特許異議申立
2025-700321
樹脂組成物及び成形体
- 審判番号
- 2025-700321
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-101663
- 登録番号
- 7554954
- 請求日
- 2025年03月19日
- 審決日
- 2026年06月04日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社クラレ
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【異議申立人】上坂 陽子
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 細井 龍史
- 審判官 藤井 勲
- 分類
- P1651.121-YAA(C08L) / P1651.16 -YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第41条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7554954号発明「樹脂組成物及び成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7554954号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-20〕について訂正することを認める。
特許第7554954号の請求項1~20に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7554954号(以下「本件特許」という。)の請求項1~20に係る特許についての出願は、令和5年7月31日(優先権主張 令和4年9月30日)を出願日とする特願2024-524977号の一部を令和6年6月25日に新たに出願した特願2024-101663号であって、令和6年9月11日にその特許権の設定登録(請求項の数20)がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年3月19日に特許異議申立人 上坂 陽子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~20)がされたものである。
その後の手続は以下のとおりである。
令和7年 6月16日付け 取消理由通知
同年 8月15日 意見書及び乙1(実験成績証明書)の提出
(特許権者)
同年10月27日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和8年 1月 5日 訂正請求及び意見書の提出(特許権者)
同年 1月15日付け 手続補正指令書(方式)
同年 2月16日 手続補正書(方式)の提出(特許権者)
同年 2月19日 訂正請求があった旨の通知
なお、申立人から意見書の提出はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
令和8年2月16日提出の手続補正書(方式)による同年1月5日提出の訂正請求書の補正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第133条第1項の規定により、訂正請求書について補正をすべきことを命じられた場合において、当該命じられた事項についてしたものであり、同法第131条の2第1項ただし書第3号に該当するものである。
1 訂正の内容
令和8年2月16日に手続補正された同年1月5日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7554954号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~20について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とするものであって、その訂正の内容は以下のとおりである。
<訂正事項1>
特許請求の範囲の請求項1に「前記可塑剤(II)は、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物の少なくともいずれかである、樹脂組成物。
【化1】
[図:0001439186000001.jpg]
但し、一般式(1)中、n1~n3は、それぞれ独立して、1又は3であり、R1~R6は、それぞれ独立して、水素原子又は無置換の炭化水素基であり、R1及びR2の合計炭素数が14であり、R3及びR4の合計炭素数が14であり、R5及びR6の合計炭素数が14であり、R1~R6は分岐構造を有してもよい。
【化2】
[図:0001439186000002.jpg]
但し、一般式(2)中、n4及びn5は、それぞれ独立して、1又は3であり、R7~R10は、それぞれ独立して、水素原子又は無置換の炭化水素基であり、R7及びR8の合計炭素数が14であり、R9及びR10の合計炭素数が14であり、R7~R10は分岐構造を有してもよい。」と記載されているのを、
「前記可塑剤(II)は、下記一般式(2)で表される化合物である、樹脂組成物。
【化2】
[図:0001439186000003.jpg]
但し、一般式(2)中、n4及びn5は、それぞれ独立して、1又は3であり、R7~R10は、それぞれ独立して、水素原子又は無置換の炭化水素基であり、R7及びR8の合計炭素数が14であり、R9及びR10の合計炭素数が14であり、R7~R10は分岐構造を有してもよい。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~20も同様に訂正する。)。
なお、訂正前の請求項1~20について、請求項2~20は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~20に対応する訂正後の請求項1~20は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、訂正事項1による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による請求項1についての訂正は、可塑剤(II)について、「下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物の少なくともいずれか」から、「一般式(2)で表される化合物」に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また、特許請求の範囲の減縮を目的とすることからみて、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 本件訂正後の独立特許要件について
特許異議の申立ては、訂正前の請求項1~20に対してされているので、当該請求項における訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
4 むすび
以上のとおり、請求項1~20についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項で準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-20〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件特許の請求項1~20に係る発明(以下順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1~20を総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a1)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a2)(ただし、重合体ブロック(a1)を除く)とを含むブロック共重合体(I)、
