審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2022-701217

製紙用添加剤、紙及び紙の製造方法

審判番号
2022-701217
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-539551
登録番号
7081674
請求日
2022年12月06日
審決日
2023年11月08日
公報発行日
2023年12月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】星光PMC株式会社
  • 【権利者代理人】蔦 康宏
  • 【異議申立人】荒川化学工業 株式会社
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 山崎 勝司
  • 審判官 井上 茂夫
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.113-Y (D21H) / P1651.121-Y (D21H) / P1651.536-Y (D21H) / P1651.537-Y (D21H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7081674号発明「製紙用添加剤、紙及び紙の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7081674号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7081674号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和1年8月28日(優先権主張 平成30年8月31日)を国際出願日とする出願であって、令和4年5月30日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行:令和4年6月7日)がされ、その後、その特許について、令和4年12月6日に特許異議申立人荒川化学工業株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和5年4月28日付けで取消理由が通知され、令和5年6月23日(差出)に特許権者から意見書の提出がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、各発明を「本件発明1」のようにいい、総称して「本件発明」ともいう。)。 「【請求項1】 (A)(メタ)アクリルアミド、(B)(メタ)アリルスルホン酸類、(C)カルボキシル基を有するアニオン性ビニルモノマー、(D)4級アンモニウムを有するカチオン性ビニルモノマーを共重合成分として含む両性ポリアクリルアミドを含有する製紙用添加剤であって、 前記両性ポリアクリルアミドのアニオン等量とカチオン等量の比が0.05以上1.7以下であり、 前記両性ポリアクリルアミドのオクタノール/水分配係数が-1.44以上-0.60以下であり、 前記両性ポリアクリルアミドの表面張力が66mN/m以上74mN/m未満であり、 前記両性ポリアクリルアミドのピークトップ分子量Mpが100万から500万であり、分子量分布Mw/Mnが2.5以上8.0以下であり、 ピークトップ分子量Mpと製紙用添加剤の20質量%水溶液(25℃)の粘度Vの比Mp/Vが200以上800以下 であることを特徴とする製紙用添加剤。 【請求項2】 請求項1に記載の製紙用添加剤を含有する紙。 【請求項3】 請求項1に記載の製紙用添加剤を用い、パルプスラリー中にアルミニウム化合物をアルミナ換算でパルプの乾燥質量当たり0~0.3質量%添加し、抄紙pHが5.0~8.5で抄紙することを特徴とする紙の製造方法。 【請求項4】 抄紙電気伝導度が300mS/mを超えることを特徴とする請求項3に記載の紙の製造方法。」 第3 特許異議の申立てについての判断 1.取消理由の概要 本件特許の本件発明1~4は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (1)引用刊行物 甲第1号証:国際公開第02/053835号 甲第2号証:特開2012-251252号公報 甲第4号証:小林慎、「実験成績証明書(1)」、令和4年11月25日 甲第5号証:小林慎、「実験成績証明書(2)」、令和4年11月25日 以下、甲第1号証~甲第5号証を「甲1」~「甲5」という。 (2)甲1を主引用例とする新規性 本件発明1~4は、甲4記載の実験結果を踏まえると、いずれも甲1に記載された発明である。 (3)甲2を主引用例とする新規性 本件発明1~4は、甲5記載の実験結果を踏まえると、いずれも甲2に記載された発明である。 