特許異議申立
2025-700161
情報処理装置、情報処理システム及びプログラム
- 審判番号
- 2025-700161
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-559646
- 登録番号
- 7530687
- 請求日
- 2025年02月05日
- 審決日
- 2025年06月20日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社MAZIN
- 【権利者代理人】酒谷 誠一
- 【異議申立人】前田 正夫
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 川瀬 正巳
- 審判官 河原 正
- 分類
- P1651.121-Y (B29C) / P1651.536-Y (B29C) / P1651.537-Y (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第4号、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7530687号発明「情報処理装置、情報処理システム及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7530687号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7530687号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許についての出願(特願2023-559646号)は、2022年(令和4年)11月 8日(優先権主張 令和3年11月 9日)を国際出願日とする国際出願であって、令和6年 7月31日にその特許権の設定登録がされ、令和6年 8月 8日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和7年 2月 5日に、本件特許の請求項1~11に係る特許に対し、特許異議申立人 前田 正夫(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和7年 4月 9日に手続補正書(方式)が提出された。
第2 本件特許発明
特許第7530687号の請求項1~11の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明11」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理システムであって、
所定の前記成形品の良品成形時に前記成形機または前記型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置と、
前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成形時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する成形条件提供部と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記少なくとも一つの設定条件は、射出速度、VP切替位置、保圧及び保圧時間のうち少なくとも一つである、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記記憶装置には、前記基準波形データが複数記憶されており、
前記成形条件提供部は、前記複数の基準波形データに対応する複数の設定条件から良品が出る設定条件範囲を複数特定し、特定した複数の設定条件範囲から一つの設定条件範囲を選択し、当該選択した設定条件範囲に基づいて設定条件の値を出力する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記記憶装置には、樹脂の種類または樹脂の特性毎に機械学習モデルが記憶されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記成形条件提供部は、ユーザによって入力された樹脂の種類または樹脂の物性に応じた機械学習モデルを前記記憶装置を参照して選択し、当該選択した機械学習モデルを用いて、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記成形条件提供部は、前記成形機に設けられたモータの特性値及び/または前記成形機を制御するコントローラに格納されている前記モータの特性値を用いて、前記成形機の前記樹脂の物性を推定し、当該推定した樹脂の物性に応じた機械学習モデルを用いて、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記記憶装置には、樹脂の種類または樹脂の物性が入力パラメータに含まれる機械学習モデルが記憶されている、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記成形条件提供部は、ユーザによって入力された樹脂の種類または樹脂の物性に基づいて、樹脂の種類または樹脂の特性を前記機械学習モデルに入力することにより、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する
請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記成形条件提供部は、前記成形機に設けられたモータの特性値及び/または前記成形機を制御するコントローラに格納されている前記モータの特性値を用いて、前記成形機の前記樹脂の物性を推定し、当該推定した樹脂の物性を機械学習モデルに入力して、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する
請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項10】
当該情報処理システムは1または複数の情報処理装置から構成されている請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項11】
所定の成形品の良品成形時に成形機または型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置を参照可能なコンピュータに、
前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成型時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する手順、
を実行させるためのプログラム。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和7年 2月 5日に異議申立人が提出し、同年 4月 9日に異議申立人が提出した手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1
(1) 本件特許の請求項1~11に係る発明は、優先権主張の基礎となった先の出願(以下、単に「先の出願」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2) 証拠方法
甲1:特開平2-128821号公報(合議体注:異議申立人が提出した「甲第1号証」を「甲1」と略す。甲第2号証~甲第10号証についても同様とする。)
甲2:富士ソフトニュースリリース、「富士ソフト、豊田自動織機様のAI自動補正システムの構築を支援 AI活用によるスマート生産ラインの実現で生産品質の安定維持と業務の生産性向上に貢献」、[online]、富士ソフト株式会社、2021年7月21日(掲載日)、1/2~2/2頁、インターネット<https://www.fsi.co.jp/company/news/2021/20210721.pdf>
甲3:特開2020-49929号公報
甲4:特開平5-96592号公報
甲5:特表2016-539820号公報
甲6:特表2022-550811号公報
甲7:国際公開第2021/091191号公報
甲8:畠山 歓著、「材料科学における機械学習の利用と課題」,2021年3月5日発行、日本神経回路学会、Vol.28,No.1,p.20-27(特に、p.25の図7b),インターネット<https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnns/28/1/28_20/_pdf/-char/ja>
甲9:米国特許出願公開第2016/0158985号明細書
甲10:特開2019-14187号公報
2 申立理由2
本件特許の請求項1~11に係る発明は明確でないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきである。
3 申立理由3
発明の詳細な説明は、本件特許の請求項1~11に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないため、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当するから、取り消されるべきである。
第4 明確性要件(特許法第36条第6項第2号)についての判断
1 異議申立書における異議申立人の主張
異議申立書40頁7~20行(同7頁、同42頁)において、異議申立人は、
本件特許発明1及び本件特許発明11は、それぞれ「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、」との発明特定事項を具備するところ、
「成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデル」とは、どのような学習をするのか明らかではない、
よって、特許発明1-11は、特許を受けようとする発明が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する明確性要件を満たしておらず特許を受けることができない、
と主張する。
2 合議体の判断
(1) 明確性要件の判断基準
特許法第36条第6項第2号の定める要件を充足するか否かは、すなわち、発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
上記観点から、本件特許発明1~11が明確であるか否かについて以下検討する
(2) 判断
ア 機械学習とは、データから、「機械(コンピューター)」が自動で、あるデータの中から一定の規則を発見し、その規則に基づいて未知のデータに対する推測・予測等を実現する学習手法、を意味し、
機械学習モデルとは、機械学習の結果得られたパラメータが組み込まれ、入力に対し一定の結果の出力を可能にするプログラムであるということは、先の出願時の当業者の技術常識である。(必要であれば、「AI・データの利用に関する契約ガイドライン-AI編-」(平成30年6月経済産業省、経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/connected_industries/sharing_and_utilization/20180615001-3.pdf))「第2 AI技術の解説」欄等参照。)
イ そうすると、特許請求の範囲の請求項1及び請求項11の記載は、上記第2で述べたとおりであるところ、請求項1の「型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理システム」が、
「少なくとも一つの記憶装置」と、
「前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成形時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し」、
「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデル」「を用いて」、「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する成形条件提供部と」、「を備える」
との記載における、
「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデル」について、
機械学習の技術分野に属する当業者は、技術常識に基づき、
「少なくとも一つの設定条件の値」及び「当該設定条件の値のときの成形時の波形データ」を「入力」データ(学習データ)として、
「成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなる」規則、すなわち、「センサ」から取得される「成形時の波形データ」と「基準波形データ」の差を小さくするには、「設定条件の値」をどのように設定すればよいのかの「一定の規則」を、
「機械学習」により導出し、入力(「設定条件の値」及び「当該設定条件の値のときの成形時の波形データ」)に対し、導出した上記規則に基づいて、一定の結果の出力(新たな「設定条件の値」)を可能にするプログラムを意味する、と明確に理解することができる。
また、上記のような理解は、「型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理システム」において、
「成形条件提供部」が、このような「機械学習モデル」を用いて、
すなわち、導出、出力された一定の結果の出力である、「センサ」から取得される「成形時の波形データ」と「基準波形データ」の差を小さくするには、「設定条件」をどのように設定すればよいのかの「一定の規則」に基づいて、
「少なくとも一つの設定条件の値」と「当該設定条件の値のときの成形時の波形データ」「を処理」し、「基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する」との、請求項1の他の記載内容とも整合することからも、自然な理解である。
請求項11の同記載についても同様である。
ウ 以上のとおりであるから、当業者の技術常識に基づけば、特許請求の範囲の請求項1及び請求項11の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である、ということはできない。