カルボキシ基を有さないバイオマス由来の可塑剤(II)、
及び
ポリオレフィン系樹脂(III)を含み、
前記ブロック共重合体(I)中の前記重合体ブロック(a1)における前記芳香族ビニル化合物が、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記ブロック共重合体(I)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求める重量平均分子量が、262,000以上であり、
前記可塑剤(II)のバイオベース度が70質量%以上であり、
前記可塑剤(II)は、下記一般式(2)で表される化合物である、樹脂組成物。
【化2】
[図:0001439186000004.jpg]
但し、一般式(2)中、n4及びn5は、それぞれ独立して、1又は3であり、R7~R10は、それぞれ独立して、水素原子又は無置換の炭化水素基であり、R7及びR8の合計炭素数が14であり、R9及びR10の合計炭素数が14であり、R7~R10は分岐構造を有してもよい。
【請求項2】
前記可塑剤(II)は、40℃における動粘度が100.0cSt以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体(I)における前記重合体ブロック(a1)の含有量が1~65質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ブロック共重合体(I)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求める重量平均分子量が、262,000~600,000である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ブロック共重合体(I)の重合体ブロック(a2)中のビニル結合量が、1.0~40.0モル%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ブロック共重合体(I)中の共役ジエン化合物由来の構造単位における炭素-炭素二重結合の水素添加率が、5.0モル%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ブロック共重合体(I)100質量部に対し、前記可塑剤(II)を1~1500質量部含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ブロック共重合体(I)100質量部に対し、ポリオレフィン系樹脂(III)を1~200質量部含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ブロック共重合体(I)100質量部に対し、前記可塑剤(II)を15~500質量部含み、
前記ブロック共重合体(I)100質量部に対し、前記ポリオレフィン系樹脂(III)を1~200質量部含む、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記ブロック共重合体(I)100質量部に対し、前記可塑剤(II)を20~200質量部含み、
前記ブロック共重合体(I)100質量部に対し、前記ポリオレフィン系樹脂(III)を35~130質量部含む、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリオレフィン系樹脂(III)は、温度190℃、荷重2.16kgf(21N)での条件下におけるメルトフローレートが、0.1~100(g/10min)であるか、又は、温度230℃、荷重2.16kgf(21N)での条件下におけるメルトフローレートが、0.1~100(g/10min)である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリオレフィン系樹脂(III)がポリエチレン及び/又はポリプロピレンを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリオレフィン系樹脂(III)が、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂を含む、請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記ポリオレフィン系樹脂(III)がポリプロピレンである、請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記ポリオレフィン系樹脂(III)がポリエチレンである、請求項12に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
合成可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
前記ブロック共重合体(I)100質量部に対し、粘着付与剤(IV)を1~300質量部含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項18】
前記樹脂組成物のバイオベース度が15質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いてなる成形体。
【請求項20】
請求項1に記載の樹脂組成物を製造する樹脂組成物の製造方法であって、
前記ブロック共重合体(I)と前記可塑剤(II)とを予備混合し、前記予備混合した組成物を溶融混錬し、押し出して切断して製造したドライブレンド用油展コンパウンド(V)と、前記ポリオレフィン系樹脂(III)とを混合する、樹脂組成物の製造方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要、証拠方法及び取消理由通知書に記載した取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1-1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1~20に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び下記の甲第2号証に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由1-2(甲第3号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1~20に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由2(甲第4号証に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1~20に係る発明は、本件特許の出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた下記の甲第4号証として示される日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)から、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 証拠方法等
(1)申立書に添付された証拠方法
甲第1号証:国際公開第2022/163787号
