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特許異議申立

2025-700069

高純度微粒アルミナ粉末

審判番号
2025-700069
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-095284
登録番号
7516872
請求日
2025年01月16日
審決日
2025年09月12日
公報発行日
2025年12月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日本軽金属株式会社
  • 【権利者代理人】岩池 満
  • 【権利者代理人】新山 雄一
  • 【権利者代理人】北村 明弘
  • 【権利者代理人】武石 卓
  • 【異議申立人】水野 圭助
審判長/審判官
  • 審判長 井上 猛
  • 審判官 阿川 寛樹
  • 審判官 粟野 正明
分類
P1651.113-YAA(C01F) / P1651.121-YAA(C01F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7516872号発明「高純度微粒アルミナ粉末」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7516872号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4、5〕、3、6について訂正することを認める。 特許第7516872号の請求項1~3、6に係る特許を維持する。 特許第7516872号の請求項4、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件の特許第7516872号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願(特願2020-95284号。以下「本願」という。)は、令和 2年 6月 1日の出願であって、令和 6年 7月 8日にその特許権の設定登録がされ、同年 7月17日に特許掲載公報が発行され、その後、令和 7年 1月16日に、その請求項1~5(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である水野 圭助(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年 5月12日付けで取消理由が通知され、同年 6月27日に特許権者より訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)及び意見書が提出されたものである。 なお、下記第2のとおり、本件訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)については、訂正が実質的に一部の請求項の削除のみの場合であって、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるとき」に該当すると認められるから、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨、及び訂正の内容 本件訂正請求に係る請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める、というものであり、本件訂正の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所には、当合議体が下線を付した。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、 「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であり、 体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足する、高純度微粒アルミナ粉末。」 と記載されているのを、 「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であり、 体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足し、 加圧嵩密度(GD)が2.20g/cm3以上である、高純度微粒アルミナ粉末。」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、「X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)が0.240°以下である、請求項1又は2に記載のアルミナ粉末。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であり、 体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足し、 X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)が0.240°以下である、高純度微粒アルミナ粉末。」 に訂正する。 (3)訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (4)訂正事項4 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (5)訂正事項5 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、「X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)が0.240°以下である、請求項1又は2に記載のアルミナ粉末。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、 「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であり、 体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足し、 式:1.6×10-6m3/g≦D50×SBETで表される関係を満足し、 X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)が0.240°以下である、高純度微粒アルミナ粉末。」 