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特許異議申立

2024-700847

焼結体の製造方法

審判番号
2024-700847
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-108793
登録番号
7452742
請求日
2024年09月05日
審決日
2026年01月20日
公報発行日
2026年04月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】東ソー株式会社
  • 【異議申立人】藤井 正剛
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 増山 淳子
  • 審判官 深草 祐一
分類
P1651.113-YAA(C04B) / P1651.121-YAA(C04B) / P1651.537-YAA(C04B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7452742号発明「焼結体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7452742号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。 特許第7452742号の請求項1~14に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7452742号の請求項1~14に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和5年6月30日(優先権主張 令和4年7月1日)の出願であって、令和6年3月11日にその特許権の設定登録がされ、同年同月19日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 6年 9月 5日 :特許異議申立人 藤井 正剛(以下「申立人」という。)により、請求項1~14に係る特許に対する特許異議の申立て 同年11月27日付け:取消理由通知 同年12月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同7年 2月28日 :申立人による意見書の提出 同年 4月 1日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年 6月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 7月 1日 :訂正請求書に対する手続補正書の提出 同年 8月19日 :申立人による意見書の提出 同年 9月10日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年10月31日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年12月 5日 :訂正請求書に対する手続補正書の提出 なお、令和6年12月10日に提出された訂正請求書による訂正の請求、及び令和7年6月5日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下、その訂正の請求による訂正を「先の訂正」ということがある。)は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。以下、令和7年12月5日に提出された手続補正書により補正された令和7年10月31日にされた訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。 また、本件訂正は、先の訂正により「安定化元素の含有量」及び「第一到達温度」の数値範囲を減縮した特許請求の範囲に対し、同じく「安定化元素の含有量」及び「第一到達温度」の数値範囲をさらに減縮した数値範囲に訂正するものであるところ、当該数値範囲に関しては令和7年2月28日及び同年8月19日に提出された申立人の意見書において、重ねてサポート要件違反に関する主張がされている。そして、本件訂正により相当程度減縮された特許請求の範囲の請求項1~14に係る発明について、これまで提出された全ての証拠や意見等を踏まえてさらに審理を進めたとしても、上記「結論」のとおり、特許を維持すべきとの結論となると判断したことから、本件訂正後には、申立人に意見書の提出の機会を与えなかった。 第2 本件訂正の適否について 1 本件訂正の内容 本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~14〕を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「安定化元素を含有し、立方晶及び正方晶の少なくともいずれかを主相とし、T+C相率が65%以上であるジルコニアの組成物を昇温開始温度から800℃以上1400℃未満のいずれかの第一到達温度まで昇温速度150℃/分以上で昇温する第一昇温工程、 前記第一到達温度から1400℃以上1580℃未満のいずれかの第二到達温度まで昇温速度30℃/分超200℃/分未満で昇温する第二昇温工程、及び、該第二到達温度で保持する保持工程、を有する安定化元素を含有するジルコニアの焼結体の製造方法。」と記載されているのを、「安定化元素を含有し、前記安定化元素の含有量が2.5mol%以上5.2mol%以下であり、立方晶及び正方晶の少なくともいずれかを主相とし、T+C相率が65%以上であるジルコニアの組成物を昇温開始温度から800℃以上1150℃以下のいずれかの第一到達温度まで昇温速度150℃/分以上で昇温する第一昇温工程、 前記第一到達温度から1400℃以上1580℃未満のいずれかの第二到達温度まで昇温速度30℃/分超200℃/分未満で昇温する第二昇温工程、及び、該第二到達温度で保持する保持工程、を有する安定化元素を含有するジルコニアの焼結体の製造方法。」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~14も同様に訂正する。) (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項12に「前記安定化元素の含有量が2.5mol%以上8mol%以下である」と記載されているのを、「前記安定化元素の含有量が3.5mol%以上5.0mol%以下である」に訂正する。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 (1) 訂正事項1について ア 訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項1における、「安定化元素」について、その含有量を、「前記安定化元素の含有量が2.5mol%以上5.2mol%以下であり」と限定するとともに、同請求項1における、「第一昇温工程」の温度範囲について、「昇温開始温度から800℃以上1400℃未満のいずれかの第一到達温度まで」を「昇温開始温度から800℃以上1150℃以下のいずれかの第一到達温度まで」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ そして、訂正事項1のうち、「安定化元素」の含有量の上限及び下限については、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、それぞれ「本件特許明細書」などといい、まとめて「本件特許明細書等」という。)の【0079】の「組成物における安定化元素量は、ジルコニアの結晶相が安定化する量であればよく、例えば、0.1mol%以上10mol%以下であることが挙げられる。