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特許異議申立

2025-700702

顆粒状豆乳粉末の製造方法、及び顆粒状豆乳粉末

審判番号
2025-700702
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-029763
登録番号
7612081
請求日
2025年07月08日
審決日
2026年06月08日
公報発行日
2026年09月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】マルサンアイ株式会社
  • 【権利者代理人】加藤 竜太
  • 【権利者代理人】濱野 愛
  • 【異議申立人】山田 友則
審判長/審判官
  • 審判長 柴田 昌弘
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 壷内 信吾
分類
P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7612081号発明「顆粒状豆乳粉末の製造方法、及び顆粒状豆乳粉末」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7612081号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正することを認める。 特許第7612081号の請求項1、2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7612081号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)3月28日を国際出願日とする特願2023-579722号の一部を令和6年2月29日に新たな特許出願(特願2024-29763号)としたものであって、同年12月26日にその特許権の設定登録(請求項の数2)がされ、令和7年1月10日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月8日に特許異議申立人 山田 友則(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がされ、同年8月1日に特許異議申立人より手続補正書(方式)が提出され(以下、前記手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書のことを、単に「特許異議申立書」という。)、同年12月10日付けで取消理由が通知され(以下、「取消理由通知」という。)、令和8年2月12日に特許権者 マルサンアイ株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされるとともに意見書が提出され、同年同月27日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年4月2日に特許異議申立人より意見書の提出がされたものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「平均粒子径が220μm以上500μm以下であり、賦形剤を含まない、顆粒状豆乳粉末(ただし、牛乳を含むものを除く)」(以下、「訂正前の特許発明1」という。)と記載されているのを、「平均粒子径が220μm以上500μm以下であり、賦形剤を含まない、顆粒状豆乳粉末(ただし、牛乳を含むもの、及び、カゼインナトリウムを含むものを除く)」(以下、「訂正発明1」という。)に訂正する。請求項1を引用する請求項2についても、同様に訂正する。 (2)一群の請求項について 本件訂正後の請求項1、2に対応する訂正前の請求項1、2について、請求項2は請求項1を引用するものであって、訂正事項1の訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。よって、訂正前の請求項1、2に対応する訂正後の請求項1、2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、訂正前の「顆粒状豆乳粉末(ただし、牛乳を含むものを除く)」について、さらに「カゼインナトリウム」が含まれるものを除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1による請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1において「顆粒状豆乳粉末」をさらに限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、訂正事項1による請求項1の「カゼインナトリウム」を含むものを除く訂正は、本件特許明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 請求項1の記載を引用する請求項2についても同様である。 (2)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は令和8年4月2日に提出の意見書の第6頁(ウ)において、おおむね以下の点を主張している。 訂正発明1は顆粒状豆乳粉末に関する発明、特公昭60-52786号公報(後記第4の7に示す甲1)に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)及び特公昭60-54014号公報(後記第4の7に示す甲7)に記載された発明(以下、「甲7発明」という。)は乾燥豆乳の造粒物に関する発明であるため、訂正発明1、甲1発明、及び甲7発明の技術分野は関連している。また、特許権者も説明しているように、本件明細書の【0064】には「本発明の顆粒状豆乳粉末には、従来の豆乳粉末に配合され得る任意の成分が含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。」との記載がある。このため、訂正発明1で除かれた発明は、訂正前の特許発明1に含まれ、当業者であれば、本願の当初明細書等の全ての記載及び出願時の技術常識に照らして、出願当初から請求項に係る発明において技術的思想として含まれることが想定され、訂正前の特許発明1との間で技術的思想が顕著に異なるとはいえない。すなわち、甲1発明及び甲7発明は、訂正発明1と技術的思想として顕著に異なる発明とはいえない。そうすると、特許請求の範囲の請求項1に、「顆粒状豆乳粉末(ただし、牛乳を含むものを除く)」と記載されているのを、「顆粒状豆乳粉末(ただし、牛乳を含むもの、及び、カゼインナトリウムを含むものを除く)」に訂正したことは、請求項に係る発明と技術的思想として顕著に異なる発明を含まないことを明らかにする補正でないことから、新たな技術的事項を導入するものであり、この訂正は特許法第126条第5項の要件を満たさず、新規事項を追加するものであるから、同法第120条の5第9項に該当し、認められない。 そこで検討するに、訂正事項1は、甲1発明及び甲7発明との関係において、訂正前の特許発明1に含まれる「カゼインナトリウム」を除外しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、訂正事項1における、訂正前の特許発明1からの上記甲1発明及び甲7発明に係る「カゼインナトリウム」を除外する訂正は、当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を追加するものでなく、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものに該当しない。 よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。 3 独立特許要件について 本件においては、訂正前の全ての請求項1、2に対して特許異議の申立てがされているので、上記訂正事項に係る訂正については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 本件訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 平均粒子径が220μm以上500μm以下であり、賦形剤を含まない、顆粒状豆乳粉末(ただし、牛乳を含むもの、及び、カゼインナトリウムを含むものを除く)。 【請求項2】 粒度分布が以下の全てを満たす、請求項1に記載の顆粒状豆乳粉末。 ・D10が50μmである。 ・D50が250μmである。 ・D90が500μmである。」 第4 特許異議申立理由の要旨及び証拠方法 特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の要旨及び証拠方法は次のとおりである。なお、証拠方法として下記7に示す証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従い、甲第1号証~甲第11号証をそれぞれ順に「甲1」のようにいう。また、特許異議申立理由の番号は当審が仮に付与した。 