特許異議申立
2023-701408
少なくとも1種の強化繊維を含有する焼結粉末粒子(SP)を製造する方法
- 審判番号
- 2023-701408
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-573332
- 登録番号
- 7305685
- 請求日
- 2023年12月28日
- 審決日
- 2024年09月24日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
- 【権利者代理人】江藤 聡明
- 【権利者代理人】倉脇 明子
- 【権利者代理人】山口 修
- 【権利者代理人】稲垣 謙司
- 【権利者代理人】長山 弘典
- 【異議申立人】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
- 【異議申立人代理人】弁理士法人あしたば国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 神谷 健一
- 審判官 井口 猶二
- 審判官 関根 洋之
- 分類
- P1651.113-YAA(B29C) / P1651.121-YAA(B29C) / P1651.536-YAA(B29C) / P1651.537-YAA(B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第120条の5第5項、特許法第113条、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7305685号発明「少なくとも1種の強化繊維を含有する焼結粉末粒子(SP)を製造する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7305685号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。
特許第7305685号の請求項1、4ないし13に係る特許を維持する。
特許第7305685号の請求項2ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7305685号の請求項1~13に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和元年6月27日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理2018年(平成30年)7月2日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和5年6月30日にその特許権の設定登録がされたものである。
本件特許について、令和5年7月10日に特許掲載公報が発行されたところ、その発行の日から6月以内である令和5年12月28日に、特許異議申立人 エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー(以下「特許異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 6年 3月15日付け:取消理由通知
令和 6年 6月17日 :意見書(特許権者)の提出
令和 6年 6月17日 :訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)
なお、令和6年7月1日付けで特許法120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を特許異議申立人に対して行ったところ、特許異議申立人から何ら応答がなかったものである。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1)訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第7305685号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める、というものである。
(2)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。
なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「 焼結粉末粒子(SP)を製造する方法であって、以下の工程、
a) 少なくとも1種の連続フィラメントを提供する工程、
b) 工程a)で提供された前記少なくとも1種の連続フィラメントを少なくとも1種の熱可塑性ポリマーでコーティングして、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーでコーティングされた前記少なくとも1種の連続フィラメントを含む連続ストランドを得る工程であって、前記連続ストランドの平均断面直径が10~300μmの範囲である工程、及び
c) 工程b)で提供された前記連続ストランドの寸法を低減して、焼結粉末粒子(SP)を得る工程であって、前記焼結粉末粒子(SP)の平均長さが10~300μmの範囲であり、前記連続フィラメントが、連続炭素繊維、連続ホウ素繊維、連続ガラス繊維、連続シリカ繊維、連続バサルト繊維及び連続アラミド繊維からなる群から選択される、工程、
を含む方法。」とあるのを、
「 焼結粉末粒子(SP)を製造する方法であって、以下の工程、
a) 少なくとも1種の連続フィラメントを提供する工程、
b) 工程a)で提供された前記少なくとも1種の連続フィラメントを少なくとも1種の熱可塑性ポリマーでコーティングして、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーでコーティングされた前記少なくとも1種の連続フィラメントを含む連続ストランドを得る工程であって、前記連続ストランドの平均断面直径が10~300μmの範囲である工程、及び
c) 工程b)で提供された前記連続ストランドの寸法を低減して、焼結粉末粒子(SP)を得る工程であって、前記焼結粉末粒子(SP)の平均長さが10~300μmの範囲であり、前記連続フィラメントが、連続炭素繊維、連続ホウ素繊維、連続ガラス繊維、連続シリカ繊維、連続バサルト繊維及び連続アラミド繊維からなる群から選択される、工程、
を含み、
前記連続フィラメントの断面直径が3~30μmの範囲であり、前記焼結粉末粒子(SP)の平均長さと、前記焼結粉末粒子(SP)の平均断面直径との間の平均の比が、5:1~20:1の範囲である、方法。」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項4~13についても、同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「 工程c)において、工程b)で得られた前記連続ストランドを10~300μmの範囲の長さに切断する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。」とあるのを、
「 工程c)において、工程b)で得られた前記連続ストランドを10~300μmの範囲の長さに切断する、請求項1に記載の方法。」に訂正する(請求項4の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項5~13についても、同様に訂正する。)。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「 前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。」とあるのを、
「 前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は4に記載の方法。」に訂正する(請求項5の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項6~13についても、同様に訂正する。)。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「 前記焼結粉末粒子(SP)の少なくとも70%が本質的な円筒形状を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。」とあるのを、
