特許異議申立
2024-701170
防虫ネット
- 審判番号
- 2024-701170
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-084162
- 登録番号
- 7514507
- 請求日
- 2024年12月04日
- 審決日
- 2025年06月19日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ユニチカ株式会社
- 【異議申立人】藤井 正剛
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 土屋 真理子
- 審判官 藤脇 沙絵
- 分類
- P1651.121-Y (A01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7514507号発明「防虫ネット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7514507号の請求項1~2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7514507号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願は、令和2年5月13日に出願され、令和6年7月3日にその特許権の設定登録がされ、同月11日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年12月4日に、特許異議申立人 藤井 正剛(以下、「申立人」という。)により、請求項1~2に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~2の特許に係る発明(以下、請求項番号により「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ネット状体にて構成され、ネット状体を構成する糸条がポリエステルからなるマルチフィラメント糸であり、ネットの目合いが2.5cm以上かつ5cm以下であり、赤色に着色されており、防虫対象の虫がアザミウマであることを特徴とする防虫ネット。
【請求項2】
ネット状体を構成する糸条が、ポリエステルからなるマルチフィラメント糸を複数本合撚した合撚糸であり、合撚糸の繊度が1000~8000デシテックスであることを特徴とする請求項1記載の防虫ネット。」
第3 証拠方法及び特許異議申立理由の概要
1 証拠方法
申立人が提示する証拠は、次のとおりである。
甲第1号証:特開2000-217497号公報
甲第2号証:実願昭57-73390号(実開昭58-176783号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開2015-171356号公報
甲第4号証:特開2005-137358号公報
甲第5号証:実願昭59-118424号(実開昭61-34862号)のマイクロフィルム
甲第6号証:実願昭50-103746号(実開昭52-29877号)のマイクロフィルム
甲第7号証:実願昭55-59202号(実開昭56-160487号)のマイクロフィルム
甲第8号証:実願昭50-73933号(実開昭51-155875号)のマイクロフィルム
甲第9号証:登録実用新案第3097738号公報
甲第10号証:特開2005-269962号公報
甲第11号証:特開2002-176863号公報
以下、各甲号証の番号に従って「甲1」などということがある。
2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において主張する申立理由の概要は、申立書の全趣旨からみて、次のとおりである。
本件発明1~2は、甲第1号証に記載の発明に、甲第2号証に示される周知技術、甲第3号証~甲第4号証に示される技術常識、甲第5号証~甲第8号証に示される周知技術、及び、甲第9号証~甲第11号証に示される周知技術を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1~2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 甲号証について
(1)甲1
ア 甲1の記載事項
甲1には、次の記載がある。(下線は、当審合議体が付した。以下、同様。)
(ア)「【請求項1】糸条が編織物に形成されて得られる防虫ネットであって、前記糸条の少なくとも20%以上が熱接着性繊維からなる糸条であり、前記熱接着性繊維が1.2~2.2の異形度を有し、かつ、100~5000dtexの繊度を有する熱接着性繊維である防虫ネット。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防虫ネットに関する。更に詳しくは、優れた害虫忌避性を有する防虫ネットに関する。」
(ウ)「【0007】しかし、従来の防虫ネットの場合、この目合いは固定されていないものが多く、風雨や取扱いの過程で糸条が動き、この目合いが変化する“目ずれ”が発生するため、目合いが広がったところから害虫が侵入することが多々あった。防虫ネットの目合いは、微細な害虫の侵入をも防止できる点では小さいほうが望ましく目ずれによる目合いの広がりも少ないが、その分、太陽光線の照射量が減り、通気性も悪化することから小さくするにも限度があった。その後、防虫ネットの目ずれを防止し目合いを一定に保つ方法として、ネットを構成する糸条の交点を熱接着する方法が開発され、得られたネットは害虫の侵入防止性の高い防虫ネットとして普及しているものの、目合いだけで害虫の侵入を完全に防止するのは困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、持続性のある害虫忌避効果を有し、さらには目合いが一定で目ずれが起らず、ハウスなど農業施設内への害虫侵入が抑制され、通気性が良好な防虫ネットを提供することを課題とする。」
(エ)「【0014】本発明の防虫ネットにおいて、防虫ネットの糸条を構成する繊維の少なくとも20%は、熱接着性異形繊維であり、前記糸条が編織されることによって、もしくはさらにこの熱接着性を利用し糸条の交点が熱接着されることによって、防虫ネットが得られる。本発明の防虫ネットの糸条を構成する熱接着性異形繊維には、単一成分樹脂からなるレギュラーモノフィラメント、複数の樹脂からなる複合モノフィラメント、さらには単一成分樹脂もしくは複数の樹脂からなるマルチフィラメントを用いることが出来る。
