特許異議申立
2025-700249
口腔用組成物
- 審判番号
- 2025-700249
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-219406
- 登録番号
- 7621117
- 請求日
- 2025年02月28日
- 審決日
- 2025年12月15日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ライオン株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】松本 文彦
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 野田 定文
- 審判官 江間 正起
- 分類
- P1651.121-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7621117号発明「口腔用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7621117号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7621117号の請求項1~5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年12月28日に特願2020-219406号として出願され、令和7年1月16日にその請求項1~5に係る特許権の設定登録がされ、同年同月24日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~5に係る特許に対し、同年2月28日に松本 文彦(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
特許異議の申立てがされた本件特許の請求項1~5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、本件特許の請求項1~5に係る発明を「本件発明1」~「本件発明5」と略記する場合がある。)
「【請求項1】
(A)植物エキスと、
(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドと
を含有しており、
(A)植物エキスが、ローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダからなる群から選ばれる1種以上の植物の抽出エキスである、口腔用組成物。
【請求項2】
(A)植物エキスを、エキス純分量として0.00001~0.05質量%含有し、
(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドを0.00001~0.1質量%含有する、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(A)植物エキスの含有量(エキス純分量)の(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドの含有量に対する質量比が0.02~100である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
歯磨剤又は洗口剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
歯磨剤であって、(C)研磨剤を8~70質量%さらに含有する、請求項4に記載の口腔用組成物。」
第3 申立人が申し立てた理由の概要
1 申立理由の概要
申立人は、甲第1~5号証(以下「甲1」などという。)を提出し、本件特許は、以下の理由により、取り消されるべきものである旨主張している(特許異議申立書(以下「申立書」という。)の第81頁)。
「請求項1乃至請求項5に係る発明は、甲1発明及び甲第2号証に記載の事項並びに技術常識(甲第3号証~甲第5号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項1乃至請求項5に係る発明は、甲2発明及び甲第1号証に記載の事項並びに技術常識(甲第3号証~甲第5号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項1乃至請求項5に係る発明は、甲3発明及び甲第2号証に記載の事項並びに技術常識(甲第1号証、甲第4号証、甲第5号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、請求項1乃至請求項5に係る発明は、甲5発明及び甲第2号証に記載の事項並びに技術常識(甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」
上記記載、及び申立書の記載全体から、申立理由は、以下のとおりであると認められる(申立理由の番号は、当審合議体が付した。)。
申立理由(1)
本件発明1~5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲1に記載された発明、及び甲2~甲5に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由(2)
本件発明1~5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲2に記載された発明、並びに甲1及び甲3~甲5に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由(3)
本件発明1~5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲3に記載された発明、並びに甲1、甲2、甲4及び甲5に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
申立理由(4)
本件発明1~5は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲5に記載された発明、及び甲1~甲4に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
2 証拠方法
甲1:特表2018-531948号公報
甲2:国際公開第2018/131575号
甲3:国際公開第2018/221621号
甲4:特開2011-126818号公報
甲5:特開2011-140523号公報
第4 当審合議体の判断
当審合議体は、本件請求項1~5に係る特許は、申立人が申し立てた理由により取り消すべきではないと判断する。
理由は、以下のとおりである。
1 甲号証の記載
各甲号証には、次の記載がある(以下「・・・」は摘記の省略を示す。)。
(1)甲1の記載事項
摘記(1a):
「【請求項1】
以下の式(I):
【化1】
[図:0001431143000001.jpg]
(R1は、独立して、H、アルキル、アリール、アミノアルキル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニルから選択され、
Q=H2、O、OR1、N(R1)2であり、
V=-(CH2)mN(R1)2、O、OR1であり、m=0~6であり、
W=H2、Oであり、
n=0の場合、X、Y=独立して、H、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ナフチルから選択され、
n≧1の場合、X、Y=脂肪族CH2又は芳香族CHであり、Zは、脂肪族CH2、芳香族CH又はヘテロ原子から選択され、
A=低級アルコキシ、低級アルキルチオ、アリール、置換アリール又は縮合アリールであり、
そして、立体化学は、*印の付いている位置において可変である)のN-メンタンカルボキサミド誘導体及びその薬剤として許容される塩を調製する方法・・・」
摘記(1b):
「【0001】
本発明は、感覚剤として有用なシクロヘキサン系誘導体の合成に関する。具体的には、本合成経路は、シクロヘキサン系カルボキサミド冷感剤の様々な異性体を調製するために使用することができる。」
摘記(1c):
「【0003】
したがって、自宅での日々の口腔ケアには、抗う食、抗菌、抗歯肉炎、歯垢防止、結石防止及び侵食防止、並びに悪臭防止、口の清涼化、着色汚れ除去、着色汚れの制御及び歯の白色化を含む、完全な範囲の治療上の効果及び審美的な効果を提供するために、様々な機構によって機能する複数の成分を含む製品が必要である。歯磨剤及びすすぎ液などの毎日使用するための口腔ケア製品により完全な口腔ケアを提供するために、多くの場合活性物質と添加剤とを組み合わせることが必要であり、これらの多くは、使用中に負の審美性、具体的には不快な味、不快な感覚及び着色汚れ促進の原因となるという問題点を有する。不快な味及び口内感覚は、苦み、金属感、渋み、塩み、しびれ、刺痛感、灼熱感、又は穿痛感、及び更なる刺激性態様のうちの1つ以上を有すると記載されている。・・・これら成分から審美上の問題点を軽減するために、口腔ケア製品には、典型的には、できる限り良好な味がするようにしかつ心地よい経験を提供するために着香剤、甘味剤及び冷感剤が配合される。特に、口腔ケア製品が使用中及び使用後に清涼な冷感を提供することが望ましい。負の感覚の軽減に加えて、感覚剤分子は、有効性のシグナルを伝えるために口腔ケア組成物に配合される。このような有効性のシグナルとしては、冷感、ヒリヒリ感、しびれ、温感、甘み、並びに相変化及び泡立ち又は発泡などのレオロジー的感覚が挙げられる。