してみると、本件特許発明1及び本件特許発明11は明確である。請求項1の記載を引用して記載される本件特許発明2~10についても同様である。
したがって、本件特許の請求項1~11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
第5 実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)についての判断
1 異議申立書における異議申立人の主張
異議申立書7頁(理由の要点)及び42頁11~15行において、異議申立人は、
請求項1-11に係る発明は、「成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデル」が、発明の実施の形態において当業者が実施可能に記載されていない、と主張する。
また、異議申立書40頁下から4行~41頁4行(同7頁、同42頁)において、異議申立人は、
発明の詳細な説明において、「学習する学習モデル」をどのように用いれば、本件特許発明1の構成要件1F(:「前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成形時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する成形条件提供部と、を備える情報処理システム。」)に記載の処理及び本件特許11の構成要件11E(:「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する手順、を実行させるためのプログラム。」)に記載の手順が実行可能であるのかについての記載がない、
よって、本件特許発明1-11は、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないため、特許法第36条第4項第1号に規定する実施可能要件を満たしていないため特許を受けることができない、
と主張する。
2 合議体の判断
(1) 実施可能要件の判断基準
発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号の要件(いわゆる実施可能要件)に適合するというためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その発明を実施することができる程度に明確かつ十分な記載があることが必要である。
そして、特許請求の範囲に記載された発明が、物の発明である場合、物の発明について実施をすることができるとは、その物を作れ、かつ、その物を使用できることであるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすためには、当業者が、物の発明について明確に理解でき、その物を作れ、かつ、その物を使用できる程度に具体的な記載が求められる。
ソフトウエア関連発明における実施可能要件についても同様である。
これを本件特許発明についてみると以下のとおりとなる。
(2) 判断
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、発明を実施するための形態として、(型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理システムにおける)機械学習、機械学習モデル、成形条件提供部、及び、(コンピュータによる)設定条件の値を少なくとも一つ出力する手順について以下の記載がある。
(ア) 「【0033】
<第1の実施形態>
・・・略・・・
【0038】
図3は、本実施の形態における成形条件決定支援システム100の機器構成の一例を示す図である。
【0039】
・・・略・・・
情報処理装置4は、例えば、産業用PC(パーソナルコンピューター)であり、制御部・計算部としての演算装置であるCPU(Central Processing Unite)等、ROM(Read Only Memory)・RAM(Random Access Memory)等、公知の入出力手段を備え、記憶部として所定の記憶装置を内蔵又は外付けHDD等として備えている。
・・・略・・・
【0043】
・・・略・・・情報処理装置4は、AIの機械学習により学習モデルを生成しておく、すなわち事前に所定の成形品のための上記の基準波形および毎ショットでの型内圧波形並びに各パラメータの変更量とその結果の型内圧波形等を学習データ(教師データ)として、型内圧波形が基準波形から外れた種々のパターンに応じて、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間のうち、どのパラメータをどのくらいの量(値、幅)、変更すれば、効果的かつ効率的に基準波形に近付ける(理想的には一致させる)ように修正可能かを学習して学習モデルを生成しておく。ただし、この学習モデルは上記基準波形および毎ショットでの型内圧波形の差分に関する新たな学習データ(教師データ)が得られる度に更新される。
・・・略・・・
【0044】
・・・略・・・
情報処理装置4は・・・略・・・直近の型内圧波形と基準波形の差分を最小化する(目標となる基準波形へ合わせていく)成形条件をAI(人工知能)が上記の生成された学習モデルにより算定する。すなわち、直近の型内圧波形と基準波形を比較し、波形のうちのどの部分に乖離があるか(傾きなど、種々のずれパターンがある。)等に基づき、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間のうち調整すべき成形条件およびその値を決定する(成形条件最適化)。なお、学習モデルに基づく算定の際に、成形条件の調整順番は固定しておく。すなわち、成形条件調整の際、すべての条件を一斉に探索するのではなく、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間の、この順番(順序)で調整を行う。(1)乃至(4)の条件はそれぞれ完全には独立していなく、相互に影響し合う関係の部分もあるため、一条件ずつ確定していくことで、各条件を一斉に条件探索するよりも少ない回数で最適化処理が可能となり、かつ作業者にも分かりやすい手順(時系列に沿った(1)乃至(4)の各条件の調整値を容易に視認して確認可能である。)で調整できることとなる。」
ここで、図3は以下のものである。
【図3】
[図:0001425781000001.jpg]
(合議体注:図3は、便宜のため時計周りに90度回転している。)
(イ) 「【0045】
図7は、本実施の形態における成形条件決定支援システム100の情報処理装置4の機能ブロック図である。
図7を参照すると、情報処理装置4は、通信部41と、取得部42と、計算部43と、学習データ格納部44と、モデル生成部45と、成形条件提供部46と、出力部47と、記憶部48を備えている。
・・・略・・・
【0048】
計算部43は、記憶部48に格納された基準波形(基準波形データ)と取得部42により取得した1ショットごとの波形のずれを計算し、そのずれ量(距離など)に基づき、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、次の1ショットの波形がどのように変化したかを計算する機能を有している。型内圧波形が基準波形から外れた種々のパターンに応じて、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間のうち、どのパラメータをどのくらいの量(値、幅)、変更すると、効果的かつ効率的に基準波形にどれくらい近付いたかを計算する。
【0049】
学習データ格納部44は、計算部43が計算した、どのような基準波形の場合に、基準波形と1ショットごとの波形のずれに基づき、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、次の1ショットの波形がどのように変化したかのデータを紐付けて、学習データ(教師データ)として、記憶部48に格納する。なお、樹脂等の材質等のデータも紐づけて記憶することであってもよい。
【0050】
モデル生成部45は、AI(人工知能)モジュールにより、学習データに基づいて、どのような基準波形の場合に、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、1ショットごとの波形が基準波形に近づくのか、という関係の学習モデルを生成し、記憶部48に格納する。具体的には、モデル生成部45は、どのような基準波形の場合に、(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、1ショットごとの波形がどのようにどれくらい基準波形に近づいたかの関係を回帰分析等により機械学習する。回帰する方法は、例えば、線形回帰、多項式回帰やロジスティック回帰など、公知の手法を用いることができるため、詳細な説明は省略する。モデル生成部45は、大量の学習データに基づいて、多層構造のニューラルネットワークを用いたディープラーニング(深層学習)により、機械学習することであってもよく、その他の公知の機械学習等により学習モデルを生成することであってもよい。
・・・略・・・
【0051】
成形条件提供部46は、・・・略・・・直近の型内圧波形と基準波形の差分を最小化する(目標となる基準波形へ合わせていく)成形条件を、学習モデルに基づいて、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更すべきか等を算定して提供する機能を有している。・・・略・・・成形条件算定の際に使用しているAIのメインアルゴリズムとして、ベイズ最適化アルゴリズムが適用されてもよい。これは、活用(過去に得られたデータ/情報を使う)と探索(まだ得られていないデータを取得しに行く)の概念を用いて次に取るべき行動(探索すべき点)を導出する最適化手法である。」
ここで、図7は、以下のものである。
【図7】
[図:0001425781000002.jpg]
(ウ) 「【0054】
図8は、本実施の形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置4の主な処理の流れを示すフローチャートである。
・・・略・・・
【0055】
次に、モデル生成部45は、AI(人工知能)モジュールにより、計算部43が計算した、どのような基準波形の場合に、基準波形と1ショットごとの波形のずれに基づき、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、次の1ショットの波形がどのように変化したかのデータが紐付けられている、学習データ・・・略・・・に基づいて、どのような基準波形の場合に、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、1ショットごとの波形が基準波形に近づくのか、という関係の学習モデルを生成する。(ステップS802)。
・・・略・・・
【0056】
次に、成形条件提供部46は、毎ショットでの型内圧波形を基準波形と比較し、その差分が所定値よりも小さいか否かを判定し(ステップS804)、小さくない場合(ステップS804/No)には、差分が大きい(ずれが大きい)ため条件再設定が必要であると判定する。
次に、S802で生成した学習モデルを直近の型内圧波形と基準波形の差分の情報も学習データとして追加して更新し(ステップS805)、更新された学習モデルに基づいて、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更すべきか等を算定する(ステップS806)。
・・・略・・・
【0057】
そして、出力部47は、成形条件提供部46が算定した上記の(1)乃至(4)の設定条件ごとのパラメータの変更値や変更量を表示装置5に対して表示可能に出力する(ステップS807)。その後は出力された結果に従って再設定された条件で成形を再開し、毎ショットでの型内圧波形の取得(ステップS803)及び型内圧波形と基準波形の差分が所定値よりも小さいか否かの判定(ステップS804)を、その差分が所定値よりも小さくなるまで繰り返す。
【0058】
上記の本実施の形態によれば、情報処理装置4に搭載されたAIによる処理手順を簡素化しつつ、作業者に分かりやすいように表示装置5に成形条件のパラメータの変更値を成形の時系列に沿って表示するため、成形条件の設定を支援することができる。」
ここで、図8は以下のものである。
【図8】
[図:0001425781000003.jpg]
(エ) 「【0060】
〔変形例2〕
・・・略・・・(その場合パラメータの変更は自動制御でフィードバックされる。)。
【0061】
<第2の実施形態>
続いて第2の実施形態について説明する。第1の実施形態ではセンサが圧力センサであったのに対して、第2の実施形態ではセンサが温度センサである点が異なっている。第2の実施形態では、良品がでるときの基準温度波形を取得し、基準温度波形に近づくように温度に関連する成形条件を調整する。
・・・略・・・
【0063】
図10は、第2の実施形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置の機能ブロック図である。第2の実施形態に係る情報処理装置において、第1の実施形態と同じ要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を適宜省略する。なお、取得部42、計算部43b、学習データ格納部44b、モデル生成部45b、成形条件提供部46、出力部47の機能は、プロセッサ40が記憶部48からプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0064】
記憶部48は記憶装置であり、記憶部48には、所定の成形品の良品成形時に成形機または金型に設けられたセンサ23bによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている。ここで波形データは、温度の時系列変化を表すデータである。
【0065】
成形条件提供部46は、記憶部48を参照して基準波形データを取得し、成形機または金型に設けられたセンサ23bから当該成形品の成形時の1ショットにおけるセンサ波形データを少なくとも一つ取得する。
