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特許異議申立

2025-700062

口腔用組成物

審判番号
2025-700062
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-219312
登録番号
7558059
請求日
2025年01月10日
審決日
2025年06月17日
公報発行日
2025年07月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ライオン株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
  • 【異議申立人】中村 絵美
  • 【異議申立人】松本 文彦
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 野田 定文
  • 審判官 松元 麻紀子
分類
P1651.121-Y (A61K) / P1651.537-Y (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7558059号発明「口腔用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7558059号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7558059号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和2年12月28日に特願2020-219312号として出願され、令和6年9月19日にその請求項1~9に係る特許権の設定登録がなされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~9に係る特許に対し、令和7年1月10日に中村 絵美(以下「申立人A」という。)により、また、同年3月7日に松本 文彦(以下「申立人B」という。)により、それぞれ特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~9に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項の番号順に、「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 (A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤と、 (B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドと、を含有する、練歯磨剤である口腔用組成物。 【請求項2】 (A)成分の含有量が口腔用組成物100質量%に対し0.001~0.5質量%である、請求項1に記載の口腔用組成物。 【請求項3】 (B)成分の含有量が口腔用組成物100質量%に対し0.00001~0.1質量%である、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。 【請求項4】 更に(C)ノニオン性界面活性剤を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔用組成物。 【請求項5】 (C)成分が、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体からなる群より選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤である、請求項4に記載の口腔用組成物。 【請求項6】 (C)成分の含有量が口腔用組成物100質量%に対し0.1~2質量%である、請求項4又は5に記載の口腔用組成物。 【請求項7】 更に(D)清涼剤を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の口腔用組成物。 【請求項8】 (D)成分がメントール及び/又はカルボン若しくはこれらを含む精油である、請求項7に記載の口腔用組成物。 【請求項9】 (D)成分の含有量が、メントール及び/又はカルボンの含有量として口腔用組成物100質量%に対し0.001~1.5質量%である、請求項7又は8に記載の口腔用組成物。」 第3 申立理由の概要 1 申立人Aの申立理由 申立人Aは、証拠方法として、下記(6)に示す甲第1号証~甲第6号証(以下、甲号証の番号順に、「甲A1」などという。)を提出し、下記(1)~(5)の申立理由を主張している。 (1)申立理由A1-1(進歩性欠如) 本件発明1~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A1に記載された発明、及び甲A2に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから取り消すべきものである。 (2)申立理由A1-2(進歩性欠如) 本件発明1~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A3に記載された発明、及び甲A2に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから取り消すべきものである。 (3)申立理由A1-3(進歩性欠如) 本件発明1~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A4に記載された発明、及び甲A2に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから取り消すべきものである。 (4)申立理由A1-4(進歩性欠如) 本件発明1~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A5に記載された発明、及び甲A2に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから取り消すべきものである。 (5)申立理由A1-5(進歩性欠如) 本件発明1~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A6に記載された発明、及び甲A2に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから取り消すべきものである。 (6)証拠方法 甲A1:国際公開第2016/006647号(下記「甲B3」と同じ文献) 甲A2:国際公開第2018/131575号(下記「甲B2」と同じ文献) 甲A3:特開2011-126785号公報 甲A4:特開2017-100965号公報 甲A5:特開2011-105647号公報 甲A6:特開2005-247713号公報 2 申立人Bの申立理由 申立人Bは、証拠方法として、下記(5)に示す甲第1号証~甲第7号証(以下、甲号証の番号順に、「甲B1」などという。)を提出し、下記(1)~(4)の申立理由を主張している。 (1)申立理由B1-1(進歩性欠如) 本件発明1~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B1に記載された発明、甲B2に記載された事項、及び甲B3~B5に記載された周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから取り消すべきものである。 (2)申立理由B1-2(進歩性欠如) 本件発明1~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B2に記載された発明、甲B1に記載された事項、及び甲B3~B5に記載された周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから取り消すべきものである。 (3)申立理由B1-3(進歩性欠如) 本件発明1~9は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B3に記載された発明、及び甲B1、甲B2及び甲B6に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当するから取り消すべきものである。 (4)申立理由B2(サポート要件違反) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、下記ア及びイの点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件発明1~9についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当するから取り消すべきものである。 ア 本件発明1は、(A)成分及び(B)成分の含有量を規定していないところ、本件明細書には、本件発明の課題を解決した具体例として、(A)成分の含有量が0.001~0.5質量%であり、(B)成分の含有量が0.00001~0.1質量%であるものが開示されるのみであり、本件発明1のうち、(A)成分の含有量が非常に多い場合や、(B)成分の含有量が極めて少ない場合にまで、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できない。 イ 本件発明1は、(D)成分の「清涼剤」を含有することを規定していないところ、本件明細書には、本件発明の課題を解決した具体例として、(D)成分の「清涼剤」として「メントール」を0.3~0.5質量%含有するものが開示されるのみであり、本件発明1のうち、「メントール」を0.3~0.5質量%含有することが特定されないものは、本件発明の課題を解決できると当業者が認識できない。 (5)証拠方法 甲B1:特表2018-531948号公報 甲B2:国際公開第2018/131575号(上記「甲A2」と同じ文献) 甲B3:国際公開第2016/006647号(上記「甲A1」と同じ文献) 甲B4:特開2005-247713号公報 甲B5:特公昭62-016923号公報 甲B6:特表2010-513657号公報 甲B7:特許第7558059号公報 第4 判断 当審合議体は、本件発明1~9に係る特許は、上記第3に示した申立理由によっては、取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。 なお、「・・・」は記載の省略を表し、以下の下線は原文に付されていたものに加えて、当審合議体で追加した。また、証拠の転記は全て全角で表記する。本決定全体についても同様である。 1 甲号証の記載事項 (1)甲A1(甲B3)の記載事項 摘記A1a:「[請求項1] (A)カチオン性殺菌剤と、(B)炭素数5~10のアルカンジオールと、(C)3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール及び/又はN-置換-p-メンタン-3-カルボキサミドとを含有し、(B)成分の含有量が0.1質量%以上5質量%未満であることを特徴とする口腔用組成物。 [請求項2] (A)成分が、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムから選ばれる1種又は2種以上のカチオン性殺菌剤である請求項1記載の口腔用組成物。 ・・・ [請求項4] (C)成分のN-置換-p-メンタン-3-カルボキサミドが、N-メチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、N-プロピル-p-メンタン-3-カルボキサミド、N-フェニル-p-メンタン-3-カルボキサミド、N,N-ジメチル-p-メンタン-3-カルボキサミド及びN,N-ジエチル-p-メンタン-3-カルボキサミドから選ばれる1種又は2種以上である請求項1、2又は3記載の口腔用組成物。 [請求項5] (A)成分を0.001~0.1質量%、(C)成分を0.001~0.2質量%含有する請求項1~4のいずれか1項記載の口腔用組成物。 [請求項6] 更に、(D)ミント系香料、スパイス系香料及びフルーツ系香料から選ばれる香料を0.01~2.5質量%含有する請求項1~5のいずれか1項記載の口腔用組成物。 [請求項7] 組成物中のl-メントールの含有量が0.5質量%以下である請求項1~6のいずれか1項記載の口腔用組成物。」 摘記A1b:「[0011] 本発明によれば、カチオン性殺菌剤由来の異味が抑えられ、製剤の本来の香味が際立つ口腔用組成物を提供できる。」 摘記A1c:「[0013] (A)成分のカチオン性殺菌剤としては、アルキルピリジニウム塩、ベンジル長鎖アルキル短鎖ジアルキルアンモニウム塩又はその誘導体、長鎖アルキル短鎖トリアルキルアンモニウム塩などがあり、具体的には、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられるが、特に塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムが好ましい。これらは1種又は2種以上を使用し得るが、中でも塩化ベンゼトニウムを用いると、異味が十分に抑えられると共に製剤の香味の際立ちがより向上することから、より好適である。」 摘記A1d:「[0016] (B)成分の炭素数5~10のアルカンジオールは、(C)成分と組み合わせることで、(A)カチオン性殺菌剤由来の異味をマスキングし、抑制すると共に、香味の際立ちを改善する作用を奏する。・・・ [0019] (C)成分は、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール及び/又はN-置換-p-メンタン-3-カルボキサミドである。 N-置換-p-メンタン-3-カルボキサミドとしては、N-メチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、N-プロピル-p-メンタン-3-カルボキサミド、N-フェニル-p-メンタン-3-カルボキサミド、N,N-ジメチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、N,N-ジエチル-p-メンタン-3-カルボキサミドが挙げられ、置換基がメチル基、エチル基、プロピル基といった炭素数1~3のアルキル基、フェニル基であるもの、特に前記アルキル基であるものが好ましい。中でも、より好ましい(C)成分は、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール及び/又はN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミドであり、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールが特に好ましい。 (C)成分は、・・・例えば、・・・N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミドとしては「WS3」(ジボダン社製)が挙げられる。 摘記A1e:「[0032] 以下、実施例及び比較例、処方例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。 ・・・ [0043][処方例3]液状歯磨 塩化ベンゼトニウム 0.05% 1,2-ペンタンジオール 1.0 3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール 0.075 沈降性シリカ 15.0 プロピレングリコール 2.0 85%グリセリン 8.5 70%ソルビット 26.0 キサンタンガム 0.2 ポリアクリル酸ナトリウム 0.2 ラウリル硫酸ナトリウム 1.0 ブチルパラベン 0.01 サッカリンナトリウム 0.1 香料B 0.2 精製水 残 計 100.0% (組成物中のl-メントール量 0.08%) [0044] 使用した香料A、香料Bの詳細を表4~6に示す。 [0045][表4] [図:0001424606000001.jpg] ・・・ [0047][表6] [図:0001424606000002.jpg] 」 (2)甲A2(甲B2)の記載事項 摘記A2a:「[請求項1] 下記一般式(1): [図:0001424606000003.jpg] [式(1)中、*印は不斉炭素原子であり、Xは水素原子又は置換基を表し、Yは置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基である。] で表されるメチルメントール誘導体を含有する冷感剤組成物。 ・・・ [請求項3] 前記一般式(1)が、下記構造式(2)で表される、請求項1又は2に記載の冷感剤組成物。 [図:0001424606000004.jpg] [式(2)中、*印は不斉炭素原子である。]」 摘記A2b:「[0002] 従来、ヒトの皮膚や口腔、鼻、喉に対して爽やかな感覚(清涼感)や冷たい感覚(冷涼感)、すなわち冷感効果を与える冷感剤は、歯磨剤、菓子(例えば、チューイングガム、キャンディー等。)、たばこ、ハップ剤、化粧料などに使用されている。これら清涼感又は冷涼感を与える香料物質として、l-メントールが現在広く使用されているが、その冷感効果は持続性に欠け、また、使用量を多くすると冷感効果が増強される反面、苦みを伴うことがあるという欠点がある。 [0003] 冷感効果を有する化合物として、l-メントール以外にも多数の化合物が提案され、使用されている。従来提案されたl-メントール以外の冷感効果を有する化合物としては、例えば、3-置換-p-メンタン・・・、N-置換-p-メンタン-3-カルボキサミド・・・、l-メンチルグルコシド・・・、3-(l-メントキシ)プロパン-1,2-ジオール・・・、1-メンチル-3-ヒドロキシブチレート・・・、1-アルコキシ-3-(l-メントキシ)プロパン-2-オール・・・、3-ヒドロキシメチル-p-メンタンのエステル類・・・、N-アセチルグリシンメンタンメチルエステル・・・、l-イソプレゴール・・・、(2S)-3-{(1R,2S,5R)-[5-メチル-2-(1-メチルエチル)シクロヘキシル]オキシ}-1,2-プロパンジオール・・・、2-ヒドロキシメチルメントール・・・、メントキシアルカン-1-オール・・・、(l-メンチルオキシアルコキシ)アルカノール・・・、N置換p-メンタンカルボキサミド類・・・、Nα-(メンタンカルボニル)アミノ酸アミド・・・、イソプレゴール誘導体・・・、メチルメントール誘導体・・・などが挙げられる。 ・・・ [0005] しかしながら、上記の従来提案されている冷感剤は、それなりの冷感効果を有するが、冷感効果の持続性などの点で未だ十分満足できるものではない。また、感覚刺激効果についてもさらに改善することが必要とされる。 [0006] 従って、本発明は、好ましくない刺激感、特異臭、苦みなどがなく、清涼感や冷涼感の持続性に優れた冷感剤又は感覚刺激剤として用いることができる新規なメチルメントール誘導体を提供することを課題とする。」 摘記A2c:「[0019] 本発明のメチルメントール誘導体を含有する冷感剤組成物は、冷感強度が強く、クリアな冷感を有し、その持続性にも優れると共に、苦味が少ないものである。よって、本発明の冷感剤組成物を各種の製品類に配合することにより、これらの製品類に持続性に優れた清涼感や冷涼感を付与することができる。」 摘記A2d:「[0079][実施例1]例示化合物(1-1)の合成(N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキシアミド) [0080] [図:0001424606000005.jpg] 」 摘記A2e:「[0131][実施例14]例示化合物(1-1)の官能評価 [0132] [化28] [図:0001424606000006.jpg] [0133] 官能評価は、従来知られている比較化合物1~4と比較して行った。比較化合物1,3,4は国際公開第2016/153011号に記載の手法に従い合成し、比較化合物2は国際公開第2005/020897号に記載の手法に従い合成した。例示化合物(1-1)、比較化合物1~4は共に30ppm水溶液を調製し、該水溶液を用いて評価を行った。 評価はフレーバリスト3人により行った。前記水溶液を口に含み、うがいをした後吐き出し、口腔内における冷感の強度、持続性、質等について評価した。 [0134][官能所見] ・例示化合物(1-1)は、冷感は大変強く、明らかに比較化合物3,4より強かった。また、その冷感は60分以上続いた。 ・比較化合物2は、冷感強度、持続性は例示化合物(1-1)と同等であり、冷感はかなり強く、持続性も有していた。 ・冷感の立ち上がりについては、例示化合物(1-1)は比較化合物1~4より明らかに速かった。口に入れた瞬間に冷感を強く感じ、比較化合物2~4と比べて苦味などの雑味が少なかった。 ・冷感の質については、例示化合物(1-1)は比較化合物1~4よりもシャープでヒンヤリ感に富んでいた。また、比較化合物1~4より灼熱感やピリピリ感は弱く、クリアな冷感を有していた。」 摘記A2f:「[0147][実施例18]歯磨き粉賦香評価 [0148][化32] [図:0001424606000007.jpg] [0149] l-メントールと、比較化合物1又は例示化合物(1-1)をそれぞれ賦香した歯磨き粉に対する官能評価を行った。 [0150] 下記の配合に従い、歯磨き粉(A)~(C)を調製した。 (A)歯磨き粉基剤 990g+ツースペーストフレーバーBASE 4g+l-メントール 4g+エチルアルコール(EtOH)2g (B)歯磨き粉基剤 990g+ツースペーストフレーバーBASE 4g+l-メントール 4g+比較化合物1(1% inEtOH)2g (C)歯磨き粉基剤 990g+ツースペーストフレーバーBASE 4g+l-メントール 4g+例示化合物(1-1)(1% in EtOH)2g [0151] なお、ツースペーストフレーバーBASEの処方箋は以下の通りである。 [0152][表1] [図:0001424606000008.jpg] [0153] また、歯磨き粉基剤の処方箋は以下の通りである。 [0154] [表2] [図:0001424606000009.jpg] [0155] 評価はフレーバリスト3人により行った。歯ブラシに約1gの歯磨き粉をとり、通常歯を磨く方法で約5分間歯を磨いてもらった。歯磨き後にうがいをし、口腔内における冷感の強度、持続性、質等について評価した。 [0156][評価コメント] 歯磨き粉(B)及び歯磨き粉(C)は歯磨き粉(A)よりも強い冷感効果があり、歯磨き粉(C)は歯磨き粉(B)と同等の冷感効果を有する。また歯磨き粉(C)は歯磨き粉(B)に比べると、ツースペーストフレーバーBASEの香味プロファイルがきれいに発現し冷感の感覚もクリアな印象である。歯磨き粉(B)及び歯磨き粉(C)は共には30分以上の冷感効果が感じられた。」 摘記A2g:「[0177][実施例21]キャンディー賦香評価 [0178][化35] [図:0001424606000010.jpg] [0179] l-メントールと、従来知られている比較化合物5(高砂香料工業株式会社製「Coolact(登録商標)10」)又は例示化合物(1-1)をそれぞれ賦香したキャンディーに対する官能評価を行った。 [0180] 下記の配合に従い、キャンディー(J)~(L)を調製した。 (J)キャンディー基剤 998g+ハーブフレーバーBASE 0.9g+l-メントール 0.9g+エチルアルコール(EtOH) 0.2g (K)キャンディー基剤 998g+ハーブフレーバーBASE 0.9g+l-メントール 0.9g+比較化合物5 0.2g (L)キャンディー基剤 998g+ハーブフレーバーBASE 0.9g+l-メントール 0.9g+例示化合物(1-1)(10% in EtOH) 0.2g [0181] なお、ハーブフレーバーBASEの処方箋は以下の通りである。 [0182] [表7] [図:0001424606000011.jpg] [0183] また、キャンディー基剤の処方箋は以下の通りである。 [0184][表8] [図:0001424606000012.jpg] [0185][キャンディーの製法] グラニュー糖、水飴、精製水を150℃まで火詰めした。その後、火を止め生地を計量し、フレーバー等を混合し、135~140℃に保ちながらモールドに流し、成型した。冷却後、モールドから外し、1粒約3gのキャンディーを作製した。 [0186] 評価はフレーバリスト3人により行った。キャンディー1粒を口に含み、舐め溶かし、キャンディーが完全に無くなった後の口腔内における冷感の強度、持続性、質等について評価した。 [0187][評価コメント] キャンディー(K)及びキャンディー(L)はキャンディー(J)よりも冷感効果があり、キャンディー(L)はキャンディー(K)の1/10の冷感剤の配合量ながらもキャンディー(K)以上の冷感効果を有する。さらにキャンディー(L)はトップからシャープでクリアな清涼感で、しばらくすると喉奥を刺激する清涼感になる。雑味は感じない。また吐き出し後も30分以上の冷感効果が感じられた。」 (3)甲A3の記載事項 摘記A3a:「【請求項4】 (A)ベンジルグリセリルエーテルと、(D)高級アルキル硫酸エステル塩、N-アシルサルコシン酸塩、第4級アンモニウム塩から選ばれる1種以上のイオン性殺菌成分とを含有し、(A)成分の配合量が0.1~20質量%であり、かつ(A)/(D)の質量比が1~2,000であることを特徴とする口腔用組成物。」 摘記A3b:「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、口腔内の病原性細菌に対して高い殺菌力を発揮し、歯垢形成を効果的に抑制又は予防でき、かつ、使用感に優れた口腔用組成物を提供することを目的とする。」 摘記A3c:「【0038】 本発明の口腔用組成物は、固体、固形物、液体、液状、ゲル体、ペースト状、ガム状などの形態にすることができ、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨類、洗口剤、マウスウォッシュ、トローチ剤、チューイングガム等の様々な剤型にすることが可能であり、その製造方法も剤型に応じた常法を採用することができる。この場合、組成物の目的、剤型等に応じて上述した成分以外にも適宜なその他の任意成分を配合することができる。例えば、練歯磨剤の場合は、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、有効成分、色素、香料等を配合でき、これら成分と水とを混合し製造できる。」 摘記A3d:「【0046】 香料は、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、セージ油、レモン油、オレンジ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、ベイ油、レモングラス油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、シソ油、パチュリ油、イリスコンクリート、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、コハク酸モノメンチル、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、ティーフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。」 摘記A3e:「【実施例】 【0050】 以下、合成例、実験例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例で配合量はいずれも質量%である。 ・・・ 【0076】 以下、実施例を示す。なお、下記例で用いた香料の組成は以下の通りである。なお、香料A~Dはメントールを含まない。 【0077】 【表5】 [図:0001424606000013.jpg] 」 摘記A3f:「【0082】 [実施例3]練歯磨 ジルコノシリケート 25.0% 無水ケイ酸 2.0 ソルビット液 40.0 ポリエチレングリコール400 5.0 ポリアクリル酸ナトリウム 1.0 ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業社製) 0.8 ラウロイルサルコシンナトリウム(川研ファインケミカル社製) 0.2 サッカリンナトリウム 0.2 パラオキシ安息香酸メチル 0.1 パラオキシ安息香酸ブチル 0.1 ベンジルグリセリルエーテル(合成例での製造品) 5.0 イソプロピルメチルフェノール(和光純薬工業社製) 0.1 香料C 1.0 精製水 残 計 100.0%」 (4)甲A4の記載事項 摘記A4a:「【請求項1】 (A)グリセロリン酸又はその塩、 (B)エチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート、及び (C)ミント油 を含有してなることを特徴とする口腔用組成物。 ・・・ 【請求項3】 (B)成分を0.00001~0.01質量%、(C)成分を0.02~0.2質量%含有する請求項1又は2記載の口腔用組成物。」 摘記A4b:「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、グリセロリン酸又はその塩によって持続的かつ優れた歯面のコーティング実感を与え、使用感も優れる口腔用組成物を提供することを目的とする。」 摘記A4c:「【0008】 本発明では、(A)成分に(B)及び(C)成分を組み合わせると、冷感剤として公知の化合物である(B)エチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテートが、(A)グリセロリン酸又はその塩由来の歯面のコーティング実感付与効果の向上に寄与するという予想外の作用を奏し、(B)、(C)成分の併用系が、一般的な口腔用香料の単なる添加では達成し得ない、上記格別な作用効果を与える。 この場合、グリセロリン酸又はその塩単独では歯面のコーティング実感が低く、一方で、香料のエチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート、ミント油にコーティング実感の付与作用は認められず、また、グリセロリン酸又はその塩にミント油を併用するだけではコーティング実感が持続しないが、(A)成分に(B)成分を併用すると、意外にも(A)成分のコーティング実感付与効果が相乗的に高まり、歯面がコーティングされて清潔になったと満足に実感できる高いコーティング実感を持続的に与える。更にこの場合、(A)、(B)成分を併用すると、(B)成分由来の刺激と相まって(A)成分由来の刺激感が強く発現するという問題が生じるが、更に(C)成分を組み合わせることによって、前記刺激感を生じさせることなく使用感を特異的に改善し、使用感も良好となる。従って、本発明の口腔用組成物は、使用直後のみならず使用して5分間経過しても歯面がコーティングされて清潔になったことを満足に実感できる優れたコーティング実感を与え、これによって口腔バイオフィルム(歯垢)付着が抑制されたという効果実感を付与することが可能となり、また、使用感として口中によごれが残らず清潔になったと実感できるすっきり感、口中で刺激感をほとんど感じることがない刺激感のなさ、及び口中の清涼感が使用して5分間経過後も持続する清涼感を与える。」 