【0004】
天然起源又は合成起源の多数の冷感剤化合物が報告されている。最もよく知られている化合物は、特にニホンハッカ(Mentha arvensis L)及びオランダハッカ(Mentha viridis L)のペパーミント油中に自然界でみられるメントール、特にl-メントールである。・・・この研究は、冷感及び清涼さ並びにこれら分子の活性に対する立体化学の影響の観点から、l-メントールの優れた感覚特性を実証した。
【0005】
合成冷感剤の中でも、多くは、メントールの誘導体であるか又はメントールと構造的に関連している、すなわち、シクロヘキサン部分を含み、カルボキサミド、ケタール、エステル、エーテル及びアルコールを含む官能基で誘導体化されている。・・・
【0021】
以下、本明細書において使用される全ての百分率及び比率は、特に指示がない限り、組成物全体の重量を基準とする。・・・」
摘記(1d):
「【0127】
実施例15(1R,2S,5R)-N-((S)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドの合成
【0128】
【化34】
[図:0001431143000002.jpg]
【0129】
乾燥した25mLの丸底フラスコ(フラスコA)に、0.4961グラム(3.62mmol)の(S)-2-アミノ-1-フェニルエタン-1-オール、0.689グラム(6.81mmol)トリエチルアミン及び5mLの無水塩化メチレンを添加した。反応フラスコを氷浴に浸漬した。別の乾燥した25mLの丸底フラスコ(フラスコB)に、0.597グラム(2.95mmol)の(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボニルクロリド及び5mLの無水塩化メチレンを添加した。フラスコBの内容物を、乾燥した25mLの均圧添加漏斗に添加した。添加漏斗を反応フラスコAに接続し、10分間にわたって300r.p.m.で混合しながらかつ装置のヘッドスペースを乾燥窒素でパージしながら、酸塩化物の溶液をゆっくり添加した。次いで、添加漏斗を4mLの無水塩化メチレンですすぎ、これを反応フラスコに添加した。融解氷浴条件及び静的乾燥窒素雰囲気下、300r.p.m.で更に5時間反応器の内容物を混合し続けた。反応期間後、反応溶液を250mLの分液漏斗に添加し、60mLの無水ジエチルエーテルで合計体積75mLに希釈した。有機層を1.0N HClの20mLのアリコートで3回、飽和重炭酸ナトリウムの20mLのアリコートで2回、蒸留水の20mLのアリコートで1回、及び飽和塩化ナトリウムの20mLのアリコートで1回抽出した。抽出した有機層を無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥させ、Whatman #4フィルタで濾過して任意の粒子を除去し、次いで、減圧下で溶媒を除去して、0.7gの標題化合物を得た;MS(ESI)m/z 304(MH+)。
【0130】
実施例16及び実施例17異性体物質(1R,2S,5R)-N-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド及び(1R,2S,5R)-N-((R/S)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドの合成
【0131】
【化35】
[図:0001431143000003.jpg]
【0132】
それぞれ、(R)-2-アミノ-1-フェニルエタン-1-オール及びラセミ(R/S)-2-アミノ-1-フェニルエタン-1-オールで出発して、実施例15と同様にこれら物質を調製した。」
摘記(1e):
「【0256】
【表8-1】
[図:0001431143000004.jpg]
【0257】
【表8-2】
[図:0001431143000005.jpg]
・・・
【0259】
【表8-4】
[図:0001431143000006.jpg]
」
摘記(1f):
「【0264】
実施例53:冷感歯磨剤製剤
10百万分率(ppm)の着香料(ペパーミント)中に冷感剤を含有していない(サンプルA)又は表7の冷感剤を有している(サンプルB及びC)、米国特許第8,747,814号に記載のプロトコールなどの従来の方法を使用して歯磨剤を調製した。
【0265】
【表9】
[図:0001431143000007.jpg]
*QSは用語「適量」を指し、これは十分な量であることを意味し、処方の残りはこの物質で満たされる。
【0266】
冷感活性の知覚評価試験は、M.C.Meilgaard,et al.,Sensory Evaluation Techniques,4th Ed.(2007)に記載の技術に倣って作られた方法を使用して実施した。10百万分率(ppm)の着香料(ペパーミント)中に冷感剤を含有していない(サンプルA)又は表7の冷感剤を有している(サンプルB及びC)表8の歯磨剤で2分間、5人のパネリストがブラッシングした。ブラッシングし、吐き出した後、パネリストは、次いで、15mLの水性すすぎ液で口をすすぎ、吐き出した。表9に示すとおり、パネリストは、次いで、冷感のない0から氷のように冷たいと感じられる90までの数が割り当てられた冷感強度を評価した。
【0267】
【表10】
[図:0001431143000008.jpg]
【0268】
表9に記載したとおり、実施例1に概説した反応生成物から得られたD(S)L異性体は、ブラッシング後12時間にわたって高い冷感を示した。一方、D(R)L異性体では、30分間後に消えた。このデータは、パネリストによって記載された冷却応答にD(S)L異性体が寄与することを示した。」
(2)甲2の記載事項
摘記(2a):
「【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[図:0001431143000009.jpg]
[式(1)中、*印は不斉炭素原子であり、Xは水素原子又は置換基を表し、Yは置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基である。]
で表されるメチルメントール誘導体を含有する冷感剤組成物。
・・・
【請求項3】
前記一般式(1)が、下記構造式(2)で表される、請求項1又は2に記載の冷感剤組成物。
【化2】
[図:0001431143000010.jpg]
[式(2)中、*印は不斉炭素原子である。]
・・・
【請求項11】
・・・口腔用組成物・・・からなる群より選ばれるいずれかの製品であって、請求項6~8のいずれか1項に記載の感覚刺激剤組成物を含有する製品。」
摘記(2b):
「【0002】
従来、ヒトの皮膚や口腔、鼻、喉に対して爽やかな感覚(清涼感)や冷たい感覚(冷涼感)、すなわち冷感効果を与える冷感剤は、歯磨剤、菓子(例えば、チューイングガム、キャンディー等。)、たばこ、ハップ剤、化粧料などに使用されている。これら清涼感又は冷涼感を与える香料物質として、l-メントールが現在広く使用されているが、その冷感効果は持続性に欠け、また、使用量を多くすると冷感効果が増強される反面、苦みを伴うことがあるという欠点がある。」
摘記(2c):
「【0079】
[実施例1]例示化合物(1-1)の合成(N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキシアミド)
【0080】
【化15】
[図:0001431143000011.jpg]
【0081】
本反応は窒素雰囲気下にて行った。100mL四つ口フラスコに、国際公開第2016/153011号の手法に従い得られた5-メチルメンチルカルボン酸(25g、126mmol)、塩化チオニル(10.2mL、1.12eq.)、トルエン(50mL)及びジメチルスルホキシド(DMF)数滴を添加し、室温にて3時間撹拌させた。その後、系内の温度を10℃以下に冷却し、(±)-2-アミノ-1-フェニルエタノール(19.0g、1.1eq.)、トルエン(75mL)及びトリエチルアミン(22.8mL)の混合溶液へゆっくりと加えた。2時間半かけて反応させた後、反応溶液を分液漏斗に移し、水道水と酢酸エチルを添加して洗浄した。油層を希塩酸で2回洗浄し、更に飽和食塩水で1回洗浄して、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。得られた溶液を減圧濃縮し、ヘプタン/酢酸エチルにて再結晶を行い、N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキシアミドを白色結晶として得た(29.2g、収率73%)。」
摘記(2d):
「【0131】
[実施例14]例示化合物(1-1)の官能評価