2.取消理由についての判断 (1)甲1を主引用例とする新規性について ア 甲1に記載された発明 甲1の、実施例24、実施例26、実施例32の記載に着目すると、それぞれから、次の「甲1発明1」、「甲1発明2」、「甲1発明3」が認定できる。 (ア)《甲1発明1》 「攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を付した1リットル四つ口フラスコに水382.80g、モノマー類(A)として、50%アクリルアミド水溶液198.60g(56.24モル%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート4.69g(1.2モル%)、イタコン酸7.27g(2.25モル%)、5%メタリルスルホン酸ナトリウム水溶液23.57g(0.30モル%)、1%N,Nメチレンビスアクリルアミド3.83g(0.01モル%)を仕込み、30%硫酸でpH3.0に調整し、次いで、窒素ガス雰囲気下、60℃に昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液4.54gを加え、重合を開始するとともに85℃まで昇温し、 これら1段目モノマー(モノマー類(A))のコンバージョンが21.0%になった時点で、水196.63g、50%アクリルアミド水溶液130.27g(36.89モル%)、76%メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液25.97g(2.8モル%)、イタコン酸0.81g(0.25モル%)、5%メタリルスルホン酸ナトリウム水溶液3.93g(0.05モル%)、1%N,Nメチレンビスアクリルアミド3.83g(0.01モル%)から成るモノマー水溶液(B)を20分かけて滴下し、80℃で20分保温し、更に、5%過硫酸アンモニウム水溶液9.06gを加え、そのまま80℃で保温し、25℃における推定粘度が6,000~9,000mPa・sになった時点で、冷却し反応を停止して得た、固形分20.4%、pH3.6、粘度(25℃、ブルックフィールド回転粘度計使用)6,500mPa・sのポリマー溶液。」 (イ)《甲1発明2》 「攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を付した1リットル四つ口フラスコに水382.80g、モノマー類(A)として、50%アクリルアミド水溶液198.60g(56.24モル%)、ジメチルアミノエチルメタクリレート4.69g(1.2モル%)、イタコン酸7.27g(2.25モル%)、5%メタリルスルホン酸ナトリウム水溶液23.57g(0.30モル%)、1%N,Nメチレンビスアクリルアミド3.83g(0.01モル%)を仕込み、30%硫酸でpH3.0に調整し、次いで、窒素ガス雰囲気下、60℃に昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液4.54gを加え、重合を開始するとともに85℃まで昇温し、 これら1段目モノマー(モノマー類(A))のコンバージョンが49.0%になった時点で、水196.63g、50%アクリルアミド水溶液130.27g(36.89モル%)、76%メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液25.97g(2.8モル%)、イタコン酸0.81g(0.25モル%)、5%メタリルスルホン酸ナトリウム水溶液3.93g(0.05モル%)、1%N,Nメチレンビスアクリルアミド3.83g(0.01モル%)から成るモノマー水溶液(B)を20分かけて滴下し、80℃で20分保温し、更に、5%過硫酸アンモニウム水溶液9.06gを加え、そのまま80℃で保温し、25℃における推定粘度が6,000~9,000mPa・sになった時点で、冷却し反応を停止して得た、固形分20.5%、pH3.8、粘度(25℃、ブルックフィールド回転粘度計使用)6,000mPa・sのポリマー溶液。」 (ウ)《甲1発明3》 「攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を付した1リットル四つ口水495.68g、フラスコにモノマーAとして、50%アクリルアミド水溶液277.05g(81.10モル%)、76%アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液29.85g(3.5モル%)、イタコン酸6.25g(2.0モル%)、5%メタリルスルホン酸ナトリウム水溶液29.64g(0.39モル%)、N,N'-ジメチルアクリルアミド 2.38g(1.0モル%)、0.5%トリアクリルホルマール11.98g(0.01モル%)を仕込み、30%水酸化ナトリウムでpH3.0に調整し、次いで、窒素ガス雰囲気下、60℃に昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液5.48gを加え、重合を開始するとともに85℃まで昇温し、 これら1段目モノマー(モノマー類(A))のコンバージョンが約50%になった時点で、別途仕込んでおいた水93.31g、50%アクリルアミド水溶液34.16g(10.0モル%)、76%アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液12.79g(1.5モル%)、イタコン酸1.56g(0.50モル%)を20分かけて滴下し、80℃で20分保温し、更に、5%過硫酸アンモニウム水溶液9.06gを加え、そのまま80℃で保温し、25℃における推定粘度が6,000~9,000mPa・sになった時点で、冷却し反応を停止して得た、固形分20.5%、pH3.7、粘度(25℃、ブルックフィールド回転粘度計使用)6,050mPa・sのポリマー溶液。」 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲1発明1を対比すると、 本件発明1の製紙用添加剤が満たす、「前記両性ポリアクリルアミドのアニオン等量とカチオン等量の比が0.05以上1.7以下」、「前記両性ポリアクリルアミドのオクタノール/水分配係数が-1.44以上-0.60以下」、「前記両性ポリアクリルアミドの表面張力が66mN/m以上74mN/m未満」、「前記両性ポリアクリルアミドのピークトップ分子量Mpが100万から500万」、「分子量分布Mw/Mnが2.5以上8.0以下」、「ピークトップ分子量Mpと製紙用添加剤の20質量%水溶液(25℃)の粘度Vの比Mp/Vが200以上800以下」の各物性値について、 甲1発明1のポリマー溶液が、それらを満たすか不明である点(以下「相違点1」という。)で相違する。 (イ)この相違点1に関し、申立人は、「甲1号証の実施例24と同様に実施して、固形分20.5%、pH3.6、粘度(25℃、ブルックフィールド回転粘度計使用)6,600mPa・sのポリマー溶液を得」(甲4)たとし、そのポリマー溶液が、上記各物性値について、いずれも本件発明1で特定される数値範囲内であるとする。 甲1の実施例24の合成法についての記載は次のとおりである。 「実施例24(モノマーBが(a)、(b)、(c)、及び(d)成分よりなる合成法) 攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を付した1リットル四つ口フラスコに水382.80g、モノマ一類(A)として、50%アクリルアミド水溶液198.60g(56.24モル%)、ジメチルアミノエチルメ夕クリレ―ト4.69g(1.2モル%)、イタコン酸7.27g(2.25モル%)、5%メタリルスルホン酸ナトリウム水溶液23.57g(0.30モル%)、1%N,Nメチレンビスアクリルアミド3.83g(0.01モル%)を仕込み、30%硫酸でpH3.0に調整した。次いで、窒素ガス雰囲気下、60℃に昇温した。5%過硫酸アンモニウム水溶液4.54gを加え、重合を開始するとともに85℃まで昇温した。これら1段目モノマー(モノマー類(A))のコンバージョンが21.0%になった時点で、水196.63g、50%アクリルアミド水溶液130.27g(36.89モル%)、76%メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液25.97g(2.8モル%)、イタコン酸0.81g(0.25モル%)、5%メタリルスルホン酸ナトリウム水溶液3.93g(0.05モル%)、1%N,Nメチレンビスアクリルアミド3.83g(0.01モル%)から成るモノマー水溶液(B)を20分かけて滴下し、80℃で20分保温した。更に、5%過硫酸アンモニウム水溶液9.06gを加え、そのまま80℃保温した。25℃における推定粘度が6,000~9,000mPa・sになった時点で、冷却し反応を停止した。固形分20.4%、pH3.6、粘度(25℃、ブルックフィールド回転粘度計使用)6,500mPa・sのポリマ一溶液を得た。」 (ウ)実施例24のポリマー溶液の合成法についての上記記載には、 「窒素ガス雰囲気下、60℃に昇温した。5%過硫酸アンモニウム水溶液4.54gを加え、重合を開始するとともに85℃まで昇温した。」