「 前記焼結粉末粒子(SP)の少なくとも70%が本質的な円筒形状を有する、請求項1、又は請求項4から5のいずれか一項に記載の方法。」に訂正する(請求項6の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項7~13についても、同様に訂正する。)。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「 前記少なくとも1種のポリマーが、ポリアミドポリマーからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。」とあるのを、
「 前記少なくとも1種のポリマーが、ポリアミドポリマーからなる群から選択される、請求項1、又は請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。」に訂正する(請求項7の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項8~13についても、同様に訂正する。)。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「 前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、PA4、PA6、PA7、PA8、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA610、PA612、PA613、PA6T、PA MXD6、PA6I/6T、PA6T/6I、PA6/6l、PA6/6T、PA6/66、PA6/12、PA66/6/610、PA6l/6T/PACM、及びPA6/6I6T、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。」とあるのを、
「 前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、PA4、PA6、PA7、PA8、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA610、PA612、PA613、PA6T、PA MXD6、PA6I/6T、PA6T/6I、PA6/6l、PA6/6T、PA6/66、PA6/12、PA66/6/610、PA6l/6T/PACM、及びPA6/6I6T、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1、又は請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。」に訂正する(請求項8の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項9~13についても、同様に訂正する。)。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「 請求項1から8のいずれか一項に記載の方法により得られる焼結粉末粒子(SP)。」とあるのを、
「 請求項1、又は請求項4から8のいずれか一項に記載の方法により得られる焼結粉末粒子(SP)。」に訂正する(請求項9の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項10~13についても、同様に訂正する。)。
(3)一群の請求項
本件訂正請求は、訂正後の一群の請求項である請求項〔1~13〕に対して請求されたものである。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「連続フィラメントの断面直径」を「3~30μmの範囲」に限定するとともに、「焼結粉末粒子(SP)の平均長さ」と、「焼結粉末粒子(SP)の平均断面直径との間の平均」の比を「5:1~20:1の範囲」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号が掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
訂正事項1による訂正において、「連続フィラメントの断面直径」を「3~30μmの範囲」に限定することは、本件特許明細書の【0015】の記載に基づくものであり、また、「焼結粉末粒子(SP)の平均長さ」と、「焼結粉末粒子(SP)の平均断面直径との間の平均」の比を「5:1~20:1の範囲」に限定することは、本件特許明細書の【0056】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
請求項1の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項4~13についても、同様である。
(2)訂正事項2~3について
訂正事項2~3は、それぞれ、請求項2~3を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1号が掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項2~3による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
(3)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項2~3の記載を引用していたところ、訂正前の請求項2~3が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項2~3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項4による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
請求項4の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項5~13についても、同様である。
(4)訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項2~3の記載を引用していたところ、訂正前の請求項2~3が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項2~3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項5は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項5による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
請求項5の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項6~13についても、同様である。
(5)訂正事項6について
訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項2~3の記載を引用していたところ、訂正前の請求項2~3が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項2~3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項6は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項6による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
請求項6の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項7~13についても、同様である。
(6)訂正事項7について
訂正事項7による訂正は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項2~3の記載を引用していたところ、訂正前の請求項2~3が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項2~3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項7は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項7による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
