特許異議申立
2024-700356
長鎖分岐プロピレンポリマー組成物
- 審判番号
- 2024-700356
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-577875
- 登録番号
- 7364703
- 請求日
- 2024年04月17日
- 審決日
- 2025年01月28日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ボレアリス エージー
- 【権利者代理人】林 一好
- 【権利者代理人】芝 哲央
- 【権利者代理人】岩池 満
- 【異議申立人】笹井 栄治
- 審判長/審判官
- 審判長 近野 光知
- 審判官 松本 直子
- 審判官 藤井 勲
- 分類
- P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7364703号発明「長鎖分岐プロピレンポリマー組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7364703号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。
特許第7364703号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7364703号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、2020年(令和2年)6月19日(優先権主張 2019年(令和1年)7月4日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特願2021-577875号に係るものであって、令和5年10月10日にその特許権の設定登録(請求項の数15)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和6年4月17日に、本件特許の請求項1~15に係る特許に対して、特許異議申立人 笹井 栄治(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
以降の手続の経緯は、以下のとおりである。
令和6年7月16日付け 取消理由通知書
同年10月9日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年同月18日付け 通知書(訂正請求があった旨の通知)
同年11月20日 意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和6年10月9日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、当該訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~15について訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである(下線は当審による。以下同様。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「e)少なくとも108℃の熱変形温度(HDT)と」と記載されているのを、「e)ISO 75 Bに準拠して決定される、少なくとも108℃の熱変形温度(HDT)と」に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~15も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の【0115】に記載された「ISO 75、条件Aに準拠して、公称表面応力1.80MPa」を、「ISO 75、条件Bに準拠して、公称表面応力0.45MPa」に訂正する。
なお、訂正前の請求項2~15は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正事項1による訂正は、一群の請求項〔1~15〕に対してなされたものである。
また、願書に添付した明細書の訂正である訂正事項2は、前記明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて請求されたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、令和6年7月16日付け取消理由通知の取消理由(明確性)に対応し、願書に添付した明細書の【0029】及び【0128】【表2】の最下段の記載に基づいて、請求項1に記載の「熱変形温度(HDT)」が、「ISO 75 Bに準拠して決定される」ものであると定義を明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
願書に添付した明細書の【0115】に記載された熱変形温度(HDT)の決定方法である「ISO 75、条件Aに準拠して、公称表面応力1.80MPa」は、【0029】に記載の「ISO 75 B」や【0128】【表2】の最下段に記載の「HDT B」と記載が整合せず、不明確であったところ、上記取消理由通知の取消理由(明確性)に対応して、その不整合を正すために、【0115】の記載を「ISO 75、条件Bに準拠して、公称表面応力0.45MPa」に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、【0115】における「ISO 75、条件Bに準拠して」とする訂正は、【0029】及び【0128】の記載に基づいてされたものであり、さらに、「公称表面応力0.45MPa」とする訂正は、乙第2号証に示されるように、ISO75、条件Bにおける測定では、「曲げ応力0.45MPa」という条件が適用されるという技術常識に基づいて、「ISO 75、条件Bに準拠して」との整合を図ったものであるから、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正が認められることから、本件特許の請求項1~15に係る発明(以下、項番に従い「本件発明1」等といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。また、本件訂正後の明細書を「本件明細書」という。
「【請求項1】
長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物であって、
前記長鎖分岐プロピレンポリマーが、
a)0.8~6.0g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)と、
b)前記長鎖分岐プロピレンポリマーの総重量量に基づいて、0.80重量%以下の量の熱キシレン不溶(XHU)画分と、
c)少なくとも160.0℃の融解温度Tmと、
d)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、
e)ISO 75 Bに準拠して決定される、少なくとも108℃の熱変形温度(HDT)と
を有するプロピレンポリマー組成物。
【請求項2】
前記長鎖分岐プロピレンポリマーが、120.0℃超の結晶化温度Tcを有する請求項1に記載のプロピレンポリマー組成物。
【請求項3】
前記長鎖分岐プロピレンポリマーが、少なくとも190mm/sのV30溶融伸展性を有する請求項1又は請求項2に記載のプロピレンポリマー組成物。
【請求項4】
前記長鎖分岐プロピレンポリマーが、1900MPa超の曲げ弾性率を有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物の製造方法であって、
a)重合触媒の存在下でプロピレンを重合して、プロピレンポリマーを生成する工程と、
b)前記プロピレンポリマーを回収する工程と、
c)前記プロピレンポリマーに長鎖分岐を導入するために、過酸化物の存在下で前記プロピレンポリマーを押し出す工程と、
d)前記プロピレンポリマー組成物を回収する工程と
を含む方法。
【請求項6】
前記重合触媒が、Ziegler-Natta触媒である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
回収された前記プロピレンポリマーが、100~1200μmのメジアン粒子サイズd50、及び/又は300~2500μmのトップカット粒子サイズd95を有する請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
回収された前記プロピレンポリマーが、プロピレンホモポリマーである請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
回収された前記プロピレンポリマーが、回収された前記プロピレンポリマーの総重量量に基づいて、3.0重量%未満の量の冷キシレン可溶(XCS)画分を有する請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロピレンポリマー及び前記過酸化物を溶融混合することが、溶融混合装置内で、160~280℃の範囲のバレル温度で溶融混合される請求項5から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記過酸化物が160~280℃のバレル温度において6分以下の半減期(t1/2)を有し、かつ/又は前記過酸化物が、プロピレンポリマー100重量部に対して0.1~5.0重量部(ppw)の量で前記プロピレンポリマーに添加される請求項5から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記長鎖分岐が、官能性不飽和化合物の不存在下で前記プロピレンポリマーに導入される請求項5から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程d)の回収された前記プロピレンポリマー組成物が、工程b)の回収された前記プロピレンポリマーと比較して、より低いメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)を有する請求項5から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物を含む物品。
【請求項15】