摘記A4d:「【0015】 本発明では、(B)エチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテートと、(C)ミント油とを組み合わせることで、持続的かつ優れた歯面のコーティング実感及び良好な使用感を与える。この場合、(B)成分を欠くと、持続的かつ高いコーティング実感を付与できず、また、使用感としてすっきり感及び清涼感の持続性が悪くなり、(C)成分を欠くと、(A)、(B)成分の併用によって生じる刺激感がマスキングされず、刺激を感じる。」 摘記A4e:「【0022】 本発明では、更に(D)成分として、3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール、イソプレゴール、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、3-ヒドロキシブタン酸メンチル、N-メチル-2,2-イソプロピルメチル-3-メチルブタンアミド、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、メンチルモノサクシネート、メンチルラクテート及びメントングリセロールケタールから選ばれる1種又は2種以上を配合することが好ましく、中でも、3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミドが、より好適である。(D)成分を配合すると、清涼感の持続性がより向上する。」 摘記A4f:「【0036】 以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。 【0037】 [実施例、比較例] 表1~4に示す組成の液体口腔用組成物を常法によって調製し、下記方法で評価した。結果を表に併記した。 ・・・ 【0044】 【表3】 [図:0001424606000014.jpg] 」 (5)甲A5の記載事項 摘記A5a:「【請求項1】 (A)無水ケイ酸と、(B)ベタイン型両性界面活性剤と、(C)l-メントールと、(D)メンチルバレレート、メンチルイソバレレート、メンチルフェニルアセテート、メンチルカプリレート、メンチルブチレート、メンチルカプレート、メンチルカプロエート、メンチル2-メチルブチレートから選ばれる1種以上のメンチルエステルとを含有し、(D)成分の配合量が0.001~0.1質量%であることを特徴とする歯磨組成物。 ・・・ 【請求項4】 更に、(B’)ノニオン界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の歯磨組成物。」 摘記A5b:「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は、上記要望に応えるためになされたもので、優れた起泡性と肌理の細かい泡質を伴う良好な清掃洗浄実感を有し、かつ使用中の苦さ・異味がなく、口中の爽やかさ付与効果に優れ、使用感が良好な歯磨組成物を提供することを目的とする。」 摘記A5c:「【0027】 本発明の歯磨組成物は、上記必須成分に加えて本発明の効果を損なわない範囲で任意成分としてその他の添加剤を配合できる。例えば研磨剤、清掃助剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、有効成分、着色剤(色素)、香料等を配合でき、これら成分と水とを混合し、製造できる。」 摘記A5d:「【0036】 香料は、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料や、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、各種の調合香料等、歯磨組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。また、香料の配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001~1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した歯磨組成物用香料としては、製剤組成中に0.1~2.0%使用するのが好ましい。」 摘記A5e:「【実施例】 【0038】 以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。 【0039】 〔実施例1、比較例1~11〕 表1に示す組成の歯磨組成物を下記方法で調製し、清掃洗浄実感、苦さ・異味のなさ、爽やかさ、更には使用感の総合評価を以下の方法により評価した。結果を表1に示す。 【0040】 試験歯磨組成物の調製: 表1に示す組成の歯磨組成物を調製して、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mmのラミネートチューブに50g充填し、清掃洗浄実感、苦さ、異味のなさ、爽やかさを評価した。 ・・・ 【0045】 【表1】 [図:0001424606000015.jpg] ・・・ 【0047】 また、各組成中の基剤*は表2に示す組成の基剤Aである(なお、表中の%は組成物全体に対する%である。)。香料**としては表3に示す組成の香料Aを配合した。また、基剤Aの代わりに表2に示す組成の基剤B、香料Aの代わりに表3に示す組成の香料B~Iをそれぞれ用いても、同様の結果が得られた。 【0048】 【表2】 [図:0001424606000016.jpg] 【0049】 【表3】 [図:0001424606000017.jpg] ・・・ 【0053】 【表4-4】 [図:0001424606000018.jpg] 」 (6)甲A6の記載事項 摘記A6a:「【請求項1】 下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する口腔用組成物。 (A)エタノール、アルキル硫酸ナトリウム塩、アシルメチルタウリン及び第4級アンモニウム塩型殺菌剤からなるグループより選ばれる2種以上 (B)メントール、カルボン及びシンナミックアルデヒドのグループから選ばれる1種以上 (C)炭素数4~10の脂肪族環状エステル化合物からなるグループより選ばれる1種以上 0.000001~0.0009質量% (D)水」 摘記A6b:「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は、エタノール、メントール、カルボン、シンナミックアルデヒド、アルキル硫酸ナトリウム塩、アシルメチルタウリン、第4級アンモニウム塩型殺菌剤などの由来の刺激味を低減もしくは抑制でき、かつ、メントール、カルボン、シンナミックアルデヒドなどの清涼感やさわやかさなどを損なわず、口腔用組成物の使用感を向上させることができる口腔用組成物を提供する。」 摘記A6c:「【実施例】 【0022】 歯磨きおよび洗口剤 <口腔用組成物等の調製> 表1に示す組成に従って実施例1-1~1-8及び比較例1-1~1-8の歯磨剤を調製した。また、表2に示す組成に従って実施例2-1~2-8及び比較例2-1~2-8の洗口剤を調製した。表中の成分の配合量は質量%である。 ・・・ 【0024】 【表1】 [図:0001424606000019.jpg] 」 (7)甲B1の記載事項 摘記B1a:「【請求項1】 以下の式(I): 【化1】 [図:0001424606000020.jpg] ・・・のN-メンタンカルボキサミド誘導体及びその薬剤として許容される塩を調製する方法であって、 A)式(II): 【化2】 [図:0001424606000021.jpg] (式中、X=好適な脱離基である)のp-メンタン-3-カルボン酸の活性化誘導体と、 一般式(III): 【化3】 [図:0001424606000022.jpg] の一級アミンとをカップリング反応させて、一般式(IV): 【化4】 [図:0001424606000023.jpg] の化合物を生成すること、を含む、方法。」 摘記B1b:「【技術分野】 【0001】 本発明は、感覚剤として有用なシクロヘキサン系誘導体の合成に関する。具体的には、本合成経路は、シクロヘキサン系カルボキサミド冷感剤の様々な異性体を調製するために使用することができる。」 摘記B1c:「【背景技術】 ・・・ 【0003】 ・・・歯磨剤及びすすぎ液などの毎日使用するための口腔ケア製品により完全な口腔ケアを提供するために、多くの場合活性物質と添加剤とを組み合わせることが必要であり、これらの多くは、使用中に負の審美性、具体的には不快な味、不快な感覚及び着色汚れ促進の原因となるという問題点を有する。不快な味及び口内感覚は、苦み、金属感、渋み、塩み、しびれ、刺痛感、灼熱感、又は穿痛感、及び更なる刺激性態様のうちの1つ以上を有すると記載されている。これら審美上の問題点に関連する口腔ケアに使用するための典型的な成分としては、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、スズ塩類及び亜鉛塩類などの抗微生物剤・・・が挙げられる。これら成分から審美上の問題点を軽減するために、口腔ケア製品には、典型的には、できる限り良好な味がするようにしかつ心地よい経験を提供するために着香剤、甘味剤及び冷感剤が配合される。特に、口腔ケア製品が使用中及び使用後に清涼な冷感を提供することが望ましい。負の感覚の軽減に加えて、感覚剤分子は、有効性のシグナルを伝えるために口腔ケア組成物に配合される。このような有効性のシグナルとしては、冷感、ヒリヒリ感、しびれ、温感、甘み、並びに相変化及び泡立ち又は発泡などのレオロジー的感覚が挙げられる。」 摘記B1d:「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は、所望の立体化学を有し、冷感を与えるカルボキサミドを合成する1つ以上の方法を提供する。」 摘記B1e:「【0021】 以下、本明細書において使用される全ての百分率及び比率は、特に指示がない限り、組成物全体の重量を基準とする。本明細書で言及される成分の百分率、比率、及び濃度は、特に指示がない限り、全て成分の実際の量に基づき、市販製品として成分が組み合わされている可能性がある溶媒、充填剤又はその他の物質を含まない。」 摘記B1f:「【0127】 実施例15(1R,2S,5R)-N-((S)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドの合成 【0128】 【化34】 [図:0001424606000024.jpg] ・・・ 【0130】 実施例16及び実施例17異性体物質(1R,2S,5R)-N-((R)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド及び(1R,2S,5R)-N-((R/S)-2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドの合成 【0131】 【化35】 [図:0001424606000025.jpg] 」 摘記B1g:「【0257】 【表8-2】 [図:0001424606000026.jpg] 」 摘記B1h:「【0264】 実施例53:冷感歯磨剤製剤 10百万分率(ppm)の着香料(ペパーミント)中に冷感剤を含有していない(サンプルA)又は表7の冷感剤を有している(サンプルB及びC)、米国特許第8,747,814号に記載のプロトコールなどの従来の方法を使用して歯磨剤を調製した。 【0265】 【表9】 [図:0001424606000027.jpg] *QSは用語「適量」を指し、これは十分な量であることを意味し、処方の残りはこの物質で満たされる。」 (8)甲B4の記載事項 摘記B4a:「【請求項1】 下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する口腔用組成物。 (A)エタノール、アルキル硫酸ナトリウム塩、アシルメチルタウリン及び第4級アンモニウム塩型殺菌剤からなるグループより選ばれる2種以上 (B)メントール、カルボン及びシンナミックアルデヒドのグループから選ばれる1種以上 (C)炭素数4~10の脂肪族環状エステル化合物からなるグループより選ばれる1種以上 0.000001~0.0009質量% (D)水」 摘記B4b:「【0014】 成分(A)のアルキル硫酸ナトリウム塩としては、オクチル硫酸ナトリウム、カプリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、パルミチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウムなどがあげられる。また、成分(A)のアシルメチルタウリンとしては、カプリルメチルタウリン、ラウリルメチルタウリン、ミリスチルメチルタウリン、パルミチルメチルタウリン、ステアリルメチルタウリンなどをあげることができる。また、成分(A)の第4級アンモニウム塩型殺菌剤としては、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウムなどをあげることができる。」 (9)甲B5の記載事項 摘記B5a:「特許請求の範囲 1 タンニン酸蛋白結合体、タンニン酸ホルムアルデヒド結合体、アセチルタンニン酸及びタンニン酸金属塩のうちから選ばれる1種以上の水に難溶性のタンニン酸誘導体を配合したことを特徴とする口腔内用組成物。」 摘記B5b:第1欄第18行~第2欄第2行 「歯磨剤などには虫歯予防の目的で歯質強化剤としてのフツ化物、ビタミンK、N-ラウロイルサルコシンナトリウムなどの酵素抑制剤、ヘキシルレゾルシン、ニコチン酸アミドなどの殺菌剤などが使用されて来た。しかしながら、これ迄の材料には一長一短があり、完全に満足なものは存在していないのが現状である。例えばフツ化物はその歯質強化作用については広く認められて来たが、生体毒性の点から使用量に制限がある。N-ラウロイルサルコシンナトリウムは刺激性が低く、低毒性で醗酵防止作用も強いが、稍々苦味を有し、抗菌性も充分でない。」 (10)甲B6の記載事項 摘記B6a:「【請求項1】 下記式(I):【化1】 [図:0001424606000028.jpg] 式中、 Rは水素、ヒドロキシル、オキソ、低級アルキルまたは低級アルコキシルを表し、 R’は水素または低級アルキルを表し、XおよびYは、独立して、水素、ヒドロキシル、低級アルキルおよび低級アルコキシルを表し、 ここで点線は任意の付加的結合または任意のC1~C2アルキレン部位を表す、 で表される物質およびこれらのエステル類の群から選択される、冷感受容体刺激物質。 ・・・ 【請求項10】 ・・・口腔ケア用品、・・・から選択される消費者製品であって、請求項1~6のいずれかに定義された冷感受容体刺激物質を、該製品において生理学的冷却効果を付与または増強するために効果的な量含む、前記製品。 ・・・ 【請求項13】 製品が、・・・歯磨き粉、・・・の群から選択される、請求項10~12のいずれかに記載の消費者製品。」 摘記B6b:「【0009】 ・・・Wilkinson Swordに起源をもつN-置換-p-メンタン-3-カルボキサミドの中で、うまく商品化されたものが3つある。WS-3-(N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド)、WS-5(エチル3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)酢酸)およびWS-14(N-tert-ブチル-3-p-メンタンカルボキサミド)である。」 