特許異議申立
2025-700142
ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するコポリマー粉末
- 審判番号
- 2025-700142
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-568100
- 登録番号
- 7564827
- 請求日
- 2025年01月31日
- 審決日
- 2025年06月27日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】アルケマ フランス
- 【権利者代理人】園田・小林弁理士法人
- 【異議申立人】中水 麻衣
- 審判長/審判官
- 審判長 近野 光知
- 審判官 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 加藤 幹
- 分類
- P1651.113-Y (C08L) / P1651.121-Y (C08L) / P1651.536-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第115条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7564827号発明「ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有するコポリマー粉末」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7564827号の請求項1~19に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7564827号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~19に係る特許についての出願は、令和2年5月15日(優先権主張 令和1年5月16日 (FR)フランス)を国際出願日とする出願であって、令和6年10月1日にその特許権の設定登録(請求項の数19)がされ、同年同月9日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許に対し、令和7年1月31日に特許異議申立人 中水 麻衣(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~19)がされ、同年3月4日付けで手続補正指令(方式)が通知され、同年同月31日に申立人から手続補正書が提出されたものである。
なお、令和7年3月31日に申立人から提出された手続補正書による補正は、特許異議申立期間が経過する時又は取消理由の通知がある時のいずれか早い時までにされた、特許異議の申立ての理由及び必要な証拠の表示についてするものであるため、特許法第115条第2項ただし書の規定により、これを認める。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~19に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明19」といい、これらを総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する粒子の形態であり、コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し;組成物が流動剤を0.3重量%以上の含有量で含む、組成物。
【請求項2】
ポリアミドブロックが、900g/mol以下の数平均モル質量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比が0.65以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
流動剤が、2重量%以下の含有量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
流動剤が、シリカ、アルミナ、ガラス状リン酸塩、ガラス状ホウ酸塩、ガラス状酸化物、二酸化チタン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、アタパルジャイト、及びそれらの混合物から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
粉末の粒子が、30μm以上のサイズDv10を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
粉末の粒子が、250μm以下のサイズDv90を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
粉末の粒子が、80~150μmのサイズDv50を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
コポリマーが、20~75ショアDの瞬間硬度を示す、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
コポリマーのポリアミドブロックが、ポリアミド11、若しくはポリアミド12、若しくはポリアミド6、若しくはポリアミド1010、若しくはポリアミド1012、若しくはポリアミド610のブロックであり;かつ/又は、コポリマーのポリエーテルブロックが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、若しくはポリテトラヒドロフランのブロックである、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
コポリマーのポリアミドブロックが、ポリアミド11、若しくはポリアミド12、若しくはポリアミド1010、若しくはポリアミド1012のブロックであり;かつ/又はコポリマーのポリエーテルブロックが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、若しくはポリテトラヒドロフランのブロックである、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ポリエーテルブロックが、400~3000g/molの数平均モル質量を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物の調製方法であって:
ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーを準備して、これを粉砕すること、及び、
コポリマーを流動剤と接触させること、
を含む方法。
【請求項14】
コポリマーを、粉砕の前に流動剤と接触させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
粉砕が-10℃以下の温度まで冷却された混合物に対して行われる、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
コポリマーが顆粒の形態で準備される、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
粉砕から生じる粒子がふるいにかけられ、ふるいのオーバーサイズが粉砕にリサイクルされる、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物の、電磁放射線によってもたらされる組成物の焼結による三次元物品のレイヤバイレイヤ造形のための使用。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物から、電磁放射線によってもたらされる焼結によるレイヤバイレイヤ造形によって製造された三次元物品。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法
申立人は、証拠方法として甲第1号証~甲第13号証(以下、「甲1」などという。)を提出し、令和7年3月31日提出の手続補正書により補正された特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、概要、以下の申立理由を主張する。
