特許異議申立
2025-700212
ロジン系エマルジョンサイズ剤、紙
- 審判番号
- 2025-700212
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-054964
- 登録番号
- 7547750
- 請求日
- 2025年02月19日
- 審決日
- 2025年09月11日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】荒川化学工業株式会社
- 【異議申立人】濱田 和輝
- 審判長/審判官
- 審判長 神山 茂樹
- 審判官 葛原 怜士郎
- 審判官 長谷川 一郎
- 分類
- P1651.113-Y (D21H) / P1651.121-Y (D21H) / P1651.537-Y (D21H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7547750号発明「ロジン系エマルジョンサイズ剤、紙」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7547750号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7547750号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和2年3月25日の出願であって、令和6年9月2日にその特許権の設定登録がされ、令和6年9月10日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年2月19日に特許異議申立人濱田和輝(以下「申立人」という。)により、その請求項1~8に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。まとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ロジン系樹脂(A)と乳化剤(B)との乳化物を含むロジン系エマルジョンサイズ剤であって(ただし、(B)成分がスチレンを反応成分に含む重合体である場合を除く。)、
(B)成分の理論ガラス転移温度が80~160℃であり、かつ、
前記サイズ剤の最低造膜温度が30~80℃であるロジン系エマルジョンサイズ剤。
【請求項2】
ロジン系樹脂(A)と乳化剤(B)との乳化物を含むロジン系エマルジョンサイズ剤であって、
(B)成分が、スチレンと、
ホモポリマーとした際のガラス転移温度が75~180℃であるスチレン以外のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b1)と、
ホモポリマーとした際のガラス転移温度が70℃以下であるであるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b2)と、
α,β-不飽和カルボン酸(b3)とを反応成分に含む重合体であり、
(B)成分の理論ガラス転移温度が119~160℃であり、かつ、
前記サイズ剤の最低造膜温度が30~80℃であるロジン系エマルジョンサイズ剤。
【請求項3】
(A)成分がα,β-不飽和カルボン酸変性ロジンを含む請求項1又は2に記載のロジン系エマルジョンサイズ剤。
【請求項4】
(B)成分が、
ホモポリマーとした際のガラス転移温度が75~180℃であるスチレン以外のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b1)と、
ホモポリマーとした際のガラス転移温度が70℃以下であるであるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b2)と、
α,β-不飽和カルボン酸(b3)とを
反応成分に含む重合体である(ただし、(b1)及び(b2)成分の内、COOH基又は硫黄原子を有するモノマーを除く)、請求項1に記載のロジン系エマルジョンサイズ剤。
【請求項5】
前記反応成分が、更に硫黄原子を有する化合物(b4)を含む請求項1~4のいずれかに記載のロジン系エマルジョンサイズ剤。
【請求項6】
前記反応成分が、更に2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンを含む請求項1~5のいずれかに記載のロジン系エマルジョンサイズ剤。
【請求項7】
体積平均粒子径が0.1~1.2μmである請求項1~6のいずれかに記載のロジン系エマルジョンサイズ剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のロジン系エマルジョンサイズ剤を用いて得られる紙。」
第3 申立理由の概要
申立人は、本件特許異議申立書に添付して、以下の甲第1号証~甲第6号証(以下「甲1」等という。)を提出して、大要、次の取消理由を主張している。
1 証拠方法
甲1:特開平10-245795号公報
甲2:特開2003-055891号公報
甲3-1:JIS K 6828-2:2003 合成樹脂エマルジョン-第2部:白化温度及び最低造膜温度の求め方
甲3-2:JIS K 6828-2:2003 合成樹脂エマルジョン-第2部:白化温度及び最低造膜温度の求め方|ページ2
甲4-1:菅原 享、外2名、“ポリマーエマルション被膜中のポリマー粒子の融着に及ぼす成膜助剤の影響”、日本化学会誌、2002、No1.、p.47~52
甲4-2:“アクリル系エマルション”、[online]、サイデン化学株式会社、[2024年11月27日作成]、インターネット
<URL:https://www.saiden-chem.co.jp/t_zou_ema.html>
甲5:“ロジン”、[online]、荒川化学工業株式会社、[2025年1月9日作成]、インターネット
<URL:https://www.arakawachem.co.jp/jp/technology/catalog/01.html>
甲6:時井 真、“非容易推考説と技術的貢献説の協調運用~進歩性判断の第三の道の模索”、パテント、2024、vol.77、No.8、p.78~98
2 申立理由
(1) 申立理由1(甲1を引用例とする新規性)
本件発明1、3~5、7、8は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである(特許異議申立書「3(3)(3-1)」、「3(3)(3-3)」、「3(3)(3-6)」、「3(3)(3-9)」、「3(3)(3-12)」、「3(3)(3-15)」)。
(2) 申立理由2(甲2を引用例とする新規性)
本件発明1、3~5、7、8は、甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである(特許異議申立書「3(3)(3-1)」、「3(3)(3-4)」、「3(3)(3-7)」、「3(3)(3-10)」、「3(3)(3-13)」、「3(3)(3-15)」)。
(3) 申立理由3(進歩性)
本件発明1、3~5、7、8は、甲1、甲2に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(特許異議申立書「3(3)(3-2)」、「3(3)(3-5)」、「3(3)(3-8)」、「3(3)(3-11)」、「3(3)(3-14)」、「3(3)(3-15)」)。
(4) 申立理由4(サポート要件)