請求項7の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項8~13についても、同様である。
(7)訂正事項8について
訂正事項8による訂正は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項2~3の記載を引用していたところ、訂正前の請求項2~3が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項2~3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項8は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項8による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
請求項8の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項9~13についても、同様である。
(8)訂正事項9について
訂正事項9による訂正は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項2~3の記載を引用していたところ、訂正前の請求項2~3が削除されたことに伴い、引用していた請求項から請求項2~3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項9は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項9による訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
請求項9の記載を直接又は間接に引用して記載された請求項10~13についても、同様である。
(9)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書並びに同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び4~13に係る発明(以下、項番に従って「本件特許発明1」などといい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される、次のものである。
「【請求項1】
焼結粉末粒子(SP)を製造する方法であって、以下の工程、
a) 少なくとも1種の連続フィラメントを提供する工程、
b) 工程a)で提供された前記少なくとも1種の連続フィラメントを少なくとも1種の熱可塑性ポリマーでコーティングして、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーでコーティングされた前記少なくとも1種の連続フィラメントを含む連続ストランドを得る工程であって、前記連続ストランドの平均断面直径が10~300μmの範囲である工程、及び
c) 工程b)で提供された前記連続ストランドの寸法を低減して、焼結粉末粒子(SP)を得る工程であって、前記焼結粉末粒子(SP)の平均長さが10~300μmの範囲であり、前記連続フィラメントが、連続炭素繊維、連続ホウ素繊維、連続ガラス繊維、連続シリカ繊維、連続バサルト繊維及び連続アラミド繊維からなる群から選択される、工程、
を含み、
前記連続フィラメントの断面直径が3~30μmの範囲であり、前記焼結粉末粒子(SP)の平均長さと、前記焼結粉末粒子(SP)の平均断面直径との間の平均の比が、5:1~20:1の範囲である、方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
工程c)において、工程b)で得られた前記連続ストランドを10~300μmの範囲の長さに切断する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルケトン、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、これらのコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記焼結粉末粒子(SP)の少なくとも70%が本質的な円筒形状を有する、請求項1、又は請求項4から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種のポリマーが、ポリアミドポリマーからなる群から選択される、請求項1、又は請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーが、PA4、PA6、PA7、PA8、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA610、PA612、PA613、PA6T、PA MXD6、PA6I/6T、PA6T/6I、PA6/6l、PA6/6T、PA6/66、PA6/12、PA66/6/610、PA6l/6T/PACM、及びPA6/6I6T、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1、又は請求項4から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1、又は請求項4から8のいずれか一項に記載の方法により得られる焼結粉末粒子(SP)。
【請求項10】
請求項9に記載の焼結粉末粒子(SP)を、選択的レーザー焼結、選択的抑制焼結、及び高速焼結からなる群から選択される粉末ベースの付加製造プロセスで使用する方法。
【請求項11】
焼結粉末であって、前記焼結粉末の総質量に基づいて、10~90質量%の請求項9に記載の焼結粉末粒子(SP)、及び前記焼結粉末粒子(SP)とは異なる90~10質量%の他の焼結粉末粒子を含み、前記他の焼結粉末粒子が強化剤を含有しない、前記焼結粉末。
【請求項12】
請求項9に記載の焼結粉末粒子(SP)のレーザー焼結又は高速焼結による成形体を製造する方法。
【請求項13】
請求項11に記載の焼結粉末の選択的レーザー焼結又は高速焼結による、成形体を製造する方法。」
第4 取消しの理由の概要及び証拠方法
1 取消しの理由の概要
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~13に係る特許に対して、当合議体が令和6年3月15日付けの取消理由通知書において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1:(進歩性)本件特許の請求項1~13に係る発明は、パリ条約による優先権主張の日(以下「本件優先日」という。)前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 特許異議申立人が提示した証拠方法
甲第一号証:国際公開第2013/138204号(以下「甲1」という。)
甲第二号証:米国特許出願公開第2015/0108677号明細書(以下「甲2」という。)
甲第三号証:米国特許出願公開第2011/0143108号明細書(以下「甲3」という。)
(当合議体注:特許異議申立書において、甲1は、主引用例であり、甲2及び甲3は、副引用例又は周知技術であり、取消理由通知書において、甲1は、主引用例であり、甲2は主引用例、副引用例又は周知技術であり、甲3は副引用例又は周知技術である。)
第5 当合議体の判断
1 甲1を主引用例とした場合
(1)甲1の記載
令和6年3月15日付け取消理由通知書で引用した甲1には、以下の事項が記載されている。なお、当合議体が仮訳し、訳文の下線は当合議体が付与したものであって、甲1に記載された発明の認定に用いた箇所を示す。
ア 「 Technical Field
[1] The present disclosure is directed to materials for use in additive manufacturing processes. In particular, the present disclosure is directed to materials for use in powder-based additive manufacturing processes.
