特許異議申立
2025-700454
組成物、硬化物、および成形体
- 審判番号
- 2025-700454
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-077223
- 登録番号
- 7576725
- 請求日
- 2025年04月23日
- 審決日
- 2026年01月06日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】住友化学株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】清水 義憲
- 【権利者代理人】三上 敬史
- 【権利者代理人】吉住 和之
- 【権利者代理人】田中 政輝
- 【異議申立人】林 法子
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 辰己 雅夫
- 審判官 越本 秀幸
- 分類
- P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7576725号発明「組成物、硬化物、および成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7576725号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第7576725号の請求項1-7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7576725号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許は、令和6年5月10日を出願日(以下「本件出願日」という。)とする特願2024-77223号に係る特許であって、令和6年10月23日に特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月31日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和7年4月23日に特許異議申立人 林 法子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~7(全請求項))がされたものである。
以降の手続は以下のとおりである。
令和7年 7月17日付け 取消理由通知
同年 9月22日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年10月 3日付け 訂正請求があった旨の通知
同年11月 5日 意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和7年9月22日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、「特許第7576725号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とするものであって、その内容は以下のとおりである。
<訂正事項1>
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「85質量%以上」とあるのを、
「90質量%以上」と訂正する。
<訂正事項2>
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「0質量ppmを超え50000質量ppm以下」とあるのを、
「100質量ppm~600質量ppm」と訂正する。
<訂正事項3>
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「0質量ppmを超え2000質量ppm以下」とあるのを、
「10質量ppm~2000質量ppm」と訂正する。
<訂正事項4>
訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、
「90質量%以上」とあるのを、
「95質量%以上」と訂正する。
なお、訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1~3によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否についての判断
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1のメタクリル酸メチルの含有量が「85質量%以上」との発明特定事項を、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0015】に「メタクリル酸メチルの上記含有量は、・・・例えば、組成物全体の(組成物の全質量中)85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上または99質量%以上とすることもできる。」と記載されていることに基づいて、「90質量%以上」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項1のピバル酸メチルの含有量が「0質量ppmを超え50000質量ppm以下」との発明特定事項を、本件明細書の【0021】に「組成物全体に占めるピバル酸メチルの含有量は、・・・組成物の全質量に対して、10質量ppm以上であることが好ましく、50質量ppm以上であることがより好ましく、100質量ppm以上であることがさらに好ましい。」と記載され、【0022】に「一方、組成物全体に占めるピバル酸メチルの含有量の上限値は、上記範囲内で適宜に決定することができ、例えば、2000質量ppm以下とすることもでき、1000質量ppm以下であることが好ましく、600質量ppm以下であることがより好ましい。」と記載されていることに基づいて、「100質量ppm~600質量ppm」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。
