特許異議申立
2025-700048
プロピレン樹脂組成物及び成形体
- 審判番号
- 2025-700048
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-182151
- 登録番号
- 7518269
- 請求日
- 2025年01月08日
- 審決日
- 2025年09月25日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】住友化学株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人浅村特許事務所
- 【異議申立人】伊藤 千代子
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 藤原 浩子
- 審判官 岡谷 祐哉
- 分類
- P1651.121-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第113条第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7518269号発明「プロピレン樹脂組成物及び成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7518269号の請求項1~15に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7518269号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、令和5年10月23日を出願日とする特願2023-182151号に係るものであって、令和6年7月8日にその特許権の設定登録(請求項の数15)がされ、同月17日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、本件特許の請求項1~15に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
以降の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和7年1月 8日 特許異議申立書(申立人)の提出
同年3月19日 手続補正書(方式)(申立人)の提出
同年5月15日付け 取消理由通知
同年7月18日 意見書(特許権者)の提出
第2 本件発明
本件特許の請求項1~15に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件発明1」等という。)は、本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1~15の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
下記条件で測定した時のスウェル比が1.3以上2.0以下であるリサイクル樹脂と、バージンプロピレン重合体とを含む、プロピレン樹脂組成物であって、
前記リサイクル樹脂がプロピレン重合体を含むリサイクルプロピレン組成物であり、
前記バージンプロピレン重合体がヘテロファジックプロピレン重合材料である、
プロピレン樹脂組成物:
測定温度=220℃、オリフィスL/D=40mm/1mm、せん断速度=2432sec-1。
【請求項2】
リサイクル樹脂の含有量は、プロピレン樹脂組成物100重量部に対して30~90重量部である、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
バージンプロピレン重合体の含有量は、プロピレン樹脂組成物100重量部に対して10~70重量部である、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、含まれる重合体の合計が70重量%以上である、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
前記リサイクル樹脂がエチレン-α-オレフィン共重合体を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
前記プロピレン重合体として、プロピレン単独重合体及びヘテロファジックプロピレン重合材料からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項7】
前記リサイクル樹脂とは異なるリサイクル樹脂であって、請求項1に記載の条件で測定した時のスウェル比が1.3以上であるリサイクル樹脂(「異なるリサイクル樹脂」と称する)が含まれている、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項8】
前記異なるリサイクル樹脂としてエチレン-α-オレフィン共重合体を含む、請求項7に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項9】
前記バージンプロピレン重合体がプロピレン単独重合体を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項10】
前記バージンプロピレン重合体とは異なるバージンプロピレン重合体としてプロピレン単独重合体を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項11】
無機充填材をさらに含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項12】
前記無機充填材としてリサイクル無機充填材を含む、請求項11に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項13】
前記リサイクル樹脂以外の成分としてエチレン-α-オレフィン共重合体を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物を含む成形体。
【請求項15】
前記リサイクル樹脂と前記バージンプロピレン重合体とを溶融混練する工程を含む、請求項1~13のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物の製造方法。」
第3 特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載された申立理由の概要
申立人は、証拠方法として甲第1~15号証(以下「甲1」等という。)を提出し、特許異議申立書において、概要、以下の申立理由を主張する。