Background Art
・・・省略・・・
[3] One example of a powder-based additive manufacturing process is the selective laser sintering process. In the selective laser sintering process a part is constracted one layer at a time inside a thermally controlled process chamber, which is held a temperature slightly below the melting point of the polymer system being used. A laser beam is raster scanned across the surface of a layer of powder, turning on and off to selectively sinter or fuse the polymer powder particles into a shape defined by a computer which has converted a 3D CAD image into profile slices equal in thickness to the powder layer thickness.」
訳「 技術分野
[1] 本開示は、添加剤製造プロセスに使用するための材料を対象とする。具体的には、本開示は、粉末ベースの積層造形プロセスに使用するための材料を対象とする。
背景技術
・・・省略・・・
[3] 粉末ベースの積層造形プロセスの一例は、選択的レーザ焼結プロセスである。選択的レーザ焼結プロセスでは、使用するポリマー系の溶融をわずかに下回る温度に保持された熱制御されたプロセスチャンバー内で、部品が一度に1層ずつ構成される。レーザビームは、粉末層の表面を横切ってラスタースキャンされ、オンとオフを切り替えて、3D CAD画像を粉末層の厚さと同じ厚さのプロファイルスライスに変換したコンピュータによって定義された形状にポリマー粉末粒子を選択的に焼結又は融着する。」
イ 「 Technical Solution
・・・省略・・・
[10] As shown in FIG. 1 , the process for manufacturing the powder-based materials initially involves converting multiple polymer feed materials, such as feed materials 10 and 12, into one or more fibers having a shell-core arrangement. For example, feed materials 10 and 12, which may be polymer pellets, may be co-extruded to form fiber 14 having shell portion 16 and core portion 18. In the shown example, feed materials 10 and 12 are compositionally different from each other, where feed material 10 is used to form shell portion 16, and feed material 12 is used to form core portion 18. In alternative embodiments, the shell-core fibers may be derived from three or more feed materials.
・・・省略・・・
[13] Suitable average diameters for fiber 14, referred to as diameter 20, range from about 10 microns to about 250 microns. In some embodiments, shell portion 16 at least partially encases core portion 18. In further embodiments, shell portion 16 completely encases core portion 18. In one embodiment, shell portion 16 has an average volume ranging from about 5% to about 50% of an average volume of fiber 14.
・・・省略・・・
[17] After fiber 14 is formed, micro-pellets 22 may then be formed from fiber 14 with a size-reducing process. In one embodiment, fiber may be size reduced by cutting fiber 14 to lengths, as illustrated by cut lines 24 along fiber 14, creating substantially- cylindrical shaped micro-pellets 22, each having a ratio between the length of the micro-pellet 22 (referred to as length 26) and the diameter of the micro-pellet 22 (same as diameter 20). Examples of suitable ratios between length 26 and diameter 20 range from about 1 :2 to about 3: 1.
・・・省略・・・