1 申立理由1(甲1を主引例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1~5、8~13、16、18及び19に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~19に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲2を主引例とする進歩性)
本件特許の請求項1~5及び7~19に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲3を主引例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1~5、8~14、18及び19に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~19に係る発明は、甲3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲4を主引例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1~16、18及び19に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1~19に係る発明は、甲4に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(サポート要件)
本件特許の請求項1~19に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件発明1の「コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を含有する粒子の形態」について、本件明細書には、本件発明が「10重量%の含有量」を臨界点として、それ以下でも本件発明の「効率的な方法で焼結することによって三次元物品の造形を可能にし、特に、より広い作業窓及び比較的低い造形温度で作業することを可能にして前記物品が良好な可撓性などの良好な機械的特性を特徴とする、PEBA粉末組成物」という技術的効果が奏されることを確認したことに関する実施例の記載もない。また、本件発明の出願日当時に、「コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する粒子」が本願発明に関する上記課題を解決し得たことが技術常識であったという事情もない。また、本件発明1は充填剤が含まれるのか含まれないのかが明確でない。(申立書51~52頁の「(2-1-1)本件発明1」)
(2)本件発明1の「ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有する」点について、本件発明に関する明細書段落0150及び0151の記載があるが、ここで、E1~E4について、当該明細書表4から、E1~E4の数平均モル質量は600及び850にすぎない。しかしながら、比較例として記載されているEC1~EC5の数平均モル質量は1000~1500である。つまり、なぜなら、数平均モル質量1000は比較例に関する数値であり、本件発明の数平均モル質量に含まれてはならない。この点で、上記明細書の『1000g/mol以下の数平均モル質量を有する場合(E1~E4)』の記載は正しくない。(申立書52~53頁の「(2-1-2)本件発明1」)
(3)本件発明1の「流動剤を0.3重量%以上の含有量で含む」点について、本件発明に関する明細書段落0156及び0157の記載があるが、実施例6には、実際に流動剤を0.3重量%以上の含有量で添加した実施例はない。さらに、実施例6の実験結果でも、流動剤が0.6重量%含まれる場合のふるいを通過する重量はせいぜい50%であるが、その効果も特に「粉末の良好なリサイクル性」とはいえず、流動剤を0.3重量%以上の含有量で含む本件発明は従来技術を含み、その臨界的意義が不明である。(申立書53~54頁の「(2-1-3)本件発明1」)
(4)本件明細書の【0100】~【0102】、【0104】及び【0123】の記載によれば、本件発明1がその利点を奏するためには、本件発明1について、さらに、
・PEBAコポリマーは融点が150℃以下である必要があり、かつ、
・30μm以上のサイズDv10、かつ、250μm以下のサイズDv90を有する粒子を作成する必要があった。(申立書54~55頁の「(2-1-4)本件発明1」)
(5)本件発明6は明確性について、本件発明7及び本件発明8との関連において整合性がなく、問題がある。つまり、本件発明7は粉末の粒子が、250μm以下のサイズDv90を有するが、これは、粒径250μm以下が試料体積の90%を下回る最大粒径であるような粒子集団を意味し、かつ、本件発明8では粉末の粒子が、80~150μmのサイズDv50を有すること、つまり、粒径80~150μmが粒子の50%を下回る、最大粒径であることを考慮すると、本件発明の文脈において、粒径が30μm以上が試料体積の10%を下回る最大粒径であるような粒子集団である粉末が存在するとは考えにくい。(申立書55頁の「(2-1-5)本件発明6」及び申立書31頁の下から14行~4行)
(6)本件発明9の「コポリマーが、20~75ショアDの瞬間硬度を示す」点について、令和6年1月18日起案の拒絶理由において、明確性違反の拒絶理由に対する特許権者の応答は、上記「瞬間硬度」に関する単なる説明に過ぎない。そして、本件明細書には、依然として、20~75ショアDの瞬間硬度を示すコポリマーが、本件発明の利点を奏することを示す実施例の記載もなく、本件特許出願日当時に「20~75ショアDの瞬間硬度を示すコポリマーが、本件発明の利点を奏する」といった技術常識も存在していなかった。(申立書55~56頁の「(2-1-6)本件発明9」)
(7)本件明細書の【0100】~【0102】、【0104】、【0109】及び【0123】の記載によれば、本件発明13がその利点を奏するためには、さらに、本件発明13のプロセスにおいて、
・粉末充填剤は、特に粉砕することが意図される顆粒の製造工程において、配合する必要があり、
・PEBAコポリマーは融点が150℃以下である必要があり、かつ、
・30μm以上のサイズDv10、かつ、250μm以下のサイズDv90を有する粒子を作成する必要があった。(申立書56~57頁の「(2-1-7)本件発明13」)
(8)本件発明17の「粉砕から生じる粒子がふるいにかけられ、ふるいのオーバーサイズが粉砕にリサイクルされる」点について、本件発明に関する組成物を作製するには、160μmのふるいを使用することによりそのような組成物がえられたことが記載されているものの、それ以外のふるいを用いたとしても本件のような機械的特性を備える組成物が得られたという記載は本件明細書にはなく、それが本願出願日当時の技術常識であったという認識もない。(申立書57~58頁の「(2-1-8)本件発明17」)
(9)本件発明18及び19について、本件発明に関する使用については、本件明細書の実施例7及び実施例8に記載されているレーザ焼結の焼結条件を使用することが必要であった点について記載されているものの、それ以外の条件を用いたとしても本件の課題を解決しうるような技術的効果を奏するという記載は本件明細書にはなく、それが本願出願日当時の技術常識であったという認識もない。(申立書58~59頁の「(2-1-9)本件発明18」及び「(2-1-10)本件発明19」)
6 申立理由6(実施可能要件)
本件特許の請求項1~19に係る特許は、上記5(1)~(9)と同様の理由で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
7 申立理由7(明確性要件)
本件特許の請求項1~19に係る特許は、上記5(1)~(9)と同様の理由で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
8 証拠方法
・甲第1号証:特表2013-517344号公報