申立理由(甲1、3、4又は6を主引例とする進歩性:特許法第113条第2号)
請求項1~15に係る発明は、甲1、3、4又は6に記載された発明、及び、甲8~14に記載された技術事項に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<証拠方法 >
甲1、3、4、6、8~15は、いずれも本件特許の出願前に、日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である。
・甲1:国際公開2023/28524号
・甲2:甲2の翻訳文(特表2024-525699号公報)
・甲3:特開平11-320561号公報
・甲4:国際公開2022/104275号
・甲5:甲4の翻訳文(特表2023-549108号公報)
・甲6:国際公開2022/112029号
・甲7:甲6の翻訳文(特表2023-545216号公報)
・甲8:“リサイクルのための安定剤配合技術”,日本ゴム協会誌,1997年,第70巻,第1号,(35)7~(43)15頁
・甲9:“再利用プラスチックの添加剤と物性の研究(第2報)”,茨城県工業技術センター研究報告(第41号),掲載日2013.3.31,
https://www.itic.pref.ibaraki.jp/publication/research_h24/ (出力日2024年12月4日)
・甲10:“廃プラスチックのマテリアルリサイクル技術”,シャープ技報,2001年,第79号,10~15頁
・甲11:“自動車用ポリプロピレン複合材料”,技術誌住友化学,2010年,2010-II,4~17頁
https://www.sumitomo-chem.co.jp/re/report/2010/ (出力日2024年12月5日)
・甲12:特開2002-12734号公報
・甲13:特開2008-13757号公報
・甲14:“ブロー成形用新規PP素材の開発”,技術誌住友化学 2010年,2001-II,20~26頁
https://www.sumitomo-chem.co.jp/re/report/2001/ (出力日2024年12月5日)
・甲15:新版 ポリプロピレンハンドブック,日刊工業新聞社,2012年,106頁,107頁,158頁,159頁,378~383頁
2 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
取消理由通知書に記載した取消理由の概要は次のとおりである。
取消理由(甲3を主引例とする進歩性:特許法第113条第2号)
請求項1~15に係る発明は、甲3に記載された発明、及び、甲1、3、4、8、11~15に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第4 取消理由及びそれと同旨の申立理由についての判断
甲3を主引例とする取消理由と、それと同旨である甲3を主引例とする申立理由ついて、まとめて判断する。
1 甲3に記載された発明
(1)甲3には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
「【請求項1】 市場経年樹脂成形品,廃車樹脂成形品等の樹脂物品や、樹脂 成形品の製造工程で発生するバリおよび端材,成形不良品等の樹脂物品などからなる樹脂材料を回収した後、切断・粉砕・不純物除去等を行うことにより再利用可能な樹脂材料として再生処理を行う樹脂材料の再利用システムにおいて前記切断・粉砕・不純物除去等を行うことにより再利用可能な樹脂材料として再生処理を行うに際し、回収した樹脂材料を同族系樹脂材料毎に分類して前記同族系樹脂材料から構成される集合体として切断・粉砕・不純物除去等を行うことにより再利用可能な樹脂材料として再生処理を行うことを特徴とする樹脂材料の再生処理方法。
・・・
【請求項3】 同族系樹脂材料から構成される集合体が、ポリオレフィン(PO)系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂材料の再生 処理方法。
・・・
【請求項8】 PO系樹脂が、ポリプロピレン(PP)樹脂、PP樹脂とポ リエチレン(E)樹脂との共重合体またはエラストマー変性のPO樹脂、タルク,炭酸カルシウム,ガラス繊維等の補強材および/または無機質充填材を配合したPO樹脂、エラストマー変性のPO樹脂のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂材料の再生処理方法。」
「【従来の技術】 従来から行われている自動車用樹脂材料の再利用システムとしては、例えば、図3に示すような自動車用樹脂バンパーの再生処理方法がある。この再生処理方法は、各自動車メーカーが各々自社の樹脂バンパーを回収して再利用する方法である。
【0003】 この図3により再生処理工程を説明すると、まず、市場経年樹脂成形品(1)や廃車樹脂成形品(2)などのうちから樹脂製バンパー(24)を工程(5)に おいて回収し、次いで、回収した樹脂製バンパー(24)の中から、各自動車メーカーが独自に設定した指定バンパーグレード材料と同一の樹脂材料からなるバンパーを工程(25)において選別する。更に、これを例えばポリプロピレン(PP)樹脂製バンパーの場合を例にとると、PP樹脂製バンパーは、その構成材料として、PP樹脂とポリエチレン(PE)樹脂とのブロック共重合体にエラストマーをブレンドした樹脂が用いられており、各自動車メーカーは樹脂製バンパーとしての要求性能を満足させるため、樹脂材料の分子量,重合度,エラストマー組成,配合量等を独自に設定配合している。
【0004】 そこで、このようなPP樹脂を再利用しようとする場合、他メーカーのPP樹脂製バンパー材と混合して再生処理を行うと、得られたPP樹脂はそのメーカーが設定した物性値が得られず、樹脂製バンパーとしての要求性能を満足することができなかったり、また、成形後の塗装,表面処理がうまくいかなかったりする等の問題が発生してしまう。
【0005】 このような理由から、現在、各自動車メーカーは、樹脂材料の選別時に指定バンパーグレード材料とは異なる別材質のバンパーが確認された場合には、それらを回収品より工程(26)において除外し、独自に設定した指定バンパーグレード材料のみからなるバンパーを集めて工程(12)において再生処理を行っている。
【0006】 また、樹脂製バンパーが2種類以上の樹脂材料と組み合わされている場合には、同様に再利用目的以外の樹脂材料は工程(12)の再生処理からは除外して、再生処理を行っている。