本件発明1~8は、次の点で本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36第6項第1号の規定に違反してされたものである。
ア 本件明細書において、請求項1に対応する実施例は、実施例7~11にすぎず、請求項1の発明特定事項は広範であるのに対して、明細書に開示されている範囲、実施例7~11は極めて限られており、請求項1に記載された発明であっても、実施例7~11と異なる発明については、当業者が発明の課題を解決できると認識することはできない。また、請求項1を引用する請求項3~8も同様にサポート要件を満たさない(特許異議申立書「3(3)(3-16)」、「3(3)(3-20)」)。
イ 本件明細書において、請求項2に対応する実施例は、メタクリル酸MAAが用いられている製造例1~6が開示されているだけであり、当業者は請求項2で定める範囲の全体まで発明を一般化できず、請求項2に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでなく、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでない。また、請求項2を引用する請求項3、5~8も同様にサポート要件を満たさない(特許異議申立書「3(3)(3-17)」、「3(3)(3-20)」)。
ウ 理想ガラス転移温度という概念をヘテロポリマーに適用するときには弾性モデルが成立する範囲で理論的な妥当性があるのに対して、弾性モデルが成立しない範囲では理想ガラス転移温度という概念が理論的に破綻するところ、請求項1及び2において、弾性モデルが成立する範囲であっても、弾性モデルが成立しない範囲であっても、理想ガラス転移温度というパラメータで権利範囲に属するか属しないかを判断することを求めており、理想ガラス転移温度に関する技術的意義を考察したときには、理想ガラス転移温度が理論的に成り立たない範囲では、サポート要件を具備しない。また、請求項1又は2を引用する請求項3~8も同様にサポート要件を満たさない(特許異議申立書「3(3)(3-18)」、「3(3)(3-20)」)。
(5) 申立理由5(明確性要件)
本件発明1~8は、次の点で明確ではないから、特許法第36第6項第2号の規定に違反してされたものである。
請求項1及び請求項2には、「理論ガラス転移温度」が記載されているが、「理論ガラス転移温度」を計算するために用いられるガラス転移温度が一義的に定めることができないので、理論ガラス転移温度も一義的に定めることができず、特許発明の技術的範囲に属するか否か判断できない。ホモポリマーは多数の化学メーカーが製造、販売しており、製品カタログにガラス転移温度が記載されているが、同一のホモポリマーであっても、製品カタログに記載されているガラス転移温度は異なる。ガラス転移温度に関する技術的意義を考察したときには、ガラス転移温度がメーカーによって異なるのは技術常識であり、ホモポリマーのガラス転移温度は、測定条件によって変わるものであり、測定条件が明記されていないときには、一義的に定まらないのは当然のことである。
特に溶融したホモポリマーを冷却する速度によって、ガラス転移温度は変化するし、同一のホモポリマーであっても、重合度が大きく異なるときには、ガラス転移温度が異なることがある。
本件明細書には、一部のホモポリマーについてガラス転移温度が明記されているが、このガラス転移温度がどのように計測されたかという計測条件は記載されていない。更に、本件明細書にガラス転移温度が明記されていないホモポリマーについては、理論ガラス転移温度を計算することができない。ホモポリマーのガラス転移温度が、製品カタログにより異なる旨の例示は、本件特許出願の審査段階で令和6年1月5日に提出された意見書にも多数のホモポリマーについて、2つのガラス転移温度が記載されており、理論ガラス転移温度も2つ記載されており、一方は、本願に記載されているガラス転移温度で計算した数値であるのに対して、他方は、特開2002-317394号公報に記載されたガラス転移温度で計算した数値である。
そうすると、具体的な乳化剤について、理論ガラス転移温度が2つ得られるときには、特許権の権利範囲を画定することができない。
したがって、請求項1及び2に記載されている発明は不明確であり、特許法36条6項2号に定める要件を満たさない。また、請求項1又は2を引用する請求項3~8も同様に明確性要件を満たさない(特許異議申立書「3(3)(3-18)」、「3(3)(3-20)」)。
第4 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由5(明確性要件)について
事案に鑑み、明確性要件より検討する。
(1) 明確性要件
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。以下、この観点に立って検討する。
(2) 明確性要件の判断
請求項1及び2には、「理論ガラス転移温度」が記載されている。本件特許明細書において「理論ガラス転移温度」について、【0027】には「(B)成分の理論ガラス転移温度(Tg)は、(式1)で得られるT(単位:K)を℃に換算した値であり、“T”は、乳化剤をなす反応成分である各エチレン性不飽和モノマーの仕込み重量分率(w)(単位:重量%)及びホモポリマーとした際のガラス転移温度(t)(単位:K)を用いて算出される。」、【0028】には「(式1)T=(全モノマーの仕込み重量分率)/(各モノマーの仕込み重量分率と当該モノマー/当該モノマーをホモポリマーとした際の理論ガラス温度(t))=(w1+w2+w3+・・・+wn)/(w1/t1+w2/t2+w3/t3+・・・+wn/tn)」、【0029】には「なお、エチレン性不飽和モノマーのホモポリマーとした際の理論ガラス転移温度(t)とは、そのモノマーのみを単独で重合して製造したポリマーのガラス転移温度のことであり、例えば、Wiley-Interscienceの『POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITION』(2003)に具体的な数値が記載されている。なお、本発明では、化学メーカーのホームページ又は製品カタログの情報、またこれらの情報に記載がない場合は、特許第6219368号、特開2011-081391号公報に記載の値を採用した。」、【0058】には、「(乳化剤の理論ガラス転移温度)使用する各モノマーの仕込み重量分率(w)とホモポリマーとした際のガラス転移温度(t)とを式1に代入することによりT(K)を求めた。得られたT(K)の単位を℃になるように換算して、乳化剤の理論ガラス転移温度(Tg)を求めた。なお、式1におけるwの単位は重量%であり、Tとtの単位は“K”である。表1に結果を示す。(式1)T=(w1+w2+w3+・・・+wn)/(w1/t1+w2/t2+w3/t3+・・・+wn/tn)」と記載されている。また、「理論ガラス転移温度」を計算するための「ホモポリマーとした際のガラス転移温度(t)」は、【0032】、【0034】、【0036】に、(b1)成分、(b2)成分、(b3)成分について、具体的な数値が記載されており、書籍、ホームページ、製品カタログ、特許公報等で一般に用いられる値を用いたものとして理解でき、モノマーごとにどのような温度か明確といえる。