[24] Examples of suitable semi-crystalline base polymers for use in each of the core and shell materials include polyamides, polyethylenes, polypropylenes, polyetheretherketones, polyoxymethylene acetals, polytetrafluoroethylenes, polypheneylene sulfides, polybutylene terephthalates, copolymers thereof, and combinations thereof. Suitable polyamides include aliphatic nylon polyamides, such as nylon 6, nylon 6-6, nylon 6-10, nylon 6-12, nylon 10, nylon 10-10, nylon 11, nylon 12, and combinations thereof.
・・・省略・・・
[26] Examples of suitable additives and modifiers include coloration inhibitors, lubricants, nucleating agents, viscosity thickeners, antioxidants, antistatic agents, bio- degradative agents, biocompatibility agents, bio-preservatives, colorants, fragrances, and stabilizers against hydrolysis, thermal degradation or UV degradation, mineral fillers, glass or carbon fibers, lubricants to improve wear and friction, plasticizers, fire retardants, electrically conductive materials, and other polymers to toughen or otherwise affect the base polymer.」
訳「 課題を解決するための手段
[10] 図1に示すように、粉末系材料を製造するプロセスは、最初に、供給材料10および供給材料12などの複数のポリマー供給材料を、シェルコア配置を有する1以上の繊維に変換することを含む。例えば、供給材料10および供給材料12は、ポリマーペレットであってもよく、共押出されて、シェル部16およびコア部18を有する繊維14を形成してもよい、図示される例において、供給材料10および供給材料12は互いに組成が異なっており、供給材料10はシェル部16を形成するために使用され、供給材料12はコア部18を形成するために使用される。他の実施形態において、シェル-コア繊維は、1以上の供給材料により製造される。
・・・省略・・・
[13] 繊維14の好適は平均直径は、直径20と称され、約10ミクロンから約250ミクロンの範囲にある。いくつかの実施形態では、シェル部16は、コア部18を少なくとも部分的に包み込む。さらなる実施形態では、シェル部16は、コア部18を完全に包み込む。一実施形態では、シェル部16は、繊維14の平均体積の約5%から約50%の範囲の平均体積を有する。
・・・省略・・・
[17] 繊維14が形成された後、サイズを縮小するプロセスにより、繊維14からマイクロパレット22が形成され得る。一実施形態において、繊維は、繊維14に沿う切断線24で示されるように、繊維14を所定の長さに切断することによって実質的に円筒形状のマイクロペレット22を形成し、サイズを縮小することができ、上記マイクロペレット22は、それぞれ、マイクロペレット22の長さ(長さ26と称される)とマイクロペレット22の直径(直径20と同じ)との間の比率を有している。長さ26と直径20との間の適切な比率の例は、約1:2~約3:1の範囲である。
・・・省略・・・
[24] コア材およシェル材に各々用いられる好適な半結晶性ベースポリマーの例としては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシメチレンアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリブチレンテレフタレート、これらの共重合、およびこれらの組み合わせが挙げられる。好適なポリアミドとしては、脂肪族ナイロンポリアミド、ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン6-12、ナイロン10、ナイロン10-10、ナイロン11、ナイロン12、およびそれらの組合せが挙げられる。
・・・省略・・・
[26] 好適な添加剤及び改質剤の例としては、着色禁止剤、滑剤、核剤、増粘剤、酸化防止剤、帯電防止剤、生体分解剤、生体適合性剤、防腐剤、着色剤、フレグランス、安定剤に対する加水分解、熱劣化や紫外線劣化、鉱物充填剤、ガラス繊維や炭素繊維、耐摩耗性及び耐摩擦性を向上させる潤滑剤、可塑剤、難燃剤、導電性材料、および強靭または他のベースポリマーに影響を与えるための他のポリマーが含まれる。
ウ 図1
[図:0001417643000001.jpg]
(2)甲1発明
甲1の[3]の記載により、甲1に記載されたマイクロペレット22は、焼結に用いる粉末系材料である。
そうしてみると、甲1には、[10]、[13]、[17]及び図1に記載されたマイクロペレット22を製造する方法として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「 焼結に用いるマイクロペレットを製造する方法であって、
最初に、供給材料10および供給材料12の複数のポリマー供給材料を、シェルコア配置を有する1以上の繊維に変換し、供給材料10および供給材料12は、ポリマーペレットであって、共押出されて、シェル部16およびコア部18を有する繊維14を形成し
