特許異議申立
2025-700107
新規短靴用月型芯およびそれを用いた短靴
- 審判番号
- 2025-700107
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-203890
- 登録番号
- 7523103
- 請求日
- 2025年01月23日
- 審決日
- 2025年11月19日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】東峰貿易株式会社
- 【権利者代理人】篠崎 史典
- 【異議申立人】藤井 正剛
- 審判長/審判官
- 審判長 窪田 治彦
- 審判官 芝井 隆
- 審判官 長馬 望
- 分類
- P1651.113-Z (A43B) / P1651.121-Z (A43B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7523103号発明「新規短靴用月型芯およびそれを用いた短靴」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7523103号の請求項1から4に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7523103号の請求項1から4に係る特許(以下、「本件特許」といい、各請求項に係る特許を「本件特許1」などという。)は、令和5年12月1日に出願され、令和6年7月18日にその特許権の設定登録がされ、同月26日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年1月23日に特許異議申立人 藤井 正剛(以下、「申立人」という。)より、請求項1から4に係る特許に対する特許異議の申立て(以下、「本件異議申立て」という。)がされ、同年3月26日付けで取消理由が通知され、これに対し、同年5月26日に意見書が提出され、同年7月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年10月5日に意見書が提出されたものである。
第2 本件発明
特許第7523103号の請求項1から4に係る発明(以下、「本件発明」といい、各請求項に係る発明を「本件発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1から4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
短靴の踵部に装着されて使用される短靴用月型芯であって、
着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部と、当該踵部後方当接部の両端部から延設された一対の側面部とから構成され、
前記一対の側面部は、内側側面部と外側側面部とからなり、
当該内側側面部と当該外側側面部は対向しており、
当該一対の側面部は、着用者の中足部側面まで延長され、
前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなっており、短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されていることを特徴とする短靴用月型芯。
【請求項2】
内面側に、靴脱げ防止用凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の短靴用月型芯。
【請求項3】
前記靴脱げ防止用凸部が、内側側面部の内面側と外側側面部の内面側とに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の短靴用月型芯。
【請求項4】
請求項1~3のいづれか一項に記載の短靴用月型芯が短靴の踵部に装着されてなる短靴。」
第3 当審が通知した取消理由の概要
当審が令和7年7月30日付けの取消理由通知(決定の予告)において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1 本件発明1及び4は、特開2012-249744号公報(本件異議申立ての甲第1号証。以下、「甲1」という。)に記載された発明であり、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1及び4は、特許法(以下、単に「法」という。)第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 本件発明1及び4は、特開昭63-84501号公報(本件異議申立ての甲第2号証。以下、「甲2」という。)に記載された発明であり、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1及び4は、法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
3 本件発明1及び4は、特開2008-206629号公報(本件異議申立ての甲第3号証。以下、「甲3」という。)に記載された発明であり、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1及び4は、法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
4 本件発明2及び3は、甲1に記載された発明、甲2に記載された発明、又は甲3に記載された発明のいずれかに周知技術(周知例として、特開平8-252101号公報(本件異議申立ての甲第7号証(以下、「甲7」という。))、特開2011-41590号公報(本件異議申立ての甲第8号証(以下、「甲8」という。))、特開2002-262907号公報(本件異議申立ての甲第9号証、(以下、「甲9」という。))がある。)を適用し、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許2及び3は、法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第4 各甲号証に記載された事項
1 甲1
(1)甲1に記載された事項
甲1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。
ア 「【請求項1】
シューズのカウンター構造であって、
シューズの少なくとも踵領域に設けられ、着用者の足の踵部の下部を包み込むように踵部に沿って巻き上げられた周縁部を有するソールプレートを備え、
シューズの前記踵領域の内甲側および外甲側において足の踵部を左右から挟持し得る位置に左右一対のカウンター部が設けられており、前記各カウンター部が前記ソールプレートから独立して内外方に変形し得るように、前記各カウンター部の下端が前記ソールプレートの前記周縁部に連結されている、
ことを特徴とするシューズのカウンター構造。」
イ 「【0030】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
〔第1の実施例〕
図1ないし図8は、本発明の第1の実施例によるカウンター構造を示している。ここでは、当該カウンター構造がウォーキングシューズまたはランニングシューズに適用された場合を例にとって説明する。
【0031】
図1および図2に示すように、シューズは、ソールSと、その上に固着されたアッパー(甲被)Uとから主として構成されている。カウンター構造1は、シューズの少なくとも踵領域に設けられたソールプレート2と、その上方に配置された左右一対のカウンター部材3、3’とを有している。
【0032】
ソールプレート2は、この例では、シューズの踵後端から中足領域近傍まで延設されている。また、ソールプレート2は、図5ないし図8に示すように、中底20と、着用者の足F、F’の踵部の下部を包み込むように踵部に沿って中底20の外周縁部から巻き上げられた周縁部21、22、23とを有しており、足F、F’の踵部の足裏の形状に沿うラウンド形状を有している。周縁部21、22はそれぞれシューズの外甲側、内甲側に沿って配設され、周縁部23はシューズの踵後端側に沿って配設されており、これらの周縁部21、22、23は一体に連設されている。」
ウ 「【0039】
ここでは、ソールプレート2および各カウンター部材3、3’が、いずれもシューズのアッパーUの外側に設けられた例を示したが、ソールプレート2および各カウンター部材3、3’のいずれかまたは双方をアッパーUの内部に設けるようにしてもよい。この点は、後述する第2ないし第4の実施例、ならびに第6および第7の実施例においても同様である。
