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特許異議申立

2022-701312

害虫防除エアゾール装置

審判番号
2022-701312
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-241909
登録番号
7097692
請求日
2022年12月27日
審決日
2024年09月12日
公報発行日
2024年12月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】アース製薬株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人あーく事務所
  • 【異議申立人】石井 健治
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 西田 秀彦
  • 審判官 土屋 真理子
分類
P1651.113-YAA(A01M) / P1651.121-YAA(A01M) / P1651.537-YAA(A01M) / P1651.536-YAA(A01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7097692号発明「害虫防除エアゾール装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7097692号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第7097692号の請求項1に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7097692号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成29年12月18日(優先権主張 平成28年12月19日、平成29年2月1日)に出願され、令和4年6月30日にその特許権の設定登録がされ、同年7月8日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。 令和4年12月27日 :特許異議申立人石井健治(以下「申立人」と いう。)による請求項1に係る特許に対する 特許異議の申立て 令和5年 3月10日付け:取消理由通知書 同年 5月15日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 同年 7月12日 :申立人による意見書の提出 同年 9月 8日付け:取消理由通知書(決定の予告) 同年11月 8日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求 令和6年 2月 9日 :申立人による意見書の提出 なお、令和5年5月15日にされた訂正の請求は、令和5年11月8日に訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年11月8日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「害虫防除剤を含むエアゾールを噴霧する害虫防除エアゾール装置であって、」と記載されているのを、 「害虫防除剤を含むエアゾールをゴキブリ類を対象として噴霧する害虫防除エアゾール装置であって、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置における前記エアゾールの噴射圧が8~14 g fである」と記載されているのを、 「前記ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置における前記エアゾールの噴射圧が8~14 g fであり、前記害虫防除剤はイミプロトリンとフェノトリンの混合物である」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的の適否 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載の「害虫防除剤を含むエアゾールを噴霧する害虫防除エアゾール装置」について、エアゾールを噴霧する対象をゴキブリ類に特定し、限定する訂正であるから、当該訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 ウ 新規事項の有無 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を「本件明細書等」という。)の段落【0055】には、「供試虫がドミノローチとチャバネゴキブリの場合には」「ドミノローチやチャバネゴキブリなどのゴキブリ類を対象とする場合には」との記載がある。また、段落【0051】には、「ドミノローチ、チャバネゴキブリ、・・・を供試虫として」との記載があり、段落【0052】には、「チャバネゴキブリを供試虫として」との記載があり、段落【0053】の【表2】に示される実施例8~15、24~31には、ドミノローチ又はチャバネゴキブリを供試虫とした例が記載されている。これらの記載からみて、訂正事項1は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的の適否 訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載の「害虫防除剤」について、イミプロトリンとフェノトリンの混合物であるものに特定し、限定する訂正であるから、当該訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 ウ 新規事項の有無 本件特許の本件明細書等の段落【0055】には、「供試虫がドミノローチとチャバネゴキブリの場合には、害虫防除剤としてイミプロトリン/ペルメトリンの混合物では行動停止時間が10秒より短いが、イミプロトリン/フェノトリンの混合物では行動停止時間が10秒以上となっている。したがって、ドミノローチやチャバネゴキブリなどのゴキブリ類を対象とする場合には、害虫防除剤としてイミプロトリン/フェノトリンの混合物を用いることで、さらに供試虫の行動を停止させる効果を得られる。一般的にゴキブリ類に対する防除効果は、フェノトリンよりもペルメトリンのほうが基礎効力が高く、商い効果が見込まれるが、本発明の装置においては、ゴキブリ類に対する行動停止にはペルメトリンよりフェノトリンがより好ましい効果が得られる。」との記載がある。また、本件明細書等の段落【0053】の【表2】(実施例8、9、12、13、24~31)には、供試虫が、ドミノローチとチャバネゴキブリであり、害虫防除剤としてイミプロトリンとフェノトリンの混合物を用いたことが記載されている。これらの記載からみて、訂正事項2は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正である。 3 訂正請求のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第9項により準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2のとおり本件訂正請求は認められるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明1」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 害虫防除剤を含むエアゾールをゴキブリ類を対象として噴霧する害虫防除エアゾール装置であって、ノズルの直線部長が80~150mm、ノズル内径が0.5~2.0mmかつ噴霧口径が0.5~2.0mmであり、前記ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置における前記エアゾールの噴射圧が8~14gfであり、前記害虫防除剤はイミプロトリンとフェノトリンの混合物であることを特徴とする害虫防除エアゾール装置。」 第4 証拠一覧、特許異議申立理由の要旨、及び取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の要旨 1 証拠一覧 (1)申立書とともに提出された証拠 甲第1号証 :特許第5250183号公報 甲第2号証 :特開2012-116774号公報 甲第3号証 :特開2013-126959号公報 甲第4号証 :特開平8-151088号公報 甲第5号証 :特開2001-145842号公報 甲第6号証 :特開2004-168948号公報 甲第7号証 :特開2013-253029号公報 甲第8号証 :特開2016-40232号公報 (2)令和6年2月9日付け意見書とともに提出された証拠 甲第9号証 :Amazonにおける商品名「KINCHO コックロー チ ゴキブリ トコジラミ 殺虫剤スプレー450ml 水性タイプ」の販売画面 https://www.amazon.co.jp/KINCHO-%E3%82%B3%E3%83%83%E 3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81-%E6%AE%BA%E8%99%A B%E5%89%A4%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC-450ml -%E6%B0%B4%E6%80%A7%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97/dp/B0 012R8142 甲第10号証:フマキラー株式会社のホームページのNEWSにおける2 014年1月15日の新商品情報「すばやいゴキブリも逃 さない! 『ゴキブリフマキラー ダブルジェット』がリ ニューアル!」 https://www.fumakilla.co.jp/new/733/ 甲第11号証:Amazonにおける商品名「アース製薬 ゴキブリのい ない空間を作るスプレー ゴキバリア 250mL」の販 売画面 https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B4%E3%82%AD%E3%83%90 %E3%83%AA%E3%82%A2-%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B9%E8%A3 %BD%E8%96%AC-%E3%82%B4%E3%82%AD%E3%83%96%E3%83%AA%E3 %81%AE%E3%81%84%E3%81%AA%E3%81%84%E7%A9%BA%E9%96%93% E3%82%92%E4%BD%9C%E3%82%8B%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%A C%E3%83%BC-250%EF%BD%8DL/dp/B0054NR8UI 甲第12号証:「ゴキブリのいない空間を作るスプレー ゴキバリア」の 安全データシート(2015/06/01改訂)、アース 製薬株式会社 https://image.trusco-sterra.com/pdf/sds/010711_1475_ _SDS.pdf 甲第13号証:板谷信重 外4名、「3-フェノキシベンジル系合性ピレ スロイドの開発 スミスリンR○ エクスミンR○ サイフェノトリン、フェンプロパスリン ―― 防疫用か ら農業用への発展」、住友化学1988-I、住友化学工 業株式会社、昭和56年5月25日、p.75-93(上記にお いて、R○は、○の中にRがあることを示している。