甲第2号証:Dr.Cristina Bergmann「Contribution of renewable process oils for low carbon footprint applications」及び抄訳,2021年11月30日(発表日)
甲第2-1号証:H&R社Niels H.Hansen「VIVA-B-FIX 10227」の商品名の変遷を認定する証明書及び抄訳,2024年4月6日
甲第3号証:国際公開第2022/163786号
甲第4号証:国際公開第2023/145927号
甲第5号証:特開2019-127530号公報
甲第6号証:特開2016-22145号公報
甲第7号証:特開2009-235310号公報
以下「甲第1号証」等を、「甲1」等という。
(2)特許権者が提出した証拠方法
乙第1号証:実験成績証明書 令和7年8月6日 株式会社クラレ 小西大輔
3 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
当審において令和7年10月27日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由1(甲4に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1~19に係る発明は、本件特許の出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた甲4として示される日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)から、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由2(甲1に基づく進歩性)
本件特許の請求項1~20に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第5 当審の判断
以下に述べるとおり、本件特許の請求項1~20に係る特許は、当審において通知した取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
1 取消理由1(甲4に基づく拡大先願)及び申立理由2(甲4に基づく拡大先願)について
取消理由1及び申立理由2は証拠方法を同じくするものであるから、併せて検討する。
(1)証拠方法に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項及び甲4先願発明
(ア)特許法第41条第1項の規定による優先権の主張の基礎とされ、同法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定により、出願公開されたものとみなされる先願の当初明細書等に記載された事項
甲4として示される特願2022-013133号(国際公開第2023/145927号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲(以下「甲4優先基礎出願明細書」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。以下同様。)。
「特許請求の範囲
【請求項1】
下記成分(A)~成分(C)を含む熱可塑性エラストマー組成物。
成分(A):熱可塑性樹脂
成分(B):エラストマー
成分(C):40℃における動粘度が15cSt以上のイソアルカン
・・・
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を用いた成形体。」
「【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物及びそれよりなる成形体に関するものである。
【0002】
熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有すると共に、独特のゴム弾性を有している。熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーはリサイクルが可能であることから、自動車部品、建築部品、医療用部品、電線被覆材、食品用部品、包材、雑貨、衣服用品、スポーツ用品等の用途に幅広く用いられている。
例えば、特定の水添ブロック共重合体と40℃における動粘度が100cSt以上である非芳香族系ゴム用軟化剤とポリオレフィン系樹脂を特定の配合割合で配合する熱可塑性エラストマー組成物が知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2000-169666公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車内装空間において、高級感や快適さが求められており、様々なデザインの自動車内装空間が提案されている。また、雑貨等の用途においてもユニバーサルデザインが普及していることから、製品形状が複雑化している。このような用途において、熱可塑性エラストマーには、より良好な成形性が求められている。
【0005】
また、環境問題への意識の高まりから、自動車用途を中心に材料の軽量化が求められている。同様の観点から加硫ゴム代替として熱可塑性エラストマーの活用も注目されており、良好なゴム弾性を有することが特に重要視されている。
更に、幅広い用途で使用される熱可塑性エラストマーは様々な温度環境で使用されるため、低沸分の揮発による重量減少やブリードアウトが懸念されている。
【0006】
このような中、特許文献1に記載の熱可塑性エラストマー組成物は、一定の条件では耐ブリードアウト性が不十分であり、改良の余地があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、良好な成形性とゴム弾性を有するだけではなく、樹脂の軽量化が可能であり、耐ブリードアウト性にも優れた熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の成分(A)と成分(B)と成分(C)を含む熱可塑性エラストマー組成物が上記課題を解決し得ることを見出した。」
「【0029】
[成分(B):エラストマー]
エラストマーとしては、エチレン・プロピレン・共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン・ブテン共重合ゴム(EBM)、エチレン・プロピレン・ブテン共重合ゴム等を1種又は複数種含んだオレフィン系エラストマー、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(SEBS)等を1種又は複数種含んだスチレン系エラストマー;ポリブチレンテレフタレート・ポリテトラメチレンエーテルグリコール共重合体(PBT・PTMG)等を1種又は複数種含んだポリエステル系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;ポリウレタン系エラストマー;ポリ塩化ビニル系エラストマー;ポリブタジエン系エラストマー;及びこれらの水添物や、酸無水物等により変性して極性官能基を導入させたもの;更に他の単量体をグラフト、ランダム及び/又はブロック共重合させたもの等が挙げられる。
【0030】
これらのエラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
上記エラストマーの中でも、軽量性や機械特性の観点から、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーが好ましい。また、成分(C)との相互作用の観点から、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーがより好ましい。