【0007】 そこで、具体的な樹脂製バンパーの再生処理方法を説明すると、まず、上記したように、工程(25)において選別を終了した同一樹脂材料からなる樹脂バンパーを、工程(13)において数mm~10mm程度の大きさに切断・粉砕を行う。この切断・粉砕工程においては、同材質の樹脂製バンパーの製造工程で発生したバリおよび端材(3)や成形不良品(4)をも含めて行う。
【0008】 次いで、工程(14)において各種表面処理被膜,樹脂以外の異物の分離・除去処理を行い、続いて、不純物等が除去された樹脂粉砕品を工程(15)において混練押出機に投入し融点まで加熱溶融して再造粒を行ってペレット状の再生材(16)として回収する。この再生処理により得られた再生材(16)は、工程(17)において新品の樹脂材料に混合して使用される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、このような従来の樹脂材料の再生処理方法にあっては、各自動車メーカーが指定グレード材料として独自に設定しているので、同一樹脂材料からなる限られた狭い範囲の樹脂材料、すなわち、分子量,重合度,エラストマー組成,配合量等がほとんど同一の材料を同一樹脂グレード材料としており、これらから構成される樹脂成形品あるいは製造工程で発生したバリおよび端材、成形不良品等を回収の対象として再生処理を行って再生材を得るシステムになっていたため、再生処理に際しては、分子量,重合度,エラストマー組成,配合量等が少しでも異なる樹脂材料の場合には、回収目的以外の樹脂材料との選別が必要であった。
【0010】そのため、選別には多大な工数を必要とし、また、回収量にも限界があり、再生コストが高くなるという問題点があった。さらにまた、このような従来の再生処理方法により得られた再生材は、樹脂材料の物性値が限られた狭い範囲にあるため、再利用される部品もごく一部に限られたものになってしまうという問題点があった。
【0011】
【発明の目的】本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、材料物性値が一定の範囲内にある再生材を低コストで得ることができ、ある程度の幅広い物性値を有する再生材を得ることができて再生材の適用用途も広いものとすることが可能である樹脂材料の再生処理方法を提供することを目的としている。」
「【0036】
【実施例】図1は本発明に係る樹脂材料の再利用システムにおいて採用されうる樹脂材料の再生処理方法の一実施例を示すものであって、本発明による樹脂材料の再生処理方法では、以下に説明する如く、種々の同族系樹脂材料毎に分類された樹脂材料を1つの集合体として再生処理を行うものであが、本発明は以下の実施例のみに限定されないことはいうまでもない。
【0037】まず、図1の(A)により再生処理方法を説明すると、市場経年樹脂成形品(1),廃車樹脂成形品(2)等の樹脂物品や、樹脂成形品の製造工程で発生するバリおよび端材(3),成形不良品(4)等の樹脂物品などからなる樹脂材料をそれぞれ工程(5)において回収し、これらを同族系樹脂材料から構成される集合体に工程(6)において分類する。
【0038】すなわち、工程(6)において分類される同族系樹脂材料としては、ポリオレフィン(PO)系樹脂材料集合体(7)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)系樹脂材料集合体(8)、ポリアミド(PA)系樹脂材料集合体(9)、ポリエチレンテレフタレート(PET:ポリエステル)系樹脂材料集合体(10)、ポリウレタン(PU)系樹脂材料集合体(11)の5種類が主なものである。
【0039】これらの同族系樹脂材料から構成される集合体に分類する場合、PO系樹脂としては、ポリプロピレン(PP)樹脂、PP樹脂とポリエチレン(PE)樹脂との共重合体またはエラストマー変性のPO樹脂、タルク,炭酸カルシウム,ガラス繊維等の補強材および/または無機質充填材を配合したPO樹脂、エラストマー変性のPO樹脂のうちの少なくとも1種であるものとすることができる。
・・・
【0044】前記樹脂において、タルク,炭酸カルシウム,ガラス繊維等の補強材および/または無機質充填材を配合する場合には、5~50重量%の範囲で補強効果および樹脂特性に影響を与えない配合量で添加されていることが多い。
【0045】工程(6)において上記の同族系樹脂材料集合体(7)~(11)に分類した後、再利用可能な再生材とするために工程(12)において加工・再生処理が施される。この場合の加工・再生処理は、回収した樹脂中に共存する金属屑や砂等の異物の分離除去、再生材とした場合に強度を向上させるためのタルク,炭酸カルシウム,ガラス繊維等の補強材の配合操作、耐衝撃性を改善するためのエラストマー成分等の添加による改質操作、などを含むものである。
【0046】具体的な加工・再生処理工程としては、図1の(B)に示すように、まず、上記の同族系樹脂材料集合体(7)~(10)からなる樹脂物品を、次工程の処理をやり易くそしてまた均一にさせるために、シュレッダー,ハンマー等により粉砕・すり潰しを行うことによって、数mm~10mm程度の大きさに工程(13)において切断・粉砕を行う。
【0047】そして、再生処理に当たっては、工程(14)において、樹脂材料に付着した汚れ等(ほこり、水垢,油等)を水洗浄やエチルアルコール等の溶剤洗浄などにより洗浄除去し、また、樹脂と共存する塗膜やめっき皮膜,ビス,ナット,モールディング類,テープ類,スパッタリング膜等の各種表面処理被膜等を分離除去する。さらにまた、必要に応じて、タルク,炭酸カルシウム,ガラス繊維等の配合成分,エラストマー成分等を新たに添加することによる改質は行わなくてもよい。
【0048】同族系樹脂材料集合体が熱可塑性樹脂から構成される場合には、不純物等を除去して樹脂粉砕品を混練押出機に投入し加熱および/または加圧溶融して工程(15)において再造粒を行い、ペレット状の再生材(16)として回収する。また、同様に、樹脂材料を軟化するまで加熱および/または加圧して板状の再生材(16)として回収してもよい。
【0049】熱可塑性樹脂から構成される同族系樹脂材料としては、前記樹脂のうち、PO系樹脂、ABS系樹脂、PA系樹脂およびPET系樹脂が挙げられ、これらの樹脂において混練押出機に投入して行う加熱および/または加圧溶融は前記樹脂軟化点、すなわち、120~250℃程度の範囲で再生処理が行われる。