【0132】
【化28】
[図:0001431143000012.jpg]
【0133】
官能評価は、従来知られている比較化合物1~4と比較して行った。・・・例示化合物(1-1)、比較化合物1~4は共に30ppm水溶液を調製し、該水溶液を用いて評価を行った。
評価はフレーバリスト3人により行った。前記水溶液を口に含み、うがいをした後吐き出し、口腔内における冷感の強度、持続性、質等について評価した。
【0134】
[官能所見]
・例示化合物(1-1)は、冷感は大変強く、明らかに比較化合物3,4より強かった。また、その冷感は60分以上続いた。
・比較化合物2は、冷感強度、持続性は例示化合物(1-1)と同等であり、冷感はかなり強く、持続性も有していた。
・冷感の立ち上がりについては、例示化合物(1-1)は比較化合物1~4より明らかに速かった。口に入れた瞬間に冷感を強く感じ、比較化合物2~4と比べて苦味などの雑味が少なかった。
・冷感の質については、例示化合物(1-1)は比較化合物1~4よりもシャープでヒンヤリ感に富んでいた。また、比較化合物1~4より灼熱感やピリピリ感は弱く、クリアな冷感を有していた。」
摘記(2e):
「【0147】
[実施例18]歯磨き粉賦香評価
【0148】
【化32】
[図:0001431143000013.jpg]
【0149】
l-メントールと、比較化合物1又は例示化合物(1-1)をそれぞれ賦香した歯磨き粉に対する官能評価を行った。
【0150】
下記の配合に従い、歯磨き粉(A)~(C)を調製した。
(A)歯磨き粉基剤 990g+ツースペーストフレーバーBASE 4g+l-メントール 4g+エチルアルコール(EtOH) 2g
(B)歯磨き粉基剤 990g+ツースペーストフレーバーBASE 4g+l-メントール 4g+比較化合物1(1% in EtOH) 2g
(C)歯磨き粉基剤 990g+ツースペーストフレーバーBASE 4g+l-メントール 4g+例示化合物(1-1)(1% in EtOH) 2g
・・・
【0155】
評価はフレーバリスト3人により行った。歯ブラシに約1gの歯磨き粉をとり、通常歯を磨く方法で約5分間歯を磨いてもらった。歯磨き後にうがいをし、口腔内における冷感の強度、持続性、質等について評価した。
【0156】
[評価コメント]
歯磨き粉(B)及び歯磨き粉(C)は歯磨き粉(A)よりも強い冷感効果があり、歯磨き粉(C)は歯磨き粉(B)と同等の冷感効果を有する。また歯磨き粉(C)は歯磨き粉(B)に比べると、ツースペーストフレーバーBASEの香味プロファイルがきれいに発現し冷感の感覚もクリアな印象である。歯磨き粉(B)及び歯磨き粉(C)は共には30分以上の冷感効果が感じられた。」
(3)甲3の記載事項
摘記(3a):
「【請求項1】
(A)植物エキスをエキス純分として0.00001~0.05質量%と、
(B)N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド(B-1)及びN-(2-(2-ピリジニル)エチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド(B-2)から選ばれる1種以上を0.00001~0.01質量%と
を含有し、(A)/(B)が質量比として0.02~100である口腔用組成物。
・・・
【請求項3】
(A)植物エキスが、ローズマリー、オウゴン、ニンジン、セージ、カンゾウ、トウキ、柿、ナタマメ、オリーブ、チャ及びキハダから選ばれる1種以上の植物の抽出エキスである請求項2記載の口腔用組成物。
・・・
【請求項5】
歯磨剤又は洗口剤である請求項1~4のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項6】
歯磨剤であり、更に、(D)研磨剤を8~70質量%含有する請求項5記載の口腔用組成物。」
摘記(3b):
「【0001】
本発明は、口臭の原因ともなる口腔内のねばつき感の改善効果が優れ、かつ優れたすっきり感付与効果を有し、口臭抑制用として好適な口腔用組成物に関する。
【0002】
従来、口臭抑制には、殺菌剤による口臭原因菌の殺菌や、消臭剤、口臭原因物質の発生抑制剤等の有効成分の使用が有効であることが知られており、これらを配合した口腔用組成物が提案されている。例えば、シソ科やミカン科などの植物抽出エキスは、口臭抑制成分として知られており、これら以外にも植物のエキスを口臭防止のための有効成分として配合した口腔用組成物が提案されている(特許文献1~3:特開2005-289918号公報、特許第5776364号公報、特開2016-112634号公報)。これら植物抽出エキスを配合した口腔用組成物は、口臭の原因成分、例えば揮発性硫黄、メチルメルカプタン等の減少に有効であり、呼気(対人)としての口臭防止効果を有する。」
摘記(3c):
「【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するためには、特に口臭不安感の主な原因と考えられる口腔内のねばつき感や、すっきり感の少なさといった不快感を改善して口臭抑制の効果感を高めることが有効であると考え、これらの点に着目して更に検討を進めた。その結果、植物の抽出エキスと、冷感剤の中でも特定の成分を選択し、両成分をそれぞれ特定量かつ特定割合で併用すると、口腔内のねばつき感を改善し、かつ経時でも持続する高いすっきり感を与える優れた作用効果が得られることを見出した。そして、両成分の併用系を口腔用組成物に配合すると、口腔内のねばつき感の改善効果が優れる上に、上記のような持続的かつ優れたすっきり感付与効果を発揮し、また、口腔内刺激が抑えられ良好な使用感を与えることができ、これにより、口臭抑制の効果感も高まり、対人的な口臭の抑制のみならず口臭不安感をも解消可能であることを知見し、本発明をなすに至った。・・・
【0008】
更に詳述すると、後述の比較例にも示すように、(A)成分又は(B)成分の単独使用では、口腔内のねばつき感改善効果及びすっきり感付与効果がほとんどなかった(比較例1~15)。よって、この結果からは両者を併用することで両作用効果が向上するとは考えられなかったが、後述の実施例からも明らかなように、本発明では(A)成分と(B)成分とを組み合わせると、両者の配合量がそれぞれ特定範囲かつ(A)/(B)の質量比が特定範囲内において、両成分が相乗的に作用し、口腔内刺激を抑えてねばつき感の改善効果及びすっきり感付与効果が共に増強し、格別顕著な作用効果を奏した。このような本発明の作用効果は、(A)及び(B)成分の組み合わせに特異なものであり、(B)成分に代えて、同様に冷感又は清涼化作用を有するメントール、ペパーミント油又はモノメンチルサクシネートを(A)成分と併用したのでは劣り(比較例16~18)、また、(B)成分以外のN-置換-p-メンタン-カルボキサミドを(A)成分と併用した場合も劣った。
特許文献4~9(特開2014-125440号公報、特開2015-182983号公報、特開2016-102076号公報、特表2014-507440号公報、特表2012-508741号公報、特表2011-520925号公報)は、冷涼化又は清涼化剤のN-置換-p-メンタン-カルボキサミドによって清涼感やサッパリ感が改善した口腔用組成物、特許文献10(特開2013-112634号公報)は、p-メンタン-3,8-ジオール異性体混合物含有の口腔用組成物を開示する。これに対し、本発明は、(A)及び(B)成分の併用による、口腔内のねばつき感の改善及びすっきり感の付与であり、その技術的思想は特許文献4~10から予測できない。
・・・
【0010】
本発明によれば、口臭の原因ともなる口腔内のねばつき感の改善効果が優れ、かつ優れたすっきり感付与効果を有し、使用感も良い口腔用組成物を提供できる。本発明の口腔用組成物は、口臭抑制実感も高く、口臭抑制用として好適に使用できる。」
摘記(3d):
「【0032】
以下、実施例及び比較例、処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0033】
[実施例、比較例]
表1~6に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)又は洗口剤をそれぞれ常法によって調製し、通常の口腔用製剤容器(練歯磨:ラミネートチューブ、洗口剤:ボトル)に収容した。これらをサンプルとして用い、下記に示す方法で評価した。結果を表1~6に併記した。表中の(A)成分の配合量の数値は、抽出溶媒を除いたエキス純分量である。
【0034】
<使用した原料>
(A)成分
《A1:ローズマリーエキス》
商品名:ローズマリー抽出物-J、抽出溶媒:50%エタノール、使用部位:葉
メーカー:丸善製薬(株)
《A2:オウゴンエキス》
商品名:オウゴン抽出物-J、抽出溶媒:50%エタノール、使用部位:根
メーカー:丸善製薬(株)
《A3:ニンジンエキス》
商品名:ニンジン抽出物、抽出溶媒:50%エタノール、使用部位:根
メーカー:丸善製薬(株)
《A4:セージエキス》
商品名:サルビア抽出物、抽出溶媒:50%エタノール、使用部位:葉
メーカー:丸善製薬(株)