・・・
【0036】
スチレン系エラストマーとしては、少なくとも1個の芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合ブロックP(以下、単に「ブロックP」と称す場合がある。)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単位を主体とする重合体ブロックQ(以下、単に「ブロックQ」と称す場合がある。)とを有するブロック共重合体及び/又はその水素添加物(以下「(水添)ブロック共重合体」と称す場合がある。)が好ましい。
ここで「主体とする」とは、当該ブロックを構成する単量体単位の含有率が50モル%以上であることを意味する。
【0037】
ブロックPを構成する芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレンが挙げられる。これらの中でも、入手性及び生産性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンが好ましく用いられる。より好ましくはスチレンである。
ブロックPは、1種の芳香族ビニル化合物単位で構成されていてもよいし、2種以上の芳香族ビニル化合物単位から構成されていてもよい。ブロックPには、ビニル芳香族化合物単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。
【0038】
ブロックQを構成する共役ジエン化合物とは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンが挙げられる。これらの中でも、生産性の観点から、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく用いられる。より好ましくは1,3-ブタジエンである。
ブロックQは、1種の共役ジエン化合物単位で構成されていてもよいし、2種以上の共役ジエン化合物単位から構成されていてもよい。ブロックQには、共役ジエン化合物単位以外の単量体単位が含まれていてもよい。
【0039】
このようなスチレン系エラストマーとしては、市販品を用いることもできる。市販品としては、具体的には、クレイトンポリマー社製「クレイトン(登録商標)G」、クラレ社製「セプトン(登録商標)」「セプトン(登録商標)バイオ」、旭化成社製「タフテック(登録商標)」、「S.O.E(登録商標)」、TSRC社製「TAIPOL(登録商標)」、LCY社製「GLOBALPRENE」が挙げられる。」
「【実施例】
【0112】
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0113】
[原材料]
以下の実施例・比較例で使用した原材料は以下の通りである。
【0114】
<成分(A)>
A-1:プロピレン単独重合体
日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP FA3KM」
MFR(JIS K7210、230℃、21.2N荷重):10g/10分
【0115】
<成分(B)>
B-1:スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物
旭化成社製「タフテック(登録商標)N504」
【0116】
<成分(C)>
C-1:イソアルカン
H&R社製「VIVASPES 10227」
40℃の動粘度:56cSt
引火点:280℃
流動点:-27℃
Mw:1110
分子量分散度:1.0
【0117】
<成分(D)>
D-1:BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」
ヒンダードフェノール系酸化防止剤
【0118】
<成分(X)>
X-1:パラフィン系オイル
出光興産株式会社製ダイアナ(登録商標)「プロセスオイルPW-32」
40℃の動粘度:30.6cSt
引火点:222℃
流動点:-17.5℃
X-2:パラフィン系オイル
出光興産株式会社製ダイアナ(登録商標)「プロセスオイルPW-90」
40℃の動粘度:95.54cSt
引火点:272℃
流動点:-17.5
Mw:728
分子量分散度:1.2
X-3:パラフィン系オイル
出光興産株式会社製ダイアナ(登録商標)「プロセスオイルPW-380」
40℃の動粘度:408.8cSt
引火点:300℃
流動点:-15℃
Mw:1230
分子量分散度:1.1
【0119】
[評価方法]
以下の実施例・比較例の熱可塑性エラストマー組成物の評価方法は以下の通りである。
【0120】
<成形性>
実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、ISO1133に参考し、メルトインデクサー(東洋精機製作所製)を用い、230℃、21.18Nの条件でMFRを測定した。MFRが高いほど流動性が高く、成形性に優れていることを示している。
【0121】
<軽量性>
実施例及び比較例で製造された射出成形体(120mm×80mm×2mm)について、ISO1183に参考にして、密度計(東洋精機製作所製)を用いて、水中置換法にて比重を測定した。比重は小さいほど、軽量性に優れていることを示している。
【0122】
<柔軟性>
実施例及び比較例で製造された射出成形体(120mm×80mm×2mm)について、ISO7619に参考にして、15秒後のデュロA硬度を測定し、柔軟性を評価した。デュロA硬度はその値が小さいほど柔軟性に優れることを示している。本発明における熱可塑性エラストマー組成物における柔軟性においては、デュロA硬度は±4の範囲においては同等である。
【0123】
<ゴム弾性>
実施例及び比較例で製造された射出成形体(120mm×80mm×2mm)を打ち抜いて得たTypeA円盤:29mmφを6枚重ねて試験片を作製し、JIS K6262に参考して、70℃、22時間、25%圧縮条件で測定した。圧縮永久歪はその値が小さいほどゴム弾性優れることを示している。なお、一般的に、デュロ硬度が低いものほど、圧縮永久縮歪が優れる傾向にある。
【0124】
<耐ブリードアウト性>
実施例及び比較例で製造された射出成形体(120mm×80mm×2mm)を打ち抜いて、φ80mmの試験片を作成し、エアー式フォギングテスターを用いて、100℃、72時間条件で測定した。試験前後のガラスの重量変化(Δ重量)及びグロス変化(Δグロス)を評価した。いずれも数値が小さいほど、耐ブリードアウト性が優れることを示している。
【0125】
[実施例/比較例]
<実施例1>
表-1に示す様に(A-1)を10質量部、(B-1)を45質量部、(C-1)を45質量部、(D-1)を0.1質量部を混合し、得られた混合物を二軸混練機により溶融混練(シリンダー温度180~200℃)し、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物を、型締力180tで、電動の射出成形機(住友重機械工業株式会社製)で、シリンダー温度200℃、金型温度40℃にて、縦120mm×横80mm×厚さ2mmのシート状の金型中に射出速度40mm/秒で射出充填した。充填完了後30秒間冷却してから射出成形体を取り出した。得られた射出成形体について評価を行い、結果を表-1に示した。
【0126】
<比較例1~3>
表-1に示す配合にした以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、実施例1と同様に評価し、評価結果を表-1に示した。
