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特許異議申立

2026-700174

アルミニウム再生塊の製造方法、アルミニウム製再生缶構成部材の製造方法

審判番号
2026-700174
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-189880
登録番号
7735817
請求日
2026年02月26日
審決日
2026年07月17日
公報発行日
2026年08月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】アルテミラ製缶株式会社
  • 【権利者代理人】青山 正和
  • 【異議申立人】山田 友則
審判長/審判官
  • 審判長 佐藤 陽一
  • 審判官 井上 猛
  • 審判官 酒井 英夫
分類
P1651.113-Y (C22B) / P1651.121-Y (C22B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7735817号発明「アルミニウム再生塊の製造方法、アルミニウム製再生缶構成部材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7735817号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件の特許第7735817号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願(特願2021-189880号。以下「本願」という。)は、令和 3年11月24日の出願であって、令和 7年 9月 1日にその特許権の設定登録がされ、同年 9月 9日に特許掲載公報が発行されたものである。 本件は、その後、令和 8年 2月26日に、その請求項1~8(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である山田 友則(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、以下において、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明を「本件発明1」~「本件発明8」といい、総称して「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書及び図面を「本件明細書等」という。 「【請求項1】 JIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなる有底円筒状の筒状缶の開口部にJIS5000系のAl-Mg系アルミニウム合金からなる蓋が取り付けられた状態の使用済み蓋付き筒状缶を含む混合回収物に、有底円筒状の一体成形品で胴部に比べて縮径された口部にねじ部を有するJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるボトル状缶の前記ねじ部にJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるキャップが取り付けられた状態の使用済みJIS3000系キャップ付きボトル状缶からなるJIS3000系回収物を混ぜて溶解する溶解工程と、溶解されたアルミニウムの溶湯から再生塊を鋳造する鋳造工程とにより、JIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるアルミニウム再生塊を製造することを特徴とするアルミニウム再生塊の製造方法。 【請求項2】 前記溶解工程では、前記混合回収物に、JIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるボトル状缶の前記ねじ部にJIS5000系のAl-Mg系アルミニウム合金からなるキャップが取り付けられた状態の使用済みキャップ付きボトル状缶が含まれることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム再生塊の製造方法。 【請求項3】 前記溶解工程では、前記JIS3000系回収物に、有底円筒状の一体成形品で一端部が開口状態のJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるカップの回収物を加えて溶解することを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム再生塊の製造方法。 【請求項4】 前記溶解工程では、前記混合回収物及びJIS3000系回収物に加えて、JIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなる製缶屑または圧延屑を溶解することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアルミニウム再生塊の製造方法。 【請求項5】 請求項1から4のいずれか一項に記載のアルミニウム再生塊の製造方法によって製造された前記再生塊を圧延して得た再生アルミニウム合金板から、絞りしごき成形により有底円筒体を成形する円筒体成形工程と、該有底円筒体の底部より開口部の直径が大きいテーパ状筒体を成形する拡径工程と、該拡径工程後の開口端部を丸めてカール部を成形するカール部成形工程とを経て、再生カップを製造することを特徴とするアルミニウム製再生缶構成部材の製造方法。 