特許異議申立
2025-700275
加熱調理器
- 審判番号
- 2025-700275
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-067992
- 登録番号
- 7547548
- 請求日
- 2025年03月07日
- 審決日
- 2026年03月31日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】シャープ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 【異議申立人】水野 圭助
- 審判長/審判官
- 審判長 遠藤 秀明
- 審判官 河端 賢
- 審判官 西山 智宏
- 分類
- P1651.121-YAA(A47J) / P1651.16 -YAA(A47J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第29条の2、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7547548号発明「加熱調理器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7547548号の特許請求の範囲を、令和7年6月20日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。
特許第7547548号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7547548号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)1月17日(優先権主張 平成28年9月2日)を国際出願日とする特願2018-536687号(以下「原出願」という。)の一部を令和3年4月12日に新たな特許出願とした特願2021-67157号の一部を令和5年4月18日に新たな特許出願としたものであり、令和6年8月30日にその特許権の設定登録がされ、令和6年9月9日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年 3月 7日 :特許異議申立人 水野 圭助(以下、
「申立人」という。)による請求項1ないし3
に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年 5月14日付け:取消理由通知書(発送日:同年5月19日)
令和7年 6月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、
「本件訂正請求」という。)の提出
第2 本件訂正請求による訂正の適否についての判断
1 請求項1ないし3係る訂正
(1) 訂正の内容
ア 訂正事項1
特許権者は、特許請求の範囲の請求項1に
「前記モータ制御部は、前記撹拌体が、正規の回転方向への回転終了後または回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に、前記正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するように前記モータの回転を制御することを特徴とする」
と記載されているのを
「前記モータ制御部は、前記撹拌体が、正規の回転方向への回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に、前記正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するように前記モータの回転を制御することを特徴とする」
に訂正し、請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正することを請求する(下線は、本件訂正請求に係る訂正請求書において特許権者が記載したとおりである。以下同様。)。
イ 訂正事項2
特許権者は、特許請求の範囲の請求項3に
「前記モータ制御部は、煮物の加熱調理において、前記撹拌体が、正規の回転方向への回転終了後または回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に、前記正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するように前記モータの回転を制御することを特徴とする」
と記載されているのを
「前記モータ制御部は、煮物の加熱調理において、前記撹拌体が、正規の回転方向への回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に、前記正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するように前記モータの回転を制御することを特徴とする」
に訂正することを請求する。
ウ 本件訂正請求は、一群の請求項〔1ないし3〕に対して請求されたものである。
(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件
ア 訂正事項1
(ア) 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明の「正規の回転方向への回転終了後または回転開始前に」について、このうち「正規の回転方向への回転終了後」を削除し、「正規の回転方向への回転開始前に」のみにその内容を限定するものである。
同様に、訂正後の請求項2及び3に係る特許発明は、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び3に係る特許発明の内容を限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「正規の回転方向への回転終了後または回転開始前に」のうち「正規の回転方向への回転終了後」を削除し、「正規の回転方向への回転開始前に」のみにその内容を限定するものである。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)のとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明の内容を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
同様に、訂正後の請求項2及び3に係る特許発明は、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項2及び3に係る特許発明の内容を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(エ) 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議申立ては、訂正前の請求項1ないし3に対してされたものであるから、訂正後の請求項1及び請求項1を引用する請求項2に係る訂正事項1において、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
イ 訂正事項2について
(ア) 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項3に係る特許発明の「正規の回転方向への回転終了後または回転開始前に」について、このうち「正規の回転方向への回転終了後」を削除し、「正規の回転方向への回転開始前に」のみにその内容を限定するものである。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ) 新規事項の有無
訂正事項2は、訂正前の請求項3に記載されていた「正規の回転方向への回転終了後または回転開始前に」のうち「正規の回転方向への回転終了後」を削除し、「正規の回転方向への回転開始前に」のみにその内容を限定するものである。
よって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)のとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項3に係る特許発明の内容を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(エ) 特許出願の際に独立して特許を受けることができること
本件特許異議申立ては、訂正前の請求項1ないし3に対してされたものであるから、訂正後の請求項3に係る訂正事項2において、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
2 小括
上記のとおり、訂正事項1及び訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定並びに同条第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし3に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、本件発明1ないし3をまとめて「本件特許発明」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(なお、下線部は、訂正箇所について特許権者が付したものである。)
「 【請求項1】
被加熱物を撹拌する撹拌体と、
前記撹拌体を回転させるモータと、
前記撹拌体が正規の回転方向への回転と停止を複数回繰り返すように前記モータの回転を制御するモータ制御部と、を備え、
前記モータ制御部は、前記撹拌体が、正規の回転方向への回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に、前記正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するように前記モータの回転を制御することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記撹拌体は、前記被加熱物を収容する鍋とは別に設けられることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記モータ制御部は、煮物の加熱調理において、前記撹拌体が、正規の回転方向への回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に、前記正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するように前記モータの回転を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の加熱調理器。」
第4 当審が令和7年5月14日付けで特許権者に通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし3に係る特許に対して、当審が令和7年5月14日付けの取消理由通知書において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
1 (拡大先願)請求項1ないし3に係る発明は、本件特許出願の日(合議体注:「本件特許出願の原出願の優先日」の誤記である。)前の特許出願であって、本件特許出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないものである。
