特許異議申立
2023-700361
被覆物用のダニ防除装置及びダニ防除装置を用いたダニ防除方法
- 審判番号
- 2023-700361
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-082640
- 登録番号
- 7152175
- 請求日
- 2023年04月11日
- 審決日
- 2024年06月25日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】レック株式会社
- 【権利者代理人】田中 康子
- 【異議申立人】勝間 いずみ
- 審判長/審判官
- 審判長 有家 秀郎
- 審判官 北川 創
- 審判官 ▲高▼橋 祐介
- 分類
- P1651.121-YAA(A01M) / P1651.536-YAA(A01M) / P1651.537-YAA(A01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7152175号発明「被覆物用のダニ防除装置及びダニ防除装置を用いたダニ防除方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7152175号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7152175号の請求項1~4、6に係る特許を維持する。
特許第7152175号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7152175号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成30年4月23日(優先権主張 平成29年4月25日)の出願であって、令和4年10月3日に特許権の設定登録がされ、同月12日に特許掲載公報が発行されたものである。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年 4月11日(受理日):特許異議申立人勝間いずみ(以下「申
立人」という。)による請求項1~6
に係る特許に対する特許異議の申立て
令和5年 6月20日付け :取消理由通知書
令和5年 8月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書
の提出
令和5年10月30日(受理日):申立人による意見書の提出
令和5年11月22日付け :取消理由通知書(決定の予告)
令和6年 1月18日 :特許権者と審判官の面接
令和6年 1月29日 :特許権者による意見書及び訂正請求書
の提出
令和6年 2月15日付け :令和6年 1月29日提出の訂正請求
書に対する手続補正指令
令和6年 3月12日 :特許権者による手続補正書(方式)の
提出
令和6年 5月 9日(受理日):申立人による意見書の提出
なお、令和5年8月25日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正請求について
令和6年1月29日に提出され、令和6年3月12日提出の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)によってなされた、訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の適否について検討する。
1 本件訂正請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものである。
2 訂正事項
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
なお、訂正箇所には、合議体が下線を付した。
(1) 訂正事項1(請求項1の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
特許請求の範囲の請求項1を、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で1.3~50mg/m2の処理量で布材の表面から燻煙処理することを特徴とする、被覆物のダニ防除方法(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)。」に訂正する。
ここで、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物」に係る訂正事項を訂正事項1-1とし、
「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを」に係る訂正事項を訂正事項1-2とし、
「理論値で1.3~50mg/m2の処理量で」に係る訂正事項を訂正事項1-3とし、
「布材の表面から燻煙処理することを特徴とする」に係る訂正事項を訂正事項1-4とし、
「(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)」に係る訂正事項を訂正事項1-5とする。
以降、訂正事項1-1乃至1-5を総称して単に訂正事項1という。
(2) 訂正事項2(請求項2の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
特許請求の範囲の請求項2を、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で12.5~50mg/m2の処理量で布材の表面から燻煙処理することを特徴とする、被覆物のダニ防除方法(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)。」に訂正する。
ここで、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、」に係る訂正事項を訂正事項2-1とし、
「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、」に係る訂正事項を訂正事項2-2とし、
「理論値で12.5~50mg/m2の処理量で」に係る訂正事項を訂正事項2-3とし、
「布材の表面から燻煙処理することを特徴とする」に係る訂正事項を訂正事項2-4とし、
「被覆物のダニ防除方法。」に係る訂正事項を訂正事項2-5とし、
「(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)」に係る訂正事項を訂正事項2-6とする。
以降、訂正事項2-1乃至2-6を総称して単に訂正事項2という。
(3) 訂正事項3(請求項3の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
特許請求の範囲の請求項3を、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で1.3~12.5mg/m2の処理量で布材の表面から燻煙処理することを特徴とする、被覆物のダニ防除方法(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)。」に訂正する。
ここで、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、」に係る訂正事項を訂正事項3-1とし、
「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、」に係る訂正事項を訂正事項3-2とし、
「理論値で1.3~12.5mg/m2の処理量で」に係る訂正事項を訂正事項3-3とし、
「布材の表面から燻煙処理することを特徴とする」に係る訂正事項を訂正事項3-4とし、
「被覆物のダニ防除方法」に係る訂正事項を訂正事項3-5とし、
「(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)」に係る訂正事項を訂正事項3-6とする。
以降、訂正事項3-1乃至3-6を総称して単に訂正事項3という。
(4) 訂正事項4(請求項4の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
特許請求の範囲の請求項4を、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で1.3~12.5mg/m2の処理量で布材の表面から燻煙処理することを特徴とする、被覆物のダニの産卵抑制方法(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)。」に訂正する。
ここで、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物」に係る訂正事項を訂正事項4-1とし、
「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを」に係る訂正事項を訂正事項4-2とし、
「理論値で1.3~12.5mg/m2の処理量で」に係る訂正事項を訂正事項4-3とし、
「布材の表面から燻煙処理することを特徴とする」に係る訂正事項を訂正事項4-4とし、
「(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)」に係る訂正事項を訂正事項4-5とする。
