特許異議申立
2023-701373
取引処理装置及びその制御プログラム
- 審判番号
- 2023-701373
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-091513
- 登録番号
- 7299062
- 請求日
- 2023年12月26日
- 審決日
- 2024年09月17日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東芝テック株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 【異議申立人】前田 正夫
- 審判長/審判官
- 審判長 一ノ瀬 覚
- 審判官 高橋 学
- 審判官 草野 顕子
- 分類
- P1651.113-YAA(G07G) / P1651.121-YAA(G07G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7299062号発明「取引処理装置及びその制御プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7299062号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。
特許第7299062号の請求項1~4、6に係る特許を維持する。
特許第7299062号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7299062号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和元年5月14日を出願日とするものであって、令和5年6月19日にその特許権の設定登録がされ、同年6月27日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年12月26日 :特許異議申立人前田正夫(以下「申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 3月29日付け:取消理由通知書
同年 6月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 7月18日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「取引対象者を識別する識別子と関連付けて紙レシートを受け取るか否かを設定したフラグを記憶する記憶部を検索する検索手段と、」と記載されているのを、「取引対象者を識別する識別子と関連付けて紙レシートを受け取るか否かを設定したフラグを記憶する記憶部を検索する検索手段と、前記取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段と、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段と、」と記載されているのを、「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段と、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段と、」と記載されているのを、「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段と、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされている場合、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段と、」と記載されているのを、「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされている場合、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段と、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「取引対象者を識別する識別子と関連付けて紙レシートを受け取るか否かを設定したフラグを記憶する記憶部を検索する検索手段、」と記載されているのを、「取引対象者を識別する識別子と関連付けて紙レシートを受け取るか否かを設定したフラグを記憶する記憶部を検索する検索手段、前記取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段、」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6に「前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段、」と記載されているのを、「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段、」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6に「前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段、」と記載されているのを、「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段、」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に「前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされている場合、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段、」と記載されているのを、「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされている場合、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段、」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「取引処理装置」が「具備する」ものについて、「前記取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段」を更に特定し、前記「取引処理装置」を限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1の「前記取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段」に関しては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「明細書等」という。)の段落【0051】の「ここに、プロセッサ23aを主体とするコンピュータは、ACT1乃至ACT4の処理を実行することで、取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段を構成する。因みに、取引対象者とは、会員IDを提示した客である。識別子とは、会員IDである。」との記載に基づくものである。
