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特許異議申立

2022-700461

活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、コーティング剤キット、硬化物及び積層物

審判番号
2022-700461
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-043231
登録番号
6973676
請求日
2022年05月30日
審決日
2023年04月07日
公報発行日
2023年08月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】荒川化学工業株式会社
  • 【異議申立人】山内 慶子
  • 【異議申立人】東レ 株式会社
審判長/審判官
  • 審判長 近野 光知
  • 審判官 細井 龍史
  • 審判官 海老原 えい子
分類
P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F) / P1651.161-YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F) / P1651.55 -YAA(C08F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第6973676号発明「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、コーティング剤キット、硬化物及び積層物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6973676号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6973676号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6973676号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和3年3月17日を出願日とする特願2021-43231号に係る出願であって、同年11月8日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年12月1日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年5月30日に特許異議申立人 山内 慶子(以下、「申立人1」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1、2、4及び5)がされ、同日に特許異議申立人 東レ株式会社(以下、「申立人2」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされたものである。 その後、令和4年11月21日付けで取消理由通知が通知された後、令和5年1月17日付けで特許権者である荒川化学工業株式会社(以下、「特許権者」という。)により訂正請求がされると共に意見書が提出され、その後、同年同月26日付けで特許法第120条の5第5項の通知に伴い、同年2月16日付けで申立人1より意見書が提出されると共に、同年3月1日付けで申立人2より意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和5年1月17日付けの訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)のとおりである。下線は、当審により付与した。 (1)訂正事項1 請求項1において、 「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子、 ポリ(メタ)アクリレート及び α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、 前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し1質量%以上である、 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」 との記載を 「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子、 ポリ(メタ)アクリレート並びに α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、 前記(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子は、中実シリカ粒子と下記式Sで表される化合物との反応物及び/又は中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物であり、 前記ポリ(メタ)アクリレートは、(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリンポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレート構造含有ポリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上であり、 前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し1~3質量%である、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。 <式S> 【化S】 [図:0001400443000001.jpg] (式中、Rs1、Rs2はそれぞれ独立、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、Rs3はアルキレン基又はアリーレン基であり、Rs4はアルキレン基又はアリーレン基であり、Rs5は(s’’+1)価の有機基であり、Zは(メタ)アクリロイル基であり、s’は1、2又は3であり、s’’は1~20の整数である。) <式U1> 【化U1】 [図:0001400443000002.jpg] (式中、Zuは(メタ)アクリロイル基であり、Ru1はアルキレン基又はアリーレン基であり、Ru2はアルキル基又はアリール基であり、uは、1~3の整数である。)」 また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5も同様に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1~5について、請求項2~5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 したがって、訂正事項1による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1による訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、 ア 「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」について、「中実シリカ粒子と下記式Sで表される化合物との反応物及び/又は中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物であり、・・・ <式S> 【化S】 [図:0001400443000003.jpg] (式中、Rs1、Rs2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、Rs3はアルキレン基又はアリーレン基であり、Rs4はアルキレン基又はアリーレン基であり、Rs5は(s’’+1)価の有機基であり、Zは(メタ)アクリロイル基であり、s’は1、2又は3であり、s’’は1~20の整数である。) <式U1> 【化U1】 [図:0001400443000004.jpg] (式中、Zuは(メタ)アクリロイル基であり、Ru1はアルキレン基又はアリーレン基であり、Ru2はアルキル基又はアリール基であり、uは、1~3の整数である。)」ものに限定され、 イ 「ポリ(メタ)アクリレート」について、「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリンポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレート構造含有ポリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上であ」るものに限定され、 ウ 「固形分100質量%に対」する「光重合開始剤の含有量」について、「1質量%以上」から「1~3質量%」に範囲を狭めるものである。 よって、訂正事項1による請求項1についての訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、上記アの「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」の構成成分に関しては、本件特許明細書の段落0013、0039、0052、0059、0093に記載されている。 また、上記イの「ポリ(メタ)アクリレート」に関しては、本件特許明細書の段落0108、0229に記載されており、上記ウの「光重合開始剤の含有量」に関しては、本件特許明細書の段落0009、0168、0229に記載されている。 そうすると、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5も同様である。 4 むすび 以上のとおり、請求項1ないし5についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし5に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし5を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 (メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子、 ポリ(メタ)アクリレート並びに α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、 前記(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子は、中実シリカ粒子と下記式Sで表される化合物との反応物及び/又は中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物であり、 前記ポリ(メタ)アクリレートは、(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリンポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレート構造含有ポリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上であり、 前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し1~3質量%である、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。 <式S> 【化S】 [図:0001400443000005.jpg] (式中、Rs1、Rs2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、Rs3はアルキレン基又はアリーレン基であり、Rs4はアルキレン基又はアリーレン基であり、Rs5は(s’’+1)価の有機基であり、Zは(メタ)アクリロイル基であり、s’は1、2又は3であり、s’’は1~20の整数である。) <式U1> 【化U1】 [図:0001400443000006.jpg] (式中、Zuは(メタ)アクリロイル基であり、Ru1はアルキレン基又はアリーレン基であり、Ru2はアルキル基又はアリール基であり、uは、1~3の整数である。) 【請求項2】 前記(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子の含有量は、固形分100質量%に対し30質量%以上である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であるコーティング剤A及びα-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含まないコーティング剤Bを含む、コーティング剤キット。 【請求項4】 請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及び/又は請求項3に記載のコーティング剤キットの硬化物。 【請求項5】 請求項4に記載の硬化物を含む、積層物。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由、証拠方法及び取消理由の概要 1 申立人1が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和4年5月30日に申立人1が提出した特許異議申立書(以下、「申立書1」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1-1(甲1-1に基づく新規性・進歩性について) 本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1-1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか又は上記甲1-1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由1-2(甲1-2に基づく新規性・進歩性について) 本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1-2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか又は上記甲1-2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)証拠方法 甲第1号証:国際公開2018/070446号 甲第2号証:特表2021-505956号公報 甲第3号証:甲第1号証に記載の「日産化学工業(株)製 PGM-AC-2140Y」に関する下記ウェブサイトの写し https://richwood.net/wp-content/uploads/2021/09/Organosilicasol-HC-%EB%8D%B0%EC%9D%B4%ED%84%B0-201903.pdf 以下、順に「甲1-1」等という。 2 申立人2が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和4年5月30日に申立人2が提出した特許異議申立書(以下、「申立書2」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由2-1(新規事項の追加) 令和3年5月11日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は以下のとおりである。 (メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子について 本件特許発明1は、「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」との発明特定事項を有する。本件特許発明1は、令和3年5月11日付け手続補正書により、シリカ粒子について「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」と補正が加えられた。 しかしながら、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、シリカ粒子が「中実シリカ粒子」であることは明記されていない。またシリカ粒子が「中実シリカ粒子」であることと、本件特許発明の課題との関連性についての説明も一切存在しない。 したがって、本件特許発明1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において補正したものではない。 同様に、本件特許発明1に従属する本件特許発明2~5も、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において補正したものではない。 (2)申立理由2-2(甲2-1に基づく新規性) 本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2-1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由2-3(甲2-1に基づく進歩性) 本件特許の請求項3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2-1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由2-4(甲2-2に基づく新規性) 本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2-2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由2-5(甲2-2に基づく進歩性) 本件特許の請求項3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲2-2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由2-6(甲2-3に基づく拡大先願) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開がされた下記の甲2-3に示される出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、本件特許の上記請求項に係る特許は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (7)申立理由2-7(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は、下記3(6)取消理由2-4(サポート要件)と同旨である。 (8)申立理由2-8(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は以下のとおりである。 ア 光重合開始剤の含有量について本件特許発明1は明確でない。 本件特許発明1は、「前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し1質量%以上である、」との発明特定事項を有する。 しかしながら、光重合開始剤の上限値が特定されていないため、光重合開始剤の含有量が、固形分100質量%に対し100質量%の範囲を含んでおり、本件特許発明1の範囲が明確でない。また光重合開始剤の上限値を特定することができない特別な事情も存在せず、光重合開始剤の上限値を特定しなくても当業者が本件特許発明1の範囲を特定できる事情も存在しない。 したがって、本件特許発明1は明確でない。 同様に、本件特許発明1に従属する本件特許発明2~5も明確ではない。 イ (メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子について本件特許発明1は明確でない。 本件特許発明1は、「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」との発明特定事項を有する。 しかしながら、シリカ粒子が「中実シリカ粒子」であることの定義、及び、シリカ粒子が「中空シリカ粒子」であることの定義が記載されていない。また「中実シリカ粒子」と「中空シリカ粒子」とを区別するための分析方法も記載されていない上、「中実シリカ粒子」と「中空シリカ粒子」を区別するための境界や閾値についても何らの記載がない。具体的には、どのような分析方法において、シリカ粒子内部における空隙率が特定の値に満たない場合に「中実シリカ粒子」に分類し、空隙率が特定の値を超える場合に「中空シリカ粒子」に分類するなど、当業者が一義的に判断できる指標に関して記載されていない。そのため、あるシリカ粒子が「中実シリカ粒子」及び「中空シリカ粒子」のいずれに属するかを特定することができないため、本件特許発明1の権利範囲が明確でない。 したがって、本件特許発明1は明確でない。 同様に、本件特許発明1に従属する本件特許発明2~5も明確でない。 (9)証拠方法 ア 申立書2に添付された証拠方法 甲第1号証:特開2012-869号公報 甲第2号証:特開2013-199522号公報 甲第3号証:特開2021-134303号公報 (特願2020-32693号) 甲第4号証:特開2014-48431号公報 甲第5号証:特開2019-142164号公報 甲第6号証:特開2014-77063公報 甲第7号証:特開2017-49313号公報 甲第8号証:特開2012-31312号公報 甲第9号証:国際公開2021/059849号 イ 令和5年3月1日付けの意見書に添付された証拠方法 甲第10号証:国際公開2018/070446号(甲1-1と同一証拠) 甲第11号証:特表2021-505956号公報(甲1-2と同一証拠) 甲第12号証:PGM-AC-2140Yの安全データシート 甲第13号証:PGM-AC-4130Yの安全データシート 甲第14号証:特許第7020579号公報 以下、順に「甲2-1」等という。 3 取消理由の概要 令和4年11月21日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 (1)取消理由1-1(甲1-1に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1-1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は、本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、甲1-1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)取消理由1-2(甲1-2に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1-2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は、本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、甲1-2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)取消理由2-1(甲2-1に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2-1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲2-1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)取消理由2-2(甲2-2に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2-2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、甲2-2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)取消理由2-3(甲2-3に基づく拡大先願) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願の出願前の特許出願であって、その出願後に公開がされた甲2-3に示される出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)取消理由2-4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 具体的理由は以下のとおりである。 「本件特許発明の課題は、本件特許明細書の段落【0004】等からみて、「良好な耐擦傷性及び鉛筆硬度を有する硬化物を製造できる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供すること」である。 本件特許発明1は、「前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し1質量%以上である」と特定され、光重合開始剤の上限値は規定されていない。 そうすると、本件特許発明1は、「α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し1質量%以上」の全ての範囲において、本件特許発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されていなければならない。 ところで、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、光重合開始剤の含有量に関して以下の記載があり、本件特許において、α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤の含有量の上限値10質量%であることが例示されている。 「[0168]活性エネルギー線硬化性樹脂組成物固形分100質量%中のα-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤の含有量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は、1質量%以上が好ましく、1~10質量%がより好ましい。」 また、本件特許発明の具体例である[表1]の実施例1~7には、α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤の含有量が、固形分100質量%に対し2質量%である組成物及び3質量%である組成物が開示されている。しかしながら、α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤の含有量が、固形分100質量%に対し3質量%を超える組成物は開示されていない。 そして、α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を過剰に含有する組成物の場合、紫外線等の活性エネルギー線による硬化工程において未反応の光重合開始剤を含有する場合がある。そうすると、組成物中における過剰量の光重合開始剤の含有や、硬化膜中における未反応の光重合開始剤の残存により、相対的に(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子やポリ(メタ)アクリレートの含有量が低減し、その結果、硬化膜の架橋密度が低下することで耐擦傷性及び鉛筆硬度が悪化し、本件特許発明の効果を奏功しないこととなる。 そのため、上記出願時の技術常識に照らすと、本件特許明細書の発明の詳細な説明により、「α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し1質量%以上」の全ての範囲において、本件特許の発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない。」 