【0127】
[図:0001439186000005.jpg]
【0128】
<評価結果>
表-1に示す通り、実施例1の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性、軽量性、ゴム弾性、耐ブリードアウト性のいずれも良好であった。
これに対して、成分(C)のイソアルカンの代りに、パラフィン系オイルを用いた比較例1~3では、MFRが小さく、成形性に劣り、特に比較例1,2では、耐ブリードアウト性も劣るものであった。」
(イ)甲4先願発明
甲4優先基礎出願明細書の実施例1(段落【0114】~【0117】)の「熱可塑性エラストマー組成物」に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「下記(A-1)を10質量部、下記(B-1)を45質量部、下記(C-1)を45質量部、下記(D-1)を0.1質量部を混合し、得られた混合物を二軸混練機により溶融混練(シリンダー温度180~200℃)して得られた、熱可塑性エラストマー組成物。
A-1:プロピレン単独重合体
日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP FA3KM」
MFR(JIS K7210、230℃、21.2N荷重):10g/10分
B-1:スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物
旭化成社製「タフテック(登録商標)N504」
C-1:イソアルカン
H&R社製「VIVASPES 10227」
40℃の動粘度:56cSt
引火点:280℃
流動点:-27℃
Mw:1110
分子量分散度:1.0
D-1:BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」
ヒンダードフェノール系酸化防止剤」(以下「甲4先願発明」という。)
イ 甲2-1
甲2-1には、以下の事項が記載されている。なお、下記記載事項は、甲2-1の抄訳を用いた。
「 2024年4月6日
「VIVA-B-FIX 10227」の商品名の変遷の認定
顧客各位
「VIVA-B-FIX 10227」は、当初、「PIONIER 10227」の商品名で販売され、その後、「VIVASPES 10227」の商品名で販売されたものであることをここに証明いたします。
現在入手可能な商品である「VIVA-B-FIX 10227」は、過去に「PIONIER 10227」及び「VIVASPES 10227」の商品名で販売された商品と技術的に同一物であります。従って、これは単に商品名の変更に過ぎず、技術的特徴は同一であります。
エイチアンドアール グループ
(ニールズ署名)
ニールズ エイチ.ハンセン」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1
(ア)対比
本件特許発明1と甲4先願発明とを対比する。
甲4先願発明の「B-1:スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物 旭化成社製「タフテック(登録商標)N504」」は、本件特許発明1の「芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a1)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a2)(ただし、重合体ブロック(a1)を除く)とを含むブロック共重合体(I)」であって、「前記ブロック共重合体(I)中の前記重合体ブロック(a1)における前記芳香族ビニル化合物が、スチレン」であるものに相当する。
また、甲4先願発明の「A-1:プロピレン単独重合体 日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP FA3KM」」は、本件特許発明1の「ポリオレフィン系樹脂(III)」に相当する。
そして、甲4先願発明の「C-1:イソアルカン H&R社製「VIVASPES 10227 40℃の動粘度:56cSt」は、甲4優先基礎出願明細書の段落【0068】には、「40℃における動粘度が15cSt以上のイソアルカンを含むことで、得られる熱可塑性エラストマー組成物を軟化させ、柔軟性とゴム弾性を増加させる」ことが記載されていることから、本件特許発明1における「カルボキシ基を有さないバイオマス由来の可塑剤(II)」であり、「前記可塑剤(II)のバイオベース度が70質量%以上であり、前記可塑剤(II)は、下記一般式(2)で表される化合物」のうち「可塑剤(II)」である限りにおいて相当する。
さらに、甲4先願発明の「熱可塑性エラストマー組成物」は、本件特許発明1の「樹脂組成物」に相当する。
してみると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a1)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a2)(ただし、重合体ブロック(a1)を除く)とを含むブロック共重合体(I)、
可塑剤(II)、
及び
ポリオレフィン系樹脂(III)を含み、
前記ブロック共重合体(I)中の前記重合体ブロック(a1)における前記芳香族ビニル化合物が、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも1種である、樹脂組成物。
<相違点4-1>
可塑剤(II)が、本件特許発明1は「カルボキシ基を有さないバイオマス由来」のものであり、「バイオベース度が70質量%以上であり」、「下記一般式(2)で表される化合物(当審注:一般式は省略する。以下同様。)」であるのに対し、甲4先願発明は、当該化合物であるのか不明である点
<相違点4-2>
前記ブロック共重合体(I)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求める重量平均分子量が、本件特許発明1は「262,000以上」であるのに対し、甲4先願発明は不明である点
(イ)相違点の検討
<相違点4-1>について
甲4先願発明の「H&R社製「VIVASPES 10227」は、上記(1)イで示した甲2-1によると、「VIVA-B-FIX10227」と同一物であると認められる。
本件特許明細書の段落【0118】に、
「<可塑剤(II)>
可塑剤A:製品名:VIVA-B-FIX10227、H&R社製、一般式(1)で示される構造を有する混合物、バイオベース度(ASTM D6866-21):100質量%
可塑剤B:製品名:VIVASPES10234、H&R社、一般式(2)で示される構造を有する混合物、バイオベース度(ASTM D6866-21):100質量%」と記載されていることから、甲4先願発明の「H&R社製「VIVASPES 10227」は、本件特許発明1の「一般式(1)で表される化合物」に相当するものの、「一般式(2)で表される化合物」ではない。
そうすると、<相違点4-1>は実質的な相違点である。
そして、甲4優先基礎出願明細書には、「一般式(2)で表される化合物」について記載も示唆もされていないし、「一般式(2)で表される化合物」は周知のものでもないことから、当該相違点は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等)であって、新たな効果を奏するものではないものともいえない。
そうすると、<相違点4-1>は実質的に一致するともいえない。
(ウ)小括