との工程の、「85℃まで昇温」させる昇温速度について、 及び、「水196.63g、50%アクリルアミド水溶液130.27g(36.89モル%)、76%メタクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド水溶液25.97g(2.8モル%)、イタコン酸0.81g(0.25モル%)、5%メタリルスルホン酸ナトリウム水溶液3.93g(0.05モル%)、1%N,Nメチレンビスアクリルアミド3.83g(0.01モル%)から成るモノマー水溶液(B)を20分かけて滴下し、80℃で20分保温した。」との工程の、「モノマー水溶液(B)を20分かけて滴下」するペース(連続的か断続的か等)について、 それぞれ、具体的に記載されていない。 そして、昇温速度、滴下ペースが異なることによって、合成されるポリマー自体が変わり、その物性値も変わり得ることは明らかである。 そのため、申立人が、甲1の「実施例24と同様に実施して」作製したとするポリマー溶液が、甲1の実施例24を再現したものとは必ずしもいえないから、甲4に示す各物性値も含めて甲1発明1であると評価することはできない。 (エ)そうすると、上記相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は甲1発明1ではない。 (オ)甲1の実施例26に係る甲1発明2、甲1の実施例32に係る甲1発明3についても同様に、本件発明1は甲1発明2ではなく、甲1発明3でもない。 ウ 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるところ、上記イで述べたように、本件発明1は甲1発明1~3のいずれでもないから、本件発明2~4も甲1発明1~3のいずれでもない。 (2)甲2を主引用例とする理由について ア 甲2に記載された発明 甲2の、実施例7の記載に着目すると、次の「甲2発明」が認定できる。 《甲2発明》 「撹拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を付した1リットル四つ口フラスコに、水547.80g、モノマー類(1)として、アクリルアミド53.88モル%、ジメチルアミノエチルメタクリレート3.06モル%、アクリル酸3.06モル%、メタリルスルホン酸ナトリウム0.52モル%、N,N-ジメチルアクリルアミド0.74モル%を仕込み、30%硫酸水溶液12.02gでpH3.0に調整し、次いで、窒素ガス雰囲気下、60℃に昇温し、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.24gを加え、重合を開始させ反応温度を90℃まで昇温させ、その後、水49.20g、30%硫酸水溶液8.60g、アクリルアミド36.94モル%、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化ベンジル4級化物2.04モル%、アクリル酸1.02モル%、メタリルスルホン酸ナトリウム0.31モル%、N,N-ジメチルアクリルアミド0.49モル%から成るモノマー類(2)を加え、更に過硫酸アンモニウム0.48gを加え、25℃における推定粘度が3000mPa・sになった時点で、水49.45gを投入して得た、固形分20.1%のポリアクリルアミド系内添紙力剤。」 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲2発明を対比すると、 本件発明1の製紙用添加剤が満たす、「前記両性ポリアクリルアミドのアニオン等量とカチオン等量の比が0.05以上1.7以下」、「前記両性ポリアクリルアミドのオクタノール/水分配係数が-1.44以上-0.60以下」、「前記両性ポリアクリルアミドの表面張力が66mN/m以上74mN/m未満」、「前記両性ポリアクリルアミドのピークトップ分子量Mpが100万から500万」、「分子量分布Mw/Mnが2.5以上8.0以下」、「ピークトップ分子量Mpと製紙用添加剤の20質量%水溶液(25℃)の粘度Vの比Mp/Vが200以上800以下」の各物性値について、 甲2発明のポリアクリルアミド系内添紙力剤が、それらを満たすか不明である点(以下「相違点2」という。)で相違する。 (イ)この相違点2に関し、申立人は、「甲2号証の実施例7と同様に実施して、固形分20.0%、pH3.0、25℃における粘度8400mPa・sであるポリアクリルアミド系内添紙力剤を得」(甲5)たとし、そのポリマー溶液が、上記各物性値について、いずれも本件発明1で特定される数値範囲内であるとする。 甲2の実施例7の合成法についての記載は次のとおりである。 「【0051】 実施例1 撹拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を付した1リットル四つ口フラスコに、水547.80g、モノマー類(1)として、50%アクリルアミド水溶液201.70g、ジメチルアミノエチルメタクリレート12.26g、イタコン酸5.07g、N,N-ジメチルアクリルアミド1.16g、メタリルスルホン酸ナトリウム1.97gを仕込み、30%硫酸水溶液12.02gでpH3.0に調整した。