と記載し、新たに請求項6とする。 (6)一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~5は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1に係る請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~5は、一群の請求項である。 そして、本件訂正請求は、当該一群の請求項ごとに訂正を請求するものであって、訂正後の請求項3、6については、当該請求項について訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めるものである。 したがって、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1、2、4、5〕、3、6をそれぞれ訂正単位とする訂正を請求するものである。 2 訂正の適否についての当合議体の判断 (1)訂正の目的、特許請求の範囲の拡張、変更の存否、及び新規事項の有無について ア 訂正事項1について (ア)訂正の目的 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に、 「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であり、 体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足する、高純度微粒アルミナ粉末。」 と記載されているのを、 「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であり、 体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足し、 加圧嵩密度(GD)が2.20g/cm3以上である、高純度微粒アルミナ粉末。」 として、請求項1に係る「高純度微粒アルミナ粉末」の加圧嵩密度(GD)の下限値を特定することにより減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (イ)特許請求の範囲の拡張、変更の存否 訂正事項1に係る訂正は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (ウ)新規事項の有無 本願の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の【請求項4】、【0015】及び【0028】には、アルミナ粉末の加圧嵩密度(GD)が2.20g/cm3以上であることについての記載があるから、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 イ 訂正事項2、5について (ア)訂正の目的 訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、「X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)が0.240°以下である、請求項1又は2に記載のアルミナ粉末。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、 「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であり、 体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足し、 X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)が0.240°以下である、高純度微粒アルミナ粉末。」 とするものであり、また、 訂正事項5に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、「X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)が0.240°以下である、請求項1又は2に記載のアルミナ粉末。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、 「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であり、 体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足し、 式:1.6×10-6m3/g≦D50×SBETで表される関係を満足し、 X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)が0.240°以下である、高純度微粒アルミナ粉末。」 と記載し、新たに請求項6とするものであるから、 訂正事項2、5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当する。 (イ)特許請求の範囲の拡張、変更の存否 訂正事項2、5に係る訂正は、上記(ア)のとおり、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (ウ)新規事項の有無 訂正事項2、5に係る訂正は、上記(ア)のとおり、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 したがって、訂正事項2、5に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 訂正事項3、4について 訂正事項3、4に係る訂正は、本件訂正前の請求項4、5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、本件明細書等に記載した事項の範囲内での訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。 (2)独立特許要件について 本件は、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~5について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 本件訂正請求についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4、5〕、3、6について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2の3のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~6に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、以下において、本願の請求項1~6に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明6」といい、総称して、「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。 「【請求項1】 体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であり、 体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足し、 加圧嵩密度(GD)が2.20g/cm3以上である、高純度微粒アルミナ粉末。 【請求項2】 式:1.6×10-6m3/g≦D50×SBETで表される関係を満足する、請求項1に記載のアルミナ粉末。 【請求項3】 体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であり、 体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足し、 X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)が0.240°以下である、高純度微粒アルミナ粉末。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であり、 体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足し、 式:1.6×10-6m3/g≦D50×SBETで表される関係を満足し、 X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)が0.240°以下である、高純度微粒アルミナ粉末。」 第4 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第7号証(以下「甲1」等という。)、及び参考資料1、2を提出し(下記3参照。)、以下の理由により、本件訂正前の請求項1~5に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 1 申立理由1(新規性) (1)申立理由1-1(甲1を主たる引用文献とするもの。取消理由として不採用) 本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由1-2(甲4を主たる引用文献とするもの。取消理由として一部採用) 本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性) (1)申立理由2-1(甲1を主たる引用文献とするもの。取消理由として不採用) 本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明、及び甲2、甲3、参考資料1、2の記載に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2-2(甲4を主たる引用文献とするもの。取消理由として一部採用) 本件訂正前の請求項1~5に係る発明は、甲4に記載された発明、及び甲2、甲3、甲5~甲7、参考資料2の記載に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 証拠方法 甲1:Baikowski(R)、BAIKALOX(R)のリーフレット、2020年5月及びその抄訳文(当合議体注:「(R)」は、丸の中にRを記載したものを表す。以下同様。) 甲1-1:Baikowski(R)、BAIKALOX(R)のリーフレットが掲載されたウェブページのスクリーンショット、2020年5月 (URL: https://www.baikowski.com/wp-content/uploads/2020/05/Baikowski(R)_Leaflet_Baikowski(R).pdf) 甲2:守吉佑介 他6名、「セラミックスの焼結」、株式会社内田老鶴圃、1995年12月15日、目次、第1頁、第128~131頁、第178~181頁、第280頁、及び奥付 甲3:Haibin YU et al., Microreactor-assisted synthesis of α-alumina nanoparticles, Ceramics International, 2020.2.12, Vol.46, pp.13272-13281及びその抄訳文 甲4:Stefan PFEIFFER et al., Iron Oxide Doped Spray Dried Aluminum Oxide Granules for Selective Laser Sintering and Melting of Ceramic Parts, Advanced Engineering Materials, 2019.3.6, Vol.21, 1801351(1-14)及びその抄訳文 甲5:長谷川誠 他1名、「金属粒子の違いが金属粒子分散アルミナ複合材料の破壊靱性に与える影響」、日本金属学会誌、第78巻、第5号(2014年)、第195~200頁 甲6:「FINE CERAMICS POWDER TAIMICRON 高純度アルミナ粉体」のカタログ、大明化学工業株式会社、2015年4月 甲7:特開昭61-201619号公報 参考資料1:INTERNATIONAL STANDARD ISO 13320(second edition 2020-01), Particle size analysis --- Laser diffraction methods及び抄訳文 参考資料2:坂本 憲一、「アルミナ水和物とアルミナ」、軽金属、第22巻、第4号(1972年)、第295~308頁 第5 令和 7年 5月12日付け取消理由通知書により通知した取消理由の概要 当合議体は、上記第4の申立理由1-2、及び申立理由2-2の一部を採用し、以下の取消理由1、2を通知した。 