特許異議申立
2023-701233
熱可塑性樹脂粉末、立体造形用樹脂粉末、立体造形物の製造装置、及び立体造形物の製造方法
- 審判番号
- 2023-701233
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-093728
- 登録番号
- 7279506
- 請求日
- 2023年11月22日
- 審決日
- 2024年09月30日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社リコー
- 【権利者代理人】山口 昭則
- 【権利者代理人】新川 圭二
- 【異議申立人】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
- 【異議申立人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【異議申立人代理人】太田 顕学
- 審判長/審判官
- 審判長 近野 光知
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 松本 直子
- 分類
- P1651.121-YAA(B29C) / P1651.536-YAA(B29C) / P1651.537-YAA(B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第131条の2第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7279506号発明「熱可塑性樹脂粉末、立体造形用樹脂粉末、立体造形物の製造装置、及び立体造形物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7279506号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-19〕について訂正することを認める。
特許第7279506号の請求項1ないし3及び5ないし19に係る特許を維持する。
特許第7279506号の請求項4に係る特許に対する申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7279506号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし19に係る特許についての出願は、令和1年5月17日を出願日とする特願2019-93728号であって、令和5年5月15日にその特許権の設定登録(請求項の数19)がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許に対し、同年11月22日に特許異議申立人 エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし19)がされたものである。
特許異議の申立てにおける手続の経緯は、次のとおりである。
令和6年 2月29日付け:取消理由通知
同年 5月 2日 :意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年 5月16日付け:手続補正指令書(方式)
同年 6月10日 :手続補正書(方式)(特許権者)
同年 6月27日付け:通知書(申立人宛て)
本通知書に対して、申立人からの応答はなかった。
第2 本件訂正請求について
1 補正の適否についての判断
令和6年6月10日提出の手続補正書による補正は、「6 請求の趣旨」の「本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり」を「本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり」とする補正であり、「7 請求の理由」の「(2)訂正事項」及び「(3)訂正の理由」の訂正事項11及び14ないし16において式(I)の化合物に「【化1】」の記載を追加する補正であり、「7 請求の理由」の「(3)訂正の理由」の「ア 一群の請求項についての説明」において訂正後の請求項を変更する補正であるから、その要旨を変更するものではない。
したがって、当該手続補正書による訂正請求書の補正を認める(特許法第120条の5第9項において準用する特許法第131条の2第1項)。
2 請求の趣旨
令和6年6月10日提出の手続補正書により補正された令和6年5月2日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)における請求の趣旨は、「特許第7279506号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求める。」というものである。
3 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「であることを特徴とする」と記載されているのを、
「であり、50%累積体積粒径が5μm以上200μm以下であり、かつ体積平均粒径(Mv)と個数平均粒径(Mn)との比(Mv/Mn)が2.00以下であることを特徴とする」に訂正する(請求項1を引用する、請求項2、3、5から13、15及び16も同様に訂正する)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。(請求項4を引用する、請求項5から13、15及び16も同様に訂正する)。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「請求項4に記載の」と記載されているのを、「請求項1から3のいずれかに記載の」に訂正する(請求項5を引用する、請求項6から13、15及び16も同様に訂正する)。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から5のいずれかに記載の」と記載されているのを、「請求項1から3、5のいずれかに記載の」に訂正する(請求項6を引用する請求項7から13、15及び16も同様に訂正する)。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1から6のいずれかに記載の」と記載されているのを、「請求項1から3、5、6のいずれかに記載の」に訂正する(請求項7を引用する請求項8から13、15及び16も同様に訂正する)。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1から7のいずれかに記載の」と記載されているのを、「請求項1から3、5から7のいずれかに記載の」に訂正する(請求項8を引用する請求項9から13、15及び16も同様に訂正する)。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から8のいずれかに記載の」と記載されているのを、「請求項1から3、5から8のいずれかに記載の」に訂正する(請求項9を引用する請求項10から13、15及び16も同様に訂正する)。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1から9のいずれかに記載の」と記載されているのを、「請求項1から3、5から9のいずれかに記載の」に訂正する(請求項10を引用する請求項11から13、15及び16も同様に訂正する)。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1から11のいずれかに記載の」と記載されているのを、「請求項1から3、5から11のいずれかに記載の」に訂正する(請求項12を引用する請求項13、15及び16も同様に訂正する)。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1から12のいずれかに記載の」と記載されているのを、「請求項1から3、5から12のいずれかに記載の」に訂正する(請求項13を引用する請求項15及び16も同様に訂正する)。
サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項14に「前記熱可塑性樹脂粉末が略円柱体を含み、・・・である請求項1から13のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。」と記載されているのを、「耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、前記耐熱性帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であり、前記熱可塑性樹脂粉末が柱体粒子を含み、かつ前記柱体粒子の底面における直径又は長辺に対する高さの比が0.5倍以上2倍以下であり、前記熱可塑性樹脂粉末が略円柱体を含み、・・・である熱可塑性樹脂粉末。