1 申立理由1-1(甲1に基づく新規性欠如) 本件特許発明1、2は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由1-2(甲7に基づく新規性欠如) 本件特許発明1、2は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲7に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 申立理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如) 本件特許発明1、2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 4 申立理由2-2(甲7に基づく進歩性欠如) 本件特許発明1、2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲7に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 5 申立理由2-3(甲9に基づく進歩性欠如) 本件特許発明1、2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲9、10に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 6 申立理由2-4(甲11に基づく進歩性欠如) 本件特許発明1、2は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲11、10に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 7 特許異議申立人の提出した証拠方法 甲1:特公昭60-52786号公報 甲2:Standard Specification for Woven Wire Test Sieve Cloth and Test Sieves、ASTM International、2020年、p.1-12 甲3:株式会社アンディ、“カゼインナトリウム(カゼインNa)とは?その用途や安全性”、[online]、更新日:2019年11月1日、[取得日 2025年5月16日]、取得先<たべるご、https://taberugo.net/11> 甲4:特開2004-97119号公報 甲5:松村康生、松宮健太郎、小川晃弘 監修、「食品の界面制御技術と応用 -開発現場と研究最前線を繋ぐ-」、第1刷、株式会社シーエムシー出版、2011年7月29日、p.232-233 甲6:公益社団法人日本薬学会、“薬学用語解説「賦形剤」”、[online]、作成日:2023年7月22日、更新日:2024年3月1日、[取得日 2025年5月16日],取得先<https://www.pharm.or.jp/words/word00729.html> 甲7:特公昭60-54014号公報 甲8:農林水産省、「JAS1800、日本農林規格、豆乳類」、1981年11月16日制定、2024年3月29日改正 甲9:特公昭51-26495号公報 甲10:吉田照男、「最近の食品粉体粒子の設計」、粉体工学会誌、2000年11月10日、第37巻、第11号、p.819-825 甲11:特公昭61-1103号公報 また、特許異議申立人は、令和8年4月2日に提出した意見書に添付して、次の参考資料を提出している。 参考資料1-1:産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第19回審査基準専門委員会ワーキンググループ 配布資料、“資料1 「除くクレーム」とする補正に関する審査基準の改訂について” 、[online]、令和8年3月18日、特許庁、[取得日 令和8年3月24日]、 取得先<https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/kijun_wg/document/l9-shiryou/003.pdf> 参考資料1-2:産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第19回審査基準専門委員会ワーキンググループ 議事次第・配布資料一覧、[online]、令和8年3月17日、特許庁、[取得日 令和8年3月25日]、取得先<https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/kijun_wg/19-shiryou.html> 参考資料1-3:産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会 第19回審査基準専門委員会ワーキンググループ 議事要旨、[online]、令和8年3月19日、特許庁、[取得日 令和8年3月26日]、取得先<https://www.jpo. go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/kijun_wg/19-gijiyoushi.html> 参考資料2-1:食品安全委員会、“ファクトシート<令和6年7月23日作成>アレルゲンを含む食品(牛乳)”、[online]、令和6年7月23日、内閣府、[取得日 令和8年3月25日]、 取得先<https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/allergen.data/factsheets_Allergy_Milk.pdf> 参考資料2-2:食品安全委員会、“食品安全情報マップ、 アレルゲン”、[online] 、内閣府、[取得日 令和8年3月25日]、取得先<https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/allergen.html> 参考資料3:“厚生労働科学研究班による食物アレルギー の栄養食事指導の手引き2017”、「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2017」 検討委員会、平成29年(2017年) 参考資料4:マルサンアイ株式会社、“植物性ミルク”、[online]、[取得日 令和8年4月1日]、 取得先<https://www.marusanai.co.jp/special/shokubutsusei-milk/?utm_source=chatgpt.com> 参考資料5:北原文雄 監修、“分散・凝集の解明と応用技術”、株式会社テクノシステム、1992年6月19日、p.3~9 第5 取消理由の要旨 請求項1、2に係る特許に対して、当審が取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。 1 取消理由1-1(甲1に基づく新規性欠如) 本件特許発明1は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、その発明についての特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。なお、該取消理由は、上記申立理由1-1に包含される。 2 取消理由1-2(甲7に基づく新規性欠如) 本件特許発明1は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲7に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、その発明についての特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。なお、該取消理由は、上記申立理由1-2に包含される。 3 取消理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如) 本件特許発明1、2は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。なお、該取消理由は、上記申立理由2-1と同旨である。 4 取消理由2-2(甲7に基づく進歩性欠如) 本件特許発明1、2は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲7に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。なお、該取消理由は、上記申立理由2-2と同旨である。 第6 取消理由についての当審の判断 取消理由1-1、取消理由2-1、申立理由1-1、申立理由2-1は、主たる証拠が共通するから、以下にまとめて判断を示す。取消理由1-2、取消理由2-2、申立理由1-2、申立理由2-2は同様の理由からまとめて判断を示す。 以下に示すとおり、当審は、特許権者に通知した取消理由通知の理由及び特許異議申立人が申し立てた申立理由1-1、申立理由2-1では、本件特許発明1、2に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。 1 取消理由1-1(甲1に基づく新規性欠如)及び取消理由2-1(甲1に基づく進歩性欠如)について (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「豆腐製造用原料組成物およびその製造法ならびに豆腐の製造法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、記載事項の摘記に際し、半角の記号、数字等を全角に改めた部分がある。