物品の製造のための、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロピレンポリマー組成物の使用。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要、証拠方法及び取消理由通知の概要
1 申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として甲第1~7号証を提出し、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、概要、以下の申立理由を主張する。
(1)申立理由1(甲第1号証を主引例とする新規性、進歩性)
本件発明1~4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件発明1~4、14及び15は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第3号証及び甲第6号証に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~4、14及び15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲第4号証を主引例とする新規性、進歩性)
本件発明1~13は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件発明1~15は、甲第4号証に記載された発明並びに甲第5号証及び甲第7号証に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~15に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由3(明確性要件)
本件特許の請求項1~15に係る特許は、下記のア及びイの点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア 長鎖分岐について
本件明細書の発明の詳細な説明においては、原料ポリマー(PP-1、PP-2)に対する長鎖分岐の導入について、実施例(【0125】など)に、長鎖分岐を導入する方法について一応の記載はあるが、長鎖分岐がどのような構造を有するものなのか、また、どのように分析するのか等について何ら記載されていないから、結果として、特許請求の範囲に記載されている本件発明に係る長鎖分岐プロピレンポリマーを明確に把握することができない。
イ 熱変形温度の測定法について
発明の詳細な説明には、長鎖分岐プロピレンポリマーの熱変形温度の測定方法について、【0029】、【0115】及び【0128】【表2】に記載があるが、ISO 75による熱変形温度の測定方法にはかける荷重が異なるA法とB法があり、両者の測定値は全く異なることが知られているところ、上記の発明の詳細な説明の記載には一貫性がないため、本件発明に係る熱変形温度(HDT)について明確に把握することができない。
(4)申立理由4(実施可能要件)
本件特許の請求項1~15に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・長鎖分岐について
発明の詳細な説明の実施例と比較例に関する記載及びその他の部分の記載を参照しても、原料プロピレンポリマーの違いの他は、本件発明に係る諸特性を満足する長鎖分岐ポリプロピレンを得るために必要な条件について何ら記載されておらず、当業者が本件発明1~4に特定される諸特性を満足する長鎖分岐プロピレンポリマーを製造するためには過度の試行錯誤を要するものであるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が容易に本件発明を実施することができる程度に記載されているとはいえない。
2 証拠方法
(1)申立人が申立書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:特表2018-532843号公報
甲第2号証:「Borealis DaployTM WB140HMS Polypropylene」、塑料之家(www.su-jiao.com)が販売する商品の情報(2008-2015年)[on line]、[令和6年4月1日検索]、インターネット、<URL : http://www.su-jiao.com/yuanliaoku/show-31589.html>及び抄訳
甲第3号証:Raymond K.M.Chu et al.,「CRYSTALLIZATION AND FOAMING BEHAVIOR OF POLYPROPYLENE WITH A CRYSTAL-NUCLEATING AGENT」, SPE ANTEC 2015, Orlando, Florida, USA 23-25 March 2015, ISBN: 978-1-7138-0194-8及び抄訳
甲第4号証:特表2018-503738号公報
甲第5号証:特表2011-507989号公報
甲第6号証:国際公開第2014/070384号及び抄訳
甲第7号証:特表2017-532415号公報
参考資料1:柳原久嘉他、「ポリプロピレン製造用触媒の高性能化」、高分子論文集、Vol.59、No.6、2002年6月、pp.364-370、高分子学会
(以下「甲第1号証」等、「参考資料1」を、それぞれ「甲1」等、「参1」という。)
(2)特許権者が意見書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。
乙第1号証:「RF550 Polypropylene, Homopolymer」、Egyptian Propylene & Polypropylene Company(販売者)(https://www.b2bpolymers.com/TDS/EPPC_RF550.pdf)及び抄訳
乙第2号証:「ISO 75-2_2013 - Plastics-Determination of temperature of deflection under load-Part 2:Plastics and ebonite」、International Organization for Standardization(発行者)(https://www.iso.org/standard/55653.html#:~:text=ISO%2075-2:2013%20specifies%20three%20methods,%20using%20different%20values%20of%20constant)及び抄訳
(以下「乙第1号証」等を、「乙1」等という。)
3 当審で通知した令和6年7月16日付け取消理由通知の取消理由
当審で通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
(1)取消理由(明確性要件)
本件特許の請求項1~15に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・熱変形温度の測定法について
本件特許の請求項1には、「e)少なくとも108℃の熱変形温度(HDT)」と記載されているが、「ISO 75」による熱変形温度の測定方法にはかける荷重が異なるA法とB法があり、両者の測定値は全く異なることが知られているところ、本件明細書(【0029】、【0115】及び【0128】【表2】)の記載を参照しても、A法及びB法のいずれの測定方法によるものであるかが明らかでなく、本件発明1に係る「熱変形温度(HDT)」について、その定義を明確に把握することができない。
第5 当審の判断
以下に述べるとおり、当審で通知した取消理由及び申立書に記載された申立理由によっては、本件発明1~15に係る特許は取り消すことはできない。
1 当審で通知した取消理由(明確性要件)及び申立理由3(明確性要件)について
上記第3の1(3)の申立理由3も明確性要件についてのものであるので、当審で通知した上記第3の3(1)の取消理由(明確性要件)と併せて検討する。
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、本件明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
ア 熱変形温度の測定法については、本件訂正により、本件明細書の記載の不整合が正され、【0029】、【0115】及び【0128】の記載を考慮すると、本件発明1に係る「熱変形温度(HDT)」は、「ISO 75 B」法に準拠して測定される値であることを当業者であれば明確に理解できる。
イ そして、本件特許の請求項1の記載は、上記第3のとおりであり、「長鎖分岐プロピレンポリマー」とは、本件明細書の【0004】~【0007】の記載を考慮すれば、ポリプロピレンを、例えば高溶融強度(HMS)プロセス等の反応器後の改質プロセスに供することにより、ポリプロピレン材料に分岐が生じたものであると当業者であれば明確に理解できる。
そして、「長鎖分岐プロピレンポリマー」を特定する上記a)~e)における「メルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)」、「熱キシレン不溶(XHU)画分」、「融解温度Tm」、「F30溶融強度」、「熱変形温度(HDT)」については、それぞれ、本件明細書の【0103】、【0105】、【0109】、【0106】~【0107】、【0029】及び【0115】に定義及び測定方法が記載されており、いずれもISO又はEN規格に従うものであるから、当業者であればそれらの意味を明確に理解できる。
そうすると、本件明細書の記載を考慮すれば、上記a)~e)の意味するところは明確であるから、本件発明1の記載は、それ自体に不明確な記載はなく、本件明細書の記載とも整合するから、本件発明1は明確である。
ウ また、本件発明1を直接又は間接的に引用し、上記発明特定事項以外の事項を含む本件発明2~15の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、本件明細書の記載とも整合するから、本件発明2~15は明確である。
エ したがって、本件発明1~15に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、本件明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(イ)申立人の主張について
