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特許異議申立

2025-700189

多層構造体及び液体用紙容器

審判番号
2025-700189
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-521345
登録番号
7534575
請求日
2025年02月13日
審決日
2025年07月01日
公報発行日
2025年08月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社クラレ
  • 【権利者代理人】池田 義典
  • 【異議申立人】齊藤 恵美子
審判長/審判官
  • 審判長 田口 傑
  • 審判官 稲葉 大紀
  • 審判官 長谷川 一郎
分類
P1651.121-Y (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7534575号発明「多層構造体及び液体用紙容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7534575号の請求項1~24に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7534575号(以下「本件特許」という。)の請求項1~24に係る特許についての出願は、令和5年12月5日(優先権主張 令和4年12月5日)の出願であって、令和6年8月5日にその特許権の設定登録がされ、令和6年8月14日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年2月13日に特許異議申立人齊藤恵美子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許 本件特許の請求項1~24に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 紙層(A)、無機蒸着層(B)、バリア樹脂層(C)、接着樹脂層(D)及び防湿樹脂層(E)を有し、 無機蒸着層(B)、バリア樹脂層(C)、接着樹脂層(D)及び防湿樹脂層(E)は、この順に全て直接積層されており、 無機蒸着層(B)の平均厚みが、5nm以上200nm以下であり、 バリア樹脂層(C)が、エチレン単位含有量が20モル%以上50モル%以下、けん化度が90モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体(c)を主成分として含み、 接着樹脂層(D)が、接着性樹脂(d)を主成分として含み、 防湿樹脂層(E)が、ポリエチレン(e)を主成分として含み、 融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む層及び平均厚みが1μm以上の金属層を有せず、 バリア樹脂層(C)が、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを10ppm以上200ppm以下含有する、多層構造体。 【請求項2】 紙層(A)と無機蒸着層(B)又は防湿樹脂層(E)との間に介在する熱可塑性樹脂層(X)をさらに有する、請求項1に記載の多層構造体。 【請求項3】 紙層(A)、無機蒸着層(B)、バリア樹脂層(C)、接着樹脂層(D)及び防湿樹脂層(E)をこの順に有する、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項4】 接着性樹脂(d)が、酸変性ポリエチレンである、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項5】 無機蒸着層(B)が、アルミニウムを主成分とする金属蒸着層又はアルミナ若しくはシリカを主成分とする無機酸化物蒸着層である、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項6】 エチレン-ビニルアルコール共重合体(c)が、エチレン単位含有量が異なる2種以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項7】 ポリエチレン(e)の密度が、0.880g/cm3以上0.940g/cm3以下であり、 ポリエチレン(e)が、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又はそれらの混合物である、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項8】 バリア樹脂層(C)、接着樹脂層(D)及び防湿樹脂層(E)の積層体は、共押出フィルムであり、 前記共押出フィルムの平均厚みが、8μm以上120μm以下であり、 前記共押出フィルムのバリア樹脂層(C)側の面に無機蒸着層(B)が設けられている、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項9】 バリア樹脂層(C)の平均厚みが0.2μm以上30μm未満であり、前記共押出フィルムの平均厚みに対するバリア樹脂層(C)の平均厚みの比率が25%未満である、請求項8に記載の多層構造体。 【請求項10】 前記共押出フィルムが、実質的に延伸されていない、請求項8に記載の多層構造体。 【請求項11】 前記共押出フィルムが、少なくとも一軸方向に3倍以上12倍未満延伸されている、請求項8に記載の多層構造体。 【請求項12】 前記共押出フィルムが、二軸方向にそれぞれ3倍以上12倍未満延伸されている、請求項8に記載の多層構造体。 【請求項13】 ポリエチレン(f)を主成分として含む防湿樹脂層(F)をさらに有する、請求項8に記載の多層構造体。 【請求項14】 ポリエチレン(f)の密度が、0.880g/cm3以上0.940g/cm3以下であり、 ポリエチレン(f)が、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン又はそれらの混合物である、請求項13に記載の多層構造体。 【請求項15】 防湿樹脂層(F)が、前記共押出フィルムに直接積層されている、請求項13に記載の多層構造体。 【請求項16】 硬化型の接着剤からなる接着剤層を有しない、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項17】 紙層(A)の坪量が200g/m2以上400g/m2未満である、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項18】 紙層(A)の質量比率が、多層構造体全体の0.60以上である、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項19】 紙層(A)以外の部分における、ポリエチレン系樹脂を主成分とする層の合計平均厚み比率が0.75以上である、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項20】 紙層(A)以外の部分における、エチレン単位を有する樹脂を主成分とする層の合計平均厚み比率が0.95以上である、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項21】 紙層(A)を表面に有する、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項22】 JIS K 7126-2:2006に記載の方法で測定した20℃、65%RH条件下における酸素透過速度が、0.5cc/(m2・day・atm)未満である、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項23】 防湿樹脂層(E)に対して紙層(A)が外側になるように四つ折りにし、その状態で上から5kgの荷重をかけて1分間静置することで折り曲げ処理を行った後に、JIS K 7126-2:2006に記載の方法で測定した20℃、65%RH条件下における酸素透過速度が、1.0cc/(m2・day・atm)未満である、請求項1又は2に記載の多層構造体。 【請求項24】 請求項1又は2に記載の多層構造体を成形してなる液体用紙容器。」 第3 申立理由の概要 申立人は、以下に示す甲第1号証~甲第8号証(申立人が提出した甲第○号証は以下「甲○」という。)を提出し、本件発明1~24に係る特許は、以下の1~3のとおり、甲1~甲8に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである旨主張する。 1 申立理由1(甲1に記載の発明を主引用発明とする進歩性欠如) 本件発明1~9、11~24は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 申立理由2(甲3に記載の発明を主引用発明とする進歩性欠如) 本件発明1~24は、甲3に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 申立理由3(甲4に記載の発明を主引用発明とする進歩性欠如) 本件発明1~9、11、12、16~18、21~24は、甲4に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 証拠方法一覧 甲1:特開2021-160262号公報 甲2:国際公開第2021/029156号 甲3:特開2022-7524号公報 甲4:特表2014-531341号公報 甲5:特開平9-38629号公報 甲6:特開2002-284888号公報 甲7:特開平7-80954号公報 甲8:特開2009-242644号公報 第4 当審の判断 以下に述べるように、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~24に係る特許を取り消すことはできない。 