したがって、<相違点4-1>は、相違するもので、実質的に一致するともいえないため、<相違点4-2>について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4先願発明と同一ないし実質同一ではない。
イ 本件特許発明2~20について
本件特許発明2~20は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記アで説示したのと同様の理由により、本件特許発明2~20は、甲4先願発明と同一ないし実質同一ではない。
(3)取消理由1(甲4に基づく拡大先願)及び申立理由2(甲4に基づく拡大先願)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1~20は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものとはいえないから、本件特許の請求項1~20に係る特許は、取消理由1及び申立理由2によっては取り消すことはできない。
2 取消理由2(甲1に基づく進歩性)及び申立理由1-1(甲1に基づく進歩性)について
取消理由2及び申立理由1-1は証拠方法を同じくするものであるから、併せて検討する。
(1)証拠方法に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
甲1には、「[請求項1] 芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a1)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a2)とを含むブロック共重合体(I)、
可塑剤(II)、及び、
バイオマス由来のポリオレフィン系樹脂(III)を含み、
前記可塑剤(II)がバイオマス由来の原料を含有する可塑剤(II-1)を含み、
樹脂組成物のバイオベース度が45質量%以上である、樹脂組成物。」に関する技術が記載されているところ、その実施態様である実施例1(段落[0114]~[0116]、[0121]、[0122])に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。
「下記ブロック共重合体(P-1)60部
下記ブロック共重合体(Q-1)40部
可塑剤(II-1):植物由来可塑剤、精製パームステアリン酸の水添物(製品名:HPRS WIFARIN社製)、バイオベース度(ASTM D6866-16):90質量%)70部
ポリエチレン(III-1):バイオLDPEポリエチレン(製品名:SPB608、Braskem社製、メルトフローレート:30g/10分(190℃、21N)、バイオベース度(ASTM D6866-16):95質量%))80部
ポリプロピレン(IV-2):ブロックポリプロピレン(製品名:J707、プライムポリマー社製、MFR:30g/10分(230℃、21N))15部
酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(製品名:アデカスタブAO-60、株式会社ADEKA製)0.1部 からなる樹脂組成物
ブロック共重合体(P-1)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.0155kgを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.32kgを加えて1時間重合を行い、続いてβ-ファルネセン6.18kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.32kgを加えて1時間重合を行い、ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得、上記反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を上記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行い、放冷、放圧後、濾過により水素添加触媒を除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより得られた、ピークトップ分子量(Mp)が373,000のポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(ブロック共重合体(P-1))。
ブロック共重合体(Q-1)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.0310kgを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.32kgを加えて1時間重合を行い、ブタジエン2.73kg及びイソプレン3.44kgの混合液を加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.32kgを加えて1時間重合を行い、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/イソプレン)-ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得、上記反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を上記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行い、放冷、放圧後、濾過により水素添加触媒を除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより得られた、ピークトップ分子量(Mp)が262,000のポリスチレン-ポリ(ブタジエン/イソプレン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(ブロック共重合体(Q-1))。」(以下「甲1発明」という。)
イ 甲2に記載された事項
[図:0001439186000006.jpg]
[図:0001439186000007.jpg]
[図:0001439186000008.jpg]
[図:0001439186000009.jpg]
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する
β-ファルネセン、ブタジエン/イソプレンは、共役ジエン化合物であるから、甲1発明の「ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(ブロック共重合体(P-1)」及び「ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/イソプレン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(ブロック共重合体(Q-1))は、本件特許発明1の「芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a1)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a2)(ただし、重合体ブロック(a1)を除く)とを含むブロック共重合体(I)」であり、「前記ブロック共重合体(I)中の前記重合体ブロック(a1)における前記芳香族ビニル化合物が、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも1種」であるものに相当する。