【請求項6】 請求項1から4のいずれか一項に記載のアルミニウム再生塊の製造方法によって製造された前記再生塊を圧延して得た再生アルミニウム合金板から、絞りしごき成形により有底円筒体を成形する円筒体成形工程と、前記有底円筒体の開口端部を加工してフランジを形成する開口部成形工程とを経て、前記フランジに蓋を巻き締め可能な筒状缶用再生筒状胴体を製造することを特徴とするアルミニウム製再生缶構成部材の製造方法。 【請求項7】 請求項1から4のいずれか一項に記載のアルミニウム再生塊の製造方法によって製造された前記再生塊を圧延して得た再生アルミニウム合金板から、絞りしごき成形により有底円筒体を成形する円筒体成形工程と、前記有底円筒体の開口端部を縮径加工して胴部の上に小径部を有するボトル状筒体を成形する縮径加工工程と、前記小径部の周囲にねじ部を形成するとともに、前記小径部の端部を丸めてカール部を形成する口部成形工程とを経て、前記ねじ部にキャップを取り付け可能なボトル状缶用再生ボトル状胴体を製造することを特徴とするアルミニウム製再生缶構成部材の製造方法。 【請求項8】 請求項1から4のいずれか一項に記載のアルミニウム再生塊の製造方法によって製造された前記再生塊を圧延して得た再生アルミニウム合金板から、絞り成形により天板部と筒状部とを一体成形したキャップ素体を形成する素体形成工程と、前記キャップ素体の筒状部を加工する周壁部加工工程とを経て、ボトル状缶のねじ部に取り付け可能な再生キャップ本体を製造することを特徴とするアルミニウム製再生缶構成部材の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として下記3の甲第1~3号証(以下「甲1」等という。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1~8に係る特許は取り消されるべきものであることを主張している。 1 申立理由1(新規性) 本件発明1~4は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。したがって、本件発明1~4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性) 本件発明1~8は、甲1に記載された発明、及び甲2、3に記載された技術常識に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 証拠方法 甲1:西山貞雄,“循環システム化されたアルミニウム缶のリサイクリング”,材料と環境,第51巻,第7号,2002年,p.285-292 甲2:特開平11-269594号公報 甲3:高橋成也,“ユーザー目線からみたアルミニウム合金材料への要求と期待2 飲料用アルミニウム缶”,軽金属,第67巻,第3号,2017年,p.79-86 第4 当合議体の判断 当合議体は、以下に示すとおり、上記第3の申立理由1、2によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 甲1に記載された事項 本願の出願前に公知となった甲1には、「循環システム化されたアルミニウム缶のリサイクリング」(表題)に関し、以下の記載がある(なお、下線は当合議体が付したものである。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様。)。 (1)「1. はじめに ビール,ソフトドリンクスなどの飲料用アルミニウム缶(以下,アルミ缶と略す)は今から30年前に登場した.アルミ缶は薄肉であるため,内圧が付加された飲料に使われる.当初は炭酸飲料のみの適用であったが,1982年に液体窒素を滴下・封入する内圧付加技術が開発され,非炭酸飲料への進出も可能になった.並行して,薄肉軽量化などの技術開発1)も進み,ビールの伸びと缶化率の上昇にも支えられ,1999年には飲料缶約360億缶中,167億缶を占めるまでに成長した.その背景には,アルミニウムの優れた加工性,耐食性など,金属としての特性による部分はもちろんだが,使用済みアルミ缶(以下,UBC: Used Beverage Canと略す)のリサイクルを積極的に進めてきたことの評価も挙げられよう. ・・・ さて,「リサイクリング」とは,原料調達から回収,再資源化までのループを「人工的に作り出すためのシステム構築」を意味している.アルミ缶のリサイクリングでは,缶用アルミニウム合金のスラブを出発に,所定の板厚に熱間・冷間圧延された缶材から缶が作られ,飲料が充填され,消費され,市中から回収されたUBCのスクラップ塊は,解砕,選別,焙焼(デラッカリング),再溶解,成分調整されて,再び缶用アルミニウム合金(以下,缶用材と略す)のスラブに戻されるというループを描く.UBCが缶用材にリサイクルできることから,「アルミ缶は持続的にクローズドリサイクルが可能な数少ない製品」4)といえる.」(p.285左欄1行~右欄下から3行) (2)「3.2 代表的な缶仕様とメタル量 350mlビール用缶を例に,本稿で参考となる代表的な仕様を以下に記す. ボディは,Al-Mn系(3004材あるいは3104材が一般的)合金から成り,板厚0.28~0.30mmから,最薄部ウオール厚さで0.103mm,メタル質量で約11.7gに仕上げられる.これに内面(主にエポキシアクリル系),外面(主にポリエステルメラミン系,アクリルメラミン系)塗膜とインキで約0.4gが加わる.外面にはデザインの関係から,ホワイトベースコート(TiO2を含む主にアクリルメラミン系)が約0.4g加わる場合がある. エンドは,Al-Mg系(5182材あるいは5082材が一般的)合金から成り,塗装板からプレス加工される.