第5 取消理由についての当審の判断 取消理由1-1(甲1-1に基づく新規性・進歩性)は、申立理由1-1(甲1-1に基づく新規性・進歩性)と同旨であり、取消理由1-2(甲1-2に基づく新規性・進歩性)は、申立理由1-2(甲1-2に基づく新規性・進歩性)と同旨であり、取消理由2-1(甲2-1に基づく新規性・進歩性)は、申立理由2-2(甲2-1に基づく新規性)及び申立理由2-3(甲2-1に基づく進歩性)と同旨であり、取消理由2-2(甲2-2に基づく新規性・進歩性)は、申立理由2-4(甲2-2に基づく新規性)及び申立理由2-5(甲2-2に基づく進歩性)と同旨であり、取消理由2-3(甲2-3に基づく拡大先願)は、申立理由2-6(甲2-3に基づく拡大先願)と同旨であり、また、取消理由2-4(サポート要件) は、申立理由2-7(サポート要件)と同旨であるから、以下、同旨である取消理由及び申立理由を併せて検討する。 1 取消理由1-1及び申立理由1-1(甲1-1に基づく新規性・進歩性)について (1)甲号証に記載された事項等 ア 甲1-1に記載された事項及び甲1-1発明 (ア)甲1-1に記載された事項(下線は、当審で付与したもののである。以下、同様。) 「請求の範囲 [請求項1] 基材と、該基材より上方のプライマー層と、該プライマー層の上方のハードコート層からなる、高硬度ハードコート積層体であって、 前記プライマー層が、 (A)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー及び活性エネルギー線硬化性多官能ポリマーからなる群から選択される多官能化合物100質量部、 (B)無機微粒子100~1,000質量部、及び (C)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤 成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して1~20質量部、 を含み、 前記成分(B)の無機微粒子が、活性エネルギー線重合性基を有する粒子である、 プライマー層形成用組成物の硬化物からなり、 前記ハードコート層が、 (a)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー100質量部、 (b)ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を含む分子鎖の両末端に、ポリ(オキシアルキレン)基を介して又はポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基をこの順に介して、活性エネルギー線重合性基を結合するパーフルオロポリエーテル0.1~10質量部、及び (c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1~20質量部 を含む硬化性組成物の硬化物からなる、 高硬度ハードコート積層体。」 「[0021] 本発明では、上記(A)多官能化合物として、活性エネルギー線硬化性多官能モノマー及び活性エネルギー線硬化性多官能ポリマーからなる群から一種を単独で、或いは二種以上を組合せて使用することができる。また、活性エネルギー線硬化性多官能モノマーとして、上記多官能(メタ)アクリレート化合物及び上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から一種を単独で、或いは二種以上を組合せて使用することができる。 得られる硬化物の硬度向上の観点から、(A)多官能化合物として活性エネルギー線硬化性多官能ポリマーを少なくとも使用することが望ましく、特に活性エネルギー線硬化性多官能ポリマーと活性エネルギー線硬化性多官能モノマーを併用することが好ましい。このとき、活性エネルギー線硬化性多官能モノマーとして、多官能(メタ)アクリレート化合物と上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物と併用することが好ましい。さらに上記多官能(メタ)アクリレート化合物として、5官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物及び4官能以下の多官能(メタ)アクリレート化合物を併用することが好ましい。 上記(A)多官能化合物において、活性エネルギー線硬化性多官能ポリマーと活性エネルギー線硬化性多官能モノマーは、100:0~25:75の質量割合で使用することが好ましい。」 「[0030] 上記成分(B)無機微粒子の配合量は、上記成分(A)100質量部に対して、表面硬度の観点から、100質量部以上、好ましくは200質量部以上、より好ましくは400質量部以上である。一方、耐クラック性の観点から、好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは900質量部以下、更に好ましくは800質量部以下である。 また(B)無機微粒子は、プライマー層の全体積に占める(B)無機微粒子の体積分率が50~90体積%となるように配合することが好ましい。」 「[0034] 本発明において(C)重合開始剤は、前述の(A)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー及び活性エネルギー線硬化性多官能ポリマーからなる群から選択される多官能化合物及び(B)無機微粒子の合計100質量部に対して、1~20質量部、好ましくは2~10質量部の割合で使用することが望ましい。」 「[0061] 以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。 なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。 [0062] (1)バーコート塗布 装置:(株)エスエムテー製 PM-9050MC 塗布速度:4m/分 バー1(bar1):オーエスジーシステムプロダクツ(株)製 A-Bar OSP-25、最大ウエット膜厚25μm(ワイヤーバー#10相当) バー2(bar2):オーエスジーシステムプロダクツ(株)製 A-Bar OSP-30、最大ウエット膜厚30μm(ワイヤーバー#12相当) バー3(bar3):オーエスジーシステムプロダクツ(株)製 A-Bar OSP-52、最大ウエット膜厚52μm(ワイヤーバー#20相当) バー4(bar4):オーエスジーシステムプロダクツ(株)製 A-Bar OSP-100、最大ウエット膜厚100μm(ワイヤーバー#37相当) (2)オーブン 装置:アドバンテック東洋(株)製 無塵乾燥器 DRC433FA (3)UV照射 装置:ヘレウス(株)製 CV-110QC-G ランプ:ヘレウス(株)製 高圧水銀ランプH-bulb (4)擦傷試験 装置:新東科学(株)製 往復摩耗試験機 TRIBOGEAR TYPE:30S 荷重:1kg/cm2 走査速度:3m/分 (5)鉛筆硬度 装置:(株)安田精機製作所製 電動鉛筆引っかき硬度試験機 No.553-M 荷重:750g 鉛筆:三菱鉛筆(株)製 ユニ(登録商標) 測定温度:20℃ (6)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC) 装置:東ソー(株)製 HLC-8220GPC カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF-804L、GPC KF-805L カラム温度:40℃ 溶離液:テトラヒドロフラン 検出器:RI (7)膜厚 装置:(株)ニコン製 デジタル測長機 デジマイクロ MH-15M + カウンタTC-101A (8)全光線透過率、ヘーズ 装置:日本電色工業(株)製 ヘーズメーター NDH5000 (9)接触角 装置:協和界面科学(株)製 DropMaster DM-501 測定温度:20℃ [0063] また、略記号は以下の意味を表す。 PFPE1:両末端にポリ(オキシアルキレン)基(繰返し単位数8~9)を介してヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fluorolink 5147X]BEI:1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート[昭和電工(株)製 カレンズ(登録商標)BEI] DBTDL:ジラウリン酸ジブチル錫[東京化成工業(株)製] 4ELA:テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルアクリレート[日油(株)製 ブレンマー(登録商標)ALE-200] HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート[新中村化学工業(株)製 NKエステルA-HD-N] LA:アクリル酸ラウリル[日油(株)製 ブレンマー(登録商標)LA] ADVN:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V-65] C6FA:アクリル酸2-(パーフルオロヘキシル)エチル[ユニマテック(株)製 FAAC-6] EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート[新中村化学工業(株)製 1G] VEEA:アクリル酸2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル[(株)日本触媒製 VEEA] MAIB:ジメチル2,2’-アゾビスイソブチラート[大塚化学(株)製 MAIB] AA1:ポリアクリルアクリレート[DIC(株)製 ユニディック(登録商標)V-6840、有効成分50質量%MIBK溶液] AA2:ポリアクリルアクリレート[ダイセル・オルネクス(株)製 ACA Z200M、有効成分50質量%PGME溶液] AA3:ポリアクリルアクリレート[ダイセル・オルネクス(株)製 ACA Z230AA、有効成分50質量%PGME溶液] DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物[日本化薬(株)製 KAYALAD DN-0075] PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート/ペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物[新中村化学工業(株)製 NKエステル A-TMM-3LM-N] UA:6官能 脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー[ダイセル・オルネクス(株)製 EBECRYL(登録商標)5129] IP1:活性エネルギー線重合性基含有シリカゾル[日産化学工業(株)製 PGM-AC-2140Y、40質量%PGME分散液、1次平均粒子径10~15nm、シリカ比重1.24] IP2:活性エネルギー線重合性基含有シリカゾル[日産化学工業(株)製 MIBK-SD、33質量%MIBK分散液、1次平均粒子径10~15nm、シリカ比重0.99~1.03] IP3:シリカゾル[日産化学工業(株)製 PGM-ST、33質量%PGME分散液、1次平均粒子径10~15nm、シリカ比重1.11~1.15] LA1:非フッ素系レべリング剤[共栄社化学(株)製 ポリフローNo.77] SM2:パーフルオロポリエーテル構造を有するUV反応型フッ素系表面改質剤[DIC(株)製 メガファック(登録商標)RS-75、有効成分40質量%MEK/MIBK溶液] I184:1-ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)184] I2959:2-ヒドロキシ-1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)2959] EPA:p-ジメチルアミノ安息香酸エチル[日本化薬(株)製 KAYACURE EPA] PET:片面易接着処理ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム[東洋紡績(株)製 コスモシャイン(登録商標)A4100、厚み125μm] PMMA:ポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルム[住友アクリル販売(株)製 テクノロイフィルムS000、厚み125μm] MEK:メチルエチルケトン MIBK:メチルイソブチルケトン PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル [0064] [製造例1]両末端にポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合を介してアクリロイル基を有するパーフルオロポリエーテルSM1の製造 スクリュー管に、PFPE1 1.05g(0.5mmol)、BEI 0.26g(1.0mmol)、DBTDL 10mg(0.016mmol)、及びMEK 1.30gを仕込んだ。この混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で24時間撹拌した。この反応混合物をMEK 3.93gで希釈して、目的化合物であるSM1の20質量%MEK溶液を得た。 得られたSM1のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,400、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.2であった。 [0065] [製造例2]長鎖アルキル基を有する高分岐ポリマーLA2の製造 200mL反応フラスコに、MIBK54gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ温度116℃)加熱した。 別の100mL反応フラスコに、HDDA6.7g(30mmol)、LA3.6g(15mmol)、4ELA18.6g(45mmol)、ADVN6.0g(24mmol)、及びMIBK54gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却した。 前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、HDDA、LA、4ELA、ADVNが仕込まれた前述の100mL反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。 この反応混合物を室温(およそ23℃)に冷却し、目的とする高分岐ポリマー(LA2)を、ポリマー濃度25質量%のMIBK溶液として143.0g得た。 得られた高分岐ポリマーLA2のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量:Mwは7,300、分散度:Mw/Mnは4.6であった。 [0066] [製造例3]フルオロアルキル基を有する高分岐ポリマーLA3の製造 200mL反応フラスコに、トルエン59gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ110℃)加熱した。 別の100mL反応フラスコに、EGDMA4.0g(20mmol)、C6FA5.2g(12.5mmol)、VEEA1.9g(10mmol)、MAIB2.8g(12mmol)、及びトルエン59gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却した。 前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるトルエン中に、EGDMA、C6FA、VEEA、MAIBが仕込まれた前述の100mL反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。 この反応混合物をヘキサン277gに添加して、ポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧ろ過し、真空乾燥して、目的とする高分岐ポリマー(LA3)を、白色粉末として6.6g得た。 得られた高分岐ポリマーLA3のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量:Mwは8,400、分散度:Mw/Mnは2.5であった。 [0067] [製造例4-1~4-8]プライマー組成物(プライマー層形成用組成物)の調製 表1の記載に従って以下の各成分を混合し、表1に記載の固形分濃度のプライマー組成物(PR1~PR8)を調製した。なお、ここで固形分とは溶媒以外の成分を指す。また、表中、[部]とは[質量部]を表し、[%]とは[質量%]を表す。 (1)多官能化合物:表1に記載の多官能ポリマー及び/又はモノマーを表1に記載の量(有効成分換算) (2)無機微粒子:表1に記載の無機微粒子を表1に記載の量(固形分換算) (3)重合開始剤:表1に記載の重合開始剤 5質量部 (4)重合促進剤:EPA 表1に記載の量(表中、“-”は未添加を表す。) (5)レベリング剤:表1に記載のレベリング剤を表1に記載の量(固形分又は有効成分換算) (6)溶媒:PGME 表1に記載の量(表中、負の数値は、エバポレーターで溶媒を留去した。) [0068] [表1] [図:0001400443000007.jpg] [0069] [製造例5-1~5-2]ハードコート組成物(硬化性組成物)の調製 表2の記載に従って以下の各成分を混合し、固形分濃度40質量%のハードコート組成物(HC1~HC2)を調製した。なお、ここで固形分とは溶媒以外の成分を指す。また、表中、[部]とは[質量部]を表し、[%]とは[質量%]を表す。 (1)多官能モノマー:DPHA 50質量部、UA 30質量部、及びPETA 20質量部 (2)表面改質剤:表2に記載の表面改質剤 1質量部(固形分又は有効成分換算) (3)重合開始剤:I2959 5質量部 (4)重合促進剤:EPA 0.1質量部 (5)溶媒:PGME 表2に記載の量 [0070] [表2] [図:0001400443000008.jpg] [0071] [実施例1~6、比較例1~5] 表3に記載のプライマー組成物を、表3に記載の基材上(PETについては易接着処理面)に、表3に記載のバーを使用してバーコート塗布し、塗膜を得た。この塗膜を表3に記載の乾燥温度のオーブンで1分間乾燥させ溶媒を除去した。得られた膜を、空気雰囲気下、露光量100mJ/cm2のUV光を照射し露光することで、表3に示した厚さのプライマー層(硬化膜)を形成した。なお、比較例1は、プライマー層にクラックが入ったため以降の操作を中断した。 このプライマー層上に、表3に記載のハードコート組成物を、表3に記載のバーを使用してバーコート塗布し、塗膜を得た。この塗膜を表3に記載の乾燥温度のオーブンで3分間乾燥させ溶媒を除去した。得られた膜を、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cm2のUV光を照射し露光することで、表3に示した厚さのハードコート層(硬化膜)を有するハードコート積層体を作製した。なお、比較例3は、プライマー層を形成せず、基材上に直接ハードコート層を形成した。また、比較例5は、ハードコート層を形成せず、プライマー層のみを有するハードコート積層体とした。 [0072] 得られたハードコート積層体の、耐擦傷性、鉛筆硬度、全光線透過率、ヘーズ、及び水の接触角を評価した。耐擦傷性、鉛筆硬度、及び接触角の評価の手順を以下に示す。また、結果を表4に併せて示す。 [0073] [耐擦傷性] ハードコート層表面を、往復摩耗試験機に取り付けたスチールウール[ボンスター販売(株)製 ボンスター(登録商標)#0000(超極細)]で1kg/cm2の荷重を掛けて1,000往復擦り、その擦った部分に油性マーカー[ゼブラ(株)製 マッキー極細(青)、細側を使用]で線を描いた。続けて描いた線を不織布ワイパー[旭化成(株)製 BEMCOT(登録商標)M-1]で拭き取り、傷の程度を目視で確認し以下の基準に従い評価した。なおハードコート積層体として実際の使用を想定した場合、少なくともBであることが求められ、Aであることが望ましい。 A:傷がつかず油性マーカーで描いた線がきれいに拭き取れる B:かすかに傷がつくが油性マーカーで描いた線がきれいに拭き取れる C:油性マーカーのインクが傷に入り込み拭き取れない [0074] [鉛筆硬度] JIS 5600-5-4に準拠して、鉛筆硬度(ひっかき硬度)を測定した。なおハードコート積層体として実際の使用を想定した場合、少なくとも5H以上であることが求められ、7H以上であることが望ましい。 [0075] [接触角] 水1μLをハードコート層表面に付着させ、その5秒後の接触角θを5点で測定し、その平均値を接触角値とした。 [0076] [表3] [図:0001400443000009.jpg] [0077] [表4] [図:0001400443000010.jpg] [0078] 表1乃至表4に示すように、表面改質剤として両末端にポリ(オキシアルキレン)基及び1つのウレタン結合基を介して、アクリロイル基を結合するパーフルオロポリエーテルSM1を用いたハードコート層の形成にあたり、無機微粒子を含有するプライマー層を設けた実施例1乃至実施例6の積層体1乃至積層体6にあっては、耐擦傷性に優れ、鉛筆硬度も実使用において満足できる品質であり、さらに透明性に優れる積層体となった。 一方、プライマー層に、活性エネルギー線重合性基を有していない無機微粒子を用いた場合(比較例1)、プライマー層形成時にクラックが発生し、積層体の形成に至らなかった。 またプライマー層において無機微粒子の含有量が規定量に満たない場合(比較例2)、並びに、プライマー層を設けない場合(比較例3)、本発明の積層体と同等の耐擦傷性は示したものの、鉛筆硬度が低く、所望の硬度を得られなかった。 さらに、ハードコート層に、表面改質剤としてパーフルオロポリエーテル構造を有するUV反応型フッ素系表面改質剤SM2を用いた場合(比較例4)、鉛筆硬度については良好な結果が得られるものの、所望の耐擦傷性を得られなかった。 なお、ハードコート層を設けず、ハードコート層の表面改質剤SM1をプライマー層に配合した場合(比較例5)、無機微粒子の配合により高い硬度を有する層は得られたものの、耐擦傷性を有する層を得ることはできなかった。」 (イ)甲1-1発明 甲1-1の製造例4-4のプライマー組成物PR4に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「(A)多官能化合物であるAA1:ポリアクリルアクリレート[DIC(株)製 ユニディック(登録商標)V-6840、有効成分50質量%MIBK溶液]20質量部、DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物[日本化薬(株)製 KAYALAD DN-0075]20質量部、 (B)無機微粒子であるIP1:活性エネルギー線重合性基含有シリカゾル[日産化学工業(株)製 PGM-AC-2140Y、40質量%PGME分散液、1次平均粒子径10~15nm、シリカ比重1.24]60質量部、及び (C)重合開始剤であるI2959:2-ヒドロキシ-1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)2959]5質量部 (D)レベリング剤であるフルオロアルキル基を有する高分岐ポリマーLA30.05質量部からなるプライマー組成物。」(以下、「甲1-1発明1」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1-1発明1とを対比する。 (ア)甲1-1発明1の「DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物[日本化薬(株)製 KAYALAD DN-0075]」は、本件特許発明1の「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」である「ポリ(メタ)アクリレート」に相当する。 また、甲1-1発明1の「(A)多官能化合物であるAA1:ポリアクリルアクリレート[DIC(株)製 ユニディック(登録商標)V-6840、有効成分50質量%MIBK溶液]」は、本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」に相当する。 (イ)甲1-1発明1の「(C)重合開始剤であるI2959:2-ヒドロキシ-1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)2959]」は、下記構造を有し、α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基を含有するものであるから、本件特許発明1の「α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤」に相当する。 [図:0001400443000011.jpg] そして、甲1-1発明における「(C)重合開始剤I2959」の含有量を質量%に換算すると8.47質量%(=(5/(20×0.5+20+60×0.4+5+0.05))×100)となる。 (ウ)甲1-1発明1の「(B)無機微粒子であるIP1:活性エネルギー線重合性基含有シリカゾル[日産化学工業(株)製 PGM-AC-2140Y、40質量%PGME分散液、1次平均粒子径10~15nm、シリカ比重1.24]」に関して、甲1-3の第1頁「Surface treatment variation」の項には、日産化学工業(株)製のPGM-AC-2140YがPGMEを溶媒とする「Methacryl silane」(メタクリルシラン)で表面処理されたコロイド状シリカであることが記載されているから、甲1-1発明1の「(B)無機微粒子であるIP1」は、活性エネルギー線重合性基であるメタクリル基を含有しているといえる。 また、甲1-3の第1頁「Appearance」の項には、PGM-AC-2140Yの未処理品であるMEK-ST-40の拡大写真が掲載されており、この写真から前記「コロイド状シリカ」のシリカ粒子が中実粒子であることを把握できる。 してみると、甲1-1発明1の「(B)無機微粒子であるIP1」は、「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」である限りにおいて、本件特許発明1の反応物が特定された「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」に相当する。 (エ)甲1-1発明1の「プライマー組成物」は、実施例5でUV光を照射し露光してプライマー層の硬化膜が得られることから、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。 <一致点> 「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子、 ポリ(メタ)アクリレート並びに α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」 <相違点1-1-1> ポリ(メタ)アクリレートが、本件特許発明1は「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリンポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレート構造含有ポリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上」であるのに対し、甲1-1発明1は「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」である「DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物[日本化薬(株)製 KAYALADDN-0075]」に加え、「AA1:ポリアクリルアクリレート[DIC(株)製 ユニディック(登録商標)V-6840、有効成分50質量%MIBK溶液]」を含む点 <相違点1-1-2> (メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子が、本件特許発明1は「中実シリカ粒子と下記式S(当審注:化学式は省略する。