下線は当審で付したものである。 ・「特許請求の範囲 1 熱湯に対する溶解度80%以上、熱湯に対する分散度90%以上、加熱による変性度20以下である加熱処理済の乾燥豆乳からなる豆腐製造用原料組成物。 2 乾燥豆乳が30~100メッシュを主体とした粒度分布を有するものである特許請求の範囲第1項記載の豆腐製造用原料組成物。 3 大豆より得られた豆乳にカゼインナトリウムを添加し、かつpHを7.2以上に調整した後噴霧乾燥し、その後造粒すると共に噴霧乾燥前までに豆乳の変性度が20以下になるような加熱処理を行なうことを特徴とする熱湯に対する溶解度80%以上、熱湯に対する分散度90%以上、加熱による変性度20以下である加熱処理済の乾燥豆乳からなる豆腐製造用原料組成物の製造法。 4 カゼインナトリウムを豆乳固形分に対し4%以上添加する特許請求の範囲第3項記載の豆腐製造用原料組成物の製造法。 5 乾燥豆乳の粒度が30~100メッシュを主体とする粒度となるように造粒する特許請求の範囲第3項記載の豆腐製造用原料組成物の製造法。 6 造粒を流動層造粒とする特許請求の範囲第3項または第5項記載の豆腐製造用原料組成物の製造法。 7 熱湯に対する溶解度80%以上、熱湯に対する分散度90%以上、加熱による変性度20以下である加熱処理済の乾燥豆乳と、溶解時間が4秒以上である顆粒状凝固剤とからなる豆腐製造用原料組成物。 8 顆粒状凝固剤が凝固剤とバインダーとしてのデキストリンからなる特許請求の範囲第7項記載の豆腐製造用原料組成物。 9 凝固剤がウロン酸またはアルドン酸のラクトンである特許請求の範囲第7項または第8項記載の豆腐製造用原料組成物。 10 大豆より得られた豆乳にカゼインナトリウムを添加し、かつpHを7.2以上に調整した後噴霧乾燥し、その後造粒とすると共に噴霧乾燥前までに豆乳の変性度が20以下になるような加熱処理を行なつた乾燥豆乳に、凝固剤とデキストリンと共に押出し造粒して顆粒状とした凝固剤を混合することを特徴とする熱湯に対する溶解度80%以上、熱湯に対する分散度90%以上、加熱による変性度20以下である加熱処理済の乾燥豆乳と、溶解時間が4秒以上である顆粒状凝固剤とからなる豆腐製造用原料組成物の製造法。 11 凝固剤に対しデキストリンの添加量が1.5~12.5%で、加水量が3~12%である特許請求の範囲第10項記載の豆腐製造用原料組成物の製造法。 12 デキストリンがDE10~20である特許請求の範囲第10項または第11項記載の豆腐製造用原料組成物の製造法。 13 熱湯に対する溶解度80%以上、熱湯に対する分散度90%以上、加熱による変性度20以下である加熱処理済の乾燥豆乳と、溶解時間が4秒以上である顆粒状凝固剤を混合し、これを熱湯中に添加して攪拌溶解せしめた後冷却することを特徴とする豆腐の製造法。」(第1頁第1欄第1行~第2頁第3欄第16行) ・「発明の詳細な説明 本発明は、豆腐製造用原料組成物およびその製造法ならびに豆腐の製造法に関し、さらに詳細には、熱湯に対する溶解性、分散性が非常に優れ、かつ簡易な方法で品質の安定した豆腐を作ることを可能にした豆腐製造用原料組成物およびその製造法と、該豆腐製造用原料組成物を使用した簡易な豆腐の製造法に関するものである。」(第3頁第3欄第17行~第24行) ・「本発明者らは、乾燥豆乳から豆腐を製造するに当り、従来法の如く煩雑な工程を要せずに常に安定した品質の豆腐を得るための技術を開発すべく研究を進めた結果、特定の性状を有する乾燥豆乳を使用することにより、従来の如く乾燥豆乳に水を加えて溶解せしめた後加熱して豆乳を作り、それから豆腐を製造するという技術常識とは異なつた簡単な豆腐の製造法が可能となるとの知見を得た。 すなわち、熱湯に対する溶解度80%以上、熱湯に対する分散度90%以上、加熱による変性度20以下である性状を有する乾燥豆乳を使用することにより、該乾燥豆乳を単に熱湯に添加、攪拌し凝固剤を添加するだけで豆腐を製造することができる。さらに上記特定された乾燥豆乳と特定された溶解時間の顆粒状凝固剤とを予め混合することにより、該混合物を単に熱湯中に添加し攪拌するだけで豆腐を製造することができる。」(第2頁第4欄第20行~第37行) ・「以上述べた各測定法によつて特定される乾燥豆乳、すなわち熱湯に対する溶解度80%以上、熱湯に対する分散度90%以上、加熱による変性度20以下の性状を有する乾燥豆乳は、熱湯中で速やかに、かつ均一に分散、溶解し、ママコを生ずることはほとんどない。また、該乾燥豆乳の粒度分布を30~100メッシュが主体とする乾燥豆乳に特定することによつて、熱湯中での分散、溶解をより改善することができる。」(第3頁第6欄第4行~第12行) ・「大豆から豆乳を得るための手段は特に限定されるものではなく、常法によればよい。一般的には大豆を浸漬した後、加水磨砕して呉を得、その後加熱するかあるいは加熱せずにおからを分離して豆乳を得る。 このようにして得た豆腐にカゼインナトリウムを添加する。カゼインナトリウムの添加は、最終製品である豆腐製造用原料組成物の熱湯に対する溶解性に影響を与え、カゼインナトリウムの添加量が少なくなりすぎると、豆腐製造用原料組成物の熱湯に対する溶熱性を顕著に向上させることができなくなるので、この点を考慮すれば、カゼインナトリウムの添加量としては豆乳固形分に対し4%以上が好ましい。またカゼインナトリウムの添加量が多くなりすぎると、豆腐製造用原料組成物から得られる豆腐の食感、風味を劣化させることになるので、該添加量を豆乳固形物に対し30%以下とするのが実際的である。 カゼインナトリウムの添加は豆乳の噴霧乾燥前までに行なわなければならないが、豆乳の噴霧乾燥前であれば特に限定されるものではない。」(第4頁第8欄第1行~第21行) ・「豆乳の粉末化は噴霧乾燥法による。噴霧乾燥法にも種々の方式があつて、大別すると、水平並流噴霧式、垂直下降並流遠心噴霧式、垂直上昇混流圧力噴霧式、垂直下降混流圧力噴霧式等に分けられる。本発明においては、これらいずれの方式を使用してもよいが、得られる粉末はある程度粒度の大きい方が造粒しやすく、また造粒後の熱湯に対する分散度の改善のためにも好適である。 豆乳を噴霧乾燥して得られた乾燥豆乳は、熱湯に対する分散度を向上させるために造粒されて豆腐製造用原料組成物となる。該造粒に当つては、乾燥豆乳の粒度が30~100メッシュを主体とする粒度分布になるように造粒するのが好ましい。そして、造粒方法としては流動層造粒法を採用するのが、本発明の目的を完全に達成するためには好ましく、強固な造粒物を生成する造粒方法は採用し難い。」(第5頁第9欄第11行~第27行) ・「比較実験例2 a・・・一晩浸漬した大豆を加水して磨砕し、得られた呉からおからを分離して豆乳を得、該豆乳を80℃30秒間加熱処理した後、カゼインナトリウムを豆乳固形分に対し8%添加し均一に溶解せしめた後、水酸化ナトリウムを適量添加して該豆乳をPH7.5に調整した。このように処理された豆乳を噴霧乾燥し、その後流動層造粒法によつて、30~100メッシュを主体とする粒度になるように造粒して豆腐製造用原料組成物(以下「本発明品」と称する)を得た。 b・・・aと同様の方法によつて得られた豆乳を80℃0秒間加熱処理した後、噴霧乾燥して豆腐製造用乾燥豆乳(以降「従来品」と称する)を得た。」(第5頁第10欄第27行~第42行) ・「比較実験例3 ・・・省略・・・ (vii)・・・常法により得られた豆乳を80℃30秒間加熱した後、噴霧乾燥して得られた乾燥豆乳30gに(C)の粉末状グルコノデルタラクトン1.40gを混合して豆腐製造用原料組成物を得た。 以上(v)(vi)(vii)の各試料を各々沸騰水300m1に添加し加熱攪拌し、該各試料の添加後50秒して溶器に流し、凝固させて豆腐を作つた。得られた豆腐のカード値、食感、ママコの有無についての結果を第3表に示す。 なお、(v)(vi)(vii)におけるグルコノデルタラクトンとしての添加量は同一である。 [図:0001439207000001.jpg] 第3表中、「食感」の項および「ママコ」の項は、5を良、1を不良とする5点採点法による。」(第7頁第14欄第43行~第8頁第15欄第17行) ・「実施例 1 大豆120kgを冷水に1夜浸漬後、水456kgと共に磨砕し、得られた呉からおからを分離して固形分9.5%の豆乳460kgを得た。次に該豆乳460kgにカゼインナトリウム3.28kgを添加し均一に混合溶解した後、水酸化ナトリウムを適量添加してpH7.20に調整し、その後80℃30秒間加熱処理を行ない、さらに濃縮、均質化処理を施した後、噴霧乾燥した。よつて得られた乾燥豆乳粉末は100~250メツシユを主体とする粒度であつた。次に該乾燥豆乳粉末300gを流動層造粒機で水を噴霧しながら造粒、乾燥した後、篩別により粒度がおおむね30~100メツシユを主体とする乾燥豆乳の造粒物を得、これを豆腐製造用原料組成物とした。該豆腐製造用原料組成物は、熱湯に対する溶解度88%、熱湯に対する分散度92%、加熱による変性度4であつた。」