《A5:カンゾウエキス》
商品名:カンゾウ抽出物、抽出溶媒:50%エタノール、使用部位:根
メーカー:丸善製薬(株)
《A6:ナタマメエキス》
商品名:AOF ナタマメエキス-HBG、抽出溶媒:50%1,3-ブチレングリコール、使用部位:種子
メーカー:(株)ヤマダ薬研
《A7:柿タンニンエキス》
商品名:パンシル BA-200E-1、抽出溶媒:水、使用部位:果実
メーカー:リリース科学工業
《A8:トウキエキス》
商品名:トウキ抽出物-JC、抽出溶媒:50%エタノール、使用部位:根
メーカー:丸善製薬(株)
《A9:オリーブ葉エキス》
商品名:オリーブ抽出物-BG、抽出溶媒:50%ブチレングリコール、使用部位:葉
メーカー:丸善製薬(株)
【0035】
(B)成分
《B1:N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド》
商品名:エバクールG-180、メーカー:ジボダンジャパン社
《B2:N-(2-(2-ピリジニル)エチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド》
商品名:エバクールG-190、メーカー:ジボダンジャパン社
・・・
【0037】
<評価方法>
被験者4名によって評価した。
歯ブラシ(クリニカアドバンテージ歯ブラシ、4列コンパクトふつう、ライオン(株)製)にサンプルの歯磨剤組成物1gを載せ、3分間歯みがきを行った後、10mLの水で1回、口腔内をすすいだ。サンプルが洗口剤の場合は10mLを口に含み、30秒間洗口したのちに吐出した。使用後の口腔内のねばつき感、使用して60分間経過後の口腔内のすっきり感、口腔内刺激(使用直後の口腔内での刺激感のなさ)を、それぞれ下記の評点基準によって判定し、4名の平均点を求め、下記の評価基準で評価した。
【0038】
<口腔内のねばつき感>
評点基準
5:全く感じない
4:あまり感じない
3:どちらともいえない
2:やや感じる
1:非常に感じる
評価基準
◎:4点以上
○:3点以上4点未満
×:3点未満
【0039】
<口腔内のすっきり感>
評点基準
5:非常に感じる
4:感じる
3:どちらともいえない
2:あまり感じない
1:全く感じない
評価基準
◎:4点以上
○:3点以上4点未満
×:3点未満
【0040】
<口腔内刺激>
評点基準
5:全く感じない
4:あまり感じない
3:どちらともいえない
2:やや感じる
1:非常に感じる
評価基準
◎:4点以上
○:3点以上4点未満
×:3点未満
【0041】
【表1】
[図:0001431143000014.jpg]
【0042】
【表2】
[図:0001431143000015.jpg]
【0043】
【表3】
[図:0001431143000016.jpg]
」
(4)甲4の記載事項
摘記(4a):
「【請求項1】
ローズマリー、セージ、オウゴン、ニンジン、シャクヤク、ムクロジ、トウキから選ばれる植物の水及び/又は有機溶媒による抽出物を配合した歯磨剤組成物に、(A)グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸から選ばれる1種以上、(B)塩化ナトリウム、及び(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が5~30のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合し、かつ(B)成分/(C)成分の質量比を0.3~20としたことを特徴とする歯磨剤組成物。」
摘記(4b):
「【背景技術】
【0002】
従来、歯磨剤組成物には口腔内の不具合を予防する目的で、種々の成分が配合されている。歯肉炎を予防する目的では、炎症抑制効果、血行促進効果、組織賦活効果などを有するさまざまな成分が用いられている。中でも、ローズマリー、セージ、オウゴン、ニンジン、シャクヤク、ムクロジ、トウキなどの生薬抽出物は、抗炎症作用、血行促進作用、収斂作用、抗菌作用、保湿作用、洗浄作用などを有しており、従来より口腔用組成物に配合することが知られている(特許文献1~5参照)。」
摘記(4c):
「【0005】
抗炎症効果を有するローズマリー、セージ、オウゴン、ニンジン、シャクヤク、ムクロジ、トウキなどの生薬抽出物に、高い抗炎症効果を有するグリチルリチン酸やその塩、グリチルレチン酸を併用して口腔用組成物に配合すれば高い抗炎症効果が期待できる。しかしながら、この場合、生薬抽出物は天然物から採取される成分であるため、歯磨剤組成物に配合すると味が苦くなり使用感が悪くなるという課題がある上、このような天然物である生薬抽出物とグリチルリチン酸やその塩、グリチルレチン酸とを併用すると、生薬抽出物に含有される不純物や、あるいは抽出溶媒による影響を受け、グリチルリチン酸やその塩及びグリチルレチン酸が経時で分解し易く、このためグリチルリチン酸塩及びグリチルレチン酸を経時で安定的に配合するのは困難であり、これらの点が技術課題であった。」
(5)甲5の記載事項
摘記(5a):
「【請求項1】
(A)ローズマリー、セージ、タイム、マジョラム、メリッサ、シソ、オレガノ、バジル、ナギナタコウジュから選ばれるシソ科の植物又はその抽出物と、(B)サンショウの種子又はその抽出物とからなる口臭抑制剤。」
摘記(5b):
「【0005】
本発明は、口臭予防効果、口臭抑制効果に優れ、しかもその効果の持続性の高い口臭抑制剤及び口臭抑制用口腔内組成物を提供することを目的とする。」
摘記(5c):
「【0034】
[実施例1~7、比較例1~3]
表1に示す組成に従い、適量のエタノールに植物エタノール抽出エキス又は植物粉末、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、水等の成分を加えて撹拌溶解し、これをポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥して、厚さ約300μmのフィルムを製造した。得られたフィルムを直径14mmの丸形に裁断し、口腔内貼付剤を得た。
調製したサンプルについて、下記の手順で、口臭抑制評価を行った。結果を表1に示す。
方法:口臭の強い男女20名について、サンプル貼付前と、貼付後10分後と、製剤が口中からなくなった後60分後との呼気をテドラーバッグに1リットル採取し、口臭の強さを専門評価者によって評価した。評価は、貼付前との比較で下記の4段階で評価し、○以上を良好なレベルと判断した。
◎:非常に抑制した
○:抑制した
×:変わらなかった
<使用感(味覚)>
男女20名により、貼付時の使用感について評価した。
◎:苦味なし
○:やや苦味あり
×:苦味あり
【0035】
【表1】
[図:0001431143000017.jpg]
・・・
【0038】
[実施例10] 口腔内貼付剤
l-メントール 5.0 %
プルラン 52.2
キサンタンガム 5.9
ソルビット 8.4
濃グリセリン 9.0
プロピレングリコール 2.7
モノステアリン酸デカグリセリル 1.0
アセスルファムカリウム 0.24
スクラロース 0.16
アスパルテーム 2.0
ローズマリーの水抽出物(豊玉香料(株)製) 1.0
サンショウのエタノール抽出物((株)京都食品研究所製) 0.5
羅漢果抽出物 1.0
パセリ油 0.05
水 残
計 100.0
・・・
【0040】
実施例8~11について、これを常法により適用し、実施例1~7と同様の口臭試験を実施した結果、表2に示す通り、優れた口臭抑制効果が認められた。
【0041】
【表2】
[図:0001431143000018.jpg]
・・・
【0042】
[実施例12] 口腔内貼付剤
プルラン 2.0 %
ヒドロキシプロピルセルロース 28.0
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 25.0
ポリビニルアルコール 1.0
キサンタンガム 6.0
D-ソルビトール 8.0
濃グリセリン 10.0
アスパルテーム 0.05
モノステアリン酸ソルビタン 0.5
塩化セチルピリジニウム 2.0
グリチルリチン酸ジカリウム 3.5
エタノール 5.0
ローズマリーの水抽出物(豊玉香料(株)製) 0.02
サンショウのエタノール抽出物((株)京都食品研究所製) 0.3
l-メントール 1.0
水 残
計 100.0 」
2 引用発明
(1)甲1発明
甲1の特許請求の範囲及び明細書の記載(摘記(1a)、(1b)、(1c)及び(1f))からみて、甲1には、「表8:表7の化合物を含有する歯磨剤製剤」の「サンプルB」及び「サンプルC」として、以下の発明が記載されていると認める。
「以下の表で表される配合の歯磨剤製剤(数字は、重量%)。
[図:0001431143000019.jpg]
ここで、「冷感剤分子#17」は、以下の式で表されるシクロヘキサン系カルボキサミド化合物の塩である。
[図:0001431143000020.jpg]
」(以下「甲1-1発明」という。)
「以下の表で表される配合の歯磨剤製剤(数字は、重量%)。
[図:0001431143000021.jpg]