・甲第2号証:特表2002-512645号公報
・甲第3号証:特表2019-536909号公報
・甲第4号証:特開2006-225664号公報
・甲第5号証:「粒子特性評価のベーシックガイド」、スベクトリス株式会社 マルバーン事業部、令和7年1月7日(出力日)、インターネット <URL:https://www.malvernpanalytical.com/jp/learn/knowledge-center/whitepapers/wp120620basicguidepartchar>
・甲第6号証:「Vestamid E40 S3」、UL Prospector材料データベース、令和7年1月7日(出力日)、インターネット <URL:https://www.ulprospector.com/plastics/ja/datasheet/101777/vestamid-e-e40-s3>
・甲第7号証:「Vestamid E55 S3」、UL Prospector材料データベース、令和7年1月7日(出力日)、インターネット <URL:https://www.ulprospector.com/plastics/ja/datasheet/102319/vestamid-e-e55-s3>
・甲第8号証:「2024年のポリエーテルブロックアミド市場のトップ10企業」、EMERGEN RESERCH、令和7年1月7日(出力日)、インターネット <URL:https://emergenresearch.com/jp/blog/top-10-companies-in-polyether-block-amide-market>
・甲第9号証:「ポリテトラヒドロフラン1000」、MERCK、令和7年1月7日(出力日)、インターネット <URL:https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/product/aldrich/345296?srsltid=AfmBOorL6WNjN02TuNuAgZXiWV70WrcDybwO4uG5TR_5UjsUTBJPl8xl>
・甲第10号証:「ポリテトラヒドロフラン2000」、MERCK、令和7年1月7日(出力日)、インターネット <URL:https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/product/aldrich/345326?srsltid=AfmBOopDeIcJmIpzq6m7BCOlHJZIBTcur7d6je3APAsvaERtSEGwZ8-Y>
・甲第11号証:「Jeffamine D2000 Polyetheramine」Technical Bulletin、Monson Companies、令和7年1月7日(出力日)、インターネット <URL:https://monsonco.com/wp-content/uploads/2019/08/Jeffamine-D-2000.-TDS..pdf>
・甲第12号証:「Jeffamine D400 Polyetheramine」Technical Bulletin、Monson Companies、令和7年1月7日(出力日)、インターネット <URL:https://monsonco.com/wp-content/uploads/2019/08/Jeffamine-D-400.-TDS.-REC-12.5.2019.pdf>
・甲第13号証:特開2013-79404号公報
第4 当審の判断
以下に述べるとおり、申立書に記載した申立ての理由によっては、請求項1~19に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1(甲1を主引例とする新規性・進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
甲1には、請求項1を引用する請求項3に記載された粉末の熱可塑性組成物に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。
「下記(1)~(3)から成るD50が100μm以下の粉末の熱可塑性組成物:
(1)溶融温度が180℃以下の少なくとも一種のブロック共重合体であって、ポリアミド・ブロックとポリエーテル・ブロックとを有するコポリマーから成るブロック共重合体、
(2)組成物の全重量の15~50重量%のモーズ硬度が6以下で、D50が20μm以下の少なくとも一種の粉末充填剤、
(3)組成物の全重量の0.1~5重量%のD50が20μm以下である粉末流動剤。」(以下、「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「溶融温度が180℃以下の少なくとも一種のブロック共重合体であって、ポリアミド・ブロックとポリエーテル・ブロックとを有するコポリマーから成るブロック共重合体」は、本件発明1の「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー」に相当する。
甲1発明の「モーズ硬度が6以下で、D50が20μm以下の少なくとも一種の粉末充填剤」は、本件発明1の「粉末充填剤」に相当する。
甲1発明の「D50が20μm以下である粉末流動剤」は、本件発明1の「流動剤」に相当する。
甲1発明の「D50が100μm以下の粉末の熱可塑性組成物」は、「ポリアミド・ブロックとポリエーテル・ブロックとを有するコポリマー」及び「粉末充填剤」を有することから、本件発明1の「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが粉末充填剤を有する粒子の形態」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが粉末充填剤を有する粒子の形態であり;組成物が流動剤を含む、組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点1-1
粉末充填剤の含有量に関して、本件発明1は「コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する」のに対し、甲1発明は「組成物の全重量の15~50重量%」である点
・相違点1-2
ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーに関して、本件発明1は「コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し」ているのに対し、甲1発明はそのような特定がない点
・相違点1-3
組成物中の流動剤の含有量に関して、本件発明1は「0.3重量%以上」であるのに対し、甲1発明は「0.1~5重量%」である点
イ 判断
上記相違点1-1について検討する。
甲1発明において、粉末充填剤の含有量の下限は組成物の全重量の15重量%であるが、組成物が少なくともブロック共重合体及び粉末充填剤を含有することから、ブロック共重合体に対する粉末充填剤の含有量の下限は15重量%を超え、本件発明1の「コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する」範囲と重複しないことは明らかである。
よって、相違点1-1は実質的な相違点である。
また、甲1発明は、「D50が100μm以下の粉末の熱可塑性組成物」であり、甲1には、「無機充填剤は低温ミリング(cryomilling)することで、有機充填剤より容易に、本発明組成物に要求される粒径(D50 <100μm)にすることができる。」(【0030】)と記載され、「上記粉末充填剤は本発明組成物の15~50重量%を占める。充填剤含有量が15重量%以下の場合には低温ミリングで粉末のD50を十分に小さくできない。」(【0032】)と記載され、粉末充填剤の含有量が0%である比較例1の粉末組成物のD50 が105μmであること、粉末充填剤の含有量が0%である比較例2の粉末組成物のD50 が80μmであるものの、D50が100μm以下の粉末を低温ミリングで収率(50%以下)で工業的に得られなかったこと、及び、粉末充填剤の含有量が0%である比較例3の粉末組成物のD50 が104μmであることが記載されている(【0056】~【0058】、【0060】)。