以下、同様。)で表される化合物との反応物及び/又は中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物」であるのに対し、甲1-1発明1はそのようなものであるか不明である点 <相違点1-1-3> 固形分100質量%に対する光重合開始剤の含有量が、本件特許発明1は「1~3質量%」であるのに対し、甲1-1発明1は「8.47質量%」である点 そこで、上記相違点について検討する。 <相違点1-1-1>について 本件特許発明1は、「ポリ(メタ)アクリレートは、(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリンポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレート構造含有ポリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上であり」と特定されており、特許権者も令和5年1月17日付けの意見書の第3ページ11~12行において、「訂正後の本件発明において、ポリ(メタ)アクリレートは、「活性エネルギー線硬化性多官能ポリマー」ではない化合物に限定されています。」と述べていることを鑑みると、「ポリ(メタ)アクリレート」は当該特定の選択肢のものに限定され、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、当該特定の選択肢以外の「ポリ(メタ)アクリレート」を含むものは本件特許発明1の範囲外であると解釈するのが相当である。 そうすると、当該相違点は実質的な相違点である。 ついで、当該相違点の容易想到性について検討する。 甲1-1には、「[請求項1] 基材と、該基材より上方のプライマー層と、該プライマー層の上方のハードコート層からなる、高硬度ハードコート積層体であって、 前記プライマー層が、 (A)活性エネルギー線硬化性多官能モノマー及び活性エネルギー線硬化性多官能ポリマーからなる群から選択される多官能化合物100質量部・・・ を含む硬化性組成物の硬化物からなる、 高硬度ハードコート積層体。」に関する技術的事項について記載されており、また、その段落[0021]には、「上記(A)多官能化合物において、活性エネルギー線硬化性多官能ポリマーと活性エネルギー線硬化性多官能モノマーは、100:0~25:75の質量割合で使用することが好ましい。」と記載されている。 すなわち、(A)の多官能化合物である「ポリアクリルアクリレート」ポリマーを使用しないことは記載も示唆されていない。 そうすると、甲1-1発明1において、当該多官能ポリマーである「AA1:ポリアクリルアクリレート[DIC(株)製 ユニディック(登録商標)V-6840、有効成分50質量%MIBK溶液]」を使用せず、「DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物[日本化薬(株)製 KAYALAD DN-0075]」のみとする動機付けはない。 そして、本件特許発明1は「良好な耐擦傷性及び鉛筆硬度を有する硬化物を製造できる。」(本件特許明細書の段落【0008】)という効果を奏するものである。 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1-1発明1、すなわち甲1-1に記載された発明でもないし、また、甲1-1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2、4及び5について 本件特許発明2、4及び5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2、4及び5は、甲1-1に記載された発明ではないし、また、甲1-1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)申立人の主張について 申立人1は、令和5年2月16日付けの意見書において、「甲1-1の「DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物[日本化薬(株)製 KAYALAD DN-0075]([0063])は、訂正後の本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」として具体的に列挙された「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」に相当します。 よって、訂正後の本件特許発明の請求項1、2、4及び5は、依然として、甲1-1(国際公開2018/070446号公報)に記載された発明により新規性を有さず、取り消されるべきものです。また、仮に新規性が認められるとしても、訂正後の本件特許発明の請求項1、2、4及び5は、甲1-1に記載された発明により進歩性を有さず、取り消されるべきものです。」(第1ページ)と主張する。 また、申立人2も、令和5年3月1日付けの意見書において、「・・・甲第10号証には以下の記載がある。すなわちDPHAは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート/ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート混合物であり、は、本件訂正発明1における(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートに相当する。・・・本件訂正発明1における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ポリ(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリロイル基などを有する化合物を含有することを許容している。そうすると、甲10発明の具体例である製造例4-4の組成物における、アクリル基を複数有する多官能化合物AA1のような化合物を包含する技術範囲を包含するものと認められる。よって、特許権者による上記主張は失当である。」(第13ページ下から第6行~第16ページ第2行)と主張する。 しかしながら、上記(2)でも説示したように、本件特許発明1は、「ポリ(メタ)アクリレート」が、特定の選択肢のものに限定されているところ、甲1-1発明1には、「ポリ(メタ)アクリレート」として上記選択肢以外の「AA1:ポリアクリルアクリレート[DIC(株)製 ユニディック(登録商標)V-6840、有効成分50質量%MIBK溶液]」が包含されているのであるから、当該「AA1:ポリアクリルアクリレート」を含有する点は実質的な相違点となる。 よって、申立人1及び申立人2の主張は首肯できない。 (4)取消理由1-1及び申立理由1-1についてのむすび したがって、本件特許発明1、2、4及び5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1、2、4及び5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2、4及び5に係る特許は、取消理由1-1及び申立理由1-1によっては取り消すことはできない。 2 取消理由1-2及び申立理由1-2(甲1-2に基づく新規性・進歩性)について (1)甲号証に記載された事項等 ア 甲1-2に記載された事項及び甲1-2発明 (ア)甲1-2に記載された事項 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 1種以上の多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、 前記1種以上の多官能性(メタ)アクリレートモノマー内に分散されたナノ粒子混合物と、 を含むハードコート組成物であって、前記ナノ粒子混合物が、 1%~15%の、5nm~60nmの範囲の平均粒径を有する、反応性ナノ粒子の第1の集団、及び 99%~85%の、5nm~60nmの範囲の平均粒径を有する、非反応性ナノ粒子の第2の集団 を含む、ハードコート組成物。」 「【0031】 ナノ粒子混合物(無機酸化物ナノ粒子)の総濃度は、少なくとも30、40、又は50重量%固形分であり、一般には、75重量%、70重量%、又は60重量%以下である。ナノ粒子混合物(無機酸化物ナノ粒子)の総濃度は、ハードコート組成物中に、30重量%全固形分~68重量%全固形分、又は50重量%全固形分~60重量%全固形分の範囲のローディングで存在し得る。」 「【0049】 ハードコートを形成している樹脂マトリックスは、1つ以上の(メタ)アクリレートモノマーから形成され得る。用語「モノマー」は、オリゴマー又はモノマーを指す。 【0050】 重合性樹脂組成物は、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基及びアルコキシ(すなわちアルキレンオキシド)繰り返し単位を含む、少なくとも1つの第1の(メタ)アクリレートモノマーを含む。アルコキシ(すなわちアルキレンオキシド)繰り返し単位は、典型的には、式-[O-L]-(式中、Lは直鎖状又は分枝状アルキレンである)を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、直鎖状又は分枝状C2~C6アルキレンである。 【0051】 いくつかの実施形態では、第1の(メタ)アクリレートモノマーは、エチレンオキシド繰り返し単位などの直鎖状アルコキシ繰り返し単位を含む。こうしたモノマーは、一般式: R((OCnH2n)mOC(O)C(R6)=CH2)p (式中、Rは、pの価数を有する有機残基であり、nは、アルコキシ繰り返し単位の炭素原子の数であり、mは、アルコキシ繰り返し単位の数であり、R6は水素又はメチルであり、pは少なくとも3である)によって表すことができる。各mについて、nは、独立に、1~4の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、アルコキシ繰り返し単位の数mは、6超であり、典型的には20未満である。この実施形態では、pは、少なくとも4又は5又は6である。いくつかの実施形態では、Rは、炭化水素残基であり、任意に、1つ以上の酸素、硫黄、又は窒素原子を更に含む。いくつかの実施形態では、Rは、少なくとも3個、4個、5個又は6個の炭素原子を含み、典型的には12個以下の炭素原子を含む。 【0052】 他の実施形態では、第1の(メタ)アクリレートモノマーは、イソプロピレンオキシド及び/又はイソブチレンオキシド繰り返し単位などの分枝状アルコキシ繰り返し単位を含む。いくつかの具体化されたモノマーは、一般式: R((OCn(CH3)qH2n-q)mOC(O)-C(R6)=CH2)p (式中、R及びpは、先に記載したものと同じである)で表すことができる。分枝状イソプロピレンオキシド繰り返し単位の場合、nは2であり、qは1である。分枝状イソブチレンオキシド繰り返し単位の場合、nは2であり、qは2である。 【0053】 第1の(メタ)アクリレートモノマーは、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基を含み、C2~C4アルコキシ繰り返し単位は、直鎖状及び/又は分枝状C2~C4アルコキシ繰り返し単位の任意の組み合わせを含んでもよい。したがって、第1の(メタ)アクリレートモノマーは、エチレンオキシド繰り返し単位のみ、プロピレンオキシド繰り返し単位のみ、ブチレンオキシド繰り返し単位のみ、並びにこれらの組み合わせを含んでもよい。一実施形態では、第1の(メタ)アクリレートモノマーは、エチレンオキシド繰り返し単位とプロピレンオキシド繰り返し単位との両方の組み合わせを含む。 【0054】 いくつかの実施形態では、(メタ)アクリレート基の数で割った第1の(メタ)アクリレートモノマーの分子量は、約220~375g/モルの範囲である。又は換言すれば、(メタ)アクリレート基当たりの分子量は、(メタ)アクリレート当たり約220~375g/モルの範囲である。次の実施例で実証されるように、このような第1の(メタ)アクリレートモノマーを含むことは、可撓性と耐摩耗性との両方であるハードコートを提供すべく受ける余地がある。いくつかの実施形態では、硬化ハードコート(少なくとも2.5マイクロメートルの厚さ)は、#4Hの鉛筆及び1kgの荷重で試験したときにひびが入らない。別法では、又はそれに加えて、硬化ハードコートは、(実施例中に記載の試験方法に従った)摩耗試験後に、引っかきなし(No Scratch、NS)又はわずかな引っかき(Slight Scratch、SS)を呈しているように、十分に耐久性がある。摩耗試験後の引っかきなし(NS)又はわずかな引っかきあり(SS)は、5%未満、好ましくは4%未満、より好ましくは3%未満、又は2%未満、又は1%未満の、測定されたヘイズ(又は測定されたヘイズ増加)を有するフィルムを付与する。 【0055】 このような基準を満たす市販のエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーとしては、例えば、Sartomer Arkema Group(Exton,PA)から入手可能なSR9035及びSR502が挙げられる。このような基準を満たす他のモノマーは、ポリアルキレンオキシドポリオールとアクリル酸との反応などによって合成することができる。 【0056】 硬化ハードコート組成物中の第1の(メタ)アクリレートモノマーの濃度は、典型的には、少なくとも5重量%固形分であり、いくつかの実施形態では、少なくとも10重量%固形分であり、かつ一般に40重量%固形分以下、又は35重量%固形分以下、又は30重量%固形分以下、又は25重量%固形分以下である。いくつかの実施形態では、第1のモノマーの濃度は、少なくとも11、12、13、14又は15重量%固形分である。いくつかの実施形態では、第1のモノマーの濃度は、5~10重量%固形分の範囲である。本明細書で使用する場合、重量%固形分は、存在し得る任意の溶媒の揮発後の乾燥及び/又は硬化ハードコート組成物の総量を指す。 【0057】 ハードコート組成物の重合性樹脂は、少なくとも1種の第2の多官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む。第2の(メタ)アクリレートモノマーは、第1のモノマーとは異なるモノマーである。 【0058】 有用な多官能性(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーとしては、以下が挙げられる。 (a)ジ(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、Sartomer Arkema Group(Exton,PA)からのSR344)、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、 (b)トリ(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Sartomer Arkema Group(Exton,PA)からのSR9035))、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、 (c)より多官能性の(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。 【0059】 オリゴマー(メタ)アクリルモノマー、例えば、ポリエステルアクリレート及びエポキシアクリレートも利用され得る。 【0060】 このような(メタ)アクリレートモノマーは、例えば、Sartomer Arkema Group(Exton,PA)、Allnex(Alpharetta,GA)、及びAldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)などの供給業者から広く入手可能である。 【0061】 いくつかの実施形態では、ハードコート組成物は、少なくとも3つの(メタ)アクリレート官能基を含む第2の(メタ)アクリレートモノマーを含む。いくつかの実施形態では、第2のモノマーは、少なくとも4つ、5つ又は6つの(メタ)アクリレート官能基を含む。アクリレート官能基は、(メタ)アクリレート官能基よりも好まれる傾向にある。 【0062】 好ましい市販の第2の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Sartomer Arkema Group(Exton,PA)からのSR351)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(例えば、Sartomer Arkema Group(Exton,PA)からのSR454)、ペンタエリスリトールテトラアクリレートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの混合物(例えば、Sartomer Arkema GroupからのSR444c)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、Sartomer Arkema GroupからのSR399)、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートとエトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリレートとの混合物(例えば、Sartomer Arkema GroupからのSR494)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(例えば、Sartomer Arkema GroupからのSR368)が挙げられる。 【0063】 いくつかの実施形態では、第2のモノマーは、C2~C4アルコキシ繰り返し単位を含まない。 【0064】 硬化ハードコート組成物中の第2のモノマーの総量の濃度は、典型的には、少なくとも5重量%固形分又は10重量%固形分であり、一般に40、35又は30重量%固形分以下である。いくつかの実施形態では、第2のモノマーの総量は、10~25重量%固形分の範囲である。他の実施形態では、第2のモノマーの総量は、5~15重量%固形分の範囲である。 【0065】 他の実施形態では、ハードコート組成物は、少なくとも3つの(メタ)アクリレート官能基を含む2つ以上のモノマーと、少なくとも1つのジ(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーとのブレンドを含んでもよい。ジ(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーの濃度は、典型的には、総ハードコート組成物の15重量%固形分以下、又は10重量%固形分以下、又は5重量%固形分以下である。」 「【0067】 ハードコート又はハードコートフィルムは、本明細書に記載のハードコート組成物を硬化する(重合する)ことによって形成され得る。ハードコートの硬化を促進するため、本明細書に記載の重合性組成物は、少なくとも1種のフリーラジカル熱開始剤及び/又は光開始剤を更に含んでもよい。このような開始剤及び/又は光開始剤が存在する場合、開始剤及び/又は光開始剤は、重合性組成物の総重量を基準として、重合性組成物の約5%未満、より典型的には約2%未満(全固形分の重量による)を構成する。」 「【実施例】 【0093】 実施例は、可撓性と耐摩耗性との両方であるハードコートを製造するための新規の効果的な戦略を例示する。実施例のハードコート組成物は、反応性(例えば、A174(アクリレート))及び非反応性(例えば、メチル)ナノ粒子の混合物に基づく。実施例は、ハードコートが、マンドレル曲げ及び動的折り畳み及び耐摩耗性によって特徴付けられる両方の可撓性を呈する好ましい組成範囲を示す。比較例は、ハードコートに可撓性を組み込む試みを例示するために含まれる。比較例は、ハードコート組成物中のウレタンアクリレートの一般的な使用を含む戦略の組み合わせを使用する。比較例は可撓性を示すが、耐摩耗性を犠牲にしている。新興の可撓性OLEDディスプレイ市場用ハードコートは、以下の実施例に例示しているように、可撓性と耐摩耗性との両方を保有しなければならない。 【0094】 【表1】 [図:0001400443000012.jpg] 【0095】 表面改質SiO2ナノ分散体 SiO2ナノ分散液:A174 20nm: NALCO 2327 400gを32オンスガラスジャーに入れた。撹拌を開始し、PM450gをゆっくりと添加した。A174 22.01gをゆっくりと添加した。ナノ分散液を更に20分間撹拌した。ナノ分散液をオーブン中80℃にて24時間置き、シランからの反応性アクリレート官能基でナノ粒子表面を改質した。次いで、ナノ分散液を室温まで冷却した。PM330gをナノ分散液に添加した。溶媒交換を行って、回転蒸発(Buchi,New Castle,DE)を用いて真空下64℃にて水を除去した。ナノ分散液の最終的なナノ粒子含有量を45重量%に調整した。 【0096】 SiO2ナノ分散液:METHYL20nm: NALCO 2327 400gを32オンスガラスジャーに入れた。撹拌を開始し、PM450gをゆっくりと添加した。METHYL-TMOS12.07gをゆっくりと添加した。ナノ分散液を更に20分間撹拌した。ナノ分散液をオーブン中80℃にて24時間置き、シランからの非反応性メチル官能基でナノ粒子表面を改質した。次いで、ナノ分散液を室温まで冷却した。PM330gをナノ分散液に添加した。溶媒交換を行って、回転蒸発(Buchi,New Castle,DE)を用いて真空下64℃にて水を除去した。ナノ分散液の最終的なナノ粒子含有量を45重量%に調整した。 【0097】 SiO2ナノ分散液:A174/CYANO 20nm: NALCO 2327 400gを32オンスガラスジャーに入れた。撹拌を開始し、PM450gをゆっくりと添加した。A174 11.00gをゆっくりと添加した。CYANO-TMOS8.39gをゆっくりと添加した。ナノ分散液を更に20分間撹拌した。ナノ分散液をオーブン中80℃にて24時間置き、シランからの反応性アクリレート及び非反応性シアノ官能基でナノ粒子表面を改質した。次いで、ナノ分散液を室温まで冷却した。PM330gをナノ分散液に添加した。溶媒交換を行って、回転蒸発(Buchi,New Castle,DE)を用いて真空下64℃にて水を除去した。ナノ分散液の最終的なナノ粒子含有量を45重量%に調整した。 【0098】 SiO2ナノ分散液:A174 75nm: NALCO 2329K400gを32オンスガラスジャーに入れた。撹拌を開始し、PM450gをゆっくりと添加した。A174 6.92gをゆっくりと添加した。ナノ分散液を更に20分間撹拌した。ナノ分散液をオーブン中80℃にて24時間置き、シランからの反応性アクリレート官能基でナノ粒子表面を改質した。次いで、ナノ分散液を室温まで冷却した。PM330gをナノ分散液に添加した。溶媒交換を行って、回転蒸発(Buchi,New Castle,DE)を用いて真空下64℃にて水を除去した。ナノ分散液の最終的なナノ粒子含有量を45重量%に調整した。 【0099】 ハードコート配合物 ハードコート配合物:HF1~10 実施例のハードコート配合物を表2に示す。多官能性アクリレート(SR344、SR399、SR444c、及びSR9035)を褐色ガラスジャーに入れた。MEKを添加し、撹拌を開始した。反応性A174 20nm及び/又は非反応性METHYL20nmナノ粒子分散液を添加し、ハードコート配合物が均質なナノ分散液を形成するまで撹拌を続けた。ESACURE 1をハードコート配合物に溶解した。PM-1501をハードコート配合物に添加し、撹拌を更に20分間継続した。 【0100】 【表2】 [図:0001400443000013.jpg] ・・・略・・・ 【0106】 ハードコートフィルム ハードコートフィルム:EX1~10及びCE1~4 ハードコート配合物HC1~10及び比較のハードコート配合物CHC1~4を、3milのプライム処理したPETフィルム上に、連続ロールツーロール法でコーティングした。ハードコート配合物を、計量ポンプ及びマスフローメータによって制御されたコーティング厚さを有するスロットダイを通して計量した。コーティングの揮発性成分を、3ゾーン空気浮遊炉(ゾーン1を65.6℃に設定し、ゾーン2を93.3℃に設定し、ゾーン3を121.1℃に設定した)で除去し、各ゾーンは約9.1mの長さを有していた。乾燥したコーティングを、48.9℃の温度に設定した温度制御されたバックアップロールを用いて、不活性雰囲気下、Hバルブ源を使用して、ダイクロイック反射装置を備えたインライン600W/in Fusion UV硬化ステーションで硬化させた。硬化ハードコートの厚さを表4に示す。 【0107】 ハードコートフィルム:光学特性評価 表4は、実施例EX1~10及び比較例CE1~4のハードコートフィルムの光学的特性評価、並びにハードコート組成物の詳細:各種類のナノ粒子の相対濃度、総ナノ粒子ローディング(NPローディング)、樹脂、及びハードコート厚さを示す。全てのハードコートフィルムは、高い透過率(T)及び透明度(C)、低いヘイズ(H)、並びに低い黄色度指数(b*)を有する光学グレード品質を呈している。光学グレード品質は、前面ディスプレイ用途に不可欠である。 【0108】 【表4】 [図:0001400443000014.jpg] 」 (イ)甲1-2発明 甲1-2の実施例のハードコート配合物HF-1に着目して、甲1-2の請求項1にならって整理すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「1種以上の多官能性(メタ)アクリレートモノマーである、SR399(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)22.62g、SR444c(ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物)30.45g、SR9035(エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)41.76g、及びSR344(ポリエチレングリコール400ジアクリレート)3.74g、 前記1種以上の多官能性(メタ)アクリレートモノマー内に分散されたナノ粒子混合物である、「A174 20nm」(NALCO 2327(20nmコロイド状SiO2水性分散液) 400gを32オンスガラスジャーに入れ、撹拌を開始し、PM450gをゆっくりと添加しA174(3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート) 22.01gをゆっくりと添加し、ナノ分散液を更に20分間撹拌した後、ナノ分散液をオーブン中80℃にて24時間置き、シランからの反応性アクリレート官能基でナノ粒子表面を改質し、次いで、ナノ分散液を室温まで冷却後、PM330gをナノ分散液に添加した。溶媒交換を行って、回転蒸発(Buchi,New Castle,DE)を用いて真空下64℃にて水を除去し、ナノ分散液の最終的なナノ粒子含有量を45重量%に調整した表面改質SiO2分散体。)317.54g、 木材保護材であるPM-1501(3M Company(St. Paul, MN))0.41g、 光開始剤であるEsacure 1(IGM resins USA Inc,(St. Charies, IL))3.3g、 MEK(メチルエチルケトン)280.19g、 からなるハードコート配合物HF-1。」(以下、「甲1-2発明1」という。) (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1-2発明1とを対比する。 (ア)甲1-2発明1の「多官能性(メタ)アクリレートモノマーである」「SR399(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)」、「SR444c(ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物)」は、本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」である「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」に相当する。 また、本件特許発明1の「(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート」は、本件特許明細書の段落【0108】に、「(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性)(メタ)アクリレート」と記載されていることから、「アルキレンオキサイド変性又はエポキシ変性」されていない「(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート」である。このため、甲1-2発明1の「多官能性(メタ)アクリレートモノマーである」「SR9035(エトキシル化 トリメチロールプロパントリアクリレート)」は、本件特許発明1の「(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート」には該当しないものの、「ポリ(メタ)アクリレート」に相当する。 そして、甲1-2発明1の「多官能性(メタ)アクリレートモノマーである」「SR344(ポリエチレングリコール400ジアクリレート)」は、本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」に相当する。 (イ)甲1-2発明1の「光開始剤であるEsacure 1」は、例えば、国際公開第2014/129461号の段落[0049]から、「オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン」(下記構造) [図:0001400443000015.jpg] であって、α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基を含有するものであるから、本件特許発明1の「α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤」に相当する。 また、その含有量は、質量%に換算すると固形分100質量%に対し1.33質量%(=(3.3/((22.62+30.45+41.76+3.74+317.54×0.45+0.41+3.3))×100)×100)であるから、甲1-2発明1は本件特許発明1の「固形分100質量%に対し1~3質量%である」との範囲で重複一致する。 (ウ)甲1-2発明1の「A174 20nm」は、NALCO 2327(20nmコロイド状SiO2水性分散液)をA174(3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)を用いて反応性アクリレート官能基でナノ粒子表面を改質した表面改質SiO2分散体である。 ここで、「3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート」は、本件特許発明1の式U1で表される化合物に相当する。また、「NALCO 2327(20nmコロイド状SiO2水性分散液)」の屈折率が1.48であることは本件出願前に公知(必要があれば欧州特許第1396254号公報の段落[0023]参照。)であるところ、これはシリカの屈折率と同程度であり、仮にそのシリカ粒子が中空粒子であればその屈折率はシリカの屈折率よりも小さくなるので、「NALCO 2327」のシリカ粒子は中実粒子であると解される。このため、甲1-2発明1の「A174 20nm」は、本件特許発明1の「中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物」である「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」に相当するといえる。 (エ)甲1-2発明1の「ハードコート配合物HF-1」は、甲1-2の段落【0106】より、UV硬化ステーションで硬化させてハードコートが得られるものであるから、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」に相当するといえる。 そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。 <一致点> 「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子、 ポリ(メタ)アクリレート並びに α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、 前記(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子は、中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物であり、 前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し1.33質量%である、 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」 <相違点1-2> ポリ(メタ)アクリレートが、本件特許発明1は「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリンポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレート構造含有ポリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上」であるのに対し、甲1-2発明1は「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」である「SR399(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)」、「SR444c(ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物)」に加え、「SR9035(エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)」及び「SR344(ポリエチレングリコール400ジアクリレート)」を含む点 そこで、上記<相違点1-2>について検討する。 上記1(2)アでも説示したように、本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」は当該特定の選択肢のものに限定され、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、当該特定の選択肢以外の「ポリ(メタ)アクリレート」を含むものは本件特許発明1の範囲外であると解釈するのが相当である。 そうすると、当該相違点は実質的な相違点である。 ついで、当該相違点の容易想到性について検討する。 甲1-2には、「1種以上の多官能性(メタ)アクリレートモノマーと、 前記1種以上の多官能性(メタ)アクリレートモノマー内に分散されたナノ粒子混合物と、 を含むハードコート組成物であって、前記ナノ粒子混合物が、 1%~15%の、5nm~60nmの範囲の平均粒径を有する、反応性ナノ粒子の第1の集団、及び 99%~85%の、5nm~60nmの範囲の平均粒径を有する、非反応性ナノ粒子の第2の集団 を含む、ハードコート組成物。」(【請求項1】)に関する事項について記載されており、また、その段落【0050】~【0056】に、「重合性樹脂組成物は、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基及びアルコキシ(すなわちアルキレンオキシド)繰り返し単位を含む、少なくとも1つの第1の(メタ)アクリレートモノマーを含む。アルコキシ(すなわちアルキレンオキシド)繰り返し単位は、典型的には、式-[O-L]-(式中、Lは直鎖状又は分枝状アルキレンである)を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、直鎖状又は分枝状C2~C6アルキレンである。・・・次の実施例で実証されるように、このような第1の(メタ)アクリレートモノマーを含むことは、可撓性と耐摩耗性との両方であるハードコートを提供すべく受ける余地がある。・・・このような基準を満たす市販のエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーとしては、例えば、Sartomer Arkema Group(Exton,PA)から入手可能なSR9035及びSR502が挙げられる。このような基準を満たす他のモノマーは、ポリアルキレンオキシドポリオールとアクリル酸との反応などによって合成することができる。 硬化ハードコート組成物中の第1の(メタ)アクリレートモノマーの濃度は、典型的には、少なくとも5重量%固形分であり、いくつかの実施形態では、少なくとも10重量%固形分であり、かつ一般に40重量%固形分以下、又は35重量%固形分以下、又は30重量%固形分以下、又は25重量%固形分以下である。」と記載されている。 すなわち、1種以上の多官能性(メタ)アクリレートモノマーとして、「少なくとも3つの(メタ)アクリレート基及びアルコキシ(すなわちアルキレンオキシド)繰り返し単位を含む、少なくとも1つの第1の(メタ)アクリレートモノマーを5~40重量%使用すること」については記載されているものの、当該第1の(メタ)アクリレートモノマーを使用しないことについては記載も示唆されていない。 そうすると、甲1-2発明1として、当該第1の(メタ)アクリレートモノマーである「SR9035(エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)」及び「SR344(ポリエチレングリコール400ジアクリレート)」を使用せず、「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」である「SR399(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)」、「SR444c(ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物)」のみとする動機付けはない。 よって、当該相違点は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件特許発明1は「良好な耐擦傷性及び鉛筆硬度を有する硬化物を製造できる。」(本件特許明細書の段落【0008】)という効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明1は、甲1-2発明1、すなわち甲1-2に記載された発明でもないし、また、甲1-2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2、4及び5について 本件特許発明2、4及び5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2、4及び5は、甲1-2に記載された発明ではないし、また、甲1-2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)申立人の主張について 申立人1は、令和5年2月16日付けの意見書において、「甲1-2の「SR399:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート([0094])」、及び「SR444c:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物([0094])」は、訂正後の本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」として具体的に列挙された「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」に相当します。 また、甲1-2の「SR9035:エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート([0094])」は、訂正後の本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」として具体的に列挙された「(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート」に相当します。 よって、訂正後の本件特許発明の請求項1、2、4及び5は、依然として、甲1-2(特表2021-501956号公報)に記載された発明により新規性を有さず、取り消されるべきものです。また、仮に新規性が認められるとしても、訂正後の本件特許発明の請求項1、2、4及び5は、甲1-2に記載された発明により進歩性を有さず、取り消されるべきものです。」(第2ページ)と主張する。 また、申立人2も、令和5年3月1日付けの意見書において、「・・・甲第11号証には以下の記載がある。すなわちSR399は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートであり、またSR444cはペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物であって、本件訂正発明1における(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートに相当する。・・・本件訂正発明1における活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ポリ(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリロイル基などを有する化合物を含有することを許容している。そうすると、甲11発明の具体例であるハードコート配合物:HF1における、アクリル基を複数有する多官能性(メタ)アクリレートモノマーSR399又はSR344のような化合物を包含する技術範囲を包含するものと認められ、特許権者による上記主張は失当である。」(第17ページ下から第12行~第19ページ下から第9行)と主張する。 しかしながら、上記(2)でも説示したように、本件特許発明1は、「ポリ(メタ)アクリレート」が特定の選択肢のものに限定されているところ、甲1-2発明1には、「ポリ(メタ)アクリレート」として上記選択肢以外の「SR9035(エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)」及び「SR344(ポリエチレングリコール400ジアクリレート)」が包含されているのであるから、当該「SR9035」及び「SR344」を含有する点は実質的な相違点となる。 よって、申立人1及び申立人2の主張は首肯できない。 (4)取消理由1-2及び申立理由1-2についてのむすび したがって、本件特許発明1、2、4及び5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1、2、4及び5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2、4及び5に係る特許は、取消理由1-2及び申立理由1-2によっては取り消すことはできない。 3 取消理由2-1(甲2-1に基づく新規性・進歩性)、申立理由2-2(甲2-1に基づく新規性)及び申立理由2-3(甲2-1に基づく進歩性)について (1)甲号証に記載された事項等 ア 甲2-1に記載された事項及び甲2-1発明 (ア)甲2-1に記載された事項 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 フィルム基材上に、下記特徴の活性エネルギー線硬化組成物による保護層を有する塗装フィルム。 活性エネルギー線硬化組成物:シリカ微粒子(a-1)と分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基及びイソシアヌレート環構造を有する加水分解性シラン(a-2)とを反応させて得られる反応性粒子(A)、ラジカル重合性不飽和基含有化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含有する 【請求項2】 フィルム基材上に形成された活性エネルギー線硬化組成物による保護層に、活性エネルギー線を照射する請求項1に記載の塗装フィルム。」 「【背景技術】 【0002】 活性エネルギー線硬化組成物は、各種物品の表面に塗工し、紫外線等の活性エネルギー線の照射により容易に硬化し、高硬度で耐擦傷性、透明性などに優れた硬化膜(ハードコート膜)である保護層を形成させることができることから、プラスチック材料等の保護材として広く用いられている。 【0003】 近年、各種電気製品、化粧品の容器および自動車内外装部品などに見られるように、プラスチック基材の表面に絵柄層(印刷層、金属蒸着層)を形成して装飾性や意匠性を施した塗装フィルムに対しても、ハードコート処理が行われるようになっている。 【0004】 しかし、従来からの活性エネルギー線硬化組成物による保護層は、フィルム基材又は下層皮膜との付着性、ハードコート性(高硬度、耐擦傷性など)及び耐薬品性の全てを満足するものではなかった。また上記硬化組成物中の成分による硬化収縮が起こり、フィルム基材を含めた塗装フィルムの保護層側への反り(いわゆる、カール)を引き起こすという問題もあった。」 「【0109】 活性エネルギー線硬化性組成物における反応性粒子(A)の含有量は、保護膜の耐擦傷性及び透明性の点から、活性エネルギー線硬化性組成物の100質量部に対して、1~90質量部であり、より好ましくは10~80質量部である。」 「【0156】 光重合開始剤(C)の含有量は、特に限定されるものではないが、活性エネルギー線硬化組成物の固形分100質量部に対して、1~8質量部であり、より好ましくは26質量部である。これら範囲は、活性エネルギー線に対する反応性の点で意義がある。 活性エネルギー線硬化組成物には、必要に応じて、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、離型剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤等を配合することもできる。」 「【実施例】 【0166】 以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。なお、本実施例における構造解析及び測定は、本明細書に記載の前記分析装置に加え、以下の分析装置及び測定方法により行った。 (29Si-NMR、1H-NMR分析) 装置:JEOL社製 FT-NMR EX-400 溶媒:CDCl3 内部標準物質:テトラメチルシラン。 【0167】 反応性粒子(A)の製造 製造例1 生成物P1の製造 還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)179部、2-ヒドロキシエチルアクリレート87部、酢酸イソブチル205部及びp-メトキシフェノール 1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温し、100℃で8時間反応させた。反応後、5℃まで冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン41部を1時間かけて滴下した。この際、フラスコ内の反応物の温度が20℃を超えないように制御した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル205部を配合して80℃まで昇温し、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物P1の不揮発分60%溶液を得た。 得られた生成物P1は、NCO価=0mgNCO/g、アミン価=0mgKOH/gであった。また、生成物P1について1H-NMR分析を行った結果、生成物P1のSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素-炭素不飽和結合のモル比率は4.0であった。また、生成物P1について29Si-NMR分析を行った結果、生成物P1中のエトキシシリル基の加水分解は確認されなかった。 上記の結果から、生成物P1は、下記式(P-I)で表される化合物と下記式(P-II)で表される化合物との混合物であり、 【0168】 【化13】 [図:0001400443000016.jpg] その比率は、前記式(P-I)で表される化合物/前記式(P-II)で表される化合物=60/40(モル比)であった。 【0169】 製造例2 生成物P2の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 続いて、製造例1で得られた生成物P1の不揮発分60%溶液17部[前記式(P-I)で表される化合物が6部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の不揮発分40%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(P-II)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(P-II)で表される化合物=100/3(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の混合物を生成物P2と称する。 【0170】 製造例3 生成物P3の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン14部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール230部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 続いて、製造例1で得られた生成物P1の不揮発分60%溶液10部[前記式(P-I)で表される化合物が4部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の不揮発分40%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(P-II)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(P-II)で表される化合物=100/2(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の混合物を生成物P3と称する。 【0171】 製造例4 生成物P4の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン6部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール223部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 続いて、製造例1で得られた生成物P1の不揮発分60%溶液23部[前記式(P-I)で表される化合物が8部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の不揮発分40%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(P-II)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(P-II)で表される化合物=100/5(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の混合物を生成物P4と称する。 【0172】 製造例5 生成物P5の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン3部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール232部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。続いて、製造例1で得られた生成物(P1)の不揮発分60%溶液4部[前記式(P-I)で表される化合物が2部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の不揮発分40%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(P-II)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(P-II)で表される化合物=100/1(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の混合物を生成物P5と称する。 【0173】 製造例6 生成物P6の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン20部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール220部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 続いて、製造例1で得られた生成物(P1)の不揮発分60%溶液33部[前記式(P-I)で表される化合物が12部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の不揮発分40%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(P-II)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(P-II)で表される化合物=100/6(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の混合物を生成物P6と称する。 【0174】 製造例7 生成物P7の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;水、シリカ濃度;40質量%、平均一次粒子径;20nm、商品名;スノーテックスO-40、日産化学工業社製)250部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール143部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。続いて、製造例1で得られた生成物(P1)の不揮発分60%溶液17部[前記式(P-I)で表される化合物が6部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の不揮発分40%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(P-II)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(P-II)で表される化合物=100/3(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の混合物を生成物P7と称する。 【0175】 製造例8 生成物P8の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン100部、2-ヒドロキシエチルアクリレート47部、p-メトキシフェノール0.1部を仕込み、乾燥空気を吹き込みながら100℃で12時間反応させ、生成物(P8)を得た。 