【0015】前記糸条の交点を熱接着する場合に十分な接着強度を有する交点とするため、防虫ネットの糸条を構成する熱接着性異形繊維は、熱接着性複合モノフィラメントが好ましく用いられる。ここで熱接着性複合モノフィラメントとは、少なくとも融点差が10℃以上ある低融点樹脂と高融点樹脂とからなり、繊維表面の少なくとも一部が連続する低融点樹脂により形成された二種以上の樹脂からなる熱接着性複合モノフィラメントである。熱接着性複合モノフィラメントの構造は、たとえば鞘芯型、並列型、海島型などのいずれも使用できるが、異形という特殊な形状を踏まえれば、鞘芯型・並列型の構造が好ましく用いられる。中でも鞘芯型構造の熱接着性複合モノフィラメントは熱接着性が良好で一定しており好ましい。この場合、異形化する部位は鞘側のみである必要はなく、鞘芯ともに異形化されても構わない。
【0016】前記熱接着性複合モノフィラメントを構成する低融点樹脂および高融点樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂を例示することができるが、とくに好ましくはポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂である。
【0017】前記低融点樹脂および高融点樹脂の組合せの例としては、低融点樹脂/高融点樹脂で表わす場合、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレンと他のαオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、各種のポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、プロピレンと他のαオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ポリエチレンテレフタレート、低融点熱可塑性ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、各種のポリエチレン/ナイロン6、ポリプロピレン/ナイロン6、プロピレンと他のαオレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ナイロン6、ナイロン6/ナイロン66、ナイロン6/熱可塑性ポリエステルなどを挙げることができる。」
(オ)「【0019】前記の低融点樹脂と高融点樹脂の二成分の樹脂の組合せにおいては、効果的な反射光によるキラキラ感を強調し優れた害虫忌避効果を得るために、二成分の樹脂は屈折率の差の大きいものを選ぶのが望ましい。前記の熱接着性複合モノフィラメントには、本発明の効果を妨げない範囲において、安定剤、難燃剤、抗菌剤などが添加されていてもよい。また、着色剤が添加されていても良い。着色剤の添加により、遮光率や保温性をコントロールできる他、補助的に虫や鳥などの忌避性が期待できる。」
(カ)「【0021】本発明の防虫ネットにおいて、目合いは0.4~3mm、より好ましくは0.6~2mmである。目合いが0.4mm未満では、通気性が悪くなり、ハウスなどの被覆された施設内の作物に蒸れの被害が発生することがある。目合いが3mmを超えると、害虫が侵入しやすくなり防虫ネットとしての機能が低下する。」
(キ)「【0025】
【実施例】実施例、比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下に本発明に関する試験方法を説明する。
(a)異形度:異形繊維の断面周長(A)を、その断面積と同面積をもつ円の周長(B)で除した値である。
異形度=A÷B
異形度の求め方を例を挙げて説明する。1.00mm×2.00mmの2つの長方形が正十文字で重なり合う形状の図形において、この正十文字の各辺の長さの和は8.00mmで(A)ある。また、この正十文字の面積は3.00mm2であるので、これと同じ面積をもつ円の半径は、0.977mmとなり、前記の円の周長が6.14mm(B)と求められる。よって、この図形の異形度はAの値をBの値で除したものであるので、計算により異形度は1.30となる。
【0026】(b)害虫忌避率:ポットで栽培されたトマト苗2株を、一辺が30cm、高さ40cmの直方体状の鉄枠中に入れ、この鉄枠の周囲に防虫ネットを貼った。この周りに、トマトの害虫であるヒラズハナアザミウマ50頭を放し、48時間放置した。48時間後、鉄枠中に侵入した害虫ヒラズハナアザミウマの頭数(C)を数え、以下の式より害虫忌避率を求めた。
害虫忌避率(%)=(50-C)÷50×100
害虫忌避率は数値が大きいほど害虫忌避効果が大きい。80%以上が好ましい。なお、試験は、自然光に近い日射が得られ、かつ、害虫が逃げ出さないように日当たりの良いガラス室内で実施し、試験後害虫は薬殺した。
【0027】(c)ネットの反射光の輝調
自然光の下でネットの反射光の光条・光芒を目視観察した。なお、実施例と比較例で用いたネットの目合いは、ネットの反射光の輝調を比較・観察するため、全て1mmとした。
【0028】
(実施例1)鞘成分に融点が134℃のエチレン・プロピレン・ブテン-1三元共重合体、芯成分に融点が164℃のポリプロピレンを用いた繊度400dtexの熱接着性複合モノフィラメントを1mm目合いの平織りネットに編織した。なお、熱接着性複合モノフィラメントは、断面形状がY字型、異形度が1.48のもので、経糸、緯糸ともに全てこの異形繊維を用いた。このネットを熱風型加熱機を用いて150℃で熱処理し、熱接着性複合モノフィラメント同士の交点が熱接着されたネットを得た。このネットの反射光は、蛍光状の光芒を示した。このネットを用いて害虫忌避率を測定・評価した。結果を表1に示した。」
イ 認定事項
(ア)上記ア(キ)に示されるように、甲1の実施例において、ヒラズハナアザミウマを用いてネットの害虫忌避率を測定していることから、甲1に記載の防虫ネットは、ヒラズハナアザミウマを防虫対象とし得ることが認められる。