以下 同様。) 甲第14号証:平野雅親 外4名、「高ノックダウン活性を有する新規ピ レスロイド“プラルR○”の開発」、住友化学1998 -I、住友化学工業株式会社、平成10年5月29日、p. 4-15 2 特許異議申立理由の要旨 特許異議申立書の「申立ての理由」(2~3頁、35~36頁)をふまえると、申立人が主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 (1)新規性欠如(特許法29条1項3号) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 (2)進歩性欠如(特許法29条2項) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証~甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 (3)サポート要件違反(特許法36条6項1号) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、害虫に対する噴射距離等を限定しておらず、本件特許の課題を解決できる範囲のものであるとは認識できないものであって、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 (4)実施可能要件違反(特許法36条4項1号) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、害虫に対する噴射距離等を限定していない害虫防除エアゾール装置であり、当業者が使用できるとは言えないものであって、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 (5)明確性要件違反(特許法36条6項2号) 本件訂正前の請求項1に係る発明は、噴射圧の測定方法を規定していない害虫防除エアゾール装置であり、発明の外縁を確定できないものであって、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。 3 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の要旨 令和5年9月8日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)進歩性欠如(特許法第29条2項) 令和5年5月15日付けの訂正請求書により訂正された請求項1に係る発明は、甲1発明、甲1技術事項及び周知技術、又は、甲1発明、甲1技術事項、周知技術及び甲2技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条2項の規定に違反してされたものであり取り消されるべきものである。 第5 証拠の記載 1 甲1 (1)甲1の記載 甲1には以下の記載がある(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。 ア 「【発明を実施するための最良の形態】 本発明の害虫駆除用エアゾール(以下、エアゾールという)は、害虫駆除成分、溶剤、及び噴射剤を含有してなる混合物(以下、エアゾール用組成物という)がアクチュエーターを備えた耐圧容器に内包されてなるエアゾールであり、該混合物中の溶剤の含有量が0~10容量%であり、該アクチュエーターの噴口径が0.7~2mmであることを1つの大きな特徴とする。」(明細書3頁18-23行) イ 「すなわち、これまでにも溶剤の含有量を低減させて噴霧液による汚染を実質的に防止し得るエアゾール剤がいくつか知られている(例えば、特開昭59-175403号公報、特開平4-120003号公報、特公昭46-20837号公報等)。しかしながら、従来、空間に噴霧することによる害虫駆除効力の発揮には、エアゾール内容物を噴射して微粒子化し、空間への拡散性や物体間隙への浸透性を高める必要があると考えられていたことから、たとえ溶剤量を低減させ得たとしても、エアゾール内容物噴射時の微粒子化を担保するため、アクチュエーターの噴口径を小さくしたり、エアゾールの容器内圧を高めて瞬発的な噴射力を大きくしたりする必要があった。しかしながら、このような方法では、空間への拡散性は担保できたとしても、粒子径の制御が困難で、虫体への付着の低下が避けられず、特に害虫に対して直接噴霧した場合の効力が十分発揮されなかった。ところが、本発明者らは、たとえ溶剤量を低減しても、アクチュエーターの噴口径や耐圧容器内の圧力、噴射量などを調整し、噴霧粒子の粒径を所定の範囲内に制御することによって、空間への拡散性や虫体への付着性を確保でき、空間噴霧と直接噴霧のいずれをも満足させる充分な害虫駆除効力が得られることを新たに見出した。そこで、かかる条件を満たし得る全く新規なエアゾールとして本発明のエアゾールを開発するに至った。従って、本発明における溶剤含有量の低減化の態様については、これまでに具体的に報告された例はなく、従来の技術からは全く予期できるものではない。」(明細書3頁31-47行) ウ 「本発明のエアゾールは、公知のエアゾールと同様の方法で調製することができる。例えば、害虫駆除成分、溶剤、及び所望によりその他の成分を含有する原液を、アクチュエーターを備えた耐圧容器に注入した後、減圧して噴射剤を封入する方法や、害虫駆除成分、溶剤、及び所望によりその他の成分を別々に該容器に注入後、減圧して噴射剤を封入する方法等が挙げられる。 本発明において使用されるアクチュエーターを備えた耐圧容器とは、例えば、所定の噴口径を有する公知のアクチュエーターを公知のエアゾール缶に装着させてなるものである。・・・ ・・・ ロングノズルを有するアクチュエーターにおいては、エアゾール内容物が外部に噴射(排出)される際のアクチュエーターの最終部分とはロングノズルの外部先端(つまり、アクチュエーター本体とは反対側のノズルの先端)を意味し、該先端の内径(ロングノズルの外部先端の穴径)が噴口径に相当する。例えば、ロングノズルが、ノズル途中でその内径が数段階で変化するものである場合も噴口径とはノズルの外部先端の内径であり、ノズル途中の内径は任意である。本態様のエアゾールにおける噴口径としては、本発明の所望の効果の発現の観点から、0.4~2mmであり、好ましくは0.45~2mm、害虫駆除効力をより高く発揮させる観点から、より好ましくは0.8~1.5mmである。 ロングノズルのノズル長としては、特に限定されるものではないが、害虫駆除効力をより高く発揮させる観点から、好ましくは0.5~15cmである。また、ノズル部分の形態も、特に限定されるものではなく、例えば、伸縮可能なものであってもよい。なお、伸縮可能な場合、ノズル長は、伸びた状態のものをいう。ノズルの材質も、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、テフロン、ポリ塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、ステンレス、アルミニウム等が挙げられる。ノズルの材質としては、成形性、価格の面から、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。」(明細書4頁48-5頁30行) エ 「本発明のエアゾールの対象害虫は、使用される害虫駆除成分に依存する。対象害虫としては、例えば、イエバエ、ヒメイエバエ、センチニクバエなどのハエ類、アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカなどのカ類、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリなどのゴキブリ類、ヒトノミ、ネコノミなどのノミ類、イエダニ、ケナガコナダニ、コナヒョウヒダニ、ツメダニなどのダニ類、イエヒメアリ、アミメアリ、アルゼンチンアリなどのアリ類、トビズムカデ、アオズムカデなどのムカデ類、ヤケヤスデ、アカヤスデなどのヤスデ類、ワラジムシ、ダンゴムシなどのワラジムシ類、ヤマトシロアリ、イエシロアリなどのシロアリ類等が挙げられる。本発明のエアゾールは低汚染性であることから、特に屋内での使用に好適であり、かかる観点から、対象害虫としては、ハエ類、カ類、ゴキブリ類、ノミ類、ダニ類、アリ類、ムカデ類等が好適である。」(明細書6頁30-39行) オ 「試験例2 表2と3に示す条件を満たすエアゾール10~25(実施例7~18及び比較例4~7)を製造した。すなわち、所定の噴口径を有するロングノズル無しのアクチュエーターを装着した内容量300mLのエアゾール缶を用いて、所定のエアゾール用組成物組成を有し、容器内圧〔ゲージ圧(25℃)〕が0.4MPaであるエアゾール10~18、及び所定の噴口径を有するロングノズル有りのアクチュエーターを装着した同様のエアゾール缶を用いて、所定のエアゾール用組成物組成を有し、容器内圧〔ゲージ圧(25℃)〕が0.4MPaであるエアゾール19~25を製造した。ノズル長は10cmとした。 得られたエアゾール10~25について、害虫駆除効力を評価した。害虫駆除効力は、直接噴霧法により評価した。第1図に評価の際に用いた装置の概略を示す。両面を16メッシュ網1で蓋をしたガラスリング(直径9cm×高さ6cm)2内に供試虫(イエバエ6匹)を入れ、110cmの距離(噴霧距離)からエアゾールを噴霧した。前記ガラスリング2は台3の上に固定されており、かかる台3はガラスシリンダー(直径20cm)4内の所定の位置に固定されている。また、ガラスシリンダー4は架台5上に固定されている。ガラスシリンダー4内を第1図の「噴霧」と記載された位置から「排気」と記載されている向きに一定量の定常流の空気が流されている。それにより、全ての供試虫に噴霧されたエアゾール内容物があたるようになる。エアゾールの噴射量は、有効成分(ネオピナミンフォルテ)量が一定(約2mg/回)になるように調整した。エアゾールの噴射量の調整は、エアゾール自動微量噴霧装置(YASUDA SEIKI SEISAKUSHO LTD製)を用い、該装置の噴霧時間を調整して行った。」(明細書7頁23-42行) カ 表3は次のものである。 「 [図:0001417591000001.jpg] 」 (明細書8頁上段) 上記オの記載をふまえると、表3から以下の点を看取することができる。 (ア)実施例14~18(エアゾール20,21,22,23及び24) の噴口径のそれぞれは、0.6、0.8、1、1.5及び2mmで あること。 (イ)害虫駆除成分がネオピナミンフォルテであること。 キ 「試験例4 噴口径が1.3mmである、ロングノズル(1.5cm)有り又は無しのアクチュエーターを装着した内容量300mLのエアゾール缶を用いて、0.15重量/容量%の害虫駆除成分(ネオピナミンフォルテ)、表5に示す所定量の溶剤(n-パラフィン)、及び噴射剤(LPG)を残部として含んでなる所定のエアゾール用組成物組成を有し、容器内圧〔ゲージ圧(25℃)〕が0.15MPaであるエアゾール35~38を製造した(実施例28~31)。また、噴口径が0.65mmである、ロングノズル無しのアクチュエーターを装着した内容量300mLのエアゾール缶を用いて、所定量の溶剤(n-パラフィン)、及び噴射剤(LPG)を残部として含んでなる所定のエアゾール用組成物組成を有し、容器内圧が0.42MPaであるエアゾール39~41を製造した(比較例8~10)。特にエアゾール41は、これまで出願人らが上市してきた害虫駆除用エアゾール剤とほぼ同じ構成をもつものであり、標準的な従来品として位置づけた。 得られたエアゾール35~41について害虫駆除効力を評価した。害虫駆除効力は、試験例2と同様にしてKT50を求めて評価した。結果を表5に併せて示す。なお、評価は、供試虫としてイエバエ及びチャバネゴキブリ(各10匹)を用い、また、少なくとも3回繰り返して行った。イエバエでは噴霧距離を150cmとし、エアゾールの噴射量は有効成分量で約1.2mg/回となるように調整し、チャバネゴキブリでは噴霧距離を110cmとし、エアゾールの噴射量は有効成分量で約5mg/回となるように調整した。 [図:0001417591000002.jpg] 表5の結果より、溶剤量が少ないエアゾール35ではチャバネゴキブリに対する速効性にやや欠けるものの、イエバエに対しては、エアゾール35、36では、標準的な従来品であるエアゾール41と比べて、同等かそれ以上の優れた害虫駆除効力が発揮されることが分かる。チャバネゴキブリに対しても、エアゾール36では、エアゾール41と比べて、優れた害虫駆除効力が発揮されることが分かる。また、エアゾール35、36と、同等の溶剤量であるエアゾール39、40との比較では、エアゾール39、40の害虫駆除効力はかなり低く、溶剤量の低減が害虫駆除効果を低下させることを示すとともに、本発明の構成の卓越性が際立っていることを示すものである。なお、エアゾール35~38ではエアゾールによる汚染は観察されなかった。また、ロングノズル有りの場合と無しの場合とで本試験例では、ロングノズル有りの方がやや効力が優れることが分かる。」(8頁49行-9頁42行) (2)甲1発明 上記(1)ア~ウ、オ、カより、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲1発明) 「害虫駆除成分、溶剤、及び噴射剤を含有してなる混合物であるエアゾール用組成物を有し、容器内圧〔ゲージ圧(25℃)〕が0.4MPaであるエアゾールが内包された、ロングノズル有りのアクチュエーターを装着したエアゾール缶であり(上記(1)ア、ウ、オ)、 ノズル長は10cmであり(上記(1)オ)、 ロングノズルを有するアクチュエーターにおいては、ロングノズルの外部先端の内径が噴口径に相当し(上記(1)ウ)、 噴口径は、0.6、0.8、1、1.5または2mmであり(上記(1)カ)、 害虫駆除成分がネオピナミンフォルテであり(上記(1)カ)、 供試虫としてイエバエを用い、エアゾールを噴霧するものであり(上記(1)オ)、 虫体への付着性を確保でき、充分な害虫駆除効力が得られるものである(上記(1)イ)、 エアゾール缶。」 (3)甲1に記載された技術事項 甲1には、上記(1)キより、次の技術事項(以下、「甲1技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (甲1技術事項) 「噴口径が1.3mmである、ロングノズル(1.5cm)有り又は無しのアクチュエーターを装着した内容量300mLのエアゾール缶を用いて、0.15重量/容量%の害虫駆除成分(ネオピナミンフォルテ)、表5に示す所定量の溶剤(n-パラフィン)、及び噴射剤(LPG)を残部として含んでなる所定のエアゾール用組成物組成を有し、容器内圧〔ゲージ圧(25℃)〕が0.15MPaであるエアゾールを製造し、 供試虫としてイエバエ及びチャバネゴキブリを用い、 イエバエでは噴霧距離を150cmとし、エアゾールの噴射量は有効成分量で約1.2mg/回となるように調整し、チャバネゴキブリでは噴霧距離を110cmとし、エアゾールの噴射量は有効成分量で約5mg/回となるように調整した試験を行い、 イエバエに対しては、エアゾール36では、標準的な従来品であるエアゾール41と比べて、同等かそれ以上の優れた害虫駆除効力が発揮され、チャバネゴキブリに対しても、エアゾール36では、エアゾール41と比べて、優れた害虫駆除効力が発揮され、 ロングノズル有りの場合と無しの場合とでは、ロングノズル有りの方がやや効力が優れること。」 2 甲2 (1)甲2の記載 甲2には以下の記載がある。 ア 「【0012】 本発明のコバエ防除用エアゾール製品は、その噴射力を2~15gf/15cmの範囲に設定し、かつ噴霧粒子の平均粒子径を40μm以下となしたことに特徴を有する。本発明においては、飛んでいるコバエに噴霧する場合や停まっているコバエにかける使用方法が想定されるが、噴射力が15gf/15cmを超えると、噴射の勢いが強過ぎるためにコバエが吹き飛んでしまい、殺虫効果に支障を来たす。一方、噴射力が2gf/15cmより低いと噴射の勢いが弱いためにコバエへの薬液付着量が減少して殺虫効果の低下を招く恐れが避けられない。なお、前記の噴射力を測定するにあたっては、エアゾールのノズルをテンシロン(測定装置)の面に対して15cm離した箇所に位置させて、そこから前記の面に対して噴射し、その噴射力を測定することにより行う。噴射力を前記の範囲に設定するためには、エアゾール内容物の噴射量を調整するか、もしくは噴射ノズルの構造によって調整することができる。コバエ用の場合、広角に噴霧するノズル構造とするのが好ましく、噴射パターンは円形状のほか、楕円形状に広がる噴射パターンでもよい。この具体例を示すと、噴射口から約15cm離れた箇所から噴射した場合、直径10~20cm等の円形状、あるいはたて10~20cm、よこ5~8cm等の楕円形状が例示できる。」 (2)甲2技術事項 上記(1)より、甲2には、次の技術的事項(以下、「甲2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (甲2技術事項) 「コバエ防除用エアゾール製品において、 エアゾールのノズルをテンシロン(測定装置)の面に対して15cm離した箇所に位置させて、そこから前記の面に対して噴射し、測定した噴射力について、 噴射力が15gf/15cmを超えると、噴射の勢いが強過ぎるためにコバエが吹き飛んでしまい、殺虫効果に支障を来たし、噴射力が2gf/15cmより低いと噴射の勢いが弱いためにコバエへの薬液付着量が減少して殺虫効果の低下を招く恐れが避けられないため、 噴射力を2~15gf/15cmの範囲に設定すること。」 3 甲3 (1)甲3の記載 甲3には、以下の記載がある。 ア 「【0001】 本発明は、窓ガラスや網戸等の対象処理面に噴霧することで、屋外からの害虫の飛来を防止できるガラス面ならびに網戸用の飛翔害虫防除用エアゾールに関するものである。」 イ「【0008】 本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。 (1)エアゾール全体量あたり0.01~5.0w/v%のピレスロイド系殺虫成分と共に溶剤を含有するエアゾール原液と、ジメチルエーテル及び/又は液化石油ガスを含む噴射剤とからなるエアゾールであって、前記エアゾール原液と噴射剤の配合比率が20/80~50/50容量比であり、かつ、前記溶剤として、酢酸n-ブチルを100としたときの蒸発速度が5~20であるパラフィン系炭化水素を前記エアゾール原液に対し少なくとも90w/v%配合した、ガラス面ならびに網戸用の飛翔害虫防除用エアゾール。 (2)前記溶剤が、前記パラフィン系炭化水素に加え、更に芳香族系炭化水素を前記エアゾール原液に対し1.0~8.0w/v%含有する(1)に記載のガラス面ならびに網戸用の飛翔害虫防除用エアゾール。 (3)前記芳香族系炭化水素が、230~320℃の沸点を有するアルキルベンゼンである(2)に記載のガラス面ならびに網戸用の飛翔害虫防除用エアゾール。 (4)前記ピレスロイド系殺虫成分の少なくとも1種がシフルトリンである(1)ないし(3)のいずれか1に記載のガラス面ならびに網戸用の飛翔害虫防除用エアゾール。 (5)25℃における噴射力が、6~15gf/20cmである(1)ないし(4)のいずれか1に記載のガラス面ならびに網戸用の飛翔害虫防除用エアゾール。」 ウ 「【0019】 本発明のエアゾールは、比較的微細な噴霧粒子を広範囲に噴霧するために、25℃における噴射力を6~15gf/20cmの範囲に設定するのが好ましい。かかる噴射力によれば、対象処理面がガラス面であっても網戸等であってもエアゾール内容液を効率よく付着させることが可能となる。 また、本エアゾールは、その用途、対象害虫等に応じて、適宜バルブ、噴口、ノズル等の形状を選択することができるが、広角ノズルを用いるか、あるいは複数個のノズルを組み合わせて用いると効果的である。 【0020】 本発明は、こうして得られたエアゾールを、対象処理面にピレスロイド系殺虫成分として0.2mg/m2以上、好ましくは0.5~50mg/m2になるように噴霧することによって、ガラス窓やショーウィンドー等のガラス面を対象処理面とした場合には、薬液による処理面の曇りや汚れを生じることがなく、一方、網戸やサッシ等を対象処理面とした場合であっても、薬液付着量が十分確保され、害虫のこれらの対象処理面への飛来を1ケ月以上の長期間に亘って防止できるので極めて実用的である。 【0021】 本発明のガラス面ならびに網戸用の飛翔害虫防除用エアゾールの施用が有効な害虫としては、飛翔し、屋外において人に被害や不快感を与える害虫、例えば、アカイエカ、ヒトスジシマカ等の蚊類、ユスリカ類、イエバエ、チョウバエ、ブユ類、アブ類、ハチ類、ヨコバイ類などの各種飛翔害虫を例示できるが、もちろんこれらの害虫に限定されるものではない。なお、本エアゾールを施用した処理面は、飛翔害虫に対する飛来防止効果を示すのみならず、匍匐害虫、例えばアリ類、ダンゴムシ、ワラジムシなどの処理面への侵入を阻止できることも認められた。」 (2)甲3技術事項 上記(1)より、甲3には、次の技術的事項(以下、「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。 <甲3技術事項> 「窓ガラスや網戸等の対象処理面に噴霧することで、屋外からの害虫の飛来を防止できるガラス面ならびに網戸用の飛翔害虫防除用エアゾールにおいて、 エアゾール全体量あたり0.01~5.0w/v%のピレスロイド系殺虫成分と共に溶剤を含有するエアゾール原液と、ジメチルエーテル及び/又は液化石油ガスを含む噴射剤とからなるエアゾールであって、前記エアゾール原液と噴射剤の配合比率が20/80~50/50容量比であり、かつ、前記溶剤として、酢酸n-ブチルを100としたときの蒸発速度が5~20であるパラフィン系炭化水素を前記エアゾール原液に対し少なくとも90w/v%配合したものであり、 25℃における噴射力が、6~15gf/20cmであり、 対象処理面がガラス面であっても網戸等であってもエアゾール内容液を効率よく付着させることが可能となり、 本エアゾールを施用した処理面は、飛翔害虫に対する飛来防止効果を示すのみならず、匍匐害虫の処理面への侵入を阻止できること。」 4 甲4 (1)甲4の記載 甲4には、以下の記載がある。 ア「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、エアゾール噴射容器用ノズル付き押しボタンを有するエアゾール噴射容器とエアゾール噴射容器用ノズル付き押しボタンに関し、・・・」 イ「【0002】 【従来の技術】従来から、エアゾール噴射容器は、その使用が容易であり、内容物の種類を多様化して用途を広げて、駆虫用や身体への吹き付けにより筋肉刺激用に使用したり、整髪に使用したり、塗装に使用したり、あらゆる用途に利用されている。ところが、押しボタン式の噴射頭の噴射口から、直接、噴射させると拡散し易くて拡散させたい時には、よいのであるが、殺虫のために狭い区域に集中的に薬物を噴射したり、螺子孔、鍵穴、ミシン穴、アルミサッシの溝、その他の狭いところに液体或いは霧状物を注ぐ時に注出口を小さくし、そして、管状にして、長い流路を通り抜け、拡散させることを防ぐことが行なわれてきた。・・・」 (2)甲4技術事項 上記(1)より、甲4には、次の技術的事項(以下、「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。 <甲4技術事項> 「エアゾール噴射容器において、殺虫のために狭い区域に集中的に薬物を噴射したり、螺子孔、鍵穴、ミシン穴、アルミサッシの溝、その他の狭いところに液体或いは霧状物を注ぐ時に注出口を小さくし、そして、管状にして、長い流路を通り抜け、拡散させることを防ぐこと。」 5 甲5 (1)甲5の記載 甲5には、以下の記載がある。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は害虫駆除用冷却エアゾール装置に関し、より詳しくはムカデ、ゲジゲジ等の不快害虫を駆除するための冷却エアゾール剤を充填したエアゾール装置に関し、特にロングノズルを有するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、害虫駆除用冷却エアゾールはあまり知られていない。この害虫駆除用冷却エアゾールは通常のハエ、カ、ゴキブリ用の殺虫剤含有エアゾールでは殺虫しにくいムカデ等の大型の害虫を駆除するためのものであった。また、殺虫剤含有エアゾール缶にゴキブリ等の駆除手段としてロングノズルを取り付けたものは知られており、ゴキブリの潜んでいる狭い隙間、例えば冷蔵庫と壁または床の隙間や水屋、タンスと壁との隙間などにロングノズルを差し入れて、殺虫剤を隙間内に直接噴霧することが行われていた。しかし、害虫駆除用冷却エアゾール装置は直撃型であるため狭い隙間等に挿入して使用することがなく、一般にロングノズルを付けることはなかった。取り付けた場合も、従来の殺虫剤含有エアゾール缶用のロングノズルがそのまま使用されていた。」 イ 「【0015】本発明において、冷却剤としては代表的にはイソプロピルアルコール、LPG、液化ペンタンなどが利用され、液化ペンタンとしては、イソペンタン、n-ペンタンが使用されるが、冷却効果を有する作用があれば任意である。また、薬剤の有効成分の溶液を形成するのに溶剤を用いることができ、その溶剤としては、例えばn-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,3-ジメチルブタン、2,2-ジメチルブタン、3,3,4-トリメチルノナンシクロヘキサン、灯油(ケロシン)、ナフサ、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、流動パラフィンなどの石油系溶剤、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどの塩化炭化水素、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、などのアルコール類、ジエチルエーテルなどのエーテル誘導体および水などである。」 (2)周知技術 上記(1)より、次の2つの事項が、周知の技術(以下、それぞれを「周知技術1」及び「周知技術2」という。)であると認められる。 (周知技術1) 「エアゾール装置において、殺虫剤含有エアゾール缶にゴキブリ等の駆除手段としてロングノズルを取り付けること。」 (周知技術2) 「害虫駆除用冷却エアゾール装置において、冷却剤として、LPGが利用されること。」 6 甲6 (1)甲6の記載 甲6には、以下の記載がある。 ア「【請求項1】 ジメチルエーテルおよび水を含有し、ジメチルエーテル中に水が溶解されており、かつ均一相を形成するエアゾール組成物であって、ジメチルエーテルの気化熱により、水とジメチルエーテルとの凍結体を形成することを特徴とするエアゾール組成物。」 イ「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ジメチルエーテルと水とを必須の成分とし、かつ均一相を形成するエアゾール組成物であって、ジメチルエーテルの気化熱により、水とジメチルエーテルとの凍結体を形成することができるエアゾール組成物に関する。」 ウ「【0020】 前記ジメチルエーテルは、ジメチルエーテル中に溶解可能な濃度で水を配合することにより、その気化熱によって噴射対象物面上で、水とジメチルエーテルとの凍結体を形成することができる。ここでいう凍結体とは、噴射直後の噴射対象物面上で水がすでに凍結して付着しているもの、水とジメチルエーテルとの混合物がペースト状で付着したもの、ならびに噴射停止後、前記ペースト内に含まれているジメチルエーテルが気化し、水のすべて、あるいはほとんどすべてが凍結したものを含む。さらに、凍結体の温度は非常に低く、とくにペースト状態にあるときや、ペースト状態からジメチルエーテルが気化して水が凍結するときの温度は非常に低く、噴射対象物の表面温度を充分低下させることができ、また水の凍結体は非常に固いことから、氷の状態で長く付着させることができる。その結果、たとえば害虫や人体に噴射した場合、害虫や皮膚表面で凍結体が形成されるため、付着部分を目視で確認することができる。さらに、ジメチルエーテルは通常大気中に放出されると瞬時に気化するが、本発明のように水とのペースト状態とすることにより、ジメチルエーテルを噴射対象物面上で長く保持することができ、ジメチルエーテルを一時的に固定化する方法として用いることができる。その結果、ジメチルエーテルの気化熱による冷却効果だけでなく、その麻酔効果により、害虫の動きを鈍くし捕獲しやすくする、さらには、致死させることができるという効果を奏する。 【0021】 ジメチルエーテルの配合量は、本発明のエアゾール組成物において、好ましくは75~99.5重量%、より好ましくは85~99重量%、とくに好ましくは90~99重量%である。ジメチルエーテルの配合量が、99.5重量%を超えると、水の配合量が少なくなり過ぎて凍結体量が少なくなり付着部分を確認し難く、また、冷却効果を持続し難くなる傾向がある。また、75重量%未満であると、凍結体が得られにくくなる傾向がある。 【0022】 また、噴射面での付着性を向上させ、かつ冷却効果を持続させるために、前記ジメチルエーテルとともに、その気化熱によって凍結体が得られる範囲内で、ノルマルブタン、イソブタン、プロパンおよびこれらの混合物である液化石油ガス(LPG)や、沸点が高いノルマルペンタンやイソペンタン、ノルマルヘキサンなどの炭素数が5~6の炭化水素を混合することもできる。」 エ「【0041】 本発明のエアゾール組成物を殺虫用エアゾール製品として用いる場合の害虫の駆除は、本発明のエアゾール組成物を害虫に噴射して、水とジメチルエーテルとの凍結体を害虫体表面に付着させることにより、害虫を長時間低温状態に維持(たとえば、害虫の体表温度を少なくとも1分間以上、0℃以下に保持、好ましくは2分間以上、0℃以下に保持)して、さらにはジメチルエーテルの麻酔効果により害虫の動きを鈍くして捕獲する、または致死させることにより行う。」 (2)甲6技術事項 上記(1)より、甲6には、次の技術的事項(以下、「甲6技術事項」という。)が記載されていると認められる。 <甲6技術事項> 「ジメチルエーテルおよび水を含有し、ジメチルエーテル中に水が溶解されており、かつ均一相を形成するエアゾール組成物において、 ジメチルエーテルの気化熱により、水とジメチルエーテルとの凍結体を形成し、ジメチルエーテルは、ジメチルエーテル中に溶解可能な濃度で水を配合することにより、その気化熱によって噴射対象物面上で、水とジメチルエーテルとの凍結体を形成することができ、噴射面での付着性を向上させ、かつ冷却効果を持続させるために、前記ジメチルエーテルとともに、液化石油ガス(LPG)を混合するでき、エアゾール組成物を殺虫用エアゾール製品として用いる場合の害虫の駆除は、エアゾール組成物を害虫に噴射して、水とジメチルエーテルとの凍結体を害虫体表面に付着させることにより、害虫を長時間低温状態に維持して、さらにはジメチルエーテルの麻酔効果により害虫の動きを鈍くして捕獲する、または致死させること。」 7 甲7 (1)甲7の記載 甲7には、以下の記載がある。 ア「【請求項1】 ジメチルエーテルとミリスチン酸アルキルエステルとを含有し、 害虫の冷却状態を持続させて当該害虫を殺虫するための組成物。」 イ「【0001】 本発明は、害虫の冷却状態を持続させて当該害虫を殺虫するための組成物に関する。」 ウ「【0018】 本実施形態に係る組成物は、有効成分として、ジメチルエーテル及びハイドロフルオロオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物と、ミリスチン酸アルキルエステルとを含有する。例えば、第1実施形態に係る組成物は、ジメチルエーテルとミリスチン酸アルキルエステルとを含有する。第2実施形態に係る組成物は、ハイドロフルオロオレフィンとミリスチン酸アルキルエステルとを含有する。なお、本実施形態に係る組成物は、ジメチルエーテル及びハイドロフルオロオレフィンの双方を含有していてもよい。 