【0040】
上述のように構成されるカウンター構造によれば、シューズの着用時には、着用者の足の踵部の下部がソールプレート2の周縁部21、22、23によって保持される(図7、図8参照)。また、このとき、ソールプレート2の周縁部21、22に連結された各カウンター部材3、3’によって踵部が左右から挟持され(図7、図8参照)、これにより、踵をホールドすることができ、フィット性を向上できる。
【0041】
しかも、この場合には、各カウンター部材3、3’がソールプレート2から独立して内外方に変形し得るように各カウンター部材3、3’の下端の各連結部30、30’がソールプレート2の周縁部21、22に連結されているので、着用者の足の踵幅がソールプレート2の幅寸法よりも大きい場合、踵部がソールプレート2の周縁部21、22に乗り上げて周縁部21、22を押し拡げた際には、各カウンター部材3、3’が外側に変形することで(図6一点鎖線参照)、各カウンター部材3、3’が踵部から離れることなく、踵部が各カウンター部材3、3’によって左右から挟持されて、ホールドされることになる(図8参照)。このとき、各カウンター部材3、3’の内外方への屈曲性を高めるには、各連結部30、30’の前後方向長さを短くしたり、肉厚を薄くしたりするようにすればよい。
【0042】
なお、この場合、ソールプレート2の幅寸法を予め踵幅の小さな足に合わせて設計していれば、踵幅がソールプレート2の幅寸法よりも大きな足に対しては、各カウンター部材3、3’が外側に変形することで、踵部が各カウンター部材3、3’によって左右から確実にホールドされることになる。
【0043】
このようにして、着用者の足の踵幅の広狭(つまり踵骨の大小)に関係なく、常に安定して踵を保持(ホールド)することができるようになり、静止時のみならず運動時においても、踵のホールド性およびフィット性を向上できるようになる。」
エ 甲1には、次の図1、3、5、6が記載されている。
[図:0001434138000001.jpg]
[図:0001434138000002.jpg]
[図:0001434138000003.jpg]
(2)甲1に記載された発明
甲1の【0032】(上記(1)イ)に記載された周縁部21、22、23は、それぞれシューズの外甲側、内甲側、踵後端側に沿って配設されているから、以下、それぞれ、外甲側周縁部21、内甲側周縁部22、踵後端側周縁部23とすると、甲1の図6等の記載からみて、内甲側周縁部22と外甲側周縁部21とは、対向して一対の周縁部21、22を構成しているといえ、さらに、この図6の記載より、内甲側周縁部22と外甲側周縁部21との間の離間距離は、踵後端側周縁部23から離れるにつれて、小さくなっていると認められる。
また、「ソールプレート2は、この例では、シューズの踵後端から中足領域近傍まで延設されている」(【0032】(上記(1)イ))ものであり、「ソールプレート2は、図5ないし図8に示すように、中底20と、着用者の足F、F’の踵部の下部を包み込むように踵部に沿って中底20の外周縁部から巻き上げられた周縁部21、22、23とを有して」いるものでもあり(【0032】(上記(1)イ))、図3及び図5の記載をみると、ソールプレート2が有する内甲側周縁部22と外甲側周縁部21は、中足領域近傍まで延設されていると解される。
これらの事項を考慮すると、上記(1)を含む甲1の記載より、甲1には、次の甲1発明1が記載されていると認められる。
・甲1発明1
「シューズの踵領域に設けられたソールプレート2を有するカウンター構造1であって、
着用者の足F、F’の踵部の後端の下部を包み込むように当該踵部に沿って巻き上げられた踵後端側周縁部23と、当該踵後端側周縁部23の内甲側と外甲側から一体に連接された一対の周縁部21、22とを有し、
前記一対の周縁部21、22は、内甲側周縁部22と外甲側周縁部21とからなり、
当該内甲側周縁部22と当該外甲側周縁部21とは対向しており、
当該一対の周縁部21、22は、着用者の中足領域近傍まで延設され、
前記内甲側周縁部22と前記外甲側周縁部21との離間距離は、踵後端側周縁部23から離れるにつれて、小さくなっているソールプレート2を有するカウンター構造1。」
また、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明2」という。)も記載されていると認められる。
・甲1発明2
「甲1発明1のソールプレート2を有するカウンター構造1がシューズの踵領域に設けられているシューズ。」
2 甲2
(1)甲2に記載された事項
甲2には、次の事項が記載されている。
ア「1.前部と後部とを有し後部を比較的剛性とした中底と、
内側を内層で覆われ外側を上あて革で覆われた外向きフランジ付の成形踵革を有する甲革甲革であって、該上あて革が踵革のフランジ上の外に延長して中底の後部の外周の下に巻かれた下縁部を有する甲革と、
中底の後部の外周を踵革のフランジおよびフランジを覆う上あて革の縁部と結合する縫合部と、
中底の前部の外周の下に延長しかつ中底前部に接着接合すされる接合縁部を有する爪革と、
を備えた靴。」(1ページ左欄5行から同欄16行)
イ 「本発明を例示とした実施例並びに図面について説明する。
第1図に示す運動靴は甲革10と靴底12とを有する。甲革10の爪革14は1列の縫目20によってパターン線18に沿って上あて革16に取付ける。図示の例では第2図に示す通り上あて革16の共通縁に沿う折込みによって縫目20が隠される。甲革10の爪革14は紐開口22を有し、鳩目ステー24と舌革26とで仕上げる。履き心地と可撓性のために紐開口22の上下の中間の両側にノッチ28を形成する。図示の例では内層30を甲革に縫付け、上あて革16、爪革14の全内面に延長させる。内層は例えば豚革、織物等の材料又は組合せとする。図示の例ではパッド付カラー32を甲革の頂部の上縁34を囲んで取付けて使用者の履き心地を更に良くする。」(2ページ右下欄16行から3ページ左上欄10行)
ウ 「第5図は本発明による踵革60を示し、靴の甲革の上あて革16と内層30との間に組合せる。踵革60は上から見てほぼU型であり、甲革の踵部を囲んで延長し靴の市革64から前部に向けて高さの減少する比較的剛性の側壁62を有する。踵革の下縁68を囲む外向きのフランジ66を形成して後述する通り、靴を組立てる時の接合縁部(lasting margin)を形成する。甲革10を組み立てる間に踵革を上あて革16と内層30との間に挿入する。フランジ66は靴に横安定を与えるための芯(roll)として作用し使用者の足又は踵を捻挫する危険を減少する。
甲革の一体の爪革14は爪先部70と側部72を囲んで延長し、第6図に示す通り中底44の前部46の縁部76の下に延長する接合縁部74を有する。同様にして内層30に下部縁部77は中底縁部76の下に巻込む。上あて革16の接合縁部78は踵革のフランジ66上に延長し、中底後部48の広い縁部49の下に第7図に示す通りに巻込む。
上述した通り、本発明の靴構造は前部を接着剤接合とし、後部を縫合せとし、利点が大きい。第6図は甲革の前部の接合縁部が中底前部の縁部76の下に巻込むことを示す。第7図は成形踵部62の剛性のフランジ66と上あて革16の下部を外方に曲げて中底後部48の広い縁部49と共に外に曲げて、縫目66(当審注:「縫目81」の誤記)によって縫合せる。上あて革16の縁部の最外縁部78は中底後部48の縁部49の下に曲げて接着剤で接合する。」(3ページ右上欄7行から同ページ左下欄13行)
エ 甲2には、次のFig.3、5、7が記載されている。
[図:0001434138000004.jpg]
[図:0001434138000005.jpg]
(2)甲2に記載された発明
甲2に記載された靴の踵革60の市革64は、靴の後端部で使用者の足に接する部分であるから、使用者の踵の背面に沿うものである。また、踵革60の一対の側壁62は、Fig.3及びFig.5の記載からみて、着用したときに、足の内側に位置する側壁62(以下、「内側側壁」という。)と足の外側に位置する側壁62(以下、「外側側壁」という。)とからなる2つの側壁により一対となっており、互いに対向している。また、Fig.3の記載からみて、内側側壁と外側側壁との離間距離は、市革64側から靴の前部に向かうにしたがって、ほぼ同一距離かやや狭くなっているといえる。