(第8頁第15欄第32行~第16欄第4行) イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特に実施例1の乾燥豆乳及びその製造方法について整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「大豆より得られた豆乳460kgにカゼインナトリウム3.28kgを添加し均一に混合溶解した後、水酸化ナトリウムを適量添加してpH7.20に調整し、その後80℃30秒間加熱処理を行ない、さらに濃縮、均質化処理を施した後、噴霧乾燥し、乾燥豆乳粉末を得、次に該乾燥豆乳粉末300gを流動層造粒機で水を噴霧しながら造粒、乾燥した後、篩別により得られた、粒度がおおむね30~100メツシユを主体とする乾燥豆乳の造粒物。」 (2)本件特許発明1について 以下、本件特許発明1と甲1発明とを対比、判断する。 ア 本件特許発明1と甲1発明との対比 甲1発明の「乾燥豆乳の造粒物」は、噴霧乾燥して得られた乾燥豆乳粉末を流動層造粒機で造粒したものであり、一次粒子が凝集した凝集粒子であるといえるところ、本件特許の明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0027】の記載によると「顆粒状粉末」といえるから、本件特許発明1の「顆粒状豆乳粉末」に相当する。また、甲1発明は、「大豆より得られた豆乳460kgにカゼインナトリウム3.28kgを添加し均一に混合溶解した後、水酸化ナトリウムを適量添加してpH7.20に調整し、その後80℃30秒間加熱処理を行ない、さらに濃縮、均質化処理を施した後、噴霧乾燥し、乾燥豆乳粉末を得、次に該乾燥豆乳粉末300gを流動層造粒機で水を噴霧しながら造粒、乾燥した後、篩別により得られた」ものであるから、構成成分として牛乳を含まない。よって、本件特許発明1の「ただし、牛乳を含むものを除く」との特定事項を満たす。 そうすると、両者の間の一致点及び一応の相違点は次のとおりである。 <一致点1> 「顆粒状豆乳粉末(ただし、牛乳を含むものを除く)。」 <相違点1-1> 顆粒状豆乳粉末の粒度に関して、本件特許発明1は「平均粒子径が220μm以上500μm以下であ」ると特定されるのに対し、甲1発明では、「粒度がおおむね30~100メツシユを主体とする」ものと特定される点。 <相違点1-2> 本件特許発明1は顆粒状豆乳粉末において「賦形剤を含まない」ことが特定されるのに対し、甲1発明ではそのようには特定されていない点。 <相違点1-3> 本件特許発明1は顆粒状豆乳粉末において「カゼインナトリウムを含むものを除く」ことが特定されるのに対し、甲1発明では「カゼインナトリウム」を含む点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点1-3について検討する。 甲1には、「熱湯に対する溶解性、分散性が非常に優れ、かつ簡易な方法で品質の安定した豆腐を作ることを可能にした豆腐製造用原料組成物およびその製造法と、該豆腐製造用原料組成物を使用した簡易な豆腐の製造法」の提供を課題とし(第3頁第3欄第17行~第24行)、該豆腐製造用原料組成物として、「熱湯に対する溶解度80%以上、熱湯に対する分散度90%以上、加熱による変性度20以下である性状を有する乾燥豆乳」を見出したこと(第2頁第4欄第20行~第37行)、該乾燥豆乳は、「大豆より得られた豆乳にカゼインナトリウムを添加し、かつpHを7.2以上に調整した後噴霧乾燥し、その後造粒すると共に噴霧乾燥前までに豆乳の変性度が20以下になるような加熱処理を行なうこと」によって得られること(第1頁第1欄第9行~第13行)、「カゼインナトリウムの添加は豆乳の噴霧乾燥前までに行わなければならない」こと(第4頁第8欄第19行~第21行)、そして、「カゼインナトリウムの添加は最終製品である豆腐製造用原料組成物の熱湯に対する溶解性に影響を与え、カゼインナトリウムの添加量が少なくなりすぎると、豆腐製造用原料組成物の熱湯に対する溶熱性(当審注:「溶解性」の誤記と認められる。)を顕著に向上させることができなくなる」こと(第4頁第8欄第7行~第12行)、が記載されている。 そうすると、甲1発明において、「カゼインナトリウム」は、熱湯に対する溶解性に影響を与えるものであるから、熱湯に対する溶解性に非常に優れた豆腐製造用原料組成物を提供するという課題を解決するために必須の構成であって、「カゼインナトリウム」を減じると、熱湯に対する溶解性が顕著に向上させることができなくなるのであるから、甲1発明において、「カゼインナトリウム」を除き、相違点1-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることには、阻害要因があるといえる。 そして、本件特許発明1は相違点1-3に係る発明特定事項を備えていても「分散性及び溶解性に優れる豆乳粉末」(【0014】)が得られるという、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人の主張について (ア)甲1に基づく進歩性欠如について 特許異議申立人は令和8年4月2日に提出の意見書の第7頁~第9頁において、おおむね以下の点を主張している。 カゼインは牛乳の主要なアレルゲンコンポーネントの1つであり、豆乳粉末は牛乳アレルギーと診断された患者が摂取することがあることから、当業者には、カゼインを含まない豆乳粉末を製造する動機付けがあるといえる。 したがって、甲1発明に接した当業者が上記相違点1-3に想到するに至る動機付けがある。 そこで検討するに、甲1発明の解決すべき課題は、「熱湯に対する溶解性、分散性が非常に優れ、かつ簡易な方法で品質の安定した豆腐を作ることを可能にした豆腐製造用原料組成物およびその製造法と、該豆腐製造用原料組成物を使用した簡易な豆腐の製造法」の提供であって(第3頁第3欄第17行~第24行)、牛乳アレルギーと診断された患者への摂取を解決すべき課題とするものではないから、甲1に接した当業者が甲1発明の解決すべき課題の「熱湯に対する溶解性」に影響を与える「カゼインナトリウム」を、牛乳アレルギーと診断された患者への摂取を考慮して、乾燥豆乳の造粒物の構成成分から取り除く変更をする動機があるとはいえない。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 (イ)甲1に基づく新たな進歩性欠如について また、特許異議申立人は同意見書の第11頁~第12頁において、おおむね以下のような甲1に基づく新たな進歩性欠如がある旨を主張している。 甲1の「比較実験例2」の「b」及び「比較実験例3」の「(vii)」に記載の発明を甲1A発明とした場合、本件特許発明1と甲1A発明とを対比すると、本件特許発明1は「平均粒子径が220μm以上500μm以下であり」及び「顆粒状粉末」と特定されるのに対し、甲1A発明では、平均粒子径を特定していない、噴霧乾燥して得られた乾燥豆乳である点で相違するが、甲1には、分散度向上のために乾燥豆乳を造粒すること、及び造粒にあたっては乾燥豆乳の粒度が30~100メッシュを主体とする粒度分布になるように造粒するのが好ましいことが記載されているから(第5頁第9欄第11行~第23行)、甲1に接した当業者が、甲1A発明から出発して優れた分散度を有する乾燥豆乳を製造するために、乾燥豆乳の粒度が30~100メッシュを主体とする粒度分布になるように造粒することに想到する動機付けがある。 そこで検討するに、甲1の「比較実験例2」の「b」には、「豆腐製造用乾燥豆乳(以下「従来品」と称する)」との記載があるように、従来品であり、また、「比較実験例3」の「(vii)」の豆腐製造用原料組成物は、第3表において、得られた豆腐の、「食感」及び「ママコ」の項において、評価がいずれも不良を意味する「1」であることから、甲1A発明は、甲1に記載の「熱湯に対する溶解性、分散性が非常に優れ、かつ簡易な方法で品質の安定した豆腐を作ることを可能にした豆腐製造用原料組成物およびその製造法と、該豆腐製造用原料組成物を使用した簡易な豆腐の製造法」の提供という課題を解決する発明ではないのは明らかであるといえる。そうすると、甲1に接した当業者が甲1A発明に基づいてその製造条件を変更する動機があるとはいえない。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 エ 本件特許発明1についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえないし、本件特許発明1は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について 本件特許発明2は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 取消理由1-2(甲7に基づく新規性欠如)及び取消理由2-2(甲7に基づく進歩性欠如)について (1)甲7に記載された事項等 ア 甲7に記載された事項 甲7には、「溶解性の良い乾燥豆乳の製造法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、記載事項の摘記に際し、半角の記号、数字等を全角に改めた部分がある。下線は当審で付したものである。 ・「特許請求の範囲 1 大豆より得られる豆乳にカゼインナトリウムを添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥することを特徴とする溶解性の良い乾燥豆乳の製造法。 