a 長鎖分岐について
申立人は、上記第3の1(3)アの点について主張する。
しかし、上記イのとおり、本件特許の請求項1の記載は、「長鎖分岐プロピレンポリマー」が、長鎖分岐の構造や分析方法等により特定されるものではなく、上記a)~e)によって特定されるものであり、本件明細書の記載を考慮すれば各特定の意味するところは明確である。そして、本件明細書に「長鎖分岐がどのような構造を有するものなのか、また、どのように分析するのか等」についての記載があるか否かによって、上記a)~e)の意味内容が不明確となるともいえない。
b 熱変形温度の測定法について
申立人が主張する上記第3の1(3)イの点については、上記(2)アで述べたとおりである。
したがって、申立人の主張はいずれも採用できない。
(3)取消理由及び申立理由3についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~15は明確であり、当審で通知した取消理由(明確性要件)及び申立理由3(明確性要件)については理由がない。
2 取消理由に採用しなかった申立理由について
(1)申立理由1(甲1を主引例とする新規性、進歩性)について
ア 甲1に記載された事項及び発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PPC)であって、
a)少なくとも1つの長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)を含み、前記長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)は、
i.ISO1133に従って2.16kgの荷重下で230℃にて測定された1.5~3.5g/10minの範囲のメルトフローレートMFR2と、
ii.ISO16790:2005に従って30バールのダイ圧力にて測定された10.0~40.0cNの範囲のF30溶融強度とを有し、
前記長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PPC)はさらに、
b)少なくとも1つの直鎖プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(l-PP)を含み、前記直鎖プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(l-PP)は、
i.ISO1133に従って2.16kgの荷重下で230℃にて測定された1.5g/10min以下のメルトフローレートMFR2と、
ii.ISO16790:2005に従って30バールのダイ圧力にて測定された40.0cN超のF30溶融強度とを有し、
前記長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PPC)はISO16790:2005に従って30バールのダイ圧力にて測定された10.0cN以上のF30溶融強度を有し、かつ前記長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PPC)は、長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PPC)の総量に対して10.0~50.0wt%の前記少なくとも1つの直鎖プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(l-PP)を含む、長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PPC)。
【請求項2】
前記長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PPC)は、ISO16790:2005に従って30バールのダイ圧力にて測定された180mm/s以上のv30溶融伸展性を有することを特徴とする、請求項1に記載の長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PPC)。」
「【0032】
本発明に従う長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)のメルトフローレート(MFR2)は、一般的に1.5~3.5g/10minの範囲である。好ましくは、前記長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)に対するMFR2は1.9~3.0g/10minの範囲、より好ましくは2.0~2.5g/10minの範囲である。長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)のMFR2はISO規格1133に従って、230℃の温度および2.16kgの荷重下にて定められる。好適な下限は1.5g/10min、好ましくは1.9g/10min、より好ましくは2.0g/10minである。好適な上限は3.5g/10min、好ましくは3.0g/10min、より好ましくは2.5g/10minである。MFR2範囲の下側および上側に示される値は含まれる。
【0033】
長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)のF30溶融強度は、30バールのダイ圧力にてISO 16790:2005に従って測定され、一般的には10.0~40.0cNの範囲、好ましくは12.0~38.0cNの範囲、より好ましくは14.0~36.0cNの範囲である。好適な下限は10.0cN、好ましくは12.0cN、より好ましくは14.0cNである。好適な上限は40.0cN、好ましくは38.0cN、より好ましくは36.0cNである。F30溶融強度範囲の下側および上側に示される値は含まれる。
【0034】
本発明に従う長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)は一般的に、180mm/s以上、好ましくは180~500mm/sの範囲、より好ましくは200~400mm/sの範囲、さらにより好ましくは220~350mm/sの範囲の、30バールのダイ圧力にてISO 16790:2005に従って測定されたv30溶融伸展性を有する。好適な下限は180mm/s、好ましくは200mm/s、より好ましくは220mm/sである。好適な上限は500mm/s、好ましくは400mm/s、より好ましくは350mm/sである。v30溶融伸展性範囲の下側および上側に示される値は含まれる。」
「【0040】
当該技術分野において公知のさらなるプロセスも、結果として得られる長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)が本発明に従うF30溶融強度値および好ましくはv30溶融伸展性値に関して要求される特徴を満たせば、長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)の生成に好適である。たとえば、本発明に従う長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)は、メタロセン触媒を用いた重合プロセスによって生成され得る。
【0041】
長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)の生成に対する好ましいプロセスは、プロピレンポリマーが熱分解フリーラジカル形成剤と、任意には以下から選択される官能不飽和化合物と反応するようなプロセスである。
a)少なくとも1つの二官能不飽和モノマーおよび/もしくはポリマー、
または
b)少なくとも1つの多官能不飽和モノマーおよび/もしくはポリマー、
または
c)(a)および(b)の混合物。」
「【0063】
本発明に従う長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PPC)は一般的に、EN579に従って測定した0.5wt%未満の高温キシレン不溶性成分(XHU:xylenehotinsoluble)フラクションを有する。好ましくは、本発明に従う長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PPC)の高温キシレン不溶性成分(XHU)フラクションは0.0~0.4wt%の範囲、より好ましくは0.0~0.3wt%の範囲である。高温キシレン不溶性成分(XHU)フラクション範囲の下側および上側に示される値は含まれる。」
「【0098】
II- 本発明の実施例および比較実施例
a)本発明の実施例、乾式混合化合物
タンブリングデバイスにペレット形状の対応する量のb-PPおよびl-PP-1またはl-PP-2を加えることによって、本発明の長鎖分岐ポリプロピレン組成物(IE1、IE2、IE3、およびIE4)を調製した。結果として得られたペレット混合物を、テスト前にさらに加熱することなくテストした。
【0099】
b-PPはBorealisが市販する長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードWB140HMSであり、2.1g/10minのMFR2および165℃の融解温度を有する。
【0100】
l-PP-1はBorealisが市販する直鎖プロピレンホモポリマーグレードBE50であり、0.30g/10minのMFR2および165℃の融解温度を有する。
【0101】
l-PP21はBorealisが市販する直鎖異相プロピレンコポリマーグレードBA212Eであり、0.3g/10minのMFR2、165℃の融解温度、および4.6wt%のエチレン含有量を有する。
【0102】
b)本発明の実施例、調合
220rpmのスクリュー速度および75kg/hの押出し機スループットを用いて、260℃の溶融物温度にてCoperion ZSK 32MCツインスクリュー押出し機内で対応する量のb-PPおよびl-PP-1またはl-PP-2を溶融混合することによって、本発明の長鎖分岐ポリプロピレン組成物(IE1-A、IE2-A、IE3-A、およびIE4-A)を調製した。
【0103】
温度プロファイルを次のとおりに設定した。230-240-250-260℃。
【0104】
c)比較実施例