これらの事項を考慮すると、上記(1)を含む甲2の記載より、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されていると認められる。
・甲2発明1
「靴の踵部に縫合されて使用される踵革60であって、
使用者の踵の背面に沿った市革64と当該市革64の両端から靴の前部に向けて延長する一対の側壁62を有し、
前記一対の側壁62は、内側側壁と外側側壁とからなり、
当該内側側壁と当該外側側壁は対向しており、
当該一対の側壁62は、靴の前部に向けて延長され、
前記内側側壁と前記外側側壁との離間距離は、市革側から靴の前部に向かうにしたがって、ほぼ同一距離かやや狭くなっている踵革60。」
また、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明2」という。)も記載されていると認められる。
・甲2発明2
「甲2発明1の踵革60が靴の踵部に縫合されている靴。」
3 甲3
(1)甲3に記載された事項
甲3には、次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
シューズのアッパーの踵部にヒールカウンタを備えたシューズにおいて、
前記ヒールカウンタが、
シューズ着用者の足の踵骨の下部に対応する位置において踵骨下部の周りに配設され、シューズの外甲側および内甲側においてそれぞれ実質的に前後方向に延びる下部サポート部と、
シューズ着用者の足の踵骨の上部に対応する位置において踵骨上部の周りに配設され、シューズの外甲側および内甲側においてそれぞれ実質的に前後方向に帯状に延びる上部サポート部と、
前記下部サポート部および上部サポート部を上下方向に連結する連結部と、
前記下部サポート部および上部サポート部を上下方向に分離するように、前記下部サポート部および上部サポート部の間に形成されるとともに、その底部が前記連結部まで延びる切欠きとから構成されている、
ことを特徴とするヒールカウンタを備えたシューズ。」
イ 「【0035】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1の実施例>
図1および図2は、本発明の第1の実施例によるヒールカウンタが採用されたシューズを説明するための図であって、図1はシューズの内甲側側面断面図、図2は図1のヒールカウンタ部分の拡大図である。
【0036】
図1に示すように、シューズ1は、ソール2と、その上に固着されたアッパー(甲被部)3と、アッパー3の踵部Kに設けられたヒールカウンタ10とを備えている。なお、図1では、図示の便宜上、アッパー3の縦断面形状が示されている。また、図1には、シューズ着用者Pの足の骨格図が併せて示されている。
【0037】
ヒールカウンタ10は、シューズ着用者Pの足の踵骨CAの下部に対応する位置において踵骨CAの下部の周りに配設され、実質的に前後方向(図1左右方向)に延びる下部サポート部11と、踵骨CAの上部に対応する位置において踵骨CAの上部の周りに配設され、実質的に前後方向(同図左右方向)に帯状に延びる上部サポート部12と、上下部サポート部11,12を上下方向(同図上下方向)に連結する連結部13と、上下部サポート部11,12を分離するように上下部サポート部11,12の間に形成され、その底部14aが連結部13まで延びる切欠き14とから構成されている。なお、図1中、符号TAは、足の距骨を示している。
【0038】
図1には表れていないが、上下部サポート部11,12は、シューズ1の外甲側にも設けられており、外甲側においても同様に実質的に前後方向に延設されている。この実施例では、外甲側に配設された上下部サポート部11,12は、内甲側の上下部サポート部11,12と左右対称に配置されており、上下部サポート部11,12の前後方向長さは、アッパー3の内甲側および外甲側で等しくなっている。」
ウ 「【0040】
連結部13は、この例では、シューズ1のアッパー3の踵後端部30に配置されてヒールカウンタ本体部を構成している。上下部サポート部11,12は、それぞれヒールカウンタ本体部13の上部および下部の位置から前方に延びている。切欠き14の底部14aは、ヒールカウンタ本体部13まで延びている。また、切欠き14の底部14aの高さ位置は、踵骨CAの後方側最突出点である点CA1の高さ位置に一致しており、点CA1は、アッパー3の踵後端の最突出点である点30aの高さ位置に一致している。したがって、切欠き14の底部14aは、点30aの高さ位置に一致している。」
エ 「【0061】
・・・
<第2の実施例>
前記第1の実施例では、ヒールカウンタ10の上下部サポート部11,12がシューズ1の内甲側および外甲側において前後方向に同じ長さで配設された、すなわち上下部サポート部11,12がシューズ1に左右対称に設けられた例を示したが、本発明の適用はこれには限定されない。
【0062】
上部サポート部12のシューズ踵後端からの前後方向長さをシューズの内甲側および外甲側間で異ならせるようにしてもよい。図3は、本発明の第2の実施例によるヒールカウンタ10の平面概略図である。この第2の実施例では、外甲側の前後方向長さLu’が内甲側の前後方向長さLuよりも長くなっている。この場合には、着地時における足の回外を効果的に防止できるようになる。これとは逆に、内甲側の前後方向長さの方を長くした場合には、着地時における足の回内を効果的に防止できるようになる。このようにして、競技種目またはシューズ着用者の個体差に適合したシューズを提供できるようになる。・・・」
オ 甲3には、次の図1、3が記載されている。
[図:0001434138000006.jpg]
[図:0001434138000007.jpg]
(2)甲3に記載された発明
甲3に記載された上部サポート部12は、【0038】(上記(1)イ)、図3(上記(1)オ)の記載からみて、内甲側と外甲側に設けられている(以後、内甲側の上部サポート部12を内甲側上部サポート部、外甲側の上部サポート部12を外甲側上部サポート部という。)。図3(上記(1)オ)の記載からみて、内甲側上部サポート部と外甲側上部サポート部とは、対向しているといえ、さらに、甲1の【0062】(上記(1)エ)には、内甲側上部サポート部と外甲側上部サポート部のそれぞれについて、着地時における足の回外及び回内を効果的に防止するために長くすることが記載されており、これより、足の回外及び回内の両者を防止するために、内甲側上部サポート部と外甲側上部サポート部のそれぞれを長くすることも甲3に記載されているといえる。
これらの事項を考慮すると、上記(1)を含む甲3の記載より、甲3には、次の甲3発明1が記載されていると認められる。
・甲3発明1
「シューズ1のアッパー3の踵部Kに設けられたヒールカウンタ10であって、シューズ1のアッパー3の踵後端部30に配置された連結部13と、当該連結部13に連結された一対の上部サポート部12を備え、
前記一対の上部サポート部12は、内甲側上部サポート部と外甲側上部サポート部とからなり、
当該内甲側上部サポート部と当該外甲側上部サポート部は対向しており、
前記一対の上部サポート部12は、着地時における足の回外及び回内を効果的に防止できる位置まで長くしている
ヒールカウンタ10。」
また、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明2」という。)も記載されていると認められる。
・甲3発明2
「甲3発明1のヒールカウンタ10がシューズ1の踵部Kに設けられたシューズ1。」
4 甲7に記載された事項
甲7には、次の事項が記載されている。
(1)「【0011】第1図に示す運動靴は、本発明に係る実施例の一つであって、バウンシングパテを連続気泡タイプのウレタンスポンジ等に含浸せしめてなるパッド9を、甲被部材1と一連に形成された硬質の支持壁部材3の内側に配置した構成を有する。該支持壁部材3は、ほぼ平板状若しくは外側に膨らんだ緩やかな曲面状であって、踝部Bをほぼ覆う程度の大きさで、形状は特に限定されるものではない。該支持壁部材3は、甲被部材1に支持壁部材3の形状に合わせて開けられた開口部Cの裏側から当接させて、周辺部を縫着して甲被部材1と一連に形成されている。該支持壁部材3に用いられる素材はナイロンやポリウレタン等の硬質の合成樹脂であり、その硬度は、(JIS K 7125)D硬度で60~70程度が好適である。色や表面の仕上げは運動靴のデザインにより任意に変更でき、透明もしくは半透明の素材を用いて内部の部材を透視することもできる。また、補強部材の弾性や保形性を向上させる目的で、ガラス繊維、カーボン繊維や超弾性金属等で補強することも可能である。