2 カゼインナトリウムの添加量が豆乳固形分に対し3%以上である特許請求の範囲第1項記載の溶解性の良い乾燥豆乳の製造法。 3 大豆より得られる豆乳にカゼインナトリウムを添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥し、さらに造粒することを特徴とする溶解性の良い乾燥豆乳の製造法。 4 乾燥豆乳の粒度が30~100メッシュを主体とする粒度となるように造粒する特許請求の範囲第3項記載の溶解性の良い乾燥豆乳の製造法。 5 造粒を流動層造粒とする特許請求の範囲第3項または第4項記載の溶解性の良い乾燥豆乳の製造法。 6 大豆より得られる豆乳にカゼインナトリウムを添加し、かつpHを7.2以上に調整した後、噴霧乾燥することを特徴とする溶解性の良い乾燥豆乳の製造法。 7 大豆より得られた豆乳にカゼインナトリウムを添加し、かつpHを7.2以上に調整した後、噴霧乾燥し、さらに造粒することを特徴とする溶解性の良い乾燥豆乳の製造法。」(第1頁第1欄第1行~第2欄第5行) ・「発明の詳細な説明 本発明は、溶解性の良い乾燥豆乳の製造法に関し、さらに詳細には、水に対する溶解性が非常に優れ、短時間でほゞ完全に溶解する新規な乾燥豆乳の製造法を提供しようとするものである。」(第1頁第2欄第6行~第10行) ・「本発明者らは、このような点に着目し、従来の乾燥豆乳よりも優れた溶解性能を有する乾燥豆乳を得るべく鋭意研究を行ない、カゼインナトリウムの添加が非常に有益であるという知見を得、それを基に本発明を完成した。 本発明は、大豆より得られる豆乳にカゼインナトリウムを添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥することを基本的構成とする溶解性の良い乾燥豆乳の製造法である。」(第2頁第3欄第14行~第22行) ・「比較実験例 1 浸漬大豆を6倍加水で磨砕した後、おからを分離して豆乳を得、該豆乳を90℃で3秒間加熱した後、カゼインナトリウム無添加区A、豆乳固形分に対しカゼインナトリウム3%添加区B、豆乳固形分に対しカゼインナトリウム20%添加区Cの三区分に分け、pH7.0に調整した後、同一条件で噴霧乾燥して乾燥豆乳を得た。 次に上記各々の乾燥豆乳の水に対する溶解度を測定比較して、カゼインナトリウムの添加効果について調べた。なお、前記各々の乾燥豆乳の水に対する溶解度は、以下の方法によつて測定した。 溶解度測定法 (i)軽質ケイ酸アルミニウム0.05gと乾燥豆乳0.45gを混合して0.50gの試料とする。次に該試料0.50gを5℃の蒸留水20m1に添加し、遠沈管中で上下振盪5回行なつた後、15000r.p.m.30分間遠心分離し、得られた上澄液中の蛋白質をローリー・ホーリン法によつて定量する。 (ii)これとは別に、上記と同一種の試料0.50gを0.05Nの水酸化ナトリウム20m1に添加し、試験管用渦動攪拌機で30秒間混合した後、さらに80℃で加熱溶解し、その後冷却して、該溶液中の蛋白質をローリー・ホーリン法によつて定量する。 次に(ii)の方法によつて定量された蛋白質量に対する(i)の方法によつて定量された蛋白質量を百分率で表わし、これをもつて乾燥豆乳の水に対する溶解度とした。 上記比較実験による各乾燥豆乳の水に対する溶解度の測定結果を第1表に示す。 [図:0001439207000002.jpg] 第1表中、「添加量」とは豆乳固形分に対するカゼインナトリウムの添加量を%で表わし、「溶解度」とは上記溶解度測定法により測定された乾燥豆乳の溶解度を%で表わす。 第1表から明らかなように、豆乳にカゼインナトリウムを添加した場合と無添加の場合では、最終製品の乾燥豆乳の水に対する溶解度において後者の方が優れており、カゼインナトリウムの添加量が増えるにしたがつて溶解度も向上している。このような現象は、乾燥豆乳の水に対する溶解性の改善にカゼインナトリウムの添加が非常に有効であるという事実を明確にするものである。」(第2頁第4欄第3行~第3頁第5欄第7行) ・「次に、以上詳述した本発明の構成に基づいて得られる乾燥豆乳を、さらに造粒することによつて水に対する分散溶解性ばかりでなく、熱湯に対する分散溶解性も改善することが可能となる。乾燥豆乳の造粒に当つては、乾燥豆乳の粒度が30~100メッシュを主体とする粒度となるように造粒するのが、乾燥豆乳の分散性を向上させるためには好ましい。そして、該造粒方法としては、流動層造粒法を採用するのが本発明の目的を達成するためには好ましく、強固な造粒物を生成する造粒方法は採用し難い。なお、豆乳を噴霧乾燥することによつて、得られる乾燥豆乳の粒度を30~100メッシュを主体とする粒度とすることができるならば、上記した乾燥豆乳の造粒をあえて行なう必要はない。」(第4頁第7欄第11行~第25行) ・「比較実験例 3 a・・・・・・浸漬大豆を6倍加水で磨砕して得られた呉をおからと豆乳に分離した後、豆乳を80℃30秒間加熱し、その後該豆乳にカゼインナトリウムを豆乳固形分に対して6.4%添加し、さらに水酸化ナトリウムでpH7.21に調整した後、噴霧乾燥して乾燥豆乳aを得た。 b・・・・・・aと同一条件で得られた乾燥豆乳を、水をバインダーとして流動層造粒を行ない、造粒後篩別して30メツシユパス、100メツシユオンの造粒物bを得た。 c・・・・・・浸漬大豆を6倍加水して磨砕して得られた呉をおからと豆乳に分離した後、該豆乳を80℃30秒間加熱し、その後、aと同一条件で噴霧乾燥して乾燥豆乳cを得た。 上記a,bは本発明方法によつて得られた乾燥豆乳およびその造粒物、cは従来法によつて得られた乾燥豆乳である。」(第4頁第7欄第38行~第8欄第11行) ・「実施例 1 大豆6kgを冷水に1夜浸漬後、水22.8kgと共に磨砕し、得られた呉からおからを分離して固形分9.5%の豆乳23kgを得た。次に、該豆乳23kgにカゼインナトリウム164gを添加し均一に混合溶解した後、90℃3秒間加熱処理を行ない、さらに濃縮、均質化処理を施した後、噴霧乾燥して溶解性のよい乾燥豆乳粉末を得た。」(第4頁第8欄第44行~第5頁第9欄第7行) イ 甲7に記載された発明 甲7に記載された事項を、特に比較実験例3の乾燥豆乳の造粒物及びその製造方法について整理すると、甲7には次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されていると認める。 <甲7発明> 「浸漬大豆を6倍加水で磨砕して得られた呉をおからと豆乳に分離した後、豆乳を80℃30秒間加熱し、その後該豆乳にカゼインナトリウムを豆乳固形分に対して6.4%添加し、さらに水酸化ナトリウムでpH7.21に調整した後、噴霧乾燥して得られた乾燥豆乳を、水をバインダーとして流動層造粒を行ない、造粒後篩別して得られた、30メッシユパス、100メツシユオンの造粒物b」 (2)本件特許発明1について 以下、本件特許発明1と甲7発明とを対比、判断する。 ア 本件特許発明1と甲7発明との対比 甲7発明の「造粒物b」は、噴霧乾燥して得られた乾燥豆乳を流動層造粒したものであり、一次粒子が凝集した凝集粒子であるといえるところ、本件明細書の【0027】の記載によると「顆粒状粉末」といえるから、本件特許発明1の「顆粒状豆乳粉末」に相当する。また、甲7発明は、「大豆より得られた豆乳460kgにカゼインナトリウム3.28kgを添加し均一に混合溶解した後、水酸化ナトリウムを適量添加してpH7.20に調整し、その後80℃30秒間加熱処理を行ない、さらに濃縮、均質化処理を施した後、噴霧乾燥し、乾燥豆乳粉末を得、次に該乾燥豆乳粉末300gを流動層造粒機で水を噴霧しながら造粒、乾燥した後、篩別して得られた」ものであるから、構成成分として牛乳を含まない。よって、本件特許発明1の「ただし、牛乳を含むものを除く」との特定事項を満たす。 そうすると、両者の間の一致点及び一応の相違点は次のとおりである。 <一致点7> 「顆粒状豆乳粉末(ただし、牛乳を含むものを除く)。」 <相違点7-1> 顆粒状豆乳粉末の粒度に関して、本件特許発明1は「平均粒子径が220μm以上500μm以下であ」ると特定されるのに対し、甲7発明では、「30メッシユパス、100メツシユオン」であると特定される点。 <相違点7-2> 本件特許発明1は顆粒状豆乳粉末において「賦形剤を含まない」ことが特定されるのに対し、甲7発明ではそのようには特定されていない点。 <相違点7-3> 本件特許発明1は顆粒状豆乳粉末において「カゼインナトリウムを含むものを除く」ことが特定されるのに対し、甲7発明では「カゼインナトリウム」を含む点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点7-3について検討する。 甲7には、「溶解性の良い乾燥豆乳の製造法に関し、さらに詳細には、水に対する溶解性が非常に優れ、短時間でほゞ完全に溶解する新規な乾燥豆乳の製造法を提供」を課題とし(第1頁第2欄第6行~第10行)、「従来の乾燥豆乳よりも優れた溶解性能を有する乾燥豆乳を得るべく鋭意研究を行ない、カゼインナトリウムの添加が非常に有益であるという知見を得、それを基に本発明」である「大豆より得られる豆乳にカゼインナトリウムを添加し、均一に混合した後、噴霧乾燥することを基本的構成とする溶解性の良い乾燥豆乳の製造法」を完成したこと(第2頁第3欄第14行~第22行)、が記載されている。 