繊維14の平均直径は、約10ミクロンから約250ミクロンの範囲にあり、シェル部16は、コア部18を少なくとも部分的に包み込み、
繊維14が形成された後、繊維14を所定の長さに切断することによって実質的に円筒形状のマイクロペレット22を形成し、サイズを縮小、マイクロペレット22の長さとマイクロペレット22の直径との間の比率は、約1:2~約3:1の範囲である、
焼結に用いるマイクロペレットを製造する方法。」
(3)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)連続フィラメント、連続ストランド及び焼結粉末粒子
甲1発明は、「焼結に用いるマイクロペレットを製造する方法であって、最初に、供給材料10および供給材料12の複数のポリマー供給材料を、シェルコア配置を有する1以上の繊維に変換し、供給材料10および供給材料12は、ポリマーペレットであって、共押出されて、シェル部16およびコア部18を有する繊維14を形成」、「繊維14が形成された後、繊維14を所定の長さに切断することによって実質的に円筒形状のマイクロペレット22を形成し、サイズを縮小」する工程を具備する。
上記工程からみて、甲1発明の「コア部18」、「繊維14」及び「焼結に用いる焼結に用いるマイクロペレット」は、それぞれ、本件特許発明1の「連続フィラメント」、「連続ストランド」及び「焼結粉末粒子」に相当する。
また、甲1発明の「繊維14」は、本件特許発明1の「連続ストランド」の「平均断面直径が10~300μmの範囲である」との要件を満たす。
(イ)b)工程
上記(ア)の工程により、甲1発明は、「コア部18」を「ポリマー供給材料」の「シェル部16」で覆った「繊維14を形成」する工程を具備するといえる。
また、甲1発明は、「繊維14の平均直径は、約10ミクロンから約250ミクロンの範囲にあり、シェル部16は、コア部18を少なくとも部分的に包み込」む構成を具備する。
そうしてみると、甲1発明は、本件特許発明1のb)工程と、「b)」「少なくとも1種の」「ポリマーでコーティングされた前記少なくとも1種の連続フィラメントを含む連続ストランドを得る工程であって、前記連続ストランドの平均断面直径が10~300μmの範囲である工程」の点で共通する。
(ウ)c)工程
上記(ア)の工程により、甲1発明は、「繊維14を形成」する工程で提供された「繊維14」の「サイズを縮小」して「焼結に用いるマイクロペレット」を製造する工程を具備するといえる。
そうしてみると、甲1発明は、本件特許発明1の「c)工程」と、「c) 工程b)で提供された前記連続ストランドの寸法を低減して、焼結粉末粒子(SP)を得る工程」の点で共通する。
(エ)焼結粉末粒子(SP)を製造する方法
甲1発明は、「焼結に用いるマイクロペレットを製造する方法であって」、「繊維14を形成」する工程と、「マイクロペレット22を形成」する工程とを含む。
上記(ア)~(ウ)及び上記工程を総合すると、甲1発明の「焼結に用いるマイクロペレットを製造する方法」は、本件特許発明1の「焼結粉末粒子(SP)を製造する方法」に相当する。
また、甲1発明は、本件特許発明1と、「以下の工程、」「b)」「連続ストランドを得る工程」、「及びc)」「焼結粉末粒子(SP)を得る工程、を含み」との点で共通する。
イ 一致点及び相違点
上記アによると、本件特許発明1と甲1発明は、
「 焼結粉末粒子(SP)を製造する方法であって、以下の工程、
b)少なくとも1種のポリマーでコーティングされた前記少なくとも1種の連続フィラメントを含む連続ストランドを得る工程であって、前記連続ストランドの平均断面直径が10~300μmの範囲である工程、及び
c) 工程b)で提供された前記連続ストランドの寸法を低減して、焼結粉末粒子(SP)を得る工程。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
「a)工程」及び「b)工程」について、本件特許発明1は、「a) 少なくとも1種の連続フィラメントを提供する工程」、「b) 工程a)で提供された前記少なくとも1種の連続フィラメントを少なくとも1種の熱可塑性ポリマーでコーティングして」、「連続ストランドを得る工程」「を含」むのに対して、甲1発明は、「供給材料10および供給材料12」は、「ポリマー」であることにとどまり、また、「共押出され」る点。
<相違点2>
「c)工程」について、本件特許発明1は、「c)」「前記焼結粉末粒子(SP)の平均長さが10~300μmの範囲であ」るのに対して、甲1発明の「マイクロペレット22」の平均長さは明らかでない点。
<相違点3>
「c)工程」について、本件特許発明1は、「c)」「前記連続フィラメントが、連続炭素繊維、連続ホウ素繊維、連続ガラス繊維、連続シリカ繊維、連続バサルト繊維及び連続アラミド繊維からなる群から選択される」のに対して、甲1発明の「コア部18」は「ポリマー」であることにとどまる点。
<相違点4>
「連続フィラメント」について、本件特許発明1は、「断面直径が3~30μmの範囲であ」るのに対して、甲1発明の「コア部18」の断面直径は明らかでない点。
<相違点5>
「焼結粉末粒子(SP)」について、本件特許発明1は、「平均長さ」と「平均断面直径との間の平均の比が、5:1~20:1の範囲である」のに対して、甲1発明の「マイクロペレット22の長さとマイクロペレット22の直径との間の比率は」、「約1:2~約3:1の範囲である」点。
ウ 判断
事案に鑑み、上記相違点1及び5について検討する。
(ア)相違点1について
甲1には、上記相違点1に係る工程が記載も示唆もされていない。そして、甲1発明において上記相違点1に係る工程を採用することは、甲2~3のいずれにも記載されておらず、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、当業者であっても、甲1発明において上記相違点1に係る工程とすることは、容易に想到し得たとはいえない。
(イ)相違点5について