1 申立理由(進歩性)について (1)甲1に記載された事項・発明 ア 甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与し、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。 「【請求項1】 少なくとも、基材と中間層とシーラント層とを備えた積層体であって、 前記中間層が、ポリエチレン樹脂層と表面樹脂層と前記表面樹脂層上に設けられた蒸着膜とを備え、 前記基材及び前記シーラント層が、共にポリエチレン樹脂から構成されており、 前記中間層の表面樹脂層は、融点150℃以上の樹脂材料を含み、 前記中間層のポリエチレン樹脂層及び表面樹脂層は、延伸処理が施されていることを特徴とする、積層体。」 「【請求項12】 請求項1~11のいずれか一項に記載の積層体からなる包装容器。」 「【0005】 このような現状に鑑み、包装容器のリサイクル適性向上を目的として、ポリエステルフィルムに代えて、延伸処理が施されたポリエチレンフィルム(延伸ポリエチレンフィルム)を基材や中間層へ適用し、同一材料により構成される積層体を用いた包装容器(モノマテリアル包装容器)の作製が検討されている。」 「【0009】 本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、モノマテリアル包装容器を作製するための積層体として好適に使用することができ、蒸着膜との層間の密着性を顕著に向上することができ、好ましいガスバリア性を達成することができる、積層体を提供することである。」 「【0114】 (接着層) ・・・ 接着層は、少なくとも1種の接着剤を含み、1液硬化型若しくは2液硬化型、または非硬化型のいずれも接着剤であってもよい。・・・」 「【0130】 包装容器に充填される内容物は、特に限定されるものではなく、内容物は、液体、粉体およびゲル体であってもよい。・・・」 「【0132】 実施例1-1 中密度ポリエチレン(ダウケミカル製、Elite5538、密度:0.941g/cm3、融点:129℃)をインフレーション法により単層押出製膜した後、延伸装置により、縦方向(MD方向)に5倍延伸して、厚さ25μmの基材を作製した。」 「【0134】 中間層の表面樹脂層の表面に、PVD法により、圧力:3.0×10-2Paで厚さ30nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。 【0135】 基材と、中間層の蒸着膜形成面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント社製、Ru-77T/H-7)を介してラミネートした。 【0136】 第一の直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、SP2520、密度:0.925g/cm3、融点:122℃)と、第二の直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、SP1520、密度0.913、融点116℃)をインフレーション成形法により、多層押出製膜し、第一の直鎖状低密度ポリエチレン20μm、第二の直鎖状低密度ポリエチレン20μmの未延伸ポリエチレンフィルムを作製した。 この未延伸ポリエチレンフィルムの第一の直鎖状低密度ポリエチレン面側を、中間層の蒸着膜非形成面に、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント社製、Ru-77T/H-7)を介してラミネートし、本発明の積層体を得た。・・・」 「【0144】 実施例1-5 エチレンビニルアルコール共重合体(クラレ(株)製、エバール E171B、融点:165℃、密度:1.14g/cm3)と、 接着性樹脂(三井化学(株)製、アドマーNF557)と、 中密度ポリエチレン(ダウケミカル製、Elite5538、密度:0.941g/cm3、融点:129℃)および相溶化剤(ダウケミカル製、無水マレイン酸変性ポリエチレン、リテイン3000、密度:0.87g/cm3)を、質量基準で、8:2で含むブレンド樹脂と、 中密度ポリエチレン(ダウケミカル製、Elite5538、密度:0.941g/cm3、融点:129℃)と、 をインフレーション成形法により共押出製膜した後、延伸装置により、縦方向(MD方向)に5倍延伸して、中間層を作製した。 このようにして得られた中間層において、エチレンビニルアルコール共重合体により構成される表面樹脂層の厚さは2μm、接着性樹脂層の厚さは3μm、ブレンド樹脂により構成される第2のポリエチレン樹脂層の厚さは10μm、中密度ポリエチレンにより構成される第1のポリエチレン樹脂層の厚さは10μmであった。 【0145】 中間層を上記のようにして作製した中間層に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、積層体を作製した。」 イ 甲1に記載された発明 以上より、特に実施例1-5に着目すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「中密度ポリエチレンをインフレーション法により単層押出製膜した後、延伸装置により、縦方向に5倍延伸して作製された厚さ25μmの基材と、 2液硬化型ウレタン系接着剤からなる接着層と、 PVD法によって形成された厚さ30nmのアルミニウム蒸着膜と、 エチレンビニルアルコール共重合体からなる厚さ2μmの表面樹脂層と、 三井化学(株)製アドマーNF557(変性LLDPE)からなる厚さ3μmの接着性樹脂層と、 ブレンド樹脂からなる厚さ10μmの第2のポリエチレン樹脂層と、 中密度ポリエチレンからなる厚さ10μmの第1のポリエチレン樹脂層と、 2液硬化型ウレタン系接着剤からなる接着層と、 密度0.925g/cm3の第一の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ20μmの層と、密度0.913g/cm3の第二の直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ20μmの層とによって構成された二層構造のシーラント層と、 をこの順序で備え、 前記アルミニウム蒸着膜は前記表面樹脂層に形成されており 前記表面樹脂層、前記接着性樹脂層、前記第2のポリエチレン樹脂層及び前記第1のポリエチレン樹脂層が中間層をなしており、 前記中間層は、前記表面樹脂層をなすエチレンビニルアルコール共重合体と、前記接着性樹脂層をなす接着性樹脂と、前記第2のポリエチレン樹脂層をなすブレンド樹脂と、前記第1のポリエチレン樹脂層をなす中密度ポリエチレンとをインフレーション成形法により共押出製膜した後、延伸装置により、縦方向に5倍延伸して作製されたものであり、 前記ブレンド樹脂は、中密度ポリエチレンと、相溶化剤である無水マレイン酸変性ポリエチレンとを8:2の質量比で含む樹脂である、積層体。」 (2) 甲2に記載された事項 甲2には、次の記載がある。 「[0001] 本開示は、包装材料に用いられることができ、水蒸気及び/又は酸素を制限するためのガスバリアフィルムに関する。・・・」 「[0005] 例えば、商品を収容した状態の軟包材は製造及び流通の過程で折れ曲がったり、軟包材同士が擦れ合ったりする。このような過程を経ても軟包材はガスバリア性を維持している必要がある。・・・」 「[0006] 本開示は、包装材料の優れたリサイクル性を実現するのに有用であり且つ優れた耐虐待性を有するバリアフィルム及びバリア性包装材料を提供する。・・・」 「[0009] 第一態様に係るバリアフィルムによれば、基材フィルムがポリオレフィン系樹脂を含むため、ポリオレフィン系樹脂を含むシーラント層と併用されることで、包装材料のモノマテリアル化を実現できる。なお、本開示において、モノマテリアルの包装材料とは、特定の材料(例えば、ポリオレフィン系樹脂)の質量比率が90質量%以上である包装材料をいう。」 「[0047] 基材フィルム11としては、単一の樹脂で構成された単層フィルムや複数の樹脂を用いた単層又は積層フィルムが用いられる。また、これらの樹脂を他の基材(金属、木材、紙、セラミックスなど)に積層した積層基材を用いてもよい。」 (3) 甲3に記載された事項・発明 ア 甲3に記載された事項 甲3には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は樹脂組成物、蒸着フィルム、包装材及び真空断熱体に関する。」 「【0012】 <蒸着フィルム> 本発明の蒸着フィルムは、―定の樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(α)」とも称する。)