(3)訂正事項3
訂正事項3は、請求項1のプロピオン酸メチルの含有量が「0質量ppmを超え2000質量ppm以下」との発明特定事項を、本件明細書の【0024】に「組成物全体に占めるプロピオン酸メチルの含有量は、・・・組成物の全質量に対して、10質量ppm以上であることが好ましく、50質量ppm以上であることがより好ましく、100質量ppm以上であることがさらに好ましい。」と記載されていることに基づいて、「10質量ppm~2000質量ppm」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。
(4)訂正事項4
訂正事項4は、請求項2のメタクリル酸メチルの含有量が「90質量%以上」との発明特定事項を、本件明細書の【0015】に「メタクリル酸メチルの上記含有量は、・・・例えば、組成物全体の(組成物の全質量中)85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上または99質量%以上とすることもできる。」と記載されていることに基づいて、「95質量%以上」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものでもない。
(5)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~4につき、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを認める。
第3 本件発明について
上記第2のとおり、本件訂正が認められたため、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
メタクリル酸メチル、ピバル酸メチルおよびプロピオン酸メチルを含有する組成物であって、
前記組成物全体に占める前記メタクリル酸メチルの含有量が90質量%以上であり、
前記組成物全体に占める前記ピバル酸メチルの含有量が100質量ppm~600質量ppmであり、
前記組成物全体に占める前記プロピオン酸メチルの含有量が10質量ppm~2000質量ppmである、組成物。
【請求項2】
前記組成物全体に占める前記メタクリル酸メチルの含有量が95質量%以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プロピオン酸メチルの前記含有量が2000質量ppm未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記メタクリル酸メチルが再生メタクリル酸メチルまたはバイオ由来メタクリル酸メチルを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化物を含む、成形体。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由、取消理由通知書に記載した取消理由の概要、証拠方法
1 申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要
申立書に記載された申立理由は、以下のとおりである。
(1)申立理由1
本件発明1~7は、本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるか、又は、本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証~甲第4号証に記載されているような本件出願時における技術常識に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、同法第113条第2号に該当し取消されるべきものである。
(2)申立理由2
本件発明1~7は、本件出願前に頒布された甲第5号証に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるか、又は、本件出願前に頒布された甲第5号証に記載された発明、及び、甲第2号証~甲第4号証に記載されているような本件出願時における技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、同法第113条第2号に該当し取消されるべきものである。
(3)申立理由3
本件発明1~3及び5~7は、本件出願前に頒布された甲第6号証に記載された発明であり特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるので、同法第113条第2号に該当し取消されるべきものである。