比較実施例(CE1)はBorealisが市販するb-PP長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードWB140HMSであり、2.1g/10minのMFR2を有する。
【0105】
d)比較実施例、調合
220rpmのスクリュー速度および75kg/hの押出し機スループットを用いて、260℃の溶融物温度にてCoperion ZSK 32MCツインスクリュー押出し機内で対応する量のb-PPを押出すことによって、比較実施例CE1-Aを調製した。
【0106】
温度プロファイルを次のとおりに設定した。230-240-250-260℃。
【0107】
【表1】
[図:0001423490000001.jpg]
【0108】
表1から、本発明に従う乾式混合長鎖分岐ポリプロピレン組成物(IE1、IE2、IE3、およびIE4)は、比較実施例(CE1)よりも高いか、または類似の溶融強度(F30)を提供することを導出できる。加えて、押出し機における溶融混合調合によって調製した本発明の実施例(IE1-A、IE2-A、IE3-A、およびIE4-A)は、比較実施例CE1-Aと比べて処理中の剪断および伸長に耐えることができ、かつ処理後に良好な溶融強度特性を保てることを導出できる。このことは、本発明に従う長鎖分岐ポリプロピレン組成物調製の際、およびこうした長鎖分岐ポリプロピレン組成物でできた物品の製造の際に生じた再利用物を直接再使用することを可能にする。加えて、こうした長鎖分岐ポリプロピレン組成物から作られた既製物品および使用済み物品の再利用も可能になる。」
(イ)甲1に記載された発明
上記(ア)のとおり、甲1の請求項1には、特性「i」及び「ii」を有する「a)」「長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)」を含む「長鎖分岐ポリプロピレン組成物(b-PCC)」が記載されており、【0099】には、上記a)成分に該当する「b-PP」の市販品である「長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードWB140HMS」(以下、単に「WB140HMS」ということがある。)が具体的に記載され、これは「2.1g/10minのMFR2および165℃の融解温度」を有し、比較実施例(CE1)としても使用されている(【0104】)ものであるから、【0107】【表1】によれば、F30溶融強度が36.0cNである。
そして、当該b-PP 80又は60wt%と、l-PP-1又はl-PP-2 20又は40wt%とを加えること(乾式混合)によって、本発明の長鎖分岐ポリプロピレン組成物(IE1、IE2、IE3、およびIE4)を調製した(【0098】、【0107】【表1】、【0108】)ことも記載されている。
したがって、甲1の長鎖分岐ポリプロピレン組成物「IE1」に着目すると、甲1には以下の発明が記載されているものと認める。
「長鎖分岐プロピレンホモポリマーを含む長鎖分岐ポリプロピレン組成物IE1(b-PPC)であって、
前記長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードWB140HMS(b-PP)が、
2.1g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)と、
165℃の融解温度Tmと、
36.0cNのF30溶融強度と、
を有するプロピレンポリマー組成物。」(以下「甲1発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「長鎖分岐プロピレンホモポリマーを含む長鎖分岐ポリプロピレン組成物IE1(b-PPC)」は、本件発明1の「長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物」に相当する。
甲1発明における「長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードWB140HMS」が有する「2.1g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)」、「165℃の融解温度Tm」は、本件発明1における「長鎖分岐プロピレンポリマー」が有する「a)0.8~6.0g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)」、「c)少なくとも160.0℃の融解温度Tm」の範囲に包含される。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物であって、
前記長鎖分岐プロピレンポリマーが、
a)0.8~6.0g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)と、
c)少なくとも160.0℃の融解温度Tmと、
を有するプロピレンポリマー組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1においては、「前記長鎖分岐プロピレンポリマーが」、さらに、「b)前記長鎖分岐プロピレンポリマーの総重量量に基づいて、0.80重量%以下の量の熱キシレン不溶(XHU)画分」を有すると特定されているのに対し、甲1発明においては、そのような特定がない点
<相違点2>
本件発明1においては、「前記長鎖分岐プロピレンポリマーが」、さらに、「d)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度」を有すると特定されているのに対し、甲1発明においては、「前記長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードWB140HMS」が、「36.0cNのF30溶融強度」である点
<相違点3>
本件発明1においては、「前記長鎖分岐プロピレンポリマーが」、さらに、「e)ISO 75 Bに準拠して決定される、少なくとも108℃の熱変形温度(HDT)」とを有すると特定されているのに対し、甲1発明においては、そのような特定がない点
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3、2の順に判断する。
a 相違点3(「熱変形温度(HDT)」)について
甲2には、ボレアリス社が製造販売する「Borealis DaployTMWB140HMS Polypropylene」に関して、以下の事項が記載されている。
「物理的性質
メルトフロー 2.1g/10min@荷重2.16kg、温度230℃」、
「熱的性質
0.46MPa(66psi)における熱変形温度 110.0℃
1.8MPa(264psi)における熱変形温度 60.0℃」(1~2頁)
そうすると、甲1発明の「長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードWB140HMS」は、「0.46MPa(66psi)における熱変形温度 110.0℃」であると認められる。
そして、「0.46MPa」における熱変形温度は、「ISO 75 Bに準拠して、公称表面応力0.45MPa」で測定される「熱変形温度(HDT)」(本件明細書の【0115】)と実質的に同条件といえるから、甲1発明の「長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードWB140HMS」は、「e)ISO 75 Bに準拠して決定される、少なくとも108℃の熱変形温度(HDT)」を満たすものである。
そうすると、相違点3は実質的な相違点とはならない。
b 相違点2(「F30溶融強度」について)
甲1発明の「長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードWB140HMS」は、「F30溶融強度」が「36.0cN」であり、本件発明1における「d)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度」を満たしておらず、甲1には、他に、「F30溶融強度」が、本件発明1における「d)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度」を満たす長鎖分岐プロピレンポリマーが具体的に記載されていない。
また、甲1の請求項1には、「長鎖分岐プロピレンポリマーが」、「10.0~40.0cN未満のF30溶融強度」を有することが記載されており、【0033】には、
「長鎖分岐プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(b-PP)のF30溶融強度は、30バールのダイ圧力にてISO 16790:2005に従って測定され、一般的には10.0~40.0cNの範囲、好ましくは12.0~38.0cNの範囲、より好ましくは14.0~36.0cNの範囲である。好適な下限は10.0cN、好ましくは12.0cN、より好ましくは14.0cNである。好適な上限は40.0cN、好ましくは38.0cN、より好ましくは36.0cNである。F30溶融強度範囲の下側および上側に示される値は含まれる。」と記載されており、本件発明1における「d)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度」と重複する範囲が一応記載されている。
しかし、通常、ポリマーの物性の一つ、例えば、「F30溶融強度」を変更しようとすれば、それに伴い、他の物性も変化し得るものであり、具体的には、「F30溶融強度」が「36.0cN」である「長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードB140HMS」について、その「F30溶融強度」を変更しようとすれば、それに伴い、当該ポリマーが有する、「2.1g/10minのMFR2」及び「165℃の融解温度」や、上記相違点1及び2に係る特性も変更され、一致点であった特性が相違点ともなり得るところ、甲1には、「F30溶融強度」を「10.0~40.0cN未満」で変更するとしても、それと同時に、「メルトフローレートMFR2」、「熱キシレン不溶画分(XHU)」、「融解温度Tm」、「熱変形温度(HDT)」を本件発明1の各数値範囲を満たすものとすることについて何ら記載も示唆もされていない。