からなる基材層(α)と、基材層(α)の少なくとも片面に積層される無機蒸着層(β)とを備える蒸着フィルムである。本発明の蒸着フィルムは、酸素バリア性が要求される用途、例えば食品、化粧品、医化学薬品、トイレタリー等の包装材料、或いは家電製品、住宅用、自動車用の断熱材等、種々の分野で利用される。当該蒸着フィルムは、上述した層以外に、接着層(γ)、熱可塑性樹脂層(δ)、樹脂コート層(ε)、及びその他の層を備えてもよい。以下、各層について説明する。」 「【0047】 EVOH(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」 「【0081】 (その他の成分) 樹脂組成物(α)は、本発明の効果を損なわない範囲で、EVOH(A)以外の樹脂、アルミニウムイオン(B)以外の金属イオン、酸(化合物(C)に該当するものを除く)、ホウ素化合物、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、滑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、補強材等、他の成分を有していてもよい。中でも、熱安定性や他樹脂との接着性の観点から、アルミニウムイオン(B)以外の金属イオン、酸(化合物(C)に該当するものを除く)並びにホウ素化合物のうちの一種又は二種以上を含むことが好ましい。」 「【0083】 樹脂組成物(α)がかかる金属イオンを含む場合、その含有量は樹脂組成物に対して1ppm以上が好ましく、5ppm以上がより好ましく、10ppm以上がさらに好ましく、20ppm以上がよりさらに好ましく、40ppm以上が特に好ましい。またアルミニウムイオン(B)以外の金属イオンの含有量は、樹脂組成物に対して3,000ppm以下が好ましく、1,000ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましく、300ppm以下が特に好ましい。アルミニウムイオン(B)以外の金属イオンの含有量が上記範囲にあると、前記積層体の層間接着性を良好に保ちつつ、該積層体を回収してリサイクルを行った際の熱安定性が良好となる傾向になる。」 「【0135】 [その他の層] 本発明の蒸着フィルムが有していてもよいその他の層としては、紙層等が挙げられる。・・・ 【[0136】 [層構造、物性等] 本発明の蒸着フィルムの層構造としては、例えば、 (1)α/β、 (2)δ/γ/α/β、 (3)δ/γ/δ/γ/α/β、 (4)δ/γ/α/β/γ/δ、 (5)δ/γ/δ/γ/α/β/γ/δ、 (6)α/β/ε、 (7)δ/γ/α/β/ε、 (8)δ/γ/δ/γ/α/β/ε、 (9)δ/γ/δ/γ/α/β/ε/γ/δ、 (10)δ/γ/α/β/ε/γ/δ、 (11)α/β/γ/δ、 等が挙げられる。なお、α:基材層、β:無機蒸着層、γ:接着層、δ:熱可塑性樹脂層、及びε:樹脂コート層である。」 「【0150】 本発明の包装材は、例えば、本発明の蒸着フィルムと、少なくとも1層の他の層とを積層することによって形成されるものであってよい。他の層としては、例えばポリエステル層、ポリアミド層、ポリオレフィン層、紙層、無機蒸着フィルム層、EVOH層、接着層等が挙げられる。・・・」 「【0194】 <多層フィルムを用いた蒸着フィルムの作製> [実施例8~10、比較例3~4] 参考例2、調製例1~2及び比較調製例1~2で得られた各乾燥樹脂組成物ペレット(樹脂組成物)を用い、インフレーション押出成形機を用いて、以下の条件で円筒状の多層フィルムを作製した。なお、熱可塑性樹脂層(δ)は30μmの厚みで3層積層させており、結果として90μmの厚みの熱可塑性樹脂層(δ)を1層としている。 (多層フィルム作製条件) 多層フィルムの層構成:[外面側]熱可塑性樹脂層(δ)/接着層(γ)/基材層(α)[内面側]=90μm/20μm/20μm(総厚み130μm) 熱可塑性樹脂層(δ):δ-1(ポリエチレン40ST05) 接着層(γ):γ-1(アドマー(商標)NF528) 基材層(α):上記で得られた樹脂組成物 装置:5種5層インフレーション押出成形機(Dr Collin社製) ・・・」 「【0196】 得られた延伸後の多層フィルムの両端部を切断し、平面状の多層フィルムを作製した。得られた平面状の多層フィルムを用い、日本真空技術社製「EWA-105」を用いて、厚みが40nmとなるようにアルミニウムを基材層(α)側に真空蒸着し、蒸着フィルム(層構成:δ/γ/α/β)を作製した。・・・」 イ 甲3に記載された発明 以上より、特に実施例8に着目すると、甲3には以下の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「厚さ50μmのLLDPEフィルム(δ’-2)、 二液型のウレタン系接着剤からなる厚さ2μmの接着層(γ’)、厚さ40nmのアルミニウム蒸着層(β)、 「EVOH-A」からなる厚さ3.3μmの基材層(α)、 「アドマー(商標)NF528」からなる厚さ3.3μmの接着層(γ)、 「ポリエチレン40ST05」からなる厚さ15μmの熱可塑性樹脂層(δ)、二液型のウレタン系接着剤からなる厚さ2μmの接着層(γ’)、 厚さ30μmの一軸延伸PEフィルム(δ’-1)、 をこの順序で備え、 前記基材層(α)、前記接着層(γ’)及び前記熱可塑性樹脂層(δ)はインフレーション押出成形機を用いて作製された多層フィルムを縦方向に6倍に一軸延伸して形成されたものであり、 前記アルミニウム蒸着層(β)は、アルミニウムを基材層(α)側に真空蒸着したものであり、 前記「EVOH-A」は、エチレン単位含有量が32.12モル%であり且つ けん化度が99.78モル%のEVOHであるとともに、末端カルボン酸類単位+末端ラクトン環単位の合計含有量が0.160モル%であり且つアルミニウムイオン含有量が0.3ppmである、蒸着フィルム。」 (4) 甲4に記載された事項・発明 ア 甲4に記載された事項 甲4には以下の記載がある。 「【請求項1】 ガスバリア特性を有し、ポリオレフィンコア層と、前記コア層の少なくとも一方側上の少なくとも1つのエチレンビニルアルコール(EVOH)のバリア表面層とを含む、二軸配向多層ポリマーバリアフィルムであって、前記EVOHのバリア層は1.5μm未満の厚さであり、36モル%以下のエチレン含量を有し、前記フィルムは、24時間、23°C、50%RHで10cm3/m2/1day/1atm未満の酸素透過(OTR)を有する、二軸配向多層ポリマーバリアフィルム。」 「【請求項17】 一方側上の外側ヒートシール可能ポリオレフィン層と、前記外側ヒートシール可能ポリオレフィン層とは反対の側上の、請求項1から13の何れか1項に記載の二軸配向ポリマーバリアフィルム又は請求項14から16の何れか1項に記載の二軸配向被覆ポリマーバリアフィルムと、を有する紙又は板紙のバルク層を含むラミネートパッケージング材料であって、前記バリアフィルムは前記バルク層とは反対の側上にヒートシール可能ポリオレフィン層を有する、ラミネートパッケージング材料。」 「【0044】 ・・・本発明によるフィルムは、フィルム包装として、又は折り畳んでパッケージとして使用する際に、変形(つまり5%より高いフィルムの伸長)がある場合に特に、基板フィルム自身が顕著なガスバリア特性を有しない他の気相堆積フィルムと比較して、顕著に改善されたガスバリア特性を有する。」 「【0052】 本発明のさらなる側面によると、本発明の二軸配向ポリマーフィルムを含む、ラミネートパッケージング材料が提供される。 【0053】 特に、紙又は板紙バルク層をさらに含む、このようなラミネートパッケージング材料が提供される。紙又は板紙バルク層は、ラミネートの曲げ剛性に最大の寄与を提供するために配置される。」 「【0143】 図1aは、本発明による好ましい二軸配向ポリマーバリアフィルム10aの断面を示す。配向フィルムのベース又はコア層11はポリプロピレンホモポリマーであり、それは、無水マレイン酸-グラフトポリプロピレンポリマーのタイ層12を用いて、EVOHの外部高表面エネルギーフレキシブルバリア層13にラミネートされる。フィルムは任意に、EVOHバリア層13とは反対であるフィルムの側上に、ラミネーション層15をさらに含む。ラミネーションは、0.930を超える密度を有する中密度ポリエチレンを含む、ヒートシール可能ポリオレフィン組成物からなる。層の間には適切な接着及びインテグリティが存在し、それは同時二軸配向プロセスの間も維持される。ポリプロピレンベース層の厚さは8から12、好ましくは10μmであり、タイ層12の厚さは略1.5μmである。EVOHバリア層の厚さは略0.6μmである。任意のラミネーション又はヒートシール可能層の厚さは略0.6μmである。EVOHは、32モル%以下、好ましくは27モル%以下のエチレン含量を有する。 【0144】 図1bは、本発明による好ましいバリア被覆二軸配向ポリマーバリアフィルム10bの断面を示す。フィルムは図1aに記載のフィルム10aを含み、それは、高表面エネルギー層13上にさらなるガスバリア層14が気相堆積被覆されている。気相堆積層は好ましくは、ダイヤモンド状カーボンコーティング、SiOx(酸化シリコンベースのコーティング)若しくはAlOx(酸化アルミニウムベースのコーティング)層又は金属化層であり、略200nmの厚さで適用される。 【0145】 図2は、本発明による好ましいパッケージングラミネートの断面を示す。