よって、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 (進歩性)請求項1ないし3に係る発明は、本件特許出願(合議体注:「本件特許出願の原出願の優先日」の誤記である。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
<引用する文献>
甲第1号証:特開2017-221412号公報(特願2016-118897号の公開公報)
甲第2号証:特開2013-192706号公報
甲第3号証:特開2010-187946号公報
第5 当審の判断
1 本件発明1ないし3について
本件発明1ないし3は、上記第3において示したとおりのものである。
2 甲号証に記載された発明について
(1) 甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証の記載事項
本件特許出願の原出願の優先日前の他の特許出願であって、本件特許出願の原出願の出願後に出願公開がされた特願2016-118897号(特開2017-221412号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面が記載された公開公報である甲第1号証には、以下のような記載がある(なお、下線は理解を容易にするために当審で付したものである。以下同様。)。
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱される容器内に収容された被調理物を撹拌するための撹拌体を備えた加熱撹拌調理器に関する。具体的には、容器内に配置され容器の外部からの回転磁界をうけて回転する撹拌体を備えた加熱撹拌調理器に関するものである。」
(イ) 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような回転磁界により動力を伝達する構成において、一般に磁気ギャップ(空隙長)が広くなるにつれて磁気結合度が低下する。一方、誘導加熱調理器に備えたコイルと回転翼に備えた永久磁石との間には鍋を載置する載置板の厚みや鍋の厚みが存在するために広い磁気ギャップが存在する。実際にはこの磁気ギャップは5mmから15mm程度となり、鍋内の被調理物(例えば数皿分のカレーの煮込み)を撹拌するための大きな回転トルクを確保するためには誘導加熱機器のコイルから発生される磁束と永久磁石で形成する磁束が十分に鎖交する構成が必要となる。また回転翼は本来の被調理物を撹拌するための羽根を形成するために、回転翼に磁性体を備える場合にはスペース的な制約があり、限られたスペースで磁束密度を高くする必要性から回転翼には、ネオジウム焼結磁石など強力な永久磁石が用いられる。
【0006】
一方、実際の加熱調理において、特に固形物を主とする被調理物の撹拌では、被調理物のサイズや大きさ硬さなどは一様ではなく、撹拌を行うための撹拌体にかかる負荷は被調理物相互の重なり方や容器との接触のしかたなどの変化にともない撹拌中に刻々変動する。さらに、加熱にともなう被調理物の硬さの変化や水分の移動、蒸発などによっても撹拌体にかかる負荷が変化する。
【0007】
たとえば、容器の内底部の中心を軸に回転する撹拌体を備えた構成の加熱撹拌調理器では、撹拌体の羽根部の回転動作によって被調理物の一部が羽根部と容器の内周部との間に挟まるように介在して抵抗となることで回転負荷が撹拌体の駆動トルクを上回って増大することにより回転不能(ロック状態)になる場合があり、この状態で加熱が継続すると被調理物の加熱むらや焦げ付きが発生して調理の失敗につながってしまうことになる。このため撹拌機能付きの加熱調理器を使用する場合であっても、使用者は撹拌体が停止していないかを調理中に時々監視する必要性や負荷の増大要因を取り除く手間が生じてしまうことになる。
【0008】
また、この負荷変動に対応して余力をもって(十分大きなトルクで)撹拌しようとすると機器は大型のものになり使用性の良い加熱撹拌調理器の実現は困難である。つまり撹拌のための駆動力を発生させるモーターやその駆動力を撹拌体に伝達させるカップリング(動力伝達手段)、さらにモーターに電力を供給する電源の大型化や重量増加などをともなってしまい使用性に優れた加熱撹拌調理器の実現は困難である。また、加熱中の被調理物を大きなトルクで撹拌することは煮崩れの要因となり調理の出来栄えを損ねることにもつながる。
【0009】
逆に、羽根部にかかる被調理物の抵抗を低減しようとすると被調理物への作用が限定されて、期待する撹拌効果を発揮することが難しい。つまり、一般的に加熱調理における加熱ムラの要因としては、容器を加熱するヒーターなどの加熱手段の配置や熱伝導の差、容器内の被調理物の位置や対流の有無、さらには被調理物の疎密などによる熱容量の大小など、複雑に関係している。そのために形や大きさが一定でない不揃いにカットされた複数の被調理物の相互の入れ替わりや、被調理物の容器との接触面の入れ替わりを促進して被調理物が一定箇所に留まり偏って加熱されないようにすることが重要である。
【0010】
ここで期待する撹拌効果とは、調理工程における撹拌を自動で行うことにより、たとえば水分が少なく対流を期待できないような固形物中心の被調理物の加熱調理、あるいは水分の蒸発で焦げ付きなどの心配のある加熱調理においても撹拌体の羽根部を被調理物に物理的に作用させることにより、調理者が箸やヘラなどの調理具を用いて、均一に加熱されるように被調理物を裏返したり上下入れ替えたり集めたり散らばせたりする断続的あるいは連続的な操作(撹拌の手間)を省くことである。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、低い撹拌トルクで被調理物を効果的に撹拌でき、加熱撹拌調理器の大型化や重量増加に伴う取扱い性の悪化を抑えて使用性に優れ、さらに撹拌体への負荷増大に起因する過負荷停止状態に対応して撹拌動作の停止を防止して使用者は調理中に注意をはらうことがなくても失敗なく均一に加熱調理を完了することができる加熱撹拌調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱撹拌調理器は、 被調理物を収納可能に内底部と内周部を有し、外部からの加熱を受けて発熱する容器と、前記容器を収納する収納容器部と、 前記容器に対して着脱自在に配されると共に、前記容器内の被調理物を撹拌する撹拌体とを備え、 前記撹拌体は、 前記撹拌体が回転することにより被調理物を撹拌する羽根部と、 前記撹拌体が前記容器に収納されたとき前記容器の内底部に対向して配されると共に、外部からの回転磁界を受けることが可能な磁石と、 を備え、 前記収納容器部において、 前記磁石に対して回転磁界を発生させる回転磁界発生部と、 前記回転磁界発生部を制御する回転磁界制御手段と、を備え、 前記回転磁界制御手段は、前記回転磁界発生部によって、前記磁石に対して回転磁界を正回転方向に回転させ、設定回転数、もしくは、回転負荷検知のいずれかにより、前記磁石を逆回転方向へ回転磁界を切り替えて、前記正回転方向の回転数よりも少ない回転数だけ回転させるように制御する構成としたものである。
【0013】
これにより、撹拌体を正回転方向と逆回転方向とを異なる割合で組み合わせて回転させて被調理物を撹拌することで、被調理物に対し正回転方向の回転とは反対の向きから撹拌体の回転力を作用させることができ被調理物の偏り過ぎによる撹拌体にかかる負荷の増大要因を解除しつつ撹拌することができる。さらに撹拌体に過負荷がかかって撹拌体が停止する場合でも撹拌体の逆回転方向の回転を組み合わせているので、人手を介さずにこの状態から脱出することができ被調理物の撹拌を継続することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の加熱撹拌調理器は、容器に入れた被調理物を撹拌しながら加熱することができ、数皿分のカレーなどの煮込み調理においても人が定期的にしゃもじ等でかき混ぜなくとも焦げ付きや加熱ムラを防止することができるものである。さらに、容器内の被調理物に対し撹拌する作用を保ちつつ、撹拌のための必要な回転トルクを低くおさえることにより撹拌体および加熱調理器の小型化、軽量化が実現できるので、取り扱い性に優れ、またさらに、撹拌による被調理物へのダメージ(例えば過撹拌による被調理物の煮崩れ)の発生も抑えた加熱撹拌調理器を提供することができる。」
(ウ) 「【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の発明は、 被調理物を収納可能に内底部と内周部を有し、外部からの加熱を受けて発熱する容器と、前記容器を収納する収納容器部と、 前記容器に対して着脱自在に配されると共に、前記容器内の被調理物を撹拌する撹拌体とを備え、 前記撹拌体は、 前記撹拌体が回転することにより被調理物を撹拌する羽根部と、 前記撹拌体が前記容器に収納されたとき前記容器の内底部に対向して配されると共に、外部からの回転磁界を受けることが可能な磁石と、 を備え、 前記収納容器部において、 前記磁石に対して回転磁界を発生させる回転磁界発生部と、 前記回転磁界発生部を制御する回転磁界制御手段と、を備え、 前記回転磁界制御手段は、前記回転磁界発生部によって、前記磁石に対して回転磁界を正回転方向に回転させ、設定回転数、もしくは、回転負荷検知のいずれかにより、前記磁石を逆回転方向へ回転磁界を切り替えて、前記正回転方向の回転数よりも少ない回転数だけ回転させるように制御する構成としたものである。
【0017】
これにより、撹拌体を正回転方向と逆回転方向とを異なる割合で組み合わせて回転させて被調理物を撹拌することで、被調理物に対し正回転方向の回転とは反対の向きから撹拌体の回転力を作用させることができ被調理物の偏り過ぎによる撹拌体にかかる負荷の増大要因を解除しつつ撹拌することができる。さらに撹拌体に過負荷がかかって撹拌体が停止する場合でも撹拌体の逆回転方向の回転を組み合わせているので、人手を介さずにこの状態から脱出することができ被調理物の撹拌を継続することができる。たとえば、被調理物が羽根部と容器の内周部との間に挟まって抵抗となり回転負荷が増大してしまい回転不能(ロック状態)になる場合にも、撹拌体の回転の向きを逆にする逆回転方向の回転を組み合わせることで負荷の増大要因を取り除いて撹拌を継続することができ被調理物が容器内の特定の箇所に留ることが原因で起きる焦げや加熱ムラを防止することができる。つまり撹拌トルクを低く設定できて被調理物を効果的に撹拌することができるものである。使用者は失敗を恐れて撹拌が適正に動作していることに注意をはらうこともないので、加熱調理完了まで蓋を開けて調理工程を確認する手間もなく、蓋を開けることによる熱の損失を抑制する効果が期待できる。特に、電気圧力鍋や電気炊飯器のような蓋に閉止機構を備えた形態の調理器であっても撹拌機能を備えた加熱調理器として提供することで、調理開始時に予め被調理物を投入するだけで調理が完成するまで手間をかける必要性がなく極めて有用となる。
【0018】
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記撹拌体の前記羽根部は、 正回転方向の回転により被調理物を前記容器の内周部に向かって寄せ集めるように作用し、逆回転方向の回転により正回転方向の回転により寄せ集められた被調理物を前記容器の中心に向かって崩すように作用するように構成されたものである。
【0019】
これにより、撹拌体の正回転方向の回転とは被調理物への作用が異なるように逆回転方向の回転動作を組みあわせているので、被調理物の偏り過ぎによる撹拌体にかかる負荷の増大要因を効果的に解除しつつ撹拌を継続することができる。