(イ)上記ア(キ)の【0028】に示されるように、甲1の実施例1において、ネットの経糸、緯糸ともに全て熱接着性の異形繊維を用いていることから、甲1に記載の防虫ネットは、防虫ネットの糸条を構成する繊維の全てを、熱接着性異形繊維とし得ることが認められる。
ウ 甲1発明
上記ア及びイより、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
糸条が編織物に形成されて得られる防虫ネットであって(【請求項1】)、
防虫ネットの糸条を構成する繊維の少なくとも20%は、熱接着性異形繊維であり(【0014】)、
熱接着性異形繊維は、熱接着性複合モノフィラメントが好ましく用いられ、熱接着性複合モノフィラメントは、低融点樹脂と高融点樹脂とからなり(【0015】)、
低融点樹脂および高融点樹脂の組合せの例としては、低融点熱可塑性ポリエステル/ポリエチレンテレフタレートを挙げることができ(【0017】)、
着色剤が添加されていても良く、着色剤の添加により、虫の忌避性が期待でき(【0019】)、
目合いは0.4~3mmであり(【0021】)、
ヒラズハナアザミウマを防虫対象とし得(上記イ(ア))、
防虫ネットの糸条を構成する繊維の全てを、熱接着性異形繊維とし得る(上記イ(イ))、
防虫ネット。
(2)甲2
ア 甲2の記載事項
甲2には、次の記載がある。
(ア)明細書1頁4行~7行
「実用新案登録請求の範囲
紫外線の反射率を60%以上とした合成樹脂製繊維を用い、目合を2~20mm目とした農園芸用防虫ネツト。」
(イ)明細書4頁16行~5頁4行
「本考案の防虫ネツトは目合が2~20mm目であるために通風性、透光性が高く、また、害虫類の視感曲線の中で最大値を示す365nm前後の紫外線の反射率を高めた合成樹脂製繊維を用いることによつてネツトの目合が害虫の体より大きくなつても害虫の侵入を阻害することができる。さらに、反射材料を用いているためにネツトにより乱反射するのでハウス内の光線量を増加させることができる。」
イ 甲2記載の技術的事項
上記アより、甲2には、次の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲2記載の技術的事項>
農園芸用防虫ネツトにおいて(上記ア(ア))、
目合が2~20mm目であるために通風性、透光性が高く、紫外線の反射率を高めた合成樹脂製繊維を用いることによつてネツトの目合が害虫の体より大きくなつても害虫の侵入を阻害することができること(上記ア(イ))。
(3)甲3
ア 甲3の記載事項
甲3には、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】
赤色光光源からの赤色光を対象植物体に照射して、前記対象植物体への害虫の定着及び産卵を抑制する植物体の害虫抑制方法。」
(イ)「【請求項3】
前記害虫は、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロザミウマ、ヒラズハナアザミウマ及びネギアザミウマを含むアザミウマ類に属する害虫である請求項1又は2に記載した植物体の害虫抑制方法。」
(ウ)「【0011】
前記本発明は、植物体に寄生する害虫が赤色光を忌避するという本発明者の発見に基づくものであり、後述する試験結果からも理解できるとおり、赤色光を対象植物体に照射すると、対象植物体への害虫の定着及び産卵が抑制される。したがって、本発明によれば、害虫が対象植物体から除去され、対象植物体の害虫による被害を抑えることができる。また、害虫の除去のために対象植物体に薬剤を散布する場合でも、薬剤散布の回数を減らすことができ、害虫の薬剤感受性低下を抑制できて、薬剤の使用寿命を延長させることができる。さらに、紫外線を対象植物に照射する場合に比べて、低コストで本発明を実現できる。」
イ 甲3記載の技術的事項
上記アより、甲3には、次の技術的事項(以下「甲3記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲3記載の技術的事項>
ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロザミウマ、ヒラズハナアザミウマ及びネギアザミウマを含むアザミウマ類に属する害虫が、赤色光を忌避すること。(【請求項3】、【0011】)
(4)甲4
ア 甲4の記載事項
甲4には、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】
天然の有機繊維を脱色剤で脱色した白色のロープ状の有機繊維Aと、この有機繊維Aを赤色の染料で染めた赤色のロープ状の有機繊維Bとを捩り合わせて1本のロープを形成し、このロープにハーブの植物精油のエキスを単独又は複数種ブレンドしたものを含浸させて2色の色彩を形成したことを特徴とする防虫用ロープ。」
(イ)「【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載の防虫用ロープを用いて網状に形成した防虫用ネット。」
(ウ)「【0017】
本発明の防虫用ロープ、防虫用ロープ装置、防虫用ネット等の防虫装置は、上記のように構成されるから、次のような優れた効果を有する。
(1)請求項1に記載の防虫用ロープは、素材である天然の有機繊維に含浸させたハーブのエキスが発する刺激臭のほかに、防虫用ロープを構成する有機繊維の赤、白の組合せにより、一方の赤色部分が強調され、しかも、長波長である赤の色彩が昆虫に忌避作用を与えるので防虫効果が助長され、果実のほか、各種の農作物、農栽培における害虫や鳥獣の被害の防止に対して極めて有効である。」
(エ)「【0044】
第7の実施の形態:
第6の実施の形態で述べた本発明の防虫用ネットは、ビニールハウス又は温室に適用すると、これらの施設において栽培される栽培作物を、害虫から保護するのに最適である。
即ち、虫媒花の時期には、ビニールハウスの施設外の周囲の場所に防虫用ロープ装置を設置すれば、害虫(タバコガ、ヨトウムシ等の成虫)の飛来からも防御し、これら害虫の施設内への接近を抑制できるが、さらに、有効な方法としては、防虫用ネットを設ける手段が考えられる。
図6は、ビニールハウスに本発明の防虫用ネットを適用した本発明の第7の実施の形態の簡易防虫装置を示すもので、同図は正面図である。