摘記B6c:「【0017】 したがって、本発明は、前述の式(I)で表される物質ならびに消費者製品、特に・・・口腔ケア用品・・・から選択される消費者製品において生理学的冷感効果を付与および/または増強する冷感受容体刺激物質としてのこれらの使用を初めて提供するものである。したがって、本発明は、本発明の冷感受容体刺激物質、ならびに、前記冷却効果を付与および/または増強するために適切に適用され得る、1または2以上のフレーバー付与物質および/またはフレグランス材料を含む冷却組成物、ならびにそこに生理学的冷却効果、特に冷感および/または清涼感を付与および/または増強する方法もまた提供する。」 摘記B6d:「【0057】 例1:2-イソプロピル-5-メチル-シクロへキサンカルボン酸(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-アミドの調製 15gの塩化メチレン中の1.5gの2-アミノ-1-フェニルエタノールの溶液に、2gのトリエチルアミンを室温で加えた。この溶液に、冷却または加熱せず、室温で2gのp-メンタン-3-塩化カルボニルをゆっくりと添加した。添加の間、反応混合物を35℃で環流を開始する。攪拌を常温で1時間続けた。混合物を25gのジエチルエステルで希釈し、50mlの5%塩酸で2度洗浄した。水層を廃棄し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で2度洗浄した。抽出物を蒸発し、2gの2-イソプロピル-5-メチル-シクロへキサンカルボン酸(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-アミドを得た。分子構造を、質量分析器、1H-NMRおよび13C-NMRを用いて確認した。」 摘記B6e:「【0059】 例3:例1の生成物の比較官能評価 4種類の水溶液を調製した: A.20ppmのメントール; B.2ppmの例1において得られた生成物を溶液Aに溶かしたもの; C.20ppmのWS-3を溶液Aに溶かしたもの;および D.2ppmのWS-3を溶液Aに溶かしたもの。 【0060】 これらの溶液をフレーバリストのパネルにより、賞味および評価した。その結果には以下のような一般的な一致点があった:溶液Aは「冷却」と表現された;溶液Bは「高い初期の冷却バースト」、「持続する冷却」、「口全体に広がる冷感」、「いくらかの熱感」と表現された;溶液Cは、「Bよりもより中性な冷感」、「Bよりも強さのない冷却」、「Bよりも持続性の短い冷却」と表現された;溶液Dは「Bよりもより中性な冷感」、「Bよりも強さのない冷却」、「Bよりも持続性の短い冷却」と表現された;溶液Bは溶液C溶液と同程度の強さを有し、溶液Dよりもかなり強力である。」 2 申立理由について (1)申立理由A1-1(進歩性欠如)について ア 甲A1(甲B3)に記載された発明 甲A1(甲B3)には、カチオン性殺菌剤と、炭素数5~10のアルカンジオールと、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール及び/又はN-置換-p-メンタン-3-カルボキサミドとを含有し、上記アルカンジオールが0.1質量%以上5質量%未満である口腔用組成物が記載され(摘記A1a)、その具体例を示した処方例3からみて(摘記A1e)、甲A1(甲B3)には、以下に示す「甲A1発明」が記載されていると認める(下線は、当審合議体が付した。)。 <甲A1発明> 塩化ベンゼトニウム0.05質量%、1,2-ペンタンジオール1.0質量%、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール0.075質量%、沈降性シリカ15.0質量%、プロピレングリコール2.0質量%、85%グリセリン8.5質量%、70%ソルビット26.0質量%、キサンタンガム0.2質量%、ポリアクリル酸ナトリウム0.2質量%、ラウリル硫酸ナトリウム1.0質量%、ブチルパラベン0.01質量%、サッカリンナトリウム0.1質量%、及び香料B0.2質量%を含有し、残部が精製水であり、組成物中のl-メントール量が0.08質量%である、液状歯磨。 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲A1発明との対比 a 甲A1発明における「液状歯磨」は、本件発明1における「口腔用組成物」といえる。 b 甲A1発明における「塩化ベンゼトニウム」は、「4級アンモニウム塩」であり、かつ「殺菌剤」であるから、本件発明1における「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤」に相当する。 c したがって、本件発明1と甲A1発明とは、 「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤を含有する、口腔用組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1: 本件発明1は、「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」を含有するのに対し、 甲A1発明は、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」を含有する点。 相違点2: 本件発明1は、「口腔用組成物」が「練歯磨剤」であるのに対し、 甲A1発明は、「液状歯磨」である点。 (イ)判断 a 上記相違点1について検討する。 甲A1(甲B3)には、カチオン性殺菌剤含有の口腔用組成物において、カチオン性殺菌剤由来の異味が抑えられ、製剤の本来の香味が際立つ口腔用組成物が記載され、カチオン性殺菌剤を配合した口腔用組成物に、「炭素数5~10のアルカンジオール」と、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」とを併用して配合することにより、カチオン性殺菌剤由来の異味が抑えられ、製剤の本来の香味が際立つことが記載されている(摘記A1a~摘記A1e)。 ここで、甲A2(甲B2)によれば、本件発明1の(B)成分である「N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」(以下「本件(B)化合物」という。)の構造は、 [図:0001424606000029.jpg] であり(摘記A2dの「例示化合物(1-1)」)、甲A1発明の「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」の構造は、 [図:0001424606000030.jpg] であり(摘記A2gの「比較化合物5」)、両化合物は、イソプロピル基で置換されたシクロヘキサン構造を有する点で類似するものの、別の構造を有する化合物であり、甲A1(甲B3)には、甲A1発明において、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、又は「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に加えて、本件(B)化合物を配合することについて、記載も示唆もない。 また、甲A2(甲B2)には、従来から知られているl-メントールなどの冷感剤に比べ、好ましくない刺激感、特異臭、苦みなどがなく、冷感効果の持続性に優れた冷感剤として用いることのできる化合物として、本件(B)化合物(「例示化合物(1-1)」)が記載され(摘記A2a~摘記A2d)、実施例においては、本件(B)化合物である「例示化合物(1-1)」を冷感剤として配合したキャンディー(L)と、上記「例示化合物(1-1)」に代えて、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」である「比較化合物5」を冷感剤として配合したキャンディー(K)とを比較して、キャンディー(L)は、キャンディー(K)の1/10の冷感剤の配合量ながらもキャンディー(K)以上の冷感効果を有する旨、そして、キャンディー(L)はシャープでクリアな清涼感を有し、雑味を感じず、吐き出し後も30分以上の冷感効果が感じられた旨が記載されている(摘記A2gの実施例21)。 しかしながら、甲A2(甲B2)において、抑制される「苦味」及び「雑味」とは、冷感剤化合物由来の「苦味」及び「雑味」であるから(摘記A2b)、甲A1(甲B3)における「カチオン性殺菌剤由来の異味」とは、本質的に異なるものであるといえる。また、甲A2(甲B2)の上記実施例では、本件(B)化合物(「例示化合物(1-1)」)を冷感剤として用いることにより、少量の配合で冷感効果を奏することから、冷感剤化合物由来の苦みや雑味が抑えられたのであり、本件(B)化合物(「例示化合物(1-1)」)が「カチオン性殺菌剤由来の異味」を抑える効果を有することが示されているとはいえない。 そうすると、甲A1発明における「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」と、甲A2(甲B2)における「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)とは、その配合目的が本質的に異なるものであるから、甲A1発明において、「炭素数5~10のアルカンジオール」と組み合わせることによって、カチオン性殺菌剤由来の異味をマスキングし、抑制すると共に、香味の際立ちを改善するために、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、又は同化合物に加えて、甲A2(甲B2)の「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)を配合することに、動機付けがあるとはいえない。 b したがって、甲A2(甲B2)に記載された技術的事項を参酌しても、甲A1発明において、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、又は同化合物に加えて、本件(B)化合物を配合することは、当業者が容易になし得ることとはいえない。 c そして、本件明細書の記載を参酌すれば(【0007】、【0054】~【0068】、特に実施例1、3、9~30)、本件発明1は、(A)の殺菌剤と、本件(B)化合物とを併用することにより、使用開始時に清涼感があり、使用開始から使用後の一定時間経過後に亘って、殺菌剤由来の苦みを抑制持続することができるという点で優れた効果を奏することが理解でき、特に殺菌剤由来の苦みを抑制持続することができるという効果については、甲A1発明、及び甲A2(甲B2)の記載から、当業者が予測し得ない顕著な効果であるといえる。 d よって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A1発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2~9は、上記イ(イ)と同様の理由により、甲A1発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立人Aの主張について (ア)申立人Aの主張の概要 申立人Aは、申立書の第41~43頁において、甲A2(甲B2)の上記実施例の記載(摘記A2g)を参酌すれば、甲A1発明において、殺菌剤による苦味や異味をより低減もしくは抑制するために、及び/又は冷感効果の持続性を向上させるために、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールの代わりに、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)を用いる動機付けは十分にあると主張している。 (イ)申立人Aの主張の検討 しかしながら、上述のとおり、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)と、「比較化合物5」(3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールに相当する)とは、その配合目的が本質的に異なるものであり、甲A1発明において、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールに代えて、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)を配合することに、動機付けがあるとはいえない。 したがって、申立人Aの主張は採用できない。 オ 申立理由A1-1(進歩性欠如)のまとめ 以上のとおり、本件発明1~9は、甲A1発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立理由A1-1(進歩性欠如)には理由がない。 (2)申立理由A1-2(進歩性欠如)について ア 甲A3に記載された発明 甲A3には、口腔内の病原性細菌に対して高い殺菌力を発揮し、歯垢形成を効果的に抑制又は予防でき、かつ、使用感に優れた口腔用組成物であり、ベンジルグリセリルエーテルと、高級アルキル硫酸エステル塩、N-アシルサルコシン酸塩、第4級アンモニウム塩から選ばれる1種以上のイオン性殺菌成分とを所定の含有量及び含有量比で含む口腔用組成物が記載されており(摘記A3a)、その具体例を示した実施例3の練歯磨からみて(摘記A3e、A3f)、甲A3には、以下に示す「甲A3発明」が記載されていると認める(下線は、当審合議体が付した。)。 <甲A3発明> ジルコノシリケートを25.0質量%、無水ケイ酸を2.0質量%、ソルビット液を40.0質量%、ポリエチレングリコール400を5.0質量%、ポリアクリル酸ナトリウムを1.0質量%、ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業社製)を0.8質量%、ラウロイルサルコシンナトリウム(川研ファインケミカル社製)を0.2質量%、サッカリンナトリウムを0.2質量%、パラオキシ安息香酸メチルを0.1質量%、パラオキシ安息香酸ブチルを0.1質量%、ベンジルグリセリルエーテル(合成例での製造品)を5.0質量%、イソプロピルメチルフェノール(和光純薬工業社製)を0.1質量%、香料Cを1.0質量%含有し、残部が精製水である、練歯磨であって、 香料Cは、アネトールを15質量%、カルボンを2質量%、アニス油を2質量%、ユーカリ油を0.1質量%、オレンジ油を3質量%、レモン油を2質量%、カシア油を1質量%、クローブ油を2質量%、コハク酸モノメンチルを3質量%、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールを1質量%、調合香料(フルーツミックスフレーバーFM3000)を5質量%含有し、残部がエタノールである、練歯磨。 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲A3発明との対比 a 甲A3発明における「練歯磨」は、本件発明1における「練歯磨剤である口腔用組成物」に相当する。 b 甲A3発明における「ラウロイルサルコシンナトリウム(川研ファインケミカル社製)」は、「アシルサルコシン塩」であり、かつ「殺菌剤」であるから、本件発明1における「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤」に相当する。 