【0019】 ジメチルエーテル及びハイドロフルオロオレフィンは、それ自体でもある程度の害虫に対する冷却作用を有しており、また、本実施形態に係る組成物において噴射剤としても作用するものである。そのため、本実施形態に係る組成物は、エアゾール組成物として噴霧して用いることが可能であり、その他の噴射剤を含有していなくてもよい。但し、本発明の効果を損なわない限り、公知の噴射剤を併用することを排除するものではない。」 エ「【0028】 本実施形態に係る組成物は、各種害虫に適用することができるが、とくにチャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ等のゴキブリなどの動きが俊敏な害虫、ムカデなどの大型害虫に対してとくに有効である。 【0029】 本実施形態に係る殺虫方法では、上記組成物を害虫に接触させることにより冷却状態を持続させて完全に死滅させる。例えば、噴射装置を備えた耐圧容器に上記組成物をエアゾール組成物として加圧充填して、害虫に向かって噴射することにより組成物を害虫に接触させて害虫を駆除することができる。」 (2)甲7技術事項 上記(1)より、甲7には、次の技術的事項(以下、「甲7技術事項」という。)が記載されていると認められる。 <甲7技術事項> 「有効成分として、ジメチルエーテル及びハイドロフルオロオレフィンからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物と、ミリスチン酸アルキルエステルとを含有する組成物において、 ジメチルエーテル及びハイドロフルオロオレフィンは、それ自体でもある程度の害虫に対する冷却作用を有しており、また、噴射剤としても作用するものであり、 組成物は、各種害虫、とくにゴキブリなどの動きが俊敏な害虫、に適用することができ、 上記組成物を害虫に接触させることにより冷却状態を持続させて完全に死滅させること、例えば、噴射装置を備えた耐圧容器に上記組成物をエアゾール組成物として加圧充填して、害虫に向かって噴射することにより組成物を害虫に接触させて害虫を駆除することができること。」 8 甲8 (1)甲8の記載 甲8には、以下の記載がある。 ア「【請求項1】 実質的に殺虫成分を含まず、かつ害虫麻酔剤として炭素数2~3の低級アルコールをエアゾール原液当たり70質量%以上含有するエアゾール原液と冷却剤としての液化ガスとを、容量比で50:50~15:85の比率で含有することを特徴とする、害虫の徘徊行動阻止用エアゾール。 ・・・ 【請求項3】 前記液化ガスが、ジメチルエーテル、液化石油ガス及びハイドロフルオロオレフィンからなる群より選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の害虫の徘徊行動阻止用エアゾール。」 イ「【0001】 本発明は、害虫の徘徊行動阻止用エアゾール、及びこれを用いた害虫の徘徊行動阻止方法に関するものである。」 ウ「【0008】 本発明者らは、害虫麻酔剤としての炭素数2~3の低級アルコールと冷却剤としての液化ガスとを特定の容量比率で含有するエアゾールを昆虫に接触させた場合に、両成分の相乗的作用に基づき、害虫の徘徊行動を阻止するうえで優れた効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。」 エ「【0020】 本発明における対象害虫としては、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、ヤマトゴキブリ等のゴキブリ類、アリ類、ムカデ類、クモ類やトコジラミ等の匍匐害虫の他、イエバエ、ヒメイエバエ、ノミバエ、ギンバエ等のハエ類、アカイエカ、ヒトスジシマカ等のカ類、ショウジョウバエ、チョウバエ、キノコバエ等のコバエ類やハチ類等の飛翔害虫に対してももちろん有効である。なかんずく、ゴキブリ類、アリ類、ムカデ類、クモ類やトコジラミ等の匍匐害虫に対して有用である。 また、本発明では、殺虫薬剤を使用していないことから、薬剤抵抗性をもった害虫に対しても同様に効果を発揮することが可能である。 【0021】 本発明の害虫の徘徊行動阻止用エアゾールにおいては、その徘徊行動阻止効果をより高めるために、20cm離れた対象面に噴射処理した時の噴射力を3gf以上(25℃)、好ましくは5gf以上とし、かつその時の体積積算10%噴霧粒子径を15~40μm(25℃)に設計するのが好適である。 噴射力が3gf未満では噴射の勢いが弱いために、害虫に塗布した際の冷却効果が低下する傾向が認められる。また、体積積算10%噴霧粒子径が15μm未満の場合、微細粒子の比率が多くなって害虫への付着効率が低下し、一方、40μmを超えると、逆に噴霧粒子が粗くなりすぎるために、噴霧された粒子が害虫に到達する前に床面に落下してしまう傾向が強くなり好ましくない。 かかるエアゾールを調製するにあたっては、上記噴射特性を満足すべく、適宜、噴射バルブや噴射ボタンなどを選定すればよい。」 (2)甲8技術事項 上記(1)より、甲8には、次の技術的事項(以下、「甲8技術事項」という。)が記載されていると認められる。 <甲8技術事項> 「実質的に殺虫成分を含まず、かつ害虫麻酔剤として炭素数2~3の低級アルコールをエアゾール原液当たり70質量%以上含有するエアゾール原液と冷却剤としての液化ガスとを、容量比で50:50~15:85の比率で含有し、前記液化ガスが、ジメチルエーテル、液化石油ガス及びハイドロフルオロオレフィンからなる群より選ばれる1種または2種以上である外注の徘徊行動阻止用エアゾールにおいて、 低級アルコールと液化ガスの、両成分の相乗的作用に基づき、害虫の徘徊行動を阻止するするものであって、 対象害虫としては、ゴキブリ類等の匍匐害虫であり、 徘徊行動阻止効果をより高めるために、20cm離れた対象面に噴射処理した時の噴射力を3gf以上(25℃)、好ましくは5gf以上とすること。」 9 甲9 (1)甲9の記載 甲9には、以下の記載がある。 ア 1枚目 (ア)「KINCHO コックローチ ゴキブリ トコジラミ 殺虫剤スプレー 450ml 水性タイプ」 (イ)「この商品について ・ピレスロイド系イミプロトリン(速効性)とフェノトリン(残効性)を配合した殺虫剤スプレーです。 ・直撃噴射や狭い隙間への噴射に便利なロングノズルと広角噴射の通常ノズルの2ウェイ噴射を採用しました。 ・ゴキブリ・・・の駆除に効果があります。 ・【有効成分】ピレスロイド(原液100mlに対し、ミプロトリン0.292w/v%、原液100mlに対しフェノトリン0.333w/v%) ・・・」 イ 2枚目 「商品の説明 商品紹介 噴射量を従来品の約3倍にし、噴射力を大幅にアップ。すばやいゴキブリを逃がしません。 有効成分はピイレスロイド系イミプロトリン(速効性)とフェノトリン(残効性)を配合。 直撃噴霧や狭いスキ間への噴射に便利なロングノズルと広角噴射の通常ノズルの2ウェイ噴射を採用。 原材料・成分 ピレスロイド(イミプロトリン、フェノトリン)」 ウ 3枚目 (ア)「商品の仕様、用途 ゴキブリ」 (イ)「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日 2007/12/10」 10 甲10 (1)甲10の記載 甲10には、以下の記載がある。 ア 1枚目 (ア)「2014.01.15 新商品情報」 (イ)「すばやいゴキブリも逃さない!『ゴキブリフマキラー ダブルジェット』がリニューアル! 優れた殺虫成分と広角噴射ダブルジェットで、狙い撃ち! マダニにも効く! 2014年3月中旬から全国の店頭にて順次発売」 イ 2枚目 「フマキラー株式会社(本社:東京都千代田区、社長:大下一朗)は、ゴキブリ用の殺虫剤『ゴキブリフマキラー ダブルジェット』をリニューアルして、2014年3月中旬から全国の店頭にて順次新発売します。・・・ ・・・ 本商品には、有効成分である「イミプロトリン」と「フェノトリン」を配合。殺虫成分「イミプロトリン」は、即効性に優れ、ゴキブリの動きを素早く止めるノックダウンの効果を発揮します。「フェノトリン」は、残効性が高いので、噴射した場所をゴキブリが通ることで動きを弱め、死に至らせる待ち伏せ効果を発揮。これらの成分をダブル配合することで、ゴキブリを確実に退治します。 ・・・」 11 甲11 (1)甲11の記載 甲11には、以下の記載がある。 ア 1枚目 「アース製薬 ゴキブリのいない空間を作るスプレー ゴキバリア 250ml」 イ 2枚面 「商品の説明 商品紹介 可燃性ガス不使用のゴキブリ用殺虫剤です。 台所やゴキブリの通り道、潜んでいそうな場所にスプレーしておくだけでゴキブリを駆除し、見かけなくなります。 効果は約2週間持続し、ゴキブリに直接噴射しても高い殺虫効果があります。 隙間にも噴射しやすいノズルを採用しています。医薬部外品。 原材料・成分 イミプロトリン(ピレスロイド系)0.5w/v%(プラルとして1.0w/v%)、フェノトリン(ピレスロイド系)0.2w/v%(原液量250ml)、無水エタノール、二酸化炭素」 ウ 3枚目 (ア)「商品の仕様、用途 ゴキブリ」 (イ)「Amazon.co.jpでの取り扱い開始日 2011/6/7」 12 甲12 (1)甲12の記載 甲12には、以下の記載がある。 ア 1頁 (ア)「1.製品及び会社情報 製品の名称 ゴキブリのいない空間を作るスプレー ゴキバリア ・・・ 作成/改訂年月日 2011年01月07日 2015年06月01日 最終改訂」 (イ)「3.組成、成分情報 単一製品・混合物の区別 混合物(防除用医薬部外品:エアゾール殺 虫剤) 成分及び含有量 〔殺虫原液〕 イミプロトリン0.5w/v%(プラルとし て1.0w/v%) フェノトリン0.2w/v% 無水エタノール 二酸化炭素 危険有害成分 ピレスロイド系殺虫剤(イミプロトリン/フ ェノトリン)配合品」 13 甲13 (1)甲13の記載 甲13には、以下の記載がある。 ア 85頁左欄 3~5行 「このように,スミスリンR○はネオピナミンR○などのノックダウン剤の致死力強化に用いられ,共力剤の代替としても有用である。」 イ 87頁 ・第10表(下線は、申立人が付与したもの。以下同様) 「 [図:0001417591000003.jpg] 」 上記「第10表 スミスリン○R,エクスミン○Rの家庭・防疫用製剤の現状」のうち、1段目、5段目及び7段目についての「製剤(有効成分)」、「適用害虫」及び「特徴」の記載は、それぞれ、以下のとおりである。 (ア)1段目 「空間用エアゾール剤 (ネオピナミン○R/スミスリン○R 油性・水性エアゾール)」 「ハエ、カ成虫 (ゴキブリ)」 「主として海外向けであるが,国内ではネオピナミンF/スミスリン○Rにて開発検討中」 (イ)5段目 「Pesguard○R製剤 (ネオピナミン○R/スミスリン○R 油剤,乳剤」 「ハエ、カ成虫 (ゴキブリ)」 「海外向けに限られる高濃度製剤であるが,安全,省力的に施用できる」 (ウ)7段目 「ゴキブリ用エアゾール剤 (ネオピナミン○R/エクスミン○R 油性エアゾール)」 「ゴキブリ,ノミ,ナンキンムシ,イエダニ」 「ゴキブリに対するフラッシング効果と速効性に優れる。