、本件明細書等(段落【0044】~【0045】、【0048】)に記載された作用効果に対応する範囲である。一方、甲3には、このような割れ抑制としわ抑制との両立の観点から、折り曲げ角度を最適化することの技術的思想は、記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明に甲3技術を適用したとしても、相違点1に係る本件発明1の構成は当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。 なお、申立書で提示された甲2をみても、第5の2のとおり、そもそも折曲部についての技術的内容が見当たらない。 (3) 本件発明1の進歩性についての小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲3技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本件発明1に係る特許が、法29条2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 2 本件発明3~4、6~7の進歩性 本件発明3~4は、直接的又は間接的に本件発明1を引用するものであるから、少なくとも相違点1について、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。 また、本件発明6~7のうち、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用するものについては、少なくとも相違点1について、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない(直接的又は間接的に本件発明5を引用する本件発明6~7については、第7の3(2)で後述する)。 したがって、本件発明3~4、6~7に係る特許が、法29条2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 3 本件発明8の進歩性 甲1には、甲1発明の製造方法を実施する製造装置の発明(以下「甲1装置発明」という。)も記載されている。 本件発明8は、本件発明1と同様の内容を製造装置として表現したものであって、甲1装置発明と対比すると、少なくとも相違点1と同様の相違点があることになる。 そうすると、甲1装置発明に甲3技術を適用したとしても、相違点1と同様の相違点に係る本件発明8の構成は当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。 したがって、本件発明8に係る特許が、法29条2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 4 取消理由についての小括 以上のとおりであるから、本件発明1、3~4、8に係る特許、及び、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明6~7に係る特許は、当審が取消理由通知で通知した取消理由であり、かつ、申立書における申立ての理由3である法29条2項(進歩性)の規定に違反してされたものであるとはいえない。 第7 取消理由として採用しなかった申立ての理由について 取消理由として採用しなかった、申立書における申立ての理由1(法36条6項2号(明確性)。以下「申立理由1」といい、他の申立ての理由についても同様にいう。)、申立理由2(法36条6項1号(サポート要件))、並びに、本件発明5及び請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する本件発明6~7についての申立理由3(法29条2項(進歩性))について、以下検討する。 1 申立理由1(明確性)について 申立理由1は、請求項1、8に記載の「長尺であり、長手方向および高さ方向に湾曲する湾曲部を有するプレス成形品」について、湾曲部が長手方向及び高さ方向の両方向に湾曲するとはどのような状態なのか理解できず明確でない、というものである。 しかしながら、「長手方向及び高さ方向に湾曲する湾曲部」という記載は以下のとおり明確である。 まず、「湾曲」とは弓なりに曲がることを意味するので、湾曲にはその周方向と半径方向とが存在することを理解できる。 ここで、以下の本件図4を参照すると、湾曲部110の湾曲の周方向がプレス成形品100の長手方向に沿うように存在し、湾曲の半径方向がプレス成形品100のハット形の高さ方向に存在することを理解できる。 [図:0001439199000011.jpg] そうすると、当業者であれば「長手方向及び高さ方向に湾曲する湾曲部」という記載が意味する状態を理解できるから、請求項1、8に記載の「長尺であり、長手方向および高さ方向に湾曲する湾曲部を有するプレス成形品」という記載も明確に理解できる。 また、請求項3~4は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、請求項5も請求項1、8の上記記載を含むものであり、請求項6~7も、請求項1又は5の記載を直接的又は間接的に引用するものであるから、これらも明確に理解できる。 したがって、申立理由1(明確性)によっては、本件特許の請求項1、3~8に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由2(サポート要件)について 申立理由2は、請求項1、8に記載の「長尺であり、長手方向および高さ方向に湾曲する湾曲部を有するプレス成形品」及び「前記湾曲部の形成と、前記製品部におけるハット形の成形と、前記余剰部における前記ハット形の凸の向きへの折り曲げによる折曲部の形成とを同時に行うプレス成形」について、プレス成形品100の上壁120がハット形の凸の向きへ突出する形態と、これとは反対に凹む形態の2つが想定されるところ、後者の形態は発明の詳細な説明に記載されたものではない、というものである。 しかしながら、まず、前者の形態は発明の詳細な説明に記載されているし、後者の形態について明示がないとしても、ハット形に成形されるプレス成形品の割れを抑制する(本件明細書【0005】)、具体的には、板材100の凸側の面(上壁120の上面120a)がプレス成形によって引き延ばされることで生じる割れを抑制する(本件明細書【0044】)限りにおいて、発明の詳細な説明において開示された内容を後者の形態についてまで拡張ないし一般化できないとする理由は見当たらない。 また、請求項3~4は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、請求項5も請求項1、8の上記記載を含むものであり、請求項6~7も、請求項1又は5の記載を直接的又は間接的に引用するものであるから、これらも発明の詳細な説明に記載されたものである。 したがって、申立理由2(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1、3~8に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由3(本件発明5~7の進歩性)について (1)本件発明5について 申立理由3は、本件発明5の「前記折曲部は、前記長手方向の前記湾曲部を含む一部のみに設けられる」点については甲3(【0017】)に記載されているから、本件発明5は甲1発明及び甲3技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである。 しかしながら、甲3【0017】に「曲げ型4は、ブランクホルダ3の延在方向に沿って、連続的あるいは間欠的に配される。」と記載されているものの、曲げ型4が間欠的に配されていたとしても、曲げ部B及び延在部Cが間欠的に設けられることになるかどうかは不明である。 仮に、曲げ部B及び延在部Cが間欠的に設けられたとしても、そもそも甲3には湾曲部に相当する技術内容が開示されていないから、曲げ部B及び延在部Cの位置を湾曲部に関係付ける技術的思想がない。 そうすると、甲1発明に甲3技術を適用したとしても、本件発明5の「前記長手方向の前記湾曲部を含む一部のみに設けられる」とする構成は、当業者が容易に想到することができたものであるとはいえない。 (2)本件発明6~7について 本件発明6~7のうち、請求項5の記載を直接的又は間接的に引用するものについては、少なくとも上記(1)の本件発明5の構成について、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。 (3)本件発明5~7に係る申立理由3についての小括 したがって、本件発明5~7に係る特許が法29条2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、申立理由3(進歩性)によっては、本件特許の請求項5~7に係る特許を取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由、及び申立書に記載された申立ての理由によっては、本件発明1、3~8に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件発明1、3~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件特許の請求項2は、本件訂正により削除された。これにより、請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、法120条の8第1項で準用する法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700590

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