c したがって、本件発明1と甲A3発明とは、 「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤を含有する、練歯磨剤である口腔用組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点3: 本件発明1は、「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」(本件(B)化合物)を含有するのに対し、 甲A3発明は、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」を含有する点。 (イ)判断 a 上記相違点3に関し、 甲A3発明に含まれる「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、又は同化合物に加えて、本件(B)化合物を配合することについて検討する。 甲A3には、甲A3に記載の口腔用組成物に、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール等の香料を配合できることが記載されていることから(摘記甲A3d)、甲A3発明に含まれる3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールは、香料として配合されているといえる。そして、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールは、冷感効果を与える冷感剤、又は清涼感又は冷涼感を与える香料物質として、公知の化合物であるから(摘記A2bの[0002]~[0003])、甲A3発明に含まれている3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールは、冷感効果を与える冷感剤、又は清涼感又は冷涼感を与える香料物質として配合されているといえる。 ここで、甲A2(甲B2)には、上述のとおり((1)イ(イ))、本件(B)化合物を冷感剤として使用した場合、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールを冷感剤として使用した場合と比べ、1/10の配合量で冷感効果を奏すること、及び3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールを冷感剤として使用した場合よりも、シャープでクリアな清涼感を有し、雑味を感じず、吐き出し後も30分以上の冷感効果が感じられたことが記載されている(摘記A2g)。 そうしてみれば、甲A3発明に冷感剤として含まれる「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、本件(B)化合物を配合することについては、一応の動機付けがあるといえる。 しかしながら、本件発明は、練歯磨剤組成物に配合される特定の殺菌剤(「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩」)について、特定の成分(本件(B)化合物)を配合することにより、「使用開始時に清涼感があり、使用開始から使用後(例えば歯磨剤の場合は、歯磨き開始から歯磨き後)の一定時間経過後に亘って殺菌剤由来の苦味を抑制持続することができる」という効果を奏するものである。 一方、上述のとおり(上記(1)イ(イ)a)、甲A2(甲B2)において、抑制される「苦味」及び「雑味」とは、冷感剤化合物由来の「苦味」及び「雑味」であり(摘記A2b)、本件(B)化合物を冷感剤として用いることにより、少量の配合で冷感効果を奏することから、冷感剤化合物由来の苦みや雑味が抑えられたのであり、甲A2(甲B2)には、本件(B)化合物が、特定の殺菌剤由来の苦みを抑制することについて、何ら記載はない。 そうしてみると「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」を含有する甲A3発明において、特定の殺菌剤由来の苦みを抑制することを期待して、冷感剤として含まれる「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、または同化合物に加えて、本件(B)化合物を配合することに、動機付けがあるとはいえない。 b したがって、甲A2(甲B2)に記載された技術的事項を参酌しても、甲A3発明において、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、又は同化合物に加えて、本件(B)化合物を用いることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。 c そして、本件発明1の効果(上記(1)イ(イ)c)については、甲A3発明、及び甲A2(甲B2)の記載から、当業者が予測し得ない顕著な効果であるといえる。 d よって、本件発明1は、甲A3発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2~9は、上記イと同様の理由により、甲A3発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立人Aの主張について (ア)申立人Aの主張の概要 申立人Aは、申立書の第44~48頁において、甲A2(甲B2)の上記実施例の記載(摘記A2g)を参酌すれば、甲A3発明において、殺菌剤による苦味や異味を抑制するために、及び/又は冷感効果の持続性を向上させるために、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールの代わりに、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)を用いる動機付けは十分にあると主張している。 (イ)申立人Aの主張の検討 しかしながら、上述のとおり、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)と、「比較化合物5」(3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールに相当する)とは、その配合目的が本質的に異なるものであり、甲A3発明において、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールに代えて、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)を配合することに、動機付けがあるとはいえない。 したがって、申立人Aの主張は採用できない。 オ 申立理由A1-2(進歩性欠如)のまとめ したがって、本件発明1~9は、甲A3発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立理由A1-2(進歩性欠如)には理由がない。 (3)申立理由A1-3(進歩性欠如)について ア 甲A4に記載された発明 甲A4には、グリセロリン酸又はその塩と、エチル-3(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテートと、ミント油を含有してなる口腔用組成物であり(摘記A4a)、グリセロリン酸又はその塩によって持続的かつ優れた歯面のコーティング実感を与え、使用感も優れる口腔用組成物が記載されており(摘記A4b)、その具体例を示した実施例22の液体口腔用組成物からみて(摘記A4f)、甲A4には、以下に示す「甲A4発明」が記載されていると認める(下線は、当審合議体が付した。)。 <甲A4発明> グリセロリン酸カルシウム0.05質量%、エチル-3(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート0.0005質量%、ペパーミント油0.05質量%、3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール0.005質量%、塩化セチルピリジニウム0.05質量%、ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油0.3質量%、プロピレングリコール3質量%、グリセリン4.5質量%、キシリトール3質量%、クエン酸0.03質量%、クエン酸ナトリウム0.25質量%、サッカリンナトリウム0.004質量%、精製水がバランスである、液体口腔用組成物。 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲A4発明との対比 a 甲A4発明における「液体口腔用組成物」は、本件発明1における「口腔用組成物」に相当する。 b 甲A4発明における「塩化セチルピリジニウム」は、「4級アンモニウム塩」であり、かつ「殺菌剤」であるから、本件発明1における「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤」に相当する。 c したがって、本件発明1と甲A4発明とは、 「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤を含有する、口腔用組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点4: 本件発明1は、「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」(本件(B)化合物)を含有するのに対し、 甲A4発明は、「3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール」を含有する点。 相違点5: 本件発明1は、「口腔用組成物」が「練歯磨剤」であるのに対し、 甲A4発明は、「液体口腔用組成物」である点。 (イ)判断 a 上記相違点4に関し、甲A4発明に含まれる「3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、又は同化合物に加えて、本件(B)化合物を配合することについて検討する。 甲A4には、甲A4発明に含まれる「エチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート」は、冷感剤として配合され、「3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール」は、清涼感の持続性を向上させるために配合されていることが記載されている(摘記A4c、A4e)。 ここで、甲A2(甲B2)には、上述のとおり((1)イ(イ))、本件(B)化合物を冷感剤として使用した場合、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールを冷感剤として使用した場合と比べ、1/10の配合量で冷感効果を奏すること、及び3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールを冷感剤として使用した場合よりも、シャープでクリアな清涼感を有し、雑味を感じず、吐き出し後も30分以上の冷感効果が感じられたことが記載されている(摘記A2g)。 しかしながら、上述のとおり(上記(1)イ(イ)a)、甲A2(甲B2)において、抑制される「苦味」及び「雑味」とは、冷感剤化合物由来の「苦味」及び「雑味」であり(摘記A2b)、本件(B)化合物を冷感剤として用いることにより、少量の配合で冷感効果を奏することから、冷感剤化合物由来の苦みや雑味が抑えられたのであり、甲A2(甲B2)には、甲A4発明において、冷感剤として配合された「エチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート」の清涼感の持続性を向上させることについては、何ら記載はない。 そうしてみると、甲A4発明における「3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール」と、甲A2(甲B2)における「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)とは、その配合目的が本質的に異なるものであるから、甲A4発明において、冷感剤として配合された「エチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート」の清涼感の持続性を向上させるために、「3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、又は同化合物に加えて、甲A2(甲B2)の例示化合物(1-1)(本件(B)化合物)を配合することに、動機付けがあるとはいえない。 b したがって、甲A2(甲B2)に記載された技術的事項を参酌しても、甲A4発明において、「3-L-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、又は同化合物に加えて、本件(B)化合物を用いることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。 c そして、本件発明1の効果(上記(1)イ(イ)c)については、甲A4発明、及び甲A2(甲B2)の記載から、当業者が予測し得ない顕著な効果であるといえる。 d よって、上記相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲A4発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2~9は、上記イと同様の理由により、甲A4発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立人Aの主張について (ア)申立人Aの主張の概要 申立人Aは、申立書の第48~53頁において、甲A2(甲B2)の上記実施例の記載(摘記A2g)を参酌すれば、甲A4発明において、殺菌剤による苦味や異味をより低減もしくは抑制するために、及び/又は冷感効果の持続性を向上させるために、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールの代わりに、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)を用いる動機付けは十分にあると主張している。 (イ)申立人Aの主張の検討 しかしながら、上述のとおり、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)と、「比較化合物5」(3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールに相当する)とは、その配合目的が本質的に異なるものであり、甲A4発明において、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールに代えて、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)を配合することに、動機付けがあるとはいえない。 したがって、申立人Aの主張は採用できない。 オ 申立理由A1-3(進歩性欠如)のまとめ したがって、本件発明1~9は、甲A4発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立理由A1-3(進歩性欠如)には理由がない。 (4)申立理由A1-4(進歩性欠如)について ア 甲A5に記載された発明 甲A5は、無水ケイ酸と、ベタイン型両性界面活性剤と、l-メントールと、所定のメンチルエステルを所定の量で含有する歯磨組成物に関する文献で(摘記A5a)、その具体例を示した実施例1の歯磨組成物からみて(摘記A5e)、甲A5には、以下に示す「甲A5発明」が記載されていると認める(下線は、当審合議体が付した。)