同図において、40はビニールハウス、41aは右方側の防虫用ネット42の取り付け用の支持柱で、例えば、篠竹が用いられ、防虫用ネットを紐等の取り付け具42a~42cを用いて、支持柱41aに取り付けられる。なお、この支持柱41aは、図6が正面図であるので図示できないが、ビニールハウス40の奥行き方向(図6で紙面に直角方向)に向かい複数本設けて防虫用ネット42を取り付けるものとする。
この場合の防虫用ネットとしては、請求項7に記載のように請求項1乃至4のいずれかに記載の防虫用ロープを用い、網状に形成して構成するが、この網目は少し粗い目であってもよい。また、ビニールハウスの外周に配置する場合には、防虫用ネットを垂直方向に配置する点に特徴がある。
そして、防虫用ネット42の範囲としては、高さとしては、図示のようにビニールハウス40の外周の側壁近傍の位置で、ビニールハウス40の側壁に設けられる通気用の換気口45を覆って対向する高さから地上まで垂らすようにし、また、奥行き方向に向かい設ける各支持柱41aを用いてビニールハウス40の右方の外周の側壁に沿って奥行き方向に向かい張るようにすればよい。」
(オ)「【0046】
このように各防虫用ネット42、44及び51を設けるようにすれば、ビニールハウス自体は閉鎖状態であっても、室内の温度を所定の値に保持するために設けられる通気用の換気口に対して、外来虫であるタバコガ、ヨトウムシのほかミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザイウマ、オンシツコナジラミ等の害虫が外部から飛来してきても、上記防虫用ネットを構成する有機繊維Bの赤色による害虫への忌避機能に加えて、防虫用ネットから発せられるハーブ、capsicum等による刺激性の異臭によりこれらの害虫に忌避作用を付与するので、ビニールハウスには寄せ付けず、害虫による被害を防止できる。
このように防虫用ネットを簡易防虫装置として用いるときは、上記の赤色及び防虫用異臭の発揮度合いが大となるから、防虫用ロープ装置の場合よりも害虫予防に対しては有効である。
なお、支持柱は篠竹以外の材質を用いても良いことは勿論であり、また、ビニールハウスの形状、広さにより、支持柱の設置数も適応数に変更することになる。また、適応されるビニールハウスの形状も図示のものには限定されない。」
イ 甲4記載の技術的事項
上記アより、甲4には、次の技術的事項(以下「甲4記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲4記載の技術的事項>
白色のロープ状の有機繊維Aと、赤色のロープ状の有機繊維Bとを捩り合わせて1本のロープを形成し、このロープにハーブの植物精油のエキスを含浸させて2色の色彩を形成した防虫用ロープを用いて網状に形成した防虫用ネットにおいて(【請求項1】、【請求項7】)、
赤の色彩が昆虫に忌避作用を与え(【0017】)、
網目は少し粗い目であってもよく(【0044】)、
ミナミキイロアザミウマ等の害虫が外部から飛来してきても、防虫用ネットを構成する有機繊維Bの赤色による害虫への忌避機能に加えて、防虫用ネットから発せられるハーブ等による刺激性の異臭によりこれらの害虫に忌避作用を付与すること(【0046】)。
(5)甲5
ア 甲5の記載事項
甲5には、次の記載がある。
(ア)明細書1頁4行~9行
「2.実用新案登録請求の範囲
緯糸と経糸のいずれか若しくは両方の全部若しくは所望本数置きに光輝性発色性の糸を用い、上記緯糸と経糸により編網若しくは織成して網状に形成したことを特徴とする植物栽培用具。」
(イ)明細書2頁17行~3頁7行
「本考案の目的は、簡単な作業により、しかも薬剤を用いることなくアブラムシ、ミナミキイロアザミウマ等の害虫が栽培植物に付くのを防止することができ、従って栽培コストの低下、環境汚染の防止を図ることができ、しかも防虫効果を持続させることができ、また栽培植物を風害より保護することができ、また栽培植物を強い太陽光線より保護することができ、更には保管等の便を図ることができ、また耐久性を向上させて経済性を向上させることができるようにした植物栽培用具を提供するにある。」
(ウ)明細書7頁4行~7行
「而して網目の大きさは上記実施例のように3×3mmに限定されるものではなく、それより小さく、或いは大きく形成することもできる。」
イ 甲5記載の技術的事項
上記アより、甲5には、次の技術的事項(以下「甲5記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲5記載の技術的事項>
ミナミキイロアザミウマ等の害虫が栽培植物に付くのを防止することができるようにした植物栽培用具を提供することを目的とし(上記ア(イ))、
緯糸と経糸のいずれか若しくは両方の全部若しくは所望本数置きに光輝性発色性の糸を用い、上記緯糸と経糸により編網若しくは織成して網状に形成した植物栽培用具において(上記ア(ア))、
網目の大きさは3×3mmに限定されるものではなく、それより小さく、或いは大きく形成することもできること(上記ア(ウ))。
(6)甲6
ア 甲6の記載事項
甲6には、次の記載がある。
(ア)明細書1頁4行~11行
「2.実用新案登録請求の範囲
ポリエステルその他透明合成樹脂フイルム1の一面にアルミニウムその他金属蒸着層2を形成し、その蒸着面上に合成樹脂コーテイング層3を形成するか、または適宜接着剤4を介して透明合成樹脂フイルム5を形成してなる平糸Aを、経または緯若しくは双方に或は任意糸6と引き揃えまたは巻き付け網の目状7に編成したことを特徴とする防虫、防鳥用ネツト。」
(イ)明細書1頁16行~3頁12行
「詳しくは農業用資材としての鳥追網又は防虫網を金属光沢を有するネツト体で編み上げ、これを目的とする果実、農産物に被覆せしめ、金属蒸着による乱反射を以つて虫、鳥の接近を防止し収穫期の作物を保護するのであつて即ちこの考案はポリエステルその他透明合成樹脂フイルム1の一面にアルミニウムその他金属蒸着層2を形成し、その蒸着面上に合成樹脂コーテイング層3を形成するか、または適宜接着剤4を介して透明合成樹脂フイルム5を形成してなる平糸Aを、経または緯若しくは双方に或は任意糸6と引き揃えまたは巻き付け網の目状7に編成したことを特徴とする防虫、防鳥用ネツトに係る。