(4)申立理由4
本件発明1~7は、以下の点で、本件出願時における技術常識を参酌しても、発明の詳細な説明に記載されたものではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、同法第113条第4号に該当し取消されるべきものである。
本件明細書の実施例1~3及び比較例1では、メタクリル酸メチルへのピバル酸メチル及びプロピオン酸メチルの添加量を以て、ピバル酸メチル及びプロピオン酸メチルの含有量とされているため、本件発明の効果を確認できない。
本件明細書には、限られた実施例しか開示されておらず、これらによって、広範囲に亘る本件発明が、本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)を解決できることを確認することはできない。
2 取消理由通知書に記載した取消理由の概要
令和7年7月17日付けの取消理由通知書に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由通知書の第3に記載した取消理由(以下「取消理由第3」という。)
本件発明1~4、6、7は、本件出願前に頒布された甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4、6、7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由通知書の第4に記載した取消理由(以下「取消理由第4」という。)
本件発明1~4、6、7は、本件出願前に頒布された甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~4、6、7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件発明1~7は、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)取消理由通知書の第5に記載した取消理由(以下「取消理由第5」という。)
本件発明1~3、5~7は、本件出願前に頒布された甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~3、5~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)取消理由通知書の第6に記載した取消理由(以下「取消理由第6」という。)
本件発明1~7は、以下の点で、本件出願時における技術常識を参酌しても、発明の詳細な説明に記載されたものではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、同法第113条第4号に該当し取消すべきものである。
ピバル酸メチルやプロピオン酸メチルの含有量が0質量ppmより僅かに大きい態様においても、本件課題を解決できると、当業者が認識できるとはいえない。
3 申立人が申立書に添付して提出した証拠方法
・甲第1号証:DIMITRIS S. ACHILIAS, "Chemical Recycling of Polymers. The Case of Poly(methyl methacrylate)", Proceedings of the 2006 IASME/WSEAS International Conference on Energy & Environmental Systems, Chalkida, Greece, May 8-10, 2006, p.271-276(https://citeseerx.ist.psu.edu/document?repid=rep1&type=pdf&doi=1e02f97e232578e65055062fa15ffdb4533e1abe)
・甲第1-2号証:甲第1号証の部分和訳
・甲第2号証:特開2010-254742号公報
・甲第3号証:特開2010-248501号公報
・甲第4号証:特開2010-261025号公報
・甲第5号証:Dimitris S. Achilias, "Chemical recycling of poly(methyl methacrylate) by pyrolysis. Potential use of the liquid fraction as a raw material for the reproduction of the polymer", European Polymer Journal, 43 (2007), p.2564-2575(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0014305707001395?fr=RR-2&ref=pdf_download&rr=9096777d2944e395)
・甲第5-2号証:甲第5号証の部分和訳
・甲第6号証:仏国特許出願公開第2651236号明細書
・甲第6-2号証:甲第6号証の部分和訳
第5 当審の判断
1 取消理由第3(甲第1号証に基づく新規性、進歩性)、申立理由1(甲第1号証に基づく新規性、進歩性)について
取消理由第3と申立理由1とは、ともに甲第1号証に基づくものであるから、これらについてまとめて判断する。
(1)証拠の記載事項