しかしながら、甲1には、甲1発明の「D50が100μm以下の粉末の熱可塑性組成物」であることを満足しつつ、ブロック共重合体に対する粉末充填剤の含有量を「0%~10重量%」に調整する動機付けとなる記載はないし、甲2~13にも当該動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1発明において、相違点1-1に係る特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は申立書の12頁において、本件発明1に対応する甲1発明を以下のとおり記載されていると主張する。
「(A)コポリマー粉末を含む組成物であって、
(B)ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含有し、
(C)コポリマーが0.1%~5重量%の含有量の粉末充填剤を有する粒子の形態であり、
(D)コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、
(B1)ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し、
(F)流動剤を0.3重量%以上の含有量で含む
組成物。」
しかしながら、甲1には、上記(A)~(F)の特定事項を同時に満たす組成物が直接記載されておらず、さらに、上記(C)の特定事項については、甲1の請求項1に粉末充填材の含有量が15~50重量%であることが記載されており、甲1の比較例に相当する0.1~5重量%とすることが甲1のどの記載に基づくものであるのかが判然としない。
したがって、甲1の記載から上記甲1発明を認定することはできないことから、申立人の上記主張は採用できない。
エ 本件発明1についてのまとめ
上記ア~ウのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1~13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2~19について
本件発明2~19は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、上記(2)で本件発明1について検討したのと同様の理由により、本件発明2~19は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1~13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)申立理由1についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由1は理由がない。
2 申立理由2(甲2を主引例とする進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2には、その請求項1を引用する請求項3に記載されたレーザー焼結可能な熱可塑性粉末に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。
「粉末流動剤と、少なくとも一種類の50℃以下のTgを有する粉末ブロック共重合体熱可塑性樹脂との混合物からなるレーザー焼結可能な熱可塑性粉末において、前記ブロック共重合体が、軟質セグメント及び硬質セグメントとして特徴付けられる複数の反復内部線状分子単位からなり、これらのセグメントは、互いに先端と後端を繋いでブロック共重合体を形成し、前記軟質セグメントは、エーテル及びエステル分子単位からなる群から選択され、前記硬質セグメントは、エステル、アミド及びウレタン分子単位からなる群から選択され、ブロック共重合体中の硬質セグメント対軟質セグメントの重量比が0.7~20であり、粉末樹脂が、約1~約200μの粒径を有する、レーザー焼結可能な熱可塑性粉末であって、ブロック共重合体が、ポリエーテル・エステル エラストマー、ポリエステル・エステル エラストマー、ポリエーテル・アミド エラストマー、ポリエーテル・ウレタン エラストマー、ポリエステル・アミド、ポリエステル・ウレタン、及びそれら樹脂の混合物からなる群から選択されている、レーザー焼結可能な熱可塑性粉末。」(以下、「甲2発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「少なくとも一種類の50℃以下のTgを有する粉末ブロック共重合体熱可塑性樹脂」は、本件発明1の「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー」と、「コポリマー」である限りにおいて一致する。
甲2発明の「粉末流動剤」は、本件発明1の「流動剤」に相当する。
甲2発明の「粉末流動剤と、少なくとも一種類の50℃以下のTgを有する粉末ブロック共重合体熱可塑性樹脂との混合物からなるレーザー焼結可能な熱可塑性粉末」は、本件発明1の「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが粉末充填剤を有する粒子の形態」と、「コポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが粉末充填剤を有する粒子の形態」である限りにおいて一致する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「コポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが粒子の形態であり;組成物が流動剤を含む、組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点2-1
本件発明1は「コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する」のに対し、甲2発明は粉末充填剤の特定がない点
・相違点2-2
コポリマーに関して、本件発明1は「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー」であり、「コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し」ているのに対し、甲2発明はブロック共重合体の選択肢の一つとして「ポリエーテル・アミド エラストマー」が特定されている点
・相違点2-3
組成物中の流動剤の含有量に関して、本件発明1は「0.3重量%以上」であるのに対し、甲2発明はそのような特定がない点
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2-2について検討する。
甲2発明は、ブロック共重合体の選択肢の一つとして、ポリエーテル・アミド エラストマーを含み、甲2には、「ペバックスは、例えばポリエーテル・アミド エラストマーであり」(12頁2~3行)と記載され、例10において、ペバックスをブロック共重合体として用いること(19頁3~10行)が記載されているが、甲2には、ポリエーテル・アミド エラストマーの「ポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比」及び「ポリアミドブロックの数平均モル質量」についての記載はない。
また、甲2は、「低い温度で可撓性形状物へ容易に焼結することができる重合体粉末を与えること」(7頁20~21行)を発明が解決しようとする課題とするものであり、甲2には、「本発明の焼結可能な粉末のその低い操作床温度は、従来法の粉末と比較して、一層良い温度制御を与え、それから形成された目的物の変形を小さくする。」(7頁21~23行)と記載され、「ブロック共重合体は熱可塑性エラストマーであり、軟質及び硬質セグメントとして特徴付けられる分子単位から形成されている。これらのセグメントは、縮合重合により互いに結合され、一つのセグメントの先端が他のセグメントの後端に結合している。これらのセグメントは無作為的に一緒に結合されているが、硬質セグメント対軟質セグメントの重量比は0.7~20である。」(9頁26行~10頁1行)と記載され、「本発明のブロック共重合体の硬質セグメントは、次のエステル(3)、アミド(4)、及びウレタン(5)構造体によって表すことができる:・・・