成形条件提供部46は、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、当該基準波形データと同一または類似の波形データをセンサ23bが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する。
ここで、機械学習モデルは例えば、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差分に基づく評価値を出力とするブラックボックス関数を最適化することを目的とした機械学習モデル(具体的には例えばベイズ最適化)である。また設定条件とは例えば、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間である。」
ここで、図10は以下のものである。
【図10】
[図:0001425781000004.jpg]
イ 上記ア(ア)~(エ)の発明の詳細な説明の記載、図3,図7、図8及び図10等より、機械学習、機械学習モデル、成形条件提供部及び(コンピュータによる)設定条件の値を少なくとも一つ出力する手順等に関して、発明を実施するための形態として、以下の事項が具体的に理解、把握される。
(ア) 発明の詳細な説明及び図面から理解、把握される事項
(A) 成形条件決定支援システム100の情報処理装置4は、産業用PC(パーソナルコンピューター)であり、制御部・計算部としての演算装置であるCPU、公知の入出力手段及び記憶部として所定の記憶装置を備えた構成であり(【0038】、【0039】、【図3】等)、
(A1) 情報処理装置4は、AI(人工知能)の機械学習により学習モデルを生成しておく、すなわち事前に所定の成形品のための上記の基準波形および毎ショットでの型内圧波形並びに各パラメータの変更量とその結果の型内圧波形等を学習データ(教師データ)として、型内圧波形が基準波形から外れた種々のパターンに応じて、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間のうち、どのパラメータをどのくらいの量(値、幅)、変更すれば、効果的かつ効率的に基準波形に近付ける(理想的には一致させる)ように修正可能かを学習して学習モデルを生成しておくこと(【0043】等)
(A2) 情報処理装置4は、生成された学習モデルにより、直近の型内圧波形と基準波形の差分を最小化する(目標となる基準波形へ合わせていく)成形条件をAIが算定すること(【0044】)、
(A3) 学習モデルに基づく算定の際に、成形条件である(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間の調整順番は固定しておくこと(【0044】)。
(B) 情報処理装置4は、機能ブロックとして、通信部41、取得部42、計算部43、学習データ格納部44、モデル生成部45、成形条件提供部46、出力部47及び記憶部48を備えた構成であり(【0045】、【図7】)、
(B1) 計算部43が計算した、どのような基準波形の場合に、基準波形と1ショットごとの波形のずれに基づいて、学習データ格納部44は、設定条件のパラメータをどの位変更したら、次の1ショットの波形がどのように変化したかのデータを紐付けて、学習データ(教師データ)として、記憶部48に格納すること(【0048】、【0049】)、
(B2) モデル生成部45は、AIモジュールにより、学習データに基づいて、どのような基準波形の場合に、設定条件のパラメータをどの位変更したら、1ショットごとの波形が基準波形に近づくのか、という関係の学習モデルを生成し、記憶部48に格納する、
具体的には、モデル生成部45は、どのような基準波形の場合に、設定条件のパラメータをどの位変更したら、1ショットごとの波形がどのようにどれくらい基準波形に近づいたかの関係を回帰分析等により機械学習すること(【0050】)、
(B3) 回帰する方法は、例えば線形回帰、多項式回帰やロジスティック回帰などの公知の手法を用いることができること、大量の学習データに基づく多層構造のニューラルネットワークを用いたディープラーニング(深層学習)であってもよいこと(【0050】)、
(B4) 成形条件提供部46は、学習モデルに基づいて、直近の型内圧波形と基準波形の差分を最小化する(目標となる基準波形へ合わせていく)成形条件を、設定条件のパラメータをどの位変更すべきか等を算定して提供する機能を有していること(【0051】等)、
(B5) 成形条件算定の際に使用しているAIのメインアルゴリズムとして、ベイズ最適化アルゴリズム(活用(過去に得られたデータ/情報を使う)と探索(まだ得られていないデータを取得しに行く)の概念を用いて次に取るべき行動(探索すべき点)を導出する最適化手法)が適用されてよいこと(【0051】)、
(B6) 成形条件提供部46は、記憶部48を参照して基準波形データを取得し、成形機または金型に設けられたセンサ23bから当該成形品の成形時の1ショットにおけるセンサ波形データを少なくとも一つ取得すること(【0065】)、
(B7) 成形条件提供部46は、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、当該基準波形データと同一または類似の波形データをセンサ23bが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力すること(【0065】)、
(B8) 機械学習モデルは例えば、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差分に基づく評価値を出力とするブラックボックス関数を最適化することを目的とした機械学習モデル(具体的には例えばベイズ最適化)であること(【0065】)。
(C) 成形条件決定支援システムの情報処理装置4の処理の流れを示すフローチャート(図8)は、
(C1) ステップS802
モデル生成部45は、AIモジュールにより、計算部43が計算した、どのような基準波形の場合に、基準波形と1ショットごとの波形のずれに基づき、設定条件のパラメータをどの位変更したら、次の1ショットの波形がどのように変化したかのデータが紐付けられている、学習データに基づいて、どのような基準波形の場合に、設定条件のパラメータをどの位変更したら、1ショットごとの波形が基準波形に近づくのか、という関係の学習モデルを生成する(【0055】)、
(C2) ステップS804
成形条件提供部46は、毎ショットでの型内圧波形を基準波形と比較し、その差分が所定値よりも小さいか否かを判定する(【0056】)、
(C3) ステップS805
成形条件提供部46は、次に、ステップS802で生成した学習モデルを直近の型内圧波形と基準波形の差分の情報も学習データとして追加して更新する(【0056】)、
(C4) ステップS806
成形条件提供部46は、学習モデルに基づいて、設定条件のパラメータをどの位変更すべきか等を算定する(【0056】等)、
(C5) ステップS807
出力部47は、成形条件提供部46が算定した設定条件ごとのパラメータの変更値や変更量を表示装置5に対して表示可能に出力する(【0057】)、
(C6) ステップS803
出力された結果に従って再設定された条件で成形を再開し、毎ショットでの型内圧波形の取得する(【0057】等)。
(D) パラメータの変更は自動制御で行うこと(【0060】)。
(E) 取得部42、計算部43b、学習データ格納部44b、モデル生成部45b、成形条件提供部46、出力部47の機能は、プロセッサ40が記憶部48からプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよいこと(【0063】)。
(イ)a 請求項1には、「型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理システム」が、「前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成形時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する成形条件提供部」「を備える」と記載されるところ、
上記(ア)で述べた、制御部・計算部としての演算装置であるCPU等を備えた情報処理装置の構成(A1)、情報処理装置の機能ブロックの「モデル生成部」に関する(B1)~(B3)、(B8)(例えば、「線形回帰」、「ディープラーニング」等位による「機械学習」や、「差分に基づく評価値を出力とするブラックボックス関数を最適化」等)、及び、情報処理装置の処理の流れを示すフローチャートの「モデル生成部」によるステップS802に関する(C1)等の記載事項及び技術常識に基づき、機械学習の技術分野に属する当業者は、「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する」「機械学習(モデル)」について技術的に内容を理解でき、また、当該「機械学習」を行って「機機械学習モデル」を出力する「モデル生成部」を過度の試行錯誤を要することなく製造し、使用することができる。
b また、当該「機械学習モデルを用いて」、「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する成形条件提供部」についても、上記aで述べた「機械学習モデル」の「モデル生成部」に関する記載事項、上記(ア)の(A2)~(A3)、(B4)~(B7)(例えば(B5)の「成形条件算定の際に使用しているAIのメインアルゴリズムとして」の「ベイズ最適化アルゴリズム」の「適用」等)、(C2)~(C6)及び(D)等の「成形条件提供部」に関する記載事項及び技術常識に基づき、機械学習の技術分野に属する当業者は、成形条件提供部が、上記機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、基準波形データと同一または類似の波形データをセンサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する、とのことについて技術的に内容を理解でき、また、このような成形条件提供部を過度の試行錯誤を要することなく製造し、使用することができる。
請求項1の記載を引用して記載される請求項2~10についても同様である。
c さらに、請求項11の「所定の成形品の良品成形時に成形機または型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置を参照可能なコンピュータに」、「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する手順」、「を実行させるためのプログラム」についても、上記(ア)で述べた「モデル生成部」及び「成形条件提供部」に関する記載事項(A1)~(D)、「モデル生成部」や「成形条件提供部」の機能を「プロセッサ」が記憶部からプログラムを読み出して実行するとの記載事項(E)及び技術常識に基づき、機械学習の技術分野に属する当業者は、上記機械学習(モデル)及び上記手順の内容について技術的に理解でき、また、(上記機械学習モデルを用いて)上記手順を実行させる「プログラム」を過度の試行錯誤を要することなく作成し、使用することができる。
(ウ) 以上のとおりであるから、本件特許発明1~11について、発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないということはできない。
したがって、本件特許の請求項1~11に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。
第6 進歩性(特許法第29条第2項)についての判断
1 甲1~甲4の記載の記載及び引用発明
(1) 甲1の記載及び引用発明
ア 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。以下、同様である。)。
(ア) 特許請求の範囲
「2.特許請求の範囲
(1)・・・略・・・
(2)所定の成形条件に基づいて制御される射出スクリュにより成形材料としての樹脂を金型に射出して製品成形を行う射出成形機において、
良品成形時の成形条件を予め設定してこれを記憶保持する良品成形条件設定手段と、
良品成形条件設定手段に記憶保持された成形条件に基づく成形時における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関する標準データを設定してこれにより標準パターン波形を作成し記憶する第1の記憶手段と、
前記良品成形条件設定手段に記憶保持された成形条件に基づく実成形時における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等を測定してこれらの測定データから実成形パターン波形を作成し記憶する第2の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に記憶された標準パターン波形を表示すると共に該標準パターン波形に対し第2の記憶手段に記憶された実成形パターン波形を重ねて表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された標準パターン波形と実成形パターン波形とを比較しながら実成形パターン波形が標準パターン波形と一致するように成形条件の修正を行うと共にこの修正された成形条件を記憶保持する修正成形条件設定手段とを設けることを特徴とする射出成形機の最適成形条件設定装置。」
(イ) 発明の詳細な説明
「〔産業上の利用分野〕
この発明は、射出成形機の最適成形条件を設定する方法および装置に係り、特に予め所定の良品成形時の成形条件を記憶保持しておき、この成形条件による成形中の樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関するデータを測定してこれらを記憶保持し、この測定データを前記良品成形時の対応するデータと共にパターン波形表示することにより、良品成形を行うための成形条件の修正並びに設定を簡便に行うことができる射出成形機の最適成形条件設定方法よび装置に関する。
〔従来の技術〕
従来より、射出成形品の良否を判別するために、成形中の成形品の品質を常に監視することが行われている。この場合、射出完了時の充填圧力を監視するだけでは不十分であることから、例えば金型への樹脂材料の射出開始から充填完了に至るまで連続的に射出速度および射出圧力に関する波形を監視する方法が知られている。