ネオピナミン○R/スミスリン○R剤も開発検討中」 ウ 90頁 ・第16表 「 [図:0001417591000004.jpg] 」 14 甲14 (1)甲14の記載 甲14には、以下の記載がある。 ア 4頁 「 [図:0001417591000005.jpg] 」 第6 取消理由通知<決定の予告>(令和5年9月8日付け)に記載した取消し理由についての当審の判断 進歩性欠如について 1 対比 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 (1)甲1発明の「害虫駆除成分」は、本件訂正発明1の「害虫防除剤」に相当する。 甲1発明の「害虫駆除成分、溶剤、及び噴射剤を含有してなる」ことは、本件訂正発明1の「害虫防除剤を含む」ことに相当する。 甲1発明の「エアゾールを噴霧する」ことは、本件訂正発明1の「エアゾールを噴霧する」ことに相当する。 (2)第5の1(1)ウに示されているとおり、ノズル部分の形態は伸縮可能なものであってもよく、伸縮可能な場合、ノズル長は、伸びた状態のものであるとの記載をふまえると、甲1発明の「ノズル長は10cmであ」ることは、本件訂正発明1の「ノズルの直線部長が80~150mm」であることに相当する。 (3)甲1発明の「ロングノズルの外部先端の内径が噴口径に相当し、」「噴口径は、0.6、0.8、1、1.5または2mmである」ことは、本件訂正発明1の「ノズル内径が0.5~2.0mmかつ噴霧口径が0.5~2.0mmであ」ることに相当する。 (4)甲1発明の「エアゾール缶」に「内包」された「エアゾール」は、「害虫駆除成分」を含有していることは明らかである。 よって、甲1発明の「ロングノズル有りのアクチュエーターを装着し」ていて「エアゾール」を内包する「エアゾール缶」は、本件訂正発明1の「害虫防除エアゾール装置」に相当する。 (5)甲1発明の「イエバエ」と、本件訂正発明1の「ゴキブリ類」とは、「害虫」である点で共通する。また、甲1発明の噴霧の対象が「イエバエ」であることは明らかである。 そうすると、甲1発明の、「エアゾールを噴霧するものであ」る「エアゾール缶」と、本件訂正発明1の「ゴキブリ類を対象として噴霧する害虫防除エアゾール装置」とは、「害虫を対象として噴霧する害虫防除エアゾール装置」である点で共通する。 そうすると、本件訂正発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 「害虫防除剤を含むエアゾールを害虫を対象として噴霧する害虫防除エアゾール装置であって、ノズルの直線部長が80~150mm、ノズル内径が0.5~2.0mmかつ噴霧口径が0.5~2.0mmである害虫防除エアゾール装置。」 (相違点1) 「害虫防除エアゾール装置」(エアゾール缶)が「噴霧」する「対象」である害虫について、本件訂正発明1では、「ゴキブリ類」であるのに対して、甲1発明では、「イエバエ」である点。 (相違点2) 「エアゾールの噴射圧」について、 本件訂正発明1では、「ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置におけるエアゾールの噴射圧が8~14gfである」事項が特定されているのに対し、甲1発明では、エアゾールの噴射圧が特定されていない点。 (相違点3) 「害虫防除剤」について、本件訂正発明1では、「イミプロトリンとフェノトリンの混合物」であるのに対して、甲1発明では、「ネオピナミンフォルテ」である点。 2 検討・判断 事案に鑑み、相違点1及び2をまとめて検討する。 (1)相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成のエアゾールの噴射圧の数値範囲の技術的意義について 本件明細書には、以下の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、従来のロングノズルを備えた害虫防除エアゾール装置を用いても、害虫に害虫防除剤を噴霧してから害虫が死に至るまでの間に、広範囲にわたって動き回って暴れることや、家具等の隙間に逃げ込んでしまう場合があった。このように害虫を防除するまでに害虫が暴れることは、使用者が不快感や不安を抱くことにつながり、害虫に対して効率的に害虫防除剤を噴霧することも難しくなってしまう。 【0006】 本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、害虫の行動を停止させる効果が得られる害虫防除エアゾール装置を提供することを目的とする。」 「【0038】 エアゾール組成物の噴射圧が8gf未満である場合、エアゾール製品1は、噴霧孔42から30cm離れた位置にいる対象害虫にエアゾール組成物を噴射すると、害虫の行動を停止させる効果が低減する。一方、噴射圧が14gfを超える場合も、エアゾール製品1は、噴霧孔42から30cm離れた位置にいる対象害虫にエアゾール組成物を噴射すると、害虫の行動を停止させる効果が低減する。 【0039】 本実施形態のエアゾール製品1は、ロングノズル4が取り付けられることにより、比較的遠くにいる対象害虫に対しても、所定の噴射圧でエアゾール組成物を噴射することができる。この際の噴射圧は、対象害虫の行動を停止させて殺虫する目的において適切であり、エアゾール製品1は所望の殺虫効果を充分に発揮できる。なお、噴射圧の測定は、たとえばデジタルフォースゲージ(型番:DS2-2N (株)イマダ製)を用いることにより測定し得る。」 本願発明の課題は、本件明細書の上記段落【0005】、【0006】に示されているとおり、従来、ロングノズルを備えた害虫防除エアゾール装置を用いても、害虫に害虫防除剤を噴霧してから害虫が死に至るまでの間に、広範囲にわたって動き回って暴れることや、家具等の隙間に逃げ込んでしまう場合に、使用者が不快感や不安を抱き、害虫に対して効率的に害虫防除剤を噴霧することが困難となっていたことをふまえたものであって、害虫の行動を停止させる効果を得られる害虫防除エアゾール装置を提供することである。 また、本件明細書の上記段落【0038】及び【0039】には、エアゾール組成物の噴射圧に関して、噴霧孔42から30cm離れた位置にいる対象害虫にエアゾール組成物を噴射すると、噴射圧が8gf未満である場合及び噴射圧が14gfを超える場合は効果が低減することが示されているとともに、本実施形態における噴射圧が、対象害虫の行動を停止させて殺虫する目的において適切であることが示されている。 このようなことから、相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成のエアゾールの噴射圧の数値範囲、すなわち、「ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置におけるエアゾールの噴射圧が8~14gfである」ことは、噴霧孔から30cm離れた位置にいる対象害虫にエアゾール組成物を噴射した場合に、害虫の行動を停止させて殺虫するという技術的意義を有していると理解でき、しかも、前記のとおり害虫の行動を停止させて殺虫することから、飛翔状態にない害虫を対象としていると理解できる。 (2)相違点1及び2についての検討・判断 ア 甲1発明の「ロングノズル」の「ノズル長」、「噴口径」は、それぞれ本件訂正発明1の「ノズル」の対応する部位(「直線部長」、「ノズル内径」及び「噴霧口径」)の数値範囲を満たすものであり、また、エアゾールの噴射圧に影響すると考えられる容器内圧〔ゲージ圧(25℃)〕は、0.4MPaであって、本件明細書に記載の実施例1~7の製品内圧0.39、0.44(MPa at 25℃)とほぼ同程度のものである。 しかしながら、甲1発明は、上記第5の1(2)のとおり、ロングノズルから噴射されるエアゾールの噴射圧については何ら特定されておらず、また、エアゾールの噴射圧を調整することでイエバエの行動を停止させて殺虫することについては記載も示唆もされていない。 そして、前記(1)に示したとおり、相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成における技術的意義に鑑みると、甲1発明の「ロングノズル」の「ノズル長」、「噴口径」が、それぞれ本件訂正発明1の「ノズル」の対応する部位の数値範囲を満たし、また、エアゾールの容器内圧〔ゲージ圧(25℃)〕が、本件明細書に記載の実施例1~7の製品内圧0.39、0.44(MPa at 25℃)とほぼ同程度のものであるからといって、甲1発明のロングノズルの外部先端から噴射されるエアゾールの噴射圧が、本件訂正発明1の噴射圧と一致すること、すなわち、「ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置におけるエアゾールの噴射圧が8~14gfである」数値範囲を満たす蓋然性が高いということはできず、甲1発明において、相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成とすることが、適宜なし得る設計事項程度のものということはできない。 イ 甲2技術事項には、コバエ防除用エアゾール製品において、噴射力を2~15gf/15cmの範囲に設定することが記載されているものの、甲2技術事項の「噴射力」についての前記数値範囲は、噴射力が15gf/15cmを超えると、噴射の勢いが強過ぎるためにコバエが吹き飛んでしまい、殺虫効果に支障を来たし、噴射力が2gf/15cmより低いと噴射の勢いが弱いためにコバエへの薬液付着量が減少して殺虫効果の低下を招く恐れが避けられないことから特定されたものであって、エアゾール組成物を噴射した場合に、エアゾール組成物を噴射する部位から30cm離れた位置にいる対象害虫の行動を停止させて殺虫するために特定されたものではない。 よって、甲1発明において、甲2技術事項を参酌しても、甲1発明のエアゾールの噴射圧を、害虫の行動を停止させて殺虫できるように、相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成とすること、すなわち、「対象」である害虫を「ゴキブリ類」とし、「ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置におけるエアゾールの噴射圧が8~14gfである」数値範囲にすることが、当業者が容易になし得たことということはできない。 ウ 甲3技術事項には、上記第5の3(2)のとおり、ガラス面ならびに網戸用の飛翔害虫防除用エアゾールにおいて、「25℃における噴射力が、6~15gf/20cm」の範囲に設定することが記載されているものの、甲3技術事項の噴射力についての前記数値範囲は、エアゾールを噴射した場合に、エアゾールを噴射する部位から30cm離れた位置にいるゴキブリ等の対象害虫の行動を停止させて殺虫するために特定されたものではない。 