バリアフィルム10b;21は、低密度ポリエチレンの中間ボンディング層23によって板紙層22にラミネートされ、板紙22、バリアフィルム21、及びポリエチレンの押出溶融層を含めて押出ラミネーションプロセスを用いて適用された。他のボンディング層はまた、もちろん、本発明の範囲内で実現可能であり、特に変性又はグラフトポリエチレンベースのポリマーである。こうして得られたラミネート製品の各外側において、ヒートシール可能ポリエチレンベース層が押出コーティングを用いて適用される。パッケージングラミネートから製造されたパッケージの内側に向かって方向付けられた外側層、つまり最内層24は、ロバストなヒートシーリング操作及びシールされたパッケージング容器の強いシールを提供するために、メタロセン触媒又は単一サイトタイプの低密度ポリエチレン(m-LLDPE)を含む。」 「【図1a】 [図:0001425783000001.jpg] 」 「【図1b】 [図:0001425783000002.jpg] 」 「【図2】 [図:0001425783000003.jpg] 」 イ 甲4に記載された発明 以上より、特に図1b、図2に示されたラミネートパッケージング材料に着目すると、甲4には以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 「鎖状低密度ポリエチレンからなる最外層25と、 板紙22と、 低密度ポリエチレンからなる中間ボンディング層23と、バリアフィルム21(10b)と、 メタロセン触媒又は単ーサイトタイプの低密度ポリエチレン(m-LLDPE)を含む最内層24と、をこの順序で備え、 板紙22、バリアフィルム21(10b)及び中間ボンディング層23は押出ラミネーションプロセスによって形成されたものであり、 バリアフィルム21(10b)は、 気相堆積によって形成された厚さ略200nmのガスバリア層14と、 エチレン含量が32モル%以下、好ましくは27モル%以下であるEVOHからなる厚さ略0.6μmのバリア層13と、 無水マレイン酸-グラフトポリプロピレンポリマーからなる厚さ略1.5μmのタイ層12と、 ポリプロピレンホモポリマーからなる配向フィルムで構成されたコア層11と、をこの順序で有し、 前記ガスバリア層14は前記EVOHのバリア層13上に気相堆積被覆されている、 ラミネートパッケージング材料。」 (5) 甲5に記載された事項 甲5には以下の記載がある。 「【請求項1】裏面に紙が付着しているラミネート古紙を裁断し、裁断した前記ラミネート古紙と水を混合、攪拌させて、前記ラミネート古紙の裏面から前記紙を分離させ、分離後、前記ラミネートフィルムと前記紙にそれぞれ分別して、少なくとも前記ラミネートフィルムを工業材料として再利用できるようにすることを特徴とするラミネート古紙の処理方法。」 「【0008】 【実施例】本発明の一実施例を図面を参照して説明する。本実施例のラミネート古紙は、例えば、使用済のミルクカートンを紙とラミネートフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム)に分離して得られるラミネートフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム)である。このラミネートフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム)の裏面には、紙が付着している。」 「【0026】このようにして、使用済のミルクカートン1から、ラミネートフィルム1bと紙aとに分離し、分別することができ、それぞれを工業材料として再利用することができる。」 「【0029】従って、この実施例のラミネートフィルム(ラミネート古紙)の処理方法によれば、裏面に紙aが付着しているラミネートフィルム(ラミネート古紙)1bを裁断し、裁断したラミネート古紙1と水を混合、攪拌させるから、ラミネートフィルム(ラミネート古紙)1bの裏面に付着した紙aが分離し、しかも、分離後、ラミネートフィルム(ラミネート古紙)1bと紙aにそれぞれ分別したから、少なくとも従来廃棄物としてしか処理できなかったラミネートフィルムを工業材料として再利用することができる。」 (6) 甲6に記載された事項 甲6には以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」と略称する)樹脂組成物の製造方法に関する。」 「【0027】EVOHとしては、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化して得たものを用いればよい。エチレン含有量は、通常3~70モル%が好適であるが、ガスバリア性と溶融成形性に優れた成形物を得るという観点からは、エチレン含有量は、10~60モル%、さらに20~55モル%、特に25~55モル%が好ましい。EVOHにおけるビニルエステル成分のケン化度は、通常80~100モル%が好適であるが、ガスバリア性に優れた成形物を得るという観点からは、95モル%以上、特に99モル%以上が好ましい。 【0028】一方、エチレン含有量3~20モル%のEVOHは、水溶性を付与したEVOHとして好適に用いられる。このEVOHを含む水溶液はバリア性、塗膜成形性に優れ、コート材料として用いることができる。また、ケン化度80~95モル%のEVOHは、溶融成形性を改善するために好適に用いられる。このEVOHは単独で用いてもよいが、ケン化度が99モル%を超えるEVOHとブレンドして用いることもできる。」 「【0046】EVOHにリン酸化合物を添加すると、熱安定性を改善できる。・・・リン酸化合物を適切な範囲で添加することにより、成形体の着色やゲル・ブツの発生を抑制することが可能となる。・・・リン酸塩は、第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよく、そのカチオン種も特に限定されないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。・・・」 「【0051】EVOHにアルカリ土類金属塩を添加すると、耐着色性の改善効果が若干低下するものの、ペレットの溶融成形時において、熱劣化した樹脂の成形機のダイへの付着量を低減することが可能となる。アルカリ土類金属塩としては、特に限定されないが、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、ベリリウム塩などが挙げられ、マグネシウム塩およびカルシウム塩が好適である。・・・」 (7) 甲7に記載された事項 甲7には以下の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、溶融成形時、ストリーク(MD方向に平行に発生する細かいタテスジ)に因る外観不良のない、特異な重合度変化特性を有する、エチレン-ビニルアルコ-ル系共重合体(以下EVOHと記す)組成物層を少なくとも1層有する単層または多層の構造体に関する。」 「【0006】 【課題を解決するための手段】EVOHを溶融成形する場合、純粋なEVOHは熱劣化しやすく、溶融粘度が著しく低下すると共に、激しく着色するため、EVOH単独では使用できない。このため、EVOH樹脂は、重合度制御剤として、ある種の酸、金属塩、有機化合物等を添加した組成物として使用に供される。」 「【0011】以下本発明を更に詳しく説明する。本発明において、EVOHとはエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物であり、エチレン含有量20~60モル%、好適には25~50モル%、酢酸ビニルのケン化度90%以上、好適には95%以上のものが使用できる。エチレン含有量20モル%未満では溶融成形性が悪く、一方60モル%を越えると、ガスバリヤー性が不足する。・・・」 「【0021】前記式(I)を満足するEVOHを得る方法としては、たとえば重合度制御剤として、アルカリ金属の炭酸塩(例:炭酸水素ナトリウム)、アルカリ土類金属の酢酸塩(例:酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム)およびりん酸二水素ナトリウムを併用する方法、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびハイドロタルサイト化合物を併用する方法、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩および炭素数8以上の脂肪族カルボン酸塩を併用する方法、少なくとも2種のアルカリ土類金属の高級脂肪酸塩およびアルカリ金属酢酸塩を併用する方法が代表例としてあげられる。」 「【0024】ハイドロタルサイト化合物としては、一般式MxAly(OH)2x+3y-2z(A)z・H2O(MはMg,CaまたはZn、AはCO3またはHPO4、x,y,z,aは正数)で示される複塩であるハイドロタルサイト化合物を挙げる事ができ、特に好適なものとしては次の様なものが例示される。 Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O Mg6Al2(OH)20CO3・5H2O Mg6Al2(OH)14CO3・4H2O Mg6Al2(OH)22(CO3)2・4H2O Mg6Al2(OH)16HPO4・4H2O Ca6Al2(OH)16CO3・4H2O Zn6Al6(OH)16CO3・4H2O」 (8) 甲8に記載された事項 甲8には以下の記載がある。 