タブは板厚が0.335mm(メタル質量で0.3g),パネルは同0.285mm(同3.2g)で,内面(主にエポキシアクリル系,ビニルオルガノゾル系),外面(主にエポキシアクリル系,エポキシ尿素系)塗膜が約0.1g,巻締・密封用シーリングコンパウンド(スチレンブタジエンラバー)が0.05g塗布されている. これより,ホワイトベースコートされていないUBCに占めるメタル分は96.5%になる.」(p.287右欄下から28~8行) (3)「3.3 ボディとエンドの合金の違い ボディ材には,多様な形態のきびしい加工に耐える加工性と,巻締時の垂直荷重と飲料による内圧に耐えられる缶体強度を持った材料特性が要求される.これを満足させるために,合金組成,圧延率,そして,中間焼鈍などの熱処理に工夫が必要となる.3000系が絞り・しごき(以下,DI:Drawing and Ironingと略す)加工性でよいのは,合金中に分散している1~10μm程度の硬い金属間化合物のα相や(Mn,Fe)Al619)が,加工時に金型へのアルミニウムの凝着をヤスリ作用でそり落とす効果を発揮するためと推定されている20).最近ではDI加工のスピードアップ,薄肉化に伴い,塗装焼付時に軟化しないベークハード型21)のCu/Mg析出硬化型合金が多く使われている.このようにボディに要求される品質を満足させる,ボディ専用の3000系合金組成がどうしても必要となる. エンド材には,耐圧強度に加えて,イージーオープン機能を持たせなくてはならないため,スコアリングという楔形の打ち込み加工と,タブを取り付けるリベッティングというつぶし加工に耐えられる性能が要求される.そのため5000系が使われている.」(p.287右欄下から6行~p.288左欄26行) (4)「4. リサイクリング工程の詳細 4.1 UBCスクラップの性状 UBCから効率良くメタル分を回収するには,良質なUBCスクラップを入手することが大切である.多くは雨水,飲み残しなどによる水分が5~7%は含まれる.また,砂などの異物も数%含まれている.当然,買取価格にランク分けができ,ボランティアの持ち込むスクラップが最上品といわれている. 4.2 デラッカリング 上記スクラップを解砕,選別後,缶の構成材料である塗膜など有機物を焙焼(delacqueringとかdecoatingという)する.この工程はリサイクリング工程の心臓部と言える.すなわち,再溶解時のメタルロスを少なくするため,有機層を急速破壊させ,かつ,表面酸化物の生成を抑制させることが重要となる.・・・ 4.3 再溶解 アルミニウムは緻密な保護皮膜が表面に生成されるため,マグネシウムのように燃えることがなく,空気中での加熱溶解が可能であるという特徴を持つ. デラッカーされたUBCは溶解炉に移され,メタルが回収される.・・・ 4.5 鋳造 通常,溶解炉から出てきた溶湯は,水スプレー,浸漬によって凝固され,缶用材の原料としてインゴットに鋳造される.インゴットの成分分析は,缶用材に仕上げる上で重要となる.通常,短時間で分析が可能な,発光分光分析法が採用されている. インゴットは缶材メーカーに運ばれ,溶解,成分調整されてスラブにされる.しかし,このフローでは,再度インゴットを溶解することから,エネルギーの無駄につながり,結果として,缶材コストに影響する.そのため,(a)溶解炉の次に保持炉を設け,そこで成分調整をして,鋳造時には缶材用スラブにまで仕上げてしまう,(b)溶湯を液体状態で輸送(ホットチャージと言っている)して缶材メーカーに納入する,(c)溶湯から連続鋳造によって直接缶材に仕上げてしまう33)などの方法が検討,一部採用され始めている.」(p.288左欄下から18行~p.289右欄下から14行) (5)「5. メタルバランスと缶材化学組成 リサイクルされた缶は,最終的には一つまたはそれ以上の新しい缶材を再生するために用いられる.UBCが缶材に戻されていることの一番の関心事は,その化学組成であろう.表1に,缶用材の化学組成規格を,表2に,実際に流通していた市中缶からのそれら分析結果34),35),36),37),および,実際にUBCを再溶解した後に得られた再生塊の化学組成データ36),38)(UBCを溶解した際の理論値を含む)を示す. リサイクル材の合金成分で注目すべき元素は,MnとMgである.缶用材の元素含有量規格を図3に示す.横軸にMn量,縦軸にMg量をとると,ボディ材は右下領域に,エンド材は左上領域に位置する.図3には,表2のデータをプロットしてある.ボディとエンドの合金組み合わせから来る再生塊のMgの上昇は,理論的なケースでは,ボディ材へのリサイクルを制限することになる.しかし実際には,Mgの酸化ロス22)があり,また,ボディ質量がエンド質量の3倍強あることから,再生塊は,少しの成分調整によってボディ材に仕上げられている.エンド用5182材に利用するにはMg量を増やす必要があり,例えば20%位のMgが入ったアルミニウム合金(マザーメタルと呼んでいる)で調整しなければならない.なるべくマザーメタルを投入しないで済むリサイクル材からの新たな合金開発は重要で,一部は実用化段階にまできている.今後,これら合金の適用範囲の拡大が望まれる.」(p.289右欄下から12行~p.290右欄3行) (6)「ところで,やや古い資料ではあるが,土田ら35),36)は,Can to Canのメタルバランス(図4参照)を考察している.それによると,圧延メーカーでボディ3004材1000kg,エンド5182材265kgをスラブから圧延し,コイルを製缶メーカーへ納入,飲料メーカーで缶に充填後,消費され,UBCが回収され,再溶解してインゴットになったものに成分調整用マザーメタルを投入し,缶用材に戻すという循環ループでのメタルバランスを作成している.