次いで、窒素ガス雰囲気下、60℃に昇温し、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.24gを加え、重合を開始させ反応温度を90℃まで昇温させた。その後、水49.20g、30%硫酸水溶液8.60g、50%アクリルアミド水溶液136.68g、ジメチルアミノエチルメタクリレート8.17g、イタコン酸1.69g、N,N-ジメチルアクリルアミド0.77g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.90gから成るモノマー類(2)を加え、更に過硫酸アンモニウム0.48gを加え、25℃における推定粘度が3000mPa・sになった時点で、水49.45gを投入し、固形分20.2%のポリアクリルアミド系内添紙力剤を得た。得られたポリアクリルアミド系内添紙力剤を固形分20.0%、pH3.0に調整し、曳糸性、粘度(25℃)、重量平均分子量を測定した結果及び測定結果から算出した重量平均分子量と粘度の比を表2に示す。」 「【0054】 実施例2~9、比較例1~7 モノマー類(1)、モノマー類(2)の組成を表1に示すように変え、ポリアクリルアミド系内添紙力剤の粘度を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様に行い、ポリアクリルアミド系内添紙力剤を得た。得られたポリアクリルアミド系内添紙力剤を実施例1と同様に固形分20.0%、pH3.0に調整し、曳糸性、粘度(25℃)、重量平均分子量を測定した結果及び測定結果から算出した重量平均分子量と粘度の比を表2に示す。」 「【0055】 [図:0001404784000001.jpg] 【0056】 表1中の略号は以下の通りである。 AAm:アクリルアミド、 DM :ジメチルアミノエチルメタクリレート、 DMBz:ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化ベンジル4級化物、 DABz:ジメチルアミノエチルアクリレート塩化ベンジル4級化物、 IA :イタコン酸、 AGA:2-アクリルアミド-N-グリコール酸、 AA :アクリル酸、 SMAS:メタリルスルホン酸ナトリウム、 DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド 【0057】 [図:0001404784000002.jpg] 」 (ウ)実施例7のポリアクリルアミド系内添紙力剤の合成法についての上記記載には、 「窒素ガス雰囲気下、60℃に昇温し、重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.24gを加え、重合を開始させ反応温度を90℃まで昇温させた。」との工程の、「90℃まで昇温」させる昇温速度について、 及び、「水49.20g、30%硫酸水溶液8.60g、50%アクリルアミド水溶液136.68g、ジメチルアミノエチルメタクリレート8.17g、イタコン酸1.69g、N,N-ジメチルアクリルアミド0.77g、メタリルスルホン酸ナトリウム0.90gから成るモノマー類(2)を加え」る工程の、「モノマー類(2)を加え」るペース(速度、連続的か断続的か等)について、 それぞれ、具体的に記載されていない。 そして、昇温速度、加えるペースが異なることによって、合成されるポリアクリルアミド系内添紙力剤自体が変わり、その物性値も変わり得ることは明らかである。 そのため、申立人が、甲2の「実施例7と同様に実施して」作製したとするポリアクリルアミド系内添紙力剤が、甲2の実施例7を再現したものとは必ずしもいえないから、甲5に示す各物性値も含めて甲2発明であると評価することはできない。 (エ)そうすると、上記相違点2は実質的な相違点であり、本件発明1は甲2発明ではない。 ウ 本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるところ、上記イで述べたように、本件発明1は甲2発明ではないから、本件発明2~4も甲2発明ではない。 3.取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立理由の概要 申立人は、上記甲1、2、4及び5に加え、甲3(特開2015-52194号公報)を提出し、次の理由を申立てている。 ア 本件発明1~4は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。 