「【請求項1】 0.010~5.0μmol/gの蛍光増白剤を含有し、少なくとも一種類以上の金属塩を金属元素換算で0.10~20μmol/g含有するエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。」 「【請求項3】 金属塩がナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、あるいはカルシウム塩である請求項1又は2に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物。」 「【0001】 本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物に関し、詳しくは着色がなく美麗で、外観特性に優れた新規なエチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂組成物に関する。」 「【0016】 本発明に用いられる金属塩の種類は特に限定されない。金属成分としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、銀、セリウムなどから選択され、・・・ 【0017】 特に着色がなく、外観特性に優れたEVOH樹脂組成物を得るためには、金属塩がナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩であることが好ましい。・・・」 「【0024】 本発明のEVOH樹脂組成物のケン化度は、99.0~100mol%であることが好適である。ケン化度が99.0mol%以下であると、十分なガスバリア性を得がたく、溶融成形時にフィッシュアイを発生して外観が悪くなる虞がある。用途に応じて、ケン化度が99.0モル%よりも低いEVOH樹脂組成物とすることもできる。」 2 甲1発明を主引用発明とする進歩性について (1)本件発明1について ア 甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 層構成に関し、甲1発明における「アルミニウム蒸着膜」、「表面樹脂層」、「接着性樹脂層」、「第2のポリエチレン樹脂層」及び「積層体」はそれぞれ、本件発明1における「無機蒸着層(B)」、「バリア樹脂層(C)」、「接着樹脂層(D)」、「防湿樹脂層(E)」及び「多層積層体」に相当する。 甲1発明において、「前記アルミニウム蒸着膜は前記表面樹脂層に形成されており」、「前記中間層は、前記表面樹脂層をなすエチレンビニルアルコール共重合体と、前記接着性樹脂層をなす接着性樹脂と、前記第2のポリエチレン樹脂層をなすブレンド樹脂と、前記第1のポリエチレン樹脂層をなす中密度ポリエチレンとをインフレーション成形法により共押出製膜した後、延伸装置により、縦方向に5倍延伸して作製されたものであ」るから、「アルミニウム蒸着膜」、「表面樹脂層」、「接着性樹脂層」及び「第2のポリエチレン樹脂層」は、この順に全て直接積層されている構成を備える。 甲1発明における「アルミニウム蒸着膜」が「厚さ30nm」であることは、本件発明1の「無機蒸着層(B)の平均厚みが、5nm以上200nm以下であ」る構成を備えるといえる。 甲1発明における「前記表面樹脂層をなすエチレンビニルアルコール共重合体」と、本件発明1における「バリア樹脂層(C)が、エチレン単位含有量が20モル%以上50モル%以下、けん化度が90モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体(c)を主成分として含み、」とは、「バリア樹脂層(C)が、エチレン-ビニルアルコール共重合体(c)を主成分として含」む限りで一致する。 甲1発明における「接着性樹脂層」を構成する「三井化学(株)製アドマーNF557(変性LLDPE)」は、直鎖状低分子ポリエチレン樹脂に官能基を導入して変性させることによって接着性を付与したものであるといえるから、本件発明1における「接着樹脂層(D)が、接着性樹脂(d)を主成分として含」む構成を備える。 甲1発明における「第2のポリエチレン樹脂層」を構成する「前記ブレンド樹脂は、中密度ポリエチレンと、相溶化剤である無水マレイン酸変性ポリエチレンとを8:2の質量比で含む樹脂である」から、本件発明1における「防湿樹脂層(E)が、ポリエチレン(e)を主成分として含」む構成を備える。 甲1発明は「融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む層」及び「平均厚みが1μm以上の金属層」を有していないから、本件発明1における「融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む層及び平均厚みが1μm以上の金属層を有せず」という構成を備える。 そうすると、本件発明1と、甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点A] 「無機蒸着層(B)、バリア樹脂層(C)、接着樹脂層(D)及び防湿樹脂層(E)を有し、 無機蒸着層(B)、バリア樹脂層(C)、接着樹脂層(D)及び防湿樹脂層(E)は、この順に全て直接積層されており、 無機蒸着層(B)の平均厚みが、5nm以上200nm以下であり、 バリア樹脂層(C)が、エチレン-ビニルアルコール共重合体(c)を主成分として含み、 接着樹脂層(D)が、接着性樹脂(d)を主成分として含み、 防湿樹脂層(E)が、ポリエチレン(e)を主成分として含み、 融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む層及び平均厚みが1μm以上の金属層を有しない、多層構造体。」 [相違点1-1] 本件発明1は「紙層(A)」を備えるのに対し、甲1発明は「紙層(A)」に相当する層を備えていない点。 [相違点1-2] 「バリア樹脂層(C)」について、本件発明1は、エチレン単位含有量が20モル%以上50モル%以下、けん化度が90モル%以上のエチレンービニルアルコール共重合体(C)を主成分として含むのに対し、甲1発明は「表面樹脂層をなすエチレンビニルアルコール共重合体」を含むが、エチレン単位含有量が20モル%以上50モル%以下、けん化度が90モル%以上のエチレンービニルアルコール共重合体(C)を主成分として含むか不明である点。 [相違点1-3] 本件発明1は「バリア樹脂層(C)」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを10ppm以上200ppm以下含有するのに対し、甲1発明は「表面樹脂層」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを含むか不明である点。 イ 判断 (ア) まず相違点1-1について検討する。 甲1には「積層体」がさらに「紙層」を備えてもよいことについて記載も示唆もされていない。むしろ、甲1の【0005】には、「このような現状に鑑み、包装容器のリサイクル適性向上を目的として、ポリエステルフィルムに代えて、延伸処理が施されたポリエチレンフィルム(延伸ポリエチレンフィルム)を基材や中間層へ適用し、同一材料により構成される積層体を用いた包装容器(モノマテリアル包装容器)の作製が検討されている。」、【0009】には「本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、モノマテリアル包装容器を作製するための積層体として好適に使用することができ、蒸着膜との層間の密着性を顕著に向上することができ、好ましいガスバリア性を達成することができる、積層体を提供することである。」と記載され、「リサイクル適性向上」を目的とする「モノマテリアル包装容器」に好適な積層体を提供することを課題の一つとしていることが記載されている。 そして、甲2(【0001】、【0006】、【0009】及び【0047】)、甲3(【0001】、【0012】、【0135】及び【0150】)及び甲4(【請求項17】、【0052】~【0053】)の記載をふまえると、包装に用いられる積層体において、バリア層及び基材層を備える積層体にさらに紙層を積層することは周知技術であるといえる。また、甲5には、モノマテリアル化の着想はなく、単にラミネート古紙又はミルクカートンの処理方法において、紙とラミネートフィルムが積層されたものを紙とラミネートフィルムとに分別して、それぞれを工業材料として再利用できることが開示(【請求項1】、【0008】、【0026】及び【0029】等)されている。 しかしながら、甲2~甲4に開示された上記周知技術や甲5に記載の事項を参酌しても、甲1の「モノマテリアル包装容器」に好適な積層体を提供するとの課題からみて、主に「ポリエチレン樹脂」で構成された甲1発明の積層体に、あえて紙層を積層する動機付けはない。 そうすると、甲2~甲5に接した当業者が甲1発明において、相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは、容易に想到し得たことではない。 (イ) 事案に鑑み、次に相違点1-3について検討する。 