そこでは,ボディ対エンドの質量比を3:1,製缶メーカーでの材料歩留りをボディ,エンドとも0.8と仮定すると,消費者には質量640相当の3004材と5182材の複合された合金組成を持つ缶が渡ったと考えられる.リサイクル率を75%とすると,質量480相当のUBCが再溶解されることになる.その歩留りを90%と仮定すると,圧延メーカーには最終的に質量430相当のインゴットが戻ることになる.さて,表1及び表2からわかるように,ボディ材に仕上げるには,インゴットのMg分の希釈を主とした成分調整が必要になり,アルミニウム分で質量100に相当するマザーメタルが投入される.」(p.290右欄末行~p.291左欄19行) (7)「 [図:0001438308000001.jpg] 」 (8)「 [図:0001438308000002.jpg] 」 2 甲1に記載された発明 (1)上記1(1)によれば、甲1には、ビール、ソフトドリンクスなどの飲料用アルミニウム缶に関し、使用済みアルミニウム缶をUBCと称すること、飲料が充填され、消費され、市中から回収されたUBCのスクラップ塊は、解砕、選別、焙焼(デラッカリング)、再溶解、成分調整されて、再び缶用アルミニウム合金のスラブに戻されるというループを描くものであることが記載されている。 (2)上記1(4)によれば、甲1には、リサイクリング工程として、UBCスクラップを回収し、該UBCスクラップを解砕、選別後、缶の構成材料である塗膜などの有機物をデラッカリングし、デラッカーされたUBCを溶解炉に移し、溶解炉から出てきた溶湯を水スプレー、浸漬によって凝固し、缶用材の原料としてインゴットに鋳造することが記載されている。 (3)上記1(7)には、缶用アルミニウム合金の米国規格に関し、ボディ用途が3004または3104、エンド用途が5017、5021、5042、5052、5082、5182であることが示されている。 (4)以上によれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「ボディに米国規格3004または3104アルミニウム合金が用いられ、エンドに米国規格5017、5021、5042、5052、5082または5182アルミニウム合金が用いられたアルミニウム缶に、飲料が充填され、消費され、市中から回収された使用済みアルミニウム缶であるUBCスクラップを、解砕、選別後、缶の構成材料である塗膜などの有機物をデラッカリングし、デラッカーされたUBCを溶解炉に移し、溶解炉から出てきた溶湯を水スプレー、浸漬によって凝固し、缶用材の原料としてインゴットに鋳造するリサイクリング方法。」(以下「甲1発明」という。) 3 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「米国規格3004または3104アルミニウム合金」は、上記1(7)に示された組成、及び上記1(2)、(3)に摘記した事項から、Al-Mn系のアルミニウム合金であることは明らかである。同様に、甲1発明の「米国規格5017、5021、5042、5052、5082または5182アルミニウム合金」は、Al-Mg系のアルミニウム合金であることは明らかである。 したがって、甲1発明の「米国規格3004または3104アルミニウム合金」及び「米国規格5017、5021、5042、5052、5082または5182アルミニウム合金」は、本件発明1の「JIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金」及び「JIS5000系のAl-Mg系アルミニウム合金」と、「3000系のAl-Mn系アルミニウム合金」及び「5000系のAl-Mg系アルミニウム合金」である限りにおいて共通する。 イ 通常、飲料用のアルミニウム缶は、円筒状に成形されたボディに、エンドである蓋を巻締め等により取り付けたものであるから、上記アを踏まえると、甲1発明の「ボディに米国規格3004または3104アルミニウム合金が用いられ、エンドに米国規格5017、5021、5042、5052、5082または5182アルミニウム合金が用いられたアルミニウム缶」は、本件発明1の「JIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなる有底円筒状の筒状缶の開口部にJIS5000系のAl-Mg系アルミニウム合金からなる蓋が取り付けられた状態」の「蓋付き筒状缶」と、「3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなる」「円筒状の筒状缶の開口部に」「5000系のAl-Mg系アルミニウム合金からなる蓋が取り付けられた状態」の「蓋付き筒状缶」である限りにおいて共通する。 ウ 甲1発明における「使用済みアルミニウム缶」及び「UBCスクラップ」は、消費され、市中から回収されたアルミニウム缶を意味しており、該アルミニウム缶の回収に際しては、通常、種々の缶が混合されるものであるから、本件発明1の「使用済み蓋付き筒状缶を含む混合回収物」に相当する。 エ 甲1発明において、「デラッカーされたUBCを溶解炉に移」すことは、該溶解炉において、UBCを溶解するための操作に他ならないから、甲1発明は、本件発明1の「溶解する溶解工程」に相当する、UBCを溶解する工程を備えていることが明らかである。 