【0012】第5図に示すように前記パッド9は、踵部Aから踝部Bに至るの凹凸部分を充填するように設けられ、支持壁部材3及びヒールカウンター7aと裏材10との間に挟持されている。本発明に係るパッド9は、第10図に示すように踵部から踝部に至る凹凸部分を包囲するのに好適な形状を有しており、該パッド9の上方部分は、前記支持壁部材3の形状にほぼ合致させた形状であることが望ましい。」
(2)甲7には、次の図1、5が記載されている。
[図:0001434138000008.jpg]
5 甲8に記載された事項
甲8には、次の事項が記載されている。
(1)「【0009】
図1~図6には本発明に係る踵部内周面に突出部を設けた靴及びその製造方法の第1実施例が示されている。なお、実施例では踵部内周面に突出部を設けた靴を婦人靴(ハイヒール)に適用した場合を例にして説明する。
図1に示されるように、本発明の踵部内周面に突出部を設けた靴が適用された婦人靴10は甲皮部12とソール部14と本底部16とヒール部18から構成されている。
前記甲皮部12は外側に配設される甲皮20と甲皮20の内側に配設される裏皮22を密着当接して形成されている。この甲皮20は比較的硬い天然皮革を薄いシート状にして加工して形成されている。一方、この裏皮22は柔らかい天然皮革を薄いシート状にして加工して形成されている。
前記甲皮部12の爪先部24の前記甲皮20と裏皮22の間には爪先部芯材26(破線で示す)が挟まれた状態で配設されている。また、前記甲皮部12の踵部28の前記甲皮20と裏皮22の間には踵部芯材30(破線で示す)が挟まれた状態で配設されている。これら爪先部芯材26と踵部芯材30は共に水に一定時間漬けると軟らかくなるが、乾燥すると硬くなる性質を有する公知の素材をシート状に加工して形成されている。
従って、前記甲皮部12の爪先部24の甲皮20と裏皮22の間に爪先部芯材26を、甲皮部12の踵部28の甲皮20と裏皮22の間に踵部芯材30を、それぞれ配設することにより爪先部24と踵部28は一段と型崩れしにくいようになっている。
図2に示されるように、足の踵の一側部が対応する裏皮22の踵部一側部22Aと足の踵の他側部が対応する裏皮22の踵部他側部22Bにはそれぞれ長円状の突出部用開口32が貫通形成されている。
図1に示されるように、前記踵部一側部22Aと踵部芯材30の間には突出部用開口32に対応して突出体34が配設され、前記踵部他側部22Bと踵部芯材30の間には突出部用開口32に対応して突出体34が配設されている(なお、図1には踵部一側部22Aと踵部芯材30の間に配設された突出体34のみを示す)。
図4に示されるように、前記突出体34はシート状に加工して長円状にカットした突出部形成片36と突出部形成片36の背面に接着剤等で仮付けされた弾性体としてのスポンジ38から構成されている。なお、この実施例ではスポンジ38は直方体状に形成されている。
従って、前記突出体34を裏皮22と踵部芯材30の間に配設することにより図3に示されるようにスポンジ38が突出部形成片36の中間部の突出部36Aを押して突出部形成片36の突出部36Aが裏皮22に形成された突出部用開口32から突出するようになっている。
なお、前記突出部形成片36はその周縁部36Bが糸40で前記裏皮22に縫われ、これにより前記突出体34は裏皮22に取り付けられている。
従って、図1及び図2に示されるように婦人靴10は甲皮部12の踵部28において突出体34の突出部36A,36Aが突出するので、突出部36A,36Aが足の踵の一側部と他側部に当接するため歩行中に踵が脱げにくいようになっている。
なお、図6に示されるように前記ソール部14はアウトソール42とインソール44と中敷46から形成されている。
また、前記アウトソール42の下には図1に示されるように前記本底部16と前記ヒール部18が固定されるようになっている。」
(2)甲8には、次の図1、2、3が記載されている。
[図:0001434138000009.jpg]
6 甲9に記載された事項
甲9には、次の事項が記載されている。
(1)「【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るヒールカウンタを備えた靴の側面図を示す。この靴は、靴底10と中底17と、その上部に取り付けられた甲被(アッパー)15とを備えている。靴底10は、例えばミッドソール16およびアウトソール18を備えており、中底17は、上記ミッドソール16の上面に接合される中底ボード14およびその上面のインソール12を備えている。本発明にかかるヒールカウンタ42は靴の踵部40に設けられており、図2に示すように、踵部40の周囲に沿って内甲側と外甲側の両側に延びる平面視で略U字形を有している。
【0017】図2のように、上記ヒールカウンタ42は、例えば、その側部の内面に第1~3の支持部43~45と、ヒールカウンタ42の剛性を強化するために、底面に内方に延びる鍔部46とを備えている。これらの第1~3の支持部43~45は、例えばヒールカウンタ42の内面の各部位における肉厚を厚くして、内方へ突出させたものである。各支持部の形状は、被支持部と接触する先端部を丸くした略円柱状、略円錐状、略角柱状、略角錐状など各種の形状が用いられ、特に限定されない。」
(2)甲9には、次の図2が記載されている。
[図:0001434138000010.jpg]
第5 甲1に記載された発明を主引用発明とした新規性、進歩性の判断
1 本件発明1
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「シューズ」、「踵領域」、「設けられた」は、それぞれ、本件発明1の「短靴」、「踵部」、「装着されて使用される」に相当し、甲1発明1の「ソールプレート2を有するカウンター構造1」は、本件発明1の「短靴用月形芯」に相当する。そうすると、甲1発明1の「シューズの踵領域に設けられたソールプレート2を有するカウンター構造1」は、本件発明1の「短靴の踵部に装着されて使用される短靴用月型芯」に相当する。
甲1発明1の「着用者の足F、F’の踵部の後端の下部」は、本件発明1の「着用者の踵の背面側」に相当するから、甲1発明1の「着用者の足F、F’の踵部の後端の下部を包み込むように当該踵部に沿って巻き上げられた踵後端側周縁部23」は、本件発明1の「着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部」に相当する。そして、甲1発明1の「内甲側と外甲側」、「一体に連接された」、「周縁部21、22」は、それぞれ、本件発明1の「両端部」、「延設された」、「側面部」に相当する。また、甲1発明1の「ソールプレート2を有するカウンター構造1」が「踵後端側周縁部23」と「一対の周縁部21、22とを有し」ていることは、本件発明1の「短靴用月形芯」が「踵部後方当接部」と「一対の側面部とから構成され」ていることに相当する。そうすると、甲1発明1が「着用者の足F、F’の踵部の後端の下部を包み込むように当該踵部に沿って巻き上げられた踵後端側周縁部23と、当該踵後端側周縁部23の内甲側と外甲側から一体に連接された一対の周縁部21、22とを有し」ていることは、本件発明1が「着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部と、当該踵部後方当接部の両端部から延設された一対の側面部とから構成され」ていることに相当する。
甲1発明1の「内甲側周縁部22」と「外甲側周縁部21」は、それぞれ、本件発明1の「内側側面部」と「外側側面部」に相当するから、甲1発明1が「前記一対の周縁部21、22は、内甲側周縁部22と外甲側周縁部21とからな」ることは、本件発明1が「前記一対の側面部は、内側側面部と外側側面部とからな」ることに相当する。
甲1発明1の「当該内甲側周縁部22と当該外甲側周縁部21とは対向して」いることは、本件発明1の「当該内側側面部と当該外側側面部は対向して」いることに相当する。
甲1発明1の「着用者の中足領域近傍」は、本件発明1の「着用者の中足部側面」に相当し、甲1発明1の「延設」は、本件発明1の「延長」に相当する。そうすると、甲1発明1の「当該一対の周縁部21、22は、着用者の中足領域近傍まで延設され」ることは、本件発明1の「当該一対の側面部は、着用者の中足部側面まで延長され」ることに相当する。