また、甲2、3及び6の記載を見ても、「F30溶融強度」については記載も示唆もされていないから、どのように「F30溶融強度」を調整し得るかについて、教示するところがない。
そうすると、甲1発明の「前記長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードWB140HMS」について、本件発明1のa)~e)の全ての特性を満たすものとすることを、甲1並びに甲2、3及び6の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではない。
(ウ)本件発明1の効果について
本件発明1は、良好な溶融強度、高い結晶性、低いゲル含有量、高い剛性、並びに熱変形温度(HDT)で示される改善された耐熱性の特性の改良されたバランスを兼ね備える(【0034】)という効果を有するものであるところ、上記(イ)bのとおり、そもそも甲1発明の「前記長鎖分岐プロピレンホモポリマーグレードWB140HMS」について、本件発明1のa)~e)の全ての特性を満たすことは当業者が容易に想到し得るものでなく、また、a)~e)の全ての特性を満たすものとすることによって、上記効果を有することを当業者が予測し得るともいえない。
(エ)その他の甲1の記載に基づく発明について
a 甲1の【表1】における実施例IE2~IE4に基づいて、引用発明を認定したとしても、b-PPについては、甲1発明と同じであるから、上記(ア)及び(イ)と同様の判断となる。
b(a)次に、甲1の請求項1に基づいて、引用発明を認定した場合、「10.0~40.0cNの範囲のF30溶融強度」は、本件発明1の「d)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度」と数値範囲が一部重複するが、上記(イ)bで述べたように、長鎖分岐プロピレンポリマーの一つの物性を変更すると、それに応じて他の物性も変更されるし、甲1には、他に、本件発明1の各物性の数値範囲を満たすものとすることは記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(オ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2~4、14及び15について
本件発明2~4、14及び15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記イ(ア)で述べた相違点2を少なくとも有するものであり、上記イ(イ)で述べたのと同様の理由により、本件発明2~4は、甲1に記載された発明ではなく、本件発明2~4、14及び15は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 申立人の主張について
(ア)申立人は、申立書及び意見書において、以下のように主張する。
a 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明に係る長鎖分岐プロピレンポリマーは、そのメルトフローレート、熱キシレン不溶画分、融解温度、F30溶融強度のいずれにおいても本件発明1に記載されている数値範囲を満足するものを含んでいること、熱変形温度(HDT)についても実質的な相違点ではないから、本件発明1に係る長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物は、甲1発明であり、仮に、両者に相違する点があったとしても、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができる程度のものである(申立書21頁3~30行)。
b 本件発明1のF30溶融強度について
甲1の表1に示されたCE1(【0104】より長鎖分岐プロピレンポリマーDaploy WB140HMS)の溶融強度F30は36.0cNであり、本件発明1におけるd)の上限を超えているが、これを押出機によって溶融混錬したCE1-A(【0108】の記載から表1のIE1-Aは誤記と思われる。)の値は8.0cNとなっており、本件発明1におけるd)の範囲内である。
また、押出機による直鎖プロピレンホモポリマーまたはコポリマー(【請求項1】よりF30は40.0cN超)との溶融混錬後のIE1-A(【0108】の記載から表1のIE-Aは誤記と思われる。)、IE2-A、IE3-A、IE4-Aの組成物における長鎖分岐プロピレンポリマーの溶融強度F30の値は、「比較実施例CE1-Aと比べて処理中の剪断および伸長に耐えることができ、かつ処理後に良好な溶融強度特性を保てること」(【0108】)から、8.0cN以上であり、それぞれの組成物における値19.0cN、35.0cN、12.3cN、22.0cN以下である蓋然性が高く、表1には本件発明1のd)を満足する長鎖分岐プロピレンポリマーが具体的に開示されているといえる。
なお、溶融混錬による特性の大幅な変化は、溶融強度等のレオロジー挙動に特有なものであり、融解温度、結晶化温度、熱変形温度、弾性率等に関係する結晶化挙動に及ぼす影響は限定的であることは、当業者の技術常識である(意見書2頁下から6行~3頁12行)。
(イ)検討
a 上記イ(イ)及び(エ)のとおり、甲1において、いずれの発明を認定しても、「F30溶融強度」については少なくとも相違点となり、「F30溶融強度」の数値範囲が、本件発明1の数値範囲と一部重複しているとしても、甲1には、具体的に「F30溶融強度」を満たすものは開示されておらず、どのように調整するかについても教示されていないから、他の特性を変更することなく、「F30溶融強度」を「5.0~30.0cN未満」の範囲内とすること、すなわち、甲1発明の「長鎖分岐プロピレンホモポリマー」について、本件発明1のa)~e)の全ての特性を満たすものとすることを、甲1並びに甲2、3及び6の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得るとはいえない。
b 甲1の実施例には、「CE1」のb-PPと、1-PP-1又は1-PP-2を乾式混合したIE1~IE4の組成物(【0098】)に加え、「260℃の溶融物温度にてCoperion ZSK 32MCツインスクリュー押出し機内で対応する量のb-PPを押出すことによって、比較実施例CE1-Aを調製」したことと(【0105】)、「260℃の溶融物温度にてCoperion ZSK 32MCツインスクリュー押出し機内で対応する量のb-PPおよびl-PP-1またはl-PP-2を溶融混合することによって、本発明の長鎖分岐ポリプロピレン組成物(IE1-A、IE2-A、IE3-A、およびIE4-A)を調製した」(【0102】)ことが記載されており、【0107】【表1】には、その「特徴付け」として、「IE1-A」、「IE-A」、「IE2-A」~「IE4-A」が記載されている(当審注:【表1】の「IE1-A」、「IE-A」は、それぞれ【0105】の「比較実施例CE1-A」、【0102】の「IE1-A」の誤記と解される。)。
しかし、組成物「IE1-A」~「IE4-A」は、b-PP及びl-PP-1又はl-PP-2溶融混合されているため、当該組成物中のb-PPが、「WB140HMS」である「CE-1」の特性を保持していないことは、比較実施例CE1-A(【表1】の「IE1-A」)が、溶融後にF30溶融強度が「36.0cN」から「8.0cN」と大幅に低下していることからも明らかである。
そうすると、たとえ、比較実施例CE1-Aにあたる「b-PP」のF30溶融強度が「8.0cN」であることを踏まえると、組成物「IE1-A」~「IE4-A」における「長鎖分岐プロピレンポリマー」の「F30溶融強度」については、本件発明1の「d)」の範囲を満たす可能性が高いとしても、MFR2や融解温度といった他の特性については、溶融前の特性(【0099】)と同様であるとはいえないから、本件発明1の上記a)~e)の全てを満たすものが記載されているとは認めることができない。また、比較実施例CE1-A、「IE1-A」~「IE4-A」の組成物の特性に基づいて、本件発明1の上記a)~e)の全てを満たすものを、当業者が容易に想到し得るともいえない。
また、溶融混練が結晶化挙動に及ぼす影響は限定的であるとする技術常識を裏付ける根拠は示されていないし、甲1において、b-PPが溶融混練後にF30溶融強度が大幅に低下する中で、MFR2や融解温度といった他の特性については、溶融前の特性(【0099】)と同様であることが技術常識であるとする根拠も見出せない。
したがって、申立人の上記(ア)の主張はいずれも採用できない。
オ 申立理由1についてのまとめ
よって、本件発明1~4は、甲1に記載された発明ではなく、本件発明1~4、14及び15は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3及び甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立理由1は理由がない。
(2)申立理由2(甲4を主引例とする新規性、進歩性)について
ア 甲4に記載された事項及び発明
(ア)甲4に記載された事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
少なくとも50mol%のプロピレンを含み、6より大きい分子量分布(Mw/Mn)、少なくとも0.97の分岐指数(g’vis)、および伸長レオメータを用いて190℃で決定して10cNより大きい溶融強度を有するポリプロピレンと、
ポリプロピレンおよび有機過酸化物の質量に対して0.01~3質量%の範囲内の少なくとも1種の有機過酸化物と
の反応生成物を含む組成物。」
「【請求項14】
組成物が40cN~100cNの範囲内の溶融強度を有する、請求項1、2および4から13までのいずれか1項に記載の組成物、または請求項3から13までのいずれか1項に記載の方法。」
「【0008】
本明細書において、有機過酸化物を用いた反応性押出による長鎖分岐の導入によって改変された高分子量画分(すなわち高分子量テール)を有する広い分子量のポリプロピレンが開示される。結果は、ずり減粘、溶融強度および歪み硬化が顕著に増大した超分岐ポリプロピレンである。得られた超分岐ポリプロピレンは、独立気泡発泡体を生成するのに充分な歪み硬化を有しており、限定されることはないが発泡成形、ブローフィルム、熱成形および異形押出を含む、増大したずり減粘、バランスのとれた溶融強度および歪み硬化を必要とする用途に有用である。