【0050】ここで、同族系樹脂材料として回収されるPO系樹脂は、自動車のバンパー,インスツルメントパネル,エアクリーナ,内装トリム類,ダクト等に使用されており、また、ABS系樹脂は、自動車のラジエータグリル,ドアミラーハウジング,ホイールカバー,内装トリム類等に使用されている。
【0051】このようなPO系樹脂およびABS系樹脂の再生処理温度は約120~200℃であり、比較的低い温度で処理される。
・・・
【0053】本発明に従う熱可塑性樹脂の加工再生処理に際しては、さらに相溶化剤を用いて同族樹脂間の相溶性を高めるようになすこともできる。
【0054】再生処理により得られた再生材(16)は、新たな樹脂製品の製造原料として利用されるが、その樹脂製品としての機械的性質や表面外観品質を確保するため、また、再生材と新品材との使用量のバランスから、同材質の樹脂製品の製造原料としては最大50重量%程度の範囲で工程(17)において新品材に混合して用いるようになすことが必要に応じて望ましい。
【0055】一方、本発明による樹脂材料の再処理方法において、同族系樹脂材料に他の樹脂材料が混合された場合には、再造粒工程において気泡が生じたり、ストランド切れ(熱可塑性樹脂に適用され、押出し機からうどん状の成形材料[ストランド]を押出し、水冷した後に一定の長さに切断して、ペレット状にするが、このとき、押出し機からうどん状の成形材料とならずに、途中で切れてしまうこと)等の不具合を生じたり、また、再生材として使用した場合においても、樹脂の流動性が均一ではなく、ショートショット(樹脂の流動不良)等の成形不良が生じたりすることもある。さらに、成形品が得られたとしても、剛性や衝撃強度等の物性が極端に低くなるという問題を引き起こすこともある。
【0056】したがって、上記したように、樹脂材料の再利用に際しては、本発明の各5つの同族系樹脂材料から構成される集合体以外に、他の樹脂材料を混合することは好ましくないこともありうる。そして、本発明においては、上記した同族系樹脂材料から構成される集合体として再生処理を行った場合には、これらの不具合は発生しなかった。」
「 図1
[図:0001427979000001.jpg]
」
(2)上記(1)の記載、特に、請求項1、【0037】、【0045】、【0054】の記載と、甲3の図1の「PO系樹脂材料集合体」を用いる(7)→(12)→(16)→(17)の工程に着目すると、「市場経年樹脂成形品(1),廃車樹脂成形品(2)等の樹脂物品や、樹脂成形品の製造工程で発生するバリ及び端材(3),成形不良品(4)等の樹脂物品などからなる樹脂材料をそれぞれ回収し、これらを同族系樹脂材料から構成される集合体に分類し、分類した後、再生処理が施されてなる再生材」(【0037】、【0045】)を、「同材質の樹脂製品の製造原料としては最大50重量%程度の範囲で」「新品材に混合して」用いるようにすることが記載され(【0054】)、分類された同族系樹脂材料として、ポリオレフィン(PO)系樹脂材料が記載されている(【0038】)。
そうすると、甲3には、次の「甲3発明」が記載されていると認められる。
<甲3発明>
「市場経年樹脂成形品(1),廃車樹脂成形品(2)等の樹脂物品や、樹脂成形品の製造工程で発生するバリ及び端材(3),成形不良品(4)等の樹脂物品などからなる樹脂材料をそれぞれ回収し、これらを同族系樹脂材料から構成される集合体に分類し、分類した後、再生処理が施されてなる再生材を、同材質の樹脂製品の製造原料として最大50重量%程度の範囲で新品材に混合してなる組成物であって、分類される同族系樹脂材料は、ポリオレフィン(PO)系樹脂材料である、組成物。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「市場経年樹脂成形品(1),廃車樹脂成形品(2)等の樹脂物品や、樹脂成形品の製造工程で発生するバリ及び端材(3),成形不良品(4)等の樹脂物品などからなる樹脂材料をそれぞれ回収し、これらを同族系樹脂材料から構成される集合体に分類し、分類した後、再生処理が施されてなる再生材」において、「分類される同族系樹脂材料は、ポリオレフィン(PO)系樹脂材料」であることから、当該再生材は、本件発明1の「リサイクル樹脂がプロピレン重合体を含むリサイクル樹脂組成物」と、「リサイクル樹脂がポリオレフィン系樹脂材料を含むリサイクル」「組成物」である限りにおいて一致する。
また、甲3発明の「新品材」は、再生材とともに、再生材(ポリオレフィン系樹脂材料)と同材質の樹脂製品の製造原料として用いられるものであるから、再生材と同材質であるポリオレフィン系樹脂材料であると解され、本件発明1の「バージンプロピレン重合体」とは、「バージン」「ポリオレフィン」「重合体」である限りにおいて一致する。
さらに、甲3発明は「再生材を、同材質の樹脂製品の製造原料として最大50重量%程度の範囲で新品材に混合してなる、組成物」であり、再生材と新品材はいずれもポリオレフィン系樹脂材料であるから、本件発明1の「プロピレン樹脂組成物」とは、「ポリオレフィン樹脂組成物」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「リサイクル樹脂と、バージンポリオレフィン重合体とを含む、ポリオレフィン樹脂組成物であって、
前記リサイクル樹脂がポリオレフィン重合体を含むリサイクルポリオレフィン組成物である、
ポリオレフィン樹脂組成物。」
<相違点3-1>
「バージンポリオレフィン重合体」が、本件発明1においては、「ヘテロファジックプロピレン重合材料」であるのに対し、甲3発明においては、そのような特定はされていない点
<相違点3-2>
「リサイクル樹脂がポリオレフィン重合体を含むリサイクルポリオレフィン組成物」が、本件発明1においては、「測定温度=220℃、オリフィスL/D=40mm/1mm、せん断速度=2432sec-1」「で測定した時のスウェル比が1.3以上2.0以下である」ことが特定された、「プロピレン重合体を含むリサイクルプロピレン組成物」であるのに対し、甲3発明においては、そのような特定はされていない点
<相違点3-3>
「ポリオレフィン樹脂組成物」が、本件発明1においては、「プロピレン樹脂組成物」であるのに対し、甲3発明においては、そのような特定はされていない点
(2)判断
ア 相違点3-2について
事案に鑑み、まず、相違点3-2について検討する。
(ア)甲3には、ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン樹脂などが記載されており(請求項8)、従来の技術の欄にも、樹脂製バンパーの材料であるポリプロピレン樹脂の再利用に関する技術が記載されている(【0002】~【0009】)。