そうすると、請求項1及び2に記載された「理論ガラス転移温度」について、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。また、請求項1又は2を引用する請求項3~8についても同様である。
(3) 申立人の主張について
申立人は上記第3の2(5)に記載のとおり、本件発明1~8は特許請求の範囲の記載が明確性要件を満たしていない旨主張する。
しかしながら、乳化剤をなす反応成分についてホモポリマーとした際のガラス転移温度(t)が明細書に記載されていなくても、書籍、ホームページ、製品カタログ、特許公報等で一般に用いられる値を用いたものと理解でき、明確性要件の観点から見れば、ホモポリマーのガラス転移温度がカタログ等により異なる場合があったとしても、その値を採用して「理論ガラス転移温度」を計算することができ、計算された「理論ガラス転移温度」が特許請求の範囲に特定された数値範囲に含まれるか否かは明確であるといえる。
また、ホモポリマーのガラス転移温度が、製品カタログにより異なる旨の例示が、本件特許出願の審査段階で令和6年1月5日に提出された意見書に記載されているが、本件特許のサイズ剤の「理論ガラス転移温度」と対比するものは、引用文献である特開2002-317394号公報に記載されたサイズ剤の「ガラス転移温度」を用いた「理論ガラス転移温度」であると考えられるから、特開2002-317394号公報に記載されたガラス転移温度を用いて計算した「理論ガラス転移温度」が適切であり、意見書において、「4.補正後の本願発明が拒絶理由を解消した理由」の「<新規性及び進歩性欠如について>(補正後の本願請求項1と引例1との対比)」における「本願及び引例1に記載されたいずれのガラス転移温度を用いましても、分散剤(B)の理論ガラス転移温度が補正後の本願請求項1に記載された範囲から外れています(相違点2)。」や「(補正後の本願請求項2と引例1との対比)」における「いずれもその理論ガラス転移温度は、補正後の本願請求項2に記載された範囲から外れています(相違点4)。」等の記載は、特開2002-317394号公報に記載されたサイズ剤について仮に本願に記載されているガラス転移温度で計算したとしても「理論ガラス転移温度」の数値が本願発明と異なる旨の主張を記載したものといえる。
以上のとおり、請求項1及び請求項2に記載された「理論ガラス転移温度」について、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。また、請求項1又は2を引用する請求項3~8についても同様である。
よって、申立人の主張は採用できない。
(4) 申立理由5についてのまとめ
以上のことから、明確性要件に係る申立理由5には理由がない。
2 申立理由4(サポート要件)について
事案に鑑み、次にサポート要件を検討する。
(1) サポート要件
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この観点に立って検討する。
(2) サポート要件の判断
ア 本件発明の解決しようとする課題
本件発明の解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)として、本件特許明細書の【0006】には、「本発明の課題は、機械的安定性に優れ、良好なサイズ効果を示すロジン系エマルジョンサイズ剤を提供することにある。」と記載されている。
イ 本件発明1について
本件特許明細書には、【0026】に「(B)成分は、乳化剤であり、その理論ガラス転移温度が80~160℃を有するものである。(B)成分の理論ガラス転移温度が80℃未満であると、サイズ剤の機械的安定性が悪化する傾向があり、160℃を超えると、紙のサイズ効果が低くなる傾向がある。」、【0050】に「最低造膜温度(以下、MFTという )が30~80℃である。・・・MFTが、30℃未満であると、熱によってサイズ剤自体が分解しやすくなる。そのため、サイズ剤の機械的安定性が劣り、例えば、抄造装置の汚れが発生しやすくなる。また、MFTが、80℃を超えると、サイズ剤が、熱によって膜を形成しにくくなるため、紙のサイズ効果が十分に発揮されにくくなる。・・・」と記載され、乳化剤の理論ガラス転移温度が80~160℃を有するもの及び最低造膜温度が30~80℃であると、サイズ剤の機械的安定性が優れる旨が示されている。
そうすると、本件課題解決手段は、これらの温度範囲であり、請求項1に課題解決手段が反映されている。
そして、実施例及び比較例(【0057】~【0079】、表1、表2)をみると、本件発明1の範囲内である「(B)成分がスチレンを反応成分に含む重合体である場合を除く」、「(B)成分の理論ガラス転移温度が80~160℃であり、かつ、」「サイズ剤の最低造膜温度が30~80℃である」構成を有する、実施例7~11のロジン系エマルジョンサイズ剤は、「機械的安定性」の評価が「○」であり、サイズ効果に関連する「ステキヒトサイズ度(秒)」が26~40であることが記載されている。一方、「(B)成分がスチレンを反応成分に含む重合体である場合を除く」、(B)成分の理論ガラス転移温度が80~160℃でない比較例4、6や「サイズ剤の最低造膜温度が30~80℃で」ない比較例6のロジン系エマルジョンサイズ剤は、「機械的安定性」の評価が「×」(比較例4、6)であり、サイズ効果に関連する「ステキヒトサイズ度(秒)」が12~18であること(比較例10、16)が記載されている。すなわち、本件課題解決手段は実施例の記載とも整合している。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件発明1の「ロジン系エマルジョンサイズ剤」は、機械的安定性に優れ、良好なサイズ効果を示すこととなり、本件課題が解決できることを、当業者は認識できるといえる。
したがって、本件発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
ウ 本件発明2について
本件特許明細書には、上記イに加えて【0030】に「(B)成分をなす反応成分のエチレン性不飽和モノマーとしては、前記理論ガラス転移温度を満たすものであれば、特に限定されず、各種公知のものを使用できるが、特にサイズ剤の優れた機械的安定性の点から、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が75~180℃であるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b1)(以下、(b1)成分という。)と、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が70℃以下であるであるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b2)(以下、(b2)成分という。)と、α,β-不飽和カルボン酸(b3)(以下、(b3)成分という。)とを反応成分に含む重合体(ただし、(b1)及び(b2)成分の内、COOH基又は硫黄原子を有するモノマーを除く)が好ましい。」、【0031】に「(b1)成分は、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が75~180℃であるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであり、当該ガラス転移温度であることにより、サイズ剤の機械的安定性が優れる傾向がある。