甲1発明1の「前記内甲側周縁部22と前記外甲側周縁部21との離間距離」は、本件発明1の「前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離」に相当し、甲1発明1の「踵後端側周縁部23から離れるにつれて、小さくなっている」ことは、本件発明1の「踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなって」いることに相当する。そうすると、甲1発明1の「前記内甲側周縁部22と前記外甲側周縁部21との離間距離は、踵後端側周縁部23から離れるにつれて、小さくなっている」ことは、本件発明1の「前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなって」いることに相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明1とは、次の一致点1で一致し、相違点1-1で相違する。
・一致点1
「短靴の踵部に装着されて使用される短靴用月型芯であって、
着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部と、当該踵部後方当接部の両端部から延設された一対の側面部とから構成され、
前記一対の側面部は、内側側面部と外側側面部とからなり、
当該内側側面部と当該外側側面部は対向しており、
当該一対の側面部は、着用者の中足部側面まで延長され、
前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなっている短靴用月形芯。」
・相違点1-1
本件発明1は、内側側面部と外側側面部とが「短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されている」のに対し、甲1発明1は、内甲側周縁部22と外甲側周縁部21とが着用者の足側面を挟持できるか否か明らかでない点。
上記相違点1-1について検討する。
甲1発明1の内甲側周縁部22と外甲側周縁部21は、「着用者の足F、F’の踵部の下部を包み込むように踵部に沿って中底20の外周縁部から巻き上げられた」(甲1【0032】(上記第4・1(1)イ参照))ものである。そして、甲1発明1として認定したように、この内甲側周縁部22と外甲側周縁部21は、「着用者の中足領域近傍まで延設され」ているものでもあるから、着用者の中足領域近傍では、中足領域を包み込むように中足領域に沿って巻き上げられた形状をしたものであり、さらに、内甲側周縁部22と外甲側周縁部21との離間距離は、踵後端側周縁部23から離れるにつれて小さくなっているから、これによって着用者の足をホールドしていると解され、これは、足側面を挟持していることとなる。また、甲1発明1のソールプレート2を有するカウンター構造1は、「シューズの踵領域に設けられた」もの、すなわちシューズに設けられたものであり、一般にシューズは、着用者の足に対して内面が接するようにサイズが定められるものであるから、「着用者の中足領域近傍まで延設され」ている内甲側周縁部22と外甲側周縁部21も使用者の足に対し着用者の足に対して接する程度のサイズ、形状に定められていると解され、その結果、使用者の足に対して両側面から接することとなる内甲側周縁部22と外甲側周縁部21は、足側面を挟持するものといえる。
そうすると、甲1発明1においても本件発明1と同様に内甲側周縁部22と外甲側周縁部21は、着用者の足側面を挟持しているといえ、上記相違点1-1は、実質的な相違点であるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明1である。
また、仮に実質的な相違点であるとしても、甲1発明1のカウンター構造1は、着用者の足をホールドするためのものであるから、足側面を挟持するようにし、上記相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
特許権者は、令和7年10月5日提出の意見書において、甲1には、「内甲側周縁部22と外甲側周縁部21とが着用者の足側面を挟持できるかについては窺い知ることができるような記載も示唆も」なく、甲1の記載は、「ホールドする対象は、「着用者の足」の一部である「着用者の踵」とすることを開示しているに留ま」ると主張している(同意見書3.(1)(1-1))。しかしながら、一般に、シューズは着用者の足の大きさにあわせて着用されることを考慮すれば、甲1発明1において、中足領域近傍まで延設されているソールプレート2の内甲側周縁部22と外甲側周縁部21は、踵部と同様に、足を左右から挟持していると解され、特許権者の主張は、採用することができない。
また、特許権者は、進歩性について、「仮に当業者が甲1号証に接したとしても、・・・内側側面部と外側側面部との離間距離を小さくし、「短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されている」という特徴に到達するためにしたはずであるという示唆もなければ、そのような試みをしたであろうという推測でさえも窺い知ることはでき」ない旨主張する(同意見書3.(1)(1-2))。しかしながら、着用者の足に対する靴のホールド性およびフィット性を向上させることは、一般的に、踵部だけの課題ではなく、着用者の足に接する靴の様々な部分においていえる課題であるから、甲1発明1においても中足領域近傍まで延長した内甲側周縁部22と外甲側周縁部21が着用者の足を挟持できるように構成することは当業者が容易に想到し得た事項であり、特許権者の主張は採用することができない。
2 本件発明2
本件発明2と甲1発明1とは、本件発明1と甲1発明1と同様に対比でき、本件発明2と甲1発明1とは、上記一致点1で一致し、相違点1-1に加え、次の相違点1-2で相違する。
・相違点1-2
本件発明2は、「内面側に、靴脱げ防止用凸部が形成されている」のに対し、甲1発明1は、凸部等が形成されることが特定されていない点。
そして、相違点1-1が実質的な相違点ではなく、また仮に実質的な相違点であるとしても、上記1に示すように、相違点1-1に係る本件発明2の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
さらに相違点1-2について検討すると、本件の出願前において、靴の内面に凸部を形成することは、周知技術(周知例として、甲7(上記第4・4参照)、甲8(上記第4・5参照)、甲9、(上記第4・6参照)がある。)であり、甲1発明1において、靴脱げを防止するために、当該周知技術に基づいて、凸部を形成し、上記相違点1-2に係る本件発明2の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
よって、本件発明2は、甲1発明1に周知技術を適用し、当業者が容易になし得たものである。
3 本件発明3
本件発明3と甲1発明1とは、本件発明1と甲1発明1と同様に対比でき、さらに、本件発明2と甲1発明1と同様に対比できる。そうすると、本件発明3と甲1発明1とは、上記一致点1で一致し、相違点1-1、相違点1-2に加え、次の相違点1-3で相違する。
・相違点1-3
本件発明3は、「前記靴脱げ防止用凸部が、内側側面部の内面側と外側側面部の内面側とに形成されている」のに対し、甲1発明1は、凸部等が形成されることが特定されていない点。
そして、相違点1-1が実質的な相違点ではなく、また仮に実質的な相違点であるとしても、上記1に示すように、相違点1-1に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項であり、上記2に示すように、相違点1-2に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
さらに、相違点1-3について検討すると、本件の出願前において、靴の対向する内側と外側の側面部の内面に凸部を形成することは、周知技術(周知例として、甲7(上記第4・4参照)、甲8(上記第4・5参照)、甲9、(上記第4・6参照)がある。)であり、甲1発明1において、靴脱げを防止するために、当該周知技術に基づいて、上記相違点1-3に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
よって、本件発明3は、甲1発明1に周知技術を適用し、当業者が容易になし得たものである。
4 本件発明4
本件発明4と甲1発明2とを対比すると、まず、本件発明1と甲1発明1と同様に対比され、さらに、甲1発明2の「シューズの踵領域」は、本件発明4の「短靴の踵部」に相当し、甲1発明2の「設けられている」ことは、本件発明4の「装着されてなる」ことに相当する。