甲1には「表面樹脂層」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを所定量含むことについて記載も示唆もされていない。 これに関して、甲6(【0001】、【0046】及び【0051】)、甲7(【0001】、【0006】、【0021】~【0023】)及び甲8(【請求項1】、【0016】及び【0017】)の記載をふまえると、エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加することは周知技術であるといえる。 しかしながら、甲6~甲8に開示された上記周知技術を参酌しても、甲1発明の「表面樹脂層」において「マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを10ppm以上200ppm以下含有する」構成とする動機付けはない。 一方、本件明細書には、「バリア樹脂層(C)は、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを含むことが好ましい。バリア樹脂層(C)における前記多価金属イオンの含有量の下限としては、10ppmが好ましく、・・・。バリア樹脂層(C)が前記下限以上の前記多価金属イオンを含むことで、リサイクルする際の欠点の発生がより抑制される。一方、バリア樹脂層(C)における前記多価金属イオンの含有量の上限としては、例えば・・・、200ppmが好ましく、・・・。バリア樹脂層(C)における前記多価金属イオンの含有量が前記上限以下であることで、リサイクルする際の着色の発生が抑制される。」(【0038】)とあるように、「バリア樹脂層(C)」の「多価金属イオン」の含有率を「10ppm以上200ppm以下」に特定することで、リサイクルの際の欠点及び着色の発生を抑制されることが記載されている。そして、本件明細書における、「多層構造体」の評価結果を示す【0163】の【表2】には、樹脂組成物ペレットにおける「マグネシウムイオン」の含有率が本件発明1の数値範囲に包含されるものである実施例1、9は、上記数値範囲から外れる実施例8、10よりも、「リサイクル性」の評価結果が相対的に良好であることが示されている。 そうすると、「バリア樹脂層(C)」の「多価金属イオン」の含有率が「10ppm以上200ppm以下」に特定されている本件発明1は、リサイクル性が良好であるという有利な効果を有するものである。 したがって、甲6~甲8に接した当業者が甲1発明において、相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることは、容易に想到し得たことではない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人は特許異議申立書において以下のとおり主張する。 a 相違点1-1について(第37ページ第1行~第38ページ第16行) 「甲1には「積層体」がさらに「紙層」を備えてもよいことについて明記されていない。しかし、包装容器用の材料の分野において、バリア性を有する層と樹脂基材とを備える積層体にさらに紙層を積層することは、以下のとおり、周知技術(以下、「周知技術1」と称する。)である。よって、甲1発明に対して周知技術1を適用し、甲1発明が紙層を備える構成とすることは当業者にとって容易なことである。 ・・・ ところで、甲1発明は「リサイクル適性向上」を目的とする「モノマテリアル包装容器」に好適な積層体を提供することを課題の一つとしていると解される(甲1の段落[0005],[0009])。甲1発明は主に「ポリエチレン樹脂」で構成されており、これに紙層を積層することは「モノマテリアル」(同一材料)の実現と反対の方向に向かうことであると思われるかもしれない。しかし、当業界の当業者は、周知技術1について「モノマテリアル」(同一材料)の実現を阻害するものであるとは認識しない。例えば、甲2の段落「0009]によれば「包装材料のモノマテリアル化を実現できる」とされている一方、段落[0047]には「基材フィルム11」として「他の基材(金属、木材、紙、セラミックスなど)に積層した積層基材を用いてもよい」ことが記載されている。また、甲5はラミネート古紙又はミルクカートンの処理方法を開示しており、この処理方法によれば、紙とラミネートフィルムが積層されたものを紙とラミネートフィルム(例えば、ポリエチレンフィルム)とに分別することができ、それぞれを工業材料として再利用することができるとされている(請求項1,段落[0008]、[0026]及び[0029]等)。 以上のことから、甲1発明が「モノマテリアル包装容器」に好適な積層体に関するものであることを考慮しても、甲1発明に対して周知技術1を適用し、甲1発明が紙層(A)を備える構成とすることは当業者にとって容易なことである。」 b 相違点1-3について(第39ページ第19行~第42ページ第12行) 「甲1には「表面樹脂層」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを所定量含むことについて明記されていない。しかし、エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加することは、以下のとおり、周知技術(以下、「周知技術3」と称する。)である。 ・・・ さらに、本件発明1では「バリア樹脂層(C)」の「多価金属イオン」の含有率が「10ppm以上200ppm以下」に特定されているものの、この特定事項は技術的意義を有するものではない。以下、その理由を述べる。 第一に、「多価金属イオン」の含有率の基準が「バリア樹脂層(C)」であると解され、「多層構造体」から「紙層(A)」を除去した後の樹脂層全体ではない点において、上記特定事項は技術的意義を有するものではないと解される。 すなわち、本件特許明細書の段落[0005]の記載からすると、本件特許における「リサイクル」は「多層構造体」から「紙層(A)」を除去した後の樹脂層全体を溶融成形してリサイクル品を作製することと解される。同段落には以下のように記載されている。 「さらに、紙容器等の包装材料には、回収して再利用しやすい材料であること(リサイクル性が高いこと)が望まれる。しかし、紙層以外に様々な樹脂層等が設けられた多層構造体において、紙層を除去した樹脂層等を用いて溶融成形した場合、樹脂の溶融温度の差、樹脂の架橋反応等により、得られるリサイクル品(溶融成形品)に欠点が生じ、外観及び品質が低下することがある。」 本件発明1において、「多層構造体」から「紙層(A)」を除去した後の樹脂層全体に対する「バリア樹脂層(C)」の質量比率について特定されていない。例えば、樹脂層全体に対する「バリア樹脂層(C)」の質量比率が小さければ、「バリア樹脂層(C)」が最大量である200ppmの多価金属イオンを含んでいたとしても、「多価金属イオン」による効果は十全に発揮されないと解される。一方、樹脂層全体に対する「バリア樹脂層(C)」の質量比率が大きければ、「バリア樹脂層(C)」の多価金属イオンの含有率が最小量の10ppmであったとしても、リサイクル品が過剰量の「多価金属イオン」を含有することになると解される。 第二に、本件特許明細書の表1及び表2によると、「バリア樹脂層(C)」における「多価金属イオン」の含有率は「多層構造体」の評価結果に影響を与えるものではない。すなわち、本件特許明細書に記載の実施例1,8~10は、樹脂組成物ペレットにおける「マグネシウムイオン」の含有率が互いに異なり、それ以外の構成が共通する試験例である。表2によれば、実施例1,8~10の「多層構造体の評価結果」に係る「OTR」(酸素透過速度)、「折り曲げ後OTR」及び「落下強度(低温)」はいずれも「B」である。このことから、「バリア樹脂層(C)」における「多価金属イオン」の含有率は、上記の評価項目に影響を与える因子であるとも言えず、その数位範囲に臨界的意義も認められない。 よって、甲1発明に対して周知技術3を適用し、甲1発明における「表面樹脂層」(本件発明1における「バリア樹脂層(C)」に相当)に、エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加し、多価金属イオンの含有率を10ppm以上200ppm以下とすることは当業者にとって容易なことである。」 (イ)上記各主張について検討する。 a 上記主張aについて 上記aについては、上記イ(ア)で検討したとおりであり、「包装に用いられる積層体において、バリア性を有する層及び樹脂基材を備える積層体にさらに紙層を積層することは周知技術」であったとしても、「モノマテリアル包装容器」に好適で、主に「ポリエチレン樹脂」で構成されている積層体である甲1発明において、これに「紙層」を積層する構成を採用する動機付けはない。 b 上記主張bについて 上記bについては、上記イ(イ)で検討したとおりであり、「エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加すること」が周知技術であったとしても、甲1発明の「表面樹脂層」において「マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを10ppm以上200ppm以下含有する」構成とする動機付けはなく、一方、本件発明1は当該構成により、リサイクル性が良好であるという技術的意義を有するものである。 