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特許異議申立

2025-701143

ナノ複合金属材料、および、ナノ複合金属材料の製造方法

審判番号
2025-701143
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-544074
登録番号
7694386
請求日
2025年12月16日
審決日
2026年03月30日
公報発行日
2026年04月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社アイシン
  • 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
  • 【異議申立人】▲高▼久 昌義
審判長/審判官
  • 審判長 佐藤 陽一
  • 審判官 井上 猛
  • 審判官 石川 雄太郎
分類
P1651.113-Y (B22F) / P1651.121-Y (B22F) / P1651.537-Y (B22F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第113条、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7694386号発明「ナノ複合金属材料、および、ナノ複合金属材料の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7694386号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7694386号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)は、2020年(令和2年)9月7日(優先権主張:令和1年9月6日、令和1年9月20日)を国際出願日とする特許出願(特願2021-544074号)に係るものであって、令和7年6月10日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和7年6月18日である。)。 その後、令和7年12月16日に、本件特許の請求項1~10に係る特許に対して、特許異議申立人である高久昌義(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~10に係る発明は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。 【請求項1】 Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からなり、 CuとNiとの原子数比が1:7以上1:15以下の範囲であり、且つ、NiとZrとの原子数比が1:2以上1:4以下の範囲であり、 前記担体の酸化度が31%より大きく且つ100%以下であるナノ複合金属材料であって、 前記ナノ複合金属材料を熱反応装置の反応炉内に配置し、前記反応炉内を真空状態とした上で、前記反応炉内に水素ガス及び重水素ガスに少なくともいずれかを供給しつつ前記熱反応装置が備える加熱機構にて前記反応炉内を250℃以上350℃以下の温度範囲に加熱した場合に、ジルコニアビーズの不発熱ブランク試料を前記反応炉に装填した熱量校正試験データと比較することによって算出される前記ナノ複合金属材料の過剰熱が100W/kg以上となる、 ナノ複合金属材料。 【請求項2】 Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からなり、 PdとNiとの原子数比が1:7以上1:15以下の範囲であり、且つ、NiとZrとの原子数比が1:2以上1:4以下の範囲であり、 前記担体の酸化度が3%以上であり且つ100%以下であるナノ複合金属材料であって、 前記ナノ複合金属材料を熱反応装置の反応炉内に配置し、前記反応炉内を真空状態とした上で、前記反応炉内に水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給しつつ前記熱反応装置が備える加熱機構にて前記反応炉内を250℃以上350℃以下の温度範囲に加熱した場合に、ジルコニアビーズの不発熱ブランク試料を前記反応炉に装填した熱量校正試験データと比較することによって算出される前記ナノ複合金属材料の過剰熱が40W/kg以上となる、 ナノ複合金属材料。 【請求項3】 体積平均粒径が0.01mm以上1mm以下の範囲を少なくとも含む、 請求項1または請求項2に記載のナノ複合金属材料。 【請求項4】 体積平均粒径が0.01mm以上1mm以下の範囲である、 請求項1または請求項2に記載のナノ複合金属材料。 【請求項5】 Cu、Ni、およびZrからなるアモルファス金属を粉砕処理した微細金属粒子に水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給し、水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵させる水素吸蔵工程と、 水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵された前記微細金属粒子を200℃以上450℃以下に加熱し、ナノ複合金属材料を得る反応工程と、 を有するナノ複合金属材料の製造方法。 【請求項6】 Pd、Ni、およびZrからなるアモルファス金属を粉砕処理した微細金属粒子に水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給し、水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵させる水素吸蔵工程と、 水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵された前記微細金属粒子を200℃以上450℃以下に加熱し、ナノ複合金属材料を得る反応工程と、 を有するナノ複合金属材料の製造方法。 【請求項7】 前記微細金属粒子を、200℃以上450℃以下で加熱する加熱工程、 を有する請求項5または請求項6に記載のナノ複合金属材料の製造方法。 【請求項8】 前記加熱工程、前記水素吸蔵工程、及び前記反応工程をこの順に所定回数繰り返す、 請求項7に記載のナノ複合金属材料の製造方法。 【請求項9】 前記加熱工程、前記水素吸蔵工程、及び前記反応工程を前記所定回数繰り返した後に、前記微細金属粒子を、300℃以上600℃以下で再焼成する再焼成工程、 を有する請求項8に記載のナノ複合金属材料の製造方法。 【請求項10】 前記加熱工程、前記水素吸蔵工程、及び前記反応工程を前記所定回数繰り返した後に前記再焼成工程を実施する工程を1サイクルとして、前記サイクルを所定回数繰り返す、 請求項9に記載のナノ複合金属材料の製造方法。 第3 特許異議の申立ての理由の概要 本件特許の請求項1~10に係る特許は、下記1~3のとおり、特許法113条2号及び4号に該当する(証拠方法は下記4を参照。以下、甲第1号証を単に「甲1」という。)。 1 申立理由1(新規性) 本件発明5~7は、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5~7に係る特許は、同法113条2号に該当する。 2 申立理由2(進歩性) 本件発明1~10は、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~10に係る特許は、同法113条2号に該当する。 3 申立理由3(サポート要件) 本件発明1~4については、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、同法113条4号に該当する。 4 証拠方法 ・甲1 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、「平成27年度~平成29年度成果報告書 エネルギー・環境新技術先導プログラム 金属水素間新規熱反応の現象解析と制御技術」、[online]、2018年8月7日、[2025年4月7日検索]、成果報告書データベース、<https://seika.nedo.go.jp/pmg/PMG01C/PMG01CG01> 第4 当審における判断 以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性) (1)甲1の記載事項、甲1に記載された発明 ア 甲1には、以下の記載がある。 なお、下線は強調のために付与した。「・・・」は記載の省略を意味する。丸囲みの数字は、当庁のシステムの都合上、「○1」等と表記した。「株式会社テクノバ」は、「テクノバ」と略記し、各大学については、「国立大学法人」を省略した。 (ア)「金属水素間新規熱反応とは、ある種のナノ金属粒子(例えば、PdやPd-Ni、Cu-Ni複合金属等)と水素(軽水素または重水素)との間で起こる熱発生反応である。」(「まえがき」の頁の6~7行) (イ)「本研究開発以前に設置している神戸大学発熱量評価装置、東北大学に2016年に新たに設置した熱量評価装置、及び九州大学に2017年春に新規設置されたDSC装置を用いて、本研究参加機関の研究者が共同で発熱量評価試験(以降、「共同試験」とする)を行った。・・・合計16回の共同試験を行い、室温発熱データ、昇温発熱データを取得した。」