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。なお、甲第1号証は英語により記載されているため、以下、日本語訳により記載する。
「
[図:0001434161000001.jpg]
」(第271頁第1~17行目)
「
[図:0001434161000002.jpg]
[図:0001434161000003.jpg]
」(第274頁~275頁の3.2)
以上より、特に表4に示されたモデルPMMAの熱分解液に着目すると、甲第1号証には、
「モデルポリメチルメタクリレートを熱分解して得られる、以下の%割合で各成分を含む液体生成物
[図:0001434161000004.jpg]
」
が記載されていると認める(以下「甲1発明」という。)。
イ 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている(以下「甲2記載事項」という。)。
「【0012】
ところで、特許文献5の方法で製造された位相差フィルムを用いると、スチレン単位を含有しているために位相差発現性に改善の余地があった。しかしながら、特許文献6のように市販のポリメチルメタクリレート(メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体)を使用すると、多量のアクリル酸メチルにより、イミド化時に分解が起こる場合があり、さらなる改善が求められていた。」
ウ 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている(以下「甲3記載事項」という。)。
「【0013】
ところで、液晶表示装置などに用いられる光学フィルムは、ハードコート等の表面処理をする必要があることから耐溶剤性が求められている。特許文献5記載の方法で、グルタルイミドを含有する樹脂を製造すると、光学フィルムとした際、樹脂の耐溶剤性についてさらなる改善が求められていた。また、特許文献6のように、市販のポリメチルメタクリレート(メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルの共重合体)を使用すると、イミド化時に分解が起こる場合があり、改善の余地があった。」
エ 甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている(以下「甲4記載事項」という。)。
「【0007】
ところで、特許文献1及び特許文献2で得られる樹脂組成物は、その樹脂の性質から光学特性及び外観欠陥について、市場要求に応えることが困難であった。また、特許文献3には、市販のポリメチルメタクリレートをイミド化し、グルタルイミド構造単位とメチルメタクリレート構造単位を有する位相差が0に近いフィルムが開示されている。しかしながら、アクリル酸メチルを共重合した市販のポリメチルメタクリレートをイミド化すると、フィルム化の際に、異物が見られる場合があった。そのため、得られたイミド樹脂を光学用途で使用するには、改善の余地があった。また、特許文献4にはスチレンを必須成分とするグルタルイミド構造を有する樹脂組成物が開示されているが、スチレン樹脂を多量に含有するため耐溶剤性やコストなどの面で改善の余地があった。本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、外観や光学特性に優れた光学用成形体、特にフィルム及びそのようなフィルムを製造する為の樹脂組成物を提供する事を目的とする。」
(2)本件発明1について
ア 対比
甲1発明と本件発明1とを対比すると、甲1発明の「メチルメタクリレート」は本件発明1の「メタクリル酸メチル」に相当し、「プロパン酸,2,2-ジメチル-,メチルエステル」は「ピバル酸メチル」の別名であるから本件発明1の「ピバル酸メチル」に相当し、甲1発明の「プロパン酸,メチルエステル」は、「プロピオン酸メチル」の別名であるから本件発明1の「プロピオン酸メチル」に相当し、両者はともに組成物である。
以上より、両者は「メタクリル酸メチル、ピバル酸メチルおよびプロピオン酸メチルを含有する組成物」である点で一致し、以下の点において相違する。
<甲1相違点1>
メタクリル酸メチルの含有量が、本件発明1は「90質量%以上」と特定されているのに対し、甲1発明は「99.0%」である点
<甲1相違点2>
ピバル酸メチルの含有量が、本件発明1は「100質量ppm~600質量ppm」と特定されているのに対し、甲1発明は「0.2%」である点
<甲1相違点3>
プロピオン酸メチルの含有量が、本件発明1は「10質量ppm~2000質量ppm」と特定されているのに対し、甲1発明は「0.1%」である点
イ 判断
事案に鑑み、甲1相違点2について判断する。
甲第1号証の表2には、モデルPMMAの熱分解による液体生成物は99.3質量%であったこと、総モノマー回収は98.3%であったことが記載されている。表4には、単に「%」としか記載されていないものの、液体生成物の99.0%がメチルメタクリレートであることが記載されており、当該「%」が「質量%」であれば、99.0×99.3/100=98.307となり、これらの記載は整合するから、表4の「%」は質量%を意味するものと解される。