したがって、訂正事項1は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、」との記載における「前記取引対象者」について、「前記取得手段により取得された識別子で識別される」との特定を付すことで、「前記取引対象者」がどのような者であるのかを具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2の「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段」との記載に関しては、明細書等における段落【0051】の「ここに、プロセッサ23aを主体とするコンピュータは、ACT1乃至ACT4の処理を実行することで、取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段を構成する。因みに、取引対象者とは、会員IDを提示した客である。識別子とは、会員IDである。」との記載、段落【0062】の「ここに、プロセッサを主体とするコンピュータは、ACT5及びACT12の処理を実行することにより、取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段を構成する。」との記載に基づくものである。
したがって、訂正事項2は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項1の「前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、」との記載における「前記取引対象者」について、「前記取得手段により取得された識別子で識別される」との特定を付すことで、「前記取引対象者」がどのような者であるのかを具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3の「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段」との記載に関しては、明細書等における段落【0051】の「ここに、プロセッサ23aを主体とするコンピュータは、ACT1乃至ACT4の処理を実行することで、取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段を構成する。因みに、取引対象者とは、会員IDを提示した客である。識別子とは、会員IDである。」との記載、段落【0074】の「ここにプロセッサ23aを主体とするコンピュータは、ACT28の処理を実行することで、レシートを電子化した電子レシートを処理する処理手段を構成する。また、同コンピュータは、ACT29の処理を実行することで、レシートのデータを印刷した紙レシートを発行する発行手段を構成する。そして、同コンピュータは、ACT26のYESとACT27のNOの処理を実行することにより、取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段を構成する。また、同コンピュータは、ACT26のNOとACT27のYESの処理を実行することにより、取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ紙レシートを受け取る設定がなされている場合、発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段を構成する。」との記載に基づくものである。
したがって、訂正事項3は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項1の「前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされている場合、」との記載における「前記取引対象者」について、「前記取得手段により取得された識別子で識別される」との特定を付すことで、「前記取引対象者」がどのような者であるのかを具体的に特定し、更に限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項4の「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされている場合、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段と、」との記載に関しては、明細書等における段落【0051】の「ここに、プロセッサ23aを主体とするコンピュータは、ACT1乃至ACT4の処理を実行することで、取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段を構成する。因みに、取引対象者とは、会員IDを提示した客である。識別子とは、会員IDである。」との記載、段落【0074】の「ここにプロセッサ23aを主体とするコンピュータは、ACT28の処理を実行することで、レシートを電子化した電子レシートを処理する処理手段を構成する。また、同コンピュータは、ACT29の処理を実行することで、レシートのデータを印刷した紙レシートを発行する発行手段を構成する。そして、同コンピュータは、ACT26のYESとACT27のNOの処理を実行することにより、取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段を構成する。また、同コンピュータは、ACT26のNOとACT27のYESの処理を実行することにより、取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ紙レシートを受け取る設定がなされている場合、発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段を構成する。」との記載に基づくものである。
したがって、訂正事項4は、明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、明細書等に記載された事項の範囲内においてされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項5を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5は、請求項5を削除するというものであるから、明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6~9について
訂正事項6~9は、請求項6について訂正事項1~4と実質的に同様の訂正を行うものであるから、前記(1)~(4)で示したように、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 一群の請求項
訂正前の請求項1~5について、請求項2~5はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1~4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕、6について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の発明
前記「第2」で説示したように本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~4、6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4、6に記載された事項により特定される次のとおりのものであるところ、訂正特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
取引対象者との取引に係る情報を記録したレシートのデータを作成する作成手段と、
前記レシートのデータを印刷した紙レシートを発行する発行手段と、
前記レシートを電子化した電子レシートを処理する処理手段と、
取引対象者を識別する識別子と関連付けて紙レシートを受け取るか否かを設定したフラグを記憶する記憶部を検索する検索手段と、
前記取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段と、