。 <甲A5発明> 無水ケイ酸25質量%、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン0.6質量%、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油1質量%、l-メントール0.7質量%、メンチルバレレート0.01質量%、「基剤A」50質量%、「香料A」1質量%を含有し、バランスが精製水である歯磨組成物であって、 「基剤A」は、組成物全体に対する質量%として、フッ化ナトリウムを0.2質量%、サッカリンナトリウムを0.2質量%、カラギーナンを1質量%、キサンタンガムを0.6質量%、アルギン酸ナトリウムを0.4質量%、プロピレングリコールを2質量%、ソルビット液(70%水溶液)を35質量%、ポリエチレングリコール4000を1質量%、塩化ベンザルコニウムを0.01質量%、キシリットを5質量%、デキストラナーゼを0.15質量%、トリクロサンを0.02質量%、イソプロピルメチルフェノールを0.05質量%、トリポリリン酸ナトリウムを0.5質量%、DL-アラニンを0.3質量%、ラウロイルサルコシンナトリウムを0.1質量%、精製水を3.47質量%含有し、 「香料A」は、「香料A」100質量%に対して、「フレーバー4」を1質量%含有し、 「フレーバー4」は、「フレーバー4」14質量部に対して、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールを1質量部含有する、歯磨組成物。 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲A5発明との対比 a 甲A5発明における「歯磨組成物」は、ラミネートチューブに充填されて用いられることを参酌すると(摘記A5e)、練歯磨剤であるといえるから、本件発明1の「練歯磨剤である口腔用組成物」に相当する。 b 甲A5発明における「塩化ベンザルコニウム」は、「4級アンモニウム塩」であり、かつ「殺菌剤」であるから、本件発明1における「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤」に相当する。 また、甲A5発明における「ラウロイルサルコシンナトリウム」は、「アシルサルコシン塩」であり、かつ「殺菌剤」であるから、本件発明1における「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤」に相当する。 c したがって、本件発明1と甲A5発明とは、 「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤を含有する、練歯磨剤である口腔用組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点6: 本件発明1は、「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」を含有するのに対し、 甲A5発明は、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」を含有する点。 (イ)判断 a 上記相違点6に関し、甲A5発明に含まれる「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、又は同化合物に加えて、本件(B)化合物を配合することについて検討する。 甲A5には、甲A5に記載の歯磨組成物に、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール等の香料を配合できることが記載されていることから(摘記A5c、A5d)、甲A5発明に含まれる3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールは、香料として配合されているといえ、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールは、冷感効果を与える冷感剤、又は清涼感又は冷涼感を与える香料物質として、公知の化合物であるから(摘記A2bの[0002]~[0003])、甲A5発明に含まれている3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールは、冷感効果を与える冷感剤、又は清涼感又は冷涼感を与える香料物質として配合されているといえる。 そうしてみれば、甲A5発明に冷感剤として含まれる「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、本件(B)化合物を配合することについては、一応の動機付けがあるといえるものの、相違点3について述べた理由と同様に(上記(2)イ(イ)a)、甲A2(甲B2)には、本件(B)化合物が、特定の殺菌剤由来の苦みを抑制することについて、何ら記載はないから、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」を冷感剤として含有する甲A5発明において、特定の殺菌剤由来の苦みを抑制することを期待して、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、または同化合物に加えて、本件(B)化合物を配合することに、動機付けがあるとはいえない。 b したがって、甲A2(甲B2)に記載された技術的事項を参酌しても、甲A5発明において、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」に代えて、又は同化合物に加えて、本件(B)化合物を用いることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。 c そして、本件発明1の効果(上記(1)イ(イ)c)については、甲A5発明、及び甲A2(甲B2)の記載から、当業者が予測し得ない顕著な効果であるといえる。 d よって、本件発明1は、甲A5発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2~9は、上記イと同様の理由により、甲A5に記載された発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立人Aの主張について (ア)申立人Aの主張の概要 申立人Aは、申立書の第53~58頁において、甲A2(甲B2)の上記実施例の記載(摘記A2g)を参酌すれば、甲A5発明において、殺菌剤による苦味や異味をより低減もしくは抑制するために、及び/又は冷感効果の持続性を向上させるために、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールの代わりに、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)を用いる動機付けは十分にあると主張している。 (イ)申立人Aの主張の検討 しかしながら、上述のとおり、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)と、「比較化合物5」(3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールに相当する)とは、その配合目的が本質的に異なるものであり、甲A5発明において、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールに代えて、「例示化合物(1-1)」(本件(B)化合物)を配合することに、動機付けがあるとはいえない。 したがって、申立人Aの主張は採用できない。 オ 申立理由A1-4(進歩性欠如)のまとめ したがって、本件発明1~9は、甲A5発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲A5発明として、実施例2~57をもとに発明を認定した場合も、同様に、甲A5発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、申立理由A1-4(進歩性欠如)には理由がない。 (5)申立理由A1-5(進歩性欠如)について ア 甲A6に記載された発明 甲A6には、エタノール、アルキル硫酸塩、アシルメチルタウリン及び第4級アンモニウム塩型殺菌剤から選ばれる2種以上と、メントール、カルボン及びシンナミックアルデヒドから選ばれる1種以上と、炭素数4~10の脂肪族環状エステル化合物から選ばれる1種以上を所定量と、水を含有する口腔用組成物が記載され(摘記A6a)、その具体例を示した実施例1-1の歯磨剤からみて(摘記A6c)、甲A6には、以下に示す「甲A6発明」が記載されていると認める(下線は、当審合議体が付した。)。 <甲A6発明> 炭酸カルシウム35質量%、ソルビトール40質量%、グリセリン7.0質量%、カルボキシメチルセルロースNa2.0質量%、サッカリンNa0.1質量%、ラウリル硫酸Na1.5質量%、塩化ベンゼトニウム0.01質量%、メントール0.6質量%、ヘキサラクトン0.0001質量%、フレーバー微量を含有し、バランスが水である歯磨剤。 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲A6発明との対比 a 甲A6発明における「歯磨剤」は、その組成を参酌するに、「練歯磨剤」であるといえるから、本件発明1における「練歯磨剤である口腔用組成物」に相当する。 b 甲A6発明における「塩化ベンゼトニウム」は、「4級アンモニウム塩」であり、かつ「殺菌剤」であるから、本件発明1における「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤」に相当する。 c したがって、本件発明1と甲A6発明とは、 「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤を含有する、練歯磨剤である口腔用組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点7: 本件発明1は、「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」(本件(B)化合物)を含有するのに対し、 甲A6発明は、本件(B)化合物を含有しない点。 (イ)判断 a 上記相違点7に関し、甲A6発明に加えて、本件(B)化合物を配合することについて検討する。 甲A2(甲B2)の実施例には、以下のキャンディー(J)~(L)を調整し、それぞれの官能評価を行ったところ、キャンディー(L)はキャンディー(J)よりも冷感効果があり、キャンディー(L)はシャープでクリアな清涼感を有し、雑味を感じず、吐き出し後も30分以上の冷感効果が感じられた旨が記載されている(摘記A2gの実施例21)。 「(J)キャンディー基剤 998g+ハーブフレーバーBASE 0.9g+l-メントール 0.9g+エチルアルコール(EtOH) 0.2g (K)・・・ (L)キャンディー基剤 998g+ハーブフレーバーBASE 0.9g+l-メントール 0.9g+例示化合物(1-1)(10% in EtOH) 0.2g」 上記記載からは、l-メントールに、本件(B)化合物(「例示化合物1-1」)を加えたキャンディーは、そうでないものと比べ、冷感効果に優れることが示されているといえるから、l-メントールを含有する甲A6発明に、冷感効果を向上させるために、本件(B)化合物を配合することについては、一応の動機付けがあるといえる。 しかしながら、相違点3について述べた理由と同様に(上記(2)イ(イ)a)、甲A2(甲B2)には、本件(B)化合物が、特定の殺菌剤由来の苦みを抑制することについて、何ら記載はないから、l-メントールを含有する甲A6発明において、特定の殺菌剤由来の苦みを抑制することを期待して、本件(B)化合物を配合することに、動機付けがあるとはいえない。 b したがって、甲A2(甲B2)に記載された技術的事項を参酌しても、甲A6発明において、本件(B)化合物を配合することは、当業者が容易になし得ることとはいえない。 c そして、本願発明の効果(上記(1)イ(イ)c)については、甲A6発明、及び甲A2(甲B2)の記載から、当業者が予測し得ない顕著な効果であるといえる。 d よって、本件発明1は、甲A6発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2~9は、上記イと同様の理由により、甲A6発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立人Aの主張について (ア)申立人Aの主張の概要 申立人Aは、申立書の第60~61頁において、甲A2(甲B2)には、本件(B)化合物(「例示化合物(1-1)」)を用いたキャンディー(L)と、l-メントールを用いたキャンディー(J)とを比較した記載(摘記A2g)を参酌すれば、本件(B)化合物(「例示化合物(1-1)」)を包含するメチルメントール誘導体は、l-メントールに比べて、苦味が少なく、かつ冷感効果の持続性に優れており、冷感物質又は感覚刺激物質として優れるものであることが理解できると主張している。 (イ)申立人Aの主張の検討 まず、甲A2(甲B2)に記載のキャンディー(L)と、キャンディー(J)の組成を比較すると(上記イ(イ)aを参照。)、キャンディー(L)は、本件(B)化合物(「例示化合物(1-1)」)だけでなく、l-メントールも含有するキャンディーであるから、キャンディー(L)が、キャンディー(J)よりも、冷却効果があり、トップからシャープでクリアな清涼感で、しばらくすると喉奥を刺激する清涼感になり、雑味は感じられず、また吐き出した後も30分以上の冷感効果を感じるからといって、本件(B)化合物(「例示化合物(1-1)」)が、l-メントールと比べて、これらの効果に優れるとはいえない。 したがって、申立人Aの主張は採用できない。 オ 申立理由A1-5(進歩性欠如)のまとめ したがって、本件発明1~9は、甲A6発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲A6発明として、実施例1-2~実施例1-7をもとに発明を認定した場合も、同様に、甲A6発明、及び甲A2(甲B2)に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、申立理由A1-5(進歩性欠如)には理由がない。 (6)申立理由B1-1(進歩性欠如)について ア 甲B1に記載された発明 甲B1は、以下の式(I) [図:0001424606000031.jpg] のN-メンタンカルボキサミド誘導体及びその薬剤として許容される塩を調製する方法に関する文献であって(摘記B1a)、当該方法によって調製された、上記式(I)で表されるN-メンタンカルボキサミド誘導体及びその薬剤として許容される塩を含有する歯磨剤製剤の具体例を示した、実施例53のサンプルBが記載されている(摘記B1h)。 そうすると、甲B1には、実施例53のサンプルBとして、以下に示す「甲B1発明」が記載されていると認める。 <甲B1発明> FD&C Blue1号着色溶液を0.045%、フッ化ナトリウムを0.243%、CARBOMER 956を0.300%、サッカリンナトリウムを0.300%、リン酸、ナトリウム、水和物を0.419%、二酸化チタンを0.525%、カルボキシメチルセルロースナトリウムを0.800%、ウィンターグリーン香味料を1.000%、冷感剤分子#17を0.001%、リン酸三ナトリウム十二水和物を1.100%、ラウリル硫酸ナトリウム28%溶液を4.000%、シリカ、歯科タイプ、NF(Zeodent 119)を15.000%、ソルビトール溶液LRS USPを54.673%含有し、処方の残りは水で満たされる歯磨剤製剤であって、冷感剤分子#17は、 [図:0001424606000032.jpg] である歯磨剤製剤。 