[図:0001425776000001.jpg]
Aは、250より小さい分子量を有する少なくとも一種類の低分子量ジアミンからアミン基を除去した後に残る二価のラジカルであり」(10頁20~11頁5行)と記載されているが、上記課題を解決するために、ポリエーテル・アミド エラストマーの硬質セグメント対軟質セグメントの重量比及び硬質セグメントであるアミド構造体の数平均モル質量を調整することについての記載も示唆もない。
そうすると、甲2には、甲2発明において、ブロック共重合体として「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー」であり、「コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し」ているものを選択する動機付けとなる記載はないし、甲1及び甲3~13にも当該動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2発明において、相違点2-2に係る特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は申立書の16頁において、本件発明1に対応する甲2発明を以下のとおり記載されていると主張する。
「(A)コポリマー粉末を含む組成物であって、
(B)ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含有し、
(C)コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する粒子の形態であり、
(D)コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、
(F)流動剤を0.3重量%以上の含有量で含む
組成物。」
しかしながら、甲2には、上記(A)~(F)の特定事項を同時に満たす組成物が直接記載されておらず、さらに、上記(D)の特定事項については、甲2の請求項1に「ブロック共重合体中の硬質セグメント対軟質セグメントの重量比が0.7~20」であることが記載されており、甲2の比較例に相当する「0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比」を有することが甲2のどの記載に基づくものであるのかが判然としない。
したがって、甲2の記載から上記甲2発明を認定することはできないことから、申立人の上記主張は採用できない。
エ 本件発明1についてのまとめ
上記ア~ウのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1~13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2~19について
本件発明2~19は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、上記(2)で本件発明1について検討したのと同様の理由により、本件発明2~19は、甲2発明及び甲1~13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)申立理由2についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由2は理由がない。
3 申立理由3(甲3を主引例とする新規性・進歩性)について
(1)甲3に記載された発明
甲3には、その請求項1を引用する請求項7に記載された磁性粉末組成物に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。
「組成物の総重量に対して下記(1)(2):
(1)50~95重量%の少なくとも一主の粉末磁石と、
(2)5~50重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、
を含む焼結可能な磁性粉末組成物であって、
上記粉末組成物が0.1~100μmの範囲のD50を有し、
シリカ、水和シリカ、非晶質アルミナ、ガラス質シリカ、ガラス質リン酸塩、ガラス質ホウ酸塩、ガラス質酸化物、二酸化チタン、タルク、マイカ、ヒュームドシリカ、熱分解シリカ、カオリン、アタパルジャイト、ケイ酸カルシウム、アルミナおよびマグネシウムシリケートの中から選択される流動剤をさらに含む、焼結可能な磁性粉末組成物。」(以下、「甲3発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明の「熱可塑性ポリマー」は、本件発明1の「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー」と、「ポリマー」である限りにおいて一致する。
甲3発明の「粉末磁石」は、本件発明1の「粉末充填剤」に相当する。
甲3発明の「シリカ、水和シリカ、非晶質アルミナ、ガラス質シリカ、ガラス質リン酸塩、ガラス質ホウ酸塩、ガラス質酸化物、二酸化チタン、タルク、マイカ、ヒュームドシリカ、熱分解シリカ、カオリン、アタパルジャイト、ケイ酸カルシウム、アルミナおよびマグネシウムシリケートの中から選択される流動剤」は、本件発明1の「流動剤」に相当する。
甲3発明の「焼結可能な磁性粉末組成物」は、熱可塑性ポリマーが粉末であることは明らかであるから、本件発明1の「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが粉末充填剤を有する粒子の形態」と、「ポリマーの粉末を含む組成物であって、ポリマーが粉末充填剤を有する粒子の形態」である限りにおいて一致する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「ポリマーの粉末を含む組成物であって、ポリマーが粉末充填剤を有する粒子の形態であり;組成物が流動剤を含む、組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点3-1
粉末充填剤の含有量に関して、本件発明1は「コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する」のに対し、甲3発明は「組成物の総重量に対して」「50~95重量%」である点
・相違点3-2
ポリマーに関して、本件発明1は「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー」であり、「コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し」ているのに対し、甲3発明は「熱可塑性ポリマー」である点
・相違点3-3
組成物中の流動剤の含有量に関して、本件発明1は「0.3重量%以上」であるのに対し、甲3発明はそのような特定がない点
イ 判断
上記相違点3-1について検討する。
甲3発明は、「50~95重量%の少なくとも一主の粉末磁石」と「5~50重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマー」であるため、熱可塑性ポリマーに対する粉末磁石の含有量の下限は「100重量%」(粉末磁石50重量%及び熱可塑性ポリマー50重量%の場合)であり、本件発明1の「コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する」範囲と重複しないことは明らかである。
よって、相違点3-1は実質的な相違点である。
また、甲3は、「複雑な形状の部品でも焼結装置を使用して作ることができる良好な特性、特に密度、機械特性および磁気特性に優れた粉末形態の磁性粉末を提供すること」(【0010】)を発明が解決しようとする課題とするところ、甲3には、「磁性粒子の含有量が50重量%未満では所望の磁気特性を得ることが困難」であること(【0012】)が記載されていることから、甲3には、甲3発明において、粉末磁石の含有量が50重量%未満の範囲であって、熱可塑性ポリマーに対する粉末磁石の含有量を「0%~10重量%」に調整する動機付けとなる記載はないし、甲1、甲2及び甲4~13にも当該動機付けとなる記載はない。