(17頁2~6行) (ウ)「表1-2-2-1に共同試験の結果を、表1-2-2-2に各共同試験に供試した試料を示す。ここでPS系試料は、Pdナノ粒子とSiO2マトリックス、PNZ系試料はPd-Niナノ粒子とZrO2マトリックスCNS系試料はCu-Niナノ粒子とSiO2マトリックス、CNZ系試料はCu-Niナノ粒子とZrO2マトリックス構成された試料である。」(17頁10~13行) (エ)「 [図:0001434202000001.jpg] 」(18頁) (オ)「共同評価試験では供試試料として、単一ナノ金属試料(S1系試料)3種類(PS3、PSf1、PSn1)、ジルコニア担持二元金属試料(Z系試料)9種類(Pdを含むPNZ3、PNZ3f、PNZ3r、PNZ4s、PNZ5、PNZ6、PNZ7k、Pdを含まないCNZ5、CNZ5s、CNZ6s、CNZ7s)、シリカ担持二元金属試料(S系試料)2種類(CNS3、CNS3s)を用いた。」(19頁最下行~20頁3行(担当:テクノバ、神戸大学)) (カ)「PNZ系、CNZ系試料は、メルトスピニング法により得た所定組成のPd-Ni-ZrまたはCu-Ni-Zrの非晶質合金を熱処理・焼成してジルコニア(ZrO2)中に分散したナノ金属/酸化物粒子を得ることを狙っている。それを粉砕し200~数10μmの粒子として作製した。」(20頁15~17行(担当:テクノバ、神戸大学)) (キ)「通常の試験手順は以下のようである。ヴァージン試料を室温で水素同位体ガスに晒し、水素吸収が飽和し発熱が終息するのを待って(#1ラン第1フェーズ:#1-1)、昇温ランに移る。順次ヒータ電力(W1,W2)を大きくして炉内試料温度を上げて、温度一定状態になったことを確認しデータ取得を行った(#1-2)後、同様のデータ取得を別の設定電力(W1,W2)で行う(#1-3,・・・・)。この間、RC内水素圧力は0.9~0.3MPaの範囲で、各ラン内では立ち上がりの2~3時間を経過後ほぼ一定の圧力となる。入力電力W1とW2の組み合わせは、反応容器内温度がなるべく一様になるように、およそ3:2の大きさになっている。何通りかの温度設定での測定(#1-n;n=2,3,…)が終わったら、昇温状態で真空排気(脱ガス)して水素同位体を試料から一旦除去する。この一連の作業を経験した非ヴァージン試料に対して、さらに水素同位体ガス導入から脱ガスまでの一連の作業を繰り返し、#2-m、#3-m、・・・(m=1,2,・・・)のデータ取得を行う。」(20頁下から8行~21頁2行(担当:テクノバ、神戸大学)) (ク)「(2)東北大学における共同評価試験実施内容 東北大学では、新規発熱量評価装置導入後の第5、6、8、10、12、16 回の合計6 回の評価試験を実施した。 標準的な発熱実験の手順について以下に述べる。 ○1ナノ金属試料の作製:一部分析用に保存 ○2試料の装置への装荷(メルトスピニングZr系材料では、フィラーのジルコニアビーズを同時に装荷) ○3ベーキング(真空中、温度300℃から350℃程度):試料に付着した水分等を取り除くため ○4水素あるいは重水素の常温での導入:Pdを含んだ試料では発熱を観測 ○5昇温(200℃から350℃):ヒータ入力W1,W2を付与 ○6過剰熱等の観測 ○7停止:ヒーターオフ、装置冷却、ガス排気 ○8試料取り出し:反応容器解放 ○9試料分析 *共同実験#12(CNZ6s)以降の東北大の実験では適宜反応容器内ガス分析を実施 上記実験手順は、試料を入れた際の温度計測の手順を示しているが、各実験の前後にブランク実験(キャリブレーションのための実験)実施している。これは、例えばメルトスピニングZr系材料の場合、試料を入れずに、ジルコニアビーズのみを装荷し、本実験と全く同様な手順で実験を行うものである。これにより、過剰熱解析に必要なデータを取得することができる。 次に共同試験の結果と得られた知見について述べる。 1)化学反応で説明できないレベルの過剰熱の発生 ここでは、CNZ5s試料と通常の水素による実験結果を例として説明する。 CNZ5s試料は以下の手順で作成している。 ○1Ni、Cu,、Zrからメルトスピニング法でアモルファスリボンを作製:組成はCu0.04Ni0.31Zr0.65 ○2酸化処理(450℃・60H) ○4微粉化処理 ○1は仙台の(株)真壁技研に外注して実施。○2、○3は神戸大学で実施した。最終的に得られた試料は130.0gで、通常の軽水素を用いた実験を行った。」(21頁6行~22頁3行(担当:東北大学)) (ケ)「2-b) 同一組成試料の繰り返し実験:CNZ5s、CNZ6s 実験 次に、先に述べたCNZ5s実験とほぼ同様な試料や実験条件で行った結果(CNZ6s実験)について述べる。試料の作製方法は全く同じ要領で、CNZ6s実験(共同実験#12)を東北大で実施した。」(28頁2~4行(担当:東北大学)) (コ)「共同試験に供試したPNZ系、CNZ系のメルトスピニング試料は、Pd-Ni-Zr系合金、Cu-Ni-Zr合金をメルトスピニング法(溶融急冷法)で、非晶質(アモルファス)リボンとした後、大気中で酸化処理(450℃、60hr)を行い、さらに粉砕処理を行って作製している。 メルトスピニング法は、高温で溶融した合金を高速回転する銅製ロール表面上に吹き付けることで、結晶化時間よりも非常に短い時間で急冷し、非晶質リボンを得る方法である(図1-2-2-22)。非晶質リボンを酸化処理することで、構成元素のZrが酸化したZrO2が生成するとともPd、,Cu、Niがナノ金属粒子として析出した微細構造が形成される。」(33頁下から8~2行(担当:テクノバ)) (サ)「1)Z系試料 ジルコニア(Zr02)を担持体とする二元金属ナノ粒子試料である。前節にも述べたように、ZrO2はメルトスピニング法により得た所定組成のPd-Ni-ZrまたはCu-Ni-Zrの非晶質合金を焼成・酸化して得られ、ZrO2中に分散したPd-NiまたはCu-Niナノ金属/酸化物粒子を得ることを意図している。Pdを含む前者をPNZ試料、Cuを含む後者をCNZ試料と称している。言うまでもなく、CNZ試料は、実用を念頭に置いて高価なPdの代替元素を模索する中で、試行錯誤的にCuを選択したものである。」(53頁下から8~2行(担当:テクノバ、神戸大学)) (シ)「#2-1以降では、PNZ3のLM(図1-2-2-37)に顕著にみられたように、これらの値は一定値に漸近するように見える。PNZ6では#1で変質が完了せず、#2以降も変質が継続したものと考えられる。この変質は、焼成過程で生成されたNiZr2の(重)水素吸蔵と、酸化物PdOやNiOの還元であると考えられ、#2ラン以降でのηav=0.3~0.4 eV/D(H) (30~40 kJ/mol-D(H))は主としてベーキング過程で脱水素されたNiZr2とPd-Niによる(重)水素吸脱蔵によるエネルギーと考えられる。このηav=0.3~0.4 eV/D(H) (30~40 kJ/mol-D(H))は再焼成後のPNZ6r#2以降も再現されており、同一の物理化学過程を反映したものと考えられる。但し、LMは0.3 程度の小さな値に下がっており、再焼成によりNiZr2や吸蔵活性なPd-Niが減少したことが推論される。試料PNZ5-PNZ5rでも同様の振る舞いが観測されている(図1-2-2-42)。なお、PNZ6#3-1とPNZ6r#3-1はHを導入ガスとしているが、D に比べて12~24%小さくなっている。この吸蔵過程における同位体効果の発現とも考えられる。」(59頁4~最下行(担当:テクノバ、神戸大学)) (ス)「1)示差走査熱量計(DSC)を用いた微量試料の過剰発熱評価試験 九州大学グループは、共同発熱試験に供した試料を微小量(40~100mg)用いて、示差走査熱量計(DSC)による過剰熱評価を行った。 ・・・その目的のために水素雰囲気対応の示差走査熱量計を新規に導入した(図1-2-2-63,1-2-2-64)。」(74頁2~12行(担当:九州大学)) (セ)「DSCの測定条件と測定手順を示す。この測定手順は最終的に確定したもので、実験精度および再現性の向上を目指して測定方法を試行錯誤していたため、DSC測定結果には測定手順の異なるデータもある。その場合は記述する。 DSC測定条件: 試料量 : 40~100mg 昇温範囲 : 室温~550℃ 昇温速度 : 5℃/min 水素流量 : 70ml/min 保持温度 : 200~550℃,主には450℃ 保持時間 : 2h~24h,主には2h DSC 測定手順: 1) 測定前日以前に、下記と同じ手順で、空容器でベースラインを測定する。 ベースライン測定は1週間間隔で実施。 2) 測定前処理として10-3Pa以下になるまで系内を真空脱気(要する時間は2-3分)。 3) He気流中で室温から所定温度まで上げて,その温度で保持する測定を実施。 4) 測定後40□以下まで冷却。冷却時もHeを流通。 5) Heを止めて、10-3Pa以下になるまで系内を真空脱気(要する時間は2-3分)。 6) H2を流し、流量計が落ち着くまで10分間待つ。 7) H2気流中で室温から所定温度まで上げて,その温度で保持する測定を実施。」(75頁8行~76頁16行(担当:九州大学)) (ソ)「そこで本研究では、同じ試料をHe流通下とH2流通下で連続して測定し、そのDSC出力の差から、H2流通時の発熱量を定量することとした。」(79頁3~4行(担当:九州大学)) (タ)「CNZ系(Cu-Ni-Zr)試料についてもDSC測定およびTPR測定を行った。