【0176】 製造例9 生成物P9の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、製造例8で得られた生成物(P8)10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。続いて、製造例1で得られた生成物(P1)の不揮発分60%溶液17部[前記式(P-I)で表される化合物が6部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の不揮発分40%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(P-II)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(P-II)で表される化合物=100/3(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の混合物を生成物P9と称する。 【0177】 製造例10 生成物P10の製造 還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)179部、4-ヒドロキシブチルアクリレート108部、酢酸イソブチル205部及びp-メトキシフェノール1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温し、100℃で8時間反応させた。反応後、5℃まで冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン41部を1時間かけて滴下した。この際、フラスコ内の反応物の温度が20℃を超えないように制御した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル219部を配合して80℃まで昇温し、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物P10の不揮発分60%溶液を得た。 得られた生成物P10はNCO価=0mgNCO/g、アミン価=0mgKOH/gであった。また、生成物P10について1H-NMR分析を行った結果、生成物P10のSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素-炭素不飽和結合のモル比率は4.0であった。また、生成物P10について29Si-NMR分析を行った結果、生成物P10中のエトキシシリル基の加水分解は確認されなかった。 上記の結果から、生成物P10は、下記式(P-III)で表される化合物と下記式(P-IV)で表される化合物との混合物であり、 【0178】 【化13】 [図:0001400443000017.jpg] 【0179】 その比率は、前記式(P-III)で表される化合物/前記式(P-IV)で表される化合物=60/40(モル比)であった。 【0180】 製造例11 生成物P11の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 続いて、製造例10で得られた生成物P10の不揮発分60%溶液17部[前記式(P-III)で表される化合物が6部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。 反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(P-IV)で表される化合物の不揮発分40%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(P-IV)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(P-IV)で表される化合物=100/3(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(P-IV)で表される化合物の混合物を生成物P11と称する。 【0181】 製造例12 生成物P12の製造 還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)179部、プラクセルFA-2D(商品名、ε-カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチルアクリレート、ダイセル化学工業製)258部、酢酸イソブチル319部及びp-メトキシフェノール 1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温し、100℃で8時間反応させた。反応後、5℃まで冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン41部を1時間かけて滴下した。この際、フラスコ内の反応物の温度が20℃を超えないように制御した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル319部を配合して80℃まで昇温し、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物P12の不揮発分60%溶液を得た。 得られた生成物P12はNCO価=0mgNCO/g、アミン価=0mgKOH/gであった。また、生成物P12について1H-NMR分析を行った結果、生成物P12のSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素-炭素不飽和結合のモル比率は4.0であった。また、生成物P12について29Si-NMR分析を行った結果、生成物P12中のエトキシシリル基の加水分解は確認されなかった。 上記の結果から、生成物P12は、下記式(P-V)で表される化合物と下記式(P-VI)で表される化合物との混合物であり、 【0182】 【化14】 [図:0001400443000018.jpg] 【0183】 その比率は、前記式(P-V)で表される化合物/前記式(P-VI)で表される化合物=60/40(モル比)であった。 【0184】 製造例13 生成物P13の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。続いて、製造例12で得られた生成物(P12)の不揮発分60%溶液17部[前記式(P-V)で表される化合物が6部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(P-VI)で表される化合物の不揮発分40%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(P-VI)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(P-VI)で表される化合物=100/4(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(P-VI)で表される化合物の混合物を生成物P13と称する。 【0185】 製造例14 生成物P14の製造 還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにアロニックスM-313(東亜合成社製、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート)179部、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン38部、酢酸イソブチル145部及びp-メトキシフェノール 1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温し、100℃で8時間反応させた。反応後、エチレングリコールモノブチルエーテル145部を配合して80℃まで昇温し、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物P14の不揮発分60%溶液を得た。 得られた生成物P14はNCO価=0mgNCO/gであった。また、生成物P14について1H-NMR分析を行った結果、生成物(P14)のSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素-炭素不飽和結合のモル比率は7.7であった。また、生成物P14について29Si-NMR分析を行った結果、生成物P14中のエトキシシリル基の加水分解は確認されなかった。 上記の結果から、生成物P14は、下記式(P-VII)で表される化合物と下記式(P-VIII)で表される化合物との混合物であり、 【0186】 【化15】 [図:0001400443000019.jpg] 【0187】 その比率は、前記式(P-VII)で表される化合物/前記式(P-VIII)で表される化合物=35/65(モル比)であった。 【0188】 製造例15 生成物P15の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 続いて、製造例14で得られた生成物P14の不揮発分60%溶液17部[前記式(P-VII)で表される化合物が4部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(P-VIII)で表される化合物の不揮発分40%の混合液を得た。配合量から計算される反応性粒子と前記式(P-VIII)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(P-VIII)で表される化合物=100/3(質量比)であった。なお、本製造例で得られた反応性粒子及び前記式(P-VIII)で表される化合物の混合物を生成物P15と称する。 【0189】 比較製造例1 生成物P16の製造 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール233部を配合した後、攪拌しながら昇温した。 揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。続いて、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%分散液を得た。なお、比較製造例1で得られた反応性粒子を生成物P16と称する。 【0190】 ラジカル重合性不飽和基含有化合物(B)の製造例 製造例16 アクリル樹脂No.1溶液の製造 攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら100℃で攪拌し、この中にスチレン10部、メチルメタクリレート40部、グリシジルメタクリレート50部及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル5部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成した。その後、さらにキシレン10部及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%のアクリル樹脂No.1溶液を得た。重量平均分子量は12,000であった。 【0191】 製造例17 ラジカル重合性不飽和基含有化合物No.1溶液の製造 製造例16で得たアクリル樹脂No.1溶液を1055部(固形分580部)に、アクリル酸170部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4部、酢酸ブチル277部及びトリフェニルホスフィン0.2部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら、80℃に昇温してその温度に5時間保ち、カルボキシル基、エポキシ基が実質的に全て反応したのを確認して冷却して樹脂固形分55%のラジカル重合性不飽和基含有化合物No.1の溶液を得た。重量平均分子量が14,000であった。 【0192】 製造例18 ラジカル重合性不飽和基含有化合物No.2の製造 還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)179部、2-ヒドロキシエチルアクリレート109部、酢酸イソブチル192部及びp-メトキシフェノール1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温し、100℃で8時間反応させた。反応後、エチレングリコールモノブチルエーテル192部を配合して80℃まで昇温し、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、ラジカル重合性不飽和基含有化合物No.2の不揮発分60%溶液を得た。 【0193】 得られたラジカル重合性不飽和基含有化合物No.2はNCO価=0mgNCO/gであった。上記の結果から、ラジカル重合性不飽和基含有化合物No.2は、下記式(P-IX)で表される化合物であった。 【0194】 【化16】 [図:0001400443000020.jpg] 製造例19 ラジカル重合性不飽和基含有化合物No.3の製造 還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにデスモジュールXP2410(バイエルマテリアルサイエンス社製)50部、ジブチルスズジラウレート0.02部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部の混合物を仕込んだ。該混合物を攪拌しながら、80℃まで加熱した。続いて、混合物の温度が90℃を超えないようにしながら、2-ヒドロキシエチルアクリレート32.9部を2時間かけて滴下し、混合物を80℃で更に4時間撹拌し、1-メトキシ-2-プロパノール20.7部を加えてラジカル重合性不飽和基含有化合物No.3の不揮発分80%溶液を得た。得られたラジカル重合性不飽和基含有化合物No.3はNCO 価=0mgNCO/gであった。 【0195】 活性エネルギー線硬化組成物の製造 製造例20 活性エネルギー線硬化組成物No.1 製造例2で得られた生成物P2を30部(固形分)、製造例17で得られたラジカル重合性不飽和基含有化合物No.1溶液70.0部(固形分)、ダロキュア1173(注3)3.0部を配合し、酢酸エチルで不揮発分30%に希釈した後に攪拌し、活性エネルギー線硬化組成物No.1を製造した。 【0196】 製造例21~36 活性エネルギー線硬化組成物No.2~No.17 実施例1において、各成分及び配合量を表1及び表2に記載した各成分及び配合量に代えた以外は、製造例20と同様にして製造例21~36の活性エネルギー線硬化組成物No.2~No.17を製造した。 【0197】 【表1】 [図:0001400443000021.jpg] 【0198】 【表2】 [図:0001400443000022.jpg] 【0199】 (注1)EBECRYL1290:ダイセル・サイテック株式会社製、商品名、ラジカル重合性不飽和基含有ポリウレタン樹脂 (注2)KAYARAD DPHA:日本化薬株式会社製、商品名、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂 (注3)ダロキュア1173:メルクジャパン社製、商品名、光重合開始剤。 【0200】 比較製造例1~4 製造例20において、表3に記載した各成分及び配合量に代えた以外は、製造例20と同様にして、比較製造例1~4の活性エネルギー線硬化組成物No.18~21を製造した。 【0201】 【表3】 [図:0001400443000023.jpg] 【0202】 [塗装フィルムの作成] 実施例1 易接着処理された厚さ125μmの2軸延伸PETフィルムを基材とし、製造例20で得た活性エネルギー線硬化組成物No.1を乾燥膜厚5μmとなるように塗布し、乾燥温度80℃で1分間プレヒートした後、高圧水銀灯を用い500mJ/cm2の照射量で活性エネルギー線を照射して保護層を形成し、塗装フィルムNo.1を得た。得られた塗装フィルムNo.1について、下記の試験方法に従って試験に供した結果を表4に示す。 【0203】 実施例2~17 表4及び表5に示す活性エネルギー線硬化組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、塗装フィルムNo.2~No.17を作成した。塗装フィルムNo.2~No.17について、下記の試験方法に従って試験に供した結果を表4及び表5に併せて示す。 【0204】 【表4】 [図:0001400443000024.jpg] 【0205】 【表5】 [図:0001400443000025.jpg] 」 (イ)甲2-1発明 甲2-1の製造例36の活性エネルギー線硬化組成物No.17に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「(A)生成物P2(還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換し、続いて、生成物P1(下記式(P-I)で表される化合物と下記式(P-II)で表される化合物との混合物であり、 【化13】 (P-I) [図:0001400443000026.jpg] (P-II) [図:0001400443000027.jpg] その比率は、前記式(P-I)で表される化合物/前記式(P-II)で表される化合物=60/40(モル比)であった。)の不揮発分60%溶液17部[前記式(P-I)で表される化合物が6部]を添加し、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させ反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子及び前記式(P-II)で表される化合物の不揮発分40%の混合液(配合量から計算される反応性粒子と前記式(P-II)で表される化合物との比率は、反応性粒子/前記式(P-II)で表される化合物=100/3(質量比)であった。))30.0部、 (B)KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製、商品名、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂)70.0部、 (C)光重合開始剤:ダロキュア1173(メルクジャパン社製)3.0部 からなる活性エネルギー線硬化組成物No.17。」(以下、「甲2-1発明1」という。) イ 甲2-2に記載された事項 「【0123】 塗装フィルム及び加飾成形体の作製 実施例25~48及び比較例16~30 易接着処理された厚さ125μmの2軸延伸PETフィルムを基材とし、その一方の面に、実施例1~24及び比較例1~15で得た各活性エネルギー線硬化性組成物No.1~39を表3及び表4に示すように選択して乾燥膜厚5μmとなるようにそれぞれ塗布し、乾燥温度80℃で1分間プレヒートした後、活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した面とは反対の基材面に加飾層としてアクリル系インキ、接着層としてアクリル樹脂系接着剤を順次塗布し80℃で2分間乾燥して塗装フィルムをそれぞれ作製した。」 ウ 甲2-3に記載された事項 「【0037】 実施例2~10 実施例1で用いた材料の他、(A)として及び4EG-A(商品名:共栄社化学社製、PEG200#ジアクリレート、N=2)を、(b-1)としてPGM-AC-4130Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径60nm、SiO2量30%、PGM分散)を、(b-2)として及びMEK-ST-L(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径60nm、SiO2量30%、MEK分散)を、バインダーとしてDPHA(商品名:日本化薬社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとペンタアクリレートの混合物)を用い、固形分が30%となるよう希釈溶剤としてMIBKを配合し、表1記載の配合で均一に溶解分散するまで撹拌してHC樹脂組成物である実施例2~10を調整した。」 エ 甲2-4に記載された事項 「【0029】 <コロイダルシリカ粒子> 次に、本発明の特徴である平均粒径が25~100nmの中実(中空ではないの意味である)のコロイダルシリカ粒子について説明する。本発明においては、中実のコロイダルシリカ粒子によって耐スクラッチ性が大幅に向上する。 【0030】 コロイダルシリカ粒子の平均粒径は25~100nmである。25nm未満であると耐スクラッチ性において好ましくなく、100nmを超えると透明性が損なわれるため好ましくない。 【0031】 このようなコロイダルシリカ粒子は市販品を用いることができ、たとえば日産化学工業社製のIPA-ST-L、IPA-ST、IPA-ST-M、IPA-ST-MS、MA-ST-M、スノーテックスOL、スノーテックスO、MA-ST-L、メタノールシリカゾル、CIKナノテック社製のSIRW30WT%-F12、SIRW30WT%-F11、SIRW30WT%-H05、SIRW30WT%-H07などが例示できる。」 オ 甲2-5に記載された事項 「【0076】 (*11)IRGACURE 651:光重合開始剤(a2)、商品名、BASF社製、ベンゾイン系開始剤、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン (*12)IRGACURE TPO:光重合開始剤(a2)、商品名、BASF社製、アシルフォスフィンオキサイド系開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド。 (*13)IRGACURE 184:光重合開始剤(a2)、商品名、BASF社製、α-ヒドロキシアセトフェノン系開始剤、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、 (*14)DAROCURE 1173:光重合開始剤(a2)、商品名、BASF社製、α-ヒドロキシアセトフェノン系開始剤、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、 (*15)BYK-354:BYK-354:商品名、ビックケミー・ジャパン社製、アクリル系表面調整剤、固形分含有率51質量% (*16)TINUVINE 1130:商品名、BASF社製、紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系、固形分含有率88質量%、 (*17)HOSTAVINE 3052:商品名、クラリアントジャパン社製、ヒンダードピペリジン系光安定剤。」 カ 甲2-6に記載された事項 「【0070】 なお、表2中の化合物の記号は次のとおりである。 DAROCUR1173:BASF社製 2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン IRGACURE184:BASF社製 1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン CPI-100P:サンアプロ(株)製 トリアリールスルホニウム・PF6塩のプロピレンカーボネート溶液 CPI-101A:サンアプロ(株)製 トリアリールスルホニウム・SbF6塩のプロピレンカーボネート溶液 MIBK-ST:日産化学工業(株)製 シリカ微粒子のMIBK分散液(有効成分30%) MIBK-SD:日産化学工業(株)製 シリカ微粒子のMIBK分散液(有効成分30% 重合性基変性物)。」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲2-1発明1とを対比する。 (ア)甲2-1発明1の「(A)生成物P2」中に含まれる「式(P-II)で表される化合物(当審注:化学式は省略する。以下、同様。)」は、アクリル基を3個有し、「イソシアヌレート環構造」を有するものであるから、本件特許発明1の「イソシアヌレート構造含有ポリ(メタ)アクリレート」に相当する。 また、甲2-1発明1の「KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社製、商品名、ラジカル重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂)」は、甲2-3の「DPHA(商品名:日本化薬社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとペンタアクリレートの混合物)」(段落【0037】)との記載を参酌すると、本件特許発明1の「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」である「ポリ(メタ)アクリレート」に相当するといえる。 (イ)甲2-1発明1の「(C)光重合開始剤:ダロキュア1173」は、甲2-5(段落【0076】)、甲2-6(段落【0070】)より、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンでα-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基を含有するものであるから、本件特許発明1の「α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤」に相当する。 そして、その含有量は、質量%に換算すると固形分100質量%に対し2.9質量%(=(3/(50+50+3))×100)で、両者は本件特許発明1の「固形分100質量%に対し1~3質量%である」範囲と重複一致する。 (ウ)甲2-1発明1の「(A)生成物P2」は、コロイダルシリカ微粒子に、「3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン」及び、「イソシアヌレート環構造」を有し、末端に「アクリロイルオキシ基」及び「トリエトキシシリル基」を有する式(P-I)(当審注:化学式は省略する。以下、同様。)で表される「加水分解性シラン」とを脱水縮合反応させて得られる「反応性粒子」を含有するものである。「3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン」は、「式U1で表される化合物」に相当するものの、式(P-I)で表される「加水分解性シラン」は、「式U1で表される化合物」及び「式Sで表される化合物」には相当しない。 また、「(A)生成物P2」のシリカ微粒子は、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)を使用しているところ、甲2-4(段落【0029】~【0031】)より、シリカ粒子が「中実」粒子であるといえる。 してみると、甲2-1発明1の「(A)生成物P2」中の「反応性粒子」は、本件特許発明1の「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」である限りにおいて 、本件特許発明1の反応物が特定された「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」に相当する。 (エ)甲2-1発明1の「活性エネルギー線硬化組成物No.17」は、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。 <一致点> 「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子、 ポリ(メタ)アクリレート並びに α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、 前記ポリ(メタ)アクリレートは、(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレート構造含有ポリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上であり、 前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し2.9質量%である、 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」 <相違点2-1> (メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子が、本件特許発明1は「中実シリカ粒子と下記式Sで表される化合物との反応物及び/又は中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物」であるのに対し、甲2-1発明1は「コロイダルシリカ微粒子と、「3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン」及び「式(P-I)で表される加水分解性シラン」とを脱水縮合反応させて得られた反応性粒子」である点 そこで、上記<相違点2-1>について検討する。 本件特許発明1は、「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」が、「中実シリカ粒子と下記式Sで表される化合物との反応物」及び/又は「中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物」であると特定されていることから、「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」は、「中実シリカ粒子と下記式Sで表される化合物とを含む化合物との反応物」及び/又は「中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物とを含む化合物との反応物」ではなく、「中実シリカ粒子と下記式Sで表される化合物のみからなる化合物との反応物」及び/又は「中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物のみからなる化合物との反応物」と解するのが相当である。 そうすると、当該相違点は実質的な相違点である。 ついで、当該相違点の容易想到性について検討する。 甲2-1は、「フィルム基材上に、下記特徴の活性エネルギー線硬化組成物による保護層を有する塗装フィルム。 活性エネルギー線硬化組成物:シリカ微粒子(a-1)と分子内に(メタ)アクリロイルオキシ基及びイソシアヌレート環構造を有する加水分解性シラン(a-2)とを反応させて得られる反応性粒子(A)、ラジカル重合性不飽和基含有化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含有する」(【請求項1】)に関する事項しか記載されていない。 すなわち、甲2-1には、シリカ微粒子と反応させる化合物について、(メタ)アクリロイルオキシ基及び「イソシアヌレート環構造」を有する加水分解性シランを用いることしか記載されておらず、当該加水分解性シランを使用せず、「下記式Sで表される化合物」及び/又は「下記式U1で表される化合物」のみを使用することについては記載も示唆されていない。 そうすると、シリカ微粒子と反応させる化合物として、(メタ)アクリロイルオキシ基及び「イソシアヌレート環構造」を有する加水分解性シランを採用せずに、「下記式Sで表される化合物」及び/又は「下記式U1で表される化合物」のみとする動機付けはない。 よって、当該相違点は、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 そして、本件特許発明1は「良好な耐擦傷性及び鉛筆硬度を有する硬化物を製造できる。」(本件特許明細書の段落【0008】)という効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明1は、甲2-1発明1、すなわち甲2-1に記載された発明でもないし、また、甲2-1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2、4及び5は、甲2-1に記載された発明ではないし、また、本件特許発明2ないし5は、甲2-1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)申立人の主張について 申立人2は、令和5年3月1日付けの意見書において、「甲第1号証には、以下の記載がある。すなわち生成物P2はシリカ微粒子と、「メタクリロイルオキシ基」を有する3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランとを反応させた後、さらにイソシアヌレート環構造と「アクリロイルオキシ基」を有する(P-1)で表される加水分解性シランを反応させた反応性粒子である。・・・従って、甲1発明は、本件訂正発明1における全ての構成要件を具備するから、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明である。また本件訂正発明1は、甲第1号証を主たる証拠として容易想到である。」(第5ページ第7行~第7ページ第15行)と主張している。 しかしながら、上記(2)アで説示したとおり、両者は、上記<相違点2-1-1>の点で実質的に相違しており、本件特許発明1は、甲2-1に記載された発明でもないし、また、甲2-1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、申立人2の主張は首肯できない。 (4)取消理由2-1、申立理由2-2及び申立理由2-3についてのむすび したがって、本件特許発明1、2、4及び5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1ないし5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、取消理由2-1、申立理由2-2及び申立理由2-3によっては取り消すことはできない。 4 取消理由2-2(甲2-2に基づく新規性・進歩性)、申立理由2-4(甲2-2に基づく新規性)及び申立理由2-5(甲2-2に基づく進歩性)について (1)甲号証に記載された事項等 ア 甲2-2に記載された事項及び甲2-2発明 (ア)甲2-2に記載された事項(下線は、当審で付与したもののである。以下、同様。) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (メタ)アクリロイル基を有し、且つ重量平均分子量が10,000~100,000であるアクリル樹脂(A)、シリカ微粒子(b-1)と分子内に(メタ)アクリロイル基を有する加水分解性シラン(b-2)とを反応させて得られる反応性粒子(B)、分子内に水酸基を有し、且つ重量平均分子量が100~1,000で溶解性パラメータ値が10以上である(メタ)アクリロイル基含有化合物 (C)及び光重合開始剤(D)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、 前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計固形分100質量部に対して、成分(A)の固形分含有量が10~80質量部、成分(B)の固形分含有量が10~85質量部、成分(C)の固形分含有量が1~10質量部、及び成分(D)の含有量が0.1~5質量部、 であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。」 「【0056】 本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における反応性粒子(B)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計固形分100質量部に対して、10~85質量部であり、より好ましくは15~80質量部である。この範囲外では、硬化膜の耐擦り傷性が低下したり、透明性が損なわれるので好ましくない。」 「【0065】 光重合開始剤(D)の使用量は、前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計固形分100質量部に対して0.5~5質量部、好ましくは1~4.5質量部の範囲である。」 「【実施例】 【0081】 以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は、別記しない限り、それぞれ、「質量部」及び「質量%」を示す。 【0082】 アクリル樹脂(A)の製造 製造例1 攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら100℃で攪拌し、この中にスチレン10部、メチルメタクリレート40部、グリシジルメタクリレート50部及び2,2´-アゾビスイソブチロニトリル5部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成した。その後、さらにキシレン10部及び2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%のアクリル樹脂溶液を得た。重量平均分子量は12,000であった。 【0083】 上記で得たアクリル樹脂溶液1055部(固形分580部)に、アクリル酸170部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4部、酢酸ブチル277部及びトリフェニルホスフィン0.2部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら、80℃に昇温してその温度に5時間保ち、カルボキシル基、エポキシ基が実質的に全て反応したのを確認して冷却して不揮発分55%のアクリル樹脂(A-1)溶液を得た。このアクリル樹脂(A-1)の重量平均分子量は14,000であった。 【0084】 製造例2 攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら100℃で攪拌し、この中にスチレン10部、メチルメタクリレート40部、グリシジルメタクリレート50部及び2,2´-アゾビスイソブチロニトリル1.5部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成した。その後、さらにキシレン10部及び2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%のアクリル樹脂溶液を得た。重量平均分子量は35,000であった。 【0085】 上記で得たアクリル樹脂溶液1055部(固形分580部)に、アクリル酸170部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4部、酢酸ブチル277部及びトリフェニルホスフィン0.2部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら、80℃に昇温してその温度に5時間保ち、カルボキシル基、エポキシ基が実質的に全て反応したのを確認して冷却して不揮発分55%のアクリル樹脂(A-2)溶液を得た。このアクリル樹脂(A-2)の重量平均分子量は40,000であった。 【0086】 製造例3 攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら100℃で攪拌し、この中にスチレン10部、メチルメタクリレート40部、グリシジルメタクリレート50部及び2,2´-アゾビスイソブチロニトリル8.0部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成した。その後、さらにキシレン10部及び2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%のアクリル樹脂溶液を得た。重量平均分子量は7,000であった。 【0087】 上記で得たアクリル樹脂溶液1055部(固形分580部)に、アクリル酸170部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4部、酢酸ブチル277部及びトリフェニルホスフィン0.2部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら、80℃に昇温してその温度に5時間保ち、カルボキシル基、エポキシ基が実質的に全て反応したのを確認して冷却して不揮発分55%のアクリル樹脂(A-3)溶液を得た。このアクリル樹脂(A-3)の重量平均分子量は8,000であった。 【0088】 反応性粒子(B)の製造 製造例4 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0089】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の分散液P1を得た。 【0090】 製造例5 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;70~100nm、商品名;IPA-ST―ZL、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0091】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の分散液P2を得た。 【0092】 製造例6 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)250部及びコロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;70~100nm、商品名;IPA-ST―ZL、日産化学工業社製)83部(シリカ微粒子量は合計で100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0093】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の分散液P3を得た。 【0094】 製造例7 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「アロニックスM-305」(ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、重量平均分子量300、溶解性パラメータ11.0、東亞合成社製)10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0095】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P4を得た。 【0096】 製造例8 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「NKエステル701A」(2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、重量平均分子量214、溶解性パラメータ12.2、新中村化学工業社製)10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0097】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P5を得た。 【0098】 製造例9 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;70~100nm、商品名;IPA-ST―ZL、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「アロニックスM-305」10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0099】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P6を得た。 【0100】 製造例10 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;70~100nm、商品名;IPA-ST―ZL、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「NKエステル701A」10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0101】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P7を得た。 【0102】 製造例11 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)250部及びコロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;70~100nm、商品名;IPA-ST―ZL、日産化学工業社製)83部(シリカ微粒子の合計量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「アロニックスM-305」10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0103】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P8を得た。 【0104】 製造例12 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)250部及びコロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;70~100nm、商品名;IPA-ST―ZL、日産化学工業社製)83部(シリカ微粒子の合計量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「NKエステル701A」10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0105】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P9を得た。 【0106】 製造例13 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「アロニックスM-309」(トリメチロールプロパントリアクリレート、重量平均分子量310、溶解性パラメータ10.2、東亞合成社製)10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0107】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P10を得た。 【0108】 製造例14 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「EBECRYL112」(脂肪族エポキシアクリレート、重量平均分子量356、溶解性パラメータ9.0、ダイセルサイテック社製)10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0109】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P11を得た。 【0110】 製造例15 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;70~100nm、商品名;IPA-ST―ZL、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「アロニックスM-309」10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0111】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P12を得た。 【0112】 製造例16 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;70~100nm、商品名;IPA-ST―ZL、日産化学工業社製)333部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「EBECRYL112」10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0113】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P13を得た。 【0114】 製造例17 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)250部及びコロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;70~100nm、商品名;IPA-ST―ZL、日産化学工業社製)83部(シリカ微粒子の合計量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「アロニックスM-309」10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0115】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P14を得た。 【0116】 製造例18 還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)250部及びコロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;70~100nm、商品名;IPA-ST―ZL、日産化学工業社製)83部(シリカ微粒子の合計量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「EBECRYL112」10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。 【0117】 続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P15を得た。 【0118】 活性エネルギー線硬化性組成物の作成 実施例1 製造例1で得られたアクリル樹脂(A-1)溶液を固形分量で70部、製造例4で得られた反応性粒子の分散液P1を固形分量で30部、「アロニックスM-305」を固形分量で2.5部、「ダロキュア1173」(メルクジャパン社製、商品名、光重合開始剤)3.0部を配合し、酢酸エチルで不揮発分30%に希釈した後に攪拌し、活性エネルギー線硬化性組成物No.1を得た。 【0119】 実施例2~24及び比較例1~15 実施例1において、各成分及び配合量を表1及び表2に記載した各成分及び配合量に代えた以外は、実施例1と同様にしての活性エネルギー線硬化性組成物No.2~No.39を得た。 【0120】 尚、表1及び表2の配合量は、固形分量である。また表中の(*1)は下記の通りである。 (*1)「紫光UV-1700B」:日本合成化学工業社製、ウレタンアクリレート 【0121】 【表1】 [図:0001400443000028.jpg] 【0122】 【表2】 [図:0001400443000029.jpg] 【0123】 塗装フィルム及び加飾成形体の作製 実施例25~48及び比較例16~30 易接着処理された厚さ125μmの2軸延伸PETフィルムを基材とし、その一方の面に、実施例1~24及び比較例1~15で得た各活性エネルギー線硬化性組成物No.1~39を表3及び表4に示すように選択して乾燥膜厚5μmとなるようにそれぞれ塗布し、乾燥温度80℃で1分間プレヒートした後、活性エネルギー線硬化性組成物を塗布した面とは反対の基材面に加飾層としてアクリル系インキ、接着層としてアクリル樹脂系接着剤を順次塗布し80℃で2分間乾燥して塗装フィルムをそれぞれ作製した。 【0124】 得られた実施例25~48及び比較例16~30の各塗装フィルムについて、下記の試験方法に従って性能試験に供した結果を表3及び表4に併せて示す。尚、試験に供する各加飾成形体は、上記の各塗装フィルムの接着層をABS板の表面に合わせて、各塗装フィルムをABS板へ60℃、0.1MPa、1.0m/minの条件にてラミネートした後、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の照射量で活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性組成物による保護層を硬化して得た。」 (イ)甲2-2発明 甲2-2の実施例1の活性エネルギー線硬化組成物No.14に着目し、甲2-2の請求項1にならって整理すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「(メタ)アクリロイル基を有し、且つ重量平均分子量が10,000~100,000であるアクリル樹脂(A):攪拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下装置を備えた反応容器に、キシレン80部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら100℃で攪拌し、この中にスチレン10部、メチルメタクリレート40部、グリシジルメタクリレート50部及び2,2´-アゾビスイソブチロニトリル5部の混合物を3時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で2時間熟成し、その後、さらにキシレン10部及び2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、不揮発分55%のアクリル樹脂溶液を得(重量平均分子量は12,000であった。)、得られたアクリル樹脂溶液1055部(固形分580部)に、アクリル酸170部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.4部、酢酸ブチル277部及びトリフェニルホスフィン0.2部を仕込み、反応容器内に空気を吹き込みながら、80℃に昇温してその温度に5時間保ち、カルボキシル基、エポキシ基が実質的に全て反応したのを確認して冷却して得られた不揮発分55%のアクリル樹脂(A-1)溶液(重量平均分子量は14,000) 70.0部シリカ微粒子(b-1)と分子内に(メタ)アクリロイル基を有する加水分解性シラン(b-2)とを反応させて得られる反応性粒子(B):還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製)250部及びコロイダルシリカ(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;70~100nm、商品名;IPA-ST―ZL、日産化学工業社製)83部(シリカ微粒子の合計量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10部、「アロニックスM-305」10部、p-メトキシフェノール0.2部及びイソプロパノール227部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換し、続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリドを0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換して得られた、反応性粒子の不揮発分40%の混合液P8 30.0部分子内に水酸基を有し、且つ重量平均分子量が100~1,000で溶解性パラメータ値が10以上である(メタ)アクリロイル基含有化合物(C):アロニックスM305 2.5部及び光重合開始剤(D):ダロキュア1173 3.0部を含有する活性エネルギー線硬化性組成物No.14。」