したがって、甲3発明において、相違点3-1に係る特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は申立書の19~20頁において、本件発明1に対応する甲3発明を以下のとおり記載されていると主張する。
「(A)コポリマー粉末を含む組成物であって、
(B)ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含有し、
(C)コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する粒子の形態であり、
(D)コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、
(B1)ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し、
(F)流動剤を0.3重量%以上の含有量で含む
組成物。」
しかしながら、甲3には、上記(A)~(F)の特定事項を同時に満たす組成物が直接記載されておらず、さらに、上記(C)の特定事項については、甲1の請求項1に「50~95重量%の少なくとも一主の粉末磁石」と記載されており、比較例に相当する0.1~5重量%とすることが甲3のどの記載に基づくものであるのかが判然としない。
したがって、甲3の記載から上記甲3発明を認定することはできないことから、申立人の上記主張は採用できない。
エ 本件発明1についてのまとめ
上記ア~ウのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲1~13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2~19について
本件発明2~19は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、上記(2)で本件発明1について検討したのと同様の理由により、本件発明2~19は、甲3発明ではないし、甲3発明及び甲1~13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)申立理由3についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由3は理由がない。
4 申立理由4(甲4を主引例とする新規性・進歩性)について
(1)甲4に記載された発明
甲4には、その請求項5に記載されたポリマー粉末に着目すると、以下の発明が記載されていると認める。
「そのつど粉末層の選択的範囲を、電磁エネルギーを導入することにより溶融させ、積層造型する方法で使用するためのポリマー粉末において、この粉末が、1500g/モルを下廻る平均分子量(質量平均)を有するオリゴアミドジカルボン酸とポリエーテルアミンとから製造された、少なくとも1種のブロックポリエーテルアミドを有する、ポリマー粉末。」(以下、「甲4発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明を対比する。
甲4発明の「オリゴアミドジカルボン酸とポリエーテルアミンとから製造された、少なくとも1種のブロックポリエーテルアミド」は、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックを有することは明らかであるから、本件発明1の「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー」に相当する。
甲4発明の「ポリマー粉末」は、本件発明1の「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが粉末充填剤を有する粒子の形態」と、「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが粒子の形態」である限りにおいて一致する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが粒子の形態である、組成物。」
そして、両者は次の点で相違する。
・相違点4-1
本件発明1は「コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する」のに対し、甲4発明は粉末充填剤の特定がない点
・相違点4-2
ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーに関して、本件発明1は「コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し」ているのに対し、甲4発明はそのような特定がない点
・相違点4-3
本件発明1は「組成物が流動剤を0.3重量%以上の含有量で含む」のに対し、甲4発明は流動剤の特定がない点
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点4-2について検討する。
甲4発明は、「オリゴアミドジカルボン酸とポリエーテルアミンとから製造された、少なくとも1種のブロックポリエーテルアミド」の「ポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比」及び「ポリアミドブロックの数平均モル質量」についての記載はない。
よって、相違点4-2は実質的な相違点である。
また、甲4は、「耐衝撃性の成形体を、可能な限り良好に再現可能な加工方法で製造可能なポリマー粉末を提供すること」(【0020】)を発明が解決しようとする課題とするものであり、甲4には、「使用されるオリゴアミドジカルボン酸は、分子量1000~20000g/モルである。オリゴアミドジカルボン酸は、コポリマー中の硬質ブロックを形成する。軟らかさの調整のために、硬質ブロックの長さを好ましくは1500g/モルを下廻るように選択し、堅さの調整のためには、硬質ブロックの長さを5000g/モルを上廻るように選択する」(【0041】)と記載され、「カルボキシル末端基に対するアミノ末端基の数は、10%を上廻らない程度に偏差していてもよい。」(【0043】)と記載され、例2には、「808ダルトンの硬質ブロックを有するPA12およびJeffamin D400をベースとするPEAを製造する」こと(【0082】~【0085】)が記載されているが、本件発明の課題である「より広い作業窓及び比較的低い造形温度で作業することを可能にして前記物品が良好な可撓性などの良好な機械的特性を特徴とする、PEBA粉末組成物を提供すること」(本件明細書の【0010】)を解決するために、「オリゴアミドジカルボン酸とポリエーテルアミンとから製造された、少なくとも1種のブロックポリエーテルアミド」の「ポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比」及び「ポリアミドブロックの数平均モル質量」を調整することについての記載も示唆もない。
そうすると、甲4には、甲4発明において、「オリゴアミドジカルボン酸とポリエーテルアミンとから製造された、少なくとも1種のブロックポリエーテルアミド」として、「コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し」ているものを選択する動機付けとなる記載はないし、甲1~3及び甲5~13にも当該動機付けとなる記載はない。
したがって、甲4発明において、相違点4-2に係る特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は申立書の28頁において、本件発明1に対応する甲4発明を以下のとおり記載されていると主張する。
「(A)コポリマー粉末を含む組成物であって、
(B)ポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを含有し、
(C)コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する粒子の形態であり、