そうすると、甲1発明における「プロパン酸,2,2-ジメチル-,メチルエステル」の割合は0.2質量%、つまり2000質量ppmとなり、甲1相違点2は、実質的な相違点である。
ここで、甲第1号証の要約から明らかなとおり、甲1発明の目的は、PMMAのリサイクルによりメチルメタクリレートを得ることであり、「プロパン酸,2,2-ジメチル-,メチルエステル」は、甲1発明に含まれる複数の不純物のうちの1種として記載されているに過ぎない。このような事情を勘案すれば、偶々混在するプロパン酸,2,2-ジメチル-,メチルエステルに着目し、その含有量を「100質量ppm~600質量ppm」に調整する動機付けはなく、当該調整により、熱安定性が向上することは予測できない。
甲第2号証~甲第4号証には甲1相違点2についての記載はないから、これらの記載を参酌しても、上記判断に変わりはない。
ウ 小括
そうすると、甲1相違点1、甲1相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2~4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2~7について
本件発明2~7は、いずれも本件発明1を直接ないし間接的に引用した上で、さらにこれを特定するものであるから、上記(2)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2~4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)申立人の主張について
申立人は、申立書、令和7年11月5日提出の意見書のいずれにおいても、本件訂正後の本件発明1~7について、甲第1号証に基づく新規性、進歩性に関し、何ら主張していない。
(5)取消理由第3、申立理由1(甲第1号証に基づく新規性、進歩性)のまとめ
上記(2)~(3)に示したとおり、本件発明1~7は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2~4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2 取消理由第4(甲第5号証に基づく新規性、進歩性)、申立理由2(甲第5号証に基づく新規性、進歩性)について
取消理由第4と申立理由2とは、ともに甲第5号証に基づくものであるから、これらについてまとめて判断する。
(1)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。なお、甲第5号証は英語により記載されているため、以下、日本語訳により記載する。
「
[図:0001434161000005.jpg]
」(第2564頁)
「
[図:0001434161000006.jpg]
」(第2569頁)
以上より、特に表3に示されたモデルPMMAを熱分解して得られた液体製品に着目すると、甲第5号証には、
「モデルポリメチルメタクリレートを熱分解して得られる、以下の重量%割合で各成分を含む液体製品
[図:0001434161000007.jpg]
」
が記載されていると認める(以下「甲5発明」という。)。
(2)本件発明1について
ア 対比
甲5発明と本件発明1とを対比すると、甲5発明の「メチルメタクリレート」は本件発明1の「メタクリル酸メチル」に相当し、「プロパン酸,2,2-ジメチル-メチルエステル」は「ピバル酸メチル」の別名であるから本件発明1の「ピバル酸メチル」に相当し、甲5発明の「プロパン酸,メチルエステル」は、「プロピオン酸メチル」の別名であるから本件発明1の「プロピオン酸メチル」に相当する。また、甲5発明の「液体製品」は本件発明1の「組成物」に相当する。さらに、甲5発明におけるメチルメタクリレートの割合は「99.0重量%」であるから、本件発明1における「メタクリル酸メチルの含有量が90質量%以上」に一致し、甲5発明におけるプロパン酸,メチルエステルの割合は「0.12重量%」であるから、本件発明1における「プロピオン酸メチルの含有量が10質量ppmを超え2000質量ppm以下」と一致する。
そうすると、両者は以下の点で一致する。
「メタクリル酸メチル、ピバル酸メチルおよびプロピオン酸メチルを含有する組成物であって、
前記組成物全体に占める前記メタクリル酸メチルの含有量が90質量%以上であり、
前記組成物全体に占める前記プロピオン酸メチルの含有量が10質量ppm~2000質量ppmである、組成物。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<甲5相違点1>
ピバル酸メチルの含有量が、本件発明1は「100質量ppm~600質量ppm」と特定されているのに対し、甲5発明は「0.12重量%」である点
イ 判断
まず、甲5発明のプロパン酸,2,2-ジメチル-メチルエステルの割合は0.12重量%であり、つまり1200質量ppmであるから、甲5相違点1は実質的な相違点である。
次に、甲第5号証の要約から明らかなとおり、甲5発明の目的は、PMMAのリサイクルによりメチルメタクリレートを得ることであり、「プロパン酸,2,2-ジメチル-メチルエステル」は、甲5発明に含まれる複数の不純物のうちの1種として記載されているに過ぎない。このような事情を勘案すれば、偶々混在するプロパン酸,2,2-ジメチル-メチルエステルに着目し、その含有量を「100質量ppm~600質量ppm」に調整する動機付けはなく、当該調整により、熱安定性が向上することは予測できない。