また、甲1発明の「可塑剤(II-1):植物由来可塑剤、精製パームステアリン酸の水添物(製品名:HPRS WIFARIN社製)、バイオベース度(ASTM D6866-16):90質量%)」は、本件特許発明1における「カルボキシ基を有さないバイオマス由来の可塑剤(II)」であり、「前記可塑剤(II)のバイオベース度が70質量%以上であり、前記可塑剤(II)は、下記一般式(2)で表される化合物」のうち、「バイオマス由来の可塑剤(II)」であり「前記可塑剤(II)のバイオベース度が70質量%以上」である限りにおいて相当する。
そして、甲1発明の「ポリエチレン(III-1):バイオLDPEポリエチレン(製品名:SPB608、Braskem社製、メルトフローレート:30g/10分(190℃、21N)、バイオベース度(ASTM D6866-16):95質量%))」及び「ポリプロピレン(IV-2):ブロックポリプロピレン(製品名:J707、プライムポリマー社製、MFR:30g/10分(230℃、21N))」は、本件特許発明1の「ポリオレフィン系樹脂(III)」に相当する。
甲1発明の「樹脂組成物」は、本件特許発明1の「樹脂組成物」に相当する。
してみると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a1)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a2)(ただし、重合体ブロック(a1)を除く)とを含むブロック共重合体(I)、
バイオマス由来の可塑剤(II)、
及び
ポリオレフィン系樹脂(III)を含み、
前記ブロック共重合体(I)中の前記重合体ブロック(a1)における前記芳香族ビニル化合物が、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記可塑剤(II)のバイオベース度が70質量%以上である、樹脂組成物。
<相違点1-1>
バイオマス由来の可塑剤(II)が、本件特許発明1は「カルボキシ基を有さない」ものであって「一般式(2)で表される化合物」であるのに対し、甲1発明は「精製パームステアリン酸の水添物(製品名:HPRS WIFARIN社製)」である点
<相違点1-2>
ブロック共重合体の分子量が、本件特許発明1は「前記ブロック共重合体(I)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求める重量平均分子量が、262,000以上」であるのに対し、甲1発明はポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(ブロック共重合体(P-1))のピークトップ分子量(Mp)が373,000であり、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/イソプレン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(ブロック共重合体(Q-1))のピークトップ分子量(Mp)が262,000である点
(イ)相違点の検討
<相違点1-1>について
申立人の提出した甲2及びその他いずれの証拠にも、可塑剤(II)として、「一般式(2)で表される化合物」は記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明の可塑剤(II)として、「一般式(2)で表される化合物」に代替することは当業者が容易になし得たこととはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2~20について
本件特許発明2~20は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記アで示した本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明2~20は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)取消理由2(甲1に基づく進歩性)及び申立理由1-1(甲1に基づく進歩性)のまとめ
以上検討したとおり、本件特許発明1~20は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~20に係る特許は、取消理由2及び申立理由1-1によっては取り消すことはできない。
3 申立理由1-2(甲3に基づく進歩性)について
(1)証拠方法に記載された事項等
ア 甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明
甲3には、「[請求項1] 芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a1)と、ファルネセン由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a2)とを含むブロック共重合体(A)、
芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(b1)と、イソプレン由来の構造単位を30モル%以上含有する重合体ブロック(b2)とを含むブロック共重合体(B)、
可塑剤(C)、及び
バイオマス由来のポリオレフィン系樹脂(D)を含み、
樹脂組成物のバイオベース度が37質量%以上である、樹脂組成物。」に関する技術が記載されているところ、その実施態様である実施例9([0099]、[0100]、[0105]、[0106]、[0112])に着目すると、以下の発明が記載されているといえる。
「下記ブロック共重合体(A-1)70部
下記ブロック共重合体(B-5)30部
可塑剤(C):パラフィン系プロセスオイル(製品名:ダイアナプロセスPW-90、出光興産社製)60部
ポリオレフィン系樹脂(D):ポリエチレン:バイオLDPEポリエチレン(製品名:SPB608、Braskem社製、メルトフローレート:30g/10分(190℃、21N)、バイオベース度(ASTM D6866-16):95質量%)45部
ポリプロピレン(E-1):ホモポリプロピレン(製品名:J107G、プライムポリマー社製、MFR:30g/10分(230℃、21N))20部
酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤(製品名:アデカスタブAO-60、株式会社ADEKA製)0.1部 からなる樹脂組成物
ブロック共重合体(A-1)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.0155kgを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.32kgを加えて1時間重合を行い、続いてβ-ファルネセン6.18kgを加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.32kgを加えて1時間重合を行い、ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得、上記反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を上記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過により水素添加触媒を除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより得られた、ピークトップ分子量(Mp)が373,000のポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物。
ブロック共重合体(B-5)