イ 本件発明1~4は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。 ウ 本件発明1~4は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものである。 エ 本件特許の発明の詳細な説明には、請求項1に記載されたパラメータを制御するために、(A)~(D)成分の割合をどのように調整しながら、かつ如何なる反応条件、如何なる操作手順を適用して、両性ポリアクリルアミドの製造を行えばよいのかについて何らの記載もなされていないため、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでなく、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 オ 請求項1に記載された組成及び各パラメータを兼ね備えた製紙用添加剤全体についての技術的裏付けが、発明の詳細な説明に記載されているということはできない。 また、Mp/Vが200以上800以下の範囲内において本件発明の効果が得られると当業者において認識できる程度に具体例を開示して記載しているとはいえない。 よって、本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (2)上記(1)ア、イの申立理由について 本件発明1と甲1に記載された発明とは、上記2.(1)イ(ア)で述べたように相違点1で、本件発明1と甲2に記載された発明とは、上記2.(2)イ(ア)で述べたように相違点2で、それぞれ相違する。 そして、上記相違点1又は相違点2に係る各物性値を製紙用添加剤が備えることについて、記載あるいは示唆する証拠は提出されておらず、周知技術であるともいえないから、上記各物性値を備える本件発明1は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明1の発明特定事項を全て備える本件発明2~4も、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、申立人の上記(1)ア、イの申立理由は採用できない。 (3)上記(1)ウの申立理由について 甲3には、「両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーを固形分7~30重量%含有する紙力増強剤であって、該両性(メタ)アクリルアミド系水溶性ポリマーの重量平均分子量が1,600,000~10,000,000、脱イオン水を硫酸ナトリウムで調製した電気伝導度4mS/cm・25℃の水で希釈した該両性(メタ)アクリルミド系水溶性ポリマーの1重量%水溶液のpH3~9における濁度の分布が一つの極大値を有し、その極大値が15~2,000NTUであることを特徴とする紙力増強剤。」(請求項1)の発明が記載されている。 しかし、「両性ポリアクリルアミドの表面張力」、「両性ポリアクリルアミドのピークトップ分子量Mp」、「分子量分布Mw/Mn」及び「ピークトップ分子量Mpと製紙用添加剤の20質量%水溶液(25℃)の粘度Vの比Mp/V」に着目しておらず、これらの数値範囲を本件発明1に特定される数値範囲とする動機付けはないから、本件発明1~4は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、申立人の上記(1)ウの申立理由は採用できない。 (4)上記(1)エの申立理由について 本件特許の発明の詳細な説明には、実施例1~23、比較例1~10の製紙用添加剤について、共重合成分と具体的な製造手順が示され、それらの「両性ポリアクリルアミドのアニオン等量とカチオン等量の比」、「両性ポリアクリルアミドのオクタノール/水分配係数」、「両性ポリアクリルアミドの表面張力」、「両性ポリアクリルアミドのピークトップ分子量Mp」、「分子量分布Mw/Mn」及び「ピークトップ分子量Mpと製紙用添加剤の20質量%水溶液(25℃)の粘度Vの比Mp/V」の値と共に、パルプに添加して得た紙の比破裂強さを評価した結果が記載されている。 当業者であれば、これらの実施例及び比較例の記載から、どのような共重合成分を添加して、どのような反応条件、操作手順で製造すればよいか理解できるから、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。 よって、申立人の上記(1)エの申立理由は採用できない。 (5)上記(1)オの申立理由について ア 本件発明が解決しようとする課題は、「紙力増強効果に優れるポリアクリルアミド系製紙用添加剤、製紙用添加剤を含有する紙及び製紙用添加剤を用いた紙の製造方法を提供すること」(本件明細書の段落【0007】)である。 