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲B1発明との対比 a 甲B1発明における「歯磨剤製剤」は、その組成を参酌するに、「練歯磨剤」であるといえるから、本件発明1における「練歯磨剤である口腔用組成物」に相当する。 b したがって、本件発明1と甲B1発明とは、 「練歯磨剤である口腔用組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点8: 本件発明1は、「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤」を含有するのに対し、 甲B1発明は、含有しない点。 相違点9: 本件発明1は、「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」を含有するのに対し、 甲B1発明は、含有しない点。 (イ)判断 a まず、上記相違点8について検討する。 甲B1には、以下の式(I) [図:0001424606000033.jpg] で表されるN-メンタンカルボキサミド誘導体及びその薬剤として許容される塩を調製する方法が記載されており(摘記B1a)、シクロヘキサン系カルボキサミド冷感剤の様々な異性体を調製する方法を提供することができると記載されている(摘記B1b)。 そして、甲B1には、背景技術として、口腔ケアに使用するための抗微生物剤の典型的な成分として、塩化セチルピリジニウムが例示され、口腔ケア製品には、できる限り良好な味がするようにし、かつ心地よい経験を抵抗するために、冷感剤等を配合することが記載されている(甲B1c)。 しかしながら、甲B1をみても、甲B1発明において、殺菌剤を追加的に配合することの動機づけとなる記載はないし、殺菌剤の中でも塩化セチルピリジニウムを選択して配合することの、動機付けとなる記載も見当たらない。 b 次に、上記相違点9について、検討する。 甲B2(甲A2)には、本件(B)化合物を冷感剤として使用した場合、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールを冷感剤として使用した場合と比べ、1/10の配合量で冷感効果を奏すること、及び3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオールを冷感剤として使用した場合よりも、シャープでクリアな清涼感を有し、雑味を感じず、吐き出し後も30分以上の冷感効果が感じられたことが記載されている(摘記A2g)。 また、甲B3(甲A1)~甲B5にも記載されているとおり、歯磨剤等の口腔用組成物において、殺菌剤として4級アンモニウム塩を配合することや、アシルサルコシン塩を配合できることは、当業者にとって周知である(摘記A1c、B4a、B4b、B5a、B5b)。 しかしながら、上記甲B2(甲A2)の記載、及び甲B3(甲A1)~甲B5に記載された周知技術を参酌しても、甲B1発明に含まれている「冷感分子#17」に代えて、又は同化合物に加えて、本件(B)化合物を配合する動機づけはない。 c したがって、甲B2(甲A2)に記載された技術的事項、及び甲B3(甲A1)~B5に記載された周知技術を参酌しても、甲B1発明において、「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤」を配合すること、及び本件(B)化合物を配合することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 d そして、本件発明1の効果(上記(1)イ(イ)c)については、甲B1発明、甲B2(甲A2)の記載、及び甲B3(甲A1)~B5に記載された周知技術から、当業者が予測し得ない顕著な効果であるといえる。 e そうすると、本件発明1は、甲B1発明、甲B2(甲A2)に記載された技術的事項、及び甲B3(甲A1)~B5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2~9は、上記イと同様の理由により、甲B1発明、甲B2(甲A2)に記載された技術的事項、及び甲B3(甲A1)~B5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立人Bの主張について a 申立人Bは、申立書の第55~56頁において、甲B1の【0003】~【0005】において、塩化セチルピリジニウム等の抗微生物剤が、苦み等の不快な味の原因となること、その解決手段として合成冷感剤や感覚分子剤を用いることが公知である旨が記載されていることを根拠として、甲B1発明において、その苦みを抑制する観点から、合成冷感剤と併せて4級アンモニウム塩である塩化セチルピリジニウムを添加することは、甲B1に記載されているか、少なくとも甲B1に記載されている事項から当業者が容易に想到し得るものである、と主張している。 また、申立人Bは、申立書の第26頁において、甲B1発明について、冷感剤分子として、「N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」、すなわち甲B1の【0256】に記載の冷感剤分子#5及び/又は#6を含有する口腔用組成物を認定している。 その上で、申立人Bは、申立書の第56~57頁において、甲B2(甲A2)には、本件発明1の(B)成分に相当する「例示化合物(1-1)」が、甲B1の上記冷感剤分子#5及び#6に相当する「比較化合物2」と比べ、冷感の立ち上がりが早く、苦みなどの雑味が少なかったことが記載されていること(甲B2(甲A2)の実施例14、【0131】~【0134】)、当該記載を根拠として、甲B1発明において、塩化セチルピリジニウム等の抗微生物剤由来の苦みを抑制するために、冷感剤分子#5及び#6に代えて、本件発明1の(B)成分を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである、と主張している。 b しかしながら、本件発明は、練歯磨剤組成物に配合される特定の殺菌剤((A)成分)について、特定の成分(本件(B)化合物)を配合することにより、「使用開始時に清涼感があり、使用開始から使用後(例えば歯磨剤の場合は、歯磨き開始から歯磨き後)の一定時間経過後に亘って殺菌剤由来の苦味を抑制持続することができる」という効果を奏するものであると認められるところ、本件発明の(A)成分と(B)成分の特定の組み合わせについて、何ら記載のない甲B1からは、本件発明を容易に想到し得たとはいえない。 したがって、申立人Bの主張は認められない。 オ 申立理由B1-1(進歩性欠如)のまとめ したがって、本件発明1~9は、甲B1発明、及び甲B2(甲A2)に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、甲B1発明として、実施例53のサンプルCをもとに発明を認定した場合も、同様に、甲B1発明、及び甲B2(甲A2)に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、申立理由B1-1(進歩性欠如)には理由がない。 (7)申立理由B1-2(進歩性欠如)について ア 甲B2(甲A2)に記載された発明 甲B2(甲A2)には、下記一般式(1): [図:0001424606000034.jpg] [式(1)中、*印は不斉炭素原子であり、Xは水素原子又は置換基を表し、Yは置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基である。] で表されるメチルメントール誘導体を含有する冷感剤組成物が記載されており(摘記A2a)、その具体例を示した実施例18の歯磨き粉(C)からみて(摘記A2f)、甲B2(甲A2)には、以下に示す「甲B2発明」が記載されていると認める(下線は、当審合議体が付した。)。 <甲B2発明> 歯磨き粉基剤990g、ツースペーストフレーバーBASE4g、l-メントール4g、例示化合物(1-1)(1% in EtOH)2gからなる歯磨き粉であって、 例示化合物(1-1)は、(N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキシアミド)であって、 歯磨き粉基剤は、炭酸カルシウム400.0g、無水ケイ酸16.5g、ソルビトール液(70%)240.0g、ラウリル硫酸ナトリウム13.0g、カルボキシメチルセルロースナトリウム12.5g、カラギーナン3.0g、安息香酸ナトリウム4.0g、サッカリンナトリウム1.5g、精製水259.5g、及びプロピレングリコール(PG)40.0gからなる、歯磨き粉。 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲B2発明との対比 a 甲B2発明における「歯磨き粉」は、本件発明1における「練歯磨剤である口腔用組成物」に相当する。 b 甲B2発明における「例示化合物(1-1)」は、本件発明1における「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」に相当する。 c したがって、本件発明1と甲B2発明とは、 「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドを含有する、練歯磨剤である口腔用組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点10: 本件発明1は、「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤」を含有するのに対し、 甲B2発明は、含有しない点。 (イ)判断 a 上記相違点10について検討する。 甲B1には、口腔ケア剤において、一般的に、塩化セチルピリジニウム等の抗微生物剤が、苦み等の不快な味の原因となること、その解決手段として合成冷感剤や感覚分子剤を用いることが公知である旨が記載されている(摘記B1c)。 また、甲B3(甲A1)~甲B5に記載されているとおり、歯磨剤等の口腔用組成物において、殺菌剤として4級アンモニウム塩を配合することや、アシルサルコシン塩を配合できることは、当業者にとって周知である(摘記A1c、B4a、B4b、B5a、B5b)。 しかしながら、甲B1の上記記載は、あくまで口腔ケア製剤が塩化セチルピリジニウム等の抗微生物剤を含有する場合に、塩化セチルピリジニウム等が苦み等の不快な味の原因となること、その解決手段として、多様な合成冷感剤を配合することが公知であることを示しているにすぎない。 そして、本件発明は、練歯磨剤組成物に配合される特定の殺菌剤((A)成分)について、特定の成分(本件(B)化合物)を配合することにより、「使用開始時に清涼感があり、使用開始から使用後(例えば歯磨剤の場合は、歯磨き開始から歯磨き後)の一定時間経過後に亘って殺菌剤由来の苦味を抑制持続することができる」という効果を奏するものであると認められるところ、本件発明の(A)成分と(B)成分の特定の組み合わせについて、何ら記載のない甲B2からは、本件発明を容易に想到し得たとはいえない。 b したがって、甲B1に記載された技術的事項、及び甲B3(甲A1)~甲B5に記載された周知技術を参酌しても、甲B2発明において、「(A)4級アンモニウム塩又はアシルサルコシン塩である殺菌剤」を配合することは、当業者が容易になし得ることとはいえない。 c そして、本件発明の効果(上記(1)イ(イ)c)については、甲B2発明、甲B1の記載、及び甲B3(甲A1)~甲B5に記載された周知技術から、当業者が予測し得ない顕著な効果であるといえる。 d よって、本件発明1は、甲B2発明、甲B1に記載された技術的事項、及び甲B3(甲A1)~甲B5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明2~9は、上記イと同様の理由により、甲B2発明、甲B1に記載された技術的事項、及び甲B3(甲A1)~甲B5に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立理由B1-2(進歩性欠如)のまとめ したがって、本件発明1~9は、甲B2発明、甲B1に記載された技術的事項、及び甲B3(甲A1)~甲B5に記載された周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立理由B1-2(進歩性欠如)には理由がない。 (8)申立理由B1-3(進歩性欠如)について ア 甲B3(甲A1)に記載された発明 甲B3(甲A1)に記載された発明は、上記(1)アにおいて、甲A1発明として示した発明と同じであり、以下「甲B3発明」とする。 イ 本件発明1~9と甲B3発明との対比・判断 上記(1)イ及びウで示したとおり、本件発明1~9は、甲B3発明、及び甲B2(甲A2)に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 申立人Bの主張について a 申立人Bは、申立書の第47頁において、甲B3(甲A1)の[0019]に、処方例3に含まれている「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」と、「N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド」等の「N-置換-p-メンタンカルボキサミド」が並列する選択肢と記載されていることを根拠として(摘記A1d)、甲B3発明(以下、「甲B3’発明」とする。)を次のように認定している。 甲B3’発明: 「(A1):塩化ベンゼトニウムと、(B1’):3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール又はN-置換-p-メンタンカルボキサミドと、を含有する、(E1’)液状歯磨剤である口腔用組成物。」 また、申立人Bは、申立書の第67頁において、本件発明1と、上記甲B3’発明とは、以下の「相違点3-1」及び「相違点3-2」において相違すると認定し、これらの相違点について、当業者が容易に想到し得ると主張している。 相違点3-1: 本件発明1は、「(B)N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド」を含有するのに対し、 甲B3’発明は、「(B1’):3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール又はN-置換-p-メンタンカルボキサミド」を含有する点。 相違点3-2: 本件発明1は、「練歯磨剤である口腔用組成物」であるのに対し、 甲B3’発明は、「液状歯磨剤である口腔用組成物」である点。 b しかしながら、「3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール」と、「N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド」等の「N-置換-p-メンタンカルボキサミド」が並列する選択肢と記載されているからといって、甲B3(甲A1)の「処方例3」には、「塩化ベンゼトニウム」と「N-置換-p-メンタンカルボキサミド」の組み合わせは記載されていないから、甲B3(甲A1)に記載された発明を、上記「甲B3’発明」のとおり認定することはできない。 