そうすると、甲3発明における再生材として、ポリプロピレン材料を選択することが示唆されているといえる。
(イ)そこで、ポリプロピレン材料のスウェル比について検討する。
甲11のFig.16、20、22には、自動車用ポリプロピレン(PP)材料における、スウェル比(ダイスウェル)と、フローマーク長さ(Fig.16)、ウェルドライン長さ(Fig.20)又は射出成形時のゲート部最大樹脂圧力と流動末端樹脂圧力(Fig.22)との関係について、以下のように図示されている。
[図:0001427979000002.jpg]
[図:0001427979000003.jpg]
[図:0001427979000004.jpg]
甲12には、「【請求項1】 プロピレン-エチレンブロック共重合体(i)又は前記(i)のプロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン単独重合体との混合物(ii)から選ばれた、極限粘度[η]APが1.3dl/g以下であるプロピレン単独重合体部分と極限粘度[η]AEPが3.0dl/g以下であるプロピレン-エチレンランダム共重合体部分を有するポリプロピレン系樹脂(A)95~80重量%と、極限粘度[η]BEPが8.0~15dl/gであるプロピレン-エチレンランダム共重合体部分を有するプロピレン-エチレンブロック共重合体(B)5~20重量%からなり、メルトフローレート(MFR)が5.0~150g/10分であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。」について、測定温度:220℃、L/D:40、せん断速度:2.432×103sec-1における「ダイスウェル(D.S.)が1.6以上であること」(【請求項8】、【0079】)が記載され、ダイスウェルが高いと、フローマークの発生が起こりにくいこと(【0009】、【0057】)、実施例のダイスウェルは1.81~2.1であること(【0103】)が記載されている。
甲13には、「【請求項1】 ポリプロピレン樹脂(A)50~65重量%と、エチレン-α-オレフィン共重合体ゴム(B)1~10重量%と、エチレン-α-オレフィン共重合体ゴム(C)8~18重量%と、無機充填剤(D)18~25重量%とを含有し、エチレン-α-オレフィン共重合体ゴム(B)とエチレン-α-オレフィン共重合体ゴム(C)の合計が17~25重量%であるポリプロピレン系樹脂組成物(ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする)であって、
ポリプロピレン樹脂(A)が、結晶性プロピレン単独重合体部分と極限粘度が4.0~5.5dl/gであるプロピレン-エチレンランダム共重合体部分とを含有するプロピレン-エチレンブロック共重合体(A-1)、または、前記ブロック共重合体(A-1)と結晶性プロピレン単独重合体(A-2)とを含有するプロピレン重合体混合物(A-3)であり、
エチレン-α-オレフィン共重合体ゴム(B)が、炭素数4~12のα-オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.850~0.870g/cm3、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.05~1g/10分であるエチレン-α-オレフィン共重合体ゴムであり、
エチレン-α-オレフィン共重合体ゴム(C)が、炭素数4~12のα-オレフィンとエチレンとを含有し、密度が0.850~0.870g/cm3、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が2~20g/10分であるエチレン-α-オレフィン共重合体ゴムであるポリプロピレン系樹脂組成物。」について、「ダイスウェル(220℃、L/D=40、せん断速度2432sec-1)は、ウエルドが目立たず成形体のウエルド外観を優れるものにし、かつ、フローマークが目立たず成形体のフローマーク外観を優れるものにするという観点から、好ましくは1.25~1.40であり、より好ましくは1.25~1.35である。」(【0061】)ことが記載され、実施例1及び2に係る組成物のダイスウェルは1.27、1.30であることが記載されている(【0104】)。
甲14の第3図には、ブロー成形用のポリプロピレン新規開発材料AS821と既存ポリピロピレンの210℃における剪断速度とダイスウェルの関係が記載され、剪断速度2432s-1のダイスウェルは、AS821は1.6程度、既存ポリプロピレンは1.7程度であることが読み取れ、第14図には、AS821は、0℃のアイゾット衝撃強度とボトルの未破壊率が高いことが示されている。
(ウ)上記のとおり、甲12には、測定温度:220℃、L/D:40、せん断速度:2.432×103sec-1における「ダイスウェル(D.S.)が1.6以上であること」(【請求項8】、【0079】)、甲13には、「ダイスウェル(220℃、L/D=40、せん断速度2432sec-1)は、・・・、好ましくは1.25~1.40であり、より好ましくは1.25~1.35である」こと(【0061】)、また、甲11及び甲14には、ダイスウェルとフローマーク長さ等の物性との関係が示されているものの、これらの数値は、リサイクル樹脂ではないバージン樹脂における数値であると解される。
ところで、リサイクル樹脂は、物性、例えばスウェル比の異なる様々な樹脂が回収された集合物であるところ、いずれも文献にも、リサイクル樹脂であるポリピロピレン材料のスウェル比がどの程度のものであるか、記載も示唆もされていない。
そして、甲11~甲14及びそれ以外の他の甲号証をみても、ポリプロピレン材料に関し、リサイクル樹脂は、バージン樹脂と同程度のスウェル比であるとの技術常識、及び、スウェル比が1.3以上2.0以下であるリサイクル樹脂を用いることにより、低温衝撃強度が優れたものとなるとの技術常識が、本願出願前にあるともいえない。
そうすると、甲3発明における再生材として、ポリプロピレン材料を選択するとしても、低温衝撃強度に優れる成形体とするために、スウェル比を「1.3~2.0」という範囲に設定する動機付けがあるとはいえない。
イ 本件発明1の効果について