【0020】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、 前記回転磁界制御手段が設定回転数で回転方向を切り替える構成において、正回転方向の回転数N回転に対する逆回転方向の回転数M回転の比率が0.9から0.1の範囲で実行されて正回転の割合が多くなるように前記回転磁界発生部を制御する構成としたものである。
【0021】
これにより、正回転方向の回転よりも少ない逆回転方向の回転の割合を9割ないし1割の範囲にすることで容器の内周部を利用して効率よく被調理物を撹拌することができる。
【0022】
第4の発明は、特に、第1~第3のいずれか1つの発明において、 前記回転磁界制御手段が設定回転数で回転方向を切り替える構成において、逆回転方向の回転数M回転が1回転から2回転の範囲で実行されるように前記回転磁界発生部を制御する構成としたものである。
【0023】
これにより逆回転方向の1回転により被調理物に対し正回転方向の回転とは反対の向きから撹拌体の回転力を作用させることができるので十分に負荷の増大要因を取り除いて撹拌を継続することができる。」
(エ) 「【0025】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における加熱撹拌調理器を示す斜視図、図2は本発明の第1の実施の形態における加熱撹拌調理器の蓋体を外した状態を示す上面図、図3は本発明の第1の実施の形態における加熱撹拌調理器を示す図2のA-A断面図である。図4は本発明の第1の実施の形態における加熱撹拌調理器を示す図3の要部拡大断面図、図5は本発明の第1の実施の形態における加熱撹拌調理器の動作を説明するための要部拡大断面図である。図6は本発明の第1の実施の形態における撹拌体の要部を示す上面図、側面図、背面図である。図7は本発明の第1の実施の形態における撹拌体の下面側から見た分解斜視図と上面側から見た分解斜視図である。図8から図11は本発明の第1の実施の形態における撹拌体の動作を説明するための断面図である。
【0026】
図中、1は加熱撹拌調理器の本体であり、本体1の内部には被調理物(図示せず)を調理するための容器2を収納する収納容器部3を設けている。収納容器部3の底には容器2の底面と接して熱を伝達するヒーター部4を配置しており、本体1上方には、容器2の開口部を覆う蓋体5を本体1に回動自在に軸支している。容器2は内底部と内周部を有して被調理物を収納可能とし、ヒーター部4は容器2の底に沿ってリング状の形状を有し、ヒーター部4からの加熱を受けて容器2が発熱するようになっている。
【0027】
図3に示すように、6は永久磁石7とクラッチ部8を収納する収納部9と収納部9の周囲に羽根部10を形成した撹拌体である。撹拌体6は、被調理物を収納する容器2の内底部に対して着脱自在に配置され、撹拌体6が回転することにより容器2内の被調理物を羽根部10により撹拌する構成となっている。永久磁石7は、撹拌体6が容器2に収納されたとき、容器2の内底部に対向して配されると共に、外部からの回転磁界を受けることが可能なものである。この外部からの回転磁界は、収納容器部3内に収納され、容器2底面の外側に位置し撹拌体6の永久磁石7と対向するように配置された回転磁界発生部である回転磁界発生装置11によって発生させている。回転磁界発生装置11は、装置側永久磁石12を収納したカップリング部13とそれと連結する駆動モーター14により構成するものである。装置側永久磁石12とカップリング部13とは嵌め合い部で嵌合する状態とした構成としているため、駆動モーター14の駆動力をカップルリング部13に伝達させるとカップリング部13と一緒に装置側永久磁石12が回転することで、回転磁界を形成するものである。
【0028】
回転磁界制御手段である制御部50は本体1内に配されており、制御部50は回転磁界発生装置11を構成する駆動モーター14の回転を制御して装置側永久磁石12の磁界の回転を変化させることで回転磁界を制御することができる。カップリング部13はヒーター部4の中央開口部を通して容器2の外底面とは約1mmのクリアランスを設けており、カップリング部13と容器2の外底面との間で挟まれるスペーサー部材15をカップリング部13の上部に組み付けている。容器2の内周部の一部に、被調理物を撹拌する際に、撹拌特性を有利に作用させる目的で、容器2の中心方向に向かって、約6mm突出させ断面を湾曲状にした邪魔部16(図2参照)を設けている。」
(オ) 「【0036】
次に、撹拌体6の機能について説明する。
撹拌体6は、本体1内の容器2底の外側に配した回転磁界発生装置11によって、容器2の底の厚みを介して回転動作を回転磁界発生装置11に対して非接触で伝達するものである。この回転動作は、図6に示すように、撹拌体6の内部に収納した永久磁石7のN極とS極とを周方向に交互に配してリング状とし、それと相対するように回転磁界を発生させるカップリング内部13に構成した装置側永久磁石12にもN極とS極とを周方向に交互に配置させている。この構成により、相対する異極による吸引力と、その隣接の磁極との間に発生する反発力とによって、撹拌体6の永久磁石7と回転磁界発生装置11の装置側永久磁石12とが同期して回転するものである。
【0037】
図2において撹拌体6は実線矢印に示す時計方向の回転が正回転方向であり、破線矢印に示す反時計方向の回転が逆回転方向である。そして、制御部50は、回転磁界発生部である回転磁界発生装置11を制御して永久磁石7に対して回転磁界を正回転方向にN回転させ、設定回転数、もしくは、回転負荷検知のいずれかにより、N回転後に永久磁石7に対して逆回転方向へ回転磁界を切り替えて、正回転方向の回転数であるN回転よりも少ない回転数だけM回転させるように制御している。この構成により、永久磁石7が正回転方向にN回転することになり、撹拌体6の羽根部10が正回転方向にN回転する。設定回転数、もしくは、回転負荷検知のいずれかにより、永久磁石7が逆回転方向にM回転することになり、撹拌体6の羽根部10が逆回転方向にM回転する。
【0038】
図2に示すように撹拌体6の羽根部10の形状は、正回転方向の回転により被調理物を容器2の中心側から外側の内周部に向かって寄せ集めるように正回転方向の下流側に向けて凸状に湾曲している。これにより羽根部10は逆回転方向の回転により正回転方向の回転により寄せ集められた被調理物を容器2の中心に向かって崩すように作用するように構成されている。
【0039】
また、制御部50は、制御部50が設定回転数で回転方向を切り替える構成において、正回転方向の回転数N回転に対する逆回転方向の回転数M回転の比率が0.9から0.1の範囲で実行されて正回転の割合が多くなるように回転磁界発生装置11を制御している。
【0040】
さらに、制御部50は、制御部50が設定回転数で回転方向を切り替える構成において、逆回転方向の回転数M回転が1回転から2回転の範囲で実行されるように回転磁界発生装置11を制御している。
【0041】
本実施の形態において、制御部50による設定回転数を2.5回転に設定し、制御部50によって撹拌体6は正回転方向に2.5回転し、その後逆回転方向に1.25回転し、正回転方向の回転数N回転に対する逆回転方向の回転数M回転の比率が0.5の比率で回転を制御している。これにより正回転方向の回転により寄せ集められた被調理物を容器2の中心に向かって崩すように作用することで負荷の増大を抑制しつつ、正回転方向に回転する割合が多くなるように制御されていて容器2内における被調理物を効率的に撹拌することができるようになっている。また撹拌体6の回転方向が変更されるときの羽根部10の位置が一定の角度にならないように設定されている。
【0042】
つまり撹拌体6の正回転方向の回転により羽根部10は被調理物を容器2の内周部に向けて押し出すとともに、被調理物が容器2内周部から受ける抵抗、もしくは、被調理物が容器2の内周部に設けた邪魔部16から受ける抵抗によって、被調理物が羽根部10を乗越え、それにより被調理物を返す作用が起こっている。このようにして、撹拌体6を正回転と逆回転を交互に組み合わせて回転させることで、被調理物を容器2内で散らしたり寄せ集めたりしつつ、被調理物の裏表を返して容器2底面からヒーター部4の熱が被調理物全体に伝わるように加熱撹拌調理を行うことができる。
【0043】
また羽根部10に正回転方向の回転が停止するように被調理物の大きな負荷がかかる場合にも逆回転方向に回転して負荷の増大要因を解除して撹拌を継続して加熱ムラや焦げ付きを防ぐことができる。ここで逆回転方向の回転する比率は0.1を下回って設定したのでは負荷の増大を抑制する効果がさがり、さらに正回転方向の回転が停止した場合には負荷の増大要因を解除するまでに部分的に強く加熱されて焦げ付きが発生しやすくなることになることから逆回転方向の回転する比率を0.5に設定したものである。なお、本実施の形態としては固形物を主とした被調理物を前提として撹拌体6の回転速度は毎分2~20回転の低速回転に設定されている。」
(カ) 「【0062】
以上のように、本実施の形態においては、加熱容器に入れた被調理物の加熱とともに撹拌体による撹拌ができるので、たとえば数皿分のカレーなどの負荷の大きな煮込み調理においても定期的にしゃもじ等でかき混ぜなくとも焦げ付きや加熱ムラを防止することができるものである。撹拌体を正回転方向と逆回転方向とを異なる割合で組み合わせて回転させて被調理物を撹拌することで、被調理物に対し正回転方向の回転とは反対の向きから撹拌体の回転力を作用させることができ被調理物の偏り過ぎによる撹拌体にかかる負荷の増大要因を解除しつつ撹拌することができる。さらに撹拌体に過負荷がかかって撹拌体が停止する場合でも撹拌体の逆回転方向の回転を組み合わせているので、人手を介さずにこの状態から脱出することができ被調理物の撹拌を継続することができる。撹拌トルクを低く設定することができるものであり過撹拌による被調理物の煮崩れを抑制することができ使用性に優れた加熱撹拌調理器を提供することができる。加熱調理完了まで蓋を開けて調理工程を監視する必要もなく、蓋を開けることによる熱の損失も抑制する効果が期待できる。」
(キ) 「
[図:0001437363000001.jpg]
」(【図2】)
(ク) 「
[図:0001437363000002.jpg]
」(【図3】)
イ 甲第1号証の認定事項
(ア) 上記ア(ア)ないし(カ)の記載並びに上記ア(キ)及び(ク)の図示内容からみて、被調理物を攪拌する攪拌体6を備えるものであると認められる。
(イ) 上記ア(ア)ないし(カ)の記載及び上記ア(ク)の図示内容からみて、攪拌体6を回転させる駆動モーター14を備えるものであると認められる。
(ウ) 上記ア(ア)ないし(カ)の記載並びに上記ア(キ)及び(ク)の図示内容からみて、攪拌体6を正回転方向にN回転させるように駆動モーター14の回転を制御する制御部50を備えるものであると認められる。
(エ) 上記ア(ア)ないし(カ)の記載並びに上記ア(キ)及び(ク)の図示内容からみて、制御部50は、煮込み調理において、攪拌体6が、正回転方向に回転しその後正回転と逆回転を交互に組み合わせて逆回転方向に、正回転方向の回転数であるN回よりも少ない回転数だけM回転させるように駆動モーター14の回転を制御するものであると認められる。
(オ) 上記ア(イ)ないし(エ)の記載並びに 上記ア(キ)及び(ク)の図示内容からみて、攪拌体6は、被調理物を収納する容器2の内底部に対して着脱自在に配置される加熱攪拌調理器であると認められる。
ウ 甲第1号証に記載された先願発明
上記アの記載事項及び上記イの認定事項からみて、甲第1号証には、第1の実施の形態として、以下の発明(以下、「甲1先願発明」という。)が記載されていると認められる。