よって、甲1発明において、甲3技術事項を参酌しても、甲1発明のエアゾールの噴射圧を、害虫の行動を停止させて殺虫できることができるように、相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成とすること、すなわち、「対象」である害虫を「ゴキブリ類」とし、「ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置におけるエアゾールの噴射圧が8~14gfである」数値範囲にすることが、当業者が容易になし得たことということはできない。 エ 甲8技術事項には、上記第5の8(2)のとおり、徘徊行動阻止用エアゾールにおいて、「20cm離れた対象面に噴射処理した時の噴射力を3gf以上(25℃)、好ましくは5gf以上」の範囲に設定することが記載されているものの、甲8技術事項の噴射力についての前記数値範囲は、エアゾールを噴射した場合に、エアゾールを噴射する部位から30cm離れた位置にいる対象害虫の行動を停止させて殺虫するために特定されたものではない。 よって、甲1発明において、甲8技術事項を参酌しても、甲1発明のエアゾールの噴射圧を、害虫の行動を停止させて殺虫できることができるように、相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成とすること、すなわち、「対象」である害虫を「ゴキブリ類」とし、「ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置におけるエアゾールの噴射圧が8~14gfである」数値範囲にすることが、当業者が容易になし得たことということはできない。 オ 甲4技術事項、周知技術1、周知技術2、甲6技術事項及び甲7技術事項には、上記第5の4(2)、5(2)、6(2)及び7(2)のとおり、ゴキブリ等の害虫を殺虫するためのエアゾール噴射容器、又は、エアゾール組成物が記載されているものの、「エアゾールの噴射圧」については記載も示唆もされていないから、甲1発明に、甲4技術事項、周知技術、甲6技術事項及び甲7技術事項を適用しても、相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成とすることはできない。 カ 甲9~14には、上記第5の9~14のとおり、ゴキブリ等の害虫を殺虫するためのエアゾール噴射容器又はエアゾール組成物についての技術事項が記載されているものの、「エアゾールの噴射圧」については記載も示唆もされていないから、甲1発明に、甲9~14に記載された技術事項を適用しても、相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成とすることはできない。 キ 甲2~14に記載された技術事項の組み合わせについて 上記イ~カのとおり、甲2~14のいずれにも、ノズルから噴射されるエアゾールの噴射圧を、ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置において8~14gfに調整し、もってゴキブリ類等の害虫の行動を停止させて殺虫することについては記載も示唆もされていないから、甲1発明において、甲2~14に記載された技術事項をいかように参酌または組み合わせても、相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成とすることが、当業者が容易になし得たことということはできない。 なお、甲1技術事項及び周知技術1及び2は、上記第5の1(3)及び5(2)のとおりであって、「エアゾールの噴射圧」については記載も示唆もされていないから、これらの技術事項を参酌しても、相違点1及び2に係る本件訂正発明1の構成の容易想到性についての結論を左右するものではない。 3 申立人の主張 申立人は、本件特許発明においては、噴射圧の測定方法が何ら規定されておらず、しかも、本件特許発明には、噴射距離を30cmに規定することの技術的意義は、何ら示されていない。そうである以上、噴射距離を適宜設定することは、当業者による通常の創作能力の発揮であり、設計事項に過ぎないといえるから、甲第1号証において噴射圧を適宜設定するにあたり、噴射距離として30cmを採用し、甲第2号証及び甲第3号証の実施例に記載された噴射圧8~14gfに設定することに何ら困難性は認められない旨主張する。(申立書22頁22行-23頁9行) しかしながら、本件特許明細書の段落【0045】には、「噴射圧の測定は、25℃の室温下で噴霧孔から30cmの距離からデジタルフォースゲージ(型番:DS2-2N(株)イマダ製)に装着したφ40mmの円状の平板の中心に向かってエアゾール組成物を5秒間噴射した際の最大値を噴射圧とし、平均を算出した」等の記載があり、噴射圧の測定方法について記載されている。また、噴射距離を30cmとすることについての直接的な記載はないものの、本件特許明細書の段落【0037】には「具体的には、ロングノズル4は、噴霧孔42から30cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧が8~14gfとなるように、噴射圧を調整することが好ましい。」と記載され、段落【0038】には「噴霧孔42から30cm離れた位置にいる対象害虫にエアゾール組成物を噴射・・・」と記載されていることをふまえると、「噴射距離を30cm」規定したのは、ロングノズルの噴霧孔から30cm離れた位置にいる害虫を対象としていることと理解できる。 また、甲第2号証及び甲第3号証の実施例に記載された噴射圧の数値範囲は、上記第6の2(2)イ及びウで説明したとおり、エアゾールを噴射した場合に、エアゾールを噴射する部位から30cm離れた位置にいる対象害虫の行動を停止させて殺虫するために特定されたものではないから、甲1発明において、甲第2号証及び甲第3号証の実施例に記載された噴射圧を参酌しても、「ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置におけるエアゾールの噴射圧が8~14gfである」ように設定することに何ら困難性は認められないということはできない。 したがって、申立人の主張を採用することはできない。 4 小括 したがって、相違点3を検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明、甲2技術事項~甲8技術事項、甲9~甲14に記載された技術事項、甲1技術事項、周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 第7 取消理由通知<決定の予告>において採用しなかった特許異議申立理由について 1 新規性欠如について (1)本件訂正発明1について ア 対比・検討・判断 本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、一致点及び相違点は、上記第6の2のとおりであり、少なくとも相違点1及び2は、上記第6の2に示したとおり実質的な相違点である。 イ 小括 したがって、本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。 2 サポート要件違反について (1)申立人の主張 申立人は以下の主張をしている。(申立書31頁13-17行、32頁8-12) ア 主張ア エアゾール原液と噴射剤との混合比率、エアゾール原液の溶剤の種類、害虫防除剤の種類、製品内圧、噴射量、及び噴射態様に関して何ら規定していない本件特許発明の範囲まで、発明の詳細否説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできず、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではない。 イ 主張イ ノズルの直線部長を「80~130mm」、ノズルの内径を「1.0~1.5mm」、かつ噴霧口径を「1.0~1.5mm」に限定していない本件特許発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできず、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではない。 よって、本件特許発明は、特許法第36条6項1号に規定されるサポート要件を満たしていない。 (2)判断基準 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (3)本件明細書の発明の詳細な説明の記載 ア 「【0002】 従来、害虫を防除するための害虫防除剤を噴射する害虫防除エアゾール装置が知られている。このような害虫防除エアゾール装置において、噴霧孔の位置を害虫に近づけるとともに、害虫から離れた位置からエアゾール組成物を噴射するロングノズルを用いるものも提案されている(例えば特許文献1)。 【0003】 このようなロングノズルを備えた害虫防除エアゾール装置では、家具等の隙間にいる害虫を駆除することや、害虫が苦手な使用者と害虫との距離を確保すること、噴霧孔から害虫までの距離が大きいと舞い散りが大きく対象に当てるのが困難な殺虫剤や冷却エアゾールを効果的に噴霧することなどの利点があった。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】国際公開2005/013685号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、従来のロングノズルを備えた害虫防除エアゾール装置を用いても、害虫に害虫防除剤を噴霧してから害虫が死に至るまでの間に、広範囲にわたって動き回って暴れることや、家具等の隙間に逃げ込んでしまう場合があった。このように害虫を防除するまでに害虫が暴れることは、使用者が不快感や不安を抱くことにつながり、害虫に対して効率的に害虫防除剤を噴霧することも難しくなってしまう。 【0006】 本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、害虫の行動を停止させる効果が得られる害虫防除エアゾール装置を提供することを目的とする。」 イ 「【0031】 ロングノズル4は、噴射部材3(図3参照)に取り付けられる基端部41と、噴霧孔42と、基端部41および噴霧孔42を接続するノズル部43とからなる。基端部41、噴霧孔42およびノズル部43は、いずれも内部にエアゾール組成物が通過し得る管路を有しており、それぞれの管路は、互いに連通してロングノズル4の治具内通路を形成している。ノズル部43のうち内径が一定である管路の長さを直線部長Lとする。 ・・・ 【0035】 また、ノズル部43の内径d4は0.5~2.0mmの範囲であり、より好ましくは0.7~1.7mmの範囲である。また、噴霧孔42の内径d5は0.5~2.0mmの範囲であり、より好ましくは0.7~1.7mmの範囲である。