安定化元素がイットリウムである場合、安定化元素量(安定化元素がイットリウム等である場合は、それぞれ「イットリウム量」等ともいう。)は、2.5mol%以上、3mol%以上、3.5mol%以上、4mol%以上又は4.5mol%以上であり、また、8mol%以下、7mol%以下、6mol%以下又は5.5mol%以下であることが挙げられ、2.5mol%以上8mol%以下、3mol%以上又は6mol%以下、3.5mol%以上6mol%以下、又は、4.5mol%以上5.5mol%以下が好ましい。」との記載、及び【0141】の「得られた顆粒粉末を使用したこと以外は合成例1と同様な方法で、イットリウム量が5.2mol%である、イットリウム安定化ジルコニアの仮焼体を得、これを本合成例の仮焼体とした。」との記載に基づくものであり、「第一到達温度」の上限「1150℃以下」については、本件明細書等の【0046】の「T1は800℃以上1400℃未満のいずれかの温度である。T1は1400℃未満であり、1300℃以下、1200℃以下、1170℃以下、1150℃以下、1100℃以下又は1050℃以下、のいずれかの温度であることが好ましい。」との記載に基づくものであるから、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 ウ また、訂正事項1による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について ア 訂正事項2による訂正は、本件訂正前の請求項12に、「前記安定化元素の含有量が2.5mol%以上8mol%以下である」と記載されていたのを、「前記安定化元素の含有量が3.5mol%以上5.0mol%以下であり」と限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ そして、訂正事項2による訂正は、上記訂正事項1と同様に、本件明細書等の【0079】の「組成物における安定化元素量は、ジルコニアの結晶相が安定化する量であればよく、例えば、0.1mol%以上10mol%以下であることが挙げられる。安定化元素がイットリウムである場合、安定化元素量(・・・)は、2.5mol%以上、3mol%以上、3.5mol%以上、4mol%以上又は4.5mol%以上であり、また、8mol%以下、7mol%以下、6mol%以下又は5.5mol%以下であることが挙げられ・・・」との記載、及び【0143】の「得られた顆粒粉末を使用したこと以外は合成例1と同様な方法で、イットリウム量が5.0mol%、鉄量が0.072質量%、エルビウム量が0.34質量%(0.12mol%)であり、酸化鉄、エルビウム安定化ジルコニア及びイットリウム安定化ジルコニアを含む仮焼体を得、これを本合成例の仮焼体とした。」との記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、令和7年12月5日に提出された手続補正書により補正された令和7年10月31日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、本件特許異議の申立てに係る本件訂正後の請求項1~14に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明14」といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。なお、「本件発明」については、本件訂正前のものに対しても区別せずに用いることがある。)は、それぞれ、訂正特許請求の範囲の請求項1~14に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 安定化元素を含有し、前記安定化元素の含有量が2.5mol%以上5.2mol%以下であり、立方晶及び正方晶の少なくともいずれかを主相とし、T+C相率が65%以上であるジルコニアの組成物を昇温開始温度から800℃以上1150℃以下のいずれかの第一到達温度まで昇温速度150℃/分以上で昇温する第一昇温工程、 前記第一到達温度から1400℃以上1580℃未満のいずれかの第二到達温度まで昇温速度30℃/分超200℃/分未満で昇温する第二昇温工程、及び、該第二到達温度で保持する保持工程、を有する安定化元素を含有するジルコニアの焼結体の製造方法。 【請求項2】 前記保持工程における保持時間が20分未満である、請求項1に記載の製造方法。 【請求項3】 前記第二到達温度と前記第一到達温度の差が300℃以上600℃以下である請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項4】 第一到達温度まで昇温速度に対する第二到達温度まで昇温速度が0.15以上1.0以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項5】 前記昇温開始温度が室温から500℃のいずれかの温度である請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項6】 前記第二到達温度から、800℃以上1200℃以下のいずれかの降温温度まで降温して焼結体を焼結炉から取出す降温工程、を有する請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項7】 前記取出した焼結体を大気雰囲気で、自然放冷及び冷却ガスの吹き付けの少なくともいずれかにより降温する、請求項6に記載の製造方法。 【請求項8】 前記冷却ガスが空気、アルゴン、窒素及びヘリウムの群から選ばれる1以上である請求項7に記載の製造方法。 【請求項9】 二珪化モリブデン、炭化ケイ素、ランタンクロマイト及びカーボンの群から選ばれる1以上からなるヒーターを備えた焼結炉を使用して焼結する、請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項10】 前記組成物がジルコニアの成形体又は仮焼体である請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項11】 前記安定化元素がイットリウム、カルシウム、セリウム、マグネシウム、プラセオジウム、イッテルビウム、エルビウム及びテルビウムの群から選ばれる1以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項12】 前記安定化元素の含有量が3.5mol%以上5.0mol%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項13】 前記組成物のT+C相率が100%以下である、請求項1又は2に記載の製造方法。 【請求項14】 前記組成物が、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、エルビウム(Er)、テルビウム(Tb)及びイッテルビウム(Yb)の群から選ばれる1以上、を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。」 第4 取消理由、申立人による特許異議の申立理由の概要 1 令和7年9月10日付けで通知した取消理由の概要 (1) サポート要件違反 本件特許は、本件訂正前の請求項1~14の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2) 取消理由(サポート要件違反)の内容 ア 本件発明の課題(以下「本件課題」という。)は、「高温領域での精密な温度制御を必須とすることなく、なおかつ、ジルコニアの組成物の安定化元素の含有量によらず、歯科補綴材として要求される透光性を有する焼結体を得ることができる、短時間焼結によるジルコニアの焼結体の製造方法、を提供すること」である。 