c まとめ よって、申立人の上記主張a、bは採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲8に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~9、11~24について 本件発明2~9、11~24は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)イで検討したものと同じ理由により、甲1発明及び甲2~甲8に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)進歩性についてのまとめ したがって、本件発明1~9、11~24は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 甲3発明を主引用発明とする進歩性について (1)本件発明1について ア 甲3発明との対比 本件発明1と甲3発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 層構成に関し、甲3発明における「アルミニウム蒸着層(β)」、「基材層(α)」、「接着層(γ)」及び「熱可塑性樹脂層(δ)」はそれぞれ、本件発明1における「無機蒸着層(B)」、「バリア樹脂層(C)」、「接着樹脂層(D)」及び「防湿樹脂層(E)」に相当する。 甲3発明の「蒸着フィルム」は、「LLDPEフィルム(δ’-2)」、「二液型のウレタン系接着剤からなる厚さ2μmの接着層(γ’)」、「アルミニウム蒸着層(β)」、「基材層(α)」、「「アドマー(商標)NF528」からなる厚さ3.3μmの接着層(γ)」、「熱可塑性樹脂層(δ)」、「二液型のウレタン系接着剤からなる厚さ2μmの接着層(γ’)」、「一軸延伸PEフィルム(δ’-1)」が積層されているから、本件発明1における「多層積層体」に相当する。 甲3発明において、「前記c、前記接着層(γ’)及び前記熱可塑性樹脂層(δ)はインフレーション押出成形機を用いて作製された多層フィルムを縦方向に6倍に一軸延伸して形成されたものであり、前記アルミニウム蒸着層(β)は、アルミニウムを基材層(α)側に真空蒸着したものであ」るから、「アルミニウム蒸着層(β)」、「基材層(α)」、「接着層(γ)」及び「熱可塑性樹脂層(δ)」は、この順に全て直接積層されている構成を備える。 甲3発明における「アルミニウム蒸着層(β)」が「厚さ40nm」であることは、本件発明1の「無機蒸着層(B)の平均厚みが、5nm以上200nm以下であ」る構成を備えるといえる。 甲3発明における「「EVOH-A」からなる厚さ3.3μmの基材層(α)」で、「前記「EVOH-A」は、エチレン単位含有量が32.12モル%であり且つけん化度が99.78モル%のEVOHである」と、本件発明1における「バリア樹脂層(C)が、エチレン単位含有量が20モル%以上50モル%以下、けん化度が90モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体(c)を主成分として含」む構成を備える。 甲3発明における「接着層(γ)」を構成する「アドマー(商標)NF528」は、三井化学株式会社が製造販売している接着性樹脂の一つであり、ポリオレフィン系樹脂に接着性を付与したものであるといえるから、本件発明1における「接着樹脂層(D)が、接着性樹脂(d)を主成分として含」む構成を備える。 甲3発明における「熱可塑性樹脂層(δ)」を構成する「ポリエチレン40ST05」は主成分がポリエチレンであるから、本件発明1における「防湿樹脂層(E)が、ポリエチレン(e)を主成分として含」む構成を備える。 甲3発明は「融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む層」及び「平均厚みが1μm以上の金属層」を有していないから、本件発明1における「融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む層及び平均厚みが1μm以上の金属層を有せず」という構成を備える。 そうすると、本件発明1と、甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点B] 「無機蒸着層(B)、バリア樹脂層(C)、接着樹脂層(D)及び防湿樹脂層(E)を有し、 無機蒸着層(B)、バリア樹脂層(C)、接着樹脂層(D)及び防湿樹脂層(E)は、この順に全て直接積層されており、 無機蒸着層(B)の平均厚みが、5nm以上200nm以下であり、 バリア樹脂層(C)が、エチレン単位含有量が20モル%以上50モル%以下、けん化度が90モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体(c)を主成分として含み、 接着樹脂層(D)が、接着性樹脂(d)を主成分として含み、 防湿樹脂層(E)が、ポリエチレン(e)を主成分として含み、 融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む層及び平均厚みが1μm以上の金属層を有しない、多層構造体。」 [相違点2-1] 本件発明1は「紙層(A)」を備えるのに対し、甲3発明は「紙層(A)」に相当する層を備えていない点。 [相違点2-2] 本件発明1は「バリア樹脂層(C)」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを10ppm以上200ppm以下含有するのに対し、甲3発明は「基材層(α)」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを含むか不明である点。 イ 判断 (ア) 事案に鑑み相違点2-2について検討する。 甲3には「基材層(α)」を構成する「樹脂組成物(α)」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを所定量含むことについて記載も示唆もされていない。 甲3の【0081】には「樹脂組成物(α)」が「アルミニウムイオン(B)以外の金属イオン」を含有してもよいことが記載されており、【0083】には「アルミニウムイオン(B)以外の金属イオン」の含有量の範囲が段階的に記載されている。 上記2(1)イ(イ)に示したとおり、エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加することは周知技術であるといえる。 しかしながら、甲3の上記記載及び甲6~甲8に開示された上記周知技術を参酌しても、甲3発明の「基材層(α)」において「マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを10ppm以上200ppm以下含有する」構成とする動機付けはない。 そして、上記2(1)イ(イ)に示したとおり、「バリア樹脂層(C)」の「多価金属イオン」の含有率が「10ppm以上200ppm以下」に特定されている本件発明1は、リサイクル性が良好であるという有利な効果を有するものである。 そうすると、甲3及び甲6~甲8に接した当業者が甲3発明において、相違点2-2に係る本件発明1の構成とすることは、容易に想到し得たことではない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人は特許異議申立書(第54ページ第4~22行)において以下のとおり主張する。 「相違点2-2について検討する。 甲3には「基材層(α)」を構成する「樹脂組成物(α)」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを含むことについて明記されていない。しかし、甲3の段落[0081]には「樹脂組成物(α)」が「アルミニウムイオン(B)以外の金属イオン」を含有してもよいことが記載されており、段落[0083]には「アルミニウムイオン(B)以外の金属イオン」の含有量の範囲が段階的に記載されている。また、上述のとおり、エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加することは周知技術(周知技術3)である。さらに、上述のとおり、本件発明1では「バリア樹脂層(C)」の「多価金属イオン」の含有率が「10ppm以上200ppm以下」に特定されているものの、この特定事項は技術的意義を有するものではない。 よって、甲3発明に対して甲3に記載の事項及び周知技術3を適用し、甲3発明における「基材層(α)」(本件発明1における「バリア樹脂層(C)」に相当)に、エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加し、多価金属イオンの含有率を10ppm以上200ppm以下とすることは当業者にとって容易なことである。」 (イ)上記主張について検討する。 上記主張について、上記イ(ア)で検討したとおり、「エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加することは、」周知技術であったとしても、甲3発明の「基材層(α)」において「マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを10ppm以上200ppm以下含有する」構成とする動機付けはなく、一方、本件発明1は当該構成により、リサイクル性が良好であるという技術的意義を有するものである。