・・・」と、【0032】に「(b1)成分としては、・・・中でも紙のサイズ効果が優れる点から、スチレン、α-メチルスチレン、アクリルアミドが好ましい。」、【0036】に「(b3)成分は、α,β-不飽和カルボン酸であり、サイズ剤の機械的安定性に寄与する成分である。・・・」と記載され、乳化剤の成分がスチレンと、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が75~180℃であるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b1)と、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が70℃以下であるであるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b2)と、α,β-不飽和カルボン酸(b3)とを反応成分に含む重合体であると、サイズ剤の機械的安定性が優れる旨が示されている。
そうすると、本件課題解決手段は、これらの温度範囲であり、請求項2に課題解決手段が反映されている。
そして、実施例及び比較例(【0057】~【0079】、表1、表2)をみると、本件発明2の範囲内である「(B)成分が、スチレンと、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が75~180℃であるスチレン以外のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b1)と、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が70℃以下であるであるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b2)と、α,β-不飽和カルボン酸(b3)とを反応成分に含む重合体であり、(B)成分の理論ガラス転移温度が119~160℃であり、かつ、」「サイズ剤の最低造膜温度が30~80℃である」構成を有する、実施例1~4、6、12~18のロジン系エマルジョンサイズ剤は、「機械的安定性」の評価が「○」であり、サイズ効果に関連する「ステキヒトサイズ度(秒)」が35~39であることが記載されている。一方「(B)成分が、スチレンと、」「α,β-不飽和カルボン酸(b3)とを反応成分に含む重合体であ」るが、「(B)成分が、」「ホモポリマーとした際のガラス転移温度が75~180℃であるスチレン以外のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b1)」を含まない比較例2や、「ホモポリマーとした際のガラス転移温度が70℃以下であるであるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b2)」を含まない比較例3や、「(B)成分の理論ガラス転移温度が119~160℃で」ない比較例1~3、5や「サイズ剤の最低造膜温度が30~80℃で」ない比較例5のロジン系エマルジョンサイズ剤は、「機械的安定性」の評価が「×」(比較例1)であり、サイズ効果に関連する「ステキヒトサイズ度(秒)」が12~18であること(比較例1~3、5)が記載されている。すなわち、本件課題解決手段は、実施例の記載とも整合している。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件発明2の「ロジン系エマルジョンサイズ剤」は、機械的安定性に優れ、良好なサイズ効果を示すこととなり、本件課題が解決できることを、当業者は認識できるといえる。
したがって、本件発明2は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
エ 本件発明3~8について
上記イ及びウのとおり、本件発明1及び2は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであり、請求項1又は2を引用する請求項3~8に係る本件発明3~8も同様に本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。
オ 請求人の主張について
(ア) 上記第3の2(4)アについて
上記イで検討したとおり、本件特許明細書の【0026】に「(B)成分は、乳化剤であり、その理論ガラス転移温度が80~160℃を有するものである。(B)成分の理論ガラス転移温度が80℃未満であると、サイズ剤の機械的安定性が悪化する傾向があり、160℃を超えると、紙のサイズ効果が低くなる傾向がある。」、【0050】に「前記製造方法で得られるサイズ剤の物性としては、最低造膜温度(以下、MFTという)が30~80℃である。MFTとは、サイズ剤より前記分散媒(例えば、水分)が蒸発して、膜を形成するために必要な最低温度のことであり、市販の最低造膜温度計で測定することにより得られる数値である。MFTが、30℃未満であると、熱によってサイズ剤自体が分解しやすくなる。そのため、サイズ剤の機械的安定性が劣り、例えば、抄造装置の汚れが発生しやすくなる。また、MFTが、80℃を超えると、サイズ剤が、熱によって膜を形成しにくくなるため、紙のサイズ効果が十分に発揮されにくくなる。・・・」と記載され、【0017】、【0026】~【0040】に(B)成分に含まれる各成分及びそれらのガラス転移温度が記載されている。
また、実施例及び比較例(【0057】~【0079】、表1、表2)をみると、本件発明1の実施例であるロジン系エマルジョンサイズ剤は、「機械的安定性」及びサイズ効果が比較例に対して良好であることが示されている。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件発明1の「ロジン系エマルジョンサイズ剤」は、機械的安定性に優れ、良好なサイズ効果を示すこととなり、本件課題が解決できることを、当業者は認識できるといえる。
また、申立人は、請求項1に記載された発明であっても、実施例7~11と異なる場合に、実際に課題を解決することができないことを示すための、文献や実験結果等の具体的な根拠を示しているわけではない。
以上のとおり、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、本件発明1の全ての範囲にまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。請求項1を引用する請求項3~8に係る本件発明3~8も同様である。
よって、申立人の主張は採用できない。
(イ) 上記第3の2(4)イについて
上記ウで検討したとおり、本件特許明細書にはさらに【0030】に「(B)成分をなす反応成分のエチレン性不飽和モノマーとしては、前記理論ガラス転移温度を満たすものであれば、特に限定されず、各種公知のものを使用できるが、特にサイズ剤の優れた機械的安定性の点から、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が75~180℃であるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b1)(以下、(b1)成分という。)と、ホモポリマーとした際のガラス転移温度が70℃以下であるであるエチレン性不飽和二重結合を有するモノマー(b2)(以下、(b2)成分という。)と、α,β-不飽和カルボン酸(b3)(以下、(b3)成分という。)とを反応成分に含む重合体(ただし、(b1)及び(b2)成分の内、COOH基又は硫黄原子を有するモノマーを除く)が好ましい。」と記載されている。