甲第2号証~甲第4号証には甲5相違点1についての記載はないから、これらの記載を参酌しても、上記判断に変わりはない。
ウ 小括
そうすると、本件発明1は、甲第5号証に記載された発明ではなく、甲第5号証に記載された発明、及び、甲第2~4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2~7について
本件発明2~7は、いずれも本件発明1を直接ないし間接的に引用した上で、さらにこれを特定するものであるから、上記(2)と同様の理由により、甲第5号証に記載された発明ではなく、甲第5号証に記載された発明、及び、甲第2~4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)申立人の主張について
申立人は、申立書、令和7年11月5日提出の意見書のいずれにおいても、本件訂正後の本件発明1~7について、甲第5号証に基づく新規性、進歩性に関し、何ら主張していない。
(5)取消理由第4、申立理由2(甲第5号証に基づく新規性、進歩性)のまとめ
上記(2)~(3)に示したとおり、本件発明1~7は、甲第5号証に記載された発明ではなく、甲第5号証に記載された発明、及び、甲第2~4号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3 取消理由第5(甲第6号証に基づく新規性、進歩性)、申立理由3(甲第6号証に基づく新規性、進歩性)について
取消理由第5と申立理由3とは、ともに甲第6号証に基づくものであるから、これらについてまとめて判断する。
(1)甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。なお、甲第6号証はフランス語により記載されているため、以下、日本語訳により記載する。
「
[図:0001434161000008.jpg]
[図:0001434161000009.jpg]
」(第3頁第22行目~第4頁第17行目)
「
[図:0001434161000010.jpg]
」(第6頁第19~32行目)
以上より、甲第6号証の第4頁第3~17行目に記載されている重合反応に供されるメタクリル酸メチルの成分に着目すると、
「ポリメタクリル酸メチル重合に供されるメタクリル酸メチルであって、以下の不純物を含む純度99.9~99.97%のメタクリル酸メチル
[図:0001434161000011.jpg]
」
が記載されていると認める(以下「甲6発明」という。)。
(2)本件発明1について
ア 対比
甲6発明と本件発明1とを対比すると、甲6発明の「メタクリル酸メチル」は本件発明1の「メタクリル酸メチル」に相当し、「ピバル酸メチル」は本件発明1の「ピバル酸メチル」に相当し、甲6発明の「プロピオン酸メチル」は本件発明1の「プロピオン酸メチル」に相当する。また、甲6発明の「メタクリル酸メチル」は不純物との混合物であり、本件発明1の「組成物」に相当するから、両者は「メタクリル酸メチル、ピバル酸メチルおよびプロピオン酸メチルを含有する組成物」である点で一致し、以下の点において相違する。
<甲6相違点1>
メタクリル酸メチルの含有量が、本件発明1は「90質量%以上」と特定されているのに対し、甲6発明は「純度99.9~99.97%」である点
<甲6相違点2>
本件発明1は「ピバル酸メチルの含有量が100質量ppm~600質量ppm以下」と特定されているのに対し、甲6発明は「イソ酪酸メチルとピバル酸メチルの合計の含有割合が60ppm」である点
<甲6相違点3>
プロピオン酸メチルの含有量が、本件発明1は「10質量ppm~2000質量ppm」と特定されているのに対し、甲6発明は「5ppm未満」である点
イ 判断
事案に鑑み、甲6相違点2について判断する。
不純物の割合や混合物における各成分の濃度を示す際に、質量%や質量ppmを使用することは通常であり、甲第6号証には、各成分の含有割合について「重量%」の記載しかないことからみても、甲6発明における%は質量%であり、ppmは質量ppmを意味するものと解される。
そうすると、甲6発明におけるイソ酪酸メチルとピバル酸メチルの合計含有量は60質量ppmとなり、ピバル酸メチルの含有量は高々60質量ppmと認められるから、甲6相違点2は実質的な相違点である。
次に、「ピバル酸メチル」は、甲6発明に不純物として含まれているに過ぎないことを勘案すれば、複数の不純物の1種として偶々混在するピバル酸メチルに着目し、その含有量を「100質量ppm~600質量ppm」に調整する動機付けはなく、当該調整により、熱安定性が向上することは予測できない。
ウ 小括
そうすると、甲6相違点1、甲6相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2、3、5~7について
本件発明2、3、5~7は、いずれも本件発明1を直接ないし間接的に引用した上で、さらにこれを特定するものであるから、上記(2)と同様の理由により、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)申立人の主張について