「 被調理物を攪拌する攪拌体6と、
攪拌体6を回転させる駆動モーター14と、
攪拌体6を正回転方向にN回転させるように駆動モーター14の回転を制御する制御部50と、を備え、
制御部50は、煮込み調理において、攪拌体6が、正回転方向に回転しその後正回転と逆回転を交互に組み合わせて逆回転方向に、正回転方向の回転数であるN回よりも少ない回転数だけM回転させるように駆動モーター14の回転を制御し、
攪拌体6は、被調理物を収納する容器2の内底部に対して着脱自在に配置される加熱攪拌調理器。」
(2) 甲第2号証に記載された発明
本件特許出願の原出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第2号証には、以下のような記載がある。
(ア) 「【技術分野】
【0001】
この発明は、マルチメニュー炊飯器に関し、より詳しくは攪拌機能を有するマルチメニュー炊飯器に関する。 【背景技術】
【0002】
従来、炊飯器としては、炊飯器本体の上部を開閉する蓋体に回転自在に攪拌体が設けられ、その攪拌体を回転駆動装置により駆動することにより内鍋内の炊飯物を攪拌するものがある(例えば、特開2008-278924号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
ところで、上記構成の炊飯器において、肉じゃがや筑前煮を作るための具材と水の混合物を加熱調理する場合、撹拌時に内鍋内の水面の外周部分が上昇し、米以外の具材(玉ねぎ,ごぼう等)が内鍋内の側面(水面よりも高い位置)に張り付いてしまうという問題がある。また、具材を多く入れて、一方向に回転を続けて攪拌するときに、積み重なった具材が内鍋内の側面に押しやられた状態のままとなって、煮汁に浸からない状態となるため、加熱ムラやこげの原因となっていた。」
(イ) 「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の課題は、具材が内鍋内の側面に張り付くことなく、ブロック状具材と液体スープの混合物を均一に混ぜることができ、加熱ムラや内鍋内の側面のこげを抑えることができるマルチメニュー炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明のマルチメニュー炊飯器は、
被加熱物が収容される内鍋と、
回転動作により上記内鍋内の上記被加熱物を攪拌する攪拌部と、
上記攪拌部の回転動作を制御する攪拌制御部と
を備え、
上記攪拌制御部は、肉,魚,野菜のうちの少なくとも1種類以上のブロック状具材と液体スープとを上記被加熱物として上記攪拌部により回転させながら加熱調理するとき、上記攪拌部を連続して回転させる連続回転期間と、遠心力により上記内鍋内の外側に偏った上記ブロック状具材を内側に戻すために上記攪拌部の回転を停止する回転停止期間とを交互に繰り返すように、上記攪拌部を制御することを特徴とする。 ここで、「ブロック状具材」とは、肉,魚,野菜を食べやすいサイズに切り分けた塊の具材などに限らず、玉ねぎ,ごぼう等の切れ片も含まれる。
【0007】
上記構成によれば、肉,魚,野菜を含む具材のうちの少なくとも1種類以上のブロック状具材と液体スープを被加熱物として攪拌部により回転させながら加熱調理するとき、攪拌制御部により攪拌部を制御して、攪拌部を連続して回転させる連続回転期間と、遠心力により上記内鍋内の外側に偏ったブロック状具材を内側に戻すために攪拌部の回転を停止する回転停止期間とを交互に繰り返すことによって、攪拌部を回転させる時間を一定時間以下にしつつ断続的に回すことで、攪拌部が回っているときに攪拌部が与える回転力によりブロック状具材は動くが、攪拌部の回転による遠心力により内鍋内の液面の外周部分が上昇しすぎないようにする。また、攪拌部の連続回転期間と回転停止期間の繰り返しで内鍋内の水面の外周部分が上下動することにより、内鍋内の側面に張り付きかけたブロック状具材も取れる。これにより、具材が内鍋内の側面に張り付くことなく、ブロック状具材と液体スープの混合物を均一に混ぜることができ、加熱ムラや内鍋内の側面のこげを抑えることができる。
【0008】
また、一実施形態のマルチメニュー炊飯器では、
上記攪拌制御部は、上記加熱調理時に上記ブロック状具材が軟化するにつれて上記回転停止期間が短くなるように、上記攪拌部を制御する。
【0009】
上記実施形態によれば、加熱調理時にブロック具材が軟化するにつれて回転停止期間を短くするので、加熱時間の経過によりブロック状具材と液体スープの混合物が液状化し、ブロック状具材が内鍋内の側面に張り付かなくなるので、攪拌部の回転停止期間に対して連続回転期間を長くしてより均一に混ぜることができる。
【0010】
また、一実施形態のマルチメニュー炊飯器では、
上記攪拌制御部は、上記連続回転期間に回転する上記攪拌部の回転方向を正逆反転させる。
【0011】
上記実施形態によれば、攪拌制御部により攪拌部を制御して、連続回転期間に回転する上記攪拌部の回転方向を正逆反転させることによって、ブロック状具材と液体スープの混合物に反動をつけることができ、より均一に混ぜることができる。
【0012】
また、一実施形態のマルチメニュー炊飯器では、
上記攪拌制御部は、上記加熱調理時に調理が進行するにつれて、上記攪拌部の単位時間あたりの回転数を遅くする。
【0013】
上記実施形態によれば、加熱調理時に調理が進行するにつれて、攪拌制御部によって、攪拌部の単位時間あたりの回転数を遅くするので、加熱時間の経過によりブロック状具材と液体スープの混合物が液状化すると共に具材が柔らかくなるので、攪拌によってブロック状具材を傷めることなく均一に混ぜることができる。 【発明の効果】
【0014】
以上より明らかなように、この発明によれば、具材が内鍋内の側面に張り付くことなく、ブロック状具材と液体スープの混合物を均一に混ぜることができ、加熱ムラや内鍋内の側面のこげを抑えることができるマルチメニュー炊飯器を実現することができる。」
(ウ) 「【0017】
図1はこの発明の実施の一形態のマルチメニュー炊飯器の斜視図を示している。
【0018】
この実施の形態のマルチメニュー炊飯器は、図1に示すように、炊飯器本体1と、炊飯器本体1の上部に開閉自在に取り付けられた蓋体2とを備えている。炊飯器本体1は、前面側に設けられた表示操作部5と、前面側かつ上側に設けられたフックボタン6と、後面側かつ下側に接続された電源コード7とを有する。また、蓋体2の後面側に蒸気口2aを設けている。表示操作部5は、液晶表示部3と複数の操作ボタン4で構成され、この表示操作部5により調理メニューや調理状況などの表示とボタン操作が可能である。
【0019】
また、図2は上記マルチメニュー炊飯器の蓋体2を開いた状態の斜視図を示している。
【0020】
上記マルチメニュー炊飯器は、図2に示すように、炊飯器本体1内に収納された内鍋10を備え、この内鍋10を覆うように蓋体2が閉じられる。
【0021】
上記内鍋10は、例えばアルミニウムなどの高熱伝導部材で形成され、その外面に加熱効率を向上させる例えばステンレス等の磁性体を貼り付ける一方、内面に被加熱物の付着を防ぐためのフッ素樹脂をコーティングしている。
【0022】
また、上記蓋体2は、炊飯器本体1に回動自在に支持された外蓋21と、その外蓋21の内鍋10側に着脱自在に取り付けられた内蓋22とを備えている。この内蓋22の外周に環状の耐熱ゴム製のパッキン23を着脱自在に取り付けている。蓋体2が閉じられたときにパッキン23が内鍋10に密着して、内鍋10と内蓋22との間をシールする。また、内蓋22には、蒸気排出口(図示せず)が設けられている。」
(エ) 「【0024】
また、外蓋21内の右側後部に駆動モータ24を配置すると共に、外蓋21の中央部内に連結部20(図6に示す)を配置している。この連結部20は、駆動モータ24が発生した回転駆動力を、プーリ(図示せず)やベルト(図示せず)を介して受けて回転する。
【0025】
また、上記内蓋22の内鍋10側に、耐熱樹脂製の攪拌ユニット11を回転自在に取り付けている。この攪拌ユニット11は、ひょうたんを扁平にした形状の回転体12と、その回転体12の両側に配置された第1,第2の攪拌アーム13A,13Bを有している。この第1,第2の攪拌アーム13A,13Bの一端を上下方向に回動自在に回転体12の両端に夫々取り付けている。また、攪拌ユニット11の回転体12内には、第1,第2の攪拌アーム13A,13Bを回動させるための駆動機構(図3に示す)が設けられている。」
(オ) 「【0036】
このように、駆動モータ24によって第1,第2の攪拌アーム13A,13Bの回動(倒立,倒伏)と攪拌ユニット11の回転とを行うことができる。」
(カ) 「【0040】
図6,図7に示すように、肉じゃがや筑前煮のようなブロック状具材と液体スープとの混合物を加熱する調理メニューでは、被加熱物として具材100と液体101の混合物を内鍋10内に収容する。
【0041】
上記構成のマルチメニュー炊飯器において、表示操作部5をユーザーが操作して、調理メニュー記憶手段100dに記憶された複数の調理メニューから所望の調理メニューを調理メニュー選択手段100cにより、複数の調理メニューのうちから肉じゃがや筑前煮のようなブロック状具材と液体スープ(水と調味料)との混合物を加熱する調理メニューをユーザーが選択する。」
(キ) 「【0045】
そして、加熱開始後、制御装置100の攪拌制御手段100bにより駆動モータ24を制御して、内鍋10内に収容された被加熱物としてブロック状具材と液体スープの混合物を、加熱制御手段100により制御されたヒータ41により加熱するとき、攪拌制御手段100bにより駆動モータ24を制御して、調理メニュー記憶手段100dから読み出した調理メニューの攪拌条件(単位時間あたりの回転数や回転時間および停止時間など)に基づいて、攪拌ユニット11の正回転(例えば120rpmで5秒)と停止(例えば1秒)を交互に繰り返す。
【0046】
このようにして、攪拌ユニット11を回す時間を一定時間以下にしつつ断続的に回すので、攪拌ユニット11が回っているときに攪拌ユニット11が与える回転力により具材は動くが、攪拌ユニット11の回転による遠心力により内鍋10内の液面の外周部分が上昇しすぎないようにする。また、攪拌ユニット11の連続回転期間と回転停止期間の繰り返しで内鍋10内の水面の外周部分が上下動することにより、内鍋10内の側面に張り付きかけた具材も取れる。
【0047】
図8は上記肉じゃがや筑前煮のようなブロック状具材と液体スープとの混合物を加熱する調理メニューにおけるタイミングチャートの一例を示しており、図8において、横軸は時間[任意目盛]を表し、縦軸は内鍋温度[℃]と単位時間あたりの回転数[任意目盛]を表している。
【0048】
図8に示すように、加熱運転の開始から内鍋温度が上昇して100℃に達すると、ヒータ41の入力電力を小さくして、加熱運転の終了まで内鍋温度を95℃に保つ。この加熱運転中に攪拌ユニット11の正回転(例えば5秒)と停止(例えば1秒)を交互に繰り返し、正回転の度に単位時間あたりの回転数を所定回転数下げるようにしている(例えば120rpmから80rpmに下げる)。
【0049】