しかしながら、前記従来の射出成形状態の監視方法によれば、時間軸に対する樹脂圧力の変化を監視しているため、射出開始時間と射出スクリュの始動のタイミングとが若干相違して、これにより成形品の良否の判別が不正確となる。
そこで、射出スクリュの位置検出と射出シリンダの油圧力検出とを行い、得られた位置データと油圧力データとを記憶し、これらのデータから射出スクリュが移動する位置に対応する射出速度、射出圧力等を演算してこれを表示することにより、良品成形の際の標準値となる標準波形との比較を可能とし、成形品の良否判別を適正に行う成形状態監視装置が提案されている・・・略・・・。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかるに、前述したように、良品成形時の成形条件に関する標準波形に対し、実際の成形時の成形状態の測定波形の比較を行う場合、前記成形条件のパラメータを再設定しても、それぞれの成形時における前記パラメータ以外の外部要因、例えば外気温度、湿度、金型温度、油温、成形材料の種類等により、良品が得られない場合が生ずる。
そこで、本発明の目的は、予め所定の良品成形時の成形条件を記憶保持しておき、この成形条件による実際の成形時(実成形時ともいう)における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等を測定してこれらの測定データを記憶保持し、この測定データを良品成形時の成形条件のデータと共にパターン波形化してこれらの両パターン波形を表示手段に重ねて表示し、実成形時のパターン波形が良品成形時のパターン波形に一致するよう成形条件の調整を行うことにより、現状に合った良品成形のできる実成形条件の設定を容易に達成できる射出成形機の最適成形条件設定方法および装置を提供するにある。
〔課題を解決するための手段〕
・・・略・・・
また、本発明に係る射出成形機の適成形条件設定装置は、
所定の成形条件に基づいて制御される射出スクリュにより成形材料としての樹脂を金型に射出して製品成形を行う射出成形機において、
良品成形時の成形条件を予め設定してこれを記憶保持する良品成形条件設定手段と、
良品成形条件設定手段に記憶保持された成形条件に基づく成形時における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関する標準データを設定してこれにより標準パターン波形を作成し記憶する第1の記憶手段と、
前記良品成形条件設定手段に記憶保持された成形条件に基づく実成形時における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等を測定してこれらの測定データから実成形パターン波形を作成し記憶する第2の記憶手段と、
前記第1の記憶手段に記憶された標準パターン波形を表示すると共に該標準パターン波形に対し第2の記憶手段に記憶された実成形パターン波形を重ねて表示する表示手段と、前記表示手段に表示された標準パターン波形と実成形パターン波形とを比較しながら実成形パターン波形が標準パターン波形と一致するように成形条件の修正を行うと共にこの修正された成形条件を記憶保持する修正成形条件設定手段とを設けることを特徴とする。
〔作用〕
本発明に係る射出成形機の設定方法および装置によれば、現状の射出成形機に合った良品を成形するための最適成形条件を設定するに際し、実際の成形時における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等を測定してこれらの測定データから実成形パターン波形を作成し、この実成形パターン波形を、予め設定した良品成形時の成形条件に基づくデータから作成した標準パターン波形と比較してこれと一致するように修正し設定することにより、この実成形パターン波形にはその成形時における成形条件のパラメータ以外の外部要因も含むことになり、常に適正な良品成形を行うことができる最適成形条件の設定を簡単なシステム構成により簡便に実現することができる。」
〔実施例〕
次に、本発明に係る射出成形機の最適成形条件設定方法の実施例につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
第1図は本発明方法を実施する射出成形機の制御系のシステム構成図である。第1図において、参照符号10は射出成形機を示し、金型12、射出スクリュ14、成形材料(樹脂)投入ホッパ16、射出プランジャ18、射出ピストン20、油圧シリンダ22をそれぞれ備えている。このように構成された射出成形機10の油圧シリンダ22には、油圧ポンプ24より供給される圧油が圧力制御弁26および流量制御弁28を介して供給され、射出スクリュ14の樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等を調整制御することができる。
・・・略・・・
本実施例において、射出成形機10の射出プランジャ18に対し、射出スクリュ14の位置を検出するための位置センサ30および速度センサ32を設ける。また、油圧シリンダ22に対し、射出スクリュ14の射出圧力を検出するための圧力センサ34を設ける。これらの位置センサ30、速度センサ32および圧力センサ34によって検出される各検出値は、監視ユニット36の制御入出力装置38にそれぞれ入力するよう回路的接続を行う、監視ユニット36は、CPU40、メモリ42、補助メモリ44、キーボード46、プリンタ48およびCRT50を備えたマイクロコンピュータで構成され、前記各要素は制御入出力装置38と共にCPU40に対し相互にバス接続される。なお、前記制御入出力装置38には、射出成形機10の制御を行う油圧系に設けた圧力制御弁26および流量制御弁28を制御するための制御部52が接続される。
このように構成される本発明に係る射出成形機10の制御システム構成において、監視ユニット36は、前記各センサ30,32,34から検出される測定データに基づき、成形時の樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等をメモリ42において時系列的に記憶保持する。また、補助メモリ44には、予め設定された良品成形時の成形条件を記憶保持しておくと共に、この記憶保持された成形条件に基づく成形時における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関する標準パターン波形として表示し得る標準データを設定してこのデータを記憶保持する。
そこで、本発明の最適成形条件設定方法においては、前述したように補助メモリ44に記憶保持された良品成形時の成形条件による標準データに基づいて、これをCRT50において、例えば第2図の特性波形A、に示すように射出圧力と射出時間との関係でパターン波形表示したり、第3図の特性波形A2に示すように射出圧力と射出位置との関係でパターン波形表示したりすることができる。
次に、このような良品成形時の標準パターン波形をCRT50に表示した状態で、補助メモリ44に記憶保持された成形条件により実際の成形を行う、この場合、1回の射出成形毎にその時の樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関する測定データをメモリ42に記憶保持すると共に、この測定データを前記標準データと同様にCRT50にパターン波形表示する(第2図および第3図の特性波形B1,B2参照)すなわち、このような実際の成形時のパターン波形B1,B2は、前記標準パターン波形A1,A2とそれぞれ重ね合せてCRT50に表示する。
このようにして、第2図および第3図に示すように、良品成形時の標準データに基づく標準パターン波形A1またはA2と、実際の成形時のパターン波形B1またはB2とが表示された場合、本発明においては、常に最適な良品成形が得られるよう成形条件の調整を行う、第4図は、このような最適成形条件の設定を行う場合の監視ユニット36における制御プログラムのフローチャートを示すものである。従って、第4図に基づき、本発明の最適成形条件の設定方法につき以下説明する。
まず、前述したように、予め良品成形を得るための成形条件を監視ユニット36に設定しておき、この成形条件に基づく制御指令を制御部52へ転送する。従って、制御部52はこの制御指令に基づき、射出成形機10を作動するための各種制御機器を制御動作する。このようにして、予め設定された成形条件で実際の射出成形を行い、得られた実成形パターン波形を前述した標準パターン波形と共にCRT50に重ねて表示する。この結果、実成形パターン波形が標準パターン波形と一致しない場合には、例えばキーボード46を介して手動により監視ユニット36に設定された成形条件を修正したり、または監視ユニット36内部において標準パターン波形と実成形パターン波形との偏差から成形条件の補正値を演算して、この補正値により設定された成形条件の自動修正を行う、そこで、この修正された成形条件に基づく制御指令を制御部52へ転送し、前記と同様の射出成形を繰返す。そして、実成形パターン波形が標準パターン波形とほぼ一致した際には、良品成形と判定し、この実成形時の成形条件を最適成形条件として補助メモリの一部に設定することができる。
〔発明の効果〕
前述した実施例から明らかなように、本発明によれば、実成形時における成形材料としての樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等を測定してこの測定データを記憶保持し、この測定データから得られる実成形パターン波形を、予め設定した良品成形時の成形条件による標準データに基づく標準パターン波形と対比させて、この標準パターン波形に実成形パターン波形が近似するよう成形条件の修正を行うことにより、常に最適な良品成形を実現する成形条件の設定を容易に達成することができる。すなわち、このように設定される良品成形のための成形条件は、現状の射出成形機での実際の射出成形動作に基づくため、例えば実成形時の成形条件のパラメータ以外の外部要因としての外気温度、湿度、金型温度、油温、成形材料の種類等の条件も加味された良品成形条件となる。」
(ウ) 図面の簡単な説明
「第1図は本発明に係る最適成形条件設定方法を実施するための射出成形機の制御系のシステム構成図、第2図は本発明方法で実施される射出圧力と射出時間との関係における良品成形時の標準パターン波形と実成形時のパターン波形をそれぞれ示す波形図、第3図は本発明方法で実施される射出圧力と射出位置との関係における良品成形時の標準バターン波形と実成形時のバターン波形をそれぞれ示す波形図、第4図は本発明における最適成形条件設定を行うための制御プログラムを示すフローチャート図である。
10・・・射出成形機 12・・・金型
14・・・射出スクリュ 16・・・ホッパ
18・・・射出プランジャ 20・・・射出ビストン
22・・・油圧シリンダ 24・・・油圧ポンプ
26・・・圧力制御弁 28・・・流量制御弁
30・・・位置センサ 32・・・速度センサ
34・・・圧カセンサ 36・・・監視ユニット
38・・・制御入出力装置 40・・・CPU
42・・・メモリ 44・・・補助メモリ
46・・・キーポード 48・・・プリンタ
50・・・CRT」
(エ) 第1図
「
[図:0001425781000005.jpg]
」
(当合議体注:便宜のため、図1は、時計回りに90°回転させている。)
(オ) 第2図
「
[図:0001425781000006.jpg]
」
(カ) 第3図
「
[図:0001425781000007.jpg]
」
(キ) 第4図
「
[図:0001425781000008.jpg]
」
イ 引用発明
(ア) 上記アの甲1の発明の詳細な説明(特に下線部参照)、第1図(本発明に係る最適成形条件設定方法を実施するための射出成形機の制御系のシステム構成図)及び第4図(本発明における最適成形条件設定を行うための制御プログラムを示すフローチャート図)の記載からみて、甲1には、「射出成形機10」「の制御系のシステム」における「監視ユニット36」の発明として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「射出成形機10の制御系のシステムにおける監視ユニット36であって、
射出成形機10は、
金型12、射出スクリュ14、成形材料(樹脂)投入ホッパ16、射出プランジャ18、射出ピストン20及び油圧シリンダ22を備え、
前記油圧シリンダ22には、油圧ポンプ24より供給される圧油が圧力制御弁26及び流量制御弁28を介して供給され、前記射出スクリュ14の樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等が調整制御され、
前記射出プランジャ18に対し、前記射出スクリュ14の位置を検出するための位置センサ30及び速度センサ32が設けられ、
前記油圧シリンダ22に対し、前記射出スクリュ14の射出圧力を検出するための圧力センサ34が設けられ、
前記位置センサ30、速度センサ32及び圧力センサ34によって検出される各検出値は、監視ユニット36の制御入出力装置38にそれぞれ入力するよう回路的接続が行われたものであり、
監視ユニット36は、
CPU40、メモリ42、補助メモリ44、キーボード46、プリンタ48及びCRT50を備えたマイクロコンピュータで構成され、
前記各要素は制御入出力装置38と共にCPU40に対し相互にバス接続され、
前記制御入出力装置38には、射出成形機10の制御を行う油圧系に設けた前記圧力制御弁26及び流量制御弁28を制御するための制御部52が接続され、
前記位置センサ30、速度センサ32及び圧力センサ34から検出される測定データに基づき、成形時の樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等が前記メモリ42において時系列的に記憶保持され、
前記補助メモリ44には、予め設定された良品成形時の成形条件が記憶保持されると共に、この記憶保持された成形条件に基づく成形時における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関する標準パターン波形として表示し得る標準データを設定してこのデータが記憶保持され、