また、実施例及び比較例(【0057】~【0079】、表1、表2)をみると、本件発明2の実施例であるロジン系エマルジョンサイズ剤は、「機械的安定性」及びサイズ効果が比較例に対して良好であることが示されている。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件発明2の「ロジン系エマルジョンサイズ剤」は、機械的安定性に優れ、良好なサイズ効果を示すこととなり、本件課題が解決できることを、当業者は認識できるといえる。
また、申立人は、請求項2に記載された発明であっても、メタクリル酸MAAが用いられている製造例と異なる場合に、実際に課題を解決することができないことを示すための、文献や実験結果等の具体的な根拠を示しているわけではない。
以上のとおり、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、本件発明2で定める範囲の全体にまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。請求項2を引用する請求項3、5~8に係る本件発明3、5~8も同様である。
よって、申立人の主張は採用できない。
(ウ) 上記第3の2(4)ウについて
「理論ガラス転移温度」(特許異議申立書の「3(3)(3-18)」、「3(3)(3-20)」に記載の「理想ガラス転移温度」は「理論ガラス転移温度」と同様のもの考えられる。)という概念をヘテロポリマーに適用するときには弾性モデルが成立する範囲で理論的な妥当性があるのに対して、弾性モデルが成立しない範囲では理論ガラス転移温度という概念が理論的に妥当なものとはいえないことは当業者が理解できるところである。
したがって、本件発明1及び2における「理論ガラス転移温度」は、樹脂について事実上弾性モデルが成立する範囲におけるものを前提としていると理解できる。
また、本件特許明細書における実施例を参酌すると、【0058】で定義する「理論ガラス転移温度」が請求項1又は2で特定される数値範囲に包含されるロジン系エマルジョンサイズ剤について、優れた機械的安定性と良好なサイズ効果が示されており(【0079】)、請求項1及び2において特定される理論ガラス転移温度の数値範囲においては、実施例により有利な作用効果が裏付けられているといえる。この点、申立人は、請求項1及び2に記載された発明の「理論ガラス転移温度」について、弾性モデルが成立しない範囲である場合に、実際に課題を解決することができないことを示すための、文献や実験結果等の具体的な根拠を示しておらず、また、当該事項が技術常識であると認めるに足る証拠もない。
そうすると、請求項1及び2において、弾性モデルが成立する範囲であっても、弾性モデルが成立しない範囲であっても、理想ガラス転移温度というパラメータで権利範囲に属するか属しないかを判断することを求めているとの請求人の主張は、その前提において適切とはいえない。
以上のとおり、本件発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえるから、本件発明1及び2で定める範囲の全体にまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できないとはいえない。
請求項1を引用する請求項3~8に係る本件発明3~8も同様である。また、請求項2を引用する請求項3、5~8に係る本件発明3、5~8も同様である。
よって、申立人の主張は採用できない。
(3) 申立理由5についてのまとめ
以上のことから、サポート要件に係る申立理由5には理由がない。
3 申立理由1(甲1を引用例とする新規性)、申立理由3(甲1を主引用例とする進歩性)について
(1) 甲1に記載された事項・発明
ア 甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与し、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。
「【0006】・・・本発明は、(1)、(A)ロジン系物質と(B)乳化分散剤を水性分散媒に含有する製紙用ロジンエマルションサイズ剤において、該(B)乳化分散剤が少なくとも下記(a)~(c)、(e)及び(f)のそれぞれに属する少なくとも1種の重合性化合物を共重合体成分に有し、かつ(a)40~90モル%、(b)3~20モル%及び(c)6~40モル%からなる(a)~(c)のモノマー100モル%に対して、(e)成分を0.2~3モル%及び(f)成分を0.2~3モル%重合して得られるアクリルアミド系共重合体を含有する製紙用ロジンエマルションサイズ剤を提供するものである。
(a)アクリルアミド及びメタクリルアミドの少なくとも1種
(b)疎水性モノマー類
(c)カルボン酸基及び/又はその塩を含有するモノマー類
(e)水溶性メルカプタン類
(f)水難溶性メルカプタン類
・・・」
「【0031】
【実施例】以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下における部及び%は特記しない限りすべて重量基準である。
共重合体溶液の製造例1(実施例用共重合体溶液(G-1)の製造)
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた1リットル四つ口フラスコに50%アクリルアミド水溶液228部(80モル%)、疎水性モノマー類としてイソブチルメタクリレート28部(10モル%)、カルボン酸基含有モノマー類としてアクリル酸14部(10モル%)、イオン交換水136部、イソプロピルアルコール218部、水溶性メルカプタン類としてチオグリコール酸0.9部(0.5モル%)、水難溶性メカプタン類としてn-ドデシルメルカプタン2.8部(0.7モル%)を仕込み、この混合液を攪拌しながら窒素ガス雰囲気下で、60℃まで昇温した。ついで重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を0.3部加え、80℃まで昇温し、5時間この温度を保持した。次に、イソプロピルアルコールの留去を行い、イオン交換水を加えて固形分濃度35%、粘度800センチポイズ(cps)の共重合体溶液(G-1)を製造した。なお、粘度の測定はブルックフィールド型粘度計を用い、25℃で測定した(以下、粘度の測定条件は同じ)。」
「【0034】共重合体溶液の製造例4(実施例用共重合体溶液(G-4)の製造)
上記製造例1において、50%アクリルアミドを250部(88モル%)、疎水性モノマー類としてイソブチルメタクリレートの代わりに2-エチルヘキシルメタクリレート12部(3モル%)、カルボン酸基含有モノマー類としてアクリル酸の代わりにイタコン酸16部(6モ
ル%)、スルホン酸基含有モノマー類としてビニルスルホン酸ナトリウム8部(3モル%)、イオン交換水135部、イソプロピルアルコール227部、水溶性メルカプタン類としてチオグリコール酸の代わりにシステアミン塩酸塩2.3部(1.0モル%)、水難溶性メルカプ