前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段と、
前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされている場合、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段と、
を具備する取引処理装置。
【請求項2】
前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、前記紙レシートを受け取る旨の指示入力を受け付ける受付手段、
をさらに具備し、
前記第2制御手段は、前記指示入力を受け付けた場合に、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する、請求項1記載の取引処理装置。
【請求項3】
前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされていない場合に報知する報知手段、
をさらに具備する請求項2記載の取引処理装置。
【請求項4】
前記第1制御手段は、前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する、請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の取引処理装置。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
取引処理装置のコンピュータを、
取引対象者との取引に係る情報を記録したレシートのデータを作成する作成手段と、
前記レシートのデータを印刷した紙レシートを発行する発行手段、
前記レシートを電子化した電子レシートを処理する処理手段、
取引対象者を識別する識別子と関連付けて紙レシートを受け取るか否かを設定したフラグを記憶する記憶部を検索する検索手段、
前記取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段、
前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段、
前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段、及び、
前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされている場合、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段、
として機能させるための制御プログラム。」
第4 取消理由通知で通知した取消理由について
本件訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、当審が令和6年3月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
<理由1>(新規性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
<理由2>(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
<甲号証一覧>
甲第1号証:特開2011-90375号公報(以下「甲1」という。)
なお、甲1は、申立人が提出したものである。
<理由1><理由2>
・請求項 1~6
・引用文献等 甲1
第5 当審の判断
1 甲1に記載された発明
(1)甲1発明1
甲1の実施形態(特に、【請求項1】、【請求項5】、段落【0012】、【0013】、【0023】、【0024】、【0026】、図1~5参照。)から、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明1」という。なお、括弧内には、主な参照箇所を示した。以下同様。)。
「決済済みの一取引の取引内容を示す取引情報(決済情報)を生成する手段と(段落【0012】)、
決済済みの一取引の取引内容を紙レシートPに印刷するレシート出力手段と(【請求項1】、段落【0012】)、
携帯端末2に記憶された情報を読取/書込部28で読み取り、客を識別する識別情報の通知を受けた場合、識別情報をもとに集計サーバ3に記憶された顧客マスタデータM1のレシート要否情報を参照して、識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要とする客であるか否かを確認する手段と(【請求項1】、段落【0013】、【0023】)、
一取引の取引内容を、プリンタ22により紙レシートPに印刷するレシート出力を行う手段と(段落【0026】)、
識別情報の通知を受けており、その識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要としない客である場合は、紙レシートPの印刷を行わず、各取引内容を含む集計した取引明細を、当該客に予め設定されたデータの配信先へ配信する配信手段(【請求項1】、段落【0026】、【0028】、【0029】、図5)と、
を備えるPOS端末1及び集計サーバ3(【請求項1】、図1~5)。」
(2)甲1発明6
甲1の実施形態(特に、【請求項1】、【請求項6】、段落【0012】、【0013】、【0019】、【0021】、【0023】、【0024】、【0026】、図1~5参照。)から、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明6」という。)。
「POS端末1の制御部20及び集計サーバ3の制御部30を(段落【0019】、【0021】、図1~5)、
決済済みの一取引の取引内容を示す取引情報(決済情報)を生成する手段(段落【0012】)、
決済済みの一取引の取引内容を紙レシートPに印刷するレシート出力手段(【請求項1】、段落【0012】)、
携帯端末2に記憶された情報を読取/書込部28で読み取り、客を識別する識別情報の通知を受けた場合、識別情報をもとに集計サーバ3に記憶された顧客マスタデータM1のレシート要否情報を参照して、識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要とする客であるか否かを確認する手段(【請求項1】、段落【0013】、【0023】)、
一取引の取引内容を、プリンタ22により紙レシートPに印刷するレシート出力を行う手段(段落【0026】)、及び
識別情報の通知を受けており、その識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要としない客である場合は、紙レシートPの印刷を行わず、各取引内容を含む集計した取引明細を、当該客に予め設定されたデータの配信先へ配信する配信手段(【請求項1】、段落【0026】、【0028】、【0029】、図5)として機能させるためのプログラム(【請求項6】)。」
2 新規性、進歩性についての判断
(1)本件発明1の新規性、進歩性について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
(ア)後者の「決済済みの一取引の取引内容を示す取引情報」は、前者の「レシートデータ」に相当し、以下同様に、後者の「紙レシートP」は前者の「紙レシート」に、後者の「客」は前者の「取引対象者」に、後者の「客を識別する識別情報」は前者の「取引対象者を識別する識別子」に、後者の「識別情報に該当する客」は前者の「識別子で識別される取引対象者」に、後者の「レシート要否情報」は前者の「フラグ」に、後者の「顧客マスタデータM1」は前者の「記憶部」に、後者の「POS端末1及び集計サーバ3」は前者の「取引処理装置」に、それぞれ相当する。