申立人は、申立書、令和7年11月5日提出の意見書のいずれにおいても、本件訂正後の本件発明1~3、5~7について、甲第6号証に基づく新規性、進歩性に関し、何ら主張していない。
(5)取消理由第5、申立理由3(甲第6号証に基づく新規性、進歩性)のまとめ
上記(2)~(3)に示したとおり、本件発明1~3、5~7は、甲第6号証に記載された発明ではなく、甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
4 取消理由第6(サポート要件)、申立理由4(サポート要件)について
取消理由第6と申立理由4とは、ともにサポート要件に関するものであるから、これらについてまとめて判断する。
(1)特許法第36条第6項第1号に規定する要件の判断基準
一般に、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、本件明細書のサポート要件の存在は、本件特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。
(2)本件課題
本件明細書には
「【0007】
本開示は、上記事情に鑑み、成形体の熱分解性を制御することができる組成物、この組成物を用いて得られる重合体、硬化物および成形体を提供することを課題とする。また、本開示は、ポリメタクリル酸メチルの製造方法を提供することを課題とする。」
と記載されていることから、本件課題は、「成形体の熱分解性を制御することができる組成物、この組成物を用いて得られる重合体、硬化物および成形体を提供すること」であると認められる。
(3)検討
本件発明1は、「前記組成物全体に占める前記メタクリル酸メチルの含有量が90質量%以上であり、
前記組成物全体に占める前記ピバル酸メチルの含有量が100質量ppm~600質量ppmであり、
前記組成物全体に占める前記プロピオン酸メチルの含有量が10質量ppm~2000質量ppmである」との特定事項を備えるものである。
これに対し、本件明細書には、上記特定事項に関し、以下のとおり記載されている。
「【0013】
後述する実施例に示すように、メタクリル酸メチルを含む組成物に対してピバル酸メチルおよびプロピオン酸メチルを含有させたうえでピバル酸メチルおよびプロピオン酸メチルの含有量を特定の上記範囲に設定することにより、成形体(重合体、具体的にはメタクリル酸メチルの単独重合体もしくは共重合体)のガラス転移点を維持しながら、組成物を用いて形成した成形体の5%重量減少温度を向上させることができる。その結果、本開示の組成物は、熱分解しにくく、成形体としたときに所望の熱安定性を付与することができ、耐熱性を高めることができる。一方、本開示の組成物を用いて形成した成形体に含まれるポリメタクリル酸メチルは、熱安定性が高められていても熱分解性を維持している。そのため、本開示の組成物は、成形体としたときに高い熱安定性と使用後の優れたリサイクル性とを併せ持つ特性を実現でき、成形体の熱分解性を制御することができる。」
「【0020】
(ピバル酸メチル)
・・・本開示の組成物において、メタクリル酸メチルに対して所定の含有量でピバル酸メチルおよび後述するプロピオン酸メチルが共存することにより、組成物の保管安定性を改善し、または成形体の熱安定性を改善できる。
【0021】
組成物全体に占めるピバル酸メチルの含有量は、上記範囲内で適宜に決定することができ、例えば、組成物の保管安定性の観点および/または成形体の熱分解性を制御する観点からは、組成物の全質量に対して、10質量ppm以上であることが好ましく、50質量ppm以上であることがより好ましく、100質量ppm以上であることがさらに好ましい。」
「【0023】
(プロピオン酸メチル)
・・・本開示の組成物において、メタクリル酸メチルに対して所定の含有量でプロピオン酸メチルおよび上記ピバル酸メチルが共存することにより、組成物の保管安定性を改善し、または成形体の熱安定性を改善できる。
【0024】
組成物全体に占めるプロピオン酸メチルの含有量は、上記範囲内で適宜に決定することができ、例えば、組成物の保管安定性の観点および/または成形体の熱分解性を制御する観点からは、組成物の全質量に対して、10質量ppm以上であることが好ましく、50質量ppm以上であることがより好ましく、100質量ppm以上であることがさらに好ましい。」
これらの記載から、本件発明において、その課題を解決するために、ピバル酸メチルとプロピオン酸メチルを組成物に配合しているものと認められ、ピバル酸メチルのさらに好ましい配合量は「100質量ppm以上」であり、プロピオン酸メチルの好ましい配合量は「10質量ppm以上」であると認められる。
加えて、本件明細書には、ピバル酸メチルの配合量を300質量ppmとし、プロピオン酸メチルの配合量を100~2000質量ppmとした実施例とともに、ピバル酸メチルの配合量を300質量ppmとし、プロピオン酸メチルを配合しない比較例が示されており、当該実施例において、熱分解性が抑制されていることが認められる。