そうすると、甲7発明において、「カゼインナトリウム」は、優れた溶解性能に非常に有益であるものであるから、溶解性の良い乾燥豆乳の製造法を提供するという課題を解決するために必須の構成であって、「カゼインナトリウム」を含まないものとすると乾燥豆乳の溶解性能が低下するのであるから、甲7発明において、「カゼインナトリウム」を除き、相違点7-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることには、阻害要因があるといえる。 そして、本件特許発明1は相違点7-3に係る発明特定事項を備えていても「分散性及び溶解性に優れる豆乳粉末」(【0014】)が得られるという、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人の主張について (ア)甲7に基づく進歩性欠如について 特許異議申立人は令和8年4月2日に提出の意見書の第9頁~第10頁において、おおむね以下の点を主張している。 カゼインは牛乳の主要なアレルゲンコンポーネントの1つであり、豆乳粉末は牛乳アレルギーと診断された患者が摂取することがあることから、当業者には、カゼインを含まない豆乳粉末を製造する動機付けがあるといえる。 したがって、甲7発明に接した当業者が上記相違点7-3に想到するに至る動機付けがある。 そこで検討するに、甲7発明の解決すべき課題は、「溶解性の良い乾燥豆乳の製造法に関し、さらに詳細には、水に対する溶解性が非常に優れ、短時間でほゞ完全に溶解する新規な乾燥豆乳の製造法を提供」であって(第1頁第2欄第6行~第10行)、牛乳アレルギーと診断された患者への摂取を解決すべき課題とするものではないから、甲7に接した当業者が甲7発明の解決すべき課題の「溶解性」に影響を与える「カゼインナトリウム」を、牛乳アレルギーと診断された患者への摂取を考慮して、造粒物bの構成成分から取り除く変更をする動機があるとはいえない。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 (イ)甲7に基づく新たな進歩性欠如について また、特許異議申立人は同意見書の第14頁~第16頁において、おおむね以下のような甲7に基づく新たな進歩性欠如がある旨を主張している。 甲7の「比較実験例1」に記載の「カゼインナトリウム無添加区A」及び「比較実験例3」の「c」に記載の発明を甲7A発明とした場合、本件特許発明1と甲7A発明とを対比すると、本件特許発明1は「平均粒子径が220μm以上500μm以下であり」及び「顆粒状粉末」と特定されるのに対し、甲7A発明では、平均粒子径を特定していない、噴霧乾燥して得られた乾燥豆乳である点で相違するが、甲7には、分散度向上のために乾燥豆乳を造粒すること、及び造粒にあたっては乾燥豆乳の粒度が30~100メッシュを主体とする粒度分布になるように造粒するのが好ましいことが記載されているから(第4頁第7欄第11行~第25行)、甲7に接した当業者が、甲7A発明から出発して優れた分散度を有する乾燥豆乳を製造するために、乾燥豆乳の粒度が30~100メッシュを主体とする粒度分布になるように造粒することに想到する動機付けがある。 そこで検討するに、甲7の「比較実験例1」に記載の「カゼインナトリウム無添加区A」は、第1表の「A」の「溶解度」の結果を受けて、「第1表から明らかなように、豆乳にカゼインナトリウムを添加した場合と無添加の場合では、最終製品の乾燥豆乳の水に対する溶解度において後者の方が優れており、カゼインナトリウムの添加量が増えるにしたがつて溶解度も向上している。このような現象は、乾燥豆乳の水に対する溶解性の改善にカゼインナトリウムの添加が非常に有効であるという事実を明確にするものである。」(第2頁第4欄第44行~第3頁第5欄第7行)と記載されており、また、「比較実験例3」の「c」は「cは従来法によつて得られた乾燥豆乳である。」との記載があるように、従来品であることから、甲7A発明は、甲7に記載の「溶解性の良い乾燥豆乳の製造法に関し、さらに詳細には、水に対する溶解性が非常に優れ、短時間でほゞ完全に溶解する新規な乾燥豆乳の製造法を提供」という課題を解決する発明ではないのは明らかであるといえる。そうすると、甲7に接した当業者が甲7A発明に基づいてその製造条件を変更する動機があるとはいえない。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 エ 本件特許発明1についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲7発明であるとはいえないし、本件特許発明1は甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について 本件特許発明2は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 小括 以上まとめると、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件特許発明1、2は、いずれも同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。 よって、本件特許の請求項1、2に係る特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないから、取消理由によっては取り消すことはできない。 第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は次のとおりである。 ・申立理由1-1(本件特許発明2に対する甲1に基づく新規性欠如) ・申立理由1-2(本件特許発明2に対する甲7に基づく新規性欠如) ・申立理由2-3(甲9に基づく進歩性欠如) ・申立理由2-4(甲11に基づく進歩性欠如) 以下、順に検討する。 1 申立理由1-1(本件特許発明2に対する甲1に基づく新規性欠如)について 上記第6 1(3)に記載のとおり、本件特許発明2は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明であるとはいえない。 2 申立理由1-2(本件特許発明2に対する甲7に基づく新規性欠如)について 上記第6 2(3)に記載のとおり、本件特許発明2は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲7発明であるとはいえない。 3 申立理由2-3(甲9に基づく進歩性欠如)について (1)甲9に記載された事項等 ア 甲9に記載された事項 甲9には、「豆乳粉末の製法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、記載事項の摘記に際し、半角の記号、数字等を全角に改めた部分がある。下線は当審で付したものである。 ・「特許請求の範囲 1 大豆から常法により得た豆乳に対し、100kg/cm2以上の高圧ホモゲナイズ処理と加熱温度90℃以下、濃縮温度50℃以下および濃縮時間10分以下の濃縮処理とを組合せて施したのち噴霧乾燥することを特徴とする豆乳粉末の製法。」(第1頁第1欄第14行~第19行) ・「すなわち本発明は、保存性が良好であり、かつ作業時の粘度の低い豆乳粉末を提供することを目的とするもので、大豆から常法によって得た豆乳に対し、高圧ホモゲナイズ処理および特定の条件下における濃縮処理を施したのち噴霧乾燥することを特徴とする。」(第1頁第2欄第3行~第8行) ・「以上の高圧ホモゲナイズ処理および濃縮処理を経た豆乳を次いで噴霧乾燥すれば、目的の豆乳粉末が得られる。この製品は長期間貯蔵しても溶解性の低下がなく良好な保存性を有している。」(第2頁第3欄第3行~第6行) ・「実施例 精選した丸大豆20kgを水洗後、水に8時間浸漬し46kgの浸漬大豆を得、これに60kgの水を加えながら磨砕し、攪拌しながら40℃で抽出後残渣(オカラ)を分離し豆乳92kg(固形分11.5%)を得た。この豆乳30kgを200kg/cm2の圧力で高圧ホモゲナイザーにかけながら濃縮器に送入し加熱温度70℃、濃縮温度43℃、濃縮時間3分の条件下に固形分19.8%に濃縮した。 次いで再び200kg/cm2の圧力で高圧ホモゲナイズ処理したのち噴霧乾燥を行ない豆乳粉末3.4kgを得た。」(第2頁第3欄第13行~第4欄第4行) イ 甲9に記載された発明 甲9に記載された事項を、特に実施例の豆乳粉末及びその製造方法について整理すると、甲9には次の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されていると認める。 <甲9発明> 「精選した丸大豆20kgを水洗後、水に8時間浸漬し46kgの浸漬大豆を得、これに60kgの水を加えながら磨砕し、攪拌しながら40℃で抽出後残渣(オカラ)を分離し豆乳92kg(固形分11.5%)を得、この豆乳30kgを200kg/cm2の圧力で高圧ホモゲナイザーにかけながら濃縮器に送入し加熱温度70℃、濃縮温度43℃、濃縮時間3分の条件下に固形分19.8%に濃縮し、次いで再び200kg/cm2の圧力で高圧ホモゲナイズ処理したのち噴霧乾燥を行なって得られた、豆乳粉末。」 (2)本件特許発明1について 以下、本件特許発明1と甲9発明とを対比、判断する。 