以降、訂正事項4-1乃至4-5を総称して単に訂正事項4という。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を、「前記燻煙処理を、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを含有するダニ防除組成物と、前記ダニ防除組成物を収容した全量噴射型容器と、を備えるダニ防除装置により行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。」に訂正する。
3 訂正の適否について
(1) 訂正の目的、特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと、及び願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
ア 訂正事項1について
(ア) 訂正の目的について
訂正事項1-1は、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、」の記載により、訂正前の請求項1の「一層以上の布材で覆われた被覆物」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項1-2及び1-5は、「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを」の記載と、「(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)」の記載とにより、訂正前の請求項1の「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項1-3は、「理論値で1.3~50mg/m2の処理量で」の記載により、訂正前の請求項1の「1.3~50mg/m2の処理量で」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項1-4は、「布材の表面から燻煙処理することを特徴とする」の記載により、訂正前の請求項1の「燻煙処理することを特徴とする」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
以上によれば、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項1は、訂正前の請求項1を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1-1は、【0051】、請求項5の記載に基づく構成である。
訂正事項1-2は、【0018】、【0079】、【0080】の記載に基づく構成である。
訂正事項1-3は、【0079】、【0080】、【0083】の記載に基づく構成である。
訂正事項1-4は、【0079】、【0080】、【0082】、【0083】の記載に基づく構成である。
訂正事項1-5は、【0018】、【0079】、【0080】、【0082】の記載及び【0087】~【0090】の【表1】~【表4】に基づく構成である。
よって当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正事項2
(ア) 訂正の目的について
訂正後の請求項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する関係にあるところ、訂正事項2-5は、当該関係を解消して独立形式に改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
訂正事項2-1は、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、」の記載により、訂正前の請求項2が引用する請求項1における「一層以上の布材で覆われた被覆物」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項2-2及び2-6は、「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを」の記載と、「(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)」の記載とにより、訂正前の請求項2の「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項2-3は、「理論値で12.5~50mg/m2の処理量で」の記載により、訂正前の請求項2の「12.5~50mg/m2」の処理量を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項2-4は、「布材の表面から燻煙処理することを特徴とする」の記載により、訂正前の請求項2が引用する請求項1の「燻煙処理することを特徴とする」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
以上によれば、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項2は、訂正前の請求項2を限定するとともに、請求項1の記載を引用するものであったものを独立形式に改めるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2-1は、【0051】、請求項5の記載に基づく構成である。
訂正事項2-2は、【0018】、【0079】、【0080】の記載に基づく構成である。
訂正事項2-3は、【0079】、【0080】、【0083】の記載に基づく構成である。
訂正事項2-4は、【0079】、【0080】、【0082】、【0083】の記載に基づく構成である。
訂正事項2-5は、引用関係を解消して独立形式に改めるものであって、新規事項を追加するものではない。
訂正事項2-6は、【0018】、【0079】、【0080】、【0082】の記載及び【0087】~【0090】の【表1】~【表4】に基づく構成である。
よって当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 訂正事項3
(ア) 訂正の目的について
訂正後の請求項3は、訂正前の請求項3が請求項1の記載を引用する関係にあるところ、訂正事項3-5は、当該関係を解消して独立形式に改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
訂正事項3-1は、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、」の記載により、訂正前の請求項3が引用する請求項1における「一層以上の布材で覆われた被覆物」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項3-2及び3-6は、「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを」の記載と、「(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)」の記載とにより、訂正前の請求項3の「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項3-3は、「理論値で1.3~12.5mg/m2の処理量で」の記載により、訂正前の請求項3の「1.3~12.5mg/m2」の処理量を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項3-4は、「布材の表面から燻煙処理することを特徴とする」の記載により、訂正前の請求項3が引用する請求項1の「燻煙処理することを特徴とする」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
以上によれば、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項3は、訂正前の請求項3を限定するとともに、請求項1の記載を引用するものであったものを独立形式に改めるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3-1は、【0051】、請求項5の記載に基づく構成である。
訂正事項3-2は、【0018】、【0079】、【0080】の記載に基づく構成である。
訂正事項3-3は、【0079】、【0080】、【0083】の記載に基づく構成である。
訂正事項3-4は、【0079】、【0080】、【0082】、【0083】の記載に基づく構成である。
訂正事項3-5は、引用関係を解消して独立形式に改めるものであって、新規事項を追加するものではない。
訂正事項3-6は、【0018】、【0079】、【0080】、【0082】の記載及び【0087】~【0090】の【表1】~【表4】に基づく構成である。
よって当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
エ 訂正事項4
(ア) 訂正の目的について
訂正事項4-1は、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、」の記載により、訂正前の請求項4の「一層以上の布材で覆われた被覆物」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項4-2及び4-5は、「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを」の記載と、「(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)」の記載とにより、訂正前の請求項4の「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項4-3は、「理論値で1.3~12.5mg/m2の処理量で」の記載により、訂正前の請求項4の「1.3~12.5mg/m2の処理量で」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