ここで、「冷感剤分子#33」は、以下の式で表されるシクロヘキサン系カルボキサミド化合物である。
[図:0001431143000022.jpg]
」(以下「甲1-2発明」という。)
(2)甲2発明
甲2の請求の範囲及び明細書の記載(摘記(2a)及び(2e))からみて、甲2には、実施例18の「歯磨き粉(C)」として、以下の発明が記載されていると認める。
「以下の表で表される配合の歯磨き粉。
[図:0001431143000023.jpg]
ここで、「例示化合物(1-1)」は、以下の式で表される化合物である。
[図:0001431143000024.jpg]
」(以下「甲2発明」という。)
(3)甲3発明
甲3の請求の範囲及び明細書の記載(摘記(3a)及び(3d))からみて、甲3には、以下の発明が記載されていると認める。
「以下の表の実施例1~3、5、6及び8~21で表される配合の歯磨剤組成物(練歯磨)又は洗口剤(数字は、質量%)。
[図:0001431143000025.jpg]
[図:0001431143000026.jpg]
[図:0001431143000027.jpg]
」(以下「甲3発明」という。)
(4)甲5発明
甲5の特許請求の範囲及び明細書の記載(摘記(5a)及び(5c))からみて、甲5には、以下の発明が記載されていると認める。
「以下の表の実施例1、6、7、10及び12で表される配合の口腔内貼付剤。
[図:0001431143000028.jpg]
」(以下「甲5発明」という。)
3 申立理由(1)(甲1を主引例とした進歩性欠如)について
(1)甲1-1発明を主引用発明とする場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1-1発明とを対比する。
甲1-1発明の「冷感剤分子#17」は、上述のとおり下記の化学構造
[図:0001431143000029.jpg]
で表される「(1R,2S,5R)-N-((S)-2-((R)-2-アミノプロパンアミド)-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドのトリフルオロ酢酸(TFA)塩」というシクロヘキサン系カルボキサミド化合物の塩であるから、本件発明1の「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」(以下「本件(B)成分」ともいう。)と、シクロヘキサン系カルボキサミド化合物である点において共通する。
なお、本件(B)成分は、以下の式で表される化合物である(摘記(2c)を参照。)。
[図:0001431143000030.jpg]
甲1-1発明の「歯磨剤製剤」は、本件発明1の「口腔用組成物」に相当する。
また、甲1-1発明は、「冷感剤分子#17」以外に「FD&C Blue1号着色溶液」等を含むが、本件発明1は、「(A)植物エキス」及び本件(B)成分以外の成分を含むことができるから(願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0027】~【0064】)、この点は、両発明の相違点にはならない。
してみると、本件発明1と甲1-1発明は、
「シクロヘキサン系カルボキサミド化合物を含有する口腔用組成物」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1-1>
本件発明1は、「ローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダからなる群から選ばれる1種以上の植物の抽出エキス」である「(A)植物エキス」を含有するのに対し、甲1-1発明は、「植物エキス」を含有していない点
<相違点1-2>
本件発明1は、シクロヘキサン系カルボキサミド化合物が、「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」(本件(B)成分)であるのに対し、甲1-1発明は、「冷感剤分子#17」の化合物である点
(イ)検討
上記相違点1-1及び1-2について検討する。
a 相違点1-1について
甲1には、歯磨剤等の口腔ケア製品について、抗菌、悪臭防止などの有効成分の苦み等を軽減させるために着香剤、甘味剤及び冷感剤が用いられることの記載はあるが(段落【0003】~【0005】(摘記(1c))、歯磨剤に「ローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダからなる群から選ばれる1種以上の植物の抽出エキス」である「植物エキス」を含有させることや、当該「植物エキス」の苦みを特定のシクロヘキサン系カルボキサミド化合物が軽減させ得ることは記載されていない。
また、甲3~甲5にも、口臭防止等の目的で口腔用組成物に使用される植物エキスが苦みを有することが記載されているが、その苦みを特定のシクロヘキサン系カルボキサミド化合物が軽減し得ることについての記載や示唆はない。
それゆえ、甲1-1発明の歯磨剤製剤に「ローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダからなる群から選ばれる1種以上の植物の抽出エキス」である「植物エキス」を含有させる動機付けはない。
申立人は、「甲第1号証の【0003】~【0005】には、抗菌、悪臭防止などの有効成分が使用中に苦みなど不快な味、不快な感覚の原因となるという問題点を有すること、その解決手段として合成冷感剤や感覚剤分子を用いることが記載されている。ここで、ローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダなどの植物エキスが、口臭(悪臭)防止、抗菌などの有効成分であることや、苦味を有することは技術常識であった(甲第3号証の【0002】、【0010】、甲第4号証の【0002】、【0005】、甲第5号証の【請求項1】、【0005】)。してみると、甲1発明において、その苦みを抑制する観点から、合成冷感剤と併せて、抗菌、悪臭防止などの有効成分としてローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダなどの植物エキスを用いることは、甲第1号証及び技術常識(甲第3号証~甲第5号証)に記載されている事項から当業者が容易に想到できたもの」であると主張している(申立書の第62~63頁)。
しかし、上述のとおり、甲1及び甲3~甲5に記載された事項を考慮しても、甲1発明の歯磨剤製剤に、ローズマリー等の「植物エキス」を添加することの動機付けはない。
したがって、申立人の主張は、受け入れられない。
よって、甲1-1発明において、相違点1-1に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
b 相違点1-2について
甲1には、甲1-1発明の歯磨剤製剤に含有される「冷感剤分子#17」と同等の性質を有する化合物として、「冷感剤分子#5」及び「冷感剤分子#6」を製造したことが記載されている(摘記(1d)、摘記(1e))。
また、甲2には、本件(B)成分に相当する「例示化合物(1-1)」が、甲1に記載の「冷感剤分子#5」及び「冷感剤分子#6」(甲2の比較化合物2)に比べ、冷感の立ち上がりが早く、苦みなどの雑味が少ないものとして記載されている(摘記(2c)、(2d))。
しかし、甲2に記載されているのは、甲2記載の「例示化合物(1-1)」(本件(B)成分)が、従来のメントールの冷感効果の持続性等を改善した新規なメチルメントール誘導体であることだけである(摘記(2b)、(2d)、(2e))から、甲2に記載された化合物が「植物エキス」の苦み等を軽減することができることを甲2の記載から当業者が理解することはできない。
それゆえ、「植物エキス」の苦み等の軽減を目的に、甲1-1発明において、「冷感剤分子#17」に代えて、同様の性質を有するものとして示されている「冷感剤分子#5」及び「冷感剤分子#6」を用いることや、「冷感剤分子#17」を「冷感剤分子#5」及び「冷感剤分子#6」に置き換えた上で、さらに冷感の立ち上がり等に優れる甲2記載の「例示化合物(1-1)」(本件(B)成分)を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
申立人は、「甲第2号証には、例示化合物(1-1)が、比較化合物2よりも冷感の立ち上がりが早く、苦味などの雑味が少なかったこと、冷感の質がシャープでヒンヤリ感に富んでおり、灼熱感やピリピリ感は弱く、クリアな冷感を有していたことが実証されている(実施例14、【0131】~【0134】)。そうすると、甲1発明において、抗菌、悪臭防止などの有効成分の苦みなど不快な味や不快な感覚を抑制するために、良好な味がするようにしかつ心地よい経験を提供する冷感剤として、冷感の立ち上がりが早く、苦味などの雑味が少なく、冷感の質がシャープでヒンヤリ感に富んでおり、灼熱感やピリピリ感は弱く、クリアな冷感を有する甲第2号証に記載の例示化合物(1-1)であるN-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド(本件特許発明の(B)成分)を用いることは、当業者が容易に想到できたものである。」と主張している(申立書の第63~64頁)。