上記構成のマルチメニュー炊飯器によれば、肉,魚,野菜を含む具材のうちの少なくとも1種類以上のブロック状具材と液体スープを被加熱物として攪拌部(攪拌ユニット11と連結部20,駆動モータ24)により回転させながら加熱調理するとき、攪拌制御手段100bにより攪拌部を制御して、攪拌ユニット11を連続して回転させる連続回転期間と、遠心力により内鍋10内の外側に偏ったブロック状具材を内側に戻すために攪拌ユニット11の回転を停止する回転停止期間とを交互に繰り返すことによって、攪拌ユニット11を回転させる時間を一定時間以下にしつつ断続的に回すことで、攪拌ユニット11が回っているときに攪拌ユニット11が与える回転力によりブロック状具材は動くが、攪拌ユニット11の回転による遠心力により内鍋10内の液面の外周部分が上昇しすぎないようにする。また、攪拌ユニット11の連続回転期間と回転停止期間の繰り返しで内鍋10内の水面の外周部分が上下動することにより、内鍋10内の側面に張り付きかけたブロック状具材も取れる。
【0050】
これにより、具材が内鍋10内の側面に張り付くことなく、ブロック状具材と液体スープの混合物を均一に混ぜることができ、加熱ムラや内鍋10内の側面のこげを抑えることができる。
【0051】
また、加熱調理時にブロック具材が軟化するにつれて回転停止期間を短くするので、加熱時間の経過によりブロック状具材と液体スープの混合物が液状化し、ブロック状具材が内鍋10内の側面に張り付かなくなるので、攪拌ユニット11の回転停止期間に対して連続回転期間を長くしてより均一に混ぜることができる。
【0052】
上記マルチメニュー炊飯器では、攪拌制御手段100bにより駆動モータ24を制御して、内鍋10内に収容されたブロック状具材と液体スープの混合物のうちの具材が、攪拌ユニット11の回転により内鍋10の内壁に張り付かないように、攪拌ユニット11の連続回転期間と回転停止期間を交互に繰り返している。この実施の形態では、調理メニュー毎の具材と液体スープの混合物の種別や容量に応じて行う実験結果などに基づいて、具材が内鍋10の内壁に張り付かない攪拌ユニット11の単位時間あたりの回転数、連続回転期間、回転停止期間を決定する。これによって、具材が内鍋10内の側面に張り付くのを確実に防ぐことができる。
【0053】
また、上記調理メニュー選択手段100cにより選択された調理メニューに応じて、攪拌制御手段100bは、攪拌ユニット11の連続回転期間に対する回転停止期間の比率を補正することによって、調理メニューにより異なる具材と液体スープの種類に適した攪拌ユニット11の連続回転期間と回転停止期間を用いることができる。
【0054】
この実施の形態では、選択された調理メニューに応じて、攪拌ユニット11の連続回転期間に対する回転停止期間の比率を補正する手段として、調理メニュー毎に予め設定された比率で攪拌ユニット11の連続回転期間と回転停止期間を調理メニュー記憶手段100dに登録して、調理メニュー記憶手段100dに登録された複数の調理メニューから所望の調理メニューが選択されたときに、その調理メニューに対応する攪拌ユニット11の連続回転期間と回転停止期間で攪拌する。
【0055】
なお、上記実施の形態では、攪拌制御手段100bにより駆動モータ24を制御して、攪拌ユニット11の連続回転期間と回転停止期間を交互に繰り返すときに、攪拌ユニット11を同一方向に回転させたが、攪拌ユニット11を少なくとも1回は逆回転させてもよい。この場合、ブロック状具材と液体スープの混合物に反動をつけることができ、より均一に混ぜることができる。」
(ク) 「
[図:0001437363000003.jpg]
」(【図2】)
(ケ) 「
[図:0001437363000004.jpg]
」(【図4】)
(コ) 「
[図:0001437363000005.jpg]
」(【図5】)
(サ) 「
[図:0001437363000006.jpg]
」(【図6】)
(シ) 「
[図:0001437363000007.jpg]
」(【図7】)
(ス) 「
[図:0001437363000008.jpg]
」(【図8】)
イ 甲第2号証の認定事項
(ア) 上記ア(ア)、(イ)、(エ)及び(オ)ないし(キ)の記載並びに上記ア(ク)、(ケ)ないし(シ)の図示内容からみて、被加熱物を攪拌する攪拌ユニット11を備えるものであると認められる。
(イ) 上記ア(イ)、(エ)、(オ)及び(キ)の記載並びに上記ア(ク)ないし(シ)の図示内容からみて、攪拌ユニット11を回転させる駆動モータ24を備えるものであると認められる。
(ウ) 上記ア(イ)、(エ)、(オ)及び(キ)の記載並びに上記ア(ク)ないし(シ)の図示内容からみて、攪拌ユニット11が正回転と停止を交互に繰り返すように駆動モータ24の回転を制御する攪拌制御手段100bを備えるものであると認められる。
(エ) 上記ア(イ)、(エ)、(オ)及び(キ)の記載並びに上記ア(ク)ないし(シ)の図示内容からみて、攪拌制御手段100bは、肉じゃがや筑前煮のようなブロック状具材と液体スープとの混合物を加熱する調理において、攪拌ユニット11が、少なくとも1回は逆回転させるように、駆動モータ24の回転を制御するものであると認められる。
(オ) 上記ア(ア)ないし(キ)の記載並びに上記ア(ク)、(ケ)、(サ)及び(シ)の図示内容からみて、攪拌ユニット11は、被加熱物を収容する内鍋10を収納する炊飯器本体1の上部に開閉自在に取り付けられた蓋体2が備えている内蓋22の内鍋10側に取り付けるマルチメニュー炊飯器であると認められる。
ウ 甲第2号証に記載された発明
上記アの記載事項及び上記イの認定事項からみて、甲第2号証には、発明の実施の一形態として、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「 被加熱物を攪拌する攪拌ユニット11と、
攪拌ユニット11を回転させる駆動モータ24と、
攪拌ユニット11が正回転と停止を交互に繰り返すように駆動モータ24の回転を制御する攪拌制御手段100bと、を備え、
攪拌制御手段100bは、肉じゃがや筑前煮のようなブロック状具材と液体スープとの混合物を加熱する調理において、攪拌ユニット11が、少なくとも1回は逆回転させるように、駆動モータ24の回転を制御し、
攪拌ユニット11は、被加熱物を収容する内鍋10を収納する炊飯器本体1の上部に開閉自在に取り付けられた蓋体2が備えている内蓋22の内鍋10側に取り付けるマルチメニュー炊飯器。」
(3) 甲第3号証に記載された発明
ア 甲第3号証の記載事項
本件特許出願の原出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第3号証には、以下のような記載がある。
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、調理対象となる食材等の被撹拌物を加熱下で撹拌しながら調理する攪拌調理装置に係り、特に、流動性の乏しい被撹拌物であっても、混合効率の低下、焦げ付きや変質を未然に回避可能な攪拌調理装置に関する。 【背景技術】
【0002】
従来、加熱釜内に垂下させた攪拌駆動軸の下端部に、加熱釜の内面に摺接する攪拌羽根を軸周りに回動自在に枢着し、この攪拌羽根で加熱釜内の食材等の被撹拌物を加熱下で攪拌することによって、被撹拌物を焦げ付かせないようにする攪拌調理装置が知られている。
【0003】
こうした攪拌調理装置の一例として、本願出願人は、攪拌駆動軸の下端部に外周方向に延びる支持腕を軸周りに回動自在に配設し、この支持腕の先端部に軸線方向に対し被攪拌物を加熱釜の外周方向に移動させるように所定角度傾斜させた少なくとも1つの攪拌羽根を装着し、攪拌羽根の下端部を加熱釜内底面形状に沿わせて形成すると共に、攪拌駆動軸に、攪拌羽根の下端部を加熱釜内底面に摺接させる方向に付勢する付勢手段を設け、攪拌羽根に独自の軌跡をもって攪拌運動を行わせるように構成した攪拌調理装置を提案している(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に係る技術によれば、被撹拌物が加熱釜における特定箇所に偏在し攪拌残しが生じる事態を効果的に回避することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る従来技術では、例えばあんなどの比較的流動性の乏しい被撹拌物を加熱下で撹拌すると、被撹拌物が攪拌羽根や攪拌駆動軸等と連廻りして混合効率の低下を招来するおそれがあった。
【0006】
また、流動性の乏しい被撹拌物は、その大半が攪拌羽根によって掻き取られるが、この掻き取りの際に、一部が加熱釜の内底面に膜状に残留する場合がある。この場合、かかる残留物が焦げ付いてしまうおそれがあった。
【0007】
そして、前述した流動性の乏しい被撹拌物の掻き取りの際に、攪拌羽根の裏面側に被撹拌物が付着する場合がある。かかる攪拌羽根の裏面側では、そこに付着した被撹拌物の入れ替わりはほどんどなく、加熱下で長時間にわたり滞留する。このため、付着滞留した被撹拌物が加熱撹拌の進行に伴って固形物等に変質するおそれがあった。」
(イ) 「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、流動性の乏しい被撹拌物では、混合効率の低下を招来すると共に、焦げ付きや変質が生じがちであった点である。」
(ウ) 「【発明の効果】
【0011】
本発明に係る攪拌調理装置では、駆動制御部は、攪拌羽根の回動方向を正転方向及び反転方向に切り換える駆動制御を行い、攪拌羽根は、その正転回動時には、被攪拌物を加熱容器の底部から掻き取ってすくい上げる攪拌動作を行う一方、その反転回動時には、加熱容器の底部から浮上しつつ被攪拌物を全体的に底部側へと押し付けるように動作する。
【0012】
このように、被攪拌物を加熱容器の底部から掻き取ってすくい上げる攪拌動作と、攪拌羽根が加熱容器の底部から浮上しつつ被攪拌物を全体的に底部側へと押し付ける動作と、が交互に行われる結果として、水平方向のみならず、垂直方向における被攪拌物の混合を効果的に促進することができる。従って、流動性の乏しい被撹拌物であっても、その混合効率を高水準に維持することができる。
【0013】
また、正転回動での掻き取り時に底部に残留した被攪拌物では、反転回動での押し付け動作時に新たな被攪拌物がその上に押し付けられる。この結果、前記残留した被攪拌物では、新たな被攪拌物を通して水分移動及び熱移動が起こり、その過熱が未然に回避されるのみならず、水分吸収によって膨軟状態となって、次回の正転回動での掻き取り時に容易に掻き取られる。従って、被攪拌物の焦げ付きを未然に回避するとともに、被攪拌物の均一な加熱処理を遂行することができる。
【0014】
そして、攪拌羽根の回転方向を正転方向及び反転方向に交互に切り換えることによって、攪拌羽根の表裏両面が被撹拌物に対する接触作用面として利用され、攪拌羽根の裏面側に被撹拌物が長時間にわたり付着滞留する事態を効果的に抑制することが可能となる結果として、被撹拌物の変質を確実かつ高水準をもって抑制することができる。」
(エ) 「【発明を実施するための形態】
【0016】
流動性の乏しい被撹拌物であっても、混合効率の低下、焦げ付きや変質を未然に回避可能な攪拌調理装置を得るといった目的を、支持腕に配設された攪拌羽根に、その正転回動時には、被攪拌物を加熱容器の底部から掻き取ってすくい上げる攪拌動作を行わせる一方、その反転回動時には、加熱容器の底部から浮上しつつ被攪拌物を全体的に底部側へと押し付ける動作を交互に行わせることによって実現した。」
(オ) 「【0018】
本発明実施例1に係る攪拌調理装置1は、流動性のある被撹拌物の加熱撹拌に用いられ、特に、例えば含水粉体やあん等の粉体或いは固体などの流動性の乏しい被撹拌物質、又は塑性流動する物質等の加熱撹拌に好適に用いられるものである。ただし、流動性の良い被撹拌物に適用してもよい。
【0019】
本発明実施例1に係る攪拌調理装置1は、図1に示すように、調理対象となるあんなどの食材(本発明の「被撹拌物」に相当する。)を収容し加熱可能な加熱釜(本発明の「加熱容器」に相当する。)2を備える。」
(カ) 「【0021】