したがって、申立人Bの主張は、採用できない。 エ 申立理由B1-3(進歩性欠如)のまとめ したがって、本件発明1~9は、甲B3発明、並びに、甲B1、甲B2(甲A2)及び甲B6に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立理由B1-3(進歩性欠如)には理由がない。 (9)申立理由B2(サポート要件違反)について ア サポート要件の判断の前提 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ 特許請求の範囲の記載 特許請求の範囲には、上記第2に示したとおりの記載がある。 ウ 本件明細書の記載 摘記a:「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 口腔用組成物においては、苦味が抑制されているだけではなく、使用開始時に清涼剤による清涼感も感じられるような好適な使用感を持続的に実感できれば、口腔用組成物の継続的な利用に繋がり、結果として口腔内の殺菌効果の向上も期待できる。・・・ 本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、使用開始時に清涼感があり、使用開始から使用後(例えば歯磨剤の場合は、歯磨き開始から歯磨き後)の一定時間経過後に亘って殺菌剤由来の苦味を抑制持続することができる、口腔用組成物を提供することを課題とする。」 摘記b:「【0010】[(A)成分] (A)成分は、殺菌剤である。(A)成分を含有させることにより、殺菌効果が発揮され得る。 【0011】 (A)成分としては、例えば、カチオン性殺菌剤、ノニオン性殺菌剤及びアニオン性殺菌剤が挙げられる。カチオン性殺菌剤としては、4級アンモニウム塩、ビグアナイド系殺菌剤が好ましく、例えば、アルキルピリジニウム塩、ベンジル長鎖アルキル短鎖ジアルキルアンモニウム塩、長鎖アルキル短鎖トリアルキルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩;クロルヘキシジン塩等のビグアナイド系殺菌剤が挙げられる。より具体的には例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジンが挙げられる。これらの中で、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム及び塩化セチルピリジニウムが特に好ましい。・・・アニオン性殺菌剤としてはアシル基(例えば、炭素原子数10~18のアシル基)を有するアシルサルコシン塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)が好ましく、中でもラウロイルサルコシンナトリウムが好ましい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。 【0012】 (A)成分の含有量は、殺菌剤由来の苦み(以下、単に苦味という)が強く発現することなく、殺菌効果を発揮させる観点から、下限は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上である。これにより、良好な殺菌効果を得ることができる。上限は、好ましくは0.5質量%以下である。これにより、苦味の発現を抑制できる。従って、好ましくは0.001~0.5質量%であり、より好ましくは、0.005~0.5質量%である。前記範囲内で、(A)成分がカチオン性殺菌剤を含む場合、カチオン性殺菌剤の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、0.001~0.5質量%が好ましく、0.005~0.2質量%がより好ましい。」 摘記c:「【0013】 [(B)成分] (B)成分は、エチル-3-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート及びN-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドからなる群より選ばれる1種以上である。(B)成分を含有させることにより、殺菌剤が含有されていても、使用時に清涼感が感じられ、使用開始から使用後の一定時間経過後に亘って苦味を抑制持続させることができる。本明細書において「清涼感」とは、口腔用組成物にとって好適に働く感覚のことで、冷感のみを指すのではなく、爽やかさやスッキリ感等も含めた複合した感覚のことを指す。 ・・・ 【0015】 (B)成分の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、下限は、好ましくは、0.00001質量%以上、より好ましくは、0.00005質量%以上である。これにより、使用開始から使用後の一定時間経過後に亘って苦味の抑制持続効果を発揮することができる。(B)成分の含有量の上限は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、好ましくは、0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、特に好ましくは0.005質量%以下である。これにより、口腔内への刺激発現、香料(冷感剤以外の香料)の香味発現性低下を抑制することができる。つまり、(B)成分の含有量は、口腔用組成物全体(100質量%)に対し、好ましくは、0.00001~0.1質量%、より好ましくは、0.00005~0.005質量%である。」 摘記d:「【0019】 [(D)成分] (D)成分は、清涼剤である。(D)成分を含有させることにより、清涼感を付与でき、使用時の使用感を改善することができる。 【0020】 (D)成分の清涼剤は、具体的にはメントール及び/又はカルボンであり、化合物として配合することができるが、これらを含む精油を使用することもできる。精油としては、例えば、ペパーミント精油、和種ハッカ油、スペアミント油が挙げられる。(D)成分は、1種単独でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。これらのうち、よりスッキリ感を付与することができることから、メントール及びメントールを含む精油のいずれか一方又は両方を含むことが好ましい。 【0021】 (D)成分の含有量は、メントール及び/又はカルボンの含有量として(精油を使用した場合、精油中のメントール、カルボンをも含む量)口腔用組成物全体(100質量%)に対し、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。上限は、通常、1.5質量%以下、好ましくは1.2質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下である。従って、好ましくは、0.001~1.5質量%、より好ましくは0.001~1.2量%、更に好ましくは0.01~0.8質量%である。」 摘記e:「【0058】 実施例1~30、比較例1~4 上記成分を常法により含有させて、下記表1~4に示す組成を有する練歯磨剤組成物を調製し、ラミネートチューブに収容した。 【0059】 [評価方法] 被験者パネラー4名によって練歯磨剤組成物の使用感を評価した。歯ブラシ(クリニカアドバンテージハブラシ、4列コンパクトふつうタイプ、ライオン(株)製)にサンプルの練歯磨剤組成物1gを載せ、3分間歯みがきを行い、歯磨き開始時の清涼感、歯磨き中の苦味のなさ、歯磨き後の苦味のなさの持続性について、それぞれ下記に示す評価基準によって判定した。4名の点数の平均を求め、下記の評価基準によって評価した。 【0060】 <歯磨き開始時の清涼感> 歯磨き開始時の清涼感に関しては、歯磨きを開始したときの清涼感に関して評価を行った。 評価基準 4点:非常に清涼感を感じた 3点:清涼感を感じた 2点:あまり清涼感を感じなかった 1点:清涼感を感じなかった 判定基準 ◎:平均点3.5点以上4.0点未満 ○:平均点3.0点以上3.5点未満 △:平均点2.0点以上3.0点未満 ×:平均点2.0点未満 【0061】 <歯磨き開始時の苦味のなさ> 苦味のなさに関しては、歯磨きを開始したときの苦味の強さに関して評価を行った。 評点基準 4点:苦味を感じなかった 3点:苦味をほとんど感じなかった 2点:苦味を感じた 1点:苦味を非常に強く感じた 判定基準 ◎:平均点3.5点以上4.0点以下 ○:平均点3.0点以上3.5点未満 △:平均点2.0点以上3.0点未満 ×:平均点2.0点未満 【0062】 <歯磨き中の苦味のなさ> 歯磨き中の苦味のなさに関しては、3分間歯磨きを行っている間の苦味の強さに関して評価を行った。 評価基準 4点:苦味を感じなかった 3点:苦味をほとんど感じなかった 2点:苦味を感じた 1点:苦味を非常に強く感じた 判定基準 ☆:平均点3.8点以上4.0点以下 ◎:平均点3.5点以上3.8点未満 ○:平均点3.0点以上3.5点未満 △:平均点2.0点以上3.0点未満 ×:平均点2.0点未満 【0063】 <歯磨き後の苦味のなさの持続性> 歯磨き後の苦味のなさの持続性に関しては、3分間歯磨きを行い、すすぎ後に苦味を感じなかった時間に関して評価を行った。 評価基準 4点:25分以上(苦味は感じなかった) 3点:15分以上25分未満 2点:5分以上15分未満 1点:5分未満 判定基準 ☆:平均点3.8点以上4.0点以下 ◎:平均点3.5点以上3.8点未満 ○:平均点3.0点以上3.5点未満 △:平均点2.0点以上3.0点未満 ×:平均点2.0点未満 【0064】 【表1】 [図:0001424606000035.jpg] 【0065】 【表2】 [図:0001424606000036.jpg] 【0066】 【表3】 [図:0001424606000037.jpg] 【0067】 【表4】 [図:0001424606000038.jpg] 【0068】 (B)成分を含有していない比較例1~3では、歯磨き開始時にあまり清涼感が感じられず、苦味を非常に強く感じており、更に、歯磨き中でも苦味を感じているため、使用感は好ましくなかった。歯磨き後の苦味のなさの持続時間は5分未満であり、満足のいく結果が得られなかった。また、(B)成分の代わりに、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミドを使用した比較例4の場合も同様の結果となった。これに対し、(A)成分に(B)成分を含有させた実施例1~30はいずれも、全ての評価項目において、平均点3.0以上の満足な結果が得られた。中でも、(A)成分及び(B)成分に加えて、更に(C)成分を含有させた実施例21~30においては、歯磨き中の苦味のなさ及び歯磨き後の苦味のなさの持続性の評価が平均点3.8以上に向上し、優れた結果が得られた。これらの結果は、本発明に係る口腔用組成物が、使用開始時に清涼感を付与し、使用開始から使用後の一定時間経過後に亘って、殺菌剤由来の苦味を抑制持続することができることを示している。」 エ サポート要件の判断 (ア)本件発明の解決すべき課題について 本件特許請求の範囲の記載及び摘記aによれば、本件発明の課題は、「使用開始時に清涼感があり、使用開始から使用後(例えば歯磨剤の場合は、歯磨き開始から歯磨き後)の一定時間経過後に亘って殺菌剤由来の苦味を抑制持続することができる、口腔用組成物を提供すること」であるといえる。 (イ) 判断 本件明細書には、本件発明の練歯磨である口腔用組成物に含有される(A)成分について、「殺菌効果が発揮され」る成分であること(摘記b)、及び好適な配合量の範囲とその技術的な意義が説明されており(摘記b)、本件発明に含有される(B)成分についても、「殺菌剤が含有されていても、使用時に清涼感が感じられ、使用開始から使用後の一定時間経過後に亘って苦みを抑制持続させることができる」成分であること(摘記c)、及び好適な配合量とその技術的な意義が説明されている(摘記c)。そして、本件明細書の実施例には、本件発明の具体例である、(A)成分及び(B)成分を含有する練歯磨剤組成物が「歯磨き開始時の清涼感」、「歯磨き開始時の苦みのなさ」、「歯磨き中の苦みのなさ」、及び「歯磨き後の苦みのなさの持続性」に優れていたことが示されている(摘記eの実施例1、3及び9~30)。 そうすると、本件明細書の記載から、本件発明は、練歯磨剤組成物に配合される特定の殺菌剤について、特定の成分(本件(B)化合物)を配合することにより、「使用開始時に清涼感があり、使用開始から使用後(例えば歯磨剤の場合は、歯磨き開始から歯磨き後)の一定時間経過後に亘って殺菌剤由来の苦味を抑制持続することができる」という効果を奏するものであるといえ、実施例において、本件発明の練歯磨剤組成物がそのような効果を奏することが具体例をもって示されているのであるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載全体を考慮すれば、本件発明1の特定事項を備えた口腔用組成物とすることにより、上記(ア)で示した本件発明の課題を解決できることを、当業者は理解できるといえる。 (ウ)サポート要件の判断のまとめ したがって、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明において、その課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものである。 オ 申立人Bの主張について 申立人Bは、概略、上記第3の2(4)で述べたア及びイの点を主張する(申立書の75~78頁)。 しかしながら、上述のとおり、当業者は、本件発明は、練歯磨剤組成物に配合される特定の殺菌剤((A)成分)について、特定の成分(本件(B)化合物)を配合することにより、「使用開始時に清涼感があり、使用開始から使用後(例えば歯磨剤の場合は、歯磨き開始から歯磨き後)の一定時間経過後に亘って殺菌剤由来の苦味を抑制持続することができる」という効果を奏するものであると理解し、実施例においてもそのような効果を奏することが具体例をもって示されていることから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件発明の課題を解決できると認識できるといえる。 一方、主張アは、(A)成分が極めて多い場合(例えば、99質量%)、又は(B)成分が極めて少ない場合(例えば、0.00000001質量%)という極端な条件を想定しているにすぎず、当該主張を考慮しても、本件発明の課題を解決できないとは、当業者は考えない。 また、主張イについても、申立人Bは、(D)成分のメントールが存在しない場合、本件発明の上記効果を奏さないことを具体的に示していないから、当該主張を考慮しても、本件発明の課題を解決できないとは、当業者は考えない。 したがって、申立人Bの主張は、いずれも採用できない。 カ 申立理由B2(サポート要件違反)についてのまとめ したがって、本件発明1~9についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、申立理由B2(サポート要件違反)には、理由がない。 (10)申立理由のまとめ したがって、申立理由A1-1~A1-5、B1-1~B1-3、及びB2によっては、本件請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人の申し立てた特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700062

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