しかし、上述のとおり、甲2には、甲2記載の「例示化合物(1-1)」(本件(B)成分)が冷感の立ち上がりに優れる等の記載はあるが、これは、冷感剤としての性質を示しているにすぎず、「植物エキス」の苦み等を軽減することができるかどうかに関する知見を提供するものではないから、「植物エキス」の苦み等の軽減を目的に、甲1-1発明において、「冷感剤分子#17」に代えて、同様の性質を有するものとして示されている「冷感剤分子#5」及び「冷感剤分子#6」を用いることや、「冷感剤分子#17」を「冷感剤分子#5」及び「冷感剤分子#6」に置き換えた上で、さらに冷感の立ち上がり等に優れる甲2記載の「例示化合物(1-1)」(本件(B)成分)を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、申立人の主張は、受け入れられない。
よって、甲1-1発明において、相違点1-2に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
(ウ)本件発明1の効果について
本件発明1の口腔用組成物は、本件明細書の実施例で確認されているように(段落【0070】~【0104】)、(A)成分及び(B)成分を含有することで、植物エキスを用いたとしても植物エキスに由来する好ましくない後味を抑制することができ、さらにはねばつきが改善され、優れたすっきり感を付与することができるという効果を奏するものであるところ(本件明細書の段落【0008】~【0009】)、甲1~甲5には、そのような効果については何ら記載されていないから、本件発明1は、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものであるといえる。
(エ)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を引用して更に技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記アと同様の理由により、甲1に記載された発明、及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)甲1-2発明を主引用発明とする場合
甲1-2発明の歯磨剤製剤は、甲1-1発明の歯磨剤製剤の冷感剤分子を「冷感剤分子#17」に代えて「冷感剤分子#33」としたものであるから、本件発明1と甲1-2発明とを対比・検討しても、その一致点及び相違点、並びに相違点についての判断は、上記(1)に説示したものと同様である。
よって、本件発明1~5は、甲1に記載された発明、及び甲2~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 申立理由(2)(甲2を主引例とする進歩性欠如)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「例示化合物(1-1)」は、摘記(2c)の記載から、N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキシアミドであるから、本件発明1の「(B)」成分に相当する。
甲2発明の「歯磨き粉」は、本件発明1の「口腔用組成物」に相当する。
また、甲2発明は、「例示化合物(1-1)」以外に「歯磨き粉基剤」等を含むが、本件発明1は、「(A)植物エキス」及び本件(B)成分以外の成分を含むことができるから(本件明細書の段落【0027】~【0064】)、この点は、両発明の相違点にはならない。
してみると、本件発明1と甲2発明は、
「N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキシアミドを含有する口腔用組成物」
である点において一致し、次の点において相違する。
<相違点2>
本件発明1は、「ローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダからなる群から選ばれる1種以上の植物の抽出エキス」である「(A)植物エキス」を含有するのに対し、甲2発明は、これを含有していない点
イ 検討
甲2には、歯磨き粉に「ローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダからなる群から選ばれる1種以上の植物の抽出エキス」である「植物エキス」を含有させることは、何ら記載されていない。
また、甲1には、段落【0003】~【0005】に、単に抗菌、悪臭防止などの有効成分の苦みなどを軽減させるために着香剤、甘味剤及び冷感剤が用いられることが記載されているのみで、ローズマリー等の「植物エキス」の苦みを特定のシクロヘキサン系カルボキサミド化合物が軽減させ得ることは記載されていない(摘記(1c))。
さらに、甲3~甲5にも、口臭防止等の目的で口腔用組成物に使用される植物エキスが苦みを有することが記載されているが、その苦みを特定のシクロヘキサン系カルボキサミド化合物が軽減し得ることについての記載や示唆はない。
それゆえ、甲2発明の歯磨き粉に、特定のシクロヘキサン系カルボキサミド化合物である本件(B)成分と組み合わせて、「ローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダからなる群から選ばれる1種以上の植物の抽出エキス」である「植物エキス」を含有させる動機付けはない。
申立人は、「甲第2号証の段落【0002】には、歯磨剤などに使用されている清涼感又は冷涼感を与える香料物質として、l-メントールが現在広く使用されているが、その冷感効果は持続性に欠け、また、使用量を多くすると冷感効果が増強される反面、苦みを伴うことがあるという欠点があることが記載されている。甲第1号証の【0003】~【0005】には、抗菌、悪臭防止などの有効成分が使用中に苦みなど不快な味、不快な感覚の原因となるという問題点を有すること、その解決手段として合成冷感剤や感覚剤分子を用いることが記載されている。ここで、ローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダなどの植物エキスが、口臭(悪臭)防止、抗菌などの有効成分であることや、苦味を有することは技術常識であった(甲第3号証の段落【0002】、【0010】、甲第4号証の段落【0002】、【0005】、甲第5号証の【請求項1】、【0005】)。してみると、甲2発明において、抗菌、悪臭防止などの有効成分である植物エキスの使用中における苦みなど不快な味、不快な感覚の原因を解決し得る優れた合成冷感剤、具体的には、良好な味がするようにしかつ心地よい経験を提供する冷感剤として、冷感の立ち上がりが早く、苦みなどの雑味が少なく、冷感の質がシャープでヒンヤリ感に富んでおり、灼熱感やピリピリ感は弱く、クリアな冷感を有する構成(B1)のN-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキシアミドと併せて、苦味があるローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダなどの植物エキスを用いることは、甲第1号証及び技術常識(甲第3号証~甲第5号証)に基づいて、当業者が容易に想到できたもの」であると主張している(申立書の第67~68頁)。
しかし、甲2には、歯磨剤等に使用される香料物質であるl-メントールが冷感効果の持続性に欠けることやその苦みについて記載され、甲2記載の「例示化合物(1-1)」(本件(B)成分)が、冷感の強度、持続性等に優れることは記載されているものの(摘記(2b)、(2e))、甲2記載の「例示化合物(1-1)」が「植物エキス」の苦みを軽減させることについての記載はない。また、甲1及び甲3~甲5に関する事項については、上述のとおりである。
したがって、甲2、甲1及び甲3~5に記載された事項を考慮しても、甲2発明の歯磨き粉に、ローズマリー等の「植物エキス」を添加することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえず、申立人の主張は、受け入れられない。
よって、甲2発明において、相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
ウ 本件発明1の効果について
本件発明1の効果については、上述の3(1)ア(ウ)で述べたとおりであり、甲1~甲5には、そのような効果については何ら記載されていないから、本件発明1は、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものであるといえる。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに甲1及び甲3~5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を引用して更に技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)と同様の理由により、甲2に記載された発明、並びに甲1及び甲3~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 申立理由(3)(甲3発明を主引用発明とする進歩性欠如)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「ローズマリーエキス」、「オウゴンエキス」、「ニンジンエキス」、「カンゾウエキス」、「ナタマメエキス」、「トウキエキス」、「オリーブ葉エキス」は、それぞれ本件発明1の「ローズマリー」、「オウゴン」、「ニンジン」、「カンゾウ」、「ナタマメ」、「トウキ」、「オリーブ」の「抽出エキス」である「(A)植物エキス」に相当する。