そうすると、本件発明4と甲1発明2とは、次の一致点1’の点で一致し、相違点1-1で相違する。
・一致点1’
「一致点1の短靴用月形芯が短靴の踵部に装着されてなる短靴。」
そして、相違点1-1が実質的な相違点ではなく、また仮に実質的な相違点であるとしても、上記1に示すように、相違点1-1に係る本件発明4の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項であるから、本件発明4は、甲1発明2であり、また、仮に実質的な相違点であるとしても、上記相違点1-1に係る本件発明4の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
第6 甲2に記載された発明を主引用発明とした新規性、進歩性の判断
1 本件発明1
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
甲2発明1の「靴」、「踵部」、「縫合されて」は、それぞれ、本件発明1の「短靴」、「踵部」、「装着されて」に相当し、甲2発明1の「踵革60」は、本件発明1の「短靴用月形芯」に相当する。そうすると、甲2発明1の「靴の踵部に縫合されて使用される踵革60」は、本件発明1の「短靴の踵部に装着されて使用される短靴用月型芯」に相当する。
甲2発明1の「使用者の踵の背面」は、本件発明1の「着用者の踵の背面側」に相当するから、甲2発明1の「使用者の踵の背面に沿った市革64」は、本件発明1の「着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部」に相当する。そして、甲2発明1の「両端」、「靴の前部に向けて延長する」、「側壁62」は、それぞれ、本件発明1の「両端部」、「延設された」、「側面部」に相当する。また、甲2発明1の「踵革60」が「市革64」と「一対の側壁62を有し」ていることは、本件発明1の「短靴用月形芯」が「踵部後方当接部」と「一対の側面部とから構成され」ていることに相当する。そうすると、甲2発明1が「使用者の踵の背面に沿った市革64と当該市革64の両端から靴の前部に向けて延長する一対の側壁62を有し」ていることは、本件発明1が「着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部と、当該踵部後方当接部の両端部から延設された一対の側面部とから構成され」ていることに相当する。
甲2発明1の「内側側壁」と「外側側壁」は、それぞれ、本件発明1の「内側側面部」と「外側側面部」に相当するから、甲2発明1が「前記一対の側壁62は、内側側壁と外側側壁とからな」ることは、本件発明1が「前記一対の側面部は、内側側面部と外側側面部とからな」ることに相当する。
甲2発明1の「当該内側側壁と当該外側側壁は対向して」いることは、本件発明1の「当該内側側面部と当該外側側面部は対向して」いることに相当する。
甲2発明1の「靴の前部に向けて延長され」ることは、甲2のFig.3及び5(上記第4・2(1)エ参照)の記載から、靴の市革64から前部に向けて、中足部まで延長されているから、本件発明1の「着用者の中足部側面まで延長され」ることに相当する。そうすると、甲2発明1の「当該一対の側壁62は、靴の前部に向けて延長され」ることは、本件発明1の「当該一対の側面部は、着用者の中足部側面まで延長され」ることに相当する。
以上のことから、本件発明1と甲2発明1とは、次の一致点2で一致し、相違点2-1で相違する。
・一致点2
「短靴の踵部に装着されて使用される短靴用月型芯であって、
着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部と、当該踵部後方当接部の両端部から延設された一対の側面部とから構成され、
前記一対の側面部は、内側側面部と外側側面部とからなり、
当該内側側面部と当該外側側面部は対向しており、
当該一対の側面部は、着用者の中足部側面まで延長された、
短靴用月形芯。」
・相違点2-1
本件発明1は、「前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなっており、短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されている」のに対し、甲2発明1は、「前記内側側壁と前記外側側壁との離間距離は、市革側から靴の前部に向かうにしたがって、ほぼ同一距離かやや狭くなっている」点。
上記相違点2-1について検討する。
甲2発明1において、側壁62が、「靴の前部に向けて延長」しているのは、靴の側面において、使用者の足に接するためと解される。一方、一般的な足の形状を考慮すると、中足部側面において側壁62が足に接するためには、踵側よりも一対の側壁62の間の離間距離が短くする必要があることは、明らかであり、このことは、甲2のFig.3をみても、靴の中足部付近の幅は狭くなっていることと整合する。
そうすると、上記相違点2-1は、実質的な相違点ではなく、本件発明1は、甲2発明1である。
仮に、そうでないとしても、甲2発明1において、前記内側側壁と前記外側側壁との離間距離を靴の前部に向かうにしたがって、狭くなるようにし、使用者の足を挟持できる形状とし、上記相違点2-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
特許権者は、令和7年10月5日提出の意見書において、甲2には、「側壁62が接する部位について、・・・足のうち、側壁62が甲革の踵部を囲んでいる旨が開示されているに留まり、側壁62が「短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されている」点については何ら開示されて」いない旨主張する(同意見書3.(2)(2-2))。しかしながら、甲2発明1において、「一対の側壁62は、靴の前部に向けて延長され」ているのは、短靴着用者の足に対し、踵革60が側方の安定性を与えるためであると解され、また、甲2発明1の踵革60は、「靴の踵部に縫合されて使用される」ものであり、一般に靴は、着用者の足に対して内面が接するようにサイズが定められるものであるから、甲2発明1の踵革60の側壁62は、着用者の足に対して両側面から接して、足の側方の安定性を与えるものといえ、これは、足側面を挟持するものといえるから、特許権者の主張は、採用することができない。
また、特許権者は、進歩性について、「甲2号証では、・・・足側面の挟持について明示的にも実質的にも開示が」なく、ましてやこの構成が、どのような課題解決に資するのかについて何ら教示するものでは」ない旨主張する(同意見書3.(2)(2-3))。しかしながら、甲2に接した当業者にとって、踵革60の側壁62が着用者の足に対して両側面から接して、足の側方の安定性を与えるものであることは、自明な事項であるから、そのために、踵革60の側壁62が足側面を挟持できるようにすることは、当業者が容易になし得た事項であり、特許権者の主張は、採用することができない。
2 本件発明2
本件発明2と甲2発明1とは、本件発明1と甲2発明1と同様に対比でき、本件発明2と甲2発明1とは、上記一致点2で一致し、相違点2-1に加え、次の相違点2-2で相違する。
・相違点2-2
本件発明2は、「内面側に、靴脱げ防止用凸部が形成されている」のに対し、甲2発明1は、凸部等が形成されることが特定されていない点。
そして、相違点2-1が実質的な相違点ではなく、また仮に実質的な相違点であるとしても、上記1に示すように、相違点2-1に係る本件発明2の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
さらに相違点2-2について検討すると、本件の出願前において、靴の内面に凸部を形成することは、周知技術(周知例として、甲7(上記第4・4参照)、甲8(上記第4・5参照)、甲9、(上記第4・6参照)がある。)であり、甲2発明1において、靴脱げを防止するために、当該周知技術に基づいて、凸部を形成し、上記相違点2-2に係る本件発明2の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
よって、本件発明2は、甲2発明1に周知技術を適用し、当業者が容易になし得たものである。
3 本件発明3