イ 本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)の記載事項から、短時間焼結としながらも、安定化元素量によらず、通常焼結体と同等な透光性を有する焼結体を得るために、T1、HR1、T2、HR2の範囲を適切な値に設定し、少なくとも第二到達温度での保持を行うことが肝要であることが理解できる。 ウ ここで、第一到達温度(T1)の上限値について、「T1が1400℃以上であると、安定化元素量が多い場合に、通常焼結体と比べて透光性が低い焼結体が得られる。」(【0046】)、「1400℃以上の温度領域ではジルコニアの焼結が急激に進行し、また、組成物の組成や物性等により、焼結挙動が相違する」(【0049】)、と説明されており、焼結挙動に影響する重要な要素である安定化元素量が多くなると、第一昇温工程から第二昇温工程に移行する温度であるT1が特定の上限値より低くなければ、所望の透光性が得られなくなるという傾向、すなわち、安定化元素量が増えていくと、T1の上限値が下がってくるという傾向があることが理解できる。そして、このT1の上限値の設定は、本件課題の解決に対して非常に重要な点である。ところが、安定化元素の含有量によらず所望の透光性が得られるために設定すべきT1の上限値の決め方に関し、安定化元素量がどの程度増えると、T1の上限値がどの程度下がるのかについては、理論的な説明はない。よって、T1の上限値を理論的な考察から演繹的に推定し、本件発明の課題を解決できる範囲を理解することはできない。 エ そこで、発明の詳細な説明の実施例、比較例を参照すると、【表7】に、T1の違いによる透過率比の違いとして、T1が1000℃、1150℃、1400℃の場合の比較が示され、【0165】に「第一到達温度を1400℃とした場合、イットリウムの含有量が4mol%の場合は通常焼結体と同等の透光性を有する焼結体が得られるのに対し、イットリウムの含有量が5.2mol%の場合は、通常焼結体に対して著しく透光性が低下することが確認できた」と説明されている。このことから、少なくとも【表7】に示された実施例、比較例の組成、物性を有するジルコニア組成物に関しては、1000℃、1150℃において、安定化元素の含有量によらず、通常焼結体と同等の透光性を有する焼結体が得られたことが理解できる。すなわち、安定化元素量が4mol%~5.2mol%の場合について、T1の上限値が1150℃以下の範囲であれば、安定化元素の含有量によらず所望の透光性を得ることができ、本件発明の課題を解決できることを、実験結果から帰納的に理解することができる。そして、上述のように安定化元素量が増えていくとT1の上限値が下がってくるという傾向と、実施例、比較例の結果を合わせ考えると、安定化元素量が5.2mol%以下の場合にはT1の上限値が1150℃以下の範囲であれば本件課題が解決できると理解できるものの、安定化元素量が5.2mol%より多い場合、また、T1の上限が前記実施例の1150℃よりも高い場合に、安定化元素量及びT1の上限がそれぞれどの程度の範囲まで、所望の透光性が得られるのか、実際に実験を行って確認しなければ予測することはできない。そうすると、発明の詳細な説明には、安定化元素量が5.2mol%以下の場合にはT1の上限値が1150℃以下の範囲であれば、安定化元素の含有量によらず所望の透光性を得ることができ、本件発明の課題を解決できることを理解できるにとどまるというべきである。 オ 先の訂正後の本件特許請求の範囲の請求項1には、安定化元素の含有量が「2.5mol%以上6mol%以下」と特定され、第一到達温度(T1)を「800℃以上1200℃以下」と特定されている。また、請求項1を引用する請求項12には、安定化元素の含有量が「3.5mol%以上5.5mol%以下」と特定されており、上記エで理解した、発明の詳細な説明に記載された本件課題を解決できる範囲以外の態様をも広く包含していることから、当業者において、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に照らして、本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえない。本件発明1を引用する請求項2~11、13~14についても、事情は同じである。 2 申立人による特許異議の申立ての理由の概要 (1) 甲第1号証を主たる証拠とした新規性及び進歩性欠如 設定登録時の請求項1~14に係る発明は、後記3の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、設定登録時の請求項1~14に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、設定登録時の請求項1~14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、設定登録時の請求項1~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。(以下「申立理由1」とする。)。 (2) サポート要件違反 設定登録時の請求項1~14に係る特許は、設定登録時の特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下「申立理由2」とする。)。 (3) 申立理由2(サポート要件違反)の内容 ア 第一到達温度について (ア) 発明の詳細な説明の【0149】(表2)には、第一到達温度が「1400℃」であることを除いて、設定登録時の請求項1に記載された焼成条件を充足する焼結パターンP13が記載されている。そして、この焼結パターンP13を採用すると、イットリウム(安定化元素)の含有量が5.2mol%の場合に、透光性が著しく低下することが確認されている(表7中の比較例8、【0165】参照)。そして、設定登録時の請求項1に記載された第一到達温度の範囲(800℃以上1400℃未満)は、「139.9・・・℃」という1400℃に極めて近似した温度を包含する。以上の点を考慮すると、設定登録時の請求項1に係る発明は、「歯科補綴材として要求される透光性を有する焼結体を得る」という課題を解決できない技術を包含している蓋然性が極めて高い。 (イ) 発明の詳細な説明の実施例では、第一到達温度を1000度未満に設定した焼結パターンが検討されていない。したがって、設定登録時の請求項1に係る発明に包含される「800℃以上1000℃未満」という第一到達温度の温度範囲も、その有効性が充分に検討されておらず、所望の透光性を実現できない可能性がある。 イ 第二昇温工程の昇温速度について 高温領域での精密な温度制御を必要としない製造方法を実現するという課題を解決するには、「第二昇温工程中に昇温速度が変動しない」点が特定されるべきである。設定登録時の請求項1~14に係る発明は、「第二昇温工程中に昇温速度が変動しない」ことを特定していないため、上記の課題を解決できない製造方法を包含する。 3 証拠方法 甲第1号証:国際公開第2022/065452号 甲第2号証:特開2022-77771号公報 甲第3号証:国際公開第2014/142080号 甲第4号証:特開2020-109069号公報 参考資料 :稲田博文ら、分散安定性に優れたジルコニアスラリーの作製、京都市産業技術研究所、研究報告 No.6、2016年、p.42-45 以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。 なお、甲1~甲4は、特許異議申立書に添付して、また、参考資料は令和7年2月28日に提出された申立人の意見書に添付して提出されたものである。 第5 甲各号証の記載事項について 1 甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付した。以下、同様である。 (1)「請求の範囲 [請求項1] ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体を焼成する焼成工程を有し、 前記ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体が安定化剤を含有する複数の層を備え、 前記複数の層は安定化剤の含有率が異なる層を含み、 前記焼成工程が、第1昇温工程(H1)、第2昇温工程(H2)及び第3昇温工程(H3)の少なくとも3段階の昇温工程を含み、 第2昇温工程(H2)の昇温速度をHR2、 第3昇温工程(H3)の昇温速度をHR3としたとき、 HR2=0℃/min超50℃/min未満、 HR3=5℃/min以上150℃/min以下、 HR3/HR2>1であり、 各昇温工程での開始温度は H1において1000℃以下、 H2において1250℃超1450℃以下、 H3において1450℃以上1550℃以下であり、 各昇温工程での到達温度は H1において1250℃超1450℃以下、 H2において1450℃以上1550℃以下、 H3において1500℃以上1750℃以下である、 ジルコニア焼結体の製造方法。」 (2)「[0019] 第1昇温工程(H1)の開始温度は、1000℃以下であれば特に限定されないが、好ましくは室温~1000℃であり、より好ましくは室温~450℃であり、さらに好ましくは室温~400℃であり、特に好ましくは室温~300℃である。第1昇温工程(H1)の到達温度は1250~1450℃であり、より作業時間を短縮できる点から、好ましくは1300℃以上であり、安定化剤であるイットリアの含有率の異なる層同士の透明性差を小さくできることから、より好ましくは1350℃以上であり、さらに好ましくは1400℃以上である。 [0020] また、第1昇温工程(H1)の昇温速度をHR1としたとき、HR1は、より作業時間を短縮できる点から、好ましくは40℃/min以上であり、より好ましくは50℃/min以上であり、さらに好ましくは60℃/min以上であり、特に好ましくは70℃/min以上である。また、HR1は、好ましくは500℃/min以下であり、より好ましくは450℃/min以下であり、さらに好ましくは400℃/minであり、特に好ましくは350℃/min以下である。HR1が500℃/minを超える場合、焼成中に割れやクラックの発生を誘発するおそれがある。第1昇温工程(H1)に供するジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体に、加工時に用いた水分や、着色用カラーリキッドが含まれている場合、300℃以下で1分以上20分以下、好ましくは5分以上15分以下の乾燥工程を経てから、第1昇温工程(H1)を開始してもよい。また、ある好適な実施形態としては、HR1/HR3>1である、ジルコニア焼結体の製造方法が挙げられる。HR1/HR3>1.5がより好ましく、HR1/HR3>2がさらに好ましい。 [0021] [第2昇温工程(H2)] 本発明のジルコニア焼結体の製造方法では、第2昇温工程(H2)の昇温速度をHR2としたとき、HR2は、0℃/min超であり、より作業時間を短縮できる点から、好ましくは1℃/min以上であり、より好ましくは2℃/min以上であり、さらに好ましくは3℃/min以上であり、特に好ましくは4℃/min以上である。また、HR2は、50℃/min未満であり、得られるジルコニア焼結体の明度及び透光性により優れ、且つイットリアの含有率が異なる層の間に縞の発生を抑制する点から、好ましくは40℃/min未満であり、より好ましくは35℃/min以下であり、さらに好ましくは30℃/min以下であり、特に好ましくは20℃/min以下である。 [0022] 第2昇温工程(H2)の開始温度は1250~1450℃であり、より作業時間を短縮できる点から、好ましくは1300℃以上であり、安定化剤であるイットリアの含有率の異なる層同士の透明性差を小さくできることから、より好ましくは1350℃以上であり、さらに好ましくは1400℃以上である。第2昇温工程(H2)の到達温度は1450~1550℃であり、より作業時間を短縮できる点から、好ましくは1470℃以上であり、より好ましくは1490℃以上であり、さらに好ましくは1500℃以上である。また、H2の到達温度は得られるジルコニア焼結体の明度、透光性及び彩度により優れ、ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体が複合酸化物を含む場合に複合酸化物の発色性が優れ、且つイットリアの含有率が異なる層の間に縞の発生を抑制する点から、好ましくは1540℃以下であり、より好ましくは1530℃以下であり、さらに好ましくは1520℃以下である。 [0023] [第3昇温工程(H3)] 第3昇温工程(H3)の昇温速度をHR3としたとき、安定化剤の量が異なる層を有するジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体を短時間焼成に用いた場合において、安定化剤であるイットリアの含有率の異なる層同士の透明性差を小さくでき、イットリアの含有率が異なる層の間に縞の発生を抑制できる点から、HR3/HR2>1であり、得られるジルコニア焼結体の明度、透光性及び彩度により優れ、ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体が複合酸化物を含む場合に複合酸化物の発色性が優れ、且つイットリアの含有率が異なる層の間に縞の発生をより抑制できる点から、好ましくはHR3/HR2>1.2であり、より好ましくはHR3/HR2>1.5であり、さらに好ましくはHR3/HR2>2である。また、HR3は、5℃/min以上であり、より作業時間を短縮でき、且つイットリアの含有率が異なる層の間に縞の発生を抑制する点から、好ましくは8℃/min以上であり、より好ましくは9℃/min以上であり、さらに好ましくは10℃/min以上である。また、HR3は、得られるジルコニア焼結体の彩度により優れ、ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体が複合酸化物を含む場合に複合酸化物の発色性が優れる点および縞の発生抑制の点から、150℃/min以下であり、好ましくは100℃/min以下であり、より好ましくは50℃/min以下である。 [0024] 第3昇温工程(H3)の開始温度は1450~1550℃であり、より作業時間を短縮でき、且つイットリアの含有率が異なる層の間に縞の発生を抑制する点から、好ましくは1470℃以上であり、より好ましくは1490℃以上であり、さらに好ましくは1500℃以上である。また、H3の開始温度は、得られるジルコニア焼結体の明度、透光性及び彩度により優れ、ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体が複合酸化物を含む場合に複合酸化物の発色性が優れる点から、好ましくは1540℃以下であり、より好ましくは1530℃以下であり、さらに好ましくは1520℃以下である。 [0025] 第3昇温工程(H3)の到達温度は1500~1750℃であり、得られるジルコニア焼結体の明度、透光性及び彩度により優れ、ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体が複合酸化物を含む場合に複合酸化物の発色性が優れる点から、好ましくは1510℃以上であり、より好ましくは1530℃以上であり、さらに好ましくは1550℃以上である。