甲1の[17]には、「上記マイクロペレット22は、それぞれ、マイクロペレット22の長さ(長さ26と称される)とマイクロペレット22の直径(直径20と同じ)との間の比率を有している。長さ26と直径20との間の適切な比率の例は、約1:2~約3:1の範囲である。」と記載されている。上記記載から、甲1発明において、「マイクロペレット22の長さとマイクロペレット22の直径との間の比率」を、適切な範囲である約1:2~約3:1の範囲から外れた範囲である5:1~20:1とする動機付けはない。そして、甲1発明において上記相違点5に係る構成とすることは、甲2~3のいずれにも記載されておらず、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、当業者であっても、甲1発明において上記相違点5に係る構成とすることは、容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)本件特許発明1の小括
上記(ア)及び(イ)により、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲1発明及び甲2~3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)本件特許発明4~13
本件特許発明4~13は、本件特許発明1の構成を全て具備するものであるから、本件特許発明4~13も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明及び甲2~3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(5)小括
本件特許発明1及び4~13は、当業者であっても、甲1に記載された発明及び甲2~3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
2 甲2を主引用例とした場合
(1)甲2発明
甲2の[0128]、[0131]、[0135]~[0144]、[0251]及び図1から把握される「連続強化コアフィラメント」を切断する方法の発明を「甲2発明」という。
(2)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、本件特許発明1と甲2発明は、
「 以下の工程、
工程b) 少なくとも1種の熱可塑性ポリマーでコーティングされた少なくとも1種の連続フィラメントを含む連続ストランドを得る工程、及び
c) 工程b)で提供された前記連続ストランドの寸法を低減する工程、
を含む、方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明は、「焼結粉末粒子(SP)を製造する方法」であるのに対して、甲2発明は、「連続強化コアフィラメント」を切断する方法である点。
<相違点2>
「a)工程」及び「b)工程」について、本件特許発明1は、「a) 少なくとも1種の連続フィラメントを提供する工程」、「b) 工程a)で提供された前記少なくとも1種の連続フィラメントを少なくとも1種の熱可塑性ポリマーでコーティングして、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーでコーティングされた前記少なくとも1種の連続フィラメントを含む連続ストランドを得る工程」「を含」むのに対して、甲2発明は、「連続強化コアフィラメント」は、「ポリマー」であることにとどまり、また、「含浸」又は「共押出され」る点。
<相違点3>
「c)工程」について、本件特許発明1は、「c)」「前記焼結粉末粒子(SP)の平均長さが10~300μmの範囲であ」るのに対して、甲2発明の切断された「連続強化コアフィラメント」の平均長さは明らかでない点。
<相違点4>
「c)工程」について、本件特許発明1は、「c)」「前記連続フィラメントが、連続炭素繊維、連続ホウ素繊維、連続ガラス繊維、連続シリカ繊維、連続バサルト繊維及び連続アラミド繊維からなる群から選択される」のに対して、甲2発明の「連続強化コアフィラメント」の「コア」は「ポリマー」であることにとどまる点。
<相違点5>
「連続フィラメント」について、本件特許発明1は、「断面直径が3~30μmの範囲であ」るのに対して、甲2発明の「連続強化コアフィラメント」の「コア」の断面直径は明らかでない点。
<相違点6>
「焼結粉末粒子(SP)」について、本件特許発明1は、「平均長さ」と「平均断面直径との間の平均の比が、5:1~20:1の範囲である」のに対して、甲2発明の切断された「連続強化コアフィラメント」の平均長さと平均断面直径との間の比は明らかでない点。
ウ 判断
事案に鑑み、上記相違点2及び6について検討する。
(ア)相違点2について
甲2には、上記相違点2に係る工程が記載も示唆もされていない。そして、甲2発明において上記相違点2に係る工程を採用することは、甲1及び3のいずれにも記載されておらず、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、当業者であっても、甲2発明において上記相違点2に係る工程とすることは、容易に想到し得たとはいえない。
(イ)相違点6について
甲2の[0138]及び[0217]には、それぞれ、「連続的又は半連続的なコア強化フィラメントは、約0.001インチ以上で、約0.4インチ以下の外径を有してもよい・・・いくつかの実施形態では、フィラメントは、約0.010インチ以上で、約0.030インチ以下の外径を有していることが好ましい。」及び「ストランドの長さは用途に基づいて変化するが、典型的な鎖長は、約0.2"から36"まで大規模な印刷とすることができる」と記載されていることにとどまり、甲2には、切断された「連続強化コアフィラメント」の平均長さと平均断面直径との間の比をどの程度とするかについて記載されていない。そして、甲2発明において上記相違点6に係る構成とすることは、甲1及び3のいずれにも記載されておらず、周知技術であるともいえない。
そうしてみると、当業者であっても、甲2発明において上記相違点6に係る構成とすることは、容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)本件特許発明1についての小括