本件発明3と甲2発明1とは、本件発明1と甲2発明1と同様に対比でき、さらに、本件発明2と甲2発明1と同様に対比できる。そうすると、本件発明3と甲2発明1とは、上記一致点2で一致し、相違点2-1、相違点2-2に加え、次の相違点2-3で相違する。
・相違点2-3
本件発明3は、「前記靴脱げ防止用凸部が、内側側面部の内面側と外側側面部の内面側とに形成されている」のに対し、甲2発明1は、凸部等が形成されることが特定されていない点。
そして、相違点2-1が実質的な相違点ではなく、また仮に実質的な相違点であるとしても、上記1に示すように、相違点2-1に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項であり、上記2に示すように、相違点2-2に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
さらに、相違点2-3について検討すると、本件の出願前において、靴の対向する内側と外側の側面部の内面に凸部を形成することは、周知技術(周知例として、甲7(上記第4・4参照)、甲8(上記第4・5参照)、甲9、(上記第4・6参照)がある。)であり、甲2発明1において、靴脱げを防止するために、当該周知技術に基づいて、上記相違点2-3に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
よって、本件発明3は、甲2発明1に周知技術を適用し、当業者が容易になし得たものである。
4 本件発明4
本件発明4と甲2発明2とを対比すると、まず、本件発明1と甲2発明1と同様に対比され、さらに、甲2発明2の「靴の踵部」は、本件発明4の「短靴の踵部」に相当し、甲2発明2の「縫合されている」ことは、本件発明4の「装着されてなる」ことに相当する。
そうすると、本件発明4と甲2発明2とは、次の一致点2’の点で一致し、相違点2-1で相違する。
・一致点2’
「一致点2の短靴用月形芯が短靴の踵部に装着されてなる短靴。」
そして、相違点2-1が実質的な相違点ではなく、また仮に実質的な相違点であるとしても、上記1に示すように、相違点2-1に係る本件発明4の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項であるから、本件発明4は、甲2発明2であり、また、仮に実質的な相違点であるとしても、上記相違点2-1に係る本件発明4の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
第7 甲3に記載された発明を主引用発明とした新規性、進歩性の判断
1 本件発明1
本件発明1と甲3発明1とを対比する。
甲3発明1の「シューズ1」、「アッパー3の踵部K」、「設けられた」は、それぞれ、本件発明1の「短靴」、「踵部」、「装着されて使用される」に相当し、甲3発明1の「ヒールカウンタ10」は、本件発明1の「短靴用月形芯」に相当する。そうすると、甲3発明1の「シューズ1のアッパー3の踵部Kに設けられたヒールカウンタ10」は、本件発明1の「短靴の踵部に装着されて使用される短靴用月型芯」に相当する。
甲3発明1の「シューズ1のアッパー3の踵後端部30に配置された連結部13」は、シューズ着用者Pの足の踵の背面側に当接するから、本件発明1の「着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部」に相当する。そして、甲3発明1において、「当該連結部13に連結された一対の上部サポート部12」は、連結部13のシューズ1の内甲側と外甲側に一対の上部サポート部12がそれぞれ連結されているものであるから、甲3発明1の「一対の上部サポート部12」は、本件発明1の「一対の側面部」に相当し、甲3発明1の「当該連結部13に連結された一対の上部サポート部12」は、本件発明1の「当該踵部後方当接部の両端部から延設された一対の側面部」に相当する。また、甲3発明1の「ヒールカウンタ10」が「連結部13」と「一対の上部サポート部12を備え」ていることは、本件発明1の「短靴用月形芯」が「踵部後方当接部」と「一対の側面部とから構成され」ていることに相当する。そうすると、甲3発明1が「シューズ1のアッパー3の踵後端部30に配置された連結部13と、当該連結部13に連結された一対の上部サポート部12を備え」ていることは、本件発明1が「着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部と、当該踵部後方当接部の両端部から延設された一対の側面部とから構成され」ていることに相当する。
甲3発明1の「内甲側上部サポート部」と「外甲側上部サポート部」は、それぞれ、本件発明1の「内側側面部」と「外側側面部」に相当するから、甲3発明1が「前記一対の上部サポート部12は、内甲側上部サポート部と外甲側上部サポート部とからな」ることは、本件発明1が「前記一対の側面部は、内側側面部と外側側面部とからな」ることに相当する。
甲3発明1の「当該内甲側上部サポート部と当該外甲側上部サポート部は対向して」いることは、本件発明1の「当該内側側面部と当該外側側面部は対向して」いることに相当する。
以上のことから、本件発明1と甲3発明1とは、次の一致点3で一致し、相違点3-1で相違する。
・一致点3
「短靴の踵部に装着されて使用される短靴用月型芯であって、
着用者の踵の背面側に当接する踵部後方当接部と、当該踵部後方当接部の両端部から延設された一対の側面部とから構成され、
前記一対の側面部は、内側側面部と外側側面部とからなり、
当該内側側面部と当該外側側面部は対向している短靴用月型芯。」
・相違点3-1
本件発明1は、「当該一対の側面部は、着用者の中足部側面まで延長され」、「前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなっており、短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されている」のに対し、甲3発明1は、「前記一対の上部サポート部12は、着地時における足の回外及び回内を効果的に防止できる位置まで長くしている」点。
上記相違点3-1について検討する。
甲3発明1において、一対の上部サポート部12は、着地時における足の回外及び回内を効果的に防止するものであるから、足の回外及び回内が生じる位置、すなわち、中足部まで長くし、この部分の足の側面を支える必要があることは、甲3に接した当業者にとって自明な事項であり、この点は、甲3に示された図3(上記第4・3(1)オ参照)の記載とも整合する。そして、一対の上部サポート部12が足の側面を支えて足の回外及び回内を防止するためには、一対の上部サポート部12が足の内側と外側の側面に接して支えることが必要であり、このような状態は、一対の上部サポート部12が足を挟持していることから得られるものである。また、一般的な足の形状を考慮すると、このように、一対の上部サポート部12が足の内側と外側の側面に接して支えるためには、内甲側上部サポート部と外甲側上部サポート部との離間距離を中足部に近づくにつれて小さくする必要がある。これらのことから、上記相違点3-1は、甲3に記載されているに等しい事項といえ、上記相違点3-1は、実質的なものとはいえない。
そうすると、本件発明1は、甲3発明1である。
また、仮に、そうでないとしても、甲3の記載から、上記相違点3-1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
特許権者は、令和7年10月5日提出の意見書において、甲3の記載から、「内甲側面部と外甲側面部との長さと足の回内又は回外との関係および、踵骨上部のホールド性を高めることと着地時の足の踵部の横ぶれとの関係が記載されているに過ぎず、足の回外及び回内が生じる位置(すなわち、中足部)まで長くし、この部分の足の側面を支える必要があることを窺い知ることはでき」ない旨主張する(同意見書3.(3)(3-1))。しかしながら、甲3には、足の回外及び回内を防止することが記載(甲3の【0062】参照)されており、そのためには、内甲側上部サポート部と外甲側上部サポート部との離間距離を中足部に近づくにつれて小さくする必要があることは、甲3に接した当業者にとって自明な事項である。したがって、特許権者の主張は、採用することができない。