1 取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)(甲4を主たる引用文献とするもの) 本件訂正前の請求項1、2、5に係る発明は、甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるか、または、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができるものであって、同法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 第6 当合議体の判断 以下に述べるとおり、当合議体は、上記第4の申立理由、及び上記第5の取消理由のいずれによっても、本件特許の請求項1~3、6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 取消理由1、2並びに申立理由1-2、2-2について(甲4を主たる引用文献とするもの) (1)甲4に記載された発明 本願の出願前に公知となった甲4(論文の表題:Iron Oxide Doped Spray Dried Aluminum Oxide Granules for Selective Laser Sintering and Melting of Ceramic Parts(当合議体訳:選択的レーザー焼結および溶融によるセラミック部品のための酸化鉄ドープスプレードライアルミナ粒子)の「2.1 Starting Materials」、及び「3.1 Analysis of Starting Materials and Investigation of the Dispersion in Water」の記載を総合勘案し、特に、サブミクロンサイズのα-アルミナ「Taimicron TM-DAR」(大明化学工業株式会社、日本・東京)に着目すると、甲4には、次の発明が記載されていると認められる(申立人が提出した甲4の抄訳文の記載に基づいて認定した。)。 「サブミクロンサイズのα-アルミナであるTaimicron TM-DARの粉末であって、 BET法を用いて評価された比表面積が11.8m2g-1、 体積基準のレーザー回折粒子サイズ分布測定において、d10が111.2nm、d50が150.5nm、d90が209.8nmと決定された、 α-アルミナであるTaimicron TM-DARの粉末。」 (以下「甲4発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲4発明とを対比する。 (ア)甲4発明において、「体積基準のレーザー回折粒子サイズ分布測定において」「決定された」「d50が150.5nm」であることは、150.5nmが0.1505μmであることからすると、本件発明1において「体積粒度分布における50%粒径(D50)」が、「式:D50≦0.20μm」「で表される関係を満足する」ことに相当する。 (イ)甲4発明において、「体積基準のレーザー回折粒子サイズ分布測定において」「決定された」「d50が150.5nm」であり、「BET法を用いて評価された比表面積が11.8m2g-1」であるから、両者の積は、150.5×10-9[m]×11.8[m2g-1]=1.7759×10-6[m3/g]となり、このことは、本件発明1において「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、」「式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足する」ことに相当する。 (ウ)甲4発明において、「体積基準のレーザー回折粒子サイズ分布測定において」「決定された」「d10が111.2nm、d50が150.5nm、d90が209.8nm」の値から、(d90-d10)/d50=(209.8nm-111.2nm)/150.5nm≒0.655と計算され、このことは、本件発明1において「体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足する」ことに相当する。 (エ)タイミクロンのカタログである甲6の「タイミクロンTM-Dシリーズは、一次粒子が微細で単粒子化しているため、1300℃以下の温度で焼結し緻密化する高純度α-アルミナ粉体です。」(「1.低温焼結性アルミナ TM-Dシリーズ」の項目参照。)との記載を参照すれば、甲4発明に係る「α-アルミナであるTaimicron TM-DARの粉末」は、本件発明1の「高純度微粒アルミナ粉末」に相当する。 (オ)上記(ア)~(エ)によれば、本件発明1と甲4発明とは、 「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足するとともに、体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足する、高純度微粒アルミナ粉末。」である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1に係る「高純度微粒アルミナ粉末」は、「ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であ」るのに対して、甲4発明に係る「α-アルミナであるTaimicron TM-DARの粉末」は、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が不明である点。 <相違点2> 本件発明1に係る「高純度微粒アルミナ粉末」は、「加圧嵩密度(GD)が2.20g/cm3以上である」のに対して、甲4発明に係る「α-アルミナであるTaimicron TM-DARの粉末」は、「加圧嵩密度(GD)」が不明である点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討する。 (ア)本件明細書の【0028】には、「加圧嵩密度」について、「アルミナ粉末を350kgf/cm2の圧力で加圧時間無し(0分)の条件で加圧成型して得られた成型体(成型ピース)の嵩密度である。」との記載があるから、本件発明1に係る「高純度微粒アルミナ粉末」の「加圧嵩密度(GD)」は、「アルミナ粉末を350kgf/cm2の圧力で加圧時間無し(0分)の条件で加圧成型して得られた成型体(成型ピース)の嵩密度」を意味すると解するのが相当である。 (イ)一方、甲4には、アルミナ粉末を350kgf/cm2の圧力で加圧時間無し(0分)の条件で加圧成型して得られた成型体(成型ピース)の嵩密度についての記載は見当たらないし、本願出願当時の技術常識を考慮したとしても、甲4発明に係る「α-アルミナであるTaimicron TM-DARの粉末」の「加圧嵩密度(GD)」は、不明であるというほかない。 (ウ)この点、申立人は、特許異議申立書第39頁において、甲6の「代表的特性値」の表には、「低温焼結性アルミナ」である「TM-DAR」の成形密度が2.3g/cm3であることが記載されていることを根拠として、甲4の「TM-DAR」は、「加圧嵩密度(GD)が2.20g/cm3以上である」との特定事項を備えるものである旨主張している。 (エ)そこで、上記(ウ)の主張について検討するに、甲6の「代表的特性値」の表には、「成形密度」について、「1軸プレス成形(98MPa)」と記載されており、98MPaは、1000kgf/cm2であって、本件発明1に係る「高純度微粒アルミナ粉末」を加圧成型する際の圧力である350kgf/cm2とは大きく異なるから、甲6の「代表的特性値」の表に「低温焼結性アルミナ」である「TM-DAR」の成形密度が2.3g/cm3であると記載されているからといって、甲4の「TM-DAR」の「加圧嵩密度(GD)が2.20g/cm3以上である」といえないことは、明らかである。 したがって、上記(ウ)の主張は採用しない。 (オ)また、申立人は、特許異議申立書第39~40頁において、仮に、甲6に記載の「成形密度」と本件発明1に係る「高純度微粒アルミナ粉末」の「加圧嵩密度」が異なる物性値であるとしても、本件明細書の【0023】の記載から、「式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/g」を満たすことにより、成形性が優れたものになる(例えば成形体密度である加圧嵩密度が高くなる)ことが分かるところ、甲4の「TM-DAR」は、「式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/g」を満たすため、「加圧嵩密度(GD)が2.20g/cm3以上」も満たすといえる旨さらに主張している。 (カ)そこで、上記(オ)の主張についてさらに検討するに、仮に、甲4の「TM-DAR」が「式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/g」を満たすからといって、「加圧嵩密度(GD)が2.20g/cm3以上」も満たすとはいえないことは、明らかであるから、上記(オ)の主張も採用しない。 (キ)したがって、上記相違点2は、実質的な相違点である。 (ク)次に、上記相違点2の容易想到性について検討する。 a 上記(イ)で述べたとおり、甲4には、アルミナ粉末を350kgf/cm2の圧力で加圧時間無し(0分)の条件で加圧成型して得られた成型体(成型ピース)の嵩密度についての記載は見当たらないから、甲4発明において、このように定義される「加圧嵩密度(GD)」に着目して、その下限値を設定しようとする動機付けがあるとはいえない。 このことは、甲2、甲3、甲5~甲7、及び参考資料2の記載を参照しても同様である。 b この点、申立人は、特許異議申立書第41頁において、甲2の記載及び甲4のタイトルを参照しつつ、甲4発明において、焼結特性の改善のために、「加圧嵩密度(GD)が2.20g/cm3以上」を満たすように、種々の手段で成形体密度を高めることは、当業者が容易に想到できる旨主張しているが、甲4には、加圧嵩密度(GD)の着目することが記載されていない以上、その下限値を設定しようとする動機付けがあるとはいえないことは、上記aのとおりであるから、このような主張は採用しない。 c したがって、甲4発明において、上記相違点2に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、上記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえない。 また、上記相違点1及び本件発明1によって奏される効果について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明、及び甲2、甲3、甲5~甲7、参考資料2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の特定事項を全て備えたものであるから、上記(2)ウのとおり、本件発明1が甲4に記載された発明とはいえず、甲4に記載された発明、及び甲2、甲3、甲5~甲7、参考資料2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、同様に、本件発明2は、甲4に記載された発明とはいえず、甲4に記載された発明、及び甲2、甲3、甲5~甲7、参考資料2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明3、6について ア 対比 上記(2)アにおいて検討した内容を考慮すると、本件発明3、6と甲4発明とは、 「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係か又は式:1.6×10-6m3/g≦D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係のいずれかを満足するとともに、体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足する、高純度微粒アルミナ粉末。」である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点3> 本件発明3、6に係る「高純度微粒アルミナ粉末」は、「ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であ」るのに対して、甲4発明に係る「α-アルミナであるTaimicron TM-DARの粉末」は、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が不明である点。 <相違点4> 本件発明3、6に係る「高純度微粒アルミナ粉末」は、「X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)が0.240°以下である」のに対して、甲4発明に係る「α-アルミナであるTaimicron TM-DARの粉末」は、「X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)」の値が不明である点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、まず、上記相違点4について検討する。 (ア)甲4には、アルミナ粉末のX線回折プロファイルにおける(113)回折線の半値全幅(FWHM)についての記載は見当たらないし、本願出願当時の技術常識を考慮したとしても、甲4発明に係る「α-アルミナであるTaimicron TM-DARの粉末」の「X線回折プロファイルにおける(113)回折線の半値全幅(FWHM)」の値は、不明であるというほかない。 (イ)この点、申立人は、特許異議申立書第37~39頁において、甲3の図6a及び図8aに記載されたXRDプロファイルは、焼結特性に優れるα-アルミナの一般的なXRDプロファイルを示すものであり、焼結特性に優れるα-アルミナであれば、当然にこのプロファイルを示すことを根拠として、甲4発明に係る「α-アルミナであるTaimicron TM-DARの粉末」は、優れた焼結用粉体(アルミナ粉体)を提供することから、当然に甲3の図6a及び図8aに記載されたXRDプロファイル、すなわち本件明細書図9と同様のXRDプロファイルを示すものであって、上記相違点4は実質的な相違点ではないと主張している。 (ウ)そこで、上記(イ)の主張について検討するに、そもそも「焼結性に優れるα-アルミナ」といっても、粒度分布、不純物の含有量、α相の比率等、様々な形態が想定され得るから、「焼結性に優れるα-アルミナ」であるからといって、当然に甲3の図6a及び図8aに記載されたXRDプロファイルを示すとはいえないことは、明らかである。 したがって、上記(イ)の主張は、前提を欠くものであるから、採用しない。 (エ)したがって、上記相違点4は、実質的な相違点である。 (オ)次に、上記相違点4の容易想到性について検討する。 a 上記(ア)で述べたとおり、甲4には、アルミナ粉末のX線回折プロファイルにおける(113)回折線の半値全幅(FWHM)についての記載は見当たらないから、甲4発明において、「X線回折プロファイルにおいて、(113)回折線の半値全幅(FWHM)」の下限値を設定しようとする動機付けがあるとはいえない。 このことは、甲2、甲3、甲5~甲7、及び参考資料2の記載を参照しても同様である。 b この点、申立人は、特許異議申立書第39頁において、甲4発明において、焼結特性を改善するために、甲3に記載されたX線回折プロファイル(結晶構造)のとおりにすることは、当業者が容易に想到し得ることである旨主張しているが、甲4には、アルミナ粉末のX線回折プロファイルにおける(113)回折線の半値全幅(FWHM)に着目する記載がない以上、その下限値を設定しようとする動機付けがあるとはいえないことは、上記aのとおりであるから、このような主張は採用しない。 c したがって、甲4発明において、上記相違点4に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、上記相違点3について検討するまでもなく、本件発明3、6は、甲4に記載された発明であるとはいえない。 また、上記相違点3及び本件発明3、6によって奏される効果について検討するまでもなく、本件発明3、6は、甲4に記載された発明、及び甲2、甲3、甲5~甲7、参考資料2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)取消理由1、2並びに申立理由1-2、2-2についてのまとめ よって、取消理由1、2並びに申立理由1-2、2-2によっては、本件発明1~3、6に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由1-1、2-1について(甲1を主たる引用文献とするもの) (1)甲1に記載された発明 甲1に記載された製品名「BMA15」に着目すると、甲1には、次の発明が記載されていると認められる(抄訳文の記載に基づいて認定した。)。 「化学純度:4N、結晶相%(γ/α):0/100、比表面積(BET):15m2/g、PSD(d50):0.1μm、バルク密度:0.8g/cm3、タップ密度:1.1g/cm3の高純度アルミナであるBMA15であって、元素分析(ICP)によればNa:10ppm、Si:5ppm、Fe:5ppm、Ca:4ppm、K:15ppmを含有する、BMA15。」(以下「甲1発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明に係る「高純度アルミナであるBMA15」は、所定の体積粒度分布及びBET比表面積を有するアルミナ粉末であるから、本件発明1に係る「高純度微粒アルミナ粉末」に相当する。 (イ)甲1発明に係る「高純度アルミナであるBMA15」が「元素分析(ICP)によればNa:10ppm、Si:5ppm、Fe:5ppm、Ca:4ppm、K:15ppmを含有する」ことは、本件発明1が「ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下であ」ることに相当する。 (ウ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「所定の体積粒度分布及びBET比表面積を有し、ナトリウム(Na)、ケイ素(Si)、鉄(Fe)及びカルシウム(Ca)のそれぞれの含有量が10ppm以下である、高純度微粒アルミナ粉末。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5> 本件発明1に係る「高純度微粒アルミナ粉末」は、「体積粒度分布における50%粒径(D50)及びBET比表面積(SBET)が、式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足する」のに対して、甲1発明に係る「高純度アルミナであるBMA15」は、「PSD(d50):0.1μm」、「比表面積(BET):15m2/g」であるものの、そのような関係を満足するか否かが不明である点。 <相違点6> 本件発明1に係る「高純度微粒アルミナ粉末」は、「体積粒度分布における10%粒径D10、50%粒径D50及び90%粒径D90が、式:(D90-D10)/D50≦1.1で表される関係を満足」するのに対して、甲1発明に係る「高純度アルミナであるBMA15」がそのような関係を満足するか否かが不明である点。 <相違点7> 本件発明1に係る「高純度微粒アルミナ粉末」は、「加圧嵩密度(GD)が2.20g/cm3以上である」のに対して、甲1発明に係る「高純度アルミナであるBMA15」は、「加圧嵩密度(GD)」が不明である点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、まず、上記相違点5について検討する。 (ア)甲1には、甲1発明に係る「高純度アルミナであるBMA15」について、その「PSD(particle size distribution)」である「d50」が「0.1μm」であることが記載されている。 (イ)この点、申立人は、特許異議申立書第13頁において、参考資料1の第8頁に「a volumetric particle size distribution(PSD)」との記載があることを根拠として、甲1に記載された「PSD(particle size distribution)」が体積基準の粒度分布を意味する旨主張している。 (ウ)そこで、上記(イ)の主張について検討するに、粉末の粒度分布としては、体積基準のものと並んで個数基準のものがあることが、本願出願当時の技術常識であり、また、参考資料1のa volumetric particle size distribution(PSD)」との記載における「PSD」が、「particle size distribution」の部分のみを略したものと解することも可能であることからすると、甲1に「PSD(particle size distribution)」と記載されているからといって、これが体積基準の粒度分布を意味していると断言することはできない。 したがって、上記(イ)の主張は採用しない。 (エ)そうすると、甲1発明に係る「高純度アルミナであるBMA15」の「体積粒度分布における50%粒径(D50)」が、「式:D50≦0.20μm」「で表される関係を満足する」か否かは不明と言わざるを得ず、また、その「体積粒度分布における50%粒径(D50)」「及びBET比表面積(SBET)が、」「式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足する」か否かも不明と言わざるを得ない。 (オ)したがって、上記相違点5は、実質的な相違点である。 (カ)次に、上記相違点5の容易想到性について検討する。 a 甲1は、特定のアルミナ粉末製品の特徴を紹介する資料にすぎず、その記載を参照しても、甲1発明に係る「高純度アルミナであるBMA15」の「体積粒度分布における50%粒径(D50)」及び「BET比表面積(SBET)」に着目し、これらが「式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足する」ように調整する動機付けがあるとはいえない。 このことは、甲2、甲3、参考資料1、2の記載を参照しても同様である。 b この点、申立人は、特許異議申立書第25頁において、甲2に「焼結しやすい粉体・・・、その具備すべき条件は次のとおりである。・・・(1)1次粒子の粒径が小さく均一で・・・(3)形状は等方的で、できれば球形に近いこと」(「・・・」は記載の省略を表す。)と記載されていることを根拠にして、甲1に記載された発明において、焼結特性の改善のために、「式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/g」を満足するように、できるだけその粒径を小さくし、且つ球形に近づける(すなわち比表面積を小さくする)ことは、当業者が容易に想到できる旨主張している。 c そこで、上記bの主張について検討するに、上記aで検討したとおり、甲1自体は、特定のアルミナ粉末製品の特徴を紹介する資料にすぎないものであるから、仮に、上記bに記載した甲2の記載があるとしても、その中で紹介された一製品である甲1発明に係る「高純度アルミナであるBMA15」について、「体積粒度分布における50%粒径(D50)」及び「BET比表面積(SBET)」に着目し、これらが「式:D50≦0.20μm、及び式:D50×SBET≦2.0×10-6m3/gで表される関係を満足する」ように調整する動機付けがあるとはいえないことは、上述のとおりである。 したがって、上記bの主張は採用しない。 d よって、甲1発明において、上記相違点5に係る特定事項を備えることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、上記相違点6、7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、上記相違点6、7及び本件発明1によって奏される効果について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び甲2、甲3、参考資料1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明2、3、6について ア 本件発明2、3、6と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点5と同様の点で相違する。 イ そして、上記相違点5については、上記(2)イにおいて検討したとおりである。 ウ そうすると、その余の点について検討するまでもなく、本件発明2、3、6は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明、及び甲2、甲3、参考資料1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)申立理由1-1、2-1についてのまとめ よって、申立理由1-1、2-1によっては、本件発明1~3、6に係る特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、令和 7年 5月12日付け取消理由通知書に記載した取消理由、及び申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~3、6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~3、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件訂正によって特許異議の申立てがされた請求項4、5は削除され、特許異議の申立ての対象となる請求項4、5は存在しないものとなったから、請求項4、5に係る特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700069

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