【化1】
[図:0001418221000001.jpg]
」と訂正する(請求項14を引用する請求項15及び16も同様に訂正する)。
シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項15に「請求項1から14のいずれかに記載の」と記載されているのを、「請求項1から3、5から14のいずれかに記載の」に訂正する(請求項15を引用する請求項16も同様に訂正する)。
ス 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項16に「請求項1から15のいずれかに記載の」と記載されているのを、「請求項1から3、5から15のいずれかに記載の」に訂正する。
セ 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項17に、「請求項1から16のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末を含み、・・・測定する。」と記載されているのを、「耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、前記耐熱性帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であり、前記熱可塑性樹脂粉末が柱体粒子を含み、かつ前記柱体粒子の底面における直径又は長辺に対する高さの比が0.5倍以上2倍以下である熱可塑性樹脂粉末を含み、・・・
【化1】
[図:0001418221000002.jpg]
・・・測定する。」と訂正する。
ソ 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項18に、「請求項1から16のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末が貯蔵されている供給槽と、・・・を特徴とする立体造形物の製造装置。」と記載されているのを、「耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、前記耐熱性帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であり、前記熱可塑性樹脂粉末が柱体粒子を含み、かつ前記柱体粒子の底面における直径又は長辺に対する高さの比が0.5倍以上2倍以下である熱可塑性樹脂粉末が貯蔵されている供給槽と、・・・を特徴とする立体造形物の製造装置。
【化1】
[図:0001418221000003.jpg]
」と訂正する。
タ 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項19に、「請求項1から16のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末を・・・を特徴とする立体造形物の製造方法。」と記載されているのを、「耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、前記耐熱性帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であり、前記熱可塑性樹脂粉末が柱体粒子を含み、かつ前記柱体粒子の底面における直径又は長辺に対する高さの比が0.5倍以上2倍以下である熱可塑性樹脂粉末を・・・を特徴とする立体造形物の製造方法。
【化1】
[図:0001418221000004.jpg]
」と訂正する。
チ 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし19について、請求項2ないし19は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~19に対応する訂正後の請求項1~19は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1による請求項1の訂正は、訂正前の請求項1に記載された「熱可塑性樹脂粉末」の粒径の値及び体積平均粒径と個数平均粒径との比の値を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当該訂正は、特許請求の範囲の請求項4及び願書に最初に添付した明細書の段落【0098】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5ないし13、15及び16についても同様である。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項4を削除するというものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項5が引用する請求項4が訂正後の請求項1に組み込まれたことに伴い、訂正前の請求項5が引用する請求項4が引用する「請求項1、2又は3」と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ 訂正事項4ないし10、12及び13について
訂正事項4ないし10、12及び13は、訂正事項2により訂正前の請求項4を削除することに伴い、訂正前の請求項6ないし10、12、13、15及び16において、引用先の請求項のうち請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
オ 訂正事項11及び14ないし16について
訂正事項11は、訂正前の請求項14が訂正前の請求項1ないし13の記載を引用する記載であったものを、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、訂正事項14は、訂正前の請求項17が訂正前の請求項1ないし16の記載を引用する記載であったものを、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、訂正事項15は、訂正前の請求項18が訂正前の請求項1ないし16の記載を引用する記載であったものを、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、訂正事項16は、訂正前の請求項19が訂正前の請求項1ないし16の記載を引用する記載であったものを、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、当該訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項14の記載を直接又は間接的に引用する請求項15及び16についても同様である。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1、3及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-19〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし19に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいい、総称して「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、令和6年6月10日提出の手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、
前記耐熱性帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であり、
前記熱可塑性樹脂粉末が柱体粒子を含み、かつ前記柱体粒子の底面における直径又は長辺に対する高さの比が0.5倍以上2倍以下であり、
50%累積体積粒径が5μm以上200μm以下であり、かつ体積平均粒径(Mv)と個数平均粒径(Mn)との比(Mv/Mn)が2.00以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂粉末。
【化1】
[図:0001418221000005.jpg]
【請求項2】
耐熱性帯電防止剤を0.1質量%以上5.0質量%以下含む請求項1に記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項3】