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン50.0kg、アニオン重合開始剤としてsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)0.0310kgを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン(1)1.32kgを加えて1時間重合を行い、ブタジエン2.73kg及びイソプレン3.44kgの混合液を加えて2時間重合を行い、更にスチレン(2)1.32kgを加えて1時間重合を行い、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/イソプレン)-ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応液を得、上記反応液に、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を上記ブロック共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行い、放冷、放圧後、濾過により水素添加触媒を除去し、濾液を濃縮し、更に真空乾燥することにより得られた、ピークトップ分子量(Mp)が262,000のポリスチレン-ポリ(ブタジエン/イソプレン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物。」(以下「甲3発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1
(ア)対比
本件特許発明1と甲3発明を対比する
β-ファルネセン、ブタジエン/イソプレンは、共役ジエン化合物であるから、甲3発明の「ポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(ブロック共重合体(A-1)」及び「ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/イソプレン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(ブロック共重合体(B-5))は、本件特許発明1の「芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a1)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a2)(ただし、重合体ブロック(a1)を除く)とを含むブロック共重合体(I)」であり、「前記ブロック共重合体(I)中の前記重合体ブロック(a1)における前記芳香族ビニル化合物が、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも1種」であるものに相当する。
また、甲3発明の「可塑剤(C):パラフィン系プロセスオイル(製品名:ダイアナプロセスPW-90、出光興産社製)」は、本件特許発明1における「カルボキシ基を有さないバイオマス由来の可塑剤(II)」であり、「前記可塑剤(II)のバイオベース度が70質量%以上であり、前記可塑剤(II)は、下記一般式(2)で表される化合物」のうち「可塑剤(II)」である限りにおいて相当する。
そして、甲3発明の「ポリオレフィン系樹脂(D):ポリエチレン:バイオLDPEポリエチレン(製品名:SPB608、Braskem社製、メルトフローレート:30g/10分(190℃、21N)、バイオベース度(ASTM D6866-16):95質量%)」及び「ポリプロピレン(E-1):ホモポリプロピレン(製品名:J107G、プライムポリマー社製、MFR:30g/10分(230℃、21N))」は、本件特許発明1の「ポリオレフィン系樹脂(III)」に相当する。
甲3発明の「樹脂組成物」は、本件特許発明1の「樹脂組成物」に相当する。
してみると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
芳香族ビニル化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a1)と、共役ジエン化合物由来の構造単位を含有する重合体ブロック(a2)(ただし、重合体ブロック(a1)を除く)とを含むブロック共重合体(I)、
可塑剤(II)、
及び
ポリオレフィン系樹脂(III)を含み、
前記ブロック共重合体(I)中の前記重合体ブロック(a1)における前記芳香族ビニル化合物が、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンからなる群より選択される少なくとも1種である、樹脂組成物。
<相違点3-1>
可塑剤(II)が、本件特許発明1は「カルボキシ基を有さないバイオマス由来」ものであって「一般式(2)で表される化合物」であるのに対し、甲3発明は「パラフィン系プロセスオイル(製品名:ダイアナプロセスPW-90、出光興産社製)」である点
<相違点3-2>
ブロック共重合体の分子量が、本件特許発明1は「前記ブロック共重合体(I)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求める重量平均分子量が、262,000以上」のものであるのに対し、甲3発明はポリスチレン-ポリ(β-ファルネセン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(ブロック共重合体(A-1))のピークトップ分子量(Mp)が373,000であり、ポリスチレン-ポリ(ブタジエン/イソプレン)-ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(ブロック共重合体(B-5))のピークトップ分子量(Mp)が262,000である点
(イ)相違点の検討
<相違点3-1>について
申立人の提出した甲2及びその他いずれの証拠にも、可塑剤(II)として、「一般式(2)で表される化合物」は記載も示唆もされていない。
そうすると、甲3発明の可塑剤(II)として、「一般式(2)で表される化合物」に代替することは当業者が容易になし得たこととはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、他の相違点を検討するまでもなく、甲3発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2~20について
本件特許発明2~20は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、上記アで示した本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明2~20は、甲3に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由1-2(甲3に基づく進歩性)のまとめ
以上検討したとおり、本件特許発明1~20は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1~20に係る特許は、申立理由1-2によっては取り消すことはできない。
第6 むすび
上記第5のとおり、本件特許の請求項1~20に係る特許は、当審において通知した取消理由及び申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許の請求項1~20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700321