タン類としてn-ドデシルメルカプタンの代わりにn-オクチルメルカプタン1.5部(0.5モル%)を用い、また、AIBNを0.7部用いたこと以外は同様にして重合反応を行い、固形分35%、粘度3500cpsの共重合体溶液(G-4)を製造した。」
「【0050】以上の実施例用製造例、比較例用製造例で製造した共重合体の組成及びその溶液の粘度を表1、2にそれぞれまとめて示す。
【表1】
[図:0001427987000001.jpg]
【0051】 * * 【表2】
[図:0001427987000002.jpg]
」
「【0056】実施例1(ロジンエマルションサイズ剤の製造例1)
上記ロジン系物質の製造例1のガムロジンのフマル酸強化物(H)100部を約150℃に加熱熔融し、攪拌しながら上記共重合体溶液製造例1の共重合体溶液(G-1)を20部添加して混合し、さらに熱水を加えながら転相させ、油中水型のエマルションとし、これにさらに熱水を素早く添加して安定な水中油型エマルションとした後、室温まで冷却した。かくして得られたロジンエマルションの固形分は45.3%、平均粒子径は0.35μmであった。このロジンエマルションをそのままサイズ剤とする。
【0057】実施例2~11(ロジンエマルションサイズ剤の製造例2~11)
上記ロジン系物質の製造例1~4のガムロジンのフマル酸強化物(H)、ガムロジンの無水マレイン酸の強化物(I)、ロジンエステル化物(J)、強化ロジンエステル化物(K)と上記共重合体溶液製造例1~9の共重合体溶液(G-1)~(G-9)を表2のそれぞれの実施例の欄に示す組み合わせ及び仕込み比に従って、ロジン系物質100部、共重合体溶液を20部使用したこと以外は実施例1と同様にして表3に示すそれぞれの実施例の欄の固形分、平均粒子径のロジンエマルションを製造し、それぞれを該当する実施例のサイズ剤とする。」
「【0060】
【表3】
[図:0001427987000003.jpg]
」
イ 甲1に記載されたと認められる事項
(ア)【0060】の【表3】の実施例5の欄には「サイズ剤(ロジンエマルジョン)の組成(固形分)と性状」の「共重合体溶液(重量部)」に「G-4 20部」、「ロジン系物質(重量部)」に「I 70部/J 30部」と記載されており、【0057】に「ガムロジンの無水マレイン酸の強化物(I)、ロジンエステル化物(J)」と記載されているから、実施例5のサイズ剤(ロジンエマルジョン)の組成(固形分)は、「共重合体溶液(重量部)」として「G-4 20部」と、「ロジン系物質(重量部)」として、ガムロジンの無水マレイン酸の強化物(I)が70部、ロジンエステル化物(J)が30部であることが示されている。
(イ)【0050】の【表1】の「G-4」の欄には「共重合体溶液の組成(モル%)」に「(a)(メタ)アクリルアミド」として「AAm 88」、「(b)疎水性モノマー類」として「EHMA 3」、「(c)カルボン酸基含有モノマー類」として「IA 6」が記載されている。
(ウ)【0034】より、「実施例用共重合体溶液(G-4)」は、50%アクリルアミドを250部(88モル%)、疎水性モノマー類として2-エチルヘキシルメタクリレート12部(3モル%)、カルボン酸基含有モノマー類としてイタコン酸16部(6モル%)を含むことが示されている。
(エ)【0034】,【0050】の【表1】より、「実施例用共重合体溶液(G-4)」はスチレンを含まないことが示されている。
ウ 甲1発明
甲1(【0031】、【0034】、【0050】、【0056】、【0057】、【0060】)には、サイズ剤(ロジンエマルジョン)に関して、特に実施例5に着目すると、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「(A)ロジン系物質と(B)乳化分散剤を水性分散媒に含有する製紙用ロジンエマルションサイズ剤であって、(A)ロジン系物質がガムロジンの無水マレイン酸の強化物(I)が70部、ロジンエステル化物(J)が30部であり、(B)乳化分散剤が、50%アクリルアミドを250部(88モル%)、疎水性モノマー類として2-エチルヘキシルメタクリレート12部(3モル%)、カルボン酸基含有モノマー類としてイタコン酸16部(6モル%)を含み、スチレンを含まない、共重合体溶液(G-4)である、製紙用ロジンエマルションサイズ剤。」
(2) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明の「(A)ロジン系物質」は、ガムロジンの無水マレイン酸の強化物(I)とロジンエステル化物(J)で組成されているから、本件発明1の「ロジン系樹脂(A)」に相当する。
甲1発明の「(B)乳化分散剤」は、本件発明1の「乳化剤(B)」に相当する。
甲1発明の「製紙用ロジンエマルションサイズ剤」は、本件発明1の「ロジン系エマルジョンサイズ剤」に相当する。
甲1発明の「(A)ロジン系物質と(B)乳化分散剤を水性分散媒に含有する」は、本件発明1の「ロジン系樹脂(A)と乳化剤(B)との乳化物を含む」に相当する。
甲1発明の「(B)乳化分散剤が、50%アクリルアミドを250部(88モル%)、疎水性モノマー類として2-エチルヘキシルメタクリレート12部(3モル%)、カルボン酸基含有モノマー類としてイタコン酸16部(6モル%)を含み、スチレンを含まない、共重合体溶液(G-4)であ」ることは、共重合体溶液(G-4)がスチレンを含まないから、甲1発明の「(B)成分がスチレンを反応成分に含む重合体である場合を除く」構成を備えるといえる。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「ロジン系樹脂(A)と乳化剤(B)との乳化物を含むロジン系エマルジョンサイズ剤(ただし、(B)成分がスチレンを反応成分に含む重合体である場合を除く。)。」
[相違点1-1]
乳化剤(B)について、本件発明1は、「(B)成分の理論ガラス転移温度が80~160℃であ」るのに対して、甲1発明はそのようなものであるか不明な点。
[相違点1-2]
ロジン系エマルジョンサイズ剤について、本件発明1は、「最低造膜温度が30~80℃である」のに対して、甲1発明はそのようなものであるか不明な点。
イ 判断
(ア) 相違点1-2について
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲1には、ロジン系エマルジョンサイズ剤について、最低造膜温度に関する記載はない。
甲4-1の第48ページ「3.1 MFTの測定」には、「一般にポリマーエマルジョンは、ガラス転移温度(以後Tgと略記する)以上の温度で連続皮膜を形成し、TgとMFTはほぼ一致する。」と記載されている。
しかしながら、甲1にはロジン系エマルジョンサイズ剤について、ガラス転移温度に関する記載もなく、甲1発明のロジン系物質は、ガムロジンの無水マレイン酸の強化物(I)が70部、ロジンエステル化物(J)が30部であるが、甲1には、ガムロジンの無水マレイン酸の強化物(I)及びロジンエステル化物(J)のガラス転移温度及び最低造膜温度は記載されていない。
また、甲1の【請求項1】には、製紙用ロジン系エマルジョンサイズ剤がロジン系物質と乳化分散剤を水性分散媒に含有することが記載されており、甲1の【0007】には、ロジン系物質として、ガムロジンが例示されている。そして、甲5を参酌しても、ガムロジンのガラス転移温度は40℃であるから、製紙用ロジン系エマルジョンサイズ剤のロジン系物質(ガムロジン)のガラス転移温度(最低造膜温度)が40℃程度であることが把握できるにすぎない。