ISO 7111-1987に準拠した測定方法による5%質量減少温度が150℃以上の耐熱性帯電防止剤を0.1質量%以上5.0質量%以下含む請求項1から2のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記比(Mv/Mn)が1.30以下である請求項1から3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項6】
ISO 3146に準拠した測定方法による融点が100℃以上である請求項1から3、5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項7】
表面抵抗率が1×105Ω以上1×1014Ω以下である請求項請求項1から3、5、6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項8】
体積抵抗率が1×105Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下である請求項1から3、5から7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項9】
高温抵抗率が1×105Ω・cm以上1×1015Ω・cm以下である請求項1から3、5から8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項10】
酸化防止剤を更に含む請求項1から3、5から9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項11】
前記酸化防止剤としてリン系酸化防止剤を0.10質量%以上0.8質量%以下含み、及びフェノール系酸化防止剤を0.05質量%以上0.2質量%以下含む請求項10に記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項12】
前記柱体粒子が、円柱体及び多角柱体のいずれかである請求項1から3、5から11のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項13】
前記耐熱性帯電防止剤が、前記熱可塑性樹脂粉末に対して内添されている請求項1から3、5から12のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項14】
耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、
前記耐熱性帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であり、
前記熱可塑性樹脂粉末が柱体粒子を含み、かつ前記柱体粒子の底面における直径又は辺に対する高さの比が0.5倍以上2倍以下であり、
前記熱可塑性樹脂粉末が略円柱体を含み、前記略円柱体の底面における直径が5μm以上200μm以下であり、かつ高さが5μm以上200μm以下であるか、又は
前記熱可塑性樹脂粉末が直方体を含み、前記直方体の底面における各辺が5μm以上200μm以下であり、かつ高さが5μm以上200μm以下である熱可塑性樹脂粉末。
【化1】
[図:0001418221000006.jpg]
【請求項15】
密度が0.8g/cm3以上1.4g/cm3以下である請求項1から3、5から14のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項16】
TG-DTA法による、前記熱可塑性樹脂粉末の融点-10℃の温度で4時間加熱後の質量減少率が0.65質量%以下である請求項1から3、5から15のいずれかに記載の熱可塑性樹脂粉末。
【請求項17】
耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、
前記耐熱性帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であり、
前記熱可塑性樹脂粉末が柱体粒子を含み、かつ前記柱体粒子の底面における直径又は長辺に対する高さの比が0.5倍以上2倍以下である熱可塑性樹脂粉末を含み、
摩擦帯電法で以下の条件により測定した表面帯電電位が±100V以下であることを特徴とする立体造形用樹脂粉末。
【化1】
[図:0001418221000007.jpg]
[条件]
熱可塑性樹脂粉末の融点-10℃の温度で10分間、ステンレス鋼リコーターを500m/分で回転させて、供給槽から造形槽に熱可塑性樹脂粉末を供給した後、100℃での造形槽の粉末層表面の表面帯電電位を測定する。
【請求項18】
耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、
前記耐熱性帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であり、
前記熱可塑性樹脂粉末が柱体粒子を含み、かつ前記柱体粒子の底面における直径又は長辺に対する高さの比が0.5倍以上2倍以下である熱可塑性樹脂粉末が貯蔵されている供給槽と、
前記供給槽に貯蔵された前記熱可塑性樹脂粉末を供給する供給手段と、
前記熱可塑性樹脂粉末を含む層を形成する層形成手段と、
前記層を硬化する硬化手段と、
を有することを特徴とする立体造形物の製造装置。
【化1】
[図:0001418221000008.jpg]
【請求項19】
耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、
前記耐熱性帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であり、
前記熱可塑性樹脂粉末が柱体粒子を含み、かつ前記柱体粒子の底面における直径又は長辺に対する高さの比が0.5倍以上2倍以下である熱可塑性樹脂粉末を含む層を形成する層形成工程と、
前記層を硬化する硬化工程と、を繰り返すことを特徴とする立体造形物の製造方法。
【化1】
[図:0001418221000009.jpg]
」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件発明1は、前記耐熱性帯電防止剤が、分子中に構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であることを規定する。
しかしながら、実施例において、本件発明1の耐熱性帯電防止剤として具体的に示されたのは「ビオミセルBN105」だけである。
原子団および炭化水素の種類や数、ならびに半極性有機化合物および塩基性有機化合物の種類と数によって帯電防止剤の性質が変わることが本件特許の技術分野における技術常識であることを考慮すると、「ビオミセルBN105」の具体例のみに基づいて本件発明の熱可塑性樹脂粉末を得るためには、当業者に過度な試行錯誤を強いるものである。したがって、本件の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1の実施をできる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
3 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
本件発明1は、前記耐熱性帯電防止剤が、分子中に構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であることを規定する。
しかしながら、実施例において、本件発明1の耐熱性帯電防止剤として具体的に示されたのは「ビオミセルBN105」だけであり、発明の詳細な説明の記載からは、本件発明のあらゆる耐熱性帯電防止剤が本件発明の解決課題である「帯電防止効果に優れ、装置内における樹脂粉末の付着を低減でき、綺麗な造形面を有する立体造形物を造形することができる」のか、について不明である。
原子団および炭化水素の種類や数、ならびに半極性有機化合物および塩基性有機化合物の種類と数によって帯電防止剤の性質が変わることが本件特許の技術分野における技術常識であることを考慮すると、唯一の具体例である「ビオミセルBN105」のみに基づいて、本件発明のあらゆる耐熱性帯電防止剤を用いた場合に本件発明の解決課題が解決されると認めることはできず、発明の詳細な説明に記載された事項を本件発明の範囲にまで拡張ないし一般化することはできない。
4 証拠方法
(1)申立書に添付した証拠方法
・甲第1号証:特表2018-534398号公報
・甲第2号証:特開2017-171884号公報
・甲第3号証:特開2018-150476号公報
・甲第4号証:特開2019-59836号公報
・甲第5号証:国際公開第2013/138204号とその抄訳