イ この課題の解決について、本件特許の発明の詳細な説明には、 (ア)含有する成分について、「(A)(メタ)アクリルアミド、(B)(メタ)アリルスルホン酸類、(C)カルボキシル基を有するアニオン性ビニルモノマー、(D)4級アンモニウムを有するカチオン性ビニルモノマーを共重合成分として含む両性ポリアクリルアミド」(段落【0011】~【0032】)であることが、 (イ)「両性ポリアクリルアミドのアニオン等量とカチオン等量の比」について、「両性ポリアクリルアミドのアニオン等量とカチオン等量の比が0.05未満の場合、パルプスラリーに添加されるアルミニウム化合物や古紙中のアルミニウム化合物とのイオン結合部位が少ないため、パルプ繊維に定着し難くなり、紙力増強効果が低下する。」「アニオン等量とカチオン等量の比が1.7を超える場合、負に帯電しているパルプ繊維とのイオン結合部位が少ないため、又はアニオン性基がカチオン性基を分子内で中和してしまうため、パルプ繊維に定着し難くなり、紙力増強効果が低下する。」(段落【0033】)ことが、 (ウ)「両性ポリアクリルアミドのオクタノール/水分配係数」について、「両性ポリアクリルアミドのオクタノール/水分配係数(LogP(Poly))が-0.60より大きいと、パルプスラリー中の疎水性夾雑物(樹脂酸、ピッチ等)に両性ポリアクリルアミドが吸着され、その分パルプ繊維への定着量が少なくなり紙力向上効果を低下させる。LogP(Poly)値が-1.44未満であると、親水性が高いため水溶液中の両性ポリアクリルアミドはパルプ繊維に対して吸脱着を起こすために定着し難くなり、紙力増強効果が低下する。」(段落【0040】)ことが、 (エ)「両性ポリアクリルアミドの表面張力」について、「両性ポリアクリルアミドの表面張力が66mN/m未満であると、パルプ繊維により濡れ拡がりやすくパルプ繊維の細孔に移動してしまい、パルプ繊維に定着しているにも関わらず紙力向上効果に貢献できなくなる。また、表面張力が74mN/m以上であると、パルプ繊維に濡れ拡がらず点接着となるため紙力増強効果を発揮しにくい。」(段落【0043】)ことが、 (オ)「両性ポリアクリルアミドのピークトップ分子量Mp」について、「ピークトップ分子量(Mp)が100万以上であれば紙力増強効果が十分に得られ、500万以下であると凝集が起こり難く、紙力増強効果に優れる。」(段落【0044】)ことが、 (カ)「分子量分布Mw/Mn」について、「重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率(Mw/Mn)が2.5以上であれば、両性ポリアクリルアミドの多様性により抄紙系の変動に対する対応力が増加し、8.0以下であれば紙力増強効果の低い低分子量の両性ポリアクリルアミドの含有量や過凝集を引き起こす高分子量の両性ポリアクリルアミドの含有量が減少するため紙力増強効果に優れる。」(段落【0045】)ことが、 (キ)「ピークトップ分子量Mpと製紙用添加剤の20質量%水溶液(25℃)の粘度Vの比Mp/V」について、「200以上であれば適度な凝集が生じ、800以下の場合、過凝集が起こりにくくなるため、紙力増強効果が向上すると考えられる。」(段落【0047】)ことが記載されている。 ウ そして、実施例1~23の製紙用添加剤と、それらをパルプに添加して製造した応用実施例1~25の紙とにより、上記(ア)~(キ)の事項を備える本件発明1が、上記課題を解決することを確認できる。 そうすると、本件発明1~4は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。 エ 申立人は、請求項1に記載された組成及び各パラメータを兼ね備えた製紙用添加剤全体についての技術的裏付けが、発明の詳細な説明に記載されていない旨主張する。 しかし、発明の詳細な説明には、製紙用添加剤の含有成分について、「(A)(メタ)アクリルアミド、(B)(メタ)アリルスルホン酸類、(C)カルボキシル基を有するアニオン性ビニルモノマー、(D)4級アンモニウムを有するカチオン性ビニルモノマーを共重合成分として含む両性ポリアクリルアミド」であり、それらに採用し得るモノマーの具体例が挙げられており(上記イ(ア))、「両性ポリアクリルアミドのアニオン等量とカチオン等量の比」、「両性ポリアクリルアミドのオクタノール/水分配係数」、「両性ポリアクリルアミドの表面張力」、「両性ポリアクリルアミドのピークトップ分子量Mp」、「分子量分布Mw/Mn」及び「ピークトップ分子量Mpと製紙用添加剤の20質量%水溶液(25℃)の粘度Vの比Mp/V」の各パラメータの技術的意義が記載されていること(上記イ(イ)~(キ))からすれば、申立人の上記主張は当を得たものではない。 