本考案実施に際する一例を下記に詳説すれば、厚さ0.012mmのポリエステルフイルム1の一面にアルミニウムその他の金属蒸着層2を形成し、この蒸着面上にウレタン系の合成樹脂を焼付塗装して合成樹脂コーテイング層3を形成するか、または前記金属蒸着面上にウレタン系の合成樹脂接着剤4を塗布すると共にその面上にポリエチレン、ポリプロピレン、一軸、二軸延伸、無延伸その他厚さ0.05mmの透明合成樹脂フイルム5を貼着してなる金属光沢、耐水性、耐薬品性、耐候性のあるシート状物を幅0.5~2mm等適宜幅にスリツター裁断方式等により細長に細断して平糸Aとなし、この平糸Aを経または緯若しくは経緯双方に使用するか、或はテグス状のポリエチレン、ポリプロピレンフイラメント等任意糸6と合糸引き揃え、または等任意糸6に巻き付けたものを10~45mm角の網の目状7に編んでなる防虫、防鳥用ネツトであつて、金属蒸着された平糸を網の目状に編成するため、該反射効果に伴う害虫、鳥追を有効に奏すると同時に該ネツトは金属蒸着されているため害虫類の産卵期に幼虫が発生せず強風雨、極寒、強射熱から農作物を有効に保護し、また金属蒸着層は被覆されているので多年に亘り反射効果が薄れず長期使用にも耐久し得る利便を有する。」
イ 甲6記載の技術的事項
上記アより、甲6には、次の技術的事項(以下「甲6記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲6記載の技術的事項>
ポリエステルその他透明合成樹脂フイルム1の一面にアルミニウムその他金属蒸着層2を形成し、その蒸着面上に合成樹脂コーテイング層3を形成するか、または適宜接着剤4を介して透明合成樹脂フイルム5を形成してなる平糸Aを、経または緯若しくは双方に或は任意糸6と引き揃えまたは巻き付け網の目状7に編成した防虫、防鳥用ネットにおいて(上記ア(ア))、
10~45mm角の網の目状7とし、金属蒸着による乱反射を以つて虫、鳥の接近を防止し収穫期の作物を保護すること(上記ア(イ))。
(7)甲7
ア 甲7の記載事項
甲7には、次の記載がある。
(ア)明細書1頁4行~9行
「2.実用新案登録請求の範囲
ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性合成樹脂にアルミニウム粒等の光反射性の銀色顔料を練り込んだ材料によりヤーンを成形し、このヤーンを目幅15cm程度のネツトに編成してなる植物栽培用防虫ネツト。」
(イ)明細書2頁17行~3頁1行
「本考案はキユウリ、エンドー豆、長芋等の蔓性植物を絡ませ支持させるためのネツト自体を銀色に着色して有翅アブラムシの飛来を防止すると同時に植物体支持の目的を果し得るよう改良したものである。」
(ウ)明細書3頁7行~16行
「高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性合成樹脂にアルミニウム薄片等の光反射性の銀色顔料を練り込んだ一定濃度の銀色顔料のマスターパツチと高密度ポリエチレン又はポリプロピレン等の樹脂材料を配合してフラツトヤーンを成形し、これを延伸して400デニールの繊維とし、これを撚り合わせて太さ1mm程度のヤーン1とし、かかるヤーン1を編成して第1図示のような目幅10~20cm好ましくは15cm程度のネツト2に構成する。」
イ 甲7記載の技術的事項
上記アより、甲7には、次の技術的事項(以下「甲7記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲7記載の技術的事項>
蔓性植物を絡ませ支持させるためのネツト自体を銀色に着色して有翅アブラムシの飛来を防止すると同時に植物体支持の目的を果し得るよう改良したものであって(上記ア(イ))、
ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性合成樹脂にアルミニウム粒等の光反射性の銀色顔料を練り込んだ材料によりヤーンを成形し、このヤーンをネツトに編成してなる植物栽培用防虫ネツトにおいて(上記ア(ア))、
目幅10~20cm好ましくは15cm程度のネツトに構成すること(上記ア(ウ))。
(8)甲8
ア 甲8の記載事項
甲8には、次の記載がある。
(ア)明細書1頁3行~6行
「2 実用新案登録請求の範囲
ネツトを構成する糸の一部もしくは全部に光反射性のテープを付設してなる農業用の防虫,鳥網。」
(イ)明細書2頁16行~3頁1行
「経糸1,緯糸2はたとえばポリエチレン,ポリエステル,ポリアミド,ポリビニルアルコール系の合成繊維,木綿,麻などの天然繊維からなる糸で形成される。合成繊維の場合,マルチフイラメントのみならずモノフイラメントの糸も使用される。」
(ウ)明細書3頁19行~4頁2行
「ネツトの経糸1,1,緯糸2,2の間隔は限定しないが,20~30cmぐらいにしておくと作物に日陰をつくる恐れは少なく,同生育に支障を来すことはない。」
イ 甲8記載の技術的事項
上記アより、甲8には、次の技術的事項(以下「甲8記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲8記載の技術的事項>
ネツトを構成する糸の一部もしくは全部に光反射性のテープを付設してなる農業用の防虫、鳥網において(上記ア(ア))、
経糸1、緯糸2は、ポリエステルからなる糸で形成され、マルチフイラメントの糸も使用され(上記ア(イ))、
ネツトの経糸1、1、緯糸2、2の間隔は限定しないが、20~30cmぐらいにしておくと作物に日陰をつくる恐れは少なく、同生育に支障を来すことはないこと(上記ア(ウ))。
(9)甲9
ア 甲9の記載事項
甲9には、次の記載がある。
(ア)「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、農業用被覆ネット、防虫ネットや各種防護用ネットに使用されるネット状シートに関し、微小害虫の侵入を阻止することができる、農作物の無農薬、減農薬栽培に適したネット状シートに関するものである。」
(イ)「【0016】
本考案のネット状シート1に使用されるフィラメントは、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得られるもので、例えば、高密度や低密度、線状低密度のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6、66等の脂肪族ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニルなどの各種の熱可塑性樹脂が挙げられ、それらの単独或いは複合フィラメントを用いることができる。