・甲第6号証:国際公開第2016/084928号
・甲第7号証:特開平11-279330号公報.
・甲第8号証:特開2003-49080号公報
・甲第9号証:特開2019-31654号公報
・甲第10号証:特表2015-500375号公報
(2)当審が職権調査により発見した証拠方法
・参考文献1:特開2010-90197号公報
証拠の表記は、申立書の記載におおむね従った。以下、「甲第1号証」ないし「甲第10号証」を、「甲1」ないし「甲10」といい、「参考文献1」を「参1」という。
第5 取消理由の概要
本件特許に対して、当審が令和6年2月29日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。
取消理由1(甲3を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし3、6ないし13、15及び16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、6ないし13、15及び16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 当審の判断
1 本件発明4に係る特許に対する申立ての却下
上記第2で示したとおり、本件特許の請求項4は本件訂正により削除され、この特許に対する申立ては、申立ての対象を欠くこととなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により決定をもって却下すべきものである。
2 当審で通知した取消理由通知の取消理由及び申立理由について
以下に述べるように、当審で通知した取消理由通知の取消理由及び申立書に記載した申立理由によっては、本件発明1ないし3及び5ないし19に係る特許は取り消すことはできない。
(1)取消理由1(甲3に基づく進歩性)について
ア 甲3に記載された発明
甲3には、実施例2のペレットに着目すると、以下の発明が記載されている。
「メタロセン系プロピレン-エチレンランダム共重合体(PP-1)100重量部、ドナー・アクセプター系帯電防止剤としての(株)ボロン研究所製商品名「ビオミセルBN-105」(T-1)0.5重量部、フェノール系酸化防止剤「IR1010」(A-1)0.03重量部、及び中和剤「CaSt」:ステアリン酸カルシウム 日東化成社製(A-3)0.05重量部からなるプロピレン系樹脂組成物を、スーパーミキサーでドライブレンドした後、東芝機械(株)製TEM-35B二軸押出機を用いて、ダイ出口部温度220℃で溶融混練し、得られるペレット。」(以下、「甲3発明」という。)
また、実施例2のペレット、【0097】及び【0098】の記載に着目すると、以下の発明が記載されている。
「甲3発明のペレットを用いた成形品の製造装置。」(以下、「甲3装置発明」という。)
「甲3発明のペレットを用いた成形品の製造方法。」(以下、「甲3方法発明」という。)
イ 本件発明1について
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「メタロセン系プロピレン-エチレンランダム共重合体(PP-1)」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂」に相当する。
甲3発明の「ペレット」は、熱可塑性樹脂を含むものであるから、本件発明1の「熱可塑性樹脂粉末」に相当する。
甲3発明の「(株)ボロン研究所製商品名「ビオミセルBN-105」(T-1)」は、甲3の【0053】、【0054】及び【0072】の記載から、本件発明1の「分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤
[図:0001418221000010.jpg]
」に相当する。
また、甲3発明は、ビオミセルBN-105の含有割合が約0.5重量%(=0.5/100.58×100)であるから、本件発明1の「帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む」との規定を満たす。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、
前記帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤である、熱可塑性樹脂粉末。
【化1】
[図:0001418221000011.jpg]
」
そして、両者は次の点で一応相違する。
・相違点3-1
帯電防止剤に関して、本件発明1は「耐熱性」であるのに対し、甲3発明はそのような特定がない点
・相違点3-2
本件発明1は「熱可塑性樹脂粉末が柱体粒子を含み、かつ前記柱体粒子の底面における直径又は長辺に対する高さの比が0.5倍以上2倍以下である」のに対し、甲3発明はペレットの形状についての特定がない点
・相違点3-3
本件発明1は「熱可塑性樹脂粉末」の「50%累積体積粒径が5μm以上200μm以下であり、かつ体積平均粒径(Mv)と個数平均粒径(Mn)との比(Mv/Mn)が2.00以下である」のに対し、甲3発明はそのような特定がない点
事案に鑑み、上記相違点3-3について検討する。
甲3には、「酸化安定性が非常に高く、揮発性成分含有量が少なく、電子機器部品等の搬送の際にも性能低下を起こさず、防塵性に優れるプロピレン系樹脂組成物及び成形品を提供することであり、特に電子機器部品搬送用成形品を提供すること」(【0011】)を発明が解決しようとする課題とすることが記載されており、「樹脂組成物ペレット」(【0100】)についても記載されているが、当該樹脂組成物ペレットの50%累積体積粒径及び体積平均粒径(Mv)と個数平均粒径(Mn)との比(Mv/Mn)については記載も示唆もない。
そうすると、甲3には、甲3発明において、「50%累積体積粒径が5μm以上200μm以下であり、かつ体積平均粒径(Mv)と個数平均粒径(Mn)との比(Mv/Mn)が2.00以下」とする動機付けとなる記載はない。
さらに、甲6には、「積層後に水を含む液体と接触させることで除去可能であり、積層造形プロセスにおける温度制御を容易にできる造形材料を提供すること」([0010])を発明が解決しようとする課題とすることが記載され、「粒子1の体積基準の平均粒子径は1μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以上80μm以下である。また、粉末100の体積基準の平均粒子径は1μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以上80μm以下である。粉末100の平均粒子径を1μm以上とすることにより、後述する積層工程における1回の積層膜厚を厚くすることができるため、少ない積層回数で所望の高さの立体物を得ることが可能となる。また、粉末100の平均粒子径を100μm以下とすることにより、形状精度や寸法精度の高い立体物を製造しやすくなる。」([0078])と記載され、「本実施形態に係る粉末100の粒度分布は、粉末100の体積基準の平均粒子径をDv(μm)、粉末100の個数基準の平均粒子径をDn(μm)としたときに、Dv/Dnが1.00以上10.0以下であることが好ましい。粉末100の粒度分布を上記範囲にすることで、形状精度や寸法精度の高い立体物を製造しやすくなる。また、電子写真方式の積層造形法に好適に使用できるため好ましい。」([0085])と記載されている。
しかしながら、甲3には、「本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いた成形品、特に電子機器部品搬送用成形品、電子機器部品搬送ケース及び半導体関連部品搬送ケースを製造するには、プロピレン系樹脂組成物を、射出成形法等により所望形状の成形品及びケースに成形する方法が一般的である。」(【0097】)と記載されているが、積層造形法については記載されていない。
そうすると、甲3には、甲3発明において、積層造形法である甲6の記載事項を適用する動機付けとなる記載もない。
したがって、甲3発明において、相違点3-3に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明1は、相違点3-1~3-3に係る発明特定事項を有することにより、「帯電防止効果に優れ、装置内における樹脂粉末の付着を低減でき、綺麗な造形面を有する立体造形物を造形することができる」(【0005】)という効果を奏する。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明並びに甲3及び甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2、3及び5ないし13について