本明細書で使用されるとき、「ずり減粘」は、せん断歪みに付されたとき低減した粘度を有する非ニュートン性流体を記述し、従って、「ずり減粘」を示すポリマーは、せん断応力の押出機条件にさらされたときにそのポリマーがより容易に加工処理されるという点で改良された加工性を有する。ポリプロピレンサンプルのずり減粘を測定するにはMCR501動的応力/歪みレオメータを使用した。」
「【0010】
本明細書で使用されるとき、「溶融強度」とは、ポリマー溶融物の延伸に対する抵抗性を意味する。ある材料の溶融強度は、ポリマーの分子鎖の絡み合いおよび歪みの下における絡み合いを解くことに対するその抵抗性に関連している。絡み合いを解くことに対する抵抗性に影響を及ぼすポリマーの特性は分子量、分子量分布(MWD)および分子の分岐である。これは、本発明において、190℃で伸長レオメータを使用して決定される。
これらの目標は、少なくとも部分的に、少なくとも50mol%のプロピレンを含み、6または8または10より大きい分子量分布(Mw/Mn)、少なくとも0.97の分岐指数(g’vis)、および伸長レオメータを用いて190℃で決定して10または20または30cNより大きい溶融強度を有するポリプロピレンと、ポリプロピレンおよび有機過酸化物の質量に対して0.01~1または2または3質量%の範囲内の少なくとも1種の有機過酸化物との反応生成物を含む(または、から本質的になる、または、からなる)ポリプロピレンで達成される。「反応生成物」は、好ましくは架橋ポリプロピレン、長鎖分岐ポリプロピレン、またはこれら2つの組合せを含み、最も好ましくは二酸化炭素およびアルコール、殊にセチルアルコールのようなC6-C30アルコールのような副生物も含む。
【0011】
従って、別の言い方をすると、任意の実施形態において、超分岐ポリプロピレンは、40または45cN~60または65または80または100cNの範囲内の溶融強度、および0.97または0.95未満の分岐指数(g’vis)、および好ましくは本明細書に記載されているその他の特徴を有するポリプロピレンである。最も好ましくは、超分岐ポリプロピレンは、架橋ポリプロピレン、長鎖分岐ポリプロピレン、またはこれらの組合せ、二酸化炭素、およびセチルアルコールのようなC6-C30アルコールを含む。アルコールは通例、あったとしても、超分岐ポリプロピレンの質量に対して2または1または0.5質量%未満のレベルで存在する。」
「【0014】
バランスのとれた溶融強度のポリプロピレン
上記の通り、超分岐ポリプロピレンは、国際公開第2014/070386号の開示に従って作製される、ここに記載されているように本明細書中では単に「バランスのとれた溶融強度のポリプロピレン」(またはBMS PP)といわれる、一定の望ましい特徴を有するポリプロピレンから誘導される。特に、バランスのとれた溶融強度のポリプロピレンは、好ましくは溶液またはスラリー法で、最も好ましくは連続した2つ以上の反応器で、水素のような連鎖停止剤のレベルを、第1の反応器の値と第2、第3(各々連続する)等の反応器で同じか、または2もしくは5もしくは10%以内として、および/または別の言い方をすると、第1の反応器からのポリプロピレンのMFR(ASTM D1238、230℃/2.16kg)を、第2、第3(各々連続する)等の反応器からのポリプロピレンの値と同じか、または2もしくは5もしくは10%以内として生産される。
【0015】
任意の実施形態において、本開示に有用なポリプロピレンは少なくとも50もしくは60もしくは70もしくは80もしくは90mol%のプロピレンに由来する単位(または「プロピレン」)、または50もしくは60もしくは80~95もしくは99もしくは100mol%の範囲内のプロピレンを含み、残りはエチレンおよびC4-C6またはC10またはC12またはC20オレフィンから選択されるコモノマーに由来する単位である。より好ましくは、ポリプロピレンは0.1~10mol%の範囲内の、エチレンおよびC4-C6またはC10またはC12またはC20オレフィンからなる群から選択されるコモノマーを含み得、残りはプロピレンである。最も好ましくは、ポリプロピレンはプロピレンに由来する単位のホモポリマーである。」
「【実施例】
【0029】
バランスのとれた溶融強度のポリプロピレンおよび組成物の結晶化および融点温度はPyris(商標) 1 DSCにおいて10℃/分で示差走査熱量測定により決定した。DSC傾斜率は加熱と冷却の両方で10℃/分である。測定は、1)10.0分間-20.0℃に保持;2)-20.0℃から200.0℃まで10.0℃/分で加熱;3)10.0分間200.0℃に保持;4)200.0℃から-20.0℃まで10.0℃/分で冷却;5)10.0分間-20.0℃に保持;および6)-20.0℃から200.0℃まで10.0℃/分で加熱によって行う。
高荷重メルトインデックス(I21またはHLMI)パラメーターは190℃、21.6kgで、メルトインデックスは190℃、2.16kgで、ASTM D1238により決定した。メルトフローレート(MFR)は、条件L下、230℃、2.16kgで決定した。」
「【0033】
試験温度:
温度は伸長の間に120℃から190℃まで変化することができ、PP試験には190℃に設定した。伸長時のHencky歪み速度に関しては、0.01s-1、0.1s-1および1.0s-1とした。
溶融強度および伸長粘度
Rheotens 71.97(Gottfert)と組み合わせてRheotester 1000毛管レオメータを用いて溶融強度および伸長粘度を測定するのに使用した方法は確立された試験法RHE04-3.3("Measurement of the elongational viscosity of molten polymers")に記載されている。
【0034】
A.試験条件:
Rheotester 1000と組み合わせてRheotens 71-97を用いて溶融強度/伸長粘度を試験するための条件はRHEO4-3.3に記載されている:
1.Rheotester 1000:
温度:190℃
ダイ:30/2
ピストンスピード:0.278mm/s
ずり速度:40.050秒-1
2.ストランド:
長さ:100mm
Vo:10mm/秒
3.Rheotens:
ギャップ:0.7mm
ホイール:溝付き
加速度:12.0mm/s2
【0035】
B.試験:
各材料に対して幾つかの測定を行う。実際、Rheotesterのバレル内に存在する完全な量の材料をダイに通して押し出し、Rheotensのロールでピックアップした。ストランドがロール間に置かれたら、「ゼロ」の力が測定されるまでロールスピードを調節した。この始めのスピード「Vs」は、試験の開始時にホイールのニップを通るストランドのスピードであった。
試験を開始したら、ロールのスピードを12.0mm/s2の加速度で増大し、各々の所与のスピードに対して力を測定した。各々のストランドが壊れるか、またはストランドがローター間で滑った後、測定を停止し、材料を新たな測定のためにロール間に配置し直した。新しい曲線を記録した。バレル内のすべての材料が使われるまで測定を続けけた。
【0036】
C.データ処理:
試験後、得られたすべての曲線を保存する。線から外れた曲線は不活性化する。残りの曲線を壊れるかまたは滑った同じ点でカットし(測定された最大の力)、平均の曲線の計算に使用する。この計算された平均の曲線の数値データを報告する。」
「【0037】
本発明の組成物および作製方法
Perkadox 24L(商標)(Akzo-Nobel)を、他のすべての添加剤ならびにバランスのとれた溶融強度のポリプロピレン顆粒と25℃で乾式タンブルブレンドした。次いで、混合物を230~240℃の温度でカットされた水面下のストランドと共にZSK30mm二軸式押出機に送った。バランスのとれた溶融強度のポリプロピレンは、米国特許第6,087,459号および米国特許第6,686,433号と同様に、Avant(商標)ZN168(LyondellBasell)として市販されている塩化マグネシウム担持チタン触媒を、プロピルトリエトキシシランとジシクロペンチルジメトキシシランの外部ドナーブレンドと共に使用して作製した。これらの実験で使用した2.3g/10分のMFRを有するバランスのとれた溶融強度のポリプロピレンは、約33,000g/モルの数平均分子量(Mn)、および約370,000g/モルのMw、および約1,100,000g/モルのMz、11.2のMw/Mn、および3.0のMz/Mwを有する。ここで使用したバランスのとれた溶融強度のポリプロピレンの分岐(g’vis)値は0.99であった。
【表1】
[図:0001423490000002.jpg]
【0038】
結果から、有機過酸化物をポリプロピレンに添加することによりI2が増大することが明らかであり、これはポリマー鎖の架橋、ポリマー鎖上の長鎖の分岐の形成、または両者の組合せを示している。また、有機過酸化物の添加と共にI21/I2(MIR)が大きくなることが認められる。これは、バランスのとれた溶融強度のポリプロピレン上の長鎖の分岐の形成に起因する改良されたずり減粘を示す可能性がある。Enable(商標)3505ポリプロピレンである長鎖分岐ポリプロピレンを添加することは、MIRに示されているように、(「対照」、即ち未処理のバランスのとれた溶融強度のポリプロピレンの2.3MFRに対して)ずり減粘を改良しなかったことが留意される。
【表2】
[図:0001423490000003.jpg]
【0039】
上記表2は、伸長増粘ともいわれる歪み硬化が線形粘弾性曲線より上の伸長粘度の増大であることを示している。LVEに対するピーク伸長粘度が表2、または「相対ピーク伸長粘度」で比較された。データは、1.3%Perkadox 24Lを含むポリプロピレンを、Perkadox 24Lを添加してないポリプロピレン対照と比較した図6および7に示されているようなプロットから誘導される。溶融強度の測定はGotffert Rheotens溶融強度試験装置を用いて行った。ポリマー溶融物が壊れる最大のプルオフ力は図5に示されている「溶融強度」といわれる。超分岐ポリプロピレンに対する「溶融強度」(0.5質量%の有機過酸化物で30cN、1.3質量%の有機過酸化物で43cN)はPerkadox 24Lで改変されてない対照のポリプロピレン(20cN)より有意に高い。」