本件発明1の効果についてみると、本件明細書においては、バージンプロピレン系重合体としてヘテロファジックプロピレン重合材料を用いるという条件をそろえた場合に、リサイクルプロピレン組成物に関し、スウェル比を1.10~1.27とした例8~例10よりも、スウェル比を1.3~1.37とした例1~例7の方が、-30℃でのIZOD衝撃強度(低温衝撃強度)に優れることが示されている。
このように、スウェル比の違いにより低温衝撃強度に差が生じることは、当業者において予測可能であったとすることはできない。
なお、特許権者が提出した意見書において、以下に示すように、スウェル比の上限値(2.0)の臨界的意義を示す実施例の補充(8頁の表)、様々なスウェル比を有する実施例の補充(11頁の表)、リサイクル樹脂にプロレピレン重合体以外の成分が含まれている実施例の補充(13頁と14頁の表)がされ、本件発明1の全体にわたって、リサイクル樹脂のスウェル比「1.3以上2.0以下」の数値範囲において、当業者が予測し得ない臨界的意義があることが示されている。
(スウェル比の上限値(2.0)の臨界的意義を示す実施例の補充(8頁の表))
[図:0001427979000005.jpg]
[図:0001427979000006.jpg]
(様々なスウェル比を有する実施例の補充(11頁の表))
[図:0001427979000007.jpg]
[図:0001427979000008.jpg]
(リサイクル樹脂にプロレピレン重合体以外の成分が含まれている実施例の補充(13頁と14頁の表))
[図:0001427979000009.jpg]
[図:0001427979000010.jpg]
[図:0001427979000011.jpg]
[図:0001427979000012.jpg]
[図:0001427979000013.jpg]
ウ したがって、相違点3-2以外の他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明、及び、甲1、3、4、6、8~15に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2~15について
本件発明2~13は、本件発明1に係るプロピレン樹脂組成物の組成を更に限定したものであり、また、本件発明14及び15は、本件発明1~13に係るプロピレン樹脂組成物を含む成形体及び当該プロピレン樹脂組成物の製造方法の発明であるから、本件発明2~15と甲3発明とは、少なくとも相違点3-2において相違する。
したがって、本件発明2~15は、上記2に説示した本件発明1と同様の理由により、甲3に記載された発明、及び、甲1、3、4、8~15に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 小括
以上によれば、本件発明1~15に係る特許は、甲3を主引例とする取消理由及び申立理由により、取り消すことはできない。
第5 取消理由通書において採用しなかった申立理由について
1 甲1を主引例とする申立理由について
(1)甲1に記載された発明
甲1の請求項1の記載に着目すると、次の「甲1発明」が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「a)20~30重量%(ポリオレフィン組成物の総重量に基づく)の、少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマー;
b)10~45重量%(ポリオレフィン組成物の総重量に基づく)の、ポリプロピレン及びポリエチレンを3:7~49.5:1の比率で含むリサイクルプラスチック材料のブレンドであって、使用済み廃棄物及び/又は産業廃棄物に由来する廃プラスチック材料から回収された、リサイクルプラスチック材料のブレンド;
c)7~15重量%(ポリオレフィン組成物の総重量に基づく)の、少なくとも1つのヘテロファジックポリプロピレンコポリマー;
d)1~4重量%(ポリオレフィン組成物の総重量に基づく)の、少なくとも1つのエラストマー;
e)15~25重量%(ポリオレフィン組成物の総質量に基づく)の、少なくとも1つのガラス繊維;及び
f)0.5~2.5重量%(ポリオレフィン組成物の総質量に基づく)の、少なくとも1つのカップリング剤、及び、任意にさらなる添加剤、
を含む、
ここで、全ての成分の合計が常に100重量%となるように添加される、ポリオレフィン組成物であって、
前記ポリオレフィン組成物は、以下によって特徴付けられるポリオレフィン組成物:
-0.5~2.00のフォギング値(ISO 75201、方法Bに従って重量測定される)。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ポリプロピレン」が本件発明1の「プロピレン重合体」に相当するから、甲1発明の「b)」「ポリプロピレン及びポリエチレンを3:7~49.5:1の比率で含むリサイクルプラスチック材料のブレンドであって、使用済み廃棄物及び/又は産業廃棄物に由来する廃プラスチック材料から回収された、リサイクルプラスチック材料のブレンド」は、本件発明1の「リサイクル樹脂がプロピレン重合体を含むリサイクルプロピレン組成物」に相当する。
甲1発明の「c)」「少なくとも1つのヘテロファジックポリプロピレンコポリマー」は、「バージンプロピレン重合体」である「ヘテロファジックプロピレン重合材料」に相当する。
本件明細書の【0008】の記載によれば、本件発明1の「プロピレン樹脂組成物」とは、プロピレンに由来する単量体単位を50重量%以上有する重合体を意味する「プロピレン重合体」を含有する組成物を意味し、甲1発明の「ポリオレフィン組成物」は、「a)」「ポリプロピレンホモポリマー」を含有することから、本件発明1の「プロピレン樹脂組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「リサイクル樹脂と、バージンプロピレン重合体とを含む、プロピレン樹脂組成物であって、
前記リサイクル樹脂がプロピレン重合体を含むリサイクルプロピレン組成物であり、
前記バージンプロピレン重合体がヘテロファジックプロピレン重合材料である、
プロピレン樹脂組成物。」
<相違点1>
「プロピレン重合体を含むリサイクルプロピレン組成物」が、本件発明1においては、「測定温度=220℃、オリフィスL/D=40mm/1mm、せん断速度=2432sec-1」「で測定した時のスウェル比が1.3以上2.0以下である」ことが特定されているのに対し、甲1発明においては、そのような特定はされていない点
イ 判断