甲3発明の「N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」、「N-(2-(2-ピリジニル)エチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」は、本件発明1の「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」(本件(B)成分)と、N-置換-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド化合物である点において共通する。
甲3発明の「歯磨剤組成物(練歯磨)又は洗口剤」は、本件発明1の「口腔用組成物」に相当する。
また、甲3発明は、上記の「ローズマリーエキス」、「オウゴンエキス」、「ニンジンエキス」、「カンゾウエキス」、「ナタマメエキス」、「トウキエキス」、「オリーブ葉エキス」、「N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」、「N-(2-(2-ピリジニル)エチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」以外に「(D)研磨性シリカ」等を含むが、本件発明1は、「(A)植物エキス」及び本件(B)成分以外の成分を含むことができるから(本件明細書の段落【0027】~【0064】)、この点は、両発明の相違点にはならない。
してみると、本件発明1と甲3発明は、
「(A)植物エキスと、
(B’)N-置換-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド化合物と
を含有しており、
(A)植物エキスが、ローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブからなる群から選ばれる1種以上の植物の抽出エキスである、口腔用組成物」
である点において一致し、次の点において相違する。
<相違点3>
本件発明1は、N-置換-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド化合物が、「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」(本件(B)成分)であるのに対し、甲3発明は、「N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」又は「N-(2-(2-ピリジニル)エチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」である点
イ 検討
甲2には、本件(B)成分に相当する「例示化合物(1-1)」が、従来の冷感効果を有する化合物に比べ、冷感の立ち上がりが早く、苦みなどの雑味が少ないものとして記載されているが(摘記(2b)~(2e))、当該「例示化合物(1-1)」がローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブからなる群から選ばれる1種以上の植物の抽出エキスである「植物エキス」の苦み等を軽減することができることは記載されていない。
そうすると、甲2の記載から、甲2の「例示化合物(1-1)」がローズマリー等の「植物エキス」の苦み等を軽減することを当業者が理解できるとはいえないから、ローズマリー等の「植物エキス」の苦み等の軽減を目的に、甲3発明の「N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」や「N-(2-(2-ピリジニル)エチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」に代えて、甲2記載の「例示化合物(1-1)」を採用することを当業者が容易になし得たとはいえない。
また、甲3の段落【0008】には、「このような本発明の作用効果は、(A)及び(B)成分の組み合わせに特異なものであり、・・・(B)成分以外のN-置換-p-メンタン-カルボキサミドを(A)成分と併用した場合も劣った。」と記載されている(摘記(3c))。
ここで、甲2記載の「例示化合物(1-1)」(本件(B)成分)は、甲3記載の特定のN-置換-p-メンタン-カルボキサミドでないから、甲3発明の「N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」や「N-(2-(2-ピリジニル)エチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」を甲2記載の「例示化合物(1-1)」で置き換えれば、甲3発明の効果(口腔内のねばつき感の改善効果や優れたすっきり感付与効果(摘記(3c)))が損なわれるおそれがあることを当業者は認識するものといえる。
したがって、この点からも甲3発明において、「N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」や「N-(2-(2-ピリジニル)エチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド」に代えて、甲2記載の「例示化合物(1-1)」を採用することが当業者にとって容易になし得た事項であったということはできない。
申立人は、「ローズマリー、オウゴン、ニンジン、カンゾウ、トウキ、ナタマメ、オリーブ及びキハダなどの植物エキスが、口臭(悪臭)防止、抗菌などの有効成分であることや、苦味を有することは技術常識であった(甲第3号証の【0002】、【0010】、甲第4号証の【0002】、【0005】、甲第5号証の【請求項1】、【0005】)。また、甲第1号証の【0003】~【0005】には、抗菌、悪臭防止などの有効成分が使用中に苦みなど不快な味、不快な感覚の原因となるという問題点を有すること、その解決手段として合成冷感剤や感覚剤分子を用いることが記載されている。そして、甲第2号証には、例示化合物(1-1)が、その他のメチルメントール誘導体よりも冷感の立ち上がりが早く、苦味などの雑味が少なかったこと、冷感の質がシャープでヒンヤリ感に富んでおり、灼熱感やピリピリ感は弱く、クリアな冷感を有していたことが実証されている(実施例14、【0131】~【0134】)。そうすると、甲3発明において、抗菌、悪臭防止などの有効成分である植物エキスの苦みなど不快な味や不快な感覚を抑制するために、良好な味がするようにしかつ心地よい経験を提供する冷感剤として、冷感の立ち上がりが早く、苦味などの雑味が少なく、冷感の質がシャープでヒンヤリ感に富んでおり、灼熱感やピリピリ感は弱く、クリアな冷感を有する甲2に記載の例示化合物(1-1)であるN-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド(本件特許発明の(B)成分)を(B)N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド(B-1)及びN-(2-(2-ピリジニル)エチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド(B-2)の代わりに用いることは、当業者が容易に想到できたものである。」と主張している(申立書の第72~73頁)。
しかし、甲1には、段落【0003】~【0005】に、単に抗菌、悪臭防止などの有効成分の苦みなどを軽減させるために着香剤、甘味剤及び冷感剤が用いられることが記載されているのみで、「植物エキス」の苦みを特定のシクロヘキサン系カルボキサミド化合物が軽減させ得ることは記載されていない(摘記(1c))。
また、甲3~甲5にも、口臭防止等の目的で口腔用組成物に使用される植物エキスが苦みを有することが記載されているが、その苦みを特定のシクロヘキサン系カルボキサミド化合物が軽減し得ることについての記載や示唆はない。
そして上述のとおり、甲2の記載は、甲2の「例示化合物(1-1)」が、ローズマリー等の「植物エキス」の苦み等を軽減することができるかどうかに関する知見を提供するものではないから、「植物エキス」の苦み等の軽減を目的に、甲3発明において、(B)N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド(B-1)及びN-(2-(2-ピリジニル)エチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサンカルボキサミド(B-2)の代わりに甲2記載の「例示化合物(1-1)」を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、申立人の主張は、受け入れられない。