「【0040】
比較実験
比較的に狭い分子量分布(Mw/Mn6.0未満)を有し、感知できる高い分子量テールのない(例えば、2.8未満のMz/Mw)2つの比較のポリプロピレンホモポリマーを上記の有機過酸化物Perkadox 24Lで処理してその挙動を同じ処理をしたBMS PPと比較した。これの結果を表3に示す。特に、比較の「狭いMWD」ポリプロピレンは次の両方のホモポリマーである:
「A」ポリプロピレン、5.0g/10分のMFR、77,104g/モルのMn、および312,697g/モルのMw、および768,888g/モルのMz、および4.06のMw/Mn、および2.46のMz/Mwを有する;
「B」ポリプロピレン、2g/10分のMFR、63,119g/モルのMn、332,390g/モルのMw、893,884g/モルのMz、5.3のMw/Mn、および2.7のMz/Mwを有する;
いずれもGPC DRIにより決定される。これら2つのポリプロピレンは、5MFR(5g/10分のMFRを有する)および2MFR(2g/10分のMFRを有する)である。「B」および2MFR BMSを処理するのに使用した有機過酸化物は粉末の形態であり(3mm未満の直径または長さ)、「A」および5MFR BMSを処理するのに使用した有機過酸化物は3~5mm(長さ)のフレークの形態であった。ブレンドは上記のように行った。分かるように、狭いMWDのポリプロピレンに対する有機過酸化物の効果はBMS PPほどには目立たない。
【0041】
【表3】
[図:0001423490000004.jpg]
」
(イ)甲4に記載された発明
上記(ア)のとおり、甲4の請求項1には、「少なくとも50mol%のプロピレンを含み、6より大きい分子量分布(Mw/Mn)、少なくとも0.97の分岐指数(g’vis)、および伸長レオメータを用いて190℃で決定して10cNより大きい溶融強度を有するポリプロピレンと、ポリプロピレンおよび有機過酸化物の質量に対して0.01~3質量%の範囲内の少なくとも1種の有機過酸化物との反応生成物を含む組成物。」が記載されており、【0008】及び【0011】に示されるように、有機過酸化物との反応生成物は、「超分岐ポリプロピレン」であり、「長鎖分岐ポリプロピレン」を含むものといえる。
そして、甲4の【0040】及び【0041】の【表3】の上から2行目には、ポリプロピレンホモポリマー「5 MFR BMS PP」のサンプルを、有機過酸化物(Perkadox 24L)0.8質量%(フレーク)で処理した反応生成物である「MFRが2.64(g/10分)」で「溶融強度が25.5(cN)」である組成物が記載されている。
同様に、【表3】の上から9~11、13及び14行目には、【0040】に記載のポリプロピレン「A」又は「B」のサンプルを、表3記載の有機過酸化物(Perkadox 24L)で処理した、表3記載のMFR及び溶融強度を有する組成物が記載されている。
そうすると、甲4の【表3】に記載されている上記サンプルを処理して得られる組成物のうち、上から2、9~11、13及び14行目のポリプロピレンを含有する組成物とそのMFR、溶融強度に着目すると、甲4には以下の発明が記載されているものと認める。
「長鎖分岐ポリプロピレンを含む超分岐ポリプロピレン組成物であって、
前記組成物は、
2.2~4.67g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)、
10.3~25.5cN以下の溶融強度と、
を有する超分岐ポリプロピレン組成物。」(以下「甲4発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲4発明との対比
甲4発明の「長鎖分岐ポリプロピレン」及びこれを含む「超分岐ポリプロピレン組成物」は、本件発明1の「長鎖分岐プロピレンポリマー」及びこれを含む「プロピレンポリマー組成物」に相当する。
甲4発明における「前記組成物」が有する「2.2~4.67g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)」、「10.3~25.5cN以下の溶融強度」は、「ポリプロピレンホモポリマー」を有機過酸化物で処理した反応生成物である組成物の特性であり、他のポリプロピレン等をさらに配合したものではないから、「長鎖分岐プロピレンポリマー」の特性であると認められる。そうすると、甲4発明の「2.2~4.67g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)」は、本件発明1における「長鎖分岐プロピレンポリマー」が有する「a)0.8~6.0g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)」の範囲に包含される。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、
「長鎖分岐プロピレンポリマーを含むプロピレンポリマー組成物であって、
前記長鎖分岐プロピレンポリマーが、
a)0.8~6.0g/10分のメルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)
を有するプロピレンポリマー組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4>
本件発明1は、「長鎖分岐プロピレンポリマー」が、さらに
「b)前記長鎖分岐プロピレンポリマーの総重量量に基づいて、0.80重量%以下の量の熱キシレン不溶(XHU)画分と、
c)少なくとも160.0℃の融解温度Tmと、
d)5.0~30.0cN未満のF30溶融強度と、
e)少なくとも108℃の熱変形温度(HDT)と」を有すると特定されているのに対し、甲4発明においては、これらの特性については明らかでない点。
(イ)相違点4についての判断
まず、甲4には、「熱キシレン不溶(XHU)画分」、「融解温度Tm」及び「熱変形温度(HDT)」について何ら記載されておらず、相違点4は実質的な相違点である。
そして、甲4には、「長鎖分岐プロピレンポリマー」が、「a)」に加えて、さらに上記b)~e)の全ての特性を満たすことについて記載も示唆もされておらず、「a)」「メルトフローレートMFR2」を満たしさえすれば、上記b)~e)の全ての特性をも満たすといえる技術常識も見出せないから、甲4発明に基づいて、当業者が上記a)~e)の全ての特性を満たすことを容易に想到し得るとはいえない。
そして、甲5及び甲7の記載を参照しても、甲4発明のその他の特性が明らかになるとはいえず、甲4発明に基づいて、当業者が上記a)~e)の全ての特性を満たすことを容易に想到し得るとはいえない。
ウ 本件発明2~15について
本件発明2~15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記イ(ア)で述べた相違点4を少なくとも有するものであり、上記イ(イ)で述べたのと同様の理由により、本件発明2~15は、甲4発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 申立人の主張について
(ア)申立人は、申立書及び意見書において、以下のように主張する。
a 甲4の【0037】に記載されている長鎖分岐プロピレンポリマーの製造方法においては、長鎖を導入する前のポリプロピレンであるBMS PPについては触媒としてAvant ZN168を使用して重合されているところ、甲5には、同触媒を用いて製造されたポリプロピレン(【0084】)は、mmmmペンタッドの含有量を測定した時のアイソタクティシティー(isotacticity)が非常に高く、このmmmmペンタッドの含有量が97.6~97.8%であることが具体的に示されており(【表2】)、本件発明におけるPP-1の96.5%(【表1】)よりも高いものである。なお、甲5ではジ-シクロペンチル-ジ-メトオキシシラン(Dドナー)、甲4ではDドナーとプロピルトリエトキシシランとの混合物を、ポリプロピレンの重合における外部ドナーとして使用しているが(甲5【0072】、甲4【0037】)、その影響は軽微と考えられる。
そして、参1(364頁右欄5~8行)に示されるように、アイソタクティシティー(mmmmペンタッドの含有量)が高いと剛性や耐熱性が向上することは当業者にとって技術常識であって、本件明細書に記載の比較例CE3は、mmmmの値が93.0%のPP-2を原料プロピレンポリマーとして用いているために曲げ弾性率とHDTが低くなっていることを踏まえると、甲4に記載されている製造方法、特に上記BMS PPからなる原料プロピレンポリマーを本件発明と同じ過酸化物であるPerkadox 24Lで処理することによって得られる長鎖分岐プロピレンポリマーは、その物性として、本件発明1のc)、e)に係る融解温度Tm、熱変形温度HDTについても満たしている蓋然性が高い。
また、熱キシレン不溶(XHU)画分については、長鎖分岐プロピレンポリマーのゲル分率に関連する特性であることに鑑みれば、甲4に記載されている製造方法によって得られるポリマーが本件発明1のb)に係る熱キシレン不溶(XHU)画分の上限を上回る要因はない(申立書24頁1行~25頁17行)。
b 本件発明1のF30溶融強度について
甲4の【表3】に示されるように、同等のMFRにおける溶融混錬処理後の溶融強度は、有機過酸化物の有無にかかわらず、Mw/Mnが11.2(甲4【0037】)と大きいBMS PPの方が、Mw/Mnが6.0未満(甲4【0040】)のAやBと比較して大きい。一方、本件明細書の【表2】に示された有機過酸化物処理後のF30の値は、有機過酸化物の量が1.0重量%のPP-1(IE1)の17.8cN(MFR=1.21)の方が、有機過酸化物の量が0.8重量%のPP-2(CE3)の22.2cN(MFR=1.58)より小さいことから、PP-1のMw/Mnは、第3世代のZiegler-Natta触媒で得られた(本件明細書の【0122】)PP-2よりも小さく、上記AやBと同等と考えられる。有機過酸化物なしで処理したAとBは溶融強度が3.5cN(MFR=5.23)と4cN(MFR=2.8)であり(甲4【表3】)、有機過酸化物なしで処理したPP-1(CE1)のF30は4.4cN(MFR=3.64)(本件明細書【表2】)であることから、甲4発明の溶融強度は、本件発明1のd)に係るF30とほぼ同等の値を示すと考えられる(但し、評価方法の一部が本件特許のF30と異なる)(意見書3頁20行~最終行)。