訂正事項4-4は、「布材の表面から燻煙処理することを特徴とする」の記載により、訂正前の請求項4の「燻煙処理することを特徴とする」を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項4は、訂正前の請求項4を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4-1は、【0051】、請求項5の記載に基づく構成である。
訂正事項4-2は、【0018】、【0079】、【0080】の記載に基づく構成である。
訂正事項4-3は、【0079】、【0080】、【0083】の記載に基づく構成である。
訂正事項4-4は、【0079】、【0080】、【0082】、【0083】の記載に基づく構成である。
訂正事項4-5は、【0018】、【0079】、【0080】、【0082】の記載及び【0087】~【0090】の【表1】~【表4】に基づく構成である。
よって当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
オ 訂正事項5
(ア) 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5の記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
(イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項5は、訂正前の請求項5を削除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(ア)から明らかなように、訂正事項5は、訂正前の請求項5を削除するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
カ 訂正事項6
(ア) 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項5の削除に伴って、訂正前の請求項6が引用していた請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
(イ) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記(ア)から明らかなように、訂正事項6は、訂正前の請求項5の削除に伴って、訂正前の請求項6が引用していた請求項5を削除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
(ウ) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(ア)から明らかなように、訂正事項6は、訂正前の請求項5の削除に伴って、訂正前の請求項6が引用していた請求項5を削除するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(2) 独立特許要件について
本件訂正により、請求項5は削除され、また、本件訂正後の請求項1~4、6に係る発明は、特許請求の範囲の減縮が行われているところ、本件特許異議申立事件において、すべての請求項が申立の対象とされているため、本件訂正後の請求項1~6に係る発明について、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第7項の独立特許要件は適用されない。
(3) 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~3、5~6について、請求項2~3、5~6は請求項1を引用しており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
本件訂正前の請求項4~6について、請求項5~6は請求項4を引用しており、訂正事項4によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。
そして、本件訂正前の請求項1~3、5~6と、本件訂正前の請求項4~6とは、共通する請求項5~6を介して、一体として連関しているから、本件訂正前の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、訂正事項1~6により、本件訂正前の請求項1~6に係る発明についてする本件訂正は、一群の請求項1~6に係る発明について、訂正をするものである。
4 小括
以上のとおり、訂正事項1~6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第4号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第7152175号の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で1.3~50mg/m2の処理量で布材の表面から燻煙処理することを特徴とする、被覆物のダニ防除方法(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)。
【請求項2】
布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で12.5~50mg/m2の処理量で布材の表面から燻煙処理することを特徴とする、被覆物のダニ防除方法(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)。
【請求項3】
布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で1.3~12.5mg/m2の処理量で布材の表面から燻煙処理することを特徴とする、被覆物のダニ防除方法(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)。
【請求項4】
布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で1.3~12.5mg/m2の処理量で布材の表面から燻煙処理することを特徴とする、被覆物のダニの産卵抑制方法(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記燻煙処理を、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを含有するダニ防除組成物と、前記ダニ防除組成物を収容した全量噴射型容器と、を備えるダニ防除装置により行う、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。」
第4 証拠、特許異議申立理由の概要、及び取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
1 証拠
申立人により、特許異議申立書とともに提出された証拠は、次のとおりである。
甲第1号証:特開2011-153108号公報
甲第2号証:Mintel GNPDウェブサイト、「Mite Killing Smoke」、掲載日:2014年8月、出力日:令和5年3月29日、インターネット、<http://www.portal.mintel.com/>
甲第3号証:「住まいとダニ」、家政学雑誌、1986年、Vo1.37、No.8、p.723~727
2 特許異議申立理由の概要
申立人による特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
●申立理由1-1(進歩性)
特許法第29条第2項
請求項1~6
甲第1号証~甲第3号証(甲第1号証に記載の発明を主引用発明とする。)
●申立理由1-2(進歩性)
特許法第29条第2項
請求項1~6
甲第1号証~甲第2号証(甲第2号証に記載の発明を主引用発明とする。)
●申立理由2(実施可能要件)
特許法第36条第4項第1号
請求項1~6
●申立理由3(サポート要件)
特許法第36条第6項第1号
請求項1~6
●申立理由4(明確性)
特許法第36条第6項第2号
請求項1~6
3 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
令和5年11月22日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
●取消理由1(明確性)
特許法第36条第6項第2号
請求項1~6
●取消理由2(実施可能要件)
特許法第36条第4項第1号
請求項1~6
●取消理由3(進歩性)
特許法第29条第2項
請求項1~6
甲第1号証~甲第3号証(甲第1号証に記載の発明を主引用発明とする。)
●取消理由4(サポート要件)
特許法第36条第6項第1号
請求項1、3~6
第5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立理由についての判断
1 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
(1) 取消理由1(明確性)について
ア 取消理由1の具体的内容