本件発明2、3及び5ないし13は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記イで検討したとおり、本件発明1は、甲3発明並びに甲3及び甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明である本件発明2、3及び5ないし13は、甲3発明並びに甲3及び甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明14について
本件発明14と甲3発明を対比すると、上記イと同様の相当関係が成り立つ。
そうすると、両者は上記イと同様の点で一致する。
そして、両者は、上記イの相違点3-1及び3-2並びに下記の点で相違する。
・相違点3-4
本件発明14は、「前記熱可塑性樹脂粉末が略円柱体を含み、前記略円柱体の底面における直径が5μm以上200μm以下であり、かつ高さが5μm以上200μm以下であるか、又は
前記熱可塑性樹脂粉末が直方体を含み、前記直方体の底面における各辺が5μm以上200μm以下であり、かつ高さが5μm以上200μm以下である」のに対し、甲3発明はそのような特定がない点
事案に鑑み、上記相違点3-4について検討する。
上記イで述べたとおり、甲3には、段落【0011】及び【0100】の記載はあるが、樹脂組成物ペレットの形状並びにその寸法については記載も示唆もない。
そうすると、甲3には、甲3発明において、「前記熱可塑性樹脂粉末が略円柱体を含み、前記略円柱体の底面における直径が5μm以上200μm以下であり、かつ高さが5μm以上200μm以下であるか、又は
前記熱可塑性樹脂粉末が直方体を含み、前記直方体の底面における各辺が5μm以上200μm以下であり、かつ高さが5μm以上200μm以下である」とする動機付けとなる記載はない。
さらに、甲5には、「粉末系付加製造システムにおいて使用するための消耗性マイクロペレットであって、前記消耗性マイクロペレットは、コア部分が、前記消耗性マイクロペレットの長軸方向に沿って延在し、ここで、前記コア部分は、第一の熱可塑性材料を組成的に含んでおり、かつシェル部分が、前記消耗性マイクロペレットの長軸方向に沿って延在し、かつ少なくとも部分的に前記コア部分を包み、ここで、前記シェル部分は、第一の熱可塑性材料とは異なる第二の熱可塑性材料を組成的に含んでいることを特徴とし、前記消耗性マイクロペレットが、10ミクロン~250ミクロンの範囲の平均断面直径を有し、前記マイクロペレットの長さと前記マイクロペレットの直径との平均比が、1:2~3:1の範囲であることを特徴とし、かつ前記消耗性マイクロペレットが、三次元物体の複数の凝固した層を形成するために溶融および使用されるように構成され、前記層が、前記消耗性マイクロペレットのコア部分およびシェル部分に対応する断面プロファイルを少なくとも部分的に保持することをさらに特徴とする、消耗性マイクロペレット。」(請求項1)と記載されている。
しかしながら、上記イで述べたとおり、甲3には、粉末系付加製造システムにおいて使用することについては記載されていない。
そうすると、甲3には、甲3発明において、粉末系付加製造システムにおいて使用する甲5の記載事項を適用する動機付けとなる記載もない。
したがって、甲3発明において、相違点3-4に係る本件発明14の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明14は、相違点3-1、3-2及び3-4に係る発明特定事項を有することにより、「帯電防止効果に優れ、装置内における樹脂粉末の付着を低減でき、綺麗な造形面を有する立体造形物を造形することができる」(【0005】)という効果を奏する。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明14は甲3発明並びに甲3及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明15及び16について
本件発明15及び16は、請求項1又は14を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件発明1又は14の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記イ及びエで検討したとおり、本件発明1又は14は、甲3発明並びに甲3、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1又は14の発明特定事項を全て含む発明である本件発明15及び16は、甲3発明並びに甲3、甲5及び甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件発明17について
本件発明17と甲3発明を対比すると、上記イと同様の相当関係が成り立つ。
そうすると、両者は上記イと同様の点で一致する。
そして、両者は、上記イの相違点3-1及び3-2並びに下記の点で相違する。
・相違点3-5
本件発明17は、「摩擦帯電法で以下の条件により測定した表面帯電電位が±100V以下である
[条件]
熱可塑性樹脂粉末の融点-10℃の温度で10分間、ステンレス鋼リコーターを500m/分で回転させて、供給槽から造形槽に熱可塑性樹脂粉末を供給した後、100℃での造形槽の粉末層表面の表面帯電電位を測定する。」のに対し、甲3発明はそのような特定がない点
・相違点3-6
樹脂粉末に関して、本件発明17は、「立体造形用」であるのに対し、甲3発明はそのような特定がない点
事案に鑑み、上記相違点3-6について検討する。
上記イで述べたとおり、甲3には、段落【0011】、【0097】及び【0100】の記載はあるが、立体造形用については記載されていない。
そうすると、甲3には、甲3発明において、立体造形用とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲3発明において、相違点3-6に係る本件発明17の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明17は、相違点3-1、3-2、3-5及び3-6に係る発明特定事項を有することにより、「帯電防止効果に優れ、装置内における樹脂粉末の付着を低減でき、綺麗な造形面を有する立体造形物を造形することができる」という効果を奏する。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明17は甲3発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
キ 本件発明18について
本件発明18と甲3装置発明を対比すると、上記イと同様の相当関係が成り立ち、甲3装置発明の「成形品」は、本件発明18の「立体造形物」と「成形品」である限りにおいて一致する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、
前記帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤である、熱可塑性樹脂粉末を有する、成形品の製造装置。
【化1】
[図:0001418221000012.jpg]
」
そして、両者は、上記イの相違点3-1及び3-2並びに下記の点で相違する。
・相違点3-7
本件発明18は、「熱可塑性樹脂粉末が貯蔵されている供給槽と、前記供給槽に貯蔵された前記熱可塑性樹脂粉末を供給する供給手段と、前記熱可塑性樹脂粉末を含む層を形成する層形成手段と、前記層を硬化する硬化手段と、を有する」のに対し、甲3装置発明はそのような特定がない点
・相違点3-8
樹脂粉末に関して、本件発明18は、「立体造形物」であるのに対し、甲3装置発明は「成形品」である点
事案に鑑み、上記相違点3-8について検討する。
上記カで述べたとおり、甲3には、立体造形物については記載されていない。
そうすると、甲3には、甲3装置発明において、立体造形物とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲3装置発明において、相違点3-8に係る本件発明18の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明18は、相違点3-1、3-2、3-7及び3-8に係る発明特定事項を有することにより、「帯電防止効果に優れ、装置内における樹脂粉末の付着を低減でき、綺麗な造形面を有する立体造形物を造形することができる」という効果を奏する。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明18は甲3装置発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ク 本件発明19について