前記補助メモリ44に記憶保持された良品成形時の成形条件による標準データに基づいて、良品成形時の標準パターン波形を前記CRT50に表示した状態で、前記補助メモリ44に記憶保持された成形条件により実際の成形を行い、1回の射出成形毎にその時の樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関する測定データをメモリ42に記憶保持すると共に、この測定データを前記標準データと同様にCRT50にパターン波形表示する、すなわち、実際の成形時のパターン波形(実成形パターン波形)と、前記標準パターン波形とそれぞれ重ね合せてCRT50に表示するものであり、
監視ユニット36は、良品成形時の標準データに基づく標準パターン波形と、実成形パターン波形とが表示された場合、常に最適な良品成形が得られるよう成形条件の調整を行うものであり、制御プログラムにより、
(A)予め良品成形を得るための成形条件を監視ユニット36に設定しておき、この成形条件に基づく制御指令を前記制御部52へ転送し(、従って、前記制御部52はこの制御指令に基づき、射出成形機10を作動するための各種制御機器を制御動作し)、
(B)予め設定された成形条件で実際の射出成形を行い、得られた実成形パターン波形を前記標準パターン波形と共に前記CRT50に重ねて表示し、
(C)実成形パターン波形が標準パターン波形と一致しない場合には、
(C-1)例えば前記キーボード46を介して手動により監視ユニット36に設定された成形条件を修正したり、又は、
(C-2)監視ユニット36内部において標準パターン波形と実成形パターン波形との偏差から成形条件の補正値を演算して、この補正値により設定された成形条件の自動修正を行い、
(D)修正された成形条件に基づく制御指令を前記制御部52へ転送し、前記と同様の射出成形を繰返し、
(E)実成形パターン波形が標準パターン波形とほぼ一致した際には、良品成形と判定し、この実成形時の成形条件を最適成形条件として補助メモリ44の一部に設定する、
監視ユニット36。」
(当合議体注:甲1発明の「制御プログラム」による動作(A)~(E)の見出しは、便宜のために、合議体が付したものである。)
(イ) また、上記ア及び上記(ア)より、甲1には、甲1発明(射出成形機10の制御系のシステムにおける監視ユニット36)の制御プログラムの発明として、次の発明(以下「甲1制御プログラム発明」という。)が記載されているものと認められる。
「CPU40、メモリ42、補助メモリ44、キーボード46、プリンタ48及びCRT50を備えたマイクロコンピュータで構成された甲1発明に(A)~(E)の動作を実行させる、制御プログラム。」
(2) 甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
「富士ソフト、豊田自動織機様のAI自動補正システムの構築を支援
AI活用によるスマート生産ラインの実現で
生産品質の安定維持と業務の生産性向上に貢献
[図:0001425781000009.jpg]
富士ソフト株式会社は、AIインテグレーションサービスの提供により、株式会社豊田自動織機様の自動車部品製造における生産設備の設定値を分析・判断し、さらに高精度に最適値を予測する、自動補正システムの構築を支援しました。理想値と実測値の乖離検知から予測・補正までをすべて自動化、機械学習における再学習および推論モデルの自動更新に成功しました。
株式会社豊田自動織機様は、繊維機械、自動車などの幅広い分野で事業展開しています。自動車事業部では、自動車の開発・製造におけるすべての工程において、産業用ロボットを含む多種多様な生産設備が稼働しており、今回は、その中の自動車のバンパー製造に用いる射出成形機向けにAI/機械学習を活用した自動補正システムを構築されました。
射出成形機には情報分析基盤が稼働しており、圧力や温度等、多種多様な数百個ものセンサーデータから不良品の発生原因を分析して波形として可視化しています。その分析結果から得られた、効率的に生産品質を安定させる理想の波形を維持するためには、環境の変化に合わせて制御パラメータの設定値を調整する必要があります。しかし、その調整は長年の経験や勘を必要とするため熟練工に委ねられ、ノウハウは完全に属人化していました。
この度当社が構築を支援した自動補正システムは、情報分析基盤が理想的な波形を維持するように、熟練工に代わってAIが射出成形機の最適な設定値を予測し、この設定値で生産することで理想の波形に補正するしくみになっています。これまでは不具合発生後に熟練工が設定値を調整していましたが、本システムでは、不具合が発生する前にAIがその傾向を検出して最適な設定値を提示します。」
(3) 甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、成形条件決定支援装置および射出成形機に関するものである。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、成形品の品質要素に基づいて報酬が決定され、当該報酬に基づいて成形条件が調整されている。しかしながら、成形品の品質要素は、上述したように、成形品の質量、形状、成形品の画像データから算出される外観、長さ、角度、面積、体積、光学成形品の光学検査結果、成形品強度計測結果等であるため、成形を終了した後に、検査工程を行うことによって取得できる情報である。検査工程を実行する前に、成形品の異常を予測することができれば、不良品の発生を抑制することができる。
【0007】
本発明は、成形品の品質要素を取得するよりも前に取得できる情報を用いて、成形条件要素を調整することできる成形条件決定支援装置および射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る成形条件決定支援装置は、成形機の型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形方法に適用され、少なくとも成形機に取り付けられたセンサにより検出された成形時状態データを第一学習データとする機械学習により生成された第一学習モデルであって、前記成形時状態データと前記成形品の品質要素とに関する前記第一学習モデルを記憶する第一学習モデル記憶部と、前記成形時状態データと成形条件要素とを第二学習データとする機械学習により生成された第二学習モデルであって、前記成形時状態データと前記成形条件要素とに関する前記第二学習モデルを記憶する第二学習モデル記憶部と、前記第一学習モデルを用いて、前記センサにより検出された前記成形時状態データと成形時状態データ目標値との差分に相当する値である成形時状態データ調整量を取得する成形時状態データ調整量取得部と、前記第二学習モデルを用いて、前記成形時状態データ調整量に対応する前記成形条件要素の調整量を取得する成形条件要素調整量取得部とを備える。
【0009】
機械学習の推論フェーズにおいては、成形時状態データを取得し、取得した当該成形時状態データに基づいて成形条件要素の調整量を取得することができる。そして、成形時状態データとは、成形機に取り付けられたセンサにより検出されたデータである。そのため、成形時状態データは、検査工程によって成形品の品質要素を取得するよりも前に取得できる情報である。従って、検査工程を実行する前に、成形品の異常を予測することができ、不良品の発生を抑制することができる。
【0010】
しかしながら、成形品の品質要素が重要な要素である。そこで、当該支援装置は、成形時状態データと成形品の品質要素との関係を表す第一学習モデルを記憶している。そして、第一学習モデルと成形時状態データとを考慮することによって、成形品の品質要素の値が所定値となるように、成形時状態データ調整量を取得している。
【0011】
さらに、当該支援装置は、成形時状態データと成形条件要素との関係を表す第二学習モデルを記憶している。そして、第二学習モデルと成形時状態データ調整量とを考慮することによって、成形条件要素の調整量を取得している。つまり、取得した成形条件要素の調整量に応じて成形条件要素を調整することによって、成形品の品質要素を良好とすることができる。」
イ 「【0026】
(2.第一例の成形条件決定支援装置50の構成)
第一例の成形条件決定支援装置50(以下、支援装置と称する)の構成について、図2-図5を参照して説明する。支援装置50は、機械学習の学習フェーズにおいて機能する部分と、機械学習の推論フェーズにおいて機能する部分とを備える。
【0027】
すなわち、支援装置50は、図2に示すように、学習フェーズとして機能する部分として、成形条件データベース51、成形時状態データベース52、成形品品質データベース53、第一学習モデル生成部54、第一学習モデル記憶部55、第二学習モデル生成部56、第二学習モデル記憶部57を備える。また、支援装置50は、推論フェーズとして機能する部分として、第一学習モデル記憶部55、第二学習モデル記憶部57、成形時状態データ調整量取得部60、成形条件要素調整量取得部71、条件変更部72を備える。
【0028】
成形条件データベース51は、制御装置5に指令値として入力される多数の成形品の成形条件要素を、それぞれの成形品に対応付けられて記憶する。成形条件要素とは、例えば、金型温度、保圧力、射出速度、保圧時間、型締力、加熱シリンダ32における溶融材料の貯留量等が含まれる。成形条件データベース51には、多数の成形品に関する成形条件要素が記憶されている。つまり、成形条件データベース51には、多数の成形品の形状、多数の成形品の材質に関する成形条件要素が記憶されている。
【0029】
成形時状態データベース52は、射出成形機1に取り付けられた射出装置用センサ37、型締装置用センサ45、および、圧力センサ6d,6eにより検出された成形時状態データを、それぞれの成形品に対応付けられて記憶する。成形時状態データとは、成形品の成形時において取得されるデータである。」
ここで、図2は以下のものである。
【図2】
[図:0001425781000010.jpg]
(当合議体注:便宜のため、図2は時計回りに90°回転している。)
ウ 「【0030】
ここで、成形時状態データは、対象のデータ種の時間に伴う挙動としてもよい・・・略・・・。例えば、図3に示すように、成形時状態データは、1つの成形品の成形時における保圧力データの時間経過に伴う挙動としてもよい・・・略・・・。」
ここで、図3は以下のものである。
【図3】
[図:0001425781000011.jpg]
エ 「【0035】
第一学習モデル生成部54は、図4に示すように、少なくとも成形時状態データベース52に記憶された成形時状態データを第一学習データとする機械学習を行う。本例では、第一学習モデル生成部54は、成形時状態データと品質要素データベースに記憶された品質要素とを第一学習データとする機械学習を行う。第一学習モデル生成部54は、当該機械学習により、成形時状態データと品質要素とに関する第一学習モデルを生成する。第一学習モデルは、教師あり学習を例にあげるが、他の機械学習アルゴリズムを適用することもできる。第一学習モデルは、例えば、回帰モデル等を適用する。
・・・略・・・
【0036】
第二学習モデル生成部56は、図5に示すように、成形時状態データベース52に記憶された成形時状態データと成形条件データベース51に記憶された成形条件要素とを第二学習データとする機械学習を行う。第二学習モデル生成部56は、当該機械学習により、成形時状態データと成形条件要素とに関する第二学習モデルを生成する。第二学習モデルは、例えば、回帰モデル等を適用する。」
ここで、図4及び図5は以下のものである。
【図4】
[図:0001425781000012.jpg]
【図5】
[図:0001425781000013.jpg]
オ 「【0037】
成形時状態データ調整量取得部60は、対象の成形品の成形を行っている際に、第一学習モデルを用いて成形時状態データ調整量を取得する。具体的には、成形時状態データ調整量取得部60は、射出装置用センサ37および型締装置用センサ45により検出された成形時状態データに基づいて、成形時状態データ調整量を取得する。成形時状態データ調整量とは、センサ37,45により検出された成形時状態データと成形時状態データ目標値との差分に相当する値である。
【0038】
成形時状態データ調整量取得部60は、品質要素目標値取得部61、成形時状態データ目標値取得部62、成形時状態データ取得部63、第二成形時状態データ調整量取得部64を備える。
【0039】
品質要素目標値取得部61は、対象の成形品に関する品質要素目標値、例えば、品質要素における良品であるための境界値を取得する。対象の成形品とは、現在成形を行っている成形品、または、これから成形を行う予定の成形品である。品質要素目標値は、予め設定された情報である。品質要素目標値取得部61は、作業者の入力によって対象の成形品に関する品質要素の目標値を取得する。品質要素目標値は、例えば、質量が○○kg、形状を示す値が○○m、ボイド状態の指標値、焼け状態の指標値等に関する目標値である。
【0040】
成形時状態データ目標値取得部62は、第一学習モデル記憶部55に記憶された第一学習モデルを用いて、品質要素目標値取得部61により取得された品質要素目標値に対応する成形時状態データ目標値を取得する。第一学習モデルは、上述したように、成形時状態データと品質要素とに関するモデルである。従って、第一学習モデルを用いて、品質要素目標値を入力することにより、成形時状態データに関する情報、すなわち、成形時状態データ目標値が出力される。なお、成形時状態データ目標値は、成形時状態データベース52に記憶される成形時状態データと同種である。すなわち、成形時状態データ目標値は、対象のデータ種の時間に伴う挙動としてもよい・・・略・・・。
【0041】
成形時状態データ取得部63は、対象の成形品の成形を行っている際に、射出装置用センサ37、型締装置用センサ45、および、圧力センサ6d,6eにより検出された成形時状態データを取得する。なお、ここでの成形時状態データは、成形時状態データベース52に記憶される成形時状態データと同種である。すなわち、成形時状態データは、対象のデータ種の時間に伴う挙動としてもよい・・・略・・・。
【0042】
第二成形時状態データ調整量取得部64は、成形時状態データ取得部63により取得された成形時状態データと、成形時状態データ目標値取得部62により取得された成形時状態データ目標値との差分を算出し、当該差分を前記成形時状態データ調整量として取得する。
【0043】