それぞれの結果を図1-2-2-74と図1-2-2-75に示す。ここで用いた試料はCNZ8A(Cu/Ni=1/1)、CNZ8B(Cu/Ni=1/3)、CNZ8C(Cu/Ni=1/5)およびNi粉末である。図F-21a)では、温度保持後の熱流束がCNZ系試料とNi粉末とで一致した。つまり、いずれのCNZ系試料も持続的発熱を起こさなかった。b)の450℃保持実験では、温度を保持した後しばらくはCNZ試料がNi粉末を上回ったので、過剰発熱が起こっている可能性はある。」(84頁1~6行(担当:九州大学)) (チ)「3)結論 九州大学グループでは、共同試験に用いられた試料、主にPNZ系試料について、水素雰囲気対応の示差走査熱量計(DSC)を用いた微小量試料の過剰熱評価試験を行った。40~100mgの微少試料を250~550℃の温度で一定に保ったときに、持続的に起こる過剰熱を世界で初めて観測することに成功した。その過剰熱に関して次のような結果を得た。 i)モル比Pd/Ni=1/7のPNZ試料における過剰発熱の再現性は高く、温度を24時間保持しても発熱が停止することはなかった。 ii)その熱出力は最大で43mW/gあり、24時間までの総発熱量は約2kJ/gであった。 iii)PNZ試料の過剰発熱は保持する温度に依存し、本実験範囲内では400~450℃が最適であった。 iv)PNZ試料の組成は、Pd/Ni=1/7が最適であり、単成分に近い比になると過剰熱はほとんど観測されなくなった。 v)PNZ試料の前処理焼成時間は30時間程度が適していることが示された。 vi)測定条件の違いから、DSCで観測される過剰熱発生は、共同試験で観測された過剰熱とは傾向が異なっていた。」(88頁下から16~2行(担当:九州大学)) (ツ)「1回目の共同発熱試験後に450℃で再焼成した試料のXRDパターンも同図に示す(Before 2nd Exp.)。」(104頁9~10行(担当:九州大学)) (テ)「今回、分析した試料の組成比を表したものを表1-2-2-11に示す。 [図:0001434202000002.jpg] 」(110頁(担当:神戸大学)) (ト)「2-2-2) PNZ6の組成、構造について PNZ6は、Zr,Ni,Pd金属を所定量秤量して溶解した後、急冷して非晶質合金としたものを空気中で熱処理(部分酸化処理)して得られたナノ複合材料である。合金組成は、モル比で、Ni:Pd=10:1、(Ni+Pd):Zr=0.35:0.65であり、非晶質合金の組成はPd0.032Ni0.318Zr0.65である。これを、空気中450℃で60時間熱処理の熱処理がなされた。この時の酸化増量は、4.72%で、部分酸化処理後の組成は、Pd0.032Ni0.318Zr0.65O0.24となる。図1-2-2-137に部分酸化処理後のXRD プロファイル(線源:CuK(α))を示す。」(131頁8~14行(担当:名古屋大学)) (ナ)「次に実用化シナリオ及びロードマップについて述べる。現状レベルでは、まだまだ実用化に至ることはなく、今後も研究開発を活発に行う必要がある。実用化シナリオについては、研究開発が順調に進み最も早く実用化される場合について述べる。 まず、研究開発の進捗であるが、現状のナノ金属材料の重当たりの出力200W/kgに対し、2020年には5倍の1kW/kg、2025年には10倍の10kW/kg、2035年にはさらに10 倍の100kW/kgを達成する。COPは現状の1.1から2020年には3.5以上、2025年には10 位上、2035年には50以上とした。ナノ金属材料コストは、202 年に現状の100万円/kgから50万円、2025年には10万円/kg、2035年には1万円/kgとした。これに伴い、実用化として、2022年頃から熱源として家庭用暖房や電気自動車用暖房の製品開発が始まり、実用化されていく。 さらに温浴施設給湯用や農業用暖房としての大型システムが2025年以降に実用化される。電源利用は、熱源利用よりは遅れるものの2024年頃から製品開発が始まり、家庭用分散電源、電気自動車用駆動電源が2027年ころ実用化される。さらに工場・ビル用やスマ混みよう等の大型分散電源は2030年以降に実用化されるものとした(図1-2-2-152)。」(147頁下から9行~148頁4行(担当:テクノバ)) イ(ア)甲1は、「金属水素間新規熱反応の現象解析と制御技術」と題する報告書である。 甲1には、金属水素間新規熱反応とは、ある種のナノ金属粒子と水素との間で起こる熱発生反応であること(上記ア(ア))、また、本研究参加機関の研究者が共同で発熱量評価試験(共同試験)を行い、発熱データを取得したこと(上記ア(イ))が記載されている。 (イ)a 甲1における、共同試験に用いられた試料に関する記載(上記ア(ウ)、(エ))を前提として、CNZ5sの作製手順に関する記載(上記ア(ク)(担当:東北大学))によれば、甲1には、共同試験に用いられた試料である「CNZ5s」は、メルトスピニング法で、組成がCu0.04Ni0.31Zr0.65であるアモルファスリボンを作製し、450℃、60時間で酸化処理し、微粉化処理して作製されたナノ金属試料であることが記載されている。 b また、上記aと同様に、甲1における、共同試験に用いられた試料に関する記載(上記ア(ウ)、(エ))を前提として、PNZ6の製造方法に関する記載(上記ア(ト)(担当:名古屋大学))によれば、甲1には、共同試験に用いられた試料である「PNZ6」は、Zr、Ni、Pd金属を所定量秤量して溶解した後、急冷して、組成がPd0.032Ni0.318Zr0.65である非晶質合金とし、空気中で450℃、60時間で熱処理(部分酸化処理)して得られたナノ複合材料であって、熱処理(部分酸化処理)時の酸化増量が4.72%であり、熱処理(部分酸化処理)後の組成がPd0.032Ni0.318Zr0.65O0.24であることが記載されている。 (ウ)以上によれば、甲1における、共同試験に用いられた試料である「CNZ5s」、「PNZ6」にそれぞれ着目すると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「共同試験に用いられた試料であるCNZ5sであって、 メルトスピニング法で、組成がCu0.04Ni0.31Zr0.65であるアモルファスリボンを作製し、450℃、60時間で酸化処理し、微粉化処理して作製されたナノ金属試料である、CNZ5s。」(以下、「甲1発明1」という。) 「共同試験に用いられた試料であるPNZ6であって、 Zr、Ni、Pd金属を所定量秤量して溶解した後、急冷して、組成がPd0.032Ni0.318Zr0.65である非晶質合金とし、空気中で450℃、60時間で熱処理(部分酸化処理)して得られたナノ複合材料であって、熱処理(部分酸化処理)時の酸化増量が4.72%であり、熱処理(部分酸化処理)後の組成がPd0.032Ni0.318Zr0.65O0.24であるナノ複合材料である、PNZ6。」(以下、「甲1発明2」という。) (エ)また、甲1における、標準的な発熱実験の手順に関する記載(上記ア(ク)(担当:東北大学))によれば、甲1には、発熱量の測定方法として、ナノ金属試料を作製し、ナノ金属試料とフィラーとしてのジルコニアビーズを新規発熱量評価装置へ同時に装荷し、ナノ金属試料に付着した水分等を取り除くために、真空中で温度300℃から350℃程度でベーキングし、水素あるいは重水素を常温で導入し、200℃から350℃に昇温し、過剰熱等の発熱量を観測し、ヒーターをオフし、装置を冷却し、ガスを排気し、ナノ金属試料を取り出すことが記載されている。 (オ)上記(エ)の発熱量の測定方法を前提として、上記(イ)aのCNZ5sに関する記載(上記ア(ク)(担当:東北大学))を踏まえると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「発熱量の測定方法であって、 メルトスピニング法で、組成がCu0.04Ni0.31Zr0.65であるアモルファスリボンを作製し、450℃、60時間で酸化処理し、微粉化処理して、ナノ金属試料であるCNZ5sを作製し、 ナノ金属試料であるCNZ5sとフィラーとしてのジルコニアビーズを新規発熱量評価装置へ同時に装荷し、 ナノ金属試料であるCNZ5sに付着した水分等を取り除くために、真空中で温度300℃から350℃程度でベーキングし、 水素あるいは重水素を常温で導入し、 200℃から350℃に昇温し、 過剰熱等の発熱量を観測し、 ヒーターをオフし、装置を冷却し、ガスを排気し、ナノ金属試料であるCNZ5sを取り出す、 発熱量の測定方法。」(以下、「甲1方法発明1」という。) (カ)また、甲1における、共同試験に用いられた試料に関する記載(上記ア(ウ)、(エ))によれば、共同試験では、PNZ系試料も用いられているところ、現に、東北大学で実施された第5回の評価試験(上記ア(ク)(担当:東北大学))では、PNZ系試料が用いられていることから、PNZ系試料を対象とした上記(エ)の発熱量の測定方法の発明として、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「発熱量の測定方法であって、 ナノ金属試料であるPNZ系試料を作製し、 ナノ金属試料であるPNZ系試料とフィラーとしてのジルコニアビーズを新規発熱量評価装置へ同時に装荷し、 ナノ金属試料であるPNZ系試料に付着した水分等を取り除くために、真空中で温度300℃から350℃程度でベーキングし、 水素あるいは重水素を常温で導入し、 200℃から350℃に昇温し、 過剰熱等の発熱量を観測し、 ヒーターをオフし、装置を冷却し、ガスを排気し、ナノ金属試料であるPNZ系試料を取り出す、 発熱量の測定方法。」