本件発明19と甲3方法発明を対比すると、上記イ及びキと同様の相当関係が成り立つ。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末であって、
前記帯電防止剤が、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤である、熱可塑性樹脂粉末を有する、成形品の製造方法。
【化1】
[図:0001418221000013.jpg]
」
そして、両者は、上記イの相違点3-1及び3-2並びに下記の点で相違する。
・相違点3-9
本件発明19は、「熱可塑性樹脂粉末を含む層を形成する層形成工程と、前記層を硬化する硬化工程と、を繰り返す」のに対し、甲3方法発明はそのような特定がない点
・相違点3-10
樹脂粉末に関して、本件発明19は、「立体造形物」であるのに対し、甲3方法発明は「成形品」である点
事案に鑑み、上記相違点3-10について検討すると、上記キの相違点3-8と同旨であるから、上記キと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明19は甲3方法発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ケ 取消理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1はその理由がない。
(2)申立理由1(甲1に基づく進歩性)について
ア 甲1に記載された発明
甲1には、請求項16の記載、並びに、【0068】及び【0090】の【表1】に記載されている実施例17のポリプロピレン樹脂粉末に着目すると、以下の発明が記載されている。
「100重量部のホモポリプロピレン樹脂(アイソタクチック度95%、メルトインデックス(210℃、2.16kg)35g/10分、溶解度パラメーター16.7MPa1/2)と、1000重量部のn-ヘキサン(溶解度パラメーター14.9MPa1/2)とをオートクレーブに収容し、0.2重量部の酸化カルシウムを添加して混合し、高純度窒素ガスを0.2MPaとなるまで導入し、そして、オートクレーブを130℃まで加熱し、この温度を60分間保持した後、冷却水を用いてオートクレーブを1.0℃/分の速度で90℃まで冷却し、この温度を60分間保持し、更に、オートクレーブを1.0℃/分の速度で室温まで冷却し、得られた固液混合物に、0.25重量部の酸化防止剤1010と、0.25重量部の酸化防止剤168とを、0.5重量部のステアリン酸カルシウム及び0.5重量部のシングルウォールカーボンナノチューブとともに添加し、その後、この材料を遠心分離及び真空乾燥させて得られた、粒径45~135μm、D10が49μm、D50が84μm、D90が122μm、バルク密度が0.43g/cm3である選択的レーザー焼結を適用して三次元物体を製造するためのポリプロピレン樹脂粉末。」(以下、「甲1発明」という。)
また、実施例17のポリプロピレン樹脂粉末、請求項15及び請求項16の記載に着目すると、以下の発明が記載されている。
「甲1発明のポリプロピレン樹脂粉末を用いた三次元物体の製造装置。」(以下、「甲1装置発明」という。)
「甲1発明のポリプロピレン樹脂粉末を用いた三次元物体を製造する方法。」(以下、「甲1方法発明」という。)
イ 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ホモポリプロピレン樹脂(アイソタクチック度95%、メルトインデックス(210℃、2.16kg)35g/10分、溶解度パラメーター16.7MPa1/2)」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂」に相当する。
甲1発明の「ポリプロピレン樹脂粉末」は、熱可塑性樹脂を含むものであるから、本件発明1の「熱可塑性樹脂粉末」に相当する。
甲1発明の「シングルウォールカーボンナノチューブ」は、甲1の【0036】には、帯電防止剤であることが記載され、さらにカーボンナノチューブ自体「耐熱性」であることは明らかであるから、本件発明1の「耐熱性帯電防止剤」に相当する。
また、甲1発明は、シングルウォールカーボンナノチューブの含有割合が約0.49重量%(=0.5/101.5×100)であるから、本件発明1の「帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む」との規定を満たす。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点1-1
耐熱性帯電防止剤に関して、本件発明1は「分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤
【化1】
[図:0001418221000014.jpg]
」であるのに対し、甲1発明はそのような特定がない点
・相違点1-2
本件発明1は「熱可塑性樹脂粉末が柱体粒子を含み、かつ前記柱体粒子の底面における直径又は長辺に対する高さの比が0.5倍以上2倍以下である」のに対し、甲1発明はペレットの形状についての特定がない点
・相違点1-3
本件発明1は「熱可塑性樹脂粉末」の「50%累積体積粒径が5μm以上200μm以下であり、かつ体積平均粒径(Mv)と個数平均粒径(Mn)との比(Mv/Mn)が2.00以下である」のに対し、甲1発明はそのような特定がない点
上記相違点1-1について検討する。
甲1には、「帯電防止剤は、選択的にレーザー焼結されたポリオレフィン製品に優れた帯電防止性能を付与する一方で、ポリオレフィン樹脂粉末粒子間の静電的相互作用並びにポリオレフィン樹脂粉末粒子と装置との間の静電的相互作用を低下させるために用いられ得る。」(【0038】)と記載され、「帯電防止剤は、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、及び導電性金属の粉末/繊維、並びに金属酸化物からなる群から選ばれた少なくとも一種であり、好ましくは、アセチレンブラック、超電導カーボンブラック、特殊導電性カーボンブラック、天然グラファイト、膨張性グラファイト、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、又はステンレス鋼成分含有金属の粉末/繊維、合金の粉末/繊維、複合物の粉末/繊維、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム及び酸化カドミウムからなる群から選ばれた少なくとも一種である。」(【0036】)と記載されているが、「ドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤」については記載も示唆もない。
そうすると、甲1には、甲1発明において、帯電防止剤として「ドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤」を用いる動機付けとなる記載はない。
一方、甲2には、「特に電子機器部品搬送部材用に適したプロピレン系樹脂組成物及びその成形品」(【0001】)に関して、「分子中に下記式(1)にて表される原子団1個と炭素数5~28の直鎖型炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の少なくとも1種と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数5~28の直鎖型炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の少なくとも1種とからなるドナー・アクセプター系帯電防止剤(A)
[図:0001418221000015.jpg]
」を含有することが記載されている(請求項1、【0055】~【0074】及び【0137】)。
また、甲3には、「特に電子機器部品搬送部材用に適したプロピレン系樹脂組成物及びその成形品」(【0001】)に関して、「分子中に下記式(1)にて表される原子団1個と炭素数5~28の直鎖型炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の少なくとも1種と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数5~28の直鎖型炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の少なくとも1種とからなるドナー・アクセプター系帯電防止剤(A)