また、特許権者は、進歩性について、甲3は、「「前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなっていること」も、さらには「短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されている」という点を」開示するものではない旨主張する(同意見書3.(3)(3-3))。しかしながら、甲3には、足の回外及び回内を防止することが記載(甲3の【0062】参照)されており、そのために、内甲側上部サポート部と外甲側上部サポート部との離間距離を中足部に近づくにつれて小さくするようにすることは、当業者が容易に想到し得た事項であり、特許権者の主張は、採用することができない。
2 本件発明2
本件発明2と甲3発明1とは、本件発明1と甲3発明1と同様に対比でき、本件発明2と甲3発明1とは、上記一致点3で一致し、相違点3-1に加え、次の相違点3-2で相違する。
・相違点3-2
本件発明2は、「内面側に、靴脱げ防止用凸部が形成されている」のに対し、甲3発明1は、凸部等が形成されることが特定されていない点。
そして、相違点3-1が実質的な相違点ではなく、また仮に実質的な相違点であるとしても、上記1に示すように、相違点3-1に係る本件発明2の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
さらに相違点3-2について検討すると、本件の出願前において、靴の内面に凸部を形成することは、周知技術(周知例として、甲7(上記第4・4参照)、甲8(上記第4・5参照)、甲9、(上記第4・6参照)がある。)であり、甲3発明1において、靴脱げを防止するために、当該周知技術に基づいて、凸部を形成し、上記相違点3-2に係る本件発明2の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
よって、本件発明2は、甲3発明1に周知技術を適用し、当業者が容易になし得たものである。
3 本件発明3
本件発明3と甲3発明1とは、本件発明1と甲3発明1と同様に対比でき、さらに、本件発明2と甲3発明1と同様に対比できる。そうすると、本件発明3と甲3発明1とは、上記一致点3で一致し、相違点3-1、相違点3-2に加え、次の相違点3-3で相違する。
・相違点3-3
本件発明3は、「前記靴脱げ防止用凸部が、内側側面部の内面側と外側側面部の内面側とに形成されている」のに対し、甲3発明1は、凸部等が形成されることが特定されていない点。
そして、相違点3-1が実質的な相違点ではなく、また仮に実質的な相違点であるとしても、上記1に示すように、相違点3-1に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項であり、上記2に示すように、相違点3-2に係る本件発明2の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
さらに、相違点3-3について検討すると、本件の出願前において、靴の対向する内側と外側の側面部の内面に凸部を形成することは、周知技術(周知例として、甲7(上記第4・4参照)、甲8(上記第4・5参照)、甲9、(上記第4・6参照)がある。)であり、甲3発明1において、靴脱げを防止するために、当該周知技術に基づいて、上記相違点3-3に係る本件発明3の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
よって、本件発明3は、甲3発明1に周知技術を適用し、当業者が容易になし得たものである。
4 本件発明4
本件発明4と甲3発明2とを対比すると、まず、本件発明1と甲3発明1と同様に対比され、さらに、甲3発明2の「シューズ1の踵部K」は、本件発明4の「短靴の踵部」に相当し、甲3発明2の「設けられた」ことは、本件発明4の「装着されてなる」ことに相当する。
そうすると、本件発明4と甲3発明2とは、次の一致点3’の点で一致し、相違点3-1で相違する。
・一致点3’
「一致点3の短靴用月形芯が短靴の踵部に装着されてなる短靴。」
そして、相違点3-1が実質的な相違点ではなく、また仮に実質的な相違点であるとしても、上記1に示すように、相違点3-1に係る本件発明4の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項であるから、本件発明4は、甲3発明2であり、また、仮に実質的な相違点であるとしても、上記相違点3-1に係る本件発明4の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得た事項である。
第8 取消理由として採用しなかった特許異議の申立て理由について
申立人は、特許異議申立書において、本件発明1の「短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されている」点について、この点は、「内側側面部12aと外側側面部12bとの離間距離をより小さくして挟持力を高めるとする意味であるならば、その離間距離は、短靴と共に足の幅より小さいものでなくてはならず、足には窮屈な状態であると言え、きつすぎれば短靴とはいえないものになってしま」い、「そうではなく、・・・短靴用月型芯と短靴の変形を前提として弾性を以って挟持するものであると想像することもできるが、そのようなことは請求項1には何ら記載がない」から、本件発明1及び本件発明2から4は不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない旨主張する。
申立人の主張する「短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されている」事項は、請求項1において、「前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなっており、短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されている」と記載されているものである。この記載から、「短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されている」ことは、「前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなって」いることとの関係で記載されているから、「短靴着用者の足側面を挟持できるように構成されている」とは、「前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなって」いる程度について特定しているものと解され、明確でないとはいえない。付け加えれば、短靴着用者の足として想定される大きさがあり、この想定される足の「足側面を挟持できる」程度に「前記内側側面部と前記外側側面部との離間距離は、踵部後方当接部側から前記内側側面部と前記外側側面部の末端部方向に進むにしたがって、小さくなって」いることを特定するものであって、この点は、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載とも整合する。
したがって、申立人の本件発明1及び本件発明2から4が不明確であるとする主張は、採用することができない。
第9 むすび
以上のことから、本件発明1は、甲1発明1、甲2発明1又は甲3発明1であるから、法第29条第1項第3号に該当し、本件特許1は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものであり、仮にそうでないとしても、本件発明1は、甲1発明1、甲2発明1又は甲3発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
また、本件発明2及び3は、甲1発明1、甲2発明1又は甲3発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許2及び3は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
さらに、本件発明4は、甲1発明2、甲2発明2又は甲3発明2であるから、法第29条第1項第3号に該当し、本件特許4は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものであり、仮にそうでないとしても、本件発明4は、甲1発明2、甲2発明2又は甲3発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許4は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700107