オ また、申立人は、Mp/Vが200以上800以下の範囲内において本件発明の効果が得られると当業者において認識できる程度に具体例を開示して記載しているとはいえない旨主張する。 しかし、発明の詳細な説明の段落【0087】には、「応用実施例1と応用実施例5、22から、製紙用添加剤のピークトップ分子量(Mp)/粘度(V)の比Mp/Vが、200以上800以下であると、この範囲を外れた製紙用添加剤に比べ、紙力増強効果により優れることがわかる。」と記載されている。 ここで、応用実施例5の紙に用いられた実施例5の製紙用添加剤と、応用実施例22の紙に用いられた実施例22の製紙用添加剤は、上記各パラメータのうち、「ピークトップ分子量Mpと製紙用添加剤の20質量%水溶液(25℃)の粘度Vの比Mp/V」のパラメータのみ、本件発明1で特定される数値範囲(200~800)内ではなく、それぞれ、下限より下の「160」(実施例5)、上限より上の「827」(実施例22)である。 これに対し、応用実施例1の紙に用いられた実施例1の製紙用添加剤は、上記各パラメータの全てが本件発明1で特定される数値範囲内であり、「ピークトップ分子量Mpと製紙用添加剤の20質量%水溶液(25℃)の粘度Vの比Mp/V」についても「451」であり、「200~800」の範囲内である。そして、全てのパラメータで数値範囲内である応用実施例1の比破裂強さが「2.72kPa・m2/g」であるのに対し、応用実施例5が「2.65kPa・m2/g」、応用実施例22が「2.64kPa・m2/g」であることからすると、当業者は、Mp/Vが200以上800以下の範囲内であることで本件発明の課題を解決できると認識し得るものといえる。 カ よって、申立人の上記(1)オの申立理由は採用できない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2022-701217

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決27件(星光PMC株式会社、荒川化学工業 株式会社)
  • 2022-700041異議申立 / 2022-03-29 / 維持紙力増強剤、紙および紙の製造方法
    同じ当事者: 星光PMC株式会社、荒川化学工業 株式会社
  • 2018-700954異議申立 / 2019-07-08 / 訂正認容紙力増強剤、紙力増強剤の製造方法、紙
    同じ当事者: 星光PMC株式会社、荒川化学工業 株式会社
  • 2017-700964異議申立 / 2018-06-29 / 訂正認容板紙用表面紙力増強剤
    同じ当事者: 星光PMC株式会社、荒川化学工業 株式会社
  • 2024-700608異議申立 / 2026-02-04 / 訂正認容活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、粘着剤層、積層体
    同じ当事者: 荒川化学工業 株式会社
  • 2025-700212異議申立 / 2025-09-11 / 維持ロジン系エマルジョンサイズ剤、紙
    同じ当事者: 荒川化学工業 株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)124件(113・D21H、121・D21H、536・D21H ほか)
  • 2025-700034異議申立 / 2026-03-19 / 訂正認容ヒートシール紙
    共通の審決分類: 113・D21H、121・D21H、536・D21H、537・D21H
  • 2025-701037異議申立 / 2026-02-10 / 維持板紙
    共通の審決分類: 113・D21H、121・D21H、536・D21H、537・D21H
  • 2023-701349異議申立 / 2024-12-10 / 訂正認容セルロースナノファイバー乾燥固形物の製造方法
    共通の審決分類: 113・D21H、121・D21H、536・D21H、537・D21H
  • 2023-700905異議申立 / 2023-11-29 / 維持紙製バリア材料
    共通の審決分類: 113・D21H、121・D21H、536・D21H、537・D21H
  • 2022-700232異議申立 / 2023-08-30 / 訂正認容ガラス板合紙用木材パルプ及びその使用、ガラス板用合紙、それを用いた積層体、ガラス…
    共通の審決分類: 113・D21H、121・D21H、536・D21H、537・D21H

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存