成形条件要素調整量取得部71は、第二学習モデル記憶部57に記憶された第二学習モデルを用いて、第二成形時状態データ調整量取得部64により取得された成形時状態データ調整量に対応する成形条件要素の調整量を取得する。第二学習モデルは、上述したように、成形時状態データと成形条件要素とに関するモデルである。従って、第二学習モデルを用いて、成形時状態データ調整量を入力することにより、成形条件要素に関する情報、すなわち、成形条件要素の調整量が出力される。成形条件要素の調整量とは、例えば、金型温度の指令値の上昇量5℃等である。
【0044】
条件変更部72は、成形条件要素調整量取得部71により取得された成形条件要素の調整量に基づいて、射出成形機1の制御装置5における成形条件要素の値(指令値)を変更する。条件変更部72は、作業者による実行処理信号を受け付けることなく、自動的に変更処理を実行する。」
(4) 甲4の記載
甲4には、以下の記載がある。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は射出成形機の制御装置に関し、特にpvT制御の改良に関する。
・・・略・・・
【0004】ところが、加熱シリンダで樹脂を高温に加熱、溶融し、それを射出シリンダを用いてキャビティに充填し、成形品として取り出すときには室温近くまで冷却するため、充填したときの樹脂の比容積(密度の逆数)V1と成形品として取り出したときの比容積v2との間の差Δvが非常に大きい。すなわち、ただ単に樹脂をキャビティに流し込むだけでは、空気中に放置した成形品は図9(a)の右側に破線で示したように大きく収縮してしまう。これは所望の重量に比べ、取り出した成形品の重量が少なくなり、寸法も小さくなることを意味する。そこで、通常の成形プロセスでは樹脂充填(射出工程)の後、図9(b)のように、射出シリンダ102を用いて樹脂に圧力をかけ(保圧工程)、比容積の差Δvに相当する分だけ余分に樹脂を充填している。
・・・略・・・
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
・・・略・・・従って、従来のように全体を一様として圧力の設定値を修正すると部分的に樹脂が多くなったり、逆に少なくなったりして応力分布が大きくなり、精密成形品の樹脂の状態を精度良く制御できない。それ故、精密成形の場合は環境条件が変化した時に、比容積の差Δva,Δvb,Δvcの間の差を少なくすることが必要である。また、より複数な成形品では軌跡が大きく分散するので、これらの差を少なくする修正法の開発が重要となってきている。以上のような問題点に鑑み、本発明は成形中における金型温度や樹脂温度等の環境条件の変動があっても成形品品質を安定に保つように成形中の圧力設定値を修正する射出成形機の制御装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明による射出成形機の制御装置は、樹脂状態検出手段として金型内の樹脂温度センサと樹脂圧力センサとを含み、成形条件出しによって得られた射出速度、保圧時の樹脂圧力等の成形条件を設定値として入力する手段と、該入力手段で設定された設定値にもとづいて初期状態を定め、前記各センサからの検出値を用いてあらかじめ定められた式にもとづいて保圧工程での圧力設定値修正量を算出するニューラルネットワーク方式の演算装置と、前記設定値あるいは前記圧力設定値修正量を目標値として保圧工程での圧力制御を行う圧力制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0010】
【作用】本発明による制御装置は、ニューラルネットワーク方式の演算装置における圧力設定値の自動修正に特徴があり、次のような手順で行われる。成形開始に先立ってあらかじめ行われた成形条件出しで得られた設定値と、その際の金形内樹脂圧力、温度の検出値及び樹脂の状態方程式を用いて、キャビティ内各部の樹脂の比容積を計算する。次に上記で求めた比容積を目標値として、その値を実現するように金型内樹脂圧力、温度の検出値から設定値の修正量を計算する。樹脂圧力、温度の検出値は連続成形開始時に大きく変化し、以降室温や成形機本体の温度変動に対して徐々に変化する。しかし、これらの変化分は演算装置により圧力設定値の修正量に変換され、圧力制御装置の目標値となる。
【0011】
【実施例】図1は本発明による射出成形機の制御装置の構成を示す。金型内の樹脂圧力、温度の検出値を得るためのセンサ11,12と、オペレータにより保圧プロセス制御のための設定値を入力する設定値入力部13と、上記の検出値、設定値と樹脂の状態方程式から設定値の修正量を計算するためのニューラルネットワーク方式の演算装置14と、前記設定値またはその修正値を目標値として保圧プロセスを制御するための圧力制御装置15とを備えている。」
ここで、図1は、以下のものである。
[図:0001425781000014.jpg]
イ 「【0017】圧力の修正量を求める手順は次のようになる。
(1)オペレータが成形条件出しを行って探索した圧力設定値のパターンを、図2のニューラルネットワークのpfに入れる。その時の金型内樹脂圧力、温度の検出値pd,Tdも図2のニューラルネットワークに入れる。
さらに、図2のようにp,v,Tの各値をニューラルネットワークの各要素に割り当てる。ただし、図2では複雑な成形品に対応するため図3の成形品の例より分割を細かくすることを考え、一般的な表現にしてある。分割数はnで表す(図5ではn=2)。
(2)この状態でニューラルネットワークを作動させると、各要素のp1,v1,T1,p2,v2,T2,・・・
に相当する変量の推定値が出力される。
(3)推定された各部の比容積vi0(図3ではv10,v20に相当する値)をこの成形品に対する望ましい比容積の値とする。
(4)連続成形に入ると環境条件が次第に変化し、検出値pd,Tdが変動する。この際には、設定値pfを除いて新たな検出値を用いてニューラルネットワークを作動させると、新しい変量p,v,Tが推定される。ただし、比容積は上で求めたvi0に一致させる。
(5)新たに求めたp1から設定値pfを求める。これが環境条件が変化した時の設定値の修正量になる。
(6)以下、同様の計算を成形中続けて行えば、リアルタイムで修正量が計算できる。
(7)以上の過程で圧力設定値の修正量は、圧力制御装置の目標値となる。」
ここで、図2は以下のものである。
[図:0001425781000015.jpg]
2 本件特許発明1について
(1) 対比
本件特許発明1と、甲1発明を対比すると以下のとおりである。
ア 型、成形品、成形機
(ア) 甲1発明の「射出成形機10」及び「監視ユニット36」の構成からみて、甲1発明の「射出成形機10」は、「金型12」(内)のキャビティに溶融した「成形材料(樹脂)」を供給して「射出成形を行い」、「良品」等の「成形」品を成形するものである。
(イ) 上記(ア)より、甲1発明の「金型12」及び「射出成形機10」は、本件特許発明1の「型」及び「成形機」に相当する。また、本件特許発明1の「成形機」と、甲1発明の「射出成形機10」は、「型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する」点で共通する。
イ 設定条件に関する情報、情報処理システム
(ア) 甲1発明の(「射出成形機10の制御系のシステムにおける」)「監視ユニット36」は、「位置センサ30、速度センサ32及び圧力センサ34によって検出される各検出値」が「それぞれ入力するよう回路的接続が行われた」「制御入出力装置38」を備え、「CPU40、メモリ42、補助メモリ44、キーボード46、プリンタ48及びCRT50を備えたマイクロコンピュータで構成され」、(「良品成形時の標準データに基づく標準パターン波形と、実成形パターン波形とが表示された場合」、)「常に最適な良品成形が得られるよう成形条件の調整を行うものであ」る。
(イ)a コンピュータにおいて、CPU(中央処理装置)が所定のプログラムを読み込み、所定の動作を実行するものであるところ、甲1発明の「監視ユニット36」においては、「制御プログラムにより」、「CPU40」は、「(A)予め良品成形を得るための成形条件を監視ユニット36に設定しておき、この成形条件に基づく制御指令を前記制御部52へ」(「制御入出力装置38」を介して)「転送」するものであり、「制御部52はこの制御指令に基づき、射出成形機10を作動するための各種制御機器を制御動作」して、「射出成形機10を作動」させることになる。
b 同様に、「制御プログラムにより」、甲1発明の「CPU40」は、「(B)予め設定された成形条件で実際の射出成形を行い、得られた実成形パターン波形を前記標準パターン波形と共に前記CRT50に重ねて表示」する。
c さらに、「制御プログラムにより」、甲1発明の「CPU40」は、「(C)実成形パターン波形が標準パターン波形と一致しない場合」、「(C-2)」「標準パターン波形と実成形パターン波形との偏差から成形条件の補正値」を「演算し」、「この補正値により」「自動修正」された「設定された成形条件」、「に基づく制御指令」を「前記制御部52」へ(「制御入出力装置38」を介して)「転送」し、「射出成形を繰返」し、(E)実成形パターン波形が標準パターン波形とほぼ一致した際には、良品成形と判定し、この実成形時の成形条件を最適成形条件として補助メモリ44の一部に設定する。
(ウ) 上記(ア)、(イ)及びアより、甲1発明の「成形条件」及び「成形条件」「に基づく制御指令」は、本件特許発明1の「成形機の設定条件」及び「設定条件に関連する情報」に相当する。
また、甲1発明の「監視ユニット36」は、本件特許発明1の「情報処理システム」に相当する。したがって、本件特許発明1の「情報処理システム」と、甲1発明の「監視ユニット36」は、「成形機の設定条件に関する情報を出力する」点で共通する。
ウ センサ、基準波形データ、記憶装置
(ア) 甲1発明の「射出成形機10」は、「前記射出プランジャ18に対し、前記射出スクリュ14の位置を検出するための位置センサ30及び速度センサ32」、「前記油圧シリンダ22に対し、前記射出スクリュ14の射出圧力を検出するための圧力センサ34」を備え、「前記位置センサ30、速度センサ32及び圧力センサ34によって検出される各検出値」は、「監視ユニット36の制御入出力装置38」に「それぞれ入力するよう回路的接続が行われ」ている。
(イ) 甲1発明の「監視ユニット36」及び「CPU40」については、上記イ(ア)~(イ)で述べたとおりのものであるところ、甲1発明の「監視ユニット36」においては、「CPU40、メモリ42、補助メモリ44、キーボード46、プリンタ48及びCRT50」の「前記各要素は制御入出力装置38と共にCPU40に対し相互にバス接続され」ている。
ここで、甲1発明の「メモリ42」には、「前記位置センサ30、速度センサ32及び圧力センサ34から検出される測定データに基づき、成形時の樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等が」「時系列的に記憶保持され」、また、「補助メモリ44」には、「予め設定された良品成形時の成形条件が記憶保持されると共に、この記憶保持された成形条件に基づく成形時における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関する標準パターン波形として表示し得る標準データを設定してこのデータが記憶保持され」る。
(ウ) 上記(ア)及び(イ)より、甲1発明の「補助メモリ44」には、「設定」された、「良品成形時の成形条件」、及び、「設定」された、「良品成形時の成形条件」「に基づく成形時における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関する標準パターン波形として表示し得る標準データ」が「記憶保持」されている、と理解できる。
そして、「補助メモリ44」に「記録保持」される、上記「良品成形時の成形条件」、及び、当該「良品成形時の成形条件」「に基づく成形時における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関する」、「標準パターン波形として表示し得る標準データ」の「設定」は、「良品成形時」の、「射出成形機10」に設けられた「前記位置センサ30、速度センサ32及び圧力センサ34」によって「検出され」た「測定データ」(「各検出値」)であって、「時系列的」に入力されてくる「測定データ」(「各検出値」)に基づき行われることは、上記(ア)及び(イ)で述べた「射出成形機10」の構成、「監視ユニット36の制御入出力装置38」への入力構成、「制御入出力装置38」と「各要素」との接続構成からみて明らかである。
(エ) 上記(ア)~(ウ)及びアより、甲1発明の「良品」は、本件特許発明1の、「所定の前記成形品」とされる、「良品」に相当し、甲1発明の(「射出成形機10」の)「位置センサ30、速度センサ32及び圧力センサ34」は、本件特許発明1における「前記成形機または前記型に設けられた」とされる、「センサ」に相当する。
また、甲1発明の上記「良品成形時の成形条件」「に基づく成形時」の「標準パターン波形として表示し得る標準データ」は、本件特許発明1における、「所定の前記成形品の良品成形時に」「センサによって検出された波形データであって基準となる」とされる、「基準波形データ」に相当する。
さらに、甲1発明の「補助メモリ44」は、本件特許発明1の「少なくとも一つの」とされる」、「記憶装置」に相当し、本件特許発明1の「記憶装置」と、甲1発明の「補助メモリ44」は、上記「基準波形データが少なくとも一つ記憶されている」点で共通する。
エ 成形条件提示部
(ア) 甲1発明の「監視ユニット36」は、「補助メモリ44に記憶保持された良品成形時の成形条件による標準データに基づいて、良品成形時の標準パターン波形を前記CRT50に表示し」、「補助メモリ44に記憶保持された成形条件により実際の成形を行い、1回の射出成形毎にその時の樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関する測定データをメモリ42に記憶保持すると共に、この測定データを前記標準データと同様にCRT50にパターン波形表示する、すなわち、実際の成形時のパターン波形(実成形パターン波形)と、前記標準パターン波形とそれぞれ重ね合せてCRT50に表示するものであ」るところ、「制御プログラム」による「CPU40」の動作は、上記イ(イ)a~cで述べたとおりである。