よって、甲3発明において、相違点3に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
ウ 本件発明1の効果について
本件発明1の効果については、上述の3(1)ア(ウ)で述べたとおりであり、甲1~甲5には、そのような効果については何ら記載されていないから、本件発明1は、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものであるといえる。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明、並びに甲1、甲2、甲4及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を引用して更に技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)と同様の理由により、甲3に記載された発明、並びに甲1、甲2、甲4及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
6 申立理由(4)(甲5発明を主引用発明とする進歩性欠如)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明の「ローズマリーの水抽出物」は、本件発明1の「ローズマリー」の「抽出エキス」である「(A)植物エキス」に相当する。
甲5発明の「メントール」又は「l-メントール」は、本件発明1の「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」と、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン構造を有する化合物である点において共通する。
甲5発明の「口腔内貼付剤」は、本件発明1の「口腔用組成物」と、「口腔用物品」である点において共通する。
また、甲5発明は、「ローズマリーの水抽出物」や「メントール」又は「l-メントール」以外に「サンショウのエタノール抽出物」等を含むが、本件発明1は、「(A)植物エキス」及び本件(B)成分以外の成分を含むことができるから(本件明細書の段落【0027】~【0064】)、この点は、両発明の相違点にはならない。
してみると、本件発明1と甲5発明は、
「(A)植物エキスと、
(B)2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン構造を有する化合物と
を含有しており、
(A)植物エキスが、ローズマリーの抽出エキスである、口腔用物品」
である点において一致し、次の点において相違する。
<相違点5-1>
本件発明1は、「口腔用組成物」の発明であるのに対し、甲5発明は、「口腔内貼付剤」の発明である点
<相違点5-2>
本件発明1は、2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン構造を有する化合物が、「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」であるのに対し、甲5発明は、「メントール」又は「l-メントール」である点
イ 検討
(ア)相違点5-1について
甲5発明の「口腔内貼付剤」は、貼付剤を構成する各成分を混合し、ポリエステル剥離フィルム上に展延乾燥してフィルムを製造し、このフィルムを裁断したものであることから(摘記(5c))、複数の成分を混合して得られたものであるといえる。一般に、「組成物」とは、複数の成分の混合物を意味するものであるから、甲5発明の「口腔内貼付剤」は、口腔用組成物であるといえ、この点は実質的な相違点ではない。
(イ)相違点5-2について
甲2には、本件発明1の(B)成分に相当する「例示化合物(1-1)」が、従来の冷感効果を有する化合物に比べ、冷感の立ち上がりが早く、苦みなどの雑味が少ないものとして記載されているが(摘記(2b)~(2e))、甲2に記載された「例示化合物(1-1)」がローズマリーの抽出エキスである「植物エキス」の苦み等を軽減することができることは記載されていない。
そうすると、甲2の記載から、甲2の「例示化合物(1-1)」がローズマリーの抽出エキスである「植物エキス」の苦み等を軽減することを当業者が理解できるとはいえないから、当該「植物エキス」の苦み等の軽減を目的に、甲5発明の「メントール」又は「l-メントール」に代えて、甲2記載の「例示化合物(1-1)」を採用することを当業者が容易になし得たとはいえない。
申立人は、「ローズマリー抽出物が、口臭(悪臭)防止、抗菌などの有効成分であることや、苦味を有することは、技術常識であった(甲第3号証の【0002】、【0010】、甲第4号証の【0002】、【0005】、甲第5号証の【請求項1】、【0005】)。また、甲第1号証の【0003】~【0005】には、抗菌、悪臭防止などの有効成分が使用中に苦みなど不快な味、不快な感覚の原因となるという問題点を有すること、その解決手段として合成冷感剤や感覚剤分子を用いることが記載されている。そして、甲第2号証には、清涼感又は冷涼感を与える香料物質として、l-メントールが現在広く使用されているが、その冷感効果は持続性に欠け、また、使用量を多くすると冷感効果が増強される反面、苦みを伴うことがあるという欠点があったこと(【0002】)、例示化合物(1-1)が、その他のメチルメントール誘導体よりも冷感の立ち上がりが早く、苦味などの雑味が少なかったこと、冷感の質がシャープでヒンヤリ感に富んでおり、灼熱感やピリピリ感は弱く、クリアな冷感を有していたことが実証されている(実施例14、【0131】~【0134】)。そうすると、甲5発明において、悪臭防止などの有効成分であるローズマリー抽出物の苦みなど不快な味や不快な感覚を抑制するために、良好な味がするようにしかつ心地よい経験を提供する冷感剤として、冷感の立ち上がりが早く、苦味などの雑味が少なく、冷感の質がシャープでヒンヤリ感に富んでおり、灼熱感やピリピリ感は弱く、クリアな冷感を有する甲第2号証に記載の例示化合物(1-1)であるN-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド(本件特許発明の(B)成分)を甲5発明のメントール又はメントール誘導体の代わりに用いることは、当業者が容易に想到できたものである。」と主張している(申立書の第77~78頁)。
しかし、甲1の段落【0003】~【0005】には、単に抗菌、悪臭防止などの有効成分の苦みなどを軽減させるために着香剤、甘味剤及び冷感剤が用いられることが記載されているのみで、「植物エキス」の苦みを特定のシクロヘキサン系カルボキサミド化合物が軽減させ得ることは記載されていない(摘記(1c))。
また、甲3~甲5にも、口臭防止等の目的で口腔用組成物に使用される植物エキスが苦みを有することが記載されているが、その苦みを特定のシクロヘキサン系カルボキサミド化合物が軽減し得ることについての記載や示唆はない。
そして上述のとおり、甲2の記載は、甲2の「例示化合物(1-1)」が、ローズマリーの抽出エキスである「植物エキス」の苦み等を軽減することができるかどうかに関する知見を提供するものではないから、「植物エキス」の苦み等の軽減を目的に、甲5発明において、「メントール」又は「l-メントール」に代えて、甲2記載の「例示化合物(1-1)」を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、申立人の主張は受け入れられない。
よって、甲5発明において、相違点5-2に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
ウ 本件発明1の効果について
本件発明1の効果については、上述の3(1)ア(ウ)で述べたとおりであり、甲1~甲5には、そのような効果については何ら記載されていないから、本件発明1は、当業者が予測できる範囲を超える顕著な効果を奏するものであるといえる。
エ 小括
したがって、本件発明1は、甲5に記載された発明、及び甲1~甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を引用して更に技術的に限定するもので、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(1)と同様の理由により、甲5に記載された発明、及び甲1~甲4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第5 まとめ
以上のとおり、申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことができない。
また、ほかに請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700249