(D)コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、
(B1)ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し、
(F)流動剤を0.3重量%以上の含有量で含む
組成物。」
しかしながら、甲4には、上記(A)~(F)の特定事項を同時に満たす組成物が直接記載されておらず、さらに、甲4の【0043】の記載から上記(D)の特定事項が記載されているともいえない。
したがって、甲4の記載から上記甲4発明を認定することはできないことから、申立人の上記主張は採用できない。
エ 本件発明1についてのまとめ
上記ア~ウのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明及び甲1~13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2~19について
本件発明2~19は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、上記(2)で本件発明1について検討したのと同様の理由により、本件発明2~19は、甲4発明ではないし、甲4発明及び甲1~13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)申立理由4についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由4は理由がない。
5 申立理由5(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。
本件明細書の【0010】によると、本件発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「効率的な方法で焼結することによって三次元物品の造形を可能にし、特に、より広い作業窓及び比較的低い造形温度で作業することを可能にして前記物品が良好な可撓性などの良好な機械的特性を特徴とする、PEBA粉末組成物を提供すること」及び「良好なリサイクル性を有するPEBA粉末組成物を提供すること」である。
そして、本件明細書の【0032】には、「PEBA粒子中の0%~10重量%の含有量の粉末充填剤の含有量により、良好な機械的特性、特に高い破断伸びを有する三次元物品を得ることができる。」と記載され、同【0033】には、「ポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比が0.7以下であることによっても、所望の柔軟性を有する三次元物品を得ることが可能になる。」と記載され、同【0034】には、「流動剤が0.3重量%以上の量で存在することにより、三次元物品の良好な機械的特性を維持しながら、粉末の流動能力及びそのリサイクル性をさらに改善することが可能になる。」と記載され、同【0035】には、「ポリアミドブロックが1000g/mol以下の数平均モル質量を有するという事実によって、比較的低い作業温度で造形プロセスを実施することが可能になり、広い作業窓を有することが可能になる。」と記載されており、粉末充填剤及び流動剤の含有量、並びに、ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーにおけるポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比及びポリアミドブロックの数平均モル質量を本件発明で特定される範囲とすることの技術的意味が、具体的に記載されている。
さらに、本件明細書には、実施例1及び2において、3種類の流動剤のいずれも、流動剤の含有量が重量比で0.3重量%以上である混合物は、PEBA粉末単独と比較して、良好な流出度であり、見かけ密度及びタンピング密度が改善すること(【0137】~【0141】)が確認でき、実施例5において、ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーが「ポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比が0.7以下」及び「ポリアミドブロックが1000g/mol以下の数平均モル質量を有する」の条件を満足するE1~E4が、当該条件の少なくとも1つを満足しないEC2~EC5と比べて、Tm-Tcの値が高く、射出成形の弾性率が低いこと(【0148】~【0154】)が確認でき、実施例6において、流動剤の含有量が0.6%、0.8%及び1.0%であるPEBA粉末が、流動剤の含有量が0.2%であるPEBA粉末と比べて、粉体のリサイクル性が向上すること(【0155】~【0156】)が確認でき、実施例7において、流動剤の含有量が0.3%及び1.0%であるPEBA粉末が、レーザ焼結にとって得られる部品の機械的特性が損なわれないこと(【0158】~【0162】)が確認でき、実施例8において、粉末充填剤であるドロマイトを20%含有するPEBA粉末が、粉末充填剤を含有しないPEBA粉末と比べて、破断伸びが劣ること(【0163】~【0167】)を確認できる記載がある。
そうすると、当業者は、「ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマーの粉末を含む組成物であって、コポリマーが0%~10重量%の含有量の粉末充填剤を有する粒子の形態であり、コポリマーが、0.7以下のポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの重量比を有し、ポリアミドブロックが、1000g/mol以下の数平均モル質量を有し;組成物が流動剤を0.3重量%以上の含有量で含む、組成物」である本件発明1により、上記発明の課題を解決できると認識でき、本件発明2~19は、本件発明1をさらに限定したものである。
よって、本件発明1~19は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件発明1~19に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(3)申立人の主張について
ア 上記第3の5(1)の主張について
申立人は、上記第3の5(1)のとおり主張するが、上記(2)で述べたとおり、本件明細書の【0032】には、PEBA粉末粒子中の0%~10重量%の含有量の粉末充填剤の含有量による技術的意味が記載されており、実施例8において、ドロマイトである粉末充填剤を20%含有するPEBA粉末が、粉末充填剤を含有しないPEBA粉末と比べて、破断伸びが劣ることを確認できる記載もあるから、当業者が発明の課題を解決できると認識でき、本件明細書に「10重量%の含有量」の実施例がないことをもって、本件発明が上記課題を解決できないとはいえない。
したがって、上記主張は採用できない。
イ 上記第3の5(2)の主張について
申立人は、上記第3の5(2)のとおり主張するが、比較例であるEC4及びEC5は、ポリアミドブロックの数平均モル質量は1000g/molであるが、PA/PEが1.0であることで本件発明の範囲外となるものであるから、EC4及びEC5の「数平均モル質量1000は比較例に関する数値」であることを根拠とした当該主張は当を得ないものであり、採用できない。
ウ 上記第3の5(3)の主張について
申立人は、上記第3の5(3)のとおり主張するが、上記(2)で述べたとおり、本件明細書の【0034】には、流動剤が0.3重量%以上の量で存在することによる技術的意味が記載されており、実施例6において、流動剤の含有量が0.6%、0.8%及び1.0%であるPEBA粉末が、流動剤の含有量が0.2%であるPEBA粉末と比べて、粉体のリサイクル性が向上することが確認できる記載もあるから、当業者が発明の課題を解決できると認識でき、本件明細書の実施例6に流動剤を0.3重量%以上の含有量で添加した実施例の記載がないことのみでもって、当該認識に影響を与えるものではない。
したがって、上記主張は採用できない。
エ 上記第3の5(4)及び(7)の主張について