(以下、「甲1方法発明2」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明1とを対比する。 (ア)本件発明1における「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からなり」、「前記担体の酸化度が31%より大きく且つ100%以下である」「ナノ複合金属材料」と、甲1発明1における「メルトスピニング法で、組成がCu0.04Ni0.31Zr0.65であるアモルファスリボンを作製し、450℃、60時間で酸化処理し、微粉化処理して作製されたナノ金属試料である、CNZ5s」とは、いずれも、「Zr」、「Cu」、「Ni」を含む「ナノ」「金属材料」である限りで共通する。 (イ)甲1発明1のアモルファスリボンは、原子比がCu:Ni:Zr=0.04:0.31:0.65であるところ、この原子比は、酸化処理、微粉化処理を経て、ナノ金属試料であるCNZ5sとなっても変わらないと解されるから、甲1発明1のナノ金属試料であるCNZ5sにおいて、原子比がCu:Ni=0.04:0.31=1:7.75であり、原子比がNi:Zr=0.31:0.65=1:2.09であることは、それぞれ、本件発明1のナノ複合金属材料において、「CuとNiとの原子数比が1:7以上1:15以下の範囲であり」、「NiとZrとの原子数比が1:2以上1:4以下の範囲であ」ることに相当する。 (ウ)以上によれば、本件発明1と甲1発明1とは、 「Zr、Cu、Niを含み、 CuとNiとの原子数比が1:7以上1:15以下の範囲であり、且つ、NiとZrとの原子数比が1:2以上1:4以下の範囲である、 ナノ金属材料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1-1 Zr、Cu、Niを含むナノ金属材料が、本件発明1では、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からなり」、「前記担体の酸化度が31%より大きく且つ100%以下である」「ナノ複合金属材料」であるのに対して、甲1発明1では、「メルトスピニング法で、組成がCu0.04Ni0.31Zr0.65であるアモルファスリボンを作製し、450℃、60時間で酸化処理し、微粉化処理して作製されたナノ金属試料である、CNZ5s」であるものの、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」るかどうか不明であり、「前記担体の酸化度が31%より大きく且つ100%以下である」かどうかも不明である点。 ・相違点1-2 本件発明1では、「前記ナノ複合金属材料を熱反応装置の反応炉内に配置し、前記反応炉内を真空状態とした上で、前記反応炉内に水素ガス及び重水素ガスに少なくともいずれかを供給しつつ前記熱反応装置が備える加熱機構にて前記反応炉内を250℃以上350℃以下の温度範囲に加熱した場合に、ジルコニアビーズの不発熱ブランク試料を前記反応炉に装填した熱量校正試験データと比較することによって算出される前記ナノ複合金属材料の過剰熱が100W/kg以上となる」のに対して、甲1発明1では、上記のような「過剰熱」が「100W/kg以上となる」かどうか不明である点。 イ 相違点1-1の検討 (ア)まず、相違点1-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲1には、甲1発明1のナノ金属試料であるCNZ5sが、本件発明1のように、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」ることについては、明示的な記載はないから、甲1発明1のナノ金属試料であるCNZ5sが、実際に、本件発明1のように、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」るのかどうかは、不明である。 b(a)もっとも、甲1には、試料の構造等に関する記載(上記ア(ウ)、(カ)、(コ)、(サ))があり、これらの記載によれば、甲1発明1のナノ金属試料であるCNZ5sが、構成元素のZrが酸化したZrO2を担持体とし、そのZrO2中に二元金属ナノ粒子であるCu-Niナノ金属粒子が分散したもの(本件発明1における「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」ることに相当する。)と解する余地がある。 しかしながら、仮に、上記のように解したとしても、構成元素のZrが酸化したZrO2である担持体の「酸化度が31%より大きく且つ100%以下である」かどうかは、依然として不明である。 (b)この点、本件明細書には、本件発明1の「ナノ複合金属材料」の製造方法、及び「担体の酸化度」に関し、以下の記載がある。 「【0034】 まず、Cu-Ni-Zr合金をメルトスピニング法(溶融急冷法)により溶融および急冷することによって、アモルファス金属18を作製する。・・・」 「【0036】 そして、アモルファス金属18を大気中で酸化処理する。・・・この酸化処理により、Zrが酸化したZrO2が得られる。 【0037】 そして、酸化処理後のアモルファス金属18を粉砕する粉砕処理を行うことによって、微細金属粒子20Aを得る。・・・ 【0038】 次に、微細金属粒子20Aを、300℃以上600℃以下で焼成し、ナノ複合金属材料10Aを得る。なお、この焼成工程における焼成温度は、300℃以上600℃以下の範囲が必須であるが、400℃以上500℃以下の範囲が好ましく、450℃以上500℃以下の範囲が更に好ましく、450℃が特に好ましい。この焼成時間は、120時間以上180時間以下の範囲が好ましい。 【0039】 上述したように、上記製造方法により製造されたナノ複合金属材料10Aの担体12の酸化度は、31%より大きく且つ100%以下である。 【0040】 ナノ複合金属材料10Aの酸化度は、焼成工程における焼成温度および焼成時間を調整することで、調整すればよい。 【0041】 本実施形態では、焼成前の微細金属粒子20Aの重量に対する、焼成後の微細金属粒子20Aであるナノ複合金属材料10Aの重量の比を、ナノ複合金属材料10Aにおける担体12の酸化度として用いる。具体的には、450℃で120時間以上180時間以下焼成する焼成条件で焼成を行い、焼成前に対する焼成後のナノ複合金属材料10Aの重量増加率を測定した。この重量増加率を、焼成による酸素付加量の増加率である酸化度として、算出した。」 (c)本件明細書の上記(b)の記載によれば、本件発明1の「ナノ複合金属材料」については、Cu-Ni-Zr合金をメルトスピニング法(溶融急冷法)により溶融及び急冷することによってアモルファス金属18を作製し、大気中で酸化処理し(Zrが酸化したZrO2が得られる。)、酸化処理後のアモルファス金属18を粉砕して微細金属粒子20Aを得て、その微細金属粒子20Aを300℃以上600℃以下で「焼成」することでナノ複合金属材料10Aを得るものと認められる。 (d)そして、本件明細書の上記(b)の記載によれば、本件発明1の「担体の酸化度」とは、「焼成」前の微細金属粒子20Aの重量に対する、「焼成」後の微細金属粒子20Aであるナノ複合金属材料10Aの重量の、重量増加率であると認められる。 (e)上記(b)~(d)によれば、本件発明1の「担体の酸化度」は、上記(c)のようにして微細金属粒子20Aを得た後に、その微細金属粒子20Aを300℃以上600℃以下で「焼成」する場合に初めて観念できるものと解される。 これに対して、甲1発明1のナノ金属試料であるCNZ5sは、メルトスピニング法で、組成がCu0.04Ni0.31Zr0.65であるアモルファスリボンを作製し、450℃、60時間で酸化処理し、微粉化処理して作製されたものではある(この段階で上記(c)でいう微細金属粒子20Aが得られていると解される。)ものの、その後、上記(c)でいう「焼成」が行われるものではないから、そもそも、甲1発明1のナノ金属試料であるCNZ5sについては、「担体の酸化度」を観念できるものではない。 (f)この点、申立人は、本件明細書【0041】に、酸化度の定義について、「焼成前に対する焼成後のナノ複合金属材料10Aの重量増加率を測定した。この重量増加率を、焼成による酸素付加量の増加率である酸化度として、算出した。」と記載されていることを根拠とし、「酸化度」は、酸化される前の合金材料の質量に対する酸化後の酸素の質量であるとの理解を前提として、甲1の110頁の表1-2-2-11には、CNZ5のモル分率として、Cu:1.7モル%、Ni:11.6モル%、Zr:24.5モル%、O:62.3モル%が記載されており、Cu、Ni、Zrの質量に対するOの質量を計算すると33%となるから、甲1発明1における「酸化度」は33%であると主張する。 しかしながら、本件発明1の「担体の酸化度」は、上記(d)のとおりであるから、それとは異なる理解を前提とする申立人の主張は、その前提において誤りがあり、採用できない。 c 以上によれば、相違点1-1は実質的な相違点である。 (イ)次に、相違点1-1の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)aのとおり、甲1には、甲1発明1のナノ金属試料であるCNZ5sが、本件発明1のように、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」ることについては、明示的な記載はないから、甲1発明1において、ナノ金属試料であるCNZ5sを、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」るものとする動機付けがあるとはいえない。 b 仮に、上記(ア)b(a)のとおり、甲1発明1のナノ金属試料であるCNZ5sが、構成元素のZrが酸化したZrO2を担持体とし、そのZrO2中に二元金属ナノ粒子であるCu-Niナノ金属粒子が分散したもの(本件発明1における「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」ることに相当する。)と解したとしても、構成元素のZrが酸化したZrO2である担持体の「酸化度が31%より大きく且つ100%以下である」かどうかは、依然として不明である。また、上記(ア)b(e)のとおり、そもそも、上記(ア)b(c)でいう「焼成」が行われない甲1発明1のナノ金属試料であるCNZ5sについては、「担体の酸化度」を観念できるものではない。 そして、甲1には、甲1発明1のナノ金属試料であるCNZ5sに対して、さらに上記(ア)b(c)でいう「焼成」を行うことについては記載されていないから、甲1発明1において、メルトスピニング法で、組成がCu0.04Ni0.31Zr0.65であるアモルファスリボンを作製し、450℃、60時間で酸化処理し、微粉化処理した後に、さらに上記(ア)b(c)でいう「焼成」を行う動機付けがあるとはいえず、そうであれば、甲1発明1において、「担体の酸化度」を設定する動機付けがあるともいえない。 仮に、何らかの理由から、甲1発明1のナノ金属試料であるCNZ5sに対して、さらに上記(ア)b(c)でいう「焼成」を行うことができたとしても、その「焼成」前のCNZ5sの重量に対する、「焼成」後のCNZ5sの重量の、重量増加率(担体の酸化度)は不明であるから、甲1発明1において、「担体の酸化度」を「31%より大きく且つ100%以下」とする動機付けがあるとはいえない。 c 以上によれば、甲1発明1において、ナノ金属試料であるCNZ5sを、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」るものとし、さらに、「前記担体の酸化度」を「31%より大きく且つ100%以下」として、「ナノ複合金属材料」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 ウ 小括 したがって、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明2について ア 対比 本件発明2と甲1発明2とを対比する。 (ア)本件発明2における「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からなり」、「前記担体の酸化度が3%以上であり且つ100%以下である」「ナノ複合金属材料」と、甲1発明2における「Zr、Ni、Pd金属を所定量秤量して溶解した後、急冷して、組成がPd0.032Ni0.318Zr0.65である非晶質合金とし、空気中で450℃、60時間で熱処理(部分酸化処理)して得られたナノ複合材料であって、熱処理(部分酸化処理)時の酸化増量が4.72%であり、熱処理(部分酸化処理)後の組成がPd0.032Ni0.318Zr0.65O0.24であるナノ複合材料である、PNZ6」とは、いずれも、「Zr」、「Pd」、「Ni」を含む「ナノ」「金属材料」である限りで共通する。 (イ)甲1発明2の非晶質合金は、原子比がPd:Ni:Zr=0.032:0.318:0.65であるところ、この原子比は、熱処理(部分酸化処理)を経て、ナノ複合材料であるPNZ6となっても変わらないと解されるから、甲1発明2のナノ複合材料であるPNZ6において、原子比がPd:Ni=0.032:0.318=1:9.94であり、原子比がNi:Zr=0.318:0.65=1:2.04であることは、それぞれ、本件発明2のナノ複合金属材料において、「PdとNiとの原子数比が1:7以上1:15以下の範囲であり」、「NiとZrとの原子数比が1:2以上1:4以下の範囲であ」ることに相当する。 (ウ)以上によれば、本件発明2と甲1発明2とは、 「Zr、Pd、Niを含み、 PdとNiとの原子数比が1:7以上1:15以下の範囲であり、且つ、NiとZrとの原子数比が1:2以上1:4以下の範囲である、 ナノ金属材料。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点2-1 Zr、Pd、Niを含むナノ金属材料が、本件発明2では、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からなり」、「前記担体の酸化度が3%以上であり且つ100%以下である」「ナノ複合金属材料」であるのに対して、甲1発明2では、「Zr、Ni、Pd金属を所定量秤量して溶解した後、急冷して、組成がPd0.032Ni0.318Zr0.65である非晶質合金とし、空気中で450℃、60時間で熱処理(部分酸化処理)して得られたナノ複合材料であって、熱処理(部分酸化処理)時の酸化増量が4.72%であり、熱処理(部分酸化処理)後の組成がPd0.032Ni0.318Zr0.65O0.24であるナノ複合材料である、PNZ6」であるものの、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」るかどうか不明であり、「前記担体の酸化度が3%以上であり且つ100%以下である」かどうかも不明である点。 ・相違点2-2 本件発明2では、「前記ナノ複合金属材料を熱反応装置の反応炉内に配置し、前記反応炉内を真空状態とした上で、前記反応炉内に水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給しつつ前記熱反応装置が備える加熱機構にて前記反応炉内を250℃以上350℃以下の温度範囲に加熱した場合に、ジルコニアビーズの不発熱ブランク試料を前記反応炉に装填した熱量校正試験データと比較することによって算出される前記ナノ複合金属材料の過剰熱が40W/kg以上となる」のに対して、甲1発明2では、上記のような「過剰熱」が「40W/kg以上となる」かどうか不明である点。 イ 相違点2-1の検討 (ア)まず、相違点2-1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 a 甲1には、甲1発明2のナノ複合材料であるPNZ6が、本件発明2のように、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」ることについては、明示的な記載はないから、甲1発明2のナノ複合材料であるPNZ6が、実際に、本件発明2のように、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」るのかどうかは、不明である。 b(a)もっとも、甲1には、試料の構造等に関する記載(上記ア(ウ)、(カ)、(コ)、(サ))があり、これらの記載によれば、甲1発明2のナノ複合材料であるPNZ6が、構成元素のZrが酸化したZrO2を担持体とし、そのZrO2中に二元金属ナノ粒子であるPd-Niナノ金属粒子が分散したもの(本件発明2における「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」ることに相当する。)と解する余地がある。 しかしながら、仮に、上記のように解したとしても、構成元素のZrが酸化したZrO2である担持体の「酸化度が3%以上であり且つ100%以下である」かどうかは、依然として不明である。 (b)この点、本件明細書には、本件発明2の「ナノ複合金属材料」の製造方法、及び「担体の酸化度」に関し、以下の記載がある。 「【0051】 まず、Pd-Ni-Zr合金をメルトスピニング法により溶融および急冷することによって、アモルファス金属18を作製する。」 「【0053】 そして、アモルファス金属18を大気中で酸化処理する。・・・この酸化処理により、Zrが酸化したZrO2が得られる。 【0054】 そして、酸化処理後のアモルファス金属18を粉砕する粉砕処理を行うことによって、微細金属粒子20Bを得る。・・・ 【0055】 次に、微細金属粒子20Bを、300℃以上600℃以下で焼成し、ナノ複合金属材料10Bを得る。なお、この焼成工程における焼成温度は、300℃以上600℃以下の範囲が必須であるが、450℃以上600℃以下の範囲が好ましく、450℃以上500℃以下の範囲が更に好ましく、450℃が特に好ましい。この焼成時間は、120時間以上180時間以下の範囲が好ましい。 【0056】 上述したように、上記製造方法により製造されたナノ複合金属材料10Bの酸化度は、3%以上であり且つ100%以下である。 【0057】 ナノ複合金属材料10Bの酸化度は、焼成工程における焼成温度および焼成時間を調整することで、調整すればよい。 