取消理由1は、本件明細書には、3-フェノキシベンジルクリサンテマートの表面処理量として、理論値(【0079】、【0080】、【0083】)と、測定した値(【0082】)が用いられているところ、令和5年8月25日に提出された訂正請求書による訂正後の請求項1~4における「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」の「処理量」が、理論値、測定した値のいずれであるのか明らかでなく、請求項1~4を引用する請求項5、6に係る発明も同様である、というものである。
イ 上記具体的内容についての判断
(ア) 判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(イ) 上記判断基準に基づく判断
本件発明1~4、6について、上記の判断基準に従って判断する。
本件訂正により、本件発明1~4、6において、3-フェノキシベンジルクリサンテマートの処理量は、理論値であることが特定された。そして、「理論値」とは、実際に測定した値ではなく、理論上導かれる値であることは、その語句自体及び技術常識から明らかである。
この点に関し、申立人は、令和6年5月9日に受理された意見書において、「理論値」の意味を当業者が理解できない旨を主張するが(3頁10~24行)、上記のとおり、「理論値」の意味するところは、その語句自体及び技術常識から明らかである。
したがって、本件発明1~4、6は、上記取消理由1で指摘した点で第三者の利益が不当に害されるほどに不明確なものではなく、明確である。
(2) 取消理由2(実施可能要件)について
ア 取消理由2の具体的内容
取消理由2は、令和5年8月25日に提出された訂正請求書による訂正後の請求項1~6における有効成分としての「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」の「処理量」について、本件明細書には、3-フェノキシベンジルクリサンテマートの表面処理量の理論値(【0079】、【0080】、【0083】)と、測定した値(【0082】)が記載されているところ、3-フェノキシベンジルクリサンテマートの表面処理量の「理論値」を算出する方法、及び「布団カバーに付着した3-フェノキシベンジルクリサンテマート量(表面処理量)」を測定する方法について、本件明細書には具体的な説明がないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、上記請求項1~6に係る発明について、実施可能な程度の説明を記載したものではない、というものである。
イ 上記具体的内容についての判断
(ア) 判断基準
発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する。
(イ) 上記判断基準に基づく判断
発明の詳細な説明の記載について、上記の判断基準に従って判断する。
本件訂正により、本件発明1~4、6において、有効成分としての3-フェノキシベンジルクリサンテマートの「処理量」は、「理論値」であることが特定された。
そして、本件特許の明細書には、「処理量」を求めることに関し、以下の事項が記載されている。
「【0019】
(A)成分の含有量は、燻煙装置を処理したときの(A)成分の被覆物の表面への処理量(表面処理量)や、(A)成分が布材を透過する透過量に応じて適宜決定される。
(A)成分の表面処理量は、任意の空間内で燻煙装置を処理したときに、床面に沈降した(A)成分の単位面積当たりの質量から求められる。(A)成分の透過量は、任意の空間内で燻煙装置を処理したときに、布材で覆われた床面に沈降した(A)成分の単位面積当たりの質量から求められる。
【0020】
(A)成分の表面処理量は、被覆物の単位面積当たり0.1~100mg/m2が好ましく、0.5~80mg/m2がより好ましく、1~80mg/m2がさらに好ましい。(A)成分の表面処理量が前記下限値以上であると、十分な防除効果が得られやすい。(A)成分の表面処理量が前記上限値以下であると、布材表面のべたつきを防止しやすい。
本明細書において、床に静置された被覆物については、被覆物表面のうち床と設置していない表面への処理量を(A)成分の表面処理量とする。」
本件明細書の上記記載及び技術常識によれば、本件発明1~4、6において「有効成分として」用いられる「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」の「処理量」の「理論値」は、「燻煙処理」に用いられる「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」の量や使用する燻煙装置、使用する空間等に応じて定まる単位面積当たりの「有効成分として」の「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」の量の、理論上導かれる値であることが明らかであって、発明の詳細な説明に具体的な計算式等が明示されていなくとも、当業者は、過度の試行錯誤を要することなく、「有効成分として」の「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」の「処理量」の「理論値」を求めることができ、本件発明1-4、6を実施することができるものと認められる。
この点に関し、申立人は令和6年5月9日に受理された意見書において、本件明細書に「理論値」についての具体的説明がない旨を主張している。また申立人は、「理論値」の算出に関して甲第1号証に言及する特許権者の主張に対して、甲第1号証の記載に依拠して、本件発明1~4、6が実施可能要件を満たすことにはならない旨を主張している(3頁最終行~8頁3行)。
しかしながら、上記に示したとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1~4、6について、過度の試行錯誤を要することなく当業者が実施できる程度の説明が記載されているから、上記申立人の主張を考慮しても、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~4、6について、実施可能要件を満たすものである。
(3) 取消理由3(甲第1号証に記載の発明を主引用発明とする進歩性欠如)について
取消理由3は、令和5年8月25日に提出された訂正請求書による訂正後の請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項等の周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであり、令和5年8月25日に提出された訂正請求書による訂正後の請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された事項及び甲第3号証に記載された事項等の周知の事項及び甲第1号証の【0004】の記載から当業者が容易に発明をすることができたものである、というものである。
以下、取消理由3について検討する。
ア 各甲号証の記載
(ア) 甲第1号証
甲第1号証(以下「甲1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は合議体が付した。)。
「【背景技術】
【0002】
屋内塵性ダニは、家庭内に幅広く生息し、気管支喘息や鼻炎、皮膚炎などのアレルギー疾患のアレルゲンとして重要視されている。屋内塵性ダニの防除には、畳や絨毯を除去してフローリングとする大規模な対策や、布団カバーなどの寝具類に高密度繊維を使用するなどの物理的対策、殺虫剤を用いた化学的防除が行われている。
一方、ダニ、ゴキブリ等の屋内害虫の防除用の殺虫剤としては、フェノトリン、ペルメトリンなどのピレスロイド系化合物やメトキサジアゾンなどのオキサジアゾール系化合物を有効成分とするものが一般的に用いられている(たとえば特許文献1)。また該殺虫剤の剤型としては、粉剤、粒剤、エアゾール剤、くん煙剤などが用いられている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、安全性、経済性等の向上のために、屋内塵性ダニの防除を行う際の殺虫剤の用量の低減が求められている。しかしながら、これまで屋内害虫の防除に一般的に用いられている殺虫剤は、用量を通常量よりも少なくすると、用量依存的に屋内塵性ダニに対する防除効力も低下し、充分な防除効果が得られない。そのため、屋内塵性ダニに対する防除効力の向上と用量の低減とを両立できる技術が求められる。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、有効成分の屋内塵性ダニに対する防除効力を増強できる方法、ならびに屋内塵性ダニに対して高い防除効力を発揮するくん煙剤組成物および防除方法を提供することを目的とする。」
「【0017】
<屋内塵性ダニの防除方法>
本発明の防除方法は、前記本発明のくん煙剤組成物を屋内にて加熱することにより行われる。これにより、揮散した化合物Aがくん煙とともに屋内に拡散、沈降して高い防除効果を発揮する。
くん煙剤組成物の加熱方法は、特に限定されず、一般的なくん煙剤の使用方法と同様であってよい。通常、くん煙用の容器内に収容して加熱する方法が用いられる。このときの加熱方式としては、酸化カルシウムと水との反応熱を利用して発熱性基剤を加熱するもの(間接加熱方式)、マッチ頭薬などを用い、発熱体(点火具)により製剤の一部を加熱して発熱性基剤の自己分解反応を行わせるもの(直接加熱方式)等が挙げられ、いずれの加熱方式を用いてもよい。