(ア)上記第4の2(2)ア(ウ)に説示したとおり、甲12には、測定温度:220℃、L/D:40、せん断速度:2.432×103sec-1における「ダイスウェル(D.S.)が1.6以上であること」(【請求項8】、【0079】)、甲13には、「ダイスウェル(220℃、L/D=40、せん断速度2432sec-1)は、・・・、好ましくは1.25~1.40であり、より好ましくは1.25~1.35である」こと(【0061】)、また、甲11及び甲14には、ダイスウェルとフローマーク長さ等の物性との関係が示されているものの、これらの数値は、リサイクル樹脂ではないバージン樹脂における数値であると解さる。
ところで、リサイクル樹脂は、物性、例えばスウェル比の異なる様々な樹脂が回収された集合物であるところ、いずれの文献にも、リサイクル樹脂であるポリピロピレン材料のスウェル比がどの程度のものであるか、記載も示唆もされていない。
まして、甲11~甲14には、甲1発明における「b)」「ポリプロピレン及びポリエチレンを3:7~49.5:1の比率で含むリサイクルプラスチック材料のブレンド」のスウェル比について記載も示唆もされていない。
また、甲11~甲14に加え、他の甲号証においても、ポリオレフィン材料のスウェル比と低温衝撃強度との関係については記載も示唆もされてない。
そうすると、甲1発明における「b)」「ポリプロピレン及びポリエチレンを3:7~49.5:1の比率で含むリサイクルプラスチック材料のブレンドであって、使用済み廃棄物及び/又は産業廃棄物に由来する廃プラスチック材料から回収された、リサイクルプラスチック材料のブレンド」について、低温衝撃強度に優れる成形体とするために、スウェル比を「1.3~2.0」の範囲に設定する動機付けがあるとはいえない。
(イ)そして、上記第4の2(2)イに説示したとおり、本件発明1の効果は、当業者が予測可能なものとはいえない。
(ウ)したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び、甲8~15に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~15について
本件発明2~15と甲1発明とは、少なくとも相違点1において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~15は、甲1に記載された発明、及び、甲8~15に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上によれば、本件発明1~15に係る特許は、甲1を主引例とする申立理由により、取り消すことはできない。
2 甲4を主引例とする申立理由について
(1)甲4に記載された発明
甲4の請求項1に着目すると、甲4には、次の「甲4発明」が記載されていると認められる。
<甲4発明>
「組成物であって、
第1ポリプロピレンを有するバージン樹脂と、
第2ポリプロピレンを有するポストコンシューマーリサイクル樹脂と、
半結晶性マトリックスとゴム成分を有するポリプロピレン系相溶化剤と、
を含む、組成物。」
(2)本件発明1について
ア 対比
甲4発明の「第1ポリプロピレンを有するバージン樹脂」と「半結晶性マトリックスとゴム成分を有するポリプロピレン系相溶化剤」は、本件発明1の「バージンプロピレン重合体」に相当する。
甲4発明の「第2ポリプロピレンを有するポストコンシューマーリサイクル樹脂」は、本件発明1の「リサイクル樹脂がプロピレン重合体を含むリサイクルプロピレン組成物」に相当する。
甲4発明の「組成物」は、本件発明1の「プロピレン樹脂組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「リサイクル樹脂と、バージンプロピレン重合体とを含む、プロピレン樹脂組成物であって、
前記リサイクル樹脂がプロピレン重合体を含むリサイクルプロピレン組成物である、
プロピレン樹脂組成物。」
<相違点4-1>
「プロピレン重合体を含むリサイクルプロピレン組成物」が、本件発明1においては、「測定温度=220℃、オリフィスL/D=40mm/1mm、せん断速度=2432sec-1」「で測定した時のスウェル比が1.3以上2.0以下である」ことが特定されているのに対し、甲4発明においては、そのような特定はされていない点
<相違点4-2>
「バージンプロピレン重合体」が、本件発明1においては、「ヘテロファジック重合材料」であるのに対し、甲4発明においては、そのような特定はされていない点
イ 判断
(ア)相違点4-1について検討する。
上記第4の2(2)ア(ウ)に説示したとおり、甲12には、測定温度:220℃、L/D:40、せん断速度:2.432×103sec-1における「ダイスウェル(D.S.)が1.6以上であること」(【請求項8】、【0079】)、甲13には、「ダイスウェル(220℃、L/D=40、せん断速度2432sec-1)は、・・・、好ましくは1.25~1.40であり、より好ましくは1.25~1.35である」こと(【0061】)、また、甲11及び甲14には、ダイスウェルとフローマーク長さ等の物性との関係が示されているものの、これらの数値は、リサイクル樹脂ではないバージン樹脂における数値であると解さる。
ところで、リサイクル樹脂は、物性、例えばスウェル比の異なる様々な樹脂が回収された集合物であるところ、いずれの文献にも、リサイクル樹脂であるポリピロピレン材料のスウェル比がどの程度のものであるか、記載も示唆もされていない。
そして、甲11~甲14以外の他の甲号証をみても、一般に、ポリプロピレン材料に関し、リサイクル樹脂は、バージン樹脂と同程度のスウェル比であること、及び、スウェル比と低温衝撃強度との関係についての技術常識があるともいえない。
そうすると、甲4発明における「第2ポリプロピレンを有するポストコンシューマーリサイクル樹脂」について、低温衝撃強度に優れる成形体とするために、スウェル比を「1.3~2.0」の範囲に設定する動機付けがあるとはいえない。
(イ)そして、上記第4の2(2)イに説示したとおり、本件発明1の効果は、当業者が予測可能なものとはいえない。
ウ したがって、相違点4-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明、及び、甲8~15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)本件発明2~15について