オ 甲1発明の「インゴット」は、UBCスクラップを再生し、缶用材の原料として使用するために生成されたものであるから、本件発明1の「再生塊」及び「アルミニウム再生塊」に相当する。 したがって、甲1発明の「溶解炉から出てきた溶湯を水スプレー、浸漬によって凝固し、缶用材の原料としてインゴットに鋳造する」こと、及び、「リサイクリング方法」は、本件発明1の「溶解されたアルミニウムの溶湯から再生塊を鋳造する鋳造工程」、及び、「アルミニウム再生塊を製造する」「アルミニウム再生塊の製造方法」に相当する。 カ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなる円筒状の筒状缶の開口部に5000系のAl-Mg系アルミニウム合金からなる蓋が取り付けられた状態の使用済み蓋付き筒状缶を含む混合回収物を溶解する溶解工程と、溶解されたアルミニウムの溶湯から再生塊を鋳造する鋳造工程とにより、アルミニウム再生塊を製造するアルミニウム再生塊の製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 3000系のAl-Mn系アルミニウム合金及び5000系のAl-Mg系アルミニウム合金が、本件発明1では、いずれも「JIS」に基づくものであるのに対し、甲1発明では、「米国規格」に基づくものである点。 <相違点2> 筒状缶が、本件発明1では、「有底円筒状」であるのに対し、甲1発明では、「有底」の円筒状であるかが不明である点。 <相違点3> 本件発明1は、使用済み蓋付き筒状缶を含む混合回収物に、「有底円筒状の一体成形品で胴部に比べて縮径された口部にねじ部を有するJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるボトル状缶の前記ねじ部にJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるキャップが取り付けられた状態の使用済みJIS3000系キャップ付きボトル状缶からなるJIS3000系回収物を混ぜ」て溶解するものであるのに対して、甲1発明は、上記のような状態の「使用済みJIS3000系キャップ付きボトル状缶を混ぜ」て溶解するものであるのかどうか不明である点。 <相違点4> 本件発明1は、「JIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなる」アルミニウム再生塊を製造するものであるのに対して、甲1発明は、「JIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなる」アルミニウム再生塊を製造するものであるのかどうか不明である点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。 ア 相違点3が実質的なものであるかについて 甲1には、「有底円筒状の一体成形品で胴部に比べて縮径された口部にねじ部を有するJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるボトル状缶の前記ねじ部にJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるキャップが取り付けられた状態の使用済みJIS3000系キャップ付きボトル状缶」に着目した記載は見当たらないし、そのような「ボトル状缶からなるJIS3000系回収物を」「使用済み蓋付き筒状缶を含む混合回収物に」「混ぜ」て溶解することについて何ら記載されていない。また、このことが、本願出願前の技術常識であるともいえない。 したがって、相違点3は実質的なものである。 イ 相違点3の容易想到性について (ア)上記アに示したとおり、甲1には、「有底円筒状の一体成形品で胴部に比べて縮径された口部にねじ部を有するJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるボトル状缶の前記ねじ部にJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるキャップが取り付けられた状態の使用済みJIS3000系キャップ付きボトル状缶」に着目した記載は見当たらないし、そのような「ボトル状缶からなるJIS3000系回収物を」「使用済み蓋付き筒状缶を含む混合回収物に」「混ぜ」て溶解することについても何らの記載もされていないから、甲1の記載から、甲1発明において、相違点3に係る発明特定事項を備えさせることが動機付けられるとはいえない。 (イ)甲2には、アルミニウム合金製飲料用缶は、ボディ部とエンド部の2ピースで構成され、ボディ部には3000系アルミニウム合金が主として用いられ、エンド部には5000系アルミニウム合金が主として用いられること、飲料用缶をリサイクルする場合にはボディ部とエンド部とを分離することは通常しないこと、3000系アルミニウム合金から構成されるボディ部は、平均組成と近似しているので、使用済みの飲料用缶を主原料としても軽微な成分調整で足りることが記載されている(【0003】~【0005】)。また、甲3には、国内におけるアルミニウム缶のリサイクル率や、飲料用として適用されているアルミニウム缶の製造工程や材質について記載されている(p.80~84)。 しかし、これら甲2、3の記載は、上記(ア)に示した判断を左右するものではない。 (ウ)以上によれば、甲1発明において、相違点3に係る発明特定事項を備えさせることは、当業者において容易になし得たものであるということはできない。 