【0058】 本実施形態では、ナノ複合金属材料10Aの酸化度と同様に、焼成前の微細金属粒子20Bの重量に対する、焼成後の微細金属粒子20Bであるナノ複合金属材料10Bの重量の比を、ナノ複合金属材料10BにおけるZrからなる担体12の酸化度として用いる。ナノ複合金属材料10BにおけるZrからなる担体12の酸化度の測定は、ナノ複合金属材料10Aの酸化度の測定と同様にして行えばよい。」 (c)本件明細書の上記(b)の記載によれば、本件発明2の「ナノ複合金属材料」については、Pd-Ni-Zr合金をメルトスピニング法により溶融および急冷することによってアモルファス金属18を作製し、大気中で酸化処理し(Zrが酸化したZrO2が得られる。)、酸化処理後のアモルファス金属18を粉砕して微細金属粒子20Bを得て、その微細金属粒子20Bを300℃以上600℃以下で「焼成」することでナノ複合金属材料10Bを得るものと認められる。 (d)そして、本件明細書の上記(b)の記載によれば、本件発明2の「担体の酸化度」とは、上記(2)イ(ア)b(d)と同様に、「焼成」前の微細金属粒子20Bの重量に対する、「焼成」後の微細金属粒子20Bであるナノ複合金属材料10Bの重量の、重量増加率であると認められる。 (e)上記(b)~(d)によれば、本件発明2の「担体の酸化度」は、上記(c)のようにして微細金属粒子20Bを得た後に、その微細金属粒子20Bを300℃以上600℃以下で「焼成」する場合に初めて観念できるものと解される。 これに対して、甲1発明2のナノ金属試料であるPNZ6は、Zr、Ni、Pd金属を所定量秤量して溶解した後、急冷して、組成がPd0.032Ni0.318Zr0.65である非晶質合金とし、空気中で450℃、60時間で熱処理(部分酸化処理)して得られたものではある(この段階で上記(c)でいう微細金属粒子20Bが得られていると解される。)ものの、その後、上記(c)でいう「焼成」が行われるものではないから、そもそも、甲1発明2のナノ金属試料であるPNZ6については、「担体の酸化度」を観念できるものではない。 (f)この点、申立人は、本件明細書【0041】に、酸化度の定義について、「焼成前に対する焼成後のナノ複合金属材料10Aの重量増加率を測定した。この重量増加率を、焼成による酸素付加量の増加率である酸化度として、算出した。」と記載されていることを根拠とし、上記(2)イ(ア)b(f)と同様に、「酸化度」は、酸化される前の合金材料の質量に対する酸化後の酸素の質量であるとの理解を前提として、甲1発明2において、非晶質合金を部分酸化処理したときの「酸化増量」が「4.72%」であることは、本件発明2において、「酸化度が3%以上であり且つ100%以下である」ことに相当すると主張する。 しかしながら、本件発明2の「担体の酸化度」は、上記(d)のとおりであるから、それとは異なる理解を前提とする申立人の主張は、その前提において誤りがあり、採用できない。 c 以上によれば、相違点2-1は実質的な相違点である。 (イ)次に、相違点2-1の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)aのとおり、甲1には、甲1発明2のナノ複合材料であるPNZ6が、本件発明2のように、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」ることについては、明示的な記載はないから、甲1発明2において、ナノ複合材料であるPNZ6を、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」るものとする動機付けがあるとはいえない。 b 仮に、上記(ア)b(a)のとおり、甲1発明2のナノ複合材料であるPNZ6が、構成元素のZrが酸化したZrO2を担持体とし、そのZrO2中に二元金属ナノ粒子であるPd-Niナノ金属粒子が分散したもの(本件発明2における「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」ることに相当する。)と解したとしても、構成元素のZrが酸化したZrO2である担持体の「酸化度が3%以上であり且つ100%以下である」かどうかは、依然として不明である。また、上記(ア)b(e)のとおり、そもそも、上記(ア)b(c)でいう「焼成」が行われない甲1発明2のナノ金属試料であるPNZ6については、「担体の酸化度」を観念できるものではない。 そして、甲1には、甲1発明2のナノ複合材料であるPNZ6に対して、さらに上記(ア)b(c)でいう「焼成」を行うことについては記載されていないから、甲1発明2において、Zr、Ni、Pd金属を所定量秤量して溶解した後、急冷して、組成がPd0.032Ni0.318Zr0.65である非晶質合金とし、空気中で450℃、60時間で熱処理(部分酸化処理)した後に、さらに上記(ア)b(c)でいう「焼成」を行う動機付けがあるとはいえず、そうであれば、甲1発明2において、「担体の酸化度」を設定する動機付けがあるともいえない。 仮に、何らかの理由から、甲1発明2のナノ複合材料であるPNZ6に対して、さらに上記(ア)b(c)でいう「焼成」を行うことができたとしても、その「焼成」前のPNZ6の重量に対する、「焼成」後のPNZ6の重量の、重量増加率(担体の酸化度)は不明であるから、甲1発明2において、「担体の酸化度」を「3%以上であり且つ100%以下」とする動機付けがあるとはいえない。 c 以上によれば、甲1発明2において、ナノ複合材料であるPNZ6を、「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からな」るものとし、さらに、「前記担体の酸化度」を「3%以上であり且つ100%以下」として、「ナノ複合金属材料」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 ウ 小括 したがって、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明3、4について 本件発明3、4は、本件発明1又は2を直接引用するものであり、本件発明1又は2の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(2)、(3)で述べたとおり、本件発明1、2が、いずれも、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明3、4についても同様に、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)本件発明5について ア 対比 本件発明5と甲1方法発明1とを対比する。 (ア)甲1方法発明1における「メルトスピニング法で、組成がCu0.04Ni0.31Zr0.65であるアモルファスリボンを作製し、450℃、60時間で酸化処理し、微粉化処理して」「作製」された「ナノ金属試料であるCNZ5s」は、技術常識に照らして、微粉化処理は粉砕処理により行われ、微細な粒子状の試料とされていると解されるから、本件発明5における「Cu、Ni、およびZrからなるアモルファス金属を粉砕処理した微細金属粒子」に相当する。 (イ)甲1方法発明1において、上記(ア)のようにして作製された「ナノ金属試料であるCNZ5s」と「フィラーとしてのジルコニアビーズを新規発熱量評価装置へ同時に装荷し」た状態で、「水素あるいは重水素を常温で導入」することは、技術常識に照らして、水素あるいは重水素の導入により、ナノ金属試料であるCNZ5sに(その量の多寡はともかく)水素あるいは重水素が吸蔵されると解されるから、上記(ア)を踏まえると、本件発明5における「微細金属粒子に水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給し、水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵させる水素吸蔵工程」に相当する。 (ウ)本件発明5における「水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵された前記微細金属粒子を200℃以上450℃以下に加熱し、ナノ複合金属材料を得る反応工程」と、甲1方法発明1において、「ナノ金属試料であるCNZ5s」と「フィラーとしてのジルコニアビーズを新規発熱量評価装置へ同時に装荷し」た状態で、「水素あるいは重水素を常温で導入し」た後、「200℃から350℃に昇温」することとは、上記(ア)、(イ)を踏まえると、いずれも、「水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵された前記微細金属粒子を200℃以上450℃以下に加熱」する「工程」である限りで共通する。 (エ)本件発明5の「ナノ複合金属材料の製造方法」と、甲1方法発明1の「発熱量の測定方法」とは、いずれも、「方法」である限りで共通する。 (オ)以上によれば、本件発明5と甲1方法発明1とは、 「Cu、Ni、およびZrからなるアモルファス金属を粉砕処理した微細金属粒子に水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給し、水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵させる水素吸蔵工程と、 水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵された前記微細金属粒子を200℃以上450℃以下に加熱する工程と、 を有する方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点5-1 方法が、本件発明5では、「ナノ複合金属材料の製造方法」であるのに対して、甲1方法発明1では、「発熱量の測定方法」である点。 ・相違点5-2 水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵された微細金属粒子を200℃以上450℃以下に加熱する工程が、本件発明5では、「ナノ複合金属材料を得る反応工程」であるのに対して、甲1方法発明1では、「ナノ複合金属材料を得る反応工程」であるのかどうか不明である点。 イ 相違点5-1、5-2の検討 事案に鑑み、相違点5-1、5-2をまとめて検討する。 (ア)まず、相違点5-1、5-2が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 甲1方法発明1は、「発熱量の測定方法」に関する発明であって、所定の製造方法により作製されたナノ金属試料であるCNZ5sについて、所定の手順により過剰熱等の発熱量を測定するものにすぎず、ナノ複合金属材料を製造しようとするものではない。 また、甲1方法発明1は、ナノ金属試料であるCNZ5sとフィラーとしてのジルコニアビーズを新規発熱量評価装置へ同時に装荷した状態で、水素あるいは重水素を常温で導入した後、「200℃から350℃に昇温」するものではあるものの、「200℃から350℃に昇温」することは、過剰熱等の発熱量を測定するために行われるものにすぎず、「ナノ複合金属材料を得る」ための「反応」であるとはいえない。 以上によれば、相違点5-1、5-2は、いずれも、実質的な相違点である。 したがって、本件発明5は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点5-1、5-2の容易想到性について検討する。 上記(ア)のとおり、甲1方法発明1は、「発熱量の測定方法」に関する発明であって、ナノ複合金属材料を製造しようとするものではないから、甲1方法発明1において、「発熱量の測定方法」に代えて、「ナノ複合金属材料の製造方法」とする動機付けがあるとはいえない。 また、上記(ア)のとおり、甲1方法発明1において、「200℃から350℃に昇温」することは、「ナノ複合金属材料を得る」ための「反応」であるとはいえないから、甲1方法発明1において、「200℃から350℃に昇温」することを、「ナノ複合金属材料を得る」ための「反応」とする動機付けがあるとはいえない。 以上によれば、甲1方法発明1において、「200℃から350℃に昇温」することを、「ナノ複合金属材料を得る」ための「反応」とするとともに、「発熱量の測定方法」に代えて、「ナノ複合金属材料の製造方法」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、本件発明5は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、甲1における、標準的な発熱実験の手順に関する記載(上記(1)ア(ク)(担当:東北大学))に基づいて、甲1には、上記の標準的な発熱実験の手順に従ってCNZ系試料を製造する方法の発明が記載されていると主張する(申立書18頁下から2行~19頁14行)。 しかしながら、上記(1)イ(エ)、(オ)のとおり、甲1には、CNZ系試料を対象とした発熱量の測定方法の発明が記載されているだけであり、申立人が主張するような発明が記載されているとはいえない。 また、申立人は、甲1における、通常の試験手順に関する記載(上記(1)ア(キ)(担当:テクノバ、神戸大学))にも触れている(申立書19頁下から6行~20頁1行)。 しかしながら、甲1の記載(上記(1)ア(キ)(担当:テクノバ、神戸大学))においては、本件発明5における「加熱」に相当する処理に関し、具体的な温度が記載されておらず、また、標準的な発熱実験の手順に関する記載(上記(1)ア(ク)(担当:東北大学))との関係も必ずしも明らかではない。 よって、いずれにしろ、申立人の主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおり、本件発明5は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)本件発明6について ア 対比 本件発明6と甲1方法発明2とを対比する。 (ア)本件発明6における「Pd、Ni、およびZrからなるアモルファス金属を粉砕処理した微細金属粒子」と、甲1方法発明2における「ナノ金属試料であるPNZ系試料」とは、いずれも、「金属材料」である限りで共通する。 (イ)甲1方法発明2は、「ナノ金属試料であるPNZ系試料を作製し、ナノ金属試料であるPNZ系試料とフィラーとしてのジルコニアビーズを新規発熱量評価装置へ同時に装荷し」た状態で、「水素あるいは重水素を常温で導入」するものであるところ、技術常識に照らして、水素あるいは重水素の導入により、ナノ金属試料であるPNZ系試料に(その量の多寡はともかく)水素あるいは重水素が吸蔵されると解される。 そうすると、本件発明6において、「Pd、Ni、およびZrからなるアモルファス金属を粉砕処理した微細金属粒子に水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給し、水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵させる」ことと、甲1方法発明2において、「ナノ金属試料であるPNZ系試料を作製し、ナノ金属試料であるPNZ系試料とフィラーとしてのジルコニアビーズを新規発熱量評価装置へ同時に装荷し」た状態で、「水素あるいは重水素を常温で導入」することとは、上記(ア)を踏まえると、いずれも、「金属材料に水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給し、水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵させる」ことである限りで共通する。 (ウ)本件発明6における「水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵された前記微細金属粒子を200℃以上450℃以下に加熱し、ナノ複合金属材料を得る反応工程」と、甲1方法発明2において、「ナノ金属試料であるPNZ系試料とフィラーとしてのジルコニアビーズを新規発熱量評価装置へ同時に装荷し」た状態で、「水素あるいは重水素を常温で導入し」た後、「200℃から350℃に昇温」することとは、上記(ア)、(イ)を踏まえると、いずれも、「水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵された前記金属材料を200℃以上450℃以下に加熱」する「工程」である限りで共通する。 (エ)本件発明6の「ナノ複合金属材料の製造方法」と、甲1方法発明2の「発熱量の測定方法」とは、いずれも、「方法」である限りで共通する。 (オ)以上によれば、本件発明6と甲1方法発明2とは、 「金属材料に水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給し、水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵させる水素吸蔵工程と、 水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵された前記金属材料を200℃以上450℃以下に加熱する工程と、 を有する方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点6-1 方法が、本件発明6では、「ナノ複合金属材料の製造方法」であるのに対して、甲1方法発明2では、「発熱量の測定方法」である点。 ・相違点6-2 金属材料が、本件発明6では、「Pd、Ni、およびZrからなるアモルファス金属を粉砕処理した微細金属粒子」であるのに対して、甲1方法発明2では、「ナノ金属試料であるPNZ系試料」である点。 ・相違点6-3 水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵された金属材料を200℃以上450℃以下に加熱する工程が、本件発明6では、「ナノ複合金属材料を得る反応工程」であるのに対して、甲1方法発明2では、「ナノ複合金属材料を得る反応工程」であるのかどうか不明である点。 イ 相違点6-1、6-3の検討 事案に鑑み、相違点6-1、6-3をまとめて検討する。 (ア)まず、相違点6-1、6-3が実質的な相違点であるか否かについて検討する。 甲1方法発明2は、「発熱量の測定方法」に関する発明であって、ナノ金属試料であるPNZ系試料について、所定の手順により過剰熱等の発熱量を測定するものにすぎず、ナノ複合金属材料を製造しようとするものではない。 また、甲1方法発明2は、ナノ金属試料であるPNZ系試料とフィラーとしてのジルコニアビーズを新規発熱量評価装置へ同時に装荷した状態で、水素あるいは重水素を常温で導入した後、「200℃から350℃に昇温」するものではあるものの、「200℃から350℃に昇温」することは、過剰熱等の発熱量を測定するために行われるものにすぎず、「ナノ複合金属材料を得る」ための「反応」であるとはいえない。 