そうすると、本件発明1における「ロジン系エマルジョンサイズ剤」について、「最低造膜温度が30~80℃である」点は、甲1、5に記載されておらず、また、周知技術であるとも認められない。
そして、前述のとおり本件特許明細書の【0079】に示すように、「ロジン系エマルジョンサイズ剤」の「最低造膜温度が30~80℃」に包含される実施例7~11は、機械的安定性に優れ、良好なサイズ効果を有することが示されている。
よって、相違点1-2は実質的なものであり、甲1発明において、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
さらに、甲2~5をみても、上記相違点1-2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2~6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(イ) 申立人の主張について
申立人は特許異議申立書において大略以下のとおり主張する。
a 新規性について(特許異議申立書「3(3)(3-1)」)
甲1及び甲2が開示するロジン系エマルジョンサイズ剤の最低造膜温度は、甲4-1に「一般にポリマーエマルションは,ガラス転移温度(以後Tgと略記する)以上の温度で連続皮膜を形成し,TgとMFTはほぼ一致する」と明記されているところ、ロジン系エマルジョンサイズ剤のガラス転移温度とほぼ一致する。
甲1、段落番号【0007】には、ロジン系物質として、ガムロジンが示され、甲2、段落番号【0008】にもロジン系物質として、ガム系ロジンが例示されている。そして、甲5の製品カタログに示すように、ガムロジンのガラス転移温度は40℃である。甲1及び甲2では、ガムロジンなどのロジン系物質を乳化剤で乳化しているのだが、ガムロジンのガラス転移温度が40℃であることを考慮すると、乳化物、則ち、ロジン系エマルジョンサイズ剤のガラス転移温度は40℃を中心となる数値の範囲になることが想定される。
ここで、本件請求項1に記載されている発明では、乳化剤の理論ガラス転移温度が80℃~160℃に限定されている。また、甲1及び甲2にもこの要件を満たす乳化剤は開示されているところ、ガラス転移温度が40℃のガムロジンと、ガラス転移湿度が80℃~160℃の乳化剤から乳化物を生成したときには、乳化物のガラス転移温度は40℃より高くなることが想定される。
したがって、甲1及び甲2にもロジン系エマルジョンサイズ剤の最低造膜温度は30~80℃という数値範囲のいずれかの温度になると想定される。
b 進歩性について(特許異議申立書「3(3)(3-2)」)
所望の最低造膜温度について、工場内の温度より、若干、高い温度に加熱することにより、エマルジョンサイズ剤に含まれている水を除去することが想定されるところ、例えば、30℃以上で膜を形成するのが望ましいということになる。
一方、水の沸点を超える温度や100℃に近い温度では、膜の形成に悪影響を与えることが想定されところ、ロジン系エマルジョンサイズ剤の最低造膜温度は80℃以下となるように設計することが十分に想定される。
次に、ロジン系エマルジョンサイズ剤の最低造膜温度が30℃から80℃を実現するには、ポリマーエマルジョンでは、最低造膜温度はガラス転移温度とほぼ一致することが分かっているので(甲4-2)、ロジン系エマルジョンサイズ剤のガラス転移温度を30℃から80℃の範囲に設計すればよい。
甲1及び甲2に明記されているように、ロジン系エマルジョンサイズ剤は、ロジン物質と乳化剤で構成されており、甲1にも甲2にもガムロジン(松やに)が明記され、ガムロジンのガラス転移温度が40℃である(甲5)。
そうすると、乳化剤のガラス転移温度が40℃より高いときには、ロジン系エマルジョンサイズ剤のガラス転移温度を30℃から80℃の範囲になることが十分に予想されるところであり、本件発明では、乳化剤の理論ガラス転移温度が80~160℃に限定されている。
要するに、最低造膜温度に関するパラメータも、単なる設計事項に過ぎない。
さらに、本件発明では、最低造膜温度というパラメータで発明を特定するという特徴があるが、本件明細書には、最低造膜温度というパラメータとロジン系エマルジョンサイズ剤のサイズ効果との関係について格別に言及されているわけではなく、最低造膜温度という特殊パラメータで単なる設計事項を規定したものに過ぎない。
c 上記aについて検討するに、本件発明1において、乳化剤の理論ガラス転移温度が80℃~160℃に限定されているところ、ガラス転移温度が40℃のガムロジンと、ガラス転移湿度が80℃~160℃の乳化剤から乳化物を生成したときには、乳化物のガラス転移温度は40℃より高くなる可能性はあるが、甲1におけるロジン系エマルジョンサイズ剤の最低造膜温度について必ずしも30~80℃という数値範囲のいずれかの温度になるとはいえない。
d 上記bについて検討する。甲1及び甲2には、製紙用ロジンエマルジョンサイズ剤の最低造膜温度について記載されていない。ポリマーエマルジョンでは、最低造膜温度はガラス転移温度とほぼ一致することが分かっているとしても、甲1及び甲2には、製紙用ロジンエマルジョンサイズ剤のガラス転移温度を30℃から80℃の範囲に設計する動機付けはない。
甲1及び甲2において、ロジン系エマルジョンサイズ剤は、ロジン物質と乳化剤で構成されており、甲1にも甲2にもロジンの典型例であるガムロジン(松やに)が明記され、ガムロジンのガラス転移温度が40℃であり、本件発明では、乳化剤の理論ガラス転移温度が80~160℃に限定されているとしても、必ずしもロジン系エマルジョンサイズ剤のガラス転移温度を30℃から80℃の範囲になるとはいえず、甲1及び甲2の製紙用ロジンエマルジョンサイズ剤のガラス転移温度を30℃から80℃の範囲に設計することは当業者が容易に想到し得たとはいえない。
本件特許明細書には、【0050】に「MFTが、30℃未満であると、熱によってサイズ剤自体が分解しやすくなる。そのため、サイズ剤の機械的安定性が劣り、例えば、抄造装置の汚れが発生しやすくなる。また、MFTが、80℃を超えると、サイズ剤が、熱によって膜を形成しにくくなるため、紙のサイズ効果が十分に発揮されにくくなる。」と記載されており、最低造膜温度というパラメータとロジン系エマルジョンサイズ剤のサイズ効果との関係について言及されている。
この点を踏まえれば、ロジンエマルジョンサイズ剤の最低造膜温度の数値限定について単なる設計的事項であるとはいえない。
e 以上のとおり、申立人の上記a及びbの主張は採用できない。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3) 本件発明3~5、7、8について
本件発明3~5、7、8は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)イで検討したものと同じ理由により、甲1発明ではなく、また、甲1発明及び甲2~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(4) 申立理由1(甲1を引用例とする新規性)、申立理由3(甲1を主引用例とする進歩性)についてのまとめ