【0017】
このフィラメントは、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよく、マルチフィラメントを用いる場合は5~50回/10cm程度の撚りを加えて、フィラメントの集束性や糸の強度を向上したものも使用できる。」
「【0027】
本考案のネット状シート1は、ネットの目合いA,Bが0.30~0.80mmであることが好ましく、さらには0.6mm以下であることがより好ましい。目合いが0.80mmを越えるとシルバーリーフコナジラミなどのコナジラミ類、ハモグリバエ類などの微小害虫の侵入を確実に阻止することができず、減農薬栽培や無農薬栽培の実現が困難となり、目合いが0.30mm未満になると通気性、通水性が極端に低下し農作物の栽培に悪影響を及ぼすようになる。」
イ 甲9記載の技術的事項
上記アより、甲9には、次の技術的事項(以下「甲9記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲9記載の技術的事項>
防虫ネットに使用されるネット状シートにおいて(【0001】)、
ネット状シート1に使用されるフィラメントは、ポリエステル樹脂のフィラメントを用いることができ(【0016】)、
マルチフィラメントであってもよく(【0017】)、
ネットの目合いA,Bが0.30~0.80mmであること(【0027】)。
(10)甲10
ア 甲10の記載事項
甲10には、次の記載がある。
(ア)「【0001】
本発明は、農業用および園芸用に使用される防虫ネット用マルチフィラメントに関する。」
(イ)「【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の防虫ネット用フィラメントは、マルチフィラメントであることが必要である。マルチフィラメントとすることによって、ソフトタッチで屈曲にも強く、作業性のよい防虫ネットを得ることができる。モノフィラメントでは、ごわつきで作業性が悪くなる上、屈曲にも弱くなる。
【0010】
マルチフィラメントは、ポリエステルであることが必要である。ポリエステルは、コストパフォーマンスに優れ、寸法安定性、耐水性が良好であり、防虫ネットに適している。用いられるポリエステルの種類としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のような芳香族ポリエステル、または、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトンのような脂肪族ポリエステルが挙げられる。中でも、PETは溶融紡糸の簡便性、製造コストなどの観点より特に好ましく用いられる。」
(ウ)「【0028】
G.防虫ネットの作製
(F.)記載のマルチフィラメントを経緯使いで、スルーザー型織機にて30本/2.54cm(1インチ)の平織物として防虫ネットを得た。この平織物の開口部の目開きは、約0.8mmであった。」
イ 甲10記載の技術的事項
上記アより、甲10には、次の技術的事項(以下「甲10記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲10記載の技術的事項>
農業用および園芸用に使用される防虫ネット用マルチフィラメントについて(【0001】)、
マルチフィラメントは、ポリエステルであり(【0010】)、
マルチフィラメントを経緯使いで平織物として防虫ネットを得、この平織物の開口部の目開きは、約0.8mmであったこと(【0028】)。
(11)甲11
ア 甲11の記載事項
甲11には、次の記載がある。
(ア)「【請求項1】 ポリ乳酸を主成分とするマルチフィラメントで主として構成された編物でなる農業用ネット。」
(イ)「【0028】この編物の目の数は、好適には経緯方向とも1インチあたり12個以上、さらに好適には25個以上(目合いは好適には約2~0.5mm、さらに好適には1mm以下、特に好適には0.7mm以下)である。このような目の数(目合い)を有することにより、このネットを防虫ネットとして利用した場合に、一般に農作物に食害を引き起こす害虫の侵入を阻止することが可能である。特に、目合いを1mm以下、好適には0.7mm以下とすることにより、アブラナ科野菜(コマツナ、ハクサイ、チンゲンサイ、ダイコン、カブ)等の葉菜類を食害するキスジノミハムシ、ハダニ、アブラムシ、コナガ、ハイマダラノメイガなどを好適に排除することが可能である。」
(ウ)「【0031】本発明の農業用ネットを用いると農作物を食害する害虫の侵入を効果的に阻止できるため、防虫用ネットとして利用することが可能であり、無農薬あるいは減農薬栽培が容易である。また、播種した種子などを食害する鳥類の侵入を阻止することができるため防鳥用のネットとして用いることができる。このネットはマルチフィラメントで主として構成された編物でなるため、柔らかく、取り扱いの利便性に優れる。広い面積を有するネットも嵩高くならない。マルチフィラメントで構成されているため毛羽が発生せず、そのため通気性および雨水の透過性に優れる。さらに、繊維間の空隙に水分を毛細管現象により保持することができ、保水性に優れる。」
イ 甲11記載の技術的事項
上記アより、甲11には、次の技術的事項(以下「甲11記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
<甲11記載の技術的事項>
ポリ乳酸を主成分とするマルチフィラメントで主として構成された編物でなる農業用ネットにおいて(【請求項1】)、
目合いは好適には約2~0.5mmであり、このような目合いを有することにより、このネットを防虫ネットとして利用した場合に、一般に農作物に食害を引き起こす害虫の侵入を阻止することが可能であること(【0028】)。
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「防虫ネット」は、本件発明1の「防虫ネット」に相当する。
イ 甲1発明の「糸条が編織物に形成されて得られる防虫ネット」が、ネット状の物体にて構成されていることは明らかであるから、甲1発明の「防虫ネット」は、本件発明1の「防虫ネット」と同様に、「ネット状体にて構成され」るものといえる。