(以下、「甲2-2発明1」という。) イ 甲2-8に記載された事項 「【0059】 ○製造例1〔(A)成分の製造(HDI-M305)〕 攪拌装置及び空気の吹き込み管を備えた0.5Lセパラブルフラスコに、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETri)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETet)の混合物(東亞合成(株)製アロニックスM-305。以下、「M-305」という。〕159.2g(PETri0.3モルとPETet0.2モル含有)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(以下、「BHT」という)0.092g、ジブチルスズジラウレート(以下、「DBTL」という)0.055gを仕込み、液温を70~75℃で攪拌 しながら、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」という)25.2g(0.15モル)を滴下した。 滴下終了後、80℃で3時間攪拌し、反応生成物のIR(赤外吸収)分析でイソシアネート基が消失していることを確認して反応を終了した。以下、この反応生成物をHDI-M305という。」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲2-2発明1とを対比する。 (ア)甲2-2発明1の「アクリル樹脂(A-1)」は、モノマー成分が、スチレン、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートであるアクリル樹脂にアクリル酸を反応させたもので、アクリル基を複数有するものであるから、本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」に相当する。 また、甲2-2発明1の「アロニックスM305」は、甲2-8(段落【0059】)より、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETri)とペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETet)の混合物であるから、、本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」である「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」に相当する。 (イ)甲2-2発明1の「光重合開始剤(D):ダロキュア1173」は、甲2-5(段落【0076】)、甲2-6(段落【0070】)によると、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンであって、α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基を含有するものであるから、本件特許発明1の「α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤」に相当し、その含有量は、質量%に換算すると固形分100質量%に対し2.9質量%(=(3.0/(50.0+48.0+2.0+3.0))×100)であるから、甲2-2発明1は本件特許発明1の「固形分100質量%に対し1~3質量%である」との範囲で重複一致する。 (ウ)甲2-2発明1の「混合液P8」は、シリカ微粒子と3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランとを反応させて得られる「反応性粒子」を含有するものであり、この「反応性粒子」は、「下記式U1で表される化合物との反応物」である「メタクリル基」を含有する「シリカ粒子」といえる。 また、「混合液P8」中の「反応性粒子」であるシリカ微粒子は、「IPA-ST」及び「IPA-ST―ZL」(いずれも日産化学工業社製)を使用しているところ、甲2-4(上記3(1)ウの段落【0029】~【0031】)より、シリカ微粒子が中実粒子であると解される。 してみると、甲2-2発明1の「混合液P8」中の「反応性粒子」は、本件特許発明1の中実「シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物」である「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」に相当するといえる。 (エ)甲2-2発明1の「活性エネルギー線硬化組成物No.14」は、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。 <一致点> 「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子、 ポリ(メタ)アクリレート並びに α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、 前記(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子は、中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物であり、 前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し2.9質量%である、 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」 <相違点2-2> ポリ(メタ)アクリレートが、本件特許発明1は「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリンポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレート構造含有ポリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上」であるのに対し、甲2-2発明1は「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」である「アロニックスM305」に加え、モノマー成分が、スチレン、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートであるアクリル樹脂にアクリル酸を反応させた「アクリル樹脂(A-1)」である点 そこで、上記<相違点2-2>について検討する。 上記1(2)アでも説示したように、本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」は当該特定の選択肢のものに限定され、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、当該特定の選択肢以外の「ポリ(メタ)アクリレート」を含むものは本件特許発明1の範囲外であると解釈するのが相当である。 そうすると、当該相違点は実質的な相違点である。 ついで、当該相違点の容易想到性について検討する。 甲2-2には、「(メタ)アクリロイル基を有し、且つ重量平均分子量が10,000~100,000であるアクリル樹脂(A)、シリカ微粒子(b-1)と分子内に(メタ)アクリロイル基を有する加水分解性シラン(b-2)とを反応させて得られる反応性粒子(B)、分子内に水酸基を有し、且つ重量平均分子量が100~1,000で溶解性パラメータ値が10以上である(メタ)アクリロイル基含有化合物(C)及び光重合開始剤(D)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、 前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計固形分100質量部に対して、成分(A)の固形分含有量が10~80質量部、成分(B)の固形分含有量が10~85質量部、成分(C)の固形分含有量が1~10質量部、及び成分(D)の含有量が0.1~5質量部、 であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。」(【請求項1】)に関する事項が記載されている。 すなわち、活性エネルギー線硬化性組成物として、「(メタ)アクリロイル基を有し、且つ重量平均分子量が10,000~100,000であるアクリル樹脂(A)」を含有するものは記載されているものの、当該アクリル樹脂(A)を含有しないものは記載も示唆されていない。 そうすると、甲2-2発明1において、モノマー成分が、スチレン、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートであるアクリル樹脂にアクリル酸を反応させた「アクリル樹脂(A-1)」を使用せず、「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」である「アロニックスM305」のみとする動機付けはない。 よって、当該相違点は当業者が容易に想到し得たものともいえない。 そして、本件特許発明1は「良好な耐擦傷性及び鉛筆硬度を有する硬化物を製造できる。」(本件特許明細書の段落【0008】)という効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明1は、甲2-2発明1、すなわち甲2-2に記載された発明でもないし、また、甲2-2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2、4及び5は、甲2-2に記載された発明ではないし、また、本件特許発明2ないし5は、甲2-2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)申立人の主張について 申立人2は、令和5年3月1日付けの意見書において、「・・・甲第2号証には以下の記載がある。すなわちアロニックスM305は、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物であり、本件訂正発明1における(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートに相当する。・・・ここで活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子、ポリ(メタ)アクリレート及びα-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、」と規定されている通り、ポリ(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリロイル基などを有する化合物を含有することを許容している。そうすると、甲2発明の具体例である実施例1及び実施例14の組成物における、アクリル基を複数有するアクリル樹脂(A-1)のような化合物を包含する技術範囲を包含するものと認められる。よって、特許権者による上記主張は失当である。」(第9ページ下から第10行~第11ページ下から第4行) しかしながら、上記(2)でも説示したように、本件特許発明1は、「ポリ(メタ)アクリレート」が特定の選択肢のものに限定されているところ、甲2-2発明1には、「ポリ(メタ)アクリレート」として上記選択肢以外の「アクリル樹脂(A-1)」が包含されているのであるから、当該「アクリル樹脂(A-1)」を含有する点は実質的な相違点となる。 よって、申立人2の主張は首肯できない。 (4)取消理由2-2、申立理由2-4及び申立理由2-5についてのむすび したがって、本件特許発明1、2、4及び5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1ないし5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、取消理由2-2、申立理由2-4及び申立理由2-5によっては取り消すことはできない。 5 取消理由2-3及び申立理由2-6(甲2-3に基づく拡大先願)について (1)甲号証に記載された事項等 ア 甲2-3に記載された事項及び甲2-3先願発明 (ア)甲2-3で示される特願2020-32693号の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲(以下、「先願明細書」という。)に記載された事項(下線は、当審で付与したもののである。以下、同様。) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 エチレングリコール骨格多官能(メタ)アクリレート(A)と、表面被覆されたナノシリカ(B)と、光重合開始剤(C)と、を含み、前記(B)の表面被覆がアクリロイル基被覆(b-1)およびアルコキシ基被覆(b-2)の2種類を含むことを特徴とするハードコート樹脂組成物。 【請求項2】 更に平均粒径が0.5~5μmの疎水性シリカ(D)を含むことを特徴とする請求項1記載のハードコート樹脂組成物。 【請求項3】 請求項1または2いずれか記載のハードコート樹脂組成物の硬化層を有することを特徴とするハードコートフィルム。 【請求項4】 ハードコート層上に更に反射防止層を有することを特徴とする請求項3記載のハードコートフィルム。」 「【0021】 前記(b-1)の(B)における配合比率は25~85重量%が好ましく、30~80重量%が更に好ましい。25重量%以上とすることで十分な鉛筆硬度を確保でき、85重量%以下とすることで画像のちらつきを抑えることが可能となる。市販の(b-1)としてはPGM-AC-2140Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm)及びPGM-AC-4130Y(商品名:同社製、平均粒子径60nm)などがある。」 「【0025】 前記(C)の光硬化樹脂成分100重量部に対する比率は、5~20重量部が好ましく、8~18重量部が更に好ましい。5重量部以上とすることで充分な硬化性が発現し、20重量部以下とすることで過剰添加とならず塗膜の黄変や保存性低下を防ぐことができる。」 「【0036】 実施例1 (A)として9EG-A(商品名:共栄社化学社製、PEG400#ジアクリレート、N=4)を、(b-1)としてPGM-AC-2140Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量42%、PGM分散)を、(b-2)としてMEK-ST(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量30%、MEK分散)を、(C)としてOmnirad2959(商品名:iGM社製)を、(D)としてSS-50F(商品名:東ソー社製、疎水性シリカ、平均粒子径2.5μm)を、バインダーとしてウレタンアクリレート(6官能)を用い、固形分が30%となるよう希釈溶剤としてMIBKを配合し、表1記載の配合で均一に溶解分散するまで撹拌してHC樹脂組成物である実施例1を調整した。 【0037】 実施例2~10 実施例1で用いた材料の他、(A)として及び4EG-A(商品名:共栄社化学社製、PEG200#ジアクリレート、N=2)を、(b-1)としてPGM-AC-4130Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径60nm、SiO2量30%、PGM分散)を、(b-2)として及びMEK-ST-L(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径60nm、SiO2量30%、MEK分散)を、バインダーとしてDPHA(商品名:日本化薬社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとペンタアクリレートの混合物)を用い、固形分が30%となるよう希釈溶剤としてMIBKを配合し、表1記載の配合で均一に溶解分散するまで撹拌してHC樹脂組成物である実施例2~10を調整した。 【0038】 比較例1~5 実施例で用いた材料の他、表面未処理ナノシリカとしてPGM-ST(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量30%、PGM分散)を用い、固形分が30%となるよう希釈溶剤としてMIBKを配合し、表1記載の配合で均一に溶解分散するまで撹拌してHC樹脂組成物である比較例1~5を調整した。 【0039】 HCフィルムの調整 A4サイズのポリエチレンテレフタレートフィルムU403(商品名:東レ社製、100μm、両面易接着層有り)に硬化時の膜厚が3μmとなるよう塗布し、恒温槽で80℃×1分乾燥後、フュージョンUVシステムジャパン製の無電極UV照射装置F300S/LC-6Bを用い、Hバルブで出力1200mW/cm2、積算光量200mJ/cm2で紫外線硬化させた。 【0040】 反射防止フィルムの調整 上記で得られた実施例1のHCフィルムの上にP-5062(商品名:日揮触媒化成社製、低屈折率アクリル系コーティング剤)を膜厚が100nmとなるように塗布し、恒温槽で80℃×1分乾燥後、同上のUV照射装置を用い、Hバルブで出力1200mW/cm2、積算光量200mJ/cm2で紫外線硬化させた。」 【0041】 表1 [図:0001400443000030.jpg] 【0042】 評価方法は以下の通りとした。 【0043】 塗膜外観:上記で調整したHCフィルムの外観を目視で確認し、フラットで綺麗な仕上がりを○、表面ブツ等の異常がある場合を×とした。 【0044】 ヘイズ(Hz):JIS K7361-1に準拠し、東洋精機製作所社製のHaze-GARD2を用い測定した。 【0045】 カール:サンプルサイズ100mm×100mmのフィルムを平面板の上に載せ、4つの端の浮きの平均値を測定し、2mm以下を○、2mm超を×とした。 【0046】 鉛筆硬度:JIS K5600-5-4(1999年版)に準拠し、東洋精機製作所製の鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P)を用いて750g荷重で測定し、3H以上を○、3H未満を×とした。 【0047】 高精細性:iPad(登録商標:アップル社製)に表示した緑色画面上にハードコートフィルムを配置し、目視にてチラツキが無い場合を○、ある場合を×とした。 【0048】 最低反射率:塗工面とは反対面を紙やすりで擦り傷を付け、黒色顔料マーカーで塗りつぶし、更に黒色PETを貼り合せ反対面側の反射率を0%とする。その後HC面側を分光光度計にて380nm~780nmの範囲で1nm毎に反射率をプロットし、最低の反射率を測定した。 【0049】 評価結果 [図:0001400443000031.jpg] 【0050】 実施例は塗膜外観、カール、鉛筆硬度、高精細性すべての面で問題はなく良好であった。またHC層上に低屈折率層を設けることで、最低反射率を低減でき、反射防止層を形成することができた。 【0051】 一方、(b-2)を抜いた比較例1はちらつき感があると共にカールが大きく、(b-1)及び(b-2)の代わりに未処理ナノシリカを用いた比較例2及び4はブツが発生して塗膜外観が劣り、(b-1)を抜いた比較例3は鉛筆硬度が劣り、(A)を抜いた比較例5はカールが大きく、いずれも本願発明に適さないものであった。」 (イ)甲2-3先願発明 先願明細書の実施例2について、甲2-3の請求項2にならって整理すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「エチレングリコール骨格多官能(メタ)アクリレート(A):9EG-A(商品名:共栄社化学社製、PEG400#ジアクリレート、N=4) 5.0部と 、 表面被覆されたナノシリカ(B)と、 光重合開始剤(C):Omnirad2959(商品名:iGM社製) 1.5部と、 疎水性シリカ(D):SS-50F(商品名:東ソー社製、疎水性シリカ、平均粒子径2.5μm)0.6部 を含み、 前記(B)の表面被覆がアクリロイル基被覆(b-1):PGM-AC-2140Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量42%、PGM分散)70.2部およびアルコキシ基被覆(b-2):MEK-ST(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量30%、MEK分散)36.7部 の2種類を含み、 バインダー:ウレタンアクリレート(6官能)5.6部 を含み、固形分が30%となるよう希釈溶剤としてMIBKを配合したハードコート樹脂組成物。」(以下、「甲2-3先願実施例2発明1」という。) また、先願明細書の比較例5に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「表面被覆されたナノシリカ(B)と、 光重合開始剤(C):Omnirad2959(商品名:iGM社製) 1.5部と、 疎水性シリカ(D):SS-50F(商品名:東ソー社製、疎水性シリカ、平均粒子径2.5μm)0.6部 を含み、 前記(B)の表面被覆がアクリロイル基被覆(b-1):PGM-AC-2140Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量42%、PGM分散)23.4部およびアルコキシ基被覆(b-2):MEK-ST(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量30%、MEK分散)36.7部 の2種類を含み、 バインダー:DPHA(商品名:日本化薬社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとペンタアクリレートの混合物)10.0部 を含み、固形分が30%となるよう希釈溶剤としてMIBKを配合したハードコート樹脂組成物。」(以下、「甲2-3先願比較例5発明1」という。) イ 甲2-9に記載された事項 「[0024] また、表面修飾粒子は、中空粒子であってもよく、中実粒子であってもよい。 中空粒子は、粒子の内部に空洞が存在する粒子をいう。中空粒子は、粒子が、内部の空洞と、空洞を包囲する外殻とからなる構造であってもよい。また、中空粒子は、粒子の内部に空洞が複数存在する構造であってもよい。 中実粒子は、粒子の内部に空洞が実質的に存在しない粒子をいう。 中空粒子は、空隙率が3%以上であるのが好ましく、中実粒子は、空隙率が3%未満であるのが好ましい。 表面修飾粒子は、本発明の効果がより優れる点から、中空粒子であるのが好ましい。 中空粒子は、内部に空洞を有し、中空構造を有さない粒子に比較して比重が小さいため、組成物を用いて形成された塗膜中で、中空粒子が表面に浮かび、硬化膜表面に偏在する効果がより高まると考えられる。 また、中空粒子は、中空構造を有さない粒子に比較して、粒子自体の屈折率が低い。例えば、中空粒子をシリカで構成した場合、中空シリカ粒子は、屈折率の低い空気(屈折率=1.0)を有しているため、粒子自体の屈折率が1.2~1.4となり、通常のシリカ(屈折率=1.6)と比較して著しく低くなる。このため、中空粒子を含有する組成物を用いて硬化膜を形成することにより、硬化膜の表面に屈折率の低い中空粒子が偏在し、AR(Anti-Reflection)型の低反射効果が得られ、硬化膜の低反射性が向上すると考えられる。 中空粒子としては、例えば特開2001-233611号公報、及び、特許第3272111号公報に記載されている中空シリカ粒子を挙げることができる。 中空粒子としては、例えば、スルーリア4110(商品名、日揮触媒化成社製)も使用できる。 中実粒子としては、IPA-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、MIBK-ST、MIBK-ST-L、CHO-ST-M、PGM-AC-2140Y、PGM-AC-4130Y(以上、全て日産化学社製の商品名)等が好ましい態様として使用できる。」 (2)対比・判断 ア 本件特許発明1について (ア)甲2-3先願実施例2発明1との対比 本件特許発明1と甲2-3先願実施例2発明1とを対比する。 ア)甲2-3先願実施例2発明1の「エチレングリコール骨格多官能(メタ)アクリレート(A)」である「9EG-A(商品名:共栄社化学社製、PEG400#ジアクリレート、N=4)」は、アクリル基を2個有するものであるから、本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」に相当する。 また、甲2-3先願実施例2発明1の「バインダー:ウレタンアクリレート(6官能)」は、アクリル基を6個有するものであるから、本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」に相当する。 イ)甲2-3先願実施例2発明1の「光重合開始剤(C):Omnirad2959(商品名:iGM社製)」は、本件特許明細書の段落【0230】に示されるように、「1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン」であり、本件特許発明1の「α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤」に相当する。 また、その含有量は、質量%に換算すると固形分100質量%に対し2.7質量%(=(1.5/56.1)×100)であるから、甲2-3先願実施例2発明1は、本件特許発明1の「固形分100質量%に対し1~3質量%である」範囲と重複一致する。 ウ)甲2-3先願実施例2発明1の「表面被覆されたナノシリカ(B)の表面被覆がアクリロイル基被覆(b-1):PGM-AC-2140Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量42%、PGM分散)」は、甲1-3の第1頁「Surface treatment variation」の項には、日産化学工業(株)製のPGM-AC-2140YがPGMEを溶媒とする「Methacryl silane」(メタクリルシラン)のコロイド状シリカであることが記載されているから、甲2-3先願実施例2発明1の「表面被覆されたナノシリカ(B)」は、活性エネルギー線重合性基であるメタクリル基を含有しているといえる。また、甲1-3の第1頁「Appearance」の項には、PGM-AC-2140Yの未処理品であるMEK-ST-40のTEM写真が掲載されているが、この写真から前記「コロイド状シリカ」のシリカ粒子が中実粒子であることがわかるし、甲2-9の段落[0024]に、「中実粒子としては、IPA-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、MIBK-ST、MIBK-ST-L、CHO-ST-M、PGM-AC-2140Y、PGM-AC-4130Y(以上、全て日産化学社製の商品名)等が好ましい態様として使用できる。」との記載からも「中実」粒子であるといえる。 このため、甲2-3先願実施例2発明1の「表面被覆されたナノシリカ(B)の表面被覆がアクリロイル基被覆(b-1):PGM-AC-2140Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量42%、PGM分散)」は、本件特許発明1の「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」である限りにおいて 、本件特許発明1の反応物が特定された「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」に相当する。 エ)甲2-3先願実施例2発明1の「ハードコート樹脂組成物」は、先願明細書の段落【0039】より、紫外線照射により硬化して硬化層となるから、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、下記の<相違点>で相違する。 <一致点> 「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子、 ポリ(メタ)アクリレート並びに α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、 前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し2.7質量%である、 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」 <相違点2-3-1> ポリ(メタ)アクリレートが、本件特許発明1は「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリンポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌレート構造含有ポリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上」であるのに対し、甲2-3先願実施例2発明1は「9EG-A(商品名:共栄社化学社製、PEG400#ジアクリレート、N=4)」及び「バインダー:ウレタンアクリレート(6官能)」である点 <相違点2-3-2> (メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子が、本件特許発明1は「中実シリカ粒子と下記式Sで表される化合物との反応物及び/又は中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物」であるのに対し、甲2-3先願実施例2発明1は「表面被覆されたナノシリカ(B)の表面被覆がアクリロイル基被覆(b-1):PGM-AC-2140Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量42%、PGM分散)」であって、反応させる化合物が下記式Sで表される化合物及び/又は下記式U1で表される化合物であるか不明である点 そこで、上記<相違点2-3-1>について検討する。 上記1(2)アでも説示したように、本件特許発明1の「ポリ(メタ)アクリレート」は当該特定の選択肢のものに限定され、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物において、当該特定の選択肢以外の「ポリ(メタ)アクリレート」を含むものは本件特許発明1の範囲外であると解釈するのが相当である。 一方、先願明細書には、「エチレングリコール骨格多官能(メタ)アクリレート(A)と、表面被覆されたナノシリカ(B)と、光重合開始剤(C)と、を含み、前記(B)の表面被覆がアクリロイル基被覆(b-1)およびアルコキシ基被覆(b-2)の2種類を含むことを特徴とするハードコート樹脂組成物。」(【請求項1】)についての事項しか記載されていない。 すなわち、(メタ)アクリレートモノマーとして、「エチレングリコール骨格多官能(メタ)アクリレート(A)」を使用することについて記載されているのみで、当該(メタ)アクリレート(A)を使用しないことについては記載も示唆されていない。 そうすると、当該相違点は実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明1は、甲2-3先願実施例2発明1と同一ではない。 (イ)甲2-3先願比較例5発明1との対比 本件特許発明1と甲2-3先願比較例5発明1とを対比する。 ア)甲2-3先願比較例5発明1の「バインダー:DPHA(商品名:日本化薬社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとペンタアクリレートの混合物)」は、本件特許発明1の「(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート」である「ポリ(メタ)アクリレート」に相当する。 イ)甲2-3先願比較例5発明1の「光重合開始剤(C):Omnirad2959(商品名:iGM社製)」は、本件特許明細書の段落【0230】に示されるように、「1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン」であり、本件特許発明1の「α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤」に相当する。 また、その含有量は、質量%に換算すると固形分100質量%に対し4.4質量%(=(1.5/34.1)×100)である。 ウ)甲2-3先願比較例5発明1の「表面被覆されたナノシリカ(B)の表面被覆がアクリロイル基被覆(b-1):PGM-AC-2140Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量42%、PGM分散)」は、甲1-3の第1頁「Surface treatment variation」の項には、日産化学工業(株)製のPGM-AC-2140YがPGMEを溶媒とする「Methacryl silane」(メタクリルシラン)のコロイド状シリカであることが記載されているから、甲2-3先願比較例5発明1の「表面被覆されたナノシリカ(B)」は、活性エネルギー線重合性基であるメタクリル基を含有しているといえる。また、甲1-3の第1頁「Appearance」の項には、PGM-AC-2140Yの未処理品であるMEK-ST-40のTEM写真が掲載されているが、この写真から前記「コロイド状シリカ」のシリカ粒子が中実粒子であることがわかるし、甲2-9の段落[0024]に、「中実粒子としては、IPA-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、MIBK-ST、MIBK-ST-L、CHO-ST-M、PGM-AC-2140Y、PGM-AC-4130Y(以上、全て日産化学社製の商品名)等が好ましい態様として使用できる。」との記載からも「中実」粒子であるといえる。 このため、甲2-3先願比較例5発明1の「表面被覆されたナノシリカ(B)の表面被覆がアクリロイル基被覆(b-1):PGM-AC-2140Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量42%、PGM分散)」は、本件特許発明1の「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」である限りにおいて 、本件特許発明1の反応物が特定された「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」に相当する。 エ)甲2-3先願比較例5発明1の「ハードコート樹脂組成物」は、先願明細書の段落【0039】より、紫外線照射により硬化して硬化層となるから、本件特許発明1の「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」に相当する。 そうすると、両者は、以下の<一致点>で一致し、下記の<相違点>で相違する。 <一致点> 「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子、 ポリ(メタ)アクリレート並びに α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、 前記ポリ(メタ)アクリレートは、(ポリ)ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートで る、 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」 <相違点2-3-3> 固形分100質量%に対する光重合開始剤の含有量が、本件特許発明1が「1~3質量%」であるのに対し、甲2-3先願比較例5発明1は「4.4質量%」である点 <相違点2-3-4> (メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子が、本件特許発明1は「中実シリカ粒子と下記式Sで表される化合物との反応物及び/又は中実シリカ粒子と下記式U1で表される化合物との反応物」であるのに対し、甲2-3先願比較例5発明1は「表面被覆されたナノシリカ(B)の表面被覆がアクリロイル基被覆(b-1):PGM-AC-2140Y(商品名:日産化学工業社製、平均粒子径20nm、SiO2量42%、PGM分散)」であって、反応させる化合物が下記式Sで表される化合物及び/又は下記式U1で表される化合物であるか不明である点 そこで、上記<相違点2-3-3>について検討する。 先願明細書には、「エチレングリコール骨格多官能(メタ)アクリレート(A)と、表面被覆されたナノシリカ(B)と、光重合開始剤(C)と、を含み、前記(B)の表面被覆がアクリロイル基被覆(b-1)およびアルコキシ基被覆(b-2)の2種類を含むことを特徴とするハードコート樹脂組成物。」(【請求項1】)についての技術的事項しか記載されていない。 そして、甲2-3先願比較例5発明1は、当該技術的事項に含まれない比較例5をもとに発明を認定したものである。そうすると、固形分100質量%に対する光重合開始剤の含有量を、「4.4質量%」から他の配合量に変更する理由はない。 そうすると、当該相違点は実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明1は、甲2-3先願比較例5発明1と同一ではない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2ないし5は、先願明細書に記載された発明と実質的に同一ではない。 (3)申立人の主張について 申立人2は、令和5年3月1日付けの意見書において、「・・・実施例5、実施例7、及び比較例5の組成物は、本件訂正発明1における「α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し1~3質量%である、」との構成要件を満たさないものの、実施例2の組成物は当該構成要件を満たす。・・・甲3先願発明の具体例である実施例2の組成物が光重合開始剤の含有量に係る構成要件を満たす点、甲第3号証に上記の記載がある点、及び光重合開始剤の含有量の調整が当業者にとっての設計事項である点を参酌すると、当該構成要件は甲第3号証の出願日時点におえる周知慣用技術であると言える。そうすると、甲3先願発明の具体例である実施例5及び実施例7の組成物に当該周知慣用技術を付加したことによって新たな効果を奏するものではないため、当該相違点は発明の課題解決のための具体化手段における微差に過ぎず、実質的な相違点とはならない。」 (第24ページ下から第4行~第11ページ下から第10行)と主張している。 しかしながら、上記(2)ア(ア)でも説示したように、本件特許発明1は、「ポリ(メタ)アクリレート」が、特定の選択肢のものに限定されているところ、甲2-3先願実施例2発明は、(メタ)アクリレートモノマーとして、「9EG-A(商品名:共栄社化学社製、PEG400#ジアクリレート、N=4)」を含有するものであるから、当該「9EG-A」を含有する点は実質的な相違点となる。 また、甲2-3の実施例5及び7も、(メタ)アクリレートモノマーとして、「9EG-A」を含有するものであるから、当該実施例を引用発明とした場合も同様のことがいえる。 よって、申立人2の主張は首肯できない。 (4)取消理由2-3及び申立理由2-6についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし5は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、取消理由2-3及び申立理由2-6によっては取り消すことはできない。 6 取消理由2-4及び申立理由2-7(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)検討 本件特許発明の課題は、本件特許明細書の段落【0004】等からみて、「良好な耐擦傷性及び鉛筆硬度を有する硬化物を製造できる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を提供すること」である。 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、光重合開始剤の含有量に関して以下の記載があり、本件特許において、α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤の含有量の上限値10質量%であることが例示されている。 「[0168]活性エネルギー線硬化性樹脂組成物固形分100質量%中のα-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤の含有量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は、1質量%以上が好ましく、1~10質量%がより好ましい。」 また、本件特許発明の具体例である[表1]の実施例1~7には、α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤の含有量が、固形分100質量%に対し2質量%である組成物及び3質量%である組成物が開示され、本件特許発明の課題が解決されていることが示されている。 そうすると、当業者は、「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子、 ポリ(メタ)アクリレート及び α-ヒドロキシジメチルアセトフェノン基含有光重合開始剤を含み、 前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し1~3質量%である、 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。」である特定事項により、本件特許発明の課題を解決できると認識するものである。 そして、本件件特許発明1は、上記特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できるものである。 よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 また、本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし5についても同様である。 (3)取消理由2-4及び申立理由2-7についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、取消理由2-4及び申立理由2-7によっては取り消すことはできない。 第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由2-1(新規事項の追加)、申立理由2-8(明確性要件)のみであるため、これらについて以下検討する。 1 申立理由2-1(新規事項の追加)について (1)新規事項の追加の判断基準 新規事項の追加に関する判断については、「「明細書又は図面に記載した事項」とは、技術的思想の高度の創作である発明について、特許権による独占を得る前提として、第三者に対して開示されるものであるから、ここでいう「事項」とは明細書又は図面によって開示された発明に関する技術的事項であることが前提となるところ、「明細書又は図面に記載した事項」とは、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。」(知財高判平20.5.30、平18(行ケ)第10563号)と判示されている。 よって、以下、この考え方に沿って判断する (2)申立人の主張及び検討 申立人2は、上記第4 2(1)において、「願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、シリカ粒子が「中実シリカ粒子」であることは明記されていない。またシリカ粒子が「中実シリカ粒子」であることと、本件特許発明の課題との関連性についての説明も一切存在しない。 したがって、本件特許発明1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において補正したものではない。 同様に、本件特許発明1に従属する本件特許発明2~5も、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において補正したものではない。」と主張している。 そこで、令和3年5月11日付け手続補正書でした補正が、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」されたか否かについて、上記(1)の判断基準に従って検討する。 本件特許の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書」という。)の段落【0030】には、「シリカ粒子(コロイダルシリカ)の市販品は、日産化学(株)製 商品名:メタノールシリカゾル、IPA-ST、MEK-ST、NBA-ST、XBA-ST、DMAC-ST、ST-UP、ST-OUP、ST-20、ST-40、ST-C、ST-N、ST-O、ST-50、ST-OL、MEK-ST-L、MIBK-T-L等が例示される。」と記載されている。 そして、例えば、申立人2が提出した甲2-4の段落【0029】~【0031】に、「<コロイダルシリカ粒子> 次に、本発明の特徴である平均粒径が25~100nmの中実(中空ではないの意味である)のコロイダルシリカ粒子について説明する。本発明においては、中実のコロイダルシリカ粒子によって耐スクラッチ性が大幅に向上する。・・・このようなコロイダルシリカ粒子は市販品を用いることができ、たとえば日産化学工業社製のIPA-ST-L、IPA-ST、IPA-ST-M、IPA-ST-MS、MA-ST-M、スノーテックスOL、スノーテックスO、MA-ST-L、メタノールシリカゾル、CIKナノテック社製のSIRW30WT%-F12、SIRW30WT%-F11、SIRW30WT%-H05、SIRW30WT%-H07などが例示できる。」と記載され、また、特許権者が審査段階で提出した意見書で「新規事項」でないことの釈明の根拠とした特開2017-134094号公報の段落【0098】には、「<第二の粒子の分散液> 分散液E:日産化学工業社製、スノーテックス(登録商標)OS、球状の中実シリカ粒子の分散液。 分散液F:日産化学工業社製、スノーテックスO、球状の中実シリカ粒子の分散液。 分散液G:日産化学工業社製、スノーテックスOL、球状の中実シリカ粒子の分散液。 分散液H:日産化学工業社製、スノーテックスOYL、球状の中実シリカ粒子の分散液。 分散液I:日産化学工業社製、スノーテックスOZL、球状の中実シリカ粒子の分散液。 分散液J:扶桑化学工業社製、PL-3H、球状の中実シリカ粒子の分散液。 分散液K:日産化学工業社製、スノーテックスOUP、球状の中実シリカ粒子の分散液。 分散液L:日揮触媒化成社製、スルーリア(登録商標)、4110、球状の中空シリカ粒子の分散液。」と記載されている。 すなわち、日産化学(株)製のIPA-ST、スノーテックスO、スノーテックスOL、スノーテックスOUPが「中実」シリカ粒子であることが読み取れる。 そうすると、本件特許出願時の技術常識を基礎として、当初明細書には、「中実シリカ粒子」について記載されていたといえる。そして、シリカ粒子を「中実シリカ粒子」と補正したことにより、新たな技術的事項を導入したものとも認められない。 よって、本件特許発明1は、当初明細書に記載した事項の範囲内において補正したものである。 (3)申立理由2-1についてのむすび したがって、令和3年5月11日付け手続補正書でした補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内において補正したもので、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないとはいえないから、本件特許発明1~5に係る特許は申立理由2-1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2-8(明確性要件)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきものである。 (2)申立人の主張及び検討 申立人2は、上記第4 2(8)において、下記の主張をしている。 主張ア 光重合開始剤の含有量について本件特許発明1は明確でない。 本件特許発明1は、「前記光重合開始剤の含有量は、固形分100質量%に対し1質量%以上である、」との発明特定事項を有する。 しかしながら、光重合開始剤の上限値が特定されていないため、光重合開始剤の含有量が、固形分100質量%に対し100質量%の範囲を含んでおり、本件特許発明1の範囲が明確でない。また光重合開始剤の上限値を特定することができない特別な事情も存在せず、光重合開始剤の上限値を特定しなくても当業者が本件特許発明1の範囲を特定できる事情も存在しない。 したがって、本件特許発明1は明確でない。 同様に、本件特許発明1に従属する本件特許発明2~5も明確ではない。 主張イ (メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子について本件特許発明1は明確でない。 本件特許発明1は、「(メタ)アクリロイル基含有中実シリカ粒子」との発明特定事項を有する。 しかしながら、シリカ粒子が「中実シリカ粒子」であることの定義、及び、シリカ粒子が「中空シリカ粒子」であることの定義が記載されていない。また「中実シリカ粒子」と「中空シリカ粒子」とを区別するための分析方法も記載されていない上、「中実シリカ粒子」と「中空シリカ粒子」を区別するための境界や閾値についても何らの記載がない。具体的には、どのような分析方法において、シリカ粒子内部における空隙率が特定の値に満たない場合に「中実シリカ粒子」に分類し、空隙率が特定の値を超える場合に「中空シリカ粒子」に分類するなど、当業者が一義的に判断できる指標に関して記載されていない。そのため、あるシリカ粒子が「中実シリカ粒子」及び「中空シリカ粒子」のいずれに属するかを特定することができないため、本件特許発明1の権利範囲が明確でない。 したがって、本件特許発明1は明確でない。 同様に、本件特許発明1に従属する本件特許発明2~5も明確でない。 そこで、上記(1)の判断基準に従って、以下検討する。 主張アについて 上記第2、第3に示されるように、本件特許発明1の「前記光重合開始剤の含有量」は、訂正により「固形分100質量%に対し1~3質量%である」と上限値が特定された。 よって、本件特許発明1は明確であり、また、申立人2の主張は解消された。 主張イについて 例えば、特許権者が審査段階で提出した意見書で「新規事項」でないことの釈明の根拠とした特開2017-134094号公報の段落【0032】には、「第二の粒子53は、図示するような中空粒子であってもよく、中実粒子であってもよく、中空粒子および中実粒子の混合物であってもよい。 「中空」は、内部に空洞を有することを示す。「中実」は、内部に空洞を有しないことを示す。 中空粒子は、内部に空洞を有するため、中実粒子に比べ屈折率が低い。そのため、中空粒子は、中実粒子に比べて少量で屈折率の低減効果が得られる利点があり、好ましい。」と記載され、また段落【0098】には、「<第二の粒子の分散液> 分散液E:日産化学工業社製、スノーテックス(登録商標)OS、球状の中実シリカ粒子の分散液。 ・・・ 分散液L:日揮触媒化成社製、スルーリア(登録商標)4110、球状の中空シリカ粒子の分散液。」と記載されている。 また、申立人2が提出した甲2-4の段落【0029】~【0031】に、「<コロイダルシリカ粒子> 次に、本発明の特徴である平均粒径が25~100nmの中実(中空ではないの意味である)のコロイダルシリカ粒子について説明する。本発明においては、中実のコロイダルシリカ粒子によって耐スクラッチ性が大幅に向上する。・・・このようなコロイダルシリカ粒子は市販品を用いることができ、たとえば日産化学工業社製のIPA-ST-L、IPA-ST、IPA-ST-M、IPA-ST-MS、MA-ST-M、スノーテックスOL、スノーテックスO、MA-ST-L、メタノールシリカゾル、CIKナノテック社製のSIRW30WT%-F12、SIRW30WT%-F11、SIRW30WT%-H05、SIRW30WT%-H07などが例示できる。」と記載されている。 さらに、本願出願後に公開されたものではあるものの、申立人2が提出した甲2-9の段落[0024]には、 「また、表面修飾粒子は、中空粒子であってもよく、中実粒子であってもよい。 中空粒子は、粒子の内部に空洞が存在する粒子をいう。中空粒子は、粒子が、内部の空洞と、空洞を包囲する外殻とからなる構造であってもよい。また、中空粒子は、粒子の内部に空洞が複数存在する構造であってもよい。 中実粒子は、粒子の内部に空洞が実質的に存在しない粒子をいう。 中空粒子は、空隙率が3%以上であるのが好ましく、中実粒子は、空隙率が3%未満であるのが好ましい。 表面修飾粒子は、本発明の効果がより優れる点から、中空粒子であるのが好ましい。 中空粒子は、内部に空洞を有し、中空構造を有さない粒子に比較して比重が小さいため、組成物を用いて形成された塗膜中で、中空粒子が表面に浮かび、硬化膜表面に偏在する効果がより高まると考えられる。 また、中空粒子は、中空構造を有さない粒子に比較して、粒子自体の屈折率が低い。例えば、中空粒子をシリカで構成した場合、中空シリカ粒子は、屈折率の低い空気(屈折率=1.0)を有しているため、粒子自体の屈折率が1.2~1.4となり、通常のシリカ(屈折率=1.6)と比較して著しく低くなる。このため、中空粒子を含有する組成物を用いて硬化膜を形成することにより、硬化膜の表面に屈折率の低い中空粒子が偏在し、AR(Anti-Reflection)型の低反射効果が得られ、硬化膜の低反射性が向上すると考えられる。 中空粒子としては、例えば特開2001-233611号公報、及び、特許第3272111号公報に記載されている中空シリカ粒子を挙げることができる。 中空粒子としては、例えば、スルーリア4110(商品名、日揮触媒化成社製)も使用できる。 中実粒子としては、IPA-ST、IPA-ST-L、IPA-ST-ZL、MIBK-ST、MIBK-ST-L、CHO-ST-M、PGM-AC-2140Y、PGM-AC-4130Y(以上、全て日産化学社製の商品名)等が好ましい態様として使用できる。」と記載されている。 これらの記載からも把握できるように、「中空粒子」とは、内部に空洞を有する粒子であり、「中実粒子」とは、内部に空洞を実質的に有しない粒子を意味することは明らかで、「中実シリカ粒子」、「中空シリカ粒子」と具体的に呼称される製品も上市されている。 そうすると、どのような分析方法において、シリカ粒子内部における空隙率が特定の値に満たない場合に「中実シリカ粒子」に分類し、空隙率が特定の値を超える場合に「中空シリカ粒子」に分類することが本件特許明細書に記載されていなくとも、本件特許出願の出願日時点における技術常識から、「中実シリカ粒子」と「中空シリカ粒子」とは区別できるものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載及びこれを引用する請求項2ないし8の記載は不明確ではなく、かつ、本件特許明細書の記載も特許請求の範囲の請求項1ないし8の記載と矛盾するものではないから、本件特許出願の出願日時点における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、申立人2の主張は首肯できない。 (3)申立理由2-8についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由2-8によっては取り消すことはできない。 第7 むすび 上記第5及び第6のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 さらに、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700461

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