[図:0001418221000016.jpg]
」を含有することが記載されている(請求項1、【0053】~【0072】及び【0115】)。
さらに、甲4には、「複合樹脂粒子、その製造方法、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体」(【0001】)に関して、「帯電防止剤としてのホウ素含有化合物」を含有すること(請求項1)、「好適なホウ素含有化合物としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
[図:0001418221000017.jpg]
上記化合物は、ドナー成分としての半極性有機ホウ素化合物と、アクセプタ成分としての塩基性窒素化合物とを反応させて得られるドナー・アクセプター系分子化合物である。」こと(【0013】~【0015】)、「式(1)で表される化合物としては、ボロン研究所社製のビオミセルシリーズが挙げられる。特に、ビオミセルBN-105が好適である。」こと(【0015】、【0044】)、が記載されている。
甲2~甲4の記載から、熱可塑性樹脂粉末に、相違点1-1に係るドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤を含有することは、本件出願時において公知の技術であると解されるが、甲2~甲4には、いずれも選択的レーザー焼結を適用して三次元物体を製造することについては記載も示唆もない。
そうすると、甲2~甲4の記載から、選択的レーザー焼結を適用して三次元物体を製造するポリプロピレン樹脂粉末である甲1発明に、甲2~甲4の記載事項を適用する動機付けがあるともいえない。
したがって、甲1発明において、相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、本件発明1は、相違点1-1~1-3に係る発明特定事項を有することにより、「帯電防止効果に優れ、装置内における樹脂粉末の付着を低減でき、綺麗な造形面を有する立体造形物を造形することができる」という効果を奏する。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明2、3及び5ないし13について
本件発明2、3及び5ないし13は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記イで検討したとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明である本件発明2、3及び5ないし13は、甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明14について
本件発明14と甲1発明を対比すると、上記イと同様の相当関係が成り立つ。
そうすると、両者は上記イと同様の点で一致する。
そして、両者は、上記イの相違点1-1及び1-2並びに下記の点で相違し、相違点1-1については、上記イと同様に判断される。
・相違点1-4
本件発明14は、「前記熱可塑性樹脂粉末が略円柱体を含み、前記略円柱体の底面における直径が5μm以上200μm以下であり、かつ高さが5μm以上200μm以下であるか、又は
前記熱可塑性樹脂粉末が直方体を含み、前記直方体の底面における各辺が5μm以上200μm以下であり、かつ高さが5μm以上200μm以下である」のに対し、甲1発明はそのような特定がない点
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明14は甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ 本件発明15及び16について
本件発明15及び16は、請求項1又は14を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件発明1又は14の発明特定事項を全て有するものである。
そして、上記イ及びエで検討したとおり、本件発明1又は14は、甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1又は14の発明特定事項を全て含む発明である本件発明15及び16は、甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件発明17について
本件発明17と甲1発明を対比すると、上記イと同様の相当関係が成り立ち、甲1発明の「選択的レーザー焼結を適用して三次元物体を製造するためのポリプロピレン樹脂粉末」は、本件発明17の「立体造形用樹脂粉末」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末である、立体造形用樹脂粉末。」
そして、両者は、上記イの相違点1-1及び1-2並びに下記の点で相違し、相違点1-1については、上記イと同様に判断される。
・相違点1-5
本件発明17は、「摩擦帯電法で以下の条件により測定した表面帯電電位が±100V以下である
[条件]
熱可塑性樹脂粉末の融点-10℃の温度で10分間、ステンレス鋼リコーターを500m/分で回転させて、供給槽から造形槽に熱可塑性樹脂粉末を供給した後、100℃での造形槽の粉末層表面の表面帯電電位を測定する。」のに対し、甲1発明はそのような特定がない点
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明17は甲1発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
キ 本件発明18について
本件発明18と甲1装置発明を対比すると、上記イと同様の相当関係が成り立ち、甲1装置発明の「三次元物体」は、本件発明18の「立体造形物」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末である、熱可塑性樹脂粉末を有する、立体造形物の製造装置。」
そして、両者は、上記イの相違点1-1及び1-2並びに下記の点で相違し、相違点1-1については、上記イと同様に判断される。
・相違点1-6
本件発明18は、「熱可塑性樹脂粉末が貯蔵されている供給槽と、前記供給槽に貯蔵された前記熱可塑性樹脂粉末を供給する供給手段と、前記熱可塑性樹脂粉末を含む層を形成する層形成手段と、前記層を硬化する硬化手段と、を有する」のに対し、甲1装置発明はそのような特定がない点
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明18は甲1装置発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ク 本件発明19について
本件発明19と甲1方法発明を対比すると、上記イ及びキと同様の相当関係が成り立つ。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含む熱可塑性樹脂粉末である、熱可塑性樹脂粉末を有する、立体造形物の製造方法。」
そして、両者は、上記イの相違点1-1及び1-2並びに下記の点で相違し、相違点1-1については、上記イと同様に判断される。
・相違点1-7
本件発明19は、「熱可塑性樹脂粉末を含む層を形成する層形成工程と、前記層を硬化する硬化工程と、を繰り返す」のに対し、甲1方法発明はそのような特定がない点
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明19は甲1方法発明及び甲1~甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ケ 申立理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1はその理由がない。
(3)申立理由2(実施可能要件)について
ア 実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件発明1ないし3及び5ないし18は物の発明であるところ、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があることを要する。また、本件発明19は物を生産する方法であるところ、物を生産する方法の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物の使用等をできる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