ウ 申立人の主張について (ア)申立人は、特許異議申立書において、本件発明1は、「混合回収物」と「JIS3000系回収物」とを混ぜる時期を特定するものではないこと、回収されるUBCには、通常、「5000系と3000系が混在する「混合回収物」に「JIS3000系回収物」も混ざっているものであることを挙げ、本件発明1は、従来の区別なく混合された回収物をリサイクリングするものと区別できないことを主張する(第14~15ページ「イ.相違点1について」)。 (イ)しかし、本件特許の特許請求の範囲の請求項1における「JIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなる有底円筒状の筒状缶の開口部にJIS5000系のAl-Mg系アルミニウム合金からなる蓋が取り付けられた状態の使用済み蓋付き筒状缶を含む混合回収物に、有底円筒状の一体成形品で胴部に比べて縮径された口部にねじ部を有するJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるボトル状缶の前記ねじ部にJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるキャップが取り付けられた状態の使用済みJIS3000系キャップ付きボトル状缶からなるJIS3000系回収物を混ぜて溶解する」なる記載は、その文言から「混合回収物」に対して、該「混合回収物」とは別の「JIS3000系回収物」を意図的に混ぜることを特定しようとするものであることは明らかであり、本件発明1は、従来の区別なく混合された回収物をリサイクリングすることとは異なるものである。 本件明細書等の「ボトル状缶及びキャップともJIS3000系のアルミニウム合金からなるJIS3000系回収物を混ぜて溶解しているので、このJIS3000系回収物と混合回収物との配合を調整することにより、再生塊をJIS3000系アルミニウム合金とすることが可能になり、新塊を用いることなくJIS3000系のアルミニウム再生塊を製造することができる。」(【0011】、【0026】)なる記載や、「JIS5000系アルミニウム合金からなる蓋12を有する筒状缶10や、JIS5000系アルミニウム合金からなるキャップ本体29を有するボトル状缶20の混合回収物の溶湯に、ボトル状胴体21及びキャップ本体29ともJIS3000系アルミニウム合金からなる回収物を投入することにより、JISの3000系アルミニウム合金に相当する再生塊を得ることができる。」(【0049】)なる記載からみても、「JIS3000系回収物」は、「混合回収物」との配合を調整することで、再生塊の成分組成を調整するためのものと解され、そのような調整のためには、「混合回収物」に対して、該「混合回収物」とは別の適切な量の「JIS3000系回収物」を意図的に混ぜることが必要であるから、このことからも請求項1における上記記載は、従来の区別なく混合された回収物をリサイクリングすることとは異なる事項を特定しようとするものと解される。 (ウ)また、本件発明1において「JIS3000系回収物」を構成する「有底円筒状の一体成形品で胴部に比べて縮径された口部にねじ部を有するJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるボトル状缶の前記ねじ部にJIS3000系のAl-Mn系アルミニウム合金からなるキャップが取り付けられた状態の使用済みJIS3000系キャップ付きボトル状缶」については、甲1~3のいずれにも記載はない。つまり、申立人が提出した証拠によっては、ボトル状缶及びキャップともJIS3000系のアルミニウム合金からなるボトル状缶が、本願出願時において公知であったとは認められないから、回収されるUBCには、通常、「5000系と3000系が混在する「混合回収物」に「JIS3000系回収物」も混ざっているものということもできない。 (エ)したがって、申立人の上記主張は採用することができない。 (3)小括 以上のとおりであるから、相違点1、2、4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明とはいえない。また、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、または、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本件発明2~8について 本件特許の請求項2~8は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであるから、本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。 そして、上記3のとおり、本件発明1が甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて、または、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、同様に、本件発明2~8も、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて、または、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5 まとめ 以上によれば、本件発明1~4は、甲1に記載された発明とはいえない。また、本件発明1~8は、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700174

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