本件発明2~15と甲4発明とは、少なくとも相違点4-1、4-2において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~15は、甲4に記載された発明、及び、甲8~15に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上によれば、本件発明1~15に係る特許は、甲4を主引例とする申立理由により、取り消すことはできない。
3 甲6を主引例とする申立理由について
(1)甲6に記載された発明
甲6の請求項1の記載に着目すると、次の「甲6発明」が記載されていると認められる。
<甲6発明>
「ポリプロピレン組成物であって、
(a)45~90重量%、好ましくは50~85重量%、より好ましくは55~80重量%のバージンプロピレンポリマーであって、任意選択で7重量%までのエチレンを含有し、0.5~5g/10’の範囲のメルトフローレート(ISO 1133 230℃/2.16kg)を有する、バージンプロピレンポリマーと、
(b)10~55重量%、好ましくは15~50重量%、より好ましくは20~45重量%のリサイクル組成物であって、
(b1)1~7重量%のエチレンを含有する、少なくとも70重量%、好ましくは75~90重量%のプロピレンポリマー、
(b2)5~30重量%、好ましくは7~25重量%のスチレンブロックコポリマー(SBC)、及び任意選択で、
(b3)30重量%までのC3~C10アルファオレフィンを含有する、1~5重量%、好ましくは2~4重量%のエチレンホモ又はコポリマーを含有する、リサイクル組成物と、
を含むか、又はそれらから本質的になる、ポリプロピレン組成物。」
(2)本件発明1について
ア 対比
甲6発明の「バージンプロピレンポリマーであって、任意選択で7重量%までのエチレンを含有し、0.5~5g/10’の範囲のメルトフローレート(ISO 1133 230℃/2.16kg)を有する、バージンプロピレンポリマー」は、本件発明1の「バージンプロピレン重合体」に相当する。
甲6発明の「1~7重量%のエチレンを含有する、」「プロピレンポリマー」を含有する「リサイクル組成物」は、本件発明1の「リサイクル樹脂がプロピレン重合体を含むリサイクルプロピレン組成物」に相当する。
甲6発明の「ポリプロピレン組成物」は、本件発明1の「プロピレン樹脂組成物」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲6発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「リサイクル樹脂と、バージンプロピレン重合体とを含む、プロピレン樹脂組成物であって、
前記リサイクル樹脂がプロピレン重合体を含むリサイクルプロピレン組成物である、
プロピレン樹脂組成物。」
<相違点6-1>
「プロピレン重合体を含むリサイクルプロピレン組成物である」「リサイクル樹脂」が、本件発明1においては、「測定温度=220℃、オリフィスL/D=40mm/1mm、せん断速度=2432sec-1」「で測定した時のスウェル比が1.3以上2.0以下である」ことが特定されているのに対し、甲6発明においては、そのような特定はされていない点
<相違点6-2>
「バージンプロピレン重合体」が、本件発明1においては、「ヘテロファジックプロピレン重合材料」であるのに対し、甲6発明においては、そのような特定はされていない点
イ 判断
(ア)事案に鑑み、相違点6-1について検討する。
上記第4の2(2)ア(ウ)に説示したとおり、甲12には、測定温度:220℃、L/D:40、せん断速度:2.432×103sec-1における「ダイスウェル(D.S.)が1.6以上であること」(【請求項8】、【0079】)、甲13には、「ダイスウェル(220℃、L/D=40、せん断速度2432sec-1)は、・・・、好ましくは1.25~1.40であり、より好ましくは1.25~1.35である」こと(【0061】)、また、甲11及び甲14には、ダイスウェルとフローマーク長さ等の物性との関係が示されており、これらの数値は、リサイクル樹脂ではないバージン樹脂における数値であると解さる。
ところで、リサイクル樹脂は、物性、例えばスウェル比の異なる様々な樹脂が回収された集合物であるところ、いずれの文献にも、リサイクル樹脂であるポリピロピレン材料のスウェル比がどの程度のものであるか、記載も示唆もされていない。
まして、甲11~甲14には、甲6発明における「(b1)1~7重量%のエチレンを含有する」「プロピレンポリマー」と「(b2)」「スチレンブロックコポリマー(SBC)」とを含む「リサイクル組成物」のスウェル比について記載も示唆もされていない。
そして、甲11~甲14以外の他の甲号証をみても、一般に、ポリプロピレン材料に関し、リサイクル樹脂は、バージン樹脂と同程度のスウェル比であること、及び、スウェル比と低温衝撃強度との関係についての技術常識があるともいえない。
そうすると、甲6発明における「(b1)1~7重量%のエチレンを含有する」「プロピレンポリマー」と「(b2)」「スチレンブロックコポリマー(SBC)」とを含む「リサイクル組成物」について、低温衝撃強度に優れる成形体とするために、スウェル比を「1.3~2.0」の範囲に設定する動機付けがあるとはいえない。
(イ)そして、上記第4の2(2)イに説示したとおり、本件発明1の効果は、当業者が予測可能なものとはいえない。
ウ したがって、相違点6-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6に記載された発明、及び、甲8~15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)本件発明2~15について
本件発明2~15と甲6発明とは、少なくとも相違点6-1、6-2において相違する。
したがって、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~15は、甲6に記載された発明、及び、甲8~15に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上によれば、本件発明1~15に係る特許は、甲6を主引例とする申立理由により、取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~15に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。
また、ほかに請求項1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700048