ウ 甲1発明において、「防虫ネット」は「糸条が編織物に形成されて得られる」から、「防虫ネットの糸条」が、ネット状の物体を構成することは明らかであり、上記イを踏まえると、甲1発明の「防虫ネットの糸条」は、本件発明1の「ネット状体を構成する糸条」に相当する。
エ 甲1発明の「低融点熱可塑性ポリエステル」、「ポリエチレンテレフタレート」は、いずれもポリエステルの一種である。また、「熱接着性複合モノフィラメント」は、フィラメント糸の一種である。
そうすると、甲1発明の「熱接着性異形繊維」について、「低融点熱可塑性ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート」からなる「熱接着性複合モノフィラメント」としたものと、本件発明1の「ポリエステルからなるマルチフィラメント糸」とは、ポリエステルからなるフィラメント糸である点で、共通する。
オ 甲1発明において、「着色剤が添加されてい」ることは、本件発明1における「着色されて」いることに相当する。
カ 甲1発明の「ヒラズハナアザミウマ」は、アザミウマの一種である。そうすると、甲1発明において、「ヒラズハナアザミウマ」を「防虫対象とし」たものは、本件発明1と同様に、「防虫対象の虫がアザミウマである」といえる。
キ 上記ア~カを踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点において一致する。
<一致点>
ネット状体にて構成され、ネット状体を構成する糸条がポリエステルからなるフィラメント糸であり、着色されており、防虫対象の虫がアザミウマである防虫ネット。
ク そして、本件発明1と甲1発明とは、次の相違点において相違する。
<相違点1>
ネット状体を構成する糸条が、本件発明1においては、ポリエステルからなるマルチフィラメント糸であるのに対し、甲1発明においては、ポリエステルからなる熱接着性複合モノフィラメントである点。
<相違点2>
ネットの目合いが、本件発明1においては、「2.5cm以上かつ5cm以下」であるのに対し、甲1発明においては、「0.4~3mm」である点。
<相違点3>
着色について、本件発明1においては、「赤色に着色されて」いるのに対し、甲1発明においては、色が特定されていない点。
(2)検討・判断
事案に鑑みて、相違点1、相違点3、相違点2の順に検討する。
ア 相違点1について
上記1(1)ア(エ)に示したように、甲1の【0014】には、「本発明の防虫ネットの糸条を構成する熱接着性異形繊維には、単一成分樹脂からなるレギュラーモノフィラメント、複数の樹脂からなる複合モノフィラメント、さらには単一成分樹脂もしくは複数の樹脂からなるマルチフィラメントを用いることが出来る。」と記載されている。当該記載に基づいて、甲1発明においてマルチフィラメント糸を採用することに困難性はなく、その際、熱接着性複合モノフィラメントの場合と同様に、ポリエステルを用いることは、当業者が適宜なし得たことである。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点3について
甲3記載の技術的事項は、アザミウマ類に属する害虫が赤色光を忌避するとの知見であり、甲4記載の技術的事項は、ミナミキイロアザミウマ等の害虫に対し、防虫用ネットを構成する有機繊維Bの赤色による害虫への忌避機能があることを示すものである。
甲1発明において、アザミウマの一種であるヒラズハナアザミウマ等に対する忌避性を高めるよう、着色剤による着色を赤色として、相違点3に係る本件発明1の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
ウ 相違点2について
(ア)甲1では、【0026】に示されるように、実施例において害虫ヒラズハナアザミウマを用いており、【0021】には、「・・・目合いは0.4~3mm、より好ましくは0.6~2mmである。・・・目合いが3mmを超えると、害虫が侵入しやすくなり防虫ネットとしての機能が低下する。」と記載されていることから、ヒラズハナアザミウマ程度の微細な害虫の侵入を防止できるように、目合いを3mm以下に設定していることが理解できる。
(イ)甲2には、上記1(2)ア(イ)に示したとおり、ネツトの目合が害虫の体より大きくなつても害虫の侵入を阻害することができることが記載されているが、甲2は紫外線の反射率を高めた合成樹脂製繊維を用いることを前提としているとともに、目合いの上限を3mmとした甲1発明において、ネットの目合いを2.5cm以上まで広げることが示唆されているとはいえない。
したがって、甲2記載の技術的事項は、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることを示唆するものではない。
(ウ)甲3には、ネットについての記載はないから、ネットの目合いについても記載がない。
また、甲4記載の技術的事項は、上記1(4)イに示したとおり、防虫用ネットにおいて「網目は少し粗い目であってもよ」いものであるものの、「刺激性の異臭」を用いることを前提としており、また、「網目」について具体的な数値の記載はなく、何と比較して粗いのかも記載されていない。
したがって、甲3記載の技術的事項及び甲4記載の技術的事項は、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることを示唆するものではない。
(エ)甲5記載の技術的事項は、上記1(5)イに示したとおり、網状に形成した植物栽培用具において、「網目の大きさは3×3mmに限定されるものではなく、それより小さく、或いは大きく形成することもできる」ものであるが、どの程度小さく、或いは大きく形成できるかを具体的に示唆するものではなく、甲1発明における目合いの上限、及び甲5における網目の大きさである3mmと比較して、数倍大きい2.5cm、またはそれ以上にまで、甲1発明におけるネットの目合いを大きくすることが、示唆されているとはいえない。
したがって、甲5記載の技術的事項は、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることを示唆するものではない。