また、H3の到達温度はより作業時間を短縮でき、得られるジルコニア焼結体の明度、透光性及び彩度により優れ、ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体が複合酸化物を含む場合に複合酸化物の発色性が優れ、且つイットリアの含有率が異なる層の間に縞の発生を抑制する点から、好ましくは1700℃以下であり、より好ましくは1650℃以下であり、さらに好ましくは1600℃以下である。 [0026] 本発明のジルコニア焼結体の製造方法に用いるジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体としては、ジルコニアに加えて、ジルコニアの相転移を抑制可能な安定化剤を含むものが好ましい。・・・ ・・・ [0030] 本発明のジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体において、前記安定化剤の少なくとも一部がジルコニアに固溶されていないことが好ましい。・・・ジルコニアの主たる結晶系が正方晶系及び/又は立方晶系であり、XRDパターンに安定化剤のピークが存在していない場合には、安定化剤の大部分、基本的に全部、はジルコニアに固溶しているものと考えられる。・・・ ・・・ [0036] 本発明のジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体におけるジルコニアの主たる結晶系は単斜晶系であることが好ましい。・・・本発明のジルコニア成形体又はルコニア仮焼体において、以下の数式(2)で算出されるジルコニア中の単斜晶系の割合fmは、単斜晶系、正方晶系及び立方晶系の総量に対して55%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、75%以上がよりさらに好ましく、80%以上が特に好ましく、85%以上がさらに特に好ましく、90%以上が最も好ましい。・・・ ・・・ [0050] [係留工程] 本発明のジルコニア焼結体の製造方法では、最高到達温度(最高焼成温度)での係留時間が30分以内であることが好ましく、より作業時間を短縮できる点から、10~25分であることがより好ましく、15~20分であることがさらに好ましい。また、最高焼成温度は好ましくは1400~1750℃であり、得られるジルコニア焼結体の明度、透光性及び彩度により優れ、ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体が複合酸化物を含む場合に複合酸化物の発色性が優れる点から、好ましくは1510℃以上であり、より好ましくは1530℃以上であり、さらに好ましくは1550℃以上である。・・・」 (3)「[0057] [実施例1] [ジルコニア仮焼体の作製に使用する原料粉末の作製] ・・・まず、単斜晶系のジルコニア粉末とイットリア粉末を用いて、着色成分以外は表1に記載の組成となるように混合物を作製した。・・・ ・・・ [0059] [ジルコニア仮焼体のブロックの作製] ・・・ [0060] 得られたジルコニア仮焼体のブロックを用いて後記する各特性の評価に記載された形状に切削加工し、表2に記載の焼成スケジュールで焼成を行った。各特性評価の結果は後記するとおりである。・・・ [0061] [実施例2~5、比較例1及び参考例1] 実施例1と同様にして、二次粉末を作製し、ジルコニア仮焼体のブロックを作製した。また、焼成スケジュールを表2及び表3に記載のとおりに変更する以外は、実施例1と同様にしてジルコニア焼結体を作製し、各特性を評価した。」 (4)「[0068][表1] [図:0001434119000001.jpg] 」 (5)「[0069][表2] [図:0001434119000002.jpg] 」 2 甲2の記載事項 甲2には、次の事項が記載されている。 「【0086】 1.原料粉体 ・ZpexSmile:東ソー株式会社製酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム含有量0.05質量%、酸化イットリウム含有量9.3質量%、理論密度:6.050g/cm3 ・Zpex4:東ソー株式会社製酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム含有量0.05質量%、酸化イットリウム含有量6.9質量%、理論密度:6.078g/cm3 ・Zpex:東ソー株式会社製酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム含有量0.05質量%、酸化イットリウム含有量5.3質量%、理論密度:6.093g/cm3 ・TZ-3Y-SE:東ソー株式会社製酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム含有量0.26質量%、酸化イットリウム含有量5.2質量%、理論密度:6.085g/cm3 ・TZ-8YSB:東ソー株式会社製酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム含有量0.005質量%以下、酸化イットリウム含有量13.74質量%、理論密度:6.011g/cm3」 3 甲3の記載事項 甲3には、次の事項が記載されている。 「[0062] また、比較例として、市販のジルコニア粉末を用いてジルコニア焼結体を作製し、曲げ強度、破壊靭性及び水熱処理後の単斜晶のピーク比、及び光の透過率を測定した。比較例1~6においては、市販のジルコニア粉末をそのまま用いている。・・・比較例1において使用したジルコニア粉末は東ソー社製TZ-3YSである。比較例2において使用したジルコニア粉末は東ソー社製TZ-4YSである。比較例3において使用したジルコニア粉末は東ソー社製TZ-5YSである。比較例4において使用したジルコニア粉末は東ソー社製TZ-3YS及びTZ-5YSである。比較例5~6において使用したジルコニア粉末は東ソー社製Zpexである。比較例7~13において使用したジルコニア粉末はノリタケカンパニーリミテド社製である。・・・」 4 甲4の記載事項 甲4には、次の事項が記載されている。 「【0128】 <工程(1):混合工程、及び工程(2):準備工程> [原料] (高強度タイプ) ジルコニア粉末 ・Zpex(登録商標)(東ソー社製;比表面積12~13m2/g) 高強度タイプのジルコニア粉末とは、本焼結体の強度が高いが、光透過性は低い(1mm厚ペレットで透過率が約40%)原料粉末である。 【0129】 着色用ジルコニア粉末 ・Zpex(登録商標)-Yellow(東ソー社製;比表面積12~13m2/g) ・Zpex(登録商標)-Pink(東ソー社製;比表面積12~13m2/g) ・Zpex(登録商標)-Gray(東ソー社製;比表面積12~13m2/g) 着色するために、ジルコニア粉末に微量の着色用金属酸化物を混合する場合、均一分散が容易ではないため、あらかじめジルコニア粉末と着色用金属酸化物とが十分に混合された市販の上記着色用ジルコニア粉末を用いた。」 第6 当審の判断 1 申立理由1(甲1を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)について (1) 甲1に記載された発明 甲1には、前記第5の1(1)の[請求項1]に「ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体を焼成する焼成工程を有し」、「前記ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体が安定化剤を含有する複数の層を備え」、「前記焼成工程が、第1昇温工程(H1)、第2昇温工程(H2)及び第3昇温工程(H3)の少なくとも3段階の昇温工程を含」む、「ジルコニア焼結体の製造方法」が記載されている。 