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲2~甲8に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~24について 本件発明2~24は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)イで検討したものと同じ理由により、甲3発明及び甲2~甲8に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)進歩性についてのまとめ したがって、本件発明1~24は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 甲4発明を主引用発明とする進歩性について (1)本件発明1について ア 甲4発明との対比 本件発明1と甲4発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 層構成に関し、甲4発明における「板紙22」、「ガスバリア層14」、「バリア層13」、「タイ層12」及び「コア層11」はそれぞれ、本件発明1における「紙層(A)」、「無機蒸着層(B)」、「バリア樹脂層(C)」、「接着樹脂層(D)」及び「防湿樹脂層(E)」に相当する。 甲4発明の「ラミネートパッケージング材料」は、「板紙22」、「ガスバリア層14」、「バリア層13」、「タイ層12」及び「コア層11」が積層されているから、本願発明1における「多層積層体」に相当する。 甲4発明の「ラミネートパッケージング材料」は、「板紙22、バリアフィルム21(10b)及び中間ボンディング層23は押出ラミネーションプロセスによって形成されたものであり」、甲4の図1bを参酌すると、「バリアフィルム21(10b)は、・・・ガスバリア層14と、・・・バリア層13と、・・・タイ層12と、・・・コア層11と、をこの順序で有」し、「前記ガスバリア層14は前記EVOHのバリア層13上に気相堆積被覆されている」から、「ガスバリア層14」、「バリア層13」、「タイ層12」及び「コア層11」は、この順に全て直接積層されている構成を備えるといえる。 甲4発明における「タイ層12」は「無水マレイン酸-グラフトポリプロピレンポリマー」からなり、バリア層13とコア層11を接着しているといえるから、本件発明1における「接着樹脂層(D)が、接着性樹脂(d)を主成分として含」む構成を備える。 甲4発明は「融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む層」及び「平均厚みが1μm以上の金属層」を有していないから、本件発明1における「融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む層及び平均厚みが1μm以上の金属層を有せず」という構成を備える。 そうすると、本件発明1と、甲4発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点C] 「紙層(A)、無機蒸着層(B)、バリア樹脂層(C)、接着樹脂層(D)及び防湿樹脂層(E)を有し、 無機蒸着層(B)、バリア樹脂層(C)、接着樹脂層(D)及び防湿樹脂層(E)は、この順に全て直接積層されており、 接着樹脂層(D)が、接着性樹脂(d)を主成分として含み、 融点が200℃以上の樹脂を主成分として含む層及び平均厚みが1μm以上の金属層を有しない、多層構造体。」 [相違点3-1] 本件発明1は、エチレン単位含有量が20モル%以上50モル%以下であり、けん化度が90モル%以上のエチレン-ビニルアルコール共重合体(C)を主成分としてバリア樹脂層が含むのに対し、甲4発明は「バリア層13」を構成する「EVOH」のエチレン含量が32モル%以下、好ましくは27モル%以下であるとされているものの、エチレン含量の下限値と、けん化度の範囲が不明である点。 [相違点3-2] 本件発明1は「バリア樹脂層(C)」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを10ppm以上200ppm以下含有するのに対し、甲4発明は「バリア層13」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを含むか不明である点。 [相違点3-3] 本件発明1は、「防湿樹脂層(E)が、ポリエチレン(e)を主成分として含」むのに対し、甲4発明は「コア層11」がポリプロピレンホモポリマーからなる配向フィルムで構成されている点。 [相違点3-4] 本件発明1は、「無機蒸着層(B)の平均厚みが、5nm以上200nm以下であ」るのに対し、甲4発明は「ガスバリア層14」が「厚さ略200nm」である点。 イ 判断 (ア) 事案に鑑み相違点3-2について検討する。 甲4には「バリア層13」を構成する「EVOH」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを含むことについて記載も示唆もされていないところ、上記2(1)イ(イ)に示したとおり、エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加することは周知技術であるといえる。 しかしながら、甲6~甲8に開示された上記周知技術を参酌しても、甲4発明の「バリア層13」において「マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを10ppm以上200ppm以下含有する」構成とする動機付けはない。 そして、上記2(1)イ(イ)に示したとおり、、「バリア樹脂層(C)」の「多価金属イオン」の含有率が「10ppm以上200ppm以下」に特定されている本件発明1は、リサイクル性が良好であるという有利な効果を有するものである。 そうすると、甲6~甲8に接した当業者が甲4発明において、相違点3-2に係る本件発明1の構成とすることは、容易に想到し得たことではない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人は特許異議申立書(第65ページ末行~第66ページ第13行)において以下のとおり主張する。 「相違点3-2について検討する。 甲4には「バリア層13」を構成する「EVOH」がマグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを含むことについて明記されていない。しかし、上述のとおり、エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加することは周知技術(周知技術1)である。さらに、上述のとおり、本件発明1では「バリア樹脂層(C)」の「多価金属イオン」の含有率が「10ppm以上200ppm以下」に特定されているものの、この特定事項は技術的意義を有するものではない。 よって、甲4発明に対して周知技術3を適用し、甲4発明における「バリア層13」(本件発明1における「バリア樹脂層(C)」に相当)に、エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加し、多価金属イオンの含有率を10ppm以上200ppm以下とすることは当業者にとって容易なことである。」 (イ)上記主張について検討する。 上記主張について、上記イ(ア)で検討したとおりであり、「エチレンビニルアルコール共重合体組成物において、マグネシウム、カルシウム又は亜鉛イオンを含有する化合物を所定量添加すること」が周知技術であったとしても、甲4発明の「バリア層13」において「マグネシウムイオン、カルシウムイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属イオンを10ppm以上200ppm以下含有する」構成とする動機付けはなく、一方、本件発明1は当該構成により、リサイクル性が良好であるという技術的意義を有するものである。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明及び甲1~甲8に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~9、11、12、16~18、21~24について 本件発明2~9、11、12、16~18、21~24は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(1)イで検討したものと同じ理由により、甲4発明及び甲1~8に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)進歩性についてのまとめ したがって、本件発明1~9、11、12、16~18、21~24は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 むすび 以上のとおり、請求項1~24に係る特許は、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~24に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700189

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