くん煙剤組成物の使用量(たとえば容器内へのくん煙剤組成物の収容量)は、化合物Aの処理量が所望の範囲内となるように、処理される屋内の大きさ(容積、床面積等)に応じて適宜設定される。
くん煙剤組成物の加熱が行われている間、屋内空間は通常、密閉状態とする。
【実施例】
【0018】
本発明について、実施例を示してさらに具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の各例で使用した原料は以下のとおりである。
化合物A:和光純薬工業社製「シフルトリン標準品」(異性体混合物、純度:異性体混合物として98%、性状:常温常圧(25℃、100kPa)下でペースト状)。
フェノトリン:住友化学社製「フェノトリン」(3-フェノキシベンジル d-シス,トランス-クリサンテマート、性状:常温常圧下で液状)。」
「【0023】
[評価試験(2)(カーペットへの原体噴霧による効力評価)]
化合物Aをアセトンに溶解してアセトン希釈液を調製した。このとき、アセトン希釈液中の化合物A濃度は、該アセトン希釈液5mLを16×10cmのカーペットに均一に噴霧した際に、該カーペットに付着する化合物A量が100mg/m2となるようにした。
コナヒョウヒダニを増殖させたカーペット(16×10cm)に上記アセトン希釈液を小型噴霧器により均一に噴霧し、30分風乾させた。これを「処理区」とした。
また、アセトン希釈液の代わりにアセトンのみを用いて前記処理区と同じ処理を行い、これを「無処理区」とした。
噴霧(処理)してから所定日数経過後(2日後、7日後または27日後)に各カーペット内の生ダニ数を数え、処理区の生ダニ数と無処理区のダニ数との比較から、下記式により減少指数(%)を算出した。
【0024】
【数1】
[図:0001414156000001.jpg]
」
「【0027】
[評価試験(3)(くん煙剤としての効力評価)]
(3-1.くん煙剤組成物の製造)
表3に示す各成分および水を常法により混合、練合し、造粒した後、乾燥して、顆粒状のくん煙剤組成物を得た。表3中の配合量の単位は質量%である。
【0028】
【表3】
[図:0001414156000002.jpg]
【0029】
(3-2.効力評価)
コナヒョウヒダニを増殖させたカーペット(16×10cm)を容積0.5m3のチャンバー(65×65×120cm)の底面上に設置した。該チャンバー内にて、実施例1または比較例1のくん煙剤組成物0.25gをホットプレートにより加熱してくん煙を開始させた。くん煙開始から2時間該チャンバーを密閉し、くん煙処理を行った。処理終了後、チャンバーから取り出したカーペットは25℃、湿度75%の条件下に維持した。これを「処理区」とした。
また、くん煙処理を行わなかった以外は同じ処理を行い、これを「無処理区」とした。
くん煙処理終了時から所定日数経過後(2日後、7日後または27日後)に各カーペット内の生ダニ数を数え、処理区の生ダニ数と無処理区のダニ数との比較から、前記評価試験(2)と同様の手順で減少指数(%)を算出した。
同じ評価をさらに3回(合計4回)実施し、その平均値を求めた。結果を表4に示す。
【0030】
【表4】
[図:0001414156000003.jpg]
【0031】
(3-3.揮散率測定)
また、上記くん煙処理における実施例1、比較例1のくん煙剤組成物中の有効成分(化合物Aまたはフェノトリン)の揮散率(%)を、以下の手順で求めた。
実施例1及び比較例1の顆粒0.25gをアルミカップに入れ、350℃に熱したホットプレートで蒸散させた。発生する煙をシリカゲルに吸着させ、シリカゲル中の有効成分を抽出した後、ガスクロマトグラフィーにて揮散量を測定した。顆粒に含まれる有効成分量に対する揮散量の割合を揮散率(%)として算出した。
その結果、化合物Aの揮散率は68%、フェノトリンの揮散率はほぼ100%であった。
このことから、上記効力評価にて、くん煙処理時に0.25gのくん煙剤組成物中の揮散した有効成分の全量がチャンバー底面に沈降した場合、その沈降量は化合物Aが約40mg/m2、フェノトリンが59mg/m2となる。
通常、チャンバー密閉時間内に全ての有効成分が沈降することはないので、本試験における実際の沈降量はこれらの値以下と考えられる。」
以上によれば、甲1には、屋内塵性ダニの防除方法の比較例1として、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「10質量%のフェノトリン(3-フェノキシベンジル d-シス,トランス-クリサンテマート)、70質量%のアゾジカルボンアミド、0.5質量%の酸化亜鉛、4質量%の澱粉、15.5質量%のクレーおよび水を常法により混合、練合し、造粒した後、乾燥して、顆粒状のくん煙剤組成物を得(【0018】、【0027】~【0028】、【表3】)、くん煙剤組成物をホットプレートにより加熱してくん煙を開始し(【0029】)、フェノトリンの揮散率はほぼ100%であり、くん煙処理時にくん煙剤組成物中の揮散した有効成分の全量がチャンバー底面に沈降した場合、その沈降量はフェノトリンが59mg/m2となるが、通常、チャンバー密閉時間内に全ての有効成分が沈降することはないので、実際の沈降量はこれらの値以下と考えられる(【0031】)屋内塵性ダニの防除方法(【0017】)。」
(イ) 甲第2号証
甲第2号証(以下「甲2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「
[図:0001414156000004.jpg]
」
甲2には、中国語が記載されており、特許異議申立書及び申立人が提出した訳文によれば、その日本語訳は、以下のとおりである。
「有効成分及び含量:シフェノトリン・・・7.00%w/w 協力剤(MGK-264)・・・2.50%w/w
性能:ダニ、ゴキブリ、蚊、ハエ、ノミ、アリ、シロアリ、クモを防ぐ
剤型及び内容量:25g(燻煙剤)
適用範囲:
本製剤は家居環境、公共場所など害虫が出現する場所に適用する。
使用方法:
1.使用する前に扉と窓を閉め、クローゼット、引き出しなどを開けると効果的である。
2.プラスチック容器に図のように水を入れる。
3.使用時に扉と窓を閉め、人とペットは離れるようにする。3時間後に扉と窓を開けて換気し、少なくとも30分後に入室する。
4.缶の上向きにして水に入れると、約1~3分白い薬剤の煙が蒸発する。
5.下記を参考にして内容量や缶数を調整してください。
内容量(g) 10 15 20 25 30 100
使用坪数 3~4 4~6 6~8 7~10 9~12 30~40」
また、甲2に示されたイラストには、ベッドや枕が置かれた部屋で当該製品が使用されることが示されているものと認められる。
そうすると、甲2には、以下の発明(以下「「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「有効成分としてシフェノトリンを7.00%w/w含む燻煙剤を、ベッドや枕が置かれた部屋で用いるダニ等を防ぐ方法。」
(ウ) 甲第3号証
甲第3号証(以下「甲3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「家の中から見つかるタニは,約20科,100種類くらいになる すへての種類か家の中に生息しているわけてはない 家の中に生息しているタニ(以下家屋内固有種のタニと称す)と,戸外から入り込んてきたタニ(迷入種と称す)の合計てある」(723頁左欄下から3行~右欄2行)
「家屋内固有種のタニか繁殖するには,三つの条件か必要てある 第1は適当な温度と湿度かあること,第2は餌かあること,第3は潜って産卯てきる場所かあることた」(723頁右欄7~10行)
「第3条件の潜って産卯てきる場所とは,畳,紘毯,布団,食品なとてある 家屋内固有種のタニの多くは,体長03~10mm,体幅007~03mmて,素材の中に潜れるほと小さいし,また,潜る習性かある」(723頁右欄下から8~5行)
「
[図:0001414156000005.jpg]
」(724頁表1)
723頁の「タニ」、「産卯てきる」、「場所かある」及び「食品なとてある」との記載は、それぞれ「ダニ」、「産卵できる」、「場所がある」及び「食品などである」を意味することが文脈から明らかであるから、甲3には、以下の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
(甲3記載事項)
「家の中に生息している家屋内固有種のダニが繁殖するために必要な条件の一つは、潜って産卵できる場所があることであり、潜って産卵できる場所とは、畳、紘毯、布団、食品などであり、家の中に生息するダニ(家屋内固有種のダニ)には、寝具、衣類に生息するダニ、ぬいぐるみ、布製椅子に生息するダニが存在すること。」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明とを比較する。
甲1発明の「フェノトリン(3-フェノキシベンジル d-シス,トランス-クリサンテマート)」、「くん煙処理」及び「屋内塵性ダニの防除方法」は、それぞれ本件発明1の「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」、「燻煙処理」及び「ダニ防除方法」に相当する。
甲1発明は、「フェノトリン(3-フェノキシベンジル d-シス,トランス-クリサンテマート)」を有効成分として「くん煙処理する」ものであることは明らかであり、このことは、本件発明1の「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを」「燻煙処理する」ことに相当する。