そして、前記第5の1(3)、(5)には、実施例2として、「第1昇温工程(H1)」の昇温速度が150℃/min、到達温度が1400℃、「第2昇温工程(H2)」の昇温速度が35℃/min、到達温度が1500℃、「第3昇温工程(H3)」の昇温速度が150℃/min、到達温度が1560℃、そして、第3昇温工程(H3)の到達温度での保留時間が18minの焼結スケジュールで焼結したことが記載されている。 さらに、前記第5の1(3)、(4)から、前記実施例2のジルコニア焼結体は、着色成分以外は、表1に記載された、イットリアの含有量が5mol%の1層目と4mol%の2層目となるように原料粉末を作製したことが記載されている。 そうすると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (甲1発明) 「ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体を焼成する焼成工程を有し、前記ジルコニア成形体又はジルコニア仮焼体が安定化剤を含有する複数の層を備え、着色成分以外はイットリアの含有量が5mol%の1層目と4mol%の2層目となるように原料粉末を作製し、前記焼成工程が、第1昇温工程(H1)、第2昇温工程(H2)及び第3昇温工程(H3)の少なくとも3段階の昇温工程を含み、第1昇温工程(H1)の昇温速度が150℃/min、到達温度が1400℃、第2昇温工程(H2)の昇温速度が35℃/min、到達温度が1500℃、第3昇温工程(H3)の昇温速度が150℃/min、到達温度が1560℃、そして、第3昇温工程(H3)の到達温度での保留時間が18minの焼結スケジュールで焼結するジルコニア焼結体の製造方法。」 (2) 本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明との対比 (ア) 甲1発明の「安定化剤」は、本件発明1の「安定化元素」に相当する。そして、甲1発明の「イットリアの含有量が5mol%の1層目と4mol%の2層目となるように」作製した原料粉末を用いて作製した焼結体は、少なくともイットリアの含有量が4~5mol%の範囲内となるから、本件発明1の「前記安定化元素の含有量が2.5mol%以上5.2mol%以下・・・であるジルコニアの組成物」に相当する。そして、甲1発明の「ジルコニア焼結体の製造方法」は、本件発明1の「安定化元素を含有するジルコニアの焼結体の製造方法」に相当するといえる。 (イ) また、本件発明1の第二昇温工程について、本件特許明細書の【0049】に、「第二昇温工程は、T1超からT2まで昇温速度の切替えを必須としない。」と記載されているとおり、途中で昇温速度を切り替えるか否かについては特定しないものであるところ、甲1発明の「第1昇温工程(H1)」が、本件発明1の「第一昇温工程」に相当し、甲1発明の「第2昇温工程(H2)及び第3昇温工程(H3)」が本件発明1の「第二昇温工程」に相当する工程とみることができる。そうすると、甲1発明の「第1昇温工程(H1)」の到達温度までの「昇温速度が150℃/min」である点は、本件発明1の「昇温開始温度から・・・第一到達温度まで昇温速度150℃/分以上で昇温する第一昇温工程」に相当するといえ、甲1発明の、「第2昇温工程(H2)の昇温速度が35℃/min、到達温度が1500℃、第3昇温工程(H3)の昇温速度が150℃/min、到達温度が1560℃」である点は、本件発明1の「前記第一到達温度から1400℃以上1580℃未満のいずれかの第二到達温度まで昇温速度30℃/分超200℃/分未満で昇温する第二昇温工程」に相当するといえる。 (ウ) さらに、甲1発明の「第3昇温工程(H3)の到達温度での保留時間が18min」である点は、本件発明1の「該第二到達温度で保持する保持工程」に相当する。 (エ) したがって、本件発明1と甲1発明とは、 「安定化元素を含有し、前記安定化元素の含有量が2.5mol%以上5.2mol%以下であるジルコニアの組成物を昇温開始温度から第一到達温度まで昇温速度150℃/分以上で昇温する第一昇温工程、前記第一到達温度から1400℃以上1580℃未満のいずれかの第二到達温度まで昇温速度30℃/分超200℃/分未満で昇温する第二昇温工程、及び、該第二到達温度で保持する保持工程、を有する安定化元素を含有するジルコニアの焼結体の製造方法」 の点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点1) 本件発明1では、「立方晶及び正方晶の少なくともいずれかを主相とし、T+C相率が65%以上であるジルコニアの組成物」に対して前記各工程を行うのに対し、甲1発明では、ジルコニア原料粉末の結晶相の詳細が不明な点。 (相違点2) 本件発明1では、第一昇温工程が昇温開始温度から800℃以上1150℃以下のいずれかの第一到達温度まで昇温するのに対し、甲1発明では、対応する第1昇温工程(H1)の到達温度が1400℃である点。 イ 相違点の検討 (ア) 事案に鑑み、まず相違点2から検討する。 (イ) 甲1発明の第1昇温工程(H1)の到達温度は1400℃であり、本件発明1の第一昇温工程の「800℃以上1150℃以下のいずれかの第一到達温度」の範囲を超える高い温度である。よって、相違点2は実質的な相違点である。したがって、本件発明1は、甲1発明ではない。 (ウ) 次に、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることの容易想到性について検討する。 (エ) 甲1には、前記第5の1(1)の[請求項1]に「各昇温工程での到達温度は」「H1において1250℃超1450℃以下」と記載されており、本件発明1の「800℃以上1200℃以下」よりも高い温度範囲が記載されている。そして、前記第5の1(2)には、第1昇温工程(H1)~第3昇温工程(H3)における温度条件について、それぞれ上限下限を設定する理由と、より好ましい範囲が記載されており、[0019]には、第1昇温工程(H1)の到達温度について、「第1昇温工程(H1)の到達温度は1250~1450℃であり、より作業時間を短縮できる点から、好ましくは1300℃以上であり、安定化剤であるイットリアの含有率の異なる層同士の透明性差を小さくできることから、より好ましくは1350℃以上であり、さらに好ましくは1400℃以上である。」と記載されている。すなわち、甲1には、本件発明1で特定される800℃以上1150℃以下の到達温度とすることについては記載されておらず、むしろより高い温度とすることが好ましいと説明されている。 (オ) また、甲2~4にも、第1昇温工程(H1)に相当する工程の到達温度を800℃以上1150℃以下とすることについては、記載も示唆もない。 (カ) したがって、甲1発明において、第1昇温工程(H1)の到達温度を1400℃から少なくとも1150℃以下まで下げ、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではないし、甲1発明及び甲2~4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3) 本件発明2~14について 本件発明2~14は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記(2)で検討したのと同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲第2~4号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4) 申立理由1についての結論 以上の検討のとおり、申立理由1には理由がない。 2 取消理由及び申立理由2(サポート要件違反)について (1) サポート要件違反の判断手法について 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、この観点に立って検討する。 (2) 本件発明の課題について ア 発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 特許文献1の短時間焼結は、1200℃を超えた高温領域での昇温速度の切り替えを必須とし、なおかつ、1200℃を超えた高温領域では焼結による緻密化挙動が急激に進行しているため、精密な温度制御を必要とする。しかしながら、高温領域における昇温速度の切り替えは、焼結炉のヒーターが昇温プログラムに追随しきれず、精密な温度制御が困難であり、なおかつ、このような制御に対応できる焼結炉は特殊な焼成炉に限られている。また、特許文献2の短時間焼結で得られる焼結体は、通常焼結体と比べて透光性が低く、歯科補綴材として要求される透光性を有していない。更には、特許文献2の方法では、イットリウム含有量が高い安定化ジルコニアの焼結体の透光性が、通常焼結体と比べて特に低下する。 【0007】 本開示は、高温領域での精密な温度制御を必須とすることなく、なおかつ、ジルコニアの組成物の安定化元素の含有量によらず、歯科補綴材として要求される透光性を有する焼結体を得ることができる、短時間焼結によるジルコニアの焼結体の製造方法、を提供することを目的とする。」 イ 上記の記載から、本件発明1~14の課題(以下、「本件課題」という。)は、高温領域での精密な温度制御を必須とすることなく、なおかつ、ジルコニアの組成物の安定化元素の含有量によらず、歯科補綴材として要求される透光性を有する焼結体を得ることができる、短時間焼結によるジルコニアの焼結体の製造方法、を提供することであるといえる。 (3) 本件発明の課題解決手段に関する記載について ア 発明の詳細な説明のには、以下の記載がある。 「[焼結体の製造方法] 本実施形態の製造方法は、安定化元素を含有するジルコニアの組成物を昇温開始温度から800℃以上1400℃未満のいずれかの第一到達温度まで昇温速度150℃/分以上で昇温する第一昇温工程、前記第一到達温度から1400℃以上1580℃未満のいずれかの第二到達温度まで昇温速度30℃/分超200℃/分未満で昇温する第二昇温工程、及び、該第二到達温度で保持する保持工程、を有する安定化元素を含有するジルコニアの焼結体の製造方法、である。このような製造方法により、通常焼結に要する保持時間と比べ、第二到達温度での保持時間を短縮しながら、安定化元素量の影響をほとんど受けず、通常焼結体と同等な透光性を有する焼結体を得ることができる。特に、安定化元素量が多いジルコニアにおいてこのような効果を奏する。」(【0042】) イ そして、第一昇温工程の第一到達温度T1と第一昇温速度HR1を上記アのように定める理由については、「昇温開始温度から800℃以上1400℃未満のいずれかの第一到達温度まで昇温速度150℃/分以上で昇温する。・・・HR1がこれ未満であると焼結が顕著に進行する温度に至るまでの時間がかかりすぎる」(【0043】)、「T1が850℃以上、好ましくは950℃以上又は1000℃以上であることで、焼結に過度な時間を要することなく、焼結体を製造することができる」(【0047】)、との記載があり、短時間焼結を実現するためには、少なくともT1の下限800℃以上まで150℃/分以上で昇温することが重要であることが理解できる。そして、【表9】に、HR1が150℃/分以上のいくつかの昇温速度のいずれにおいても十分高い透光性が得られたことが示されている。一方、T1の上限については、「T1は800℃以上1400℃未満のいずれかの温度である。・・・T1が1400℃以上であると、安定化元素量が多い場合に、通常焼結体と比べて透光性が低い焼結体が得られる」(【0046】)、「1400℃以上の温度領域ではジルコニアの焼結が急激に進行し、また、組成物の組成や物性等により、焼結挙動が相違する」(【0049】)、との記載があり、そして、【表7】に、T1が1400℃である場合には、安定化元素の含有量が少ない(4.0mol%)焼結体の透光性は高かったものの、安定化元素の含有量が多い(5.2mol%)焼結体の透光性は1000℃や1150℃の場合に比べて大きく低下していたこと、そして、T1が1000℃又は1150℃である場合、安定化元素の含有量が少ない(4.0mol%)場合も安定化元素の含有量が多い(5.2mol%)場合も、通常焼結体と遜色ない透光性が得られ、それらの温度差による透光性の差も小さいことが示されている。 ウ これらの記載事項から、少なくとも800℃以上まで150℃/分以上で昇温する短時間焼結を行い、その場合に、第一昇温工程の範囲が1000℃や1150℃程度の温度までであれば、安定化元素の含有量が4.0~5.2mol%程度の差があっても、ジルコニアの焼結が急激に進行することがなく、安定化元素の含有量によらず、歯科補綴材として要求される透光性を有する焼結体を得ることができることが理解できる。 エ また、第二昇温工程の第二昇温速度HR2と第二到達温度T2を上記アのように定める理由については、「これらの範囲のHR2では、昇温速度が速くなるほど安定化元素量が少ない組成物においてはより高い透光性を有する焼結体が得られる。その一方他方、昇温速度が遅くなるほど安定化元素量が組成物においては、より高い透光性を有する焼結体が得られる」(【0050】)、「T2は・・・1400℃以上1580℃未満・・・T2がこの範囲であることでジルコニアの結晶粒子の粒成長による気孔排除が進行する。これにより、短時間焼結でありながら、安定化元素量によらず、歯科補綴材として要求される透光性を満たす焼結体が得られる。」(【0052】)、との記載があり、T2の下限(T1の上限と同じ)以上ではジルコニア結晶粒子の粒成長による気孔排除が進行するため、この段階での昇温速度HR2が重要であり、安定化元素の含有量によらず透光性の高い焼結体が得られるようにその下限と上限を設定したことが理解でき、それ以上の緻密な温度制御は必要ではないことが理解できる。そして、【表5】に、安定化元素の含有量によるHR2と透光性の関係が異なることが具体的に示されている。さらに、T2の上限については、「これに加え、最高到達温度が1580℃未満であることで・・・汎用のヒーターを備えた焼結炉の劣化が抑制される。」(【0052】)との記載があり、汎用ヒーターの劣化を防止する観点から設定したものであることが理解でき、【表8】の結果からこの上限以下で十分高い透光性が得られたことも示されている。 オ さらに、第二到達温度で保持する保持工程については、「T2での保持時間が短くとも、組成物表面近傍の気孔が排除され、通常焼結体と同等な透光性を有する焼結体が得られる」(【0057】)と記載され、【表6】で保持時間が0分の場合は透光性が低かったものの、保持時間が2分以上の場合は十分高い透光性が得られたことも示されている。 (4) 判断 上記(3)ア~オの記載から、短時間焼結としながらも、安定化元素量によらず、通常焼結体と同等な透光性を有する焼結体を得るために、T1、HR1、T2、HR2の範囲を上記(3)アに記載された範囲に特定し、少なくとも第二到達温度での保持を行うことが肝要であることが理解できる。そして、T1については、1000℃、1150℃であれば、安定化元素の含有量が異なっていても所望の透光性が得られ、1400℃まで高くしてしまうと、安定化元素の含有量が少ない場合には問題ないが、安定化元素の含有量が多い場合には透光性が大きく劣るものとなってしまうという結果から、少なくとも1150℃を上回らない範囲であれば、安定化元素量によらず通常焼結体と同等な透光性を有する焼結体が得られることが理解できる。 そして、このことを前記(1)の判断手法に照らせば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合する。また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~14の記載についても事情は同じである。 (5) 申立人の主張 ア 申立人は、特許異議申立書の第34頁第12行~第36頁第7行、及び令和7年2月28日付けの意見書において、サポート要件違反に関して、概略次の点を主張している。 (ア) 第一到達温度について a 申立人は、特許異議申立書において、前記第4の2(3)ア(ア)のとおり、次の主張をしている。 b 本件特許明細書の【0149】(表2)には、第一到達温度が「1400℃」であることを除いて、本件特許発明1の焼成条件を充足する焼結パターンP13が記載されている。そして、この焼結パターンP13を採用すると、イットリウム(安定化元素)の含有量が5.2mol%の場合に、透光性が著しく低下することが確認されている(表7中の比較例8、【0165】参照)。そして、設定登録時の請求項1に記載された第一到達温度の範囲(800℃以上1400℃未満)は、「139.9・・・℃」という1400℃に極めて近似した温度を包含する。以上の点を考慮すると、設定登録時の請求項1に係る発明は、「歯科補綴材として要求される透光性を有する焼結体を得る」という課題を解決できない技術を包含している蓋然性が極めて高い。 c そして、上記の点に関し、申立人は、意見書において、さらに以下の主張をしている。 d 先の訂正では、請求項1中の第一到達温度を「800℃以上1200℃以下」に訂正されている。令和6年12月10日付の意見書において、特許権者は、「1150℃」と「1200℃」という第一到達温度の違いを「近しい温度」とみなしている。しかしながら、かかる認定は、科学的根拠を伴わない主観的なものに過ぎない。ジルコニア組成物の焼結では、1000℃~1250℃の温度域で焼結(熱収縮)が急激に進行することが知られている。詳細は、前記第4の3の参考文献の図3を参照。そしてこの急激な熱収縮が生じる温度域で焼結温度を保持せずに、急速に昇温を行うと、気泡が十分に除去されないまま焼結が進む。この場合、ジルコニア焼結体の内部に気泡が閉じ込められるため、透光性が大きく低下する。 e 以上のとおり、ジルコニア組成物の焼成では、1000℃から1250℃までの250℃の温度幅の範囲内で保持温度(第一到達温度)を変化させると、焼成後のジルコニア焼結体の透光性が大きく異なる可能性がある。この250℃という温度幅で保持温度を設定する必要があることを考慮すると、本件明細書の実施例に記載の「1150℃」と先の訂正後の請求項1に記載の「1200℃」との間にある50℃という温度差は、けっして「近しい温度」と呼べるものではないと解されるべきである。 f そして、本件特許明細書(例えば【0046】等)は、第一到達温度の上限値について「1200℃以下」という数値を記載しているのみであり、当該「1200℃以下」という数値の技術的意義(換言すると、1150℃という実験結果から1200℃に第一到達温度を拡張できる理由)について開示も示唆もしていない。 g したがって、第一到達温度を1150℃に設定した際に好適な透光性が実現できたという実施例が存在していたとしても、当該第一到達温度の上限値を「1200℃以下」に拡張することは、本分野の当業者が本件課題を解決できると認識できる範囲を超えている。 h また、申立人は、特許異議申立書において、前記第4の2(3)ア(イ)のとおり、以下の主張をしている。 i 本件特許明細書の実施例では、第一到達温度を1000度未満に設定した焼結パターンが検討されていない。したがって、設定登録時の請求項1に係る発明に包含される「800℃以上1000℃未満」という第一到達温度の温度範囲も、その有効性が充分に検討されておらず、所望の透光性を実現できない可能性がある。 (イ) 第二昇温工程の昇温速度について a 申立人は、特許異議申立書において、前記第4の2(3)イのとおり、以下の主張をしている。 b 「高温領域での精密な温度制御を必要としない製造方法を実現する」という課題を解決するには、「第二昇温工程中に昇温速度が変動しない」点が特定されるべきである旨、また、本件発明1~14は、「第二昇温工程中に昇温速度が変動しない」ことを特定していないため、上記の課題を解決できない製造方法を包含する。 イ 上記主張について検討する。 (ア) 第一到達温度について a 前記ア(ア)b~gの主張に関しては、前記(3)、(4)で検討したとおりであって、本件訂正後の1150℃以下の第一到達温度であれば、通常焼結体と比較して同等の透光性を有する焼結体が得られることを当業者は理解することができるから、主張は採用できない。 b また、前記ア(ア)dの参考資料を参照した主張について、参考資料に記載されているのは、本件発明に比べて非常に遅い昇温速度で昇温した場合のジルコニア組成物の熱収縮曲線であり、申立人が主張するように熱収縮挙動が焼結体の気孔量と透光性に間接的に影響するとしても、本件発明のような非常に早い昇温速度で第一到達温度まで昇温する焼結工程を採用した場合に、どのような熱収縮挙動を示し、最終的に得られる焼結体の透光性がどの程度変化するかを示すものではない。そうすると、当該主張は本件発明と前提の異なる証拠に基づくものであって採用できない。 c 次に、前記ア(ア)iの第一到達温度の下限に関する主張について検討すると、前記(3)イで摘示したとおり、発明の詳細な説明には「T1が850℃以上、好ましくは950℃以上又は1000℃以上であることで、焼結に過度な時間を要することなく、焼結体を製造することができる」(【0047】)との記載があり、T1の下限は、透光性のためではなく、短時間焼結を実現するために設けられるものであり、800℃以上1000未満の範囲に設定しても本件発明の課題が解決できることが理解できるから、当該主張も採用できない。 (イ) 第二昇温工程の昇温速度について a 発明の詳細な説明には、第二昇温工程に関し、前記(3)エに摘示した事項とともに、「第二昇温工程は、T1から1400℃以上1580℃未満のいずれかの第二到達温度まで昇温速度30℃/分超200℃/分未満で昇温する(・・・)。第二昇温工程は、T1超からT2まで昇温速度の切替えを必須としない。高温領域での精密な温度制御(昇温速度の制御)を必要としないことにより、本実施形態の製造方法は、汎用のヒーターを備えた焼結炉を使用する製造方法として適用できる。1400℃以上の温度領域ではジルコニアの焼結が急激に進行し、また、組成物の組成や物性等により、焼結挙動が相違する。そのため、組成物の特性に応じた1400℃以上の温度領域での昇温速度を切替えすることは困難である。本実施形態の製造方法では、1400℃以上からT2に至るまでの昇温中の昇温速度の切替えがないだけはなく、T1からT2に至るまでの昇温中の昇温速度の切替えがない。そのため、1200℃を超えT2に至るまでの昇温速度が変化せず、簡便な昇温プログラムで透光性の高い焼結体を得ることができる。」(【0049】)と記載されている。 b これらの記載から、焼結が急激に進行する第二昇温工程における昇温速度を一定範囲内とすることが肝要であって、その間の昇温速度の切り替えを「必須としない」、すなわち、切り替えを行っても行わなくてもよいことが理解できる。したがって、昇温速度が変動しないことが特定されるべきという申立人の主張は採用できない。 (6) 取消理由及び申立理由2についての結論 以上のとおり、本件特許請求の範囲の記載に不備はないから、取消理由及び申立理由2はいずれも理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び取消理由通知書に記載した取消理由によっては、本件特許1~14を取り消すことはできない。 また、他に本件特許1~14を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700847

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