c 本件発明1の熱キシレン不溶(XHU)画分(相違点2)について
甲4において、BMS PPから製造される長鎖分岐プロピレンポリマーには、少なくとも0.97の分岐指数(g'vis、g'vis=1.00が完全な直鎖状ポリマーに相当)を有するポリプロピレン中に含まれるもの、ポリプロピレンおよび有機過酸化物の質量に対して0.01~3質量%の範囲内で含まれる有機過酸化物との反応生成物中に含まれるものとがあり(請求項1、【0010】)、反応生成物中に含まれる「架橋ポリプロピレン」が熱キシレン不溶(XHU)画分に相当する(【0010】)(意見書4頁1~8行)。
(イ)検討
a まず、甲4と甲5とでは、申立人も述べるように、使用する外部ドナーが異なるところ、チーグラー-ナッタ触媒への様々な電子供与体物質(外部ドナー)の添加が、ポリプロピレン中の立体規則性の程度に影響を与えることは周知であるから(必要であれば、特表2002-514666号公報の【0002】及び【0003】参照。なお、当該公報は、甲4の【0037】で引用される「米国特許第6,087,458号」のファミリー文献である。)、Avant ZN168という触媒が共通していることのみをもって、甲4発明の長鎖分岐プロピレンポリマーが、甲5と同様の特性を有するとはいえない。
仮に、甲4発明の長鎖分岐プロピレンポリマーの特性について、甲5の記載を参照できたとしても、甲5には、相違点に係る本願発明1のb)~e)の特性について開示されていない。
また、本件明細書の【0124】の【表1】をみると、実施例IE1及びIE2並びに比較例CE1の組成物に用いられる原料であるPP-1とPP-2とでは、アイソタクティシティ<mmmm>以外にも、XCS(冷キシレン可溶画分)等の値も差異があり、得られる長鎖分岐プロピレンポリマーの特性に対する影響が、アイソタクティシティ<mmmm>のみによって生ずるともいえないから、たとえ、甲4発明の原料であるポリプロピレンのアイソタクティシティー(mmmmペンタッドの含有量)が高いものであったとしても、それだけで、本件発明1のc)、e)に係る融解温度Tm、熱変形温度HDTの範囲を満たす蓋然性が高いとはいえない。
そうすると、上記(ア)において、甲4と甲5の触媒の共通性から、甲4発明が、甲5で得られるポリプロピレンと同様のアイソタクティシティーを有するという主張及び本件明細書の比較例CE3が、実施例よりも低いmmmmの値であることにより、曲げ弾性率とHDTが低くなっているという主張を前提として、甲4に記載される製造方法によって得られる長鎖分岐プロピレンポリマーが、本件発明1のc)、e)に係る融解温度Tm、熱変形温度HDTについても満たしている蓋然性が高いとする主張は、上記のとおり、前提とする主張が成り立たないから、甲4に記載の原料及び製造方法並びに甲5及び参1の記載を考慮したとしても、甲4に記載される製造方法によって得られる長鎖分岐プロピレンポリマーが、上記a)の特性に加えて、さらに上記b)~e)の全ての特性を有することについて記載されているとはいえず、また、甲4発明に基づいて、当業者が上記a)~e)の全ての特性を満たすことを容易に想到し得るともいえない。
b 申立人も認めるように、溶融強度の評価方法が、甲4と本件明細書とでは異なるうえ、MFR、Mw/Mnの類似性のみから、溶融強度が同等の値となるとする根拠も見出せないから、甲4発明のF30溶融強度が、本件発明1と一致するとは認められない。
c 甲4には、「ポリプロピレンおよび有機過酸化物の質量に対して0.01~1または2または3質量%の範囲内の少なくとも1種の有機過酸化物との反応生成物を含む(または、から本質的になる、または、からなる)ポリプロピレンで達成される。「反応生成物」は、好ましくは架橋ポリプロピレン、長鎖分岐ポリプロピレン、またはこれら2つの組合せを含み、最も好ましくは二酸化炭素およびアルコール、殊にセチルアルコールのようなC6-C30アルコールのような副生物も含む」と記載されているものの(【0010】)、「架橋ポリプロピレン」が、「キシレン不溶(XHU)画分」に相当するという主張の根拠が明らかでない。また、甲4発明の組成物中のこれらの各成分の含有量も明らかでないから、本件発明1の「b)前記長鎖分岐プロピレンポリマーの総重量量に基づいて、0.80重量%以下の量の熱キシレン不溶(XHU)画分」を満たすものとは認められない。
したがって、申立人の上記(ア)の主張は採用できない。
オ 申立理由2についてのまとめ
よって、本件発明1~13は、甲4に記載された発明ではなく、本件発明1~15は、甲4に記載された発明及び甲5及び甲7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、申立理由2は理由がない。
(3)申立理由4(実施可能要件)について
ア 実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件発明1~4及び14は物の発明であるところ、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、物の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があることを要する。また、本件発明5~13及び15は物を生産する方法であるところ、物を生産する方法の発明にあっては、当業者が発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物の使用等をできる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
イ 実施可能要件の判断
上記1(2)でも述べたように、本件発明1の「プロピレンポリマー組成物」に含まれる「長鎖分岐プロピレンポリマー」を特定する上記a)~e)における「メルトフローレートMFR2(230℃、2.16kg)」、「熱キシレン不溶(XHU)画分」、「融解温度Tm」、「F30溶融強度」、「熱変形温度(HDT)」については、それぞれ、本件明細書の【0103】、【0105】、【0109】、【0106】~【0107】、【0029】及び【0115】に測定方法が記載されており、同様に、本件発明2~4における「結晶化温度Tc」、「V30溶融伸展性」、「曲げ弾性率」についても、本件明細書の【0109】、【0106】~【0107】、【0112】に測定方法が記載されており、いずれもISO又はEN規格に従うものであるから、当業者であればそれらの意味を明確に理解できる。
また、本件明細書の【0025】~【0033】には、本件発明1の上記a)~e)及び本件発明2~4の各特性の好ましい範囲が記載され、【0034】には、それらの特性を兼ね備えることによる組成物の作用効果についても記載されており、組成物の好ましい用途として、軽量用途、自動車用途及び食品包装用途等の包装用途におけるフィルム、発泡体及び成形品にとりわけ適用できることも記載されている。
さらに、本件発明1~4のプロピレンポリマー組成物の製造方法(【0036】)について、工程a)として、原料であるプロピレンポリマーの重合工程の好ましいZiegler-Natta触媒、外部ドナー(ED)等が具体的に記載されており(【0038】~【0068】)、工程b)として、回収されたプロピレンポリマー原料の好ましい特性が具体的に記載されており(【0069】~【0081】)、工程c)として、プロピレンポリマーに長鎖分岐を導入するための過酸化物存在下での押出し工程における改質についても、添加物や温度等の条件が具体的に記載されている(【0082】~【0092】)。
そして、実施例には、プロピレンポリマーPP-1の調製における重合条件(【0116】~【0124】【表1】)、当該PP-1を過酸化物の存在下に改質して、実施例IE1及びIE2のプロピレン組成物を調製する際の改質条件(【0125】~【0128】【表2】)が具体的に記載されると共に、当該PP-1について反応性改質なしに溶融混合した比較例CE1、PP-1とは異なるPP-2を原料として、反応性改質なしに溶融混合した比較例CE2及び当該PP-2について、実施例と同様の反応性改質を行った比較例CE3も調製して、これらの特性を比較した結果も示されており、実施例IE1及びIE2の組成物は、本件発明1~4の全ての特性を満たすのに対し、比較例CE1~CE3の組成物は、本件発明1の少なくとも1つの特性を満たさないものとなっている。
したがって、本件発明1~4の組成物及び当該組成物を含む本件発明14の物品について、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるといえる。そして、本件発明1~4の製造方法である本件発明5~13及び物品の製造のための本件発明1~4の組成物の使用である本件発明15についても、当業者が発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用し、その方法により生産した物の使用等をできる程度の記載があるといえる。
ウ 申立人の主張
申立人は、上記第4の(4)の点について主張する。
しかし、上記イのとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、原料プロピレンポリマーの製造方法や特性、長鎖分岐ポリプロピレンを得るために必要な改質条件についても具体的に記載されており、それらの記載に従って製造され、本件発明1~4に係る諸特性を満たす実施例の組成物IE1及びIE2が記載されているから、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるといえる。
したがって、上記申立人の主張は採用できない。
エ 申立理由4についてのまとめ
以上のとおり、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~15について実施可能要件を満たしており、申立理由4は理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び当審で通知した取消理由によっては、本件発明1~15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700356