甲1発明において用いられる「くん煙剤組成物」について、「10質量%のフェノトリン(3-フェノキシベンジル d-シス,トランス-クリサンテマート)、70質量%のアゾジカルボンアミド、0.5質量%の酸化亜鉛、4質量%の澱粉、15.5質量%のクレーおよび水を常法により混合、練合し、造粒した後、乾燥して」得られるものであるから、シフェノトリンを含んでいないことが明らかであることは、本件発明1の「有効成分はシフェノトリンを含まない」ことに相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点1で一致し、以下の相違点1~相違点2で相違する。
<一致点1>
「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、燻煙処理するダニ防除方法(但し、有効成分はシフェノトリンを含まない。)。」
<相違点1>
燻煙処理が、本件発明1では、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して」「布材の表面から」行うものであるのに対して、甲1発明では、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して」「布材の表面から」行うものに限定されない点。
<相違点2>
3-フェノキシベンジルクリサンテマート(フェノトリン(3-フェノキシベンジル d-シス,トランス-クリサンテマート))を燻煙処理する処理量が、本件発明1では、「理論値で1.3~50mg/m2」であるのに対して、甲1発明では、「くん煙処理時にくん煙剤組成物中の揮散した有効成分の全量がチャンバー底面に沈降した場合、その沈降量はフェノトリンが59mg/m2となる」ものであって、「理論値で1.3~50mg/m2」ではない点。
(イ) 相違点についての判断
まず、本件発明1の相違点1及び相違点2に係る構成の技術的意義について検討する。本件特許の明細書には、以下の事項が記載されている(下線は合議体が付した。)。
「【0071】
以上説明した本発明のダニ防除装置は全量噴射型容器を備えるため、一度の操作で、容器内容物のほぼ全量を容器外に噴射させることができる。その結果、ダニ防除組成物が、布材の織り目を透過し、被覆物の内側等の、手が届きにくいところにある処理面にまで(A)成分が到達し、優れたダニ防除効果が発揮される。
加えて、本発明のダニ防除装置は、一層以上の布材で覆われた被覆物を処理対象とするので、処理面に付着した(A)成分が被覆物の内側等から離散しにくく、ダニ防除効果を持続できる。
本発明のダニ防除装置としては、ダニ防除効果が高く、(A)成分が、布材や被覆物の織り目を透過しやすい燻煙装置が好ましい。
本発明の有用性の観点から、本発明のダニ防除装置は、寝室の布団や枕等の寝具用として特に好適である。
【0072】
以上説明した本発明のダニ防除方法は、任意の空間内で、上述した被覆物用のダニ防除装置を用いて、前記ダニ防除組成物を噴射し、一層以上の布材で覆われた被覆物に、ダニ防除処理を施すものである。
そのため、上述したように、処理面に付着した(A)成分が被覆物の内側等から離散しにくく、被覆物内部のダニを防除することが可能であるとともに、ダニ防除効果を持続できる。
本発明のダニ防除方法は、従来の方法ではダニを防除することが困難であった寝具用として特に好適である。」
「【0079】
[燻煙剤処理した場合のダニの生存数、及び白色汚染の評価]
<実施例1、実施例10~12、比較例1>
10cm×14cmに裁断したナイロン製カーペットにコナヒョウヒダニ3,500頭を餌1gとともに入れ、数日間順化させた。そのカーペットを布製布団カバー(綿100%、厚さ0.19mm、織り目0.3mm×0.1mm、以下、単に「布団カバー」という)で作成した袋の中に入れて密閉した。その後、8畳相当の部屋で、(A)成分として3-フェノキシベンジルクリサンテマートの沈降量が布団カバー表面に50mg/m2になるように調整した燻煙剤を処理して2時間密閉し、処理後にカーペットを25℃、75%RHに調整した恒温槽に保存して、経過日数とダニの生存数との関係を調べた。
ダニの生存数は、実体顕微鏡で1分間に観察されるダニの数を5回測定し、その平均値で表す。布団カバー(布材)を透過した3-フェノキシベンジルクリサンテマートの沈降量(布材透過量)を測定した。結果を表2、表7に示す。表2、表7中の表面処理量は理論値である。比較例1は、燻煙剤処理をしなかった場合の結果である。評価は、下記基準に基づいて行った。
(評価基準)
○:28日又は30日経過後のダニの生存数が処理前の10%未満。
×:28日又は30日経過後のダニの生存数が処理前の10%以上。
なお、実施例10~12について、燻煙剤処理後の布団カバー表面を目視にて良く観察すると、実施例10は布団カバー表面の一部に僅かに白色汚染が認められた。実施例11、12は白色汚染が認められなかった。
【0080】
<実施例2、比較例2>
10cm×10cmに裁断した敷布団の上下に16cm×19cmの布団カバーをかけ、敷布団の側生地内部の中綿にコナヒョウヒダニ150頭を餌100mgと共に入れ、布団カバーの4辺をクリップで留めて、試験片とした。これらの試験片を8畳相当の部屋で、(A)成分として3-フェノキシベンジルクリサンテマートの沈降量が敷布団の表面に12.5mg/m2になるように調整した燻煙剤を処理して部屋を2時間密閉し、処理後に試験片を実施例1と同様に保存し、観察を行った。結果を表2に示す。表2中の表面処理量は理論値である。比較例2は、燻煙剤処理をしなかった場合の結果である。」
「【0094】
表2から表4、表7に示すように、本発明を適用した実施例1~13は、ダニの生存数、産卵抑制率、致死率の評価において全て「○」であり、ダニ防除効果に優れることが確認できた。
一方、燻煙剤処理をしなかった比較例1~2、5は、ダニ防除効果は認められず、処理後28日後以降で、ダニの生存数が、処理前の2倍以上に増加した。また、布材を用いずに燻煙剤を処理した比較例3~4は、処理後15日程度まではダニの増殖を抑制する効果が認められたが、その持続効果は十分ではなく、(A’)成分である5-メトキシ-3-(O-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2(3H)-オンをも含有しているにも関わらず、21日後以降においてダニの数が回復する傾向が認められた。同じく、布材を用いずに燻煙剤を処理した比較例6は、産卵抑制率にやや劣る結果だった。(A)成分を含まない燻煙剤を処理した比較例7~8は、産卵抑制率の評価がいずれも「×」で、産卵抑制率に劣る結果だった。ダニ防除剤としてスプレー剤を用いた比較例9~12は、致死率の評価が「△」~「×」で、ダニ防除効果に劣ることが分かった。」
明細書の上記記載によれば、本件発明1は、明細書に記載された実施例及び比較例のダニの生存数、産卵抑制率、致死率の評価に基づいて、一層以上の布材で覆われた被覆物を処理対象として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを燻煙処理すると、処理面に付着した3-フェノキシベンジルクリサンテマートが被覆物の内側等から離散しにくく、ダニ防除効果を持続でき、ダニ防除効果に優れることを見いだし、有効成分として「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」を用いる燻煙処理を、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して」「布材の表面から」行い(相違点1)、「理論値で1.3~50mg/m2」(相違点2)という処理量で、優れたダニ防除効果を得るものであると認められる。
したがって、相違点1及び相違点2は、相互に関連して技術的意義を有するものと認められることから、相違点1及び相違点2をまとめて検討する。
甲1発明において、「くん煙処理」を、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して」「布材の表面から」行う(相違点1)とともに、フェノトリン(3-フェノキシベンジルクリサンテマート)の処理量を、「理論値で1.3~50mg/m2」(相違点2)とすべき事情も動機もない。
甲2発明は、「有効成分としてシフェノトリンを7.00%w/w含む燻煙剤を、ベッドや枕が置かれた部屋で用いる」構成を有するが、有効成分として「フェノトリン(3-フェノキシベンジル d-シス,トランス-クリサンテマート)」を用いる甲1発明について、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して」「布材の表面から」処理を行い、かつ、「理論値で1.3~50mg/m2の処理量」とすることを、示唆するものではない。
また、甲3記載事項は、ダニが存在する場所について述べるものにすぎず、燻煙処理について述べたものではない。
したがって、甲1発明において、「くん煙処理」を、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して」「布材の表面から」行う(相違点1)とともに、フェノトリン(3-フェノキシベンジルクリサンテマート)の処理量を、「理論値で1.3~50mg/m2」(相違点2)とすることは、甲2発明、及び甲3記載事項を考慮しても、動機付けられるものではなく、当業者が容易に想到できたものではない。
(ウ) 申立人の主張について
申立人は、令和6年5月9日に受理された意見書において、以下の旨を主張する(8頁4行~12頁6行)。