(オ)甲6記載の技術的事項は、上記1(6)イに示したとおり、防虫、防鳥用ネツトにおいて、10~45mm角の網の目状とし、金属蒸着による乱反射を以つて虫、鳥の接近を防止し収穫期の作物を保護するものである。
ここで、甲6には、具体的にどのような害虫を対象としているのか記載されておらず、甲1発明のように、ヒラズハナアザミウマ程度の微細な害虫を対象として、上限を3mmとしたネットの目合いを、大幅に広げることを示唆しているとはいえない。
したがって、甲6記載の技術的事項は、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることを示唆するものではない。
(カ)甲7記載の技術的事項は、上記1(7)イに示したとおり、植物栽培用防虫ネツトにおいて、目幅10~20cm好ましくは15cm程度のネツトに構成するものであるが、蔓性植物を絡ませ支持させるためのネツトであることを前提としており、ヒラズハナアザミウマ程度の微細な害虫を対象としてネットの目合いの上限を3mmとした甲1発明について、ネットの目合いを2.5cm以上かつ5cm以下とすることを示唆しているとはいえない。
したがって、甲7記載の技術的事項は、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることを示唆するものではない。
(キ)甲8記載の技術的事項は、上記1(8)イに示したとおり、農業用の防虫、鳥網において、ネツトの経糸、緯糸の間隔は、20~30cmぐらいにしておくと作物に日陰をつくる恐れは少なく、同生育に支障を来すことはないものであるが、ヒラズハナアザミウマ程度の微細な害虫を対象としてネットの目合いの上限を3mmとした甲1発明について、ネットの目合いを2.5cm以上かつ5cm以下とすることを示唆しているとはいえない。
したがって、甲8記載の技術的事項は、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることを示唆するものではない。
(ク)甲9には、上記1(9)イに示した技術的事項が、甲10には、上記1(10)イに示した技術的事項が、甲11には、上記1(11)イに示した技術的事項が記載されているが、いずれも、甲1発明においてネットの目合いを2.5cm以上かつ5cm以下とすることを示すものではない。
したがって、甲9記載の技術的事項、甲10記載の技術的事項及び甲11記載の技術的事項は、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることを示唆するものではない。
(ケ)上記(ア)~(ク)より、甲1発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、甲2~11記載の技術的事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たことではない。
エ 申立人の主張について
(ア)申立人の主張
申立人は、申立書において、上記相違点2に関し、次の主張をしている。
「ここで、本件特許発明1と甲1発明の共通点である忌避効果を強調することについてみると、甲第2号証にも開示がある。つまり、特定の光の反射率を高めた合成樹脂繊維線を用いることによってネットの目合いを害虫より大きくしても害虫の浸入を阻害することができるようにして、通気性や透光性の悪化を防止している。そして、その目合いは、2~20mmである。このように、害虫の体よりも大きな目合いとする防虫ネットは本件特許の出願前より周知である。
ついで、目合いの大きさについて考察すると、本件特許発明と同じように防虫を目的としたネットでも、害虫よりも格段に大きな目合いとしたものが本件特許の出願前から知られている。例えば、甲第5号証では3mm以上でもよいとされ、甲第6号証では1m~4.5cm、甲第7号証では10cm~20cm、甲8号証では20cm~30cmとされている。いずれも光輝性で忌避をさせる防虫ネットである。甲第5号証はアザミウマを防虫対象とするものであり、甲第6号証の目合いは本件特許発明1の目合いと略共通している。
そうすると、目合いを2.5cm~5cmとすることに困難性があるかが問題になる。
しかし、そのような大きさの目合いとすることは、前述のように本件特許の出願前より公知である。特に、甲第6号証には、本件特許発明1の範囲と略共通する大きさの目合いが開示されている。そうすると、構成Cのように目合いを2.5cm以上かつ5cm以下とすることに、何ら困難性はないといえる。しかも、その目合いは出願時に1cm以上かつ5cm以下とされていたところを、2.5cm以上5cm以下と補正されたが、1cmと2.5cmの相違による効果の違いも2.5cmと5cmの違いによる効果の相違も明らかでなく、2.5cmの場合には効果が得られたとするものの、目合いの数値に臨界的意義が見られない以上、目合いの範囲は適宜設定される一般的な範囲であるといえる。」(17頁11行~18頁11行)
(イ)上記(ア)の主張に対する検討
上記ウに示したとおり、甲2、甲5~8には、ヒラズハナアザミウマ程度の微細な害虫を対象として目合いの上限を3mmとしている甲1発明において、ネットの目合いを2.5cm~5cmとすることが示唆されているとはいえない。
そして、本件発明1は、ネットの目合いが2.5cm以上かつ5cm以下であるにもかかわらず、赤色に着色されていることで、目合いよりもサイズの小さな害虫であっても、これらを忌避することができて、この害虫がネット状体を通過することを効果的に防止することができ、ネットの目合いが2.5cm以上かつ5cm以下であることで、ネットを柔軟に構成することができ、このため農作物に被せる際などにおいて取り扱い性や作業性が良好である(本願明細書の【0010】参照)という、甲1~甲2、甲5~甲8に開示されていない効果を奏するから、上記数値範囲は、適宜設定し得たものともいえない。
よって申立人の主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及びその他の証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに減縮したものであるから、上記2と同様の理由により、甲1発明及びその他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-701170