加熱釜2の上方には、筐体カバー3によって覆われたモータMの回転駆動力を減速する減速機(不図示)が設けられており、この減速機の出力軸に固定されたチェーンスプロケット(不図示)に無端チェーン4が掛けられ、無端チェーン4が駆動側の回転機構である駆動伝達軸5のチェーンスプロケット6に噛合されている。
【0022】
駆動伝達軸5には主動歯車7が固着されており、この主動歯車7と噛合する従動歯車8が太陽軸9の上端部9aに固着されている。
【0023】
太陽軸9は、カバー3の先端下部に軸受10を介して回転自在に支持されている。また、太陽軸9の下端部には太陽歯車11が固定され、遊星軸12の先端部に取付けた遊星歯車13と噛合されている。
【0024】
遊星軸12は、太陽軸9に固定された回動部材14に回転自在に支持されると共に、遊星軸12と軸線を一致させた攪拌駆動軸15が連結機構16によって取り外し自在に連結され、斜め上方から加熱釜2内に向けて傾斜されて配設されている。具体的には、遊星軸12は、鉛直方向に対して所定の傾斜角度γ、好ましくは15~25度だけ傾斜配置されている。
【0025】
攪拌駆動軸15は、後述する攪拌羽根19a,19bの下端部を加熱釜2の内底面側に付勢するためのコイルスプリング(弾性部材)16aが内装された連結軸15aと、連結軸15aの下端部に装着したベアリングやローラ等の摺動部材15dを介して、連結軸15aの軸線方向に摺動自在に嵌合される中空軸管15bと、から構成されている。
【0026】
弾性部材16a、摺動部材15d、及び中空軸管15bによって、攪拌羽根19a,19bの下端部を加熱釜2の内底面側に付勢する付勢手段16Aが構成されている。
【0027】
中空軸管15bの下端部15cには支持腕17が配設されている。この支持腕17は、軸線方向のほぼ中央部が枢支ピン18によって枢支され、この枢支点をもって上下方向にシーソー揺動自在に枢着されている。支持腕17は、攪拌駆動軸15における軸回り方向の回動が規制されている。従って、攪拌駆動軸15が軸回り方向に回転動作すると、これに連れて支持腕17が回転動作するように構成されている。
【0028】
支持腕17の左,右両先端部17a,17bには、図2(A)に示すように、例えば耐熱性の優れた樹脂製の攪拌羽根19a,19bが、取付金具20aによってそれぞれ固定されている。なお、図1、図2(A),(B)では、攪拌羽根19a,19bの大きさが相互に異なる態様を例示しているが、本発明はこれに限定されることなく、攪拌羽根19a,19bの大きさが同じであってもよい。」
(キ) 「【0034】
さて、攪拌羽根19a,19bが配設された支持腕17の回転方向を、正転方向及び反転方向に交互に切り換える駆動制御を行うために、モータMには、その回転方向及び回転速度を制御するための駆動制御部25が接続されている。この駆動制御部25には、食材の重量を検出可能な重量センサ27が接続されている。」
(ク) 「【0036】
駆動制御部25は、被攪拌物の粘性に基づいて攪拌羽根19を反転回動させる頻度を変更し、当該変更した頻度に従って攪拌羽根19を正転方向及び反転方向に交互に回動させる駆動制御を行うように構成されている。具体的には、駆動制御部25は、被攪拌物の粘性が低い時には攪拌羽根19を正転方向(一方向のみ)に回動させる駆動制御を行う一方、被攪拌物の粘性が所定の閾値を超えた時(具体的には、重量センサ27の重量検出値が予め定められる所定値を超えた時)には攪拌羽根19を正転方向及び反転方向に交互に回動させる駆動制御を行うように構成されている。 [本発明実施例1に係る攪拌調理装置の動作] 次に、本発明実施例1に係る攪拌調理装置の動作について説明する。
【0037】
初めに、正転方向での食材の攪拌混合動作について説明する。調理対象となるあんなどの食材(被撹拌物)を加熱釜2内に投入しておき、ガス等の加熱手段によって加熱釜2を加熱しつつ、駆動制御部25からの駆動制御信号(正転指令)に従ってモータMを駆動させて、無端チェーン4を介してその回転駆動力を駆動伝達軸5に伝達させる。
【0038】
駆動伝達軸5の駆動力は、太陽軸9の従動歯車8を介して太陽歯車11に伝達され、太陽歯車11の外周に噛合した遊星歯車13及び遊星軸12はそれぞれが公転及び自転を繰り返しながら、遊星軸12の下端に連結された攪拌駆動軸15を正転方向に回転駆動する。
【0039】
これにより、攪拌駆動軸15の下端部に支持腕17を介して配設された攪拌羽根19a,19bを正転方向(図3の実線矢印で示す方向を参照)に公転、自転させながら移動させ、加熱釜2内の食材を加熱下で攪拌混合する。」
(ケ) 「【0046】
一方、駆動制御部25からの駆動制御信号(反転指令)に従ってモータMが反転方向に駆動すると、無端チェーン4を介してその回転駆動力が駆動伝達軸5に伝達される。」
(コ) 「【0048】
これにより、攪拌駆動軸15の下端部に支持腕17を介して配設された攪拌羽根19a,19bを反転方向(図3の点線矢印で示す方向を参照)に公転、自転させながら移動させる。」
(サ) 「【0052】
従って、正転回動時における各攪拌羽根19a,19bは、食材を加熱釜2の底部から掻き取ってすくい上げるとともに加熱釜2の外周方向へと流動させる攪拌動作を行う一方で、反転回動時における各攪拌羽根19a,19bは、加熱釜2の底部から浮上しつつ食材の大半を全体的に加熱釜2の底部側へと押し付けるように動作する。
【0053】
次いで、支持腕17の回転方向が、上述した反転方向から正転方向へと切り換えられると、反転回動時における各攪拌羽根19a,19bには、ナガレ角α及びスクイ角βに起因した食材との相乗的な相互作用によって、加熱釜2の内底面から離れる方向に強い浮上力が働いていたのに対し、正転回動時における各攪拌羽根19a,19bには、ナガレ角α及びスクイ角βに起因した食材との相乗的な相互作用によって、反転回動時とは逆に、加熱釜2の内底面側へと向かう強い潜行力が働く結果として、下方側の食材を削りながら加熱釜2の内底面(底部)へと到達する。
【0054】
加熱釜2の底部に到達した各攪拌羽根19a,19bは、その正転回動時において、食材を加熱釜2の底部から掻き取ってすくい上げるとともに加熱釜2の外周方向へと流動させる攪拌動作を行い、以下、前述した攪拌動作と押し付け動作を交互に(周期的に)繰り返すことになる。 [実施例1の効果] 実施例1の効果の説明に先だって、食材の加熱攪拌時における課題に言及する。例えばあん煉りは、煮熟した小豆と糖を加熱・混煉・蒸発・濃縮する操作であるが、固いあんの場合、均一な混合が難しく、焦げ付きを生じやすい。特に、固いあんのあん煉りを、平釜に撹拌機を組み合わせた攪拌調理装置で行う場合、撹拌羽根を回すと、あんが内底面を滑り攪拌羽根と共に回る「連廻り」現象を生じる。」
(シ) 「【0063】
ところで、本発明実施例に係る反転回動では、混合効率向上の観点からの貢献度はきわめて大きいところ、反転回動時には攪拌羽根19a,19bが食材の上部に浮上することから、混合それ自体への貢献度はあまり高くない。従って、加熱攪拌工程全体としての混合効率向上を踏まえて、正転回動に係る運転時間と、反転回動に係る運転時間との比率を、どのように決定すべきか、が問題となる。
【0064】
そうした観点から、駆動制御部25は、重量センサ27で検出取得した食材の粘性情報に基づいて攪拌羽根19を反転回動させる頻度(正転回動に係る運転時間と、反転回動に係る運転時間との比率)を変更し、当該変更した頻度に従って攪拌羽根19を正転方向及び反転方向に交互に回動させる駆動制御を行う構成を採用してもよい。
【0065】
具体的には、例えば、重量センサ27で検出取得した食材の粘性情報に基づいて、加熱攪拌工程の初期である(被攪拌物の粘性が低い)旨の判定が下されたとき、駆動制御部25は、攪拌羽根19を正転方向(一方向のみ)に回動させる駆動制御を行う。一方、重量センサ27で検出取得した食材の粘性情報に基づいて、加熱攪拌工程の後期である(被攪拌物の粘性が予め定められる所定値を超えた)旨の判定が下されたとき、駆動制御部25は、正転を4回行った後、反転を2回行うといったように、支持腕17の回転方向を正転方向及び反転方向に交互に切り換える駆動制御を行う。なお、正転回数に対する反転回数の頻度は、食材の粘性、煮詰まり状態、混合状態などを参酌して、加熱攪拌工程の進捗状況に従って適宜変更してゆく構成を採用してもよい。」
(ス) 「
[図:0001437363000009.jpg]
」(【図1】)
(セ) 「
[図:0001437363000010.jpg]
」(【図3】)
イ 甲第3号証の認定事項
(ア) 上記ア(ア)ないし(シ)の記載並びに上記ア(ス)及び(セ)の図示内容からみて、あんなどの食材(被攪拌物)を攪拌する攪拌羽根19を備えるものであると認められる。
(イ) 上記ア(ア)ないし(シ)の記載並びに上記ア(ス)及び(セ)の図示内容からみて、攪拌羽根19を回転駆動するモータMを備えるものであると認められる。
(ウ) 上記ア(ア)ないし(シ)の記載並びに上記ア(ス)及び(セ)の図示内容からみて、攪拌羽根19が正転方向に回動させる正転回動と反転方向に回動させる反転回動を交互に(周期的に)繰り返すようにモータMを制御するための駆動制御部25と、を備え攪拌羽根19が正転方向に回動させる正転回動と反転方向に回動させる反転回動を交互に(周期的に)繰り返すようにモータMを制御するための駆動制御部25を備えるものであると認められる。
(エ) 上記ア(ア)ないし(シ)の記載並びに上記ア(ス)及び(セ)の図示内容からみて、駆動制御部25は、流動性のある被攪拌物の加熱攪拌において、攪拌羽根19が、正転方向に回動させるのと交互に回動させる反転方向に、正転を4回行った後反転を2回行うようにモータMの駆動制御を行うものであると認められる。
(オ) 上記ア(オ)ないし(サ)の記載並びに上記ア(ス)及び(セ)の図示内容からみて、攪拌羽根19は、あんなどの食材(被攪拌物)を収容し加熱可能な加熱釜2の上方に設けられた筐体カバー3によって覆われたモータMの回転駆動力を減速する減速機に連結されている攪拌調理装置であると認められる。
ウ 甲第3号証に記載された先願発明
上記アの記載事項及び上記イの認定事項からみて、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「 あんなどの食材(被攪拌物)を攪拌する攪拌羽根19と、
攪拌羽根19を回転駆動するモータMと、
攪拌羽根19が正転方向に回動させる正転回動と反転方向に回動させる反転回動を交互に(周期的に)繰り返すようにモータMを制御するための駆動制御部25と、を備え、
駆動制御部25は、流動性のある被攪拌物の加熱攪拌において、攪拌羽根19が、正転方向に回動させるのと交互に回動させる反転方向に、正転を4回行った後反転を2回行うようにモータMの駆動制御を行い、
攪拌羽根19は、あんなどの食材(被攪拌物)を収容し加熱可能な加熱釜2の上方に設けられた筐体カバー3によって覆われたモータMの回転駆動力を減速する減速機に連結されている攪拌調理装置。」
4 理由1(拡大先願)について
(1)本件発明1について
ア 対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲1先願発明とを対比する。
a 甲1先願発明における「被調理物」は本件発明1における「被加熱物」に相当し、同様に、「攪拌する」ことは「撹拌する」ことに相当する。
そうすると、甲1先願発明における「被調理物を攪拌する攪拌体6」は本件発明1における「被加熱物を撹拌する撹拌体」に相当する。
b 甲1先願発明における「回転させる」ことは本件発明1における「回転させる」ことに相当する。