以上によれば、相違点6-1、6-3は、いずれも、実質的な相違点である。 したがって、相違点6-2について検討するまでもなく、本件発明6は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (イ)次に、相違点6-1、6-3の容易想到性について検討する。 上記(ア)のとおり、甲1方法発明2は、「発熱量の測定方法」に関する発明であって、ナノ複合金属材料を製造しようとするものではないから、甲1方法発明2において、「発熱量の測定方法」に代えて、「ナノ複合金属材料の製造方法」とする動機付けがあるとはいえない。 また、上記(ア)のとおり、甲1方法発明2において、「200℃から350℃に昇温」することは、「ナノ複合金属材料を得る」ための「反応」であるとはいえないから、甲1方法発明2において、「200℃から350℃に昇温」することを、「ナノ複合金属材料を得る」ための「反応」とする動機付けがあるとはいえない。 以上によれば、甲1方法発明2において、「200℃から350℃に昇温」することを、「ナノ複合金属材料を得る」ための「反応」とするとともに、「発熱量の測定方法」に代えて、「ナノ複合金属材料の製造方法」とすることは、当業者が容易に想到することができたとはいえない。 したがって、相違点6-2について検討するまでもなく、本件発明6は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、本件発明6についても、本件発明5についての主張(上記(5)ウ)と同様に主張するが(申立書20頁2行~下から6行)、同様の理由により、採用できない。 エ 小括 したがって、本件発明6は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7)本件発明7~10について 本件発明7~10は、本件発明5又は6を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明5又は6の発明特定事項を全て備えるものであるが、上記(5)、(6)で述べたとおり、本件発明5、6が、いずれも、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件発明7~10についても同様に、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (8)まとめ 以上のとおり、本件発明5~7は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、本件発明1~10は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由3(サポート要件) (1)本件発明1~4について ア 本件明細書の記載(【0002】~【0005】)によれば、本件発明1~4が解決しようとする課題は、「水素との発熱反応による発熱量増大を図ることができる、ナノ複合金属材料を提供すること」であると認められる。 イ 本件明細書の記載(【0006】、【0007】、【0010】~【0061】、【0134】~【0137】、【0164】~【0244】)によれば、上記アの課題は、 (ア)「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、CuおよびNiからなる二元素金属粒子と、からなる」ナノ複合金属材料において、「CuとNiとの原子数比」を「1:7以上1:15以下の範囲」とし、「NiとZrとの原子数比」を「1:2以上1:4以下の範囲」とし、「前記担体の酸化度」を「31%より大きく且つ100%以下」とし、「前記ナノ複合金属材料を熱反応装置の反応炉内に配置し、前記反応炉内を真空状態とした上で、前記反応炉内に水素ガス及び重水素ガスに少なくともいずれかを供給しつつ前記熱反応装置が備える加熱機構にて前記反応炉内を250℃以上350℃以下の温度範囲に加熱した場合に、ジルコニアビーズの不発熱ブランク試料を前記反応炉に装填した熱量校正試験データと比較することによって算出される前記ナノ複合金属材料の過剰熱」を「100W/kg以上」とする、との各要件を備えること、 (イ)「Zrからなる担体と、前記担体に担持され、PdおよびNiからなる二元素金属粒子と、からなる」ナノ複合金属材料において、「PdとNiとの原子数比」を「1:7以上1:15以下の範囲」とし、「NiとZrとの原子数比」を「1:2以上1:4以下の範囲」とし、「前記担体の酸化度」を「3%以上であり且つ100%以下」とし、「前記ナノ複合金属材料を熱反応装置の反応炉内に配置し、前記反応炉内を真空状態とした上で、前記反応炉内に水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給しつつ前記熱反応装置が備える加熱機構にて前記反応炉内を250℃以上350℃以下の温度範囲に加熱した場合に、ジルコニアビーズの不発熱ブランク試料を前記反応炉に装填した熱量校正試験データと比較することによって算出される前記ナノ複合金属材料の過剰熱」を「40W/kg以上」とする、との各要件を備えること、 によって、解決できることが理解できる。 ウ 以上のとおり、本件明細書の記載を総合すれば、上記イ(ア)又は(イ)の各要件を備えた本件発明1~4は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって、当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により上記アの課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。 したがって、本件発明1~4については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。 (2)申立人の主張について ア 申立人は、本件発明1においては、ナノ複合金属材料の過剰熱が「100W/kg以上となる」ことが特定されているところ、本件明細書には、「100W/kg以上」という意義を有する閾値が特定された数値範囲が記載されているとはいえず、また、本件明細書には、酸化度35.6%のナノ複合金属材料10AであるCNZ7r(当審注:再焼成なし)で発熱量104.9W/kgが得られたことは示されているが、酸化度が35.6%よりも低い場合には、「100W/kg以上」の発熱量は得られていないから、本件明細書に開示された内容を本件発明1の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえないと主張する。 しかしながら、本件発明1~4については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものであることは、上記(1)のとおりである。本件明細書に、酸化度が35.6%よりも低い場合についての具体例が記載されていないとしても、そうであるからといって、直ちに、本件発明1、3、4について、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないとはいえない。また、酸化度が35.6%よりも低い場合に、実際に、水素との発熱反応による発熱量増大を図ることができないことを示す具体的な根拠は見当たらない。 よって、申立人の主張は採用できない。 イ 申立人は、本件発明2においては、ナノ複合金属材料の過剰熱が「40W/kg以上となる」ことが特定されているところ、本件明細書には、「40W/kg以上」という意義を有する閾値が特定された数値範囲が記載されているとはいえず、また、本件明細書には、酸化度14.9%のナノ複合金属材料10BであるPNZ10r(当審注:再焼成なし)で発熱量62.5W/kgが得られたことは示されているが、酸化度が14.9%よりも低い場合には、「40W/kg以上」の発熱量は得られていないから、本件明細書に開示された内容を本件発明2の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえないと主張する。 しかしながら、本件発明1~4については、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものであることは、上記(1)のとおりである。本件明細書に、酸化度が14.9%よりも低い場合についての具体例が記載されていないとしても、そうであるからといって、直ちに、本件発明2~4について、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないとはいえない。また、酸化度が14.9%よりも低い場合に、実際に、水素との発熱反応による発熱量増大を図ることができないことを示す具体的な根拠は見当たらない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (3)まとめ したがって、申立理由3(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701143

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    共通の審決分類: 113・B22F、121・B22F、537・B22F

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