ア 本件特許発明1と甲9発明との対比 甲9発明における「豆乳粉末」は、「精選した丸大豆20kgを水洗後、水に8時間浸漬し46kgの浸漬大豆を得、これに60kgの水を加えながら磨砕し、攪拌しながら40℃で抽出後残渣(オカラ)を分離し豆乳92kg(固形分11.5%)を得、この豆乳30kgを200kg/cm2の圧力で高圧ホモゲナイザーにかけながら濃縮器に送入し加熱温度70℃、濃縮温度43℃、濃縮時間3分の条件下に固形分19.8%に濃縮し、次いで再び200kg/cm2の圧力で高圧ホモゲナイズ処理したのち噴霧乾燥を行なって得られた」ものであるから、構成成分として牛乳及びカゼインナトリウムを含まない。よって、本件特許発明1における「豆乳粉末」の「ただし、牛乳を含むもの、及び、カゼインナトリウムを含むものを除く」との特定事項を満たす。 そうすると、両者の間の一致点及び一応の相違点は次のとおりである。 <一致点9> 「豆乳粉末(ただし、牛乳を含むもの、及び、カゼインナトリウムを含むものを除く)。」 <相違点9-1> 本件特許発明1は豆乳粉末において「顆粒状」であること、そして、その粒度に関して、「平均粒子径が220μm以上500μm以下であ」ると特定されるのに対し、甲9発明ではそのようには特定されていない点。 <相違点9-2> 本件特許発明1は顆粒状豆乳粉末において「賦形剤を含まない」ことが特定されるのに対し、甲9発明ではそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点9-1について検討する。 甲9には、甲9発明の「豆乳粉末」において、「顆粒状」とし、そして、その粒度を、「平均粒子径が220μm以上500μm以下」に設定することについては何ら記載されていないから、相違点9-1は実質的な相違点である。 また、他の証拠の記載を参照しても甲9発明において、「顆粒状」とし、そして、その粒度を、「平均粒子径が220μm以上500μm以下」に設定する動機となる記載はないから、甲9発明において、相違点9-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「分散性及び溶解性に優れる豆乳粉末」(【0014】)が得られるという、甲9発明並びに甲9及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人の主張について (ア)甲9に基づく進歩性欠如について 特許異議申立人は特許異議申立書の第26頁~第28頁において、おおむね以下の点を主張している。 甲9発明の課題は「保存性が良好であり、かつ作業時の粘度の低い豆乳粉末を提供することを目的とする」ものであり(第1頁第2欄第3行~第5行)、保存性に関して、「この製品は長期間貯蔵しても溶解性の低下がなく良好な保存性を有している」と記載があり(第2頁第3欄第5行~第6行)、長期間貯蔵しても溶解性が低下しないことを課題としていることが分かる。 一方、甲10には、「溶解性に重点を置く時、流動造粒法を選択することが多い。・・・溶解性の点で現段階では流動造粒に勝るものはないと考えられる。」と記載されている(第820頁左欄下から4行~右欄4行)。 このため、甲9に記載の豆乳粉末の製造方法において、溶解性を向上するために、甲9記載の噴霧乾燥に代えて、甲10記載の流動造粒法を選択することは当業者が通常に行う行為で、容易に想到し得たものであり、それにより溶解性が向上することも当業者に当然に予測できる効果である。 甲10にはまた、流動造粒によって得られる製品顆粒は100~500μmであることが記載されており(第823頁右欄第15行)、甲9に記載の豆乳粉末の製造方法において、噴霧乾燥に代えて、流動造粒法を選択すれば、豆乳粉末の造粒物が得られ、その粒径は造粒物の通常の粒径である100~500μmとなるものであり、当該粒径に格別の困難性はない。 以上より、本件特許発明1は、甲9および甲10発明から当業者が容易に想到できたものである。 そこで検討する。 甲9には、「本発明は、保存性が良好であり、かつ作業時の粘度の低い豆乳粉末を提供することを目的とする」(第1頁第2欄第3行~第5行)との記載、「この製品は長期間貯蔵しても溶解性の低下がなく良好な保存性を有している。」(第2頁第3欄第5行~第6行)との記載を総合して考慮すると、甲9発明は、長期間の溶解性の低下の抑制を課題として含むものであるといえる。他方、甲10には、粉体食品の溶解性の向上のために流動造粒法を選択できることが記載されるにすぎず、該流動造粒法が、粉体食品の長期間の溶解性の低下の抑制できることについては記載されていない。 そうすると、甲9及び10に接した当業者が甲9記載の噴霧乾燥に代えて、甲10記載の流動造粒法を選択する動機があるとはいえない。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 エ 本件特許発明1についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲9発明並びに甲9、甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2について 本件特許発明2は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲9発明並びに甲9、甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 申立理由2-4(甲11に基づく進歩性欠如)について (1)甲11に記載された事項等 ア 甲11に記載された事項 甲11には、「濃縮豆乳の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、記載事項の摘記に際し、半角の記号、数字等を全角に改めた部分がある。下線は当審で付したものである。 ・「特許請求の範囲 1 大豆を重合リン酸塩溶液と共に75~85℃の温度で磨砕し、該磨砕液より粕分を除去して豆乳を得、得られた豆乳のpHを7.0~8.0に調整して蛋白分解酵素を作用させたのち濃縮操作を実施することを特徴とする濃縮豆乳の製造方法。 2 蛋白分解酵素を作用させた豆乳のpHを4.50に調整した時の可溶区分中の総窒素量が豆乳中の総窒素量の20.0~50.0%の範囲内にある特許請求の範囲第1項記載の濃縮豆乳の製造方法。」(第1頁第1欄第1行~第10行) ・「本発明は、大豆臭がなく、風味良好な低粘性の濃縮豆乳の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、大豆を重合リン酸溶液と共に75~85℃の温度て磨砕し、該磨砕液より粕分を除去して豆乳を得、得られた豆乳のpHを7.0~8.0に調整し、中性又はアルカリ性蛋白分解酵素の単独もしくは混合物を作用させたのち濃縮操作を実施することにより大豆臭のない風味良好な低粘性の濃縮豆乳を製造する方法に関するものである。」(第1頁第1欄第12行~第20行) ・「上述の理由により風味良好な低粘性濃縮豆乳の出現が切望されていたが、従来の製造技術ではこれを達成することは困難であつた。」(第2頁第3欄第34行~第36行) ・「本発明者らは、前記の如き従来技術の問題点を改善せんがため、鋭意研究を重ねた結果、大豆を重合リン酸溶液と共に75~85℃の温度で磨砕し、得られた豆乳をアルカリ性とし、蛋白分解酵素を作用させたところ、豆乳の粘度が著しく低下する事実を見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到つた。」(第2頁第4欄第10行~第16行) ・「実施例3 谷式剥皮機で外皮を除去した剥皮大豆1部(重量部、以下同じ)に対し、重合リン酸塩を0.1%含有した88℃の抽出液を6部の割合で注ぎながら、湿式ピンミルで粗砕後砥石間隙250μとした特殊機化工業マイコロイダーを通過させ、85℃の大豆磨砕液を得た。得られた磨砕液を3500Gの遠心効果で稼動している横型連続遠心分離機に通し、粕分(おから)の除去してPH6.5、豆乳固形分9.5%の風味良好な豆乳を得た。得られた豆乳5000kgに10%の苛性ソーダ溶液を少量づつ加えてPHを7.5に調整後品温を40℃に保持し、天野製薬製プロテアーゼ「アマノ」P3160gを添加し、ゆるやかに攪拌しながら400℃で3時間作用させた。次いで80℃10分間の加熱により酵素を失活せしめたのち、品温80℃、均質化圧力150kg/cm2の条件で均質化処理を施して処理豆乳を得た。このものの総窒素量に対する可溶性窒素割合は32%であつた。 次いで上記の処理豆乳を三重効用蒸発装置を用いて豆乳固形分30%まで減圧濃縮を行ない、品温50℃で1500cpの粘度を有する低粘性の風味良好な濃縮豆乳を得た。得られた濃縮豆乳は、噴霧乾燥機(フィルターマットドライヤー、以下同じ)を用いて送風温度165℃、排風温度80℃、再乾燥温度80℃、冷却温度40℃の条件で噴霧乾燥し、水分3.0%の豆乳粉末330kgを得たが、この工程における所要時間は1.1時間てあつた。」(第5頁第9欄第28行~第10欄第11行) ・「実施例3の方法で得られた濃縮豆乳と対照濃縮豆乳を岩井機械工業製アトマイザー式噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥し、各々水分3.0%の豆乳粉末を得た。得られた各々の豆乳粉末の溶解性と粒度分布を比較した結果を第4表に示す。 [図:0001439207000003.jpg] 第4表に示す如く、実施例3の方法による濃縮豆乳から得られた豆乳粉末は、対照濃縮豆乳から得られた豆乳粉末と比較して、溶解時間が短時間であり、加水還元において使用が容易である。なお、第4表における溶解性(溶解時間)とは、20℃の水100m1を入れた300m1容ビーカー中に長さ3.5cmの電磁攪拌棒を投入し、東洋製作所(株)モデルB-2マグネチツクスターラ上に設置し、目盛中で回転攪拌しておき、別途秤取した試料2ダを上記ビーカー内に投入し、試料が完全溶解に要する時間(秒数)てあり、また粒度分布とは、80メッシュと100メッシュの金属篩を用いてふるい分けを行ない、全粉末量に対する各粒度の粉末量の割合(%)である。」(第6頁第11欄第1行~第12欄第14行) イ 甲11に記載された発明 甲11に記載された事項を、特に実施例3の豆乳粉末及びその製造方法について整理すると、甲11には次の発明(以下、「甲11発明」という。)が記載されていると認める。 <甲11発明> 「谷式剥皮機で外皮を除去した剥皮大豆1部(重量部、以下同じ)に対し、重合リン酸塩を0.1%含有した88℃の抽出液を6部の割合で注ぎながら、湿式ピンミルで粗砕後砥石間隙250μとした特殊機化工業マイコロイダーを通過させ、85℃の大豆磨砕液を得、得られた磨砕液を3500Gの遠心効果で稼動している横型連続遠心分離機に通し、粕分(おから)の除去してPH6.5、豆乳固形分9.5%の風味良好な豆乳を得、得られた豆乳5000kgに10%の苛性ソーダ溶液を少量づつ加えてPHを7.5に調整後品温を40℃に保持し、天野製薬製プロテアーゼ「アマノ」P3160gを添加し、ゆるやかに攪拌しながら400℃で3時間作用させ、次いで80℃10分間の加熱により酵素を失活せしめたのち、品温80℃、均質化圧力150kg/cm2の条件で均質化処理を施して処理豆乳を得、次いで上記の処理豆乳を三重効用蒸発装置を用いて豆乳固形分30%まで減圧濃縮を行ない、品温50℃で1500cpの粘度を有する低粘性の風味良好な濃縮豆乳を得、得られた濃縮豆乳を、噴霧乾燥機(フィルターマットドライヤー、以下同じ)を用いて送風温度165℃、排風温度80℃、再乾燥温度80℃、冷却温度40℃の条件で噴霧乾燥して得られた、水分3.0%の豆乳粉末。」 (2)本件特許発明1について 以下、本件特許発明1と甲11発明とを対比、判断する。 ア 本件特許発明1と甲11発明との対比 甲11発明における「豆乳粉末」は、「谷式剥皮機で外皮を除去した剥皮大豆1部(重量部、以下同じ)に対し、重合リン酸塩を0.1%含有した88℃の抽出液を6部の割合で注ぎながら、湿式ピンミルで粗砕後砥石間隙250μとした特殊機化工業マイコロイダーを通過させ、85℃の大豆磨砕液を得た。得られた磨砕液を3500Gの遠心効果で稼動している横型連続遠心分離機に通し、粕分(おから)の除去してPH6.5、豆乳固形分9.5%の風味良好な豆乳を得、得られた豆乳5000kgに10%の苛性ソーダ溶液を少量づつ加えてPHを7.5に調整後品温を40℃に保持し、天野製薬製プロテアーゼ「アマノ」P3160gを添加し、ゆるやかに攪拌しながら400℃で3時間作用させ、次いで80℃10分間の加熱により酵素を失活せしめたのち、品温80℃、均質化圧力150kg/cm2の条件で均質化処理を施して処理豆乳を得、次いで上記の処理豆乳を三重効用蒸発装置を用いて豆乳固形分30%まで減圧濃縮を行ない、品温50℃で1500cpの粘度を有する低粘性の風味良好な濃縮豆乳を得、得られた濃縮豆乳は、噴霧乾燥機(フィルターマットドライヤー、以下同じ)を用いて送風温度165℃、排風温度80℃、再乾燥温度80℃、冷却温度40℃の条件で噴霧乾燥して得られた」ものであるから、構成成分として牛乳及びカゼインナトリウムを含まない。よって、本件特許発明1における「豆乳粉末」の「ただし、牛乳を含むもの、及び、カゼインナトリウムを含むものを除く」との特定事項を満たす。 そうすると、両者の間の一致点及び一応の相違点は次のとおりである。 <一致点11> 「豆乳粉末(ただし、牛乳を含むもの、及び、カゼインナトリウムを含むものを除く)。」 <相違点11-1> 本件特許発明1は豆乳粉末において「顆粒状」であること、そして、その粒度に関して、「平均粒子径が220μm以上500μm以下であ」ると特定されるのに対し、甲11発明ではそのようには特定されていない点。 <相違点11-2> 本件特許発明1は顆粒状豆乳粉末において「賦形剤を含まない」ことが特定されるのに対し、甲11発明ではそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点11-1について検討する。 甲11には、甲11発明の「豆乳粉末」において、「顆粒状」とし、そして、その粒度を、「平均粒子径が220μm以上500μm以下」に設定することについては何ら記載されていないから、相違点11-1は実質的な相違点である。 また、他の証拠の記載を参照しても甲11発明において、「顆粒状」とし、そして、その粒度を、「平均粒子径が220μm以上500μm以下」に設定する動機となる記載はないから、甲11発明において、相違点11-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「分散性及び溶解性に優れる豆乳粉末」(【0014】)が得られるという、甲11発明並びに甲11及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人の主張について (ア)甲11に基づく進歩性欠如について 特許異議申立人は特許異議申立書の第28頁~第31頁において、おおむね以下の点を主張している。 甲11では応用例で得た豆乳粉末の溶解性を検証し、「実施例3の方法による濃縮豆乳から得られた豆乳粉末は、対照濃縮豆乳から得られた豆乳粉末と比較して、溶解時間が短時間であり、加水還元において使用が容易である。」と記載している(第6頁第12欄第1行~第4行)。 一方、甲10には、「溶解性に重点を置く時、流動造粒法を選択することが多い。・・・溶解性の点で現段階では流動造粒に勝るものはないと考えられる。」と記載されている(第820頁左欄下から4行~右欄4行)。 このため、甲11に記載の豆乳粉末の製造方法において、より容易に使用できるように溶解性を向上するため、甲11に記載の噴霧乾燥に代えて、甲10記載の流動造粒法を選択することは当業者が通常に行う行為で、容易に想到し得たものであり、それにより溶解性が向上することも当業者に当然に予測できる効果である。 甲10にはまた、流動造粒によって得られる製品顆粒は100~500μmであることが記載されており(第823頁右欄第15行)、甲9に記載の豆乳粉末の製造方法において、噴霧乾燥に代えて、流動造粒法を選択すれば、豆乳粉末の造粒物が得られ、その粒径は造粒物の通常の粒径である100~500μmとなるものであり、当該粒径に格別の困難性はない。 以上より、本件特許発明1は、甲11および甲10発明から当業者が容易に想到できたものである。 そこで検討する。 甲11には、「大豆臭がなく、風味良好な低粘性の濃縮豆乳の製造方法に関するものである。」(第1頁第1欄第12行~第13行)との記載、「風味良好な低粘性濃縮豆乳の出現が切望されていたが、従来の製造技術ではこれを達成することは困難であつた。」(第2頁第3欄第34行~第36行)との記載、「豆乳の粘度が著しく低下する事実を見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到つた。」(第2頁第4欄第14行~第16行)との記載があり、これらを総合して考慮すると、甲11発明は、風味良好な低粘性の濃縮豆乳の製造方法を提供することを課題として含むものであるといえる。他方、甲10には、粉体食品の溶解性の向上のために流動造粒法を選択できることが記載されるにすぎず、該流動造粒法が、大豆臭がなく、風味良好な低粘性の濃縮豆乳を製造できることについては記載されていない。 そうすると、甲11及び10に接した当業者が甲11記載の噴霧乾燥に代えて、甲10記載の流動造粒法を選択する動機があるとはいえない。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 エ 本件特許発明1についてのまとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲11発明並びに甲10、甲11及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明2について 本件特許発明2は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲11発明並びに甲10、甲11及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第8 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した申立理由及び令和8年4月2日に提出の意見書に記載した理由によっては、本件特許の請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700702

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