上記(ア)及び(イ)により、他の相違点について検討するまでもなく、当業者であっても、本件特許発明1は、甲2発明及び甲1及び3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)本件特許発明4~13
本件特許発明4~13は、本件特許発明1の構成を全て具備するものであるから、本件特許発明4~13も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲2発明及び甲1及び3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
(5)小括
本件特許発明1及び4~13は、当業者であっても、甲2に記載された発明及び甲1及び3に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
第6 取消しの理由を通知しなかった特許異議申立人の主張
1 特許異議申立人の主張の概要
特許異議申立人は、特許法29条1項3号(新規性)について、概略、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1、3~10及び12~13に係る発明は、甲1に記載された発明であると主張している。
また、特許異議申立人は、特許法36条4項1号(実施可能要件)及び同条第6項また、1号(サポート要件)について、概略、「本件請求項1~請求項13に係る発明は、本件明細書の段落[0009]等の記載および審査時における特許権者の主張から、「粉末ベース付加製造プロセスにおいて使用した場合、改善された機械的特性を有する成形体をもたらすこと」、「かなり統一した形状を有する焼結粉末粒子(SP)をもたらすこと」、「焼結粉末粒子(SP)を製造する方法が簡易であり、費用効率の高い方法で実施することができること」といった技術課題を解決するものと考えられる。一方、本件明細書の発明の詳細な説明においては、実施例として、上記技術課題を解決したことが何等示されておらず、このために、本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明を当業者が実施し得る程度に明確かつ十分な記載がなされていない。また、上述したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、上記技術課題を解決した実施例が何等開示されていないことから、本件出願時の技術常識に照らしても、本件請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。」(特許異議申立書の15頁~16頁)と主張している。
2 取消しの理由を通知しなかった特許異議申立人の主張についての判断
(1)特許法29条1項3号(新規性)について
上記第5「1」(3)イで示したとおり、本件特許発明1は、甲1発明と相違点1~5で相違する。また、本件特許発明4~13は、本件特許発明1の構成を全て具備するものであるから、本件特許発明4~13は、甲1発明と少なくとも上記相違点1~5で相違する。
したがって、本件特許発明は、甲1に記載された発明でない。
(2)特許法36条4項1号(実施可能要件)について
本件特許発明は、上記第3に記載したとおりである。
そして、本件特許明細書において、工程a)については、【0010】~【0018】、工程b)については、【0019】~【0047】、工程c)については、【0047】~【0053】に、それぞれ記載されている。また、焼結粉末粒子(SP)の形状、焼結粉末粒子(SP)の使用、成形体の製造法等についても、【0054】~【0068】に記載されているとおりである。これらの記載に接した当業者であれば、本件特許発明を実施することができるのは明らかである。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(3)特許法36条6項1号(サポート要件)について
本件特許明細書において、【0005】には、「繊維状強化剤をポリアミドと乾式混合し、その後続いて粉砕すると、レーザー焼結によって得られた成形体が場合によって欠陥を示す。これらの欠陥は、レーザー焼結プロセス中に、ポリアミドによる繊維状強化剤の不十分な濡れによって引き起こされると考えられる。さらに、ミルでの粉砕中に、場合によって、かなりの量の繊維状強化剤が失われる。粉砕プロセス後の繊維状強化剤の損失は、ポリマー粉末からの微粉の分離によるものである。微粉の分離により、強化繊維の断片もポリマー粉末から除去される。さらに、場合によって、焼結粉末粒子の粒子形態を正確に制御することは困難である。」と記載されていて、また、【0007】には、発明が解決しようとする課題として、「本発明の目的は、先行技術に記載された前述した不利な点を、あったとしてもより少ない程度でしか有しない焼結粉末粒子(SP)を製造するための方法を提供することである。この方法は、安価に実施される。」と記載されている。
これに対して、本件特許発明は、上記第3に記載したとおりであり、また、本件特許明細書における、工程a)、工程b)、工程c)、焼結粉末粒子(SP)の形状、焼結粉末粒子(SP)の使用、成形体の製造法等についての記載は、上記(1)で示したとおりである。
そうしてみると、当業者であれば、本件特許明細書の上記記載に基づいて、本件特許発明にまで拡張ないし一般化することは可能である。また、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されている。
したがって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
第7 むすび
本件特許1及び4~13は、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許1及び4~13を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正請求により、請求項2~3は削除されたから、本件特許2~3についての特許異議の申立ての対象は存在しないこととなった。
したがって、本件特許2~3についての特許異議の申立ては、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701408