以上のことから、申立理由1(甲1を引用例とする新規性)、申立理由3(甲1を主引用例とする進歩性)には理由がない。
4 申立理由2(甲2を引用例とする新規性)、申立理由3(甲2を主引用例とする進歩性)について
(1) 甲2に記載された事項・発明
ア 甲2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】(A)ロジン系物質、(B)乳化分散剤及び(C)水を含有する製紙用エマルションサイズ剤であって、(B)乳化分散剤が少なくとも下記(a)~(d)及び(e)のそれぞれに属する少なくとも1種の化合物を重合して得られる(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有し、固形分が少なくとも50重量%である製紙用ロジンエマルションサイズ剤。
(a)(メタ)アクリルアミド
(b)疎水性モノマー
(c)カルボン酸基及び/又はその塩を含有するモノマー
(d)スルホン酸基及び/又はその塩を含有するモノマー
(e)メルカプトプロピオン酸エステル及び/又はチオグリコール酸エステル」
イ 甲2発明
甲2(【請求項1】)には、製紙用ロジンエマルジョンサイズ剤に関して、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「(A)ロジン系物質、(B)乳化分散剤及び(C)水を含有する製紙用エマルションサイズ剤であって、(B)乳化分散剤が少なくとも下記(a)~(d)及び(e)のそれぞれに属する少なくとも1種の化合物を重合して得られる(メタ)アクリルアミド系共重合体を含有し、固形分が少なくとも50重量%である製紙用ロジンエマルションサイズ剤。
(a)(メタ)アクリルアミド
(b)疎水性モノマー
(c)カルボン酸基及び/又はその塩を含有するモノマー
(d)スルホン酸基及び/又はその塩を含有するモノマー
(e)メルカプトプロピオン酸エステル及び/又はチオグリコール酸エステル」
(2) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲2発明の「(A)ロジン系物質」は、本件発明1の「ロジン系樹脂(A)」に相当する。
甲2発明の「(B)乳化分散剤」は、本件発明1の「乳化剤(B)」に相当する。
甲2発明の「製紙用ロジンエマルションサイズ剤」は、本件発明1の「ロジン系エマルジョンサイズ剤」に相当する。
甲2発明の「(A)ロジン系物質、(B)乳化分散剤及び(C)水を含有する」は、本件発明1の「ロジン系樹脂(A)と乳化剤(B)との乳化物を含む」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
「ロジン系樹脂(A)と乳化剤(B)との乳化物を含むロジン系エマルジョンサイズ剤。」
[相違点2-1]
乳化剤(B)について、本件発明1は、「(B)成分の理論ガラス転移温度が80~160℃であ」るのに対して、甲2発明はそのようなものであるか不明な点。
[相違点2-2]
ロジン系エマルジョンサイズ剤について、本件発明1は、「最低造膜温度が30~80℃である」のに対して、甲2発明はそのようなものであるか不明な点。
[相違点2-3]
ロジン系エマルジョンサイズ剤について、本件発明1は、「(B)成分がスチレンを反応成分に含む重合体である場合を除く」のに対して、甲2発明はそのようなものであるか不明な点。
イ 判断
(ア) 相違点2-2について
事案に鑑み、相違点2-2について検討する。
甲2には、ロジン系エマルジョンサイズ剤について、最低造膜温度に関する記載はない。
甲4-1の第48ページ「3.1 MFTの測定」には、「一般にポリマーエマルジョンは、ガラス転移温度(以後Tgと略記する)以上の温度で連続皮膜を形成し、TgとMFTはほぼ一致する。」と記載されている。
しかしながら、甲2にはロジン系エマルジョンサイズ剤について、ガラス転移温度に関する記載もなく、甲2発明のロジン系物質は、ガムロジンの無水マレイン酸の強化物(I)が70部、ロジンエステル化物(J)が30部であるが、甲2には、ガムロジンの無水マレイン酸の強化物(I)及びロジンエステル化物(J)のガラス転移温度及び最低造膜温度及び最低造膜温度は記載されていない。
また、甲2の【請求項1】には、製紙用ロジン系エマルジョンサイズ剤がロジン系物質と乳化分散剤及び水を含有することが記載されており、甲2の【0008】には、ロジン系物質として、ガムロジンが例示されている。そして、甲5を参酌しても、ガムロジンのガラス転移温度は40℃であるから、製紙用ロジン系エマルジョンサイズ剤のロジン系物質(ガムロジン)のガラス転移温度(最低造膜温度)が40℃程度であることが把握できるにすぎない。
そうすると、本件発明1における「ロジン系エマルジョンサイズ剤」について、「最低造膜温度が30~80℃である」点は、甲2、5に記載されておらず、また、周知技術であるとも認められない。
そして、前述のとおり本件特許明細書の【0079】に示すように、「ロジン系エマルジョンサイズ剤」の「最低造膜温度が30~80℃」に包含される実施例7~11は、機械的安定性に優れ、良好なサイズ効果を有することが示されている。
よって、相違点2-2は実質的なものであり、甲2発明において、相違点2-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
さらに、甲1、3~6をみても、上記相違点2-2に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではなく、また、甲2発明及び甲1、3~6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(イ) 申立人の主張について
a 新規性について(特許異議申立書「3(3)(3-1)」)
上記3の(2)イ(イ)aと同様である。
b 進歩性について(特許異議申立書「3(3)(3-2)」)
上記3の(2)イ(イ)bと同様である。
c 上記aについて検討するに、上記3の(2)イ(イ)cにおいて検討したことと同様である。
d 上記bについて検討するに、上記3の(2)イ(イ)dにおいて検討したことと同様である。
e 以上のとおり、申立人の上記a及びbの主張は採用できない。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は甲2発明ではなく、また、甲2発明及び甲1、3~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(3) 本件発明3~5、7、8について
本件発明3~5、7、8は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)イで検討したものと同じ理由により、甲2発明ではなく、また、甲2発明及び甲1、3~6に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(4) 申立理由2(甲2を引用例とする新規性)、申立理由3(甲2を主引用例とする進歩性)についてのまとめ
以上のことから、申立理由2(甲2を引用例とする新規性)、申立理由3(甲2を主引用例とする進歩性)には理由がない。
第5 むすび
以上のとおり、請求項1~8に係る特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700212