また、これらの相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。
(イ)後者の「決済済みの一取引の取引内容を示す取引情報(決済情報)を生成する手段」は、「決済済みの一取引の取引内容」は、取引対象者との取引に係る情報であるといえるから、前者の「取引対象者との取引に係る情報を記録したレシートのデータを作成する作成手段」に相当する。
(ウ)後者の「決済済みの一取引の取引内容を紙レシートPに印刷するレシート出力手段」は、「印刷する」ことは発行することであるから、前者の「前記レシートのデータを印刷した紙レシートを発行する発行手段」に相当する。
(エ)後者の「各取引内容を含む集計した取引明細を、当該客に予め設定されたデータの配信先へ配信する配信手段」では、電子データ化した「各取引内容を含む集計した取引明細」を「配信」していることは明らかであり、そうすると、後者の電子データ化された「各取引内容を含む集計した取引明細」が前者の「電子レシート」に相当する。
よって、後者の「各取引内容を含む集計した取引明細を、当該客に予め設定されたデータの配信先へ配信する配信手段」は、前者の「前記レシートを電子化した電子レシートを処理する処理手段」に相当する。
(オ)後者の「識別情報をもとに集計サーバ3に記憶された顧客マスタデータM1のレシート要否情報を参照」する手段を備える構成は、識別情報と関連付けてレシート要否情報が顧客マスタデータM1に記憶されていることを前提とするものであり、前者の「取引対象者を識別する識別子と関連付けて紙レシートを受け取るか否かを設定したフラグを記憶する記憶部を検索する検索手段」「を具備する」構成に相当する。
(カ)後者の「携帯端末2に記憶された情報を読取/書込部28で読み取り、客を識別する識別情報の通知を受け」ることは、「読取/書込部28で」「客を識別する識別情報」を取得することなので、前者の「前記取引対象者を識別する識別子を取得する」ことに相当し、後者の「読取/書込部28」が前者の「前記取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段」に相当する。
(キ)前記(オ)の相当関係も踏まえると、後者の「客を識別する識別情報の通知を受けた場合、識別情報をもとに集計サーバ3に記憶された顧客マスタデータM1のレシート要否情報を参照して、識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要とする客であるか否かを確認する手段」と、前者の「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段」とは、「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者について、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段」である点で、共通する。
(ク)後者の「一取引の取引内容を、プリンタ22により紙レシートPに印刷するレシート出力を行う手段と、」「識別情報の通知を受けており、その識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要としない客である場合は、紙レシートPの印刷を行わず、各取引内容を含む集計した取引明細を、当該客に予め設定されたデータの配信先へ配信する配信手段と、」「を備える」ことと、前者の「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされていない場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段」「を具備する」こととは、「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、前記紙レシートを必要としない場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段」「を具備する」点で共通する。
(ケ)また、後者の「一取引の取引内容を、プリンタ22により紙レシートPに印刷するレシート出力を行う手段と、」「識別情報の通知を受けており、その識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要としない客である場合は、紙レシートPの印刷を行わず、各取引内容を含む集計した取引明細を、当該客に予め設定されたデータの配信先へ配信する配信手段と、」においては、「識別情報に該当する客」が「紙レシートPの印刷」を必要とする場合には「紙レシートP」を「印刷」するように制御しているともいえる。
そうすると、後者の「一取引の取引内容を、プリンタ22により紙レシートPに印刷するレシート出力を行う手段と、」「識別情報の通知を受けており、その識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要としない客である場合は、紙レシートPの印刷を行わず、各取引内容を含む集計した取引明細を、当該客に予め設定されたデータの配信先へ配信する配信手段と、」「を備える」ことと、前者の「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされている場合、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段」「を具備する」ことは、「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、前記紙レシートを必要とする場合、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段」「を具備する」点で、共通する。
前記(ア)~(ケ)から、本件発明1と甲1発明1とは、
(一致点1)
「取引対象者との取引に係る情報を記録したレシートのデータを作成する作成手段と、
前記レシートのデータを印刷した紙レシートを発行する発行手段と、
前記レシートを電子化した電子レシートを処理する処理手段と、
取引対象者を識別する識別子と関連付けて紙レシートを受け取るか否かを設定したフラグを記憶する記憶部を検索する検索手段と、
前記取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者について、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段と、
前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、前記紙レシートを必要としない場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段と、前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、前記紙レシートを必要とする場合、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段と、
を具備する
取引処理装置。」
である点で、一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
「取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者について、」「当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する」ことに関して、本件発明1では、「取得手段により取得された識別子で識別される取引対象者が電子レシートサービスの利用者である場合に」確認するのに対して、甲1発明1では、客を識別する識別情報の通知を受けた場合、すなわち、客が「識別情報に該当する客である場合」に確認する点。