ノズルの直線部長Lは80~150mmの範囲であり、より好ましくは90~140mmの範囲である。 【0036】 ノズル部43の内径と噴霧孔42の内径、直線部長をこの範囲に調整することにより、エアゾールを害虫に噴霧した際に害虫の行動を停止させる効果を得ることができる。エアゾール製品1は、ロングノズル4が取り付けられていない状態と比較して、対象害虫に対してより離れた位置からエアゾール組成物を噴射することができる。 【0037】 ここで、本実施形態のロングノズル4は、エアゾール組成物の噴射圧を調整し得る。具体的には、ロングノズル4は、噴霧孔42から30cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧が8~14gfとなるように、噴射圧を調整することが好ましい。 害虫防除エアゾール装置のエアゾール容器の内圧は特に限定されないが、0.3~0.5MPa(25℃)であることが好ましく、0.35~0.45MPa(25℃)であることがより好ましく、前記範囲であれば適切な勢いで害虫に対してエアゾール組成物を噴射することができる。 【0038】 エアゾール組成物の噴射圧が8gf未満である場合、エアゾール製品1は、噴霧孔42から30cm離れた位置にいる対象害虫にエアゾール組成物を噴射すると、害虫の行動を停止させる効果が低減する。一方、噴射圧が14gfを超える場合も、エアゾール製品1は、噴霧孔42から30cm離れた位置にいる対象害虫にエアゾール組成物を噴射すると、害虫の行動を停止させる効果が低減する。 【0039】 本実施形態のエアゾール製品1は、ロングノズル4が取り付けられることにより、比較的遠くにいる対象害虫に対しても、所定の噴射圧でエアゾール組成物を噴射することができる。この際の噴射圧は、対象害虫の行動を停止させて殺虫する目的において適切であり、エアゾール製品1は所望の殺虫効果を充分に発揮できる。なお、噴射圧の測定は、たとえばデジタルフォースゲージ(型番:DS2-2N (株)イマダ製)を用いることにより測定し得る。 【0040】 ロングノズル4の治具内通路内の断面積および治具内通路の長さが適宜設計されることにより、エアゾール組成物の噴射圧は、調整され得る。例えば、治具内通路内の断面積が小さく、または治具内通路の長さが短く設計されることにより、噴射圧は、高められ得る。一方、治具内通路内の断面積が大きく、または治具内通路の長さが長く設計されることにより、噴射圧は、低められ得る。 【0041】 以上、本実施形態のエアゾール製品1は、ロングノズル4が取り付けられることにより、ロングノズル4が取り付けられていない状態と比較して、対象害虫に対してより離れた位置からエアゾール組成物を噴射することができる。また、エアゾール製品1は、ロングノズル4が取り付けられることにより、噴霧孔42から30cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧が8~14gfとなるように調整されている。このような噴射圧に調整されるようエアゾール組成物を噴射することにより、害虫の行動を効果的に停止させて殺虫することができる。」 (4)上記主張についての検討・判断 上記(2)で示した基準に基づいて検討・判断する。 上記主張ア及びイを合わせて検討する。 ア 本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0002】~【0005】の記載からみて、本件訂正発明の課題は、段落【0005】の「従来のロングノズルを備えた害虫防除エアゾール装置を用いても、害虫に害虫防除剤を噴霧してから害虫が死に至るまでの間に、広範囲にわたって動き回って暴れることや、家具等の隙間に逃げ込んでしまう場合があ」って、「このように害虫を防除するまでに害虫が暴れることは、使用者が不快感や不安を抱くことにつながり、害虫に対して効率的に害虫防除剤を噴霧することも難しくな」ることであ」り、本件訂正発明は、そのような課題を解決するために「害虫の行動を停止させる効果が得られる害虫防除エアゾール装置を提供すること」を目的としていると認められる。 イ 発明の詳細な説明の段落【0037】には、「ロングノズル4は、噴霧孔42から30cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧が8~14gfとなるように、噴射圧を調整すること」と記載され、段落【0039】には、「この際の噴射圧は、対象害虫の行動を停止させて殺虫する目的において適切であり、エアゾール製品1は所望の殺虫効果を充分に発揮できる」と記載されている(上記(3)イ)。これらの記載をふまえれば、対象害虫の行動を停止させる手段は、ノズルから噴射されるエアゾールの噴射圧を調整すること、すなわち、「ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置における前記エアゾールの噴射圧が8~14gf」であると理解できる。 ウ なお、発明の詳細な説明の段落【0035】には、「ノズル部43の内径d4は0.5~2.0mmの範囲であり・・・、噴霧孔42の内径d5は0.5~2.0mmの範囲であり、・・・。ノズルの直線部長Lは80~150mmの範囲であ」ることが記載され、段落【0036】には、「ノズル部43の内径と噴霧孔42の内径、直線部長をこの範囲に調整することにより、エアゾールを害虫に噴霧した際に害虫の行動を停止させる効果を得ることができる」ことが記載されており、申立人が主張イで指摘するノズルの寸法、すなわち、ノズルの直線部長を「80~130mm」、ノズルの内径を「1.0~1.5mm」、かつ噴霧口径を「1.0~1.5mm」に限定しなくても、請求項1に記載のノズルの数値範囲で適宜調整することで、「噴射圧を調整」し、「エアゾールを害虫に噴霧した際に害虫の行動を停止させる」ことができると理解できる。 エ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1が上記(3)アに示した本件訂正発明の課題を解決できることは明らかである。 したがって、本件訂正発明1は、サポート要件を満たす。 3 実施可能要件違反について (1)申立人の主張 申立人は以下の主張をしている。(申立書33頁6~11、19~21行、34頁18~27行) ア 主張ア 当業者は、本件特許発明における上記噴霧孔から30cm離れた位置に存在している害虫に対してエアゾール組成物を噴霧すること以外の噴霧態様について、本件特許発明が目的とする作用効果を奏する態様で用いることができるとはいえない、すなわち、何らかの技術上の意義のある態様で使用することができるとはいえないため、本件特許発明を「使用できる」とはいえない。 イ 主張イ 実施例1~31に記載の特定の態様以外の態様について、当業者は本件発明が目的とする作用効果を奏することを認識できないため、本件特許発明を「使用できる」とはいえない。 ウ 主張ウ 「噴霧孔から30cm離れた位置における噴射圧が8~14gfである」との構成をなすためには、ノズルの直線部長、内径、及び噴霧口径を規定することに加えて、これら以外の要因を規定することも必要であると認められるところ、本件特許明細書には、これらの要因をどのように設定すればよいのかという噴射圧の設定方法について、全く記載されていないから、本件特許発明の実施にあたり、多数の害虫防除エアゾール装置を製造し、噴霧孔から30cmにおける噴射圧を確認するという当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を行う必要がある。 よって、本件特許発明は、特許法第36条4項1号に規定される実施可能要件を満たしていない。 (2)判断基準 本件訂正発明1は物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 (3)上記主張についての検討 上記(2)で示した判断基準に基づいて検討・判断する。 本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0014】~【0021】には、エアゾール組成物についての具体例が示されており、段落【0035】~【0037】には、使用されるロングノズルが所定の範囲で調整されること、ロングノズルによってエアゾール組成物の噴射圧を調整することができること、エアゾール容器の内圧を適宜選定することで、適切な勢いで、すなわち、ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧が8~14gfとなるように、害虫に対してエアゾール組成物を噴射できることが記載されている。さらに、発明の詳細な説明の段落【0053】の【表2】(実施例8、9、12、13、24~31)には、具体的に、供試虫が、ゴキブリ類(ドミノローチ、チャバネゴキブリ)であって、害虫防除剤が、イミプロとリンとフェノトリンの混合物である例が示されている。 これらの本件明細書の発明の詳細な説明の記載を考慮すれば、本件訂正発明1の「害虫防除エアゾール装置」を生産し、使用するうえで、当業者に過度の試行錯誤を要するものではない。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明1について、実施可能要件を満たす。 4 明確性要件違反について (1)申立人の主張 申立人は以下の主張をしている。(申立書35頁10~20行) 「ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧が8~14gfである」と規定されているのみであり、噴射圧の測定方法は全く規定されていないので、第三者が害虫防除エアゾール装置を実施するにあたり、噴射圧を本件特許発明の数値範囲外で設定し本件特許発明を避けようとしても、測定方法によって噴射圧の値が異なるため、発明の外縁をなす噴射圧を確定することができず、不測の不利益を被ることは明らかである。 以上により、本件特許発明は、特許法第36条6項2号に規定される明確性要件を満たしていない。 (2)上記主張についての検討 本件明細書の段落【0039】、【0045】には、「ノズルの先端に設けられた噴霧孔から30cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧」を測定する装置が具体的に示されるとともに、「噴射圧」の定義が明らかにされている。 したがって、本件明細書に、噴射圧の測定方法が規定されており、第三者が害虫防除エアゾール装置を実施するにあたり、不測の不利益を被ることはいえない。 したがって、本件訂正発明1は、明確性要件を満たしている。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知<決定の予告>に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701312

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