(イ)a 上記(ア)、上記イ(イ)a~c及び上記ウ(イ)~(ウ)より、甲1発明の「CPU40」は、「(C)実成形パターン波形が標準パターン波形と一致しない場合」、「(C-2)」「標準パターン波形と実成形パターン波形との偏差から成形条件の補正値」を「演算し」、「この補正値により」「自動修正」された「設定された成形条件」、「に基づく制御指令」を「前記制御部52」へ(「制御入出力装置38」を介して)「転送」し、「射出成形を繰返」すために、「補助メモリ44」を参照して、「補助メモリ44」に「記憶保持され」た「標準パターン波形として表示し得る標準データ」を取得しているといえる。
b 同様に、甲1発明の「CPU40」は、「補助メモリ44に記憶保持された成形条件により実際の成形を行い、1回の射出成形毎にその時の樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等に関する測定データ」、すなわち、「射出成形機10」に設けられた「前記位置センサ30、速度センサ32及び圧力センサ34」によって「検出され」た、「実際の」「1回の射出成形毎」の「時系列的」な、「実成形パターン波形」として表示し得る「測定データ」を取得しているといえる。
(ウ)a また、甲1発明の「CPU40」は、上記イ(イ)cより、「標準パターン波形と実成形パターン波形との偏差」から、「成形条件の補正値」を「演算し」、「この補正値により」「成形条件」を「自動修正」して、「設定された成形条件」として、「実成形パターン波形が標準パターン波形とほぼ一致」するまで「射出成形を繰返」し、すなわち「標準パターン波形」(「として表示し得る標準データ」)と「射出成形機10」に設けられた「前記位置センサ30、速度センサ32及び圧力センサ34」によって「検出され」た「時系列的」な、「実成形パターン波形」(として表示し得る「測定データ」)が「ほぼ一致」するまで「射出成形を繰返」しているといえる。
b また、甲1発明の「CPU40」は、「ほぼ一致した際には」、「この実成形時の成形条件を最適成形条件として補助メモリ44の一部に設定」するのであるから、甲1の「CPU40」は、「標準パターン波形」(「として表示し得る標準データ」)と「ほぼ一致する」「実成形パターン波形」(として表示し得る「測定データ」)を「位置センサ30、速度センサ32及び圧力センサ34」が「検出」する「成形条件」を出力するといえる。
(エ) 甲1発明の「CPU40」は、本件特許発明1の「成形条件提供部」に相当する。
甲1発明の「実成形パターン波形」として表示し得る「測定データ」は、本件特許発明1の、「前記成形品の成形時の1ショットにおける」、あるいは「当該設定条件の値のときの成形時の」とされる、「波形データ」に相当する。
そうすると、上記(イ)a及びbより、甲1発明の「CPU40」は、本件特許発明1の「成形条件提供部」の、「前記記憶装置を参照して基準波形デーを取得し」及び「前記センサから前記成形品の成形時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し」との構成を具備する。
また、上記(ウ)a及びbより、本件特許発明1の「成形条件提供部」と、甲1発明の「CPU40」は、「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより」、「基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する」点で共通する。
オ 上記ア~エより、本件特許発明1の「情報システム」と、甲1発明は、「少なくとも一つの記憶装置と」、「成形条件提供部と、」「を備える」点で共通する。
(2) 一致点及び相違点
上記(1)の対比結果より、本件特許発明1と、甲1発明は、
「型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理システムであって、
所定の前記成形品の良品成形時に前記成形機または前記型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置と、
前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成形時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する成形条件提供部と、
を備える情報処理システム。」の構成で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
「成形条件提供部」が、「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する」のに、本件特許発明1では、「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて」いるのに対して、甲1発明では、そのような「機械学習モデルを用いて」いない点。
(3) 相違点についての判断
相違点1について検討する。
ア(ア) 甲1でいう本発明は、従来、
(I)射出成形品の良否を判別するために、成形中の成形品の品質を常に監視することが行われ、金型への樹脂材料の射出開始から充填完了に至るまで連続的に射出速度及び射出圧力に関する波形を監視する方法が知られているところ、時間軸に対する樹脂圧力の変化を監視しているため、射出開始時間と射出スクリュの始動のタイミングとが若干相違して、これにより成形品の良否の判別が不正確となる、
(II)そこで、射出スクリュの位置検出と射出シリンダの油圧力検出とを行い、得られた位置データと油圧力データとを記憶し、これらのデータから射出スクリュが移動する位置に対応する射出速度、射出圧力等を演算してこれを表示することにより、良品成形の際の標準値となる標準波形との比較を可能とし、成形品の良否判別を適正に行う成形状態監視装置が提案されているところ、
甲1でいう本発明(射出成形機の最適条件設定装置・方法)は、良品成形時の成形条件に関する標準波形に対し、実際の成形時の成形状態の測定波形の比較を行う場合、上記の従来の技術のように前記成形条件のパラメータを再設定しても、それぞれの成形時における前記パラメータ以外の外部要因、例えば外気温度、湿度、金型温度、油温、成形材料の種類等により、良品が得られない場合が生ずるとの問題に鑑みなされたものであって、
予め所定の良品成形時の成形条件を記憶保持しておき、この成形条件による実際の成形時(実成形時ともいう)における樹脂に対する射出圧力、射出速度、射出時間、射出スクリュ位置等を測定してこれらの測定データを記憶保持し、この測定データを良品成形時の成形条件のデータと共にパターン波形化してこれらの両パターン波形を表示手段に重ねて表示し、実成形時のパターン波形が良品成形時のパターン波形に一致するよう成形条件の調整を行うことにより、現状に合った良品成形のできる実成形条件の設定を容易に達成できる射出成形機の最適成形条件設定方法および装置を提供することを、発明が解決しようとする課題として、
第1の記憶手段に記憶された標準パターン波形を表示すると共に該標準パターン波形に対し第2の記憶手段に記憶された実成形パターン波形を重ねて表示する表示手段と、前記表示手段に表示された標準パターン波形と実成形パターン波形とを比較しながら実成形パターン波形が標準パターン波形と一致するように成形条件の修正を行うと共にこの修正された成形条件を記憶保持する修正成形条件設定手段とを設ける構成とすることにより、実成形パターン波形にはその成形時における成形条件のパラメータ以外の外部要因も含むことになり、常に適正な良品成形を行うことができる最適成形条件の設定を簡単なシステム構成により簡便に実現することができるようにし、
良品成形のための成形条件は、現状の射出成形機での実際の射出成形動作に基づくため、例えば実成形時の成形条件のパラメータ以外の外部要因としての外気温度、湿度、金型温度、油温、成形材料の種類等の条件も加味された良品成形条件となるようにすることをその技術的な特徴とするものである。
(イ) 甲1でいう本発明(射出成形機の最適条件設定装置・方法)が解決しようとする課題及びその技術的特徴は上記(ア)で述べたとおりのものであるところ、甲1の〔実施例〕の記載から理解される、甲1発明の「射出成形機10の制御系のシステムにおける監視ユニット36」は、「良品成形時の標準データに基づく標準パターン波形と、実成形パターン波形とが表示された場合、常に最適な良品成形が得られるよう成形条件の調整を行うものであ」って、「CPU40」は、「制御プログラムにより」、(A)~(E)の動作、特に、「(C)実成形パターン波形が標準パターン波形と一致しない場合には」、
「(C-1)例えば前記キーボード46を介して手動により監視ユニット36に設定された成形条件を修正したり」、又は、
「(C-2)監視ユニット36内部において標準パターン波形と実成形パターン波形との偏差から成形条件の補正値を演算して、この補正値により設定された成形条件の自動修正を行い」、
「(E)実成形パターン波形が標準パターン波形とほぼ一致」するまで、「(D)修正された成形条件に基づく制御指令を前記制御部52へ転送し、前記と同様の射出成形を繰返」し、この時の実成形時の成形条件を最適成形条件として補助メモリ44の一部に設定(出力)する、フィードバック制御動作を行う、ものとして、甲1でいう本発明(射出成形機の最適条件設定装置)を具体化したものと理解できる。
(ウ) そうすると、甲1発明は、「CPU40」が上記の(C)~(E)の動作からなる一連のフィードバック制御動作により上記(ア)で述べた課題を解決する点で好ましい構成であって、このような甲1発明の「CPU40」に上記一連の動作を実行させる「制御プログラム」を改変するには積極的な動機付けが必要とされるところ、甲1には、「監視ユニット46」あるいは「CPU40」のフィードバック制御動作に、「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデル」を用いた動作を導入、採用することは記載も示唆もされていない。
そうしてみると、甲1発明において、甲1に記載された技術的事項に基づき、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得えたものであるということはできない。
イ(ア) また、異議申立人が証拠として提出した甲2、甲3あるいは甲4に記載された技術的事項を検討したとしても、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得えたものであるということはできない。
(イ)a すなわち、上記1(2)より、甲2には、射出成形機向けのAI/機械学習を活用したAI自動補正システムにおいて、
情報分析基盤が理想的な波形を維持するように、熟練工に代わってAIが射出成形機の最適な設定値を予測し、この設定値で生産することで理想の波形に補正するしくみになっていること、
これまでは不具合発生後に熟練工が設定値を調整していたが、本システムでは、不具合が発生する前にAIがその傾向を検出して最適な設定値を提示することが記載されている。
b また、甲2の射出成形機向けのAI/機械学習を活用したAI自動補正システム構成図からは、
「情報収集盤(PLC)」が「射出成形機」から「センサー値」を(「情報」として)「収集」し、「エッジ端末」及び「ビッグデータ基盤」に「センサー値」を(「情報」として)出力すること、
(「Cloud」上の)「ビッグデータ基盤」は、「AI」により、「センサー値」(波形)及び検査結果から「推論モデル」や「監視条件」などを学習し、「エッジ端末」に(「情報」として)「配(学習・)配信」し、また、「分析データ」を「情報分析基盤」に(「情報」として)出力すること、
「情報分析基盤」は、(「良品波形」及び「不良品波形」の)「波形の乖離から良/不良の分岐点を分析」し、「分析結果(監視条件)」を(「作業」により)「ビッグデータ基盤」に出力すること、
「検査員」が、「良/不良情報」を(「作業」により)「ビッグデータ基盤」に入力すること、
「エッジ端末」には、「センサー値」が入力され、また、「推論モデル、監視条件」などが「(学習・)配信」され、「監視・検知」→「予測・補正値算出」→「保護制御」→「設定FB」プロセスを経て「AI」により予測された「補正設定値」が「射出成形機」に出力される、ことが理解できる。
c しかしながら、甲2のAI自動補正システム構成図等の記載からは、当該「ビッグデータ情報基盤」(あるいは、「エッジ端末」、「AI自動補正システム」)において、「エッジ端末」が、「射出成形機」へ「補正設定値」(設定条件)を出力する際に、設定値(設定条件)と当該設定値(設定条件)の値の時の成形時の波形データを入力として成形時の波形(波形データ)と良品波形(基準波形データ)の差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、とまでは理解、把握することはできない。
なぜなら、「良品波形」と「不良品波形」の(「乖離」に基づく)比較は、「情報分析基盤」において示されるに留まり、当該「情報分析基盤」から「ビッグデータ基盤」へ「作業」により入力される対象も「分析結果(監視条件)」に留まる。そうすると、(「エッジ端末」への「情報」として)「学習・配信(推論モデル、監視条件)」を出力する「ビッグデータ基盤」及び「情報分析基盤」が、上記の機械学習モデルを用いているとまではいえない。
そうしてみると、甲1発明に、甲2に記載された技術的事項を採用しても、相違点1に係る本件特許発明1の構成には至らない。
(ウ)a また、甲3でいう本発明は、射出成形機の「成形条件決定支援装置」に関し(【0001】)、検査工程を実行する前に、成形品の異常を予測することができれば、不良品の発生を抑制することができること(【0006】)に鑑みなされたものであって、
成形品の品質要素を取得するよりも前に取得できる情報を用いて、成形条件要素を調整することできる成形条件決定支援装置および射出成形機を提供すること(【0007】)を発明が解決しようとする課題として、
射出成形機の成形条件決定支援装置において、
成形時状態データを第一学習データとする機械学習により生成された第一学習モデルであって、前記成形時状態データと前記成形品の品質要素とに関する前記第一学習モデルを記憶する第一学習モデル記憶部と、