(相違点2)
「第1制御手段」が「処理手段による電子レシートの処理を制御する」ことに関して、本件発明1では、取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が「電子レシートサービスの利用者でありかつ紙レシートを受け取る設定がなされていない場合」に制御するのに対して、甲1発明1では、識別情報に該当する客が「紙レシートPの印刷を必要としない客である場合」に制御する点。
(相違点3)
「第2制御手段」が「発行手段による紙レシートの発行を制御する」ことに関して、本件発明1では、取得手段により取得された識別子で識別される取引対象者が「電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされている場合」に制御するのに対して、甲1発明1では、識別情報に該当する客が「紙レシートPの印刷を必要とする客である場合」に制御する点。
イ 相違点についての検討
まず、新規性について検討すると、前記相違点1~3は実質的な相違点であるので、本件発明1は、甲1発明1ではない。
次に、進歩性についてであるが、まず、前記相違点1について検討する。
前記相違点1に係る甲1発明1の構成に関して、甲1の段落【0013】、【0023】の記載を踏まえると、甲1発明1では、POS端末1が、読取/書込部28で客の携帯端末2に記憶された情報を読み取り、識別情報の通知を受けた場合、すなわち、携帯端末2を有する客が識別情報に該当する客である場合に、顧客マスタデータM1に格納された設定情報から、当該識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要とする客であるか否かの確認が行われる。
そして、前記2(1)ア(ア)で述べたように、甲1発明1における識別情報に該当する客は、本件発明1における「識別子で識別される前記取引対象者」に相当する。そうすると、甲1発明1における識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要とする客であるか否かの確認は、本件発明1における「取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者」が「電子レシートサービスの利用者」であるか否かの確認に相当するといえる。
したがって、甲1発明1における識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要としない場合が、本件発明1における「取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者」が「電子レシートサービスの利用者」である場合に相当するといえる。
しかしながら、甲1発明1では、識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要とする客であるか否かの確認に留まり、識別情報に該当する客が紙レシートPの印刷を必要としない客である場合において、更に、当該客が紙レシートPを受け取る設定がなされているか否かの確認を行っておらず、また、このような更なる確認をすることについて、甲1には、記載も示唆もされていない。
また、申立人が提出したいずれの証拠(後述の第6参照。)をみても「取得手段により取得された識別子で識別される取引対象者」が「電子レシートサービスの利用者である場合」において、更に、「紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認」することについて、記載も示唆もされていない。
そうすると、前記相違点1に係る本件発明1の構成については、容易想到とはいえないから、甲1発明1において、前記相違点1に係る本件発明1の構成を採ることが、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件発明2~4の新規性、進歩性について
本件発明2~4は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、本件発明1が、甲1発明ではなく、そして、甲1発明1に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない以上、本件発明2~4についても、甲1発明ではなく、そして、甲1発明1に基いて、当業者が容易に想到し得たものともいえない。
(3)本件発明6の新規性、進歩性について
ア 本件発明6と甲1発明6との対比
本件発明6と甲1発明6とを対比すると、前記(1)ア(ア)~(ケ)で示した相当関係が同様に成り立つ。
そして、甲1発明6の「POS端末1の制御部20及び集計サーバ3の制御部30」は、本件発明6の「取引処理装置のコンピュータ」に相当する。
そうすると、本件発明6と甲1発明6とは、
(一致点6)
「取引処理装置のコンピュータを、
取引対象者との取引に係る情報を記録したレシートのデータを作成する作成手段と、
前記レシートのデータを印刷した紙レシートを発行する発行手段、
前記レシートを電子化した電子レシートを処理する処理手段、
取引対象者を識別する識別子と関連付けて紙レシートを受け取るか否かを設定したフラグを記憶する記憶部を検索する検索手段、
前記取引対象者を識別する識別子を取得する取得手段、
前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者について、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段と、
前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、前記紙レシートを必要としない場合、前記処理手段による電子レシートの処理を制御する第1制御手段と、前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、前記紙レシートを必要とする場合、前記発行手段による紙レシートの発行を制御する第2制御手段、
として機能させるための制御プログラム。」
である点で、一致し、以下の点で相違する。
(相違点4)
「取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者について、」「当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する」ことに関して、本件発明6では、「取得手段により取得された識別子で識別される取引対象者が電子レシートサービスの利用者である場合に」確認するのに対して、甲1発明6では客を識別する識別情報の通知を受けた場合、すなわち、客が「識別情報に該当する客である場合」に確認する点。
(相違点5)
「第1制御手段」が「処理手段による電子レシートの処理を制御する」ことに関して、本件発明6では、取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が「電子レシートサービスの利用者でありかつ紙レシートを受け取る設定がなされていない場合」に制御するのに対して、甲1発明6では、では、識別情報に該当する客が「紙レシートPの印刷を必要としない客である場合」に制御する点。
(相違点6)
「第2制御手段」が「発行手段による紙レシートの発行を制御する」ことに関して、本件発明6では、取得手段により取得された識別子で識別される取引対象者が「電子レシートサービスの利用者でない場合、あるいは、電子レシートサービスの利用者でありかつ前記紙レシートを受け取る設定がなされている場合」に制御するのに対して、甲1発明6では、識別情報に該当する客が「紙レシートPの印刷を必要とする客である場合」に制御する点。