a 取消理由通知書(決定の予告)における相違点2(当審注;上記(ア)の相違点2に対応する。)について、甲1発明は「フェノトリンが59mg/m2となるが、・・・実際の沈降量はこれらの値以下と考えられる」ものであり、実質的な相違点ではない。
b 取消理由通知書(決定の予告)における相違点1及び4(当審注;上記(ア)の相違点1に対応する。)について、甲1発明と甲第2号証に記載の事項とは技術分野が共通し、屋内のダニを防除するという課題及び作用、機能の点でも共通するため、相違点1及び4について、甲1発明に「ダニ等を防ぐ燻煙剤を、ベッドや枕が置かれた部屋で用いる」という甲2記載事項を適用する動機付けがあり、当業者が容易に発明をすることができたものである。
c 参考文献4(「ケナガコナダニとコナヒョウヒダニに対する各種ピレスロイドの増殖抑制効果」、衛生動物、Vol.36、No.1、p.7-13)によれば、シフェノトリン(甲第2号証等に記載)やペルメトリンと比べて、フェノトリンが高い増殖抑制効果を示したことが記載されており、ケナガコナダニ等のダニに対して、ピレスロイド系の薬剤としてフェノトリンを選択したうえで、処理量を「1.3~50mg/m2」の範囲内とすることは、動機付けがあり、当業者が容易に想到できたことである。
申立人の主張aについて検討する。甲1発明において、本件発明1の「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」の「処理量」の「理論値」に対応するものは、「くん煙処理時にくん煙剤組成物中の揮散した有効成分の全量がチャンバー底面に沈降した場合」の「フェノトリン」の「沈降量」とされる「59mg/m2」であると認められ、これが「1.3~50mg/m2」ではないことから、相違点2は、実質的な相違点である。
申立人の主張b及びcについて検討する。上記(イ)で検討したように、本件発明1は、有効成分として「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」を用いる燻煙処理を、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して」「布材の表面から」行い(相違点1)、「理論値で1.3~50mg/m2」(相違点2)という処理量で、優れたダニ防除効果を得るものであって、相違点1及び相違点2は、相互に関連して技術的意義を有するものと認められるところ、甲2発明は、「有効成分としてシフェノトリンを7.00%w/w含む燻煙剤を、ベッドや枕が置かれた部屋で用いる」ことを示すにとどまり、用いる有効成分が異なる甲1発明において、上記相違点1及び相違点2に係る構成とすることを動機付けるものではない。
(エ) 小括
以上によれば、本件発明1は、甲1発明、甲2発明及び甲3記載事項等の周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明2~4、6について
本件発明1と同様の構成を備える本件発明2~4、6も、本件発明1と同様に、甲1発明、甲2発明及び甲3記載事項等の周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4) 取消理由4(サポート要件)について
ア 取消理由4の具体的内容
取消理由4は、令和5年8月25日に提出された訂正請求書による訂正後の請求項1~4における「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」の「処理量」が、仮に、(理論値ではなく)測定した量であるとすると、本件明細書に記載されている実施例から、令和5年8月25日に提出された訂正請求書による訂正後の請求項1に係る発明の「1.3~50mg/m2」、同訂正請求書による訂正後の請求項3、4に係る発明の「1.3~12.5mg/m2」の範囲にわたって、被覆物のダニ防除又はダニの産卵抑制についての効果が得られるといえる根拠が示されておらず、出願時の技術常識に照らしても、同訂正請求書による訂正後の請求項1、3、4及びこれらの請求項を引用する請求項5、6に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない、というものである。
イ 上記具体的内容についての判断
(ア) 判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(イ) 上記判断基準に基づく判断
本件発明1、3、4及び6について、上記の判断基準に従って判断する。
本件訂正により、3-フェノキシベンジルクリサンテマートの処理量は、理論値であることが特定された。
本件明細書の段落【0004】の記載から、解決しようとする課題は、被覆物内部のダニを防除可能とすることであると認められる。
そして、本件明細書に記載の実施例1~2、5~7、10~12において、3-フェノキシベンジルクリサンテマートの(表面)処理量の理論値が、1.3~50mg/m2の範囲において、ダニの生存数又は産卵抑制率について評価を行い、被覆物内部のダニ防除効果に優れることが示されている。ダニの防除と産卵抑制は、相互に関連するものであって、一方について効果があれば、他方にも効果があることは明らかであるから、ダニ防除方法の発明又はダニの産卵抑制方法の発明である本件発明1、3、4及び6は、発明の詳細な説明の記載により、被覆物内部のダニを防除可能とする発明の課題を解決できると、当業者が認識できる範囲内のものである。
したがって、本件発明1、3、4及び6は、上記取消理由4に指摘した点で、サポート要件を満たさないものではない。
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立理由1-1(甲第1号証に記載の発明を主引用発明とする進歩性欠如)及び申立理由2(実施可能要件違反)は、それぞれ、取消理由通知(決定の予告)において、取消理由3及び取消理由2として採用されたものであって、これらについては、上記1で検討したとおりである。
以下では、取消理由通知(決定の予告)において採用されなかった申立理由1-2(甲第2号証に記載の発明を主引用発明とする進歩性欠如)、申立理由3(サポート要件違反;取消理由4とは具体的内容が異なる)、及び申立理由4(明確性要件違反;取消理由1とは具体的内容が異なる)について、検討する。
(1) 申立理由1-2(甲第2号証に記載の発明を主引用発明とする進歩性欠如)について
ア 本件発明1について
(ア) 甲2発明
甲2には、上記1(3)ア(イ)に認定した甲2発明が記載されている。
(イ) 対比
本件発明1と甲2発明とを比較する。
甲2発明の「ベッドや枕」は、本件発明1の「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物」に相当する。
甲2発明は、「燻煙剤を、ベッドや枕が置かれた部屋で用いるダニ等を防ぐ方法」であるところ、「ベッドや枕」は、一般に布材で覆われたものである。そうすると、甲2発明は、「ベッドや枕」に対して、それらを覆う布材の表面から燻煙剤を用いるダニ等を防ぐ方法であるから、本件発明1の「布材の表面から燻煙処理する」「被覆物のダニ防除方法」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点2で一致し、以下の相違点3で相違する。
<一致点2>
「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、布材の表面から燻煙処理する、被覆物のダニ防除方法。」
<相違点3>
「燻煙処理」が、本件発明1では、「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で1.3~50mg/m2の処理量で」行い、「有効成分はシフェノトリンを含まない」のに対して、甲2発明では、「有効成分としてシフェノトリンを7.00%w/w含む」ものである点。
(ウ) 判断
上記1(3)イ(イ)で検討したように、本件発明1は、「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で1.3~50mg/m2の処理量で」(相違点3)、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して」「布材の表面から」燻煙処理を行うことにより、優れたダニ防除効果を得るものである。
甲1発明は、上記相違点3に係る本件発明1の構成のうち、「有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマート」を用いる構成を有するが、「有効成分としてシフェノトリン」を用いる甲2発明において、使用する薬剤を変更して「有効成分はシフェノトリンを含まない」ものとし、「3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で1.3~50mg/m2の処理量で」処理するように変更する動機づけはない。