そうすると、甲1先願発明における「攪拌体6を回転させる駆動モーター14」は本件発明1における「撹拌体を回転させるモータ」に相当する。
c 甲1先願発明における「正回転方向」は本件発明1における「正規の回転方向」に相当することから、甲1先願発明における「正回転方向にN回転させる」ことは本件発明1における「正規の回転方向への回転と停止を複数回繰り返す」ことと「正規の回転方向への回転を複数回繰り返す」ことの限りにおいて一致し、甲1先願発明における「駆動モーター14の回転を制御する」ことは本件発明1における「モータの回転を制御する」ことに相当する。
そうすると、甲1先願発明における「攪拌体6を正回転方向にN回転させるように駆動モーター14の回転を制御する制御部50」は本件発明1における「撹拌体が正規の回転方向への回転と停止を複数回繰り返すようにモータの回転を制御するモータ制御部」と「撹拌体が正規の回転方向への回転を複数回繰り返すようにモータの回転を制御するモータ制御部」の限りで一致する。
d 甲1先願発明における「正回転方向に回転」することは本件発明1における「正規の回転方向への回転」に相当し、同様に、「逆回転方向」は「正規の回転方向とは逆の回転方向」に相当することから、甲1先願発明における「正回転方向に回転しその後正回転と逆回転を交互に組み合わせて逆回転方向に」は本件発明1における「正規の回転方向への回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に」と「正規の回転方向とは逆の回転方向に」の限りにおいて一致する。また、甲1先願発明における「正回転方向の回転数であるN回」は本件発明1における「正規の回転方向に回転する量」に相当することから、甲1先願発明における「正回転方向の回転数であるN回よりも少ない回転数だけM回転させる」ことは本件発明1における「正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転する」ことに相当し、そして、甲1先願発明における「正回転方向の回転数であるN回よりも少ない回転数だけM回転させるように駆動モーター14の回転を制御」することは本件発明1における「正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御」することに相当する。
そうすると、甲1先願発明における「正回転方向に回転しその後正回転と逆回転を交互に組み合わせて逆回転方向に、正回転方向の回転数であるN回よりも少ない回転数だけM回転させるように駆動モーター14の回転を制御」することは本件発明1における「正規の回転方向への回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御」することと「正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御」することの限りにおいて一致する。
e そして、甲1先願発明における「加熱攪拌調理器」は本件発明1における「加熱調理器」と上記の限りにおいて一致する「加熱調理器」に相当する。
f 以上より、本件発明1は甲1先願発明と以下の点で一致及び相違している。
<一致点>
「 被加熱物を撹拌する撹拌体と、
撹拌体を回転させるモータと、
撹拌体が正規の回転方向への回転を複数回繰り返すようにモータの回転を制御するモータ制御部と、を備え、
モータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御する加熱調理器。」
<相違点1-1>
「モータ制御部」について、本件発明1のモータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向への回転「と停止」を複数回繰り返すようにモータの回転を制御するものであるのに対し、甲1先願発明の制御部50(モータ制御部)は、攪拌体6(撹拌体)を正回転方向(正規の回転方向)にN回転させる(への回転を複数回繰り返す)ように駆動モーター14(モータ)の回転を制御する(回転を制御する)ものではあるものの、本件発明1のような「停止」について特定されていない点。
<相違点1-2>
「モータ制御部」について、本件発明1のモータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向への「回転開始前に」正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御するものであるのに対し、甲1先願発明の制御部50(モータ制御部)は、煮込み調理において、攪拌体6(撹拌体)が、正回転方向に回転(正規の回転方向への回転)し「その後」正回転と逆回転を交互に組み合わせて逆回転方向(正規の回転方向とは逆の回転方向)に、正回転方向の回転数であるN回よりも少ない回転数だけM回転させるように駆動モーター14の回転を制御(正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御)するものである点。
(イ)判断
事案に鑑みて相違点1-2から検討する。
上記(ア)のとおり、甲1先願発明には、相違点1-2に係る本件発明1のように、モータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向への「回転開始前に」正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御することは記載も示唆もされていない。
また、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明ないし技術的事項が仮に周知のものであったとしても、いずれの文献にも、相違点1-2に係る本件発明1のように、モータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向への「回転開始前に」正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御することは記載も示唆もされていない。
そうすると、相違点1-1について検討するまでもなく、本件発明1は甲1先願発明と同一ではない。
イ 小括
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された先願発明と同一ではない。
(2)本件発明2について
本件発明2及び3は、請求項1を引用する発明であることから、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであり、上記(1)と同様に、本件発明2及び3は甲1発明と同一ではない。
したがって、本件発明2及び3は、甲第1号証に記載された先願発明と同一ではない。
5 理由2(甲第2号証に記載された発明を主引用発明とした場合の進歩性欠如)について
(1)本件発明1について
ア 対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a 甲2発明における「被加熱物」は本件発明1における「被加熱物」に相当し、同様に、「攪拌する」ことは「撹拌する」ことに相当する。
そうすると、甲2発明における「被加熱物を攪拌する攪拌ユニット11」は本件発明1における「被加熱物を撹拌する撹拌体」に相当する。
b 甲2発明における「回転させる」ことは本件発明1における「回転させる」ことに相当する。
そうすると、甲2発明における「攪拌ユニット11を回転させる駆動モータ24」は本件発明1における「撹拌体を回転させるモータ」に相当する。
c 甲2発明における「正回転」は本件発明1における「正規の回転方向への回転」に相当し、同様に、「停止」は「停止」に、「交互に繰り返す」ことは「複数回繰り返す」ことに、それぞれ相当することから、甲2発明における「正回転と停止を交互に繰り返す」ことは本件発明1における「正規の回転方向への回転と停止を複数回繰り返す」ことに相当し、甲2発明における「駆動モータ24の回転を制御する」ことは本件発明1における「モータの回転を制御する」ことに相当する。
そうすると、甲2発明における「攪拌ユニット11が正回転と停止を交互に繰り返すように駆動モータ24の回転を制御する攪拌制御手段100b」は本件発明1における「撹拌体が正規の回転方向への回転と停止を複数回繰り返すようにモータの回転を制御するモータ制御部」に相当する。
d 甲2発明における「逆回転」は本件発明1における「正規の回転方向とは逆の回転」に相当することから、甲2発明における「少なくとも1回は逆回転させるように」は本件発明1における「正規の回転方向への回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に」と「正規の回転方向とは逆の回転方向に」の限りにおいて一致する。そして、甲2発明における「駆動モータ24の回転を制御」することは本件発明1における「正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御」することと「モータの回転を制御」することの限りで一致する。
そうすると、甲2発明における「攪拌制御手段100bは、攪拌ユニット11が、少なくとも1回は逆回転させるように、駆動モータ24の回転を制御」することは本件発明1における「モータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向への回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御」することと「モータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向とは逆の回転方向に、モータの回転を制御」することの限りで一致する。
e そして、甲2発明における「マルチメニュー炊飯器」は本件発明1における「加熱調理器」と上記の限りにおいて一致する「加熱調理器」に相当する。
f 以上より、本件発明1は甲2発明と以下の点で一致及び相違している。
<一致点>
「 被加熱物を撹拌する撹拌体と、
撹拌体を回転させるモータと、
撹拌体が正規の回転方向への回転と停止を複数回繰り返すようにモータの回転を制御するモータ制御部と、を備え、
モータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向とは逆の回転方向に、モータの回転を制御する加熱調理器。」
<相違点2>
「モータ制御部」について、本件発明1のモータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向への「回転開始前に」正規の回転方向とは逆の回転方向に「正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するように」モータの回転を制御するものであるのに対し、甲2発明の攪拌制御手段100b(モータ制御部)は、攪拌ユニット11(撹拌体)が、少なくとも1回は逆回転させるように(正規の回転方向とは逆の回転方向に)、駆動モータ24(モータ)の回転を制御する(回転を制御する)ものではあるものの、本件発明1のように正規の回転方向への「回転開始前に」正規の回転方向とは逆の回転方向に「正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するように」について特定されていない点。
(イ)判断
相違点2について検討する。
甲第3号証には、上記3の甲3発明が記載されている。