申立人は、上記第3の5(4)及び(7)のとおり主張するが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1により、発明の課題を解決できると認識できるものであり、さらに、申立人は、「PEBAコポリマーは融点が150℃以下」及び「30μm以上のサイズDv10、かつ、250μm以下のサイズDv90を有する」ことを満たさないPEBA粉末が発明の課題を解決しないとする具体的な技術的根拠を何ら示していない。
したがって、上記主張は採用できない。
オ 上記第3の5(5)の主張について
申立人は、上記第3の5(5)のとおり主張するが、当該主張は本件発明6の明確性に関するものであるため、上記(2)の判断には影響しない。
カ 上記第3の5(6)の主張について
申立人は、上記第3の5(6)のとおり主張するが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1により、上記発明の課題を解決できると認識できるものであり、さらに、申立人は、「20~75ショアDの瞬間硬度」を満たさないPEBA粉末が発明の課題を解決しないとする具体的な技術的根拠を何ら示していない。
したがって、上記主張は採用できない。
キ 上記第3の5(8)の主張について
申立人は、上記第3の5(8)のとおり主張するが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1により、上記発明の課題を解決できると認識できるものであり、さらに、申立人は、160μmのふるい以外のふるいを用いることにより発明の課題を解決しないとする具体的な技術的根拠を何ら示していない。
したがって、上記主張は採用できない。
ク 上記第3の5(9)の主張について
申立人は、上記第3の5(9)のとおり主張するが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1により、上記発明の課題を解決できると認識できるものであり、さらに、申立人は、実施例7及び実施例8の焼結条件以外の焼結条件を採用したことにより発明の課題を解決しないとする具体的な技術的根拠を何ら示していない。
したがって、上記主張は採用できない。
(4)申立理由5についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由5は理由がない。
6 申立理由6(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第2のとおり、本件発明1~12及び19は物の発明であるところ、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があることを要する。また、本件発明13~17は物を生産する方法であるところ、物を生産する方法の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物の使用をできる程度の記載があることを要する。また、本件発明18は方法の発明であるところ、方法の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用できる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件明細書には、本件発明1~12の物について、ポリアミドブロックを含み、ポリエーテルブロックを含むコポリマー、流動剤、粉末充填剤及びPEBA粉末組成物がその製造方法を含めて具体的に記載され(【0038】~【0116】)、本件発明19の物について、三次元物品及びその製造方法を含めて具体的に記載されている(【0126】~【0135】)。
また、本件明細書には、本件発明13~18の物を生産する方法について、コポリマー粉末の製造方法が具体的に記載されている(【0079】~【0097】)。
さらに、本件明細書には、本件発明19の方法について、PEBA粉末の使用方法が具体的に記載されている(【0126】~【0135】)。
そして、本件明細書には、本件発明の実施例である実施例1~8についても、PEBA粉末、その製造方法、その使用方法及び三次元物品を含め具体的に記載されている(【0136】~【0168】)。
したがって、本件発明1~12及び19について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるといえるし、本件発明13~17について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物の使用をできる程度の記載があるといえるし、本件発明18について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用できる程度の記載があるといえる。
よって、本件発明1~19に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件に適合する。
(3)申立人の主張について
申立人は、上記第3の6(1)~(9)のとおり主張するが、上記(2)で述べたとおり、当業者であれば、本件明細書の記載から、本件発明1~19を実施できるものと理解できる。
そして、申立人は、上記主張において、本件発明1~19が実施できないとする具体的な技術的根拠を何ら示していないことから、上記主張は上記(2)の判断には影響しない。
(4)申立理由6についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由6は理由がない。
7 申立理由7(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1~19の記載は、上記第2のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、明細書の記載とも整合する。
したがって、本件発明1~19に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)申立人の主張について
ア 上記第3の7(1)の主張について
申立人は、上記第3の7(1)のとおり主張するが、実施例1~7のPEBA粉末は粉末充填剤を含有していないことは明らかであるから、本件発明1の「0%~10重量%の含有量の粉末充填剤」が「0重量%」を含むことは明らかである。
したがって、上記主張は採用できない。
イ 上記第3の7(2)~(4)及び(7)~(9)の主張について
申立人は、上記第3の7(2)~(4)及び(7)~(9)のとおり主張するが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1~19は明確である。
そして、申立人は、上記主張において、本件発明1~19が明確でないとする具体的な技術的根拠を何ら示していないことから、上記主張は上記(2)の判断には影響しない。
ウ 上記第3の7(5)の主張について
申立人は、上記第3の7(5)のとおり主張するが、本件発明6の「30μm以上のサイズDv10」の粒径範囲内に、本件発明7の「250μm以下のサイズDv90」の範囲が含み得ることは明らかであり、本件発明6及び7の範囲内に、本件発明8の「80~150μmのサイズDv50」の範囲が含み得ることも明らかであるから、本件発明6が、本件発明7及び8と整合しないとはいえない。
したがって、上記主張は採用できない。
エ 上記第3の7(6)の主張について
申立人は、上記第3の7(6)のとおり主張するが、本件発明9の「瞬間硬度」はISO868:2003に記載されている用語を翻訳した用語であることは明らかであり、「25~45ショアD」の範囲についても明確であるといえることから、上記(2)で述べたとおり、本件発明9は明確である。
したがって、上記主張は採用できない。
(4)申立理由7についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由7は理由がない。
第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1~19に係る特許は、申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700142