イ 相違点についての検討
まず、新規性について検討すると、前記相違点4~6は実質的な相違点であるので、本件発明6は、甲1発明6ではない。
次に、進歩性についてであるが、前記相違点4は、前記2(1)アの相違点1と同内容であり、その判断についても、前記2(1)イにおける相違点1についての判断と同様である。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲1発明6に基いて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(4)申立人の主張について
申立人は、令和6年7月18日の意見書において、甲1の段落【0012】の記載から、甲1には、「顧客マスタデータM1に設定情報が登録されている客か否かに関わらず、携帯端末2から客を識別するための識別情報を読み取り可能であることが記載されている。」ことを主張するとともに、更に、甲1の段落【0023】の記載における「顧客マスタデータM1に設定情報が登録されていない客」に関して、「顧客マスタデータM1に設定情報が登録されていない客」であるか否かは、携帯端末2から客を識別するための識別情報の読み取りを行い、顧客マスタデータM1を照合しなければ判別できないと解される。」こと、及び「顧客マスタデータM1に設定清報が登録されていない客が読取/書込部28に携帯端末2をかざすなどした場合、顧客マスタデータM1に設定情報が登録されていれば、紙レシートPの印刷を必要とする客であるか否かを確認する処理(S3)等を行い、顧客マスタデータM1に設定情報が登録されていなければ、紙レシートPの印刷を必要とする客であるか否かを確認する処理(S3)等を行わないことが記載ないし示唆されている。」ことを主張している。
しかしながら、甲1の段落【0004】には、その課題として、「客ごとに電子情報化したレシートの出力、又は、紙レシートの出力を使い分けることを可能とする電子レシートシステム、端末装置及びプログラムを提供することを目的とする」ことが記載されている。
そして、甲1全体の記載を踏まえれば、前記「電子情報化したレシートの出力、又は、紙レシートの出力の使い分けること」を可能とするためには、段落【0013】に記載されるように、「顧客マスタデータM1」には、「客毎の設定情報」として「顧客ID」とともに「紙レシートPの印刷を必要とするか否かを示すレシート要否情報、客へ配信すべきデータの配信先を示す配信先情報等が予め設定されている」ことが必要であることは明らかであり、そうすると、甲1においては、「顧客ID」だけを有し、他の設定情報が登録されていない客については、想定されていないといえる。
したがって、甲1の段落【0023】の記載における「顧客マスタデータM1に設定情報が登録されていない客」とは、すなわち、「顧客ID」を有していない客であると解することが妥当である。
そうすると、甲1においては、申立人が主張するような、「顧客マスタデータM1に設定情報が登録されていない客であるか否か」を「携帯端末2から客を識別するための識別情報の読み取りを行い、顧客マスタデータM1を照合し」て「判別」すること、及び「顧客マスタデータM1に設定清報が登録されていない客が読取/書込部28に携帯端末2をかざすなどした場合、顧客マスタデータM1に設定情報が登録されていれば、紙レシートPの印刷を必要とする客であるか否かを確認する処理(S3)等を行い、顧客マスタデータM1に設定情報が登録されていなければ、紙レシートPの印刷を必要とする客であるか否かを確認する処理(S3)等を行わないこと」について記載ないし示唆されているとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件発明1~4は、甲1発明1ではなく、そして、甲1発明1に基いて当業者が容易に発明することができたものでもない。
また、本件発明6は、甲1発明6ではなく、そして、甲1発明6に基いて当業者が容易に発明することができたものでもない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、甲1とは別の次の証拠を提示し、以下の特許異議申立理由(1)~(2)を主張している。
甲第2号証:特開2013-97657号公報
甲第3号証:特開2013-105363号公報
甲第4号証:特開2009-42931号公報
以下、甲第○号証を甲○という。
1 特許異議申立理由
(1)主たる証拠を甲2、甲3、又は甲4とした場合の本件訂正前の請求項1~6に係る発明の新規性の欠如[特許法第29条第1項第3号(同法113条第2号)]
本件訂正前の請求項1~6に係る発明はいずれも、甲2に記載された発明、甲3に記載された発明、又は甲4に記載された発明と同一の発明である。
(2)主たる証拠を甲2、甲3、又は甲4とした場合の本件訂正前の請求項1~6に係る発明の進歩性の欠如[特許法第29条第2項(同法113条第2号)]
本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲2に記載された発明、甲3に記載された発明、又は甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。
2 特許異議申立理由についての検討
(1)特許異議申立理由(1)について
甲2~甲4にはいずれも、本件訂正後の請求項1、6の「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段」が開示されていないから、本件発明1、6は、甲2~甲4に記載された発明ではない。
また、本件発明2~4は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、同様の理由により、甲2~甲4に記載された発明ではない。
したがって、特許異議申立理由(1)には理由がない。
(2)特許異議申立理由(2)について
本件訂正後の請求項1、6の「前記取得手段により取得された識別子で識別される前記取引対象者が、電子レシートサービスの利用者である場合、前記検索手段により前記記憶部を検索して、当該取引対象者を識別する識別子と関連付けて記憶されているフラグから、当該取引対象者に対して紙レシートを受け取る設定がなされているか否かを確認する確認手段」については、甲2~4のいずれにも記載も示唆もされていないから、前記第5の2(1)イの相違点1、前記第5の2(3)イの相違点4の判断と同様の理由により、本件発明1、6は、甲2~4のいずれかに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明2~4は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を付加したものであるから、同様の理由により、甲2~4のいずれかに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、特許異議申立理由(2)にも理由がない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の本件訂正後の請求項1~4、6に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件特許の本件訂正後の請求項1~4、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項5に係る特許に対する特許異議の申立ては、本件訂正により請求項5が削除されたことにより、特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701373