そうすると、本件明細書には、ピバル酸メチル及びプロピオン酸メチルを併用することにより、成形体の熱分解性を制御し得る旨が記載されており、それらの好ましい配合量は、ピバル酸メチルは100質量ppm以上であり、プロピオン酸メチルは10質量ppm以上であることも記載されており、実施例において成形体の熱分解性を制御し得ることが確認されているのであるから、当業者であれば、配合量の多少により効果の大小が影響されることはあるとしても、好ましい配合割合とされるピバル酸メチルを100質量ppm以上、プロピオン酸メチルを10質量ppm以上含む組成物は、これらの成分を含有しない組成物に比べれば、成形体の熱分解性を制御し得ると認識できると認められる。
(4)小括
以上より、本件発明1は、本件課題を解決できると当業者が認識できるものであり、発明の詳細な説明に記載された発明である。本件発明2~7についても、同様である。
(5)申立人の主張について
ア 申立人は、令和7年11月5日に提出した意見書において、本件訂正後の本件発明1~7について、サポート要件に関し、以下のとおり主張している。
<主張1>本件明細書には、どのような作用機序により、成形体の熱分解性を制御できるのかについて何ら説明されておらず、限られた実施例から、ピバル酸メチルの含有量が100質量ppm~600質量ppmであり、プロピオン酸メチルの含有量が10質量ppm~2000質量ppmという広範囲に亘って成形体の熱分解を制御することができることを当業者が認識できるとはいえない(意見書p.4~5)
<主張2>比較例の0質量ppmと実施例1の100質量ppmの間のどこで、成形体の熱分解性を制御できる指標の1つである5%重量減少温度が急激に上昇するのかは不明である(意見書p.5)
<主張3>本件明細書の作用機序に基づかない定性的な記載を、実験成績証明書による後付けの追試結果で補完することは妥当なものではない(意見書p.6~9)
<主張4>本件明細書の実施例では、組成物のピバル酸メチル及びプロピオン酸メチルの含有量を直接測定するのではなく、メタクリル酸メチルへのピバル酸メチル及びプロピオン酸メチルの添加量を以てピバル酸メチル及びプロピオン酸メチルの含有量とされているから、実施例1~3及び比較例1によっては訂正発明の効果を確認できるとはいえない(意見書p.10~12)
<主張5>特に、訂正発明4はメタクリル酸メチルが再生メタクリル酸メチルである態様を包含し、再生メタクリル酸メチルには、大量にピバル酸メチル及びプロピオン酸メチルを含む蓋然性が高いため、実施例1~3及び比較例1によっては訂正発明の効果を確認できるとはいえない(意見書p.13)
イ 主張1につき、上記(3)に示したとおり、当業者であれば、配合量の多少により効果の大小が影響されることはあるとしても、これらの成分を含有しない組成物に比べれば、成形体の熱分解性を制御し得ると認識できると認められるから、主張1は採用できない。
ウ 主張2につき、本件課題は、成形体の熱分解性を制御することであって、申立人が主張するような「急激に上昇すること」を要するものではないから、主張2は採用できない。
エ 主張3につき、実験成績証明書の採否にかかわらず、上記(3)に示したとおり、当業者であれば、本件発明が本件課題を解決できることを、本件明細書の記載から認識できると認められるから、主張3は採用できない。
オ 主張4につき、本件明細書の【0014】には「メタクリル酸メチルは、本開示の目的を損なわない範囲内で、かつ本開示の組成物、硬化物または成形体の組成(成分および含有量)を満たす限りにおいて、不可避不純物以外にも、ピバル酸メチル、プロピオン酸メチル、後述するその他の成分(特に低含有量成分)、溶媒などとの混合物として用いることもできる。」と記載されていることから、本件発明において特定されるピバル酸メチル及びプロピオン酸メチルの含有量は、原料のメタクリル酸メチルにあらかじめ含まれていたもの、原料のメタクル酸メチルに後から添加したものを区別することなく、それらの合計量であると認められる。その上で、本件明細書の【0068】には「組成物1の組成(ピバル酸メチルおよびプロピオン酸メチルの含有量)を表1にも示す」と記載されており、通常の日本語として解すると、「組成物の組成」が記載されているものと認められ、申立人が主張するような添加量を以て含有量とした旨の記載はない。また、表1には「組成物の組成」が記載されていると解釈することにより、明らかな技術的不整合が生じるわけでもない。このため、主張4は採用できない。
カ 主張5につき、実施例1~3及び比較例1に使用されたメタクリル酸メチルが再生メタクリル酸メチルである旨の記載は存在しないし、本件発明において特定されるピバル酸メチル及びプロピオン酸メチルの含有量は、原料のメタクリル酸メチルにあらかじめ含まれていたもの、原料のメタクル酸メチルに後から添加したものを区別することなく、それらの合計量であると認められるから、これらの成分を大量に含む再生メタクリル酸メチルを用いる際には、何らかの対策を講じ、合計量が本件発明の範囲内となるようにすることは当然である。このため、主張5は採用できない。
(6)取消理由第6、申立理由4(サポート要件)のまとめ
以上より、本件発明1~7は、本件発明の詳細な説明に記載されたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、申立書に記載した取消理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、上記結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700454