イ 実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明1ないし3及び5ないし18の物について、熱可塑性樹脂粉末の形状及び当該樹脂粉末を構成する各成分について具体的に記載され(【0008】~【0028】、【0040】~【0080】)、熱可塑性樹脂粉末の諸特性について具体的に記載され(【0097】~【0101】)、立体造形用樹脂粉末について具体的に記載され(【0105】~【0108】)、立体造形物の製造装置について具体的に記載され(【0119】~【0122】)、さらに、熱可塑性樹脂粉末の製造方法について具体的に記載されている(【0029】~【0039】)。
また、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明19の物を生産する方法について、立体造形物の製造方法について具体的に記載されている(【0109】~【0122】)。
そして、本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明の実施例である実施例1~12についても、その製造方法を含め具体的に記載されている(【0124】ないし【0159】)。
したがって、本件発明1ないし3及び5ないし18について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるといえるし、本件発明19について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物の使用等をできる程度の記載があるといえる。
よって、本件発明1ないし3及び5ないし19に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合する。
ウ 申立人の主張について
申立人は、上記第4の2のとおり主張するが、本件特許の発明の詳細な説明には、実施例で用いられる「ビオミセルBN105」以外のドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤が具体的な化合物を含めて記載されていることから(【0046】~【0066】)、上記イで述べたとおり、当業者であれば、本件発明の詳細な説明の記載から、本件発明1ないし3及び5ないし19を実施できるものと理解できる。
よって、上記主張は採用しない。
エ 申立理由2についてのまとめ
上記イ及びウのとおりであるから、申立理由2はその理由がない。
(4)申立理由3(サポート要件)について
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
イ サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
本件特許の発明の詳細な説明の【0003】によると、本件発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「帯電防止効果に優れ、装置内における樹脂粉末の付着を低減でき、綺麗な造形面を有する立体造形物を造形することができる熱可塑性樹脂粉末を提供すること」である。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0042】には、「熱可塑性樹脂粉末は、耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含むことにより、帯電防止効果に優れ、装置内における樹脂粉末の付着を低減でき、綺麗な造形面を有する立体造形物を造形することができる。」と記載され、同【0041】には、「樹脂粒子が円柱体である場合には、樹脂粒子の上面又は底面の円形部分の直径に対する高さの比としては、0.5倍以上2倍以下が好ましく、1倍以上2倍以下が加工性の点でより好ましい。また、樹脂粒子が多角柱体である場合には、樹脂粒子の上面又は底面の多角形部分を全て含むような最小の円(最小包含円)の直径に対する高さの比としては、0.5倍以上2倍以下が好ましく、加工性の点でより好ましい。」と記載され、同【0046】には、「耐熱性帯電防止剤としては、分子中に下記構造式(1)で表される原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する半極性有機化合物の1種以上と、分子中に塩基性窒素原子団1個と炭素数11~22の直鎖型飽和炭化水素基を最小限1個有する塩基性有機化合物の1種以上とを含む組成物からなるドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤であることが、帯電防止効果の点から好ましい。」と記載されている。
さらに、本件特許の発明の詳細な説明の【0124】~【0159】には、耐熱性帯電防止剤として特定のドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤を用い、耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含み、特定の粒子形状を有する本件発明の熱可塑性樹脂粉末である実施例1~12が、室温及び高温における摩擦帯電法による評価、立体造形の可否の評価、並びに、立体造形後のリコート付着量の評価についていずれも「◎」又は「○」であり、また、耐熱性帯電防止剤を含有しない熱可塑性樹脂粉末である比較例1~3及び7、耐熱性帯電防止剤として特定のドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤を用いない熱可塑性樹脂粉末である比較例4~6、耐熱性帯電防止剤を31質量%含有する熱可塑性樹脂粉末である比較例8が、上記各評価の少なくとも1つが「×」であり、実施例1~12の評価の方が優れていることを確認した記載もある。
そうすると、当業者は、耐熱性帯電防止剤として特定のドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤を用い、耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含み、特定の粒子形状を有する熱可塑性樹脂粉末であることにより、発明の課題を解決できると認識でき、本件発明1ないし3及び5ないし19は、当該熱可塑性樹脂粉末、立体造形用樹脂粉末、立体造形物の製造装置、及び立体造形物の製造方法についてさらに限定したものである。
よって、本件発明1ないし3及び5ないし19は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件発明1ないし3及び5ないし19に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
ウ 申立人の主張について
申立人は、上記第4の2のとおり主張するが、上記イで述べたとおり、耐熱性帯電防止剤として特定のドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤を用い、耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含み、特定の粒子形状を有する熱可塑性樹脂粉末であることにより、課題を解決できることが発明の詳細な説明に記載されているところ、「ビオミセルBN105」以外の本件発明に係るドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤の種類によっては、耐熱性帯電防止剤として特定のドナー・アクセプターハイブリッド型帯電防止剤を用い、耐熱性帯電防止剤を0.01質量%以上30.0質量%以下含み、特定の粒子形状を有する場合であっても、上記発明の課題が解決しないことについて、何ら具体的な証拠を示していないことから、上記主張は上記イの判断に影響するものではない。
エ 申立理由5についてのまとめ
上記イ及びウのとおりであるから、申立理由3はその理由がない。
第7 結語
上記第6のとおり、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし19に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3及び5ないし19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、上記第6の1で述べたとおり、本件特許の請求項4に係る特許に対する申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701233