前記成形時状態データと成形条件要素とを第二学習データとする機械学習により生成された第二学習モデルであって、前記成形時状態データと前記成形条件要素とに関する前記第二学習モデルを記憶する第二学習モデル記憶部と、
前記第一学習モデルを用いて、前記センサにより検出された前記成形時状態データと成形時状態データ目標値との差分に相当する値である成形時状態データ調整量を取得する成形時状態データ調整量取得部と、前記第二学習モデルを用いて、前記成形時状態データ調整量に対応する前記成形条件要素の調整量を取得する成形条件要素調整量取得部とを備え(【0008】)、
成形時状態データと成形品の品質要素との関係を表す第一学習モデルと成形時状態データとを考慮することによって、成形品の品質要素の値が所定値となるように、成形時状態データ調整量を取得し(【0010】)、
さらに、成形時状態データと成形条件要素との関係を表す第二学習モデルと成形時状態データ調整量とを考慮することによって、成形条件要素の調整量を取得することにより、取得した成形条件要素の調整量に応じて成形条件要素を調整することによって、成形品の品質要素を良好とすることに技術的特徴を有する(【0011】)ものある。
b しかしながら、下記図2(特に図2の右下部分)に示される、射出成形機の「成形条件決定支援装置」において、「成形条件要素」を調整するための「成形条件要素調整量」(例えば金型温度の指令値の上昇量5℃等)を取得する(【0043】)際に用いられる「第二学習モデル」は、「成形時状態データと成形条件要素とを第二学習データとする機械学習により生成された」もの(【0008】、【図2】)であって、
成形品の成形時において取得される、射出成形機1に取り付けられた射出装置用センサ37、型締装置用センサ45及び圧力センサ6d,6eにより検出された「成形時状態データ」(【0029】)であって、対象のデータ種の時間に伴う挙動(「波形データ」)としてもよい(【0023】)、「成形時状態データ」と、
「成形条件要素」(例えば金型温度、保圧力、射出速度、保圧時間、型締力、加熱シリンダ32における溶融材料の貯留量等)とに関する学習モデルであるものの、この「第二学習モデル」は、設定条件(「成形条件要素」)の値と、その値の時のセンサからの波形データ(「成形時状態データ」)を入力として、波形データ(「成形時状態データ」)と、その基準となる基準波形データとの差が小さくなるように学習する学習モデルとまではいえない。
[図:0001425781000016.jpg]
そうしてみると、甲1発明に、甲3に記載された技術的事項を採用しても、相違点1に係る本件特許発明1の構成には至らない。
(エ)a さらに、甲4でいう本発明は、射出成形機の制御装置に関し、
成形中における金型温度や樹脂温度等の環境条件の変動があっても成形品品質を安定に保つように成形中の圧力設定値を修正する射出成形機の制御装置を提供すること(【0008】)を、発明が解決しようとする課題して、
樹脂状態検出手段として金型内の樹脂温度センサと樹脂圧力センサとを含み、成形条件出しによって得られた射出速度、保圧時の樹脂圧力等の成形条件を設定値として入力する手段と、該入力手段で設定された設定値にもとづいて初期状態を定め、前記各センサからの検出値を用いてあらかじめ定められた式にもとづいて保圧工程での圧力設定値修正量を算出するニューラルネットワーク方式の演算装置と、前記設定値あるいは前記圧力設定値修正量を目標値として保圧工程での圧力制御を行う圧力制御装置とを備え、
成形開始に先立ってあらかじめ行われた成形条件出しで得られた設定値と、その際の金形内樹脂圧力、温度の検出値及び樹脂の状態方程式を用いて、キャビティ内各部の樹脂の比容積を計算し、次に、求めた上記比容積を目標値として、その値を実現するように金型内樹脂圧力、温度の検出値から設定値の修正量を計算することにより、樹脂圧力、温度の検出値は連続成形開始時に大きく変化し、以降室温や成形機本体の温度変動に対して徐々に変化が、これらの変化分は演算装置により圧力設定値の修正量に変換され、圧力制御装置の目標値とすることを技術的特徴とするものである(【0009】~【0010】、図1、【0017】、図2等)。
b しかしながら、甲4に記載された、射出成形機の圧力制御装置の圧力設定値修正量を算出するために使用されるニューラルネットワーク方式の演算装置は、成形条件出しによって得られた射出速度、保圧時の樹脂圧力(パターン)等の成形条件を設定値として入力し、成形条件及び(設定値)各及びセンサからの検出値を用いて、ニューラルネットワーク方式の演算装置により、予め定められた式に基づいて保圧工程での圧力設定値修正量を算出して、求めたキャビティ内各部の樹脂の比容積を目標値として、その値を実現するように金型内樹脂圧力、温度の検出値から設定値の修正量を直接計算するものであるから、このニューラルネットワーク方式の演算装置は、「成形条件」(設定条件)の値と、その値の時のセンサからの波形データを入力として、波形データと、その基準となる基準波形データとの差が小さくなるように学習する学習モデルとはいえない。
そうしてみると、甲1発明に、甲4に記載された技術的事項を採用しても、相違点1に係る構成には至らない。
(オ) 以上のとおりであるから、甲1発明において、甲2~甲4に記載された技術的事項に基づき、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得えたものであるということはできない。
ウ さらに、異議申立人が証拠として提出した甲5~甲10にも、「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデル」は記載も示唆もされておらず、当該機械学習モデルが周知のものであるとの証拠もない。
エ 異議申立人の異議申立書における主張について
(ア) 異議申立人は、異議申立書において、
(A) 甲1発明として、以下の発明を認定し、
「1a:金型のキャビティに成形材料を供給することにより成形品を成形する射出成型機の成形条件に関する情報である制御指令を出力する監視ユニットであって、
1b:所定の成形品の良品成形時に射出成型機に設けられたセンサによって検出された襟準パターン波形を表示するための標準データであって基準となる標準データが少なくとも一つ記億されている少なくとも一つの補助メモリと、
1c:補助メモリを参照して、標準データを取得し、
1d:センサから成形品の実成形時の1回の射出成形における実成形パターン波形を表示するための測定データを少なくとも一つを取得し、
1e:少なくとも一つの成形条件の値と当該成形条件の値のときの実成形時の実成形パターン波形を表示するための測定データを入力として、実成形パターン波形と標準パターン波形の差が小さくなるように成形条件を修正するプログラムを用いて、
1f:少なくとも一つ成形条件の値と当該成形条件の値のときの実成形時の実成形パターン波形を表示するための測定データを処理することにより、標準パターン波形と同一又は類似の実成形パターン波形を表示するための測定データをセンサが検出する成形条件の値を少なくとも一つ出力するCPUと、を備える監視ユニット。」(異議申立書18~19頁)
(B) 本件特許発明1の「1E:少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機被学習モデルを用いて、」については、「エ記載不備の理由」で後述する通り「成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデル」とは、どのような学習をするのか明らかではない、
特許を受けようとする発明が明確ではないため、ここでは、構成要件1Eを、構成要件1Fの内容を鑑み「1E:少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるような設定条件の値を成形条件提供部が出力するために必要な情報を出力するように学習した機核学習モデルを用いて、」と理解して対比する(異議申立書30頁8~19行)、
(C) 本件特許発明1と甲1発明とを比較すると、相違点1(本件特許発明1が機械学習モデルを用いて設定条件の値を出力するのに対して、甲1発明はプログラムを用いており、機械学習モデルを用いていない点。)で相違し、その予の点で一致する、(異議申立書31頁)
(D) 相違点1について検討すると、第1に、甲1発明におけるプログラムと本件特許発明1における機械学習モデルは、射出成型機の設定条件と実成形時の波形データから、好適な成形条件を得るという同一の課題を解決するための均等物による置換に過ぎず、当業者が適宜なし得る設計事項であって、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない、
よって、本件特許発明1は、甲1発明を知る当業者であれば周知技術を適用するまでもなく、容易に想到可能である、
(E) 第2に、甲2及び甲3に示されているように、本件発明の優先日前において、射出成形機の分野において、実成形時にセンサが検出した波形データを機械学習モデルに入力して、射出成型機の成形条件を補正する技術は周知であったものと認められ、甲2及び甲3に記載の技術は、甲1発明と少なくとも技術分野及び課題が共有し、甲1発明に適用することに特段の阻害要因もないことから、これらの周知技術を、甲1発明に適用し、本件特許発明1とすることは、当業者ならば容易になし得ることである、
(F) 第3に、甲4に示すように、機械学習の技術分野において、現在の設定条件と、当該設定条件の値の時にセンサが検出した値をニューラルネットワークに入力し、より好適な設定条件の値を出力するために必要な情報を出力することが周知技術として知られている、
そして、甲1発明のプログラムと周知技術に記載のニューラルネットワークとは、現在の設定条件と、当該設定条件の値の時にセンサが検出した値を入力として、より好適な設定条件の値を出力するために必要な情報を出力するという点で作用・機能が共通している、
また、甲1発明と周知技術はどちらも射出成形機の成形条件を設定するものであり技術分野も共通する、
そして、甲1発明に周知技術を適用するに当たり、特段の阻害要因は存在しない、
以上の事情に基づけば、甲1発明に周知技術を適用し、甲1発明のプログラムに代えて、機械学習モデルであるニューラルネットワークを用いることは当業者が容易に想到することができたことである、(異議申立書31~32頁)
と主張する。
(イ) しかしながら、上記第4で述べたとおり、請求項1の「成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデル」との記載は明確であり、請求項1及び請求項11に係る発明も明確であるから、特許を受けようとする発明が明確ではないことを前提とする異議申立人の上記主張は、その前提において誤りがある。
そして、甲1発明、本件特許発明1との対比、一致点及び相違点については、上記(1)及び(2)で述べたとおりであるところ、甲1発明において、甲1の記載に基づき、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得えたものであるということはできないこと、甲1発明において、甲2~甲4に記載された技術的事項を採用しても、相違点1に係る本件特許発明1の構成に至らないことは、上記ア及びイで述べたとおりである。
さらに、射出成形機の分野において、(上記(E)の)実成形時にセンサが検出した波形データを機械学習モデルに入力して、射出成型機の成形条件を補正する技術、あるいは、(上記(F)の)現在の設定条件と、当該設定条件の値の時にセンサが検出した値をニューラルネットワークに入力し、より好適な設定条件の値を出力するために必要な情報を出力する技術が、先の出願時に周知技術であるとして、仮に甲1発明において、このような周知技術を採用することができたとしても、相違点1に係る本件特許発明1の構成に至らない。
してみると、上記(ア)の異議申立人の主張を採用することはできない。
オ 小括
本件特許発明1は、甲1に記載された発明、甲1に記載された技術的事項及び甲2~甲10に記載された技術的事項(あるいは周知技術)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
3 本件特許発明2~10について
本件特許発明2~10は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。
そうすると、上記2(3)で述べた理由により、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、甲1に記載された技術的事項及び甲2~甲10に記載された技術的事項(あるいは周知技術)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない以上、本件特許発明2~10は、甲1に記載された発明、甲1に記載された技術的事項及び甲2~甲10に記載された技術的事項(あるいは周知技術)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
4 本件特許発明11について
(1) 対比
本件特許発明11と、甲1制御プログラム発明を対比すると、両者は、下記の点で相違する。
(相違点11)
「コンピュータ」に「実行させる」「手順」が、「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する」のに、本件特許発明11では、「少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて」いるのに対して、甲1制御プログラム発明では、そのような「機械学習モデルを用いて」いない点。
(2) 判断
相違点11については、相違点1と同様な相違点であるところ、相違点1についての判断は、上記2(3)で述べたとおりである。
(3) 小括
本件特許発明11は、甲1に記載された発明、甲1に記載された技術的事項及び甲2~甲10に記載された技術的事項(あるいは周知技術)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
第7 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700161