申立人はこの点に関し、特許異議申立書において、3-フェノキシベンジルクリサンテマートとシフェノトリンは、いずれもダニの防除に用いられるピレスロイド系化合物であり、甲第2号証に接した当業者が、シフェノトリンに代えて3-フェノキシベンジルクリサンテマートを採用することは容易である旨を主張し、また、甲第2号証には、処理量が「52.9~75.6mg/m2」であることが実質的に記載されているところ、シフェノトリンを含む燻煙剤を用いて燻煙処理を行い、「3時間後に扉と窓を開けて換気」(パッケージ裏面)することが記載されているから、甲2発明におけるシフェノトリンの処理量は「52.9~75.6mg/m2」を大きく下回り、本件特許発明1の「1.3~50mg/m2」の範囲に入る蓋然性が高く、仮にそうでないとしても、甲第1号証には「近年、安全性、経済性等の向上のために、屋内塵性ダニの防除を行う際の殺虫剤の用量の低減が求められている」(【0004】)との記載があるとおり、ダニに対する防除効果を得られる範囲で処理量を低減させる動機付けがある旨を主張する(18頁21行~19頁23行)。
申立人の上記主張について検討する。甲2発明において、シフェノトリンに代えて3-フェノキシベンジルクリサンテマートを採用する動機付けがなく、仮に、シフェノトリンに代えて3-フェノキシベンジルクリサンテマートを採用するとしても、その処理量を「理論値で1.3~50mg/m2」とすることは、甲2発明及び甲1発明に示唆されておらず、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
申立人の「甲第2号証には、処理量が「52.9~75.6mg/m2」であることが実質的に記載されているところ、シフェノトリンを含む燻煙剤を用いて燻煙処理を行い、「3時間後に扉と窓を開けて換気」(パッケージ裏面)することが記載されているから、甲2発明におけるシフェノトリンの処理量は「52.9~75.6mg/m2」を大きく下回り、本件特許発明1の「1.3~50mg/m2」の範囲に入る蓋然性が高」いとの主張は、甲2号証のシフェノトリンの処理量について、内容量と使用坪数に関する記載から、1坪を3.31m2として「52.9~75.6mg/m2」と算出したことに基づくものと認められるが、甲2号証は、シフェノトリンの処理量について記載されたものであって、3-フェノキシベンジルクリサンテマートの理論値での処理量を何ら示唆するものではなく、採用することができない。
また、申立人の主張における甲第1号証の【0004】の記載は、一般に「屋内塵性ダニの防除を行う際の殺虫剤の用量の低減が求められている」ことを述べるものにすぎず、本願優先日時点で、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して」、「3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で1.3~50mg/m2の処理量で」「燻煙処理する」ことによって、優れたダニ防除効果が得られ、殺虫剤の用量の低減ができることが知られていたことを示す事情はないから、甲2発明において、シフェノトリンに代えて3-フェノキシベンジルクリサンテマートを採用するとともに、理論値で1.3~50mg/m2の処理量で燻煙処理することとして、相違点3に係る構成とすることを示唆するものではない。
以上によれば、本件発明1は、甲2発明及び甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2~4、6について
本件発明1と同様の構成を備える本件発明2~4、6も、本件発明1と同様に、甲2発明及び甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2) 申立理由3(サポート要件)について
ア 申立人が主張する具体的な申立理由
申立人は、本件訂正前の請求項1~6に係る発明に関し、本件明細書において防除の持続効力が劣るとされる比較例4について、対象物が「一層以上の布材で覆われ」ていないカーペットであることに依拠して防除の持続効果が劣ったのではなく、3-フェノキシベンジルクリサンテマート以外の有効成分として含めた(A’)成分である5-メトキシ-3-(O-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2(3H)-オンに起因して防除の持続効果が劣った可能性が否定できない旨を主張している。そして、異なる防除成分を組み合わせたときに防除効果が低下する場合もあることは技術常識であり、3-フェノキシベンジルクリサンテマート以外の任意の防除成分を含む態様にまで、本件特許発明の効果が及ぶといえないことから、本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない旨を主張する(特許異議申立書23頁5行~24頁5行)。
イ 上記具体的な申立理由についての判断
(ア) 判断基準
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(イ) 上記判断基準に基づく判断
本件発明1~4、6について、上記の判断基準に従って判断する。
本件発明1~4、6が解決しようとする課題は、「被覆物内部のダニを防除可能な」「ダニ防除装置を用いたダニ防除方法」(【0004】)を提供することである。
そして、上記1(4)における検討で言及した、本件明細書に記載の実施例1~2、5~7、10~12では、3-フェノキシベンジルクリサンテマートの(表面)処理量の理論値が、1.3~50mg/m2の範囲において、ダニの生存数又は産卵抑制率について評価を行い、ダニ防除効果に優れることが示されているところ、これらの実施例は、いずれも対象物を「布団カバー」又は「敷布団側生地」といった「布材」で覆った状態において、上記効果があることを示している。
上記実施例1~2、5~7、10~12における効果を考慮すると、本件発明1は、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して、有効成分として、3-フェノキシベンジルクリサンテマートを、理論値で1.3~50mg/m2の範囲において処理量で布材の表面から燻煙処理する」構成から、上記解決しようとする課題を解決できると、合理的に理解される。本件発明2-4及び6についても、「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」の処理量を、上記1.3~50mg/m2の範囲内で特定した構成から、上記解決しようとする課題を解決できると、合理的に理解される。
そして、処理対象を布材で覆っておらず、防除の持続効果が劣った比較例4についても、「3-フェノキシベンジルクリサンテマート」と併せて添加した「5-メトキシ-3-(O-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2(3H)-オン」に依拠して、防除効果が低下したと考えるべき事情は見いだせないから、上記申立人の主張を考慮しても、本件明細書における比較例4を根拠として、本件発明1-4、6について、被覆物内部のダニを防除可能なダニ防除方法を提供するという、上記課題を解決できないこととなる事情はない。
したがって、本件発明1~4、6は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであって、申立人が申立てる点で特許法第36条第6項第1号の規定を満たさないものではない。
(3) 申立理由4(明確性)について
ア 申立人が主張する具体的な申立理由
申立人は、本件訂正前の請求項1~6に係る発明について、その「被覆物」に関して、本件明細書において、「被覆物とは、布材で覆われた物質をいう」と記載されているが(【0051】)、これが、「布材と、布材で覆われた物質とが一体となった状態」のことを指しているのか、「布材で覆われた内容物そのもの」を指しているのかが判然とせず、仮に前者であれば、「被覆物」それ自体に「一層以上の布材で覆われた被覆物」の意味を包含されることになり、自己矛盾に陥っており、後者であれば、同じく本件明細書中にある「被覆物は、布材と布材で覆われる物質との組み合わせである」(【0051】)という記載と明らかに矛盾しているから、特許法第36条第6項第2号を満たさない旨を主張する(特許異議申立書24頁6行~24行)。
イ 上記具体的な申立理由についての判断
(ア) 判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(イ) 上記判断基準に基づく判断
本件発明1~4、6について、上記の判断基準に従って判断する。
本件訂正により、本件発明1~4及び6において、「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた被覆物に対して」「布材の表面から燻煙処理する」ことが特定されているから、「被覆物」が「布団、枕、座布団、ぬいぐるみ及び衣類から成る群から選択される、一層以上の布材で覆われた」ものであること、及び、「被覆物」に対し「燻煙処理」を「布材の表面から」行うことは、明確に理解される。
そして、上記申立人の主張を考慮しても、本件発明1~4、6における「被覆物」、及び「被覆物」に対する「燻煙処理」について、第三者に不測の不利益を生じさせる程に不明確となるような事情はない。
したがって、本件発明1~4、6は、明確であり、申立人が申立てる点で特許法第36条第6項第2号の規定を満たさないものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~4、6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~4、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正により、請求項5は削除された。これにより、請求項5に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700361