そして、甲3発明における「攪拌羽根19」は本件発明1における「撹拌体」に相当し、「正転方向に回動させる」ことは「正規の回転方向への回転」に、「反転方向」は「正規の回転方向とは逆の回転方向」に、それぞれ相当することから、甲3発明における「正転方向に回動させるのと交互に回動させる反転方向に」は本件発明1における「正規の回転方向への回転終了後または回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に」と「正規の回転方向とは逆の回転方向に」の限りにおいて一致する。そして、甲3発明における「正転を4回」は本件発明1における「正規の回転方向に回転する量」に相当し、同様に、「反転を2回行う」ことは「正規の回転方向に回転する量りも小さい量回転する」ことに、「モータM」は「モータ」に、「モータMの駆動制御を行」うことは「モータの回転を制御」することに、それぞれ相当することから、甲3発明における「正転を4回行った後反転を2回行うようにモータMの駆動制御を行」うことは本件発明1における「正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御」することに相当する。
そうすると、甲3発明のうち、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に関連する事項、すなわち、甲3発明における「駆動制御部25は、攪拌羽根19が、正転方向に回動させるのと交互に回動させる反転方向に、正転を4回行った後反転を2回行うようにモータMの駆動制御を行」うことを、本件発明1の用語を用いて整理すると、以下のようになる。
「モータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御すること。」
しかしながら、甲第3号証には、相違点2に係る本件発明1のように、モータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向への「回転開始前に」正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御することは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲2発明において、加熱調理機という関連する技術分野に属し(甲第2号証の段落【0001】、甲第3号証の段落【0001】)被加熱物を良好に混合し鍋の側底面のこげを抑えるという共通する課題及び機能(甲第2号証の段落【0005】及び【0007】ないし【0014】、甲第3号証の段落【0009】及び【0011】ないし【0014】)を有する甲3発明における上記事項を採用したとしても、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものであるとはいえない。
イ 小括
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、請求項1を引用する発明であることから、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであり、上記(1)と同様に、本件発明2及び3は、甲2発明及び甲3発明に基いて、当業者が発明をすることができたものではない
したがって、本件発明2及び3は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 理由2(甲第3号証に記載された発明を主引用発明とした場合の進歩性欠如)について
(1)本件発明1について
ア 対比・判断
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
a 甲3発明における「あんなどの食材(被攪拌物)」は本件発明1における「被加熱物」に相当し、同様に、「攪拌する」ことは「撹拌する」ことに相当する。
そうすると、甲3発明における「あんなどの食材(被攪拌物)を攪拌する攪拌羽根19」は本件発明1における「被加熱物を撹拌する撹拌体」に相当する。
b 甲3発明における「回転駆動する」ことは本件発明1における「回転させる」ことに相当する。
そうすると、甲3発明における「攪拌羽根19を回転駆動するモータM」は本件発明1における「撹拌体を回転させるモータ」に相当する。
c 甲3発明における「正転方向に回動させる正転回動」は本件発明1における「正規の回転方向への回転」に相当し、同様に、「交互に(周期的に)繰り返す」ことは「複数回繰り返す」ことに相当することから、甲3発明における「正転方向に回動させる正転回動と反転方向に回動させる反転回動を交互に(周期的に)繰り返す」ことは本件発明1における「正規の回転方向への回転と停止を複数回繰り返す」ことと「正規の回転方向への回転を複数回繰り返す」の限りで一致し、甲3発明における「モータMを制御する」ことは本件発明1における「モータの回転を制御する」ことに相当する。
そうすると、甲3発明における「攪拌羽根19が正転方向に回動させる正転回動と反転方向に回動させる反転回動を交互に(周期的に)繰り返すようにモータMを制御するための駆動制御部25」は本件発明1における「撹拌体が正規の回転方向への回転と停止を複数回繰り返すようにモータの回転を制御するモータ制御部」と「撹拌体が正規の回転方向への回転を複数回繰り返すようにモータの回転を制御するモータ制御部」の限りで一致する。
d 甲3発明における「反転方向」は本件発明1における「正規の回転方向とは逆の回転」に相当することから、甲3発明における「正転方向に回動させるのと交互に回動させる反転方向に」は本件発明1における「正規の回転方向への回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に」と「正規の回転方向とは逆の回転方向に」の限りにおいて一致する。そして、甲3発明における「正転を4回」は本件発明1における「正規の回転方向に回転する量」に相当し、同様に、「反転を2回行う」ことは「正規の回転方向に回転する量りも小さい量回転する」ことに、「モータM」は「モータ」に、「モータMの駆動制御を行」うことは「モータの回転を制御」することに、それぞれ相当することから、甲3発明における「正転方向に回動させるのと交互に回動させる反転方向に、正転を4回行った後反転を2回行うようにモータMの駆動制御を行」することは本件発明1における「正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御」することに相当する。
そうすると、甲3発明における「駆動制御部25は、攪拌羽根19が、正転方向に回動させるのと交互に回動させる反転方向に、正転を4回行った後反転を2回行うようにモータMの駆動制御を行」することは本件発明1における「モー タ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向への回転開始前に正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御」することと「モータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御」することの限りにおいて一致する。
e そして、甲3発明における「攪拌調理装置」は本件発明1における「加熱調理器」と上記の限りにおいて一致する「加熱調理器」に相当する。
f 以上より、本件発明1は甲3発明と以下の点で一致及び相違している。
<一致点>
「 被加熱物を撹拌する撹拌体と、
撹拌体を回転させるモータと、
撹拌体が正規の回転方向への回転を複数回繰り返すようにモータの回転を制御するモータ制御部と、を備え、
モータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御する加熱調理器。」
<相違点3-1>
「モータ制御部」について、本件発明1のモータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向への回転「と停止」を複数回繰り返すようにモータの回転を制御するものであるのに対し、甲3発明の駆動制御部25(モータ制御部)は、攪拌羽根19(撹拌体)が正転方向に回動させる正転回動(正規の回転方向への回転)と反転方向に回動させる反転回動を交互に(周期的に)繰り返す(複数回繰り返す)ようにモータM(モータ)を制御するための(の回転を制御する)ものではあるものの、本件発明1のような「停止」について特定されていない点。
<相違点3-2>
「モータ制御部」について、本件発明1のモータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向への「回転開始前に」正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御するものであるのに対し、甲3発明の駆動制御部25(モータ制御部)は、攪拌羽根19(撹拌体)が、正転方向に回動させるのと交互に回動させる反転方向に、正転を4回行った(正規の回転方向への回転)「後」反転を(正規の回転方向とは逆の回転方向に)2回行うようにモータMの駆動制御を行う(正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御する)ものである点。
(イ)判断
事案に鑑みて相違点3-2から検討する。
甲第2号証には、上記2の甲2発明が記載されている。
そして、上記5(1)ア(ア)dを踏まえると、甲2発明のうち、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項に関連する事項、すなわち、甲2発明における「攪拌ユニット11が正回転と停止を交互に繰り返すように駆動モータ24の回転を制御する攪拌制御手段100b」「を備え」ることを、本件発明1の用語を用いて整理すると、以下のようになる。
「撹拌体が正規の回転方向への回転と停止を複数回繰り返すようにモータの回転を制御するモータ制御部を備えること。」
しかしながら、甲第2号証には、相違点3-2に係る本件発明1のように、モータ制御部は、撹拌体が、正規の回転方向への「回転開始前に」正規の回転方向とは逆の回転方向に、正規の回転方向に回転する量よりも小さい量回転するようにモータの回転を制御することは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲3発明において、加熱調理機という関連する技術分野に属し(甲第2号証の段落【0001】、甲第3号証の段落【0001】)被加熱物を良好に混合し鍋の側底面のこげを抑えるという共通する課題及び機能(甲第2号証の段落【0005】及び【0007】ないし【0014】、甲第3号証の段落【0009】及び【0011】ないし【0014】)を有する甲2発明における上記事項を採用したとしても、相違点3-2に係る本件発明1の発明特定事項に想到することは、当業者が容易になし得るものであるとはいえない。
イ 小括
したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、請求項1を引用する発明であることから、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであり、上記(1)と同様に、本件発明2及び3は、甲3発明及び甲2発明に基いて、当業者が発明をすることができたものではない。
したがって、本件発明2及び3は、甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1ないし3に係る発明は、取消理由通知に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700275